IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ルクセンブルク インスティトゥート オブ サイエンス アンド テクノロジー(リスト)の特許一覧

特許7123397質量分析計または他の荷電粒子装置で用いる荷電二次粒子抽出システム
<>
  • 特許-質量分析計または他の荷電粒子装置で用いる荷電二次粒子抽出システム 図1
  • 特許-質量分析計または他の荷電粒子装置で用いる荷電二次粒子抽出システム 図2
  • 特許-質量分析計または他の荷電粒子装置で用いる荷電二次粒子抽出システム 図3
  • 特許-質量分析計または他の荷電粒子装置で用いる荷電二次粒子抽出システム 図4
  • 特許-質量分析計または他の荷電粒子装置で用いる荷電二次粒子抽出システム 図5
  • 特許-質量分析計または他の荷電粒子装置で用いる荷電二次粒子抽出システム 図6
  • 特許-質量分析計または他の荷電粒子装置で用いる荷電二次粒子抽出システム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】質量分析計または他の荷電粒子装置で用いる荷電二次粒子抽出システム
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/22 20060101AFI20220816BHJP
   H01J 37/05 20060101ALI20220816BHJP
   H01J 49/06 20060101ALI20220816BHJP
   H01J 37/252 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
H01J49/22
H01J37/05
H01J49/06 100
H01J37/252
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2018537627
(86)(22)【出願日】2017-02-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-04
(86)【国際出願番号】 EP2017053658
(87)【国際公開番号】W WO2017140869
(87)【国際公開日】2017-08-24
【審査請求日】2020-02-17
(31)【優先権主張番号】LU92981
(32)【優先日】2016-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(73)【特許権者】
【識別番号】518008275
【氏名又は名称】ルクセンブルク インスティトゥート オブ サイエンス アンド テクノロジー(リスト)
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ドーセット,デビッド
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表平01-503421(JP,A)
【文献】特開平04-237941(JP,A)
【文献】特表2016-503226(JP,A)
【文献】特開2003-234081(JP,A)
【文献】特表2019-505965(JP,A)
【文献】米国特許第05128543(US,A)
【文献】特表2012-517083(JP,A)
【文献】M.Kienle et al.,An off-axis multi-channel analyzer for secondary electrons,Nuclear Instruments & Methods in Physics Research Section A,Elsevier B.V.,2004年,519,325-330
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49
H01J 37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線偏向システム(18;118;218)であり、
荷電粒子線偏向システム(18;118;218)は、
‐内部球体セクタ(42;142;242)と、
‐外部球体セクタ(44;144;244)と、
‐荷電粒子線(16;116;216)の入口(75)と、
‐偏向荷電粒子線(16;116;216)がシステム(18;118;218)を離れるための出口軸(24;124;224)がある出口通路(47)と、
‐前記内部球体セクタ(42;142;242)と前記外部球体セクタ(44;144;244)との間に形成されて入口(75)および出口通路(47)に連結された偏向ギャップ(46;146;246)と、
‐偏向ギャップ(46;146;246)に対向する出口開口部(56)がある出口壁電極であり、出口壁電位を備える前記出口壁電極(54;154;254)と、を備え、
前記内部球体セクタ(42;142;242)及び前記外部球体セクタ(44;144;244)は、所与の角度から偏向ギャップ(46;146;146)に侵入する荷電粒子線(16;116;216)を偏向するために偏向電位に対してバイアスがかかり、
前記システム(18;118;218)はさらに、
プレート状で出口貫通孔(66;166;266)を備える中間電極(64;164;264)であり、前記中間電極は、偏向ギャップ(46;146;246)と出口壁電極(54;154;254)との間に配置された中間電極と、
各々が、前記内部球体セクタ(42;142;242)及び前記外部球体セクタ(44;144;244)に対向する2つのサイドプレート(68;168)であり、前記サイドプレート(68;168)は出口軸(24;124;224)に直角である静電界を生成するためにバイアスがかかる2つのサイドプレートとを備え
前記内部球体セクタ(42;142)及び前記外部球体セクタ(44;144)が内部に配置される格納部(38;138;238)を備えるシステムであり、前記格納部(38;138)に前記出口壁電極(54;154)が形成される、荷電粒子線偏向システム(18;118;218)。
【請求項2】
サイドプレート(68;168)は前記内部球体セクタ(42;142;242)及び前記外部球体セクタ(44;144;244)の平均電位と比較して同程度に高い電位にバイアスがかかる、請求項1に記載のシステム(18;118;218)。
【請求項3】
