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  • 特許-下着装着体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】下着装着体
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/472 20060101AFI20220816BHJP
   A61F 13/84 20060101ALI20220816BHJP
   A61F 7/08 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
A61F13/472 400
A61F13/84
A61F7/08 361E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018084028
(22)【出願日】2018-04-25
(65)【公開番号】P2019187786
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】516311423
【氏名又は名称】株式会社シーリング
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 裕
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0010836(KR,A)
【文献】特開2000-042125(JP,A)
【文献】特開2002-345876(JP,A)
【文献】登録実用新案第3154532(JP,U)
【文献】実開平06-010321(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/00- 7/12
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下着装着体本体を備え、
前記下着装着体本体は、下着に当接する下着当接シートと、肌に当接する肌当接シートと、が内部に空間が形成されるように貼り合わされてなり、
前記下着当接シートは、発熱体を収容する略長方形状の発熱体収容部を有し、
前記空間には、織物が設けられ、
前記織物は、前記下着当接シートを介して、前記発熱体収容部に収容された前記発熱体と重畳するように配置され、
前記発熱体収容部は、外部に露出して設けられ、その少なくとも一辺に開口部が形成されており、前記発熱体を、前記開口部を介して、その内部に出し入れ可能に構成されて
前記肌当接シートは、局部に当接する隆起部を有し、
前記隆起部は、前記織物が収容される空間を形成し、且つその表面が平坦に構成されていることを特徴とする、下着装着体。
【請求項2】
前記下着装着体本体は、一対の羽根部を有し、
前記一対の羽根部には、互いに着脱可能な着脱手段が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の下着装着体。
【請求項3】
前記着脱手段は、前記下着装着体本体の前記下着への固定強度を可変可能に構成されている、請求項2に記載の下着装着体。
【請求項4】
前記発熱体収容部の長辺方向は、平面視での前後方向と平行となるように、前記下着当接シートに設けられ、
前記発熱体収容部は、平面視で、左方の前記羽根部の頂点から前記発熱体収容部の左方の長辺までの距離と、右方の前記羽根部の頂点から前記発熱体収容部の右方の長辺までの距離と、が同一となるように、前記下着当接シートに配置され
左方の前記羽根部の頂点から前記発熱体収容部の左方の長辺までの距離、及び右方の前記羽根部の頂点から前記発熱体収容部の右方の長辺までの距離が、前記発熱体収容部の短辺方向の長さよりも短く構成されていることを特徴とする、請求項2又は3に記載の下着装着体。
【請求項5】
前記開口部には、その開口を狭める幅狭部が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の下着装着体。
【請求項6】
前記開口部は、伸縮性を有することを特徴とする、請求項1又は5に記載の下着装着体。
【請求項7】
前記織物は、パイル織物であることを特徴とする、請求項1~6の何れかに記載の下着装着体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として女性用の下着に装着される下着装着体に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、下着装着体として、女性のおりものや経血等を処理するためのナプキンが用いられてきた。
【0003】
通常、このナプキンは、下着に、そのクロッチ部を覆うようにして取り付けることで着用される。
【0004】
また、着用時に局部を温めることで、冷え性の改善や生理痛の低減のために、内部に発熱体を備えたナプキンが、種々提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、着用前における発熱反応の開始を抑え、着用開始時から効率よく着用者の子宮を温めて生理痛を低減するためのナプキンが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、発熱体を備え、吸収された経血等の体液の滲み出しが抑制され、肌当接面のドライ感及び着用感に優れるナプキンが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-75564号公報
【文献】特開2009-261536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のナプキンは、発熱体が、肌に当接するシートに被覆されているのみであり、着用した着用者が、発熱体の熱により、皮膚への損傷を負う可能性が懸念される。
【0009】
また、特許文献2に記載のナプキンは、上部に吸収体が介在してはいるものの、発熱体が、通気性を有するシートで被覆されていることから、発熱体の温度を長時間保持できない可能性が懸念される。
【0010】
本発明は上記のような実状に鑑みてなされたものであり、着用者の皮膚への損傷を抑制し、発熱体の保温性を向上させる下着装着体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、
