(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】ティシューペーパー
(51)【国際特許分類】
A47K 10/16 20060101AFI20220816BHJP
D21H 27/30 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
A47K10/16 C
D21H27/30 B
(21)【出願番号】P 2019018169
(22)【出願日】2019-02-04
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富岡 慎忠
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 穣
(72)【発明者】
【氏名】保井 秀太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祥子
(72)【発明者】
【氏名】堀切川 一男
(72)【発明者】
【氏名】山口 健
(72)【発明者】
【氏名】柴田 圭
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-178572(JP,A)
【文献】特開2009-263837(JP,A)
【文献】特開2016-182187(JP,A)
【文献】特開2006-045690(JP,A)
【文献】特開2017-192435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/16
D21H 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールが外添塗布されていない3プライのティシューペーパーであって、
1プライあたりの坪量が12.0g/m
2以上であり、
3プライの紙厚が200~265μmであり、
水分率が4.0~9.0質量%であり、
非イオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤を含む弱カチオン性の酸性の柔軟剤を有効成分25~35質量%の低濃度かつ粘度500mPa・s以下で、パルプ繊維の総重量に対して0.2~0.5質量%の使用量となるように紙料スラリーに対して分散して供給して製造され、
ジエチルエーテルによって抽出される
内添剤由来の油性成分を0.15~0.45質量%含み、
横方向の曲げ剛性が0.006gf・cm/cm未満、横方向の曲げ回復力が0.005gf・cm/cm未満である
ことを特徴とするティシューペーパー。
【請求項2】
縦方向の乾燥引張強度が300~440cNであり、
横方向の乾燥引張強度が130~200cNである、
請求項1記載のティシューペーパー。
【請求項3】
グリセリンを含まない請求項1記載のティシューペーパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティシューペーパーに関する。
【背景技術】
【0002】
ティシューペーパーは、ポリオールを含む保湿剤を原紙に付与した保湿ティシューと、原紙に保湿剤を付与していない非保湿ティシューとがある。非保湿ティシューは、ポリオールの吸湿による水分量の増加がなく、しっかり感や厚み感があるとともに、べたつき感が少なくさらっとした使用感で肌に保湿剤が転写されない利点がある。
【0003】
また、非保湿ティシューは、2プライで1プライ当たりの坪量が12g/m2前後で価格が重視される汎用タイプ、汎用ティシューと称されるものと、坪量がこれより高く高価格で、保湿ティシューと同様に高級品とされる製品群に属するものがある。
【0004】
従来、後者の非保湿のティシューペーパーは、坪量が高く厚手でありながら高級品としての柔らかさや滑らかさを発現させるべく、紙の密度を下げ、特に厚み方向のクッション性を発現させることが行われてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、紙の密度を下げると厚み方向のクッション性が高まるが、表面の繊維が疎となってざらつきも高まってくるため、単に紙の密度を下げるだけでは、さらなる柔らかさや滑らかさの向上が難しい。また、紙の密度が過度に下がると強度が不足しやすくしっかりとした感じが低下しやすい。さらに、紙の密度を下げるべく嵩高剤を多量に使用すると抄紙時にドライヤーからの剥離性が悪化しやすくなる等の問題が発生しやすくなる。
【0007】
他方で、保湿ティシューのように高い水分率を有するようにすると柔らかさは発現しやすくなるが、非保湿ティシュー特有のさらっとした使用感でありながら、柔らかさに優れるという利点が減殺するとともに、しっかりとした感じも低下する。
