(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】勃起不全患者のためのプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/20 20180101AFI20220816BHJP
G16H 20/00 20180101ALI20220816BHJP
G16H 80/00 20180101ALI20220816BHJP
【FI】
G16H50/20
G16H20/00
G16H80/00
(21)【出願番号】P 2020133421
(22)【出願日】2020-08-05
(62)【分割の表示】P 2020053760の分割
【原出願日】2020-03-25
【審査請求日】2021-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2019059756
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】522174281
【氏名又は名称】ロゴスサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】種村 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】小出 幸司
(72)【発明者】
【氏名】ガジザデ モハマッド
(72)【発明者】
【氏名】能勢 泰寛
(72)【発明者】
【氏名】西野 陽一朗
(72)【発明者】
【氏名】下川 千草
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-223369(JP,A)
【文献】伊藤 達哉,セルフメンタルケア用デジタルコンテンツへのチャットボットの応用,情報処理学会 研究報告 デジタルコンテンツクリエーション(DCC) 2018-DCC-019 [online] ,日本,情報処理学会,2018年06月09日,1~8ページ
【文献】小倉 加奈子,いっぷく堂:不安障害・うつ予防のためのセルフ行動調整アプリケーション,インタラクション2015論文集 [online],2015年03月07日,98~107ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
勃起不全患者のための
システムであって、
患者の勃起不全に関する状況の入力を受け付ける入力工程、
前記患者の前記状況に応じて治療法を決定する決定工程、
前記決定に応じて、心理療法に基づく治療のための会話を前記患者に提供する治療工程、とを
実行することを特徴とする勃起不全患者のための
システム。
【請求項2】
前記会話が定期
的に実行
される請求項1に記載の勃起不全患者のための
システム。
【請求項3】
さらに、前記治療工程において、患者にとって効果的な、
エクササイズ、映像、画像、音声から選択される
療法が
患者側の情報処理端末または媒体で再生される請求項1
または請求項
2に記載の勃起不全患者のための
システム。
【請求項4】
前記会話から所定の期間経過したときに経過観察を行う
工程をさらに
実行する請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載の勃起不全患者のための
システム。
【請求項5】
PDE5阻害薬或いはそれ以外の療法と併用して利用される請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の勃起不全患者のための
システム。
【請求項6】
前記会話の効果を評価する機能をさらに備える請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載の勃起不全患者のための
システム。
【請求項7】
前記効果は、交感神経および副交感神経のマーカー、勃起時における男性器の周方向の膨張に基づく引っ張り力、血糖値、血流速度、または男性器の表面温度により判断される請求項
6に記載の勃起不全患者のための
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、勃起不全(ED)の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
EDは、その病因から器質性、心因性、混合性の3種類に分類される。
心因性EDは、心理的な要因で起こるEDであり、その原因としては現実の日常生活における心身のストレスや心理的諸要因(現実心因)と、幼児期の体験や性的トラウマなどの心の深いところの心理的原因(深層心因)とに大別される。一方、器質性EDは加齢や生活習慣病、神経系の障害、外科的な損傷等を原因とするEDであり、混合性EDは心因性EDにおける原因と器質性EDにおける原因とが混合して生ずるEDである。
EDは、50~60歳では動脈硬化による器質性EDが多いが、35~45歳の所謂「子作り世代」では心因性EDが多いことが、各種研究の結果として知られている。
【0003】
ED治療の第一選択としてPDE5阻害薬が投与されるが、各種の副作用や禁忌事項がある。また、PDE5阻害薬が使用できない場合や、投与を中止した場合に、次の治療方法が乏しい。さらに、PDE5阻害薬服用の脱落率が高いことが知られている。
それに対して、心因性EDについてはPDE5阻害薬のみを用いた場合に比較して、PDE5阻害薬と心理療法を併用した方が治癒率は高い。そのため、心因性EDについては、心理療法との併用が強く推奨されている。
ここで、EDの治療はプライバシーに密接に関連しており、患者にとって「ED治療を行っている」という事実は出来る限り秘匿したいという要請が存在する。それに関連して、専門医療機関で医師と対面して診断を受けることに抵抗を持つED患者が多い。特に、心因性EDの治療においては、係る抵抗は治療の妨げになることが予想される。そのため、心因性EDにおいては、強く推奨されているにも拘らず、専門医師或いは専門家による心理療法の治療を望まない患者が多く、受診率も低い。
【0004】
これに対して、情報端末及び情報網(例えばインターネット)を介してコンタクトを取ることが出来れば、処方の様に医師による診察・診断は必要ではあるが最小限で済むため、ED患者の心理的な抵抗が小さい。
しかし、情報端末及び情報網(例えばインターネット)を介してED治療を行うのに適したプログラムやシステムは未だに提案されていない。
特に心因性EDの場合には、上述した様にPDE5阻害薬服用のみならず、心理療法、例えば認知行動療法を併用することが推奨されるが、情報端末及び情報網(例えばインターネット)を介して心因性EDに適した心理療法を実行することは、未だに実現していない。
【0005】
その他の従来技術として、ニコチン中毒証の患者(いわゆる禁煙患者)のためのプログラムが提供されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、係る従来技術(特許文献1)は禁煙患者のためのプログラムに関する技術であり、勃起不全(ED)患者の治療について適用することは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、ED治療のため医師或いは医療従事者に直接受診するのが最小限で済み、情報網及び情報処理用端末を介してPDE5阻害薬の投与のみならず、心理療法(例えば、認知行動療法)、その他の治療法を受けることを可能にして、EDを有効に治療するためのプログラムの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の勃起不全(ED)患者のためのシステム(100)は、
制御装置(1:コンピュータ或いはサーバ装置)と、
患者に使用される情報処理用端末(3:電子装置、その他の情報処理機能を有する端末装置)と、
患者の情報(例えば診療履歴情報等)や勃起不全治療に関する情報(治療方法、PDE5阻害薬に関する情報、認知行動療法等の心理療法に関する情報等)を記憶するデータベース(2)と、
医療機関側(医師も含む)で使用される情報処理用端末(4:電子装置、その他の情報処理機能を有する端末装置)を備え、
前記制御装置(1)は、患者の情報及び勃起不全治療に関する情報に基づいて勃起不全を解消するための治療法(例えば、認知行動療法の様な心理療法)に関する情報(例えば、認知行動療法の情報)を選択する機能を有していることを特徴としている。
【0009】
また本発明のED患者のための方法は、例えば上述した勃起不全患者のためのシステムの様な情報処理システム(100)の使用方法であって、
患者のEDに関する状況が、患者側の情報処理端末(3)から、制御装置(1)に送信される工程と、
受信された患者の状況に応答して、ED治療に関する情報を制御装置(1)で決定する工程と、
決定されたED治療に関する情報を患者側の情報処理端末(3)に送信する工程を含むことを特徴としている。
【0010】
さらに本発明のED患者のためのプログラムは、
患者のEDに関する状況が、患者側の情報処理端末(3)から制御装置(1)に送信される工程を実行し、
患者の状況に応答して、ED治療に関する情報を制御装置(1)で決定する工程を実行して、
決定されたED治療に関する情報を患者側の情報処理端末(3)に送信する工程を実行することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
上述の構成を具備する本発明によれば、ED患者が情報端末(3)及び情報網(10:例えばインターネット)を介して医師や医療機関とコンタクトを取ることが出来るので、処方等のため最小限必要な範囲で医師と接すれば良く、治療に対するED患者の心理的な抵抗が小さくなり、治療の最中に脱落してしまう確率が低くなる。
また情報端末(3)及び情報網(10:例えばインターネット)を介してED治療が可能な本発明によれば、医療機関への来訪や医師と対面して行われる治療は必要最小限で良いため、「ED治療を行っている」という事実は出来る限り秘匿したいという患者の要請が充足される。このことは、プライバシーに密接に関連するEDの治療においては大変に重要であり、専門医療機関で医師と対面して治療を受けることに対するED患者の抵抗感を大幅に減衰させることが可能である。そして、患者が抵抗を感じる度合いが低下し、その受診率の向上が期待される。
【0012】
ここでEDの治療については、器質性EDや混合性EDであっても、PDE5阻害薬服用のみならず、専門家が強く推奨する様に心理療法(例えば認知行動療法)を併用することが望ましい。本発明によれば、情報端末(3)及び情報網(10:例えばインターネット)を介してED治療を行うに際して、心理療法(例えば認知行動療法)を実行することが出来る。
もちろん本発明によれば、PDE5阻害薬の処方箋の発行等の手続により、PDE5阻害薬の投与による治療も(心理療法、例えば認知行動療法と併用して)実行可能である。
【0013】
EDは心理的な要因により発生する割合が高い疾病である。本発明によれば、情報端末(3)及び情報網(10:例えばインターネット)を介して治療法(例えば、認知行動療法)が実行され、患者自らにより現実心因或いは深層心因と向き合い、心理的な要因を解消することが出来る。
そのため、心因性ED、器質性ED、混合性EDの何れにおいても治療効果が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るシステムの構成図である。
