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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】生理活性腎臓細胞
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20220816BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20220816BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20220816BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20220816BHJP
【FI】
G01N33/68
C12Q1/68 ZNA
G01N33/50 P
C12N15/113 Z
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020128752
(22)【出願日】2020-07-30
(62)【分割の表示】P 2018149199の分割
【原出願日】2011-05-12
(65)【公開番号】P2020201266
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2020-08-31
(31)【優先権主張番号】61/473,111
(32)【優先日】2011-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/441,423
(32)【優先日】2011-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/413,382
(32)【優先日】2010-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/412,933
(32)【優先日】2010-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/388,765
(32)【優先日】2010-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/376,586
(32)【優先日】2010-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/371,888
(32)【優先日】2010-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/372,077
(32)【優先日】2010-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/353,895
(32)【優先日】2010-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/334,032
(32)【優先日】2010-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516108269
【氏名又は名称】プロキドニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イラガン, ロジャー エム.
(72)【発明者】
【氏名】ケリー, ラッセル ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】プレスネル, シャロン シー.
(72)【発明者】
【氏名】チョウドリー, スマナ
(72)【発明者】
【氏名】ブルース, アンドリュー ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ゲンハイマー, クリストファー ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】コックス, ブライアン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ガスリー, ケリー アイ.
(72)【発明者】
【氏名】バス, ジョイディープ
(72)【発明者】
【氏名】ウォレス, シェイ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ウェルディン, エリック エス.
(72)【発明者】
【氏名】ナイト, オルワトイン エー.
(72)【発明者】
【氏名】サンガ, ナムラタ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ラドロー, ジョン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ハルバーシュタット, クレイグ アール.
(72)【発明者】
【氏名】ペイン, リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ロビンズ, ニール エフ., ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】マッコイ, ダレル
(72)【発明者】
【氏名】ジャイン, ディーパク
(72)【発明者】
【氏名】ジェイヨ, マニュエル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リヴェラ, イライアス エー.
(72)【発明者】
【氏名】スペンサー, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ワッツ, ベンジャミン
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-309186(JP,A)
【文献】特表2010-506563(JP,A)
【文献】特表2010-528568(JP,A)
【文献】特表2007-524611(JP,A)
【文献】国際公開第2009/100029(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/057165(WO,A1)
【文献】特表2009-514986(JP,A)
【文献】Mitsuo Kato,MicroRNA-192 in diabetic kidney glomeruli and its function in TGF-β-induced collagen expression via inhibition of E-box repressors,PNAS,2007年02月07日,Vol.104 No.9,Page.3432-3437
【文献】Marie C. Hogan,Characterization of PKD Protein-Positive Exosome-Like Vesicles,J Am Soc Nephrol,Vol.20,Page.278-288
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/68
C12Q 1/68
G01N 33/50
C12N 15/113
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腎疾患(KD)患者が治療薬による処置に応答するか否かを評価するための方法であって、
対照尿検体中の小胞に関連するマーカーの量と比較して、治療薬で処置されたKD患者から採取した試験尿検体中の小胞に関連するマーカーの量を検出することを含み、
対照尿検体中の小胞に関連するマーカーの量に比べて、試験尿検体中のより多いか又はより少ない小胞関連マーカーの量が該治療薬による処置に対する該患者の応答を示し、
前記マーカーが
(i)CD133若しくはWNT7Aの1つ以上を含むタンパク質;又は
(ii)miR-370,miR-362,miR-1224,miR-22,miR-598-5p,miR-540,miR-300-3p,miR-206,miR-222,miR-433,let-7b,let-7c,miR-497,let-7b*,miR-24-2*,miR-770,miR-124,miR-485,miR-760-5p,miR-296,miR-764,miR-221,miR-883,miR-15b,miR-143,let-7a,miR-339-3p,miR-484,miR-742,miR-101b,miR-425,miR-31,miR-29b,let-7e*,miR-345-3p,miR-193,miR-207,miR-501,miR-125b-3p,miR-154,miR-375,miR-298,miR-671,miR-21,let-7e,let-7f,miR-125a-5p,miR-194,miR-152,miR-128,miR-423,miR-92b,miR-139-3p,miR-667,miR-98,miR-181d,miR-500,miR-103,miR-99b*,miR-935,miR-674-5p,miR-743a,miR-352,miR-326,miR-181c,miR-504,miR-322*,miR-7a,miR-532-3p,miR-29a,miR-130b,miR-328,miR-345-5p,miR-29c,miR-215,miR-138*,miR-182,miR-147,miR-664,miR-339-5p,miR-743b,miR-96,miR-203,miR-130a,miR-346,miR-674-3p,miR-140*,miR-192,miR-409-3p,miR-106b*,let-7d,miR-28*,miR-219-2-3p,miR-148b-3p,miR-23b,miR-195,miR-30d,miR-301b,miR-320,miR-652,miR-322,miR-429,miR-291a-5p,miR-26a,miR-141,miR-185,miR-27b,miR-200c,miR-431,miR-16,miR-23a,miR-330*,miR-344-5p,miR-347,miR-125b*,miR-30b-5p,miR-218,miR-99a,miR-488,miR-493,miR-9*,miR-92a,miR-125b-5p,miR-183,miR-708,miR-191,miR-181b,miR-186,miR-872,miR-188,miR-22*,miR-27a,miR-7b,miR-598-3p,miR-490,miR-675,miR-10a-5p,miR-184,miR-100,miR-874,miR-200a,miR-30c,miR-99b,miR-212,let-7i,miR-30a,miR-199a-5p,miR-25,miR-99a*,miR-28,miR-30d*,miR-151*,miR-344-3p,miR-126*,miR-145,miR-20b-5p,miR-294,miR-489,miR-483,miR-132,miR-505,miR-7a*,let-7i*,miR-21*,miR-331,miR-434,miR-106b,miR-30e,miR-350,miR-34a,miR-219-1-3p,miR-543,miR-210,miR-30a*,miR-365,miR-378,miR-196b,miR-27a*,miR-361,miR-10b,miR-466c,miR-342-3p,miR-216a,miR-101a*,miR-24,miR-151,miR-205,miR-17-5p,miR-134,miR-296*,miR-26b*,miR-30e*,miR-382,miR-410,miR-327,miR-133b,miR-142-3p,miR-324-5p,miR-125a-3p,let-7d*,miR-19b,miR-223,miR-374,miR-127,miR-26b,miR-25*,miR-330,miR-146a,miR-295,miR-196a,miR-34b,miR-129,miR-196c,miR-17-3p,miR-133a,miR-19a,miR-211,miR-20a,miR-34c,miR-871,miR-93,miR-9,miR-532-5p,miR-181a,miR-760-3p,miR-140,miR-29a*,miR-138,miR-193*,miR-10a-3p,miR-877,miR-29c*,miR-503,miR-148b-5p,miR-107,miR-34c*,miR-672,miR-873,miR-351,miR-292-5p,miR-343,miR-449a,miR-323,miR-29b-2*,miR-539,miR-465,miR-214,miR-541,miR-761,miR-105,miR-338,miR-342-5p,miR-129*,miR-325-5p,miR-301a,miR-463,miR-146b,miR-23a*,miR-758,miR-204*,miR-711及びmiR-378の1つ以上を含むmiRNA;又は
(iii)前記タンパク質の1つ以上及び前記miRNAの1つ以上;
を含み、
前記治療薬が腎臓細胞の富化集団を含み、前記腎臓細胞の富化集団は、出発腎臓細胞集団よりも高い割合の尿細管細胞を含み、
前記出発腎臓細胞集団は、被検体から単離した腎臓検体又は被検体の腎臓検体から単離した細胞のin vitro培養物を含む、
前記方法。
【請求項2】
前記治療薬が第二の腎臓細胞の富化集団を更に含み、前記第二の腎臓細胞の富化集団は、出発腎臓細胞集団よりも、高い割合の腎臓のエリスロポエチン(EPO)産生細胞、糸球体細胞、血管細胞を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マーカーがタンパク質を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記マーカーがmiRNAを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記miRNAが、miR-222,miR-30b-5p,miR-449a,miR-146a,miR-130a,miR-23b,miR-21,miR-124,miR-151,miR-23a,miR-30c,miR-1224,miR-92a,miR-100,miR-125b-5p,miR-195,miR-10a-5p,miR-15b,miR-30a*,miR-30d,miR-30e*,miR-429,miR-30d*,miR-141,miR-200a,miR-30a,miR-30e,miR-200c,miR-24,miR-195,miR-871,miR-19b,miR-99a,miR-429,let-7f又はmiR-324-5pの1つ以上を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記miRNAが、miR-222を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記miRNAが、miR-30b-5p,miR-449a,miR-146a,miR-130a,miR-23b,miR-21,miR-124,又はmiR-151の1つ以上を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記miRNAが、miR-21,miR-23a,miR-30c,miR-1224,miR-23b,miR-92a,miR-100,miR-125b-5p,miR-195,又はmiR-10a-5pの1つ以上を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記miRNAが、miR-146a,miR-130a,又はmiR-23bの1つ以上を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記miRNAが、miR-15b,miR-30a*,miR-30d,miR-30e*,miR-151,miR-429,miR-21,miR-30b-5p,miR-30d*,miR-141,miR-200a,miR-30a,miR-30c,miR-30e,miR-146a,又はmiR-200cの1つ以上を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記miRNAが、miR-24,miR-195,miR-871,miR-30b-5p,miR-19b,miR-99a,miR-429,let-7f,miR-200a,miR-324-5p,又はmiR-10a-5pの1つ以上を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記タンパク質がCD133である、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記タンパク質がWNT7Aである、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
前記腎臓細胞の富化集団が、集合管系の上皮細胞を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記小胞が微小胞を含む、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
対照尿検体と比較した試験尿検体中の前記miRNAの高い量が、患者が治療薬による処置に応答することを示す、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
対照尿検体と比較した試験尿検体中の前記タンパク質の高い量が、前記患者が治療薬による処置に応答することを示す、請求項12又は13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、健康な個体に比べて細胞成分が欠けているが治療活性を維持している生理活性
腎臓細胞集団または画分、およびそれを単離し培養する方法、ならびに、その細胞集団を
必要としている対象を治療する方法に関する。さらに、本発明は、生理活性腎臓細胞集団
を使ってネイティブ腎臓に対し再生効果を与える方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
慢性腎疾患(CKD)は、1,900万人を越える米国人が罹患しており、また、この疾
患は、代謝障害の結果であることが多く、肥満症、糖尿病、および高血圧症を伴う。デー
タ調査により、増加率は、高血圧症およびインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)(同
じく世界中で増えつつある2つの疾患)に続発する腎不全の発生に起因することが示され
ている(米国腎臓データシステム(United States Renal Data
System):CKDとESRDのコスト.ed.Bethesda、MD、国立衛
生研究所、国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所、2007 pp 223-238)。
肥満症、高血圧症、および血糖コントロール不良は、全て腎障害の独立したリスク因子で
あることが示され、糸球体および尿細管障害を生じ、蛋白尿および他の全身的に検出可能
な腎臓濾過機能の変化の原因となる(Aboushwareb、et al.、Worl
d J Urol、26:295-300、2008;Amann、K.et al.、
Nephrol Dial Transplant、13:1958-66、1998)
。進行の1~3ステージのCKD患者は、生活様式の変更および根底にある病的状態の制
御を目的とした薬理学的介入によって管理されるが、一方、4~5ステージの患者は、透
析および通常、降圧剤、赤血球生成促進剤(ESA)、鉄およびビタミンD補充を含む投
薬計画により管理される。再生医療技術は、CKDに対する次世代の治療オプションを提
供できる。国際公開第2010/056328号でPresnell、等は、単離腎臓細
胞について記載しているが、これには、尿細管とエリスロポエチン(EPO)産生腎臓細
胞集団、および、これらを単離、培養する方法、ならびに、その細胞集団を必要としてい
る対象を治療する方法が含まれている。この患者集団に対し、本当の意味での、長続きの
する腎臓機能の増強療法を提供し、進行を遅らせ、生活の質を改善するための新規治療パ
ラダイムが必要である。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、本発明は、ネイティブ腎臓に対し再生効果を与える方法を提供する。一実
施形態では、この方法は、ネイティブ腎臓を腎臓細胞集団により分泌された産物とインビ
ボで接触させるステップを含む。別の実施形態では、産物は、本明細書記載のように、構
築物の一部ではない富化腎臓細胞集団、例えば、足場に播種されていない細胞集団、によ
り分泌される。もう一つの実施形態では、産物は、足場上または足場中に直接播種された
富化腎臓細胞集団を含む腎臓細胞構築物から分泌される。別の実施形態では、産物の分泌
は酸素レベルに対し生物学的応答性である。分泌は、大気未満の酸素レベルにより誘導さ
れうる。もう一つの実施形態では、より低い酸素レベルは、約5%酸素未満である。
【0004】
一実施形態では、再生効果は、上皮間葉転換(EMT)の減少である。EMTの減少は
、TGF-βシグナル伝達および/またはプラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PA
I-1)シグナル伝達の減弱により実現できる。別の実施形態では、再生効果は、腎臓線
維形成の減少および/または腎臓炎症の減少である。一部の実施形態では、炎症の減少は
、NFκBにより媒介されうる。もう一つの実施形態では、再生効果は、ネイティブ腎臓
中の幹細胞マーカーの発現差異を特徴とする。発現は、非接触ネイティブ腎臓中の発現に
比べて、インビボ接触ネイティブ腎臓中のマーカー発現の増加であってもよい。
【0005】
一態様では、富化腎臓細胞集団は、本明細書記載の1つまたは複数の細胞集団を含み、
すなわち、本明細書記載の細胞集団の混合物である。一実施形態では、集団は、尿細管細
胞富化集団を含む第1細胞集団、B2を含む。別の実施形態では、集団は、第1細胞集団
