(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】燃料電池プレート
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0258 20160101AFI20220815BHJP
【FI】
H01M8/0258
(21)【出願番号】P 2021517904
(86)(22)【出願日】2019-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2019062920
(87)【国際公開番号】W WO2019238360
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2020-12-09
(31)【優先権主張番号】102018209441.1
(32)【優先日】2018-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591006586
【氏名又は名称】アウディ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】AUDI AG
(73)【特許権者】
【識別番号】591037096
【氏名又は名称】フオルクスワーゲン・アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】カピッツァ,ラース
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-063272(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102013214708(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016213057(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の活性領域に反応物を供給するための燃料電池プレート(1)であって、少なくとも1つの入口(2)および少なくとも1つの出口(3)を有するとともに、それらの間に配置された流れ場(4)を有し、前記流れ場(4)が、前記プレート(1)の第1の表面(5)上に形成されるとともに複数のフローガイド(6)を有しており、
前記フローガイド(6)の少なくとも一部が、ガイドブレード、ガイドプレート、またはベーンの形態の偏向要素(7)として形成され、
前記複数のフローガイド(6)が、燃料電池プレートの縁部(8)に対して複数の列(9)状に配置され、
前記偏向要素(7)が、入口側に形成された入口列(10)に少なくとも部分的に配置され、か
つ、出口側に形成された出口列(11)に少なくとも部分的に配置され、前記偏向要素(7)が、前記燃料電池プレートの縁部(8)に対して傾斜角αで配置されており
、
前記入口列(10)に隣接する列
(15)およ
び前記出口列(11)に隣接する列
(16)のうち少なくとも一方の列にあるフローガイド(6)が、偏向要素(7)として少なくとも部分的に形成され、前記偏向要素(7)が、前記燃料電池プレートの縁部(8)に対して傾斜角βで配置され、前記傾斜角αと前記傾斜角βとの間の傾斜角差が、45°~100°であることを特徴とする、燃料電池プレート(1)。
【請求項2】
前記複数のフローガイド(6)が、前記燃料電池プレートの縁部(8)に対して斜めに延びるグリッドを形成するように、前記複数の列(9)が互いに交互にオフセットして配置されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池プレート(1)。
【請求項3】
前記偏向要素(7)の第1の偏向要素(12)が、同じ列内で前記偏向要素(7)の第2の偏向要素(13)に隣接するように配置され、前記第1の偏向要素(12)の傾斜角α1が、
前記第2の偏向要素(13)の傾斜角α2よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池プレート(1)。
【請求項4】
偏向要素(7)として形成されていない前記フローガイド(6)の少なくとも一部が、円形またはほぼ円形、楕円形、または涙滴形の断面積を有するガイド要素(14)として形成され
ることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の燃料電池プレート(1)。
【請求項5】
前記偏向要素(7)の第1の偏向要素(12)が、同じ列内で前記偏向要素(7)の第2の偏向要素(13)に隣接するように配置され、前記第1の偏向要素(12)は、
