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特許7123343製剤均一化練習用模型及び製剤均一化練習方法
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  • 特許-製剤均一化練習用模型及び製剤均一化練習方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】製剤均一化練習用模型及び製剤均一化練習方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/28 20060101AFI20220816BHJP
【FI】
G09B23/28
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020006265
(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2021113893
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000149000
【氏名又は名称】株式会社大協精工
(73)【特許権者】
【識別番号】501064147
【氏名又は名称】虎石 顕一
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(74)【代理人】
【識別番号】100201710
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 佑佳
(72)【発明者】
【氏名】川村 英明樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 生吹
(72)【発明者】
【氏名】虎石 顕一
【審査官】岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-528440(JP,A)
【文献】特表2018-519545(JP,A)
【文献】国際公開第2011/052322(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0269160(US,A1)
【文献】入院を繰り返さないために ~インスリン自己注射への薬剤師の関わり~,アプライド・セラピューティクス,2015年,6巻2号,3-7ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/00-29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容し、外部から前記内容物を視認可能な外筒部と、
前記外筒部の一端に注射用針の穿刺を防止する穿刺防止構造部と、
からなる、製剤均一化練習用模型。
【請求項2】
前記外筒部は、透明性を有する材質からなる、請求項1に記載の練習用模型。
【請求項3】
前記透明性を有する材質は、ガラス又は樹脂である、請求項2に記載の練習用模型。
【請求項4】
前記内容物中に、ガラス製又は樹脂製の球状体を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の練習用模型。
【請求項5】
前記穿刺防止構造部は、前記一端を封止する構造である、請求項1から4のいずれか一項に記載の練習用模型。
【請求項6】
前記穿刺防止構造部は、金属製のキャップである、請求項5に記載の練習用模型。
【請求項7】
前記穿刺防止構造部は、メクラ栓である、請求項5に記載の練習用模型。
【請求項8】
前記外筒部の前記穿刺防止構造部とは異なる側の端が、前記外筒部と異なる材質で封止された、請求項1から7のいずれか一項に記載の練習用模型。
【請求項9】
前記外筒部の前記穿刺防止構造部とは異なる側の端に、注入器との篏合を防止する篏合防止構造部を更に有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の練習用模型。
【請求項10】
前記内容物中に、粘度調整液を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の練習用模型。
【請求項11】
内容物を収容し、外部から前記内容物を視認可能な外筒部と、前記外筒部の一端に注射用針の穿刺を防止する穿刺防止構造部と、からなる、製剤均一化練習用模型を用いて、懸濁製剤を均一に混合する練習を行う、製剤均一化練習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製剤均一化練習用模型及び製剤均一化練習方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最も一般的な医薬品の投与経路の一つとして、静脈内、皮下、筋肉内等への注射が知られている。医薬品を含む注射は訓練された医療従事者以外にも、例えば糖尿病などの治療において患者が自己で行う場合がある。これは、近年、自己治療の一環として一般的になりつつあるが、その一方で、注射を行うに当たっては器用さや正確さも必要になることから、患者によっては自己注射をするに当たってある程度の練習が必要である。自己注射を正しく行えていないと、適切に血糖値を管理することができず、高血圧、腎臓病、神経損傷、心臓病、失明等の疾患を引き起こすこともあり得る。
