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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】作業用フード及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A42B 1/04 20210101AFI20220816BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20220816BHJP
   A41D 27/00 20060101ALI20220816BHJP
   A41H 43/00 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
A42B1/04 A
A41D13/05
A41D27/00 A
A41H43/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018094413
(22)【出願日】2018-05-16
(65)【公開番号】P2019199661
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】505382249
【氏名又は名称】シゲモリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116090
【氏名又は名称】栗原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】重森 伸
(72)【発明者】
【氏名】松岡 知奈恵
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/137358(WO,A1)
【文献】特開2011-074511(JP,A)
【文献】特開2017-125268(JP,A)
【文献】特開2017-193808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 1/04
A41D 13/05
A41D 27/00
A41H 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の頭部及び頸部を覆うフード本体と、
前記フード本体に設けられ、前記着用者の顔面が露出する開口部と、
前記開口部の第1の前側周縁に自身の両短辺が取り付けられ、前記開口部の第1の下側周縁に自身の第1の長辺が取り付けられる帯状伸縮性の上側縁取り布と、
前面から見て略U字状をなして前記着用者の顎を覆い、前記第1の前側周縁に自身の第3の長辺が取り付けられる帯状伸縮性の下側縁取り布と、を有する作業用フードであって、
前記上側縁取り布の第2の長辺と、前記下側縁取り布の第4の長辺との間に前記着用者の耳よりも前方の顔面が露出し、
前記下側縁取り布の両短辺は、前記上側縁取り布に重なるようにして前記第1の下側周縁に取り付けられ、
前記下側縁取り布の中心線を挟む部位が表側に膨出し、前記顎の底面と前面とにフィットする膨出部として構成されてなる作業用フードであって、
前記膨出部は、前記下側縁取り布の前記中心線を挟む左右2カ所の位置で、前記第4の長辺が前記第3の長辺より短くなるよう、かつ前記第4の長辺から延びて前記第3の長辺まで達しないダーツ状に接合された縫い目によって形成されてなる作業用フード。
【請求項2】
請求項1に記載の作業用フードの製造方法であって、
長片状の下側縁取り布素材を長手方向に延びる折り線で二つ折りし、前記折り線が前記第4の長辺となり、前記下側縁取り布素材の長手方向両端が前記第3の長辺となるようにし、
かつ、前記第4の長辺から延びて前記第3の長辺まで達しないように縫い目をダーツ状に接合し、
前記折り線が前記第4の長辺となり、前記下側縁取り布素材の前記長手方向に延びる端縁が前記第3の長辺を構成し、前記第4の長辺が前記第3の長辺より短くなることで、前記膨出部を形成する、作業用フードの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の作業用フードの製造方法であって、
長片状の下側縁取り布素材に切欠きを設けず、その裏面のうち長手方向の中心線を挟む2カ所の位置で、前記裏面同士が露出するように前記中心線に平行に二つ折りする折り工程と、
