(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】遊技機
(51)【国際特許分類】
A63F 7/02 20060101AFI20220816BHJP
【FI】
A63F7/02 315A
A63F7/02 315Z
(21)【出願番号】P 2019057208
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】599104196
【氏名又は名称】株式会社サンセイアールアンドディ
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 貴晶
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-200408(JP,A)
【文献】特開2016-054764(JP,A)
【文献】特開2018-015377(JP,A)
【文献】特開2018-191834(JP,A)
【文献】特開2017-184832(JP,A)
【文献】特開2015-208410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発射装置により遊技領域に進入するように発射された遊技球が、
当該遊技領域に設けられた始動領域に進入することを契機として当否抽選が実行され、当該遊技領域に設けられた一または複数の入賞領域のいずれかに入賞することを契機として、各入賞領域に設定された数の賞球が払い出される遊技機であって、
前記当否抽選に当選することを目指して対応する前記始動領域(以下、対応始動領域とする)に向かって遊技球を発射すべき遊技状態として、前記対応始動領域が第一始動領域であり前記当否抽選の当選確率が低確率とされる通常遊技状態と、前記対応始動領域が第二始動領域であり前記当否抽選の当選確率が前記通常遊技状態よりも高い高確率とされる特定遊技状態とが設けられており、
前記特定遊技状態は前記当否抽選が当たりとなるまで継続するものであって、当該特定遊技状態が開始されてから所定回数連続して前記当否抽選がはずれとなる切替時点までは第一特定遊技状態とされ、当該切替時点到達まで前記当否抽選が当たりとならなかった場合には当該切替時点到達後前記当否抽選が当たりとなるまで第二特定遊技状態とされるものであり、
前記通常遊技状態、前記第一特定遊技状態および前記第二特定遊技状態は、前記対応始動領域を狙って遊技球を発射した際における一または複数の前記入賞領域への入賞しやすさが異なるように設定されていることで、遊技球の減少速度が異なるものとされており、
前記通常遊技状態は、遊技球の減少速度がDnであ
り、
前記第一特定遊技状態は、遊技球の減少速度がDs1であ
り、
前記第二特定遊技状態は、遊技球の減少速度がDs2であ
る、
ことを特徴とする遊技機。
ただし、前記減少速度とは所定の単位発射数の遊技球が
前記対応始動領域に向かって発射された場合における「単位発射数-賞球数の期待値」をいい、前記Dn、Ds1、Ds2について「Dn>Ds2>Ds1」の関係が成り立つものとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
遊技状態として、遊技球(持ち球)の減少速度が通常遊技状態(低ベース状態)よりも低い特定遊技状態(高ベース状態)が設定された遊技機が公知である(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、特定遊技状態を利用して遊技の趣向性を向上させることが可能な遊技機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた本発明にかかる遊技機は、発射装置により遊技領域に進入するように発射された遊技球が、当該遊技領域に設けられた一または複数の入賞領域のいずれかに入賞することを契機として、各入賞領域に設定された数の賞球が払い出される遊技機であって、当否抽選に当選することを目指して遊技する遊技状態として、遊技球の減少速度がDnである通常遊技状態と、遊技球の減少速度がDs1である第一特定遊技状態と、遊技球の減少速度がDs2である第二特定遊技状態と、が設定されていることを特徴とする。
ただし、前記減少速度とは所定の単位発射数の遊技球が前記遊技領域に進入するよう発射された場合における「単位発射数-賞球数の期待値」をいい、前記Dn、Ds1、Ds2について「Dn>Ds2>Ds1」の関係が成り立つものとする。