前記第2の偏向要素(13)よりも1つの延在方向に短く形成されることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の燃料電池プレート(1)。
【請求項6】
前記入口列(10)の前記偏向要素(7)が、第1の方向に沿って延在部が徐々に長くなるように形成される一方、前記出口列(11)の前記偏向要素(7)が、前記第1の方向に沿って延在部が徐々に短くなるように形成されることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の燃料電池プレート(1)。
【請求項7】
第2の流れ場が、前記第1の表面
(5)とは反対側の第2の表面上に形成されるとともに、少なくとも1つの第2の入口および少なくとも1つの第2の出口を有し、複数のフローガイド(6)が前記第2の表面上に適用され、それらのフローガイドが、偏向要素(7)として少なくとも部分的に形成されることを特徴とする請求項1~
6のいずれかに記載の燃料電池プレート(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の活性領域に反応物を供給するための燃料電池プレートに関し、少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口を有するとともに、それらの間、したがって入口と出口との間に配置された流れ場を有しており、流れ場が、プレートの第1の表面上に形成されるとともに、複数のフローガイドを有する、燃料電池プレートに関する。このような燃料電池プレートは、バイポーラプレートとしても知られており、関連する反応物を表面全体に最も均一に分布させることを目的とする。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、反応物を分配するために扇形に配置されたチャネルを有する燃料電池プレートを示す。そのような指向性のチャネル配置の不利な点は、燃料電池の活性領域に向かって反応物の良好な均一な分布を達成するために、チャネルが長い延長部を必要とすることである。しかしながら、これは、同時に複雑な形状を有する燃料電池プレート全体に高い圧力差を引き起こし、それに関連して高い製造コストをもたらす。
【0003】
さらに、例えばノブ(knob)の形態などの、燃料電池プレートの開放分配構造のアプローチもある。ただし、それらの構造では十分な均一分布がまだ達成されておらず、高い圧力差と組み合わせてのみ使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許出願公開第102009016263号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、上記の不利な点が低減されるように、冒頭で述べた種類の燃料電池プレートを改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、特に、フローガイドの少なくとも一部がガイドブレード、ガイドプレート、またはベーンの形態の偏向要素として形成されるという点で、請求項1に記載の特徴を有する燃料電池プレートによって達成される。本発明の便宜的な改良を有する有利な実施形態は、従属請求項に特定されている。
【0007】
これらの開放的であると同時に指向性の分配構造は、燃料電池の活性領域への反応物の均一な分配を可能にし、同時に、公知の指向性の分配構造と比較して設置スペースおよび重量を節約する。偏向要素は、好ましくは先細状になるように設計されている。さらに、複数の入口および出口を設けることもできる。その場合、それらの出口は、好ましくは、バイポーラプレートの出口側プレート縁部全体に分散して配置され、一方、それらの入口は、入口側プレート縁部上の領域(sections)にのみ形成される。
【0008】
燃料電池プレートの簡単な製造を可能にし、燃料電池プレートへの反応物の最適な導入を可能にするために、フローガイドは、燃料電池プレートの縁部に対して列(column)状に配置され、偏向要素は、少なくとも入口側に形成された入口列の領域に配置される。この文脈において、入口に隣接して配置されたフローガイドが偏向要素として形成される場合、特に好ましい。
【0009】
燃料電池の活性領域への反応物の均一な流出を可能にするために、フローガイドは、燃料電池プレートの縁部に対して列状に配置され、偏向要素は、少なくとも出口側に形成された出口列の領域に配置される。この文脈において、出口に隣接して配置されたそれらのフローガイドが偏向要素として形成されることが好ましい。
【0010】
