(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】超音波洗浄装置
(51)【国際特許分類】
B08B 3/12 20060101AFI20220816BHJP
【FI】
B08B3/12 B
(21)【出願番号】P 2017128632
(22)【出願日】2017-06-30
【審査請求日】2020-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】竹内 晴美
(72)【発明者】
【氏名】土肥 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】鳶 幸生
(72)【発明者】
【氏名】川上 直也
(72)【発明者】
【氏名】直野 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】向井 貞
【審査官】関口 知寿
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-284722(JP,A)
【文献】特開2004-121712(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104233698(CN,A)
【文献】特開2007-309610(JP,A)
【文献】特開2012-145238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/04-3/14
B08B 11/00
F24F 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を発生させる超音波発生体を含む超音波洗浄部と、
設置場所に設置され、前記超音波洗浄部を保持する本体部と、
前記本体部における前記超音波発生体の下方位置に設けられ、被洗浄物が浸されるための水が溜められる貯水凹部と、
前記本体部に着脱可能に設けられ、前記貯水凹部に供給される水が入れられる給水タンクと、
前記貯水凹部に設けられた排水口と、
前記排水口を開閉させるための排水弁機構と、
前記排水口から排出された水が溜められる排水容器と、を備え、
前記給水タンクは、前記貯水凹部へ供給される水の放出
口を含み、
前記貯水凹部へ給水を行う際には前記放出口が下を向く状態で前記本体部に装着され、
前記排水弁機構は、
前記排水口を閉塞する排水弁と、
前記排水弁に連結され、前記給水タンクが前記放出口が上を向く状態で前記本体部に装着されたときに前記給水タンクに押されて作動し、前記排水口が開放される方向へ前記排水弁を移動させる作動部材と、を含む、
ことを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波洗浄装置において、
前記排水容器は、前記本体部に離脱可能に装着される、
ことを特徴とする超音波洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
振動ホーンを含む超音波発生手段を内蔵する洗浄装置本体と、水が溜められる水溜め部を有し、被洗浄物を受けるトレイと、を備える超音波洗浄装置が、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1の超音波洗浄装置では、ユーザが、被洗浄物の汚れ箇所に振動ホーンの先端を接触させた状態で、被洗浄物を水溜め部に溜められた水の中に沈み込ませる。超音波発生手段が動作すると、振動ホーンから放出された超音波エネルギが水を介して被洗浄物に伝わり、被洗浄物に付着していた汚れ成分が被洗浄物から分離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の超音波洗浄装置では、洗浄装置本体とトレイとが別個独立した状態にあり、ユーザは、一方の手で洗浄装置本体を保持し、他方の手で被洗浄物を保持しなければならない。このため、片手による保持だけでは、汚れの箇所に応じて被洗浄物を動かしづらい場合が生じ得る。また、トレイは、テーブルなどの設置場所に置かれるだけであり、被洗浄物を移動させたときに被洗浄物とともにトレイが動きやすく、トレイが傾いて水漏れが生じる虞がある。
【0006】
