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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】画像検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20220816BHJP
   G02B 13/00 20060101ALI20220816BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
G01M11/00 T
G02B13/00
G02B27/02 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019072259
(22)【出願日】2019-04-04
(65)【公開番号】P2020170118
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】506423051
【氏名又は名称】株式会社QDレーザ
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137615
【弁理士】
【氏名又は名称】横山 照夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 一孝
(72)【発明者】
【氏名】金子 千鶴
(72)【発明者】
【氏名】足利 英昭
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/034181(WO,A1)
【文献】特開平11-249086(JP,A)
【文献】特開平10-108835(JP,A)
【文献】特開平11-249085(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106343950(CN,A)
【文献】特表2012-519553(JP,A)
【文献】特表2008-539824(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0196682(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00-11/08
G02B 13/00-13/26
G02B 27/00-27/64
A61B 3/00-3/18
G02C 13/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの網膜に画像を直接投影する画像投影装置が搭載される搭載部と、
平面形状の撮像面を有し、前記搭載部に搭載された前記画像投影装置から前記撮像面に投影される画像を撮像する撮像素子と、
前記画像投影装置によって異なる時間に出射される複数の第1光線が収束する位置に設けられ、前記画像投影装置から前記撮像面に照射される前記複数の第1光線各々を前記撮像面又は前記撮像面の近傍に合焦させる光学系と、
前記撮像素子で撮像された画像を検査する検査部と、を備え、
前記撮像面の前記搭載部方向に前記網膜があると仮想したときに、前記画像投影装置によって異なる時間に出射されて前記網膜に照射される光線を複数の第2光線とし、
前記複数の第1光線各々及び前記複数の第2光線各々は、赤色光、緑色光、及び青色光を含み、
前記光学系は、前記撮像素子で撮像される画像の中央部におけるストレール比を端部におけるストレール比よりも高くさせ、前記緑色光からなる前記複数の第1光線が前記撮像面に照射されるときのストレール比と前記緑色光からなる前記複数の第2光線が前記網膜に照射されるときのストレール比との相違を、前記赤色光からなる前記複数の第1光線が前記撮像面に照射されるときのストレール比と前記赤色光からなる前記複数の第2光線が前記網膜に照射されるときのストレール比との相違、及び、前記青色光からなる前記複数の第1光線が前記撮像面に照射されるときのストレール比と前記青色光からなる前記複数の第2光線が前記網膜に照射されるときのストレール比との相違よりも小さくさせる、画像検査装置。
【請求項2】
前記複数の第2光線のうちの前記画像の端近傍における第3光線を前記撮像面に垂直に投影したときの位置を第1位置とし、前記網膜を平面展開して前記網膜の表面を前記撮像面に一致させたときの前記撮像面における前記第3光線の位置を第2位置とした場合に、
前記光学系は、前記複数の第1光線のうちの前記第3光線に対応する第4光線が前記撮像面に照射される第3位置を前記第1位置よりも前記第2位置に近づける、請求項1記載の画像検査装置。
【請求項3】
前記光学系は、前記第3位置を前記第2位置に略一致させる、請求項記載の画像検査装置。
【請求項4】
前記光学系は、前記複数の第1光線が前記撮像面に照射される複数の位置の全てを、前記網膜を平面展開して前記網膜の表面を前記撮像面に一致させたときの前記撮像面における前記複数の第2光線の複数の位置のうちの対応する位置に略一致させる、請求項2または3記載の画像検査装置。
【請求項5】
前記光学系は、前記複数の第1光線が前記撮像面に照射されるときの前記緑色光に対する前記赤色光及び前記青色光の位置ずれ方向を、前記複数の第2光線が前記網膜に照射されるときの前記緑色光に対する前記赤色光及び前記青色光の位置ずれ方向と同じにさせる、請求項1からのいずれか一項記載の画像検査装置。
【請求項6】
前記光学系は、前記複数の第1光線が入射する側から順に並んだ第1凸レンズ、凹レンズ、及び第2凸レンズを含む、請求項1からのいずれか一項記載の画像検査装置。
【請求項7】
前記撮像素子の解像度は、前記画像投影装置によって前記撮像面に投影される画像の解像度以上である、請求項1からのいずれか一項記載の画像検査装置。
【請求項8】
前記撮像素子の撮像領域は、前記画像投影装置によって前記撮像面に投影される画像の投影領域よりも大きい、請求項1からのいずれか一項記載の画像検査装置。
【請求項9】
前記撮像素子が前記画像投影装置によって前記撮像面に投影される画像を撮像する1回の露光時間は、前記画像投影装置によって前記撮像面に投影される画像のフレームレートの逆数よりも長い、請求項1からのいずれか一項記載の画像検査装置。
【請求項10】