前記折り工程で折られた2か所の折部に対し、前記下側縁取り布素材の前記長手方向に延びる折り線から幅方向端部に向かって、前記折部の基部から頂点に延びる線上を接合する接合工程と、
前記折部を倒した状態で、前記折り線にて前記下側縁取り布素材の前記裏面同士が重なるように二つ折りする第2折り工程と、を有し、
前記折り線が前記第4の長辺となり、前記下側縁取り布素材の前記長手方向に延びる端縁が前記第3の長辺を構成し、前記第4の長辺が前記第3の長辺より短くなることで、前記膨出部を形成する、作業用フードの製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の作業用フードの製造方法であって、
長片状の下側縁取り布素材に切欠きを設けず、その裏面のうち長手方向の中心線を挟む2カ所の位置で、前記裏面同士が露出するように前記中心線に平行に二つ折りする折り工程と、
前記折り工程で折られた2か所の折部に対し、前記下側縁取り布素材の前記長手方向に延びる折り線から幅方向端部に向かって、前記折部の基部から頂点に延びる線上を接合する接合工程と、
前記折部を倒した状態で、前記折り線にて前記下側縁取り布素材の前記裏面同士が重なるように二つ折りする第2折り工程と、を有し、
前記折り工程と、前記接合工程とを、前記下側縁取り布素材の前記中心線を挟む2カ所の位置のうちそれぞれ別の1カ所の位置でこの順に繰り返し、
前記折り線が前記第4の長辺となり、前記下側縁取り布素材の前記長手方向に延びる端縁が前記第3の長辺を構成し、前記第4の長辺が前記第3の長辺より短くなることで、前記膨出部を形成する、作業用フードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルーム内や食品工場等での作業時に着用する作業用フード(ずきん)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルーム内や食品工場等での作業時には、作業者は頭部を覆う作業用フード(ずきん)を着用し、顔面からの汗や髪の毛等の異物落下を防止している。この作業用フードは、着用者の頭部を覆いつつ、顔の少なくとも一部を露出させる開口部を有している。
さらに、開口部の周縁下部に、作業者の顎部を覆う布を取り付け、顎ヒゲ等落下を防止した技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-125268号公報(図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した特許文献1記載の技術の場合、頭部を2枚布で覆い、顎部を1枚布で覆い、可動部がないので、会話で口を動かしたりすると、この顎被覆部が顎からズレて唇までずり上がったり、逆にずり下がって首に巻き付く等の不具合が生じ、却って作業の邪魔になる場合がある。また、開口部と周辺の生地段差が肌への圧迫を生じることがある。
【0005】
すなわち、本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、着用感に優れ、着用者の顎を確実に覆い、かつ顎を覆う部位の顎からのずり上がりやずり下がり、毛髪等の異物落下を防止した作業用フード及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の作業用フードは、着用者の頭部及び頸部を覆うフード本体と、前記フード本体に設けられ、前記着用者の顔面が露出する開口部と、前記開口部の第1の前側周縁に自身の両短辺が取り付けられ、前記開口部の第1の下側周縁に自身の第1の長辺が取り付けられる帯状伸縮性の上側縁取り布と、前面から見て略U字状をなして前記着用者の顎を覆い、前記第1の前側周縁に自身の第3の長辺が取り付けられる帯状伸縮性の下側縁取り布と、を有する作業用フードであって、前記上側縁取り布の第2の長辺と、前記下側縁取り布の第4の長辺との間に前記着用者の耳よりも前方の顔面が露出し、前記下側縁取り布の両短辺は、前記上側縁取り布に重なるようにして前記第1の下側周縁に取り付けられ、前記下側縁取り布の中心線を挟む部位が表側に膨出し、前記顎の底面と前面とにフィットする膨出部として構成されてなる作業用フードであって、前記膨出部は、前記下側縁取り布の前記中心線を挟む左右2カ所の位置で、前記第4の長辺が前記第3の長辺より短くなるよう、かつ前記第4の長辺から延びて前記第3の長辺まで達しないダーツ状に接合された縫い目によって形成されてなる。
【0007】
