IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本たばこ産業株式会社の特許一覧

特許7123240非燃焼型加熱喫煙物品及びその使用方法、並びに非燃焼型加熱喫煙システム
<>
  • 特許-非燃焼型加熱喫煙物品及びその使用方法、並びに非燃焼型加熱喫煙システム 図1
  • 特許-非燃焼型加熱喫煙物品及びその使用方法、並びに非燃焼型加熱喫煙システム 図2
  • 特許-非燃焼型加熱喫煙物品及びその使用方法、並びに非燃焼型加熱喫煙システム 図3
  • 特許-非燃焼型加熱喫煙物品及びその使用方法、並びに非燃焼型加熱喫煙システム 図4
  • 特許-非燃焼型加熱喫煙物品及びその使用方法、並びに非燃焼型加熱喫煙システム 図5
  • 特許-非燃焼型加熱喫煙物品及びその使用方法、並びに非燃焼型加熱喫煙システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】非燃焼型加熱喫煙物品及びその使用方法、並びに非燃焼型加熱喫煙システム
(51)【国際特許分類】
   A24B 15/16 20200101AFI20220815BHJP
   A24D 3/17 20200101ALI20220815BHJP
   A24F 40/42 20200101ALI20220815BHJP
   A24F 40/20 20200101ALI20220815BHJP
   A24D 1/20 20200101ALI20220815BHJP
【FI】
A24B15/16
A24D3/17
A24F40/42
A24F40/20
A24D1/20
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021510598
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2019014005
(87)【国際公開番号】W WO2020202254
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】石川 信幸
(72)【発明者】
【氏名】太田 康介
【審査官】比嘉 貴大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/203686(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0027468(US,A1)
【文献】特表2018-513674(JP,A)
【文献】特開2015-156806(JP,A)
【文献】特表2016-512033(JP,A)
【文献】特表2018-523476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 15/16
A24D 3/17
A24F 40/42
A24F 40/20
A24D 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
たばこと、エアロゾル生成基材と、を含むたばこ充填物と、
前記たばこ充填物よりも下流に配置されたフィルターと、
を含む非燃焼型加熱喫煙物品であって、
前記たばこ充填物が、pHが7.8以下のエアロゾルを与えるたばこ充填物であり、
前記たばこ充填物が、沸点が300℃以下の有機酸をさらに含む、非燃焼型加熱喫煙物品。
【請求項2】
前記たばこ充填物の加熱温度が230℃以下である請求項1に記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
【請求項3】
前記たばこが、オリエント種及び黄色種の少なくとも一方を含む請求項1又は2に記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
【請求項4】
前記有機酸の第一酸解離定数が4.0~5.0である請求項1から3のいずれか一項に記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
【請求項5】
前記有機酸の沸点(℃)の値と、前記有機酸の第一酸解離定数の値との積が、1000~1200である請求項からのいずれか一項に記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
【請求項6】
前記有機酸が、25℃において固体である請求項からのいずれか一項に記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
【請求項7】
前記有機酸が、25℃において前記エアロゾル生成基材に可溶である請求項からのいずれか一項に記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
【請求項8】
前記有機酸が、安息香酸及びレブリン酸の少なくとも一方を含む請求項からのいずれか一項に記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
【請求項9】
前記フィルターの通気抵抗が250~450mmHO/120mmである請求項1からのいずれか一項に記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
【請求項10】
前記フィルターに含まれる可塑剤の量が9.0質量%以下である請求項1からのいずれか一項に記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
【請求項11】
前記可塑剤がトリアセチンである請求項10に記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
【請求項12】
前記フィルターに含まれる保湿剤の量が9.0質量%以下である請求項1から11のいずれか一項に記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
【請求項13】
前記保湿剤がプロピレングリコールである請求項12に記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の非燃焼型加熱喫煙物品のたばこ充填物を230℃以下に加熱することを含む、非燃焼型加熱喫煙物品の使用方法。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載の非燃焼型加熱喫煙物品と、
前記たばこ充填物を加熱する加熱装置と、
を含む非燃焼型加熱喫煙システム。
【請求項16】
前記加熱装置による前記たばこ充填物の加熱温度が230℃以下である請求項15に記載の非燃焼型加熱喫煙システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非燃焼型加熱喫煙物品及びその使用方法、並びに非燃焼型加熱喫煙システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃焼を利用して喫煙を行う通常の燃焼喫煙物品の代替として、燃焼の代わりに加熱を利用した非燃焼型加熱喫煙物品が開発されている(例えば特許文献1)。非燃焼型加熱喫煙物品では、たばこ充填物は、たばこの他に、加熱によりエアロゾルを生成するエアロゾル生成基材を含む。吸引時、香喫味成分と共にエアロゾルも一緒に吸引される。
【0003】
非燃焼型加熱喫煙物品では、通常230℃を超える温度でたばこ充填物は加熱される。230℃を超える温度で加熱することで、たばこ中に含まれるセルロース、ヘミセルロース、リグニン等が熱分解し、様々な熱分解物が生成するため、得られる香喫味が複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/203686号