前記内部球体セクタ(42;142)及び前記外部球体セクタ(44;144)の各々はサイドプレート(68;168)に対向する側面を示し、各側面は主にまたは完全に2つのうち1つのサイドプレート(68;168)によって覆われる請求項1または2に記載のシステム(18;118;218)。
【請求項4】
前記内部球体セクタ(42;142;242)及び前記外部球体セクタ(44;144;244)は、偏向ギャップ(46;146;246)の荷電粒子線(16;116;216)のエネルギーを減少させるために、減電圧でバイアスがかかる請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム(18;118;218)。
【請求項5】
中間電極(64)は第1プレートであり、システムはさらに出口軸(24)の中央部にある貫通孔(74)がある第2プレート(72)を備え、前記第2プレート(72)は第1プレート(64)に対向する請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム(18)。
【請求項6】
格納部(38;138)は前記出口壁電位に対してバイアスがかけられる請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム(18;118)。
【請求項7】
中間電極(64)は中央部の出口貫通孔(66)に対応した円盤電極である請求項1~のいずれか一項に記載のシステム(18;118)。
【請求項8】
中間電極(164)は四辺形である請求項1~のいずれか一項に記載のシステム(118)。
【請求項9】
前記内部球体セクタ(42;142)及び前記外部球体セクタ(44;144)が内部に配置される格納部(38;138;238)を備え、
前記格納部(38;138)は、前記内部球体セクタ(42;142)及び前記外部球体セクタ(44;144)を囲み、接地電位でありおよび/または静電界の空間が前記内部球体セクタ(42;142)及び前記外部球体セクタ(44;144)を前記格納部から分離する請求項1~のいずれか一項に記載のシステム(18;118)。
【請求項10】
前記内部球体セクタ(42;142)及び前記外部球体セクタ(44;144)が内部に配置される格納部(38;138;238)を備え、
前記格納部(38;138)は、分析される試料(14)に対向するようにした下方面(48;148)を備え、下方面(48;148)は下方開口部(53)を備え、および/または前記格納部(38;138)は、少なくとも1つの上部開口部(52;152)を有する上方面(50;150)を備え、前記上部開口部(52;152)及び前記下方開口部(53)は同軸である請求項1~のいずれか一項に記載のシステム(18;118)。
【請求項11】
前記外部球体セクタ(44;144)は下部開口部(154)および上部開口部(52、152)と同軸に配置された少なくとも1つのチャネル(62)を備える請求項10に記載のシステム(18;118)。
【請求項13】
それぞれの出口貫通孔(66;166;174;266)の高さは実質的には偏向ギャップ(64;164;264)のラジアル高度RHと等しい請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム(18;118;218)。
【請求項14】
それぞれの出口貫通孔(66;166;174;266)は円形であり、実質的には偏向ギャップ(64;164;264)のラジアル高度RHと等しい直径を備える請求項1~13のいずれか一項に記載のシステム(18;118;218)。
【請求項15】
中間電極(64;164;264)の厚さは対応する出口貫通孔(66;166;266)の高さ以下である請求項1~14のいずれか一項に記載のシステム(18;118;218)。
【請求項16】
偏向ギャップ(46;146;246)は60°~120°の角度で曲線を形成する請求項1~15のいずれか一項に記載のシステム(18;118;218)。
【請求項17】
前記内部球体セクタ(42;142;242)セクタおよび/または前記外部球体セクタ(44;144;244)は凡そ10mmの中間半径であるシステムを備える請求項1~16のいずれか一項に記載のシステム(18;118;218)。
【請求項18】
中間電極(64;164;264)は、前記荷電粒子線(16;116;216)が出口軸(24;124;224)に対してに平行になるよう偏向ギャップ(46;146)内で荷電粒子線(16;116;216)が偏向するために中間電位にバイアスがかかる請求項1~17のいずれか一項に記載のシステム(18;118;218)。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の荷電粒子線偏向システム(18;118;218)を備えることを特徴とする荷電粒子線装置(2)。
【請求項20】
二次イオンを分析する質量分析装器である請求項19に記載の装置(2)。
【請求項21】
出口軸(24;124;224)に沿って、かつ荷電粒子線偏向システム(18;118;218)から加速台、第1レンズ、デフレクタシステム、第2レンズ、またはそれらの組み合わせを備える請求項19または20に記載の装置(2)。
【請求項22】
磁気セクタ(8)と検出システム(10)をさらに備える請求項19~21のいずれか1項に記載の装置(2)。
【請求項23】
試料(14)から二次荷電粒子を生成する一次粒子源(6)を備える装置であり、前記一次粒子はイオンであり、二次荷電粒子はイオンである請求項19~22のいずれか一項に記載の装置(2)。
【請求項24】
試料(14)から二次荷電粒子を生成する一次粒子源(6)を備え、前記一次粒子はイオンであり、二次荷電粒子は電子である請求項19~22のいずれか一項に記載の装置(2)。
【請求項25】
試料(14)から二次荷電粒子を生成する一次粒子源(6)を備え、前記一次粒子は電子であり、二次荷電粒子は電子である請求項19~22のいずれか一項に記載の装置(2)。
【請求項26】
試料(14)から二次荷電粒子を生成する一次粒子源を備え、前記一次粒子(6)は電子であり、二次荷電粒子はイオンである請求項19~22のいずれか一項に記載の装置(2)。
【請求項27】
二次荷電粒子を形成する一次ビーム(12)源を備え、前記一次ビーム(12)は光子ビーム、X線ビームまたは高速中性粒子ビームである請求項19~22のいずれか一項に記載の装置(2)。
【請求項28】