前記光学系及び前記撮像素子は、前記複数の第1光線が収束する位置を中心に前記画像投影装置に対して回動可能である、請求項1からのいずれか一項記載の画像検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次元方向に走査された走査光をユーザの網膜表面に照射して画像を網膜に直接投影する画像投影装置が知られている(例えば、特許文献1)。また、撮像用レンズの特性値を検査するために、撮像用レンズを介して射出される画像光を撮像素子で検出して画像処理を行うことで撮像用レンズの特性値を算出することが知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-111231号公報
【文献】特開2003-279446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像投影装置により網膜に直接投影される画像を検査する方法として、ユーザが網膜に投影された画像を見ることによって画像を検査する方法が考えられる。しかしながら、この方法では、ユーザの個人差によるばらつき及びユーザの疲労度などによるばらつきなどによって、評価がばらついてしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、網膜に画像を直接投影する画像投影装置により投影される画像を良好に検査することが可能な画像検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ユーザの網膜に画像を直接投影する画像投影装置が搭載される搭載部と、平面形状の撮像面を有し、前記搭載部に搭載された前記画像投影装置から前記撮像面に投影される画像を撮像する撮像素子と、前記画像投影装置によって異なる時間に出射される複数の第1光線が収束する位置に設けられ、前記画像投影装置から前記撮像面に照射される前記複数の第1光線各々を前記撮像面又は前記撮像面の近傍に合焦させる光学系と、前記撮像素子で撮像された画像を検査する検査部と、を備え、前記撮像面の前記搭載部方向に前記網膜があると仮想したときに、前記画像投影装置によって異なる時間に出射されて前記網膜に照射される光線を複数の第2光線とし、前記複数の第1光線各々及び前記複数の第2光線各々は、赤色光、緑色光、及び青色光を含み、前記光学系は、前記撮像素子で撮像される画像の中央部におけるストレール比を端部におけるストレール比よりも高くさせ、前記緑色光からなる前記複数の第1光線が前記撮像面に照射されるときのストレール比と前記緑色光からなる前記複数の第2光線が前記網膜に照射されるときのストレール比との相違を、前記赤色光からなる前記複数の第1光線が前記撮像面に照射されるときのストレール比と前記赤色光からなる前記複数の第2光線が前記網膜に照射されるときのストレール比との相違、及び、前記青色光からなる前記複数の第1光線が前記撮像面に照射されるときのストレール比と前記青色光からなる前記複数の第2光線が前記網膜に照射されるときのストレール比との相違よりも小さくさせる、画像検査装置である。
【0007】
上記構成において、前記複数の第2光線のうちの前記画像の端近傍における第3光線を前記撮像面に垂直に投影したときの位置を第1位置とし、前記網膜を平面展開して前記網膜の表面を前記撮像面に一致させたときの前記撮像面における前記第3光線の位置を第2位置とした場合に、前記光学系は、前記複数の第1光線のうちの前記第3光線に対応する第4光線が前記撮像面に照射される第3位置を前記第1位置よりも前記第2位置に近づける構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記光学系は、前記第3位置を前記第2位置に略一致させる構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記光学系は、前記複数の第1光線が前記撮像面に照射される複数の位置の全てを、前記網膜を平面展開して前記網膜の表面を前記撮像面に一致させたときの前記撮像面における前記複数の第2光線の複数の位置のうちの対応する位置に略一致させる構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記光学系は、前記複数の第1光線が前記撮像面に照射されるときの前記緑色光に対する前記赤色光及び前記青色光の位置ずれ方向を、前記複数の第2光線が前記網膜に照射されるときの前記緑色光に対する前記赤色光及び前記青色光の位置ずれ方向と同じにさせる構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記光学系は、前記複数の第1光線が入射する側から順に並んだ第1凸レンズ、凹レンズ、及び第2凸レンズを含む構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記撮像素子の解像度は、前記画像投影装置によって前記撮像面に投影される画像の解像度以上である構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記撮像素子の撮像領域は、前記画像投影装置によって前記撮像面に投影される画像の投影領域よりも大きい構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記撮像素子が前記画像投影装置によって前記撮像面に投影される画像を撮像する1回の露光時間は、前記画像投影装置によって前記撮像面に投影される画像のフレームレートの逆数よりも長い構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記光学系及び前記撮像素子は、前記複数の第1光線が収束する位置を中心に前記画像投影装置に対して回動可能である構成とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、網膜に画像を直接投影する画像投影装置により投影される画像を良好に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施例1に係る画像検査装置を示す図である。
図2図2は、画像投影装置の上視図である。
図3図3は、画像投影装置から撮像素子に照射される光線について説明する図である。
図4図4は、比較例に係る画像検査装置を示す図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、比較例に係る画像検査装置で生じる課題を説明する図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、実施例1に係る画像検査装置の効果を説明する図である。