【文献】特表2009-502136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非燃焼型加熱喫煙物品において、230℃を超える温度でたばこ充填物が加熱されると、前記熱分解に伴い様々な熱分解物が生成し、該熱分解物はエアロゾル粒子中に含有される。そのため、エアロゾル粒子の揮発性は低下する。また、エアロゾル粒子に含まれる香喫味成分の揮発性も低下する。
【0006】
一方、230℃以下の温度でたばこ充填物が加熱されると、前記熱分解はわずかにしか生じないため、エアロゾル粒子中に含有される熱分解物の量は少なくなる。そのため、エアロゾル粒子の揮発性が高くなる。また、エアロゾル粒子に含まれる香喫味成分の揮発性も高くなり、香喫味成分がエアロゾル粒子から揮発してガス化しやすくなる。この場合、エアロゾルが、たばこ充填物よりも下流に配置されたフィルターを通過する際に、フィルターにエアロゾル粒子が物理的に接触して濾過されるエアロゾル粒子の機械的な濾過(以下、機械的濾過ともいう。)に加え、エアロゾル粒子から揮発した香喫味成分のガスがフィルター表面に吸着して捕捉される、吸着を伴う香喫味成分の捕捉(以下、吸着濾過ともいう。)が生じる。したがって、フィルターにおける香喫味成分の濾過性が高くなり、使用者に十分な量の香喫味成分が供給されない。
【0007】
この課題を解決する方法として、例えばフィルターを設けない構成を採用することが考えられる(例えば特許文献2)。しかしながら、フィルターを備えない非燃焼型加熱喫煙物品は通気抵抗が低いため、フィルターを備える通常の非燃焼型加熱喫煙物品と喫煙所作が大きく異なり、使用者が吸い難さを感じる場合がある。
【0008】
本発明は、230℃以下の加熱温度で使用する場合にも、フィルターにおける香喫味成分の濾過性が低減された非燃焼型加熱喫煙物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る非燃焼型加熱喫煙物品は、
たばこと、エアロゾル生成基材と、を含むたばこ充填物と、
前記たばこ充填物よりも下流に配置されたフィルターと、
を含む非燃焼型加熱喫煙物品であって、
前記たばこ充填物が、pHが7.8以下のエアロゾルを与えるたばこ充填物である。
【0010】
本発明に係る非燃焼型加熱喫煙物品の使用方法は、本発明に係る非燃焼型加熱喫煙物品のたばこ充填物を230℃以下に加熱することを含む。
【0011】
本発明に係る非燃焼型加熱喫煙システムは、
本発明に係る非燃焼型加熱喫煙物品と、
前記たばこ充填物を加熱する加熱装置と、
を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、230℃以下の加熱温度で使用する場合にも、フィルターにおける香喫味成分の濾過性が低減された非燃焼型加熱喫煙物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一の実施形態に係る非燃焼型加熱喫煙物品の断面図である。
図2】本発明の第二の実施形態に係る非燃焼型加熱喫煙物品の断面図である。
図3】本発明に係る非燃焼型加熱喫煙システムの一例であって、(a)非燃焼型加熱喫煙物品を加熱装置に挿入する前の状態、(b)非燃焼型加熱喫煙物品を加熱装置に挿入して加熱する状態を示す模式図である。
図4】実施例10、11、比較例5~8における、濾過増加指標値と、香喫味効果値との関係をプロットしたグラフである。
図5】実施例1~11、比較例1~8における、エアロゾルのpHと、濾過増加指標値との関係をプロットしたグラフである。
図6】参考例1~5で用いたポッド及び加熱装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[非燃焼型加熱喫煙物品]
本発明に係る非燃焼型加熱喫煙物品は、たばこと、エアロゾル生成基材と、を含むたばこ充填物と、前記たばこ充填物よりも下流に配置されたフィルターと、を含む。ここで、前記たばこ充填物は、pHが7.8以下のエアロゾルを与えるたばこ充填物である。
【0015】
本発明者等は、エアロゾルのpHを7.8以下にすることにより、非燃焼型加熱喫煙物品を230℃以下の加熱温度で使用する場合にも、フィルターにおける香喫味成分の濾過性を低減でき、使用者に十分な量の香喫味成分を供給できることを見出した。
【0016】
前述したように、従来の非燃焼型加熱喫煙物品を230℃以下の加熱温度で使用する場合、たばこ中に含まれる成分の熱分解はわずかにしか生じず、エアロゾル粒子中に含まれる熱分解物の量は少なくなる。そのため、エアロゾル粒子の揮発性が高くなり、エアロゾル粒子に含まれる香喫味成分の揮発性も高くなる。この場合、エアロゾルがフィルターを通過する際に、フィルターでエアロゾル粒子が機械的に濾過される機械的濾過に加えて、エアロゾル粒子から揮発した香喫味成分のガスがフィルター表面に吸着して捕捉される吸着濾過が生じる。したがって、フィルターにおける香喫味成分の濾過性が高くなる。
【0017】
本発明に係る非燃焼型加熱喫煙物品では、たばこ充填物が、pHが7.8以下のエアロゾルを与えるため、エアロゾル粒子中のエアロゾル溶液は酸性であり、塩基性であるニコチン等の香喫味成分と酸塩基結合を形成する。そのため、エアロゾル粒子に含まれる香喫味成分の揮発性が低下し、香喫味成分がエアロゾル粒子内に残りやすくなる。したがって、該非燃焼型加熱喫煙物品を230℃以下の加熱温度で使用する場合にも、香喫味成分のガスの吸着濾過を低減することができ、結果としてフィルターにおける香喫味成分の濾過性を低減することができる。
【0018】
本発明において、たばこ充填物より生成するエアロゾルのpHは7.8以下であり、7.5以下が好ましく、7.3以下がより好ましく、7.0以下がさらに好ましい。エアロゾルのpHの範囲の下限は特に限定されないが、たばこ充填物に含まれる成分が全てエアロゾルに移行した場合にも、エアロゾルのpHは通常4.0以上であるため、4.0以上であることができる。
【0019】
なお、本発明において「エアロゾル」は、たばこ由来の香喫味成分を含むエアロゾル粒子と、その周囲を覆うガスとを含む。また、「エアロゾルのpH」は、超純水10mlを添加したインピンジャーに、フィルターを通過する前の30℃以下のエアロゾル10~15mgを直接捕集して得られる溶液のpHである。以下、本発明の詳細について説明する。
【0020】
本発明に係る非燃焼型加熱喫煙物品は、たばこ充填物と、前記たばこ充填物よりも下流に配置されたフィルターと、を含めばその構成は特に限定されない。本発明に係る非燃焼型加熱喫煙物品は、例えば後述する第一及び第二の実施形態に係る非燃焼型加熱喫煙物品であることができる。
【0021】
(たばこ充填物)
本発明に係るたばこ充填物は、たばこと、エアロゾル生成基材とを含み、pHが7.8以下のエアロゾルを与えるものであれば特に限定されない。後述するように、該たばこ充填物は、さらに有機酸を含むことが好ましい。また、該たばこ充填物は、さらに揮発性香料成分、水等を含んでもよい。たばこ充填物は、例えばアミノ基を含む香喫味成分を含むエアロゾルであって、230℃以下で該アミノ基が塩を形成するエアロゾルを生成し得るたばこ充填物であることができる。
【0022】
たばこの種類としては、オリエント種、黄色種、バーレー種、在来種、および、その他のニコチアナ・タバカム系品種やニコチアナ・ルスチカ系品種を、目的とする味となるように適宜ブレンドして用いることができる。前記たばこの種類の詳細は、例えば「たばこの事典、たばこ総合研究センター、2009.3.31」に詳細が開示されている。これらの中でも、たばことしては、オリエント種、黄色種が好ましい。すなわち、たばこはオリエント種及び黄色種の少なくとも一方を含むことが好ましい。オリエント種及び黄色種は、含有窒素量が少ないためエアロゾル粒子への塩基性物質の移行が少なく、また有機酸等を多く含むため、エアロゾルのpHを低下させることができる。エアロゾルのpHをより低下させる観点から、たばこはオリエント種及び黄色種の少なくとも一方を50質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、70質量%以上含むことがさらに好ましく、100質量%含む、すなわちたばこがオリエント種及び黄色種の少なくとも一方からなることが特に好ましい。使用する部位としては、葉(緩和刻)、茎、葉脈(中骨刻)、根、花等が挙げられる。