【発明の効果】
【0006】
本発明にかかる遊技機によれば、特定遊技状態を利用して遊技の趣向性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】表示領域に表示された装飾図柄および保留図柄を示した図である。
【
図4】複合特定遊技状態(第一特定遊技状態から第二特定遊技状態への移行)を説明するための図である。
【
図5】現在設定されている特定遊技状態の種類に応じた表示がなされることを説明するための図であり、(a)は第一特定遊技状態中、(b)は第二特定遊技状態中を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1)遊技機の基本構成
以下、本発明にかかる遊技機1(ぱちんこ遊技機)の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。まず、
図1を参照して遊技機1の全体構成について簡単に説明する。
【0009】
遊技機1は遊技盤90を備える。遊技盤90は、ほぼ正方形の合板により成形されており、発射装置908(発射ハンドル)の操作によって発射された遊技球を遊技領域902に案内する通路を構成するガイドレール903が略円弧形状となるように設けられている。
【0010】
遊技領域902には、表示装置91、始動入賞領域10、大入賞口906、アウト口などが設けられている。表示装置91の表示領域911は、遊技盤90に形成された開口901を通じて視認可能な部分である。また、遊技領域902には、流下する遊技球が衝突することにより遊技球の流下態様に変化を与える障害物としての遊技釘が複数設けられている。遊技領域902を流下する遊技球は、遊技釘に衝突したときの条件に応じて様々な態様に変化する。
【0011】
このような遊技機1では、発射装置908を操作することにより遊技領域902に向けて遊技球を発射する。遊技領域902を流下する遊技球が、始動入賞領域10や一般入賞領域20、大入賞口906等の入賞領域に入賞すると、所定の数の賞球が払出装置により払い出される。
【0012】
なお、遊技球を貯留する下皿や上皿など、本発明に関係のない遊技機1の構成要素は説明を省略する。これらについては公知の遊技機と同様の構造のものが適用できる。
【0013】
大当たりの抽選は、図示されない制御基板に設けられた当否判定手段が始動入賞領域10への遊技球の入賞を契機として実行する。本実施形態では、始動入賞領域10として、第一始動入賞領域10a(いわゆる「特
図1」の始動入賞領域)と第二始動入賞領域10b(いわゆる「特
図2」の始動入賞領域)が設けられている。始動入賞領域10への遊技球の入賞を契機として乱数源から数値(当否判定情報)が取得され、当該数値が予め定められた大当たりの数値と同じである場合には大当たりとなり、異なる場合にははずれとなる。本実施形態では、当該数値が取得された順に当否判定結果の報知が開始される(いわゆる変動が開始される)こととなるが、未だ当否判定結果の報知が完了していない当否判定情報が存在する場合には、新たに取得された当否判定情報は保留情報として図示されない制御基板に設けられた記憶手段に記憶される。記憶手段に保留情報が記憶されていることは、保留図柄70として表示される。
【0014】
本実施形態では、保留図柄70として、当否判定結果を報知する報知演出(装飾図柄80(装飾図柄群80g)の変動開始から、当否判定結果を示す組み合わせで完全に停止するまでの演出、いわゆる一変動中分の演出をいう)は開始されているものの、当否判定結果の報知は完了していない情報(以下、変動中保留情報と称することもある)に対応する変動中保留図柄71(いわゆる「当該変動保留」の存在を示す図柄)と、当否判定結果を報知する報知演出が開始されていない情報(以下、変動前保留情報と称することもある)に対応する変動前保留図柄72が表示される(
図2参照)。本実施形態では、変動中保留図柄71と変動前保留図柄72の基本的な形態は同じであり、両者を区別するために変動中保留図柄71の方が変動前保留図柄72よりも大きく表示される。変動中保留図柄71と変動前保留図柄72の基本的な形態が全く異なるものとしてもよい。
【0015】
変動前保留情報の最大の記憶数は上限が決められている。本実施形態では、第一始動入賞領域10aに入賞することによって得られる第一変動前保留情報(特
