(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】筐体装置
(51)【国際特許分類】
F16L 41/06 20060101AFI20220816BHJP
【FI】
F16L41/06
(21)【出願番号】P 2018197515
(22)【出願日】2018-10-19
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀川 剛
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-132969(JP,A)
【文献】特開2016-209728(JP,A)
【文献】特開2010-116929(JP,A)
【文献】特開2016-048080(JP,A)
【文献】特開2016-044713(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0254462(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管の外周面を密封状態で取り囲む分岐ケース体と、
前記分岐ケース体に設けられ、前記流体管の管径方向に突出した分岐管部と、
前記分岐ケース体の内周面と前記流体管の外周面との間で管周方向に沿って回動し、前記流体管の管壁に設けられた開口と前記分岐管部とを連絡する分岐流路を開閉可能に構成された弁体と、
第1線材と第2線材とを含む複数本の線材と、
前記分岐ケース体に設けられた
第1スプールと第2スプールとを含む操作部とを備え、
前記第1スプールから繰り出される前記第1線材は、前記分岐流路を閉じた状態において前記開口よりも下方に位置する前記弁体の周方向端部に接続されており、
前記第2スプールから繰り出される前記第2線材は、前記分岐流路を閉じた状態において前記開口よりも上方に位置する前記弁体の周方向端部に接続されており、
前記操作部による前記線材の巻き取り操作に応じて、前記弁体を回動自在に構成されて
おり、前記第1スプールを回転させて前記第1線材を巻き取ることにより、前記分岐流路を開く方向に前記弁体が回動し、前記第2スプールを回転させて前記第2線材を巻き取ることにより、前記分岐流路を閉じる方向に前記弁体が回動する筐体装置。
【請求項2】
前記操作部は、ウォームを有する操作軸と、前記ウォームに噛み合うウォームホイールとを備え、
前記ウォームホイールの回転支軸に前記第1スプール及び前記第2スプールが固着されており、
前記操作軸の一方向への回転操作により、前記第1線材が前記第1スプールに巻き取られるとともに、前記第2線材が前記第2スプールから繰り出され、
前記操作軸の他方向への回転操作により、前記第2線材が前記第2スプールに巻き取られるとともに、前記第1線材が前記第1スプールから繰り出される
請求項1に記載の筐体装置。
【請求項3】
前記弁体が、前記分岐流路を閉じるときの最終段階で前記ウォームホイールまたは前記ウォームホイールの回転支軸に固着されたギヤと噛み合う凹凸形状の噛合部を有する
請求項2に記載の筐体装置。
【請求項4】
前記第1スプールから繰り出された前記第1線材を折り返して前記弁体に向けて送り出す第1滑車、及び/または、前記第2スプールから繰り出された前記第2線材を折り返して前記弁体に向けて送り出す第2滑車を備える
請求項1~3いずれか1項に記載の筐体装置。
【請求項5】
管軸方向における前記分岐ケース体の中央部に前記操作部が配置され、
管軸方向における前記分岐ケース体の両端部の各々に、前記第1スプール及び前記第2スプールが配置されている
請求項1~4いずれか1項に記載の筐体装置。
【請求項6】
前記第1スプール及び前記第2スプールが、前記分岐ケース体とは別個の部材として構成された支持部材に支持されており、
前記弁体、前記第1線材及び第2線材
、前記第1スプール及び前記第2スプール、並びに前記支持部材を組み合わせてなる弁体ユニットに前記分岐ケース体を被せ、前記分岐ケース体の外部から固定具を前記支持部材に取り付けることにより、前記弁体ユニットが前記分岐ケース体に組み付けられる