、B2、および1つまたは複数のエリスロポエチン(EPO)産生細胞、糸球体細胞およ
び血管細胞を含む第2細胞集団を有するヒト腎臓細胞混合物を含む。もう一つの実施形態
では、第2細胞集団は、B4細胞集団である。さらに別の実施形態では、第2細胞集団は
、B3細胞集団である。
【0006】
一実施形態では、混合物は、1つまたは複数のエリスロポエチン(EPO)産生細胞、
糸球体細胞および血管細胞を有する第3細胞集団をさらに含む。別の実施形態では、第3
細胞集団は、B4細胞集団である。もう一つの実施形態では、第3細胞集団は、B3細胞
集団である。
【0007】
全ての実施形態で、B2細胞集団は、約1.045g/mL~約1.052g/mLの
密度を有する。全ての実施形態で、B4細胞集団は、約1.063g/mL~約1.09
1g/mLの密度を有する。全ての実施形態で、B3細胞集団は、約1.052g/ml
~約1.063g/mlの密度を有する。
【0008】
全ての実施形態で、富化腎臓細胞集団は、ネイティブ腎臓に対し非自己であってもよい
。全ての実施形態で、富化腎臓細胞集団は、ネイティブ腎臓に対し自己でであってもよい
【0009】
全ての実施形態で、産物は、パラクリン因子、内分泌因子、ジャクスタクライン因子、
RNA、小胞、微小胞、エキソソーム、およびそれらのいずれかの組み合わせを含む。も
う一つの実施形態では、小胞は、パラクリン因子、内分泌因子、ジャクスタクライン因子
、およびRNAからなる群より選択される1つまたは複数の分泌産物を含む。別の実施形
態では、産物は、足場上または中に直接播種された富化腎臓細胞集団を含む腎臓細胞構築
物から分泌される。
【0010】
全ての実施形態で、足場は、生体適合性材料を含んでもよい。全ての実施形態で、生体
適合性材料は、ヒドロゲルであってもよい。
【0011】
一実施形態では、本発明は、腎疾患(KD)患者が治療薬による処置に反応するか否か
を評価する方法を提供する。この方法は、対照検体中の小胞の量と比較して、またはそれ
に対して、治療薬で処置したKD患者から入手した試験検体中の小胞またはそれらの内腔
含有物の量を測定または検出するステップを含んでもよい。この場合、対照検体中の小胞
またはその内腔含有物の量に比較して、試験検体中の小胞またはその内腔含有物の多いま
たは少ない量は、治療された患者の治療薬による処置に対する反応性を示す。小胞は、腎
臓由来の小胞であってもよい。試験検体は、尿であってもよい。小胞は、バイオマーカー
を含んでもよく、このバイオマーカーはmiRNAであってもよい。治療薬が腎臓細胞富
化集団を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】多層ステップ勾配技術(A-左パネル図)または単層混合勾配技術(B-右パネル図)を使って新たに分離した腎臓組織由来のepo産生細胞画分富化を示す。両方法とも、epoバンド由来の非epo産生細胞成分(主に尿細管細胞)の部分的欠乏を生ずる。このバンドは、1.025g/mLおよび1.035g/mLの間に現れる。
図2】別々に採取し、同じステップ勾配を並列に並べた「正常酸素圧」(21%酸素)および「低酸素」(2%酸素)げっ歯類培養物のステップ勾配を示す。
図3】別々に採取し、同じステップ勾配を並列に並べた「正常酸素圧」(21%酸素)および「低酸素」(2%酸素)下のイヌの培養物のステップ勾配を示す。
図4】HK17およびHK19検体の病理組織学的特性を示す。
図5】対象領域(ROI)を規定するヒトNKA細胞中のアルブミン輸送のハイコンテントアナリシス(HCA)を示す。
図6】非CKDおよびCKD腎臓由来のNKA細胞中のアルブミン輸送の定量的比較を示す。
図7】尿細管細胞富化B2および尿細管細胞枯渇B4亜画分の間のマーカー発現の比較分析を示す。
図8】尿細管細胞富化B2および尿細管細胞枯渇B4亜画分の間のアルブミン輸送の比較機能分析を示す。
図9】5/6NXラットの処置後の宿主組織中のSOX2 mRNAの発現を示す。
図10】CD24、CD133、UTF1、SOX2、NODALおよびLEFTYの発現の経時変化を示すウェスタンブロットである。
図11】再生応答指数(regenerative response index)(RRI)の経時変化を示す。
図12】UNFX馴化培地の調整と分析模式図である。
図13A】UNFX培養物由来の馴化培地が潜在的に再生結果と関連する複数のインビトロ細胞プロセスに影響することを示す。図13Aは、UNFX馴化培地がNF-kBのTNF-α媒介活性化を弱めることを示す。
図13B図13Bは、UNFX馴化培地がHUVEC細胞培養の血管新生促進挙動を高めることを示す。
図13C図13Cは、UNFX馴化培地が上皮細胞中の線維形成経路を弱めることを示す。
図13D図13Dは、TGFβ1およびプラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI-1)により構築される正のフィードバックループを示す。
図14】糸球体間質細胞中の線維形成経路の減弱化を立証するウェスタンブロット分析を示す。
図15A】UNFX由来馴化培地が分泌小胞を含むことを示す。図15Aは、分泌小胞を示し、これは、細胞質由来内部成分(緑)を含む二相脂質(bilipid)構造(赤)である。
図15B図15B~Cは、FACS選別を示す。
図15C図15B~Cは、FACS選別を示す。
図16A-B】図16Aは、総タンパク質を調製し、PAI-1とβ-アクチンをアッセイしたウェスタンブロットを示す。図16Bは、マイクロRNA、miR-30b-5pを示す。
図17A-E】図17A-Cは、腎摘出術を行った後の生理活性腎臓細胞の送達後のLewisラット腎臓中のPAI-1の代表的免疫組織化学像である。図17Dは、未処置で腎摘出ラット(赤い正方形)中、処置後の腎摘出ラット(青い菱形)、および対照動物(緑の三角形)の間のPAI-1発現の比較を示す。図17Eは、処置後3および6ヶ月目に採取した腎臓検体の代表的ウェスタンブロット分析を示す。
図17F図17Fは、NKA馴化培地に対する2時間暴露によりNFκBp65の核局在化が低減されるのを示す。
図17G図17Gは、TNFαによるNFkB経路の標準的活性化を示す。
図18A-D】(A)5/6腎摘出術により開始された進行性CKD、および(B)片側腎摘出術により開始された非進行性腎不全の動物中のNFkBp65サブユニットの核局在化を示す。図18C~Dは、(C)5/6腎摘出術を行ったLewisラット腎臓組織の抽出物中のNFkB p65のウェスタンブロット分析;および(D)抽出物の電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)、を示す。
図18E図18Eは、NKA(パネルA)または非生理活性腎臓細胞(パネルB)の腎臓内注射を受けた確定CKDのLewisラットから採取した組織のNFκB p65サブユニットの免疫組織化学検出を示す。
図19A】移植後1週および4週目の生体材料のインビボ評価を示す。
図19B】同上。
図19C】同上。
図20A-D】A~Dは、NKA構築物の生死染色を示す。
図20E】NKA構築物のトランスクリプトームプロファイリングを示す。
図20F】同上。
図20G】同上。
図21A】NKA構築物のセクレトームプロファイリングを示す。
図21B】同上。
図22A】NKA構築物のプロテオミクスプロファイリングを示す。
図22B】同上。
図23A】NKA構築物の共焦点顕微鏡像を示す。
図23B】同上。
図23C】同上。
図24A】移植後1週と2週目のNKA構築物のインビボ評価を示す。
図24B】同上。
図25】A~Dは、移植後8週目のNKA構築物のインビボ評価を示す。
図26】NKA構築物由来の馴化培地がHK2細胞中のTGF-β誘導EMTをインビトロで減弱化することを示す。
図27】処理中に低酸素中に細胞を暴露する工程を示す。
図28】2%酸素下の暴露時に、下記が観察されたことを示す:密度勾配全体にわたる細胞分布の変化、全体勾配後収率の改善。
図29A】尿細管単層のインビトロ修復を観察するために開発されたアッセイを示す。
図29B】Quantitative Image Analysis(BD Pathway 855 BioImager)の結果を示す。
図29C】2%酸素により尿細管上皮単層修復能力が向上するように誘導された細胞を示す。
図30A】尿細管単層のインビトロ修復を観察するために開発されたアッセイを示す。
図30B】非誘導(21%酸素)に比較して、2%酸素による細胞の誘導により、誘導および創傷修復が強化されることを示す。
図30C】遊走時間に対する、遊走細胞%のプロットである。
図31A】オステオポンチンが尿細管細胞により分泌され、傷害に応答して発現上昇する(オステオポンチン免疫細胞化学:Hoechst nuclear stain(青)、オステオポンチン(赤)、10x)ことを示す。免疫蛍光(図31A)およびELISA(図31B)に示すように、オステオポンチンは、確定尿細管細胞単層中の傷害により発現上昇する。
図31B】同上。
図32A】細胞の遊走応答が一部はオステオポンチン(緑=遊走細胞(5x))により媒介されることを示す。
図32B】オステオポンチンに対する中和抗体(NAb)が腎臓細胞の遊走応答を50%減らすことを示す。
図33】細胞の低酸素誘導により、組織リモデリング遺伝子発現が調節されることを示す。
図34】細胞の生理活性の低酸素下増強が腎臓再生をもたらす推定機序を示す。
図35】ウェスタンブロットによる微小胞の検出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、生理活性腎臓細胞(BRC)の異種起源混合物、およびこれらを単離し培養す
る方法、ならびに本明細書記載のBRCおよび/またはBRCを播種した足場から形成し
たBRC含有構築物を必要としている対象を治療する方法に関する。生理活性腎臓細胞は
、尿細管およびエリスロポエチン(EPO)産生腎臓細胞含有単離腎臓細胞であってもよ
い。BRC細胞集団は、富化尿細管およびEPO産生細胞集団を含んでもよい。BRCは
、健康な個体由来腎臓細胞画分由来か、または画分それ自体であってもよい。さらに、本
発明は、対応する健康な個体の腎臓細胞画分と比較して、特定の細胞成分が欠如している
可能性があるが、それでも、治療特性を保持している不健康な個体から採取した腎臓細胞
画分を提供する。本発明は、また、健康な個体に比較して細胞成分が欠けている治療的に
活性な細胞集団を提供し、一実施形態では、この細胞集団は、種々の疾患状態の自己ソー
スから単離、増殖できる。
【0014】
本発明は、また、ネイティブ腎臓を腎臓細胞による分泌産物とインビボで接触させるこ
とによりネイティブ腎臓に再生効果を与える方法、ならびに分泌産物を調製する方法に関
する。本発明は、マーカーを使用して本明細書記載の方法による治療後の腎臓再生の存在
の測定にさらに関する。
【0015】
定義
特に断らなければ、本明細書で使われる技術的および科学的用語は、本発明の属する当業
者により共通に理解されているものと同じ意味を有する。Principles of
Tissue Engineering、3rd Ed.(Edited by R L
anza、R Langer、& J Vacanti)、2007、は本出願で使われ
る多くの用語に対する一般的ガイドを当業者に提供する。当業者なら、本明細書記載のも
のと類似の、または等価な、本発明の実施に使用可能な多くの方法と材料に気付くであろ
う。実際、本発明は、記載されている方法と材料に限定されるものではない。
【0016】
本明細書で使用される用語の「細胞集団」は、適切な組織ソース、通常は哺乳動物、か
ら直接単離することにより得られいくつかの細胞を指す。単離細胞集団は、その後、イン
ビトロで培養してもよい。当業者なら、本発明で使用可能な細胞集団を単離し培養する種
々の方法および本発明で使用される細胞集団中の様々な数の細胞について解るであろう。
細胞集団は、腎臓由来の未分画の、異種起源の細胞集団であってもよい。例えば、異種起
源の細胞集団は、腎生検または全腎臓組織から単離されてもよい。あるいは、異種起源の
細胞集団は、腎生検または全腎臓組織から構築された哺乳動物細胞のインビトロ培養物由
来であってもよい。未分画異種起源の細胞集団は、また、非富化細胞集団と呼ぶこともで
きる。
【0017】
用語の「ネイティブ腎臓」は、生体の腎臓を意味する。対象は、健康でも不健康でもよ
い。不健康対象は、腎疾患に罹患していてもよい。
【0018】
用語の「再生効果」は、ネイティブ腎臓に対する利益を提供する効果を意味する。効果
は、これらに制限されないが、ネイティブ腎臓に対する障害度の減少、またはネイティブ
腎臓機能の改善、修復もしくは安定化を含んでもよい。腎損傷は、線維形成、炎症、糸球
体肥大、等の形態であってもよく、対象の腎疾患に関連してもよい。
【0019】
本明細書で使用される用語の「混合物」は、2つ以上の未分画、異種起源の細胞集団由
来の単離された、富化細胞集団の組み合わせを指す。特定の実施形態では、本発明の細胞
集団は、腎臓細胞集団である。
【0020】
「富化」細胞集団または調製物は、出発集団中のその細胞型の割合よりも高い割合の特
定細胞型を含む、出発腎臓細胞集団(例えば、未分画、異種起源の細胞集団)由来の細胞
集団を指す。例えば、出発腎臓細胞集団は、第1、第2、第3、第4、第5、等の対象細
胞集団用として富化してもよい。本明細書で使用される用語の「細胞集団」、「細胞調製
物」および「細胞プロトタイプ」は、同義に使用される。
【0021】
一態様では、本明細書で使用される用語の「富化」細胞集団は、出発集団中のEPO産
生可能な細胞の割合よりも高い割合のEPO産生可能な細胞を含む出発腎臓細胞集団由来
の細胞集団(例えば、腎生検または培養哺乳類腎臓細胞由来の細胞懸濁液)を指す。例え
ば、用語の「B4」は、出発集団に比べて、より大きな割合のEPO産生細胞、糸球体細
胞、および血管細胞を含む出発腎臓細胞集団由来の細胞集団である。本発明の細胞集団は
、1つまたは複数の細胞型を富化させ、1つまたは複数の他の細胞型を枯渇させてもよい
。例えば、富化EPO産生細胞集団は、間質性線維芽細胞を富化させ、尿細管細胞を枯渇
させて、非富化細胞集団、すなわち、富化細胞集団が得られる出発細胞集団中の間質性線
維芽細胞および尿細管細胞に比べて、管上皮細胞を集合させることができる。EPO富化
または「B4」集団に言及している全ての実施形態において、富化細胞集団は、内在性ネ
イティブEPO遺伝子からの酸素で調節可能なEPO発現により示されるように、酸素調
節手法でEPOを産生出来る細胞を含む異種起源の細胞集団である。
【0022】
別の態様では、出発集団の細胞型の割合より大きな割合の特定細胞型、例えば、血管、
糸球体、または内分泌細胞を含む富化細胞集団は、また、健康な個体または対象由来の出
発腎臓細胞集団に比べて、1つまたは複数の特定細胞型、例えば、血管、糸球体、または
内分泌細胞が欠けているか、または不足していてもよい。例えば、一態様では、用語の「
B4’」、すなわち「B4プライム」は、健康な個体に比較して、出発標本の疾患状態に
応じて、1つまたは複数の細胞型、例えば、血管、糸球体または内分泌型が欠けているか
、または不足している出発腎臓細胞集団由来の細胞集団である。一実施形態では、B4’
細胞集団は、慢性腎疾患の対象由来である。一実施形態では、B4’細胞集団は、巣状分
節性糸球体硬化症(FSGS)の対象由来である。別の実施形態では、B4’細胞集団は
、自己免疫性糸球体腎炎の対象由来である。別の態様では、B4’は、1つまたは複数の
細胞型、例えば、血管、糸球体、または内分泌細胞が、後で、枯渇するか、または不足す
る、全細胞型、例えば、血管、糸球体、または内分泌細胞を含む出発細胞集団由来の細胞
集団である。さらに別の態様では、B4’は、1つまたは複数の特定細胞型、例えば、血
管、糸球体、または内分泌細胞が、後で、富化される、全細胞型、例えば、血管、糸球体
、または内分泌細胞を含む出発細胞集団由来の細胞集団である。例えば、一実施形態では
、B4’細胞集団は、血管細胞が富化され、糸球体および/または内分泌細胞が枯渇して
もよい。別の実施形態では、B4’細胞集団は、糸球体細胞が富化され、血管および/ま
たは内分泌細胞が枯渇してもよい。別の実施形態では、B4’細胞集団は、内分泌細胞が
富化され、血管および/または糸球体細胞が枯渇してもよい。別の実施形態では、B4’
細胞集団は、血管および内分泌細胞が富化され、糸球体細胞が枯渇してもよい。好ましい
実施形態では、B4’細胞集団が、単独または別の富化細胞集団、例えば、B2および/
またはB3と混合されて、治療特性を保持する。B4’細胞集団は、例えば、本明細書の
実施例、例えば、実施例7~9に記載されている。
【0023】
別の態様では、富化細胞集団は、また、上で考察のように、出発集団中の1つまたは複
数の尿細管細胞マーカー発現細胞の割合よりも大きな割合の1つまたは複数の尿細管細胞
マーカー発現細胞を含む、出発腎臓細胞集団由来の細胞集団を指してもよい。例えば、用
語「B2」は、出発集団に比較して、より大きな割合の尿細管細胞を含む出発腎臓細胞集
団由来の細胞集団を指す。さらに、1つまたは複数の尿細管細胞マーカー(または「B2
」)を発現する細胞を富化した細胞集団は、集合管系由来の一部の上皮細胞を含んでもよ
い。1つまたは複数の尿細管細胞マーカー(または「B2」)を発現する細胞を富化した
細胞集団は、相対的に、EPO産生細胞、糸球体細胞、および血管細胞が枯渇しているが
、富化集団は、出発集団に比べてより小さな割合のこれらの細胞(EPO産生、糸球体、
および血管細胞)を含んでもよい。一般的に、異種起源の細胞集団は、1つまたは複数の
細胞型が枯渇し、その結果、枯渇細胞集団は、枯渇前の異種起源の細胞集団に含まれる細
胞型の割合に比較して、より小さい割合の細胞型を含む。枯渇する可能性のある細胞型は
、腎臓細胞のいずれの型でもよい。例えば、特定の実施形態では、枯渇する可能性のある
細胞型には、大きな粒度の集合管および尿細管系を有する細胞が含まれ、これは、密度が
約1.045g/ml未満で、「B1」と呼ばれる。他の特定の実施形態では、枯渇する
可能性のある細胞型には、低粒度および低生存率の壊死組織片および小細胞が含まれ、密
度は約1.095g/ml超で、「B5」と呼ばれる。一部の実施形態では、尿細管細胞
を富化した細胞集団は、相対的に次の全てが枯渇している:「B1」、「B5」、酸素で
調節可能なEPO発現細胞、糸球体細胞、および血管細胞。
【0024】
本明細書で使用される用語の「低酸素性の」培養条件は、細胞が大気酸素レベル(約2
1%)で培養される標準的培養条件に比較して、細胞が培養系で利用可能な酸素レベルの
低下にさらされる培養条件を指す。非低酸素性条件は、本明細書では、正常、または正常
酸素圧培養条件と呼ばれる。
【0025】
本明細書で使用される用語の「酸素で調節可能な」は、細胞に利用可能な酸素量に基づ
いて、遺伝子発現を調節(上昇または低下)する細胞の能力を指す。「低酸素誘導可能」
は、酸素圧力の減少に応答した遺伝子発現上昇を指す(前誘導または出発酸素圧力にかか
わらず)。
【0026】
本明細書で使われる用語の「生体材料」は、生きている組織中への導入に適した天然ま
たは合成生体適合性材料を指す。天然生体材料は、生体系により作られる材料である。合
成生体材料は、生体系では作られない材料である。本明細書で開示の生体材料は、天然お
よび合成生体適合性材料の組み合わせであってもよい。本明細書で使用される生体材料に
は、例えば、高分子マトリックスおよび足場が含まれる。当業者には、生体材料は、例え
ば、液体ヒドロゲル懸濁液、多孔性発泡体のような種々の形態に作られてもよく、1つま
たは複数の天然または合成生体適合性材料を含んでもよいことは理解されるであろう。
【0027】
本明細書で使用される用語の「貧血」は、対象のEPO産生細胞による機能性EPOタ
ンパク質の不適切は産生、および/または全身循環へのEPOタンパク質の不適切放出、
および/または骨髄中の赤芽球がEPOタンパク質に反応できないこと、による赤血球数
および/またはヘモグロビンレベルの不足を指す。貧血の対象は、赤血球恒常性を維持で
きない。一般的に、腎臓機能の低下または喪失(例えば、慢性腎不全)による貧血、相対
的EPO欠乏に関連した貧血、うっ血性心不全に関連した貧血、化学療法または抗ウイル
ス療法(例えば、AZT)等の骨髄抑制療法に関連した貧血、非骨髄性癌に関連した貧血
、HIV等のウイルス性感染症に関連した貧血、および自己免疫疾患(例えば、関節リウ
マチ)等の慢性疾患、肝臓疾患、および多相器系不全の貧血が発生しうる。
【0028】
用語の「EPO欠乏」は、貧血を含む、エリスロポエチン受容体アゴニスト(例えば、
組換え型EPOまたはEPO類似体)で治療可能な任意の状態または障害を指す。
【0029】
本明細書で使用される用語の「腎疾患」は、腎臓の血液濾過および血液からの過剰体液
、電解質、および廃棄物の除去機能の実行能力の低減を生ずる急性または慢性腎不全の任
意の段階または程度に関連した障害を指す。腎疾患は、また内分泌機能異常、例えば、貧
血(エリスロポエチン欠乏)、およびミネラル不均衡(ビタミンD欠乏)を含む。腎疾患
は、腎臓が起源であるか、または心不全、高血圧症、糖尿病、自己免疫疾患、または肝臓
疾患(これらに限定されない)を含む種々の状態に続発することもありうる。腎疾患は、
腎臓に対する急性傷害後に発生する慢性腎不全の状態でありうる。例えば、虚血および/
または毒物への暴露による腎臓に対する障害が、急性腎不全を引き起こす可能性がある;
急性腎傷害後の不完全回復が慢性腎不全の発生をもたらす可能性がある。
【0030】
用語の「処置」は、腎疾患、貧血、EPO欠乏、尿細管輸送機能欠損、または糸球体濾
過機能低下に対する治療の処置および予防または防止手段の両方を指す。この場合、目的
は、標的の障害を逆戻りさせるか、防ぐか、または減速させる(小さくする)ことである
。処置を必要としている人には、既に、腎疾患、貧血、EPO欠乏、尿細管輸送機能欠損
、または糸球体濾過機能低下に罹患している人、ならびに腎疾患、貧血、EPO欠乏、尿
細管輸送機能欠損、または糸球体濾過機能低下になりそうな人、または腎疾患、貧血、E
PO欠乏、尿細管輸送機能欠損、または糸球体濾過機能低下を予防すべき人が含まれる。