図7図7は、撮像素子の撮像面に照射される光線の位置と、網膜を平面展開したときの撮像面における光線の位置と、の計算結果を示す図である。
図8図8(a)は、緑色レーザ光からなる光線が画像投影装置からユーザの網膜に照射されるときのストレール比の計算結果を示す図、図8(b)は、光学系を介して撮像素子の撮像面に照射されるときのストレール比の計算結果を示す図、図8(c)は、図8(a)及び図8(b)の点線でのストレール比である。
図9図9(a)から図9(c)は、赤色、緑色、又は青色レーザ光からなる光線が画像投影装置からユーザの網膜に照射されるときのストレール比の計算結果を示す図、図9(d)から図9(f)は、光学系を介して撮像素子の撮像面に照射されるときのストレール比の計算結果を示す図である。
図10図10(a)から図10(c)は、赤色、緑色、又は青色レーザ光からなる光線が画像投影装置からユーザの網膜に照射されるときのRMS波面収差の計算結果を示す図、図10(d)から図10(f)は、光学系を介して撮像素子の撮像面に照射されるときのRMS波面収差の計算結果を示す図である。
図11図11(a)は、ユーザの網膜を平面展開したときの光線の色ずれの計算結果を示す図、図11(b)は、光学系を介して撮像素子の撮像面に照射される光線の色ずれの計算結果を示す図である。
図12図12は、図11(a)及び図11(b)のX軸上での緑色レーザ光と青色レーザ光との位置ずれ量を示す図である。
図13図13(a)から図13(d)は、撮像素子の解像度が画像投影装置で投影される画像の解像度以上であることが好ましい理由を説明する図である。
図14図14は、画像投影装置の画像投影領域と撮像素子の撮像領域とを説明する図である。
図15図15は、撮像素子の1回の露光時間が画像投影装置によって投影される画像のフレームレートの逆数よりも長いことが好ましい理由を説明する図である。
図16図16は、画像投影装置に対する光学系及び撮像部の回動を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、実施例1に係る画像検査装置100を示す図である。図1のように、画像検査装置100は、搭載部1、光学系10、撮像部(撮像カメラ)20、及び制御部30を備える。撮像部20は、筐体22内に設けられた撮像素子24を有する。撮像素子24は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサであるが、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサなど、その他の場合でもよい。光学系10は、凸レンズ12、凹レンズ14、及び凸レンズ16を含む。凸レンズ12、凹レンズ14、及び凸レンズ16はホルダ18で保持されている。ホルダ18は固定部材40によって撮像部20に固定されている。
【0021】
搭載部1は、画像検査装置100の検査対象である画像投影装置50を着脱可能に搭載する。画像投影装置50は、ユーザの眼球の網膜に画像を直接投影する画像投影装置であり、出射する光線70が光学系10に入射されるように搭載部1に設置される。光学系10は、画像投影装置50から照射される光線70を撮像素子24の平面形状をした撮像面24a又は撮像面24a近傍に合焦させる。制御部30は、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサである。制御部30は、専用に設計された回路でもよい。制御部30は、CPUなどのプロセッサがプログラムと協働することで、撮像部20で撮像された画像データを処理して画像の歪、解像度、輝度、パターン形状、ガンマ特性、コントラスト比、アスペクト比、及び色合いなどの画像検査を行う検査部32として機能する。これらの検査は、一般的に知られている方法を用いることができる。また、制御部30は、撮像部20で撮像された画像データ及び/又は検査部32で検査された検査データを不図示の表示部(例えば液晶ディスプレイ)に表示させてもよい。
【0022】
ここで、図2を用いて、画像投影装置50の一例を説明する。図2は、画像投影装置50の上視図である。画像投影装置50は、ユーザに画像を視認させるための光線がユーザの網膜に直接照射されるマクスウェル視を利用した網膜投影型ヘッドマウントディスプレイである。マクスウェル視では、画像を形成する光線が二次元方向に走査された走査光を瞳孔近傍で収束させて網膜に画像を投影する。
【0023】
図2のように、画像投影装置50は、光源52、ミラー54、ミラー56、走査部(スキャナー)58、ミラー60、投射部62、制御部64、及び画像入力部66を備える。光源52及び走査部58は、例えばメガネ型フレームのツル42に配置されている。投射部62は、例えばメガネ型フレームのレンズ44に配置されている。制御部64及び画像入力部66は、メガネ型フレームのツル42に設けられていてもよいし、メガネ型フレームに設けられずに外部装置(例えば携帯端末)に設けられていてもよい。
【0024】
画像入力部66は、図示しないカメラ、録画機器、及び/又は画像検査装置100などから画像データが入力される。制御部64は、入力された画像データに基づいて、光源52からの光線70の出射を制御するとともに、走査部58の走査を制御する。光源52は、制御部64の制御の下、単一又は複数の波長の光線70を出射する。光源52は、例えば赤色レーザ光(波長:610nm~660nm程度)、緑色レーザ光(波長:515nm~540nm程度)、及び青色レーザ光(波長:440nm~480nm程度)の可視光線を出射する。赤色、緑色、及び青色レーザ光を出射する光源52として、例えばRGB(赤・緑・青)それぞれのレーザダイオードチップと3色合成デバイスとが集積された光源が挙げられる。
【0025】
制御部64は、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサである。カメラをユーザの視線方向に向けて画像投影装置50の適切な位置に設置すれば、このカメラで撮像した視線方向の画像をユーザの眼球80の網膜82に投影させることができる。また、録画機器などから入力された画像を投影させたり、カメラ画像と録画機器などからの画像とを制御部64でスーパーインポーズさせたりして、いわゆる仮想現実(AR:Augmented Reality)画像を投影させることもできる。
【0026】