請求項1~5いずれか1項に記載の筐体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管に装着される筐体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水道管などの流体管の管壁を不断流状態で穿孔し、それにより設けられた開口を介して分岐流路を形成する工法が知られている。かかる工法では、既設の流体管の外周面を密封状態で取り囲む分岐ケース体と、分岐流路を開閉する弁装置とが用いられる。特許文献1には、弁装置としての仕切弁を備えた分岐管接続装置が記載されている。この仕切弁は、分岐ケース体に接続される本体(弁箱)の内部に弁体を有し、その弁体の昇降動作に応じて分岐流路を開閉可能に構成されている。
【0003】
特許文献2では、分岐ケース体の内周面と流体管の外周面との間に弁体を配置し、その弁体を管周方向に回動させることで分岐流路を開閉する装置が提案されている。これによれば、分岐ケース体に接続される本体(弁箱)が省略されるため、流体管の穿孔に使用する穿孔機の小型化が可能となる。しかし、弁体の凹凸形状とギヤとを噛み合わせ、そのギヤで専ら駆動力を与える構造であることから、弁体を回動する際の抵抗が大きく、開閉時の作業性について改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-309474号公報
【文献】特開2014-20474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、分岐ケース体の内周面と流体管の外周面との間に配置される弁体を回動させて分岐流路を開閉するときの作業性を向上できる筐体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る筐体装置は、流体管の外周面を密封状態で取り囲む分岐ケース体と、前記分岐ケース体に設けられ、前記流体管の管径方向に突出した分岐管部と、前記分岐ケース体の内周面と前記流体管の外周面との間で管周方向に沿って回動し、前記流体管の管壁に設けられた開口と前記分岐管部とを連絡する分岐流路を開閉可能に構成された弁体と、前記弁体に接続された線材と、前記分岐ケース体に設けられた操作部とを備え、前記操作部による前記線材の巻き取り操作に応じて、前記弁体を回動自在に構成されている。かかる構成によれば、線材の巻き取り操作に応じて弁体を回動できるため、弁体を回動する際の抵抗を小さくして、分岐流路を開閉するときの作業性を向上できる。
【0007】
第1線材と第2線材とを含む複数本の前記線材が前記弁体に接続されており、前記第1線材を巻き取る第1スプールと、前記第2線材を巻き取る第2スプールとが前記分岐ケース体に設けられており、前記第1スプールを回転させて前記第1線材を巻き取ることにより、前記分岐流路を開く方向に前記弁体が回動し、前記第2スプールを回転させて前記第2線材を巻き取ることにより、前記分岐流路を閉じる方向に前記弁体が回動することが好ましい。かかる構成によれば、第1線材を第1スプールに巻き取ることで分岐流路を開き、第2線材を第2スプールに巻き取ることで分岐流路を閉じることができる。
【0008】
前記操作部は、ウォームを有する操作軸と、前記ウォームに噛み合うウォームホイールとを備え、前記ウォームホイールの回転支軸に前記第1スプール及び前記第2スプールが固着されており、前記操作軸の一方向への回転操作により、前記第1線材が前記第1スプールに巻き取られるとともに、前記第2線材が前記第2スプールから繰り出され、前記操作軸の他方向への回転操作により、前記第2線材が前記第2スプールに巻き取られるとともに、前記第1線材が前記第1スプールから繰り出されることが好ましい。かかる構成によれば、操作軸の回転操作によって分岐流路を自在に開閉できる。
【0009】
前記弁体が、前記分岐流路を閉じるときの最終段階で前記ウォームホイールまたは前記ウォームホイールの回転支軸に固着されたギヤと噛み合う凹凸形状の噛合部を有することが好ましい。かかる構成によれば、分岐流路を閉じる際に、弁体を最終位置に押し込むためのトルクを付与して、作業性を更に向上できる。また、分岐流路を開く際には、片面にのみ水圧が作用する弁体に始動トルクを付与できるため、やはり作業性が向上する。
【0010】