前記内部球体セクタ(42;142)及び前記外部球体セクタ(44;144)が内部に配置される格納部(38;138;238)、及び、前記格納部(38;138;238)より下の試料領域(36;136;236)をさらに備え、一次荷電粒子源(6)は格納部(38;138;238)より上にあり、装置は一次荷電粒子が格納部(38;138;238)を通って試料領域(36;136;236)に届けるように配置される請求項23~27のいずれか一項に記載の装置(2)。
【請求項29】
請求項1~18のいずれか一項に記載の荷電粒子線偏向システム(18;118;218)を備えるガス注入システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷電粒子偏向装置に関する。特に、本発明は表面から放出された荷電粒子の抽出システムに関する。より詳細には、本発明は荷電一次粒子ビームにより射突された表面から放出された荷電二次粒子の抽出システムに関する。さらに詳細には、本発明は質量分析計内において荷電一次粒子ビームにより射突された表面から放出された二次イオン抽出システムに関する。本発明はまた質量分析装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
二次イオン質量分析計(SIMSと略される)は広く普及した表面および少量の分析技術である。この技術は感度が非常に高く、質量の解析機能が高く、またより深くまで解析が可能という点で非常に高性能である。それは試料の元素組成、分子組成および同位体組成を同定するために用いられる。SIMSはイオン(一次イオン)収束ビームを用いて材料をスパッタリングして材料自体の特徴的なローカライズされたイオン放出を作り出す。SIMSで用いられる一般的なイオンビームは反応性一次ビーム(Cs、O 、O)であり、それぞれマイナス二次イオンおよびプラス二次イオンならびにクラスターイオンビーム(Ar 、C60 、Bi 、Au )の放出を増加させる。一方、質量数がより小さいBiとAuクラスターは主に画像形成アプリケーションに用いられ、C60および質量数が大きいArクラスターは有機体の深度プロファイリングとして実証されている。試料から放出された二次イオンは質量分析計によって分析される。
【0003】
二次イオン質量分析装置は一般的に一次イオンを生成して収束する少なくとも1つの装置と、二次イオンを収集して測定する装置を含む。二次イオンを測定する装置は一般的に二次イオン抽出システム、移転光学構成部、質量分析計および検出システムを含む。上記構成要素の多くの異なる組み合わせが存在し、多くの異なる型の質量分析計(例えば、磁気セクタ、飛行時間型、四重極型、イオントラップ型等)を用いてSIMSを実行する。これらは最先端技術として公知である。
【0004】
SIMS分析の感度は、二次イオンを完成した装置に通して収集および伝達によって決定される部分があるので、二次イオンを効率的に抽出することはすべての型の質量分析計によって非常に重要である。
【0005】
二次イオンを収集するために必要な抽出フィールドは一次イオンビームに多くの有害な影響をもたらす。ビームは偏向されて位置および射突の角度が変更されたかもしれない。収差が入り、一次ビームのスポットサイズが拡大し、達成可能な方位分解能が低下する。この最後の考察はイメージングSIMSにとって特に重要である。抽出フィールドから導入された収差を最小化させる方法の1つは一次イオンビームおよび二次イオンビームが試料の近傍で同軸になるよう保持することである。この組成を用いたSIMS装置の一例はCameca NanoSIMS50である。しかし、NanoSIMSで用いられる精密な配列は一次イオンおよび二次イオンが反対の極性であるという制限を課す。よって、マイナス一次イオンをプラスの二次イオンの分析に用いられなければならず、逆もまた同様である。
【0006】
従来技術である特許文献1はその質量電荷比に応じてイオンを分離する質量分析装置を開示する。質量分析装置はイオン源と、静電気セクタと、磁気分路と、磁気セクタと、検出手段とを続けて備える。磁気セクタは、イオンを質量対電荷比に応じて分離することが可能である。静電気セクタは球状電極間にある偏向ギャップを画定する球状電極を備える。静電気セクタは、静電気セクタに侵入するイオンビームのエネルギーを減少させるために、遅延モードで使用される。磁気セクタと静電気セクタの組み合わせは、二次イオンの補正した収束を提供するのに用いられる。
【0007】
先行技術文献である非特許文献1は検出面での無非点収差画像を提供する荷電粒子線偏向システムを開示する。このシステムは、複数の一対の球体セクタを含み、各一対の球体セクタは二次ビームの球体偏向ギャップを形成する。このシステムはまたヘルツォーク分流器およびマツダプレートに適合する。そのような装置は一般的に 偏向ギャップで理想的な1/rに近い電位を提供する。その場合は、装置は、特に質量分析計の加速領域に導入された飛行時間のエラーを補正するために僅かなトロイダル磁場を生成するために用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2014/108376号
【非特許文献】
【0009】
【文献】CHUELER B, MICROSCOPE IMAGING BY TIME-OF-FLIGHT SECONDARY ION MASS SPECTROSCOPY,MICROSCOPY,MICROANALYSIS, MICROSTRUCTURE, LES ULIS,(仏)1992年4月1日、VOL.3,NO.2/3,P119-138
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は従来技術で示された欠点の少なくとも1つを克服することを目的とする。本発明はイオンビーム偏向システムの出口ビームの品質を向上させる目的も有する。また、本発明は球体静電気セクタの収束効果を減少させる技術的な課題を有する。さらに、本発明は出口において実質的に平行なビームを提供することを目的とする。本発明は、高い方位分解能を実行させるために、一次ビームの抽出フィールドの有害な影響を最小限にする一方で、効率的に荷電二次粒子を抽出するという目的も有する。本発明はまた、二次粒子を次の光学機械の構成部分により効率的に輸送するために抽出システムに存在する二次荷電粒子のビームの品質を向上させる目的も有する。本発明は現存する設備に後付けで使用できるように十分に小型化する目的も有する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は荷電粒子線偏向システムであり、特に荷電粒子装置の荷電二次粒子抽出システムであり、荷電粒子線偏向システムは、内部球面偏向セクタと、外部球面偏向セクタと、荷電粒子線の入口と、偏向荷電粒子線がシステムを離れるための出口軸がある出口通路と、球体セクタ間に形成されて入口および出口通路に連結された偏向ギャップと、偏向ギャップに対向する出口開口部がある出口壁電極であり、出口壁電位を備える出口壁電極と、所与の角度から偏向ギャップに侵入する荷電粒子線を偏向するために偏向電位に対してバイアスがかかる球体セクタとを備え、システムはさらにプレート状で出口軸の中央部にある出口貫通孔がある中間電極を備え、中間電極は球体セクタの下流に向かっており、中間電極は出口壁電位と球体セクタ間の平均電位との間の電位にバイアスがかかる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は本発明に基づく質量分析計の概略図である。
