(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】関節式機構およびその機構を備える関節式指向システム
(51)【国際特許分類】
H01Q 3/08 20060101AFI20220815BHJP
H01Q 1/12 20060101ALN20220815BHJP
H01Q 1/28 20060101ALN20220815BHJP
【FI】
H01Q3/08
H01Q1/12 B
H01Q1/28
(21)【出願番号】P 2021520352
(86)(22)【出願日】2018-10-17
(86)【国際出願番号】 ES2018070678
(87)【国際公開番号】W WO2020079290
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】517174522
【氏名又は名称】エアバス ディフェンス アンド スペース,エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレスポ メネンデス,カルロス
(72)【発明者】
【氏名】ガルセス デ マルシーリャ ロドリゲス,アレハンドロ
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第1342300(US,A)
【文献】米国特許第9752718(US,B1)
【文献】特開2005-040919(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0354747(US,A1)
【文献】国際公開第2016/066395(WO,A1)
【文献】特表2012-531144(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105156848(CN,A)
【文献】特開2013-146059(JP,A)
【文献】特開平11-097919(JP,A)
【文献】特開2001-208157(JP,A)
【文献】特開平11-348899(JP,A)
【文献】特開平04-266203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q
B25J
F16C
H01Q
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の球形ジョイント(3)、第2の球形ジョイント(4)、第3の球形ジョイント(5)、第1のレバー(6)、第2のレバー(7)、および第3のレバー(8)を含む関節式機構(1)であって、
前記第1の球形ジョイント(3)および前記第2の球形ジョイント(4)は、前記第1のレバー(6)によって連結され、前記第1のレバー(6)は第1の突出部分(9)を備え、前記第1の球形ジョイント(3)および前記第3の球形ジョイント(5)は、前記第2のレバー(7)によって連結され、前記第2のレバー(7)は、前記第1の突出部分(9)が突出する方向と反対方向に突出する第2の突出部分(10)を備え、
前記第2の球形ジョイント(4)および前記第3の球形ジョイント(5)は、前記第1のレバー(6)の長手方向軸Yと前記第2のレバー(7)の長手方向軸Xが直交するように、前記第3のレバー(8)によって連結されている、ことを特徴とする関節式機構。
【請求項2】
基部プラットフォーム(11)、及び、前記基部プラットフォーム(11)に対して移動可能な移動プラットフォーム(12)、並びに、
前記基部プラットフォーム(11)と前記移動プラットフォーム(12)とを接合する2つの関節式ヒンジ手段であり、該ヒンジ手段の動きがアクチュエータ(14,14’)によって実行される、2つの関節式ヒンジ手段(13)
を備えた関節式指向システム(2)において、
請求項1に記載の関節式機構(1)を更に備えており、その関節式機構にあっては、
前記第1のレバー(6)が前記第1の突出部分(9)によって前記移動プラットフォーム(12)に取り付けられ、前記第2のレバー(7)が前記第2の突出部分(10)によって前記基部プラットフォーム(11)に取り付けられている、ことを特徴とする関節式指向システム。
【請求項3】
前記アクチュエータ(14,14’)は、負荷が前記移動プラットフォーム(12)にかかったときに生じるところの、前記移動プラットフォーム(12)と前記基部プラットフォーム(11)との間の負荷経路(17,17’,17”)から外れた位置に配置されている、請求項2に記載の関節式指向システム。
【請求項4】
前記アクチュエータが回転アクチュエータ(15)である、請求項2又は3に記載の関節式指向システム。
【請求項5】
前記アクチュエータがリニアアクチュエータ(16)である、請求項2又は3に記載の関節式指向システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節式機構および指向システムの分野に関し、より具体的には、アンテナ指向システムに関する。
【背景技術】
【0002】
航空宇宙産業では、通信衛星に反射アンテナを組み込むのが一般的である。このような反射アンテナの指向用機構を使用することも一般的である。
【0003】
特許文献1は、アンテナ装置の支持に関するものである。衛星放送を受信するためのアンテナ装置を支持するための支持基台は、第1の基台と第2の基台とを備える。水平方向位置検出手段は、第1の基台に設けられ、第1の基台は、第2の基台に設けられたボールベアリングから延びるシャフト(支軸)によって支持されている。第1および第2のカム手段および制御手段は、位置検出手段からの検出出力に応答して第1および/または第2のモータを駆動して、第1の基台を水平に保つために使用される。このシステムでは、中央の枢支点は球形の関節であり、アクチュエータは主負荷経路にある。