本明細書で使用される用語の「処置」は、腎臓機能の安定化および/または改善を含む。
【0031】
本明細書で使用される用語の「インビボ接触」は、腎臓細胞富化集団により分泌された
産物(または腎臓細胞/腎臓細胞画分を含む混合物または構築物)およびネイティブ腎臓
間の直接インビボ接触を指す。直接インビボ接触は、本質的に、パラクリン、内分泌、ま
たはジャクスタクラインであってもよい。分泌された産物は、本明細書記載の異なる産物
の異種起源の集団であってもよい。
【0032】
本明細書で使用される用語の「リボ核酸」または「RNA」は、ヌクレオチドユニット
の鎖を指し、各ユニットは、窒素性塩基、リボース糖、およびリン酸塩で構築されている
。RNAは、単鎖型でも二重鎖型でもよい。RNAは、小胞の一部であっても、小胞内に
存在しても、または小胞に関連するものでもよい。小胞は、エキソソームであってもよい
。RNAには、mRNA、rRNA、小型RNA、snRNA、snoRNA、マイクロ
RNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、および非翻訳領域RNAが含
まれるがこれらに限定されない。RNAは、ヒトRNAが好ましい。
【0033】
用語の「構築物」は、1つまたは複数の合成または天然生体適合性材料から作られた足
場またはマトリックスの表面上またはその中に析出させた1つまたは複数の細胞集団を指
す。1つまたは複数の細胞集団は、1つまたは複数の合成または天然生体適合性高分子、
タンパク質、またはペプチドから作られた生体材料でコートするか、その上に析出させる
か、その中に包埋するか、それに付着させるか、またはその中に封入してもよい。1つま
たは複数の細胞集団は、生体材料または足場もしくはマトリックスとインビトロまたはイ
ンビボで組み合わせてもよい。一般的に、足場/生体材料を形成するために使用される1
つまたは複数の生体適合性材料は、少なくとも1つの析出した細胞集団の多細胞3次元組
織化を指示するか、促進するか、または許容するように選択される。構築物を生成するの
に使用される1つまたは複数の生体材料は、内在性宿主組織を有する構築物または構築物
の細胞成分の分散および/または一体化を指示するか、促進するか、または許容するか、
または構築物もしくは構築物の細胞成分の生存、生着、耐性、または機能的性能を指示す
るか、促進するか、または許容するように選択できる。
【0034】
用語の「マーカー」または「バイオマーカー」は、通常、DNA、RNA、タンパク質
、炭水化物、または糖脂質ベース分子マーカーを指し、培養した細胞集団中でのそれらの
発現または存在は、標準的な方法(または本明細書で開示の方法)により検出可能で、特
定の細胞型である培養した細胞集団中の1つまたは複数の細胞と一致する。マーカーは、
細胞により発現されたポリペプチドまたは特定可能な染色体上の物理的位置、例えば、遺
伝子、制限エンドヌクレアーゼ認識部位またはネイティブ細胞により発現されるポリペプ
チドをコードする核酸(例えば、mRNA)であってもよい。マーカーは、「遺伝子発現
マーカー」と呼ばれる遺伝子の発現領域、または既知のコード機能のない一部のDNAセ
グメントであってもよい。バイオマーカーは、細胞由来の産物、例えば、分泌産物であっ
てもよい。
【0035】
用語の「発現差異遺伝子」、「遺伝子発現差異」およびそれらの同義語は、同義に使用
され、第1細胞または細胞集団の発現が、第2細胞または細胞集団のその発現に比べて、
より高いまたはより低いレベルに活性化された遺伝子を指す。この用語は、また、第1ま
たは第2細胞の継代培養時間の間の異なる段階で、より高いまたはより低いレベルに活性
化された遺伝子を含む。また、発現差異遺伝子は、核酸レベルまたはタンパク質レベルで
活性化もしくは阻害されてもよく、または選択的スプライシングに供され、異なるポリペ
プチド産物を生じてもよいことは理解されよう。このような差異は、例えば、mRNAレ
ベルの変化、表面発現、分泌またはポリペプチドのその他の区分け手法により立証できる
。遺伝子発現差異には、2つ以上の遺伝子もしくはそれらの遺伝子産物間の比較、または
2つ以上の遺伝子もしくはそれらの遺伝子産物間の発現比率の比較、またはさらに第1細
胞と第2細胞の間で異なる別々に処理された2つの同じ遺伝子の産物の比較、を含んでも
よい。発現差異には、例えば、第1細胞および第2細胞中の遺伝子またはその発現産物の
時間的または細胞発現パターンにおける定量的、ならびに定性的差異の両方が含まれる。
本発明の目的としては、第1細胞と第2細胞の間の所与の遺伝子の発現の差異がある場合
に、「遺伝子発現差異」が存在すると考えられる。マーカーの発現差異は、投与後の患者
由来の細胞(第2細胞)中の発現に比べて、細胞集団、混合物、または構築物(第1細胞
)の投与前の患者由来の細胞中に存在してもよい。
【0036】
用語の「阻害する」、「下方制御する」、「過小発現する(under-expres
s)」および「減らす」は同義に使われ、遺伝子の発現、またはRNA分子もしくは1つ
または複数のタンパク質またはタンパク質サブユニットをコードする等価RNA分子のレ
ベル、または1つまたは複数のタンパク質またはタンパク質サブユニットの活性が、1つ
または複数の対照、例えば、1つまたは複数の陽性および/または陰性対照に比べて低減
することを意味する。過小発現は、投与後の患者由来の細胞に比べて、細胞集団、混合物
、または構築物の投与前の患者由来の細胞中に存在してもよい。
【0037】
用語の「上方制御する」または「過剰発現」は、遺伝子の発現、またはRNA分子もし
くは1つまたは複数のタンパク質またはタンパク質サブユニットをコードする等価RNA
分子のレベル、または1つまたは複数のタンパク質もしくはタンパク質サブユニットの活
性が、1つまたは複数の対照、例えば、1つまたは複数の陽性および/または陰性対照に
比べて高められていることの意味に使用される。過剰発現は、投与前の患者由来の細胞に
比べて、細胞集団、混合物、または構築物の投与後の患者由来の細胞中に存在してもよい
【0038】
用語の「対象」は、腎疾患、貧血、またはEPO欠乏の1つまたは複数の徴候、症状、
または他の指標を経験しているか、または経験したことがある、治療適格患者を含む、任
意の個々のヒトの対象を意味する。このような対象には、限定されないが、腎疾患、貧血
、またはEPO欠乏を新規に診断された、または以前に診断されたか、および現在これら
の再発または再燃を経験しているか、またはこれらに罹患のリスクがある対象が、理由が
なんであれ、含まれる。対象は、腎疾患、貧血、またはEPO欠乏の治療を以前行ってい
ても、また、そうでなくてもよい。
【0039】
用語の「患者」は、任意の個々の動物、より好ましくは、治療が必要な哺乳動物(例え
ば、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、動物園の動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、および非ヒト霊長
類、等の非ヒト動物を含む)を指す。本明細書の患者は、ヒトが最も好ましい。
【0040】
用語の「検体」または「患者検体」または「生物試料」は、通常、対象または患者、体
液、体組織、細胞株、組織培養物、または他のソースから採取した任意の生物試料を意味
する。この用語は、組織生検、例えば、腎生検を含む。この用語は、培養細胞、例えば、
培養哺乳類腎臓細胞を含む。哺乳動物から組織生検および培養細胞を得る方法は、当技術
分野でよく知られている。用語の「検体」が単独で使用される場合、「検体」は、依然と
して「生物試料」または「患者検体」を意味し、すなわち、これらの用語は、同義に使用
される。
【0041】
用語の「試験検体」は、本発明の方法で処置された対象由来の検体を指す。この試験検
体は、限定されないが、血液、精液、血清、尿、骨髄、粘膜、組織、等を含む哺乳類対象
の種々のソース由来であってもよい。
【0042】
用語の「対照」または「対照検体」は、陰性または陽性の結果により、試験検体の結果
の相関付けを支援することが期待される陰性または陽性対照を指す。本発明に適する対照
には、限定されないが、正常な赤血球恒常性の指標特性を示すことが解っている検体、貧
血の指標特性を示すことが解っている検体、貧血でないことが解っている対象から採取し
た検体、および貧血であると解っている対象から採取した検体が含まれる。本発明の方法
に使用可能なさらなる対照には、限定されないが、赤血球生成を調節すると解っている薬
剤(例えば、組換え型EPOまたはEPO類似体)で処置されたことがある対象由来の検
体が含まれる。さらに、対照は、本発明の方法により処置される前に対象から採取した検
体であってもよい。追加の適する対照は、いずれかの型または段階の腎疾患であると解っ
ている対象から採取した試験検体、およびいずれの型または段階の腎疾患であるか解って
いない対象から採取した検体であってもよい。対照は、正常で健康な調和の取れた対照で
あってもよい。当業者なら、本発明での使用に適した他の対照が解るであろう。
【0043】
「再生予後(Regeneration prognosis)」、「再生予後(re
generative prognosis)」、または「再生予後(prognost
ic for regeneration)」は、通常、本明細書記載の細胞集団、混合
物または構築物の投与または移植の可能な再生経過または転帰の予見または予測を指す。
予後に対して、予見または予測は、1つまたは複数の次記により知ることができる:移植
または投与後の腎臓機能の改善、移植または投与後の機能的腎臓の発生、移植または投与
後の改善腎臓機能または能力の発生、および移植または投与後のネイティブ腎臓による特
定のマーカーの発現。
【0044】
「再生腎臓」は、本明細書記載の細胞集団、混合物、または構築物の移植または投与後
のネイティブ腎臓を指す。再生腎臓は、限定されないが、ネイティブ腎臓中の機能または
能力の発生、ネイティブ腎臓中の機能または能力の改善、およびネイティブ腎臓中の特定
のマーカーの発現、を含む種々の指標を特徴とする。当業者なら、他の指標が、再生腎臓
を特徴付けるのに適切である可能性があることを解るであろう。
【0045】
細胞集団
腎疾患の処置に使用するための、すなわち、腎臓機能の安定化および/または改善および
/または再生を提供する、特異的生理活性成分または細胞型を富化した、および/または
特異的不活性または望ましくない成分または細胞型を枯渇させた異種起源の単離腎臓細胞
集団、およびそれらの混合物は、以前に、2009年11月12日出願の米国特許出願第
12/617、721号に記載された。この特許の全内容は、参照により本明細書に組み
込まれる。本発明は、健康な個体に比べて、細胞成分を欠くが、依然として、治療特性を
保持している、すなわち、腎臓機能の安定化および/または改善および/または再生を行
える単離腎臓細胞画分を提供する。本明細書記載の細胞集団、細胞画分、および/または
細胞の混合物は、健康な個体、腎疾患の個体、または本明細書記載の対象由来であっても
よい。
【0046】
生理活性細胞集団
一態様では、本発明は、生理活性成分を富化させ、不活性または望ましくない成分を枯渇
させた異種起源の腎臓細胞集団の特定の亜画分が、出発集団より優れた治療および再生結
果を提供するという驚異的知見に基づいている。例えば、本発明の生理活性成分、例えば
、不活性または望ましくない成分、例えば、B1およびB5が枯渇しているB2、B4、
およびB3は、単独または混合して、予想外の腎臓機能の安定化および/または改善およ
び/または再生を提供する。
【0047】
別の態様では、本発明は、1つまたは複数の細胞型、例えば、血管、内分泌、または内
皮細胞型が枯渇または不足している特異的亜画分であるB4、すなわち、B4’は、単独
で、または他の生理活性亜画分、例えば、B2および/またはB3と混合した場合、治療
特性、例えば、腎臓機能の安定化および/または改善および/または再生特性を保持して
いるという驚異的知見に基づいている。好ましい実施形態では、生理活性細胞集団はB2
ある。特定の実施形態では、B2細胞集団は、B4またはB4’と混合される。他の実施
形態では、B2細胞集団は、B3と混合される。他の実施形態では、B2細胞集団は、B
3とB4の両方、またはB3および/またはB4の特定細胞成分と混合される。
【0048】
B2細胞集団は、1つまたは複数の下記からなる群より選択される尿細管細胞マーカー
の発現を特徴とする:メガリン、キュビリン、ヒアルロン酸シンターゼ2(HAS2)、
ビタミンD325-ヒドロキシラーゼ(CYP2D25)、N-カドヘリン(Ncad)
、E-カドヘリン(Ecad)、アクアポリン-1(Aqp1)、アクアポリン-2(A
qp2)、RAB17、memberRAS癌遺伝子ファミリー(Rab17)、GAT
A結合タンパク質3(Gata3)、FXYDドメイン含有イオン輸送制御因子4(Fx
yd4)、溶質キャリアファミリー9(ナトリウム/水素交換体)、member 4(
Slc9a4)、アルデヒド脱水素酵素3ファミリー、member B1(Aldh3
b1)、アルデヒド脱水素酵素1ファミリー、member A3(Aldh1a3)、
およびカルパイン-8(Capn8)、ならびに集合管マーカーアクアポリン-4(Aq
p4)。B2は、B3および/またはB4より大きく、より粒状化しており、従って、約
1.045g/ml~約1.063g/ml(げっ歯類)、約1.045g/ml~1.
052g/ml(ヒト)、および約1.045g/ml~約1.058g/ml(イヌの
)の浮遊密度を有する。
【0049】
B3細胞集団は、一部のEPO産生細胞を伴ったB2とB4に比べて中間的サイズと粒
度の血管、糸球体および近位の尿細管マーカーの発現を特徴とする。従って、約1.06
3g/ml~約1.073g/ml(げっ歯類)、約1.052g/ml~約1.063
g/ml(ヒト)、および約1.058g/ml~約1.063g/ml(イヌの)の浮
遊密度を有する。B3は、1つまたは複数の下記からなる群より選択されるマーカーの発
現を特徴とする:アクアポリン7(Aqp7)、FXYDドメイン含有イオン輸送制御因
子2(Fxyd2)、溶質キャリアファミリー17(リン酸ナトリウム)、member
3(Slc17a3)、溶質キャリアファミリー3、member 1(Slc3a1
)、クローディン2(Cldn2)、napsin Aアスパラギン酸ペプチダーゼ(N
apsa)、溶質キャリアファミリー2(促進性ブドウ糖輸送体)、member 2(
Slc2a2)、アラニル(膜)アミノペプチダーゼ(Anpep)、膜貫通タンパク質
27(Tmem27)、アシルCoAシンテターゼ中等度鎖ファミリーメンバー2(Ac
sm2)、グルタチオンペルオキシダーゼ3(Gpx3)、果糖-1、6-ビホスファタ
ーゼ1(Fbp1)、およびアラニン-グリオキシル酸アミノ基転移酵素2(Agxt2
)。B3は、また、血管発現マーカー血小板内皮細胞接着分子(Pecam)および糸球
体発現マーカーポドシン(Podn)を特徴とする。
【0050】
B4細胞集団は、PECAM、VEGF、KDR、HIF1a、CD31、CD146
の内の1つまたは複数を含む血管マーカーセットの発現;ポドシン(Podn)、および
ネフリン(Neph)の内の1つまたは複数を含む糸球体マーカーセットの発現;ならび
に未分画(UNFX)、B2およびB3に比較して、酸素で調節可能なEPO富化集団、
を特徴とする。B4は、また、1つまたは複数の下記マーカーの発現を特徴とする:ケモ
カイン(C-X-Cモチーフ)受容体4(Cxcr4)、エンドセリン受容体B型(Ed
nrb)、コラーゲン、V型、アルファ2(Col5a2)、カドヘリン5(Cdh5)
、プラスミノーゲン活性化因子、組織(Plat)、アンジオポエチン2(Angpt2
)、キナーゼ挿入ドメインタンパク質受容体(Kdr)、分泌タンパク質、酸性の、シス
テインリッチ(オステオネクチン)(Sparc)、セルグリシン(Srgn)、TIM
Pメタロペプチダーゼ阻害剤3(Timp3)、Wilms腫瘍1(Wt1)、ウィング
レス型MMTV統合部位ファミリー、member 4(Wnt4)、G-タンパク質シ
グナル伝達制御因子4(Rgs4)、血小板内皮細胞接着分子(Pecam)、およびエ
リスロポエチン(Epo)。B4は、また、B2またはB3に比較して、より小さい、よ
り少ない粒状化細胞を特徴とする。また、約1.073g/ml~約1.091g/ml
(げっ歯類)、約1.063g/ml~約1.091g/mL(ヒトおよびイヌ)の浮遊
密度を有する。
【0051】
B4’細胞集団は、1.063g/mL~1.091g/mLの浮遊密度を有し、1つ
または複数の下記のマーカーを発現するとして定義される:PECAM、vEGF、KD
R、HIF1a、ポドシン、ネフリン、EPO、CK7、CK8/18/19。一実施形
態では、B4’細胞集団は、PECAM、vEGF、KDR、HIF1a、CD31、C
D146の内の1つまたは複数を含む血管マーカーセットを発現することを特徴とする。
別の実施形態では、B4’細胞集団は、内分泌マーカーEPOの発現を特徴とする。一実
施形態では、B4’細胞集団は、ポドシン(Podn)、およびネフリン(Neph)の
内の1つまたは複数を含む糸球体マーカーセットの発現を特徴とする。特定の実施形態で
は、B4’細胞集団は、PECAM、vEGF、KDR、HIF1aの内の1つまたは複
数を含む血管マーカーセットの発現、および内分泌マーカーEPOの発現を特徴とする。
別の実施形態では、B4’は、また、B2またはB3に比べて、より小さい、より少ない
粒状化細胞を特徴とし、約1.073g/ml~約1.091g/ml(げっ歯類)、約
1.063g/ml~約1.091g/mL(ヒトおよびイヌの)の浮遊密度を有する。
【0052】
一態様では、本発明は、1.063g/mL~1.091g/mLの密度の少なくとも
1つのエリスロポエチン(EPO)産生細胞、血管細胞、および糸球体細胞を含む単離さ
れた、ヒト腎臓細胞富化B4’集団を提供する。一実施形態では、B4’細胞集団は、血
管マーカーの発現を特徴とする。特定の実施形態では、B4’細胞集団は、糸球体マーカ
ーの発現を特徴としない。一部の実施形態では、B4’細胞集団は、酸素で調節可能なエ
リスロポエチン(EPO)発現が可能である。
【0053】
一実施形態では、B4’細胞集団は、尿細管細胞を含む1.045g/mL~1.05
2g/mLの密度のB2細胞集団を含まない。別の実施形態では、B4’細胞集団は、集
合管および尿細管系のより大きな粒状化細胞を含む1.045g/ml未満の密度のB1
細胞集団を含まない。さらに別の実施形態では、B4’細胞集団は、低粒度および低生存
率の壊死組織片および小細胞を含む1.091g/ml超の密度のB5細胞集団を含まな
い。
【0054】
一実施形態では、B4’細胞集団は、尿細管細胞を含む1.045g/mL~1.05
2g/mLの密度のB2細胞集団;集合管および尿細管系のより大きな粒状化細胞を含む
1.045g/ml未満の密度のB1細胞集団;および低粒度および低生存率の壊死組織
片および小細胞を含む1.091g/ml超の密度のB5細胞集団を含まない。一部の実
施形態では、B4’細胞集団は、腎疾患の対象由来であってもよい。
【0055】
一態様では、本発明は、単離された、尿細管細胞富化集団を含む1.045g/mL~
1.052g/mLの密度の第1細胞集団、B2、およびエリスロポエチン(EPO)産
生細胞および血管細胞を含むが、糸球体細胞が枯渇した約1.063g/mL~1.09
1g/mLの密度の第2細胞集団、B4’を含むヒト腎臓細胞混合物を提供する。この混
合物は、集合管および尿細管系の1.045g/ml未満の密度の大きな粒状化細胞を含
むB1細胞集団、または低粒度および低生存率の壊死組織片および小細胞を含む1.09
1g/ml超の密度のB5細胞集団を含まない。特定の実施形態では、B4’細胞集団は
、血管マーカーの発現を特徴とする。一実施形態では、B4’細胞集団は、糸球体マーカ
ーの発現を特徴としない。特定の実施形態では、B2は、集合管上皮細胞をさらに含む。
一実施形態では、細胞の混合物は、受容体媒介アルブミン取込が可能である。別の実施形
態では、細胞の混合物は、酸素で調節可能なエリスロポエチン(EPO)発現が可能であ
る。一実施形態では、混合物は、インビトロおよびインビボの両方で、ヒアルロン酸(H
A)の高分子量種の産生可能な、および/または産生を刺激可能なHAS-2発現細胞を
含む。全ての実施形態で、第1および第2細胞集団は、腎臓組織または培養腎臓細胞由来
であってもよい。
【0056】
一実施形態では、混合物は、インビボ送達時に再生刺激を与えることができる。他の実
施形態では、混合物は、インビボ送達時に、糸球体濾過、尿細管再吸収、尿産生、および
/または内分泌機能の低下を減らし、これらを安定化し、または改善することができる。
一実施形態では、B4’細胞集団は、腎疾患の対象由来である。
【0057】
一態様では、本発明は、少なくとも1つのエリスロポエチン(EPO)産生細胞、血管
細胞、および糸球体細胞を含む1.063g/mL~1.091g/mLの密度の単離さ
れた、ヒト腎臓細胞富化B4’集団を提供する。一実施形態では、B4’細胞集団は、血
管マーカーの発現を特徴とする。特定の実施形態では、B4’細胞集団は、糸球体マーカ
ーの発現を特徴としない。発現しない糸球体マーカーは、ポドシンであってもよい(実施
例7参照)。一部の実施形態では、B4’細胞集団は、酸素で調節可能なエリスロポエチ
ン(EPO)発現が可能である。
【0058】
一実施形態では、B4’細胞集団は、1.045g/mL~1.052g/mLの密度
の尿細管細胞含有B2細胞集団を含まない。別の実施形態では、B4’細胞集団は、集合
管および尿細管系の大きな粒状化細胞を含む1.045g/ml未満の密度のB1細胞集
団を含まない。さらに別の実施形態では、B4’細胞集団は、低粒度および低生存率の壊
死組織片および小細胞を含む1.091g/ml超の密度のB5細胞集団を含まない。
【0059】
一実施形態では、B4’細胞集団は、尿細管細胞を含む1.045g/mL~1.05
2g/mLの密度のB2細胞集団;集合管および尿細管系の大きな粒状化細胞を含む1.
