(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】植物栽培方法、植物栽培システム及びラック
(51)【国際特許分類】
A01G 9/00 20180101AFI20220816BHJP
A01G 9/02 20180101ALI20220816BHJP
A01G 9/14 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
A01G9/00 C
A01G9/02 B
A01G9/14 W
(21)【出願番号】P 2020006944
(22)【出願日】2020-01-20
(62)【分割の表示】P 2019542248の分割
【原出願日】2018-03-15
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】515236189
【氏名又は名称】プランツラボラトリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】湯川 敦之
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-182040(JP,A)
【文献】特開2007-252315(JP,A)
【文献】特開2017-112894(JP,A)
【文献】特開2015-053927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00
A01G 9/02
A01G 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台のラックであって、前記複数台のラックの各々は、植物を栽培する複数の栽培槽を備える、複数台のラックと、
前記複数台のラックを接離可能なように配列し、前記複数台のラックが一体的に前進するように誘導する走行ラインと、
主線と、
隣接したラック間に接続可能な複数の副線と
を備え、
前記複数台のラックの各々は、
それぞれ前記複数の栽培槽の各々に給水する給水管と、前記複数の栽培槽の各々から排水する排水管と、前記ラックの下部に設けられる前記給水管と前記排水管との間で水を循環させるためのポンプおよびタンクと、複数の栽培槽で栽培されている植物を照明する照明手段と、前記複数の副線のうちの1つを備え、
前記ポンプは、前記給水管から前記栽培槽に給水された水が前記排水管を介して前記タンクに戻った後に再度前記給水管に流れることで、前記ラックの各々において水が循環可能であるように構成され、
前記主線および前記複数の副線は、前記ポンプと前記照明装置とを駆動させるための電線であり、
前記複数台のラックのうちの先頭のラックが備える前記複数の副線のうちの1つは前記主線に接続され、前記先頭のラック以外のそれぞれのラックが備える前記複数の副線のうちの1つは、それぞれ隣接する前方のラックに接続されている、植物栽培システム。
【請求項2】
前記走行ラインは、床に設けられている、請求項1に記載の植物栽培システム。
【請求項3】
前記走行ラインは、ガイドレールを備えている、請求項1
または2の植物栽培システム。
【請求項4】
前記複数台のラックの各々は、キャスタを備えている、請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の植物栽培システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の植物栽培システムを用いて植物を栽培することを含む、植物栽培方法。
【請求項6】
前記複数の栽培槽を前記複数台のラックの各々にセットする工程と、
前記複数台のラックを植物の生育順に隣り合わせて走行ライン上に並べる工程と、
植物の生育状態に合わせて前記複数台のラックを間歇的に前進させる工程と、
前記複数台のラックのうちの先頭のラックを前記複数台のラックのうちの後続のラックから分離し、前記後続のラックの後尾のラックに新規のラックを隣り合わせる工程と
を含み
、
前記複数の栽培槽は、植物の播種、育苗、定植の各生育状態に応じて、隣り合った植物の間隔が密から疎に植え替えられる複数種類使用され、
前記複数台のラックの各々が備えるタンクには、それぞれ植物の播種、育苗、定植の各生育状態に応じた液体が供給される、請求項5に記載の植物栽培方法。
【請求項7】
