(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】節足動物に有益な酵母
(51)【国際特許分類】
A01K 67/033 20060101AFI20220816BHJP
A23K 10/16 20160101ALI20220816BHJP
A23K 50/90 20160101ALI20220816BHJP
【FI】
A01K67/033 502
A23K10/16
A23K50/90
(21)【出願番号】P 2019549644
(86)(22)【出願日】2017-12-01
(86)【国際出願番号】 EP2017081095
(87)【国際公開番号】W WO2018100123
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-26
(32)【優先日】2016-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
【微生物の受託番号】BCCM/LMG MUCL56142
(73)【特許権者】
【識別番号】519198856
【氏名又は名称】バイオベスト グループ エヌ.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】BIOBEST GROUP N.V.
【住所又は居所原語表記】Ilse Velden 18, 2260 Westerlo, Belgium
(73)【特許権者】
【識別番号】519198867
【氏名又は名称】カソリック ユニヴェルシテイト ルーヴェン
【氏名又は名称原語表記】KATHOLIEKE UNIVERSITEIT LEUVEN
【住所又は居所原語表記】KU LEUVEN R&D, Waaistraat 6 - box 5105, 3000 Leuven, Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】ポゾ ロメロ,マリア,イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ベナベンテ マルティネス,アルフレド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン オイスターエン,アネット
(72)【発明者】
【氏名】ジャックミン,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】バルトレビチュ,ヤーチェク
(72)【発明者】
【氏名】ヴァッカーズ,フェリクス
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02232986(EP,A2)
【文献】国際公開第2008/015393(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 67/033
A23K 10/16
A23K 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
節足動物に、ウィッカーハミエラ ボンビフィラ酵母、その断片又はそれによって生産される物質を供給することを含む、節足動物を飼育する及び/又は節足動物の適応度を改善するための方法。
【請求項2】
前記節足動物が、コロニー形成節足動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
節足動物のコロニーの発育、大きさ及び/又は適応度を改善するための方法である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
次の工程:
- 開花結実作物を提供するステップ、
- 請求項1~3のいずれか1項に記載の方法によって育てられたステップ、
送粉性節足動物を提供するステップ、
- 送粉性節足動物によって開花中の作物の受粉を確実にするステップ
を含む、結実作物の栽培方法。
【請求項5】
節足動物の健康、適応度、及び/又は行動を改善又は亢進させるためのウィッカーハミエラ ボンビフィラ酵母、その断片又はそれによって生産される物質の使用。
【請求項6】
節足動物の免疫機能を改善する、ウィッカーハミエラ ボンビフィラ酵母が、クリチディア ボンビのような腸寄生虫を減少させる、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記節足動物が送粉性飛翔昆虫である、請求項5又は6に記載の使用。
【請求項8】
飛行活動を改善する、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
糖液及び/又は花粉と、ウィッカーハミエラ ボンビフィラ酵母、その断片又はそれによって生産される物質とを含む節足動物のための食品組成物。
【請求項10】
前記食品組成物1μl又は1μgあたり、前記ウィッカーハミエラ ボンビフィラ酵母を少なくとも100細胞含む、請求項9に記載の食品組成物。
【請求項11】
次の物質:
炭水化物源;
窒素源;
ビタミン;
脂質又は脂肪;
ミネラルのうち
1つ以上をさらに含む請求項9又は10に記載の節足動物のための食品組成物。
【請求項12】
前記炭水化物源がスクロース、グルコース、マルトース、デキストロース、フルクトース、転化糖、コーンシロップ又はグルコースシロップ、及びそれらの組み合わせから選択される糖である、請求項11に記載の節足動物のための食品組成物。
【請求項13】
前記ウィッカーハミエラ ボンビフィラ酵母が請求項9~12のいずれか1項に記載の食品組成物中に含まれる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項14】
前記ウィッカーハミエラ ボンビフィラ酵母、その断片又はそれによって生産される物質が請求項9~12のいずれか1項に記載の食品組成物中に含まれる、請求項5~8のいずれか1項に記載のウィッカーハミエラ ボンビフィラ酵母の使用。
【請求項15】
BCCM/LMGカルチャーコレクションにおいて、受託番号MUCL56142で寄託されている、ウィッカーハミエラ ボンビフィラ酵母又はカンジダ ボンビフィラ株、又はそのバリアント。
【請求項16】
前記ウィッカーハミエラ ボンビフィラ酵母がBCCM/LMGカルチャーコレクションにおいて、受託番号MUCL56142で寄託されている、ウィッカーハミエラ ボンビフィラ酵母又はカンジダ ボンビフィラ株、又はそのバリアントである、請求項1~3のいずれか1項に記載の飼育方法。
【請求項17】
前記ウィッカーハミエラ ボンビフィラ酵母がBCCM/LMGカルチャーコレクションにおいて、受託番号MUCL56142で寄託されている、ウィッカーハミエラ ボンビフィラ酵母又はカンジダ ボンビフィラ株、又はそのバリアントである、請求項5~8のいずれか1項に記載のウィッカーハミエラ ボンビフィラ酵母、その断片又はそれによって生産される物質の使用。
【請求項18】
前記ウィッカーハミエラ ボンビフィラ酵母がBCCM/LMGカルチャーコレクションにおいて、受託番号MUCL56142で寄託されている、ウィッカーハミエラ ボンビフィラ酵母又はカンジダ ボンビフィラ株、又はそのバリアントである、請求項9~12のいずれか1項に記載の食品組成物。
【請求項19】
前記節足動物がハチ又はマルハナバチである、請求項1~
3又は13のいずれか1項に記載の飼育方法。
【請求項20】
前記節足動物がハチ又はマルハナバチである、請求項9~12のいずれか1項に記載の食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、節足動物を飼育する及び/又は節足動物の適応度、健康及び/又は行動を改善する方法を提供し、本発明はさらに、そのような方法で使用するための食品又は食品組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
多くの節足動物は環境において重要な役割を果たしており、さまざまな用途で人間にとって非常に重要である。例えば、節足動物は、生物学的害虫駆除の分解者として、又はいくつかの人為製品、例えばワックス、シルク又は医薬品原料の生産に用いられ得る。さらに、いくつかの節足動物、例えば甲殻類(例えば、シュリンプ、プローン、カニ、ロブスター)及び昆虫などが、人間の食料としての使用のために養殖されている。しかし、人間の食糧供給の為に節足動物が最も大きく貢献しているのは、受粉のサービスの提供で、それによって、節足動物が受粉した開花結実作物の生産の成功を確実にする。
【0003】
節足動物の送粉者、特に昆虫は、他家受粉の利益を植物に与えることによって、植物の繁殖及び生態系の機能において重要な役割を果たす。昆虫は、ほとんどの農作物や野生植物の主な受粉者である。虫媒性の植物(被子植物の87%を含む)では、昆虫による受粉は、自家受粉と比較して、作物収量、個々の果実の品質及び量、貯蔵期間、味、栄養組成及び市場価値を改善することが示されている。結果として、送粉性者の豊富さと豊かさは農業生産性と野生植物群落の保全の両方にとって不可欠な特徴である。同様に、植物は主な花の報酬として花の蜜と花粉を訪問する昆虫に提供する。けれども、西ヨーロッパや多くの世界の他の地域では、前世紀にわたる伝統的な農業業務の集約化は、適切な花資源の不足のために、多くの花依存性昆虫にとって貧弱な生息地を表すやせた景観をもたらした。さらに、集約農業生産に使用された化学農薬は、花粉仲介者に強い直接的及び間接的な悪影響を有することが示されている。例えば、殺菌剤は節足動物の腸内細菌叢に影響を与え、それによって、宿主の健康及び/又は食品を消化する能力に影響を与える可能性がある。最後に、ある種の昆虫花粉仲介者(ハチ)は様々な病気や害虫(ダニ)に感染しやすい。これら3つの(しばしば相互作用する)メカニズムは、世界中の昆虫仲介者群生の減少の根底にある主な要因であると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この傾向に対抗し、花粉仲介者の多様性及び適応度を維持するための努力がなされている。送粉性昆虫の健康、行動及び数は、例えば、生息地の量及び質を高め、国民意識を高め、送粉者を害する農薬の使用を禁止し、ハチの維持を支援するなどによって改善することができる。けれども、栽培作物と野生植生の両方の未来の受粉を確実にするために、送粉者の適応度及び健康を改善する為の要求が依然残っている。
【0005】
節足動物はまた、生物学的有害生物制御における捕食者及び捕食寄生者として農業において重要な役割を果たす。また、この背景では、生物多様性の改善は重要であり、種の豊富な集団は、貧しい集団よりも有虫を制御する可能性が高い。
【0006】
このように、有益な節足動物の適応度及び健康を改善することを可能にする方法を改善する為の一般的な需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に記載されているのは、節足動物にウィッカーハミエラ(Wickerhamiella)属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(Wickerhamiella bombiphila)酵母-以前にはカンジダ ボンビフィラ(Candida bombiphila)としても知られている-具体的には特定のウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)株及び/又はその断片、又は前記酵母によって産生される物質を供給することによって、節足動物、特に送粉性昆虫を飼育するための方法、及び/又はそれらの適応度、健康及び/又は行動を改善する方法である。本明細書に記載されるのはまた、節足動物、特に送粉性昆虫に、前記ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母を、具体的には前記酵母又は前記酵母によって産生される物質を含む、食品又は飼料組成物を介して提供するための様々な手段である。本発明の異なる態様及び実施形態は、先行技術のいくつかの問題を有利に軽減する。特に、ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母を節足動物、特に送粉性昆虫に供給することにより、これら節足動物の適応度、健康及び/又は行動が改善することが見いだされ、より頑強で健康な節足動物個体群をもたらす。適応度が増した送粉性者集団は、受粉活動の増加に寄与し、続いて、受粉した開花結実作物の生産の成功及び野生植生の繁殖を確実にする。
【発明の効果】
【0008】
したがって、本発明は、節足動物を飼育する、及び/又は節足動物の適応度を改善するための方法であって、前記節足動物に、ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)、その断片又はそれによって生産される物質を供給することを含む方法を提供する。特定の実施形態では、前記節足動物はコロニー形成節足動物である。より好ましくは、前記方法は、節足動物のコロニーの発育、大きさ及び/又は適応度を改善するための方法である。
ここで想定される様々な方法の特定の実施形態では、前記節足動物には、以下から選択されるウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母材料:
(i)前記ウィッカーハミエラ酵母の生細胞;
(ii)前記ウィッカーハミエラ酵母の死細胞;又は
(iii)前記ウィッカーハミエラ酵母が接種及び培養されている増殖培地を含む組成物
が供給される。特定の実施形態では、前記増殖培地は前記酵母の生細胞及び/又は前記酵母の死細胞を含む。さらなる実施形態では、前記増殖培地は、培養された後に(生きている又は不活化された)酵母細胞が除去された培地である。したがって、特定の実施形態では、増殖培地はもはや酵母細胞を含まないが、培地中における培養中に前記ウィッカーハミエラ属酵母によって生産される物質及び/又は酵母断片を含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
特定の実施形態では、本発明は、節足動物による開花作物の受粉を含む、開花結実作物の栽培方法を提供し、節足動物には、ウィッカーハミエラ酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)、その断片又はそれによって生産される物質が与えられる。より具体的には、この方法は、開花中の結実作物を提供する工程、送粉性節足動物を前記作物に提供する工程を含み、前記節足動物は、本願に記載の方法に従って飼育され、及び送粉性節足動物によって開花結実作物の受粉を可能にする。
本発明はさらに、節足動物の健康、適応度及び/又は行動を改善又は亢進させるための、ウィッカーハミエラ酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)、その断片又はそれらによって生産される物質の使用を提供する。特定の実施形態では、前記ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)は、クリチディア ボンビ(Crithidia bombi)などの腸内寄生虫を減少させる。
【0010】
本発明で提供される使用の特定の実施形態では、節足動物は送粉性飛翔昆虫である。特定の実施形態では、ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)、その断片又はそれらによって生産される物質は、前記節足動物の飛翔活性を改善するために使用される。
本発明に記載の方法及び使用の特定の実施形態では、ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)、その断片又はそれらによって生産される物質は、本願に記載の食品組成物内に含まれる。
本明細書で提供される方法及び使用の特定の実施形態では、前記ウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)は、BCCM/LMGカルチャーコレクションにおいて、受託番号MUCL56142で寄託されている、ウィッカーハミエラ ボンビフィラ/カンジダ ボンビフィラ株である。