前記第1スプールから繰り出された前記第1線材を折り返して前記弁体に向けて送り出す第1滑車、及び/または、前記第2スプールから繰り出された前記第2線材を折り返して前記弁体に向けて送り出す第2滑車を備えることが好ましい。かかる構成によれば、第1線材及び/または第2線材に適度な張力を付与して、弁体をより円滑に回動できる。
【0011】
管軸方向における前記分岐ケース体の中央部に前記操作部が配置され、管軸方向における前記分岐ケース体の両端部の各々に、前記第1スプール及び前記第2スプールが配置されていることが好ましい。かかる構成によれば、分岐ケース体の両端部でバランスよく弁体を回動させることができる。
【0012】
前記第1スプール及び前記第2スプールが、前記分岐ケース体とは別個の部材として構成された支持部材に支持されており、前記弁体、前記第1線材及び第2線材、前記ウォームホイール、前記第1スプール及び前記第2スプール、並びに前記支持部材を組み合わせてなる弁体ユニットに前記分岐ケース体を被せ、前記分岐ケース体の外部から固定具を前記支持部材に取り付けることにより、前記弁体ユニットが前記分岐ケース体に組み付けられることが好ましい。このようにして弁体ユニットを分岐ケース体に組み付けておくことで、流体管に筐体装置を装着する際の作業性を格段に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図1の筐体装置から第2分割ケースを取り外した状態を示す斜視図
【
図3】
図1の筐体装置から第2分割ケースを取り外した状態を示す斜視図
【
図11】弁体ユニットを組み付けた分岐ケース体の第2分割ケースを示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、既設の水道管K(流体管の一例)に装着された筐体装置9を示す。
図2,3は、それぞれ筐体装置9から第2分割ケース12を取り外した状態を示す。
図2では分岐流路が閉じており、
図3では分岐流路が開いている。また、
図3では水道管Kを透過させて描いている。本明細書における「管周方向」、「管軸方向」及び「管径方向」は、特筆しない限り、それぞれ水道管Kにおける周方向、軸方向及び径方向を指す。水道管Kは管軸方向に沿って延在しており、その内部を流体である水が流れている。水道管Kはダクタイル鋳鉄で形成されている。
【0016】
図1~3に示すように、筐体装置9は、水道管Kの外周面を密封状態で取り囲む分岐ケース体1を備える。分岐ケース体1は、例えばダクタイル鋳鉄によって形成される。分岐ケース体1は、第1分割ケース11と第2分割ケース12とを含む複数の分割ケースで構成されている。本実施形態では、分岐ケース体1が、水道管Kの下側に配置される第1分割ケース11と、水道管Kの上側に配置される第2分割ケース12とで構成され、それらが環状に接合されて水道管Kの一部を包囲している。第1及び第2分割ケース11,12には、それぞれ分岐ケース体1と水道管Kとの隙間を密封するシール材13が装着されている(
図4参照)。
【0017】
分岐ケース体1は、上下二つ割り構造の割T字管で形成されており、管周方向の二箇所に分割部10,10を有する。各分割部10では、フランジ状に形成された一対の接合面14,14が互いに対向している。一対の接合面14,14は、それぞれ第1及び第2分割ケース11,12の周方向端部に設けられている。各分割部10には、ボルトとナットで構成された締結具15が装着されている。各接合面14には、締結具15のボルトを挿通するためのボルト孔が設けられている。締結具15で分割部10を締め付けることにより、第1分割ケース11と第2分割ケース12とが互いに接合される。
【0018】
筐体装置9は、分岐ケース体1に設けられ、水道管Kの管径方向に突出した分岐管部1bを備える。本実施形態では、分岐管部1bが接続管2により構成されている。接続管2は、第1分割ケース11と第2分割ケース12との間に端部2aを挟み込んで分岐ケース体1に接続される。水道管Kの管壁には開口20が設けられており(
図4参照)、その開口20と分岐管部1b(即ち、接続管2)とを連絡する分岐流路が、水道管Kの管軸方向に沿った本流路から分岐して形成されている。分岐ケース体1から露出した接続管2の端部2bには、図示しない蓋体または分岐管が接続される。端部2bは、フランジを有する受口として形成されているが、これに限定されない。
