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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-12
(45)【発行日】2022-08-22
(54)【発明の名称】記録用紙及び記録用ラベル
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/04 20200101AFI20220815BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220815BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220815BHJP
【FI】
C08J7/04 H
B32B27/00 F
B41J2/01 501
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021554176
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2020035595
(87)【国際公開番号】W WO2021084970
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2019198727
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100154759
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100207240
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】檀野 毅
(72)【発明者】
【氏名】足利 光洋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 凌
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/189699(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/188841(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/139648(WO,A1)
【文献】特開2002-173538(JP,A)
【文献】特開平9-267571(JP,A)
【文献】特開2011-88285(JP,A)
【文献】特開2006-248087(JP,A)
【文献】特開2004-169202(JP,A)
【文献】特開平7-228066(JP,A)
【文献】特表2012-522907(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0243151(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/04
B41J 2/01
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂フィルムからなる基材と、前記基材の少なくとも一方の表面上にコート層と、を有する記録用紙であって、
前記コート層が、無機フィラー、イソシアネート変性ポリエチレングリコール及びバインダーを含有し、
前記コート層において、前記無機フィラーの含有量が47~83質量%であり、前記イソシアネート変性ポリエチレングリコールの含有量が0.3~4.0質量%である、
記録用紙。
【請求項2】
前記無機フィラーの平均1次粒径(D50)が、0.03~2.00μmである、
請求項1に記載の記録用紙。
【請求項3】
前記コート層が、前記無機フィラーとして、炭酸カルシウムを少なくとも含有する、
請求項1又は2に記載の記録用紙。
【請求項4】
前記コート層が、前記無機フィラーとして、炭酸カルシウム及びカオリンを含有し、
前記コート層中の前記炭酸カルシウムと前記カオリンの含有量が、質量比で97:3~60:40である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の記録用紙。
【請求項5】
前記コート層が、界面活性剤を含有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の記録用紙。
【請求項6】
前記コート層中の前記界面活性剤の含有量が、0.6~4.5質量%である、
請求項5に記載の記録用紙。
【請求項7】
前記コート層が、前記バインダーとして、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリル共重合体及びエチレン-酢酸ビニル共重合体よりなる群から選ばれる1種以上を含有する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の記録用紙。
【請求項8】
前記コート層が、金属系架橋剤、エポキシ系架橋剤、エピクロロヒドリン系架橋剤及びオキサゾリン系架橋剤よりなる群から選ばれる1種以上の架橋剤を含有し、
前記バインダーが前記架橋剤によって架橋されている、
請求項1~7のいずれか一項に記載の記録用紙。
【請求項9】
前記コート層中の前記バインダーの含有量が、15~45質量%である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の記録用紙。
【請求項10】
前記コート層の単位面積あたりの固形分量が、7~30g/mである、
請求項1~9のいずれか一項に記載の記録用紙。
【請求項11】
前記基材が、熱可塑性樹脂とフィラーとを含有する多孔質フィルムである、
請求項1~10のいずれか一項に記載の記録用紙。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の記録用紙と、
前記記録用紙のコート層とは反対側の表面上に設けられた粘着層と、を有する、
記録用ラベル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用紙及び記録用ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷は、高速かつ大量印刷が可能であり、主流の印刷方式となっている。オフセット印刷に特有の印刷トラブルの1つとして、グロスゴーストが知られている。グロスゴーストは、枚葉紙の両面に印刷する場合、後刷りの画像部のうち、先刷りの画像部と重なる部分と重ならない部分とで光沢差が生じ、後刷りの画像部に先刷りの画像部に起因する模様が現れる現象である。
【0003】
枚葉紙としては、紙又は樹脂フィルムの表面にコート層が設けられ、当該コート層に顔料を配合した記録用紙が用いられることがある。顔料の粒子間の空孔にインク中の溶媒が吸収されることにより、コート層上にインクで形成された画像部が乾燥する。インクの不十分な乾燥は、上述したグロスゴースト発生の一因となり得る。
【0004】
十分な空孔を形成するには、コート層の形成時に発生するバインダーマイグレーションを抑制することが有効である。コート層は塗工によって形成できるが、塗工後の乾燥が急速であると、バインダー成分がコート層表面に移動するバインダーマイグレーションが発生し得る。バインダーマイグレーションが発生すると、コート層の表面の空孔がバインダーで埋まり、インクの乾燥性の低下を招くだけでなく、コート層中での材料の相分離が発生して基材とコート層の密着性の低下を招く可能性もある。
【0005】
従来は、バインダーマイグレーションの抑制のため、コート層にはカゼインが配合されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭61-113897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、カゼインによる十分な効果を得るためには比較的多くの配合量が必要である。コート層の塗工液の粘度が上昇しやすいため、生産性に改善の余地があった。