この作業用フードによれば、下側縁取り布の両短辺が第1の下側周縁に取り付けられている。このため、作業用フードを着用して膨出部を顎に保持させると、頂部押さえ布が頭部によって上方に引っ張られ、頂部押さえ布の第1の下側周縁に取り付けられた下側縁取り布の両短辺も上方に引っ張られる。
これにより、略U字で帯状の下側縁取り布が両短辺で引っ張られてスリングショット(ゴムパチンコ)のように上方に伸び、膨出部も上方に引っ張られて顎に密着し、フィットするようになる。
このとき、膨出部が立体形状(略椀状)になって顎の底面と前面とに保持されるので、平面状の布で顎部を覆う場合のように顎からズレて唇までずり上がったり、逆にずり下がって首に巻き付くことが抑制され、着用者の顎を確実に覆い、膨出部の顎からのずり上がりやずり下がりを防止することができる。
【0008】
さらに、下側縁取り布の両短辺は、上側縁取り布に重なっている。これにより、顎を密着させる両短辺の引っ張り力と、上側縁取り布とが無関係になるので、例えば、眉毛をしっかり覆うように上側縁取り布を下げても、下側縁取り布の両短辺がそれにつられて下がることがなく、顎を密着させる上記の引っ張り力が低下することがない。
つまり、顎を密着させる下側縁取り布の膨出部の効果と、着用者の都合で眉をカバーする、しないを加減できる上側縁取り布の効果とを両立できる。
【0009】
又、本発明の作業用フードによれば、縫い目によって膨出部を容易かつ確実に形成できる。
【0014】
本発明の作業用フードの製造方法は、請求項1に記載の作業用フードの製造方法であって、長片状の下側縁取り布素材を長手方向に延びる折り線で二つ折りし、前記折り線が前記第4の長辺となり、前記下側縁取り布素材の長手方向両端が前記第3の長辺となるようにし、かつ、前記第4の長辺から延びて前記第3の長辺まで達しないように縫い目をダーツ状に接合し、前記折り線が前記第4の長辺となり、前記下側縁取り布素材の前記長手方向に延びる端縁が前記第3の長辺を構成し、前記第4の長辺が前記第3の長辺より短くなることで、前記膨出部を形成する。
【0015】
又、本発明の作業用フードの製造方法は、請求項2に記載の作業用フードの製造方法であって、長片状の下側縁取り布素材に切欠きを設けず、その裏面のうち長手方向の中心線を挟む2カ所の位置で、前記裏面同士が露出するように前記中心線に平行に二つ折りする折り工程と、前記折り工程で折られた2か所の折部に対し、前記下側縁取り布素材の前記長手方向に延びる折り線から幅方向端部に向かって、前記折部の基部から頂点に延びる線上を接合する接合工程と、前記折部を倒した状態で、前記折り線にて前記下側縁取り布素材の前記裏面同士が重なるように二つ折りする第2折り工程と、を有し、
前記折り線が前記第4の長辺となり、前記下側縁取り布素材の前記長手方向に延びる端縁が前記第3の長辺を構成し、前記第4の長辺が前記第3の長辺より短くなることで、前記膨出部を形成する。
【0016】
又、本発明の作業用フードの製造方法は、請求項2に記載の作業用フードの製造方法であって、長片状の下側縁取り布素材に切欠きを設けず、その裏面のうち長手方向の中心線を挟む2カ所の位置で、前記裏面同士が露出するように前記中心線に平行に二つ折りする折り工程と、前記折り工程で折られた2か所の折部に対し、前記下側縁取り布素材の前記長手方向に延びる折り線から幅方向端部に向かって、前記折部の基部から頂点に延びる線上を接合する接合工程と、前記折部を倒した状態で、前記折り線にて前記下側縁取り布素材の前記裏面同士が重なるように二つ折りする第2折り工程と、を有し、前記折り工程と、前記接合工程とを、前記下側縁取り布素材の前記中心線を挟む2カ所の位置のうちそれぞれ別の1カ所の位置でこの順に繰り返し、前記折り線が前記第4の長辺となり、前記下側縁取り布素材の前記長手方向に延びる端縁が前記第3の長辺を構成し、前記第4の長辺が前記第3の長辺より短くなることで、前記膨出部を形成する。


【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、着用者の顎を確実に覆い、かつ顎を覆う部位の顎からのずり上がりやずり下がりを防止した作業用フードが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態に係る作業用フードの正面図である。
図2】作業用フードの側面図である。
図3】下側縁取り布のダーツを形成する方法を示す図である。