【0023】
たばこの形態は特に限定されず、たばこ刻、再生シート、細粉等のいずれの形態も適用できる。例えば、乾燥したたばこ葉を、幅0.8~1.2mmに刻んだものを用いてもよい。前記幅に刻んだ場合、刻の長さは、おおよそ5~20mm程度となる。また、乾燥したたばこ葉を平均粒径が20~200μm程度になるように粉砕して均一化したものをシート加工し、それを幅0.8~1.2mmに刻んだものを用いてもよい。前記幅に刻んだ場合、刻の長さは、おおよそ5~20mm程度となる。さらに、上記のシート加工したものについて刻まずにギャザー加工したものを充填物として用いてもよい。また、円筒状に成型した複数のシートを同心円状に配置してもよい。
【0024】
たばこを粉砕して均一化シートに加工する方法は従来の方法が複数存在している。1つは抄紙プロセスを用いて作られる抄造シートであり、2つは水等の適切な溶媒を混ぜて均一化したのちに金属製板もしくは金属製板ベルトの上に均一化物を薄くキャスティングし、乾燥させて作られるキャストシートであり、3つは水等の適切な溶媒を混ぜて均一化したものをシート状に押し出し成型した圧延シートがある。前記均一化シートの種類については、「たばこの事典、たばこ総合研究センター、2009.3.31」に詳細が開示されている。
【0025】
たばこ充填物中のたばこの含有量は、特に限定されないが、たばこ充填物100質量%に対して、20~90質量%であることが好ましく、50~90質量%であることがより好ましく、70~90質量%であることがさらに好ましい。該含有量が20質量%以上であることにより、十分な量の香喫味成分を供給することができる。また、該含有量が90質量%以下であることにより、たばこ以外の他の成分を適切な量含有することができる。
【0026】
エアロゾル生成基材は、加熱によりエアロゾルを生成し得る材料であれば特に限定されないが、例えばグリセリン、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3-ブタンジオール等の多価アルコール;ステアリン酸メチル、ドデカン二酸ジメチル、テトラデカン二酸ジメチル等のカルボン酸脂肪族エステル;トリエチルシトレート、トリアセチン等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。生成するエアロゾル粒子濃度が低いほど、エアロゾルから香喫味成分が揮発しやすいため、230℃以下の加熱温度では揮発量の少ない基材であるグリセリンが本技術では特に効果的に機能する。
【0027】
たばこ充填物中のエアロゾル生成基材の含有量は、特に限定されないが、たばこ充填物100質量%に対して、10~90質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることがさらに好ましい。該含有量が10質量%以上であることにより、十分な量のエアロゾルを生成、供給することができる。また、該含有量が90質量%以下であることにより、エアロゾル生成基材以外の他の成分を適切な量含有することができる。
【0028】
本発明に係るたばこ充填物は、エアロゾルのpHを低下させる観点から、さらに有機酸を含むことが好ましい。該有機酸は、たばこに含まれる有機酸(第一の有機酸)とは別にたばこ充填物に添加される第二の有機酸である。有機酸の種類としては、可食性の有機酸であることができ、エアロゾルのpHを7.8以下にできるものであれば特に限定されないが、例えばレブリン酸、安息香酸等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0029】
前記有機酸の沸点は、300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることがさらに好ましい。前記有機酸の沸点が300℃以下であることにより、非燃焼型加熱喫煙物品を230℃以下の加熱温度で使用する場合にも前記有機酸が揮発しやすく、エアロゾル粒子中に含まれる有機酸量が増加するため、エアロゾルのpHをより低下させることができる。前記有機酸の沸点の範囲の下限は特に限定されないが、例えば150℃以上であることができる。なお、本発明において「沸点」とは、760mmHgの圧力における沸点を示し、例えば蒸留によって測定される値である。
【0030】
前記有機酸の第一酸解離定数は、4.0~5.0であることが好ましく、4.1~4.8であることがより好ましく、4.2~4.5であることがさらに好ましい。前記有機酸の第一酸解離定数が4.0~5.0であることにより、エアロゾル粒子内において有機酸が塩基性の香喫味成分と酸・塩基反応を起こしやすく、より塩を形成しやすい。そのため、エアロゾル粒子に含まれる香喫味成分の揮発性がより低下し、フィルターにおける香喫味成分の濾過性をより低減することができる。なお、本発明において「第一酸解離定数」とは、25℃における水への酸解離定数を示し、例えば中和滴定、吸光光度法、キャピラリー電気泳動により測定される値である。
【0031】
前記有機酸の沸点(℃)の値と、前記有機酸の第一酸解離定数の値との積は、1000~1200であることが好ましく、1020~1150であることがより好ましく、1040~1100であることがさらに好ましい。前記積の値が1000~1200であることにより、230℃以下の加熱温度における有機酸の揮発性と、香喫味成分との酸・塩基反応に適切な酸の強さとのバランスが良好になり、エアロゾル粒子に含まれる香喫味成分の揮発性をより低下させることができるため、フィルターにおける香喫味成分の濾過性をより低減できる。
【0032】
前記有機酸は、25℃において固体であることが好ましい。有機酸が25℃において固体であることにより、該有機酸の揮発性は低いため、エアロゾル粒子内で有機酸が安定して存在でき、エアロゾルのpHをより低下させることができる。
【0033】
前記有機酸は、25℃において前記エアロゾル生成基材に可溶であることが好ましい。有機酸が、25℃において前記エアロゾル生成基材に可溶であることにより、エアロゾル粒子内で有機酸が均一に存在することができ、香喫味成分と効果的に結合状態を形成することができる。したがって、エアロゾル粒子に含まれる香喫味成分の揮発性をより低下させることができ、フィルターにおける香喫味成分の濾過性をより低減できる。なお、有機酸が25℃においてエアロゾル生成基材に可溶であるか否かの判断は、25℃において有機酸10mgをエアロゾル生成基材1000mgに添加して撹拌し、目視により溶解性を確認し、無色透明になるまたは添加量の多くが溶け見えなくなった場合「可溶」と判断する。グリセリン等のポリオール溶液は粘度が高く常温での測定が難しいため、一度任意で高温にて溶解させた後、常温まで冷却した後で観察することが望ましい。
【0034】
たばこ充填物が有機酸(第二の有機酸)を含む場合、たばこ充填物中の有機酸(第二の有機酸)の含有量は、エアロゾルのpHが7.8以下であれば特に限定されず、有機酸の種類等にもよるが、例えばたばこ充填物100質量%に対して、0.1~20質量%であることができ、0.5~10質量%であることもできる。
【0035】