【0019】
既述のように、本実施形態の筐体装置9では、分岐ケース体1が上下二つ割り構造であり、その分割部10に接続管2の端部2aが挟み込まれる。かかる構成によれば、締結具15のボルトが鉛直に向けられるため、地震などによる外力が接続管2に作用しても、分割部10の隙間(第1分割ケース11と第2分割ケース12との間)が開きにくい。これに対し、分岐ケース体が左右二つ割り構造であって、締結具のボルトが水平に向けられている場合は、地震などによる外力が接続管に作用したときにボルトが伸長してしまい、分割部の隙間が開きやすい傾向にある。
【0020】
図4は、接続管2の管軸に沿って切断した筐体装置9を概略的に示す縦断面図であり、
図1のA-A矢視断面図に相当する。
図2~4に示すように、筐体装置9は、弁体3を備えている。弁体3は、分岐ケース体1の内周面と水道管Kの外周面との間で管周方向に沿って回動し、開口20と分岐管部1bとを連絡する分岐流路を開閉可能に構成されている。弁体3は、管周方向に沿って円弧状に湾曲した板状部材で形成されている。
図2及び
図4(A)では、接続管2の端部2aが弁体3で閉鎖され、分岐流路が閉じられている。この弁体3を回動させて、
図3及び
図4(B)のように端部2aを開放することで、分岐流路が開かれる。
【0021】
弁体3は、ダクタイル鋳鉄で形成されているが、鋼や樹脂など他の材料で形成されていてもよい。弁体3は、開口20を閉鎖できるよう、管周方向及び管軸方向において開口20よりも大きく形成されている。弁体3の外周面にはシール材31が貼り付けられている。シール材31は、分岐流路を閉じる際に接続管2の端面に当接する。シール材31は、環状に形成されているが、弁体3の外周面と接続管2の端面との間を密封しうるものであれば、これに限られない。弁体3の外周面に代えて、接続管2の端面にシール材31を取り付けることも可能である。
【0022】
この筐体装置9は、弁体3に接続された線材4と、分岐ケース体1に設けられた操作部5とを備える。線材4には、アラミド繊維などの有機繊維で形成された紐が好ましく用いられるが、これに限られず、例えばステンレス鋼材などの金属製ワイヤでもよい。筐体装置9は、操作部5による線材4の巻き取り操作に応じて、弁体3を回動自在に構成されている。このため、前掲の特許文献2に記載されているような、弁体の凹凸形状と噛み合うギヤで専ら駆動力を与える構造と比べて、弁体3を回動する際の抵抗が小さく、分岐流路を開閉するときの作業性が向上する。
【0023】
図5は、弁体3と後述する駆動ユニット81とからなる弁体ユニット8を示す斜視図である。
図6は、その弁体ユニット8の管軸方向における端部を示す平面図である。
図5,6のように、弁体3には、第1線材41と第2線材42とを含む複数本の線材4が接続されている。また、分岐ケース体1(
図5,6では図示せず)には、第1線材41を巻き取る第1スプール61と、第2線材42を巻き取る第2スプール62とが設けられている。第1及び第2スプール61,62は、分岐ケース体1に支持部材82を介して取り付けられる。本実施形態では、第1スプール61と第2スプール62とが仕切り部60を介して一体的に設けられているが、これに限られない。
【0024】
図7は、第1線材41の経路に沿った筐体装置9の縦断面図である。
図8は、第2線材42の経路に沿った筐体装置9の縦断面図であり、
図7とは逆方向から見ている。
図7(A)及び
図8(A)では、分岐流路が開かれた状態にあり、
図7(B)及び
図8(B)では、分岐流路が閉じられた状態にある。
図7(A)のように、第1スプール61を回転させて第1線材41を巻き取ることにより、分岐流路を開く方向に弁体3が回動する。また、
図8(A)のように、第2スプール62を回転させて第2線材を巻き取ることにより、分岐流路を閉じる方向に弁体3が回動する。
【0025】