【0008】
そこで、本発明の主たる課題は、柔らかさ、滑らかさにより優れる、しっかり感もある高坪量の非保湿ティシューペーパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための第一の手段は、
3プライのティシューペーパーであって、
1プライあたりの坪量が12.0g/m2以上であり、
3プライの紙厚が200~265μmであり、
水分率が4.0~9.0質量%であり、
ジエチルエーテルによって抽出される油性成分を0.15~0.45質量%含み、
横方向の曲げ剛性が0.006gf・cm/cm未満、横方向の曲げ回復力が0.005gf・cm/cm未満である
ことを特徴とするティシューペーパーである。
【0010】
第二の手段は、
縦方向の乾燥引張強度が300~440cNであり、
横方向の乾燥引張強度が130~200cNである、
上記第一の手段に係るティシューペーパーである。
【0011】
第三の手段は、
ポリオールが外添塗布されていない上記第一の手段に係るティシューペーパーである。
【0012】
第四の手段は、
グリセリンを含まない上記第一の手段に係るティシューペーパー。
【発明の効果】
【0013】
以上の本発明によれば、柔らかさ、滑らかさにより優れ、しっかり感もある高坪量の非保湿ティシューペーパーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る実施例と比較例、従来例の官能評価の結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0016】
本発明に係るティシューペーパーのプライ数は、3プライであり、1プライあたりの坪量が12.0g/m2以上である。好ましくは、1プライあたりの坪量が13.0g/m2以上である。非保湿タイプの高級品タイプの坪量は、2プライの製品では、1プライあたりの坪量が14.0g/m2以上、特に坪量の範囲が、14.0~17.0g/m2の範囲にあるものが多い。これは14.0g/m2未満では、厚み感、嵩高感が発現しがたく低価格汎用品との差が感じ難くなるからである。本実施形態では、3プライとプライ数を多くすることで、坪量については14.0g/m2より低く、2プライであれば汎用品の範囲になるような12.0g/m2からの範囲としても、厚み感が得られ、また、二つのプライ間の空隙が形成されてクッション性も高まり、低価格汎用品よりも十分に高級感が得られる。ここで、1プライの坪量の上限値は高いほうが厚み感に優れるようになり必ずしも限定されないが、過度に坪量が高いと柔らかさの発現が難しくなる。本実施形態に係る3プライのティシューペーパーの場合は、14.6g/m2以下、より好ましくは14.0g/m2以下とするのが望ましい。本実施形態は、3プライとすることで、2プライとは異なり、坪量をやや低い範囲としても厚み感やクッション性が得られる。また、3プライとすることでしっかり感も高まる。紙厚は、3プライで200~265μmである。上記坪量の範囲において適度な低密度となりプライ間空隙と相まってクッション性を感じられやすくなる。
【0017】
ここで、本発明における坪量とは、JIS P 8124(1998)に基づいて測定した値を意味し、紙厚は、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定した値を意味する。この紙厚測定の具体的手順は、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにし、この紙厚測定時の荷重は、約70gfである。測定を10回行って得られる平均値とする。
【0018】
他方で、本発明に係るティシューペーパーは、水分率が4.0~9.0質量%である。好ましくは、4.0~8.0質量%である。水分率は、次のようにして測定する。測定対象から試料を二組採取し23℃50%の恒温恒湿室で3時間調湿する。各試料をそれぞれ秤量瓶に入れて密封したうえ質量を測定する。次いで、秤量瓶のふたを開けた状態で105±3℃に調整された乾燥機に入れて4時間乾燥させる。乾燥機中で秤量瓶にふたをしたうえで、乾燥機から取り出して、室温まで温度を自然に下げ、さらに15~20分経過後に、試料が入った秤量瓶の質量を測定する。次に、水分率(質量%)=(((秤量瓶+乾燥前の試料の質量)-(秤量瓶+乾燥後の試料の質量) )/((秤量瓶+乾燥前の紙の重量)-(秤量瓶の重量)))×100の式から水分率を算出する。ここで、二つの試料の水分率(質量%)の差が、1.0質量%以内の場合には、その平均値を試料の水分率(質量%)として採用する。なお 水分率は%で小数点1桁で表す。一方、二組の試料の水分率の差が1.0質量%を超えた場合には、再試験とする。