本発明に係るたばこ充填物は、香喫味の付与の観点から、必要に応じて揮発性香料成分を含むことができる。揮発性香料成分の種類は、特に限定されず、良好な香喫味の付与の観点から、アセトアニソール、アセトフェノン、アセチルピラジン、2-アセチルチアゾール、アルファルファエキストラクト、アミルアルコール、酪酸アミル、トランス-アネトール、スターアニス油、リンゴ果汁、ペルーバルサム油、ミツロウアブソリュート、ベンズアルデヒド、ベンゾインレジノイド、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、フェニル酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、2,3-ブタンジオン、2-ブタノール、酪酸ブチル、酪酸、カラメル、カルダモン油、キャロブアブソリュート、β-カロテン、ニンジンジュース、L-カルボン、β-カリオフィレン、カシア樹皮油、シダーウッド油、セロリーシード油、カモミル油、シンナムアルデヒド、ケイ皮酸、シンナミルアルコール、ケイ皮酸シンナミル、シトロネラ油、DL-シトロネロール、クラリセージエキストラクト、ココア、コーヒー、コニャック油、コリアンダー油、クミンアルデヒド、ダバナ油、δ-デカラクトン、γ-デカラクトン、デカン酸、ディルハーブ油、3,4-ジメチル-1,2-シクロペンタンジオン、4,5-ジメチル-3-ヒドロキシ-2,5-ジヒドロフラン-2-オン、3,7-ジメチル-6-オクテン酸、2,3-ジメチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン、2-メチル酪酸エチル、酢酸エチル、酪酸エチル、ヘキサン酸エチル、イソ吉草酸エチル、乳酸エチル、ラウリン酸エチル、レブリン酸エチル、エチルマルトール、オクタン酸エチル、オレイン酸エチル、パルミチン酸エチル、フェニル酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ステアリン酸エチル、吉草酸エチル、エチルバニリン、エチルバニリングルコシド、2-エチル-3,(5または6)-ジメチルピラジン、5-エチル-3-ヒドロキシ-4-メチル-2(5H)-フラノン、2-エチル-3-メチルピラジン、ユーカリプトール、フェネグリークアブソリュート、ジェネアブソリュート、リンドウ根インフュージョン、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、ブドウ果汁、グアヤコール、グァバエキストラクト、γ-ヘプタラクトン、γ-ヘキサラクトン、ヘキサン酸、シス-3-ヘキセン-1-オール、酢酸ヘキシル、ヘキシルアルコール、フェニル酢酸ヘキシル、ハチミツ、4-ヒドロキシ-3-ペンテン酸ラクトン、4-ヒドロキシ-4-(3-ヒドロキシ-1-ブテニル)-3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、4-(パラ-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、4-ヒドロキシウンデカン酸ナトリウム、インモルテルアブソリュート、β-イオノン、酢酸イソアミル、酪酸イソアミル、フェニル酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、フェニル酢酸イソブチル、ジャスミンアブソリュート、コーラナッツティンクチャー、ラブダナム油、レモンテルペンレス油、カンゾウエキストラクト、リナロール、酢酸リナリル、ロベージ根油、マルトール、メープルシロップ、メンソール、メントン、酢酸L-メンチル、パラメトキシベンズアルデヒド、メチル-2-ピロリルケトン、アントラニル酸メチル、フェニル酢酸メチル、サリチル酸メチル、4’-メチルアセトフェノン、メチルシクロペンテノロン、3-メチル吉草酸、ミモザアブソリュート、トウミツ、ミリスチン酸、ネロール、ネロリドール、γ-ノナラクトン、ナツメグ油、δ-オクタラクトン、オクタナール、オクタン酸、オレンジフラワー油、オレンジ油、オリス根油、パルミチン酸、ω-ペンタデカラクトン、ペパーミント油、プチグレインパラグアイ油、フェネチルアルコール、フェニル酢酸フェネチル、フェニル酢酸、ピペロナール、プラムエキストラクト、プロペニルグアエトール、酢酸プロピル、3-プロピリデンフタリド、プルーン果汁、ピルビン酸、レーズンエキストラクト、ローズ油、ラム酒、セージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スチラックスアブソリュート、マリーゴールド油、ティーディスティレート、α-テルピネオール、酢酸テルピニル、5,6,7,8-テトラヒドロキノキサリン、1,5,5,9-テトラメチル-13-オキサシクロ(8.3.0.0(4.9))トリデカン、2,3,5,6-テトラメチルピラジン、タイム油、トマトエキストラクト、2-トリデカノン、クエン酸トリエチル、4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセニル)2-ブテン-4-オン、2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1,4-ジオン、4-(2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキサジエニル)2-ブテン-4-オン、2,3,5-トリメチルピラジン、γ-ウンデカラクトン、γ-バレロラクトン、バニラエキストラクト、バニリン、ベラトルアルデヒド、バイオレットリーフアブソリュート、たばこ植物(たばこ葉、たばこ茎、たばこ花、たばこ根、およびたばこ種)の抽出物が挙げられ、特に好ましくはメンソールである。また、これらの揮発性香料成分は1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0036】
たばこ充填物が揮発性香料成分を含む場合、たばこ充填物中の揮発性香料成分の含有量は特に限定されないが、良好な香喫味の付与の観点から、たばこ充填物質量に対して通常10000~50000ppmであることができ、20000~40000ppmであることが好ましい。
【0037】
たばこ充填物の充填密度は、特に限定されないが、非燃焼型加熱喫煙物品の性能を担保し、良好な香喫味の付与の観点から、通常250~520mg/cm3であり、320~420mg/cm3であることが好ましい。
【0038】
(フィルター)
本発明に係るフィルターは、フィルターとして機能し、前記たばこ充填物よりも下流(エアロゾルの流れにおいて吸口側)に配置されたものであれば特に限定されない。フィルターの材料としては、例えば酢酸セルロース等のセルロース、ポリプロピレン、ポリ乳酸、パルプを主原料とする紙等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。フィルターとしては、酢酸セルロースを含むアセテートフィルターが好ましい。
【0039】
前記フィルターの通気抵抗は、250~450mmH2O/120mmであることが好ましく、270~430mmH2O/120mmであることがより好ましく、300~400mmH2O/120mmであることがさらに好ましい。フィルターの通気抵抗が250mmH2O/120mm以上である場合、フィルターにおけるエアロゾル粒子の機械的濾過は増加するが、その分香喫味成分のガスの吸着濾過される割合は相対的に低減する。そのため、エアロゾル粒子1つ当たりに含まれる香喫味成分の量が増加する。一方、フィルターの通気抵抗が450mmH2O/120mm以下である場合、エアロゾル粒子の濾過性自体を低減させることができ、使用者に供給されるエアロゾル粒子の量が増加する。したがって、フィルターの通気抵抗が250~450mmH2O/120mmの範囲内であることにより、エアロゾル粒子1つ当たりに含まれる香喫味成分の量と、使用者に供給されるエアロゾル粒子の量とのバランスが取れ、十分な香喫味を付与することができる。なお、フィルターの通気抵抗は、フィルターの材料、充填量等により適宜変更することができる。また、本発明においてフィルターの通気抵抗は、常温(22℃)において空気1.05L/minにおける空気の差圧により測定される値である。
【0040】