図2図2は本発明の第1実施形態に基づく荷電粒子線偏向システムの断面図である。
図3図3は本発明の第1実施形態に基づく荷電粒子線偏向システムの斜視図である。
図4図4は本発明の第2実施形態に基づく荷電粒子線偏向システムの断面図である。
図5図5は本発明の第2実施形態に基づく荷電粒子線偏向システムの斜視図である。
図6図6は本発明の第3実施形態に基づく荷電粒子線偏向システムの断面図である。
図7図7は本発明に基づく装置の好ましい実施形態を用いて得られたシミュレートされたデータを示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本段落は好ましい実施形態および図面に基づいてさらなる詳細を記載する。本発明の異なる実施形態において類似の概念を示すために類似の参照番号が用いられる。例えば、本発明の3つの異なる実施形態において、符号18、118および218は、イオンビーム偏向装置を示すために用いられる。所定の実施例において詳細に記載された特徴は、明確に逆の事項が明確に述べられない限りは、他の実施形態の特徴にただちに組み合わせられる。
【0014】
好ましい実施形態において、サイドプレートは球形セクタの平均電位と比較して同程度に高い電位にバイアスがかかり、好ましくは球形セクタの平均電位と比較して少なくとも2倍高い電位にバイアスがかかり、より好ましくは球形セクタの平均電位と比較して少なくとも3倍高い電位にバイアスがかかり、さらに好ましくは球形セクタの平均電位と比較して少なくとも4倍に高い電位にバイアスがかかる。
【0015】
好ましい実施形態において、各球体セクタはサイドプレートに対向する側面を示し、各側面は主にまたは完全に1つのサイドプレートによって覆われる。
【0016】
好ましい実施形態において、球形セクタは偏向ギャップにおいて荷電粒子線のエネルギーを減少させるために阻止電位でバイアスがかけられる。
【0017】
好ましい実施形態において、中間電極は第1プレートであり、システムはさらに出口軸の中央部にある貫通孔がある第2プレートを備え、前記第2プレートは第1プレートに対向する。
【0018】
好ましい実施形態において、システムはセクタが配置される格納部を備え、前記格納部は出口面電極を形成する。
【0019】
好ましい実施形態において、格納部は出口面電位に対してバイアスがかけられる。
【0020】
好ましい実施形態において、中間電極は中央部の貫通孔に対応した円盤電極である。
【0021】
好ましい実施形態において、中間電極は四辺形であり、好ましくは長方形電極である。
【0022】
好ましい実施形態において、格納部はセクタを囲み、接地電位でありおよび/または格納部はセクタを格納部から分離する静電界の空間を備える。
【0023】
好ましい実施形態において、格納部は、分析される試料に対向する下方面を備え、前記下方面は下方開口部と、少なくとも1つの上部開口部のある上方面とを備え、開口部は同軸である。
【0024】
好ましい実施形態において、外部セクタは下部開口部および上部開口部と同軸に配置された少なくとも1つのチャネルを備える。
【0025】
好ましい実施形態において、外部セクタは複数の一次ビームを備える複数のチャネルおよび/または複数の一次ビームの上部開口部を備える上部面を備える。
【0026】
好ましい実施形態において、それぞれの貫通孔の高さは実質的には偏向ギャップのラジアル高度RHと等しい。
【0027】
好ましい実施形態において、それぞれの貫通孔は円形であり、実質的には偏向ギャップのラジアル高度RHと等しい直径を備える。
【0028】
好ましい実施形態において、中間電極の厚さは対応する貫通孔の高さ以下である。
【0029】
好ましい実施形態において、偏向ギャップは実質的に四半円を超えており、および/または60°~120°の角度で曲線を形成し、任意で90°の角度を形成する。
【0030】
好ましい実施形態において、システムはセクタに対してそれぞれに側面に配置される。
【0031】
好ましい実施形態において、システムの内部セクタおよび/または外部セクタは凡そ10mm、好ましくは凡そ8mmの中間半径であるシステムを備える。
【0032】
好ましい実施形態において、システムは固定フランジおよび/または固定手段、好ましくは可逆固定手段を備える。
【0033】
好ましい実施形態において、偏向荷電粒子線は出口軸に沿って格納部を残す。
【0034】
好ましい実施形態において、格納部は接地電位で保持される。
【0035】
好ましい実施形態において、格納部は一次ビームを通過させる一対の上部面および下部面の同軸開口部を備える。
【0036】
好ましい実施形態において、格納部のより下部面は実質的に試料受取プレートに平行になるよう配置される。
【0037】
好ましい実施形態において、内部球体の一部を形成する外部面を備える内部セクタと、内部球体と同心円である外部球の一部を形成する内部面を備える外部セクタとを備え、セクタ間の空間は偏向ギャップを形成する。
【0038】
好ましい実施形態において、内部および外部セクタの内部放射線分離は、好ましくは1mm~4mm、さらに好ましくは2mmである。
【0039】
好ましい実施形態において、外部セクタは一次ビームを通過させるチャネルを備え、チャネルは格納部に形成された開口部と同軸上に配置されている。
【0040】
好ましい実施形態において、サイドプレート電極は実質的に内部セクタおよび外部セクタの面と平行に実装されている。
【0041】
好ましい実施形態において、サイドプレートは、球体セクタ間の偏向ギャップが実質的に覆われるのを保持しながら同時に球体セクタに電気的および/または機械的連結を簡便に通過できるよう成形される。