図1保留)の最大の記憶数は四つであり、第二始動入賞領域10bに入賞することによって得られる第二変動前保留情報(特
図2保留)の最大の記憶数は四つである。したがって、特
図1および特
図2の一方に相当する保留図柄70に関していえば、一つの変動中保留図柄71と、最大四つの変動前保留図柄72が表示されることがある(
図2参照)。
【0016】
本実施形態では、公知の遊技機と同様に、表示装置91の表示領域911に表示される装飾図柄80(
図2参照)の組み合わせによって当否判定結果を遊技者に報知する。具体的には、複数種の装飾図柄80を含む装飾図柄群80g(左装飾図柄群80gL、中装飾図柄群80gC、右装飾図柄群80gR)が変動を開始し、最終的に各装飾図柄群80gから一の装飾図柄80が選択されて停止する。大当たりに当選している場合には各装飾図柄群80gから選択されて停止した装飾図柄80の組み合わせは所定の組み合わせ(例えば、同じ装飾図柄80の三つ揃い)となる。はずれである場合にはそれ以外(大当たりとなる組み合わせ以外)の組み合わせとなる。装飾図柄80は、数字とキャラクタ等が組み合わされたものとしてもよい。
【0017】
本実施形態では、遊技状態として、通常遊技状態、特定遊技状態(後述する複合特定遊技状態を構成する遊技状態)、特別遊技状態が設定されている(
図3(a)参照)。特定遊技状態および特別遊技状態は、通常遊技状態に比して遊技者に有利な遊技状態である。通常遊技状態は、大当たりに当選する確率が低い低確率遊技状態であり、かつ、始動入賞領域10に遊技球が入賞しにくい低ベース状態(低確率・時短無)である。特定遊技状態は、大当たりに当選する確率が低い低確率遊技状態であり、かつ、始動入賞領域10に遊技球が入賞しやすい高ベース状態(低確率・時短有)である。特別遊技状態は、大当たりに当選する確率が高い高確率遊技状態であり、かつ、始動入賞領域10に遊技球が入賞しやすい高ベース状態(高確率・時短有)である。通常遊技状態(非時短状態)においては、遊技者は、第一始動入賞領域10aを狙って遊技球を発射させる。本実施形態では、いわゆる「左打ち」を行う。特定遊技状態や特別遊技状態(時短状態)においては、遊技者は、第二始動入賞領域10bを狙って遊技球を発射させる。本実施形態では、いわゆる「右打ち」を行う。特定遊技状態や特別遊技状態(時短状態)は、普通始動領域905に遊技球が進入することを契機とした第二始動入賞領域10bの開放抽選に当選しやすい状態であるため、比較的容易に第二始動入賞領域10bに遊技球が入賞する。これらの遊技状態のうち、特定遊技状態(複合特定遊技状態)の詳細については後述する。
【0018】
本実施形態では、大当たり当選を目指して遊技する状態(大当たり遊技が実行されていない状態)においては、上述した始動入賞領域10(第一始動入賞領域10a、第二始動入賞領域10b)や、一般入賞領域20に遊技球が進入することを契機として賞球が払い出される。各入賞領域に対応した賞球数は適宜設定することが可能である。
【0019】
2)特定遊技状態
本実施形態における特定遊技状態(低確率・時短有)として、第一特定遊技状態および第二遊技状態が設定されている(
図3(a)参照)。第一特定遊技状態および第二特定遊技状態は、遊技球の減少速度(持ち球の減少速度)が異なる。ここで、減少速度とは、「遊技球の単位発射数-賞球の期待値」をいうものとする。例えば、単位発射数(遊技領域902に到達するように発射された遊技球の数)を「100」とした場合、当該100発の遊技球のいずれかが各種入賞領域に入賞することにより得られるトータルの賞球数(遊技領域902に設けられた各種入賞領域に入賞することで払い出される遊技球数)の期待値が15であれば、減少速度は100-15=85(遊技球を100発発射した場合、平均して85個の持ち球減少に繋がるということ)となる。また、賞球数の期待値が30であれば、減少速度は100-30=70(遊技球を100発発射した場合、平均して70個の持ち球減少に繋がるということ)となる。前者のケースの方が、後者のケースよりも減少速度は大きいということになる。遊技機1が備える発射装置908は、ハンドルを操作していれば所定間隔で遊技球が継続的に発射されるものであるため、所定時間(単位時間)あたりの遊技球の発射数は一定である(例えば、1分間に100発の遊技球が発射される)。したがって、遊技者が継続的に遊技している(遊技球が遊技領域902に到達するように発射装置908のハンドルを操作し続けている)間は、遊技球の発射数は時間に比例するという関係にある。したがって、遊技者が継続的に遊技しているという条件下においては、減少速度が大きい方が時間あたりの「球減り」が大きいということになる。