【0008】
本発明は、生産性を低下させることなく、良好な印刷特性及び耐水擦過性を有する記録用紙及び記録用ラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、無機フィラー、特に炭酸カルシウム、及びバインダーを含むコート層に、カゼインの代わりにイソシアネート変性ポリエチレングリコールを配合すれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0010】
(1)熱可塑性樹脂フィルムからなる基材と、前記基材の少なくとも一方の表面上にコート層と、を有する記録用紙であって、
前記コート層が、無機フィラー、イソシアネート変性ポリエチレングリコール及びバインダーを含有し、
前記コート層において、前記無機フィラーの含有量が47~83質量%であり、前記イソシアネート変性ポリエチレングリコールの含有量が0.3~4.0質量%である、
記録用紙。
【0011】
(2)前記無機フィラーの平均1次粒径(D50)が、0.03~2.00μmである、
上記(1)に記載の記録用紙。
【0012】
(3)前記コート層が、前記無機フィラーとして、炭酸カルシウムを少なくとも含有する、
上記(1)又は(2)に記載の記録用紙。
【0013】
(4)前記コート層が、前記無機フィラーとして炭酸カルシウム及びカオリンを含有し、
前記コート層中の前記炭酸カルシウムと前記カオリンの含有量が、質量比で97:3~60:40である、
上記(1)~(3)のいずれかに記載の記録用紙。
【0014】
(5)前記コート層が、界面活性剤を含有する、
上記(1)~(4)のいずれかに記載の記録用紙。
【0015】
(6)前記コート層中の前記界面活性剤の含有量が、0.6~4.5質量%である、
上記(5)に記載の記録用紙。
【0016】
(7)前記コート層が、前記バインダーとして、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリル共重合体及びエチレン-酢酸ビニル共重合体よりなる群から選ばれる1種以上を含有する、
上記(1)~(6)のいずれかに記載の記録用紙。
【0017】
(8)前記コート層が、金属系架橋剤、エポキシ系架橋剤、エピクロロヒドリン系架橋剤及びオキサゾリン系架橋剤よりなる群から選ばれる1種以上の架橋剤を含有し、
前記バインダーが前記架橋剤によって架橋されている、
上記(1)~(7)のいずれか一項に記載の記録用紙。
【0018】
(9)前記コート層中の前記バインダーの含有量が、15~45質量%である、
上記(1)~(8)のいずれかに記載の記録用紙。
【0019】
(10)前記コート層の単位面積あたりの固形分量が、7~30g/mである、
上記(1)~(9)のいずれかに記載の記録用紙。
【0020】
(11)前記基材が、熱可塑性樹脂とフィラーとを含有する多孔質フィルムである、
上記(1)~(10)のいずれかに記載の記録用紙。
【0021】
(12)上記(1)~(11)のいずれかに記載の記録用紙と、
前記記録用紙のコート層とは反対側の表面上に設けられた粘着層と、を有する、
記録用ラベル。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、生産性を低下させることなく、良好な印刷特性及び耐水擦過性を有する記録用紙及び記録用ラベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施形態の記録用紙の構成を示す断面図である。
図2】一実施形態の記録用ラベルの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の記録用紙及び記録用ラベルについて詳細に説明する。以下の説明は、本発明の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に特定されない。
【0025】
以下の説明において、「(メタ)アクリル」の記載は、アクリルとメタクリルの両方を示す。
【0026】
(記録用紙)
本発明の記録用紙は、基材と、基材の少なくとも一方の表面上に設けられたコート層と、を有する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態である記録用紙1の構成例を示す。
図1に例示する記録用紙1は、基材11とコート層12とを有する。コート層12は、基材11の一方の表面上に設けられているが、両方の表面上に設けられていてもよい。
【0028】
本発明の記録用紙は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、基材及びコート層以外の他の層を有していてもよい。例えば、基材とコート層間の密着性向上を目的として基材とコート層の間に中間層が設けられてもよい。またブロッキング防止等を目的としてコート層と反対側の基材の表面上に表面層が設けられてもよい。
【0029】
<コート層>
コート層は、無機フィラー、イソシアネート変性ポリエチレングリコール及びバインダーを含有する。コート層において、イソシアネート変性ポリエチレングリコールの含有量は0.3~4.0質量%であり、無機フィラーの含有量は47~83質量%である。
【0030】
無機フィラーを含むコート層は、無機フィラーの粒子と粒子の間に空孔を有し、印刷によりコート層上に転移したインク中の溶媒を空孔内に浸透させてインクの乾燥を進行させることができる。特定量の無機フィラーの配合により溶媒の吸収に十分な空孔を形成することができ、優れたインクの乾燥性が得られる。酸化重合型のインクの場合、溶媒が吸収されることでコート層上に残留するインク成分の酸化重合反応が進むことにより、乾燥が進行する。したがって、溶媒の吸収性が高いコート層は酸化重合型のインクの乾燥性向上に特に有効である。
【0031】
このようにコート層のインクの乾燥性が高いと、グロスゴーストが発生しにくい。また、印刷後の記録用紙を重ねた場合の裏付きが発生し難く、重色部の乾燥性も高い。
【0032】
コート層が塗工によって形成される場合、塗工膜を急速乾燥すると、バインダーがコート層表面に移動するバインダーマイグレーションが発生し、表面の空孔がバインダーによって埋まりやすい。しかし、上記特定量の無機フィラーに対して、上記特定量のイソシアネート変性ポリエチレングリコールを配合することにより、急速乾燥した場合でもバインダーマイグレーションを抑制することができ、空孔の埋没によるインクの乾燥性の低下を効果的に抑えることができる。
【0033】
従来は、バインダーマイグレーションの抑制のためにカゼインが配合されていたが、カゼインの代わりにイソシアネート変性ポリエチレングリコールを用いることにより、カゼインよりも少ない配合量で充分な抑制効果を得ることができる。したがって、コート層用の塗工液の粘度上昇を抑えることができる。塗工液の濃度調整等の工程管理が容易となり、記録用紙の生産性も向上する。
【0034】
以下、コート層の各成分について説明する。
【0035】
<<無機フィラー>>
コート層は、無機フィラーを含有する。無機フィラーの粒子がコート層中でランダムに凝集することにより、粒子間の細かい空孔がコート層全体に広がってインクの溶媒を速やかに吸収するため、優れたインクの乾燥性が得られる。
【0036】
無機フィラーのなかでも、白色度が向上しやすい点から、炭酸カルシウムが好ましい。
炭酸カルシウムとしては、例えば重質炭酸カルシウム及び軽質炭酸カルシウム等が挙げられる。なかでも、細かな空孔の形成の観点から、軽質炭酸カルシウムが好ましい。
【0037】