045g/ml未満の密度のB1細胞集団;および低粒度および低生存率の壊死組織片お
よび小細胞を含む1.091g/ml超の密度のB5細胞集団を含まない。一部の実施形
態では、B4’細胞集団は、腎疾患の対象由来であってもよい。
【0060】
一態様では、本発明は、単離された、尿細管細胞富化集団を含む1.045g/mL~
1.052g/mLの密度の第1細胞集団、B2、およびエリスロポエチン(EPO)産
生細胞および血管細胞を含むが、糸球体細胞が枯渇している約1.063g/mL~1.
091g/mLの密度の第2細胞集団、B4’を含むヒト腎臓細胞の混合物を提供する。
この混合物は、集合管および尿細管系の大きな粒状化細胞を含む1.045g/ml未満
の密度のB1細胞集団、または低粒度および低生存率の壊死組織片および小細胞を含む1
.091g/ml超の密度のB5細胞集団を含まない。特定の実施形態では、B4’細胞
集団は、血管マーカーの発現を特徴とする。一実施形態では、B4’細胞集団は、糸球体
のマーカーの発現を特徴としない。特定の実施形態では、B2は、集合管上皮細胞をさら
に含む。一実施形態では、細胞の混合物は、受容体媒介アルブミン取込が可能である。別
の実施形態では、細胞の混合物は、酸素で調節可能なエリスロポエチン(EPO)発現が
可能である。一実施形態では、混合物は、インビトロおよびインビボの両方で、ヒアルロ
ン酸(HA)の高分子量種の産生および/または産生の刺激が可能なHAS-2発現細胞
を含む。全ての実施形態で、第1および第2細胞集団は、腎臓組織または培養腎臓細胞由
来であってもよい。
【0061】
一実施形態では、混合物は、インビボ送達時に再生刺激与えることができる。他の実施
形態では、混合物は、インビボ送達時に、糸球体濾過、尿細管再吸収、尿産生、および/
または内分泌機能の低下を減らし、これらを安定化または改善できる。一実施形態では、
B4’細胞集団は、腎疾患の対象由来である。
【0062】
好ましい実施形態では、混合物は、B2を、B3および/またはB4と組み合わせて含
む。別の好ましい実施形態では、混合物は、B2を、B3および/またはB4’と組み合
わせて含む。他の好ましい実施形態では、混合物は、(i)B2をB3および/またはB
4と組み合わせて;または(ii)B2をB3および/またはB4’と組み合わせて構成
されるか、または基本的に構成される。
【0063】
B4’細胞集団を含む混合物は、また、不健康対象から採取したB2および/またはB
3細胞集団を含んでもよい。不健康な対象は、B4’画分が得られたのと同じ対象であっ
てもよい。B4’細胞集団とは対照的に、不健康対象から採取したB2およびB3細胞集
団は、健康な個体由来の出発腎臓細胞集団に比べて、通常、1つまたは複数の特定細胞型
が欠如していない。
【0064】
B2およびB4によるヒアルロン酸産生
ヒアルロナン(ヒアルロン酸またはヒアルロン酸塩とも呼ばれる)は、グリコサミノグリ
カン(GAG)であり、非硫酸化二糖ユニットの規則的反復配列、特にN-アセチルグル
コサミンおよびグルクロン酸から構成される。その分子量は、400ダルトン(二糖)か
ら百万ダルトン超までの範囲に及ぶ。それは、皮膚、軟骨、および目等、の全組織中、な
らびに、成人動物の、全てではないにしても、ほとんどの体液中に可変量として認められ
る。それは特に初期の胚中に豊富である。ヒアルロナンにより形成された空間、および実
際にGAGは、通常、細胞遊走、細胞付着中に、創傷修復、器官形成、免疫細胞接着、細
胞内シグナル伝達の活性化、ならびに腫瘍転移の間に、それが何らかの役割を果たすこと
を可能とする。これらの役割は、ヒアルロナンへの特異的タンパク質およびプロテオグリ
カンの結合により媒介される。細胞の運動性および免疫細胞接着は、細胞表面受容体RH
AMM(ヒアルロナン媒介運動性のための受容体;Hardwick et al.、1
992)およびCD44(Jalkenan et al.、1987;Miyake
et al.、1990)により媒介される。ヒアルロナンは、細胞表面の内側膜で直接
合成され、合成されるにつれ、成長するポリマーが膜を通して細胞の外側へ押し出される
。合成は、遺伝子ファミリーが少なくとも3つのメンバーから構成される単一タンパク質
酵素、ヒアルロナン合成酵素(HAS)により媒介される。
【0065】
最近、ヒアルロン酸がCD44と相互作用することが示されたが、このような相互作用
は、多くの作用の中でも特に、非居住細胞(例えば、間葉系幹細胞(MSC))を傷害腎
臓組織に補充することができ、腎臓再生を強化する(Kidney Internati
onal(2007)72、430-441)。
【0066】
意外にも、B2細胞集団中でより特異的に富化されているマーカーであるヒアルロン酸
シンターゼ-2(HAS-2)の作用により、インビトロおよびインビボの両方で、B2
およびB4細胞調製物が、より大きい分子量種のヒアルロン酸(HA)を発現可能である
ことが明らかとなった。5/6NxモデルにおけるB2を使った処置が、強力なHAS-
2インビボ発現および予期された処置組織内の高分子量HAの産生と同時に、線維形成を
減らすことが示された。特に、未処置で残された5/6Nxモデルは、わずかのHAS-
2の検出および極わずかな高分子量HAの産生と共に、線維形成が生じた。理論に拘泥す
る意図はないが、B2により主として産生された(ある程度はB4による)このHAの抗
炎症性高分子量種は、腎線維症の減少および腎臓再生の支援において、細胞調製物と相乗
的に作用すると仮定される。従って、本発明は、ヒアルロン酸含有生体材料中の本発明の
細胞プロトタイプの送達を含む。移植細胞を使った直接産生または産生の刺激による再生
刺激生体材料成分の提供もまた本発明で意図されている。
【0067】
一態様では、本発明は、治療を必要としている対象の腎疾患、貧血および/またはEP
O欠乏の処置に使われる、単離された、異種起源のEPO産生腎臓細胞集団を提供する。
一実施形態では、細胞集団は、腎生検由来である。別の実施形態では、細胞集団は、全腎
臓組織由来である。もう一つの実施形態では、細胞集団は、腎生検または全腎臓組織から
構築された哺乳類腎臓細胞のインビトロ培養物由来である。全ての実施形態で、これらの
集団は、未分画細胞集団であり、また、本明細書では非富化細胞集団と呼ばれる。
【0068】
別の態様では、本発明は、エリスロポエチン(EPO)産生腎臓細胞がさらに富化され
、それにより、出発または初期細胞集団中のEPO産生細胞の割合に比較して、富化亜集
団中のEPO産生細胞の割合が大きくなった単離EPO産生腎臓細胞集団を提供する。一
実施形態では、富化EPO産生細胞画分は、非富化初期集団に含まれる間質性線維芽細胞
および尿細管細胞に比較して、より大きな割合の間質性線維芽細胞およびより小さな割合
の尿細管細胞を含む。特定の実施形態では、富化EPO産生細胞画分は、非富化初期集団
に含まれる糸球体細胞、血管細胞および集合管細胞に比較して、より大きな割合の糸球体
細胞および血管細胞およびより小さな割合の集合管細胞を含む。このような実施形態では
、これらの集団は、本明細書では、「B4」細胞集団と呼ばれる。
【0069】
別の態様では、本発明は、1つまたは複数の追加の腎臓細胞集団と混合されたEPO産
生腎臓細胞集団を提供する。一実施形態では、EPO産生細胞集団は、EPO産生細胞を
富化した第1細胞集団、例えば、B4である。別の実施形態では、EPO産生細胞集団は
、EPO産生細胞を富化していない第1細胞集団、例えば、B2である。別の実施形態で
は、第1細胞集団は、第2腎臓細胞集団と混合される。一部の実施形態では、第2細胞集
団は、尿細管細胞が富化され、これは尿細管細胞表現型の存在により立証できる。別の実
施形態では、尿細管細胞表現型は、1つの尿細管細胞マーカーの存在により示すことがで
きる。別の実施形態では、尿細管細胞表現型は、1つまたは複数の尿細管細胞マーカーの
存在により示すことができる。尿細管細胞マーカーには、限定されないが、メガリン、キ
ュビリン、ヒアルロン酸シンターゼ2(HAS2)、ビタミンD325-ヒドロキシラー
ゼ(CYP2D25)、N-カドヘリン(Ncad)、E-カドヘリン(Ecad)、ア
クアポリン-1(Aqp1)、アクアポリン-2(Aqp2)、RAB17、membe
r RAS癌遺伝子ファミリー(Rab17)、GATA結合タンパク質3(Gata3
)、FXYDドメイン含有イオン輸送制御因子4(Fxyd4)、溶質キャリアファミリ
ー9(ナトリウム/水素交換体)、member 4(Slc9a4)、アルデヒド脱水
素酵素3ファミリー、member B1(Aldh3b1)、アルデヒド脱水素酵素1
ファミリー、member A3(Aldh1a3)、およびカルパイン-8(Capn
8)、が含まれる。別の実施形態では、第1細胞集団は、限定されないが、下記を含むい
くつかの型の内の少なくとも1つの腎臓細胞と混合される:間質由来細胞、尿細管細胞、
集合管由来細胞、糸球体由来細胞、および/または血液または脈管構造由来細胞。EPO
産生腎臓細胞集団は、B2および/またはB3との混合物の形態の、または富化細胞集団
、例えば、B2+B3+B4/B4’の形態のB4またはB4’を含んでもよい。
【0070】
一態様では、本発明のEPO産生腎臓細胞集団は、EPO発現および酸素に対する生物
学的応答を特徴とし、培養系の酸素圧力の減少によりEPO発現が誘導される。一実施形
態では、EPO産生細胞集団は、EPO産生細胞が富化される。一実施形態では、EPO
発現は、通常の雰囲気(約21%)の利用可能酸素に比べて、利用可能な培養系の酸素レ
ベルが減少している条件下で細胞集団を培養する場合に誘導される。一実施形態では、通
常の酸素条件下で培養したEPO産生細胞に比べて、低酸素条件下で培養したEPO産生
細胞は、より高いレベルのEPOを発現する。一般的に、低いレベルの利用可能酸素での
細胞培養(低酸素性培養条件とも呼ばれる)は、低い酸素のレベルが、通常の雰囲気レベ
ルの利用可能酸素(正常または正常酸素圧培養条件と呼ばれる)での細胞の培養に比べて
、低下していることを意味する。一実施形態では、低酸素性細胞培養条件には、1%酸素
未満、約2%酸素未満、約3%酸素未満、約4%酸素未満、または約5%酸素未満で細胞
を培養することが含まれる。別の実施形態では、正常または正常酸素圧培養条件には、約
10%酸素、約12%酸素、約13%酸素、約14%酸素、約15%酸素、約16%酸素
、約17%酸素、約18%酸素、約19%酸素、約20%酸素、または約21%酸素で細
胞を培養することを含む。
【0071】
もう一つの実施形態では、約5%未満の利用可能酸素で細胞を培養し、EPO発現レベ
ルを大気圧(約21%)酸素下で培養した細胞と比較することにより、EPOの発現誘導
または発現増加が得られ、また、観察できる。別の実施形態では、一定期間細胞の培養が
大気中酸素(約21%)下で行われる第1培養相および利用可能酸素レベルが低減され、
約5%未満の利用可能酸素下で同じ細胞が培養される第2培養相を含む方法により、EP
Oの誘導は、EPOを発現できる細胞の培養中に得られる。別の実施形態では、低酸素性
条件に応答するEPO発現は、HIF1αにより調節されている。当業者なら、当技術分
野で既知の他の酸素操作培養条件も本明細書記載の細胞の目的に使用可能であることを理
解するであろう。
【0072】
一態様では、EPO産生哺乳動物細胞富化集団は、灌流条件に対する生物学的応答(例
えば、EPO発現)を特徴とする。一実施形態では、灌流条件は、一過性、間欠性、また
は連続の液体流動(灌流)を含む。一実施形態では、流動を介して動力を細胞に移す方式
で、細胞培養用培地を間欠的にまたは連続的に循環させるか、または攪拌する場合に、E
PO発現が機械的に誘導される。一実施形態では、一過性、間欠性、または連続的液体流
動に曝された細胞は、それらがフレームワークおよび/またはこのような3次元構造を形
成する空間を提供する材料中または材料上の3次元構造体として存在する方式で培養され
る。一実施形態では、細胞は、多孔性ビーズ上で培養され、揺動プラットホーム、軌道周
回プラットホーム、またはスピナーフラスコを用いて間欠性または連続的液体流動に曝さ
れる。別の実施形態では、細胞は、3次元足場上で培養され、装置中に置かれる。これに
より、足場は固定され、液体は、足場を通る、または横切る方向へ流動する。当業者なら
、当技術分野で既知の他の灌流培養条件を、本明細書記載の細胞用として使用可能である
ことを理解するであろう。
【0073】
不活性細胞集団
本明細書で記載のように、本発明は、1つには、生理活性成分富化および不活性または望
ましくない成分が枯渇している腎臓細胞の異種起源の集団の特定亜画分が、出発集団より
も優れた処置および再生の結果を提供するという驚くべき知見に基づいている。好ましい
実施形態では、本発明の細胞集団は、B1および/またはB5細胞集団が枯渇している。
例えば、下記は、B1および/またはB5を枯渇していてもよい:2つ以上のB2、B3
、およびB4’の混合物;B2、B3、およびB4’富化細胞集団。
【0074】
B1細胞集団は、集合管および尿細管系の大きな、粒状細胞を含み、その集団の細胞は
、約1.045g/m未満の浮遊密度を有する。B5細胞集団は、低粒度および低生存率
の約1.091g/ml超の浮遊密度を有する壊死組織片および小細胞から構成される。
【0075】
細胞集団を単離・培養する方法
一態様では、本発明は、治療上の使用のために、腎臓細胞成分、例えば、富化細胞集団を
分離し、単離する方法を提供し、この方法は、腎疾患、貧血、EPO欠乏、尿細管輸送機
能欠損、および糸球体濾過機能低下の処置を含む。一実施形態では、細胞集団は新たに消
化された、すなわち、機械的に、もしくは酵素的に消化された腎臓組織から、または哺乳
類腎臓細胞のインビトロ異種起源培養物から単離される。
【0076】
意外にも、密度勾配による分離の前に低酸素性培養条件下で腎臓細胞の異種起源混合物
を培養することにより、B4’を含むB4およびB2および/またはB3画分の両方が増
強された分布と細胞組成が得られることが明らかになった。病気、および非疾患腎臓の両
方から単離された腎臓細胞で、B2からB4への酸素依存性細胞の富化が認められた。理
論に拘泥する意図はないが、これは、1つまたは複数の下記の事象に起因する可能性があ
る:1)低酸素性培養期間の間の特定細胞成分の選択的生存、死亡、または増殖;2)低
酸素性培養に応答した細胞粒度および/またはサイズの変化と、それによる浮遊密度およ
びその後の密度勾配分離の間の局在化の変化への影響;および3)低酸素性培養期間に応
答した細胞遺伝子/タンパク質発現の変化と、それによる所与のいずれかの勾配画分内の
細胞の特性差異が生ずる。従って、一実施形態では、尿細管細胞富化細胞集団、例えば、
B2は、低酸素耐性である。
【0077】
本発明の細胞集団の分離と単離のための代表的技術には、対象集団に含まれる異なる細
胞型の比重の差異に基づいた密度勾配による分離が含まれる。任意の所与の細胞型の比重
は、細胞内の粒度、細胞内の水の容量、および他の因子に影響される可能性がある。一態
様では、本発明は、限定されないが、ヒト、イヌ、およびげっ歯類を含む複数の種にわた
る本発明細胞調製物、例えば、B2とB4’含有B4の単離のための最適勾配条件を提供
する。好ましい実施形態では、密度勾配は、異種起源の腎臓細胞集団由来の新規尿細管細
胞画分富化集団、すなわち、B2細胞集団を得るために使用される。一実施形態では、密
度勾配は、異種起源の腎臓細胞集団由来の新規EPO産生細胞画分富化集団、すなわち、
B4細胞集団を得るために使用される。他の実施形態では、密度勾配は、腎臓の尿細管細
胞、糸球体細胞、および内皮細胞富化亜集団を得るために使用される。一実施形態では、
EPO産生および尿細管細胞の両方が、赤血球および細胞壊死組織片から分離される。一
実施形態では、EPO産生、糸球体、および血管細胞が、他の細胞型ならびに赤血球およ
び細胞壊死組織片から分離され、一方、尿細管細胞および集合管細胞亜集団が、同時に他
の細胞型ならびに赤血球および細胞壊死組織片から分離される。もう一つの実施形態では
、内分泌、糸球体、および/または血管細胞が、他の細胞型ならびに赤血球および細胞壊
死組織片から分離され、一方、尿細管細胞および集合管細胞亜集団が、他の細胞型ならび
に赤血球および細胞壊死組織片から同時に分離される。
【0078】
本発明の一部では、60%非イオン性ヨウ素標識化合物イオジキサノール水溶液を含む
OPTIPREP(登録商標)(Axis-Shield)密度勾配培地を使って、下記
の重要な特定の特性に基づいて、新規細胞集団を産生した。しかし、当業者なら、本発明
の細胞集団を分離するための必要な特性を含む、任意の密度勾配または他の手段、例えば
、当技術分野で既知の細胞表面マーカーを使った免疫学分離、が本発明に従って使用可能
であることが解るであろう。また、当業者なら、密度勾配(サイズと粒度)による細胞亜
集団の分離に寄与する同じ細胞特性が開発され、フローサイトメトリー(前方散乱=フロ
ーサイトメトリーによるサイズを反映、側方散乱=粒度を反映)により細胞亜集団を分離
できることも認識すべきである。重要なことは、密度勾配培地は、対象の特定細胞に対し
低毒性でなければならないことである。密度勾配培地は、対象の特定細胞に対し低毒性で
なければならないが、一方で、本発明では、対象の細胞の選択プロセスで、ある種の役割
を果たす勾配培地の使用も意図している。理論に拘泥する意図はないが、投入と回収ステ
ップの間でかなりの細胞減少があったので、イオジキサノール含有勾配により回収された
本発明の細胞集団は、イオジキサノール抵抗性であるように思われ、勾配の条件下でのイ
オジキサノールへの暴露により、特定の細胞の排除に至ったことが示唆される。イオジキ
サノール勾配後の特異的バンドに出現する細胞は、イオジキサノールおよび/または密度
勾配露出のいかなる不都合な作用にも抵抗性がある。従って、本発明は、また、本発明の
細胞集団の単離および/または選択において、追加の軽度から中等度の腎毒素である造影
剤の使用も意図されている。さらに、密度勾配培地は、また、ヒト血漿中のタンパク質と
結合しても、また、対象細胞の重要な機能に悪影響を与えてもいけない。
【0079】
別の態様では、本発明は、蛍光活性化セルソーター(FACS)を使った腎臓細胞型の
富化方法および/または枯渇方法を提供する。一実施形態では、腎臓細胞型は、BD F
ACSAria(登録商標)または等価物を使って、富化および/または枯渇されてもよ
い。
【0080】
別の態様では、本発明は、磁気細胞選別を使った腎臓細胞型の富化および/または枯渇
方法を提供する。一実施形態では、腎臓細胞型は、Miltenyi autoMACS
(登録商標)システムまたは等価物を使って富化および/または枯渇されてもよい。
【0081】
別の態様では、本発明は、腎臓細胞集団の3次元培養方法を提供する。一態様では、本
発明は、連続灌流による細胞集団培養方法を提供する。一実施形態では、3次元培養およ
び連続灌流により培養された細胞集団は、静的に培養した細胞集団に比べて、より高い細
胞充実性およびインターコネクティビティを示す。別の実施形態では、3次元培養および
連続および連続灌流により培養した細胞集団は、このような細胞集団の静的培養に比べて
、より多いEPO発現、ならびに尿細管関連遺伝子、例えば、e-カドヘリンの発現増加
を示す。
【0082】
さらに別の実施形態では、連続灌流により培養した細胞集団は、静的に培養した細胞集
団に比べて、より高いレベルのブドウ糖およびグルタミンの消費を示す。
【0083】
本明細書記載(実施例3を含む)のように、本発明の細胞集団を調製する方法で、低ま
たは低酸素性の酸素条件を使うことができる。しかし、本発明の方法は、低酸素条件付け
のステップなしで使用可能である。一実施形態では、正常酸素圧条件を使ってもよい。
【0084】