【0019】
本発明に係るティシューペーパーは、水分率は4.0~9.0質量%の範囲にある。水分率がこの範囲であると、さらっとした感じでありながら厚み感のある高級感を感じるものとなる。ここで、水分率を4.0~9.0質量%とするには、原紙に保湿剤を外添塗布しない非保湿ティシューとするのが望ましい。保湿ティシューは水分率が10.0質量%を超えるのが一般的である。原紙に保湿剤を外添塗布しない非保湿ティシューとすれば、上記水分率にしやすい。なお、保湿剤とは、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオールといったポリオールの吸湿性により水分率を高める外添薬液である。
【0020】
さらに、本発明に係るティシューペーパーは、グリセリンを含まないのが望ましい。グリセリンは、内添剤としても含まないのが望ましい。グリセリンは、高い吸湿性によって水分率を高めるが含有によってべたつき感を発現させやすい。さらに、本発明に係るティシューペーパーは、三価以上の多価アルコールも含まないのが望ましい。これらは油性成分であるがべたつき感を発現させやすい。
【0021】
この本発明に係るティシューペーパーは、特徴的に、ジエチルエーテルによって抽出される油性成分を0.15~0.45質量%含む。好ましくは0.21~0.35質量%含む。さらに好ましくは0.23~0.30質量%含む。ジエチルエーテルは、低極性物質である油脂を効果的に抽出する。ティシューペーパーの主原料たるパルプは、油性成分を含まない。したがって、本発明に係る油性成分は、内添剤、特に内添の柔軟剤に起因して含まれるものである。なお、油性成分を含むティシューペーパーとして、シリコーンやポリシロキサン等の油分を外添により塗布したものもあるが、上記範囲は外添でムラなく塗布することが困難な範囲であり、また、外添塗布で効果を発現させることは困難な範囲である。発明者らは、この油性成分0.15~0.45質量%という範囲が、低坪量の汎用タイプであるか高い坪量の高級タイプであるかに関わらず、従来の非保湿ティシューにおいては見られない高い含有量であることを知見している。そして、0.15質量%未満であると柔らかさ、滑らかさの向上効果が少なく、0.45質量%を超えるとコスト高であるとともに生産することが困難となる。
【0022】
本発明に係るティシューペーパーは、内添剤に起因するジエチルエーテルによって抽出される油性成分が多い。すなわち、パルプ繊維の表面を被覆する油性成分が多く、その油性成分の被膜による表面の滑らかさとパルプ間の水素結合を弱める働きが強く作用して柔らかさが高く発現する。さらに、パルプ繊維の表面を被覆する油性成分が多いためエモリエント効果によってパルプの水分が保持される。つまり、油性成分自体に吸湿効果はないもののパルプ繊維自体が吸湿した水分を保持する効果を妨げることもなく、過度にしっとり感が低下することがない。
【0023】
ここで高い油性成分の含有量とするには、油脂分を含む柔軟剤の添加量を増やしたり柔軟剤中の油脂成分を増やすようにしてもよいが、ジエチルエーテルで抽出される油脂は低極性物質であるため、一般的には単に柔軟剤の添加量を増やしても繊維への定着率は高まりがたい。また、ドライヤーへの接着率が低下して操業性が悪化する場合もある。このためジエチルエーテルで抽出される油脂の繊維への定着率を高めるためには、パルプと油脂との接触機会を増やすようにするのがよい。例えば、非イオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤を含む弱カチオン性の酸性の柔軟剤を有効成分25~35質量%の低濃度にし、粘度を500mPa・s以下として、マシンチェスト、種箱等の抄紙設備の適宜の箇所において紙料スラリーに対して分散して供給するようにすればよい。
【0024】
柔軟剤の使用量は柔軟剤の種類によって調整されるが、パルプ繊維の総重量に対して0.2~0.5質量%程度である。0.2質量%未満であると十分な柔軟効果が得られないことがあり、0.5質量%を超えても定着率が高まらないことがある。
【0025】
柔軟剤の種類は、必ずしも限定されないが、上記のとおりカチオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との組みあわせが好ましい。合わせて、本発明の作用効果を妨げない範囲で、高級アルコール類、脂肪酸エステル類、アシルアミノ酸エステル類などのエモリエント成分を加えることができる。また、本発明の作用効果を妨げない範囲で、少量の保湿剤などを加えることもできるが、外添ポリオールは含まない。