【
図2】実施形態で用いられる制御装置の機能ブロック図である。
【
図3】
図2の心因性又は混合性ブロックの機能ブロック図である。
【
図4】実施形態で用いられるデータベースの機能ブロック図である。
【
図5】実施形態で用いられる患者側電子装置の機能ブロック図である。
【
図6】実施形態で用いられる医師側電子装置の機能ブロック図である。
【
図7】実施形態における制御を示すフローチャートである。
【
図8】チャットボットを用いた認知行動療法のフローチャートである。
【
図9】チャットボットを用いない場合の認知行動療法の実行手順を示すフローチャートである。
【
図10】必要なエクササイズ、音楽、映像等を送信するフローチャートである。
【
図11】経過観察の手順を示すフローチャートである。
【
図12】経過観察の手順を示すフローチャートである。
【
図13】交感神経のマーカー、副交感神経のマーカーにより治療効果を判断する判断ブロックの詳細を示す機能ブロック図である。
【
図14】交感神経のマーカー、副交感神経のマーカーにより治療効果を判断する制御のフローチャートである。
【
図15】勃起時における男性器の周方向の膨張に基づく引張力により、治療効果を判断する判断ブロックの詳細を示す機能ブロック図である。
【
図16】引張力で治療効果を判断する制御のフローチャートである。
【
図17】血糖値の減少により心理療法の効果を判断する判断ブロックの詳細を示す機能ブロック図である。
【
図18】血糖値により心理療法の効果を判断する制御のフローチャートである。
【
図19】血流速度により治療効果を判断する判断ブロックの詳細を示す機能ブロック図である。
【
図20】血流速度により治療効果を判断する制御のフローチャートである。
【
図21】男性器の表面温度により治療効果を判断する判断ブロックの詳細を示す機能ブロック図である。
【
図22】男性器の表面温度で治療効果を判断する制御のフローチャートである。
【
図23】実施形態における器質性ブロックの変形例を示す説明図である。
【
図24】
図23の映像調整用ブロックの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図示の実施形態では、心理療法として認知行動療法を適用した場合を例示する。
最初に
図1を参照して、本発明の実施形態に係る勃起不全(ED)患者のためのシステムの構成について説明する。
図1において、全体を符号100で示すED患者のためのシステムは、制御装置1(例えばコンピュータ或いはサーバ)、データベース2、患者に使用される情報処理端末3(患者側の情報処理用端末)、医療機関で使用される情報処理端末4(医療機関側の情報処理端末)を有しており、これらは例えば情報処理ネットワーク10(例えばローカルエリアネットワーク或いはインターネット)により相互に接続されている。
【0016】
患者側の情報処理用端末3は、例えばスマートフォン或いはパーソナルコンピュータ(PC或いはパソコン)等の情報処理機能及び通信機能を有する電子装置を利用することが出来る。医療機関側の情報処理端末4は、情報処理機能及び通信機能を有する電子装置(例えばPC)を利用することが出来るが、スマートフォンを利用することも可能である。
データベース2には患者の情報(例えば患者のIDに対応させた診療履歴情報等)や勃起不全治療に関する情報(治療方法、服薬履歴を含むPDE5阻害薬に関する情報、認知行動療法に関する情報等)が記憶されている。なお、診療履歴における診療には、情報端末を介しての診療及び医療機関での診療が含まれる。
図1には示されていないが、複数の患者側の情報処理端末3及び複数の医療機関側の情報処理端末4をネットワーク10に接続することも出来る。
また、データベース2をネットワーク10に接続せずに、制御装置1に直接接続することも出来る。
【0017】
制御装置1の機能ブロック図である
図2において、制御装置1は、受付ブロック1A、ID・パスワード判定ブロック1B、新規患者判定ブロック1C、記憶ブロック1D、EDタイプ判断ブロック1E、心因性又は混合性ブロック1F、器質性ブロック1G及び治療結果判断ブロック1Hを有しており、これらの各機能ブロックは、信号ラインSLにより相互に接続されている。
受付ブロック1Aは、患者(患者側の情報処理端末3)から勃起不全(ED)の治療を受ける旨の申請を、信号ラインSL1を介して受信し、当該患者の申請内容を、信号ラインSL2を介してID・パスワード判定ブロック1Bに送信する機能を有している。
【0018】
ID・パスワード判定ブロック1Bは、受付ブロック1Aから患者の申請(内容)に関する情報を受信し、当該患者(患者側の情報処理端末3)に対して、信号ラインSL3(双方向信号ライン)を介してID、パスワードの要求を送信すると共に、当該要求に基づき患者から送信されたID、パスワードを、信号ラインSL3を介して取得する機能を有している。
また、ID、パスワード判定ブロック1Bは、患者(患者側の情報処理端末3)から取得した前記ID、パスワードについて、信号ラインSL4(双方向信号ライン)を介して記憶ブロック1Dに照会した上、当該患者が既にID、パスワードIDを登録済の患者であるのか、或いはID、パスワードIDが登録されていない新規の患者であるのかを判定する機能を有している。
ID・パスワード判定ブロック1Bによる判定の結果、当該患者が登録済の患者である場合、ID・パスワード判定ブロック1Bは当該患者(患者側の情報処理端末3)からの申請内容(ID、パスワード情報を含む)を、信号ラインSL5を介してEDタイプ判断ブロック1Eに送信する。一方、当該患者が新規の患者である場合、ID・パスワード判定ブロック1Bは当該新規の患者の申請内容を、信号ラインSL6を介して新規患者判定ブロック1Cに送信する。
【0019】
図2において、新規患者判定ブロック1Cは、ID・パスワード判定ブロック1Bから新規の患者の申請内容を受信した場合、記憶ブロック1Dから、信号ラインSL7(双方向信号ライン)を介して必要な質問(図示の実施形態に係るシステム100を利用するための質問)を取得し、信号ラインSL8(双方向信号ライン)を介して新規の患者(患者側の情報処理端末3)に前記取得した質問を送信する機能を有している。ここで、前記取得した質問は、例えば、新規患者が男性か否かを判定するための質問である。システム100の利用は男性に限定されるからである。
また、新規患者判定ブロック1Cは、信号ラインSL8を介して新規の患者からの回答を取得し、新規の患者がシステム100を利用することの可否(例えば、いわゆる「悪戯」や「女性によるED患者のなりすまし」ではないか否か)を判定する機能を有している。新規患者判定ブロック1Cによる判定結果は、信号ラインSL9を介して新規の患者に返信される。その判定結果及び患者からの回答は、信号ラインSL7を介して記憶ブロック1Dに送信され、保存される。新規患者の回答により、例えば新規患者が女性ではなく男性であることが明らかになった場合、新規患者判定ブロック1Cはシステム100の「利用可」と判定し、「利用可」である旨を新規患者に返答する。明確には図示されていないが、その際に、当該新規患者に対してID及びパスワードが発行される。
一方、新規患者の回答から、例えば女性による「なりすまし」であることが明確になった場合は、「利用不可」と判定し、「利用不可」である旨を新規患者に返答する。
なお、システム100を利用するための質問は、記憶ブロック1Dに保存されるのみならず、新規患者判定ブロック1Cに保存しておくことも可能である。
【0020】
記憶ブロック1Dは、登録済患者のID、パスワード、その他患者に関する情報、新規患者の申請に対して実施する本システム100を利用するための質問、その他を記録している。
記憶ブロック1Dに保存される情報は、ID、パスワード判定ブロック1B、新規患者判定ブロック1C等の各種ブロックで用いられると共に、各種ブロックにより更新される。
【0021】
図2において、EDタイプ判断ブロック1Eは、患者側(患者側の情報処理端末3)と症状に関する情報を授受することにより、当該患者のEDがどのタイプのEDであるのか(心因性、器質性、混合性の何れのEDであるのか)を判断する機能を有している。
EDタイプ判断ブロック1Eは、ID、パスワード判定ブロック1Bを経由して患者の申請内容を受信すると、当該患者に対して、信号ラインSL10(双方向信号ライン)を介して、現在の症状に関する質問を送信する機能を有している。そして、当該質問に対する患者の回答を、信号ラインSL10を介して取得する機能を有している。
明確には図示されていないが、EDタイプ判断ブロック1Eは、
図4を参照して後述するデータベース2とも接続されており、データベース2に保存される患者の情報(例えば診療履歴情報等)やED治療に関する情報(治療方法、PDE5阻害薬に関する情報、認知行動療法等の心理療法に関する情報等)を参照することが出来る様に構成されている。
【0022】
そしてEDタイプ判断ブロック1Eは、前記質問に対する患者の回答の内容、データベース2に記憶された診療履歴等の患者情報、ED治療に関する情報に基づき、患者のEDが心因性なのか、器質性なのか、心因性と器質性を併せ持つ混合性なのかを判断する機能を有している。
EDタイプ判断ブロック1Eの判断の結果、患者が心因性ED或いは混合性EDの場合、信号ラインSL11を介して判断結果を心因性又は混合性ブロック1Fに送信する。一方、患者が器質性EDの場合、信号ラインSL12を介して判断結果を器質性ブロック1Gに送信する。
【0023】
図2において、心因性又は混合性ブロック1Fは、EDタイプ判断ブロック1Eから判断結果(判断の根拠を含めて)を取得した際に、心因性ED又は混合性EDの療法を実行する機能を有している。それと共に、経過観察を実行する機能をも有している。なお、心因性又は混合性ブロック1Fが実行するのは経過観察の一部であり、治療結果の判断は治療結果判断ブロック1Hが実行する。
心因性又は混合性ブロック1Fは治療に際して、治療情報(例えば認知行動療法での患者認知度 要求、指導情報等)を、信号ラインSL13(双方向信号ライン)を介して患者側の情報処理端末3に送信し、当該治療情報に対する患者の回答或いは応答を取得する。この様な情報等の授受を(例えば複数回)実行することにより、経過観察を含めて心因性ED又は混合性EDの治療が実行される。
明確には図示されていないが、心因性又は混合性ブロック1Fは、データベース2と接続されており、データベース2に記録されている患者の情報(例えば診療履歴情報等)やED治療に関する情報(治療方法、PDE5阻害薬に関する情報、認知行動療法等の心理療法に関する情報等)を利用することが出来る。
【0024】
また、心因性又は混合性ブロック1Fは、PDE5阻害薬やうつ病薬の処方箋、無針注射器等の器具に関する情報や、入手するために必要な情報(処方箋取得のために必要な情報)を、信号ラインSL13を介して患者に送信する機能を有している。
さらに、心因性又は混合性ブロック1Fが患者から取得した心因性EDに関する情報は、信号ラインSL14を介して器質性ブロック1Gに送信され、器質性ブロック1Gにおける各種機能を実行するのに活用される。
心因性又は混合性ブロック1Fによる手順(ED治療に関する手順)は、
図8、
図9のフローチャートを参照して後述される。