操作部5は、ウォーム51を有する操作軸50と、ウォーム51に噛み合うウォームホイール52とを備える。ウォームホイール52は、水平方向(より具体的には、水道管Kの管軸方向)に向けられた回転支軸52aを有し、その回転支軸52aに第1スプール61及び第2スプール62が固着されている。本実施形態では、操作軸50の一方向への回転操作により、第1線材41が第1スプール61に巻き取られるとともに、第2線材42が第2スプール62から繰り出される。また、操作軸50の他方向への回転操作により、第2線材42が第2スプール62に巻き取られるとともに、第1線材41が第1スプール61から繰り出される。
【0026】
つまり、操作軸50を一方向(例えば、平面視で時計回り方向)に回転させると、
図7の時計回りに第1スプール61が回転し、第1線材41が第1スプール61に巻き取られ、弁体3が引っ張り上げられる。その結果、
図7(A)のように、弁体3が管周方向一方側(R1方向)に回動し、接続管2の端部2aが開放されて分岐流路が開く。それと同時に、
図8の反時計回り(
図7では時計回り)に第2スプール62が回転し、弁体3の管周方向一方側(R1方向)への回動と相俟って、
図8(A)のように第2スプール62から第2線材42が繰り出される。
【0027】
また、操作軸50を他方向(例えば、平面視で反時計回り方向)に回転させると、
図8の時計回りに第2スプール62が回転し、第2線材42が第2スプール62に巻き取られ、弁体3が引っ張り上げられる。その結果、
図8(B)のように、弁体3が管周方向他方側(R2方向)に回動し、接続管2の端部2aが閉鎖されて分岐流路が閉じる。それと同時に、
図7の反時計回り(
図8では時計回り)に第1スプール61が回転し、弁体3の管周方向他方側(R2方向)への回動と相俟って、
図7(B)のように第1スプール61から第1線材41が繰り出される。
【0028】
第1スプール61から繰り出される第1線材41の先端は、弁体3の周方向端部E1に接続されている。周方向端部E1は、分岐流路を閉じた状態において開口20よりも下方に位置する。第2スプール62から繰り出される第2線材42の先端は、弁体3の周方向端部E2に接続されている。周方向端部E2は、分岐流路を閉じた状態において開口20よりも上方に位置する。本実施形態では、周方向端部E1,E2の各々に車輪32,32が設けられているので、水道管Kの外周面に対する摩擦抵抗を減らして弁体3を円滑に回動できる。第1及び第2線材41,42の先端は、車輪32に対して相対回転できるよう、車輪32の周囲で緩く輪状に結ばれている。
【0029】
図5,6のように、弁体3の外周面には、第1及び第2線材41,42が配置される周方向溝33,34が形成されている。第1スプール61から繰り出された第1線材41は、周方向溝33の内部で管周方向他方側(R2方向)に延在し、弁体3の周方向端部E1(の車輪32)に至る。第2スプール62から繰り出された第2線材42は、周方向溝34の内部で管周方向一方側(R1方向)に延在し、弁体3の周方向端部E2(の車輪32)に至る。このような一対の周方向溝33,34で線材4を案内することにより、第1及び第2線材41,42が多少緩んでもシール材31に干渉したり、互いに絡み合ったりすることがない。
【0030】
図5のように、本実施形態では、ウォームホイール52の回転支軸52aにギヤ53が固着されている。ギヤ53は、平歯車で構成されている。ギヤ53は、管軸方向における弁体3の中央部に配置されている。
図9に示すように、弁体3は、ギヤ53と噛み合う凹凸形状の噛合部35を有する。噛合部35は、弁体3の周方向端部E2近傍に局所的に設けられている。噛合部35は、複数の山を管周方向に並べたギヤ形状を有するが、これに限られず、単一の山からなる単純なリブ形状でもよい。噛合部35は、分岐流路を閉じた状態において開口20(またはシール材31)よりも上方に位置する。
【0031】
噛合部35は、弁体3が回動する過程で全般的にギヤ53と噛み合うものではなく、分岐流路を閉じるときの最終段階で、つまりは接続管2の端部2aが閉鎖される間際においてギヤ53と噛み合う。かかる構成によれば、分岐流路を閉じる際に、弁体3を最終位置に押し込むためのトルクを付与して、作業性を更に向上できる。また、分岐流路を開く際には、片面側から水圧が作用する弁体3に始動トルクを付与できるため、やはり作業性が向上する。このように、噛合部35は、止水トルクや始動トルクを得るための補助として用いられる。ギヤ53の代わりに、ウォームホイール52を噛合部35と噛み合わせる構成にしてもよい。