走査部58は、光源52から異なる時間に出射された光線70を水平方向及び垂直方向の二次元方向に走査する。走査部58は、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラーであるが、電気化学材料であるタンタル酸ニオブ酸リチウム(KTN)結晶など、その他の部品であってもよい。光源52から出射された光線70は、ミラー54及び56で反射して走査部58に入射する。
【0027】
走査部58で走査された光線70からなる走査光72は、ミラー60によってメガネ型フレームのレンズ44に向かって反射する。投射部62がメガネ型フレームのレンズ44の眼球80側の面に配置されている。このため、走査光72は投射部62に入射する。投射部62は、自由曲面又は自由曲面と回折面の合成構造をしたハーフミラーである。投射部62で反射した走査光72は、眼球80の瞳孔86近傍で収束した後に網膜82の表面に照射される。ユーザは、網膜82に照射された走査光72の残像効果によって画像を認識することができると共に、外界像をシースルーで視認することができる。
【0028】
図3は、画像投影装置50から撮像素子24に照射される光線70について説明する図である。なお、図3では、光線70の有限の光束径を図示し、その中心部分を破線で図示している。図3のように、走査光72に含まれ、異なる時間に出射される複数の光線70は、凸レンズ12、凹レンズ14、及び凸レンズ16を含む光学系10を経由して撮像素子24の撮像面24aに照射される。複数の光線70は、光学系10によって撮像素子24の平面形状をした撮像面24a又は撮像面24aの近傍に合焦する。例えば、光線70は、凸レンズ12で略平行光から集束光に変換され、凹レンズ14で集束光から拡散光に変換され、凸レンズ16で拡散光から集束光に再度変換されて、撮像面24a又は撮像面24aの近傍に合焦する。
【0029】
凸レンズ12は、例えば光線70(走査光72)が入射する側の面が凸面で、出射する側の面が平面である、平凸レンズである。凹レンズ14は、例えば光線70が入射する側及び出射する側の両面が凹面である、両凹レンズである。凸レンズ16は、例えば光線70が入射する側の面が平面で、出射する側の面が凸面である、平凸レンズである。凸レンズ12と凹レンズ14は例えば接して配置されている。凹レンズ14と凸レンズ16は例えば離れて配置されている。なお、凸レンズ12と凹レンズ14は、凹レンズ14と凸レンズ16との間隔よりも狭い間隔で離れて配置されていてもよい。走査光72は、凸レンズ12の光線70が入射する凸面の中心部で収束する。凸レンズ12の凸面に入射する際の光線70の直径は、例えば0.5mm~1mm程度である。
【0030】
凸レンズ12の凸面から撮像素子24の撮像面24aまでの長さ寸法Lは、人の眼球の水晶体の表面から網膜82の表面までの長さ寸法を眼球の屈折率を勘案して補正した距離に相当し、例えば16mm~17mm程度である。なお、凸レンズ12、16は、光線70が入射する側及び出射する側の両面が凸面である、両凸レンズの場合でもよい。凹レンズ14は、光線70が入射する側及び出射する側の一方の面が凹面で、他方の面が平面である、平凹レンズの場合でもよい。
【0031】
ここで、比較例に係る画像検査装置500について説明する。図4は、比較例に係る画像検査装置500を示す図である。図4のように、比較例の画像検査装置500は、集光レンズ90と、被投影部92と、撮像部(撮像カメラ)94と、を備える。集光レンズ90は、画像投影装置50の投射部62で反射した光線70が通過する光路上であって、走査光72が収束する位置に設けられている。被投影部92は、集光レンズ90による光線70の合焦位置近傍に配置されている。被投影部92は、集光レンズ90側が開口した半球面の形状をしていて、光線70に対して半透明な材料で形成されている。被投影部92は、光線70に対して半透明であるため、走査光72によって投影される画像を表示するとともに、画像を透過させる。
【0032】
このような構成により、光線70を集光する集光レンズ90は、眼球の水晶体とみなすことができる。半球面状の被投影部92は、眼球の網膜とみなすことができる。すなわち、水晶体に相当する集光レンズ90と網膜に相当する被投影部92とで疑似的な眼(ダミーアイ)が構成されている。したがって、被投影部92の直径は、眼球の一般的な大きさ(例えば24mm程度)になっている。
【0033】
撮像部94は、撮像素子96を有する。撮像素子96は、例えばCMOSイメージセンサである。撮像部94は、被投影部92に対して集光レンズ90とは反対側に設けられている。撮像部94は、被投影部92に投影された画像を撮像する。
【0034】
図5(a)及び図5(b)は、比較例に係る画像検査装置500で生じる課題を説明する図である。図5(b)では、画像投影装置50によって投影される画像の中心を原点とする位置座標で表している。座標を示す数値の単位はmmである。図5(a)のように、撮像部94で被投影部92に投影された画像を撮像する場合、撮像部94は、被投影部92に照射された光線70を、光線70の照射位置から撮像素子96の撮像面96aに垂直に投影した位置である垂直投影位置97で検出する。しかしながら、人は略球面状の網膜表面を平面に展開して網膜に投影された画像を認識している。このため、被投影部92に照射された光線70を撮像素子96の撮像面96aに垂直に投影した垂直投影位置97で検出する場合では、画像投影装置50により投影される画像を良好に検査することが難しい。言い換えると、被投影部92を平面に展開したときの光線70の位置である平面展開位置98で光線70を検出しないと画像投影装置50により投影される画像を良好に検査することは難しい。
【0035】
網膜に対応する被投影部92は半球面状であるため、図5(b)のように、被投影部92を平面に展開したときの光線70の位置である平面展開座標(丸印)は、被投影部92に照射された光線70を撮像素子96の撮像面96aに垂直に投影した位置である垂直投影座標(三角印)に比べて外側に広がる。例えば、左右方向の視野角が全角で40°以上となる画像76が画像投影装置50によって投影される場合で、画像76の左右方向の端近傍において、平面展開座標と垂直投影座標との差が大きくなる。なお、上下方向の視野角が大きい画像では、画像の上下方向の端近傍において、平面展開座標と垂直投影座標との差が大きくなる。このように、比較例の画像検査装置500では、画像投影装置50によってユーザの網膜に投影される画像を良好に検査することが難しい。
【0036】