よって、ユーザが超音波洗浄装置を利用した被洗浄物の円滑な洗浄を行いづらくなることが懸念される。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、ユーザが被洗浄物の円滑な洗浄を行え、ユーザの利便性が向上し得る超音波洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主たる態様に係る超音波洗浄装置は、超音波を発生させる超音波発生体を含む超音波洗浄部と、設置場所に設置され、前記超音波洗浄部を保持する本体部と、前記本体部における前記超音波発生体の下方位置に設けられ、被洗浄物が浸されるための水が溜められる貯水凹部と、前記本体部に着脱可能に設けられ、前記貯水凹部に供給される水が入れられる給水タンクと、前記貯水凹部に設けられた排水口と、前記排水口を開閉させるための排水弁機構と、前記排水口から排出された水が溜められる排水容器と、を備える。前記給水タンクは、前記貯水凹部へ供給される水の放出口を含み、前記貯水凹部へ給水を行う際には前記放出口が下を向く状態で前記本体部に装着される。前記排水弁機構は、前記排水口を閉塞する排水弁と、前記排水弁に連結され、前記給水タンクが前記放出口が上を向く状態で前記本体部に装着されたときに前記給水タンクに押されて作動し、前記排水口が開放される方向へ前記排水弁を移動させる作動部材と、を含む。
【0009】
上記の構成によれば、超音波洗浄部が本体部に保持されているので、ユーザは、被洗浄物を両手で持つことができる。これにより、ユーザは、被洗浄物を円滑に移動させることができる。また、貯水凹部が本体部に設けられているので、被洗浄物を移動させたときに被洗浄物とともに貯水凹部が動いてしまいにくく、貯水凹部から水がこぼれてしまうということが起こりにくい。さらに、給水タンクから自動的に貯水凹部に水が供給されるので、ユーザは、貯水凹部内の水が減る都度、貯水凹部内に水を補給する作業を行わなくてもよくなる。
【0011】
上記の構成によれば、給水タンクが給水時とは反対向きで本体部に装着されたときに貯水凹部からの排水が行われる。このため、給水タンクから貯水凹部へ給水がなされない状態された後に、貯水凹部からの排水を行うことができ、給水と排水とが同時になされることが防止される。
【0012】
上記の構成とされた場合、さらに、前記排水容器は、前記本体部に離脱可能に装着され得る。
【0013】
このような構成とされれば、排水容器を本体部から取り外すことができるので、排水容器内の水の廃棄が容易となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ユーザが被洗浄物の円滑な洗浄を行え、ユーザの利便性が向上し得る超音波洗浄装置を提供できる。
【0015】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明によりさらに明らかとなろう。ただし、以下の実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る、超音波洗浄装置の正面図である。
【
図2】
図2(a)は、実施の形態に係る、給水タンクが取り外された状態の超音波洗浄装置の平面図であり、
図2(b)は、実施の形態に係る、給水タンクが取り外され、超音波洗浄部および上部外装体が除かれた状態の超音波洗浄装置の平面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る、
図2(a)のA-A´線で切断された超音波洗浄装置の側面断面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る、
図2(a)のB-B´線で切断された超音波洗浄装置の側面断面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る、超音波発生体の斜視図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る、給水タンクの縦断面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る、放出口が下を向く状態で給水タンクが本体部に装着された状態の超音波洗浄装置の正面断面図である。
【
図8】
図8は、本実施の形態に係る、放出口が上を向く状態で給水タンクが本体部に装着された状態の超音波洗浄装置の正面断面図である。
【
図9】
図9(a)ないし(c)は、実施の形態に係る、超音波洗浄装置による被洗浄物の汚れの除去について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る、超音波洗浄装置1の正面図である。
図2(a)は、本実施の形態に係る、給水タンク300が取り外された状態の超音波洗浄装置1の平面図であり、
図2(b)は、本実施の形態に係る、給水タンク300が取り外され、超音波洗浄部100および上部外装体220が除かれた状態の超音波洗浄装置1の平面図である。
図3は、本実施の形態に係る、
図2(a)のA-A´線で切断された超音波洗浄装置1の側面断面図である。
図4は、本実施の形態に係る、
図2(a)のB-B´線で切断された超音波洗浄装置1の側面断面図である。
図5は、本実施の形態に係る、超音波発生体110の斜視図である。
【0019】
超音波洗浄装置1は、主に、ワイシャツの袖や襟口の部分に付着した皮脂汚れ、作業着に付着した油汚れなど、被洗浄物に部分的に付着した汚れを、全自動洗濯機やドラム式洗濯機での洗濯に先立って除去するために用いることができる。超音波洗浄装置1は、いわゆる据え置きタイプであり、テーブル、作業台、ドラム式洗濯機の天面など、種々の設置場所に据え付けられ得る。
