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  • 特許-殺ダニ用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】殺ダニ用組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/00 20060101AFI20220816BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20220816BHJP
   A01P 7/02 20060101ALI20220816BHJP
   A01N 63/20 20200101ALI20220816BHJP
【FI】
C12N1/00 P
C12N1/20 E
A01P7/02
A01N63/20
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018112461
(22)【出願日】2018-06-13
(65)【公開番号】P2019213486
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-06-11
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-1104
(73)【特許権者】
【識別番号】511141618
【氏名又は名称】株式会社APS
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】阿野 貴司
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 陽一郎
【審査官】天野 皓己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/141362(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/038575(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00 - 7/08
A01P 7/02
A01N 63/00 - 63/60
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コリモナス(Collimonas)属に属し、受託番号がNITE P-1104の菌株である細菌を含む殺ダニ用組成物。
【請求項2】
請求項1記載の殺ダニ用組成物をダニ及び/又はその生息地に対して施す工程を含む殺ダニ方法。
【請求項3】
請求項1記載の殺ダニ用組成物を用いて植物に防ダニ機能を付与させる防ダニ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、殺ダニ用組成物、殺ダニ方法及び防ダニ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物の生長に悪影響を与える害虫の駆除、防除に関する組成物や方法は種々検討、提案されている。特許文献1には、殺ダニ能を有するトリコデルマ(Trichoderma)属に属する真菌が提案されている。特許文献2には、白金粒子と白金粒子以外の金属粒子とを含む殺ダニ組成物や、その組成物を使用した防ダニ部材、防ダニ方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2014/083690号
【文献】国際公開第2017/082201号
【文献】国際公開第2013/038575号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献の他、トリコデルマ属以外の微生物による殺ダニに関する技術が求められている。
【0005】
ここで、特許文献3には、コリモナス(Collimonas)属に属する細菌を用いた植物病原菌の増殖抑制方法が提案されているが、このコリモナス属に属する細菌が殺ダニに寄与するか否かは確認されていない。
【0006】
そこで、この発明は、コリモナス属細菌の新たな用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、コリモナス(Collimonas)属に属し、受託番号がNITE P-1104の菌株である細菌を含む殺ダニ用組成物である。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、コリモナス属細菌の新たな用途を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】コリモナス属細菌の培養液を用いたインゲンの葉での殺ダニ試験の結果を表し、(a)試験開始後の結果、(b)24時間経過後の結果、(c)48時間経過後の結果、(d)72時間経過後の結果、(e)96時間経過後の結果である。
図2図1に関連して、ダニの生存割合の平均を表す図である。
図3図1に関連して、ダニの生存個体数に対する産卵数の割合を表す図である。
図4図1に関連して、ダニの合計個体数に対する合計産卵数の割合を表す図である。
図5】(a)コリモナス属細菌の培養液を用いたイチゴの葉での殺ダニ試験の結果を表す。(b)ダニの平均生存率とその標準偏差を表す。
図6図5に関連して、イチゴの葉の顕微鏡写真で、(a)~(c)はLeaf1、(d)~(f)はLeaf2の状態を表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態の一例を説明する。