無機フィラーの平均1次粒径(D50)は、細かな空孔形成によるインク乾燥性の向上の観点から、0.03μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましい。一方、同平均1次粒径は、コート層からの脱落を抑える観点から、2.0μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましく、0.5μm以下がさらに好ましい。
【0038】
上記平均1次粒径(D50)は、レーザー光回折・散乱法によって測定される。測定には、例えばマイクロトラックMT3300EXII(マイクロトラック・ベル社製)を用いることができる。
【0039】
コート層中の無機フィラーの含有量は、上述のように47質量%以上83質量%以下である。この範囲内であれば、優れたインクの乾燥性を得るための空孔を十分に形成できる。なかでも同含有量は、十分な空孔率を確保する観点から、50質量%以上が好ましい。また、同含有量は、コート層自体の堅牢性の観点から、80質量%以下が好ましい。
【0040】
コート層中の無機フィラーは、1種類のみであってもよいが、インク乾燥性及びコスト等の観点から、2種以上を併用してもよい。無機フィラーとしては炭酸カルシウムが好ましいが、例えば炭酸カルシウムと、カオリン、ゼオライト、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、焼成クレイ、タルク、又はホワイトカーボンのうちの1種以上の無機フィラーとを併用することがより好ましい。
【0041】
炭酸カルシウムの平均粒径としては、前述した範囲が好ましいが、これと併用する無機フィラーの平均粒径は、空孔形成性の観点からは、5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.5μm以下がさらに好ましい。また細かな空孔が形成できる点からは、同平均粒径は小さいほど好ましいが、非常に小さい場合はコート層形成用塗工液中での凝集が生じる場合があり、取扱い性を考慮すると0.05μm以上程度であることが好ましい。
【0042】
なかでもカオリンは、結晶形状が板状でありドライダウン防止に効果的であるため、好ましい。
炭酸カルシウムとカオリンとを併用する場合、コート層中の炭酸カルシウムのうち3~40質量%をカオリンに置き換えることが好ましい。換言すると、コート層中の炭酸カルシウムとカオリンの含有量の質量比は、インク乾燥性とドライダウン抑制とのバランスの観点から、97:3~60:40が好ましい。
【0043】
<<イソシアネート変性ポリエチレングリコール>>
イソシアネート変性ポリエチレングリコールは、コート層中で媒体改質剤として機能する。イソシアネート変性ポリエチレングリコールは、コート層中に均一に分散することによりバインダーマイグレーションの発生を抑える。
【0044】
イソシアネート変性されたポリエチレングリコールは、ウレタン結合により高分子化し、これによりコート層用塗工液の水等の媒体の改質効果が向上する。そのため、ポリエチレングリコールの配合量が少量でもバインダーを十分に分散させることができ、配合量の増大による塗工液の粘度上昇を回避することができる。塗工液の濃度調整等の工程管理が容易となり、記録用紙の生産性が向上する。
【0045】
ポリエチレングリコールのイソシアネート変性物としては、ポリエチレングリコールがイソシアネートで変性された化合物であれば特に限定されず、例えばポリエチレングリコールに対してイソシアネート化合物を添加し反応させて得られる変性物が挙げられる。ポリエチレングリコールに対するイソシアネート化合物の添加量は、好ましくは0.01~5質量%程度である。このような変性物の市販品としては、例えばメルポールF-220(三洋化成社製)等が挙げられる。
【0046】
変性に用いるイソシアネート化合物としては、1つのイソシアネート基を有すればよく、なかでも2以上のイソシアネート基を有する化合物が好ましい。使用できるイソシアネート化合物としては、例えばプロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、へキシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、シクロへキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、p-クロロフェニルイソシアネート、p-ニトロフェニルイソシアネート、2-クロロエチルイソシアネート、ステアロイルイソシアネート、プロパンジイソシアネート、へキサンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、へキサンフルオロプロパンジイソシアネート、及び1,4-フェニレンジイソシアネート等が好ましく挙げられる。
これらイソシアネート化合物は、1種又は2種以上を使用することができ、適当な溶媒による溶液状態でポリエチレングリコールと反応させることにより製造される。
【0047】
ポリエチレングリコールのイソシアネート変性物の数平均分子量Mnは、通常は5,000以上であり、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上である。同数平均分子量Mnは、通常は2,000,000以下であり、好ましくは1,000,000以下であり、より好ましくは100,000以下である。なお、数平均分子量Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算の値として求めることができる。
【0048】
コート層中のイソシアネート変性ポリエチレングリコールの含有量は、上述のように0.3~4.0質量%である。同含有量は、バインダーマイグレーション抑制効果の観点からは、0.4質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。また、同含有量は、コート層の耐水擦過性を阻害しない観点からは、2.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましい。
【0049】
また、コート層中のバインダーに対するイソシアネート変性ポリエチレングリコールの含有量は、バインダーマイグレーション抑制効果の観点からは、1.0質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上がさらに好ましい。また、同含有量は、コート層の耐水擦過性を阻害しない観点からは、20.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0050】
<<バインダー>>
バインダーは、無機フィラーの粒子をコート層中に均一に存在させる機能を有する。また、バインダーは、コート層の耐水密着性を向上させるとともに、無機フィラーと基材との密着性も向上させ、記録用紙の耐水擦過性を向上させることができる。
【0051】
バインダーとしては、従来公知のバインダーを使用することができ、例えばスチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ブタジエン-メチルメタクリレート系共重合体、酢酸ビニル-ブチルアクリレート系共重合体、ポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、又はアクリル酸-メチルメタクリレート系共重合体等の各種共重合体が挙げられる。これらのうち、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0052】