第1の表面の全体または少なくとも大部分にわたって反応物を誘導するために、フローガイドが燃料電池プレートの縁部に対して斜めに延在するグリッドを形成するように、それらの列が互いに交互にオフセットして配置されることが好ましい。換言すれば、グリッドは傾斜した複数の行を有する。
【0011】
燃料電池プレート内の反応物の誘導を改善するために、特に、複数の偏向要素が、燃料電池プレートの縁部に対して傾斜角αを有するように、すなわち傾斜角αで、特に扇形に広がるように配置されることが提供される。
【0012】
この文脈において、第1の偏向要素の傾斜角α1が第2の偏向要素の傾斜角α2よりも小さい場合が特に好ましい。第1の偏向要素が同じ列内の第2の偏向要素に隣接して配置される場合、特に有利である。さらに、第3の偏向要素はまた、第2の偏向要素に隣接する同じ列に配置することができ、その傾斜角α3は、α2よりも大きく、したがって、α1よりも大きい。特に、入口列の各偏向要素が、それに隣接する偏向要素の1つよりも小さい傾斜角αを有する場合が好ましい。逆に、出口列の第1の偏向要素が、それに隣接する第2の偏向要素の1つよりも大きい傾斜角αを有する場合が好ましい。特に、出口列の各偏向要素が、それに隣接する偏向要素の1つよりも大きな傾斜角αを有する場合、それは合理的である。
【0013】
燃料電池プレートのより安価でより簡単な製造を可能にするために、フローガイドの別の部分が提供され、それは、円形またはほぼ円形、または楕円形または涙滴形の断面積を有するガイド要素として形成される。入口列と出口列との間の複数の列に配置されたフローガイドは、そのようなガイド要素として有利に形成される。ガイド要素は、好ましくは、入口列および出口列からの距離が大きくなるほど、断面積がより規則的かつより丸く形成される。ガイド要素の直径または幅または長さは、好ましくは少なくとも1つの入口からの距離が大きくなるほど小さくなる。さらに、入口列および/または出口列のフローガイドの一部は、そのようなガイド要素として形成され、特に、それらは入口の1つおよび/または出口の1つに隣接して配置されていないものである。
【0014】
さらに、第1の偏向要素は、第2の偏向要素よりも延在方向に短く形成されることが好ましい。これに関連して、入口列の偏向要素が第1の方向に沿って延在部が長くなるように形成され、一方、出口列の偏向要素が第1の方向に沿って延在部が短くなるように形成されることが特に好ましい。
【0015】
反応物の流れをさらに良好に分配できるようにするために、特に、入口列に隣接する列および/または出口列に隣接する列内のフローガイドが、偏向要素として少なくとも領域(sections)内に形成され、それらの偏向要素は、燃料電池プレートの縁部に対して傾斜角βを有する、すなわち傾斜角βで配置される。入口列または出口列の傾斜角αと、傾斜角βとの間の傾斜角差は、好ましくは45°~100°、特に好ましくは60°~90°である。
【0016】
別の設計では、入口列に隣接する列および/または出口列に隣接する列内のフローガイドは、ガイド要素として少なくとも領域内に形成され、それらの要素は、燃料電池プレートの縁部に対して傾斜角βで配置される。入口列または出口列の傾斜角αと傾斜角βとの間の傾斜角差は、好ましくは45°~100°、特に好ましくは60°~90°である。
【0017】
様々な反応物を伝達できるようにするために、第1の表面とは反対側の燃料電池プレートの第2の表面上に、少なくとも1つの第2の入口および少なくとも1つの第2の出口を有する第2の流れ場が形成され、複数のフローガイドが第2の表面に適用され、それらのフローガイドが偏向要素として少なくとも部分的に形成される場合、燃料電池スタックのコンパクトな構造に有利である。燃料電池プレートの第1の表面の上記の特徴の個々の特徴部はまた、燃料電池プレートの第2の表面にも実装され得る。
【0018】
特に製造が容易な改良では、第2の表面は、燃料電池プレートの第1の表面の鏡像となるように設計される。別の設計では、第2の表面の偏向要素およびガイド要素の配置は、第1の表面の配置とは異なり得る。第2の表面は、例えば、第1の表面と比較して異なる位置にある第2の入口または第2の出口に適合させてもよく、または第1の表面の反応物とは異なる第2の表面の反応物の異なる流れ挙動に適合させてもよい。
【0019】
本発明のさらなる利点、特徴、および詳細は、特許請求の範囲、好ましい実施形態の以下の説明、および図面に基づいた結果として生じる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1の実施形態による燃料電池プレートの概略図である。
【