【0003】
このような問題に対して、例えば特許文献1では、自己注射を簡単に行えるようなペン注射型デバイスが開示されている。また、例えば特許文献2では、自動注射装置を使用する使用者を訓練するための装置として、窓を有する収容部、収容部の第1の端部に連結された起動ボタン、及び収容部内に移動可能に配置され、使用者が起動ボタンを起動した後に、収容部の窓と一直線に並ぶ表示器を含む、装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/074975号パンフレット
【文献】特開2017-185255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば即効型と遅効型の混合製剤においては、注射を行う前に当該製剤を均一に混ぜる必要があることから、より一層、患者が自己注射を正しく行えるように訓練する必要が出てくる。
【0006】
このような実情のもと、本発明では、新たな製剤均一化練習用模型及び製剤均一化練習方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明では、まず、内容物を収容し、外部から前記内容物を視認可能な外筒部と、前記外筒部の一端に注射用針の穿刺を防止する穿刺防止構造部と、からなる、製剤均一化練習用模型を提供する。
また、本発明では、前記外筒部は、透明性を有する材質からなるものであってよい。この場合、前記透明性を有する材質は、ガラス又は樹脂とすることができる。
更に、本発明では、前記内容物中に、ガラス製又は樹脂製の球状体を含んでいてよい。
加えて、本発明では、前記穿刺防止構造部は、前記一端を封止する構造であってよい。この場合、前記穿刺防止構造部は、金属製のキャップや、メクラ栓とすることができる。
また、本発明では、前記外筒部の前記穿刺防止構造部とは異なる側の端が、前記外筒部と異なる材質で封止されたものであってよい。
更に、本発明では、前記外筒部の前記穿刺防止構造部とは異なる側の端に、注入器との篏合を防止する篏合防止構造部を更に有していてよい。
加えて、本発明では、前記内容物中に、粘度調整液を含んでいてよい。
【0008】
また、本発明では、内容物を収容し、外部から前記内容物を視認可能な外筒部と、前記外筒部の一端に注射用針の穿刺を防止する穿刺防止構造部と、からなる、製剤均一化練習用模型を用いて、懸濁製剤を均一に混合する練習を行う、製剤均一化練習方法も提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新たな製剤均一化練習用模型及び製剤均一化練習方法を提供することができる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る製剤均一化練習用模型の第一実施形態を示す模式図である。
図2】本発明に係る製剤均一化練習用模型の第二実施形態を示す模式図である。
図3】本発明に係る製剤均一化練習用模型の第三実施形態を示す模式図である。
図4】懸濁状態を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。
以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0012】
1.製剤均一化練習用模型10
図1は、本発明に係る製剤均一化練習用模型10の第一実施形態を示す模式図である。本発明に係る製剤均一化練習用模型(以下、単に「本発明に係る模型」とも称する。)10は、内容物11を収容し、外部から前記内容物11を視認可能な外筒部12と、前記外筒部12の一端に注射用針の穿刺を防止する穿刺防止構造部13と、からなることを特徴とする。
【0013】
即効型と遅効型の混合製剤の中には、沈殿物と液相との二相性の懸濁製剤であるものもあり、例えばインスリンを主成分とする混合製剤においては、当該沈殿物はインスリンとプロタミンを結合させることでインスリンを結晶化させ、溶解を遅くしてインスリンの効果を持続性にしたものであることが知られている。このような混合製剤を適切に使用するためには、患者自身が注射を行う前に、十分に製剤を混ぜて均一化させる必要がある。
【0014】
しかしながら、十分に製剤を均一化させるためにはある程度の練習を要することから、患者が自己治療を行う上で製剤を均一化するための訓練が十分でないと、混和不足から混合製剤の主成分の効果にバラつきが生じてしまい、目的の治療効果が得られないといった問題が生じる。
【0015】