本発明においては、上記のうちのいずれのバインダーも好適に用いることができるが、基材とコート層の密着性の観点から、コート層は、バインダーとして、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリル共重合体及びエチレン-酢酸ビニル共重合体よりなる群から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
【0053】
コート層中のバインダーの含有量は、無機フィラー同士、および無機フィラーと基材との密着性の観点からは、15質量%以上が好ましく、17質量%以上がより好ましく、18質量%以上がさらに好ましい。また、同含有量は、コート層に十分な空孔率を確保する観点からは、45質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。
【0054】
<<架橋剤>>
コート層はさらに架橋剤を含有し、コート層中のバインダーが架橋剤によって架橋されていることが好ましい。バインダーの架橋により、コート層表面の画像部における耐水擦過性をより向上させることができる。
【0055】
架橋剤としては、従来公知の架橋剤を使用することができる。使用できる架橋剤としては、例えば炭酸ジルコニウムアンモニウム等の金属系架橋剤、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミンポリアミドのエピクロロヒドリン付加物等のエピクロロヒドリン系架橋剤、又はオキサゾリン基含有ポリマー等のオキサゾリン系架橋剤等が挙げられる。
【0056】
上記コート層表面の耐水擦過性の向上の観点からは、コート層は、上記金属系架橋剤、エポキシ系架橋剤、エピクロロヒドリン系架橋剤及びオキサゾリン系架橋剤よりなる群から選ばれる1種以上を含有し、バインダーはこれら架橋剤によって架橋されていることが好ましく、なかでも架橋剤は上記金属系架橋剤及びエポキシ系架橋剤よりなる群から選ばれる1種以上が好ましい。また、コート層の耐水密着性向上の観点から、コート層は、架橋剤として金属系架橋剤を含むことが好ましく、金属系架橋剤のなかでも炭酸ジルコニウムアンモニウムがより好ましい。特に、バインダーとしてスチレン-アクリル共重合体を使用し、これを炭酸ジルコニウムアンモニウムで架橋することにより、コート層の耐水擦過性及び耐水密着性をより高めることができる。
【0057】
コート層中の架橋剤の含有量は、0.4~4.0質量%であることが好ましい。この範囲内であれば、十分な架橋により耐水擦過性が高まりやすい。コート層の耐水擦過性の観点からは0.5質量%以上であることがより好ましく、0.6質量%以上であることがさらに好ましい。またコート層形成用塗工液の粘度を調整し、良好な塗工性を得る観点からは、同含有量は2.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましい。
【0058】
<<界面活性剤>>
コート層は、界面活性剤をさらに含有することが好ましい。界面活性剤により、コート層表面が摩擦により帯電した場合でもすみやかに帯電を減衰させることができる。したがって、記録用紙の印刷時の重送や印刷部材への貼り付き、紙詰まり、位置ずれ等の搬送トラブルを減らすことができる。
【0059】
界面活性剤としては、カチオン性、アニオン性、ノニオン性又は両性等、いずれも使用できるが、アニオン性の界面活性剤が好ましい。アニオン性の界面活性剤としては、例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウムが好ましい。
【0060】
界面活性剤をコート層に配合することにより、層表面の摩擦帯電圧を減衰させることができるが、一方で層自体の耐水密着性を低下させる傾向がある。コート層表面の摩擦帯電圧減衰性と、コート層自体の耐水密着性を両立するためには、界面活性剤の配合量を必要最低限とする必要がある。具体的にはコート層中の界面活性剤の含有量は、摩擦帯電圧減衰性の観点から、0.6質量%以上が好ましく、0.7質量%以上がより好ましい。また、同含有量は、耐水密着性の観点から、4.5質量%以下が好ましく、2.3質量%以下がより好ましい。
【0061】
コート層は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。使用できる添加剤としては、例えば分散剤、増粘剤、保水剤、耐水化剤、着色剤、又は防腐剤等が挙げられる。分散剤としては、例えばポリカルボン酸等を、通常0.05~5質量%配合することができる。
【0062】
<<固形分量>>
コート層の単位面積あたりの固形分量(乾燥後の質量)が少ない場合、すなわち層が薄い場合、又は塗工後のコート層を急速に乾燥させる場合に、層中におけるバインダーマイグレーションが生じやすい。したがって、バインダーマイグレーションを抑制する観点からは、コート層の単位面積当たりの固形分量は、7g/m以上が好ましく、10g/m以上がより好ましく、15g/m以上がさらに好ましい。またバインダーマイグレーション抑制の観点からは、同固形分量は多い方が好ましいが、記録用紙のコート層としては通常30g/m程度以下が好ましく、20g/m以下がより好ましい。したがって、コート層の単位面積あたりの固形分量は、7~30g/mであることが好ましく、10~20g/mがより好ましい。
【0063】
上記コート層の単位面積あたりの固形分量は、一定面積のコート層付きの基材の質量を測定後に、コート層を削り取った後の基材の質量を測定し、その質量差を上記一定面積で除算することにより測定される。
【0064】
<基材>
基材は、熱可塑性樹脂フィルムからなり、記録用紙に機械的強度を付与する。基材は、熱可塑性樹脂とフィラーとを含有する多孔質フィルムであることが好ましい。多孔質フィルムであれば、記録用紙の白色度の調整が容易になる。
【0065】
<<熱可塑性樹脂>>
基材に使用できる熱可塑性樹脂としては特に制限されないが、例えば高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、ポリプロピレン等のプロピレン系樹脂、ポリ(4-メチルペンタ-1-エン)、エチレン-環状オレフィン共重合体等のシクロオレフィンコポリマー等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、ナイロン-6,12等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート及びその共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂;アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂等のスチレン系樹脂;ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド等の延伸成形が可能な熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
なかでも、生産性、加工容易性、耐水性、耐薬品性、リサイクル性及びコストの観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。ポリオレフィン系樹脂のなかでも、プロピレン系樹脂又は高密度ポリエチレンが好ましく、プロピレン系樹脂がより好ましい。
プロピレン系樹脂としては、例えばアイソタクティック、シンジオタクティック又は種々の立体規則性を示すプロピレン単独重合体、プロピレンを主成分とし、当該プロピレンとエチレン、ブテン-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1,4-メチルペンテン-1等のα-オレフィンとのプロピレン共重合体が挙げられる。共重合体は、2元系でも3元系でも4元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
【0067】