【0020】
超音波洗浄装置1は、超音波洗浄部100と、本体部200と、給水タンク300と、排水容器400と、を備える。超音波洗浄部100は、超音波を発生させる超音波発生体110を有する。本体部200は、設置場所に設置され、超音波洗浄部100を保持する。本体部200は、超音波発生体110の下方位置に、被洗浄物が浸されるための水が溜められる貯水凹部500を有する。給水タンク300は、本体部200に着脱可能に設けられる。給水タンク300には、貯水凹部500に供給される水が入れられる。排水容器400には、貯水凹部500から排出された水が溜められる。
【0021】
超音波洗浄部100は、超音波発生体110と、ホルダー120と、ハウジング130と、を備える。
図5に示すように、超音波発生体110は、超音波振動子111と、超音波振動子111に結合される振動ホーン112とを含む。振動ホーン112は、導電性を有する金属材料で形成され、先端側に向かうにつれて徐々に細くなる形状を有する。振動ホーン112の先端面112aの形状は、細長い長方形状となる。超音波発生体110は、振動ホーン112の先端から超音波を発生させる。
【0022】
ホルダー120は、超音波発生体110を保持する。ハウジング130は、たとえば樹脂材料により形成され、前後方向に長く、その先端部130aが下方に突出するようなアーム形状を有する。ハウジング130の先端部130aは、先細りとなるように形成され、その先端面に開口部131が形成される。ハウジング130内には、取付部132が設けられる。
【0023】
超音波発生体110は、ハウジング130内に収容され、ホルダー120を介して取付部132に取り付けられる。ハウジング130の開口部131から振動ホーン112の先端部が下方へ突出する。
【0024】
本体部200は、下部外装体210および上部外装体220を備える。下部外装体210は、たとえば樹脂材料により形成され、前後に長く左右に短く上下に薄い直方体の箱状を有する。
【0025】
下部外装体210の上面には貯水凹部500が形成される。貯水凹部500は、四角形状の浸漬槽510と、浸漬槽510の後方に位置する四角形状の給水槽520と、前後に延びる溝状を有し、浸漬槽510と給水槽520とに繋がる給水路530とに分かれている。浸漬槽510は、ハウジング130に収容された超音波発生体110の真下に位置する。給水槽520は浸漬槽510よりも深くされ、給水路530の底面は浸漬槽510から給水槽520に向かって下り傾斜する。
【0026】
給水槽520の底面には、給水路530の真後ろの位置に排水口521が形成される。排水口521の中央部には孔部522aを有するボス522が設けられる。ボス522の両側は、2つの連結リブ523により排水口521の周縁部と連結される。さらに、給水槽520の底面には、排水口521の右隣りに、所定の間隔を置いて、上方に突出する円柱状の突起部524が形成される。
【0027】
貯水凹部500には、排水口521を開閉するために排水弁機構540が設けられる。排水弁機構540は、排水弁541と、排水ピン542と、コイルバネ543とを含む。排水ピン542は、本発明の作動部材に相当する。
【0028】
排水弁541は、ゴム等の弾性材料で形成される。排水ピン542は、金属材料や樹脂材料により形成され、上下移動可能にボス522の孔部522aに通される。排水ピン542の下端部に排水弁541が取り付けられる。排水ピン542の上端部は、他の部位より外径が大きくされてフランジ部542aを構成し、このフランジ部542aとボス522との間にコイルバネ543が配置される。コイルバネ543は圧縮された状態にあり、排水ピン542がコイルバネ543により上方に押され、排水弁541が排水口521を下方から閉塞する。排水ピン542は、給水槽520の上面、即ち下部外装体210の上面よりも上方に突出する。
【0029】
下部外装体210の内部に排水容器400が配置される。排水容器400は、たとえば樹脂材料により形成され、前後に長く左右に短く上下に薄い直方体状を有し、上面が開口する。排水容器400は、下部外装体210の前面に設けられた出入口211を通じて、下部外装体210の内部に出し入れされる。排水容器400の前面には、排水容器400の出し入れの際に持たれる取っ手401が設けられる。
【0030】
上部外装体220は、下部外装体210の上面後部に固定される。上部外装体220は、たとえば樹脂材料により形成され、左右に長く上下に短く前後に薄い、下面が開口する直方体の箱状を有する。上部外装体220は、貯水凹部500の給水槽520を上方から覆う。
【0031】
上部外装体220の前面の中央部に、超音波洗浄部100のハウジング130の後端部が固定される。これにより、超音波洗浄部100が、上部外装体220、即ち本体部200に保持される。