下着装着体本体を備え、
前記下着装着体本体は、下着に当接する下着当接シートと、肌に当接する肌当接シートと、が内部に空間が形成されるように貼り合わされてなり、
前記下着当接シートは、発熱体を収容する発熱体収容部を有し、
前記空間には、織物が設けられ、
前記織物は、前記下着当接シートを介して、前記発熱体収容部に収容された前記発熱体と重畳するように配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、発熱体により発せられた熱が、織物を介して、局部に伝達するため、着用者の皮膚への損傷を抑制することが可能となる。また、発熱体により発せられた熱が、織物に取り込まれることにより、熱が外部に逃げにくく、発熱体の保温性を向上し、局部を長時間温めることが可能となる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記下着装着体本体は、一対の羽根部を有し、前記一対の羽根部には、互いに着脱可能な着脱手段が設けられていることを特徴とする。
【0014】
このような構成とすることで、着用者は、下着装着体の、下着に対する着脱を容易にかつ安定的に行うことが可能となる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記発熱体収容部は、前記下着当接シートの中央寄りに配置されていることを特徴とする。
【0016】
このような構成とすることで、発熱体が、下着装着体本体及び織物を介して、着用者の局部の適切な位置に当接され、熱を確実に局部に伝達することが可能となる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記発熱体収容部は、略長方形状であり、少なくとも一辺に開口部が形成されていることを特徴とする。
【0018】
このような構成とすることで、着用者は、一般的な略長方形状の発熱体を、安定的に発熱体収容部に収容することが可能となる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記開口部には、その開口を狭める幅狭部が形成されていることを特徴とする。
【0020】
このような構成とすることで、発熱体収容部に収容された発熱体の不意の脱離を防止することが可能となる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記開口部は、伸縮性を有することを特徴とする。
【0022】
このような構成とすることで、着用者は、開口部への発熱体の挿入を容易に行うことが可能となる。
【0023】
本発明の好ましい形態では、前記織物には、パイル織物が含まれていることを特徴とする。
【0024】
このように、内部に空気を多く含むパイル織物を用いることで、発熱体の保温性をさらに向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、着用者の皮膚への損傷を抑制し、発熱体の保温性を向上させる下着装着体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る下着装着体を示す図であって、(a)平面図、(b)XX線断面図、(c)(b)の部分拡大図である。
図2】本発明の実施形態に係る下着装着体の概略斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る下着装着体における下着装着体本体及び発熱体収容部の配置関係を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る下着装着体の使用例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る下着装着体の使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図1図5を用いて、本発明の実施形態に係る下着装着体について説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。
【0028】
図1に示すように、本実施形態に係る下着装着体は、下着に当接する下着当接シート11と、肌に当接する肌当接シート12と、から構成される、下着装着体本体1を備えている。
なお、以下説明の便宜上、図1(a)に示す切断線であるXX線方向を左右方向、左右方向と直交する方向を前後方向とする。
【0029】
下着に当接する下着当接シート11及び肌に当接する肌当接シート12は、共に、全体が綿や麻、絹、羊毛等の動植物繊維、レーヨンやナイロン、ポリエステル等の化学繊維等を用いた柔軟性のある素材により形成されている。
特に、下着当接シート11は、ニット生地やガーゼ生地により形成することが好ましい。また、肌当接シート12は、オーガニックコットンを含む繊維により形成することが好ましい。
【0030】
図1(a)に示すように、下着当接シート11及び肌当接シート12は、共に左右方向に一対の羽根部13を有する、四方が丸みを帯びた略菱形状であり、略同一の大きさである。また、下着当接シート11及び肌当接シート12は、その周縁部が縫合さることにより、内部に空間S(図1(c)参照)が形成されるように、貼り合わされている。
【0031】
一対の羽根部13には、互いに着脱可能な着脱手段Rとして、スナップボタンが設けられている。
詳述すれば、下着当接シート11における左方の羽根部13には、スナップボタンの雄が設けられ、肌当接シート12における右方の羽根部13には、スナップボタンの雌が、間隔を空けて2つ設けられている。このようにすることで、着用者は、スナップボタンの雄に係合させるスナップボタンの雌により、本実施形態に係る下着装着体を下着に固定する際の、固定の強度を変化させることができる。
なお、スナップボタンの数は、これに限定されず、雄雌共に1つずつでも良いし、雌を3つ以上設けても良い。また、着脱手段Rは、スナップボタンに限られず、例えば、面ファスナーや磁石等を用いても良い。
【0032】
下着当接シート11は、その外面に、発熱体H(図4参照)を収容する発熱体収容部11aを有している。