図2】第2の実施形態による燃料電池プレートの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、燃料電池の活性領域に反応物を供給するための燃料電池プレート1を示し、そのプレートは、複数の入口2および複数の出口3を有し、その間に位置する流れ場4を有しており、その流れ場4は、第1の表面5上に形成されるとともに、複数のフローガイド6を有する。反応物をより均一に分布させるために、フローガイド6の一部は、ガイドブレードの形態の偏向要素7として形成されている。
【0022】
フローガイド6は、燃料電池プレートの縁部8に対して列9に配置され、それらの列9は、フローガイドが第1の表面5上で反応物をよりよく分配するために、複数のフローガイド6が燃料電池プレート8に対して斜めに延びるグリッドを形成するように、互いに交互にオフセットして配置される。偏向要素7が、入口側に形成された入口列10の領域に配置され、入口2に隣接して配置されたそれらのフローガイド6は、偏向要素7として形成される。さらに、偏向要素7はまた、出口側に形成された出口列11内の領域に配置され、出口3に隣接して配置されたそれらのフローガイドは、偏向要素7として形成される。
【0023】
反応物の改善された、より均一な誘導のために、偏向要素7は、燃料電池プレート縁部8に対して傾斜角αを有するかまたは傾斜角αで配置される。
図1において、入口列10の偏向要素7は、入口列10の第1の偏向要素12からの距離が増加するに従い、プレート縁部8に対して減少する傾斜角αを有することは明らかである。言い換えると、入口列10の第1の偏向要素12の傾斜角α
1は、それに隣接する入口列10の第2の偏向要素13の傾斜角α
2よりも大きい。さらに、入口列10内で、偏向要素7のサイズ勾配が、入口列10の最上部の第1の偏向要素7からの距離の増加とともに存在することが分かる。すなわち、入口列10の第1の偏向要素12は、それに隣接する第2の偏向要素13よりもその長手方向の延在部に関して短く形成される。
【0024】
出口列11の場合、その挙動は逆になる。すなわち、第1の出口3すなわち出口列11の最上部の第1の偏向要素17からの距離が増加するに従い、出口列11の偏向要素7は、それに隣接する偏向要素7よりもその長手方向の延在部に関して短く形成される。同時に、プレート縁部8に対する傾斜角αは、出口列11の第1の偏向要素17からの距離が増加するにつれて着実に増加する。
【0025】
入口列10と出口列11との間で、フローガイド6は、好ましくは、円形の断面積を有するガイド要素14として形成される。入口2に隣接して配置されていない入口列10のフローガイド6もガイド要素14として形成されている。入口列10およびそれに隣接する列9では、入口2からより離れたガイド要素14ほど、より小さな直径を有する。すなわち、流れ構造はここで意図的に「縮小」されて、流れを第1の表面5の全体または少なくとも大部分に分配する。さらに、
図1から、フローガイド6はまた、出口列11内にガイド要素14として、すなわち、出口3の1つに隣接して配置されていないものとして部分的に形成されているのが分かる。
【0026】
図1の燃料電池プレート1は、好ましくは、バイポーラプレートとして形成され、すなわち、第1の表面5の反対側の第2の表面(図示せず)に、少なくとも1つの第2の入口および少なくとも1つの第2の出口を有する第2の流れ場が形成される。偏向要素7またはガイド要素14として部分的に形成された複数のフローガイド6が、第2の表面に適用される。燃料電池プレート1の第2の表面は、ここでは第1の表面5と同じように形成される。
【0027】
図2は、第2の燃料電池プレート1を示しており、これは、フローガイド6が、入口列10に隣接する第3の列15および出口列11に隣接する第4の列16において部分的に偏向要素7として形成されているという点でのみ、
図1に示されるものと異なる。代替的に、それらは、涙滴形の断面積を有するガイド要素14として形成することもできる。さらに、偏向要素7またはガイド要素14は、燃料電池プレート縁部8に対して傾斜角βで配置されている。
【0028】
最後に、
図1および2に示される燃料電池プレート1は、最適化された反応物の流れ挙動によって区別され、したがって、活性領域全体に亘って反応物のより均一な分布を可能にすることに留意されたい。
【符号の説明】
【0029】
1…燃料電池プレート
2…入口
3…出口
4…流れ場
5…第1の表面
6…フローガイド
7…偏向要素
8…燃料電池プレート縁部
9…列(column)
10…入口列(inlet column)
11…出口列(outlet column)
12…第1の偏向要素
13…第2の偏向要素
14…ガイド要素
15…第3の列
16…第4の列
17…第1の偏向要素(出口列)