【0032】
上部外装体220の天面には、給水タンク300が通される円形状の上開口部221が形成される。また、上部外装体220の内部には、タンク保持板222が設けられ、このタンク保持板222に給水タンク300が通される円形状の下開口部223が形成される。上開口部221および下開口部223は、給水槽520の突起部524の中心と同心となる。さらに、上部外装体220の内部には、下部外装体210の上面の位置に、給水タンク300を受けるタンク受け部材224が設けられる。タンク受け部材224は、突起部524の中心と同心となる円形状の受け口部225を有する。
【0033】
図6は、本実施の形態に係る、給水タンク300の縦断面図である。
【0034】
給水タンク300は、タンク本体310と、キャップ320とを含む。タンク本体310およびキャップ320は、たとえば樹脂材料により形成される。キャップ320には、給水弁機構330が備えられる。
【0035】
タンク本体310は、上端面310aおよび下端面310bが閉じた円筒状の透明な容器である。タンク本体310の下端面310bの中央には、水の出入口311が形成され、出入口311の周囲に、下方に突出するように円筒状の接続口部312が設けられる。タンク本体310の外径は、上部外装体220の上開口部221および下開口部223の内径とほぼ等しくされる。
【0036】
キャップ320は、ネジ方式により接続口部312に取り付けられ、出入口311を覆う。キャップ320は、その中間部に出入口311を塞ぐ閉塞壁部321を有し、この閉塞壁部321と接続口部312の間に水封用のパッキン340が挟まれる。閉塞壁部321には、流出口322が形成される。流出口322の中央部には孔部323aを有するボス323が設けられる。ボス323の両側は、2つのリブ(図示せず)により流出口322の周縁部と連結される。キャップ320の先端部320aは、キャップ320の他の部位よりも外径が小さくされる。キャップ320の先端部320aの外径は、タンク受け部材224の受け口部225の内径とほぼ等しくされる。
【0037】
給水弁機構330は、給水弁331と、給水ピン332と、コイルバネ333とを含む。給水弁331は、ゴム等の弾性材料で形成される。給水ピン332は、金属材料や樹脂材料により形成され、上下移動可能にボス323の孔部323aに通される。給水ピン332の上端部に給水弁331が取り付けられる。給水ピン332の下端部は、他の部位より外径が大きくされてフランジ部332aを構成し、このフランジ部332aとボス323との間にコイルバネ333が配置される。コイルバネ333は圧縮された状態にあり、給水ピン332がコイルバネ333により下方に押され、給水弁331が流出口322を閉塞する。
【0038】
給水ピン332が下方から押され、コイルバネ333の押圧力に抗して上方に移動すると、給水弁331が流出口322から離れ、流出口322が開放される。これにより、タンク本体310内、即ち給水タンク300内から水が放出される。給水ピン332の下方からの押圧が解除されると、給水ピン332が下方に移動し、給水弁331により流出口322が閉鎖される。これにより、給水タンク300内からの水の放出が停止される。なお、給水タンク300に水を補給するときには、キャップ320が外され、出入口311からタンク本体310内に水が注がれる。
【0039】
キャップ320の出口は、給水タンク300における最終的な水の放出口301となる。キャップ320の外径はタンク本体310の外径よりも小さく、給水タンク300は、全体として、放出口301の近傍部分が内側に絞られた有底円筒状の容器の形状を有することになる。
【0040】
洗浄運転が行われていないときであって貯水凹部500に水が溜められていないとき、
図3および
図4に示すように、超音波洗浄装置1は、給水タンク300が本体部200から取り外された状態にある。
【0041】
図7は、本実施の形態に係る、放出口301が下を向く状態で給水タンク300が本体部200に装着された状態の超音波洗浄装置1の正面断面図である。
図8は、本実施の形態に係る、放出口301が上を向く状態で給水タンク300が本体部200に装着された状態の超音波洗浄装置1の正面断面図である。
【0042】
ユーザは、洗浄運転を開始する場合、貯水凹部500へ給水を行うため、給水タンク300を、放出口301が下を向く状態で上部外装体220、即ち本体部200に装着する。
図7に示すように、給水タンク300は、タンク本体310が上部外装体220の上開口部221と下開口部223を通され、キャップ320がタンク受け部材224によって受けられる。これにより、給水タンク300は、上部外装体220の内部において、給水可能な位置にセットされた状態となる。
【0043】