前記フィルターに含まれる可塑剤の量は、フィルター100質量%に対して、9.0質量%以下であることが好ましい。通常、フィルターには、その硬さを調節する観点から可塑剤が添加される場合がある。しかしながら、該可塑剤は通常香喫味成分との親和性が高く、フィルターにおける香喫味成分のガスの吸着濾過を促進させる。前記フィルターに含まれる可塑剤の量を9.0質量%以下にすることにより、フィルターにおける香喫味成分のガスの吸着濾過をより低減させることができる。前記フィルターに含まれる可塑剤の量は、6.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることがさらに好ましく、0.0質量%、すなわち前記フィルターは可塑剤を含まないことが特に好ましい。
【0041】
前記可塑剤としては特に限定されないが、例えばトリアセチン、フタル酸エステル等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、可塑剤としては、フィルターにおける香喫味成分の濾過性低減効果がより得られる観点から、トリアセチンが好ましい。
【0042】
前記フィルターに含まれる保湿剤の量は、フィルター100質量%に対して、9.0質量%以下であることが好ましい。フィルターには、保湿性を担保する観点から保湿剤が添加される場合がある。しかしながら、該保湿剤は通常親水性のものが多いため、香喫味成分との親和性が高く、フィルターにおける香喫味成分のガスの吸着濾過を促進させる。前記フィルターに含まれる保湿剤の量を9.0質量%以下にすることにより、フィルターにおける香喫味成分のガスの吸着濾過をより低減させることができる。前記フィルターに含まれる保湿剤の量は、6.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることがさらに好ましく、0.0質量%、すなわち前記フィルターは保湿剤を含まないことが特に好ましい。
【0043】
前記保湿剤としては特に限定されないが、例えばプロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブタンジオール等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、保湿剤としては、フィルターにおける香喫味成分の濾過性低減効果がより得られる観点から、プロピレングリコールが好ましい。
【0044】
フィルターの、エアロゾルの流れ方向(軸方向)に対して垂直な面における断面形状は、特に限定されないが、例えば円形、楕円形、多角形等であることができる。フィルターが円筒状である場合、フィルターの周の長さは特に限定されないが、通気抵抗の発現性や製造容易性の観点から、17~27mmであることが好ましく、20~25mmであることがより好ましい。フィルターのエアロゾルの流れ方向(軸方向)における長さは特に限定されないが、例えば4~10mmであることができる。また、フィルターには希釈空気を取り入れるための開孔が設けられていてもよい。
【0045】
(加熱温度)
本発明に係る非燃焼型加熱喫煙物品では、前記たばこ充填物の加熱温度は230℃以下であり、220℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがさらに好ましい。
【0046】
Journal of Analytic and Applied Pyrolysis(85,47-53)に記載されているCzegeny et. al(2009)の実験結果によれば、非燃焼型加熱喫煙物品でよく用いられるバージニアブレンドのたばこは、230℃より熱分解に伴う質量損失が増え、300℃で第一のピークを迎え、第二のピークは450℃付近に存在することが報告されている。前述したように、前記たばこ充填物の加熱温度が230℃以下である場合、たばこ中に含まれる成分の熱分解はわずかにしか生じず、エアロゾル粒子中に含まれる熱分解物の量は少なくなる。そのため、エアロゾル粒子の揮発性が高くなり、エアロゾル粒子に含まれる香喫味成分の揮発性も高くなる。この場合、フィルターでのエアロゾル粒子の機械的濾過に加えて、香喫味成分のガスの吸着濾過が生じるため、本発明をより有効に適用できる。
【0047】
前記たばこ充填物の加熱温度の範囲の下限は特に限定されないが、例えば22℃以上であることができ、100℃以上であることもできる。なお、本発明において「加熱温度」とは、たばこ充填物自体の最高温度を示し、例えばたばこ充填物に熱電対を差し込むことで測定される温度の最高値を示す。
【0048】
(第一の実施形態)
図1に、本発明の第一の実施形態に係る非燃焼型加熱喫煙物品の断面図を示す。図1に示される円筒形の非燃焼型加熱喫煙物品100は、バッテリー101と、たばこ充填物102と、たばこ充填物102を収容するポッド103と、ポッド103を加熱可能なヒーター104と、マウスピース105と、フィルター106とを備える。バッテリー101より供給される電力によりヒーター104において発生する熱は、ポッド103内のたばこ充填物102へ伝わり、該熱によりたばこ充填物102に含まれる香喫味成分及びエアロゾル生成基材が気化する。生成した香喫味成分を含むエアロゾルは、マウスピース105及びフィルター106を通じて使用者へ供給される。
【0049】
(第二の実施形態)
図2に、本発明の第二の実施形態に係る非燃焼型加熱喫煙物品の断面図を示す。図2に示される円筒形の非燃焼型加熱喫煙物品200は、たばこ含有セグメント201と、マウスピースセグメント202とを備える。マウスピースセグメント202は、冷却セグメント203と、センターホールセグメント204と、フィルターセグメント205とを備える。使用時、たばこ充填物206を含むたばこ含有セグメント201が加熱され、たばこ充填物206に含まれる香喫味成分及びエアロゾル生成基材が気化する。生成した香喫味成分を含むエアロゾルは、冷却セグメント203、センターホールセグメント204、及びフィルター212を含むフィルターセグメント205を通じて使用者へ供給される。なお、冷却セグメント203とセンターホールセグメント204の位置を入れ替えてもよく、センターホールセグメント204とフィルターセグメント205の位置を入れ替えてもよい。また、マウスピースセグメント202はセンターホールセグメント204を有さなくてもよい。
【0050】
たばこ含有セグメント201は、たばこ充填物206と、たばこ充填物206を覆う筒状のラッパー207とを有する。たばこ充填物206をラッパー207内に充填する方法は特に限定されないが、例えばたばこ充填物206をラッパー207で包んでもよく、筒状のラッパー207にたばこ充填物206を充填してもよい。たばこの形状が矩形状のように長手方向を有する場合、たばこは該長手方向がラッパー207内でそれぞれ不特定の方向となるように充填されていてもよく、たばこ含有セグメント201の軸方向又は該軸方向に対して垂直な方向となるように整列させて充填されていてもよい。たばこ含有セグメント201が加熱されることにより、たばこ充填物206に含まれる香喫味成分及びエアロゾル生成基材が気化し、吸引によりこれらはマウスピースセグメント202へ移行する。
【0051】
冷却セグメント203は筒状部材208で構成される。筒状部材208は例えば厚紙を円筒状に加工した紙管であることができる。筒状部材208及び後述するマウスピースライニングペーパー215には、両者を貫通する穿孔209が設けられている。穿孔209の存在により、吸引時に外気が冷却セグメント203内に導入される。これにより、たばこ含有セグメント201が加熱されることで生成したエアロゾル気化成分が外気と接触し、その温度が低下するため液化し、エアロゾル粒子を含むエアロゾルが形成される。穿孔209の径(差し渡し長さ)は特に限定されないが、例えば0.5~1.5mmであることができる。穿孔209の数は特に限定されず、1つでも2つ以上でもよい。例えば穿孔209は冷却セグメント203の周上に複数設けられていてもよい。
【0052】