図6(a)及び図6(b)は、実施例1に係る画像検査装置100の効果を説明する図である。図6(a)のように、撮像素子24の撮像面24aの搭載部1方向(言い換えると、撮像面24aの前方)に網膜82があると仮想したときに、画像投影装置50によって異なる時間に出射されて網膜82に照射される光線を光線71とする。複数の光線71のうちの画像76の端近傍における光線の1つを光線71aとし、画像76の中心に対して光線71aと対称な光線を光線71bとする。網膜82に照射された光線71aを撮像面24aに垂直に投影した位置を垂直投影位置73aとし、網膜82に照射された光線71bを撮像面24aに垂直に投影した位置を垂直投影位置75aとする。網膜82を平面展開して網膜82の表面を撮像面24aに一致させたときの撮像面24aにおける光線71aの位置を平面展開位置73bとし、光線71bの位置を平面展開位置75bとする。
【0037】
図6(b)のように、光学系10を介して撮像素子24の撮像面24aに照射される複数の光線70のうちの図6(a)の光線71aに対応する光線70aの撮像面24aにおける位置を照射位置78aとし、光線71bに対応する光線70bの撮像面24aにおける位置を照射位置78bとする。このときに、光学系10を構成する各レンズの曲率などの光学特性及び各レンズ間の距離などを適切に設計することで、照射位置78aが垂直投影位置73aよりも平面展開位置73bに近づき、照射位置78bが垂直投影位置75aよりも平面展開位置75bに近づくようにする。
【0038】
このように、実施例1では、光学系10は、複数の光線70のうち光線71aに対応する光線70aが撮像面24aに照射される照射位置78aを、光線71aを網膜82から撮像面24aに垂直に投影した垂直投影位置73aよりも網膜82を平面展開したときの平面展開位置73bに近づける光学特性を持つ。これにより、画像投影装置50によって投影される画像を良好に検査することができる。
【0039】
また、光学系10は、照射位置78aを垂直投影位置73aよりも平面展開位置73bに近づけ、且つ、複数の光線70のうちの光線71bに対応する光線70bが撮像面24aに照射される照射位置78bを、光線71bを網膜82から撮像面24aに垂直に投影した垂直投影位置75aよりも網膜82を平面展開したときの平面展開位置75bに近づける光学特性を持つ。これにより、画像投影装置50によって投影される画像を良好に検査することができる。
【0040】
図6(b)では、照射位置78aが垂直投影位置73aと平面展開位置73bの間に位置する場合を例に示し、照射位置78bが垂直投影位置75aと平面展開位置75bの間に位置する場合を例に示したが、この場合に限られない。照射位置78aは平面展開位置73bに対して垂直投影位置73aとは反対側に位置してもよいし、照射位置78bは平面展開位置75bに対して垂直投影位置75aとは反対側に位置してもよい。
【0041】
画像を良好に検査する点から、照射位置78aと平面展開位置73bの中心間隔は、垂直投影位置73aと平面展開位置73bの中心間隔の1/2以下が好ましく、1/3以下がより好ましく、1/4以下が更に好ましい。同様に、照射位置78bと平面展開位置75bの中心間隔は、垂直投影位置75aと平面展開位置75bの中心間隔の1/2以下が好ましく、1/3以下がより好ましく、1/4以下が更に好ましい。
【0042】
図7は、撮像素子24の撮像面24aに照射される光線70の位置と、網膜82を平面展開したときの撮像面24aにおける光線71の位置と、の計算結果を示す図である。図7では、画像投影装置50によって投影される画像の中心を原点とする位置座標で表している。座標を示す数値の単位はmmである。また、図7は、凸レンズ12、凹レンズ14、及び凸レンズ16として表1の仕様のものを用いた場合の計算結果である(なお、以下で示す図8図12においても同じ仕様のレンズを用いた計算結果である)。
【表1】
表1のように、凸レンズ12は、入射面の曲率半径を7.73mm、出射面の曲率半径を無限大、中心の厚みを1.6mm、硝材をオハラ社製のS-LAL8、屈折率を1.713、アッベ数を53.87とした。凹レンズ14は、入射面の曲率半径を-12.08mm、出射面の曲率半径を11.21mm、中心の厚みを1.0mm、硝材をオハラ社製のS-TIH10、屈折率を1.728、アッベ数を28.46とした。凸レンズ16は、入射面の曲率半径を無限大、出射面の曲率半径を-8.43mm、中心の厚みを1.4mm、硝材をオハラ社製のS-LAM61、屈折率を1.720、アッベ数を46.02とした。また、凸レンズ12と凹レンズ14の中心での間隔を0.39mmとし、凹レンズ14と凸レンズ16の中心での間隔を2.76mmとし、凸レンズ16の中心と撮像面24aの間隔を14.79mmとした。
【0043】
図7のように、光学系10を構成する各レンズの曲率などの光学特性及び各レンズ間の距離を適切に設計することで、画像投影装置50によって投影される画像76の全体にわたって、光線70が撮像面24aに照射される位置である照射位置座標(菱形印)と、網膜82を平面展開したときの撮像面24aにおける光線71の位置である平面展開座標(丸印)と、が略一致している。なお、略一致とは、光線70の撮像面24aでのスポット領域のうちの50%以上の領域が、網膜82を平面展開したときの撮像面24aにおける光線71のスポット領域と重なっている場合である。
【0044】
このように、光学系10は、光線70aが撮像面24aに照射される照射位置78aが網膜82を平面展開して網膜82の表面を撮像面24aに一致させたときの撮像面24aにおける光線71aの平面展開位置73bに略一致させる光学特性を持つことが好ましい。また、光学系10は、光線70bが撮像面24aに照射される照射位置78bが網膜82を平面展開して網膜82の表面を撮像面24aに一致させたときの撮像面24aにおける光線71bの平面展開位置75bに略一致させる光学特性を持つことが好ましい。これにより、画像投影装置50によって投影される画像をより良好に検査することができる。
【0045】
また、光学系10は、複数の光線70が撮像面24aに照射される複数の照射位置の全てを、網膜82を平面展開して網膜82の表面を撮像面24aに一致させたときの撮像面24aにおける複数の光線71の複数の平面展開位置のうち対応する平面展開位置に略一致させる光学特性を持つことが好ましい。これにより、画像投影装置50によって投影される画像を更に良好に検査することができる。なお、複数の光線70が撮像面24aに照射される複数の照射位置の80%以上が、網膜82を平面展開したときの撮像面24aにおける複数の光線71の複数の平面展開位置のうちの対応する平面展開位置に略一致している場合でもよい。複数の光線70が撮像面24aに照射される複数の照射位置の90%以上が、網膜82を平面展開したときの撮像面24aにおける複数の光線71の複数の平面展開位置のうちの対応する平面展開位置に略一致している場合でもよい。