【0032】
本実施形態では、弁体3の外周面に突起36が設けられている。接続管2の端面には、切欠き状の貫通孔21が形成されている。分岐流路を閉じる際に弁体3を最終位置(最終止水位置)に配置することで、突起36が嵌まって貫通孔21が密封される。かかる構成によれば、接続管2の端部2aが閉鎖される直前まで貫通孔21が開いており、弁体3の片面側と他面側との間で同圧状態が保たれるため、弁体3が円滑に回動する。また、分岐流路を開く場面では、片圧になるが始動トルクを付与して弁体3を少し回動させると、貫通孔21を通じて圧力が開放されるため、弁体3が円滑に回動する。反対側に設けられている突起37(
図5参照)も、これと同様の機能を有する。
【0033】
本実施形態では、管軸方向における分岐ケース体1の中央部に操作部5が配置され、管軸方向における分岐ケース体1の両端部の各々に、第1スプール61及び第2スプール62が配置されている。即ち、
図6で示していない反対側の端部にも、第1及び第2スプール61,62が設けられている。これにより、分岐ケース体1の両端部において弁体3をバランスよく引っ張り上げて円滑に回動させることができる。第1及び第2スプール61,62、並びに、それらに巻き取られる第1及び第2線材41,42は、シール材31に対して管軸方向に重ならない位置に配置されている。
【0034】
図10のように、第1スプール61から繰り出された第1線材41を折り返して弁体3に向けて送り出す第1滑車71、及び/または、第2スプール62から繰り出された第2線材42を折り返して弁体3に向けて送り出す第2滑車72を備えることが好ましい。これにより、第1及び第2線材41,42に適度な張力を付与して、弁体3をより円滑に回動できる。かかる場合においても、第1及び第2線材41,42の動線は、平面視において管周方向に沿った直線状になる。第1及び第2滑車71,72は、分岐ケース体1に設けられ、本実施形態では後述する支持部材82で支持されている。第1及び第2滑車71,72には、車輪32と同じ部品を使用可能である。
【0035】
図10のように、第1及び第2滑車71,72の軸中心は、それぞれ第1及び第2スプール61,62の軸中心(即ち、回転支軸52aの中心)よりも下方に配置されている。また、第1滑車71の軸中心は第1スプール61の軸中心よりも管周方向一方側(R1方向)に配置され、第2滑車72の軸中心は第2スプール62の軸中心よりも管周方向他方側(R2方向)に配置されている。第1スプール61から繰り出された第1線材41は、管周方向一方側(R1方向)に向かって垂れ下がり、第1滑車71で折り返されて管周方向他方側(R2方向)に延びている。第2スプール62から繰り出された第2線材42は、管周方向他方側(R2方向)に向かって垂れ下がり、第2滑車72で折り返されて管周方向一方側(R1方向)に延びている。
【0036】
図4,9のように、分岐ケース体1(の第2分割ケース12)には貫通孔16が設けられており、その貫通孔16を介して噛合部35にギヤ53が噛合する。スプールから繰り出される線材4についても、これと同様の貫通孔を介して分岐ケース体1の内部に配置することが考えられるものの、その場合は、分岐ケース体1を水道管Kに被せながら線材4を弁体3に接続する必要があり、分岐ケース体1や弁体3が重量物であることから、筐体装置9の装着作業が非常に煩雑になる。そこで、本実施形態では、
図5に示す弁体ユニット8を予め分岐ケース体1に組み付け可能とし、それによって作業性の向上を図っている。
【0037】
図5のように、弁体ユニット8は、弁体3と駆動ユニット81とにより構成される。駆動ユニット81は、第1及び第2線材41,42、ウォームホイール52、ウォームホイール52の回転支軸52aに固着された第1及び第2スプール61,62、並びに支持部材82を組み合わせてなる。本実施形態では、更にギヤ53も駆動ユニット81に含まれており、場合によっては第1及び第2滑車71,72も含まれる。第1及び第2スプール61,62は、分岐ケース体1とは別個の部材として構成された支持部材82に支持されている。支持部材82は、第1及び第2スプール61,62を収容可能な無底のケース体で形成されている。
【0038】