センターホールセグメント204は、中空部を有する充填層210と、充填層210を覆う第一のインナープラグラッパー211とで構成される。センターホールセグメント204は、マウスピースセグメント202の強度を高める機能を有する。充填層210は、例えば酢酸セルロース繊維が高密度で充填されたロッドであることができる。充填層210は繊維の充填密度が高いため、吸引時、エアロゾルは中空部のみを流れることになり、充填層210内にはほとんど流れない。センターホールセグメント204内部の充填層210が繊維充填層であることから、使用時の外側からの触り心地は、使用者に違和感を生じさせることが少ない。なお、センターホールセグメント204が第一のインナープラグラッパー211を有さず、熱成形によってその形が保たれていてもよい。
【0053】
フィルターセグメント205は、フィルター212と、フィルター212を覆う第二のインナープラグラッパー213とで構成される。フィルターセグメント205では端部までフィルター212が存在するため、該端部は通常の燃焼喫煙物品と同様の外観を有する。
【0054】
センターホールセグメント204と、フィルターセグメント205とはアウタープラグラッパー214で接続されている。アウタープラグラッパー214は、例えば円筒状の紙であることができる。また、たばこ含有セグメント201と、冷却セグメント203と、接続済みのセンターホールセグメント204及びフィルターセグメント205とは、マウスピースライニングペーパー215により接続されている。これらの接続は、例えばマウスピースライニングペーパー215の内側面に酢酸ビニル系糊等の糊を塗り、前記3つのセグメントを入れて巻くことで接続することができる。なお、これらのセグメントは複数のライニングペーパーで複数回に分けて接続されていてもよい。
【0055】
[非燃焼型加熱喫煙物品の使用方法]
本発明に係る非燃焼型加熱喫煙物品の使用方法は、本発明に係る非燃焼型加熱喫煙物品のたばこ充填物を230℃以下に加熱することを含む。前述したように、前記たばこ充填物の加熱温度が230℃以下である場合、たばこ中に含まれる成分の熱分解はわずかにしか生じず、エアロゾル粒子中に含まれる熱分解物の量は少なくなる。そのため、エアロゾル粒子の揮発性が高くなり、エアロゾル粒子に含まれる香喫味成分の揮発性も高くなる。この場合、フィルターでのエアロゾル粒子の機械的濾過に加えて、香喫味成分のガスの吸着濾過が生じる。本発明に係る方法では、前記香喫味成分のガスの吸着濾過を低減できるため、230℃以下の加熱温度での使用においても、フィルターにおける香喫味成分の濾過性を低減することができる。
【0056】
本発明に係る非燃焼型加熱喫煙物品の使用方法は、本発明に係る非燃焼型加熱喫煙物品のたばこ充填物を230℃以下に加熱すれば、それ以外の使用における方法は特に限定されない。前記たばこ充填物の加熱温度は230℃以下であり、220℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがさらに好ましい。前記たばこ充填物の加熱温度の範囲の下限は特に限定されないが、例えば22℃以上であることができ、100℃以上であることもできる。
【0057】
[非燃焼型加熱喫煙システム]
本発明に係る非燃焼型加熱喫煙システムは、本発明に係る非燃焼型加熱喫煙物品と、前記たばこ充填物を加熱する加熱装置と、を含む。前記非燃焼型加熱喫煙システムは、本発明に係る非燃焼型加熱喫煙物品を備えるため、加熱装置によりたばこ充填物を230℃以下に加熱する場合にも、フィルターにおける香喫味成分の濾過性を低減することができる。本発明に係る非燃焼型加熱喫煙システムは、本発明に係る非燃焼型加熱喫煙物品と、前記加熱装置とを備えれば特に限定されず、他の構成を有していてもよい。
【0058】
本発明に係る非燃焼型加熱喫煙システムは、例えば非燃焼型加熱喫煙物品がたばこ充填物を加熱する加熱機構を含まない場合に適用できる。一例として、該非燃焼型加熱喫煙システムは前記第二の実施形態に係る非燃焼型加熱喫煙物品に適用できる。例えば、図3に示される非燃焼型加熱喫煙システムは、前記第二の実施形態に係る非燃焼型加熱喫煙物品300と、非燃焼型加熱喫煙物品300のたばこ含有セグメントを外側から加熱する加熱装置301とを備える。図3(a)は非燃焼型加熱喫煙物品300を加熱装置301に挿入する前の状態を示し、図3(b)は非燃焼型加熱喫煙物品300を加熱装置301に挿入して加熱する状態を示す。図3に示される加熱装置301は、ボディ302と、ヒーター303と、金属管304と、電池ユニット305と、制御ユニット306とを備える。ボディ302は筒状の凹部307を有し、凹部307の内側側面であって、凹部307に挿入される非燃焼型加熱喫煙物品300のたばこ含有セグメントと対応する位置に、ヒーター303及び金属管304が配置されている。ヒーター303は電気抵抗によるヒーターであることができ、温度制御を行う制御ユニット306からの指示により電池ユニット305より電力が供給され、ヒーター303の加熱が行われる。ヒーター303から発せられた熱は、熱伝導度の高い金属管304を通じて非燃焼型加熱喫煙物品300のたばこ含有セグメントへ伝えられる。なお、図3(b)においては模式的に図示しているため、非燃焼型加熱喫煙物品300の外周と金属管304の内周との間に隙間があるが、実際は、熱を効率的に伝達する観点から非燃焼型加熱喫煙物品300の外周と金属管304の内周との間に隙間は無い方が望ましい。なお、加熱装置301は非燃焼型加熱喫煙物品300のたばこ含有セグメントを外側から加熱するが、内側から加熱するものであってもよい。
【0059】
加熱装置によるたばこ充填物の加熱温度は230℃以下であり、220℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがさらに好ましい。前記たばこ充填物の加熱温度の範囲の下限は特に限定されないが、例えば22℃以上であることができ、100℃以上であることもできる。
【実施例
【0060】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0061】
[実施例1]
(たばこ充填物の調製)
バーレー種(日本)50mg及び黄色種(日本)50mgからなるたばこ刻100mgに対して、エアロゾル生成基材としてのグリセリン100mgを添加し混合することで、たばこ充填物のサンプルを調製した。なお、たばこ刻としては、乾燥したたばこ葉を予め家庭用ミキサーにて粉砕した後、ふるい(商品名:AS200、Retch製)を用いて、amplitude-1.5mm/gの条件下において2分間振動させて得られる、ふるい目径0.5mm以下のものを使用した。
【0062】
(フィルターでの濾過性評価)
前記たばこ充填物のサンプルを、図1に示す非燃焼型加熱喫煙物品(特開2014-76065参照)の専用のポッドに張り付けるように設置し、22℃、湿度60%の条件下で2日以上蔵置した。その後、前記ポッドを非燃焼型加熱喫煙物品の加熱装置に装着し、喫煙試験を行った。具体的には、非燃焼型加熱喫煙物品の吸口部に喫煙機(商品名:RM-26、Borgwaldt製)を接続し、加熱装置によりポッド内の前記サンプルを2分間予備加熱した。なお、たばこ充填物の加熱温度(安定稼働時)は、熱電対を用いた事前の計測により、160~170℃程度であることを確認している。次に、所定の喫煙条件(55ml/2s、喫煙間隔30s)の下、15puffを行った。その間、吸口部に設けられたフィルターを通過した成分を、ケンブリッジパッド(44mmφ、Borgwaldt製)を用いて捕集した。なお、フィルターには、3.5Y35000のアセテートフィルター(通気抵抗:284mmH2O/120mm、トリアセチン含有量:9.0質量%、フィルター長さ:14mm)を用いた。アセテートフィルターに捕捉された各成分の量(フィルター捕捉量)と、アセテートフィルターを通過してケンブリッジパッドに捕集された各成分の量(フィルター通過量)から、以下の式(1)に基づいて各成分のフィルターにおける濾過率を算出した。