【0011】
本発明はさらに、ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)を含む節足動物用の食品組成物を提供する。好ましくは、節足動物用の前記食品組成物は、糖液及び/又は花粉、及びウィッカーハミエラ酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)、その断片又はそれらによって生産される物質を含む。特定の実施形態では、本明細書で想定される節足動物用の食品組成物は、糖液及び/又は花粉と、(i)前記ウィッカーハミエラ属酵母の生細胞;
(ii)前記ウィッカーハミエラ属酵母の死細胞;あるいは(iii)前記ウィッカーハミエラ属酵母が接種され、前記酵母の生細胞若しくは死細胞を含む増殖培地、又は前記ウィッカーハミエラ属酵母を接種した増殖培地のインキュベーションに続き、前記増殖培地から酵母細胞が除去された増殖培地
とを含む。
特定の実施形態では、前記食品組成物は、酵母細胞又はそれに由来する生産物に加えて、(i)炭水化物源、好ましくは糖質、又は花の蜜又は蜂蜜又はそれらの代替物を含む;及び(ii)随意的に、以下の食品成分:窒素源、ビタミン、脂質又は脂肪及び/又はミネラルのうちの1つ以上を含む。特定の実施形態では、炭水化物源は、スクロース、グルコース、マルトース、デキストロース、フルクトース、転化糖、コーンシロップ又はグルコースシロップ、及びそれらの組み合わせから選択される糖である。
【0012】
本発明で提供される方法、使用及び食品組成物の特定の実施形態では、前記節足動物は昆虫、好ましくは膜翅目である。さらなる特定の実施形態において、前記膜翅目は、アポクリタ(Apocrita)、好ましくはアポイデア(Apoidea)、より好ましくはハチ又はマルハナバチである。
【0013】
本発明はさらに、本明細書で提供される方法及び使用に特に適しているウィッカーハミエラ ボンビフィラ/カンジダ ボンビフィラ株を提供する。より特定の実施形態では、この株は、BCCM/LMGカルチャーコレクションにおいて、受託番号MUCL56142で寄託された株、又はその変異体である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の特定の実施形態の図面に関する以下の記載は、単に性質の例示に過ぎず、本発明の示唆、それらの用途又は使用を限定することを意図していない。
【0015】
【
図1】本発明の特定の実施形態における、酵母ウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)の生細胞によるマルハナバチ病原体クリチディア ボンビの抑制。生細胞の割合は、2つの異なる雰囲気条件下で2つの試験種について示されている。三角は、腸寄生虫クリチディア ボンビの生細胞の割合を示し、丸は酵母ウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)の生細胞の割合を示す。生細胞の割合は、標準誤差を示すバー付きで、単一種コントロール(白抜き形状)及び2種混合(黒塗り形状)について示されている。異なる文字は、一般化線形モデルによる最小二乗平均に基づいて計算されたP値の結果が有意に異なることを示す。
【
図2】処理されたマルハナバチのコロニーの飛翔活動についての酵母のウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)の影響。コントロールコロニー(黒)及びウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)処理コロニー(白)についての、5分間毎に巣箱を出入りする働きバチ数のモデル調整後の平均。出入りする働きバチの合計及び総飛行活性が与えられる。エラーバーは標準誤差を示す。P値及びZ値は、一般化線形混合モデルによる最小二乗平均に基づいて計算される。
【
図3】8週間の期間後に計測した、コントロール処理(黒)及びウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)処理(白)の両方に対する、モデル調整後の平均の働きバチ数及び未来の働きバチ数(=蛹と働きバチの合計)。エラーバーは標準誤差を示す。P値とZ値は、一般化線形モデルによる最小二乗平均に基づいて計算される。
【
図4】全コロニーサイズ(全発育段階の合計)、繁殖量(amount of brood)(卵と幼虫)、及び未来の働きバチ(蛹と新生働きバチの合計)の週ごとの増加のモデル調整後の平均率がコントロール処理(黒)及びウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)(Cbh)処理(白)について示される。アスタリスクは、一般化線形混合モデルのP値に基づく有意差レベルを示す(* = P <0.05)。
【
図5】異なる発育段階(卵、蛹、新生バチ(働きバチ))に達する平均日数がコントロール処理(黒)及びウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ・ボンビフィラ)(Cbh)処理(白)によって示される。点線は標準誤差を表す。
【
図6】実験全体(12週間)に渡って合計された死亡幼虫数のモデル調整された平均がコントロール処理(黒)及びウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ・ボンビフィラ)(Cbh)処理(白)について示される。エラーバーは標準誤差を示す。P値及びZ値は、一般化線形モデルの最小二乗平均に基づいて計算される。
【
図7】産み出された雌雄(オスバチ及び女王バチ)のモデル調整平均数がコントロール群(黒)及びウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)処理群(白)について示される。エラーバーは標準誤差を示す。P値とZ値は、一般化線形モデルの最小二乗平均に基づいて計算される。
【
図8】本発明の一実施形態における、糖液中にいずれの酵母も含まないコントロール処理と比較した、コロニー形成に対する、MUCL 56142株(「Biobest株」と命名)及び「タイプ株」CBS 9712T株の効果。
【
図9】コントロール組成物(黒い棒)又はC.ボンビフィラ補充花粉(白い棒)を与えたコロニーについての5週後の繁殖量の発育(左)及び予測された働きバチ数(右)。バーの高さはモデル調整平均±SEを示します。異なる文字は、与えられた変数について、p<0.05で異なることを意味する。
【
図10】コントロールである非補充花粉(黒いバー)及びC.ボンビフィラ補充花粉パン(白いバー)を与えたコロニーの働きバチ数(左)及び8週目の雄バチ数(右)。バーの高さはモデル調整平均±SEを示します。異なる文字は、与えられた変数について、p<0.05で異なることを意味する。
【
図11】5週め(上のパネル)及び10週め(下のパネル)におけるコントロール処理(黒)及び4種のC.ボンビフィラ(Cbh)処理[左から右へ:活性酵母細胞(処理1);3日後に不活化された酵母細胞(処理2);糖液へ添加された、増殖培地から単離された不活化酵母細胞(処理3);酵母細胞が3日後に不活化され、濾過された増殖培地(処理4)]に対する予測された働きバチ(蛹と新生働きバチの合計)のモデル調整平均±SE。バーの上の異なる文字は、p<0.05での有意差を示す。
【
図12】コントロール(黒いバー)及びC.ボンビフィラ処理コロニー中の最初の働きバチが出現するまでの平均日数±SE。異なるバーは、異なるC.ボンビフィラ投与処置[左から右へ:活性酵母細胞(処理1);3日後に不活化された酵母細胞(処理2);糖液へ添加された、増殖培地から単離された不活化酵母細胞(処理3);酵母細胞が3日後に不活化され、濾過された増殖培地(処理4)]を示す。破線は、ベースラインのコントロール条件での働きバチの最も早い出現を示す。
【
図13】コントロールコロニー(黒いバー)とC.ボンビフィラ処理コロニーを対比して、16週後のコロニー毎に産生された(平均±SE)メスバチの適応度(女王バチと働きバチの合計)。異なるバーは、異なるC.ボンビフィラ投与処置[左から右へ:活性酵母細胞(処理1);3日後に不活化された酵母細胞(処理2);糖液へ添加された、増殖培地から単離された不活化酵母細胞(処理3);酵母細胞が3日後に不活化され、濾過された増殖培地(処理4)]を示す。異なる文字は、P<0.05での有意差を意味する。
【
図14】ベルギーのシント-トロイデンのリンゴ園にコロニーを配置した後1及び2週間後の、コントロールコロニー(黒い棒)と比較したC.ボンビフィラで処理されたコロニーの飛行活性(5分間の個体数調査毎の出入りするハチの合計)。異なるバーは、異なるC.ボンビフィラ投与処置[左から右へ:活性酵母細胞(処理1);3日後に不活化された酵母細胞(処理2);糖液へ添加された、増殖培地から単離された不活化酵母細胞(処理3);酵母細胞が3日後に不活化され、濾過された増殖培地(処理4)]を示す。異なる文字は、P<0.05での有意差を意味する。
【
図15】未処理のB.テレストリス(B. terrestris)の働きバチのコロニー及びコントロール糖液(黒いバー、酵母なし)又は生きているC.ボンビフィラ細胞を含む糖液(白いバー)のいずれかを含む16の人工花を使用して行われた二重選択行動試験。嗜好性は、各処理への訪問の合計数(左)又はマルハナバチが平均してそれらの花に費やした探索時間(右)を記録することによって評価された。
【0016】
発明の詳細な説明
本発明で使用される専門用語は限定することを意図するものではないため、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されると理解される。
他に定義されない限り、本発明で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される用語と同じ意味を有する。本発明に記載されたものと類似又は同等の任意の方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用することができるが、好ましい方法及び材料をここに記載される。
理解のための指針として潜在的に役立つが、請求項中のいずれの引用符号もその範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈がはっきりとそうではないことを指示する場合を除いて、複数の言及を含む。
本発明で使用される「含む」という用語は、「含む」又は「含有する」、と同義であり、及び包含的又はオープンエンドであり、追加の、列挙されていない部材、要素又は方法のステップを排除しない。「含む」、という用語は、「からなる」という用語もまた含む。
【0017】
本発明で使用される「約」という用語は、パラメータ、量、持続時間などの測定可能な値に言及する際、このよう変動が開示された発明において実施するのに適切である限り、指定の値から±10%以下、好ましくは±5%以下、より好ましくは±1%以下、なおさら好ましくは±0.1%以下の変動を包含することを意味する。修飾語句である「約」が指す値も、それ自体もまた具体的に開示され、好ましくはものとして開示されていることが理解されるべきである。
端点による数値範囲の言及は、列挙された端点と同様に、それぞれの範囲内に包含した全ての数及び区間を含む。
【0018】
以下の節では、本発明の様々な態様又は実施形態をより詳細に説明する。そのように説明された各態様又は実施形態は、そうでないことが明確に示されていない限り、他の態様又は実施形態と組み合わされてもよい。特に、好ましい又は有利であると示されたどの特徴も、他のどの特徴又は好ましい又は有利であると示された特徴と組み合わせることができる。
本明細書全体を通して「一実施形態」、「ある実施形態」への言及は、その実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。このように、本明細書を通じて様々な箇所での「一実施形態では」又は「ある実施形態では」という語句の出現は、しかしながら、必ずしも同じ実施形態を言及するとは限らない。さらに、特定の特徴、構造又は特性は、1つ又は複数の実施形態において、本開示から当業者が理解できるであろう任意の適切な方法で組み合わせることができる。さらに、本発明に記載されるいくつかの実施形態は、いくつかの、しかし他の実施形態に含まれる他の特徴を含まないが、異なる実施形態の特徴の組み合わせは本発明の範囲内にあり、当業者によって理解されるように異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、添付の特許請求の範囲では、特許請求の範囲に記載の実施形態のいずれも、任意の組み合わせで使用することができる。
【0019】
本明細書で使用される「カンジダ ボンビフィラ」及び「ウィッカーハミエラ ボンビフィラ」という用語は、互換的に使用され、同じ酵母種を指す。実際、この種の2つの株は、Brysch-Herzbergにより2004年に最初に記載され、その最も関連する種はウィッカーハミエラ ドメラクィア(Wickerhamiella domerquiae)であることが見出された(Herzberg and Lachance、2004、International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology、54:1857-1859)。当時、これらの著者は有性生殖を可能にするためにそれらを結合させることができなかったので、この種は、本来は不完全又は無性酵母を示すために使用された無性クレードのカンジダという学名として記載され、非常に多様な種に適用された。本種のDNAベースの系統発生に基づく近年の研究は、以前は「カンジダ ボンビフィラ」として知られていた種が、今はウィッカーハミエラ ボンビフィラとして種名が変更されるべきであることを示唆している(de Vega et al, 2017, FEMS Yeast Research, Volume 17, issue 5, 1 August 2017)。
【0020】
本発明者らは、驚くべきことに、ある種の酵母が、生物に提供される場合、特に、酵母が節足動物によって摂取される場合には、当該生物、特に当該節足動物の一般的な適応度の様々な側面を改善できることを見出した。特に、本発明者らは、ウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)又はその断片又はそれによって生産される物質が、糖溶液中又は花粉を介して節足動物に提供されると、生育、健康及び/又は行動を亢進し、節足動物の適応度を改善することを見出した。実際、本発明者らは、マルハナバチにウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)を、特に前記酵母を含む食品組成物(糖液及び/又は花粉)を介して提供すると、サイズ、繁殖量、働きバチの数、オスのマルハナバチ及び/又はマルハナバチのコロニーの予測された働きバチの数が増加し、及び/又は死ぬ幼虫数が減少することを見出した。さらに、本発明者らは、節足動物に提供された場合に、上記の効果を呼び起こすのに特に強力であることが示されている特定のウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)株を単離した。
【0021】