図4図3に続く図である。
図5】下側縁取り布の膨出部が顎にフィットする機構を示す図である。
図6】下側縁取り布のダーツを形成する別の方法を示す図である。
図7】下側縁取り布のダーツを形成するさらに別の方法を示す図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る作業用フードの側面図である。
図9】膨出部の別の形態を示す正面図である。
図10図9の膨出部の側面図である。
図11】膨出部のさらに別の形態を示す正面図である。
図12】下側縁取り布の縫い目を形成する方法を示す図である。
図13】本発明の第2の実施形態に係る作業用フードの実際の写真を示す側面図である。
図14】下側縁取り布のダーツを形成するさらに別の方法を示す図である。
図15】下側縁取り布の縫い目を形成する別の方法を示す図である。
図16図15の縫合線の別の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る作業用フードについて説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る作業用フードの正面図、図2は作業用フードの側面図、図3図4は下側縁取り布のダーツを形成する方法を示す図、図5は下側縁取り布の膨出部が顎にフィットする機構を示す。
【0020】
図1図2に示すように、作業用フード100は着用者の頭部及び頸部を覆う頭巾状に形成され、着用者の耳よりも前方の顔面(通常、目、鼻、口)が露出する開口部100hを有する。
作業用フード100は、着用者の頭部を覆う頂部押さえ布2と、頂部押さえ布2の下側に接合されて着用者の頸部及び後頭部を覆う略筒状の後頭部布4と、後頭部布4と頂部押さえ布2とに取り付けられる帯状伸縮性の上側縁取り布6と、後頭部布4に取り付けられる帯状伸縮性の下側縁取り布10と、を有する。
作業用フード100は、織物または編物からなる上記の頂部押さえ布2、後頭部布4、編物からなる上側縁取り布6及び下側縁取り布10を縫合して形成されている。
【0021】
より具体的には、頂部押さえ布2は上に凸の略椀状で周方向に繋がる第1の下側周縁2pを有し、後頭部布4は第1の下側周縁2pの後側の部位に接合される。そして、後頭部布4の前方の第1の前側周縁4pから顔の少なくとも一部を露出させるようになっている。
なお、本実施形態では、頂部押さえ布2は、着用者の頭部を左右からそれぞれ覆う左頂部押さえ布2aと右頂部押さえ布2bとを接合してなるが、これに限定されない。
又、本実施形態では、後頭部布4は、着用者の頸部の前側を覆う第1後頭部布4aと、第1後頭部布4aの後側に接合される第2後頭部布4bとを有するが、これに限定されない。
【0022】
又、上側縁取り布6は、第1の前側周縁4pに自身の両短辺6s1、6s2が取り付けられ、第1の下側周縁2pに自身の第1の長辺6L1が取り付けられ、着用者の眉毛を含む額を覆うことが可能である。
又、下側縁取り布10は、前面から見て略U字状をなして着用者の顎を覆い、第1の前側周縁4pに自身の第3の長辺10L3が取り付けられる。
このようにして、上側縁取り布6の第2の長辺6L2と、下側縁取り布10の第4の長辺10L4との間に、着用者の耳よりも前方の顔面が露出する開口部100hが形成されている。
【0023】
さらに、下側縁取り布10の両短辺10S1,10S2は、上側縁取り布6に重なるようにして第1の下側周縁2pに取り付けられている。
又、下側縁取り布10の中心線Cを挟む左右2カ所の位置で、第4の長辺10L4が第3の長辺10L3より短くなるよう接合された縫い目(ダーツ)10d、10dがそれぞれ形成されている。
そして、2つのダーツ10d、10dの間の部位が表側に略椀状に膨出し、顎の底面と前面とにフィットする膨出部10cとして構成されている。
【0024】
さらに、本実施形態では、後頭部布4の下方に、着用者の首周りから肩にかけて覆うケープ布8が接合され、ケープ布8はスカート状に広がって形成される。ケープ布8は後頭部布4と接合される形態の他、後頭部布4と一体の布地で形成してもよい。
但し、ケープが無く、着用者の首周りまでで終端するものも本発明に含まれる。
【0025】
次に、図3図4を参照し、下側縁取り布10のダーツ10dを形成する方法の一例を説明する。