【0042】
好ましい実施形態において、中間電極は偏向ギャップの前面に配置された出口貫通孔を備える。
【0043】
好ましい実施形態において、出口貫通孔は円筒状の形状を有する。
【0044】
好ましい実施形態において、出口貫通孔は球体セクタの中間軸によって形成された軸と同軸になるように配置されている。
【0045】
好ましい実施形態において、中間電極は上流面は実質的に、内部セクタおよび外部セクタの出口表面により形成された平面と平行になるように配置されている。
【0046】
好ましい実施形態において、中間電極とセクタの出口表面により形成された平面の距離は偏向ギャップのラジアル高度RHまたはセクタの内部ラジアル分離より小さい。
【0047】
好ましい実施形態において、中間電極の出口開口部の直径は、内部セクタと外部セクタとの間の内部放射線の距離と実質的に等しい。
【0048】
好ましい実施形態において、中間電極は実質的に平面である。
【0049】
好ましい実施形態において、中間電極は外部半径に対して環状であり、出口開口部の半径より1mm~2mm大きい。
【0050】
好ましい実施形態において、装置は、内部球形セクタ電極および外部球形セクタ電極にバイアスをかける手段、プレート電極、中間電極をそれぞれ独立して備える。
【0051】
好ましい実施形態において、装置は荷電二次粒子を抽出するため、試料と格納部の下部表面との間に電界をつくる試料にバイアスをかける手段を備える。
【0052】
好ましい実施形態において、中間電極は外部半径に対して環状であり、出口開口部の半径より1mm~2mm大きく、好ましくは少なくとも2mm大きく、さらに好ましくは3mm大きい。
【0053】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの各貫通孔の内面直径は対応するプレートの厚さより小さい。
【0054】
好ましい実施形態において、少なくとも1つまたは各貫通孔は、偏向ギャップの前にあるか円筒状である。
【0055】
好ましい実施形態において、中間電極は各セクタに対向し、特に中間電極と球体セクタとの間の電界を減少させる。
【0056】
好ましい実施形態において、システムは球体セクタおよび/または中間電極にバイアスをかける手段を備え、好ましくは独立した方法で備える。
【0057】
好ましい実施形態において、中間電極は出口開口部に内接している。
【0058】
好ましい実施形態において、中間電極および中間電位は、前記荷電粒子線が出口軸に対して平行になるよう、または、出口軸に荷電粒子線が位置合わせするよう、または、出口軸に沿って荷電粒子線が直線になるよう、荷電粒子線を偏向ギャップ内で偏向するために適応する。
【0059】
本発明はまた荷電粒子線偏向システムであり、特に荷電粒子装置の荷電二次粒子の抽出システムであり、荷電粒子線偏向システムは、内部球形セクタと、外部球形セクタと、セクタが配置される格納部であり格納電位を備える格納部と、荷電粒子線の入口と、偏向荷電粒子線が格納部から離れる際に通る出口軸のある出口通路と、球体セクタ間に形成され入口と出口通路をつなぐ偏向ギャップと、荷電粒子線が所与の角度で偏向ギャップに入るのを偏向するために偏向電位にバイアスがかかった球形セクタとを備え、システムはさらにセクタに対して横にそれぞれ配置された2つのサイドプレートと、プレート型で出口軸を中心に出口貫通孔がある中間電極とを備え、中間電極は球体セクタの下流にあり、球体セクタは中間電極の電位とサイドプレートの電位との間にバイアスをかけられるか、および/または中間電極は格納部の電位とサイドプレートの電位との間の中間電位でバイアスをかけられる。
【0060】
本発明はまた荷電粒子線偏向システムであり、特に荷電粒子装置の荷電二次粒子の抽出システムであり、荷電粒子線偏向システムは、内部球形セクタと、外部球形セクタと、荷電粒子線の入口と、偏向荷電粒子線が格納部から離れる際に通る出口軸のある出口通路と、球体セクタ間に形成され入口と出口通路をつなぐ偏向ギャップと、出口面電位を備え、偏向ギャップに対向する出口開口部がある出口面電極と、偏向ギャップに入ろうとする荷電粒子線のエネルギーを減少させるために偏向電位にバイアスがかかった球形セクタとを備え、システムはさらにプレート型であり、出口開口部と偏向ギャップとの間にある出口貫通孔がある中間電極とを備え、中間電極は出口面電位と1つの球体セクタの電位との間の中間電位にバイアスがかけられる。
【0061】
本発明はまた荷電粒子線偏向システムであり、特に荷電粒子装置の荷電二次粒子の抽出システムであり、荷電粒子線偏向システムは、内部球形セクタと、外部球形セクタと、荷電粒子線の入口と、偏向荷電粒子線が格納部から離れる際に通る出口軸のある出口通路と、球体セクタ間に形成され入口と出口通路をつなぐ偏向ギャップと、出口面電位を備え、偏向ギャップに対向する出口開口部がある出口面電極と、偏向ギャップに入ろうとする荷電粒子線のエネルギーを減少させるために逆電圧にバイアスがかかった球形セクタとを備え、システムはさらにプレート型であり、出口開口部と偏向ギャップとの間にある出口貫通孔がある中間電極とを備え、前記中間電極は出口面電位と1つの球体セクタの電位との間の中間電位にバイアスがかけられる。
【0062】
好ましい実施形態において、中間電極は出口面電位と球形セクタの平均電位との間である中間電位でバイアスがかけられる。
【0063】
好ましい実施形態において、中間電極は出口面電位と出口面電位に最も近い電位である1つの球体セクタの電位との間の中間電位でバイアスがかけられる。
【0064】
本発明はまた荷電粒子線偏向システムであり、特に荷電粒子装置の荷電二次粒子の抽出システムであり、荷電粒子線偏向システムは、内部球形セクタと、外部球形セクタと、荷電粒子線の入口と、偏向荷電粒子線が格納部から離れる際に通る出口軸のある出口通路と、球体セクタ間に形成され入口と出口通路をつなぐ偏向ギャップと、出口開口部があり偏向ギャップに対向する出口面電極であり出口面電極を備える出口面電極と、荷電粒子線が所与の角度で偏向ギャップに入るのを偏向するために偏向電位にバイアスがかかった球形セクタとを備え、システムはさらにプレート型で出口軸を中心に出口貫通孔があり偏向ギャップと出口面電極との間に配置される中間電極と、両方とも球体セクタに対向する2つのサイドプレートであり、出口軸に垂直な電界をつくるためにバイアスがかかるサイドプレートとを備える。
【0065】