【0046】
画像を良好に検査する点から、複数の光線70の撮像面24aのスポット領域のうちの70%以上の領域が、網膜82を平面展開したときの撮像面24aにおける光線71のスポット領域と重なることが好ましく、80%以上の領域が重なることがより好ましく、90%以上の領域が重なることが更に好ましい。
【0047】
また、画像検査装置100では、光学系10を構成する各レンズの曲率などの光学特性及び各レンズ間の距離を適切に設計して、画像投影装置50によって撮像素子24の撮像面24aに投影される画像の収差を、画像投影装置50によってユーザの網膜82に投影される画像の収差に近づけるようにしている。このことについて説明する。図8(a)は、緑色レーザ光からなる光線71が画像投影装置50からユーザの網膜82に照射されるときのストレール比の計算結果を示す図である。図8(b)は、緑色レーザ光からなる光線70が画像投影装置50から光学系10を介して撮像素子24の撮像面24aに照射されるときのストレール比の計算結果を示す図である。ここで、ストレール比とは、照射されたレーザの強度分布の最大強度比のことであり、ストレール比をS、波長をλ、波面収差のRMS(二乗平均平方根)値をWとすると、S=1-(2π/λ)×Wで算出される。図8(c)は、図8(a)及び図8(b)の点線でのストレール比である。図8(a)及び図8(b)では、画像投影装置50によって投影される画像の中心を原点とした走査部の走査角度で表している。座標軸は走査角の角度(°)である。
【0048】
図8(a)から図8(c)のように、光学系10を構成する各レンズの曲率などの光学特性及び各レンズ間の距離を適切に設計して、緑色レーザ光(波長:520nm)が撮像素子24の撮像面24aに照射されるときのストレール比を、緑色レーザ光が網膜82に照射されるときのストレール比に略一致させている。すなわち、画像の中央部におけるストレール比は高く、周辺部におけるストレール比は低い傾向を、光学系10を適切に設計することで、撮像素子24の撮像面24aで再現している。
【0049】
図9(a)から図9(c)は、赤色、緑色、又は青色レーザ光からなる光線71が画像投影装置50からユーザの網膜82に照射されるときのストレール比の計算結果を示す図である。図9(d)から図9(f)は、赤色、緑色、又は青色レーザ光からなる光線70が画像投影装置50から光学系10を介して撮像素子24の撮像面24aに照射されるときのストレール比の計算結果を示す図である。図9(a)から図9(f)では、画像投影装置50によって投影される画像の中心を原点とした走査部の走査角度で表している。座標軸は走査角の角度(°)である。
【0050】
図9(b)及び図9(e)のように、光学系10を構成する各レンズの曲率などの光学特性及び各レンズ間の距離を適切に設計して、緑色レーザ光が撮像素子24の撮像面24aに照射されるときのストレール比を、緑色レーザ光が網膜82に照射されるときのストレール比に略一致させている。
【0051】
緑色レーザ光におけるストレール比を撮像面24aと網膜82で略一致させることで、図9(a)及び図9(d)のように、青色レーザ光(波長:450nm)が撮像面24aに照射されるときのストレール比は、青色レーザ光が網膜82に照射されるときのストレール比と同じ傾向を示している。すなわち、画像の中央部におけるストレール比は高く、周辺部におけるストレール比は低い傾向が、撮像面24aで再現されている。同様に、図9(c)及び図9(f)のように、赤色レーザ光(波長:640nm)が撮像面24aに照射されるときのストレール比は、赤色レーザ光が網膜82に照射されるときのストレール比と同じ傾向を示している。すなわち、画像の中央部におけるストレール比は高く、周辺部におけるストレール比は低い傾向が、撮像面24aで再現されている。
【0052】
図9(d)から図9(f)のように、光学系10は、撮像素子24で撮像される画像の中央部におけるストレール比を端部におけるストレール比よりも高くさせる光学特性を持つことが好ましい。これにより、画像投影装置50によって投影される画像を良好に検査することができる。
【0053】
また、光学系10は、緑色レーザ光が撮像面24aに照射されるときのストレール比と緑色レーザ光が網膜82に照射されるときのストレール比との相違を、青色レーザ光が撮像面24aに照射されるときのストレール比と青色レーザ光が網膜82に照射されるときのストレール比との相違よりも小さくさせる光学特性を持つことが好ましい。また、光学系10は、緑色レーザ光が撮像面24aに照射されるときのストレール比と緑色レーザ光が網膜82に照射されるときのストレール比との相違を、赤色レーザ光が撮像面24aに照射されるときのストレール比と赤色レーザ光が網膜82に照射されるときのストレール比との相違よりも小さくさせる光学特性を持つことが好ましい。緑色レーザ光の波長帯域は、青色レーザ光の波長帯域と赤色レーザ光の波長帯域の間に位置する。したがって、緑色レーザ光での撮像面24aにおけるストレール比と網膜82におけるストレール比との相違を小さくすることで、青色及び赤色レーザ光での撮像面24aにおけるストレール比と網膜82におけるストレール比との相違を小さくすることができる。よって、画像投影装置50によって投影される画像を良好に検査することができる。
【0054】
図10(a)から図10(c)は、赤色、緑色、又は青色レーザ光からなる光線71が画像投影装置50からユーザの網膜82に照射されるときのRMS波面収差の計算結果を示す図である。図10(d)から図10(f)は、赤色、緑色、又は青色レーザ光からなる光線70が画像投影装置50から光学系10を介して撮像素子24の撮像面24aに照射されるときのRMS波面収差の計算結果を示す図である。図10(a)から図10(f)では、画像投影装置50によって投影される画像の中心を原点とした走査部の走査角度で表している。座標軸は走査角の角度(°)である。
【0055】