これに対し、本発明に係る模型10は、主に、このような混合製剤を使用する患者対象として訓練させるためのものであり、この模型を用いて練習させることで、実際の混合製剤の取り扱いや、その挙動について、詳しく教示することができる。また、これにより、患者がインスリン注射等の自己治療を正しく行うことを促すことができる。
【0016】
(1)内容物11
本発明では、内容物11中に粘度調整液を含むことがより好ましい。粘度調整液としては、例えば、グリセロール、アルコール、ヒアルロン酸、ポリアルキレンオキシド、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、キトサン、デキストラン、硫酸デキストラン、コラーゲン、カラギナン、セルロースゲル、コロイド状二酸化ケイ素、ゼラチン、プロピレンカルボネート、炭酸、アルギン酸、寒天、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリルアミド、エステルガム、グアーガム、アラビアガム、カラヤガム、トラガカント、ペクチン、タマリンドガム、カラマツアラビノガラクタン、アルギネート、キサンタンガム、デンプン、ビーガム、トラガカント、ポリビニルアルコール、ゲランガム、ヒドロコロイドブレンド、ポビドン等が挙げられる。本発明では、これらを単独又は二種以上混合して用いてもよい。
【0017】
本発明では、これらの中でも特に、粘度調整液として、グリセロール、アルコールを用いることが好ましく、グリセロールを用いることがより好ましい。
【0018】
また、内容物11は、後述する外筒部12が割れたりして漏れたとしても、人体に害の無いもので構成されていることが好ましい。
【0019】
本発明において、内容物11中の液相は、例えば水と前記粘度調整液とで構成することができる。この場合、粘度調整液は、液相全体の10~70%であることが好ましく、20~60%であることがより好ましく、30~50%であることが更に好ましい。
【0020】
また、この場合、当該液相には防腐剤が含まれていることが好ましい。防腐剤を含有させることで、内容物11の変色を防ぐことができる。防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン(ヒドロキシ安息香酸エステル)類;フェノキシエタノール;1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等の1,2-アルカンジオール類;2-エチルヘキシルグリセリルエーテル(エチルヘキシルグリセリン)等のアルキルグリセリルエーテル類;サリチル酸;安息香酸ナトリウム;メチルクロロイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン等のイソチアゾリンオン誘導体;イミダゾリニウムウレア;デヒドロ酢酸及びその塩;フェノール類;トリクロサン等のハロゲン化ビスフェノール類、酸アミド類、四級アンモニウム塩類;トリクロロカルバニド、ジンクピリチオン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ソルビン酸、クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、ハロカルバン、ヘキサクロロフェン、ヒノキチオール;フェノール、イソプロピルフェノール、クレゾール、チモール、パラクロロフェノール、フェニルフェノール、フェニルフェノールナトリウム等のその他フェノール類;フェニルエチルアルコール、感光素類、抗菌性ゼオライト、銀イオン等が挙げられる。本発明では、これらを単独又は二種以上混合して用いてもよい。
【0021】
本発明では、これらの中でも特に、防腐剤として、フェノール類を用いることが好ましく、フェノール類の中でも、クレゾールを用いることが好ましい。また、本発明では、防腐剤としてクレゾールを用いた場合、クレゾールは、液相全体の0.01~1%であることが好ましく、0.05~0.5%であることがより好ましい。
【0022】
また、本発明では、内容物11は沈殿物と液相との二相性であることが好ましい。これにより、患者自身に実際の懸濁製剤の挙動を確認させつつ、製剤均一化の練習を行うことができる。
【0023】
内容物11中の沈殿物は、例えば水と前記粘度調整液とで構成された液相に溶けない成分で構成することができる。具体的には、例えば、片栗粉、そば粉、米粉、大豆蛋白質粉、ゼラチン粉末、コラーゲン粉末、グルテン粉末、タピオカ由来でん粉、トウモロコシ由来でん粉、くず粉、小麦粉、コーンスターチ、L-アスパラギン酸ナトリウム、DL-アラニン、L-アラニン、L-アルギニン、L-グルタミン酸塩、L-イソロイシン、グリシン、L-グルタミン酸、L-グルタミン酸ナトリウム、L-テアニン、DL-トリプトファン、L-トリプトファン、DL-トレオニン、L-トレオニン、L-バリン、L-ヒスチジン塩酸塩、L-フェニルアラニン、DL-メチオニン、L-メチオニン、L-リシンL-アスパラギン酸塩、L-リシン塩酸塩、L-リシン、-グルタミン酸塩、酸化マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、乾燥水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。本発明では、これらを単独又は二種以上混合して用いてもよい。