【0063】
式(1)
濾過率(%)=(フィルター捕捉量)/(フィルター捕捉量+フィルター通過量)×100
【0064】
本実施例では、香喫味成分の代表成分として測定が容易なニコチンを選択した。また、濾過の指標となる成分として、揮発性が低いグリセリンを選択した。アセテートフィルターに捕捉された成分、及びケンブリッジパッドに捕集された成分は、メタノール溶媒で40分間振とう抽出し、GC-FIDを用いて定量した。
【0065】
本実施例では濾過の指標値として、以下の式(2)で示される濾過増加指標値を用いた。
【0066】
式(2)
濾過増加指標値=(ニコチン濾過率(%))/(グリセリン濾過率(%))
【0067】
グリセリンは蒸気圧が低いため、加熱気化後はほぼ粒子相に存在すると推測され、フィルター内部での捕捉機構は機械的濾過に支配される。グリセリンのエアロゾル粒子からニコチンが揮発しない場合、ニコチンを含むエアロゾル粒子の機械的濾過が主となり、ニコチンのガス成分がフィルターの表面や細孔に吸着する吸着濾過はほとんど生じない。この場合、ニコチン濾過率とグリセリン濾過率は同等となり、濾過増加指標値の値は約1となる。一方、グリセリンのエアロゾル粒子からニコチンが揮発する場合、ニコチンを含むエアロゾル粒子の機械的濾過に加えて、エアロゾル粒子から揮発したニコチンのガス成分がフィルターの表面や細孔に吸着する吸着濾過が生じる。この場合、ニコチン濾過率はグリセリン濾過率よりも大きな値となるため、濾過増加指標値の値は1より有意に大きくなる。後述する表2及び図4に示されるように、濾過増加指標値と香喫味効果とは相関関係にあり、濾過増加指標値が1.35以下となることで使用者が香喫味成分を強く感じることが示されたため、濾過増加指標値が1.35以下であることにより、フィルターにおける香喫味成分の濾過性が有意に低減され、使用者に香喫味成分が十分な量供給されると判断した。
【0068】
(エアロゾルのpHの測定)
エアロゾルのpHの測定は、超純水10mlを添加したインピンジャーに、フィルターを通過する前の30℃以下のエアロゾル10~15mgを直接捕集させた後、溶液のpHをpHメーター(商品名:LAQUA,HORIBA Ltd.製)を用いて測定することで行った。
【0069】
フィルターにおけるニコチン及びグリセリンの濾過率、濾過増加指標値、並びにエアロゾルのpHの結果を表1に示す。
【0070】
[実施例2~9、比較例1~4]
たばこの種類及び量を表1に示されるように変更した以外は、実施例1と同様にたばこ充填物のサンプルを調製し、ニコチン及びグリセリンの濾過率、濾過増加指標値、並びにエアロゾルのpHの測定並びに評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示されるように、エアロゾルのpHが7.8以下である実施例1~9では、濾過増加指標値が1.35以下となり、フィルターにおける香喫味成分の濾過性が有意に低減され、使用者に香喫味成分が十分な量供給されることが分かった。また、たばことしてはオリエント種、黄色種が好ましいことが分かった。一方、エアロゾルのpHが7.8を超える比較例1~4では、濾過増加指標値が1.35を超えており、フィルターにおける香喫味成分の濾過性が高いことが分かった。この場合、フィルターにおけるエアロゾル粒子の機械的濾過に加え、エアロゾル粒子から揮発した香喫味成分のガスがフィルター表面に吸着して捕捉される吸着濾過が多く生じていると考えられる。
【0073】
[実施例10]
バーレー種(日本)からなるたばこ刻100mgに対して、エアロゾル生成基材としてのグリセリン100mgと、有機酸としてのレブリン酸10mgとを添加し混合することで、たばこ充填物のサンプルを調製した。それ以外は、実施例1と同様に、ニコチン及びグリセリンの濾過率、濾過増加指標値、並びにエアロゾルのpHの測定、評価を行った。また、以下の方法により、酸(有機酸、無機酸)のグリセリンへの溶解性及び香喫味効果の評価を行った。結果を表2に示す。
【0074】
(酸のグリセリンへの溶解性評価)
25℃における酸10mgのグリセリン1000mgへの可溶性を目視により評価した。評価は、「1」を溶けない、「5」を全て溶解する、として、1~5の5段階で行った。ここでは、3以上の評価を「可溶」と判断した。
【0075】
(香喫味効果の評価)
前記フィルターでの濾過性評価と同様の条件で、5名のパネルにより喫煙を行い、香喫味の効果について官能評価を1~7の7段階により実施した(1:全く感じない、7:非常に強い)。5名のパネルの評価の平均値を、香喫味効果値とした。なお、たばこの原料が異なると、全体的な香喫味のバランスが大きく異なり、香喫味への効果を評価、比較することが難しいため、前記実施例1~9及び比較例1~4では本評価を実施しなかった。ここでの香喫味効果値とは葉たばこに由来する味香りを全て含めて評価した際の官能評価結果を示す。
【0076】
[実施例11、比較例5~8]
酸(有機酸、無機酸)の種類を表2に示されるように変更した以外は、実施例10と同様にたばこ充填物のサンプルを調製し、濾過増加指標値及びエアロゾルのpHの測定、並びに、酸のグリセリンへの溶解性及び香喫味効果の評価を行った。結果を表2に示す。なお、参考として酸を添加しない比較例1の結果を合わせて示す。
【0077】
【表2】
【0078】
表2に示されるように、有機酸としてのレブリン酸又は安息香酸を添加することでエアロゾルのpHを7.8以下にした実施例10、11では、濾過増加指標値が1.35以下となり、フィルターにおける香喫味成分の濾過性が有意に低減され、香喫味が強いことが分かった。レブリン酸、安息香酸は、沸点が300℃以下、第一酸解離定数が4.0~5.0、沸点(℃)の値と第一酸解離定数の値との積が1000~1200であり、また25℃において固体であり、エアロゾル生成基材であるグリセリンに可溶であるため、エアロゾルのpHを7.8以下にすることができたと考えられる。
【0079】
一方、酸を添加しない、或いはノナデカン酸、リン酸、ピルビン酸又はアジピン酸を添加した比較例1、5~8では、エアロゾルのpHは7.8を超え、濾過増加指標値が1.35を超えた値となり、香喫味が弱いことが分かった。これらの酸は、沸点、第一酸解離定数、沸点(℃)の値と第一酸解離定数の値との積のいずれかが前記範囲内でない、或いは25℃において固体でない又はグリセリンへの溶解性が低いため、効果が見られなかったと考えられる。
【0080】
図5に、実施例1~11、比較例1~8における、エアロゾルのpHと、濾過増加指標値との関係をプロットしたグラフを示す。図5に示されるように、エアロゾルのpHと、濾過増加指標値とは高い相関関係にあることが分かる。
【0081】
[実施例12]
フィルターとして、通気抵抗が176mmH2O/120mm、トリアセチン含有量が9.0質量%、巻円周24.1mmのアセテートフィルターを用いた。トリアセチンのフィルターへの添加は、マイクロシリンジを用いてトリアセチンをフィルター内部中心に1点添加し、1時間以上静置することで実施した。それ以外は、実施例1と同様にニコチン及びグリセリンの濾過率、並びに濾過増加指標値の測定、評価を行った(エアロゾルのpH:7.61)。また、本実施例ではエアロゾル粒子に含有される香喫味成分の割合の指標値として、以下の式(3)で示される香喫味の含有指標値を用いた。香喫味の含有指標値が高いと、フィルターを通過したグリセリンに対するニコチンの割合が高いことから、ニコチンを代表とした香喫味成分の割合が高くなる。結果を表3に示す。
【0082】
式(3)
香喫味の含有指標値=(100-ニコチン濾過率(%))/(100-グリセリン濾過率(%))
【0083】
[実施例13~16]
フィルターの通気抵抗を表3に示される値に変更した以外は、実施例12と同様にニコチン及びグリセリンの濾過率、濾過増加指標値、並びに香喫味の含有指標値の測定、評価を行った。結果を表3に示す。