図10(b)及び図10(e)のように、光学系10を構成する各レンズの曲率などの光学特性及び各レンズ間の距離を適切に設計することで、緑色レーザ光(波長:520nm)が撮像素子24の撮像面24aに照射されるときのRMS波面収差を、緑色レーザ光が網膜82に照射されるときのRMS波面収差に略一致させている。すなわち、画像の中央部におけるRMS値は小さく、周辺部におけるRMS値は大きい傾向を、撮像素子24の撮像面24aで再現している。
【0056】
緑色レーザ光でのRMS波面収差を撮像面24aと網膜82で略一致させることで、図10(a)及び図10(d)のように、青色レーザ光(波長:450nm)が撮像面24aに照射されるときのRMS値は、青色レーザ光が網膜82に照射されるときのRMS値と同じ傾向を示している。すなわち、画像の中央部におけるRMS値は小さく、周辺部におけるRMS値は大きい傾向が、撮像面24aで再現されている。同様に、図10(c)及び図10(f)のように、赤色レーザ光(波長:640nm)が撮像面24aに照射されるときのRMS値は、赤色レーザ光が網膜82に照射されるときのRMS値と同じ傾向を示している。すなわち、画像の中央部におけるRMS値は小さく、周辺部におけるRMS値は大きい傾向が、撮像面24aで再現されている。
【0057】
図10(d)から図10(f)のように、光学系10は、撮像素子24で撮像される画像の中央部におけるRMS波面収差を端部におけるRMS波面収差よりも小さくさせる光学特性を有してもよい。
【0058】
次に、画像投影装置50によって撮像素子24の撮像面24aに照射される複数の光線70それぞれの色ずれについて説明する。図11(a)は、ユーザの網膜82を平面展開したときの光線71の色ずれの計算結果を示す図、図11(b)は、光学系10を介して撮像素子24の撮像面24aに照射される光線70の色ずれの計算結果を示す図である。図11(a)及び図11(b)では、画像投影装置50により投影される画像の中心を原点とした走査部の走査角度で表している。座標軸は走査角の角度(°)である。
【0059】
図11(a)及び図11(b)のように、光学系10を構成する各レンズの曲率などの光学特性及び各レンズ間の距離を適切に設計することで、画像投影装置50から網膜82に照射される複数の光線71と画像投影装置50から撮像素子24の撮像面24aに照射される複数の光線70とで、対応する光線の赤色レーザ光R、緑色レーザ光G、及び青色レーザ光Bの位置ずれの傾向を一致させている。すなわち、網膜82に照射される複数の光線71は、原点から離れるに連れて、赤色レーザ光Rは緑色レーザ光Gに対して外側に位置がずれ、青色レーザ光Bは緑色レーザ光Gに対して内側に位置がずれているが、この傾向が撮像素子24の撮像面24aで再現されている。
【0060】
図12は、図11(a)及び図11(b)のX軸上での緑色レーザ光と青色レーザ光との位置ずれ量を示す図である。図12において、撮像素子24の撮像面24aに照射される緑色レーザ光Gと青色レーザ光Bの位置ずれ量を太線で、網膜82に照射される緑色レーザ光Gと青色レーザ光Bの位置ずれ量を細線で示している。また、それぞれの位置ずれ量の差を破線で示している。なお、緑色レーザ光Gと青色レーザ光Bの位置ずれ量とは、緑色レーザ光Gの中心位置と青色レーザ光Bの中心位置との差である。
【0061】
図12のように、原点から離れるに従って、撮像素子24の撮像面24aでの緑色レーザ光と青色レーザ光の位置ずれ量と網膜82での緑色レーザ光と青色レーザ光の位置ずれ量との差が大きくなっている。走査角度が10°の位置では、撮像素子24の撮像面24aでの緑色レーザ光と青色レーザ光の位置ずれ量と網膜82での緑色レーザ光と青色レーザ光の位置ずれ量との差は6μm程度となっている。
【0062】
表2は、図11(a)及び図11(b)の点Aから点Eでの、撮像素子24の撮像面24aに照射される緑色レーザ光と青色レーザ光の位置ずれ量と網膜82に照射される緑色レーザ光と青色レーザ光の位置ずれ量との差を示している。また、表2は、図11(a)及び図11(b)の点Aから点Eでの、撮像素子24の撮像面24aに照射される赤色レーザ光と緑色レーザ光の位置ずれ量と網膜82に照射される赤色レーザ光と緑色レーザ光の位置ずれ量との差を示している。
【表2】
【0063】
表2のように、撮像素子24の撮像面24aでの緑色レーザ光と青色レーザ光の位置ずれ量と網膜82での緑色レーザ光と青色レーザ光の位置ずれ量との差は12.32μm以下で、概ね13μm以下になっている。同様に、撮像素子24の撮像面24aでの赤色レーザ光と緑色レーザ光の位置ずれ量と網膜82での赤色レーザ光と緑色レーザ光の位置ずれ量との差は12.32μm以下で、概ね13μm以下になっている。例えば、画像投影装置50からユーザの眼球80の角膜に入射するときの光線の直径が0.5mm程度である場合、網膜82でのスポット径は40μm程度となる。このため、投影画像の周辺での位置ずれ量の差が13μm程度あったとしても、画像投影装置50によって投影される画像の品質を検査する上での影響は小さい。
【0064】
図11(a)及び図11(b)のように、光学系10は、複数の光線70が撮像素子24の撮像面24aに照射されるときの緑色レーザ光に対する赤色レーザ光及び青色レーザ光の位置ずれ方向が、複数の光線71がユーザの網膜82に照射されるときの緑色レーザ光に対する赤色レーザ光及び青色レーザ光の位置ずれ方向と同じになるようにする光学特性を持つことが好ましい。これにより、画像投影装置50によって投影される画像を良好に検査することができる。
【0065】
図3のように、光学系10は、走査光72が入射される側から順に並んだ凸レンズ12、凹レンズ14、及び凸レンズ16を含む場合を例に示したが、その他の場合でもよい。光学系10が凸レンズ12、凹レンズ14、及び凸レンズ16の3つのレンズからなる場合、光学系10の構成を簡素化することができる。走査光72は、凸レンズ12の凸面で集束する場合を例に示したが、その他の場合でもよい。光学系10が走査光72の収束位置に設けられていればよい。
【0066】
撮像素子24の解像度は、画像投影装置50により投影される画像の解像度以上であることが好ましい。図13(a)から図13(d)は、撮像素子24の解像度が画像投影装置50により投影される画像の解像度以上であることが好ましい理由を説明する図である。図13(a)は、画像投影装置50によって撮像素子24の撮像面24aに投影される画像を示す図、図13(b)から図13(d)は、撮像素子24で撮像される画像を示す図である。なお、図13(a)から図13(d)では、画像投影装置50により投影される白黒画像の彩度(濃淡)をハッチングの濃さで表している。