当業者なら、本明細書記載の細胞に対し、当技術分野で既知の他の単離と培養方法を使
用できることを理解するであろう。
【0085】
生体材料(ポリマーマトリックスまたは足場)
Bertram et al.の特許公開第20070276507号(参照によりその
全体が本明細書に組み込まれる)に記載のように、ポリマーマトリックスまたは足場は、
任意の数の所望形状に成形して、任意の数の全体系、幾何学的配置または空間の制約を満
たすことができる。一実施形態では、本発明のマトリックスまたは足場は、3次元であっ
てもよく、また、成形されて、器官または組織構造の寸法と形状に適合されてもよい。例
えば、腎疾患、貧血、EPO欠乏、尿細管輸送機能欠損、または糸球体濾過機能低下の処
置のためのポリマー足場の使用で、3次元(3-D)マトリックスを使用できる。種々の
別々に成形された3-D足場を使用可能である。当然、ポリマーマトリックスは、異なる
サイズと形状に成形して別々のサイズの患者に適合させることができる。ポリマーマトリ
ックスは、また、別の方法で成型して、特殊ニーズの患者に適合させることができる。別
の実施形態では、ポリマーマトリックスまたは足場は、生体適合性、多孔性ポリマー足場
であってもよい。足場は、限定されないが、次記を含む種々の合性または天然材料から形
成してもよい:連続気泡ポリ乳酸(OPLA(登録商標))、セルロースエーテル、セル
ロース、セルロースエステル、フッ化ポリエチレン、フェノール、ポリ-4-メチルペン
テン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアミデイミド、ポリアクリラート、ポリ
ベンゾオキサゾール、ポリカルボナート、ポリシアノアリールエテル、ポリエステル、ポ
リエステルカルボナート、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイ
ミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリフルオロオレフ
ィン、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリオキサジアゾール、ポリフェニレンオキシド、
ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスルフィド、ポリスル
ホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリチオエーテル、ポリトリアゾール、ポリウレタ
ン、ポリビニル、ポリフッ化ビニリデン、再生セルロース、シリコーン、尿素-ホルムア
ルデヒド、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、絹、エラスチン、アルギナート、
ヒアルロン酸、アガロース、またはそれらの共重合体もしくは物理的混合物。足場形状は
、ソフト多孔性足場としての液体ヒドロゲル懸濁液から剛直、形状保持多孔性足場までの
範囲が可能である。
【0086】
ヒドロゲルは、種々のポリマー材料から形成でき、種々の生物医学的用途に有用である
。ヒドロゲルは、親水性高分子の3次元ネットワークとして物理的に記述できる。ヒドロ
ゲルのタイプに応じて、それらは、可変割合の水を含むが、水には全く溶解しない。高い
水含量にも関わらず、ヒドロゲルは、親水性の残基の存在により、大容量の液体とさらな
る結合が可能である。ヒドロゲルは、ゼラチン状の構造を変えることなく、大幅に膨潤す
る。ヒドロゲルの基本的物理特性は、使用されたポリマーおよび製品の特殊付加部分の特
性に従って、特異的に改変できる。
【0087】
好ましくは、ヒドロゲルは、ポリマー、生物由来材料、合成物由良材料またはそれらの
組み合わせ、すなわち、生物学的に不活性で、生理学的に哺乳類組織と適合する材料で作
られる。ヒドロゲル材料は、炎症反応を誘発しないのが好ましい。ヒドロゲルの形成に使
われる他の材料の例には、(a)修飾アルギン酸塩、(b)一価カチオンに暴露するとゲ
ル化する多糖類(例えば、ジェランガムおよびカラゲナン)、(c)非常に粘稠な液体で
、チクソトロピックであり、構造の緩慢進化により時間をかけてゲルを形成する多糖類(
例えば、ヒアルロン酸)、および(d)ポリマーヒドロゲル前駆物質(例えば、ポリエチ
レンオキシド-ポリプロピレングリコールブロック共重合体およびタンパク質)、が含ま
れる。米国特許第6,224,893B1号は、本発明に従ったヒドロゲルの作成に適し
た種々のポリマー、およびこのようなポリマーの化学特性の詳細説明を提供している。
【0088】
足場または生体材料特性は、細胞を付着させ、足場または生体材料と相互作用させるこ
とができ、および/またはその中に細胞が捕捉されうる多孔性空隙を提供できる。一実施
形態では、本発明の多孔性足場または生体材料は、多孔性足場として構成されている生体
材料の上に(例えば、細胞の付着により)、および/または足場の気孔の中に(例えば、
細胞の捕捉により)、1つまたは複数の細胞集団または混合物の付加または析出を可能と
する。別の実施形態では、足場または生体材料は、足場内での細胞:細胞および/または
細胞:生体材料の相互作用を可能とするか、または促進して、本明細書記載の構築物を形
成する。
【0089】
一実施形態では、本発明に従って使用される生体材料は、ヒドロゲル型のヒアルロン酸
(HA)からなり、5.1kDAから2x10kDa超までの大きさの範囲のHA分子
を含む。別の実施形態では、本発明に従って使用される生体材料は、多孔質発泡体型のヒ
アルロン酸からなり、また、5.1kDAから2x10kDa超の大きさの範囲のHA
分子を含む。さらに別の実施形態では、本発明に従って使用される生体材料は、ポリ乳酸
(PLA)ベース発泡体からなり、約50ミクロン~約300ミクロンの孔径の連続気泡
構造を有する。さらに別の実施形態では、好ましくはB2であるがB4でもよい特異的細
胞集団は、特に腎臓内移植後に、ヒアルロン酸シンターゼ-2(HAS-2)により高分
子量ヒアルロン酸を直接的に合成する、および/または合成を刺激する。
【0090】
当業者なら、当技術分野で既知の他の型の合成または天然材料が、本明細書記載の足場
を形成するために使用可能であることを理解するであろう。
【0091】
一態様では、本発明は、上で言及の足場または生体材料から作られる本明細書に記載の
構築物を提供する。
【0092】
構築物
一態様では、本発明は、治療を必要としている対象の腎疾患、貧血、またはEPO欠乏の
処置のための1つまたは複数の本明細書記載の細胞集団を有する移植可能な構築物を提供
する。一実施形態では、構築物は、1つまたは複数の合性または天然生体適合性材料から
なる生体適合性材料または生体材料、足場またはマトリックス、および付着および/また
は捕捉により足場の表面上に析出したまたは内部に包埋された1つまたは複数の細胞集団
または本明細書記載の細胞の混合物で作られている。特定の実施形態では、構築物は、生
体材料、および生体材料成分でコートされた、その上に析出させた、その中に析出させた
、それに付着させた、その中に捕捉された、その中に包埋された、またはそれと組み合わ
された、1つまたは複数の細胞集団または本明細書記載の細胞の混合物で作られている。
富化細胞集団またはそれらの混合物を含むいずれかの本明細書記載の細胞集団は、マトリ
ックスと組み合わせて使用して、構築物を形成することができる。
【0093】
別の実施形態では、析出細胞集団または構築物の細胞成分は、酸素で調節可能なEPO
産生細胞を富化した第1腎臓細胞集団である。別の実施形態では、第1腎臓細胞集団は、
酸素で調節可能なEPO産生細胞に加えて、糸球体および血管細胞を含む。一実施形態で
は、第1腎臓細胞集団は、B4’細胞集団である。もう一つの実施形態では、析出細胞集
団または構築物の細胞成分は、第1富化腎臓細胞集団および第2腎臓細胞集団の両方を含
む。一部の実施形態では、第2細胞集団は、酸素で調節可能なEPO産生細胞が富化され
ていない。別の実施形態では、第2細胞集団は、腎臓尿細管細胞が富化されている。別の
実施形態では、第2細胞集団は、腎臓尿細管細胞が富化され、集合管上皮細胞を含む。他
の実施形態では、腎臓尿細管細胞は、1つまたは複数の尿細管細胞マーカーの発現を特徴
とし、限定されないが、マーカーには下記を含んでもよい:メガリン、キュビリン、ヒア
ルロン酸シンターゼ2(HAS2)、ビタミンD325-ヒドロキシラーゼ(CYP2D
25)、N-カドヘリン(Ncad)、E-カドヘリン(Ecad)、アクアポリン-1
(Aqp1)、アクアポリン-2(Aqp2)、RAB17、member RAS癌遺
伝子ファミリー(Rab17)、GATA結合タンパク質3(Gata3)、FXYDド
メイン含有イオン輸送制御因子4(Fxyd4)、溶質キャリアファミリー9(ナトリウ
ム/水素交換体)、member 4(Slc9a4)、アルデヒド脱水素酵素3ファミ
リー、memberB1(Aldh3b1)、アルデヒド脱水素酵素1ファミリー、me
mber A3(Aldh1a3)、およびカルパイン-8(Capn8)。
【0094】
一実施形態では、本発明の構築物を形成するために生体材料または足場上に析出した、
またはそれと組み合わされた細胞集団は、種々のソース、例えば、自己ソース由来である
。また、非自己ソースも、限定されないが、同種異系、または同種同系(自家遺伝子系ま
たは同遺伝子系)ソース、等が使用に適する。
【0095】
当業者なら、細胞集団を析出させて、あるいは生体材料と組み合わせて構築物を形成す
るいくつかの適切な方法があることを理解するであろう。
【0096】
一態様では、本発明の構築物は、本明細書記載の使用方法で使用するために適切である
。一実施形態では、構築物は、全ての原因による腎疾患、貧血、または全ての原因による
EPO欠乏の治療を必要としている対象に対する投与に適している。他の実施形態では、
構築物は、赤血球恒常性の改善または回復を必要としている対象への投与に適している。
別の実施形態では、構築物は、腎臓機能の改善を必要としている対象への投与に適してい
る。
【0097】
さらに別の態様では、本発明は、腎臓機能改善を必要としている対象への移植のための
構築物を提供し、この構築物は、
a)1つまたは複数の生体適合性合成高分子または天然タンパク質またはペプチド
を含む生体材料;および
b)腎疾患を有する対象由来の哺乳類腎臓細胞の混合物で、1.045g/mL
~1.052g/mLの密度の単離された、尿細管細胞富化集団を含む第1細胞集団、B
2、および、エリスロポエチン(EPO)産生細胞および血管細胞を含むが、糸球体細胞
が枯渇している1.063g/mL~1.091g/mLの密度の第2細胞集団、B4’
を含み、これら細胞集団は、生体材料成分でコートされ、その上もしくはその中に析出し
、その中に捕捉され、その中に懸濁され、その中に包埋され、および/または別の方法で
それと組み合わされている。
【0098】
特定の実施形態では、混合物は、集合管および尿細管系の大きな粒状細胞を含む1.0
45g/ml未満の密度のB1細胞集団、または低粒度および低生存率の壊死組織片およ
び小細胞を含む1.091g/ml超の密度のB5細胞集団を含まない。
【0099】
一実施形態では、構築物は、血管マーカーの発現を特徴とするB4’細胞集団を含む。
一部の実施形態では、B4’細胞集団は、糸球体マーカーの発現を特徴としない。特定の
実施形態では、混合物は、酸素で調節可能なエリスロポエチン(EPO)発現を可能とす
る。全ての実施形態で、混合物は、哺乳類腎臓組織または培養腎臓細胞由来であってもよ
い。
【0100】
一実施形態では、構築物は、混合物の捕捉および/または付着に適切な3次元(3-D
)多孔性生体材料として構成されている生体材料を含む。別の実施形態では、構築物は、
哺乳動物細胞の包埋、付着、懸濁、またはコーティングに適した液体または半液体ゲルと
して構成されている生体材料を含む。さらに別の実施形態では、構築物は、主にヒドロゲ
ル型のヒアルロン酸(HA)高分子量種からなるように構成されている生体材料を含む。
別の実施形態では、構築物は、主に多孔性発泡体型のヒアルロン酸高分子量種からなる生
体材料を含む。さらに別の実施形態では、構築物は、約50ミクロン~約300ミクロン
の気孔を有するポリ乳酸ベース発泡体からなる生体材料を含む。さらに別の実施形態では
、構築物は、改善された腎臓機能を必要としている対象に対し自己である腎臓検体由来で
あってもよい1つまたは複数の細胞集団を含む。特定の実施形態では、検体は、腎生検で
ある。一部の実施形態では、対象は、腎疾患を有する。さらに他の実施形態では、細胞集
団は、非自己腎臓検体由来である。一実施形態では、構築物は、赤血球恒常性を提供する
【0101】
分泌産物
もう一つの態様では、本発明は、本明細書記載の富化腎臓細胞集団または富化腎臓細胞集
団の混合物からの分泌産物に関する。一実施形態では、産物は、1つまたは複数の下記を
含む:パラクリン因子、内分泌因子、ジャクスタクライン因子、および小胞。小胞は、1
つまたは複数の次の物を含んでもよい:パラクリン因子、内分泌因子、ジャクスタクライ
ン因子、微小胞、エキソソーム、およびRNA。分泌産物は、また、微小胞内にない産物
を含んでもよく、限定されないが、パラクリン因子、内分泌因子、ジャクスタクライン因
子、およびRNAが含まれる。例えば、細胞外のmiRNAは、小胞外から検出されてい
る(Wang et al.、Nuc Acids Res 2010、1-12doi
:10.1093/nar/gkq601、July 7、2010)。分泌産物は、ま
た、細胞由来産物、例えば、細胞由来小胞、と呼ばれる。
【0102】
もう一つの実施形態では、分泌産物は腎臓細胞由来の小胞の一部であってもよい。小胞
は、因子を他の目的地へ送達できる。一実施形態では、小胞は、分泌小胞である。いくつ
かの型の分泌小胞が意図され、これらには、限定されないが、エキソソーム、微小胞、エ
クトソーム、膜粒子、エキソソーム様小胞、およびアポトーシス性小胞が含まれる(Th
ery et al.2010.Nat.Rev.Immunol.9:581-593
)。一実施形態では、分泌小胞は、エキソソームである。もう一つの実施形態では、分泌
小胞は、微小胞である。もう一つの実施形態では、分泌小胞は、1つまたは複数の細胞成
分を含むか、またはそられからなる。成分は、1つまたは複数の以下の物であってもよい
:膜脂質、RNA、タンパク質、代謝産物、細胞質成分、およびこれらの任意の組み合わ
せ。好ましい実施形態では、分泌小胞は、マイクロRNAを含むか、それから構成される
か、または基本的にそれから構成される。好ましくは、miRNAは、ヒトmiRNAで
ある。一実施形態では、1つまたは複数のmiRNAが、miR-30b-5p、miR
-449a、miR-146a、miR-130a、miR-23b、miR-21、m
iR-124、およびmiR-151からなる群より選択される。もう一つの実施形態で
は、1つまたは複数のmiRNAが、下記からなる群より選択できる:let-7a-1
;let-7a-2;let-7a-3;let-7b;let-7c;let-7d;
let-7e;let-7f-1;let-7f-2;let-7g;let-7i;m
ir-1-1;mir-1-2;mir-7-1;mir-7-2;mir-7-3;m
ir-9-1;mir-9-2;mir-9-3;mir-10a;mir-10b;m
ir-15a;mir-15b;mir-16-1;mir-16-2;mir-17;
mir-18a;mir-18b;mir-19a;mir-19b-1;mir-19
b-2;mir-20a;mir-20b;mir-21;mir-22;mir-23
a;mir-23b;mir-23c;mir-24-1;mir-24-2;mir-
25;mir-26a-1;mir-26a-2;mir-26b;mir-27a;m
ir-27b;mir-28;mir-29a;mir-29b-1;mir-29b-
2;mir-29c;mir-30a;mir-30b;mir-30c-1;mir-
30c-2;mir-30d;mir-30e;mir-31;mir-32;mir-
33a;mir-33b;mir-34a;mir-34b;mir-34c;mir-
92a-1;mir-92a-2;mir-92b;mir-93;mir-95;mi
r-96;mir-98;mir-99amir-99b;mir-100;mir-1
01-1;mir-101-2;mir-103-1;mir-103-1-as;mi
r-103-2;mir-103-2-as;mir-105-1;mir-105-2
;mir-106a;mir-106b;mir-107;mir-122;mir-1
24-1;mir-124-2;mir-124-3;mir-125a;mir-12
5b-1;mir-125b-2;mir-126;mir-127;mir-128-
1;mir-128-2;mir-129-1;mir-129-2;mir-130a
;mir-130b;mir-132;mir-132;mir-133a-1;mir
-133a-2;mir-133b;mir-134;mir-135a-1;mir-
135a-2;mir-135b;mir-136MI101351120;mir-1
37;mir-138-1;mir-138-2;mir-139;mir-140;m
ir-141;mir-142;mir-143;mir-144;mir-145;m
ir-146a;mir-146b;mir-147;mir-147b;mir-14
8a;mir-148b;mir-149;mir-150;mir-151;mir-
152;mir-153-1;mir-153-2;mir-154;mir-155;
mir-181a-1;mir-181a-2;mir-181b-1;mir-181
b-2;mir-181c;mir-181d;mir-182;mir-183;mi
r-184;mir-185;mir-186;mir-187;mir-188;mi
r-190;mir-190b;mir-191;mir-192;mir-193a;
mir-193b;mir-194-1;mir-194-2;mir-195;mir
-196a-1;mir-196a-2;mir-196b;mir-197;mir-
198;mir-199a-1;mir-199a-2;mir-199b;mir-2
00a;mir-200b;mir-200c;mir-202;mir-203;mi
r-204;mir-205;mir-206;mir-208a;mir-208b;
mir-210;mir-211;mir-212;mir-214;mir-215;
mir-216a;mir-216b;mir-217;mir-218-1;mir-
218-2;mir-219-1;mir-219-2;mir-221;mir-22
2;mir-223;mir-224;mir-296;mir-297;mir-29
8;mir-299;mir-300;mir-301a;mir-301b;mir-
302a;mir-302b;mir-302c;mir-302d;mir-302e
;mir-302f;mir-320a;mir-320b-1;mir-320b-2
;mir-320c-1;mir-320c-2;mir-320d-1;mir-32
0d-2;mir-320e;mir-323;mir-323b;mir-324;m
ir-325;mir-326;mir-328;mir-329-1;mir-329
-2;mir-330;mir-331;mir-335;mir-337;mir-3
38;mir-339;mir-340;mir-342;mir-345;mir-3
46;mir-361;mir-362;mir-363;mir-365-1;mir
-365-2;mir-367;mir-369;mir-370;mir-37;mi