弁体ユニット8は、例えば工場などにおいて、予め組み付けておくことが可能である。その際、分岐ケース体1を扱う必要がないため、第1及び第2線材41,42を弁体3に接続したり、それらの長さを調整したりする作業は簡単に行われる。そして、
図11のように、弁体3と、駆動ユニット81(即ち、第1及び第2線材41,42、ウォームホイール52、第1及び第2スプール61,62、並びに支持部材82)とを組み合わせてなる弁体ユニット8に分岐ケース体1(の第2分割ケース12)を被せ、その分岐ケース体1の外部から固定具であるボルト83を支持部材82に取り付けることにより、弁体ユニット8が分岐ケース体1に組み付けられる。
【0039】
分岐ケース体1は、ウォームホイール52やギヤ53が配置される貫通孔16と、回転支軸52aに被さる支軸カバー部17と、支持部材82に被さるスプールカバー部18とを有する。貫通孔16には、固定具であるボルト54を介してカバー55が水密に装着される(
図1参照)。このカバー55から露出した操作軸50を操作することで、既述のように弁体3を回動できる。ボルト83は、スプールカバー部18の貫通孔を通じて、支持部材82の被取付部82h(雌ねじ部)に水密に螺合される。弁体ユニット8が分岐ケース体1に組み付けられることにより、筐体装置9を水道管Kに装着する際の作業性を格段に向上できる。
【0040】
不断水工法によって水道管Kを穿孔する工事について、簡単に説明する。まず、既設の水道管Kの一部を取り囲むようにして、第1分割ケース11と第2分割ケース12とを環状に連ね、水道管Kに分岐ケース体1を外嵌する。その際、分岐ケース体1の分割部10を締結具15で締め付け、接続管2の端部2aを挟み込む。また、分岐ケース体1に弁体ユニット8を組み付けておくことにより、分岐ケース体1を組み立てた時点で、弁体3と駆動ユニット81とが適切に組み合わされた状態で分岐ケース体1の内部に配置される。
【0041】
次に、ホールソーを備えた穿孔機(図示せず)を接続管2に接続する。そして、接続管2を介してホールソーを分岐ケース体1の内部に挿入し、水道管Kの管壁を不断水状態で穿孔して開口20を設ける。尚、弁体3がホールソーと干渉しないよう、操作部5を操作して弁体3を接続管2の端部2aから遠ざけておくことは、言うまでもない。穿孔が完了したら、切片とともにホールソーを引き戻し、操作部5により弁体3を回動させて接続管2の端部2aを閉鎖する。その後、接続管2からホールソーを撤去し、必要に応じて蓋体や分岐管を接続管2に接続する。
【0042】
上記のような工事により、開口20と接続管2とを連絡する分岐流路が形成される。分岐流路は、弁体3の回動操作に応じて通水状態と止水状態とに切り替えられる。このように、弁体3は、不断水分岐工法における従来の作業用仕切弁の代わりに使用できる。分岐流路を利用して本流路を止水する場合は、接続管2からホールソーを撤去した後に挿入機(図示せず)を接続し、開口20を通じて水道管Kの内部に、ゴムライニング部が圧縮変形することで管内に密着して水道管Kを止水可能な弁体を設置する。止水後に弁体3を撤去し、それを他の工事で再使用することも可能である。このように、弁体3は、不断水インサート工法における従来の作業弁の代わりに使用できる。
【0043】
前述の実施形態では、弁体3と接続管2の端部2aとの間をシール材31で密封する例を示したが、これに限定されず、例えば、弁体3と水道管Kの開口20との間を密封する構造でもよい。その場合、弁体3の内周面にシール材を貼り付けておき、そのシール材によって弁体3の内周面と水道管Kの外周面との間を密封することが考えられる。かかる構成によれば、分岐流路を閉じた状態では弁体3の周囲に水が行き渡らないため、漏水の懸念が軽減される。
【0044】
前述の実施形態では、回転支軸52aに固着されたギヤ53を弁体3の噛合部35に噛み合わせ、それにより弁体3を最終止水位置に押し込むための止水トルクを得る例を示したが、これに限られない。また、これに代えて、または加えて、
図12のようなネジコマ56を利用したトルク付与機構を採用してもよい。
図12の例において、ネジコマ56は、ナットで構成されており、ウォーム51から下方に向けて延出した雄ねじ部材57に螺合されている。分岐ケース体1には、ネジコマ56の周囲を取り囲む筒状のコマガイド(図示せず)が設けられているため、雄ねじ部材57が回転してもネジコマ56は共回りしない。