本発明の異なる態様及び実施形態の文脈において、本発明で言及される「節足動物」という用語は、昆虫類、クモ類、多足類及び甲殻類を含む、節足動物門からの任意の節足動物であり得る。好ましくは、節足動物は、例えば家畜、酪農動物、魚等の動物及び/又はヒトの飼料又は食品として重要な節足動物であるか、又は絹などの他の製品、又は受粉及び生物的害虫駆除などのサービスを提供する節足動物である。特定の実施形態では、節足動物は昆虫、好ましくは送粉性昆虫である。送粉性昆虫の非限定的な例は、ハチ、蝶、蛾、アリ、スズメバチ、ハエ、ユスリカ、蚊又は甲虫である。特定の実施形態では、節足動物は、ハチ、好ましくはマルハナバチ又はミツバチ、より好ましくはボンブス(Bombus)属のマルハナバチである。特定の実施形態では、節足動物は送粉性コロニー形成昆虫である。特定の実施形態では、昆虫は、膜翅目、例えばアポクリタ亜目、より好ましくはアポイデアの上科に属する。特定の実施形態では、節足動物はアピダエ(Apidae)科に属する。さらなる特定の実施形態において、昆虫はアカンプトペウム(Acamptopeum)、アンセムラガス(Anthemurgus)、アンセレノイデス(Antherenoides)、アカントパス(Acanthopus)、アフロメレクタ(Afromelecta)、アガパンチヌス(Agapanthinus)、アグラエ(Aglae)、アグラオメリッサ(Aglaomelissa)、アレピドセレス(Alepidosceles)、アロサイラテチカ(Alloscirtetica)、アメギラ(Amegilla)、アンシラ(Ancyla)、アンシロセリス(Ancyloscelis)、アンソフォラ(Anthophora)、アンソフォルラ(Anthophorula)、アピス(Apis)、アポトリゴナ(Apotrigona)、アリソセブレ(Arhysoceble)、アウストロプレベイア(Austroplebeia)、アクセストトリゴナ(Axestotrigona)、ボンバス(Bombus)、ブラキメレクタ(Brachymelecta)、ケノノマダ(Caenonomada)、カマルゴイア(Camargoia)、カネフォルラ(Canephorula)、ケモロバス(Cemolobus)、セントリス(Centris)、セファロトリゴナ(Cephalotrigona)、チャレポゲナス(Chalepogenus)、キラマロプシス(Chilamalopsis)、クレプトトリゴナ(Cleptotrigona)、コエリオキソイデス(Coelioxoides)、クテニオセラス(Ctenioschelus)、クテノプレクトラ(Ctenoplectra)、クテノプレクトリナ(Ctenoplectrina)、キュビタリア(Cubitalia)、ダクチルリナ(Dactylurina)、デルトプチラ(Deltoptila)、ディアダシア(Diadasia)、ディアダシナ(Diadasina)、ダッケオラ(Duckeola)、エラフロフォダ(Elaphrophoda)、エペオロイデス(Epeoloides)、エピカリス(Epicharis)、エピクロパス(Epiclopus)、エレマピス(Eremapis)、エリクロシス(Ericrocis)、エウセラ(Eucera)、エウセリノダ(Eucerinoda)、エウフリエセア(Eufriesea)、エウグロッサ(Euglossa)、エウラエマ(Eulaema)、エクサエレート(Exaerete)、エキソマロプシス(Exomalopsis)、フロリレガス(Florilegus)、フリエセラ(Friesella)、フリエセオメリッタ(Frieseomelitta)、ガエシスチア(Gaesischia)、ガエソキア(Gaesochira)、ゲニオトリゴナ(Geniotrigona)、ゲオトリゴナ(Geotrigona)、ハブロフォルラ(Habrophorula)、ハブロポダ(Habropoda)、ハマトスリックス(Hamatothrix)、ヘテロトリゴナ(Heterotrigona)、ホモトリゴナ(Homotrigona)、ホプリフォラ(Hopliphora)、ハイポトリゴナ(Hypotrigona)、イセペオラス(Isepeolus)、ランタノメリッサ(Lanthanomelissa)、レイオポダス(Leiopodus)、レピドトリゴナ(Lepidotrigona)、レストリメリッタ(Lestrimelitta)、レウロトリゴナ(Leurotrigona)、リオトリゴナ(Liotrigona)、リソトリゴナ(Lisotrigona)、ロフォチゲーター(Lophothygater)、ロフォトリゴナ(Lophotrigona)、マルチナピス(Martinapis)、メレクタ(Melecta)、メレクトイデス(Melectoides)、メリフィロプシス(Meliphilopsis)、メリプレベイア(Meliplebeia)、メリポナ(Melipona)、メリポヌラ(Meliponula)、メリッソイデス(Melissodes)、メリッソプチラ(Melissoptila)、メリトマ(Melitoma)、メリトメラ(Melitomella)、メリウィレア(Meliwilea)、メソケイラ(Mesocheira)、メソニキウム(Mesonychium)、メソプリア(Mesoplia)、ミクロニカプシス(Micronychapsis)、ミラナプシス(Mirnapis)、モノエカ(Monoeca)、モウレラ(Mourella)、ナンノトリゴナ(Nannotrigona)、ナノラチナス(Nanorhathymus)、ノグエイラピス(Nogueirapis)、ノトロニア(Notolonia)、オドントトリゴナ(Odontotrigona)、オシリナス(Osirinus)、オキシトリゴナ(Oxytrigona)、パキメラス(Pachymelus)、パキスバストラ(Pachysvastra)、パピュアトリゴナ(Papuatrigona)、パラテトラペディア(Paratetrapedia)、パラトリゴナ(Paratrigona)、パラトリゴノイデス(Paratrigonoides)、パエペオラス(Paepeolus)、パリオトリゴナ(Pariotrigona)、パルタモナ(Partamona)、ペポナプシス(Peponapsis)、プラチスバストラ(Platysvastra)、プラチトリゴナ(Platytrigona)、プレベイア(Plebeia)、プレベイエラ(Plebeiella)、プレベイナ(Plebeina)、プロトシリス(Protosiris)、プチロスリックス(Ptilothrix)、プチロトリゴナ(Ptilotrigona)、ラチナス(Rhathymus)、サントリゴナ(Santioga)、スカプトトリゴナ(Scaptotrigona)、スカウラ(Scaura)、シュワルジアナ(Schwarziana)、シュワルズラ(Schwarzula)、シマンセドン(Simanthedon)、シノメレクタ(Sinomelecta)、サンダトリゴナ(Sundatrigona)、スバストラ(Svastra)、スバストリデス(Svastrides)、スバストリナ(Svastrina)、シントリカロニア(Syntrichalonia)、タピノタプシス(Tapinotapsis)、タピノタスポイデス(Tapinotaspoides)、ターサリア(Tarsalia)、テラトグナータ(Teratognatha)、テトラゴナ(Tetragona)、テトラゴニラ(Tetragonilla)、テトラゴニスカ(Tetragonisca)、テトラゴヌラ(Tetragonula)、テトラロニア(Tetralonia)、テトラロニエラ(Tetraloniella)、テトラロニオイデラ(Tetralonioidella)、テトラペディア(Tetrapedia)、テトリゴナ(Tetrigona)、チガター(Thygater)、チレオメレクタ(Thyreomelecta)、チレウス(Thyreus)、トロメリッサ(Toromelissa)、トリコセラピス(Trichocerapis)、トリコトリゴナ(Trichotrigona)、トリゴナ(Trigona)、トリゴニスカ(Trigonisca)、トリゴノペディア(Trigonopedia)、ウルゴンバキア(Ulugombakia)、セノグロッサ(Xenoglossa)、セロメレクタ(Xeromelecta)、ザコスミア(Zacosmia)、アエサモベイト(Aethammobates)、アモベイト(Ammobates)、ビアステス(Biastes)、ブラキノマダ(Brachynomada)、ケノプロソピナ(Caenoprosopina)、ケノプロソピス(Caenoprosopis)、シアスモグナトゥス(Chiasmognathus)、ドエリンギエラ(Doeringiella)、エペオラス(Epeolus)、ヘキセペオラス(Hexepeolus)、ホルコパシテス(Holcopasites)、ケリタ(Kelita)、メラネンピス(Melanempis)、ネオラッラ(Neolarra)、ネオパシテス(Neopasites)、ノマダ(Nomada)、オディネロプシス(Odyneropsis)、オレオパシテス(Oreopasites)、パラモバトデス(Parammobatodes)、パラノマダ(Paranomada)、パシテス(Pasites)、シューデペオラス(Pseudepeolus)、リネペオラス(Rhinepeolus)、ロゲペオラス(Rhogepeolus)、ロパロレンマ(Rhopalolemma)、サイミエデクネクチア(Schmiedeknectia)、スフェコドプシス(Sphecodopsis)、スピノパシテス(Spinopasites)、タレストリア(Thalestria)、タウンセンディエラ(Townsendiella)、トリペオラス(Triepeolus)、トリオパシテス(Triopasites)、アロダペ(Allodape)、アロダプラ(Allodapula)、ブラウンサピス(Braunsapis)、クレアチナ(Creatina)、コンプソメリッサ(Compsomelissa)、エフラクタピス(Effractapis)、エウコンディロパス(Eucondylops)、エキソネウラ(Exoneura)、エキソネウルラ(Exoneurlla)、エキソネウリディア(Exoneuridia)、マクロガレア(Macrogalea)、マニュエリア(Manuelia)、ナスタピス(Nasutapis)、又はキロコパ(Xylocopa) 属である。好ましくは、節足動物はハチ又はマルハナバチであり、特に、例えばB.テレストリス(B. terrestris)、B.イグニタス(B. ignitus)、B.ディバーサス(B. diversus)、B.オキシデンタリス(B. occidentalis)、それら関連種及び亜種を含むボンバス属のマルハナバチである。特定の実施形態では、節足動物はB.テレストリス;例えばB.テレストリス アフリカヌス(B. terrestris africanus)、B.テレストリス アウダクス(B. terrestris audax)、B.テレストリス カラブリカス(B. terrestris calabricus)、B.テレストリス カナリエンシス(B. terrestris canariensis)、B.テレストリス ダルマチナス(B. terrestris dalmatinus)、B.テレストリス ルシタニカス(B. terrestris lusitanicus)、B.テレストリス サッサリカス(B. terrestris sassaricus)、B.テレストリス テレストリス(B. terrestris terrestris)及びB.テレストリス サントパス(B. terrestris xanthopus)である。他の実施形態において、前記節足動物は、当業者によって、有害生物の生物的駆除のための生物的駆除剤として知られている、例えば捕食性ダニ、寄生ハチ、又は捕食性昆虫、例えばてんとう虫、ハナアブ、クサカゲロウ又はミリドバグ(Mirid bug)である。
【0022】
本発明では、節足動物にウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母、それらの断片又はそれによって生産される物質を提供することを含む、節足動物の飼育方法並びに/又は節足動物の健康、行動及び/若しくは適応度の改善方法が提供される。本発明では、節足動物を飼育する又は節足動物の健康、行動及び/若しくは適応度を改善するための、ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母、それらの断片又はそれらによって産生される物質の使用も提供される。
【0023】
その名前から暗示されるものとは対照的に、酵母種ウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)は野生のマルハナバチ中ではきわめて珍しい。Brysch-Herzberg(FEMS Microbiology Ecology 50(2004)87-100)は、43匹の女王バチと92匹の働きバチ、並びに9つの蜂蜜入りの壺及び数百の花及び蜜の資料を分析することによって、植物とマルハナバチの相利共生に関わる酵母群に関する広範な研究を行った。メトスクニコウィア リューカウフィ(Metschnikowia reukaufii)のような特定の酵母が分析されたマルハナバチ試料の大部分で発見されたが、C.ボンビフィラ酵母はマルハナバチ蜂蜜から一度又は二度単離されたのみであった。このかなり弱い関連が、この酵母種の命名の基礎である。その結果、著者はその生態系について結論を出すことはできないと主張した。広範な世界的な研究では、マルハナバチからカンジダ ボンビフィラを単離することができなかったので、その種がマルハナバチの舌に生息すること及び結果として蜜をコロニー化するという証拠はなかった。加えて、特に実施例1で詳細に記述したように、本発明者らは、いくつかの会社で商業的に飼育されているマルハナバチにはW.ボンビフィラ/C.ボンビフィラが完全に存在しないこと及びW.ボンビフィラ/C.ボンビフィラは接種された女王バチの源から巣の仲間に時折伝わるだけであることを示した。W.ボンビフィラ/C.ボンビフィラ及びマルハナバチ、又は他のいずれかの節足動物との間の上記のとても希薄な関連性を考慮すると、節足動物、特にマルハナバチにカンジダ ボンビフィラを供給して、前記節足動物の健康、行動及び/又は適応度を改善することは非常に驚くべきことである。特定の実施形態では、本明細書で想定されるウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母は、以下でさらに詳述されるように、ウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)MUCL 56142株である。本明細書で使用される「飼育」という用語は、節足動物の飼育という文脈に関して、節足動物の育種及び成長、発育、維持、及び繁殖を支援することを広く指す。当業者は、飼育方法が節足動物によって異なることを理解するだろう。適切な飼育又は管理方法は当業者に知られている。例えば、マルハナバチ(例えばB.テレストリス)は、標準的な雰囲気条件下(28℃及び60%の相対湿度)で暗い巣箱中で管理することができ、一般的には自由に給餌される。
【0024】