r-372;mir-373;mir-374a;mir-374b;mir-374c
;mir-375;mir-376a-1;mir-376a-2;mir-376b;
mir-376c;mir-377;mir-378;mir-378b;mir-37
8c;mir-379;mir-380;mir-381;mir-382;mir-3
83;mir-384;mir-409;mir-410;mir-411;mir-4
12;mir-421;mir-422a;mir-423;mir-424;mir-
425;mir-429;mir-431;mir-432;mir-433;mir-
448;mir-449a;mir-449b;mir-449c;mir-450a-
1;mir-450a-2;mir-450b;mir-451;mir-452;mi
r-454;mir-455;mir-466;mir-483;mir-484;mi
r-485;mir-486;mir-487a;mir-487b;mir-488;
mir-489;mir-490;mir-491;mir-492;mir-493;
mir-494;mir-495;mir-496;mir-497;mir-498;
mir-499;mir-500a;mir-500b;mir-501;mir-50
2;mir-503;mir-504;mir-505;mir-506;mir-50
7;mir-508;mir-509-1;mir-509-2;mir-509-3;
mir-510;mir-511-1;mir-511-2;mir-512-1;mi
r-512-2;mir-513a-1;mir-513a-2;mir-513b;m
ir-513c;mir-514-1;mir-514-2;mir-514-3;mi
r-514b;mir-515-1;mir-515-2;mir-516a-1;mi
r-516a-2;mir-516b-1;mir-516b-2;mir-517a;
mir-517b;mir-517c;mir-518a-1;mir-518a-2;
mir-518b;mir-518c;mir-518d;mir-518e;mir-
518f;mir-519a-1;mir-519a-2;mir-519b;mir-
519c;mir-519d;mir-519e;mir-520a;mir-520b
;mir-520c;mir-520d;mir-520e;mir-520f;mir
-520g;mir-520h;mir-521-1;mir-521-2;mir-5
22;mir-523;mir-524;mir-525;mir-526a-1;mi
r-526a-2;mir-526b;mir-527;mir-532;mir-53
9;mir-541;mir-542;mir-543;mir-544;mir-54
4b;mir-545;mir-548a-1;mir-548a-2;mir-548
a-3;mir-548aa-1;mir-548aa-2;mir-548b;mir
-548c;mir-548d-1;mir-548d-2;mir-548e;mir
-548f-1;mir-548f-2;mir-548f-3;mir-548f-4
;mir-548f-5;mir-548g;mir-548h-1;mir-548h
-2;mir-548h-3;mir-548h-4;mir-548i-1;mir-
548i-2;mir-548i-3;mir-548i-4;mir-548j;mi
r-548k;mir-548l;mir-548m;mir-548n;mir-54
8o;mir-548p;mir-548s;mir-548t;mir-548u;m
ir-548v;mir-548w;mir-548x;mir-548y;mir-5
48z;mir-549;mir-550a-1;mir-550a-2;mir-55
0b-1;mir-550b-2;mir-551a;mir-551b;mir-55
2;mir-553;mir-554;mir-555;mir-556;mir-55
7;mir-558;mir-559;mir-561;mir-562;mir-56
3;mir-564;mir-566;mir-567;mir-568;mir-56
9;mir-570;mir-571;mir-572;mir-573;mir-57
4;mir-575;mir-576;mir-577;mir-578;mir-57
9;mir-580;mir-581;mir-582;mir-583;mir-58
4;mir-585;mir-586;mir-587;mir-588;mir-58
9;mir-590;mir-591;mir-592;mir-593;mir-59
5;mir-596;mir-597;mir-598;mir-599;mir-60
0;mir-601;mir-602;mir-603;mir-604;mir-60
5;mir-606;mir-607;mir-608;mir-609;mir-61
0;mir-611;mir-612;mir-613;mir-614;mir-61
5;mir-616;mir-617;mir-618;mir-619;mir-62
0;mir-621;mir-622;mir-623;mir-624;mir-62
5;mir-626;mir-627;mir-628;mir-629;mir-63
0;mir-631;mir-632;mir-633;mir-634;mir-63
5;mir-636;mir-637;mir-638;mir-639;mir-64
0;mir-641;mir-642a;mir-642b;mir-643;mir-
644;mir-645;mir-646;mir-647;mir-648;mir-

49;mir-650;mir-651;mir-652;mir-653;mir-6
54;mir-655;mir-656;mir-657;mir-658;mir-6
59;mir-660;mir-661;mir-662;mir-663;mir-6
63b;mir-664;mir-665;mir-668;mir-670;mir-
671;mir-675;mir-676;mir-708;mir-711;mir-
718;mir-720;mir-744;mir-758;mir-759;mir-
760;mir-761;mir-762;mir-764;mir-765;mir-
766;mir-767;mir-769;mir-770;mir-802;mir-
873;mir-874;mir-875;mir-876;mir-877;mir-
885;mir-887;mir-888;mir-889;mir-890;mir-
891a;mir-891b;mir-892a;mir-892b;mir-920;
mir-921;mir-922;mir-924;mir-933;mir-934;
mir-935;mir-936;mir-937;mir-938;mir-939;
mir-940;mir-941-1;mir-941-2;mir-941-3;mi
r-941-4;mir-942;mir-942;mir-943;mir-944;
mir-1178;mir-1179;mir-1180;mir-1181;mir-
1182;mir-1183;mir-1184-1;mir-1184-2;mir-
1184-3;mir-1185-1;mir-1185-2;mir-1193;mi
r-1197;mir-1200;mir-1202;mir-1203;mir-12
04;mir-1205;mir-1206;mir-1207;mir-1208;m
ir-1224;mir-1225;mir-1226;mir-1227;mir-1
228;mir-1229;mir-1231;mir-1233-1;mir-123
3-2;mir-1234;mir-1236;mir-1237;mir-1238;
mir-1243;mir-1244-1;mir-1244-2;mir-1244-
3;mir-1245;mir-1246;mir-1247;mir-1248;mi
r-1249;mir-1250;mir-1251;mir-1252;mir-12
53;mir-1254;mir-1255a;mir-1255b-1;mir-12
55b-2;mir-1256;mir-1257;mir-1258;mir-126
0;mir-1260b;mir-1261;mir-1262;mir-1263;m
ir-1264;mir-1265;mir-1266;mir-1267;mir-1
268;mir-1269;mir-1270-1;mir-1270-2;mir-1
271;mir-1272;mir-1273;mir-1273c;mir-1273
d;mir-1273e;mir-1274a;mir-1274b;mir-1275
;mir-1276;mir-1277;mir-1278;mir-1279;mir
-1280;mir-1281;mir-1282;mir-1283-1;mir-1
283-2;mir-1284;mir-1285-1;mir-1285-2;mir
-1286;mir-1287;mir-1288;mir-1289-1;mir-1
289-2;mir-1290;mir-1291;mir-1292;mir-129
3;mir-1294;mir-1295;mir-1296;mir-1297;mi
r-1298;mir-1299;mir-1301;mir-1302-1;mir-
1302-10;mir-1302-11;mir-1302-2;mir-1302-
3;mir-1302-4;mir-1302-5;mir-1302-6;mir-1
302-7;mir-1302-8;mir-1302-9;mir-1303;mir
-1304;mir-1305;mir-1306;mir-1307;mir-132
1;mir-1322;mir-1323;mir-1324;mir-1468;mi
r-1469;mir-1470;mir-1471;mir-1537;mir-15
38;mir-1539;mir-1825;mir-1827;mir-1908;m
ir-1909;mir-1910;mir-1911;mir-1912;mir-1
913;mir-1914;mir-1915;mir-1972-1;mir-197
2-2;mir-1973;mir-1976;mir-2052;mir-2053;
mir-2054;mir-2110;mir-2113;mir-2114;mir-
2115;mir-2116;mir-2117;mir-2276;mir-2277
;mir-2278;mir-2355;mir-2861;mir-2909;mir
-3065;mir-3074;mir-3115;mir-3116-1;mir-3
116-2;mir-3117;mir-3118-1;mir-3118-2;mir
-3118-3;mir-3118-4;mir-3118-5;mir-3118-6
;mir-3119-1;mir-3119-2;mir-3120;mir-3121
;mir-3122;mir-3123;mir-3124;mir-3125;mir
-3126;mir-3127;mir-3128;mir-3129;mir-313
0-1;mir-3130-2;mir-3131;mir-3132;mir-313
3;mir-3134;mir-3135;mir-3136;mir-3137;mi
r-3138;mir-3139;mir-3140;mir-3141;mir-31
42;mir-3143;mir-3144;mir-3145;mir-3146;m
ir-3147;mir-3148;mir-3149;mir-3150;mir-3
151;mir-3152;mir-3153;mir-3154;mir-3155;
mir-3156-1;mir-3156-2;mir-3156-3;mir-315
7;mir-3158-1;mir-3158-2;mir-3159;mir-316
0-1;mir-3160-2;mir-3161;mir-3162;mir-316
3;mir-3164;mir-3165;mir-3166;mir-3167;mi
r-3168;mir-3169;mir-3170;mir-3171;mir-31
73;mir-3174;mir-3175;mir-3176;mir-3177;m
ir-3178;mir-3179-1;mir-3179-2;mir-3179-3
;mir-3180-1;mir-3180-2;mir-3180-3;mir-31
80-4;mir-3180-5;mir-3181;mir-3182;mir-31
83;mir-3184;mir-3185;mir-3186;mir-3187;m
ir-3188;mir-3189;mir-3190;mir-3191;mir-3
192;mir-3193;mir-3194;mir-3195;mir-3196;
mir-3197;mir-3198;mir-3199-1;mir-3199-2;
mir-3200;mir-3201;mir-3202-1;mir-3202-2;
mir-3605;mir-3606;mir-3607;mir-3609;mir-
3610;mir-3611;mir-3612;mir-3613;mir-3614
;mir-3615;mir-3616;mir-3617;mir-3618;mir
-3619;mir-3620;mir-3621;mir-3622a;mir-36
22b;mir-3646;mir-3647;mir-3648;mir-3649;
mir-3650;mir-3651;mir-3652;mir-3653;mir-
3654;mir-3655;mir-3656mir-3657;mir-3658;
mir-3659;mir-3660;mir-3661;mir-3662;mir-
3663;mir-3664;mir-3665;mir-3666;mir-3667
;mir-3668;mir-3669;mir-3670;mir-3670;mir
-3671;mir-3671;mir-3673;mir-3673;mir-367
5;mir-3675;mir-3676;mir-3663;mir-3677;mi
r-3678;mir-3679;mir-3680;mir-3681;mir-36
82;mir-3683;mir-3684;mir-3685;mir-3686;m
ir-3687;mir-3688;mir-3689a;mir-3689b;mir
-3690;mir-3691;mir-3692;mir-3713;mir-371
4;mir-3907;mir-3908;mir-3909;mir-3910-1;
mir-3910-2;mir-3911;mir-3912;mir-3913-1;
mir-3913-2;mir-3914-1;mir-3914-2;mir-391
5;mir-3916;mir-3917;mir-3918;mir-3919;mi
r-3920;mir-3921;mir-3922;mir-3923;mir-39
24;mir-3925;mir-3926-1;mir-3926-2;mir-39
27;mir-3928;mir-3929;mir-3934;mir-3935;m
ir-3936;mir-3937;mir-3938;mir-3939;mir-3
940;mir-3941;mir-3942;mir-3943;mir-3944;
mir-3945;mir-4251;mir-4252;mir-4253;mir-
4254;mir-4255;mir-4256;mir-4257;mir-4258
;mir-4259;mir-4260;mir-4261;mir-4262;mir
-4263;mir-4264;mir-4265;mir-4266;mir-426
7;mir-4268;mir-4269;mir-4270;mir-4271;mi
r-4272;mir-4273;mir-4274;mir-4275;mir-42
76;mir-4277;mir-4278;mir-4279;mir-4280;m
ir-4281;mir-4282;mir-4283-1;mir-4283-2;m
ir-4284;mir-4285;mir-4286;mir-4287;mir-4
288;mir-4289;mir-4290;mir-4291;mir-4292;
mir-4293;mir-4294;mir-4295;mir-4296;mir-
4297;mir-4298;mir-4299;mir-4300;mir-4301
;mir-4302;mir-4303;mir-4304;mir-4305;mir
-4306;mir-4307;mir-4308;mir-4309;mir-431
0;mir-4311;mir-4312;mir-4313;mir-4314;mi
r-4315-1;mir-4315-2;mir-4316;mir-4317;mi
r-4318;mir-4319;mir-4320;mir-4321;mir-43
22;mir-4323;mir-4324;mir-4325;mir-4326;m
ir-4327;mir-4328;mir-4329;mir-4329;およびmi
r-4330。
【0103】
本発明は、本明細書記載の細胞集団または構築物から得られる細胞由来または分泌mi
RNAに関する。一実施形態では、1つまたは複数の個別miRNAを使って、ネイティ
ブ腎臓に対し再生効果を与えることができる。個別miRNAの組み合わせは、このよう
な効果を与えるのに適切である可能性がある。代表的組み合わせには、2つ以上の次記の
ものが含まれる:miR-21;miR-23a;miR-30c;miR-1224;
miR-23b;miR-92a;miR-100;miR-125b-5p;miR-
195;miR-10a-5p;およびこれらの任意の組み合わせ。別の代表的組み合わ
せには、2つ以上の次記のものが含まれる:miR-30b-5p、miR-449a、
miR-146a、miR-130a、miR-23b、miR-21、miR-124
、miR-151、および来られの任意の組み合わせ。一実施形態では、miRNAの組
み合わせには、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ超の個別miRNA
を含んでもよい。当業者なら、他のmiRNAおよびmirRNAの組み合わせが、本発
明での使用に適する可能性があることを理解するであろう。追加のmiRNAのソースに
は、http://mirbase.orgのmiRBaseが含まれ、これは、英国マ
ンチェスター大学・生命工学部(Faculty of Life Sciences)
で運営、維持されている。
【0104】
一実施形態では、分泌産物は、パラクリン因子を含む。一般的に、パラクリン因子は、
短い距離を拡散し、隣接細胞の変化、すなわち、パラクリン相互作用、を誘導するか、ま
たは起こさせることができる細胞により合成された分子である。拡散可能分子は、パラク
リン因子と呼ばれる。
【0105】
さらに別の実施形態では、本発明は、1つまたは複数の単離された本明細書記載の腎臓
細胞由来分泌小胞組成物に関する。当業者なら、分泌小胞を含む種々の型の組成物が適す
ることを理解できるであろう。
【0106】
別の態様では、本発明は、腎臓細胞分泌産物、例えば、小胞を調製する方法を提供する
。一実施形態では、方法は、1つまたは複数の富化腎臓細胞集団の混合物を含む腎臓細胞
集団を用意するステップを含む。別の実施形態では、方法は、適切な条件下でその集団を
培養するステップをさらに含む。その条件は、低酸素条件であってもよい。別の実施形態
では、方法は、腎臓細胞集団から分泌産物を分離するステップをさらに含む。分泌小胞は
、細胞集団の細胞培地から採取してもよい。もう一つの実施形態では、腎臓細胞は、酸素
レベルに対する生物学的応答である小胞産生および/または分泌を特徴とし、その結果、