【0026】
エモリエント成分の具体例としては、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、つばき油、ごま油、米ぬか油、サフラワー油、大豆油、コーン油、なたね油、キョウニン油、パーシック油、桃仁油、ひまし油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、綿実油、ココナッツ油、小麦胚芽油、米胚芽油、月見草油、ハイブリッドヒマワリ油、マカデミアナッツ油、メドウフォーム油、へーゼルナッツ油、パーム核油、パーム油、やし油、カカオ脂、シア脂、木ろう、ミンク油、タートル油、卵黄油、牛脂、乳脂、豚脂、馬油、ホホバ油、カルナウバろう、キャンデラろう、米ぬかろう、オレンジラフィー油、みつろう、セラック、ラノリン、モンタンろう、スクワレン、スクワラン、流動パラフィン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、軟質流動イソパラフィン、水添ポリイソブチレン、オゾケライト、セレシン、α-オレインフィンオリゴマー、ポリブテン、ポリエチレン等の炭化水素類、または、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エチルヘキサン酸、イソステアリン酸、イソパルミチン酸、イソトリデカン酸、イソノナン酸、ペンタデカン酸、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セテアリルアルコール、ベヘニルアルコール、セタノール、オレイルアルコール、ラノリンアルコール、コレステロール、イソコレステロール、シトステロール、スチグマステロール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸エチル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、ステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、トリカプリン、トリミリスチン、トリオクタノイン、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸エチル、エチルヘキサン酸セチル、エチルヘキサン酸ステアリル、トリエチルヘキサン酸グリセリル、トリエチルヘキサン酸グリセリル、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトライソステアリン酸ペンタエリスチル、トリイソステアリン酸ペンタエリスリル、イソステアリン酸イソセチル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、クエン酸トリオクチルドデシル、および、リンゴ酸ジイソステアリルが挙げられる。これらは、一種又は二種以上で使用することができる。
【0027】
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩、アミン塩、又はアミン等のなかから適宜に選択することができる。特に、好適なカチオン性界面活性剤は、第4級アンモニウム塩であり、これを用いることが好ましい。具体例としては、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジミリスチルジメチルアンモニウムクロリド、ジパルミチルジメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0028】
非イオン性界面活性剤としては、エステル型、エーテル型、エステルエーテル型、アルカノールアミド型、アルキルグリコシド等を使用することができる。エステル型の例としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノステアレート、ジエチレングリコールモノオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノオレート、
【0029】
プロピレングリコールモノステアレート、N-(3-オレイロシキ-2-ヒドロキシプロピル)ジエタノールアミン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビット密ロウ、ポリオキシエチレンソルビタンセスキステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノラウレート等が挙げられる。また、エーテル型としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等があり、具体的には、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。