心因性又は混合性ブロック1Fによる治療結果は、信号ラインSL15を介して治療結果判断ブロック1Hに送信される。
心因性又は混合性ブロック1Fの詳細は
図3を参照して後述する。
【0025】
器質性ブロック1Gは、EDタイプ判断ブロック1Eから「患者が器質性EDである」旨の判断結果(判断の根拠を含めて)を取得した際に、器質性ED患者の療法を実行する機能を有している。そして器質性ブロック1Gは、経過観察も実行する機能を有している。ここで、器質性ブロック1Gが実行するのは経過観察の一部であり、治療結果の判断は治療結果判断ブロック1Hが行う。
治療に際して器質性ブロック1Gは、患者の過去の処方箋等の治療情報を、信号ラインSL16を介して記憶ブロック1Dから取得し、データベース2に保存される患者の情報(例えば診療履歴情報等)やED治療に関する情報をも利用して、対処方法(PDE5阻害薬、プロスタグランジンE1製剤、その他の利用を含めて)を決定する。器質性ブロック1Gは治療に際して、治療情報(処方箋、治療器具の照会等)を、信号ラインSL17を介して患者側の情報処理端末3に送信する。
器質性ブロック1Gによる治療結果は、信号ラインSL18を介して治療結果判断ブロック1Hに送信される。
【0026】
図2において、治療結果判断ブロック1Hは、心因性又は混合性ブロック1F、或いは器質性ブロック1Gから治療結果を取得すると、当該治療結果に関して、信号ラインSL19(双方向信号ライン)を介して医療機関4に送信する機能を有する。それと共に、送信した治療結果に対する医療機関4の検証結果を受信する機能を有している。
そして、医療機関4の検証結果を踏まえ、当該治療結果の可否を判断する機能を有している。医療機関4の検証により、治療結果判断ブロック1Hが心因性又は混合性ブロック1Fの治療結果を修正することもある。
ただし、医療機関4の検証を省略することが可能である。
なお、図示の実施形態では、符号「4」は「医療機関側の情報処理端末」を意味しているが、符号「4」が「医療機関」自体も表現する場合がある。
【0027】
治療結果判断ブロック1Hは、信号ラインSL20を介して、治療結果を患者側の情報処理端末3に送信する機能を有する。
当該治療結果(医療機関4の検証を受けた治療結果)としては、例えば、「直近に実行した治療(例えば認知行動療法)で治療効果が確認され、現時点で治療を終了可能する。今後半年後に再度患者の症状確認を実施する。」という内容、「直近の治療では治療効果が確認されないので、治療内容を変更し、引き続いて治療を継続する。」という内容、その他がある。
【0028】
医療機関4による検証を省略して治療結果判断ブロック1Hにおいて判断する際は、医師が治療結果判断ブロック1Hの情報をチェックすることが好適である。
患者側3(患者側の情報処理端末3)には、
図13~
図22を参照して後述する様に、治療効果を物理的に検証するための交感神経・副交感神経マーカーセンサ、血糖値計測センサ、血流速度計測センサ、その他の計測装置を揃えた計測ブロック3Aの様に、患者側の状態を物理的に検証するための計測装置を設けることが出来る。
【0029】
心因性又は混合性ブロック1Fを詳細に示す
図3において、心因性又は混合性ブロック1Fは、判定手段1FA、チャットボット実行ブロック1FB、チャットボット用AIブロック1FC、認知行動療法を実行する認知行動療法実行ブロック1FD、経過観察ブロック1FEを有している。
判定手段1FAは、制御装置1のEDタイプ判断ブロック1E(
図2)の「心因性ED又は混合性EDである」旨の判断結果を受け、心因性又は混合性ブロック1Fにおける治療内容等を決定する機能を有している。治療内容の決定に際しては、データベース2に保存される患者の情報(例えば診療履歴情報等)やED治療に関する情報(治療方法、PDE5阻害薬に関する情報、認知行動療法等の心理療法に関する情報等)を利用して行う。
図示の実施形態では、判定手段1FAは、複数の治療内容とそれらを実施する順番を決定している。すなわち、治療に際しては、1番目(N=1)にチャットボット(人工知能AIによって自動化された会話ロボット)による認知行動療法を実行し、2番目(N=2)に(チャットボットではない
図9に示す)認知行動療法を実行する。その後、1番目の治療、2番目の治療(N=1、N=2の治療)後の経過を踏まえ、必要に応じて3番目の治療、4番目の治療(N=3、N=4の治療:例えば認知行動療法ではないその他の治療法)を実行する。
【0030】
判定手段1FAからの1番目の治療の実行指令、例えばチャットボットによる認知行動療法(N=1)の実行指令は、信号ラインSL21を介してチャットボット実行ブロック1FBに送信される。2番目の治療である認知行動療法(N=2)の実行指令は、信号ラインSL22を介して認知行動療法実行ブロック1FDに送信される。
同様に、判定手段1FAからのその他のN=3、N=4の治療法の実行指令は、信号ラインSL23、SL24を介して図示しない実行ブロックに送信される。
【0031】
図3において、チャットボット実行ブロック1FB及びチャットボット用AIブロック1FCは、判定手段1FAからの指令を受け、チャットボットによる認知行動療法を実行する機能を有している。なお、チャットボット実行ブロック1FBとチャットボット用AIブロック1FCは信号ラインSL25で接続されている。チャットボットによる治療は、
図8を参照して後述する。
チャットボットによる認知行動療法の治療内容は、(逐一、或いは定期的に)チャットボット実行ブロック1FBから、信号ラインSL26を介して経過観察ブロック1FEに送信される。
【0032】
認知行動療法実行ブロック1FDは、判定手段1FAからの指令を受け、チャットボット以外の認知行動療法(例えば、
図9に示す認知行動療法)を実行する機能を有している。認知行動療法実行ブロック1FDによる治療は、
図9のフローチャートを参照して後述する。
認知行動療法実行ブロック1FDによる認知行動療法の内容は、(逐一、或いは定期的に)信号ラインSL27を介して経過観察ブロック1FEに送信される。
【0033】
図3において、経過観察ブロック1FEは、チャットボット実行ブロック1FBから治療内容を取得し、経過観察も含めてチャットボットによる治療が終了したか否かを判定する機能を有している。
同様に、経過観察ブロック1FEは認知行動療法実行ブロック1FDから治療内容を取得し、経過観察を含めて当該治療が終了したか否かを判定する機能を有している。
経過観察ブロック1FEの判定結果は、信号ラインSL28を介して、治療結果判断ブロック1H(
図2も参照)に送信される。
【0034】
治療結果判断ブロック1Hにおいては、経過観察ブロック1FEから判定結果(治療結果)を取得すると共に、その治療結果に関して医療機関4の検証を受け、当該判定結果(治療結果)を最終的に判断する。
医療機関4との関係、患者(患者側の情報処理端末3)との情報授受を含む治療結果判断ブロック1Hの機能については、
図2を参照して上述した通りである。
【0035】
図4において、データベース2は患者の情報や勃起不全治療に関する情報を記憶する機能を有し、制御ブロック2A、表示ブロック2B、入力ブロック2C、記憶ブロック2D及び通信ブロック2Eを有している。
制御ブロック2Aは、データベース2における情報処理等の制御を実行する機能を有している。表示ブロック2Bは、データベース2の使用者(医師、医療機関の担当者等)に情報を表示する機能を有している。入力ブロック2Cは、例えばキーボードにより入力された情報を受け付ける機能を有している。
記憶ブロック2Dには既存の記憶用機器により構成され、データベース用プログラム2Fが記憶されると共に、患者の情報(例えば患者IDに対応させた診療履歴情報等)や勃起不全治療に関する情報(治療方法、PDE5阻害薬に関する情報、認知行動療法に関する情報、処方箋に関する情報等)が記憶される。通信ブロック2Eは有線或いは無線による通信を実行し、ネットワーク10へ接続する機能を有している。
データベース2に記憶された情報は、必要に応じて制御装置1等により送信される。また、制御装置1、患者側の情報処理端末3、医療機関側の情報処理端末4からの情報により更新される。
なお、制御装置1及びデータベース2を単一のコンピュータとして構成することも出来る。
【0036】
ここで、図示の実施形態における「患者」なる文言は、勃起不全に罹患しており、且つ、その治療を行う意思のある個人を意味しており、医療機関において医師、その他の関係者の指導により当該治療を行っている者に限定される文言ではない。
また、患者側の情報処理端末3は、情報処理機能及び通信機能を有する電子機器であれば、特に限定はしない。ただし、昨今の普及を考慮すると、いわゆるスマートフォンの様な携帯型情報端末が好ましい。
【0037】
図5において、患者側の情報処理端末3は、制御ブロック3A、表示ブロック3B、入力ブロック3C、記憶ブロック3D及び通信ブロック3Eを有している。
制御ブロック3Aは、患者側の情報処理端末3における情報処理等の制御を実行する機能を有している。表示ブロック3Bは、患者側の情報処理端末3の使用者(患者)に情報を表示する機能を有している。入力ブロック3Cは、使用者(患者)が入力した情報を受け付ける機能を有している。
記憶ブロック3Dは既存の記憶用機器により構成され、患者側の情報処理端末3のために、符号3Fで示す患者用プログラムが記憶されている。通信ブロック3Eは、有線或いは無線の通信により、ネットワーク10と接続する機能を有している。
図5では示されていないが、患者側の情報処理端末3は患者側の状態を物理的に検証するための計測装置を設けることが出来る(
図2参照)。
【0038】
図6において、医療機関側の情報処理端末4は、制御ブロック4A、表示ブロック4B、入力ブロック4C、記憶ブロック4D及び通信ブロック4Eを有している。
制御ブロック4Aは、医療機関側の情報処理端末4における情報処理等の制御を実行する機能を有している。表示ブロック4Bは、医療機関側の情報処理端末4の使用者(医師、医療機関の関係者等)に情報を表示する機能を有している。入力ブロック4Cは、医師、医療機関の関係者等が入力した情報を受け付ける機能を有している。
記憶ブロック4Dは既存の記憶用機器で構成され、医療機関側の情報処理端末4のため、符号4Fで示す医療機関用プログラムが記憶されている。通信ブロック4Eは、有線或いは無線の通信により、ネットワーク10と接続する機能を有している。
【0039】
次に、
図7~
図12を参照して、実施形態に係る勃起不全(ED)患者のためのシステム100の実行手順について説明する。
患者側の情報処理端末3としてスマートフォンを例示し、医療機関側の情報処理端末4として所謂「ノート型」のPCを例示する。ここで、単独の患者側の情報処理端末3及び単独の医療機関側の情報処理端末4を使用した場合について例示するが、システム100においては複数の患者側の情報処理端末3及び複数の医療機関側の情報処理端末4を含むことが出来る。
図示の実施形態においては、
図7に示すように、患者が患者側の情報処理端末3を操作することにより、現在における患者の勃起不全の状況を示す情報が入力され、認知行動療法が実行される。
【0040】
図7において、システム100を利用してEDの治療を実施するに際しては、ステップS1で、患者は、EDに関連した問題が生じたと考える場合には、患者側の情報処理端末3の表示ブロック3Bにおける連絡ボタン(図示せず)にタッチし、情報処理端末3が(タッチしたことを)検出する。