培養系の酸素圧力の低下が小胞産生および/または分泌の誘導に繋がる。一実施形態では
、通常の大気(~21%)レベルの利用可能酸素で培養した細胞集団に比べて、培養系の
利用可能酸素レベルの低下した環境に曝される条件下で細胞集団が培養される場合に、小
胞産生および/または分泌が誘導される。一実施形態では、より低酸素条件下で培養した
細胞集団は、通常の酸素条件下で培養した細胞集団に比べて、より高いレベルの小胞を産
生および/または分泌する。一般的に、低いレベルの利用可能酸素下(低酸素性培養条件
とも呼ばれる)での細胞の培養は、低い酸素レベルが、通常の大気レベルの利用可能酸素
(正常または正常酸素圧培養条件とも呼ばれる)下での細胞培養に比べて、減らされてい
ることを意味する。一実施形態では、低酸素性細胞培養条件には、約1%酸素未満、約2
%酸素未満、約3%酸素未満、約4%酸素未満、または約5%酸素未満での細胞の培養が
含まれる。別の実施形態では、正常または正常酸素圧培養条件には、約10%酸素、約1
2%酸素、約13%酸素、約14%酸素、約15%酸素、約16%酸素、約17%酸素、
約18%酸素、約19%酸素、約20%酸素、または約21%酸素での細胞の培養が含ま
れる。好ましい実施形態では、方法は、腎臓細胞からエキソソームおよび/または微小胞
の単離を提供する。
【0107】
一実施形態では、産物は、腎臓細胞から分泌される。産物は、足場上にない、例えば、
細胞が本明細書記載の構築物の一部ではない、腎臓細胞から分泌されてもよい。
【0108】
別の実施形態では、産物は、足場上、例えば、構築物上に播種されている腎臓細胞によ
り分泌される。構築物には、足場上またはその中に直接播種されている1つまたは複数の
富化腎臓細胞集団またはそれらの混合物が含まれる。
【0109】
別の態様では、本発明は、1つまたは複数の富化腎臓細胞集団、および該集団を含む混
合物または構築物のバイオセラピューティック効力を選別/最適化/モニタリングするた
めのインビトロの方法を提供する。一実施形態では、方法には、1つまたは複数の試験集
団、試験混合物または試験構築物(「被検物質」)を用意するステップが含まれる。別の
実施形態では方法には、本明細書記載の適切な条件下で被検物質を培養するステップが含
まれる。もう一つの実施形態では、方法には、培養した被検物質から細胞培地を集めるス
テップが含まれる。この培地は、「馴化培地」と呼ぶことができ、被検物質の腎臓細胞に
より分泌された産物を含むことが予期される。
【0110】
もう一つの態様では、馴化培地を使って、1つまたは複数のインビトロアッセイを行い
い、被検物質のバイオセラピューティック効力を試験することもできる。一実施形態では
、馴化培地は、上皮間葉転換(EMT)アッセイに供される。アッセイは、TGFβ1に
より誘導されたEMTを試験できる。実施例15は、このアッセイ用の代表的プロトコル
を提供する。
【0111】
別の実施形態では、馴化培地は、例えば、PCRベースアッセイによるRNAの検出、
および/または例えば、FACSによる小胞またはエキソソームの検出に供される。もう
一つの実施形態では、馴化培地は、シグナル伝達経路アッセイ、例えば、免疫応答(例え
ば、NFκB)、線維化反応(PAI-1)、および血管新生アッセイに供される。実施
例12~14は、これらのアッセイ用の代表的プロトコルを提供する。
【0112】
使用方法
一態様では、本発明は、治療を必要としている対象の腎疾患、貧血、またはEPO欠乏を
本明細書記載の腎臓細胞集団および腎臓細胞の混合物により処置する方法を提供する。一
実施形態では、方法は、EPO産生細胞富化第1腎臓細胞集団を含む組成物を対象に投与
することを含む。別の実施形態では、第1細胞集団は、EPO産生細胞、糸球体細胞、お
よび血管細胞が富化されている。一実施形態では、第1腎臓細胞集団は、B4’細胞集団
である。別の実施形態では、組成物は、1つまたは複数の追加の腎臓細胞集団をさらに含
んでもよい。一実施形態では、追加の細胞集団は、EPO産生細胞が富化されていない第
2細胞集団である。別の実施形態では、追加の細胞集団は、EPO産生細胞、糸球体細胞
、または血管細胞が富化されていない第2細胞集団である。別の実施形態では、組成物は
、また、本明細書記載の疾患または障害の処置のために、生体材料中に析出して、その上
に析出して、その中に包埋されて、それによりコートされて、またはその中に捕捉されて
本明細書記載の移植可能な構築物を形成する腎臓細胞集団または腎臓細胞混合物を含む。
一実施形態では、細胞集団は、単独または他の細胞または生体材料、例えば、ヒドロゲル
、多孔性足場、またはネイティブもしくは合成ペプチドまたはタンパク質と組み合わせて
使用し、急性または慢性疾患状態の再生を刺激する。
【0113】
別の態様では、本発明の方法による対象の腎疾患、貧血、またはEPO欠乏の効果的処
置は、赤血球生成および/または腎臓機能の種々の指標により観察可能である。一実施形
態では、赤血球恒常性の指標には、限定されないが、ヘマトクリット(HCT)、ヘモグ
ロビン(HB)、平均赤血球血色素量(MCH)、赤血球数(RBC)、網状赤血球数、
網状赤血球%、平均赤血球容積(MCV)、および赤血球分布幅(RDW)が含まれる。
もう一つの実施形態では、腎臓機能の指標には、限定されないが、血清アルブミン、グロ
ブリン対アルブミン比率(A/G比率)、血清亜リン酸、血清ナトリウム、腎臓の大きさ
(超音波で測定)、血清カルシウム、亜リン酸:カルシウム比率、血清カリウム、蛋白尿
、尿クレアチニン、血清クレアチニン、血中窒素尿素(BUN)、コレステロールレベル
、トリグリセリドレベルおよび糸球体濾過率(GFR)が含まれる。さらに、総体的な健
康および幸福のいくつかの指標には、限定されないが、体重増または減少、生存時間、血
圧(平均体血圧、拡張期血圧、または収縮期血圧)、および持久力、が含まれる。
【0114】
別の実施形態では、有効な処置は、1つまたは複数の腎臓機能指標の安定化により立証
される。腎臓機能の安定化は、本発明の方法により処置されていない対象の同じ指標と比
較して、本発明の方法により処置された対象の指標の変化の観察により立証される。ある
いは、腎臓機能の安定化は、処置前の同じ対象の同じ指標と比較して、本発明の方法によ
り処置された対象の指標の変化の観察により立証できる。第1指標の変化は、値の増加で
も減少でもよい。一実施形態では、本発明により提供される処置は、対象の血中尿素窒素
(BUN)レベルの安定化を含んでもよく、この場合、対象の観察BUNレベルは、本発
明の方法により処置されていない類似の疾患状態の対象と比較して、より低い。もう一つ
の実施形態では、処置は、血清クレアチニンレベルの安定化を含んでもよく、この場合、
対象の観察血清クレアチニンレベルは、本発明の方法により処置されていない類似の疾患
状態の対象と比較して、より低い。別の実施形態では、処置は、対象のヘマトクリット(
HCT)レベルの安定化を含んでもよく、この場合、対象の観察HCTレベルは、本発明
の方法により処置されていない類似の疾患状態の対象と比較して、より高い。別の実施形
態では、処置は、対象の赤血球(RBC)レベルの安定化を含んでもよく、この場合、対
象の観察RBCレベルは、本発明の方法により処置されていない類似の疾患状態の対象と
比較して、より高い。当業者には、1つまたは複数の本明細書記載のまたは当技術分野で
既知の追加の指標で測定して対象の腎疾患の効果的な処置を判定できることは理解されよ
う。
【0115】
別の態様では、本発明は、治療を必要としている対象の赤血球恒常性を提供する方法に
関する。一実施形態では、方法は、(a)対象に腎臓細胞集団、例えば、本明細書記載の
B2もしくはB4’、または腎臓細胞混合物、例えば、B2/B4’および/またはB2
/B3、を投与するステップ;および(b)対象由来の生物試料において、対照の指標レ
ベルに比べて、赤血球生成指標のレベルが異なり、指標レベルの差異が(i)対象が(a
)の投与ステップに反応していることを示すか、または(ii)対象の赤血球恒常性を示
すことを測定するステップを含む。別の実施形態では、方法は、(a)対象に本明細書記
載の腎臓細胞集団または腎臓細胞混合物を含む組成物を投与するステップ;および(b)
対象由来の生物試料において、対照の指標レベルに比べ赤血球生成指標が異なり、指標レ
ベルの差異が、(i)対象が(a)の投与ステップに反応していることを示すか、または
(ii)対象の赤血球恒常性を示すことを測定するステップを含む。別の実施形態では、
方法は、(a)生体材料または生体適合性高分子足場を用意するステップ;(b)生体材
料または足場の上または中に本発明の腎臓細胞集団または腎臓細胞の混合物を本明細書記
載の方法で析出させ、移植可能な構築物を形成するステップ;(c)構築物を対象に移植
するステップ;および(d)対象由来の生物試料で、赤血球生成指標のレベルが対照の指
標レベルに比較して異なり、指標レベルの差異が(i)対象が(a)の投与ステップに反
応していることを示すか、または(ii)対象の赤血球恒常性を示すことを測定するステ
ップを含む。
【0116】
別の態様では、本発明は、腎臓機能の安定化および赤血球恒常性の回復の両方を必要と
している対象に提供する方法であって、前記対象が腎臓機能不足および貧血および/また
はEPO欠乏の両方を有している場合の方法に関する。一実施形態では、方法は、少なく
とも1つの下記の細胞型を含む本明細書記載の腎臓細胞集団または腎臓細胞の混合物を投
与するステップを含む:尿細管由来細胞、糸球体由来細胞、間質由来細胞、集合管由来細
胞、間質組織由来細胞、または脈管構造由来細胞。別の実施形態では、集団または混合物
は、EPO産生細胞および尿細管上皮細胞の両方を含み、尿細管細胞は、少なくとも1つ
の下記のマーカーにより特定される:メガリン、キュビリン、ヒアルロン酸シンターゼ2
(HAS2)、ビタミンD325-ヒドロキシラーゼ(CYP2D25)、N-カドヘリ
ン(Ncad)、E-カドヘリン(Ecad)、アクアポリン-1(Aqp1)、アクア
ポリン-2(Aqp2)、RAB17、member RAS癌遺伝子ファミリー(Ra
b17)、GATA結合タンパク質3(Gata3)、FXYDドメイン含有イオン輸送
制御因子4(Fxyd4)、溶質キャリアファミリー9(ナトリウム/水素交換体)、m
ember 4(Slc9a4)、アルデヒド脱水素酵素3ファミリー、member
B1(Aldh3b1)、アルデヒド脱水素酵素1ファミリー、member A3(A
ldh1a3)、およびカルパイン-8(Capn8)。この実施形態では、対象の処置
は、未処置対象または対象の処置前指標と比較して、少なくとも1つの赤血球生成指標の
改善と同時に、少なくとも1つの腎臓機能の指標の改善により立証されるであろう。
【0117】
一態様では、本発明は、本明細書記載のEPO産生細胞富化腎臓細胞集団またはEPO
産生細胞富化細胞集団を含む腎臓細胞の混合物を投与することにより(i)腎疾患、貧血
、またはEPO欠乏の処置;(ii)腎臓機能の安定化、(iii)赤血球恒常性の回復
、または(iv)これらのいずれかの組み合わせの方法を提供し、投与の薬効は、EPO
産生細胞が富化されていない細胞集団の投与の効果よりも大きい。別の実施形態では、富
化細胞集団は、血清血中尿素窒素(BUN)レベルを改善する。別の実施形態では、富化
細胞集団は、血清中のタンパク質の保持を改善する。別の実施形態では、富化細胞集団は
、血清コレステロールおよび/またはトリグリセリドのレベルを改善する。別の実施形態
では、富化細胞集団は、ビタミンDのレベルを改善する。一実施形態では、富化細胞集団
は、非富化細胞集団に比べて、リン:カルシウム比率を改善する。別の実施形態では、富
化細胞集団は、非富化細胞集団に比べて、ヘモグロビンのレベルを改善する。さらなる実
施形態では、富化細胞集団は、非富化細胞集団に比べて、血清クレアチニンのレベルを改
善する。さらに別の実施形態では、富化細胞集団は、非富化細胞集団に比べて、ヘマトク
リットのレベルを改善する。さらなる実施形態では、富化細胞集団は、非富化細胞集団に
比べて、赤血球数(RBC#)のレベルを改善する。一実施形態では、改善レベルのヘマ
トクリットは、95%正常な健康レベルに回復している。さらなる実施形態では、富化細
胞集団は、非富化細胞集団に比べて、網状赤血球数を改善する。他の実施形態では、富化
細胞集団は、非富化細胞集団に比べて、網状赤血球割合を改善する。さらに他の実施形態
では、富化細胞集団は、非富化細胞集団に比べて、赤血球容量分布幅(RDW)レベルを
改善する。さらに別の実施形態では、富化細胞集団は、非富化細胞集団に比べて、ヘモグ
ロビンレベルを改善する。さらに別の実施形態では、富化細胞集団は、骨髄での赤血球造
血反応を提供し、それにより、骨髄細胞充実性は正常に近くなり、骨髄:赤血球比率はほ
ぼ正常になる。
【0118】
別の態様では、本発明は、富化細胞集団を投与することにより、(i)腎疾患、貧血、
またはEPO欠乏の処置;(ii)腎臓機能の安定化、(iii)赤血球恒常性の回復、
または(iv)これらの任意の組み合わせの方法を提供し、本明細書記載の腎臓細胞集団
または腎臓細胞の混合物集団の投与の薬効は、組換え型EPO(rEPO)の投与による
薬効に比較して、赤血球恒常性の改善を特徴とする。一実施形態では、必要としている対
象に投与する場合、集団または混合物は、組換え型EPOタンパク質の投与に比較して、
赤血球恒常性を改善する(ヘマトクリット、ヘモグロビン、またはRBC#で判定して)
。一実施形態では、集団または混合物は、投与された場合、組換え型EPOに比較して、
ヘマトクリット、RBC、またはヘモグロビンレベルを改善し、対照のヘマトクリットよ
り約10%低いか、または高い程度である。さらなる実施形態では、投与する場合、集団
または混合物の1回量または送達により、組換え型EPOタンパク質の1回量または送達
により赤血球恒常性が改善される期間を大きく超える期間にわたり、処理対象の赤血球恒
常性が改善される(ヘマトクリット、ヘモグロビン、またはRBC#の増加で判定して)
。別の実施形態では、集団または混合物は、本明細書記載の用量で投与された場合、同等
の健康な対照の正常なレベルの約110%を越えるヘマトクリット、ヘモグロビン、また
はRBC#を生じない。さらなる実施形態では、集団または混合物は、本明細書記載の用
量で投与された場合、本明細書記載の用量で送達した組換え型EPOタンパク質に比べて
、優れた赤血球恒常性を与える(ヘマトクリット、ヘモグロビン、またはRBC#で判定
して)。別の実施形態では、組換え型EPOが、約100IU/kg、約200IU/k
g、約300IU/kg、約400IU/kg、または約500IU/kgの用量で送達
される。当業者なら、当技術分野で既知の組換え型EPOの他の投与量も適する可能性が
あることを理解するであろう。
【0119】
別の本発明の実施形態は、少なくとも1つの細胞集団の使用に関する。細胞集団は、必
要としている対象の腎疾患、貧血、またはEPO欠乏の処置に有用な薬物の調製、必要と
している対象の赤血球恒常性の提供、必要としている対象の腎臓機能の改善、またはネイ
ティブ腎臓に対する再生効果の提供のために、本明細書記載の富化細胞集団およびそれら
の混合物、または本明細書記載の移植可能な構築物、または本明細書記載の分泌産物を含
む。
【0120】
別の本発明の実施形態は、具体的に立証された治療特性に基づく特定細胞亜集団の選択
を基準にした特定の病因の腎疾患の処置のための、特定の富化細胞集団(本明細書記載の
)の使用に関する。
【0121】
さらに別の態様では、本発明は、必要としている対象の腎疾患の処置方法を提供し、こ
の方法は、単離された、尿細管細胞富化集団を含む1.045g/mL~1.052g/
mLの密度の第1細胞集団、B2、およびエリスロポエチン(EPO)産生細胞および血
管細胞を含むが、糸球体細胞が枯渇している1.063g/mL~1.091g/mLの
密度の第2細胞集団、B4’を含む哺乳類腎臓細胞の混合物を含む組成物を対象に投与す
ることを含み、混合物は、大きな集合管および尿細管系粒状細胞を含む1.045g/m
l未満の密度のB1細胞集団、または低粒度および低生存率の壊死組織片および小細胞を
含む1.091g/ml超の密度のB5細胞集団を含まない。特定の実施形態では、方法
は、腎臓機能指標レベルが、対照の指標レベルに比べて、異なり、指標レベルの差異が、
対象の1つまたは複数の腎臓機能の低下の減少、安定化、または改善を示す対象由来の試
験検体の測定を含む。一実施形態では、その方法で使用されるB4’細胞集団は、血管マ
ーカーの発現を特徴とする。特定の実施形態では、その方法で使われるB4’細胞集団は
、糸球体マーカーの発現を特徴としない。一実施形態では、その方法で使われる細胞の混
合物は、酸素で調節可能なエリスロポエチン(EPO)発現が可能である。特定の実施形
態では、本発明の方法により処置される腎疾患は、エリスロポエチン(EPO)欠乏が付
随する。特定の実施形態では、EPO欠乏は、貧血である。一部の実施形態では、EPO
欠乏または貧血は、対象の腎不全に引き続いて発生する。一部の実施形態では、EPO欠
乏または貧血は、慢性腎不全、原発性EPO欠乏、化学療法もしくは抗ウイルス療法、非
骨髄性癌、HIV感染症、肝臓疾患、心臓不全、関節リウマチ、または多臓器不全からな
る群より選択される傷害に引き続いて起こる。特定の実施形態では、その方法で使用され
る組成物は、1つまたは複数の生体適合性合成高分子および/または天然タンパク質また
はペプチドを含む生体材料をさらに含み、混合物は、生体材料でコートされ、その上にま
たは中に析出し、その中に捕捉され、その中に懸濁され、その中に包埋され、および/ま
たは他の方法でそれと組み合わされる。特定の実施形態では、本発明の方法で使用される
混合物は、哺乳類腎臓組織または培養哺乳類腎臓細胞由来である。他の実施形態では、混
合物は、必要としている対象に対し自己である腎臓検体由来である。一実施形態では、検
体は、腎生検である。他の実施形態では、本発明の方法で使われる混合物は、非自己腎臓
検体由来である。
【0122】
さらに別の態様では、本発明は、治療を必要としている対象の腎疾患、貧血またはEP
O欠乏の処置に有用である薬物の調製のための、本発明の細胞調製物およびそれらの混合
物または移植可能な構築物の、使用を提供する。
【0123】
別の態様では、本発明は、治療を必要としている対象のネイティブ腎臓の再生のための
方法を提供する。一実施形態では、方法は、本明細書記載の細胞集団、混合物、または構
築物を対象に投与または移植するステップを含む。再生ネイティブ腎臓は、ネイティブ腎
臓の機能または能力の発生、ネイティブ腎臓の機能または能力の改善、および特定のネイ
ティブ腎臓マーカーの発現(これらに限定されない)を含むいくつかの指標を特徴とする
ことができる。一実施形態では、機能または能力の発生または改善は、上述の赤血球恒常
性および腎臓機能の種々の指標に基づいて観察してもよい。別の実施形態では、再生腎臓
は、1つまたは複数の幹細胞マーカーの発現差異を特徴とする。幹細胞マーカーは、1つ
または複数の下記のものであってもよい:SRY(性決定領域Y)-box2(Sox2
);未分化胚細胞転写因子(UTF1);マウス由来NodalHomolog(NOD
AL);プロミニン1(PROM1)またはCD133(CD133);CD24;およ
びこれらの任意の組み合わせ。別の実施形態では、幹細胞マーカーの発現は、対照に比べ
、発現上昇している。
【0124】
富化細胞集団およびそれらの混合物ならびに前記を含む構築物を含む本明細書記載の細
胞集団を使用して、ネイティブ腎臓に対し再生効果を与えることができる。効果は、細胞
それ自体によって、および/または細胞からの分泌産物によって提供されてもよい。再生
効果は、1つまたは複数の下記を特徴としてもよい:上皮間葉転換の減少(TGF-βシ