【0020】
なお、減少速度(減少速度に関係する値)は、あくまで遊技者が通常通り(設計の目論見通り)継続的に遊技を行っているとした場合のものである。例えば、明らかに入賞頻度が低下するような位置に向かって遊技球を発射させるように遊技しているときの値ではない。通常遊技状態であれば、いわゆる「ぶっこみ」に遊技球が到達するように左打ちがなされているときの減少速度をいい、特定遊技状態であれば、右側の遊技領域902に到達するように右打ちがなされているときの減少速度をいう。また、第一特定遊技状態および第二特定遊技状態のいずれにおいても、遊技球(持ち球)の増加が見込めるような設計とされるものではないとする(設計上、遊技球はあくまで「減少」するものとする)。
【0021】
通常遊技状態の減少速度をDn、第一特定遊技状態の減少速度をDs1、第二特定遊技状態の減少速度をDs2とすると、「Dn>Ds2>Ds1」の関係が成り立つように設定されている(
図3(b)参照)。本実施形態では、Dn=80、Ds2=55、Ds1=10(単位発射数=100)とされている。第一特定遊技状態および第二特定遊技状態は、いずれも高ベース状態(通常遊技状態(低ベース状態)よりもいわゆる「ベース」が高い状態)であって、当然、通常遊技状態よりも遊技球の減少速度は小さい。第一特定遊技状態に比して、第二特定遊技状態は、遊技球の減少速度が大きい。つまり、第二特定遊技状態は、第一特定遊技状態よりも、球減りが激しい高ベース状態であるということができる。逆の見方をすれば、第一特定遊技状態は、第二遊技状態よりも、球持ちが良い高ベース状態であるということができる。
【0022】
各遊技状態の減少速度が上記のような関係となるのは、普通始動領域905に遊技球が進入することを契機とした抽選(普通抽選)に当選する確率が異なることによる。普通抽選に当選すると、第二始動入賞領域10bの手前に設けられた開閉部材が手前側に傾倒し、第二始動入賞領域10bに極めて容易に遊技球が進入する(入賞する)状態となる。つまり、普通抽選に当選する確率が高いほど、第二始動入賞領域10bに遊技球が入賞することによる賞球が多くなることになる。当該第二始動入賞領域10bへの入賞しやすさの差が、上記のような減少速度の差を生じさせていることの主要因である(本実施形態では、一般入賞領域20への入賞しやすさが減少速度に与える影響は極めて小さい)。
【0023】
通常遊技状態においては、普通抽選にほとんど当選しない(本実施形態では当選確率が約1/1000である)とされる。つまり、第二始動入賞領域10bが開放されることはほとんどないため、第二始動入賞領域10bに遊技球を入賞させることは極めて困難である。それゆえ、通常遊技状態は、第一始動入賞領域10aに遊技球を進入させることを目指して左打ちすべき遊技状態とされる。したがって、通常遊技状態における減少速度は、第二始動入賞領域10bへの遊技球の入賞が反映されたものではない。主として第一始動入賞領域10aへの遊技球の入賞が反映されたものである。
【0024】
第一特定遊技状態にて普通抽選に当選する確率(本実施形態では当選確率が約1/1.05である)は、第二特定遊技状態にて普通抽選に当選する確率(本実施形態では当選確率が約1/2である)よりも高い。当該普通抽選の当選確率の差分、第一特定遊技状態の方が、第二特定遊技状態よりも、第二始動入賞領域10bへ遊技球が入賞しやすい(それによって得られる賞球数が多くなりやすい)ということになる。すなわち、当該普通抽選の当選確率の差が、第一特定遊技状態と第二特定遊技状態の減少速度の差として表れているということである。なお、第一特定遊技状態および第二特定遊技状態にて普通抽選に当選する確率はそれなりに高く、右打ち遊技を行っていれば頻繁に第二始動入賞領域10bが開放されることになるから、これら特定遊技状態は第二始動入賞領域10bに遊技球を進入させることを目指して右打ちすべき遊技状態とされる。
【0025】