【0030】
ここで、本発明におけるジエチルエーテルによって抽出される油性成分の割合は、インテック株式会社製の迅速残脂抽出装置OC-1又は、その相当機又は互換機によって測定する。この装置は、下部に抽出口を有する付属の試験管内に試料を入れたうえ、溶媒を供給すると前記抽出口から抽出液が、下部に位置する加熱されたアルミ製受け皿に落下して溶媒のみが蒸発する仕組みとなっており、アルミ製受け皿の抽出液の滴下前後の質量差から抽出物質量が求められるもので、迅速かつ簡易に試料中の油性成分を測定できる。そして、その抽出物質量と試料の質量とから抽出物の割合が算出できる。本発明においては、試料は、3プライ1組としたティシューペーパー2組とし、使用するジエチルエーテルの量は10ccとする。また、押し棒による押し込み開始は、ジエチルエーテル投入後、60秒で行う。
【0031】
他方、本発明に係るティシューペーパーは、横方向の曲げ剛性が0.006gf・cm/cm未満、横方向の曲げ回復力が0.005gf・cm/cm未満である。この範囲は、3プライで1プライ当たりの坪量が12.0g/m2以上の高坪量の非保湿ティシューペーパーとしては低い値である。本実施形態発明に係るティシューペーパーは、油性成分を多く含み繊維間の結合が弱められており、それゆえ紙の横方向の紙力にかかる物性に顕著な特徴が現れる。横方向の曲げ剛性及び横方向の曲げ回復性とは、試料の流れ方向と直角に試料を曲げた時のことであり、縦方向の曲げ剛性及び縦方向の曲げ回復性とは、試料の流れ方向と平行に試料を曲げた時のことである。横方向の曲げ剛性及び横方向の曲げ回復力は、クレープの稜線に直交する方向における曲げに関する指標であるため、横方向の曲げ剛性及び横方向の曲げ回復力が低いとしなやかで柔らかさを感じやすい。なお、本発明に係る横方向の曲げ剛性及び横方向の曲げ回復力が、カトーテック株式会社製の純曲げ試験機KES―FB2-A又は、その相当機又は互換機能を有する測定器により測定した値である。また、測定に際しては、23℃50%の恒温恒湿室で3時間以上調湿した試料を用い、試料の大きさは200×200mmとし、測定回数はN=5とし、その平均値を測定値とする。曲げ剛性は、人間が物体を曲げたときに感じる柔らかさ、剛さと相関があるとされ、曲げ剛性の値が大きくなればなるほど剛く、小さくなればなるほど柔らかいとされる。また、曲げ回復力は、人間が物体を曲げてもとにもどしたときに感じる回復性(弾力性)と相関があるとされ、値が大きくなるほど回復性が悪く、小さくなればなるほど回復性が良くないとされる。
【0032】
さらに、本発明に係るティシューペーパーは、縦方向の乾燥引張強度が300~440cNであり、横方向の乾燥引張強度が130~200cNであるのが望ましい。特に好ましい横方向の乾燥引張強度は150~180cNである。縦方向の乾燥引張強度が300~440cNの範囲であれば十分な乾燥引張強度である。他方、3プライのティシューペーパーでは、横方向の乾燥引張強度は130cN未満となると使用時に破れやすい。また、200cNを超えると柔らかさの向上効果が感じられ難くなる。本発明に係るティシューペーパーは、特に横方向の乾燥引張強度が低い。縦方向の乾燥引張強度は、クレープを伸ばす方向の紙力であるためクレープによって強度が調整されやすい。なお、本発明に係るティシューペーパーの製造時における好ましいクレープ率は、15~28%である。その一方で、横方向の乾燥引張強度は、クレープが延ばされる縦方向に直交する方向の紙力であるため、繊維同士の結合によるところが大きく、また柔らかさの感じ方に影響がある。本発明に係る横方向の乾燥引張強度は、3プライとしてはやや低い値であり、これはジエチルエーテルで抽出される油性成分の割合が多いことから、繊維間の水素結合が弱められているためと思われる。本発明に係るティシューペーパーは、特に縦方向の乾燥引張強度が一般的範囲でありながら特に横方向の乾燥引張強度がやや低くなっていることで、柔らかさが感じられやすい。なお、本発明に係る乾燥引張強度とは、JIS P 8113(1998)の引張試験に基づいて試料の幅を25mmで測定した値をいう。本発明の乾燥引張強度の調整においては、公知の乾燥紙力剤を用いることができる。このように本発明に係るティシューペーパーは、横方向の乾燥引張強度が、3プライの非保湿の高坪量高級タイプとしては弱く、さらに、横方向の曲げ剛性及び横方向の曲げ回復力も従来の非保湿の高坪量高級タイプより低いため、柔らかさと滑らかさに優れる。
【0033】