キャップ320の先端部320aが受け口部225を通されて給水槽520内に進入し、給水タンク300の放出口301が給水槽520内に挿入された状態となる。また、給水タンク300の給水ピン332が給水槽520の突起部524に衝突して押し上げられる。これにより、給水弁331が開放し、給水タンク300内の水が放出口301から放出される。放出された水は、給水槽520で受けられ、給水路530を通じて浸漬槽510に送られる。浸漬槽510内に水が溜まると、浸漬槽510内の水位とともに給水槽520内の水位が上昇する。
図7の一点鎖線のように、給水槽520内の水位が給水タンク300の放出口301の高さまで上昇し、放出口301が水で塞がれると、給水タンク300内の空気圧と外部の空気圧との釣り合いにより、給水弁331が開放された状態のままで、給水タンク300からの給水が停止する。
【0044】
なお、上方から見て、排水ピン542は、タンク本体310の内側ではあるがキャップ320の外側に位置する。また、排水ピン542の上端部の位置は、タンク本体310の下端面310bの位置よりも低い。このため、給水タンク300は排水ピン542に接触せず、排水弁541は排水口521を閉塞したままとなる。
【0045】
浸漬槽510内に水が溜められると、ユーザは、被洗浄物の汚れの付着部分、たとえ、ワイシャツの襟の部分を浸漬槽510上、即ち、浸漬槽510と超音波発生体110の振動ホーン112との間にセットする。このとき、被洗浄物の汚れ部分には、予め洗剤が塗布されていてもよい。被洗浄物が浸漬槽510内に溜められた水で浸され、被洗浄物の内部に浸透した水が表面に浸み出す。被洗浄物の表面には薄い水の層が形成され、この水の層に振動ホーン112が接触する状態となる。なお、被洗浄物が吸水することにより、浸漬槽510内の水位が下がって給水槽520内の水位が下がり、給水タンク300の放出口301が水で塞がれなくなると、放出口301が再び水で塞がれるまで、貯水凹部500内に給水タンク300から水が補給される。これにより、浸漬槽510内の水位、即ち水量が適正な状態に維持される。
【0046】
ユーザが所定の開始操作を行い、洗浄運転が開始されると、超音波振動子111に通電が行われ、超音波発生体110が作動する。
【0047】
図9(a)ないし(c)は、本実施の形態に係る、超音波洗浄装置1による被洗浄物の汚れの除去について説明するための図である。
【0048】
超音波発生体110が作動すると、振動ホーン112の先端から超音波が発生し、超音波振動が振動ホーン112の周りの水を介して被洗浄物内部の水に伝わる。
図9(a)に示すように、被洗浄物の内部では、超音波振動の作用によって減圧と加圧が交互に生じ、圧力が低くなった部分に真空の空洞が生じる。即ち、被洗浄物の汚れの部分に多数の空洞が存在する状態となる。
図9(b)に示すように、空洞の部分の圧力が高まり、この圧力に潰されて空洞が破壊されると、被洗浄物の汚れ部分に衝撃波が生じる。この衝撃波によって被洗浄物から汚れが分離される。
図9(c)に示すように、振動ホーン112からの超音波振動は、被洗浄物の内部から浸漬槽510内への水流を生み出し、この水流によって、被洗浄物から分離された汚れが浸漬槽510内に排出される。浸漬槽510では、上記の水流により対流が発生するので、被洗浄物から汚れが引き離されやすくなる。このようにして、被洗浄物から汚れが除去される。
【0049】
ユーザは、被洗浄物の汚れ部分を超音波発生体110の位置に持って行くため、被洗浄物を移動させる必要がある。本実施の形態の超音波洗浄装置1では、超音波洗浄部100が本体部200に保持されているので、ユーザは、超音波洗浄部100を手で持たなくてよく、被洗浄物を両手で持つことができる。これにより、ユーザは、片手で持つ場合よりも被洗浄物を円滑に移動させることができる。また、貯水凹部500が本体部200に設けられているので、ユーザが被洗浄物を移動させたときに被洗浄物とともに貯水凹部500が動いてしまう、ということが起こりにくい。
【0050】
被洗浄物の洗浄が完了すると、ユーザは、所定の停止操作を行う。超音波発生体110の動作が停止され、洗浄運転が終了される。その後、ユーザは、給水タンク300を上方に持ち上げ、本体部200から取り外す。突起部524による給水ピン332の押圧が解除され、給水弁331が閉じて、給水タンク300からの水が放出されなくなる。
【0051】
次に、ユーザは、貯水凹部500からの排水を行うため、給水タンク300を、放出口301が上を向く状態で上部外装体220、即ち本体部200に装着する。
図8に示すように、給水タンク300は、タンク本体310の上端面310aがタンク受け部材224によって受けられる。これにより、給水タンク300は、上部外装体220の内部において、排水可能な位置にセットされた状態となる。
【0052】