詳述すれば、発熱体収容部11aは、略長方形状であり、その長辺方向と前後方向とが略平行となるように、下着当接シート11の略中央に設けられている。
また、発熱体収容部11aは、伸縮性を有しており、下着当接シート11及び肌当接シート12と同様に、全体が綿や麻、絹、羊毛等の動植物繊維、レーヨンやナイロン、ポリエステル等の化学繊維等を用いた柔軟性のある素材により形成されている。
【0033】
図1(b)及び(c)に示すように、空間Sには、織物Pが2枚積層された態様で設けられている。
織物Pは、下着装着体本体1の略中央に設けられており、発熱体収容部11aに収容された発熱体Hと、下着当接シート11を介して重畳するように構成されている。
なお、織物Pは、パイル生地が好適に用いられるが、ネル生地やフランネル生地、ニット生地、ガーゼ生地等であっても良く、異種の生地を複数枚積層しても良い。また、積層する枚数は、2枚に限られず、3枚以上であっても良いし、積層せずに1枚だけ設けても良い。
【0034】
図2(a)に示すように、発熱体収容部11aの前方の短辺には、開口部Aが形成されている。また、開口部Aの左右方向には、その開口を狭める幅狭部Wが一対形成されている。
【0035】
図2(b)に示すように、肌当接シート12は、その略中央に、局部に当接する略小判形の隆起部12aを有している。
【0036】
以下、図3を用いて、下着装着体本体1に対する発熱体収容部11aの配置関係及び下着装着体本体1と発熱体収容部11aの大きさについて説明する。
【0037】
まず、下着装着体本体1に対する発熱体収容部11aの配置関係に関して、発熱体収容部11aは、下着装着体本体1の左右方向の略中央に配置されていることが好ましい。
即ち、図3において、下着装着体本体1の一対の羽根部13の各頂点から発熱体収容部11aの各長辺までの長さd1及びd2に関して、d1≒d2とすることが好ましい。
【0038】
また、発熱体収容部11aは、発熱体収容部11aの前後方向の中心が、下着装着体本体1の一対の羽根部13の各頂点を結んだ仮想線Lよりも若干後方となるように配置されていることが好ましい。
即ち、図3において、仮想線Lから発熱体収容部11aの後方短辺までの長さd3及び仮想線Lから発熱体収容部11aの前方短辺までの長さd4に関して、d3:d4≒3:2とすることが好ましい。
【0039】
次に、下着装着体本体1の大きさに関して、下着装着体本体1の前後方向の長さ(D1)及び左右方向の長さ(D2)は、共に160mm~200mmの範囲で構成することが好ましい。
【0040】
また、発熱体収容部11aの大きさに関して、長辺の長さ(D3)は、90mm~105mmの範囲で構成することが好ましく、後方の短辺の長さ(D4)は、55mm~75mmの範囲で構成することが好ましく、開口部Aの長さ(D5)は、40mm~50mmの範囲で構成することが好ましい。
【0041】
下着装着体本体1及び発熱体収容部11aを、上記のような大きさ及び配置関係とすることで、発熱体収容部11aに収容された発熱体Hと着用者の局部とが、下着装着体本体1及び織物Pを介して、適切な位置で当接され、着用者の局部を確実に温めることができる。
【0042】
本実施形態に係る下着装着体を使用する際には、まず、下着当接シート11が有する発熱体収容部11aに発熱体Hを収容する(矢印p1)。
詳述すれば、図4(a)に示すように、一対の幅狭部Wにより、その開口が狭められた開口部Aの開口長さw1は、略長方形状の発熱体Hの短辺の長さw2よりも短く形成されているため、着用者は、開口部Aを押し広げ、発熱体収容部11aの内部に発熱体Hを挿入する。こうすることで、図4(b)に示す状態とすることができる。
【0043】
次に、着用者は、図5(a)に示すように、下着Uの前後方向と本実施形態に係る下着装着体の前後方向を一致させ、下着Uのクロッチ部U1に発熱体収容部11aを当接させることで(矢印p2)、図5(b)に示すような状態とする。
【0044】
次に、着用者は、図5(b)に示す状態から、一対の羽根部13にそれぞれ設けられた着脱手段Rを、クロッチ部U1を巻き込むようにして係合させることで(矢印p3)、図5(c)に示すような状態となり、本実施形態に係る下着装着体が、下着Uに固定される。
【0045】
こうすることで、着用者は、肌当接シート12が有する隆起部12aが局部に当接する態様で、下着Uを着用することができる。
【0046】
本実施形態によれば、発熱体Hにより発せられた熱が、積層された複数の織物Pを介して、局部に伝達するため、着用者の皮膚への損傷を抑制することが可能となる。また、発熱体Hにより発せられた熱が、積層された複数の織物Pに取り込まれることにより、熱が外部に逃げにくく、発熱体Hの保温性を向上し、局部を長時間温めることが可能となる。
【0047】
また、下着装着体本体1が、一対の羽根部13を有し、一対の羽根部13には、互いに着脱可能な着脱手段Rが設けられていることで、着用者は、本実施形態に係る下着装着体の、下着Uに対する着脱を容易にかつ安定的に行うことが可能となる。
【0048】
また、発熱体収容部11aが、略長方形状であり、前方短辺に開口部Aが形成されていることで、着用者は、一般的な略長方形状の発熱体Hを、安定的に発熱体収容部11aに収容することが可能となる。
【0049】
また、開口部Aには、その開口を狭める幅狭部Wが形成されていることで、発熱体収容部11aに収容された発熱体Hの不意の脱離を防止することが可能となる。
【0050】
また、開口部Aが、伸縮性を有することで、着用者は、開口部Aへの発熱体Hの挿入を容易に行うことが可能となる。
【0051】
また、織物Pとして内部に空気を多く含むパイル織物を用いることで、発熱体Hの保温性をさらに向上させることが可能となる。
【0052】
なお、本実施形態に係る下着装着体は、生理時に下着に装着されるナプキンの他、生理時以外の時に下着に装着されるパンティライナー(おりものシート)として使用することも可能である。
【0053】
また、本実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 下着装着体本体
11 下着当接シート
11a 発熱体収容部
12 肌当接シート
12a 隆起部
13 羽根部
P 織物
H 発熱体
R 着脱手段
A 開口部
W 幅狭部
U 下着
U1 クロッチ部
図1
図2
図3
図4
図5