本発明に係るティシューペーパーにおけるパルプ繊維は、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)とLBKP(広葉樹クラフトパルプ)とを配合したものが望ましい。特に、パルプ繊維が、NBKPとLBKPのみから構成されているのがよく、配合割合が、NBKP:LBKP=20:80~80:20がよく、特に、NBKP:LBKP=30:70~60:40が望ましい。このNBKPとLBKPとの配合比によって、紙力、ソフトネス等を調整することができる。また、本発明に係るティシューペーパーは、本発明の効果を妨げない範囲で、化学繊維、ケナフ繊維、コットン繊維等の公知の繊維を含ませることができる。
【実施例】
【0034】
次いで、本発明に係るティシューペーパーの実施例と比較例について、物性値を測定するとともに官能試験を行った。各例における組成・物性値は、下記表1に示すとおりである。また、各物性値の測定方法は、上記のとおりである。比較例1は、紙厚・曲げ耐性・曲げ回復量が本発明の範囲になく、抽出油分量は本発明の範囲にあるものである。比較例2~比較例5は、1プライあたりの坪量が14.0g/m2以上の2プライの高級タイプのものである。
【0035】
実施例1及び実施例2は、柔軟剤として非イオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤とを含み弱カチオン性の酸性の柔軟剤を、有効成分25~35質量%の低濃度かつ粘度500Pa・s以下として定着率を高めるようにして使用した。柔軟剤の使用量は、実施例1は、パルプ質量比で0.35質量%、実施例2は0.40質量%である。また、実施例1及び実施例2におけるパルプ繊維は、100%バージンパルプであり古紙パルプは含まないものである。
【0036】
また、官能試験は、次のように評価した。基準試料は、市販品である比較例2とした。比較例1は、柔らかさ、滑らかさの事前評価が高く、また、ジエチルエーテルにより抽出された油性成分の量が比較例のなかで最も高い値を示したものである。評価方法は、基準試料の評価を4点として、他の例の試料をそれとの対比で1~7点で評価する方法とした。なお、概ねの基準として、被験者には、1点:基準試料よりもとても悪い(嫌い)、2点:基準試料よりも悪い(嫌い)、3点:基準試料よりもやや悪い(嫌い)、4点:基準品と同じ、5点:基準品よりもやや良い(好き)、6点:基準品よりも良い(好き)、7点:基準品よりもとても良い(好き)、という基準を示した。
【0037】
滑らかさの評価については、ティシューペーパー1組を縦方向で半分に折り、その半分折りした試料を表面平滑な水平台上に置いて、端から端まで横方向に人差し指を1回スライド移動させた際の滑らかさを判断するようにした。柔らかさ、しっとり感、好みの評価は、ティシュー1組を被験者が自由に触って評価することとした。被験者は11人とし、表中の数値はその平均値である。なお、
図1には結果をグラフ化したものを示す。
【0038】
【0039】
表1に結果が示されるように、実施例は、抽出油性成分量が高く、油性成分が定着しているものであることが確認できる。また、一方で、水分率は、比較例と同等であり、ポリオールのような吸湿性を有していない。また、横方向の曲げ剛性の物性値が低く、ティシュー1枚の曲げ抵抗が低いことを示している。横方向の曲げ回復性の物性値が低く、ティシュー1枚の曲げの回復性が良いことを示している。官能評価の結果は、基準試料である比較例2のみならず、他の全ての比較例と比べても非常に良好な結果となっている。
【0040】
また、比較例1は、坪量がやや低めで紙厚が本発明より高く、密度が過度に低いものである。このように密度が過度に低くなると、乾燥引張強度の縦及び横は低くなるものの曲げ回復性と曲げ剛性が十分に低下せず、柔らかさや滑らかさの評価が高まらない。これは、ティシュー1枚の紙厚が厚いことの影響が大きく曲げ剛性が高くなるためと考えられる。このような比較例1の結果に対して、本発明の実施例を対比しつつ観てみると、本発明の実施例は、曲げ回復性と曲げ剛性が低く、特に横方向の曲げ回復性と横方向の曲げ剛性の双方が低く、有意に官能評価が高まっている。
【0041】
さらに、比較例2~4と対比すると、比較例2~4は2プライであり総坪量及び紙厚は、実施例のほうが高い。しかし、実施例は、抽出油分量が多く、曲げ回復性は及び横方向の曲げ剛性が低く、官能評価も高い。そのうえで、乾燥引張強度は高い。
【0042】
このように、本発明に係る3プライのティシューペーパーとすることで、柔らかさ、滑らかさにより優れ、しっかり感や厚み感もある高坪量の非保湿ティシューペーパーが提供される。