基材が多孔質フィルムである場合の基材中の熱可塑性樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂フィルムに十分な強度を付与し、延伸成形時の破断を防ぐ観点からは、35質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、十分な空孔を確保し、白色度及び不透明度を付与する観点からは、92質量%以下が好ましく、86質量%がより好ましい。
【0068】
プロピレン系樹脂を用いる場合、延伸性を高める観点から、ポリエチレン、ポリスチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等の、プロピレン系樹脂よりも融点が低い熱可塑性樹脂を、プロピレン系樹脂100質量%に対して3~25質量%併用することが好ましい。
【0069】
<<フィラー>>
基材は、フィラーを含有することができる。フィラーにより基材中に空孔が形成されやすく、記録用紙の白色度の調整が容易となる。
【0070】
基材に使用できるフィラーとしては、例えば無機フィラー、有機フィラー等が挙げられる。
無機フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、珪藻土、タルク、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミナ、又は紫外線吸収フィラー等が挙げられる。紫外線吸収フィラーとしては、例えば二酸化チタン、又は酸化亜鉛等が挙げられる。
【0071】
有機フィラーとしては、例えば基材の熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂の場合には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン-6、ナイロン-6,6、環状オレフィン重合体、又は環状オレフィンとエチレンとの共重合体等であって、用いるポリオレフィン樹脂の融点より高い融点、例えば120~300℃の範囲を有するか、ガラス転移温度が例えば120~280℃の範囲を有する樹脂が挙げられる。
【0072】
上記無機フィラー又は有機フィラーの中から1種を単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。2種以上を組み合わせる場合には、無機フィラーと有機フィラーを混合して使用してもよい。
【0073】
フィラーの平均粒径は、0.01~10μmが好ましく、0.05~8μmがより好ましい。平均粒径が10μm以下であると、空孔の均一性が高まる傾向がある。また、平均粒径が0.01μm以上であると、所定の空孔が得られやすい傾向がある。
上記フィラーの平均粒径は、熱可塑性樹脂フィルムの厚み方向の切断面を電子顕微鏡により観察し、観察領域より無作為に抽出した100個の粒子径の測定値の平均値である。粒子径は、粒子の輪郭上の2点間の距離の最大値(最大径)から決定する。
【0074】
基材中のフィラーの含有量は、8質量%以上が好ましく、14質量%以上がより好ましい一方、65質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
フィラーの含有量が8質量%以上であれば、十分な空孔数が得られやすく、多孔質フィルムに所望の白色度又は不透明度を付与しやすい傾向がある。また、同含有量が65質量%以下であれば、多孔質フィルムの強度が十分得られやすく、延伸成形時に破断しにくい傾向がある。
【0075】
<<添加剤>>
基材は、必要に応じて任意の添加剤を含有することもできる。任意の添加剤としては、例えば熱安定剤、紫外線安定剤(光安定剤)、分散剤、帯電防止剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、滑剤、粘着防止剤、ブロッキング防止剤、又は難燃剤等の各種公知の添加剤が挙げられる。熱安定剤としては、例えば立体障害フェノール系、リン系、又はアミン系等を、通常0.001~1質量%配合できる。光安定剤としては、例えば立体障害アミン系、ベンゾトリアゾール系、又はベンゾフェノン系等を、通常0.001~1質量%配合できる。分散剤としては、例えばシランカップリング剤、オレイン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸又はそれらの塩等を、通常0.01~4質量%配合できる。帯電防止剤としては、例えばステアリン酸モノグリセリド、又はステアリルジエタノールアミン等の低分子型界面活性剤を、通常0.01~4質量%配合できる。
【0076】
基材は、単層構造及び多層構造のいずれであってもよい。多層構造の場合、各層の材料の種類及び配合量は同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば基材を第1表面層/コア層/第2表面層の3層構造とする場合、第1表面層はコア層よりもコート層との密着性が高く、第2表面層はコア層よりも後述する粘着層との密着性が高くてもよい。
【0077】
基材は、無延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。基材の剛度を上げる観点からは、基材は、少なくとも一軸方向に延伸された延伸フィルムであることが好ましく、二軸方向に延伸された延伸フィルム(以下、二軸延伸フィルムということがある。)であることがより好ましい。二軸延伸フィルムは、二軸方向に延伸されているため、折り曲げたときに伸びにくく、曲げ弾性率が高いため折り癖もつきにくい。基材が多層構造の場合は、無延伸フィルムの層と延伸フィルムの層を組み合わせることもできるし、各層で延伸軸数が同じ又は異なる延伸フィルム同士を組み合わせることもできるが、上述の観点から少なくとも1層が延伸フィルムであることが好ましい。
【0078】
<<表面処理>>
基材は、基材の隣接層、例えばコート層との密着性を高める観点から、表面処理が施されていることが好ましい。
表面処理としては、例えばコロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、又はオゾン処理等が挙げられ、これら処理は組み合わせることができる。なかでも、コロナ放電処理又はフレーム処理が好ましく、コロナ処理がより好ましい。
【0079】
コロナ放電処理を実施する場合の放電量は、好ましくは600J/m(10W・分/m)以上であり、より好ましくは1,200J/m(20W・分/m)以上である。また、同放電量は、好ましくは12, 000J/m(200W・分/m)以下であり、より好ましくは10,800J/m(180W・分/m)以下である。フレーム処理を実施する場合の放電量は、好ましくは8,000J/m以上であり、より好ましくは20,000J/m以上である。また、同放電量は、好ましくは200,000J/m以下であり、より好ましくは100,000J/m以下である。
【0080】
<<厚み>>
基材の厚みは、記録用紙に対し、搬送に適したコシを付与する観点からは、60μm以上が好ましく、70μm以上がより好ましく、80μm以上がさらに好ましい。折り曲げやすさの観点からは、同厚みは、150μm以下が好ましく、130μm以下がより好ましく、120μm以下がさらに好ましい。
【0081】
(記録用紙の製造方法)
本発明の記録用紙の製造方法は特に限定されないが、通常は基材の少なくとも一方の表面上にコート層を形成することで製造できる。
【0082】
基材は、通常、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物のフィルム成形によって得られる。基材が多孔質フィルムである場合は、熱可塑性樹脂をフィラー等の他の成分と混合した後、フィルム成形することにより得ることができる。
【0083】