前記複数台のラックの各々備えるタンクには、それぞれ植物の播種状態においては真水が、植物の育苗状態においては培養液が、そして植物の定植状態においては定植用の養液が供給される、請求項6に記載の植物栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内で植物を栽培するための植物栽培方法、植物栽培システム及び植物栽培システムで使用するラックに関する。
【背景技術】
【0002】
屋内で栽培される野菜などの植物は、一般的に「播種」「育苗」「定植」「収穫」という工程を経て出荷される。このような工程を経て植物を栽培するための専用のラックが種々提供されている。例えば、特許文献1には、移動可能式ラックと固定式ラックとを備えた植物栽培ラックユニットが記載されている。
【0003】
移動可能式ラックは、複数の栽培槽を載置する多段の棚と、この棚を固定する第1のフレームと、この第1のフレームの下端に固定されたキャスタとを備えている。固定式ラックは、床上に固定される第2のフレームを備えている。第2のフレームは、2台の移動可能式ラックを並べて収納する空間を有している。この植物栽培ラックユニットは、栽培槽で育成された植物を出荷したり異なる場所に移動したりするときに、移動可能式ラックを固定式ラックの空間内から取り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された植物栽培ラックユニットは、移動可能式ラックが固定式ラックの空間内から取り出されるため、固定式ラックの前面に移動可能式ラックが引き出されるためのスペースが必要になる。また、この植物栽培ラックユニットが複数列に並ぶように設置される場合は、隣り合っている植物栽培ラックユニット間に通路が設けられる。したがって、この植物栽培ラックユニットを設置した屋内では、移動可能式ラックを引き出すためのスペースや通路において植物を栽培することができず、作付面積が小さくなる。
【0006】
本発明は、屋内において栽培される植物の作付面積を向上させる植物栽培方法、植物栽培システム、及び植物栽培システムに備えられたラックを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る植物栽培方法は、
植物を栽培する栽培槽をラックにセットする工程と、
前記ラックを植物の生育順に複数台、隣り合わせて走行ライン上に並べる工程と、
植物の生育状態に合わせて前記ラックを間歇的に前進させる工程と、
先頭の前記ラックを後続の前記ラックから分離し、後続の前記ラックの後尾の前記ラックに新規の前記ラックを隣り合わせる工程と、
を含んでいる。
【0008】
前記本発明に係る植物栽培方法において、
前記栽培槽は、植物の播種、育苗、定植の各生育状態に応じて、隣り合った植物の間隔が密から疎に植え替えられる複数種類使用されてもよい。
【0009】
前記本発明に係る植物栽培システムは、
植物を栽培する栽培槽をセットする複数台のラックと、
前記複数台のラックを接離可能なように複数台配列し、当該複数台のラックが一体的に前進するように誘導する走行ラインと、
を備え、
前記栽培槽で栽培されている植物の生育状態に応じて先頭の前記ラックが後続の前記ラックから離れて前進可能とされている。
【0010】
前記本発明に係る植物栽培システムにおいて、
前記走行ラインは、ガイドレールを備えていてもよい。
前記本発明に係る植物栽培システムにおいて、
前記ラックは、キャスタを備えていてもよい。
前記本発明に係る植物栽培システムにおいて、
前記ラックは、前記栽培槽で栽培されている植物を照明する照明手段を備えていてもよい。
前記本発明に係る植物栽培システムにおいて、
前記ラックは、前記栽培槽内に給水する給水管と、前記栽培槽内から排水する排水管と、前記給水管と前記排水管との間で水を循環させるポンプとを備えていてもよい。
【0011】
前記課題を解決するため、本発明に係るラックは、
前記本発明に係る植物栽培システムに備えられたラックである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、屋内において栽培される植物の作付面積を向上させる植物栽培方法、植物栽培システム、及び植物栽培システムに備えられたラックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る植物栽培システムの一実施形態を示した概略斜視図である。
【
図2】本発明に係るラックの一実施形態を示した概略斜視図である。
【
図3】本発明に係る植物栽培方法の一実施形態を示した説明図である。