本発明はまた荷電粒子線偏向システムであり、特に荷電粒子装置の荷電二次粒子の抽出システムであり、荷電粒子線偏向システムは、内部球形セクタと、外部球形セクタと、荷電粒子線の入口と、偏向荷電粒子線が格納部から離れる際に通る出口軸のある出口通路と、球体セクタ間に形成され入口と出口通路をつなぐ偏向ギャップと、出口開口部があり偏向ギャップに対向する出口面電極であり出口面電極を備える出口面電極と、荷電粒子線が所与の角度で偏向ギャップに入るのを偏向するために偏向電位にバイアスがかかった球形セクタとを備え、システムはさらに出口開口部から偏向ギャップへの突起としての出口貫通孔がある中間電極と、両方とも球体セクタに対向する2つのサイドプレートであり、球体セクタは中間電極の電位とサイドプレートの電位との間の中間電極でバイアスがかかるか、中間電極は出口面電極の電位とサイドプレートの電位との間の中間電極でバイアスがかかるサイドプレートとを備える。
【0066】
本発明はまた、荷電粒子偏向システムを備えた荷電粒子線装置であり、特に本発明に基づく荷電粒子偏向システムを特徴とする二次粒子偏向システムであり、好ましくは、格納部は引出電極を形成する。
【0067】
好ましい実施形態において、装置は二次イオンを分析する質量分析計である。
【0068】
好ましい実施形態において、装置は出口軸に沿って、かつ荷電粒子偏向システムから加速台、第1レンズ、デフレクタシステム、第2レンズ、またはそれらの組み合わせを備える。
【0069】
好ましい実施形態において、装置はさらに磁気セクタと検出システムを備える。
【0070】
好ましい実施形態において、装置は、試料から二次荷電粒子を生成する一次粒子源を備え、前記一次粒子はイオンであり、二次荷電粒子はイオンである。
【0071】
好ましい実施形態において、装置は、試料から二次荷電粒子を生成する一次粒子源を備え、一次粒子はイオンであり、二次荷電粒子は電子である。
【0072】
好ましい実施形態において、装置は、試料から二次荷電粒子を生成する一次粒子源を備え、前記一次粒子は電子であり、二次荷電粒子は電子である。
【0073】
好ましい実施形態において、装置は、試料から二次荷電粒子を生成する一次粒子源を備え、前記一次粒子は電子であり、二次荷電粒子はイオンである。
【0074】
好ましい実施形態において、装置は二次荷電粒子を形成する一次ビーム源を備え、前記一次ビームは光子ビーム、X線ビームまたは高速中性粒子ビームである。
【0075】
好ましい実施形態において、装置はさらに格納部の下に試料領域を備え、前記一次荷電粒子源は格納部のより上にあり、装置は一次荷電粒子が格納部を通って試料領域に到達するように配置される。
【0076】
好ましい実施形態において、装置は、一次ビームの軸が光軸に位置合わせするために長手台および/または横断台において、抽出システムの位置を設定する手段の支持組立体を備える。
【0077】
好ましい実施形態において、装置は検出システムをつくるために試料にバイアスをかける手段を備える。
【0078】
本発明はまた荷電粒子偏向システムを備えるガス注入システムであり、偏向荷電粒子は本発明に基づいている。
【0079】
本発明のそれぞれの目的は本発明の他の目的と関連するかもしれず、本発明の1つの目的のそれぞれの好ましい実施形態は本発明の他の目的と関連するかもしれない。
【0080】
本発明は 一次ビーム軸が実質的に二次ビームと同軸であり、かつ実質的に試料近辺において正規であるという点で特に興味深い。これは抽出フィールドにより一次ビームに導入された収差および偏向を減少させる。二次粒子は、2つのビームの実質的なエネルギー差を利用することによって一次粒子から分離される。一対の同心球形セクタは、簡便に他の荷電粒子最適システムに導入されるようにある角度によって二次粒子を逸脱する。このシステムは質量分析装置を含む。球形セクタの近辺にある二次粒子を実質的に抽出電圧よりも低い電圧に阻止することにより、必要な偏向電圧は減少し、二次ビームの伝達を実質減少させなくても、さらに一次ビームに導入された収差を減少させる。サイドプレート電極と中間電極の組み合わせは球形セクタ電極と併せて、二次粒子が抽出システムを通る送信を最大化し、次の荷電粒子装置に注入する光学品質のより高いビームを生成する。
【0081】
本発明による抽出システムは、一次ビームは電子またはイオンを備え、二次ビームもイオンまたは電子を備えるシステムと同等によく使用される。そして、本発明は4つの有効な想定使用方法を提供する。
【0082】
二次イオンビームは実質的にイオンビーム偏向システムの出口軸と平行になる。この効果はサイドプレートが任意の電位にバイアスがかかっても持続する。本発明の特徴を用いて、中間電極は、球形セクタによって生じた収束効果を減少または無効にすることが可能である。収束効果は、y収束とz収束がx軸または出口軸に沿って間隔をあけて並べられていても補正される。
【0083】
中間電極は球形セクタに対して減電圧でバイアスがかかる。本発明は、例として250Vまたは500Vといった試料の減電圧を採用できる。試料電圧の80%に相当するセクタ電圧を適応することにより、20nmのスポット径が生成できる。10nmのスポットを実際には得る。一次ビームの偏向は10μm未満で保持される。そのような条件下で、試料電圧は一次イオン中に広まらない。0V~1000Vの電圧について興味深い結果が観察された。4000Vまでの電圧も同様に考察された。
【0084】
表1は、試料電圧と球形電圧と共に、伝達、一次ビーム偏向ならびにスポット径の変異を示す。
【0085】
【表1】
【0086】
本発明は小型のSIMS質量分析計の設計にも適合する。それはヘリウムイオン顕微鏡またはデュアルビーム/クロスビームといった公知の装置に実装されている。本発明に基づく質量分析計は追加で既存の顕微鏡に実装することができる。この利点はコストを大幅に削減する。
【0087】
図1は本発明に基づく荷電粒子装置2の概略図を示す。前記装置は質量分析装置2である。
【0088】
装置2は、質量分析計の技術を用いて分析する試料を導入する注入口(図示せず)を有する筐体4を提供する。筐体4は真空を取り囲み、イオン源6、磁気セクタ8および少なくとも1つ、任意で2つ以上の検出器10を備える。本明細書全体において、検出器とは異なる質量電荷比のイオンの検出および定量化をして、生成したスペクトラムを計算して、生成したスペクトラムを表示することが可能な装置を指す用語として用いられる。このような装置または装置集合体は公知である。磁気セクタ8の形状は磁気セクタ8の図示された形状とは異なるかもしれない。磁気セクタ8は特許文献2で開示された磁気セクタかもしれない。
