(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】チェーン保持機構およびこれを備えるチェーン張設装置
(51)【国際特許分類】
E01F 13/02 20060101AFI20220816BHJP
E01F 13/04 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
E01F13/02 Z
E01F13/04 Z
(21)【出願番号】P 2018099322
(22)【出願日】2018-05-24
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000133928
【氏名又は名称】株式会社テラモト
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100161274
【氏名又は名称】土居 史明
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】浅井 克一
(72)【発明者】
【氏名】安原 吉夫
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特許第5974023(JP,B2)
【文献】登録実用新案第3198590(JP,U)
【文献】登録実用新案第3121468(JP,U)
【文献】特開2008-156941(JP,A)
【文献】登録実用新案第3190591(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 13/02
E01F 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状のキャップ部材を有し、
上記キャップ部材は、下部に形成した円筒状胴部と、側面において一部が上記円筒状胴部にかかるようにして形成され、チェーンを引き出すための開口部とを有し、
上記円筒状胴部には、当該円筒状胴部の周囲に嵌合することによって当該円筒状胴部に保持されるとともに、嵌合状態において上記円筒状胴部の周方向にスライド移動可能な一部切り欠き環が設けられ
ており、
上記一部切り欠き環は、円環の一部を除去したようなC型リング状であり、上記C型リング状の端部である周方向端部が上記チェーンのリンクを通過できる太さを有し、上記円筒状胴部の周方向にスライドして、上記周方向端部が上記開口部を横断する状態と、上記開口部を開放する状態とを選択可能であることを特徴とする、チェーン保持機構。
【請求項2】
上記一部切り欠き環には、作業者が指を掛けて当該一部切り欠き環をスライド操作するための指掛け用膨出部が形成されている、請求項
1に記載のチェーン保持機構。
【請求項3】
上記円筒状胴部には、周方向に延びる凹溝が形成されており、当該凹溝に上記一部切り欠き環がスライド可能に嵌合している、請求項
1または2に記載のチェーン保持機構。
【請求項4】
上記キャップ部材の上記円筒状胴部より上部は、当該円筒状胴部と同一軸心および同一外径の円筒状外面部と、凹入外面部とが周方向に並んで位置して形成されており、上記開口部は、上記円筒状外面部から上記円筒状胴部にかけて形成されているとともに、上記凹入外面部には、上向きに突出して上記チェーンの端部を引っ掛けることができる掛け止め部が設けられている、請求項1ないし
3のいずれかに記載のチェーン保持機構。
【請求項5】
垂直状に設置可能なポール部材と、当該ポール部材の上端部に上記キャップ部材を接続することにより上記ポール部材に接続された請求項1ないし
4のいずれかに記載のチェーン保持機構と、上記ポール部材の中空部に収納されたチェーンと、を有し、当該チェーンは、その一端が上記キャップ部材の上記開口部から外部に引き出されていることを特徴とする、チェーン張設装置。
【請求項6】
上記開口部から上記チェーンを所望長さ引き出すとともに、上記一部切り欠き環をその先端が上記開口部を横断するとともに上記チェーンのリンクを通すようにスライドさせ、上記チェーンの先端を他の上記チェーン張設装置に掛け止めて使用する、請求項
5に記載のチェーン張設装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェーン保持機構およびこれを備えるチェーン張設装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されているように、たとえば屋外において保安目的で領域を区切るための装置として、ポール間にチェーンを張り渡すように構成されたチェーン張設装置がある。