請求項化された方法の文脈中で使用される用語「供給する」は、広義には、節足動物に利用可能な、ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母、その断片、又はそれによって生産される物質を製造すること、例えば、ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母、その断片、又はそれによって生産される物質を、食料源又は食事の一部として供給することを指す。特に、本発明は酵母、その断片、又はそれによって生産される物質を、積極的に供給することを含む方法を提供する。これは、一般的には、節足動物に1マイクロリットルあたり少なくとも約100個の細胞から1マイクロリットルあたり最大60000個の細胞、又はそれと同等な断片又はそれに由来する生産物を含む組成物が与えられることを意味する。一般的には、組成物中の酵母細胞の数は給餌中の溶液中で自然に増加するだろう。ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母、その断片、又はそれによって生産される物質を節足動物に供給することは、それらを節足動物、特に節足動物の腸に移すことを可能にする。本発明者らは、特に、ウィッカーハミエラ属酵母の効果が生細胞によって保証されるだけでなく、不活化又は死細胞、それらの断片又はそれらによって生産される物質によっても保証され得ることを見出した。実際、ウィッカーハミエラ属酵母が培養された培地は、酵母細胞が前記培地から除去された場合でさえも、節足動物に対する所望の効果を依然として確実にすることができることが見出された。従って、直接的な方法で、ウィッカーハミエラ属酵母を生細胞又は死細胞として、又は間接的な方法で、前記酵母細胞が培養された(及び続いてそれらが除去された)培地を介して提供することによって、効果を確実にすることができる。特定の実施形態では、酵母細胞は濾過によって、例えば0.45μm又はそれ以下、例えば0.3又は0.25μm又はそれ以下の孔径を有するフィルターによる濾過によって培地から除去されていてもよい。従って、特定の実施形態では、本明細書で想定されるウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母、その断片、又はそれによって生産される物質は、生細胞として、死細胞として、又は前記ウィッカーハミエラ属酵母細胞は植菌及び培養された増殖培地を含む組成物を介して節足動物に供給され、前記増殖培地は前記酵母の生細胞、又は死細胞を含み、前記増殖培地は植菌された増殖培地の培養後に(生又は不活化)酵母細胞が除去された培地である。このような培地は、このように、増殖培地中でウィッカーハミエラ属酵母を単純に培養し、及び必要に応じて、例えば0.45μm又はそれ以下、例えば0.3又は0.25μm又はそれ以下の孔径を有するフィルターによる濾過によって酵母細胞を除去することによって生成できる。より具体的には、特定の実施形態では、本明細書で想定される方法は、本発明で開示されるウィッカーハミエラ属酵母によって生産される物質及び/又は前記ウィッカーハミエラ属酵母の断片を含む増殖培地を取得し、前記増殖培地を前記節足動物に供給するステップを含む。
【0025】
特定の実施形態では、ウィッカーハミエラ属酵母、特に本明細書で想定されているウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母、その断片、又はそれによって生産される物質は、以下でさらに論じるような食品組成物の形態で提供される。特定の実施形態では、以下にさらに詳細に記載されるように、ウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)MUCL 56142株、その断片、又はそれによって生産される物質が節足動物に供給される。あるいは、酵母、酵母断片又は酵母物質は、それらが節足動物と直接接触することを確実にするようにそれらを節足動物の環境に配置することによって節足動物に提供され得る。
【0026】
本発明で前記酵母を節足動物に供給するという文脈で使用される、又はそのものを指す場合の、「ウィッカーハミエラ属酵母」、特に「ウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ・ボンビフィラ)」という用語は、生酵母細胞又は前記酵母の不活化、死酵母細胞のいずれかを指す。好ましくは、細胞は生きている酵母細胞である。
本発明で使用されるとき、酵母を指す場合の「断片」という用語は、酵母細胞に由来する任意の成分を指す。そのような断片の非限定的な例は、核酸、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、細胞壁、又は細胞壁又は細胞オルガネラの一部である。そのような断片は、抽出物、ホモジネート又は単離された成分として提供され得る。
【0027】
本明細書で使用される「酵母によって生産される物質」という用語は、酵母細胞、例えばウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)によって生産される及び/又は見出される酵素などの代謝産物及び他の因子を指す。例えば、酵母メタボロームデータベースは、酵母サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerivisae)によって産生される代謝産物を記載する。同様に、非サッカロマイセス酵母は、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、グルカナーゼ、リケナーゼ、β-グルコシダーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、アミラーゼ、亜硫酸レダクターゼ、及びリパーゼなどの酵素を産生することが示されている(Jolly et al, 2006, S. Afr. J. EnoL Vitie., Vol 27, No.1 : 15-39)。同様の代謝産物及び/又は酵素は、ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)について同定され得る。これらの代謝産物は発酵中に生成され得る。代謝産物の非限定的な例としては、脂質、ステロール、ビタミン、アミノ酸、ペプチド、有機酸、糖、糖タンパク質又はその誘導体、有機エステル、高級アルデヒド及びアルコール、ビシナルジケトン(VDK)、硫黄揮発性物質を含む。特定の実施形態では、代謝産物は糖タンパク質である。さらなる特定の実施形態では、代謝産物は、それらが他の酵母株及び/又は属に対して毒性であるという点で「キラー因子」である。特定の実施形態では、代謝産物は上清又は抽出物として提供される。さらなる態様において、代謝産物は単離された代謝産物である。好ましくは、本明細書で想定される酵母によって産生される物質及び/又は本酵母の断片は、ウィッカーハミエラ属酵母が培養されている増殖培地として提供され得る。上記で詳細に述べたように、そのような培地は、本明細書で想定されるようなウィッカーハミエラ属酵母を適切な増殖培地中で増殖させ、続いて、必要に応じて生酵母細胞の不活化後に、例えば直径0.45μm又はそれ以下、例えば0.3又は0.25μm又はそれ以下の孔径を有するフィルターによる濾過によって前記増殖培地からの酵母細胞の除去することによって得られる。理論に縛られることを望まずに、このようにして、ウィッカーハミエラ属酵母代謝産物及び/又は酵母断片を含むが、ウィッカーハミエラ属酵母細胞を含まない培地が得られる。増殖培地から酵母細胞を除去するのに有用なフィルターは当技術分野において公知である。
【0028】
ある実施形態では、本発明は節足動物に、ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母、好ましくはカンジダ ボンビフィラMUCL 56142株によって作られたその断片又は物質を供給することによって節足動物の健康、適応度及び/又は行動を改善する方法を提供し、前記酵母は、本明細書で想定される食品組成物内に任意に含まれる。特定の実施形態では、前記節足動物は送粉性及び/又はコロニー形成昆虫、さらにより好ましくはハチ又はマルハナバチである。理論に縛られることなく、酵母は特定の成分、例えば分解生成物、及び/又は代謝産物又は物質、例えばビタミン、ステロール、又は必須アミノ酸を節足動物宿主に提供することができ、それによってその後節足動物の健康、適応度及び/又は行動を改善することができる。
【0029】
本発明の方法の文脈で使用される「健康の改善」という用語は、節足動物の全般的な健康問題を高めることを指す。節足動物の健康は、組み合わせて又は別々に作用するいくつかの要因によって影響を受ける可能性があります。これらには、集中的な農業及び農薬の使用、飢餓、栄養失調、ウイルス、病原体による攻撃、及び内部又は外部の寄生虫、及び環境の変化による影響が含まれる。健康状態の低下は、ほとんどの場合、節足動物の行動に負の様態を及ぼす。節足動物の健康は、特に、大きさ、体重、寿命、繁殖能力、及び病原体及び寄生虫による感染に対する抵抗性によって評価することができる。特に、節足動物、特にハチは、ノゼマ ボンビ(Nosema bombi)又はクリチジア spp(Crithidia spp)などの腸内寄生虫に対して特に敏感であるように思われる。特定の実施形態では、本発明の食品組成物内に任意で含まれ、本明細書で想定しているウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母、その断片又はそれらによって生産される物質の使用は、節足動物の免疫機能を改善し、腸内寄生虫の数が減少する。理論に縛られることなく、寄生虫及び病原性細菌及びその他の真菌に対する酵母菌への影響は競合過程によるものであり、及びまた優先順位の影響によるもの:始めについた生物(即ち酵母)が後から到着する生物には不適な環境をつくる変化(pH, 代謝された炭素及び窒素源)である。加えて又は代わりに、いくつかの酵母種が、それらが「キラー因子」、すなわちそれらが共存する特定の対象に対して毒性であるタンパク質を産生することが知られている。
【0030】
したがって、本発明はまた、前記節足動物に、場合により本明細書で想定されるような食品組成物内に含まれる、ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母、好ましくはカンジダ ボンビフィラMUCL 56142株、それらの断片又はそれらによって生産される物質を供給することにより、節足動物の免疫機能を改善する方法に関する。好ましくは、前記節足動物はコロニー形成節足動物、より好ましくは送粉性昆虫、さらにより好ましくはハチ、最も好ましくはボンブス属のハチである。有利には、節足動物の免疫機能を改善する前記方法は、節足動物中の腸内寄生虫の減少、特にクリチディア ボンビの減少をもたらす。
【0031】
生物又は生物群を指すときに本発明で使用される「適応度」という用語は、生物又は生物群(例えば、コロニー又は集団)がそれら自身が見つけたある環境中で生存及び繁殖する能力を指すことを意図する。この生存及び繁殖の結果として、生物又は生物群は遺伝子を次世代へ残すことに寄与するだろう(Orr, Nature Reviews. Genetics, 10(2009)531-539)。適応度は、生存可能な子孫を産生する能力に寄与する多くの異なる「適応度成分」を含む。そのように、「適応度」はまた、生存率/寿命変数も包含し、一般的な健康及び病原体抵抗性だけでなく、交配の成功、及び繁殖力(毎日の繁殖力/生涯繁殖力)にも関連する。コロニー形成種、例えばB.テレストリスでは、コロニー内に存在する個体の数から、女王バチの繁殖力が明らかになるでしょう。適応度という用語は、身体的又は生物学的適応度を指すことができ、両者は互いに関連している。身体的適応度は、例えば飛行などの特定の活動を実行する身体的能力であり、活動レベルを評価することによって評価することができ、生物学的適応度は繁殖力、特に生物が特定の環境中で子孫を産み出すことができる程度である。身体的及び生物学的適合性の両方は、特に、上記の、コロニー発育及び/又はコロニー発育パラメータを評価することによって評価され得る。従って、本発明はまた、節足動物の生物学的、物理的又は生物学的及び物理的適合性を、節足動物に、本明細書中において企画された食品組成物中に任意に含まれる、ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母、好ましくはカンジダ ボンビフィラ株MUCL 56142、それらの断片又はそれにより生産される物質を供給することにより、改善する方法に関する。好ましくは、前記節足動物はコロニー形成節足動物、より好ましくは送粉性昆虫、さらにより好ましくはハチ、最も好ましくはボンブス属のハチである。
【0032】
本発明の特定の実施形態は、前記節足動物に、本明細書中に記載された食品組成物内に任意で含まれる、ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母、好ましくはカンジダ ボンビフィラMUCL 56142株それらの断片又はそれらの物質を供給することによって節足動物、特に送粉性昆虫の行動又は活性を改善する方法に関する。節足動物、特に送粉性昆虫の行動は、節足動物又は送粉性昆虫によって行われる一般的な活動から明らかである。これらの活動は、異なる種類の送粉性昆虫及びコロニー形成又は単独性受粉昆虫の間によって異なります。例えば、中心点採餌者は彼らの住居/巣から出発して食べ物を探しに行き、彼らが食料の探索に成功したときに戻る。従って、コロニーを出入りするトラフィックは、送粉性昆虫の一般的な行動又は活動の尺度として使用することができる。あるいは、飛翔行動及び採餌の成功は、送粉性(飛翔)昆虫の適応度の尺度として使用することができ、及び、もし送粉性昆虫がコロニー形成昆虫である場合、コロニー適応度を研究するために使用することができる。元気なコロニーは、食料を集めるために多数の飛行をする多数の送粉性昆虫によって特徴付けられる。飛翔活動及び花粉/花の蜜の採集の増加もまた、より強力でより効果的な開花結実作物の受粉をもたらすだろう。コロニー形成及び/又は送粉性昆虫の行動及び適応度を評価するために研究することができる他の活動の非限定的な例は、フェロモンに対する反応、温度応答、群れをなしての行動、走行動、交配行動及び/又は頻度、身づくろい及び/又は衛生的行動、食品貯蔵行動、保護行動及び漂流行動である。
【0033】
特定の実施形態では、前記行動又は活性を改善する方法は、送粉性昆虫、好ましくはハチ、より好ましくはマルハナバチ、さらにより好ましくはボンバス属の蜂、特にB.テレストリスの飛翔及び採餌活動を改善する方法である。本発明で使用される「飛行活動」という用語は、飛来、飛出する送粉性節足動物の数及び/又は一定期間に巣へ飛来、飛出する送粉性節足動物の頻度を指す。本明細書で使用される「採餌活動」という用語は、1採餌飛行あたりに訪れた花の数及び/又は収集された花粉もしくは花の蜜の量を指す。
【0034】
本発明の特定の実施形態では、前記節足動物は、コロニー形成節足動物であり、前記ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)、その断片、又はそれによって生産される物質は、更に以下に記載されるように、食品組成物中に任意で含まれ、コロニー発育及び/又はコロニーの発育率を改善する。したがって、特定の実施形態において、本発明は、コロニー形成節足動物、特に送粉性コロニー形成節足動物のコロニー発育及び/又はコロニー発育率を改善するための方法であって、その節足動物に、本明細書で論じられた、ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母、それらの断片又はそれらによって生産される物質であり、好ましくは前記酵母はカンジダ ボンビフィラMUCL 56142株を供給することを含み、前記ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母は、本明細書中で想定される食品組成物中に任意で含まれる。
【0035】
本明細書で使用される「コロニー発育」という用語は、共有された居住地中で一緒に生活及び/又は成長している同種の節足動物の個々の群、好ましくは完全に社会性の節足動物の進歩を指す。より具体的には、コロニー形成節足動物のコロニーは、協同的な繁殖の世話、成虫のコロニー内での世代の重複、及び繁殖及び非繁殖群への労働/作業の分配を伴う高度に組織化された動物社会である。特定の節足動物のコロニーには、子孫を産む女王又は繁殖用の雌が1匹及び卵や幼虫の世話をし、食料を探す及び/又はコロニーを守る多くの働きバチがいます。例えば、ミツバチやマルハナバチのコロニーは、母親の女王バチが巣の中に受精卵を産むことで始められる。女王は受精卵を産むことによってコロニーが始まり、働きバチに成長し、それが次の子孫群を養い及び採餌の世話をする。コロニーが次第に大きくなるにつれて、オスのハチ/マルハナバチ及び新しい女王もその上生産されます。「コロニー発育率」という用語は、コロニー発育が起こる速度を指す。一般的には、本発明で使用される「率」という用語は、変化の割合、好ましくは単位時間当たりの変化の割合を指す。
【0036】