【0089】
イオン源6またはイオン源は一次ビーム12を形成する一次イオン源を備える。それは、He、Ne、Ga、Xe、N、HまたはO イオンを備え、試料から生成された二次イオンをつくるために試料14に射突を与える。他の一次イオン種も多く用いられる。これらは公知技術である。それらを生成後、二次イオンは、抽出システム18によって二次イオンビーム16としては試料14から抽出される。抽出システム18はイオンビーム偏向システム18かもしれない。
【0090】
質量分析装置2はまたイオン源6および/または抽出システム18の下流に伝達光学20を備える。それは質量電荷比に基づいて、二次イオンを分析する装置を追加で備えるかもしれない。そのような装置は磁気セクタ8質量分析計、飛行時間型質量分析計または四重極型質量分析計を含むが限定されない。磁気分路22は伝達光学機器と二次イオン分析装置との間の流動空間に設置される。
【0091】
二次イオンビーム16はイオン源6と入口面との間の流動空間を通過後、一定の角度で磁気セクタ8の入口面に到達する。磁気セクタ8は、特定の質量電荷比に応じて、二次イオンが特別に曲線軌道に沿うようにする永久磁界を作り出す。伝達光学20は加速台(表示せず)を備える。加速台は加速フィールドを作り出す一組のバイアスがかかったシートを備えるかもしれない。加速台の追加によって、二次ビームは 抽出電圧とは独立した固定エネルギーで磁気セクタに入射される。加速台の出口にある開口部はイオンビームによって交差される。それはまた質量分析計の受容、ひいては伝達の立体角を画定する。
【0092】
二次イオンの流動方向に対して下流において、伝達光学20は連続して第1レンズ、二重偏向および第2レンズを備える。それぞれは二次荷電粒子に作用する静電界を作るためにバイアスがかかる。
【0093】
図2は本発明の第1実施形態に基づく荷電粒子線偏向システム18の断面図を示す。前記断面図は出口軸24に沿って切断した図である。
【0094】
中間電極64は第1プレート64である。イオンビーム偏向システムは格納部の一部である第2プレート72を備える。それは格納部電位でバイアスがかかる。この第2プレート72は第1プレート64と同一の形状を示す。例えば、それは円形または長方形かもしれない。出口軸24に対して同軸上に配置された貫通孔を示す。貫通孔66および貫通孔77の内径は偏向ギャップ46のラジアル高度RHと等しい。後者は、二次イオンビーム16に通路を提供するため入口75および出口通路74と連絡している。
【0095】
格納部38は出口開口部56が配置された出口面54を備える。中間電極64は出口開口部56に囲われている。そして、出口面54の厚さ内である。同様に第2プレート72にも適応される。
【0096】
図2により明らかなように、偏向ギャップ46と第1電極64との間の静電界はある程度同質である。力線70はここでは直線である。静電界はセクタ42およびセクタ44からシステム環境に向かうところでより一層減少する。この特性は、順に出口軸24により平行になるよう二次ビームを補正する。このようなビームは組成物分析をかける際に採取するのが容易である。
【0097】
一次ビーム12は格納部38を交差する。上部面52に形成された上部開口部52と交差し、チャネル62を通って突出して上部セクタ44を通り、下部面48の下部開口部53に交差することで試料14に到達する。有利には、上部開口部52、下部開口部48およびチャネル62は同軸上にある。
【0098】
力線70はプレート受理試料36と格納部38との間に引かれる。他の力線70は、偏向ギャップ46を通してセクタ42およびセクタ44の周囲に延長する。これらの力線70の一部はまた中間電極64の周囲に巻き付く。力線70は概略的であり、阻止電位に相当するかもしれない。他の電圧がセクタ42およびセクタ44ならびに格納部38に印加されたときには線の配置は異なる。我々が気付くように、力線70は中間電極64の近傍よりも上部開口部52とチャネル52との間でさらに曲がっている。
【0099】
図3は本発明の第1実施形態に基づく荷電粒子線偏向システム18の等角図である。より詳細が提示されるように図中で切抜きが行われる。出口面の断面は中間電極64をより露出するために除去される。
【0100】
システム18は質量分析技術によって分析される試料に適合した試料領域を備える。試料領域は試料受理プレート36として形成される。プレート36は、50V~500Vの試料電圧Vsaにおいてバイアスがかけられる。
【0101】
システム18は遮蔽として指定された格納部38をも備える。格納部38は抽出電極を形成する。それは格納部電位、例えば接地電位を有する。格納部38と試料受理プレート36との間の電圧差はそれらの間に静電界を生成する。前記静電界は試料受理プレート36から上方に二次イオンを加速する。
【0102】
格納部38は内部セクタ42と外部セクタ44が配置される空隙を画定する。内部セクタ42は内部球体の一部を形成する外部凸面を備え、外部セクタ44は、内部球体と同軸である外部球体の一部を形成する内部凹面を備える。セクタ42およびセクタ44は、それらの間にある出口軸24に向かって二次ビームを偏向する偏向ギャップ46を画定する。システム18は、偏向ギャップ46に連絡する入口と出口通路47とを備える。その配置によりイオンビームが偏向ギャップ46および格納部38を通過することを可能にする。
【0103】
偏向ギャップ46は二次ビームを90°で曲げる。しかし、二次ビームは30°~120°の角度で曲げられる。このために、セクタ42およびセクタ44は異なった電位でバイアスがかけられる。さらに正確には、セクタ42およびセクタ44は、偏向ギャップ46に侵入する二次イオンのエネルギーを減少させるために阻止電位または阻止電圧Vrでバイアスがかけられる。セクタ電圧は以下の式にてVseが付与される
Vse=Vr+/-Vd
Vdは偏向を保持するよう適応する。試料電圧Vsaと等しい、侵入する一次イオンE1のエネルギー次第では、任意で阻止電位Vrによって減少される。それはセクタの半径に依存する。
【0104】
二次イオンビームのエネルギーの減少は、セクタ42とセクタ44との間の電位差を減少させる。これにより一次イオンビーム12への影響を低下させ、高い方位分解能による分析ができる。
【0105】