【0024】
本発明では、これらの中でも特に、沈殿物として、片栗粉、L-トリプトファンを用いることが好ましく、L-トリプトファンを用いることがより好ましい。また、本発明では、沈殿物としてL-トリプトファンを用いた場合、L-トリプトファンは、液相全体の0.1~10%であることが好ましく、1~5%であることがより好ましい。
【0025】
図2は、本発明に係る製剤均一化練習用模型10の第2実施形態を示す模式図である。本発明では、内容物11中に、ガラス製又は樹脂製の球状体113が含まれていることが好ましい。一般に、沈殿物と液相との二相性の懸濁製剤では、良く混ざるようにガラス製の球状体(ガラスビーズ)が含まれている。したがって、本発明に係る模型10においても同様に内容物11中にガラス製又は樹脂製の球状体113を含むことで、注射を行う患者に対して当該球状体113を移動させ、製剤の均一化をより促進することを認識させることができる。また、球状体113は、その形状からして外筒部12内を傷つけることがない。当該球状体を形成する樹脂としては、通常用いられ得るあらゆる樹脂を用いることができる。更に、本発明では、前記球状体は、視認され易いように、着色されたガラス又は樹脂により形成されていてもよい。
【0026】
本発明において、内容物11中には、上述したものの他、本発明の効果を損なわない限り、その他の物質を含んでいてもよい。
【0027】
(2)外筒部12
外筒部12は、外部から前記内容物11を視認可能に形成されていればよい。具体的には、例えば外筒部12の一部又は全部(好ましくは、全部)を、透明性を有する材質から形成することができる。
【0028】
透明性を有する材質としては、例えば、ガラス又は樹脂である。樹脂としては、例えば、シクロオレフィン系樹脂等が挙げられる。シクロオレフィン系樹脂としては、例えば、シクロオレフィンモノマーからなるシクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンモノマーと、エチレンなどのオレフィンなどとの共重合体からなるシクロオレフィンコポリマー(COC)等が挙げられる。本発明では、これらを単独又は二種以上混合して用いてもよい。
【0029】
本発明では、これらの中でも特に、樹脂として、COP、COCを用いることが好ましく、COPを用いることがより好ましい。これらの樹脂を用いることにより、外筒部12の外部からの視認性を向上させ、また、模型10をたとえ落としても割れにくいという特徴がある。
【0030】
(3)穿刺防止構造部13
穿刺防止構造部13は、前記外筒部12の一端に形成され、注射用針の穿刺を防止する構造に形成されていればよい。穿刺防止構造部13を備えることで、患者が本発明に係る模型10を注入器のカートリッジと勘違いし、誤って注射用針を刺してしまうことを防ぐことができる。
【0031】
具体的には、例えば前記外筒部12の一端を金属製のキャップにして封止したり、或いは、前記外筒部12の一端をメクラ栓にしたりすることが挙げられる。これにより、外筒部12から穿刺防止構造部13が外れて内容物11が漏れ出ることを防ぐことができる。また、特にメクラ栓とすることで、たとえ模型10が誤って注入器にセットされた場合であっても、模型10には穿刺できないため、内容物11を注入することができず、誤投与を防止することが可能となる。
【0032】
前記キャップを形成する金属としては、通常用いられ得るあらゆる金属を用いることができる。また、前記メクラ栓を形成する材質としては、同様に、通常用いられ得るあらゆる材質を用いることができるが、本技術では、特に樹脂で形成することが好ましい。また、樹脂で形成した場合、当該樹脂は前記外筒部12を形成する樹脂と同様のものを用いることもできる。
【0033】
また、本発明では、前記外筒部12の前記穿刺防止構造部13が形成されている側の端とは異なる側の端が、前記外筒部12と異なる材質で封止されていることが好ましい。前記外筒部12とは異なる材質としては、特に限定されず、例えば、金属、樹脂等が挙げられる。この場合、前記異なる側の端を、例えば、一般的な封止部材、図1に示すような栓、キャップ、フィルムなどの構造で封止することができる。これらの構造とすることで、内容物が漏れ出ることを防ぐことができる。また、外筒部12から容易に外れないようにすることができる。更には、特に押子の先端の構造とすることで、摺動性を持たせ、模型10の組み立てを容易にすることができる。
【0034】
(4)篏合防止構造部14