【
図4】本発明に係る植物栽培方法における播種の走行ラインの一実施形態を示した説明図であり、(a)は第1段階、(b)は第2段階、(c)は第3段階、(d)は第4段階を示した説明図である。
【
図5】本発明に係る植物栽培方法における定植の走行ラインの一実施形態を示した説明図であり、(a)は第1段階、(b)は第2段階、(c)は第3段階、(d)は第4段階を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る植物栽培システム、ラック及び植物栽培方法の一実施形態について
図1乃至
図5を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る植物栽培システムの一実施形態を示した概略斜視図である。
図2は、本発明に係るラックの一実施形態を示した概略斜視図である。
図3は、本発明に係る植物栽培システムの一実施形態を示した説明図である。
図4は、本発明に係る植物栽培方法における播種の走行ラインの一実施形態を示した説明図であり、(a)は第1段階、(b)は第2段階、(c)は第3段階、(d)は第4段階を示した説明図である。
図5は、本発明に係る植物栽培方法における定植の走行ラインの一実施形態を示した説明図であり、(a)は第1段階、(b)は第2段階、(c)は第3段階、(d)は第4段階を示した説明図である。
【0015】
図1に示すように、植物栽培システムは、植物Pを栽培するための複数台のラック1を備えている。
図3に示すように、この植物栽培システムは、屋内に設置され、播種、育苗、定植の工程ごとに走行ラインA,B,Cを有している。ラック1は、それぞれの走行ラインA,B,Cで複数台配列されている。複数台のラック1は、走行ラインA,B,Cに沿って切離可能内容に間歇的に移動する。
【0016】
図1に示すように、植物Pは、ラック1内にセットされた栽培槽2内で栽培される。栽培槽2は、真水や培養液などの水を溜めるトレー部21と、このトレー部21の底面上に置かれる苗床パレット22又はトレー部21の上面を塞ぐ板状の定植パレット23(
図3参照)とを備えている。
【0017】
苗床パレット22は、播種の工程及び育苗の工程で使用される。苗床パレット22は、スポンジやウレタンフォームなどで成形されている。苗床パレット22は、1本の植物Pを成長させる定植セグメント(図示せず)に切断しやすくするために、縦横に切目(図示せず)が入れられている。苗床パレット22は、切目で囲まれた各領域の中心に種を置く窪み(採番せず)や種を入れる切込み(図示せず)が形成されている。苗床パレット22は、トレー部21の底面上に置かれる。
【0018】
定植パレット23は、定植の工程で使用される。定植の工程では、植物Pが定植セグメントで出荷できるまで大きく成長する。定植パレット23は、多数の穴を空けたパネルである。各穴に栽培ポット(図示せず)が嵌め込まれる。栽培ポット内には、定植セグメントが入れられる。
【0019】
定植パレット23は、定植の工程で成長する植物Pは、播種や育苗の工程で成長する植物Pよりも大きい。したがって、苗床パレット22に空けられた多数の穴の間隔は、苗床パレット22で蒔かれた多数の種の間隔よりも大きくされている。定植パレット23で栽培する苗の数は、播種の工程及び育苗の工程で栽培する苗の数よりも少なくされている。
【0020】
図2に示すように、このような栽培槽2をセットするラック1は、4本の支柱11と、2本の支柱11に架け渡された複数対の主ビーム12及び複数対の副ビーム13と、一対の主ビーム12間に架け渡された複数本の桟(図示せず)と、各支柱11の下端に取り付けられたキャスタ15とを備えている。4本の支柱11は、間隔が広い一対と、間隔が狭い一対とによって、平面視が長方形の角に位置するように配置されている。
【0021】
主ビーム12は、広い間隔の支柱11間に架け渡される。副ビーム13は、狭い間隔の支柱11間に架け渡される。主ビーム12及び副ビーム13は、高さ方向にも一定の間隔を開けて支柱11に固定されている。一対の主ビーム12間に架け渡された桟の上に1台の栽培槽2が載せられる(セットされる)。図示したラック1は、4台の栽培槽2をセットできるように、主ビーム12、副ビーム13及び桟が4段に設けられている。
【0022】