なお、上記のように、普通抽選の当選確率によって減少速度の差を設定する手法はあくまで一例である。各遊技状態について、普通抽選に当選したときにおける第二始動入賞領域10bの開放時間(開放時間の平均値)に差をつけることで、当該第二始動入賞領域10bへの遊技球の入賞しやすさが異なる(すなわち、減少速度が異なる)ような構成としてもよい。また、このような開放時間の差および普通抽選の当選確率の差を組み合わせて、第二始動入賞領域10bへの遊技球の入賞しやすさに差をつけるようにしてもよい。
【0026】
本実施形態にかかる遊技機1は、大当たり遊技終了後、複合特定遊技状態に移行することがある。本実施形態では、大当たりとして、特定大当たりと特別大当たりが設定されている。特定大当たりに当選したときには、当該大当たり遊技終了後、複合特定遊技状態に移行する(
図3(a)参照)。なお、特別大当たりに当選したときには、当該大当たり終了後、特別遊技状態に移行する。
【0027】
複合特定遊技状態は、最後まで実行された場合、前半部分が第一特定遊技状態とされ、後半部分が第二特定遊技状態とされるものである。具体的には、複合特定遊技状態は、当否判定結果が連続して100回はずれとなるまで(100回のはずれを報知する報知演出が実行されるまで)継続するものであるところ、前半の50回までは第一特定遊技状態とされ、後半の50回は第二特定遊技状態とされるものである(
図4参照)。つまり、第一特定遊技状態が終了すること(複合特定遊技状態に移行してから50回目の当否判定結果(はずれ)の報知が完了すること)を契機として、第二特定遊技状態が開始されるものであり、両特定遊技状態は連続するものである。
【0028】
遊技者にとってみれば、前半の第一特定遊技状態においては、あまり遊技球を減らさずに遊技することができ、後半の第二特定遊技状態に移行した後は、第一特定遊技状態ほどではないものの、通常遊技状態に比して球減りが少ない状態で遊技することができるという流れの遊技性となる。一般的に遊技機は、出玉性能(スペック)を考えて設計されるものであるところ、出玉性能が遊技者に「甘い」設計となり過ぎないように特定遊技状態(時短状態)の回数(時短回数)を減らすといった措置がとられることがある。時短回数が少ないことは遊技者に対してあまり良い印象を与えないものである(遊技意欲の減衰に繋がる可能性がある)から、出玉性能が甘くなり過ぎないようにしつつ、時短回数の減少を抑制することが好ましいといえる。本実施形態のような設計手法は、このような観点において有効である。
【0029】
具体例を挙げて言えば、本実施形態のように第一特定遊技状態が50回、第二特定遊技状態が50回継続するような設計とすることと、第一特定遊技状態が75回継続するような設計とすることとは、同じような出玉性能となるものの、前者は「時短回数100回」、後者は「時短回数75回」と銘打つことができるため、前者の方が遊技意欲の向上に資するといえる。
【0030】
複合特定遊技状態は、第二特定遊技状態から第一特定遊技状態に移行するような設定としてもよい。このようにすれば、相対的に減少速度が大きい状態から、減少速度が小さい状態に移行するような遊技性となる。ただし、本実施形態のように、前半部分が第一特定遊技状態であり、後半部分が第二特定遊技状態である設定とすることで、第二特定遊技状態に移行するよりも前に大当たりに当選することが遊技者にとって喜ばしい状況となる遊技性が実現される。すなわち、第一特定遊技状態から第二特定遊技状態に移行することは、「球減り」が激しくなるような変化をもたらすものである(
図4参照)ため、複合特定遊技状態にて大当たりに当選するのであれば、第二特定遊技状態に移行するよりも前に(すなわち、第一特定遊技状態にて)大当たりに当選することを遊技者が願う遊技性を実現することが可能である。
【0031】
複合特定遊技状態においては、現在設定されている特定遊技状態の種類に応じた表示がなされるようにすることが好ましい。例えば、第一特定遊技状態を「超チャンスタイム」、第二特定遊技状態を「チャンスタイム」と名付け、各特定遊技状態が設定されている際には、当該名称が表示されるようにする(
図5参照)。これにより、遊技者は、現時点において第一特定遊技状態および第二特定遊技状態のいずれが設定されているのかを把握することが可能である。また、当該表示は、第一特定遊技状態の方が、第二特定遊技状態よりも遊技者にとって有利な状態であること(両特定遊技状態の差)が示唆されるような態様とすることが好ましい。上記例では「超」の有無により、第一特定遊技状態の方が有利な状態であることが示唆される。