ステップS1で連絡ボタンへのタッチを検出した場合(ステップS1が「Yes」)、その旨が患者側の情報処理端末3の通信ブロック3Eから制御装置1に送信され、ステップS2に進む。連絡ボタンへのタッチを検出しない場合ステップ1に戻る(ステップS1が「No」のループ)。
ステップS2(ステップS1で連絡ボタンへのタッチを検出した場合)では、制御装置1の受付ブロック1Aは前記検出情報(連絡ボタンへのタッチを検出した旨の情報)を受信する。係る信号を受信したことは、システム100の使用申請が為されたということを意味する。システム100の使用申請が為されたことに対して、ID・パスワード判定ブロック1Bは、患者側の情報処理端末3に対してID、パスワードを要求する。
【0041】
ステップS3では、患者側の情報処理端末3の入力ブロック3Cにおいて、当該患者のID、パスワードが入力されたか否かが判断される。
ステップS3で患者のID、パスワードが入力された場合(ステップS3が「Yes」)、入力されたID、パスワードは、通信ブロック3Eを介して制御装置1に送信され、ステップS4に進む。ステップS4では、制御装置1のID、パスワード判定ブロック1Bは、患者が入力したID、パスワードが真正であれば、当該患者が既に登録されている患者であると判断して、治療を開始するためステップS12に進む。
一方、ステップS3で当該患者のID、パスワードが入力されない場合(ステップS3が「No」)はステップS5に進み、ステップS5において制御装置1は当該患者を新規の患者(未登録の患者)と判断して、ステップS6に進む。
ステップS6では、制御装置の新規患者判定ブロック1Cは、当該新規患者が本システムを利用することの可否を判断するため、「(当該新規患者は)男性であるか否か」の質問を患者側の情報処理端末3に送信する。EDで悩むのは弾性であり、女性からのアクセスは「なりすまし」の可能性が高いからである。
【0042】
ステップS7では、新規患者は患者側の情報処理端末3を介してステップS6で発信された質問に回答し、制御装置1に送信する。
ステップS8では、制御装置1の新規患者判定ブロック1Cは、新規患者からの回答に基づき、当該患者が男性か否かを判断する。ステップS8で新規患者が男性と判断された場合(ステップS8が「Yes」)、ステップS9に進み、ステップS8で新規患者が男性ではないと判断された場合(ステップS8が「No」)、ステップS10に進む。
ステップS9(新規患者が男性と判断された場合)では、制御装置1は、当該新規患者にID、パスワードを発行する。新規患者は新規患者に発行されたID、パスワードを患者側の情報処理端末3の表示ブロック3Bに表示し(ステップS11)、これによりID、パスワードが付与された新規患者は、システム100の利用が可能となり、ステップS12に進む。
一方、ステップS10(新規患者が男性ではないと判断された場合)では、制御装置1の新規患者判定ブロック1Cは、当該新規患者側の情報処理端末3に対して、システム100へのアクセス不可の回答を送信し、「アクセス不可」の回答は患者側の情報処理端末3の表示ブロック3Bに表示される。
【0043】
登録済の患者も、新規にID、パスワードが付与された患者も、ステップS12に進むと、システム100の利用を開始することが出来る。
図7のステップS12では、制御装置1のEDタイプ判断ブロック1Eは、患者側の情報処理端末3に、患者が現在どのような状況かを問う質問を送信し、当該筆問は患者側の表示ブロック3Bの状況入力画面に表示される。
当該質問は、例えば、「どうしましたか? 現在の状況に近いものを選択してください。1:最近、勃起が出来ない状態が続いている。2:最近、しばば勃起出来ないことがある。3:最近、勃起はするが充分ではなく、持続しない。」等の内容である。患者は、前記質問における3つの状況の何れが該当するのかを選択する。ここで、上記の3つの状況以外の状況を示す選択肢を表示ブロック3Bに表示することも可能である。また、選択肢ではなく、患者自らの状況を自由に入力出来る様にすることも可能である。
ここで、患者の現在の状況を問う質問としては、例えば、国際勃起機能スコア(IIFE)を採用することが好ましい。
【0044】
患者は自身が考えている現在の状況を示す回答(例えば選択肢)を、患者側の情報処理端末3の入力ブロック3Cに入力する(ステップS13)。ここで、患者の回答が「2:最近、しばしば勃起が出来ない。」である場合を例示する。なお、ステップS13において、現在の状況になった原因を患者自身に回答させることも出来る。
そしてステップS14で、患者の回答は、当該患者を特定する患者IDと共に、通信ブロック3Eから制御装置1へ送信される。
ここで、ステップS12~ステップS14に代えて、患者側からシステム100の利用申請があり、ID、パスワードが確認された後に、患者が状況等入力表示を行うのに必要な情報を、制御装置1から患者側の情報処理端末3へ送信することも可能である。
【0045】
図7におけるステップS15では、制御装置1のEDタイプ判断ブロック1Eは、患者ID、患者の回答(現在の状況を示す回答)を受信する。そしてステップS16に進み、EDタイプ判断ブロック1Eは、患者の現在の状況を示す回答(情報)に基づいて、及び/又は、図示しないデータベース2に記憶される情報(診療履歴等の患者情報、ED治療に関する情報、PDE5阻害薬に関する情報、認知行動療法に関する情報等)も利用して、患者のEDのタイプが、「心因性ED」なのか、「器質性ED」なのか、「混合性ED」なのかを特定(判断)する。
ステップS16の判断結果が心因性ED或いは混合性EDの場合、ステップS17に進み、ステップS16の判断結果が器質性EDの場合、ステップS19に進む。
【0046】
ステップS17では、制御装置1の心因性又は混合性ブロック1Fは心因性EDの治療を実行する。図示の実施形態では、例えば心因性EDに対する治療として、チャットボットによる認知行動療法(実行手順を
図8に示す)、チャットボットを用いない認知行動療法(実行手順を
図9に示す)、エクササイズ、音楽、映像等による療法(実行手順を
図10に示す)を実行している。
ステップS18では、患者は混合性EDであるか否かを判断する。混合性EDにおける心因性EDの部分についてはステップS17の治療が有効であるが、器質性EDに相当する部分については器質性ED用の治療が効果的だからである。
ステップS18で混合性EDの場合(ステップS18が「Yes」)はステップS19に進み、ステップS18の判断結果が、混合性EDでない場合(ステップS18が「No」)は、ステップS17で心因性EDに必要な治療が行われているので、
図7の制御を終了する。
ステップS19では患者は器質性ED或いは混合性EDの何れかである。制御装置1の器質性ブロック1Gは、器質性EDに対する治療を実行する。器質性EDに対する治療としては、例えば処方箋(PDE5阻害薬、プロスタグランジンE1製剤等)による。併せて器具の紹介を行うことも出来る。
【0047】
図7のステップS16で「心因性ED」と判断された場合に、チャットボットを用いた認知行動療法を用いた治療の手順を、
図8で詳細に示している。
図8において、ステップS21では、制御装置1は、患者IDに基づいてデータベース2に対して、当該患者の患者情報を制御装置1に対して送信する旨の要求を送信する。併せてステップS21では、データベース2に記憶された心因性勃起不全治療に関する情報(治療方法、PDE5阻害薬に関する情報、認知行動療法に関する情報等)を制御装置1に送信する旨の要求を、データベース2に対して送信する。
ステップS22では、データベース2の通信ブロック2Eが制御装置1からの前記送信要求を受信する。そしてステップS23では、データベース2の制御ブロック2Aは、患者情報送信要求と共に受信された患者IDに基づき、記憶ブロック2Dにおける当該患者の患者情報、心因性勃起不全治療に関する情報を取り出し、ステップS24で、データベース2の通信ブロック2Eは当該取り出した情報を制御装置1へ送信する。
【0048】
ステップS25では、制御装置1は、データベース2から患者情報、心因性勃起不全治療に関する情報(治療方法、PDE5阻害薬に関する情報、認知行動療法に関する情報等)を受信する。
ステップS26では、受信された患者情報、心因性勃起不全治療に関する情報及び患者の現在の体調(状況)関する情報に基づいて、制御装置1の心因性又は混合性ブロック1Fが療法リストから現在の患者に適した(実行する)認知行動療法を選択する。ステップS26において、治療方法を複数選択することが可能であり、複数選択された治療方法を実行する順番を決定することも出来る。
図示の実施形態では、既に
図7のステップS16により心因性ED(又は混合性EDを含む)であることが確認されており、
図3の心因性又は混合性ブロック1Fの構成図で説明した様に、最初にチャットボットによる認知行動療法を実行し(N=1)、続いて(チャットボットではない
図9に示す)認知行動療法を実行する(N=2)。さらに、必要に応じて認知行動療法以外の療法を実行することも出来る(N=3、N=4)。
なお、図示の実施形態では、心因性勃起不全治療に関する情報は、共にデータベース2に記憶され、ステップS26において制御装置1により活用されるが、心因性勃起不全治療に関する情報を予め制御装置1の記憶ブロック1Dに記憶させておくことも可能である。
【0049】
図8において、ステップS27では、人工知能AIによって自動化された会話ロボットであるチャットボットによって、患者との会話(メール授受)を開始する。チャットボットによる会話(メール授受)を行う中で、必要な情報交換が円滑に行える様に環境が整備される。
ステップS28において、制御装置1の心因性又は混合性ブロック1F(より具体的には、
図3に示すチャットボット実行ブロック1FB、チャットボット用AIブロック1FC)により、当該患者に対して認知行動療法を実行する。チャットボットによる会話(メール授受)を行う中で、患者は認知の歪み等を自覚し、認知を書き換えることが出来る。すなわち、係る会話(メール授受)を通じ、AIにより的確、且つ効果的に心理的要因に関して患者の認知の書き換えを行い、EDに関して直接的に患者の認知の書き換えを行って、心因性EDの治療を実行する。
チャットボットによる会話(メール授受)は、経過観察においても実行される。
【0050】
ステップ29では、制御装置1の治療結果判断ブロック1Hは、チャットボット行動療法の効果確認を行う。効果確認に際して、制御装置1は患者に対して問診による効果確認(
図12で後述)、及び/又は、患者の生理的データに基づく物理的な効果確認(
図13~
図22で後述)を行う。
さらに、ステップS29では、効果確認の結果情報を医療機関4に送信する。医療機関4は当該効果確認の結果を検証し、治療の是非を判断した上、判断結果を治療結果判断ブロック1Hに送信する。
ステップS30では、制御装置1の治療結果判断ブロック1Hは、ステップS29での医療機関4の判断結果を踏まえ、所定の治療効果を確認した場合、経過観察実行設定を行う。
明確には図示されていないが、ステップS29で医療機関4の判断結果を踏まえ、所定の治療効果を確認出来なかった場合、その他の治療方法の実行や採用の検討を含めて、治療を続行する。
【0051】
図9は、チャットボット認知行動療法以外の認知行動療法を採用する場合(