ラック1には、鉛直方向の給水管16と鉛直方向の排水管17とが備えられている。給水管16は、ラック1の一端側において上下方向に並んだ副ビーム13に架け渡される。給水管16は、各栽培槽2のトレー部21内に真水又は培養液などの水を供給するようにトレー部21の一方の端部の上面開口側に取り付けられる。排水管17は、ラック1の他端側において上下方向に並んだ副ビーム13に架け渡される。排水管17は、トレー部21の他方の端部の底側に取り付けられる。トレー部21内に給水されながら、植物Pに吸い取られなかった水が排水管17から排水される。
【0023】
ラック1の下部には、排水管17に戻された水を給水管16へ循環させるために、タンク18及びポンプ(図示せず)が置かれている。水が植物Pに吸い取られるなどによって減ると、その減った分の水がタンク18に補給される。
【0024】
ラック1は、光源19を備えている。光源19は、栽培槽2内の植物Pを均等に照明するため、例えば桟の下側に取り付けられる。光源19としては、例えば管状のLEDランプや平板状のLEDランプなどが採用される。光源19は、図示したような2本に限らず、1本でも3本以上であってもよい。LEDランプは、植物Pの生育に適した波長の光を出すことができる。ラック1には、ポンプを駆動させたり、光源19を発光させたりするための電源ライン(図示せず)が配線されている。
【0025】
走行ラインA,B,Cの上方、例えば天井(図示せず)付近には、ポンプを駆動したり光源19を発光させたりするための電線3が架設されている。電線3には、走行ラインと同じ方向で、ラック1よりも高い位置に架設された主線31と、主線31から分岐し、ラック1の方へ垂れ下がる枝線32とがある。枝線32は、ラック1の移動に追従できるように主線31に接続されている。ラック1に配線された電源ラインは、枝線32と接続するコンセント(図示せず)を備えている。
【0026】
このようなラック1は、播種の走行ライン(以下、「播種ライン」という。)A上、育苗の走行ライン(以下、「育苗ライン」という。)B上、そして定植の走行ライン(以下、「定植ライン」という。)C上にそれぞれ複数台(図面では4台)が接離可能なように並べられる。ラック1は、長辺側同士が接離する。ラック1は、植物Pの生育状況に応じて各走行ラインA,B,C上を、短辺の長さを一ピッチとして間歇的に前進する。
【0027】
ラック1は、作業者が押すことで前進する。この場合は、各走行ラインA,B,Cには、ラック1を所定位置で停止させるストッパが備えられる。ただし、キャスタ15がモータ(図示せず)によって駆動し、モータが制御手段に制御されるようにしてもよい。制御手段は、モータを所定のタイミングで一定期間だけ駆動させ、ラック1を間歇的に一定のピッチで前進させる。ラック1が前進する一定のピッチは、ラック1の幅である。
【0028】
各走行ラインA,B,Cは、一対の平行なガイドレール4を備えている。一対のガイドレール4の間隔は、ラック1の長辺の長さとほぼ同じとされている。一対のガイドレール4は、ラック1の対のキャスタ15又はラック1の最下の副ビーム13に当たるように床に固定されている。
【0029】
播種ラインAでは、苗床パレット22に蒔(ま)かれた種が発芽するまでの間(例えば8日)、ラック1が一定期間(例えば2日)ごとに定ピッチで間歇的に前進する。苗床パレット22で発芽した植物Pは、収穫できるまで成長した植物Pよりもはるかに小さい。したがって、苗床パレット22に蒔かれる種のピッチは、定植パレット23の穴のピッチよりも狭くされている。
【0030】
苗床パレット22は、トレー部21の底面上に置かれる。トレー部21の底面上に苗床パレット22を置いた栽培槽2は、ラック1の桟の上に置かれる(セットされる)。
【0031】
育苗ラインBでは、苗床パレット22で発芽した苗が成長する、すなわち、根が伸び、茎が太くなり、葉が出るまでの間(例えば8日)、ラック1が一定期間(例えば2日)ごとに定ピッチで間歇的に前進する。育苗ラインBで使用する苗床パレット22及びトレー部21は、播種ラインAで使用した苗床パレット22及びトレー部21と同じである。したがって、播種ラインAを移動したラック1がそのまま育苗ラインBに移動する。又は、播種ラインAのラック1にセットされた栽培槽2が育苗ラインBのラック1に移載(セット)される。
【0032】