【0084】
[実施例17~20]
トリアセチン9.0質量%の代わりに、プロピレングリコールを表3に示される質量割合で含むフィルターを用いた以外は、実施例12と同様にニコチン及びグリセリンの濾過率、濾過増加指標値、並びに香喫味の含有指標値の測定、評価を行った。結果を表3に示す。
【0085】
[実施例21]
フィルターにトリアセチンを添加しなかった以外は、実施例12と同様にニコチン及びグリセリンの濾過率、濾過増加指標値、並びに香喫味の含有指標値の測定、評価を行った。結果を表3に示す。
【0086】
【表3】
【0087】
表3に示されるように、フィルターの通気抵抗に関して、通気抵抗が250~450mmH2O/120mmにおいて、香喫味の含有指標値が高いことが分かった。また、フィルターにおけるトリアセチン又はプロピレングリコールの質量割合は低い方が好ましく、具体的には9.0質量%以下であることが好ましいことが分かった。
【0088】
[参考例1]
比較例1と同様にたばこ充填物のサンプルを調製した。該サンプルを図1に示す非燃焼型加熱喫煙物品専用のポッドに、該ポッドの底部に通気孔(5mmφ)を開孔した後で張り付けるように設置し、22℃、湿度60%の条件で2日以上蔵置した。その後、図6に示されるように、ポッド600内部のたばこ充填物(不図示)の加熱温度が175℃となるように、ポッド600を、セラミックヒーター601(4.0mmφ)を有する加熱装置602を用いて加熱した。加熱部603を有するセラミックヒーター601はSUS製の治具604内に配置され、加熱装置602には通気孔としての開孔605(0.5mmφ)が設けられている。たばこ充填物の加熱温度は熱電対を用いて確認し、たばこ充填物の温度が設定温度(175℃)となるように加熱装置602の出力を調整した。前記加熱温度において実施例1と同様にフィルターでの濾過性評価を行った。結果を表4に示す。
【0089】
[参考例2~5]
たばこ充填物の加熱温度を表4に示されるように変更した以外は、参考例1と同様にフィルターでの濾過性評価を行った。結果を表4に示す。
【0090】
【表4】
【0091】
表4に示されるように、参考例5のように、たばこ充填物の加熱温度が230℃を超える場合には、濾過増加指標値の値は1.0であり、フィルターでのエアロゾル粒子の機械的濾過が支配的である。一方、参考例1~4に示されるように、たばこ充填物の加熱温度が230℃以下では、エアロゾルのpHは参考例5と大きくは異ならないが、濾過増加指標値の値は1.35より大きく、フィルターでのエアロゾル粒子の機械的濾過に加え、エアロゾル粒子から揮発した香喫味成分のガスがフィルター表面に吸着して捕捉される吸着濾過が多く生じることが理解できる。これは、230℃以下の温度でたばこ充填物が加熱される場合、たばこに含まれる成分の熱分解はわずかにしか生じず、エアロゾル粒子中に含まれる熱分解物の量が少なくなるためである。したがって、この場合、エアロゾル粒子からの香喫味成分の揮発を抑制する必要があり、本発明を有効に適用できる。
本発明は以下の実施態様を含む。
[1]たばこと、エアロゾル生成基材と、を含むたばこ充填物と、
前記たばこ充填物よりも下流に配置されたフィルターと、
を含む非燃焼型加熱喫煙物品であって、
前記たばこ充填物が、pHが7.8以下のエアロゾルを与えるたばこ充填物である非燃焼型加熱喫煙物品。
[2]前記たばこ充填物の加熱温度が230℃以下である[1]に記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
[3]前記たばこが、オリエント種及び黄色種の少なくとも一方を含む[1]又は[2]に記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
[4]前記たばこ充填物が、さらに有機酸を含む[1]から[3]のいずれかに記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
[5]前記有機酸の沸点が300℃以下である[4]に記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
[6]前記有機酸の第一酸解離定数が4.0~5.0である[4]又は[5]に記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
[7]前記有機酸の沸点(℃)の値と、前記有機酸の第一酸解離定数の値との積が、1000~1200である[4]から[6]のいずれかに記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
[8]前記有機酸が、25℃において固体である[4]から[7]のいずれかに記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
[9]前記有機酸が、25℃において前記エアロゾル生成基材に可溶である[4]から[8]のいずれかに記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
[10]前記有機酸が、安息香酸及びレブリン酸の少なくとも一方を含む[4]から[9]のいずれかに記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
[11]前記フィルターの通気抵抗が250~450mmH O/120mmである[1]から[10]のいずれかに記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
[12]前記フィルターに含まれる可塑剤の量が9.0質量%以下である[1]から[11]のいずれかに記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
[13]前記可塑剤がトリアセチンである[12]に記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
[14]前記フィルターに含まれる保湿剤の量が9.0質量%以下である[1]から[13]のいずれかに記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
[15]前記保湿剤がプロピレングリコールである[14]に記載の非燃焼型加熱喫煙物品。
[16][1]から[15]のいずれかに記載の非燃焼型加熱喫煙物品のたばこ充填物を230℃以下に加熱することを含む、非燃焼型加熱喫煙物品の使用方法。
[17][1]から[15]のいずれかに記載の非燃焼型加熱喫煙物品と、
前記たばこ充填物を加熱する加熱装置と、
を含む非燃焼型加熱喫煙システム。
[18]前記加熱装置による前記たばこ充填物の加熱温度が230℃以下である[17]に記載の非燃焼型加熱喫煙システム。
【符号の説明】
【0092】
100 非燃焼型加熱喫煙物品
101 バッテリー
102 たばこ充填物
103 ポッド
104 ヒーター
105 マウスピース
106 フィルター
200 非燃焼型加熱喫煙物品
201 たばこ含有セグメント
202 マウスピースセグメント
203 冷却セグメント
204 センターホールセグメント
205 フィルターセグメント
206 たばこ充填物
207 ラッパー
208 筒状部材
209 穿孔
210 充填層
211 第一のインナープラグラッパー
212 フィルター
213 第二のインナープラグラッパー
214 アウタープラグラッパー
215 マウスピースライニングペーパー
300 非燃焼型加熱喫煙物品
301 加熱装置
302 ボディ
303 ヒーター
304 金属管
305 電池ユニット
306 制御ユニット
307 凹部
600 ポッド
601 セラミックヒーター
602 加熱装置
603 加熱部
604 治具
605 開孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6