図8のステップS26参照)の手順を示している。
図9において、ステップS31では、制御装置1の心因性又は混合性ブロック1F(より具体的には、
図3に示す認知行動療法実行ブロック1FD)は認知行動療法(ED自体に関して直接的に患者の認知の書き換えを行う療法)に基づき、現状の体調(状況)に関連する患者の認知を問う患者認知情報要求を、患者側の情報処理端末3に送信する。
ステップS32では、ステップS31で送信された現状の体調(状況)に関連する情報に対する要求(メッセージ:患者の認知を問う患者認知情報要求)を、患者側の情報処理端末3が受信する。そして、ステップS33では、受信した患者認知情報要求(メッセージ)が表示ブロック3Bに表示される。
【0052】
ここで、認知行動療法はED自体に関して直接的に患者の認知の書き換えを行うものであり、ステップS33で表示する患者認知情報要求のメッセージは、EDであることに関して患者の認知を問うものである。
図示の実施形態では、患者認知情報要求のメッセージは、例えば、「心理的な要因のEDに悩まされている様ですが、EDの男性は男性としての価値に欠けると考えていますか? 1:男性として価値に欠ける。2:男性として価値に欠けるとは言えないが、社会的役割の面で足りなさを感じる。3:男性として価値に欠けることはない。人間性や仕事の能力が男性の価値を決定する。」の様な内容であり、その様なメッセージとしては、例えば、国際勃起機能スコア(IIFE)に照らした内容を採用することが好ましい。
【0053】
ステップS34では、患者は、正しいと考える回答(選択肢)を患者側の情報処理端末3の入力ブロック3Cに入力する。例えば、患者がED患者は「男性として価値に欠ける。」旨の回答を選択した場合について、以下で述べる。
ステップS34で入力された回答は制御装置1に送信される。そしてステップS35では、制御装置1は、ステップS34で入力された患者の回答を受信する。
ステップS36では、制御装置1の心因性又は混合性ブロック1Fは、受信された患者の回答情報と正答情報(既にデータベース2から取得した勃起不全治療に関する認知行動療法情報に含まれる情報)とを比較し、患者の勃起不全であること自体についての認知が妥当であるか否か(患者の認知が正しいか否か)を決定する。
【0054】
図9において、ステップS36において患者の認知が正しい場合は、ステップS37では、患者の認知が正しい旨を患者側の情報処理端末3に送信する。ステップS36において患者の認知が誤りである場合には、ステップS37では、正答情報を示す指導情報を含む認知行動療法情報を患者側の情報処理端末3に送信する。
図9を参照して上述した例では、認知行動療法について患者認知情報の正答は「3:男性として価値に欠けることはない。人間性や仕事の能力が男性の価値を決定する。」であり、ステップS36における前記患者の回答(例示された回答)「1:男性として価値に欠ける。」は誤りである。従って上述した例では、ステップS37において患者の回答は誤りであると判断して、正答情報を示す指導情報を送信する。当該指導情報は、例えば、「EDであるからといって男性として価値に欠けることはなく、男性の価値を決定するのは人間性や仕事の能力です。自分らしく自信をもって生活して下さい。」という様な内容である。
【0055】
上述した例とは異なり、ステップS36において患者が正答した場合には、指導情報として、例えば、「正しい認知をされております。自分らしく自信をもって生活して下さい。」という様な内容のメッセージが送信される(ステップS37)。
ステップS38では、患者側の情報処理端末3は、ステップS37で送信された正答情報を示す指導情報を含む認知行動療法情報を受信する。ステップS39では、認知行動療法情報の指導情報を患者側の情報処理端末3の表示ブロック3Bに表示する。当該指導情報を受信することにより、患者は、勃起不全について誤解していることを認識出来て、勃起不全に関する患者の認知の書き換えを行うこと可能になる。それにより、心因性EDの状態から回復することが期待出来る。
【0056】
ステップS32~ステップS39で患者が(患者側の情報処理端末3を用いて)認知行動療法を実行した後、ステップS40で、患者側の情報処理端末3は認知行動療法を実行したことを示す認知行動療法実行確認情報を制御装置1の心因性又は混合性ブロック1Fに送信する。
ステップS41において、ステップS40で患者側から送信された認知行動療法実行確認情報を制御装置1が受信する。そしてステップS42では、制御装置1は、その時点までに実行された認知行動療法について診療履歴に記録して更新する旨の更新命令を、データベース2へ送信する。
ステップS43において、データベース2は制御装置1からの更新命令を受信し、ステップS44において当該更新命令に基づき診療履歴を更新する。
ステップS41において、制御装置1から患者側の情報処理端末3に確認メッセージを送信し、患者からの回答を得ることも出来る。患者側の情報処理端末3で認知行動療法が実行されたことを確認した後に、患者が認知行動療法によって誤った認知であったことを認識して、正しい認知をしたか否かを確認するためである。その場合、当該患者からの回答が制御装置1からデータベース2に送信されて、診療履歴が更新される。
ステップS42の後、制御装置1はステップS45の手順を実行する。ステップS45では、心因性又は混合ブロック1Fの経過観察ブロック1FEにより、経過観察を実行するタイミングを設定する経過観察実行設定が行われる。
【0057】
次に
図10を参照して、
図8のステップS26において、認知行動療法におけるエクササイズ(例えば注意訓練等) による療法を選択した場合の手順を説明する。
図10において、ステップS51では、制御装置1の心因性又は混合性ブロック1Fは、患者にとって療法として効果的なエクササイズ、音楽、映像を選択する。選択に際しては、必要に応じてデータベース2に蓄積された患者情報、心因性勃起不全治療に関する情報等の関連情報が参酌(利用)される。
ステップS52では、制御装置1は、ステップS51で選択されたエクササイズ、音楽、映像のデータを、データベース2に要求する(送信要求)。
ステップS53ではデータベース2の通信ブロック2Eが制御装置1からの送信要求を受信する。そしてステップS54では、データベース2の制御ブロック2Aが、記憶ブロック2DからステップS52で選択されたエクササイズ(又は音楽、映像)のデータを取り出し、データベース2の通信ブロック2Eは取り出したエクササイズ(又は音楽、映像)のデータを制御装置1に送信する。
【0058】
ステップS55では、制御装置1の心因性又は混合性ブロック1Fは、データベース2から送信されたエクササイズ(又は音楽、映像)のデータを受信する。そして、当該データを患者側の情報処理端末3に送信する。
ステップS56では、患者側の情報処理端末3がエクササイズ(又は音楽、映像)のデータを受信し、患者は、患者側の情報処理端末3或いは当該エクササイズ(又は音楽、映像)が再生可能な媒体を用いて、エクササイズ(又は音楽、映像)を実行する。
ステップS57では、エクササイズ(又は音楽、映像)を実行した患者は、患者側の情報処理端末3により制御装置1にエクササイズ(又は音楽、映像)を実行した旨の報告を送信する。
【0059】
ステップS58において、制御装置1は患者がエクササイズ(又は音楽、映像)を実行したことを受け、その効果を確認するための問診の送信をデータベース2に要求する(送信要求)。
ステップS59では、データベース2は制御装置1からの問診の送信要求を受信し、当該問診のデータを取り出して制御装置1に送信する。なお、問診の内容に関しては、例えば、国際勃起機能スコア(IIFE)を採用することが好ましい。
ステップS60では、制御装置1の心因性又は混合性ブロック1Fは、データベース2から取得した問診を患者側の情報処理端末3に送信する。
ステップS61では、患者は、患者側の情報処理端末3の表示部3Bに表示された問診内容を確認し、入力ブロック3Cを介して問診に回答して、制御装置1に送信する。
問診の内容としては、例えば、「エクササイズ(又は音楽、映像)を実行したことで、あなたの心身の状態に変化はありましたか? 近いものを選択してください。 1:大変すっきりしてリラックスした状態となった。 2:多少気分が晴れたがこの状態は長く続かないと思う。 3:エクササイズ(又は音楽、映像)を実行する前と変わらない。」等である。ここで、この例文は、国際勃起機能スコア(IIFE)を採用したものではないことを付記する。
また、問診の回答は、選択肢ではなく、患者自らの状況を自由に入力出来る様にすることも可能である。
【0060】
ステップS62では、制御装置1は患者の回答を受信し、心因性又は混合性ブロック1Fの経過観察ブロック1FE(治療結果判断ブロック1Hで判断することも出来る)、当該回答内容から患者が実行したエクササイズ(又は音楽、映像)の効果を確認(判定)する。
図示の実施形態において、制御装置1による効果確認の際は、患者が実行したエクササイズ(又は音楽、映像)の情報、患者の問診回答内容、患者の治療履歴等の情報を医療機関4に提供し、医療機関4の判断を取得した上で実施している。ただし、当該医療機関4の判断を省略することも可能であり、その場合、医師が治療結果判断ブロック1Hにおける効果確認の情報をチェックした上で、判断する。
ステップS63では、心因性又は混合性ブロック1F(或いは治療結果判断ブロック1H)は、ステップS62における医療機関4の判断結果をも踏まえ、所定の治療効果を確認した場合、経過観察実行設定を行う。
明確には図示されていないが、ステップS62で医療機関4の判断結果を踏まえ、所定の治療効果を確認出来なかった場合、必要に応じてその他のエクササイズ(又は音楽、映像)による治療を続行することが出来る。
【0061】
次に
図11を参照して、経過観察実行設定の手順を説明する。
図11において、ステップS71では、制御装置1により、患者が実行した治療法(例えば
図8、
図9、
図10で説明した治療法)に関する情報の送信が、データベース2に要求される(送信要求)。
ステップS72で、データベース2の通信ブロック2Eが制御装置1からの送信要求を受信すると、ステップS73では、データベース2の制御ブロック2Aが、記憶ブロック2Dにおける実行した治療法に関する情報を取り出し、データベース2の通信ブロック2Eにより制御装置1へ送信する。
ステップS74では、制御装置1の心因性又は混合性ブロック1Fが、患者が実行した治療法に関する情報を受信する。
【0062】
ステップS75では、制御装置1の心因性又は混合性ブロック1Fは、経過観察を行うタイミングを、例えば、認知行動療法の実行から1日経過時と決定する。
ステップS76では、認知行動療法の実行から1日経過時に経過観察を実行することを予約する。
ステップS74において、制御装置1がデータベース2から取得する情報(患者が実行した治療法に関する情報)には経過観察の要否が含まれている。そのため、図示の例とは異なり、患者が実行した認知行動療法で経過観察が不要な場合には、ステップS76を実行せずに、
図8のフローチャートを終了する。経過観察が不要な認知行動療法は、定期実行プロセスとして実行することが出来る。
【0063】
次に、
図12を参照して経過観察実行処理の手順を説明する。
図12において、ステップS81では、制御装置1の心因性又は混合性ブロック1Fは、
図9のステップS45で設定し、