まず、図3に示すように、下側縁取り布素材10xの中心線Cを挟む左右に、幅方向に延びる切欠き10nを設ける。この切欠き10nは、下側縁取り布素材10xの長手方向に延びる折り線10fを挟みつつ、下側縁取り布素材10xの長手方向両端に向かって延びるが、両端まで達しない。
そして、図4(a)に示すように、下側縁取り布素材10xを折り線10fで二つ折りすると、折り線10fが第4の長辺10L4となり、下側縁取り布素材10xの長手方向両端が第3の長辺10L3となる。又、切欠き10nはV字のノッチ状になっている。
【0026】
次に、図4(b)に示すように、切欠き10nを挟む一方の素材10x1を、他の素材10x2の中に入れると、下側縁取り布10が幅方向に略V字状に折り曲がり、第4の長辺10L4が第3の長辺10L3より短くなる。
次に、図4(c)に示すように、素材10x1,10x2の重なり部分(10x2の縁部)を適宜縫合線10mで縫合するとダーツ10dが完成する。そして、第4の長辺10L4が第3の長辺10L3より短いために、2つのダーツ10d、10dの間の部位が表側に膨出し、顎の底面と前面とにフィットする膨出部10cとなる。
【0027】
次に、図5を参照し、下側縁取り布10の膨出部10cが顎にフィットする機構について説明する。
上述のように、下側縁取り布10の両短辺10S1,10S2が第1の下側周縁2pに取り付けられている。
作業用フード100を着用して膨出部10cを顎に保持させると、頂部押さえ布2が頭部によって上方に引っ張られ、頂部押さえ布2の第1の下側周縁2pに取り付けられた下側縁取り布10の両短辺10S1,10S2も上方に引っ張られる。
これにより、略U字で帯状の下側縁取り布10が両短辺10S1,10S2で引っ張られてスリングショット(ゴムパチンコ)のように上方に伸び、膨出部10cも上方に引っ張られて顎に密着し、フィットするようになる。
このとき、膨出部10cがダーツ10dによって立体形状(略椀状)になって顎の底面と前面とに保持されるので、平面状の布で顎部を覆う場合のように顎からズレて唇までずり上がったり、逆にずり下がって首に巻き付くことが抑制され、着用者の顎を確実に覆い、膨出部10cの顎からのずり上がりやずり下がりを防止することができる。
【0028】
さらに、下側縁取り布10の両短辺10S1,10S2は、上側縁取り布6に重なっている。これにより、顎を密着させる両短辺10S1,10S2の引っ張り力と、上側縁取り布6とが無関係になるので、例えば、眉毛をしっかり覆うように上側縁取り布6を下げても、下側縁取り布10の両短辺10S1,10S2がそれにつられて下がることがなく、顎を密着させる上記の引っ張り力が低下することがない。
つまり、顎を密着させる下側縁取り布10の膨出部10cの効果と、着用者の都合で眉をカバーする、しないを加減できる上側縁取り布6の効果とを両立できる。
【0029】
第1の下側周縁2pが接合(縫合等)によって伸縮性が低下し、鉢巻き状に頭を締めるので、第1の下側周縁2pが撓み難く、第1の下側周縁2pによる下側縁取り布10の引張り効果が大きくなるので、着用者の顎をより確実に覆ってずり上がりやずり下がりをさらに防止することができる。なお、縫合の場合、第1の下側周縁2pが厚くなって伸縮性が低下し、溶着の場合は素材が収縮して硬くなり、伸縮性が低下する。
同様に、頂部押さえ布2の伸びが、下側縁取り布10の伸びよりも小さいと、頂部押さえ布2による下側縁取り布10の引張り効果が大きくなる。なお、伸縮性や伸びは引張試験(JIS-L1096(2010))で測定できる。
【0030】
又、本実施形態では、下側縁取り布10の両短辺10S1,10S2は、上側縁取り布6に覆われている。
これにより、図5に示すように、下側縁取り布10の両短辺10S1,10S2近傍にスリット(挿通部)10mを設ければ、このスリット10mに着用者の眼鏡のツルを挿通できる。
そして、下側縁取り布10の上に上側縁取り布6を重ねているので、下側縁取り布10に設けられたスリット10mが上側縁取り布10で隠れて表側に露出しない。このため、作業用フード内の着用者の頭部から髪の毛等が脱落してスリット10mを通ったとしても、上側縁取り布6で保持されて外部に落下することが防止される。
なお、スリット10mは、下側縁取り布10自身を切って設けるほか、下側縁取り布10の第3の長辺10L3と第1の前側周縁4pとの一部を接合しないことでも形成できる。
【0031】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