格納部38は、下部開口部(図では隠されている)下部面48および一次イオンビーム12に交差する上部開口部52のある上部面50を備える。下部面48と上部面50は出口面54によって連結され、出口軸24の周囲に出口開口部56を備える。下部面48は試料受理プレート36に対して実質的に平行である。上部面50と下部面48は後部面58によって任意で連結される。格納部38は、特に面48、面50、面54、面58によりセクタ42およびセクタ44を囲む。それはセクタ42およびセクタ44を囲む閉じたループを形成し、任意でセクタ42およびセクタ44の周囲に分離した空間60を形成する。静電界は格納部38とセクタ42およびセクタ44それぞれとの間の電位差のため分離空間60に存在する。
【0106】
上部セクタ44は上部開口部52および下部開口部と位置合わせしたチャネル62を備える。それにより一次イオンビーム12が偏向ギャップ46を制限するので試料に向かって通過できるようにする。
【0107】
中間電極64は出口開口部56に配置される。中間電極64はプレートの形状を示す。中間電極64は例えばディスクの形状かもしれない。中間電極64は一体的に、平面で、一定の厚みで形成される。中間電極64は実質的に薄い。その厚みは幅の半分以下であり、好ましくは25%未満である。切り出された図のため、前記中間電極64の角度のある部分が示されるが、実際は出口軸24の周囲に閉じたループを形成する。中間電極64は貫通孔66を備える。それは出口軸24を中心にしており、偏向ギャップ46の延長線上にあるかもしれない。貫通孔66は有利に円形で、出口軸24を中心にしている。
【0108】
イオンビーム偏向システム18の伝達を向上させるために、イオンビーム偏向システム18は2つのサイドプレート68を備え、2つのうち1つを本明細書にて記載する。2つのサイドプレート68はバイアス手段によって電位にバイアスがかけられる。2つのサイドプレート68の電位は例えば2000Vまで上昇する。2つのサイドプレート68はセクタ42およびセクタ44の横にバイアスがかかるよう配置されており、格納部38の空隙に配置される。横方向は出口軸24に対して水平かつ直角であると理解される。サイドプレート68は試料プレート36に対して水平かつ直角に配置される。
【0109】
図4は本発明の第2実施形態に基づく荷電粒子線偏向システム118の断面図である。前記断面図は出口軸124に沿って切断した図である。
【0110】
第2実施形態のイオンビーム偏向システム118は第1実施形態と同様である。しかし、中間電極164は出口面154の貫通孔の外部にある長方形の電極であるという点で実質的に異なる。
【0111】
中間電極164は格納部138の高さの大部分を延長する。それは球体セクタ142および球体セクタ144の高さの上を突出する。円形出口貫通孔166は長方形に限定されず、正方形かもしれず、さらに一般的な四辺形であるかもしれない。空間178は格納部138の内部面150および内部面148から中間電極164の端部を分離する。中間電極164は出口面154に実質的に平行であるが、出口面からは離れている。
【0112】
図5は本発明の第2実施形態に基づく荷電粒子線偏向システム118の等角図である。より詳細を示すために切り抜かれている。格納部の出口面は、球体セクタ142および球体セクタ146ならびに偏向ギャップ146をより見やすくするために取り除かれている。
【0113】
中間電極164は、上部面150と格納部138の下部面148との間に実質的に中心にある。それはまたサイドプレート168の間に配置されている。中間電極164の貫通孔166は出口軸124と同軸上に配置されている。中間電極164は格納部138において補助遮断壁を形成し、一般的には、球体セクタ142および球体セクタ144がある内部空間を分断する。
【0114】
図6は本発明の第3実施形態に基づく荷電粒子線偏向システム218の断面図である。前記断面図は出口軸224に沿って切り取られている。
【0115】
第3実施形態のイオンビーム偏向システム218は、中間電極264、球体セクタ242および球体セクタ244、試料プレート236が同様であるという点で第2実施形態と類似である。以前の格納部が適合された点が異なる。出口面254は保持されるが、上部面および下部面は取り除かれる。それらは外部電極244および内部電極242によってそれぞれ置き換えられる。それらの上部面および下部面はシステムのそれらを形成する。出口軸254はバイアスがかかるか、接地電位に保持される。
【0116】
本明細書では、格納部238はセラミックから成る。この方法では、セラミックは球体セクタ242および球体セクタ244ならびに出口面254を相互に電気的に分離する。格納部238は球体セクタ242および球体セクタ244のそれぞれが固定された側面部分を備える。側面部分は主要固定ブラケットを形成する。格納部238は出口面254の下流に突出する。
【0117】
偏向荷電粒子線偏向システム218は2つのサイドプレート(表示せず)を備える。サイドプレートは出口軸224に垂直な静電界を作るためにバイアスがかかる。それらは各球体セクタ242および球体244の前で格納部238内に配置される。それらは格納部238がするように、偏向ギャップ246を覆う。それらは球形セクタ242および球体セクタ244を連結するブリッジを形成する。
【0118】
図7はサイドプレート(曲線380で図示)のみ、および中間電極と組み合わせたサイドプレート(直線382で図示)がある抽出システムの伝達の変化を示す。
【0119】
サイドプレートを自動で使うことで、一定の電圧窓よりも高い強化された伝達を得ることが可能になる。出口コレクタおよびサイドプレートを正しく調整することで、強化された伝達は広い電圧範囲において達成される。
【0120】
抽出システムの電圧の例
次の電圧は例示的である。それぞれは分析の品質を最適化するために個々に調整されるべきである。両方の場合において、二次イオンエネルギーは球形セクタの近傍で試料電圧と比べて20%に減少する。これは 一次ビームに導入された収差を減少する代わりに、イオンを90°偏向させるよう要求される偏向電圧を減少する。抽出システムはまた、二次イオンのエネルギーは球体セクタの近傍では減少されないように使用される。この場合より大きい偏向電圧が球形セクタに印加されなければならない。
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】
【0123】
前例は40%の伝達を提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7