フィルム成形方法は特に限定されず、公知の種々の成形方法を単独で又は組み合わせて使用することができる。フィルム成形方法としては、例えばスクリュー型押出機に接続された単層又は多層のTダイ、Iダイ等により溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、又はインフレーション成形等が挙げられる。熱可塑性樹脂と有機溶媒又はオイルとの混合物を、キャスト成形又はカレンダー成形した後、溶媒又はオイルを除去することによっても、フィルム成形できる。多層構造の基材のフィルム成形方法としては、例えばフィードブロック又はマルチマニホールドを使用した多層ダイス方式、又は複数のダイスを使用する押出しラミネーション方式等が挙げられ、各方法を組み合わせることもできる。
【0084】
延伸方法としては、例えばロール群の周速差を利用した縦延伸法、テンターオーブンを利用した横延伸法、これらを組み合わせた逐次二軸延伸法、圧延法、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時二軸延伸法、又はテンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸法等が挙げられる。また、スクリュー型押出機に接続された円形ダイを使用して溶融樹脂をチューブ状に押し出し成形した後、これに空気を吹き込む同時二軸延伸(インフレーション成形)法等も使用できる。複数の延伸フィルムを含む多層構造の基材を製造する場合は、各層を積層する前に個別に延伸しておいてもよいし、積層した後にまとめて延伸してもよい。また、延伸した層を積層後に再び延伸してもよい。
【0085】
延伸を実施するときの延伸温度は、基材に使用する熱可塑性樹脂が、非結晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上の範囲であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合の延伸温度は、当該熱可塑性樹脂の非結晶部分のガラス転移点以上であって、かつ当該熱可塑性樹脂の結晶部分の融点以下の範囲内であることが好ましく、具体的には熱可塑性樹脂の融点よりも2~60℃低い温度が好ましい。
【0086】
フィルムの延伸速度は、特に限定されるものではないが、安定した延伸成形の観点から、20~350m/分の範囲内であることが好ましい。
また、フィルムの延伸倍率についても、使用する熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定することができる。 例えば、プロピレンの単独重合体又は共重合体を含むフィルムを一軸延伸する場合、その延伸倍率は、通常は約1.2倍以上であり、好ましくは2倍以上である一方、通常は12倍以下であり、好ましくは10倍以下である。また、二軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で通常は1.5倍以上であり、好ましくは10倍以上である一方、通常は60倍以下であり、好ましくは50倍以下である。
【0087】
また、ポリエステル系樹脂を含むフィルムを一軸延伸する場合、その延伸倍率は、通常は1.2倍以上であり、好ましくは2倍以上である一方、通常は10倍以下であり、好ましくは5倍以下である。二軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で通常は1.5倍以上であり、好ましくは4倍以上である一方、通常は20倍以下であり、好ましくは12倍以下である。
上記延伸倍率の範囲内であれば、安定して延伸成形できる傾向がある。また熱可塑性樹脂とフィラーを含む樹脂組成物を用いる場合も、上記延伸倍率の範囲であれば、目的の空孔率が得られて不透明性が向上しやすく、フィルムの破断が起きにくい。
【0088】
コート層の形成方法は特に限定されない。例えばコート層の各種成分を水に分散又は溶解させた塗工液を調製し、当該塗工液を基材上に塗工して乾燥することにより、コート層を形成することができる。塗工には公知の塗工装置、例えばエアーナイフコーター、グラビアコーター、ブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、チャンプレックスコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーター、又はビルブレードコーター等が使用できる。
【0089】
(記録用ラベル)
本発明の記録用ラベルは、上述した記録用紙と、当該記録用紙のコート層とは反対側の表面上に設けられた粘着層とを有する。
本発明の記録用紙を使用することにより、インクの乾燥性に優れ、グロスゴースト及びドライダウンが少なく、耐水擦過性に優れた記録用ラベルを提供できる。
【0090】
図2は、一実施態様としての記録用ラベル10の構成例を示す。
図2に例示するように、記録用ラベル10は、図1に示す記録用紙1と粘着層13とを有する。粘着層13は、記録用紙1の基材11のコート層12と反対側の表面上に積層される。記録用ラベル10が印刷された場合は、コート層12上に印刷層5が設けられる。
【0091】
<粘着層>
粘着層に使用できる粘着剤としては、例えばゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、又はシリコーン系粘着剤等が挙げられる。
ゴム系粘着剤としては、例えばポリイソブチレンゴム、ブチルゴム又はこれらの混合物に、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等の有機溶剤を配合して溶解させた組成物、アビエチン酸ロジンエステル、テルペン-フェノール共重合体、又はテルペン-インデン共重合体等の粘着付与剤を配合した組成物等が挙げられる。アクリル系粘着剤としては、例えば2-エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸n-ブチル共重合体、2-エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体等のガラス転移点が-20℃以下のアクリル系共重合体を有機溶剤で溶解した組成物、又は同一組成のアクリル系共重合体のエマルジョン系粘着剤等が挙げられる。なかでも、アクリル系粘着剤が好ましい。粘着剤としては、溶液型、エマルジョン型、ディレード型、又はホットメルト型等の各種形態の粘着剤を使用することができる。成形の容易性の観点からは、溶液型又はエマルジョン型が好ましく、溶液型がより好ましい。
【0092】
粘着層は、上記粘着剤を記録用紙の表面に直接塗工し、必要により乾燥を行って形成することができる。また、粘着層は、後述する剥離紙へ上記粘着剤を塗工し、必要により乾燥を行って粘着層を一旦形成した後、この粘着層が記録用紙の表面に接するように剥離紙を記録用紙上に積層することでも形成できる。粘着層を一旦形成する後者の方法の方が、粘着層の乾燥時に、記録用紙の各層が高温下におかれることがないため、好ましい。
【0093】
粘着剤の塗工に使用できる塗工装置としては、例えばダイコーター、バーコーター、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、リバースコーター、又はエアーナイフコーター等が挙げられる。なかでも、塗工性の観点から、コンマコーター又はグラビアコーターが好ましく、グラビアコーターがより好ましい。これらの塗工装置によって粘着剤を塗工した後に、必要に応じてレベリング、スムージング及び乾燥を行うことで粘着層を形成する。
【0094】
粘着剤の塗工量は、特に限定されないが、乾燥後の固形分量として通常は3~60g/mであり、好ましくは5~40g/mであり、より好ましくは10~30g/mである。
【0095】