【0004】
特許文献2は、「Gear mechanism(ギヤ機構)」に言及する。第1の実施形態では、歯車機構は、複数のジョイントの形態を取り、接続要素は、並進的な方法で、それらの角度に関して、別の要素に対して調整可能である。第2の実施形態では、簡略化された形態の歯車機構が提供され、この形態は接続要素がそれらの角度位置に関して単に調整可能である形態であり、すなわち、2つの比較的偏心させて取り付けられた接続要素間の動きを伝達するための歯車機構が提供され、歯車機構は、接続要素間に配置されたベアリング要素と、固定寸法のスペーシング要素であって、接続要素がスペーシング要素およびベアリング要素上に支持されながら、相互に関連する所望の角度位置をとるように制御された方法でベアリング要素からのある距離に接続要素間に配置され得る、スペーシング要素とを有する。この発明に従った複数の歯車機構を組み合わせて、柔軟なジョイントまたは操作アームを形成することができる。このシステムには中央の球形またはカルダン関節がなく、アクチュエータは主負荷経路にある。
【0005】
特許文献3は、取り付け面に対してペイロードを選択的に移動させるための、表面に取り付けられた固定部分に対して移動可能な移動部分を有する少なくとも1つの回転アクチュエータを含む「Antenna pointing system(アンテナ指向システム)」に言及する。接続ロッドは、移動部分およびペイロードに移動可能に接続する。柔軟な取り付け構造により、ペイロードが取り付け面に移動可能に取り付けられる。このシステムには、従来のカルダンジョイントがあるが、中央のカルダン関節はなく、アクチュエータは主負荷経路にある。
【0006】
これまで多くの関節式指向システムが開発されてきたが、位置の取得および回転軸の規定の精度を向上させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平4-266203号公報
【文献】国際公開WO2011/104038号(A1)
【文献】欧州特許第2608313号明細書(A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、言及された欠点を回避する関節式機構および関節式指向システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1の球形ジョイント、第2の球形ジョイント、第3の球形ジョイント、第1のレバー、第2のレバー、および第3のレバーを含む関節式機構であって、第1の球形ジョイントおよび第2の球形ジョイントは、第1のレバーによって連結され、第1のレバーは第1の突出部分を備え、第1の球形ジョイントおよび第3の球形ジョイントは、第2のレバーによって連結され、第2のレバーは、第1の突出部分が突出する方向と反対方向に突出する第2の突出部分を備え、第2の球形ジョイントおよび第3の球形ジョイントは第3のレバーによって連結され、その結果、第1のレバーの長手方向軸Yと第2のレバーの長手方向軸Xは垂直である、関節式機構を提供する。
【0010】
本発明はまた、基部プラットフォームと、基部プラットフォームに対して移動可能な移動プラットフォームと、基部プラットフォームと移動プラットフォームとを接合する2つの関節式ヒンジ手段(当該ヒンジ手段の動きが、アクチュエータによって実行されるもの)と、本発明の関節式機構とを備えた関節式指向システムを提供する。ここで、本発明の関節式機構にあっては、第1のレバーが第1の突出部分によって移動プラットフォームに取り付けられると共に、第2のレバーが第2の突出部分によって基部プラットフォームに取り付けられている。
【0011】
関節式機構の構成により、回転軸は2点(球形ジョイントの中心)で規定され、それらの規定に不確実性がなく、理論および動作の両方で回転軸の位置をより正確に把握できる。
【0012】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面に関連して、その目的を例示するいくつかの実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】本発明の関節式指向システムの概略図である。
【
図5】主負荷経路を備えた本発明の関節式指向システムの概略正面図を示す。
【
図6】本発明の関節式指向システムのアクチュエータおよびヒンジ手段を示す図である。
【
図7】本発明の関節式指向システムのアクチュエータおよびヒンジ手段を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の関節式機構1は、
図1から
図3に表されている。これらの図では、関節式機構1が、第1の球形ジョイント3、第2の球形ジョイント4、第3の球形ジョイント5、第1のレバー6、第2のレバー7および第3のレバー8を含むことが見て取れる。第1の球形ジョイント3および第2の球形ジョイント4は、第1の表面に取り付けられるのに適した第1の突出部分9を備えた第1のレバー6によって連結されている。
図1および
図2では、第1のレバー6の突出部分9は、第1の球形ジョイント3に対応する第1のレバー6の端部に配置されている。
【0015】
第1の球形ジョイント3および第3の球形ジョイント5は、第2の表面に取り付けられるのに適した第2の突出部分10を備えた第2のレバー7によって連結されている。