【0032】
3)以下、上記実施形態にかかる遊技機1を改良、具体化、変形等した具体例について説明する。なお、可能な限りにおいて、以下の具体例を用いて説明する技術を複数組み合わせて適用した構成としてもよい。
【0033】
〇第一具体例
【0034】
上記実施形態における特定遊技状態(第一特定遊技状態、第二特定遊技状態)は、当否抽選の当選確率は低確率状態であることを説明したが、当否抽選の当選確率が高確率状態であるものとしてもよい。つまり、いわゆる確率変動状態(上記実施形態でいう特別遊技状態に相当するもの)として、遊技球の減少速度が相対的に小さい第一特定遊技状態と、遊技球の減少速度が相対的に大きい第二特定遊技状態が設定された構成としてもよい。
【0035】
このような構成を前提として、所定回数連続して当否判定結果がはずれとなるまでは第一特定遊技状態が設定され、その後は第二特定遊技状態に移行するようなものとする。このようにすれば、第一特定遊技状態が設定されている間に(第二特定遊技状態に移行するよりも前に)、大当たりに当選することを願う遊技性を実現することが可能である。
【0036】
規定回数(N回)連続して当否判定結果がはずれとなるまで確率変動状態が継続するいわゆる「STタイプ」のものであってもよいし、次回大当たりまで確率変動状態が継続するいわゆる「確変ループタイプ」のものであってもよい。いわゆる「STタイプ」のものとする場合には、X回(X<N)連続して当否判定結果がはずれとなるまでは第一特定遊技状態が、それ以降のN-X回については第二特定遊技状態が設定されるものとする(
図6(a)参照)。いわゆる「確変ループタイプ」ものとする場合には、X回連続して当否判定結果がはずれとなるまでは第一特定遊技状態が設定され、それ以降の大当たりに当選するまでは第二特定遊技状態が設定されるものとする(
図6(b)参照)。いずれの場合であっても、第一特定遊技状態が設定されているX回の当否抽選が実行されるまでの間に(第二特定遊技状態に移行するよりも前に)、大当たりに当選することを願う遊技性を実現することができる。特に、従来の「確変ループタイプ」は、次回大当たりが確定しているため早く大当たりに当選することがそれほど重要ではない遊技性であるところ、上記のような構成とすることで第一特定遊技状態が設定されている間に大当たりに当選することが重要となる遊技性を実現することが可能である。
【0037】
〇第二具体例
減少速度の差を、一般入賞領域20(遊技球が進入することで賞球は得られるが、当否判定の契機とはならない入賞領域)への遊技球の入賞しやすさにより設定してもよい。例えば、一般入賞領域20の入口を開閉する開閉部材を設け、第一特定遊技状態の方が、第二特定遊技状態よりも、一般入賞口が開放されやすい設定とする。
【0038】
〇第三具体例
第一特定遊技状態および第二特定遊技状態の一方から他方に移行する複合特定遊技状態が設定されることに限られるのではなく、それぞれが単独で設定されうる構成としてもよい。例えば、所定の大当たりである第一大当たりに当選した場合には、大当たり遊技終了後に第一特定遊技状態が設定されるものとする。第一特定遊技状態が設定されてから所定回数連続して当否判定結果がはずれとなった場合には、通常遊技状態に移行するものとする。同様に、所定の大当たりである第二大当たりに当選した場合には、大当たり遊技終了後に第二特定遊技状態が設定されるものとする。第二特定遊技状態が設定されてから所定回数連続して当否判定結果がはずれとなった場合には、通常遊技状態に移行するものとする。
【0039】
〇第四具体例
第一特定遊技状態の終了後、第二特定遊技状態に移行することもあれば、第一特定遊技状態の終了後、第二特定遊技状態に移行せずに終了する(通常遊技状態となる)こともある設定とする。つまり、所定の大当たり遊技終了後の遊技状態が、複合特定遊技状態となる場合もあれば、複合特定遊技状態とはならない(以下、単独特定遊技状態と称する)場合もある構成とする。例えば、第一特定遊技状態は、50回連続してはずれとなるまで継続するものとする(
図7(a)参照)。その後、50回連続してはずれとなるまで継続する第二特定遊技状態に移行する複合特定遊技状態となること(
図7(b-1)参照)もあれば、このような第二特定遊技状態には移行せずに終了する(通常遊技状態に戻る)こともある(