【0003】
同文献に示されたチェーン張設装置は、ポールの上端部に設けた中空キャップの側面開口からポールの内部に収納したチェーンを引き出し、その先端を他のポールの適部に引っ掛けることにより、両ポール間にチェーンを張り渡すことができるように構成されている。
【0004】
そして、両ポール間の距離に合致した引き出し長さでチェーンを保持するために、上記側面開口にはその下部に縦方向となったチェーンリンクが嵌り込む凹部が設けられている。当該凹部に縦方向となったチェーンリンクが嵌り込んだ状態では、当該縦方向のチェーンリンクを長手方向に挟んで両隣に位置する横方向となったチェーンリンクが上記凹部を通過できないので、チェーンの長手方向への移動が阻止され、これにより、チェーンの引き出し長さが設定される。
【0005】
しかしながら、同文献に示されたチェーン張設装置は、上記のようにポールからのチェーンの引き出し長さを容易に設定できる反面、人が触れてチェーンが振動するなどして、側面開口の上記凹部に嵌り込んでいたチェーンリンクが容易に上記凹部から離脱してチェーンが側面開口から余分に引き出され、張り渡し状態のチェーンがたるんでしまうということがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、簡単な操作でチェーンの引き出し長さを調節することができ、簡単な操作で確実に引き出し長さ調節後の状態を保持することができるチェーン保持機構およびこれを備えるチェーン張設装置を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0009】
すなわち、本発明の第1の側面により提供されるチェーン保持機構は、中空状のキャップ部材を有し、上記キャップ部材は、下部に形成した円筒状胴部と、側面において一部が上記円筒状胴部にかかるようにして形成され、チェーンを引き出すための開口部とを有し、上記円筒状胴部には、当該円筒状胴部の周囲に嵌合することによって当該円筒状胴部に保持されるとともに、嵌合状態において上記円筒状胴部の周方向にスライド移動可能な一部切り欠き環が設けられていることを特徴とする。
【0010】
好ましい実施の形態では、上記一部切り欠き環は、少なくとも周方向端部が上記チェーンのリンクを通過できる太さを有し、上記円筒状胴部の周方向にスライドして、上記周方向端部が上記開口部を横断する状態と、上記開口部を開放する状態とを選択可能である。
【0011】
好ましい実施の形態では、上記一部切り欠き環は、上面視でC型リング状をしている。
【0012】
好ましい実施の形態では、上記一部切り欠き環には、作業者が指を掛けて当該一部切り欠き環をスライド操作するための指掛け用膨出部が形成されている。
【0013】
好ましい実施の形態では、上記円筒状胴部には、周方向に延びる凹溝が形成されており、当該凹溝に上記一部切り欠き環がスライド可能に嵌合している。
【0014】
好ましい実施の形態では、上記キャップ部材の上記円筒状胴部より上部は、当該円筒状胴部と同一軸心および同一外径の円筒状外面部と、凹入外面部とが周方向に並んで位置して形成されており、上記開口部は、上記円筒状外面部から上記円筒状胴部にかけて形成されているとともに、上記凹入外面部には、上向きに突出して上記チェーンの端部を引っ掛けることができる掛け止め部が設けられている。
【0015】
本発明の第2の側面により提供されるチェーン張設装置は、垂直状に設置可能なポール部材と、当該ポール部材の上端部に上記キャップ部材を接続することにより上記ポール部材に接続された上記第1の側面に係るチェーン保持機構と、上記ポール部材の中空部に収納されたチェーンと、を有し、当該チェーンは、その一端が上記キャップ部材の上記開口部から外部に引き出されていることを特徴とする。
【0016】
好ましい実施の形態では、当該チェーン張設装置は、上記開口部から上記チェーンを所望長さ引き出すとともに、上記一部切り欠き環をその先端が上記開口部を横断するとともに上記チェーンのリンクを通すようにスライドさせ、上記チェーンの先端を他の上記チェーン張設装置に掛け止めて使用する。
【発明の効果】
【0017】
上記構成のチェーン保持機構によれば、一部切り欠き環をスライドさせてその端部を所望長さ引き出されたチェーンのリンクに通すという簡単な操作で、チェーンをその長手方向にずれ動くことがないように保持することができ、張設されたチェーンが不用意にたるんでしまうといったことを防止することができる。
【0018】