図1および
図3では、第2のレバー7の突出部分10は、第1の球形ジョイント3に対応する第2のレバー7の端部に配置されている。
【0016】
図1から
図3において、第1のレバー6の長手方向軸Yと第2のレバー7の長手方向軸Xとが垂直である(直交する)ように、第2の球形ジョイント4および第3の球形ジョイント5は第3のレバー8によって連結されている。
【0017】
第2の突出部分10は、第1の突出部分9が突出する方向とは反対の方向に突出している。
【0018】
図1から
図3に示される関節式機構1の実施形態では、突出部分9および10は、第1の球形ジョイント3に関して対向する位置に配置されている。
図3では、第1の球形ジョイント3に対して、第1の突出部分9は上部位置にあり、第2の突出部分10は下部位置にある。
【0019】
図4および
図5は、本発明の関節式指向システム2を示しており、これは、基部プラットフォーム11と、基部プラットフォーム11に対して移動可能な移動プラットフォーム12とを備える。関節式指向システム2はまた、基部プラットフォーム11と移動プラットフォーム12とを接合する2つの関節式ヒンジ手段13を含み、ヒンジ手段13の動きは、アクチュエータ14、14’によって実行される。関節式指向システム2は更に、上記タイプの関節式機構1を備えており、当該関節式機構1においては、第1のレバー6が第1の突出部分9を介して移動プラットフォーム12に取り付けられ、第2のレバー7が第2の突出部分10を介して基部プラットフォーム11に取り付けられる。
【0020】
図4はまた、軸X、Y、Zの直交システムを示す(軸XおよびYはすでに定義されている)。
【0021】
図4に見られるように、関節式指向システム2は、基部プラットフォーム11と、基部プラットフォーム11に対してその向きおよび指向を変更することができるように基部プラットフォーム11に対して移動可能な移動プラットフォーム12とを有する。相対的向き(例えば、角度α)の変更は、関節式機構1によって構成される中央関節に対して2つのヒンジ手段13を動かすことによって実行される。ヒンジ手段13の動きは、回転アクチュエータ15またはリニアアクチュエータ16によって実行される。
【0022】
アクチュエータ14を動かすことにより、ヒンジ関節が動かされ、ヒンジのパドルは、X軸直線運動をZ軸直線運動で伝達し、移動プラットフォーム12を上下に動かすと共に、同プラットフォームをY軸の周りで回転させる。
【0023】
前述のように、回転軸XおよびYは、球形ジョイントによって規定される。
- 第1の球形ジョイント3と第2の球形ジョイント4とは、第1のレバー6によって連結されており、軸Yは、第1のレバー6の長手方向軸である。
- 第1の球形ジョイント3と第3の球形ジョイント5とは、第2のレバー7によって連結されており、軸Xは、第2のレバー7の長手方向軸である。
【0024】
軸XおよびYの垂直性(直交性)およびカルダンタイプの動きは、第2の球形ジョイント4および第3の球形ジョイント5を連結するレバー8によって保証される。
【0025】
中央の関節の配置は、球形ベアリングジョイントの利点とカルダンタイプのジョイントの利点を組み合わせたものである。3つの球形ジョイント3、4、5は、回転軸X、Yを規定し、それらの間のリンクは、結合された動きを規定する。1つの軸(Z)は固定され、他の2つの軸(XおよびY)は固定軸(Z)の周りを移動する。インターフェイス面(境界平面)は、両方の軸(X、Y)を中心に回転することにより、任意の方向(配向)に配置できる。
【0026】
図5はまた、移動プラットフォーム12に負荷(矢印で表される)が加えられたときに発生する、移動プラットフォーム12と基部プラットフォーム11との間の3つの負荷経路17、17’、17”を示す。アクチュエータ14、14’は、これらの負荷経路17、17’、17”から外れて配置されている。この配置により、ヒンジ13(構造部材)を対応する負荷経路17、17”に残したまま、出力解像度(プラットフォームの向き/配向)が向上する。この特徴により、負荷能力(質量を増やさずに同じアクチュエータを使用してシステムの負荷能力を高めることができること)およびコストの観点(これにより、幅広いアクチュエータからのアクチュエータの選択が可能になること)から関節式指向システム2を最適化できる。
【0027】
図6は、リニアアクチュエータ16を備えた本発明の関節式指向システム2のヒンジ手段13を示す。
【0028】
図7は、回転アクチュエータ15を備えた本発明の関節式指向システム2のヒンジ手段13を示す。
【0029】
回転アクチュエータ15は、回転軸が基部プラットフォーム11に平行であるか、または基部プラットフォーム11に垂直であるように配置することができる。リニアアクチュエータ16は、基部プラットフォーム11と平行に配置されている。
【0030】
本発明は、好ましい実施形態に関連して十分に説明したが、変更はこれらの実施形態によってではなく、以下の特許請求の内容によって限定されることを考慮しつつ、変更は本発明の範囲内で導入され得ることは明らかである。
【符号の説明】
【0031】
1 関節式機構
2 関節式指向システム
3 第1の球形ジョイント
4 第2の球形ジョイント
5 第3の球形ジョイント
6 第1のレバー
7 第2のレバー
8 第3のレバー
9 第1の突出部分
10 第2の突出部分
11 基部プラットフォーム
12 移動プラットフォーム
13 関節式ヒンジ手段
14,14’ アクチュエータ
17,17’,17” 負荷経路