図11のステップS76で予約した経過観察を実行する所定のタイミングで(治療方法を実行してから所定時間経過した時に)、患者の状況が改善したか否かを確認する効果確認メッセージ(例えば国際勃起機能スコア(IIFE)或いはそれを参照して作成されたメッセージ)を、患者側の情報処理端末3に送信する。
ステップS82では患者側の情報処理端末3が効果確認メッセージを受信し、ステップS83では受信した効果確認メッセージを表示ブロック3Bに表示する。患者が心因性EDの治療を受けた場合には、効果確認メッセージは、例えば「日常生活で心配事、悩みからの心的不安は少しでも軽減されましたか?1:はい。確実に(或いは僅かであるが)軽減した。2:いいえ。治療前と変わらない。」の様な内容となる。
ステップS84では、患者は該当する回答(選択肢)を患者側の情報処理端末3の入力ブロック3Cに入力する。
ステップS84で入力された患者回答は制御装置1に送信される。
【0064】
図12において、ステップS85では、ステップS84で入力された患者回答が、制御装置1により受信される。
ステップS86では、心因性又は混合性ブロック1F(或いは治療結果判断ブロック1H)は、ステップS84で入力された患者回答が「1:はい」(すなわち効果あり)であるか否かを判断する。
ここで、図示の実施形態においては、ステップS85の段階で、患者が実行した認知行動療法の情報、効果確認メッセージに対する患者回答内容、患者の治療履歴等の情報を医療機関4に提供し、実行した認知行動療法は効果があったか否かの医療機関4の判断を取得した上で、ステップS86の判断を実行している。ただし、当該医療機関4の判断を省略することも可能であり、その場合、例えば医師が治療結果判断ブロック1Hにおける効果確認の情報をチェックした上で、判断することが出来る。
当該患者回答が「1:はい」であり、医療機関4の判断と併せて、効果ありと判断出来る場合は(ステップS86が「Yes」)、実行した認知行動療法により患者の心的不安を軽減させる一定の効果があったと判断し、経過観察を終了する。
一方、患者回答が「2:いいえ」であり、医療機関4の判断と併せて、効果ありと判断出来ない場合は(ステップS86が「No」)、心的不安を軽減させる効果は認められないため、ステップS87で他の認知行動療法或いは器質性EDに対する療法が選択される。
【0065】
明確には図示されていないが、選択された認知行動療法を実行した後に、適切なタイミングで効果の確認を行い、依然として患者の状況(体調など)が改善していない場合には、さらに改善するための適切な認知行動療法を実行することが可能となる。
また、経過観察処理は体調が改善するまで所定の間隔で繰り返すことが出来る。
【0066】
図示の実施形態において、心理的要因が深層心因と考えられる場合の認知行動療法では、制御装置1から患者側の情報処理端末3に送信する患者認知情報要求のメッセージ(
図9のステップS31で送信されるメッセージ)は、例えば、「日常生活ではなく過去の出来事に関して、潜在的な悩みがあるようですが、解決が難しいと考えていますか? 1:自分では精神的にコントロールが難しい。2:時間が解決するかもしれないが、長期間掛かりそう。3:ゆっくりでも良いから焦らずに時間を掛けて解決したい。(必要に応じ専門のコンサルティングを受けたい)」等にすることが出来る。
この場合、患者認知情報の正答は「3:ゆっくりでも良いから焦らずに時間を掛けて解決したい。」となり、制御装置1から患者側の情報処理端末3に送信する正答情報を示す指導情報は、例えば、「ゆっくりでも良いから焦らずに時間を掛けて解決して下さい。専門のコンサルティングを受けるのも有効でしょう。解決に向かう中で徐々に心的不安からも解放され、病状は快方に進むでしょう。」等となる。
効果確認メッセージとして、例えば「過去の出来事に関する悩みは解決出来そうですか? 1:はい。時間が必要かもしれないが自信はある。2:いいえ。治療前と変わらない。」等にすることも出来る。
【0067】
図12ではED治療の効果の有無については、患者の自己申告に基づいて判断されている。それに対して、物理的な測定により治療の効果の有無を判断することが可能である。
図13~
図22は、治療の効果の有無の判断について、患者の自己申告ではなく、物理的なパラメータを測定して判断する態様(変形例)を示している。
最初に
図13、
図14を参照して、交感神経のマーカー・副交感神経のマーカーにより治療効果を判断する態様を説明する。
交感神経・副交感神経のマーカーは、心臓を動かす筋肉の電気パルスであり、耳と指にセンサを付けて計測可能である。そして、副交感神経のマーカーの数値が上がれば勃起力が向上し、交感神経のマーカーの数値が上がると射精能力が向上することが知られている。
したがって、患者の副交感神経のマーカー、交感神経のマーカーの数値が、例えば共に上がれば、ED治療の効果で勃起力及び射精能力が改善したと推定することが出来る。
【0068】
図13には、交感神経のマーカー・副交感神経のマーカー(交感神経のマーカー及び/又は副交感神経のマーカー)により治療効果を判断する交感神経マーカー等効果判断ブロック1H1の詳細が示されている。判断ブロック1H1は、治療効果判断ブロック1H(
図2)の一部の機能を担っている。
図13において、交感神経マーカー等効果判断ブロック1H1は、マーカー数量化ブロック1H1A、比較ブロック1H1B、治療結果判定ブロック1H1Cを有している。
交感神経マーカー・副交感神経マーカー計測用センサ5は患者側の情報処理端末3(例えばパーソナルコンピュータPC)に接続されている。患者側の情報処理端末3は、信号ラインSL31を介して、判断ブロック1H1のマーカー数量化ブロック1H1Aに、接続されている。また、
図13では明示されていないが、患者側の情報処理端末3は、ネットワーク10(
図1)を介して医療機関側の情報処理端末4に接続されている。
なお、交感神経マーカー・副交感神経マーカー計測用センサ5は、後述する引張りセンサ、血糖値計測センサ、血流センサ、赤外線温度センサと同様、
図2における患者側の計測ブロック3Aを構成している。
【0069】
マーカー数量化ブロック1H1Aは、交感神経マーカー・副交感神経マーカー計測用センサ5による計測値を、患者側の情報処理端末3、信号ラインSL31を介して受信し、しきい値と比較可能となる様に数量化する機能を有している。
数量化されたマーカーの数値は、信号ラインSL32を介して比較ブロック1H1Bに送信される。
比較ブロック1H1Bは、マーカー数量化ブロック1H1Aから送信された数値と、しきい値と比較する機能を有している。しきい値は、当該患者のED治療効果を判断するために設定された数値であり、データベース2(
図2)から、信号ラインSL35を介して比較ブロック1H1Bが取得する。
比較ブロック1H1Bによる比較結果は、信号ラインSL33を介して治療結果判定ブロック1H1Cに送信される。
【0070】
治療結果判定ブロック1H1Cは、比較ブロック1H1Bの比較結果から、患者の勃起力及び/又は射精能力の改善の有無を確認し、治療結果(治療効果の有無)を判断する機能を有している。上述した様に、患者の交感神経マーカーの数値がしきい値を超えれば、治療効果により射精能力が改善したと判断出来る。一方、患者の副交感神経マーカーの数値がしきい値を超えれば、治療効果により勃起力が改善したと判断することが出来る。
治療結果判定ブロック1H1Cの判断に際しては、信号ラインSL34(双方向信号ライン)を介して、医療機関4の見解、判断を取得した上で、実行する。ただし、医療機関4を省略して、医療機関4の見解、判断を取得することを省略することが可能である。
図13において、符号「4」は「医療機関側の情報処理端末」でなく、「医療機関」自体を表示しており、
図15、
図17、
図19、
図21においても同様である。
また図示の実施形態では、交感神経マーカー等効果判断ブロック1H1は制御装置1の一部を構成としているが、交感神経マーカー等効果判断ブロック1H1を患者側の情報処理端末3側に含めることも可能である。
【0071】
図14を参照して、交感神経のマーカー・副交感神経のマーカー(交感神経のマーカー及び/又は副交感神経のマーカー)によりED治療効果を判断する手順を説明する。
図14において、ステップS101では、交感神経のマーカー・副交感神経のマーカーによりED治療の効果を確認する必要があるか否かを判断する。
ステップS101の判断の結果、ED治療効果の確認を行う場合(ステップS101が「Yes」)はステップS102に進み、ED治療効果の確認を行わない場合はステップS101に戻る(ステップS101が「No」のループ)。
ステップS102では、交感神経マーカー等効果判断ブロック1H1のマーカー数量化ブロック1H1は、交感神経マーカー・副交感神経マーカー計測用センサ5の計測値を、患者側の情報処理端末3(PC)を介して受信する。そして、マーカー数量化ブロック1H1は受信した計測値を数量化する。
【0072】
ステップ103では、比較ブロック1H1Bは、データベース2から、ED治療効果を判断するためのしきい値(例えば、数量化した交感神経のマーカー及び副交感神経のマーカーのそれぞれに対するしきい値)を取得する。
ステップS104では、比較ブロック1H1Bにより、ステップS102で数量化した計測値(交感神経のマーカー及び副交感神経のマーカーの計測値)と、ステップS103で取得したしきい値とを比較して、交感神経のマーカーと副交感神経のマーカーの何れかの数値が改善のしきい値(治療効果が有ったと判断されるしきい値)を超えたか否かを判断する。ここで、当該しきい値は、個々の患者毎に異なり、治療方法の種類毎に異なる。
ステップS104の判断の結果、交感神経のマーカーの数値又は副交感神経のマーカーの数値が改善のしきい値を超えた場合(ステップS104が「Yes」)、ステップS105に進み、改善のしきい値以下の場合(ステップS104が「No」)、ステップS101に戻る。
【0073】
ステップS105(しきい値を超えた場合)では、比較ブロック1H1Bは、交感神経のマーカーの数値のみが改善のしきい値を越えたのか?副交感神経のマーカーの数値のみがしきい値を越えたのか?両方のマーカーの数値がしきい値を超えたか?を判断する。
ステップS105の判断の結果、交感神経のマーカーの数値のみがしきい値を超えた場合はステップS106に進み、副交感神経のマーカーの数値のみがしきい値を超えた場合はステップS107に進み、交感神経のマーカーの数値及び副交感神経のマーカーの数値の両方がしきい値を超えた場合はステップS108に進む。
ステップS106では、治療結果判定ブロック1H1Cは、患者の射精能力が改善したと判断する。ステップS107では、治療結果判定ブロック1H1Cは、患者の勃起力が改善したと判断する。さらに、ステップS108では、治療結果判定ブロック1H1Cは、患者の射精能力及び勃起力が共に改善したと判断する。そしてステップS109に進む。
【0074】
ステップS109では、当該治療を続行するか否かを判断する。当該判断は、患者本人の意向、医療機関4或いは医師の判断に基づき行われる。
ステップS109の判断の結果、治療を続行する場合(ステップS109が「Yes」)、
図7のステップS15に戻り、治療を継続する。
一方、ステップS109の判断の結果、治療を続行しない場合(ステップS109が「No」)、治療を終了する。
【0075】
図15、