給水タンク300の上端面310aが排水ピン542に衝突し、排水ピン542がコイルバネ543の押圧力に抗して押し下げられる。これにより、排水弁541が下方へ移動して排水口521から離れ、排水口521が開放する。貯水凹部500内の水が排水口521を通じて排出され、排水容器400内に溜められる。このとき、給水槽520の底面が浸漬槽510の底面より低く、給水路530の底面が浸漬槽510から給水槽520に向かって下り傾斜しているので、浸漬槽510内の水が給水槽520内の排水口521へ流れていきやすい。これにより、貯水凹部500からの排水が円滑に行われる。
【0053】
貯水凹部500からの排水が完了すると、ユーザは、給水タンク300を上方に持ち上げ、本体部200から取り外す。排水容器400の容量は、貯水凹部500内の水が複数回分溜められる容量に設定され得る。ユーザは、たとえば、排水容器400内に満水に近い状態まで水が溜められると、本体部200から排水容器400を引き出して排水容器400を取り外し、排水容器400内の水を洗面台の排水口等の廃棄可能な場所に捨てる。その後、ユーザは、排水容器400を本体部200内に戻す。
【0054】
<本実施の形態の効果>
以上、本実施の形態によれば、超音波洗浄部100が本体部200に保持されているので、ユーザは、被洗浄物を両手で持つことができる。これにより、ユーザは、被洗浄物を円滑に移動させることができる。また、貯水凹部500が本体部200に設けられているので、被洗浄物を移動させたときに被洗浄物とともに貯水凹部500が動いてしまいにくく、貯水凹部500から水がこぼれてしまうということが起こりにくい。さらに、本体部200に給水タンク300が備えられ、洗浄運転時には、給水タンク300から自動的に貯水凹部500に水が供給されるので、ユーザは、貯水凹部500内の水が減る都度、貯水凹部500内に水を補給する作業を行わなくてもよくなる。
【0055】
このように、本実施の形態によれば、ユーザが、超音波洗浄装置1を用いて被洗浄物の円滑な洗浄を行え、ユーザの利便性の向上が期待できる。
【0056】
また、本実施の形態によれば、給水タンク300が、放出口301が上を向く状態で本体部200に装着されたときに、排水ピン542が給水タンク300に押されて作動し、排水口521が開放される構成とされており、給水タンク300が給水時とは反対向きで本体部200に装着されたときに貯水凹部500からの排水が行われる。このため、給水タンク300から貯水凹部500へ給水がなされない状態とされた後に、貯水凹部500からの排水を行うことができ、給水と排水とが同時になされることが防止される。
【0057】
さらに、本実施の形態によれば、排水ピン542は、本体部200の内部に配置されているので、給水タンク300による給水時に排水ピン542が操作されて排水口521が開放されてしまう、という事態が生じにくい。
【0058】
さらに、本実施の形態によれば、排水容器400を本体部200から取り外すことができるので、排水容器400内の水の廃棄が容易となる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0060】
たとえば、上記実施の形態では、超音波洗浄部100のハウジング130が、本体部200の上部外装体220とは別部材として構成されている。しかしながら、ハウジング130が上部外装体220と一体形成されてもよい。同様に、下部外装体210と上部外装体220とが一体形成されてもよい。
【0061】
また、給水タンク300から貯水凹部500へ給水を行うための給水構造は、上記実施の形態のような構成に限られるものではなく、その他の給水構造が採られてもよい。
【0062】
さらに、上記実施の形態では、貯水凹部500が、浸漬槽510と給水路530と給水槽520とに分けられた。しかしながら、貯水凹部500は、たとえば、前後方向に長い楕円形とされるなど、浸漬槽510と給水路530と給水槽520とに明確に分けられない形状とされてもよい。この場合、貯水凹部500において、上部外装体220から露出した、被洗浄物が浸漬される領域が浸漬槽510となり、上部外装体220内で給水タンク300が接続される領域が給水槽520となり、給水路530がなくなる。
【0063】
さらに、上記実施の形態では、排水容器400は上面が開放されているが、排水容器400は、上面が閉塞され、上面における排水口521の真下付近の位置に開口部が設けられるような構成が採られてもよい。こうすれば、排水容器400を取り外すときに、排水容器400が多少手荒く扱われても、排水容器400内の水が外部に漏れ出しにくくなる。
【0064】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 超音波洗浄装置
100 超音波洗浄部
110 超音波発生体
200 本体部
300 給水タンク
301 放出口
400 排水容器
500 貯水凹部
521 排水口
540 排水弁機構
541 排水弁
542 排水ピン(作動部材)