コロニー発育及び/又はコロニー発育率は、当業者に知られている様々なパラメータによって評価することができる。例えば、最初の産卵の時期、卵から成体までの発育期間、又は一定の時間間隔での個体数、例えばコロニーの大きさに関連するパラメータ、すなわち、卵、幼虫、蛹、働きバチ、及び性バチ(オスバチと女王バチ)の数を含む生殖時のコロニーの大きさを評価することができる。生殖の時間間隔又は時間は、コロニー形成節足動物の種類の発育期間によって異なります。特定の期間内及び/又は基準値と比較した場合の未来の働きバチの数、コロニーの大きさ及び/又は繁殖量の増加は、コロニーの発育が改善されたことを示す。好ましくは、前記基準値は、同じ処理を受けていない、すなわち本発明による方法に従って飼育されていない、又は本発明に記載の酵母、その断片又はそれらによって産生された物質を与えられていない節足動物のコロニーについて得られる値である。ある実施形態では、本発明は、節足動物に、本発明による食品組成物内に任意で含まれる、ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母、その断片、又はそれによって生産された物質を供給することによって、節足動物のコロニーのサイズ、繁殖、及び/又は予測される働きバチの数を(参照コロニーと比較して)改善する方法に関する。好ましくは、前記節足動物はコロニー形成節足動物、より好ましくは送粉性昆虫、さらにより好ましくはハチ、最も好ましくはボンブス属のハチである。
【0037】
本発明はさらに、節足動物に本発明に記載の酵母材料を提供することを含む農業方法を提供する。これらの方法は、有益な節足動物の使用を含む任意の方法を含む。特定の実施形態では、この方法は、1つ以上の節足動物による受粉及び/又は生物学的害虫駆除を含む作物を栽培する方法である。
開花結実作物の受粉は送粉性昆虫に大きく依存しているので、当業者は、より少ない数の送粉性昆虫、又はより活性の低い又はより適応度/健康が低い送粉性昆虫の存在が、虫送粉性作物の受粉に悪影響を及ぼすことを理解し、その結果、受粉した花の数が減少し及びその結果収穫できる果実の数が減少する。従って、節足動物、特に送粉性昆虫に、本明細書で想定される食品組成物中に任意で含まれる、ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母、好ましくはカンジダ ボンビフィラMUCL 56142株、その断片又はそれにより生産される物質を供給することにより、送粉性昆虫の健康及び/又は適応度及び/又は行動及び/又は(任意で)コロニーの発育を増加させることにより、結実作物の収量を増加させることができる。従って、本発明はさらに、結実作物が提供され、開花結実作物が節足動物によって受粉され、前記節足動物は、本発明に従って飼育され、又は前記節足動物は、本明細書に記載の食品組成物中に任意で含まれる、ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母、好ましくはカンジダ ボンビフィラMUCL 56142株、それらの断片又はそれらにより生産される物質が供給される、結実作物の栽培方法が提供される。好ましくは、前記節足動物はコロニー形成節足動物、より好ましくは送粉性昆虫、さらにより好ましくはハチ、最も好ましくはボンブス属のハチである。
【0038】
特定の実施形態では、作物の栽培は1つ以上の節足動物による生物学的害虫駆除を含む。生物学的駆除が節足動物の存在に依存している場合、当業者は、より少ない数の捕食性節足動物の存在、又はより活性の低い又はより適応度/健康が低い捕食性節足動物の存在が、生物学的害虫駆除に悪影響を及ぼすことを理解する。従って、本発明はさらに、節足動物を用いて生物学的害虫駆除を確実にし、及び本発明の方法に従って前記節足動物が飼育される、結実作物の栽培方法を提供する。
【0039】
本発明で使用される「作物」という用語は、営利又は自給自足のために栽培されたすべての栽培植物又は農産物を指す。本発明で使用される「結実作物」という用語は、多年生の食用作物を指し、食用製品は本物の植物性果実であるか、又はそれに由来する。本発明で使用される「開花結実作物」という用語は、開花する作物、より具体的には受精を可能にするために受粉を必要とする作物を指す。非限定的な例は、リンゴ、西洋ナシ、マルメロ、ソルバス、ビワ、サクランボ、プラム、アプリコット、アーモンド、桃、イチゴ、ラズベリー、グミ、シーバックソーン、ヨーロッパクルミ、ペカン、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、オリーブ、柿、イチジク、マルベリー、ザクロ、フェイジョア、タンジェリン、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、シトロン、カラント、西洋スグリ、ヨーロッパハヘイゼル、アクチニジア、シザンドラ(Schizandra)、スイカズラ、ガマズミ属の木、メギ、アボカド、ナツメヤシ、マンゴー、パンノキ、パパイヤ、バナナ、トマト、コショウ、メロン、キュウリ、カボチャ、豆、綿などである。本発明で使用される「受粉する」又は「受粉」という用語は、花粉が植物の雌性生殖器に移され、それによって受精が起こることを可能にするプロセスを指す。受粉のプロセスが成功するためには、花の雄の部分である葯によって生成された花粉粒が、同じ種の植物の花の雌の部分である柱頭に運ばれる必要がある。本発明で言及される受粉は、好ましくは他家受粉であり、ある植物の花の葯からの花粉は送粉性昆虫によって同じ種の別の植物の花の柱頭に運ばれる。
【0040】
特定の実施形態において、本発明は、節足動物を直接含む、例えば害虫駆除又は蜂蜜生産方法などの方法に関する。実際、当業者は、本明細書で言及される節足動物がミツバチである場合、本明細書中に記載されるミツバチを飼育するための方法、及び/又はミツバチの健康、適応度、行動及び/又は活動、例えば飛行活動を改善するための方法は、花の蜜収集の増加及び結果として蜂蜜生産の増加をもたらすことを理解するだろう。従って、本発明はまた、ミツバチに、本明細書で想定されるように食品組成物内に含まれる、ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母、好ましくはカンジダ ボンビフィラMUCL 56142株、それらの断片、又はそれらにより生産される物質を任意に供給することにより蜂蜜を製造する方法に関する。さらなる実施形態では、本発明は、例えばダニなどの捕食性節足動物に、ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母、その断片、又はそれにより生産される物質を供給することによる生物学的害虫駆除方法を提供する。
【0041】
本発明の好ましい実施形態において、節足動物には、ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母、それらの断片又はそれらにより生産される物質が自由に与えられる。ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母、その断片、又はそれにより生産される物質は、以下にさらに記載されるように任意で食品組成物内に含まれ、節足動物の住居/巣の近く(例えば内側又はすぐ外側)又は節足動物の天然の採餌源の近くに置くことができ、節足動物は自由にアクセス可能である。巣は天然又は人工物のいずれでもよく、節足動物がコロニー形成節足動物である場合、巣は一般的には数世代の節足動物を収容する。
【0042】
本明細書で想定されるように、節足動物に酵母を提供するための簡単で好ましい手段は、前記ウィッカーハミエラ属酵母、特に前記ウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母を含む食品組成物によるものである。従って、本発明はさらに、ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母、好ましくはカンジダ ボンビフィラMUCL 56142株、それらの断片又はそれらにより生産される物質を含む節足動物用の食品又は飼料組成物を提供する。
本発明で使用される場合、「飼料組成物」とも呼ばれる用語「食品組成物」は、一般に、生物に害を及ぼすことなく生物によって摂取され得る成分の組み合わせを指す。好ましくは、前記成分の少なくとも一部は、エネルギーを生成し、成長を刺激し、及び/又は生命を維持するために、生物、特に節足動物によって摂取及び同化され得る必須及び/又は非必須栄養素である。さらにより好ましくは、前記食品組成物は人工的に生産される。
【0043】
特定の実施形態では、本明細書で想定される食品組成物は、本明細書でさらに論じるように、ウィッカーハミエラ属酵母材料、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(又はカンジダ ボンビフィラ)酵母材料、好ましくは受託番号MUCL 56142で寄託されたカンジダ ボンビフィラ酵母株を含む。
特定の実施形態では、本明細書で想定される節足動物用食品組成物は、以下の群、
(i) 前記ウィッカーハミエラ属酵母の生細胞;
(ii) 前記ウィッカーハミエラ属酵母の死細胞;又は
(iii) 最初に前記ウィッカーハミエラ属酵母を増殖培地中に接種及び培養し、続いて培地から酵母細胞を除去(任意で不活化後に)することによって得られる増殖培地
から選択される酵母材料を含む。
特定の実施形態では、前記食品組成物は、1mg又は1mlの食品組成物あたり102~108個、好ましくは104~105個の酵母細胞を含む。特定の実施形態では、本発明の食品組成物は、本明細書で想定される酵母材料を、102~108 cells/ml、好ましくは104~105 cells/mlの間で含む液体食品組成物である。特定の実施形態では、ウィッカーハミエラ属酵母細胞、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母細胞は食品組成物内で生存している。特定の実施形態では、組成物中の酵母細胞の数は、組成物が節足動物に提供される期間にわたって自然に増加する。特定の実施形態では、本発明の方法は、本発明に記載の食品組成物を節足動物に1-30日間、例えば5-20日間、例えば7日間、提供することを含む。この期間内に、食品組成物中の酵母細胞の濃度は増加し得る。例えば、特定の実施形態では、食品組成物は酵母細胞を100細胞/マイクロリットル含み、7日間で1マイクロリットルあたり最大60000細胞まで増加する。カンジダ ボンビフィラは酵母であり、当業者にとって公知の酵母を増殖させるための任意の方法に従って増殖させることができる。例えば、酵母細胞は、液体増殖培地、好ましくはペプトン、酵母抽出物、麦芽抽出物、グルコース及び寒天を含む、例えば酵母麦芽培地中で、約24℃で24から48時間、振盪台上(例えば80-100 rpm)に置いて増殖させることができる。液体培地中の酵母細胞の濃度、例えば液体増殖培地は、標準的な技術、例えば分光光度計を使用して、酵母細胞を含有する溶液の光学密度を計算すること又は40倍の倍率の顕微鏡下の血球計算盤中で染色細胞の細胞数を数える(例えば、メチレンブルーはそれらの生存率を識別することを可能にするだろう)ことを使用して測定できる。
【0044】
特定の実施形態では、食品組成物は少なくとも1つの炭水化物源を含む。炭水化物は、多くの節足動物の食事に欠かせない部分である。炭水化物は主に筋肉活動、体温、及び特定の臓器や腺の生命機能のためのエネルギーを生成するために使われる。さらに、例えば糖質などの炭水化物は、節足動物の摂食刺激物質として作用することがある。さらに又はあるいは、炭水化物源は酵母の増殖基質として機能することができる。したがって、特定の実施形態では、食品組成物は炭水化物源として糖質又は糖アルコールを含む。他の特定の実施形態では、食品組成物は炭水化物源として花の蜜、蜂蜜又はそれらの代替物を含む。本明細書で使用される「糖質」という用語は、可溶性炭水化物、例えばグルコース、フルクトース、ガラクトース、スクロース、マルトース、ラクトース、ガラクトース、マンノース、ラフィノース、デキストリン、イヌリン、ラムノース、キシロース、アラビノース、トレハロース又はメレジトースを指し、化合物/製品はグルコース、フルクトース、ガラクトース、スクロース、マルトース、ラクトース、ガラクトース、マンノース、ラフィノース、デキストリン、イヌリン、ラムノース、キシロース、アラビノース、トレハロース又はメレジトース、例えば糖蜜、甜菜糖、甘蔗糖及び加水分解デンプンを含むがこれらに限定されない。適切な糖アルコールはソルビトール及びマンニトールを含み得る。特定の実施形態では、食品組成物はスクロース、マルトース、グルコース、フルクトース、デキストロース又はそれらの組み合わせを含む。例えば、糖の総量の20-70%がスクロースであり、糖の総量の5-50%がグルコースであり、そして糖の総量の5-50%がフルクトースである。酵母の培養に適した糖は、1つ以上のグルコース、L-ソルボース、D-リボース、及び糖アルコールとしてのマンニトール、グリセロール及びグルシトールを含み得る。これに関連して、食品組成物は、さらに又はあるいは酵母によって分泌される炭水化物(例えばネオケストース、6-ケストース、及びビフルコース、及びマンノトリオースであるがこれらに限定されない)を含むことができることに注意する。
【0045】
特定の実施形態では、本明細書で想定されている、ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母を含む食品組成物は、液体、好ましくは水溶液の食品組成物である。好ましくは、本明細書で想定される前記食品組成物は、少なくとも10重量%又は少なくとも20重量%の糖又は糖アルコールを含む糖溶液である。より好ましくは、(液体)食品組成物は、20重量%、25重量%又は30重量%から50重量%、60重量%又は70重量%の範囲の糖又は糖アルコール濃度を有する。糖の量は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)又はBrix中のスクロース当量を検出するための屈折計などの当技術分野において公知の方法によって測定することができる。糖質は、例えば、水、牛乳又はフルーツジュース、好ましくは水に可溶化することができる。特定の実施形態において、前記食品組成物中の栄養素の少なくとも80重量%又は85重量%、より好ましくは少なくとも90重量%又は95重量%、例えば97重量%、98重量%、99重量%又は100重量%は、本明細書で想定されるような糖又は糖アルコールである。さらなる特定の実施形態では、糖液は30%の濃度を有し、ここでの糖質は(乾燥重量ベースで)50-70%のスクロース、10-20%のグルコース及び10-20%のフルクトースから作製される。より特定の実施態様において、糖液中の糖質は、乾燥重量ベースで66%のスクロース、16.6%のグルコース及び16.6%のフルクトースから作製される。
【0046】
特定の実施形態では、本明細書で想定されるウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母を含む食品組成物は、好ましくは炭水化物源に加えて窒素源を含む。適切な窒素源には、花粉又はその適切な代替物、アミノ酸又はタンパク質が含まれる。花粉は自然発生的なものでもよく、又は合成食を花粉代替物として使用し、タンパク質源として作用させてもよい(例えば、少なくとも30%又は少なくとも40%のタンパク質を含む)。花粉は、本明細書で想定される食品組成物の特に適切な成分である:花粉は、アルギニン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオミン、トリプトファン及びバリンなどのアミノ酸を含み、多数のビタミン、ミネラル、及び脂質を含む。花粉のタンパク質含有量は、好ましくは少なくとも10%、少なくとも20%であり、例えば、大豆の花、トルラ酵母又はビール酵母の形態で提供される。タンパク質もまた、例えば、大豆の花、トルラ酵母又はビール酵母の形態で提供できる。
【0047】