図16を参照して、勃起時における男性器の周方向寸法の膨張に起因する引張力により、治療効果を判断する態様を説明する。
EDが治癒すると、就寝中に何回か勃起する。男性器(ペニス)にテープ状のものを巻き付ければ、男性器が勃起すると周方向寸法が増加するので、巻き付けられたテープには引張力が作用する。センサでその様な引張力を計測すれば、患者の勃起及びそのレベルを決定して、ED治療の効果を推定することができる。
なお引張力センサではなく、感圧紙の様に、加えた張力により色彩が徐々に変化するタイプの紙を用いても良い。
【0076】
図15には、勃起により男性器に巻いたテープに作用する引張力を計測することにより治療効果を判断する男性器引張力効果判断ブロック1H2の詳細が示されている。男性器引張力効果判断ブロック1H2は、
図2における治療効果判断ブロック1Hの一部の機能を担っている。
男性器引張力効果判断ブロック1H2は、引張力演算ブロック1H2A、比較ブロック1H2B、治療結果判定ブロック1H2Cを有している。
引張力センサ6は患者の男性器Mに巻かれたテープ7に取り付けられ、テープ7(男性器Mの周方向)に作用する引張力を計測できる。引張力センサ6は患者側の情報処理端末3に接続され、患者側の情報処理端末3は信号ラインSL41を介して判断ブロック1H2の引張力演算ブロック1H2Aに接続されている。また、患者側の情報処理端末3は、ネットワーク10を介して医療機関側の情報処理端末4に接続させることが出来る。
【0077】
引張力演算ブロック1H2Aは、引張力センサ6の計測結果を患者側の情報処理端末3、信号ラインSL41を介して受信し、引張力センサ6に作用した引張力を決定する機能を有している。引張力演算ブロック1H2Aで決定した引張力は、信号ラインSL42を介して比較ブロック1H2Bに送信される。
比較ブロック1H2Bは、データベース2(
図2)から信号ラインSL45を介して取得した引張力のしきい値(ED治療効果を判断するためのしきい値)と、引張力演算ブロック1H2Aで決定した引張力を比較する機能を有している。
比較結果は、信号ラインSL43を介して治療結果判定ブロック1H2Cに送信される。
治療結果判定ブロック1H2Cは、比較ブロック1H2Bの比較結果から、患者の勃起時の男性器に作用する引張力の改善を判定し、治療効果の有無を判断する機能を有している。すなわち、計測された引張力がしきい値以上であれば、勃起力が改善し、ED治療効果があったと判断する。
治療結果判定ブロック1H2Cの判断に際しては、信号ラインSL44(双方向信号ライン)を介して、医療機関4の見解、判断を取得した上で、実行する。ただし、医療機関4の見解、判断を取得することは省略することも可能である。
【0078】
図16を参照して、テープ7に作用する引張力を引張力センサ6で計測することにより治療効果を判断する手順を説明する。
図16のステップS111では、勃起の際にテープ7に作用する引張力を計測することにより治療効果を確認するか否かを判断する。治療効果の確認を実施する場合(ステップS111が「Yes」)はステップS112に進み、当該治療効果の確認を実施しない場合はステップS111に戻る(ステップS111が「No」のループ)。
ステップS112では、男性器引張力効果判断ブロック1H2の引張力演算ブロック1H2Aが、患者側の情報処理端末3(PC)を介して引張力センサ6の計測値を受信する。そして引張力演算ブロック1H2Aはテープ7に作用した引張力を演算する(ステップS113)。
【0079】
ステップ114では、比較ブロック1H2Bは、データベース2から引張力のしきい値を取得する。そして比較ブロック1H2Bは、計算された引張力とステップS114で取得したしきい値を比較する(ステップS115)。
ステップS115において、引張力がしきい値以上の場合(ステップS115が「Yes」)はステップS116に進み、引張力がしきい値以上ではない場合(ステップS115が「No」)はステップS117に進む。
ステップS116(引張力がしきい値以上の場合)では、治療結果判定ブロック1H2Cは患者の勃起力が改善したと判断する。一方、ステップS117(引張力がしきい値以上ではない場合)は、治療結果判定ブロック1H2Cは患者の勃起力が改善していないと判断する。
【0080】
ステップS118では、当該治療を続行するか否かを判断する。当該判断は、患者本人の意向、医療機関4或いは医師の判断に基づき行われる。
ステップS118の判断の結果、治療を続行する場合(ステップS118が「Yes」)は
図7のステップS15に戻り、他の療法への変更も含めて治療を継続する。一方、治療を続行しない場合(ステップS118が「No」)は治療を終了する。
【0081】
図17、
図18を参照して、血糖値の減少により心理療法の効果を判断する態様を説明する。
EDの患者が心理療法を受けると血糖値が低下することが確認されている。また、糖尿病は血管や神経などに障害が起こるため、生活習慣病の中でもEDの起こる割合が最も高い疾患であることから、血糖値の低下によるEDの改善が期待できる。そのため、患者の血糖値を計測すれば、EDの治療の効果が推定できる。
【0082】
図17には、血糖値を計測することにより治療効果を判断する血糖値効果判断ブロック1H3の詳細が示されている。当該判断ブロック1H3は、
図2における治療効果判断ブロック1Hの一部の機能を担っている。
血糖値効果判断ブロック1H3は、血糖値決定ブロック1H3A、比較ブロック1H3B、治療結果判定ブロック1H3Cを有している。
血糖値計測キット7は患者側の情報処理端末3に接続され、患者側の情報処理端末3は信号ラインSL51を介して判断ブロック1H3の血糖値決定ブロック1H3Aに接続されている。また、患者側の情報処理端末3は、ネットワーク10(
図1)を介して医療機関側の情報処理端末4に接続している。
【0083】
血糖値決定ブロック1H3Aは、血糖値計測キット7による計測値を、患者側の情報処理端末3、信号ラインSL51を介して受信し、血糖値を決定する機能を有している。決定された血糖値は、信号ラインSL52を介して比較ブロック1H3Bに送信される。
比較ブロック1H3Bは、血糖値決定ブロック1H3Aから送信された血糖値を、データベース2(
図2)から信号ラインSL55を介して取得した血糖値のしきい値と比較する機能を有している。その比較結果は、信号ラインSL53を介して治療結果判定ブロック1H3Cに送信される。
治療結果判定ブロック1H3Cは、比較ブロック1H3Bの比較結果から、治療結果(治療効果の有無)を判断する機能を有している。すなわち、患者の血糖値がしきい値以下であれば、血糖値が低下し、EDが改善したと判断する。
治療結果判定ブロック1H3Cの判断に際しては、信号ラインSL54(双方向信号ライン)を介して、医療機関4の見解、判断を取得した上で、実行する。ただし、医療機関4の見解、判断を取得することは省略することも可能である。
【0084】
図18には、患者の血糖値(の低下)を血糖値計測キット7で計測することにより治療効果を判断する手順が示されている。
図18の手順は、パラメータが血糖値であることと、患者の血糖値がしきい値以下であれば血糖値が低下しEDが改善したと判断すること、EDの改善を判断し勃起力の改善は判断しないことを除き、
図16と概略同様である。そして
図18のステップS121~S128は、
図16のステップS111~S118と対応している。
【0085】
次に、
図19、
図20を参照して、血流速度により治療効果を判断する態様を説明する。
勃起力が旺盛な男性器においては血流が良く、その人の手の指等における血流も良好である。そのため、患者の血流をチェックし、血流速度を計測すれば、例えば勃起力を確認することが出来て、ED治療の効果が推定出来る。
図19には、血流速度を計測することにより治療効果を判断する血流速度効果判断ブロック1H4の詳細が示されている。判断ブロック1H4は、
図2における治療効果判断ブロック1Hの一部の機能を担っている。
血流速度効果判断ブロック1H4は、血流速度決定ブロック1H4A、比較ブロック1H4B、治療結果判定ブロック1H4Cを有している。
血流計測装置8は患者側の情報処理端末3に接続され、患者側の情報処理端末3は、信号ラインSL61を介して判断ブロック1H4の血流速度決定ブロック1H4Aに接続されている。また、患者側の情報処理端末3は、ネットワーク10(
図1)を介して医療機関側の情報処理端末4に接続している。
【0086】
血流速度決定ブロック1H4Aは、血流計測装置8による計測値を、患者側の情報処理端末3、信号ラインSL61を介して受信し、血流速度を決定する機能を有している。決定された血流速度は、信号ラインSL62を介して比較ブロック1H4Bに送信される。
比較ブロック1H4Bは、血流速度決定ブロック1H4Aから送信された血流速度を、データベース2(
図2)から信号ラインSL65を介して取得した血流速度のしきい値と比較する機能を有している。この比較結果は、信号ラインSL63を介して治療結果判定ブロック1H4Cに送信される。
治療結果判定ブロック1H4Cは、比較ブロック1H4Bの比較結果から、治療結果(治療効果の有無)を判断する機能を有しており、患者の血流速度がしきい値以上であれば、勃起力が改善しEDの治療効果があったと判断する。
治療結果判定ブロック1H4Cの判断に際しては、信号ラインSL64(双方向信号ライン)を介して、医療機関4の見解、判断を取得した上で、実行する。ただし、医療機関4の見解、判断を取得することは省略することも可能である。
【0087】
図20には、患者の血流速度を血流速度計測装置8で計測することにより治療効果を判断する手順が示されている。
図20の手順は、パラメータが血流速度であることと、血流速度がしきい値以上であれば勃起力が改善しEDの治療効果があったと判断すること、治療効果の有無を判断していることを除き、
図16、
図18と概略同様である。そして
図20のステップS131~S138は、
図16のステップS111~S118、
図18のステップS121~S128と対応している。
【0088】
図21、
図22を参照して、男性器の表面温度により治療効果を判断する態様を説明する。
発明者の研究によれば、男性器が勃起すれば当該男性器の表面温度が上昇する。そのため、患者の男性器の表面温度を計測し、温度上昇を確認出来れば、勃起力が改善しEDの治療の効果があったことを推定できる。
【0089】
図21には、男性器の表面温度を計測することにより治療効果を判断する男性器表面温度効果判断ブロック1H5の詳細が示されている。当該判断ブロック1H5は、
図2における治療効果判断ブロック1Hの一部の機能を担っている。
男性器表面温度効果判断ブロック1H5は、男性器表面温度決定ブロック1H5A、比較ブロック1H5B、治療結果判定ブロック1H5Cを有して構成されている。
図示の実施形態では、男性器の表面温度の計測装置として赤外線温度センサ9を使用し、男性器Mの表面に赤外線Rを照射して表面温度を計測する。ただし、男性器の表面に感温紙を貼付して計測することも可能である。
赤外線温度センサ9は患者側の情報処理端末3に接続され、患者側の情報処理端末3は信号ラインSL71を介して判断ブロック1H5の男性器表面温度決定ブロック1H5Aに接続されている。また、患者側の情報処理端末3は、ネットワーク10(
図1)を介して医療機関側の情報処理端末4に接続している。
【0090】