定植ラインCでは、育苗ラインBで成長した植物Pをさらに成長させ、収穫するまでの間(例えば16日)、ラック1が一定期間(例えば1日)ごとに定ピッチで間歇的に前進する。定植ラインCでは、定植パレット23がトレー部21の上面を塞いだ栽培槽2が使用される。この栽培槽2の定植パレット23の穴には、栽培ポットが嵌められている。栽培ポット内には、苗床パレット22を切断した定植セグメントが入れられる。各定植セグメントでは、1本の植物Pが成長する。栽培ポットをセットした栽培槽2は、定植ラインCのラック1にセットされる。
【0033】
ここで、
図3乃至
図5を参照しながら、本発明に係る植物栽培システムによる植物栽培方法について説明する。
【0034】
まず、種を苗床パレット22に蒔く。種は、苗床パレット22の窪み又は切込みに定ピッチで蒔かれる。次に、種が蒔かれた苗床パレット22をトレー部21の底面上に置いた栽培槽2をラック1内にセットする。栽培槽2は、ラック1内に複数段(図面では4段)セットされる。
図4(a)に示すように、このラック1は、播種ラインAに並べられた複数台(図面では3台)のラック1の後尾に並べられる。したがって、
図1及び
図4(b)に示すように、播種ラインAでは4台のラック1が並んだ状態で栽培される。
【0035】
図2に示すように、後尾に並べられたラック1内のトレー部21には、給水管16と排水管17とが取り付けられる。ラック1に備えられたタンク18には、真水が溜められる。給水管16と排水管17との間で真水が循環し、栽培槽2内の苗床パレット22が真水で浸かる状態とされる。
【0036】
既に並べられている3台のラック1の各トレー部21にも、給水管16と排水管17とが接続されている。後尾に並べられたラック1には、電源ラインに備えられたコンセントによって電線3の枝線32が接続される。既に並べられている3台のラック1にも、電源ラインと電線3の枝線32が接続されている。電源ラインが電線3の枝線32に接続されることで、ポンプが駆動して、真水が循環し、ラック1内の光源19が苗床パレット22を照明する。
【0037】
日数が経つことで、苗床パレット22に蒔かれた芽が発芽する。播種ラインAのラック1が例えば2日ごとに1ピッチ前進する場合、
図4(b)に示すように、後尾に並べられたラック1は、6日目に先頭まで前進する。ラック1は、ガイドレール4に沿って直進する。ラック1は、4台が一体となって前進する。ラック1は、キャスタ15によってスムーズに前進する。播種ラインAでのラック1が前進すると、電線3の枝線32が追従する。
【0038】
図4(c)に示すように、先頭に並んだラック1内の植物Pは、一定期間、例えば2日間栽培された後、播種ラインAから離れて育苗ラインBへ移動する。このラック1が播種ラインAから離れるに際して、電線3の枝線32が電源ラインのコンセントから抜かれる。播種ラインAの先頭の位置は、スペースが空いた状態となる。先頭のラック1内の苗床パレット22に蒔かれた植物Pは、葉が生え始め、小さな苗に成長している。
【0039】
次に、
図4(d)に示すように、並んでいる3台のラック1が一体的に1ピッチ前進し、後尾にスペースを空けた状態とする。
図4(a)に示すように、この後尾のスペースには、新たなラック1が並べられる。
【0040】
図3に示すように、播種ラインAから離れたラック1は、育苗ラインBの後尾に並べられる。このラック1の電源ラインと育苗ラインBの電線3の枝線32とが接続される。このラック1のタンク18には、培養液が溜められる。培養液は、給水管16と排水管17とによってトレー部21内を循環する。育苗ラインBにおいても、
図4に示した播種ラインAと同様、ラック1が一定期間、例えば2日ごとに間歇的に前進する。
【0041】
育苗ラインBにおいて並べられたラック1は、ガイドレール4に規制されて間歇的に前進する。ラック1は、キャスタ15によってスムーズに前進する。栽培槽2の植物Pは、培養液と光源19によって成長する。例えば、ラック1が2日ごとに1ピッチ前進すれば、最後尾に並べられたラック1は、6日で先頭まで前進する。先頭のラック1に格納された栽培槽2の植物Pは、2日間成長した後、後続のラック1から離れ、育苗ラインBから定植ラインCへ移動する。このとき、電線3の枝線32がラック1のコンセントから外される。
【0042】
植物Pが定植ラインCへ移動するに際して、苗床パレット22が切目で切断され、定植セグメントに分離される。定植セグメントは、栽培ポット内に入れられる。この栽培ポットは、定植パレット23に空けられた穴に嵌められる。この定植パレット23がトレー部21の上面を塞ぐことで、栽培槽2がセットされる。この栽培槽2は、定植パレット23の穴の数が苗床パレット22の窪みの数よりも少なく、大きく成長した植物Pが密集しないようにされている。