一部切り欠き環は、キャップ部材の円筒状胴部の周囲に嵌合することによって当該円筒状胴部に保持されるので、当該一部切り欠き環をキャップ部材にスライド可能に保持するための特別な部材は必要なく、したがって上記チェーン保持機構は部品点数が削減された、簡単なものとなり、コスト上昇を招かない。
【0019】
本発明のその他の特徴および利点は、図面を参照して以下に行う詳細な説明から、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るチェーン張設装置の側面図である。
【
図2】
図1に示すチェーン張設装置の正面図である。
【
図3】一部切り欠き環を取り外した状態でのキャップ部材の正面図である。
【
図5】チェーン収納状態での
図2のIV-IV線断面に相当する図である。
【
図6】
図4のVI-VI線断面に相当して作用を説明するための図であり、キャップ部材の開口部が開放している状態を示す。
【
図7】
図4のVI-VI線断面に相当して作用を説明するための図であり、キャップ部材の開口部を一部切り欠き環が横断している状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
図1~
図7は、本発明の一実施形態に係るチェーン保持機構Bおよびこれを備えたチェーン張設装置Aを示す。
【0023】
チェーン張設装置Aは、台座10と、ポール部材20と、チェーン保持機構Bとを備える。
【0024】
台座10は、ポール部材20を垂直状に保持するためのものであり、底面の直径に対して高さが低い円錐台状の形態を有しており、たとえばゴムで形成される。この台座10には、垂直方向に貫通する保持孔11が設けられており、ポール部材20は、その下部を台座10の保持孔11に挿入することにより、台座10と組み合わされる。
【0025】
ポール部材20は、たとえばステンレス製で所望長さを有する中空円筒パイプによって構成される。
【0026】
チェーン保持機構Bは、キャップ部材200を含んで構成されており、当該キャップ部材200は、その下部に一体的に接続された円筒状接続部201をポール部材の上端部に挿入することによってポール部材の上端部に接続されている(
図4)。キャップ部材および円筒状接続部は、たとえばPPなどの樹脂成型により形成される。
【0027】
キャップ部材200は、全体として下部が開口するとともに上部がドーム状の天井212で封鎖された中空状であり、下部の円筒状胴部210と、円筒状胴部210より上位において直径方向に対向する側面に形成された凹入外面部220を有しており、円筒状胴部210より上位の側面における凹入外面部220以外の領域は、円筒状胴部210と同一軸心および同一外径の円筒状外面部230となっている。
【0028】
キャップ部材200にはさらに、一方の円筒状外面部230から円筒状胴部210にかけて、後記するチェーン30を引き出すための開口部231が形成されている。この開口部231は縦方向に長く、下方ほど幅広の長円形を呈している。
【0029】
キャップ部材200にはさらに、凹入外面部220内に位置し、チェーン30の先端、あるいはチェーンリンク31を引っ掛けることができる掛け止め部221が設けられている。より具体的には、この掛け止め部221は、凹入外面部220の下部棚部222から上方に向けて一体に延び、上端部がキャップ部材200の半径方向内向きに傾斜する棒状を呈している。
【0030】
キャップ部材200の円筒状胴部210には、当該円筒状胴部210の周囲に嵌合することによって当該円筒状胴部210に保持されるとともに、嵌合状態において円筒状胴部210の周方向にスライド移動可能な一部切り欠き環300が付設される。本実施形態においてこの一部切り欠き環300は、円環の一部を切り欠き除去したような、上面視でC型リング状を呈しており、円筒状胴部210に形成した周方に延びる凹溝211にスライド可能に嵌合させられている。一部切り欠き環300は、このように凹溝211に拘束されながらキャップ部材200の円筒状胴部210に装着されるのであって、当該一部切り欠き環300をキャップ部材200に付設するための別途の部材は不要である。
【0031】
この凹溝211は、開口部231の下方に重なる上下位置に形成されており、したがって、一部切り欠き環300を凹溝211に沿って円筒状胴部210の周方向にスライドさせることにより、当該一部切り欠き環300の周方向端部320が開口部231を横断する状態(
図4、
図7)と、開口部231を開放する状態(
図2、
図6)とを選択することができる。なお、この一部切り欠き環300は、上記のように開口部231を横断する部分(一部切り欠き環300の周方向端部320)は、チェーン30のリンク31を通過できる太さとされる。