本発明者らは、花粉を含む又は含まない糖液を含む組成物中で酵母細胞が10日間を超えて生存できることを見出した。特定の実施形態では、食品組成物は、ウィッカーハミエラ属、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)を含む、花粉及び糖液で作られた花粉球である。特定の実施形態では、花粉球は、ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)を含む5-20%、好ましくは10%の糖液で作られる。さらなる特定の実施形態では、糖液は1マイクロリットルあたり少なくとも100個の酵母細胞を含む。
【0048】
任意で、脂質又は脂肪、ビタミン及び/又はミネラルを含むがこれらに限定されない他の栄養素も、本明細書で想定されるように食品組成物中に存在できる。ビタミンは、例えばチアミン、リボフラビン、ニコチンアミド(ナイアシン、ニコチン酸)、ピリドキシン、パントテン酸塩(パントテン酸)、葉酸、及び/又はビオチンなどのビタミンB;及び/又はビタミンC(アスコルビン酸)、及び/又はビタミンD及び/又はビタミンEなどの当業者に公知の任意のビタミンであり得る。脂質又は脂肪は、脂肪酸、ステロール及びリン脂質のような食餌性脂質であり得る。脂質はエネルギー、貯蔵脂肪の合成、及び細胞膜の機能に使用することができる。ミネラルは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、塩素、リン、鉄、銅、ヨウ素、マンガン、コバルト、亜鉛、及び/又はニッケルを含むがこれらに限定されない、当業者に知られている任意の食事性ミネラルであり得る。
【0049】
特定の実施形態では、食品組成物は、栄養素、例えば炭水化物(例えば、花の蜜、蜂蜜、糖質)、タンパク質、脂質又は脂肪、ミネラル、ビタミン、及び水を含む節足動物の一般的な栄養要件を満たすことができる。したがって、本発明による食品組成物は、成長、発育、維持、及び繁殖を支援するのに有効な量及び割合で、十分に栄養価が高く、消化が容易な栄養素の複雑な混合物を節足動物に提供するために使用することができる。したがって、特定の実施形態では、ウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母を含む食品組成物は、節足動物用の飼料としての使用に特に適している。
【0050】
特定の実施形態では、本明細書で想定される食品組成物は、ウィッカーハミエラ属酵母、特に本明細書で想定されるウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)酵母に加えて他の生物を含み得るが、しかし、前記酵母は主要な生物であり、その組成物中に最も大きな数で存在することを意味する。さらなる実施形態では、食品組成物は他のいかなる生物も含まない。本明細書で想定される食品組成物の成分は、当業者に知られている標準的な方法に従って混合することができる。
【0051】
有利には、特定の実施形態では、本明細書で想定される食品組成物は、本明細書で想定される酵母の添加の前、又は食品組成物が生きた酵母細胞を含むことは想定されないが、しかし酵母細胞由来の酵母断片又は産物を含む場合、保存期間を伸ばすために、当業者によって知られ及び実行されるように滅菌又は殺菌することができる。これは、例えば紫外線殺菌照射によって達成することができる。あるいは又はさらに、食品組成物は、食品原料組成物の腐敗を防ぎ、その保存期間を延ばすために適切な防腐又は抗菌剤を含んでもよい。適切な防腐又は抗菌剤は、食品組成物中の酵母にとって有害ではないことが好ましく、及び当該技術分野において公知である。
【0052】
代わりの実施形態では、食品組成物は生きた酵母細胞を含む。昆虫の腸内で生き残った酵母は、昆虫宿主に分解産物、ビタミンB群、ステロール、又は必須アミノ酸を提供することが示されている(Jones 1984, Douglas 1998, Vega & Dowd 2005, Lee et al 2014)。それゆえ、酵母細胞による必須代謝産物の生産は、例えば花の蜜(Douglas 1989, Pozo et al 2014)又は花粉(Roulston & Cane 2000)のような栄養的に貧弱又はバランスのとれていない基質に頼る昆虫、特に節足動物にとって適応度の利点を提供すると仮定することは妥当である。したがって、特定の実施形態では、酵母細胞は天然の食物源を消化するのを助け得る。数種類の証拠が確かに、花粉からの栄養素がすぐに利用可能ではなく、及びいくつかの昆虫が特定のタイプの未加工の花粉を消費することができないことを示す。より具体的には、ミツバチにとって、それらはデンプンをうまく消化することができず、それらは高いデンプン含有量を有する種類の花粉を消化することが困難であることが知られている。
さらなる代わりの実施形態では、食品組成物は、生酵母細胞及び死酵母細胞の両方及び/又は酵母細胞由来の断片もしくは産物を含む。
【0053】
食品組成物は、当業者によって知られている節足動物のための任意の形態の供給装置によって提供することができる。本明細書で言及される食品組成物は、液体、ペースト又は乾燥/粉末形態、好ましくは液体の形態であり得る。好ましい実施形態では、食品組成物は液体食品組成物、特に水溶性食品組成物である。有利には、液体食品組成物は容器に入れることができ、及び/又は例えばコットンボール又はキャピラリーウィックのような多孔性又は繊維性の物品に適用することができ、巣の近くに置く又は巣箱に入れることができ、及び毛細管現象によって節足動物が入手可能である。節足動物が送粉性昆虫である場合、本発明による食品組成物はまた、開花結実作物に提供又は噴霧することができる。好ましくは、食品組成物は実質的に無臭であるか、又はもしそのような食品組成物が臭いを含有する場合、そのような臭気は悪臭がひどい又は節足動物に対して忌避剤であるべきではない。
【0054】
本発明はさらに、本明細書に記載の節足動物を養殖するための食品組成物を製造する方法を提供する。特定の実施形態では、本方法は、糖液組成物にウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)を接種することを含む。特定の実施形態において、本方法は、花粉に、前記酵母が少なくとも100 cells/μlもしくは11 cells/μgの濃度を得るためのウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)又はそれによって製造された断片又は生産物中のその等価物を含む糖液と混合することを含む。より具体的には、これは、糖液中の濃縮酵母接種材料を接種することを含み得る。特定の実施形態では、糖液は5-40%、例えば10-30%である。特定の実施形態では、方法は、花粉玉を得るために糖液と花粉とを混合することをさらに含む。方法のさらなる実施形態は、本明細書に記載の食品組成物に関する。
【0055】
さらに、本発明者らは、ボンバステレストリス(Bombus terrestris)の働きバチの腸から特定のカンジダ ボンビフィラ / ウィッカーハミエラ ボンビフィラ株を単離した。有利には、節足動物、より詳細にはハチ、さらにより詳細にはB.テレストリス(B. terrestris)に本明細書で想定されるこの特定の酵母株を提供することは、節足動物のコロニー発育及び飛行活性においてはっきりとした優れた効果をもたらした。これらの有益な効果は、いずれかのウィッカーハミエラ属酵母、特にウィッカーハミエラ ボンビフィラ(カンジダ ボンビフィラ)を受けていない節足動物にはなかった。
【0056】
したがって、本明細書でさらに提供されるのは、カンジダ ボンビフィラ / ウィッカーハミエラ ボンビフィラ酵母の特定の株、より具体的には、2016年6月21日にBCCM / MUCL(ベルギーの微生物保存機関 (BCCM) ユニヴェルシテ カトリック デ ル-ヴァン、マイコセクェ デ アイユニヴェルシテ カトリック デ ル-ヴァン (MUCL), クロイックス デュ スド 2,ボックス L7.05.06 B-1348 ルーヴァイン-ラ-ネウベ ベルギー) に受託番号MUCL 56142(表A参照)で寄託されたカンジダ ボンビフィラ / ウィッカーハミエラ ボンビフィラ株又はそれらの変異体もしくは誘導体(derivative)である。本明細書にさらに記載されるように、前記株又は変異体又はその誘導体は、節足動物、好ましくは送粉性昆虫を繁殖させるため、及び/又は前記節足動物の健康、行動及び/又は全般的適応度を改善するために有利に使用できる。
【0057】
【0058】
本明細書で言及されるように、用語「バリアント」は、カンジダ ボンビフィラ / ウィッカーハミエラ ボンビフィラMUCL 56142株の突然変異、挿入、及び欠失変異体などの微生物変異体を指し、同様に微生物変異体は少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、及び例えば少なくとも96%、97%、98%、99%又は99.9%の全ゲノム配列の同一性を有する。
【0059】
以下の実施例は、本発明を説明する目的で提供され、決して本発明を意味するものではなく、そして決して本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0060】
この節では、現在ウィッカーハミエラ ボンビフィラとして知られている酵母種(de Vega et al, 2017, FEMS Yeast Research, Volume 17, Issue 5, 1 August 2017)は、主に以前に受け入れられた「カンジダ ボンビフィラ」と呼ばれています。
【0061】
実施例1:カンジダ ボンビフィラの単離、及び分類学的情報及び生態学
出願人は、B.テレストリスの働きバチの腸から新しいC.ボンビフィラ株を単離した。この働きバチは、ベルギーのHeverleeで収集され、研究所内でコロニーを始めるのを許された野生の女王によって開始されたコロニーから生まれました。それは彼らが遭遇した種の中で最も急成長している種でした。出願人は、このC.ボンビフィラ株をベルギーの微生物保存機関(BCCM) / マイコセクェ デ アイユニヴェルシテ カトリック デ ル-ヴァン(MUCL)に受託番号MUCL 56142で寄託した(寄託株の更なる詳細は上記表Aに示されている)。
【0062】
カンジダ ボンビフィラは、2つの株の情報に基づいて、2004年にBrysch-Herzberg & Lachance (Int J Syst Evol Microbiol 54 (2004) 1857-1859) によって記載された。基準株は、CBS 9712T株 (=NRRL Y-27640T=MH268T) としてオランダのユトレヒトのYeast Division of the Centraalbureau voor Schimmelculturesに寄託された。それは春先にボンバス テレストリスの女王の吻から分離されました。実際、著者らはC.ボンビフィラを135試料中ただ1つのマルハナバチ試料(吻上)に発見したが、135個のうち103個の試料は酵母を含んでいた。第2の株、CBS 9713(= X316.5)は、夏にボンバス パスクオラム(Bombus pascuorum)バチの巣の中のハチ蜜食料から単離されました。両菌株は、ドイツのマールブルクにあるフィリップス大学の新植物園で単離された。けれども、これは、この種の生息地がマルハナバチ及びそのハチ蜜食料であることを示唆しているように思われるが、より最近のマルハナバチ標本の分析、及び花蜜などのそれらの食物源は、この種を記録しなかった。前述のドイツ株の記録から10年後の2016年9月15日までに、種が記載されているその所属と共に提出された唯一のさらなる配列があった。3番目の分離株(IMB11L4)は、2013年に提出された非公表論文「Biodiversity of yeasts in selected Bulgarian ecosystems」に関してGouliamova, D.E.によって収集された宿主昆虫に由来する。さらに、Brysch-Herzberg (FEMS Microbiology Ecology 50 (2004) 87-100)はC.ボンビフィラの生態学について結論を出すことができないと結論を下しました。
【0063】
これは出願人自身の実験によって確認されている。2014年と2016年の春にそれぞれ、合計31と43匹のマルハナバチ女王(B.テレストリス)が野生から採集されました。各ハチの腸、作物、及び吻を、YGC(酵母グルコース+クロラムフェニコール)寒天プレート上に別々に置いた。続いて、出願人らは、全ての別個の培養(すなわち生)酵母を単離し、及びサンガーシークエンシング及びBLASTを用いてそれらを99%の同一性を有する種レベルまで同定した。出願人の調査は、野生のマルハナバチにおいて酵母種カンジダ ボンビフィラはきわめて珍しく、それらは2014年及び2016年にそれぞれ4%及び13%の女王(全ての基質を含む)において単離され、腸管単離酵母の合計5%を占めたことを示した。
たとえこの酵母種がマルハナバチの舌に生息し及び結果として花の蜜をコロニー化することができたとしても、これが世界的に徹底的に研究されていたにもかかわらず、それらは決してこの基質から単離されなかった。最近発表された蜜棲息性微生物の記録のレビューでは、C.ボンビフィラは蜜棲息性生物種として挙げられていない(Pozo, M. I., Lievens, B., & Jacquemyn, H. (2014). Impact of microorganisms on nectar chemistry, pollinator attraction and plant fitness. nectar: production, chemical composition and benefits to animals and plants. Nova Science Publishers, Inc., New York)。分類の比較的最近の記載(2004)では、この10年間で蜜棲息性微生物に関する研究のほとんどが行われてきたため、この知識のギャップを説明できない(Pozo et al, 2014)。
【0064】
これらの調査と並行して、出願者らは、屋内飼育マルハナバチの腸内細菌叢を評価するため、より具体的には、もしC.ボンビフィラが女王を原因として次の世代及び/又は娘女王の冬眠後に伝達される可能性がある場合に、上記記載の方法を用いて調査を行った。出願人の結果は、この種が商業的に飼育されているマルハナバチには全く存在しないことを示している(データは示さず)。Bab’evaとChernov(2004; Biology of Yeasts、KMK、Moscow)によると、酵母は無脊椎動物の腸の一般的な住人だが、その後の世代の人工飼育中に酵母の共生生物は失われるという。
【0065】
さらに、出願者は、10匹のマルハナバチ女王が糖液中で生育している生きたC.ボンビフィラと共に週1回積極的に給餌される別の実験を行った。これらの10個のマルハナバチのコロニーは、吻、作物及び腸におけるC.ボンビフィラの優位性がいくつかのコロニー段階及び個体について試験される前に、標準的な商業的飼育条件で周期を完了することが許された。試験された個体には、はじめの女王、働きバチ、そして新しく作られた女王が含まれました。後者は冬眠期間の前及び後ろの両方で試験されました。出願者らの結果は、冬眠前に処理された巣当たり2つの娘女王の試料から、それらのどれもがこの種を持っていなかったことを明白に示している。興味深いことに、同じ結果が冬眠期間後に処理された20のマルハナバチ女王のサブ試料についても得られた。
標準株(B.テレストリスの舌から収集されたCBS 9712T)の大型サブユニットのrDNAのD1/D2配列は、最も密接な関連種、W.ドメルシキアエ(W. domercqiae)とは57個の置換及び3つのギャップによって異なる。CBS 9713株(AJ620186)は、1つの置換及び1つのギャップが標準株と異なる。Kurtzman [(Kurtzman et al. (1998) 73: 331. doi:10.1023/A:1001761008817)らは、ほとんどの場合、異なる種はこれらの配列が1%又はそれ以上異なることを示した。