【0043】
図5に示すように、この栽培槽2は、定植ラインCのラック1に格納される。定植ラインCでも、4台のラック1が並べられる。すなわち、
図5(a)に示すように、3台のラック1が並び、後尾に空けられたスペースに新たなラック1が並べられる。
図5(b)に示すように、この定植の走行ラインの植物Pは、一定期間(例えば16日)で栽培できるまでに成長する。したがって、この4日ごとに1ピッチずつ前進する。ラック1は、ガイドレール4に沿って間歇的に前進する。ラック1は、キャスタ15によってスムーズに前進する。
【0044】
定植ラインCのラック1に備えられた給水管16と排水管17がこのラック1に格納された栽培槽2のトレー部21に取り付けられる。給水管16からトレー部21内には、定植用の養液が給水され、排水管17から排水される。栽培ポットの下部は、トレー部21内の養液に浸かる状態となる。
【0045】
後尾のラック1は、12日目に先頭まで前進する。先頭のラック1の植物Pは、4日経つと、収穫できるまでに成長する。
図5(c)に示すように、植物Pが収穫できるようになった先頭のラック1は、後続のラック1から離れて前進する。このとき、ラック1の電源ラインから電線3の枝線32が外され、給水管と16と排水管17がトレー部21から外される。この先頭のラック1に格納された栽培槽2は、ラック1から取り出される。この栽培槽2の栽培ポットは、プレートの穴から抜かれ、出荷される。
【0046】
図5(d)に示すように、3台のラックが前進し、後尾にスペースが開けられる。このスペースには、
図5(a)に示すように育苗ラインBから送られた新たなラック1が並べられる。
【0047】
以上、本発明の植物栽培システム、ラック1及び植物栽培方法の実施形態について説明したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の課題を解決できる範囲での変更や改良は、本発明に含まれる。
【0048】
例えば、前記実施形態では、植物Pの播種、育苗及び定植の全工程において、ラック1を前進させて植物Pを栽培した。しかし、ラック1は、いずれかの工程においてだけ使用して植物Pを栽培してもよい。また、各工程において並べるラック1の台数や各ラック1に格納される栽培槽2の台数は、任意に変更することができる。
【0049】
前記実施形態では、走行ラインA,B,Cが一対のガイドレール4を備えているとした。しかし、ガイドレール4は1本とし、この1本のガイドレール4を両側から挟むような突出部をラック1の底面に設けたもとしてもよい。さらに、キャスタ15がラック1を直進のみさせることができる機能を有していることにより、ガイドレール4を省略することもできる。逆に、ガイドレール4が溝を備え、この溝内に点接触で嵌りこむ足部をラック1が備えることで、キャスタ15を省略することもできる。
【0050】
前記実施形態では、電線3が天井付近に差決された主線31と、この主線31から分岐した枝線32とを備えた。しかし、図示しないが、電線3は、1本の主線と、隣り合ったラック1間に接続された副線とを備え、先頭の副線が主線に接続されるようにしてもよい。さらに、ラック1がバッテリを備えることにより、電線3を架設しないようにしてもよい。
【0051】
また、図示しないが、植物栽培システムは、電線3に替えて給電装置を備えてもよい。給電装置は、ダクトや移動体などを備える。ダクトは、天井付近に配備されたダクトハンガーであって、リップ溝形鋼(C形鋼)のように下向きに開口した溝部と、この溝部の両側に形成された一対のリップを有している。移動体は、一対のリップ上を転がるローラと、このローラの回転軸から下方に垂れ下がり、溝部から突出した状態で移動する垂下部とを備えている。垂下部は、ラック1の電源ラインと接続される。給電装置は、電源に接続され、ラック1が移動しても、ラック1内の光源19やポンプに通電し続ける。あるいは、給電装置は、ガイドレール4を給電手段としてもよい。
【0052】
前記実施形態では、給水管16と排水管17とによって水を循環させた。しかし、例えば水が濁る場合にあっては、水を循環させることなく、トレー部21内を流れた水をラック1外に排水するようにしてもよい。
【0053】
前記実施形態では、植物Pの播種及び育苗の工程と定植の工程において、隣り合った植物Pの間隔が密から疎に植え替えられるようにした。しかし、隣り合った植物Pの間隔は、変更することなく、すべて同じとしてもよい。