【0067】
図13(a)のように、画像投影装置50による画像投影領域68内に黒パターン46の画像が投影されている。黒パターン46の間は画像投影装置50から光線70が照射されずにパターンが投影されていない領域である。図13(b)のように、撮像素子24の解像度が画像投影装置50によって投影される画像の解像度よりも低い場合、黒パターン46の一部が周期的に撮像されないこと及び黒パターン46の彩度(濃淡)が正確に反映されていない黒パターン46aが撮像されてしまうことが生じる。図13(c)のように、撮像素子24の解像度が画像投影装置50によって投影される画像の解像度と同等である場合、黒パターン46の一部が撮像されないことが抑制される。図13(d)のように、撮像素子24の解像度が画像投影装置50によって投影される画像の解像度の2倍である場合、黒パターン46の彩度(濃淡)をより正確に反映して撮像することができる。
【0068】
このように、撮像素子24の解像度を画像投影装置50によって投影される画像の解像度以上とすることで、画像投影装置50によって投影される画像の一部を撮像素子24で撮像できないことを抑制できる。画像投影装置50によって投影される画像の濃淡をより正確に反映させて撮像する点から、撮像素子24の解像度は画像投影装置50によって投影される画像の解像度の2倍以上であることが好ましく、3倍以上であることがより好ましく、4倍以上であることが更に好ましい。
【0069】
図14は、画像投影装置50の画像投影領域68と撮像素子24の撮像領域26とを説明する図である。図14のように、画像投影装置50によって投影される画像を撮像素子24で撮像するために、撮像素子24の撮像領域26は、画像投影装置50の画像投影領域68よりも大きいことが好ましい。例えば、撮像領域26の縦辺の長さは画像投影領域68の縦辺の長さの1.2倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましく、1.8倍以上が更に好ましい。同様に、撮像領域26の横辺の長さは画像投影領域68の横辺の長さの1.2倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましく、1.8倍以上が更に好ましい。
【0070】
撮像素子24は、画像投影装置50によって投影される画像を1又は複数回の連続した露光時間で撮像し、1回の連続した露光時間が画像投影装置50によって投影される画像のフレームレートの逆数よりも長いことが好ましい。例えば、撮像素子24の1回の連続した露光時間は、画像投影装置50によって投影される画像のフレームレートが60fpsである場合は1/60秒より長く、画像のフレームレートが30fpsである場合は1/30秒より長い場合が好ましい。
【0071】
図15は、撮像素子24の1回の露光時間が画像投影装置50によって投影される画像のフレームレートの逆数よりも長いことが好ましい理由を説明する図である。図15のように、撮像素子24の1回の露光時間Aが画像投影装置50で投影される画像のフレームレートの逆数よりも短い場合、画像全体を撮像できないことが生じる。一方、撮像素子24の1回の露光時間Bを画像投影装置50で投影される画像のフレームレートの逆数よりも長くすることで、投影される画像の途中から撮像を開始して途中で撮像が終わって画像全体が撮像されないことを抑制できる。画像投影装置50で投影される画像全体を撮像する点から、撮像素子24の1回の露光時間は、画像投影装置50で投影される画像のフレームレートの逆数の2倍以上である場合が好ましく、可能な限り長い場合がより好ましい。
【0072】
なお、画像投影装置50と、画像検査装置100の制御部30と、を有線や無線での通信手段などで接続することによって、画像投影装置50による画像の投影タイミングと撮像素子24による撮像タイミング(水平同期、垂直同期など)とを同期させることで、画像投影装置50で投影される画像を撮像素子24で撮像してもよい。この場合、画像投影タイミングと撮像タイミングを同期させているため、撮像素子24によって1フレーム分、または複数フレームの画像を撮像することができる。
【0073】
図16は、画像投影装置50に対する光学系10及び撮像部20の回動を説明する図である。図16のように、画像投影装置50の投射部62から投射される走査光72の収束点74(実施例1では凸レンズ12の光線70が入射する凸面の部分)を中心に、光学系10及び撮像部20が画像投影装置50に対して回動可能となっていてもよい。光学系10及び撮像部20の画像投影装置50に対する回動は、左右方向の回動、上下方向の回動、又は上下左右方向の回動であってもよい。ユーザは、画像投影装置50によって網膜に投影される画像の周辺部分を見る場合、視線を移動して画像の周辺部分を見る。したがって、ユーザの視線が移動したときの画像を良好に検査するために、光学系10及び撮像部20は、画像投影装置50から照射される走査光72が収束する位置を中心に画像投影装置50に対して回動可能であることが好ましい。
【0074】
光学系10及び撮像部20の画像投影装置50に対する相対的な回動は、光学系10及び撮像部20をステージ48上に載せ、このステージ48を回転させることで行われてもよいし、その他の方法で行われてもよい。光学系10及び撮像部20の回動は、検査者がステージ48を手動で動かすことで行ってもよいし、検査者が制御部30に指示を与えて制御部30がステージ48を動かすことで行ってもよい。
【0075】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 搭載部
10 光学系
12、16 凸レンズ
14 凹レンズ
20 撮像部
22 筐体
24 撮像素子
24a 撮像面
26 撮像領域
30 制御部
32 検査部
46、46a 黒パターン
48 ステージ
50 画像投影装置
52 光源
58 走査部
62 投射部
64 制御部
66 画像入力部
68 画像投影領域
70、70a、70b、71、71a、71b 光線
72 走査光
73a、75a 垂直投影位置
74 収束点
73b、75b 平面展開位置
76 画像
78a、78b 照射位置
80 眼球
82 網膜
86 瞳孔
100 画像検査装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16