本発明に係る模型10は、必要に応じて、前記外筒部12の前記穿刺防止構造部13が形成されている側の端とは異なる側の端に、注入器との篏合を防止する篏合防止構造部14を更に有していてもよい。篏合防止構造部14を備えることで、患者が本発明に係る模型10を注入器のカートリッジと勘違いし、誤って注入器に装着することを防ぐことができる。
【0035】
なお、本発明では、篏合防止構造部14を設けなくとも、外筒部12の長手方向の長さを実際のカートリッジよりも長く設計することで、患者が本発明に係る模型10を誤って注入器に装着することを防ぐこともできる。
【0036】
篏合防止構造は、例えば、外筒部12の他端を、実際のカートリッジの外径よりも大きく(好ましくは、実際のカートリッジの外径+1mm以上)形成したり、図2に示すような押子の先端、栓、図3に示すようなキャップ、フィルムなどの構造で封止したりすることが挙げられる。これらの構造とすることで、注入器との篏合を防ぎつつ、内容物が漏れ出ることも防ぐことができる。また、外筒部12から容易に外れないようにすることができる。更には、特に押子の先端の構造とすることで、摺動性を持たせ、模型10の組み立てを容易にすることができる。
【0037】
2.製剤均一化練習方法
本発明では、前述した本発明に係る製剤均一化練習用模型10を用いて、懸濁製剤を均一に混合する練習を行う、製剤均一化練習方法も提供する。本発明に係る製剤均一化練習方法は、本発明に係る模型10を用いていることから、混合製剤の自己注射を行う患者が正しく訓練できるよう、病院、薬局、クリニック等の医療機関において、医師、看護師、薬剤師などの医療従事者が当該患者を指導する際に用いられる。
【0038】
本発明に係る製剤均一化練習方法とは、例えば、以下の通りである。
(i)手のひらで模型10を挟み込み、内容物11の漏れがないことを確認し、十往復程度、ゆっくり転がす。
(ii)外筒部12から内容物11を観察し、該内容物11が均一になったことを確認し、不十分の場合は上記(i)を再度行う。
【0039】
他の例としては、以下の通りである。
(i)手で模型10を持ち、往復十回以上、上下に振りつつ、球状体113が上下に移動することを確認する。
(ii)外筒部12から内容物11を観察し、該内容物11が均一になったことを確認し、不十分の場合は上記(i)を再度行う。
【実施例
【0040】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0041】
<実験例>
本実験例では、本発明に係る模型と懸濁製剤について、紫外可視分光光度計を用いてそれぞれの透過率を測定し、それぞれの内容物の懸濁状態を観察した。
【0042】
本実験例で用いた本発明に係る模型は、図2に示す構造であり、その内容物は、L-トリプトファン:150mg、蒸留水:1.75mL、グリセロール:液相全体の40%、m-クレゾール:5μLとした。また、懸濁製剤として、市販のヒューマログ(登録商標)ミックス25注カート(インスリンリスプロ混合製剤の注射液入りカートリッジ)を用いた。
【0043】
[懸濁状態の観察]
懸濁製剤及び前記模型の各々について、内容物を懸濁させない未撹拌時と、内容物を懸濁させた撹拌時における透過率を測定した。測定は、撹拌してから1分毎に波長600nmの透過率をモニターした。
下記表1に透過率の測定結果を示し、図4に懸濁状態を示す。図4の左側は懸濁製剤の様子を示しており、右側は本発明に係る模型の様子を示している。
【0044】
【表1】
【0045】
実際の懸濁製剤は、撹拌させてから25分経過しても未撹拌状態の透過率である62.35%近くにはならず、9.41%と懸濁状態が続いていた。一方で、模型は、撹拌させてから25分後には透過率が87.94%と未撹拌状態の透過率である89.11%とほぼ同じぐらいの懸濁状態になり、10分後の写真では、沈殿物の分散がほぼ収束していることが確認された。また、25分後では、綺麗に液相と沈殿物の二相に分離していることが確認された。
【0046】
以上のことから、本発明に係る模型を用いることで、実際の懸濁製剤と同様に撹拌させることができ、かつ、当該懸濁製剤よりも早く未撹拌状態に戻るために、練習に要する時間も実際の懸濁製剤と比較して短縮できることが分かった。したがって、本発明に係る模型は、自己注射を要する患者に対し、製剤均一化の練習を行うための模型として非常に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、新たな製剤均一化練習用模型及び製剤均一化練習方法を提供することができる。本発明は、特に即効型と遅効型の混合製剤を均一化させる際の訓練に用いられ、糖尿病等に罹患した患者の自己治療を正しく行えるようにするため、病院、薬局、クリニック等の医療機関において広く用いられ得る。
【符号の説明】
【0048】
10:均一化製剤練習用模型
11:内容物
111:液相
112:沈殿物
113:ガラス製又は樹脂製の球状体
12:外筒部
13:穿刺防止構造部
14:篏合防止構造部
図1
図2
図3
図4