粘着層の厚みは、アクリル系粘着剤の場合は10~50μmであることが好ましく、ゴム系粘着剤の場合は80~150μmであることが好ましい。
【0096】
<剥離紙>
本発明の記録用ラベルは、粘着層上に剥離紙を有していてもよい。剥離紙により記録用ラベルの取り扱いが容易になる。
【0097】
剥離紙は、粘着層との接着力が、記録用紙と粘着層との接着力よりも低いシート材であれば限定されず、慣用される剥離紙のなかから任意の剥離紙を適宜選択して用いることができる。剥離紙としては、例えば上質紙、クラフト紙等のパルプ紙、該パルプ紙をカレンダー処理した加工紙、パルプ紙に樹脂を塗工又は含浸した加工紙、パルプ紙に樹脂フィルムをラミネートした加工紙、グラシン紙、コート紙、樹脂フィルム等にシリコーン処理を施した加工紙等が挙げられる。剥離紙としては、粘着層との剥離性を調整する観点から、粘着層に接触する面にシリコーン処理を施した加工紙が好適に用いられる。
【0098】
<印刷層>
印刷層は、文字、線、又は絵柄等の印刷によって形成される層である。
印刷方法としては特に限定されず、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シール印刷、スクリーン印刷等の公知の印刷方法を使用することができる。印刷層は、インクジェット方式、電子写真方式、液体トナー方式等の各種プリンタによる印字、ホットスタンプ、コールドスタンプ等の箔押し、転写箔、又はホログラム等の従来公知の装飾を含むこともできる。
【0099】
印刷には、印刷方法に合わせて、油性インク、酸化重合硬化型インク、紫外線硬化型インク、水性インク、粉体トナー、又は液体トナー(エレクトロインキ)等の各種インクを使用することができる。
【0100】
本発明に係るコート層は、無機フィラーに起因する表面の凹凸がもたらす投錨効果によってインクとの密着性に優れ、かつ溶媒吸収性が高くインクの乾燥性に優れることから、油性インク、紫外線硬化型インク、又は酸化重合硬化型インク等を用いるオフセット印刷に対して高い印刷適性を有する。オフセット印刷に限らず、液体トナー又は粉体トナーを使用するレーザー印刷に対しても印刷適性を有する。
【実施例
【0101】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」、「%」等の記載は、断りのない限り、質量基準の記載を意味する。
【0102】
<基材の作製>
(I)プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製)67質量部、高密度ポリエチレン樹脂(商品名:ノバテックHD HJ580N、日本ポリエチレン社製)10質量部、重質炭酸カルシウム粒子(商品名:ソフトン1800、備北粉化工業社製)23質量部を混合して、樹脂組成物aを調製した。
【0103】
(II)次いで、樹脂組成物aを260℃に設定した押出機で溶融混練し、ダイよりシート状に押出した。このシートを冷却ロールにより冷却して、無延伸シートを得た。この無延伸シートを150℃まで再度加熱した後、ロール間の速度差を利用してシート流れ方向(MD)に4.8倍の延伸を行って縦一軸延伸樹脂フィルムを得た。
【0104】
(III)これとは別に、プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製)51.5質量部、高密度ポリエチレン樹脂(商品名:ノバテックHD HJ580N、日本ポリエチレン社製)3.5質量部、重質炭酸カルシウム粒子(商品名:ソフトン1800、備北粉化工業社製)45質量部を混合して、樹脂組成物bを調製した。
【0105】
これを250℃に設定した押出機で溶融混練し、上記縦一軸延伸フィルムの片面にダイよりフィルム状に押し出し、積層して、第1表面層/コア層の積層体(b/a)を得た。
さらに、別の押出機を用い、上記樹脂組成物bを250℃に設定した押出機で溶融混練し、ダイよりフィルム状に押し出し、上記積層体(b/a)のコア層(a)側の面に積層した。これにより、第1表面層/コア層/第2表面層の3層構造の積層体(b/a/b)を得た。
【0106】
この3層構造の積層体をテンターオーブンに導き、155℃に加熱した後、テンターを用いて横方向に8倍延伸した。次いで164℃で熱セット(アニーリング)して、さらに55℃まで冷却し、耳部をスリットして厚さ80μmの熱可塑性樹脂フィルムを基材(1)として得た。
【0107】
(コート層用塗工液の調製)
コート層用の塗工液(A1)~(A18)及び(B1)~(B4)を、次のようにして調製した。
【0108】
表1は、調製に使用した材料の一覧である。
【表1】
【0109】
<塗工液(A1)>
軽質炭酸カルシウム(商品名:TP-123CS、奥多摩工業社製、1次粒子径(D50):0.2μm、結晶構造:アラゴナイト)79.6質量部、イソシアネート変性ポリエチレングリコールとしてポリエーテル系水溶性高分子(商品名:メルポールF-220、三洋化成工業社製)0.7質量部、界面活性剤としてジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(商品名:サンモリンOT-70、三洋化成工業社製)1.0質量部、バインダーとしてスチレン-アクリル共重合体(商品名:ZE-1425、星光PMC社製)17.9質量部、架橋剤として炭酸ジルコニウムアンモニウム(商品名:AZコート5800MT、サンノプコ社製)0.7質量部、消泡剤(商品名:ビスマーFX-10、日新化学研究所社製、エステルワックス、ポリオキシルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル及び高級アルコール含有)0.1質量部及び水55質量部からなる組成物を混合及び撹拌して、コート層用塗工液(A1)を得た。
【0110】
<塗工液(A2)~(A9)及び(A13)~(A15)>
上記塗工液(A1)において、各成分の配合量を表2及び表3に示すように変更したこと以外は、塗工液(A1)と同様にして各塗工液(A2)~(A9)及び(A13)~(A15)を調製した。
【0111】
<塗工液(A10)>
軽質炭酸カルシウム(商品名:TP-123CS、奥多摩工業社製、1次粒子径(D50):0.2μm、結晶構造:アラゴナイト)72.7質量部、カオリン(含水ケイ酸アルミニウム、商品名:カオブライト90、THIELE KAOLIN CAMPANY社製、1次粒子径(D50):0.4μm)3.8質量部、イソシアネート変性ポリエチレングリコールとしてポリエーテル系水溶性高分子(商品名:メルポールF-220、三洋化成工業社製)0.8質量部、界面活性剤としてジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(商品名:サンモリンOT-70、三洋化成工業社製)1.1質量部、バインダーとしてスチレン-アクリル共重合体(商品名:ZE-1425、星光PMC社製)20.7質量部、架橋剤として炭酸ジルコニウムアンモニウム(商品名:AZコート5800MT、サンノプコ社製)0.8質量部、消泡剤(商品名:ビスマーFX-10、日新化学研究所社製、エステルワックス、ポリオキシルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル及び高級アルコール含有)0.2質量部及び水55質量部からなる組成物を混合及び撹拌して、コート層用塗工液(A10)を得た。
【0112】
<塗工液(A11)及び(A12)>
上記塗工液(A10)において、各成分の配合量を表2に示すように変更したこと以外は、塗工液(A10)と同様にして各塗工液(A11)及び(A12)を調製した。
【0113】
<塗工液(A16)>
上記塗工液(A2)において、バインダーとしてスチレン-アクリル樹脂の代わりにスチレン-ブタジエン樹脂(カルボキシ変性SBR、商品名:LX407G51、日本ゼオン社製)20.7質量部を用いたこと以外は、塗工液(A2)と同様にして各塗工液(A16)を調製した。