【0066】
例えば、Saccharomycetaceae (Kurtzman, & Robnett, (2003). FEMS Yeast Research, 3(4), 417-432),のような多遺伝子配列分析は、表現型の特徴からの酵母の属の境界線は分子系統分析に基づくそれらの描写としばしば一致しないことを示した。対照的に、無性生殖酵母の分類は、それらがカンジダ属及び他のアナモルフィック属に含まれることが、国際的な植物の命名基準の下での長年の規則の要件を満たすので、分子系統分類研究においてめったに扱われなかった。しかし、多形性真菌の命名規則の最近の変更により、真菌種又はそれより高次の分類群に新しいコード[International Code of Nomenclature for algae, fungi, and plants (Melbourne Code) (McNeill, et al. (2012). International Code of Nomenclature for algae, fungi, and plants (Melbourne Code). Regnum vegetabile, 154(1), 208)] の下で、単一の妥当な名前のみを割り当てることが必要になりました。結果として、カンジダ属及び他の無性酵母属の現行種は、系統分類的な親和性を有する属構成を一致させるために改訂を受けなければならない。現在アナモルフとテレモルフの両方の名前を持っている種の場合には、どちらの名前を保持するかに関する決定が必要となるだろう。以前のシステムでは、テレモルフの名前が優先されていましたが、新しいコードは両方の名前を同等の基礎に置き、歴史的優先順位と一般的な用法の代わりに再確認する。ダニエルらによると(Daniel, H. M., Lachance, M. A., & Kurtzman, C. P. (2014). On the reclassification of species assigned to Candida and other anamorphic ascomycetous yeast genera based on phylogenetic circumscription. Antonie van Leeuwenhoek, 106(1), 67-84)、カンジダ ボンビフィラはウィッカーハミエラ属、すなわちW.ボンビフィラに変わるべきである。実際、この種のDNAベースの系統分類に基づく最近の研究は、以前は「カンジダ ボンビフィラ」として知られていた種が、今はウィッカーハミエラ ボンビフィラと改名されるべきであることを示唆している(de Vega et al, 2017)。
【0067】
実施例2:カンジダ・ボンビフィラ(生細胞)及びマルハナバチの健康、適応度、行動及びコロニー発育に対するその効果
【0068】
材料及び方法
C.ボンビフィラ酵母、特にC.ボンビフィラMUCL56142株のマルハナバチの巣の発育及び適応度に対する影響を調べるために、マルハナバチは前記C.ボンビフィラ酵母を含む食餌を受けた。コントロール群は、C.ボンビフィラ酵母を含まない以外は同じ食事を受けた。各処理について、10個の異なる巣をレプリカとして使用した。全ての実験について、地上のマルハナバチ(ボンバス テレストリス)を研究生物として使用した。彼らの自然の生息地(地下)を模倣するために、マルハナバチは29℃の温度、60%の相対湿度及び暗室の中の下で維持されました。実験の開始時に、60匹の人工的に飼育された女王バチを滅菌人工巣箱に移し、そして2日間糖溶液(Biogluc(登録商標)Biobest)のみを与えた。以前の研究では、人工飼育プログラムで飼育されていた越冬後の女王バチには酵母が失われていることが示されています。女王バチの死亡率を減らすために、各女王バチには蛹として無菌容器に移送され、出現後に巣に連れて行かれる働きバチが与えられた。この段階では、働きバチが同様に酵母を失っていることを保証する。実験全体を通して、マルハナバチはタンパク質源として花粉を受けた。この花粉は極度に凍結され、及びそれが微生物をも失われていることを確実にするために最低13kGy及び最大40kGyのガンマ線が照射された。
コロニー形成に対する酵母の効果は、卵カップの数、最初の卵が生産された日付、幼虫の段階(1及び2齢:L1-L2、及び3及び4齢:L3-L4)、働きバチの数、雄バチの数、及びどれくらいのハチの数(雄バチ、雌バチ、女王バチ)が死んでいるかを評価することによって判断した。
【0069】
酵母の準備
実験の第一段階は、コロニーを分離するために、クロラムフェニコールグルコース寒天(YCG)プレート上の一次又はマザープレートから酵母株を植菌することからなる。寒天培地は次の成分:1.0%グルコース、0.5%ペプトン、0.3%麦芽抽出物、0.3%酵母抽出物、2.0%寒天及び0.01%クロラムフェニコールから構成されていた。その後、プレートは植菌され、24℃で±2日間でそれらが十分に増殖するようにした。
第二段階では、酵母細胞をYCGプレートから5mlの酵母麦芽培地 (YM、0.5%ペプトン、0.3%酵母抽出物、0.3%麦芽抽出物、1%グルコース、2%寒天) に植菌用ループを用いて植菌した。菌源プレートからいくつかの細胞をこすり取った後、植菌用ループを試験管の内側に対して引っ掻いた。植菌後、試験管を振盪台(80-100rpm)上に置いて24℃で48時間インキュベートした。試料管を絶えず回転させることによって、液体は常に空気と接触していた。
ハチには、1マイクロリットル当たり100細胞の最終密度で提供された。この値は、スペイン南東部で生育している60の異なる植物種のサンプル中の1マイクロリットルの花の蜜あたりに見いだされた細胞の平均から導き出された(Pozo et al., In: Peck et al. Nectar: production, chemical composition and benefits to animals and plants. Nova Science Publishers, Inc. NY, 2015)。
濃縮酵母植菌材料(OD=0.05)は、30%糖水組成物(乾燥重量ベースで66%スクロース、16.6%グルコース及び16.6%フルクトースから作製された糖を含む)に100 cells /μlの濃度を得るために添加された。20mLの容器に、100マイクロリットルの接種材料を加えた。コントロール処理には同容量の滅菌YMBが与えられた。酵母は容器内の糖を使い果たし、それによってハチの健康に影響を与える可能性があるため、最初の容器の隣に自由摂取可能な50%滅菌糖水(乾燥重量ベースで66%スクロース、16.6%グルコース及び16.6%フルクトースから作製された)を含む第2の容器が置かれた。それらの溶液は、巣エリアに接続されたキャピラリーウィックを使用することによってハチによって摂取された。
さらなる実験において、酵母培地は、(同数の細胞を有する)砂糖水に加えられ、花粉内容量に関して10%w/wの割合になるように花粉と混合された。
10日後、酵母細胞は完全に生存可能なままであり、そのためこれらはマルハナバチへの投与にも使用できることが注目される。
【0070】
巣箱の能力の評価
マルハナバチ巣箱の発育
酵母の存在によってどのくらいコロニーの成長速度及び成長へ影響するかを調べるために、卵カップの数が数えられ、最初の卵カップが生産された日付が決定され、幼虫の段階(L1-L2、L3-L4)が評価され、働きバチの数、雄バチの数及び死んだハチの数(雄バチ、雌バチ、女王バチ)が週1の頻度で数えられた。これは、女王バチを置いた後の9匹の連続した女王バチの間で行われた。
【0071】
データ分析
酵母細胞の存在が巣箱の発育に影響を与えるかどうかを調べるために、分散分析の混合モデルが用いられた。巣の発育は3つの異なる変数、すなわちコロニーの大きさ、繁殖、及び予測された働きバチの数を用いて評価された。各従属変数について、処置は固定効果として使用され、1週間以内に巣化したコロニーを確率変数として使用して、各コロニーについて繰り返し測定が行われたことを記載する。混合モデルを実行する前に、各変数についてデータの正規性の欠如がチェックされ、ポアソンは常に最も適切な分布として選択された。その後、どの処理がコロニーの大きさ、繁殖、及び未来の働きバチの数の数に同様の影響を与えたかを調査するための比較が行われた。巣箱が「競合点」に達する前、7週目(女王配置後8週目)に、予測された働きバチ(実際の働きバチと蛹)の数を、追加の予測因子としての気候室中のコロニーの位置を加える一般化線形モデルを用いて処理間で比較した。
【0072】
節足動物の健康を亢進させるためのカンジダ ボンビフィラの使用
生きたカンジダ ボンビフィラ酵母(Cbh)(ボンバス テレストリスの腸から単離された)は、そのマルハナバチの腸の寄生虫であるクリチディア ボンビへの成長抑制効果について試験された。特には、この原生動物病原体は、B.テレストリスの糞便から単離され、Salatheet al 2012(Salathe et al., PLoS ONE. 2012; 7(11):e49046)に記載のように培養された。両方の生物を2つの濃度、すなわち10cells/μL及び100cells/μLの初期細胞密度で液体培地に一緒に導入した。インビトロの実験は、2つの異なる雰囲気条件、すなわち、標準的な好気的条件及びマルハナバチの腸内の条件に近づく微好気的条件(4% 二酸化炭素)の下で、27℃の制御温度で行われた。選択された培地中及び培養条件下での通常の細胞死を評価するために、本発明者らはまた、同じ2つの濃度で、クリチディア又は酵母のいずれかを別々に液体培地に植菌した。2日間のインキュベーション期間の後、発明者らは、死細胞のみを染色する特異的染色方法を使用することによって、両方の微生物の生細胞及び死細胞の割合を同定した。ホルムアルデヒド固定段階の間に細胞は固定されたので、染色された(死んだ)及び未染色(生きた)細胞の数を後でノイバウエル計算板によって計数することができた。
【0073】
結果は、酵母カンジダ ボンビフィラが液体培地に添加されたときに寄生虫クリチディア ボンビの生存が有意に減少したことを示し、及びこの結果は両方の雰囲気条件下(好気性:オッズ比=0.32, Z= -4.6203826, P= 0.0001、微好気:オッズ比=0.47、Z= -3.046, P = 0.048,
図1)で一貫していた。興味深いことに、酵母自体の細胞死はすべての処置で低かった。微好気条件下では、酵母のみのコントロールと比較して、混合種処理中における酵母細胞の生存率の有意な減少はなく、酵母細胞は混合種処理中におけるクリチディア細胞よりも有意に良好に生存した(オッズ比=4.91, Z= -36.26, P <0.0001)。好気的条件下では、しかしながら、コントロールと比較して、混合種処理中における酵母細胞の生存率がわずかに減少した(オッズ比=0.29, Z= -5.14, P <0.0001)が、酵母細胞死よりもクリチディア細胞死がなおはるかに大きかった(オッズ比=5.06, Z= 51.49, P <0.0001)。総合して、これらの結果は、腸内寄生虫クリチディア ボンビの生存に対する酵母菌カンジダ ボンビフィラの有意な悪影響を示している。
【0074】
節足動物の活動を亢進させるためのカンジダ ボンビフィラ生細胞の使用
この実験では、それらの全発育を通して、コロニーにカンジダ ボンビフィラを給餌した後にB.テレストリス巣箱の飛行活動が追跡された。コロニーには、滅菌されたミツバチ収集花粉及び50%糖液からなる標準食を自由に与えた。この標準食の次に、10コロニーに100cells/μLのC.ボンビフィラを含む30%糖溶液を毎日与え、コントロールとして、10コロニーに30%糖溶液+酵母麦芽培地(YMB)を毎日与えた。溶液は、飼育箱の壁に取り付けられた小さなバイアルで投与され、それらは汚染を避けるために毎日新しくされた(酵母の場合、これは我々が毎日新しい生後1日の細胞を投与したことを意味する)。巣箱が9週齢に達したとき、我々は野外でのそれらの活動を追跡するために各処置のうち4つの巣箱を選んだ。この選択は、比較できる働きバチ及び繁殖数、生きている母親の女王バチの存在、及びいずれの雄バチの欠如に基づいて行われた。巣箱を無作為に花畑に置き、及びそれらを外に置く直前に、それらにC.ボンビフィラ酵母(100 cells/μL)を含む30%糖液溶液20mLを含む1本の小瓶が与えられ、コントロールコロニーには酵母なしで与えられた。その後、飛行活動は飛行しながら出入りする働きバチの数を数えることによって評価された。計測は、4つの異なる日に、それぞれの日で5分間の計測が2回行われた。この実験の結果、生きたカンジダ ボンビフィラ細胞を含有する糖溶液を巣箱に給餌することは、酵母を給餌しなかった巣箱と比較した場合、働きバチの飛行活動を有意に増加させることを示している。この効果は、巣箱に飛び込み、巣箱から飛び出す働きバチの数と一致した(
図2)。
【0075】
節足動物の飼育を最適化するためのカンジダ ボンビフィラ生酵母細胞の使用
この実験では、B.テレストリスコロニーの発育を12週間にわたって追跡した。20コロニーは標準的な雰囲気条件下(28℃及び相対湿度60%)に保たれ、滅菌ミツバチ収集花粉及び50%糖溶液を自由に与えられた。この食餌の次に、10コロニーが100 cells/μLのカンジダボンビフィラ(+酵母麦芽培地)を含有する30%糖液を受け、他の10コロニーが酵母を含まない同じ30%糖溶液(+YMB)を受けた。この溶液は飼育箱の下の小さな容器に入れて投与され、毎週新しくした(酵母が1週間にわたって増殖することを可能にした)。幼虫の発育時間は、最初の産卵、最初の蛹への発育及び成虫の最初の出現の時期を追跡することによって評価された。最初の8週間の間に、働きバチ、蛹、幼虫、死んだ幼虫、卵の数を毎週数えた。試験終了時、12週間後に、これはコロニーの健康状態のパラメータであるため、性別(雄バチと女王バチ)の総数も同様に計測された。
【0076】
結果は、生きたカンジダ ボンビフィラの投与が、B.テレストリスにおけるコロニー発育の異なるパラメータに対して有意な優れた効果を有することを示している。
8週間の発育期間後の計測結果は、酵母処理を受けなかったコントロールコロニーと比較した場合、産み出されたハチの数の有意な増加があることを示している(
図3)。この効果は、蛹と働きバチの合計数(1週間に予想される働きバチ数)を考慮した場合にも明らかになる。
コントロール処理と比較して特定の時点でより多くの予測される働きバチがいるという事実は、C.ボンビフィラを与えられたコロニーがより早く発育することを示している。コロニーサイズ(すべての発育段階を合計した)、繁殖量(卵及び幼虫)、及び未来の働きバチの毎週の増加率もまた、コントロールと比較してC.ボンビフィラ処理で高かった(
図4)。
【0077】
より急速なコロニー発育は、より高い産卵率、より速い幼虫の発育及び/又はより高い幼虫の生存を示し得る。C.ボンビフィラの投与がこれらの効果の少なくとも2つを持っていたことを証明することができる。第一に、C.ボンビフィラが投与された場合、異なる発育段階に達するタイミングはわずかに速いが(
図5)、この効果は有意ではなかった。第二に、幼虫の死亡率はC.ボンビフィラの投与により有意に減少した(
図6)。
C.ボンビフィラの投与もまた12週間後に産生された雌雄の数に有意な優れた効果をもたらした。この効果は、生産された雄バチの数において明らかであったが、その効果は生産された女王バチの数に対しては有意ではなかった(
図7)。
【0078】
C.ボンビフィラの存在下又は非存在下での節足動物の飼育を評価するための同様の実験が、捕食性ダニ種及びハナアブに対して行われる。
【0079】
株特異性
出願人らは、コロニー発育及び飛行活性に対する2つの異なるC.ボンビフィラ株の効果を試験した。