【0045】
ネジコマ56は、操作軸50の回転操作に応じて昇降するように構成されている。より具体的に、ネジコマ56は、分岐流路を開く方向に操作軸50を回転すると上昇し、分岐流路を閉じる方向に操作軸50を回転すると下降する。そして、分岐流路を閉じるときの最終段階では、ネジコマ56が弁体3の外周面に当接する。ネジコマ56によって弁体3を下方に押圧することで、弁体3を最終位置に押し込むためのトルクが得られる。トルクが効率的に得られるよう、弁体3の外周面には、ネジコマ56と面接触する突起38が形成されている。
【0046】
前述の実施形態では、管軸方向における分岐ケース体1の両端部の各々に、第1及び第2スプール61,62が配置されている例を示したが、これに限られない。したがって、例えば、管軸方向における分岐ケース体の片端部または中央部に、第1及び第2スプールが配置された構成でもよい。また、第1及び第2スプールをウォームギヤに隣接させたり、その第1スプールと第2スプールとの間にウォームギヤを配置したりすることも可能であり、かかる場合には、それらを一括に分岐ケース体の貫通孔に配置することもできる。
【0047】
図13に示す変形例では、管軸方向に張り出した端部ガイド39が弁体3に設けられている。
図13において、(A)は、管軸方向における弁体3の端部(つまりは端部ガイド39)を示す管周方向視の断面図である。(B)は、その弁体3の端部ガイド39を示す管軸方向視の断面図であり、(A)のB-B矢視断面図に相当する。(C)及び(D)は、それぞれ最終止水位置にある弁体3の端部ガイド39を示す管軸方向視の断面図である。(C)は分割部10の周辺を示し、(D)は弁体3の周方向端部E1の周辺を示している。
【0048】
図13(A)のように、分岐ケース体1の内面には、その端部ガイド39に管径方向外側から対向する外側壁面22と、同じく管径方向内側から対向する内側壁面23とが形成されている。外側壁面22には、
図13(B)のように弁体3の端部に向けて隆起した突部24が設けられており、弁体3を管径方向外側からガイドできるように構成されている。突部24は、全体的に丸みを帯びた形状を有し、例えば半球状に形成される。突部24は、管周方向の複数箇所に配置されている。
【0049】
図13(C)のように、分岐ケース体1の分割部10では、管周方向他方側(R2方向)に向かって管径方向外側へ傾斜する傾斜面25が内側壁面23に形成されている。また、端部ガイド39には、その傾斜面25と同じ方向に傾斜し、互いに面接触しうる傾斜面39aが形成されている。これにより、分岐流路を閉じる際に、弁体3を分岐管部1b(接続管2)に向けて案内できる。
図13(D)のように、分岐ケース体1には、弁体3の周方向端部E1に対して管周方向から当接しうる位置決め部26が形成されている。分岐流路を閉じる際には、この位置決め部26に弁体3が当接するまで、管周方向他方側(R2方向)に弁体3を回動させればよい。
【0050】
前述の実施形態では、ダクタイル鋳鉄管としての水道管Kに筐体装置を装着する例を示したが、これに限られず、鋼管や塩ビ管など他の材料で形成された流体管を対象にすることもできる。
【0051】
本発明に係る筐体装置は、水道管に適用できるものであるが、これに限られず、水以外の各種の液体、気体などの流体に用いる流体管に幅広く適用できる。
【0052】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。また、上述した複数の変形例については、特に制約なく組み合わせて採用することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 分岐ケース体
2 接続管
3 弁体
4 線材
5 操作部
8 弁体ユニット
9 筐体装置
20 開口
35 噛合部
41 第1線材
42 第2線材
50 操作軸
51 ウォーム
52 ウォームホイール
52a 回転支軸
53 ギヤ
61 第1スプール
62 第2スプール
71 第1滑車
72 第2滑車
81 駆動ユニット
82 支持部材
K 水道管(流体管の一例)