図7(b-2)参照)構成とする。
図7に示すように、第一特定遊技状態の最後の報知演出(50回目の報知演出)にて、第二特定遊技状態に移行するかどうかの分岐演出が発生し、当該分岐演出の結末により、第二特定遊技状態への移行の有無が示されるものとしてもよいし、第一特定遊技状態の開始時点から、第二特定遊技状態に移行するかどうかを遊技者が把握可能な構成としてもよい。
【0040】
複合特定遊技状態となるか否かを決める要因としては種々考えられる。当選した大当たりの種類に応じ、複合特定遊技状態となるか否かが決まる構成としてもよい。
【0041】
別の例としては、第一特定遊技状態にて大当たりに当選することが、複合特定遊技状態に移行する権利を取得する契機となるようにすることが考えられる。例えば、所定の大当たりに当選したときには、当該大当たり遊技終了後、単独特定遊技状態(第一特定遊技状態)が設定されるものとする。当該単独特定遊技状態(第一特定遊技状態)にて所定の大当たりに当選した場合には、当該大当たり遊技終了後、複合特定遊技状態が設定されるものとする。つまり、いわゆる「初当たり」時には単独特定遊技状態となるものの、「連チャン」時には複合特定遊技状態に移行する構成とする。
【0042】
なお、先に第二特定遊技状態が設定され、その後第一特定遊技状態に移行する場合もあれば、移行しない場合もある構成としてもよい。
【0043】
〇第五具体例
遊技球の減少速度が異なる三種以上の特定遊技状態が設定された構成としてもよい(ただし、いずれの特定遊技状態の減少速度も、通常遊技状態の減少速度よりは小さいものとする)。この場合、複合特定遊技状態が、三種以上の特定遊技状態を含むものとすることができる。かかる複合特定遊技状態は、遊技球の減少速度が小さい特定遊技状態から順に実行されるようにすることが好ましい。つまり、所定回数連続して当否判定結果がはずれとなることを契機として、ある種の特定遊技状態からそれとは別の特定遊技状態への変化が生じることになるが、当該変化は、遊技球の減少速度が大きくなるような変化とすることが好ましい。このようにすることで、できるだけ早く大当たりに当選することを遊技者が願う遊技性を実現することが可能である。
【0044】
4)以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0045】
上記実施形態から得られる具体的手段(遊技機)を以下に列挙する。
【0046】
・手段1
発射装置により遊技領域に進入するように発射された遊技球が、当該遊技領域に設けられた一または複数の入賞領域のいずれかに入賞することを契機として、各入賞領域に設定された数の賞球が払い出される遊技機であって、当否抽選に当選することを目指して遊技する遊技状態として、遊技球の減少速度がDnである通常遊技状態と、
遊技球の減少速度がDs1である第一特定遊技状態と、遊技球の減少速度がDs2である第二特定遊技状態と、が設定されていることを特徴とする遊技機。
ただし、前記減少速度とは所定の単位発射数の遊技球が前記遊技領域に進入するよう発射された場合における「単位発射数-賞球数の期待値」をいい、前記Dn、Ds1、Ds2について「Dn>Ds2>Ds1」の関係が成り立つものとする。
上記遊技機は、遊技球の減少速度が異なる第一特定遊技状態および第二特定遊技状態が設定されたものであるため、遊技の趣向性を向上させることが可能である。
【0047】
・手段2
前記第一特定遊技状態と前記第二特定遊技状態の一方の遊技状態が設定され、所定回数連続して当否判定結果がはずれとなった後、他方の遊技状態が設定されることを特徴とする手段1に記載の遊技機。
一方の特定遊技状態から他方の特定遊技状態に移行した際、遊技者は、遊技球の減少速度の違いを体感することになる。
【0048】
・手段3
前記第一特定遊技状態が設定され、所定回数連続して当否判定結果がはずれとなった後、前記第二特定遊技状態が設定されることを特徴とする手段2に記載の遊技機。
このようにすることで、第一特定遊技状態が設定されている間に(第二特定遊技状態が設定されるよりも前に)、当否判定結果が当たりとなることを遊技者が願う遊技性を実現することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 遊技機
10 始動入賞領域
10a 第一始動入賞領域
10b 第二始動入賞領域
91 表示装置
911 表示領域