男性器表面温度決定ブロック1H5Aは、赤外線温度センサ9による計測値を、患者側の情報処理端末3、信号ラインSL71を介して受信し、男性器の表面温度を決定する機能を有している。決定された男性器の表面温度は、信号ラインSL72を介して比較ブロック1H5Bに送信される。
比較ブロック1H5Bは、男性器表面温度決定ブロック1H5Aから送信された男性器の表面温度を、データベース2(
図2)から信号ラインSL75を介して取得した男性器表面温度のしきい値と比較する機能を有している。その比較結果は、信号ラインSL73を介して治療結果判定ブロック1H5Cに送信される。
治療結果判定ブロック1H5Cは、比較ブロック1H5Bの比較結果から、治療結果(治療効果の有無)を判断する機能を有し、患者の男性器の表面温度がしきい値以上であれば、勃起力が改善し、EDの治療効果があったと判断する。
治療結果判定ブロック1H5Cの判断に際しては、信号ラインSL74(双方向信号ライン)を介して、医療機関4の見解、判断を取得した上で、実行する。ただし、医療機関4の見解、判断を取得することは省略することも可能である。
【0091】
図22を参照して、患者の男性器の表面温度を計測することにより治療効果を判断する手順を説明する。
ステップS141では、患者の男性器の表面温度を赤外線温度センサ9で計測することにより治療効果を確認するか否かを判断し、治療効果の確認を実施する場合(ステップS141が「Yes」)はステップS142に進み、当該治療効果の確認を実施しない場合はステップS141に戻る(ステップS141が「No」のループ)。
【0092】
ステップS142では、男性器表面温度効果判断ブロック1H5の男性器表面温度決定ブロック1H5Aは、赤外線温度センサ9の計測値を受信して、男性器の表面温度を決定する。
ステップS143で、比較ブロック1H5Bは、データベース2から男性器の表面温度のしきい値を取得する。そして、患者の男性器の表面温度とステップS143により取得した男性器の表面温度のしきい値を比較する(ステップS144)。男性器の表面温度がしきい値以上の場合(ステップS144が「Yes」)はステップS145に進み、男性器の表面温度がしきい値以上でない場合(ステップS144が「No」)はステップS146に進む。
【0093】
ステップS145(男性器の表面温度がしきい値以上に上昇した場合)において、治療結果判定ブロック1H5CはED治療の効果があったと判断する。一方、ステップS146(男性器の表面温度がしきい値以上ではない場合)では、治療結果判定ブロック1H5CはED治療の効果はなかったと判断する。
ステップS147では治療を続行するか否かを判断する。当該判断は、患者本人の意向、医療機関4或いは医師の判断に基づき行われる。治療を続行する場合(ステップS147が「Yes」)は
図7のステップS15に戻り、他の療法への変更も含め、治療を継続する。一方、治療を続行しない場合(ステップS147が「No」)は治療を終了する。
【0094】
次に、
図23、
図24を参照して、図示の実施形態における器質性EDの治療の1態様を説明する。
図23において、器質性ブロック1Gは
図2の器質性ブロック1Gの機能の一部を担うものである。
図23では、点滴により投入された器質性ED治療用の薬剤が点滴で投与されている間に、VRにより薬剤が男性器或いは勃起機能に関連する臓器(例えば男性ホルモン分泌系の臓器)に到達する動画(或いは映像)を、VRゴーグルにより患者に見せている。この場合、音声を伴うことも可能である。
発明者の実験によれば、係る動画或いは映像を見た患者は、見ていない患者に比較して、ED治療の効率が有意に向上する。心因性の効果(いわゆる「プラシーボ効果」その他)に起因すると推定される。
【0095】
図23において、器質性ブロック1G1は、映像調整用ブロック1G1Aと記憶ブロック1G1Bを有している。
医療機関の医師D等は、医療機関側の情報処理端末としての入出力装置4を操作して、信号ラインSL80を介してED用薬剤供給源12に制御信号を発信し、点滴容器13を用いて診察室の患者Pに点滴投与を行う。また、医師D等は、入出力装置4を操作して、患者の疾病名称、点滴を行う時間(点滴時間)、点滴開始の指令、点滴終了の指令等の点滴情報を、信号ラインSL81を介して器質性ブロック1G1の映像調整用ブロック1G1Aに送信する。
ここで、医師D等と入出力装置4に代えて、ED用薬剤供給源12及び点滴容器13を制御装置1(
図2)に接続することも可能である。
【0096】
診察室に横たわる患者PはVR用ゴーグル14を装着している。
器質性ブロック1G1の映像調整用ブロック1G1Aは、入出力装置4(或いは制御装置1)から取得した点滴情報に基づき、患者P(のVR用ゴーグル14)に提供する最適な映像(或いは動画)を選択、特定すると共に、種々の映像が保存される記憶ブロック1G1Bに対して、信号ラインSL82を介して選択された映像を要求する映像選択信号(選択映像要求信号)を送信する機能を有する。
また、器質性ブロック1G1Aは、選択された映像に基づいて、信号ラインSL83を介して記憶ブロック1G1Bから選択映像を取得し、当該VR用映像データを、信号ラインSL84を介して患者が装着するVR用ゴーグル14に提供する機能を有する。
記憶ブロック1G1Bには、ED治療の際に有効な種々の映像、画像、音声が保存されている。その様な映像、画像、音声としては、例えば、薬剤が男性器或いは勃起機能に関連する臓器(例えば男性ホルモン分泌系の臓器)に到達する映像とその説明の音声がある。そして、係る映像、画像、音声の中から患者のEDの状況等に応じて、映像調整用ブロック1G1Aが最適な映像を選択する。
【0097】
より詳細な機能ブロック図である
図24において、映像調整用ブロック1G1Aは、映像選択ブロック1G1C、時間調整ブロック1G1D、映像信号出力ブロック1G1Eを有している。
図24を参照して、器質性ブロック1G1が患者にVR映像を提供する機能をより詳細に説明する。
映像選択ブロック1G1Cは、入出力装置4から、信号ラインSL81-1を介して患者の疾病名称、具体的な病状等の情報を取得し、当該情報に基づき患者P(のVR用ゴーグル14)に提供する最適な映像を選択、特定する。
また映像選択ブロック1G1Cは、選択、特定された最適な映像を、信号ラインSL82を介して記憶ブロック1G1Bに要求し(映像要求信号)、信号ラインSL83を介して記憶ブロック1G1Bから選択、特定された映像データを取得する。
映像選択ブロック1G1Cが取得した選択、特定された映像データは、信号ラインSL84-1を介して時間調整ブロック1G1Dに送信される。
【0098】
時間調整ブロック1G1Dは、入出力装置4から信号ラインSL81-2を介して送信された点滴時間(患患者Pへの点滴投与時間:予め医師D等が決定)に基づいて、映像選択ブロック1G1Cから送信された映像データを点滴時間に合せて編集して、例えば、点滴時間内に収まる様に主要部分を中心に編集する。
映像調整用ブロック1G1Dで編集された映像データは、信号ラインSL84-2を介して映像信号出力ブロック1G1Eに送信される。映像信号出力ブロック1G1Eは、点滴を開始する旨を指令する点滴開始信号に基づいて、映像調整用ブロック1G1Dから送信された編集されたVR用映像データを、信号ラインSL84-3を介して患者が装着するVR用ゴーグル14に送信する。
また映像信号出力ブロック1G1Eは、点滴を終了する旨を指令する点滴終了信号に基づいて、VR用映像データを患者が装着するVR用ゴーグル14に送信するのを終了する。
【0099】
図23、
図24に示す器質性ブロック1G1においては、患者に器質性ED治療用の薬剤を点滴により投与している間に、上述した内容のVR用映像データを、ゴーグル14により患者に見せている。そのため、ED治療の効率が有意に向上している。なお、VR動画を見せる際に、説明の音声、音楽を伴うことも有効である。
図23、
図24は器質性EDの治療について例示されているが、VRで画像を見せることによるED治療効果の向上は、器質性EDのみならず、心因性ED、混合性EDについても確認された。従って、
図23、
図24の機器は器質性ブロック1Gのみならず、
図2の心因性又は混合性ブロック1Fに設けても良い。
【0100】
図示の実施形態によれば、ED患者が患者側の情報処理端末3及びネットワーク10(例えばインターネット)を介して医師を含む医療機関とコンタクトを取ることが出来、患者は専門医療機関に来訪し、医師と対面して治療を受けるのは、処方等の最小限で良い。そのため、医師との対面治療等におけるプライバシーの問題に対するED患者の心理的な抵抗が小さくなり、治療の最中に脱落してしまう確率が低くなる。
すなわち、図示の実施形態では、患者は医療機関へ来訪し、或いは医師と対面して治療を行う必要が最小限で済み、「ED治療を行っている」という事実は、患者の要請通りに秘匿される。そのため、ED患者の治療に対する抵抗感を大幅に減衰させることが出来る。そして、患者は認知行動療法等の心理療法との併用に抵抗が無くなり、その受診率の向上が期待出来る。
また図示の実施形態によれば、ED治療を行うに際して、認知行動療法を実行することが出来るので、PDE5阻害薬服用のみの治療ではなく、専門家が強く推奨する認知行動療法等の心理療法との併用が可能である。
もちろん、PDE5阻害薬の処方箋の発行等の手続により、PDE5阻害薬の投与による治療も、心理療法或いはそれ以外の治療法と併用して実行することが出来る。
【0101】
図示の実施形態では、ED自体に関する患者の認知の書き換えを行う認知行動療法や、その他の治療法を設定することにより、患者の状況に応じて認知行動療法の種類を多様に選択することが出来て、効果的な治療が期待できる。そして、患者自らにより現実心因或いは深層心因、さらにはEDであること自体と向き合い、認知の歪みを書き換えることで、EDにおける心理的な要因を解消することが出来る。
それに加えて図示の実施形態においては、認知行動療法を実行した後、治療の効果を確認する経過観察を実行するので、当該治療の効果に応じて治療法を変更して、効率的に治療効果を上げることが期待出来る。
さらに、医師を含め医療機関側が使用する医療機関側の情報処理端末4がネットワーク10を介して接続されているので、時々刻々と更新される患者の状況について医師を含めた医療機関側が確認することが可能となる。
【0102】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、図示の実施形態では心理療法として認知行動療法が例示されているが、その他の心理療法も適用可能である。
【符号の説明】
【0103】
1・・・制御装置(コンピュータ或いはサーバ装置)
2・・・データベース
3・・・患者側の情報処理端末(例えばスマートフォン)
4・・・医療機関側の情報処理端末(例えばPC)
1A・・・受付ブロック
1B・・・ID・パスワード判定ブロック
1C・・・新規患者判定ブロック
1D・・・記憶ブロック
1E・・・EDタイプ判断ブロック
1F・・・心因性又は混合性ブロック
1G・・・器質性ブロック
1H・・・治療結果判断ブロック
2A、3A、4A・・・制御ブロック
2B、3B、4B・・・表示ブロック
2C、3C、4C・・・入力ブロック
2D、3D、4D・・・記憶ブロック
2E、3E、4E・・・通信ブロック
10・・・ネットワーク
100・・・ED患者のためのシステム