最初の株は、以前にドイツの野生のB.テレストリス女王バチの吻から単離され、オランダのユトレヒトのDivision of the Centraalbureau voor SchimmelculturesにCBS 9712T株(=NRRL Y-27640T = MH268T) (Brysch-Herzberg M. and Lachance M. (2004) Int J Syst Evol Microbiol, 54, 1857-1859, DOI 10.1099/ijs.0.63139-0) として寄託されたC.ボンビフィラ株であった。出願人は、王立オランダ科学アカデミーの研究所であるCBS-KNAW 菌類多様性センターからC.ボンビフィラ標準株CBS 9712T(以後「標準株」)を入手した。
【0080】
第2の菌株は、菌株番号MUCL 56142を有するベルギーの微生物保存機関 (BCCM) マイコセクェ デ アイユニヴェルシテ カトリック デ ル-ヴァン(MUCL)に出願人によって寄託されたC.ボンビフィラ株である(寄託株のさらなる詳細は、上記で示されています。
【0081】
出願人らは両方の株を試験し、マルハナバチコロニーの発育及び飛行活性に対するそれらの効果を比較した。両方の菌株を培養し、B.テレストリス マルハナバチの食料源に接種し、実験は上記の材料及び方法の欄に記載したように実施した。
出願人の結果は、糖液中に酵母を全く含まないコントロール処理と比較して、MUCL 56142株がコロニー発育に対して強い優れた効果を有したことを示す。CBS 9712T標準株もまた、コントロールと比較してコロニー発育に優れた影響を及ぼしたが、MUCL 56142株よりも程度は小さかった。特に、予測された働きバチの数は、MUCL 56412株で平均約198.5±29.5(SD)であったが、CBS 9712T標準株では平均166.2±16.2(SD)であり、コントロールでは平均144.2±41.2(SD)であった(
図8)。
【0082】
これらの結果は、9週間の期間内に生産された未来の働きバチの数に対する、両株の優れた影響の可能性を示唆しているが(GLM, Ncolonies = 10)、この優れた影響はMUCL 56142系統についてのみ統計的に有意であった。さらに、MUCL 56142株はまた、コントロール処置と比較した場合及び9週間の期間内に、総コロニーサイズ(=コロニーの全個体及び発生段階の合計)に優れた影響を及ぼした。
【0083】
さらに、出願人らは、それらの全ての発育段階を通して酵母溶液を与えられた巣箱の飛行活性に対する両方の菌株の効果を試験し、これを酵母を加えずにコントロール溶液を与えた巣箱と比較した。出願人らの結果は、両方の試験した株が、巣箱を野外に置かれ、酵母を含まないコントロール処理と比較した際に、飛行活性に対して強く優れた効果を有したことを示す(試験開始時に存在する働きバチ数を共変量として含むGLM, Ncolonies = 4)。より具体的には、MUCL 56142株は2.35のモデル調整平均飛行活性を示し、CBS 9712T標準株は2.3のモデル調整平均飛行活性を示し、その間にコントロールは2.1のモデル調整平均飛行活性のみを示した(データ示さず)。
【0084】
嗜好試験
酵母が存在しないコントロール条件と比較して、人工の花の蜜に添加した際のC.ボンビフィラ処理の魅力を比較するために、行動試験が行われた。コントロール食は、30%糖液(2/3 スクロース(S)、1/6フルクトース(F)、1/6グルコース(G))に糖液1mlあたり50マイクロリットルの割合の滅菌酵母麦芽培地(YMB)を加えたものであった。C.ボンビフィラ含有食はコントロール飼料と同じであり、YMBは酵母と共にインキュベートされた(終濃度100 cells/μl)。
【0085】
以前にそれらの食物中の微生物と接触したことがなかった10週の屋内飼育B.テレストリスコロニーが、Biobest bumblebee productionから選ばれた。試験開始の1日前に、巣箱のBiogluc(登録商標) へのアクセスを遮断して飢餓状態にし、飼料を摂取する準備をする。その後、コロニーは、試験的な飛行アリーナが装備された温室の中で開かれた。このアリーナには4つのグループに分かれた16のロボットの花と、着陸台としての黄色いプラスチック製の輪があった。このシステムは、Kuusela及びLamsaによって記載されたシステムを模倣している(Ecology & Evolution, 2016, doi:10.1002/ece3.2062)。このシステムは、制御ユニット、別々の花、及びパーソナルコンピュータを含む。制御装置の機能は、花の電子機器を取り扱い、それらからデータを収集し、及びデータをコンピューターに送ることである。ロボットの人工花自体は、赤外線(IR)センサー及び関連する電子機器、及びリザーバーから少量の、正確な量の糖溶液(以後「人工の花の蜜」と呼びます)を提供する電気機械装置(サーボ)を含む。コンピューターは、制御ユニットを介して補充率及びデータ収集を制御するソフトウェアを実行する。システムの原理は、人工の花の中のマルハナバチの入場がカスタムメイドのJavaインターフェースによって記録される電圧降下を引き起こすということである。訪問のデータ及び時間、花の身元、及びそれぞれの効果的な訪問のための探索時間が記録される。10分間の自動補充期間を設定することによって、野生の花における、花の枯渇は模倣され、結果、糖液(人工の花の蜜)は継続的に提供されず、及び訪問率は野生の花の探索時間を模倣する。
【0086】
試験は、半分の花がコントロールを含み、及び半分はC.ボンビフィラ処理を含む16の人工の花から構成された。それぞれの花の種類からの蜜の消費に費やした総時間と同様に、2日間にわたり、コントロールの人工の花の蜜(酵母なし)を含む人工の花及びC.ボンビフィラ酵母細胞を含む人工の花への効果的な訪問の数を観察した。
【0087】
その結果、ナイーブなマルハナバチがC.ボンビフィラを含む花を好み、それらは全体として、より多くの数の訪問を受け、それらの訪問はより長く続くことが示された(
図15)。
【0088】
実施例3:花粉を介したカンジダ ボンビフィラの投与
実施例2は、糖液を介したC.ボンビフィラの添加が、この酵母種を欠いている飼育下で飼育されているマルハナバチコロニーの適応度が増大することを証明した。本実施例では、花粉を介して酵母(生酵母細胞)を投与した場合にもこの効果が得られるかどうかを評価した。花粉は、ソーセージに40%濃縮糖液(2/3スクロース、1/6グルコース、1/6フルクトース)の20%(w/w基準)を加えることによって混練して用意された。この組成物が発育中のマルハナバチコロニーに提供された。酵母は花粉の中で4週間生存し続けたが、食物は毎週更新された(結果は示さず)。
【0089】
C.ボンビフィラMUCL 56142株を酵母麦芽培地に懸濁した。A600-0.25の接種材料が用いられ、後に防腐剤なしの40%糖液(2/3スクロース、1/6フルクトース、1/6グルコース)1ml当たり5マイクロリットルの割合で懸濁した。このプロトコールは、実施例2の糖液投与に使用されたように、花粉ソーセージ1マイクログラム当たり100細胞の投与量を保証するだろう。この糖液と酵母麦芽培地接種材料の混合物の合計20%が滅菌(ガンマ線照射)ミツバチ収集花粉一定重量に加えられた。
この花粉混合物を与えた15コロニーの性能は、酵母株を受けていない15(の異なる)コントロールコロニーと比較された。炭水化物源として、コロニーはBiogluc(登録商標)を自由に与えた。
【0090】
最初の働きバチは、コントロールコロニー中に36.4±1.6(平均±SE)日後に、及び生きているC.ボンビフィラを含む花粉を与えられたコロニー中に33.6±1.5(平均±SE)日後に現れた。5週目に、コロニーが、花粉を介して投与した生きたC.ボンビフィラMUCL 56142株を受けたときにコロニー発育は有意に速かった。発育に対するこの優れた効果は、繁殖量(卵カップ及び幼虫の合計、
図9、左のパネル)及びその時点で予測される働きバチの数(
図9、右のパネル)の両方に見ることができる。
【0091】
8週間のコロニー発育後に、全ての前述のコロニー発育パラメータが評価された。結果は、花粉へのC.ボンビフィラの添加がコロニーの販売可能性及びその分野における未来の成績に影響を与えるであろう全てのコロニー発育パラメータに優れた影響を及ぼしたことを示している。8週目に出現した働きバチの数は、C.ボンビフィラの花粉を受け取ったコロニーがすなわち32.6±2.0で、同じ時点で22.8±1.6働きバチにしか達しなかったコントロールコロニーよりも有意に多かった(
図10、左パネル)。この差はコロニー発育のこの時点では統計的有意差に達しなかったが、雄の数はC.ボンビフィラを補充したコロニーにおいてより低い傾向があった(
図10、右パネル)。
実施例2及び3は、このように、有益な酵母が液体食品組成物、すなわち糖溶液又は人工の花の蜜の溶液を介して、又は固体の花粉を基にした食品組成物を介して提供され得ることを実証する。
【0092】
実施例4:カンジダ ボンビフィラ(細胞、断片、生産物質)及びそのマルハナバチの健康、適応度、行動及びコロニーの発育に及ぼす影響
節足動物の飼育を最適化するためのカンジダ ボンビフィラ(細胞、断片、生産物質)の使用
この実験では、B.テレストリスコロニーの発生を16週間にわたって追跡した。合計60個のコロニーが標準的な雰囲気条件下(28℃及び60%の相対湿度)に置かれ、滅菌ミツバチ収集花粉及び50%糖液溶液(2/3スクロース(S)、1/6フルクトース(F)、1/6グルコース(G))を自由に与えた。この食餌の次に、全てのコロニーは表1に示すような第二の食餌を受けた。以下に記載するように、この第二の食餌は生きた酵母細胞(処理1)、死んだ酵母細胞/断片(処理2&3、それぞれ接種培地あり又はなし)又は酵母代謝産物/断片(処理4-前記酵母が培養されたが、その後不活化及び濾過された接種培地として)を含んだ。
コントロールコロニー(N=12)には、(自由に)30%糖液(前述の50%と同じ組成)+滅菌酵母麦芽培地(YMB)をそれぞれ1mlの糖液あたり50マイクロリットルの割合で与えた。残りのコロニー(N=48)もまた、表1に記載の組成の、糖液供給装置を介して(自由に)第二の食餌組成物を与えた。全ての糖溶液は防腐剤がなく、毎週新しくされた。それらは、飼育箱の下の2つの別々の容器を通して投与された。
【0093】
【0094】
幼虫の発育時間は、最初の産卵、最初の蛹への発育及び成虫の最初の出現の時期を追跡することによって評価された。5週目と10週目に、働きバチ、蛹、幼虫、死んだ幼虫、卵の数が数えられた。11.5週目に、処理ごとに完全に発育したコロニー(80匹以上の働きバチを有するコロニー)が選択され、より大きな箱に移し、そこでさらに5週間発育させた。試験終了時(16週)に、前述のすべてのパラメーターが評価された。加えて、雌雄(雄バチと女王バチ)の総数も同様に数えられ、これはコロニーの適応度のパラメータである。以後「予測された働きバチ」と名付けられた蛹と働きバチの合計は、コロニーの性能を評価するための追加の変数として使用される。
【0095】
5週後及び10週後の発育期間後の計数の結果は、投与方法にかかわらず、酵母処理を受けていないコントロールコロニーと比較した場合に予測された働きバチ数の有意な増加があることを示している(
図11)。この効果は、一定期間における実際の働きバチ数を考慮した場合にも明らかである(結果は示さず)。
【0096】
最初のコロニー発育及びコロニーの形成を反映する5週間で、不活化細胞を含む培地(処理2)を投与したときにコロニー発育に対する最も強く優れた効果が見られた(
図11、上パネル)。10週での計測は、全ての処理が依然としてコントロールよりも有意に良好に行われることを示しているが、生細胞の添加(処理1)は他の処理よりもわずかに低いことを示している。これは、生きている酵母細胞の増殖が原因である可能性があり、増殖の間に多くの個体数に到達し、基質を枯渇させうる。これらの結果はまた、3日後にこれらの成長が定常に達すると不活化された、不活化細胞を一度投与することによって効果を最適化できうることを示唆している。これは、長期にわたって安定した特性を有する酵母補填を確実にします。
【0097】
これらの結果は、昆虫にC.ボンビフィラを給餌することの有益な効果が、異なる非排他的な経路:
- 酵母は生酵母細胞の形態で投与されうる(処置1)。酵母が培養されている、培地の形態で生酵母細胞として投与される場合、この処理は酵母代謝産物も同様に含むだろう;
- 酵母又はその断片は、死細胞それ自体(酵母が培養された培地なしで;処理3)又は酵母が最初に培養され、その後死滅した細胞を除去せずに不活化した培地の形態(処理2)のいずれかで、死細胞の形態で投与されうる、又は
- 酵母、特に前記酵母により産生される酵母断片又は物質は、酵母細胞が最初に培養され、その後不活化され、例えば濾過により除去された培地の形態(処理4)で、投与され得る
によって得られることを証明している。理論に拘束されることを望まないが、これは主に酵母断片及び/又は酵母によって産生され培地中に保持されている節足動物の為の物質を提供するだろう。
本明細書で実証されるように、全てのこれらの処理はコロニーの発育に対して似た優れた効果をもたらし、結果としてコントロール処理(すなわちC.ボンビフィラ酵母、その断片又はそれによって生み出される物質の欠乏)と比較してより多くの働きバチの生産があるより速い発育が生じる(
図11)。
【0098】
加えて、特定の時点(5及び10週)での計測に対して、コロニーは卵カップ、蛹、及び出現した働きバチの最初の出現を記録するために継続的に観測された。結果は
図12に示され、及び不活化C.ボンビフィラ(細胞の存在下又は非存在下)の投与が働きバチのより早い出現をもたらしたことを示す(
図12)。
【0099】
コロニーが合計16週間の期間の間にさらに発育することを許されたとき、すべてのC.ボンビフィラ投与処置は生産された働きバチと女王の数に有意に優れた効果をもたらした(雌バチの適応度要素)(
図13)。
【0100】
節足動物の行動に対するカンジダ ボンビフィラ(細胞、断片、生産された物質)の影響 - 飛行活動
前述の処理の組み合わせを使用することによって、5つの追加のコロニーを別々にベルギーのBiobest NVで飼育した(N= 5*5=25コロニー、実験設定については表1を参照)。1つの「コントロール」及び1つの「3日後に不活化され濾過されたcbn」処理を除いて、すべての瞬間において完全な繁殖量の発育があった。コロニーが120匹以上の働きバチに到達したら、すべてのコロニー発育パラメータ(幼虫、蛹、働きバチ…)は評価され、コロニーはベルギーのシントロイデンにあるリンゴ園に移された。コロニーは2つのブロックに置かれ、それらのブロックはリンゴ園の6つの異なる列に沿って無作為に散らばらせた。
すべてのコロニーの入り口は南東に向けられ、そして、巣箱は早春の間の低温と雨の観点からポリスチレンハチコートで保護された。我々は5分間に巣箱に飛びながら出入りする働きバチの数を数えることによって、飛行活動を追跡し続けた。これらの5分間の調査は、1日を通して全体の飛行活動を説明するために、3つの異なるタイムスロット(早朝、正午、及び午後)ですべてのコロニーに対して行われた。全体として、リンゴ園にコロニーを配置した後、連続する2週間に分けた連続しない合計7日間、巣箱の活動は観測された。
【0101】
「3日後に不活化された」C.ボンビフィラ処理を受けたコロニーは、それらが配置された時点で他の処理よりも発育していたので、コロニーの大きさの違いを補正するための統計モデルにおける共変量として予測された働きバチ(蛹+働きバチ)を導入し、それゆえコロニーの飛行活動の計算は、理想的にはコロニーの大きさに等しいだろう。コロニーの全体的な飛行活動(5分の調査あたりの出入りするハチ)は、より穏やかな気象条件と一致して、試験の第2週の間により高かった。一定期間の観測の間、我々は2つの異なるC.ボンビフィラ投与処理、すなわち糖液中の生細胞の投与及びコントロール糖液中の不活化細胞の投与が野外で有意に高いコロニー飛行活性をもたらすことを一貫して見出した(
図14)。