本発明において、「取り付け」、「接合」は縫合、ホットメルト接着剤等の接着剤による接着、溶着等により行うことができる。ダーツの形成においても、接合方法は限定されない。
【0032】
又、ダーツの形成方法も限定されない。例えば図6のように、下側縁取り布素材10xに図4(a)と同様なV字のノッチ状の切欠き10nを設けた後、一方の素材10x1を他の素材10x2の中に入れず、両者を向き合わせてその間を縫合線10m2で縫合したり、他の方法で接合してもよい。
又、図7のように、下側縁取り布素材10xを切欠かず、折り線10f側を幅方向に略V字状になるよう摘んで折り畳み、折り畳み部分(重なり部分)10gを縫合線10m2で縫合したり、他の方法で接合してもよい。
【0033】
又、図8図13に示すように、頂部押さえ布2及び後頭部布4が一体となったフード本体12としてもよい。
図8に示すように、第2の実施形態に係る作業用フード110は、上記したように、図2の頂部押さえ布2及び後頭部布4が一体となったフード本体12を構成する点が第1の実施形態に係る作業用フード100と異なる。そして、フード本体12の前方には、着用者の顔面が露出する開口部110hが形成され、開口部110hの前側の周縁が第1の前側周縁4pとなり、開口部110hの下向きの周縁が第1の下側周縁2pとなる。
なお、図示はしないが、フード本体12は、左右の布を中心線で接合してなる。
【0034】
第2の実施形態に係る作業用フード110においては、第1の下側周縁2pは着用者の耳近傍より前側で水平方向に延びる略半円弧状に形成されている。
この場合も、フード本体12が頭部によって上方に引っ張られ、下側周縁2pに取り付けられた下側縁取り布10の両短辺10S1,10S2も上方に引っ張られる。これにより、膨出部10cも上方に引っ張られて顎に密着し、フィットするようになる。
又、第1の下側周縁2pが接合(縫合等)によって伸縮性が低下し、頭の一部(おでこ)を締めるので、第1の下側周縁2pが撓み難く、第1の下側周縁2pによる下側縁取り布10の引張り効果が大きくなるので、着用者の顎をより確実に覆ってずり上がりやずり下がりをさらに防止することができる。
【0035】
又、図9,10に示すように、膨出部10c2として、下側縁取り布10vの第4の長辺10L4の中心線Cを挟む下部に、顎の前面にフィットする前側布10eが接合された形態としてもよい。前側布10eは、略半円形をなす。
この場合、下側縁取り布10vは、図2の下側縁取り布10よりも狭幅で、それ単体では膨出部10c2となる立体形状をならないが、前側布10eと接合されることで、立体形状になる。
【0036】
又、図11に示すように、膨出部10c3として、下側縁取り布10wを伸縮性とし、顎に装着したときに下側縁取り布10w自身が顎を包んで自動的に立体形状になるようにしてもよい。図11の例では、ダーツ加工等の椀状加工や縫製が不要である利点がある。伸縮性の布としては、カットオフ編物や不織布等が挙げられる。
【0037】
又、膨出部を形成するための縫い目はダーツに限らず、図12に示すように、3枚の布をつないでもよい。
この場合、3枚の下側縁取り布素材パーツ10y1、10y2、10y3を用意する(図12(a)。パーツ10y1は細長く、長手方向に延びる折り線10fで線対称をなし、短辺方向の一端S1が折り線10fへ向かって凹む形状になっている。パーツ10y2は長手方向に延びる折り線10fで線対称をなし、長手方向が短く、折り線10fに直交する方向の両端S21、S22がそれぞれ折り線10fへ向かって凹む形状になっている。パーツ10y3は、折り線10fに直交する線でパーツ10y1と線対称をなし、短辺方向の一端S3が折り線10fへ向かって凹む形状になっている。
【0038】
そして、S1とS21を重ね、S22とS3を重ねて、S1とS21、及びS22とS3とを縫い合わせることで、下側縁取り布素材10yが完成する(図12(b))。
さらに、下側縁取り布素材10yを折り線10fで二つ折りすると、折り線10fが第4の長辺10L4となり、下側縁取り布素材10xの長手方向両端が第3の長辺10L3となる(図12(c))。
このようにして、下側縁取り布10の中心線Cを挟む左右2カ所の位置で、第4の長辺10L4が第3の長辺10L3より短くなるよう、縫い目10d2で接合される(図12(d))。
【0039】