【0114】
<塗工液(A17)>
上記塗工液(A2)において、架橋剤として炭酸ジルコニウムアンモニウムの代わりにポリグリセロールポリグリシジルエーテル(商品名:デナコールEX-521、ナガセケムテックス社製)0.8質量部を用いたこと以外は、塗工液(A2)と同様にして各塗工液(A17)を調製した。
【0115】
<塗工液(A18)>
上記塗工液(A2)において、バインダーとしてスチレン-アクリル樹脂の代わりに、エチレン-酢酸ビニル共重合体(商品名:スミカフレックスS483HQ、住化ケムテックス社製)20.7質量部を用いたこと以外は、塗工液(A2)と同様にして塗工液(A18)を調製した。
【0116】
<塗工液(B1)~(B4)>
上記塗工液(A1)において、各成分の配合量を表3に示すように変更したこと以外は、塗工液(A1)と同様にして各塗工液(B1)~(B4)を調製した。
【0117】
(記録用紙の製造)
<実施例1>
上記基材(1)の片面上に、コート層用塗工液(A1)をバーコーターで塗工後、乾燥して、単位面積あたりの固形分量が15g/mのコート層を形成し、実施例1の記録用紙を得た。
【0118】
<実施例2~17,21>
上記実施例1において、コート層用塗工液(A1)を表2及び表3に記載の各塗工液(A2)~(A18)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして各実施例2~17及び21の記録用紙を得た。
【0119】
<実施例18~20>
上記実施例2において、コート層の単位面積あたりの固形分量を表3に記載の固形分量に変更したこと以外は、実施例2と同様にして各実施例18~20の記録用紙を得た。
【0120】
<比較例1~4>
上記実施例1において、コート層用塗工液(A1)を表3に記載の各塗工液(B1)~(B4)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして各比較例1~4の記録用紙を得た。
【0121】
(評価)
各実施例及び比較例の記録用紙にオフセット印刷を行い、その印刷適性について下記評価を行った。表2及び表3に評価結果を示す。
【0122】
<オフセット印刷>
各実施例及び比較例の記録用紙をA2版(420mm×594mm)に断裁し、片面に意匠等を含む図柄をオフセット印刷した。印刷には、オフセット印刷機(商品名:SM102、ハイデルベルグ社製)と酸化重合型枚葉プロセスインキ(商品名:フュージョンG(墨、藍、紅、黄)、DIC社製)を用いた。図柄は墨、藍、紅及び黄の4色により印刷され、各色の濃度は100%であった。具体的には、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、8000枚/時間の速度で1000枚連続して印刷を行い、オフセット印刷物を得た。
【0123】
<インクの乾燥性>
上記オフセット印刷物の4色を重ねた濃度400%の画像部に、コートされていない熱可塑性樹脂フィルムを重ねた。その上にφ30mmの紙管(厚み:5mm)を置き、70kgの荷重を5秒間加え、印刷直後から120分後に画像部から熱可塑性樹脂フィルムに転写されたインク転写部の面積率を求めた。当該面積率は、画像部の面積に対するインク転写部の面積の割合である。当該面積率は、画像部と対面していた熱可塑性樹脂フィルムの表面を画像解析装置(ニレコ社製:型式ルーゼックスIID)により画像処理し、解析することで算出した。
【0124】
求めたインク転写部の面積率から、インクの乾燥性を下記基準により評価した。面積率が小さいほど転写が少なく、インクの乾燥性が高いことを意味する。
◎:面積率が20%以下であり、良好なレベル
〇:面積率が20%を超えるが30%以下であり、概ね良好なレベル
△:面積率が30%を超えるが50%以下であり、実用できるレベル
×:面積率が50%を超え、実用不可のレベル
【0125】
<ドライダウン>
上記オフセット印刷物の画像部(墨、藍、紅、黄:各100%)の印刷直後のインク濃度を、反射分光色彩計(エックスライト社製)を用いて測定し、各色のインク濃度を平均して印刷直後の4色平均インク濃度を算出した。測定したインク濃度は、同じ反射分光色彩計を用いて計測された規定濃度(墨:1.80、藍:1.45、紅:1.35、黄:1.00)をレファレンスとする濃度である。また、印刷直後から24時間経過後、同じ個所のインク濃度を上記と同様に計測し、印刷から24時間後の4色平均インク濃度を算出した。
【0126】
印刷直後の4色平均インク濃度と、24時間後の4色平均インク濃度との差分から、次のようにドライダウンを評価した。差分が小さいほどドライダウンが少ないことを意味する。
◎:差分が0.15以下であり、良好なレベル
○:差分が0.15を超えるが0.20以下であり、概ね良好なレベル
△:差分が0.20を超えるが0.30以下であり、実用できるレベル
×:差分が0.30を超え、実用不可のレベル
【0127】
<耐水擦過性>
上記オフセット印刷物を70mm×110mmのサイズに打抜き、これを23℃のイオン交換水中に24時間浸漬した後、印刷物を水中より取り出した。取り出した印刷物を学振形染色摩擦堅ろう度試験機(商品名「摩擦試験機II形」、スガ試験器社製)にセットした。JIS l0849:2004(摩擦に対する染色堅ろう度試験方法)に準拠し、印刷面を白綿布(金巾3号)にて荷重215gを加えて100回擦る摩擦試験を行った。
【0128】
試験前後の画像部を画像解析装置(型式ルーゼックスIID、ニレコ社製)で画像処理し、画像部の面積の残存率を算出した。この残存率から下記基準で耐水擦過性を判定した。残存率が高いほど耐水擦過性が高いことを意味する。
◎:残存率が95%以上であり、良好なレベル
○:残存率が90%以上95%未満であり、概ね良好なレベル
△:残存率が70%以上90%未満であり、実用できるレベル
×:残存率が70%未満であり、実用不可のレベル
【0129】
<摩擦帯電圧減衰性>
恒温恒湿槽(型式:TBL-3HW6P3A 、エスペック社製)を用いて、各実施例及び比較例の記録用紙を温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間調整した。調整後の記録用紙に平行になるようにセットされた摩擦摺動装置によりコート層に対して20回摩擦を加えたときの摩擦帯電圧半減期を、摩擦帯電圧測定装置(型式:EST-7、インテック社製)を用いて計測した。
【0130】
計測した半減期から、下記基準で摩擦帯電圧減衰性を評価した。半減期が短いほど摩擦による帯電圧の減衰が速いことを意味する。
◎:半減期が30秒以下であり、良好なレベル
○:半減期が30秒を超えるが60秒以下であり、概ね良好なレベル
△:半減期が60秒を超えるが90秒以下であり、実用できるレベル
×:半減期が90秒を超え、実用不可のレベル
【0131】
【表2】
【0132】
【表3】
【0133】
表2及び表3に示すように、無機フィラー及びイソシアネート変性ポリエチレングリコールをそれぞれ特定量含有する実施例1~21の記録用紙は、いずれもインクの乾燥性に優れる。また、ドライダウンも少なく、耐水擦過性に優れている。
【0134】
一方、比較例1~4によれば、特定量の無機フィラー又はイソシアネート変性ポリエチレングリコールの配合がないと、インクの乾燥性あるいは耐水擦過性が不十分であるか、又はドライダウンが発生することが分かる。
【0135】
本出願は、2019年10月31日に出願された日本特許出願である特願2019-198727号に基づく優先権を主張し、当該日本特許出願のすべての記載内容を援用する。
【符号の説明】
【0136】
1・・・記録用紙、11・・・基材、12・・・コート層、10・・・記録用ラベル、13・・・粘着層、5・・・印刷層

図1
図2