【0032】
本実施形態において、一部切り欠き環300には、作業者が指を掛けて当該一部切り欠き環300をスライド操作するための指掛け用膨出部310が形成されている。
【0033】
なお、一部切り欠き環300は、樹脂成型により成形することができ、ある程度のバネ性を有しているので、径を強制的に拡大させながら円筒状胴部210を抱くように嵌め、自身のもつバネ性をもって凹溝211に嵌合させるようにして、キャップ部材200に付属させることができる。
【0034】
ポール部材20の中空部には、チェーン30が収納される。チェーン30は、複数の長円状リンク31をつなげた公知の形態のものを用いることができ、プラスチック製または金属製である。このチェーン30は、どの程度の張設長さを必要とするかに応じて全体長さを決定する。本実施形態において、チェーン30の基端部は、ポール部材20の中空部の底部に設けた止め付け部21に連結され、先端部はキャップ部材200の開口部231から外部に引き出されている。そして、チェーン30の先端部は開口部231を通過できない幅をもつカラビナ32を有している。
【0035】
チェーン張設装置Aの不使用時には、チェーン30は、そのほとんどの部分をポール部材20ないしキャップ部材200の内部に収納されるが、先端のカラビナ32が開口部231に引っ掛かって当該開口部231の外部に臨むことになる(
図5)。チェーン30は、その構造上、積み重なるように折り畳むことができるので、相当な全体長さを有していても、ポール部材20ないしキャップ部材200の内部に収納することができる。
【0036】
次に、上記構成のチェーン張設装置の使用方法を説明する。
【0037】
一部切り欠き環300をキャップ部材200の開口部231を開放する状態に選択し(
図6)、チェーン30を所望長さ開口部231から引き出した上、上記一部切り欠き環300を、その先端320がチェーン30のリンク31を通過し、かつ上記開口部231を横断する状態にスライドさせる(
図7)。そして、チェーン30の先端(カラビナ32)をたとえば他のチェーン張設装置Aのキャップ部200の掛け止め部221に引っ掛ける。このようにして、2つのチェーン張設装置A間にチェーン30を張り渡すことができる。この状態において、チェーン30は、そのリンク31に上記一部切り欠き環300が通過することにより、長手方向へのずれ動きが確実に阻止されるので、人が触れるなどして張り渡し状態のチェーン30が揺れるなどしても、不用意にチェーン30が開口部231から余分に引き出されてたるむといった事態の発生を防ぐことができる。
【0038】
一部切り欠き環300は、なんらの抵抗なくスライドさせることができるし、実施形態ではとくに指掛け用膨出部310が形成されているので、上記したチェーン30の保持操作は簡単に行える。
【0039】
本発明の範囲は上記した実施形態に限定されることはなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本発明の範囲に含まれる。
【0040】
たとえば、一部切り欠き環300は、キャップ部材200の円筒状胴部210の周囲に付属して周方向にスライド移動できればよく、実施形態のように凹溝211に嵌合させて上下方向への変位を規制しつつ周方向へのスライドを許容するほか、一部切り欠き環300を上下に挟む位置に突起を設けることにより、一部切り欠き環300の上下方向への変位を規制するようにすることもできる。
【0041】
上記説明では、引き出したチェーン30の先端を他のチェーン張設装置Aの掛け止め部221に引っ掛けてチェーン30を張設することを前提として説明しているが、チェーン30の端部を掛け止める相手部材は問われない。たとえば、壁に設けたリング部にチェーン先端のカラビナを連結するようにしてもよい。
【0042】
本実施形態では、チェーン30の先端にカラビナ32を設けているが、キャップ部材200の開口部231を通過できないリング状部材を設けるだけでもよい。
【符号の説明】
【0043】
A チェーン張設装置
B チェーン保持機構
10 台座
11 保持孔
20 ポール部材
21 止め付け部
30 チェーン
31 リンク
32 カラビナ
200 キャップ部材
201 円筒状接続部
210 円筒状胴部
211 凹溝
212 天井
220 凹入外面部
221 掛け止め部
222 棚部
230 円筒状外面部
231 開口部
300 一部切欠き環
310 指掛け用膨出部
320 周方向端部