【0054】
前記実施形態では、隣り合ったラック1の支柱11同士が切離、すなわち、隣り合った支柱11の全長が当たったり、離れたりするようにした。しかし、ラック1は、支柱11と支柱11とが向き合う側に突出部(図示せず)などを設けたものとし、この突出部同士が接離するようにしてもよい。
【0055】
ラック1内にセットされる栽培槽2は、ラック1の幅に対応させた1台とするだけでなく、複数台に分割してもよい。また、ラック1は、1台ずつ移動するだけでなく、複数台が一組となって移動してもよい。また、ラック1は、移動方向を長くし、栽培槽2の向きを移動方向にして複数台の栽培槽2をラック1にセットしてもよい。
【0056】
以上まとめると、本発明に係る植物栽培方法は、
植物Pを栽培する栽培槽2をラック1にセットする工程と、
前記ラック1を植物Pの生育順に複数台、隣り合わせて走行ライン上に並べる工程と、
植物Pの生育状態に合わせて前記ラック1を間歇的に前進させる工程と、
先頭の前記ラック1を後続の前記ラック1から分離し、後続の前記ラック1の後尾の前記ラック1に新規の前記ラック1を隣り合わせる工程と、
を含んでいる。
【0057】
この植物栽培方法によれば、栽培槽2をセットする複数台のラック1が隣り合うように走行ラインA,B,C上に並べられ、植物Pの生育状態に合わせてラック1が間歇的に前進し、先頭のラック1が後続のラック1から分離することで、作付面積を高くすることができる。
【0058】
前記本発明に係る植物栽培方法において、前記栽培槽2は、植物Pの播種、育苗、定植の各生育状態に応じて、隣り合った植物Pの間隔が密から疎に植え替えられる複数種類使用されてもよい。
この植物栽培方法によれば、播種や育苗の生育状態においては、葉が出ていない乃至小さいため、密に植えて生育させ、葉が大きくなることで疎に植えて生育させることができる。
【0059】
本発明に係る植物栽培システムは、
植物Pを栽培する栽培槽2をセットする複数台のラック1と、
前記複数台のラック1を接離可能なように複数台配列し、当該複数台のラック1が一体的に前進するように誘導する走行ラインと、
を備え、
前記栽培槽2で栽培されている植物Pの生育状態に応じて先頭の前記ラック1が後続の前記ラック1から離れて前進可能とされている。
【0060】
この植物栽培システムによれば、植物Pを栽培する栽培槽2がラック1にセットされ、このラック1が隣り合うように複数台配列され、先頭のラック1が後続のラック1から離れて前進することにより、作付面積を高くすることができる。
【0061】
前記本発明に係る植物栽培システムにおいて、前記走行ラインは、ガイドレール4を備えていてもよい。
この植物栽培システムによれば、走行ラインがガイドレール4を備えることにより、ラック1がガイドレール4に沿って前進するようにすることができる。
【0062】
前記本発明に係る植物栽培システムにおいて、前記ラック1は、キャスタ15を備えていてもよい。
この植物栽培システムによれば、ラック1がキャスタ15を備えることにより、ラック1がスムーズに前進するようにすることができる。
【0063】
前記本発明に係る植物栽培システムにおいて、前記ラック1は、前記栽培槽2で栽培されている植物Pを照明する照明手段を備えていてもよい。
この植物栽培システムによれば、照明手段が栽培槽2で栽培されている植物Pを照明することにより、植物Pの生育を促進することができる。
【0064】
前記本発明に係る植物栽培システムにおいて、前記ラック1は、前記栽培槽2内に給水する給水管16と、前記栽培槽2内から排水する排水管17と、前記給水管16と前記排水管17との間で水を循環させるポンプとを備えていてもよい。
この植物栽培システムによれば、栽培槽2内に窮する水が給水管16と排水管17とを循環することにより、節水することができる。
【0065】
前記本発明に係るラック1は、前記本発明に係るいずれかの植物栽培システムに備えられたものである。
このラック1によれば、植物栽培システムにおいて好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1・・・・ラック
2・・・・栽培槽
4・・・・ガイドレール
15・・・・キャスタ
16・・・・給水管
17・・・・排水管
A・・・・播種の走行ライン(播種ライン)
B・・・・育苗の走行ライン(育苗ライン)
C・・・・定植の走行ライン(定植ライン)
P・・・・植物