又、図14に示すように、膨出部を形成するためのダーツとして、図4の素材10x1、10x2を切欠き10nの内側にてわずかに(例えば2mm幅で)重ね合わせて重ね合わせ部10g2とし、下側縁取り布素材10xの内側で重ね合わせ部10g2を縫合線10mで縫合したり、他の方法で接合してもよい。
【0040】
又、図15に示すように、膨出部を形成するためのダーツとして、下側縁取り布素材10zに切欠きを設けないで形成することもできる。この場合、下側縁取り布素材10zの裏面10bのうち、図4の切欠き10nに相当する部位(中心線Cを挟む左右2カ所)に、菱形の縫い位置マーク10tを付けておく(図15(a))。縫い位置マーク10tは、菱形の2つの対向する頂点が折り線10fに交差し、他の2つの対向する頂点が中心線D1、D2にそれぞれ交差するように付けられる。
そして、一方(図15の左側)の縫い位置マーク10tを中心線Cに平行な中心線D1で下側縁取り布素材10zの裏面10b同士が表側に露出するように(つまり、表面同士が向かい合うように)二つ折り(山折り)し、表出した縫い位置マーク10t上を縫合線10m5で縫合したり、縫い位置マーク10tの内側部分を他の方法で接合する(図15(b))。
【0041】
次に、中心線D1の折り目を元に戻すと、縫い位置マーク10tの部位が縫合線10m5で結合され、縫い位置マーク10tの折り線10fに交差する基部10kから中心線D1を頂点として立ち上がる折部10rが裏面10bから立設された状態となる(図15(c))。
他方(図15の右側)の縫い位置マーク10tについても中心線D2で折って同様に縫合線10m5で縫合する。このようにして、それぞれ中心線D1、D2を頂点として裏面10bから平行に立ち上がる2つの畝状の折部10rが形成される(図15(d))。
そして、下側縁取り布素材10xを折り線10fで二つ折りする。但し、2つの折部10rは二つ折りの邪魔となるので、各折部10rを倒した状態で二つ折りする(図15(d))。
【0042】
二つ折りすることにより、折り線10fが第4の長辺10L4となり、下側縁取り布素材10zの長手方向両端が第3の長辺10L3となる(図15(e))。
このようにして、下側縁取り布10xの中心線Cを挟む左右2カ所の位置で、第4の長辺10L4が第3の長辺10L3より短くなるよう、縫い目(ダーツ)10d5で接合される(図15(f))。
【0043】
図15に示す方法は、下側縁取り布素材10zに切欠きを設けないで膨出部(ダーツ)形成できるので、切欠きを設ける作業工数を削減できると共に、切欠きとなる裁ち目が下側縁取り布素材10zに存在しないので、洗濯等で裁ち目がほどける不具合を防止し、耐久性も高くなるという利点がある。又、ダーツ10d5の重なりが裏面10bとなるので、肌に重なり部分が直接接触せず、肌触りも優れる。
【0044】
本発明の実施形態に掛かる作業用フードの製造方法は、図15に示したようにして行うことができる。但し、折部10rの縫合位置(縫合線10m5)は、上記した菱形の辺上に限らず、下側縁取り布素材10zの折り線10fから幅方向端部に向かって、折部10rの基部10kから頂点D1,D2に延びる線上であれば、例えば図16に示すような曲線でもよい。
又、縫合線10m5での縫合に限らず、縫合線10m5及びその内側を接着、溶着等で接合してもよい。
このように、下側縁取り布素材10zの折り線10fから幅方向端部に向かって、折部10rの基部10kから頂点D1,D2に延びる線上を接合することで、折り線10fが第4の長辺10L4となり、下側縁取り布素材10zの長手方向に延びる両端縁が第3の長辺10L3を構成し、第4の長辺10L4が第3の長辺10L3より短くなることで、膨出部c5を形成することができる。
【符号の説明】
【0045】
2 頂部押さえ布
2p 第1の下側周縁
2a 左頂部押さえ布
2b 右頂部押さえ布
4 後頭部布
4p 第1の前側周縁
4a 第1後頭部布
4b 第2後頭部布
6 上側縁取り布
6s1,6s2 上側縁取り布の両短辺
6L1 第1の長辺
6L2 第2の長辺
10、10w 下側縁取り布
10s1,10s2 下側縁取り布の両短辺
10L3 第3の長辺
10L4 第4の長辺
10c、10c2、10c3,10c4 膨出部
10d、10d2、10d5 縫い目(ダーツ)
10e 前側布
12 フード本体
100、110、120、130 作業用フード
100h、110h 開口部
C 中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16