【0011】
[殺ダニ組成物]
本実施形態の殺ダニ組成物は、コリモナス(Collimonas)属に属する細菌を含む組成物である。この組成物は、紛体、液体、等種々の形態とすることができる。紛体の形態としては、前記コリモナス属に属する細菌を鉱物微細粉に担持させて、これを公知の粉剤、水和剤へ製剤された形態を例示できる。また、液体の形態としては、前記コリモナス属に属する細菌の培養液が公知の液剤へ製剤された形態を例示できる。
【0012】
本実施形態で使用しているコリモナス属に属する細菌は、平成23年6月9日付けで独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に受託番号NITE P-1104として寄託されているコリモナス属細菌D-25株(以下、「D-25株」という)である。D-25株の菌学的性質を表1~表3に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0013】
[殺ダニ及び防ダニ試験]
D-25株による殺ダニ及び防ダニ試験を実施例1、実施例2に示す。
【実施例1】
【0014】
(コリモナス属細菌の準備)
D-25株を1/10TSBにて5日間振とう培養した。培養後、培養液の生菌数を3点スポットにより測定した。
【0015】
(ダニの準備)
試験ではハダニ(Tetranychus urticae)(住化テクノサービス(株)より購入)を使用した。ペーパータオルを敷いたプラスチック容器にインゲン(Phaseolus vulgaris)の葉を数枚敷き、インゲンの葉に前記ハダニを移した。その上にインゲンの葉を数枚置き、不織布で蓋をして所定の湿度に保ちながら前記ハダニを飼育した。
【0016】
水分を含んだペーパータオルを敷いたインセクトブリーディングディッシュを試験に使用する容器とした。試験は下記の2種類の処理区で行った。
【0017】
・処理区1.前処理区(pretreat)
試験に使用するインゲンの葉をD-25株の培養液に5秒間浸漬し、その後、前記インゲンの葉をインセクトブリーディングディッシュに移し、溶液を乾燥させた。乾燥後、ハダニを10匹以上/葉となるように前記インゲンの葉に移した。前記ハダニを移した後、24時間ごとに前記ハダニの生存数及び産卵数を測定した。
【0018】
・処理区2.浸漬区(dipped)
試験に使用するインゲンの葉にハダニを10匹以上/葉となるように移した。前記ハダニを移した後、前記インゲンの葉をD-25株の培養液に5秒間浸漬し、その後、前記インゲンの葉をインセクトブリーディングディッシュに移し、溶液を乾燥させた。乾燥後、24時間ごとに前記ハダニの生存数及び産卵数を測定した。
【0019】
また、インゲンの葉を蒸留水に浸漬し、その後、前記インゲンの葉をインセクトブリーディングディッシュに移し、ハダニを移した。これをコントロールとした。なお、インゲンの葉からハダニが逃げないように、水分を含んだ脱脂綿でインゲンの葉を囲んだ。
【0020】
上記処理区及びコントロールをそれぞれ3セット準備して試験を行った。その結果を図1図4に示す。
【0021】
(蒸留水の処理区について)
図1図4に示すように、コントロールとして準備した蒸留水の処理区では、96時間経過後においてもハダニの生存率が80%以上であった。産卵数については、96時間経過後合計258個で、全体個数で割ると6個/個体の産卵数が認められた。
【0022】
(前処理区について)
図1図4に示すように、前処理区では、48-72時間の間にハダニの生存率が大きく低下した。その後は横ばいとなり、96時間経過後では生存率が30%となった。産卵数については、96時間経過後合計175個で、全体個数で割ると4.5個/個体の産卵数であった。
ハダニの生存率は、蒸留水の処理区と比べて低い値であったが、産卵数に有意な差は表れなかった。
【0023】
(浸漬区について)
図1図4に示すように、浸漬区では、48-72時間の間にハダニの生存率が50%を大きく下回る結果となり、96時間経過後では、生存率は12%程度まで低下した。産卵数についても、96時間経過後48個で、全体個数で割ると1.1個/個体の産卵数となり、蒸留水の処理区、前処理区に比べて極めて有意な差が表れた。
【実施例2】
【0024】
実施例1で説明したD-25株の培養液を100倍に希釈した。イチゴ農家が所有するイチゴの葉をランダムに2枚選び、2cm角に切断したものをLeaf-1、Leaf-2として準備した。希釈したD-25株の培養液をそれぞれの葉に散布(2017年7月14日散布)してハダニの生存観察を行った。その結果を図5図6に示す。
【0025】
図5図6に示すように、散布後-48時間の間にハダニの8-9割が死んでいることが確認された。また、成体のハダニは存在せず、幼体のみが確認された。さらに、卵も多くがしぼんでおり、確認された健常な卵は数個であった。
【0026】
実施例1、2の実験結果から、コリモナス属細菌が従来公知の植物病原菌の防除能だけでなく、殺ダニ能及び防ダニ能を有することが確認された。
【0027】
したがって、コリモナス属細菌を含む組成物をダニ及び/又はその生息地に対して施せば、殺ダニ効果を得ることができる。また、コリモナス属細菌を含む組成物を用いれば、植物に防ダニ機能を付与させることができる。特に、コリモナス属細菌がD-25株であれば、上記の効果が顕著に表れる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6