グナル伝達の減弱を介してもよい);腎臓線維形成の減少;腎臓炎症の減少;ネイティブ
腎臓の幹細胞マーカーの発現差異;移植細胞および/またはネイティブ細胞の腎損傷部位
、例えば、尿細管傷害部位への遊走、腎損傷部位、例えば、尿細管傷害部位での移植細胞
の生着;1つまたは複数の腎臓機能指標の安定化(本明細書記載の);赤血球恒常性の回
復(本明細書記載の);およびこれらの任意の組み合わせ。
【0125】
再生モニタリング方法
別の態様では、本発明は、本明細書記載の細胞集団、混合物、または構築物の対象への投
与または移植後のネイティブ腎臓の再生をモニタリングするための予後徴候予測方法を提
供する。一実施形態では、方法は、対象由来試験検体および対照検体中のマーカー発現レ
ベルを検出するステップを含み、対照検体に比べてより高いレベルの試験検体中のマーカ
ーの発現は、対象のネイティブ腎臓の再生の予後徴候となる。別の実施形態では、方法は
、検体中の1つまたは複数の幹細胞マーカーの発現の検出を含む。幹細胞マーカーは、S
ox2;UTF1;NODAL;CD133;CD24;およびこれらの任意の組み合わ
せから選択できる。検出ステップは、幹細胞マーカーの発現が発現上昇しているか、また
は対照検体に比べ試験検体中で高いことを測定することを含んでもよく、より高いレベル
の発現は、対象のネイティブ腎臓再生の予後徴候となる。もう一つの実施形態では、幹細
胞マーカーのmRNA発現が検出される。他の実施形態では、mRNA発現の検出は、P
CRベース方法、例えば、qRT-PCRによってもよい。インサイツハイブリダイゼー
ションもまた、mRNA発現の検出に使用できる。
【0126】
もう一つの実施形態では、幹細胞マーカーのポリペプチド発現が検出される。別の実施
形態では、ポリペプチド発現は、抗幹細胞マーカー試薬を使って検出される。もう一つの
実施形態では、試薬は、マーカーに対する抗体である。別の実施形態では、幹細胞マーカ
ーポリペプチド発現は、免疫組織化学またはウェスタンブロットを使って検出される。
【0127】
当業者なら、マーカーのmRNAおよび/またはポリペプチド発現を検出する他の方法
が解るであろう。
【0128】
一実施形態では、検出ステップは、対象由来試験検体を採取するステップにより先行さ
れる。別の実施形態では、試験検体は、腎臓組織である。
【0129】
もう一つの態様では、本発明は、ネイティブ腎臓の再生のための代用マーカーとして、
マーカー、例えば、幹細胞マーカーの使用を提供する。このようなマーカーは、機能また
は能力が発生しているか、または改善されているかどうか(例えば、赤血球恒常性および
腎臓機能の指標)に基づいて、再生の評価と独立に、または連携して使用可能である。再
生の経時変化に対する代用のマーカーのモニタリングは、また、再生の予後指標として役
立つ可能性がある。
【0130】
別の態様では、本発明は、本明細書記載の細胞集団、混合物、または構築物の移植また
は投与後の患者の予後評価の方法を提供する。一実施形態では、方法は、(a)前記対象
から採取した試験検体のマーカー発現のレベルの検出ステップ;(b)対照検体に対する
マーカー発現のレベル(または制御基準値)に比べて試験検体中の発現レベルを測定する
ステップ;および(c)マーカー発現レベルの測定に基づいて患者の再生予後徴候を予測
するステップを含み、対照検体(または制御基準値)に比べて、試験検体のマーカーのよ
り高いレベルの発現は、対象の再生に対する予後徴候である。
【0131】
別の態様では、本発明は、本明細書記載の細胞集団、混合物、または構築物の移植また
は投与後の患者の予後評価方法を提供する。一実施形態では、方法は、(a)患者生物試
料を採取するステップ;および(b)生物試料中の幹細胞マーカー発現を検出するステッ
プを含み、幹細胞マーカー発現は、患者のネイティブ腎臓再生の予後徴候となる。一部の
実施形態では、対照検体(または制御基準値)に比べて、患者の生物試料中の増加した幹
細胞マーカー発現は、対象における再生に対する予後徴候となる。一部の実施形態では、
対照検体(または制御基準値)に比べて、患者検体中の減少した幹細胞マーカー発現は、
対象における再生に対する予後徴候となる。患者検体は、生検を含む試験検体であっても
よい。患者検体は、体液、例えば、血液または尿であってもよい。
【0132】
もう一つの態様では、本発明は、本明細書記載の細胞集団、混合物、または構築物の対
象への投与または移植後のネイティブ腎臓の再生のモニタリングを使った非侵襲的方法に
よる予後予測方法を提供する。組織生検の代替として、処置を受けている対象の再生結果
は、体液、例えば、尿の検査から評価できる。対象由来尿ソースから採取した微小胞は、
限定されないが、特異的タンパク質および本発明の細胞集団による処置により影響を受け
た腎臓細胞集団から最終的に誘導されるmiRNA等の特定の成分を含むことが明らかに
なった。これらの成分は、幹細胞複製および分化、アポトーシス、炎症ならびに免疫調節
に関与する因子を含んでもよい。微小胞関連miRNA/タンパク質発現パターンの経時
的分析は、本発明の細胞集団、混合物、または構築物を受けている対象の腎臓内の再生結
果の連続モニタリングを可能とする。実施例17は、対象の尿の分析用の代表的プロトコ
ルについて記載する。
【0133】
これらの対象の腎臓由来小胞および/または腎臓由来小胞の尿中流入内腔含有物は、再
生結果を示すバイオマーカーにより分析してもよい。
【0134】
一実施形態では、本発明は、腎疾患(KD)患者が治療薬による処置に反応するかどう
かを評価する方法を提供する。方法は、対照検体中の小胞の量と比較またはそれに対して
、治療薬で処置したKD患者由来の試験検体中の小胞またはその内腔含有物の量の測定ま
たは検出するステップ、を含むことができ、対照検体中の小胞またはその内腔含有物の量
に比べて、より高いまたはより低い試験検体中の小胞またはその内腔含有物の量は、処置
患者の治療薬による処置に対する反応性を示す。
【0135】
また、本発明は、KD患者の治療薬による処置の効力のモニタリング方法を提供する。
一実施形態では、方法は、対照検体中の小胞またはその内腔含有物の量に比べて、または
それに対して、治療薬で処置したKD患者由来の試験検体中の小胞の量を測定または検出
するステップを含み、対照検体中の小胞またはその内腔含有物の量に比較して、より高い
またはより低い試験検体中の小胞またはその内腔含有物の量は、KD患者における治療薬
による処置の効力の指標となる。
【0136】
本発明は、また、患者亜集団中の腎疾患(KD)の処置に対し治療効果のある試薬を特
定する方法を提供する。一実施形態では、方法は、試薬の効力と、対照検体由来の検体中
の小胞またはその内腔含有物の量と比較した、患者亜集団由来の検体中の小胞の量の存在
の間の相関を判定するステップを含み、対照検体中の小胞またはその内腔含有物の量と比
較して、患者亜集団由来検体中のより高いまたはより低い小胞またはその内腔含有物の量
は、試薬が患者亜集団中のKDを処置するのに有効であるという指標となる。
【0137】
本発明は、試薬が腎疾患(KD)の処置に有効である患者亜集団を特定する方法を提供
する。一実施形態では、方法は、試薬の効力と、対照検体由来の検体中の小胞またはその
内腔含有物の量と比較した、患者亜集団由来の検体中の小胞の量の存在の間の相関を判定
するステップを含み、対照検体中の小胞またはその内腔含有物の量と比較して、患者亜集
団由来検体中のより高いまたはより低い小胞またはその内腔含有物の量は、試薬が患者亜
集団中のKDを処置するのに有効であるという指標となる。
【0138】
測定または検出ステップは、試験検体中に存在する可能性のあるmiRNAまたは他の
分泌産物の量を分析することを含んでもよい(実施例17参照)。
【0139】
非侵襲的予後推定方法は、本明細書記載の細胞集団、混合物、または構築物の投与また
は移植前および/または後の対象由来尿検体を採取するステップを含んでもよい。小胞お
よび他の分泌産物は、望ましくない壊死組織片を除去する遠心分離(これに限定されない
)を含む標準的な方法を使って尿検体から単離できる(Zhou et al.2008
.Kidney Int.74(5):613-621;Skog et al.米国特
許公開第20110053157号:これらは参照によりその全体が本明細書に組み込ま
れる)。
【0140】
本発明は、処置後の対象の再生結果を検出する非侵襲的方法に関する。方法は、処置対
象由来の尿中の小胞またはその内腔含有物の検出を含む。内腔含有物は、1つまたは複数
のmiRNAであってもよい。個別の組み合わせまたはパネルmiRNAの検出は、この
ような予後推測方法に対し適切である可能性がある。代表的組み合わせには、次記の内の
2つ以上の組み合わせが含まれる:miR-24;miR-195;miR-871;m
iR-30b-5p;miR-19b;miR-99a;miR-429;let-7f
;miR-200a;miR-324-5p;miR-10a-5p;およびこれらの任
意の組み合わせ。一実施形態では、miRNAの組み合わせには、2、3、4、5、6、
7、8、9、10、11、またはそれ超の個別miRNAを含んでもよい。当業者なら、
他のmiRNAおよびmiRNAの組み合わせでも、このような予後推測方法の使用に適
する可能性があることを解るであろう。さらなるmiRNAのソースには、http:/
/mirbase.orgのmiRBaseが含まれ、これは、英国マンチェスター大学
・生命工学部(Faculty of Life Sciences)で運営、維持され
ている。
【0141】
当業者なら、この再生を検出する予後予測方法は、本明細書記載の細胞集団および構築
物とは別に、当技術分野で既知の他の治療薬で処置された対象に適する可能性があること
を解るであろう。
【0142】
一部の実施形態では、測定ステップは、(i)試験検体および対照中のマーカー発現(
または小胞/小胞含有物)の差異レベルの測定;および/または(ii)試験検体および
対照中のマーカー発現の差異レベルの測定から得たデータの解析の目的のために、適切な
プロセッサにより実行されるソフトウェアプログラムの使用を含む。適切なソフトウェア
およびプロセッサは、当技術分野でよく知られており、市販品として利用可能である。プ
ログラムは、有形的表現媒体、例えば、CD-ROM、フロッピーディスク、ハードディ
スク、DVD、またはプロセッサに付属のメモリーに保存されたソフトウェア中に組み込
まれてもよいが、当業者なら、全体プログラムまたはその一部は、プロセッサ以外の装置
、および/またはファームウェア中に組み込まれた装置および/または専用ハードウェア
を使って、よく知られた方法で、代替法として実行できることが容易に解るであろう。
【0143】
測定ステップ後、測定結果、所見、診断、予測および/または処置提案が、通常記録さ
れ、例えば、技師、医師および/または患者に連絡される。特定の実施形態では、コンピ
ュータを使って、このよう情報を関係者、例えば、患者および/または主治医に連絡する
。一部の実施形態では、診断結果が連絡される国または管轄区域とは異なる国または管轄
区域で、アッセイが行われるか、またはアッセイ結果が解析される。
【0144】
好ましい実施形態では、マーカー発現レベルの差異を有する試験対象で測定されたマー
カー発現のレベルに基づく予後、予測、および/または処置提案は、アッセイの完了およ
び予後および/または予測生成後すぐに対象に連絡される。結果および/または関連情報
は、対象の処置医師により対象に連絡してもよい。あるいは、結果は、文書、電子形式通
信、例えば、電子メール、または電話、等の任意の連絡手段で試験対象に直接連絡しても
よい。連絡は、例えば、電子メールコミュニケーションの場合のように、コンピュータを
使って円滑化してもよい。特定の実施形態では、電気通信の専門家にはよく知られている
コンピュータハードとソフトの組み合わせを使って、予後徴候試験結果および/または試
験から得た結論および/または処置提案を含む連絡が自動的に生成され、対象に送付され
る。健康管理指向コミュニケーション系の一例が、米国特許第6,283,761号に記
載されている。しかし、本発明は、この特定のコミュニケーション系を使う方法に限定さ
れない。本発明の方法の特定の実施形態では、検体のアッセイ、再生の予後および/また
は予測、ならびにアッセイ結果または予後の連絡を含む全てまたは一部の方法のステップ
は、多様な(例えば、外国の)管轄区域で行うことができる。
【0145】
別の態様では、本明細書記載の予後予測方法は、移植または投与による再生の成功に関
する情報を関係者に提供する。
【0146】
全ての実施形態では、本明細書記載の処置を必要としている対象に再生腎臓を提供する
方法には、上述の移植後の再生予後評価のステップを含んでもよい。
【0147】
投与方法と経路
本発明の細胞調製物および/または構築物は、単独または他の生理活性成分と組み合わせ
て投与できる。
【0148】
本明細書記載の腎臓細胞集団または腎臓細胞の混合物集団の治療有効量は、対象により
安全に受け入れられる最大細胞数から、腎疾患の、例えば、安定化、減少率低下、または
1つまたは複数の腎臓機能の改善に必要な最小細胞数の範囲にわたりうる。特定の実施形
態では、本発明の方法では、本明細書記載の腎臓細胞集団または腎臓細胞の混合物集団を
次の量で投与する:約10,000細胞/kg、約20,000細胞/kg、約30,0
00細胞/kg、約40,000細胞/kg、約50,000細胞/kg、約100,0
00細胞/kg、約200,000細胞/kg、約300,000細胞/kg、約400
,000細胞/kg、約500,000細胞/kg、約600,000細胞/kg、約7
00,000細胞/kg、約800,000細胞/kg、約900,000細胞/kg、
約1.1x10細胞/kg、約1.2x10細胞/kg、約1.3x10細胞/k
g、約1.4x10細胞/kg、約1.5x10細胞/kg、約1.6x10細胞
/kg、約1.7x10細胞/kg、約1.8x10細胞/kg、約1.9x10
細胞/kg、約2.1x10細胞/kg、約2.1x10細胞/kg、約1.2x1
細胞/kg、約2.3x10細胞/kg、約2.4x10細胞/kg、約2.5
x10細胞/kg、約2.6x10細胞/kg、約2.7x10細胞/kg、約2
.8x10細胞/kg、約2.9x10細胞/kg、約3x10細胞/kg、約3
.1x10細胞/kg、約3.2x10細胞/kg、約3.3x10細胞/kg、
約3.4x10細胞/kg、約3.5x10細胞/kg、約3.6x10細胞/k
g、約3.7x10細胞/kg、約3.8x10細胞/kg、約3.9x10細胞
/kg、約4x10細胞/kg、約4.1x10細胞/kg、約4.2x10細胞
/kg、約4.3x10細胞/kg、約4.4x10細胞/kg、約4.5x10
細胞/kg、約4.6x10細胞/kg、約4.7x10細胞/kg、約4.8x1
細胞/kg、約4.9x10細胞/kg、または約5x10細胞/kg。別の実
施形態では、対象に対する細胞の投与量は、単回投与量でも、単回投与量プラス追加の投
与量であってもよい。他の実施形態では、投与量は、本明細書記載の構築物として提供さ
れてもよい。他の実施形態では、対象に対する細胞の投与量は、推定腎臓量または機能的
腎臓量に基づいて計算してもよい。
【0149】
本明細書記載の腎臓細胞集団またはその混合物の治療有効量は、薬学的に許容可能なキ
ャリアーまたは賦形剤中に懸濁できる。このようなキャリアーには、限定されないが、基
本培地プラス1%血清アルブミン、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、コラーゲ
ン、アルギナート、ヒアルロン酸、フィブリン接着剤、ポリエチレングリコール、ポリビ
ニルアルコール、カルボキシメチルセルロースおよびこれらの組み合わせ、が含まれる。
製剤は、投与方法に適合させなければならない。従って、本発明は、対象の腎疾患の処置
用薬物の製造のための、単独のまたはB3および/またはB4またはB4’細胞集団と混
合した腎臓細胞集団またはその混合物、例えば、B2細胞集団の使用を提供する。一部の
実施形態では、薬物は、組換え型ポリペプチド、例えば、増殖因子、ケモカインまたはサ
イトカインをさらに含む。さらなる実施形態では、薬物は、ヒト腎臓由来細胞集団を含む
。薬物製造に使われる細胞は、本明細書記載の方法として提供されたいずれかの変形方法
を使って単離、誘導、富化できる。
【0150】
腎臓細胞調製物もしくはその混合物、または組成物は、ヒトに適合された医薬組成物と
して、常法により処方される。通常、静脈内投与、動脈内投与または腎被膜内投与用組成
物は、例えば、無菌等張性水性緩衝液中の溶液である。また、必要に応じ、組成物は、注
射部位での起こりうる疼痛を改善するために局所麻酔剤を含んでもよい。一般的に、成分
は、別々に、または混合して一緒に、単位剤形、例えば、気密シール容器、例えば、活性
試薬の量を表示したアンプル、に入れた凍結保存濃縮製剤として供給される。組成物が注
入により投与される場合は、無菌の医薬品グレード水または食塩水を含む注入ボトルに分
注できる。組成物が注射により投与される場合は、注射用無菌水または食塩水のアンプル
が用意され、投与の前に成分を混合できる。
【0151】
薬学的に許容可能なキャリアーは、一部は、特定の投与組成物、ならびに組成物の投与
に使われる特定の方法により規定される。従って、多種多様の適切な医薬組成物製剤が存
在する(例えば、Alfonso R Gennaro(ed)、Remington:
The Science and Practice of Pharmacy、以前の
レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Scie
nces)20th ed.、Lippincott、Williams & Wilk
ins、2003、を参照のこと。この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込ま
れる)。医薬組成物は、一般的に、無菌で、実質的に等張性として処方され、米国食品医
薬品局の医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理規則(Good Manufac
turing Practice(GMP))に完全に準拠している。
【0152】
本発明の一態様は、本発明の腎臓細胞調製物、例えば、単独の、またはB3および/ま
たはB4またはB4’細胞調製物と組み合わせたB2細胞調製物、および薬学的に許容可
能なキャリアーを含む医薬製剤をさらに提供する。一部の実施形態では、製剤は、10
~10の哺乳類腎臓由来細胞を含む。
【0153】
一態様では、本発明は、本明細書記載の1つまたは複数の、混合物を含む細胞集団を、
必要としている対象に与える方法を提供する。一実施形態では、細胞集団のソースは、自
己または同種異系、同種同系(自家遺伝子系または同系遺伝子系)、およびそれらの任意
の組み合わせでよい。ソースが自己でない場合、方法には、免疫抑制剤の投与を含んでも
よい。適切な免疫抑制剤には、限定されないが、アザチオプリン、シクロホスファミド、
ミゾリビン、シクロスポリン、タクロリムス水和物、クロランブシル、ロベンザリット二
ナトリウム、オーラノフィン、アルプロスタジル、グスペリムス塩酸塩、ビオシンソルブ
、ムロモナブ、アレファセプト、ペントスタチン、ダクリズマブ、シロリムス、ミコフェ
ノール酸モフェチル、レフロノミド、バシリキシマブ、ドルナーゼα、ビンダリド、クラ
ドリビン、ピメクロリムス、イロデカキン、セデリズマブ、エファリズマブ、エベロリム
ス、アニスペリムス、ガビリモマブ、ファラリモマブ、クロファラビン、ラパマイシン、
シプリズマブ、サイレイト、LDP-03、CD4、SR-43551、SK&F-10
6615、IDEC-114、IDEC-131、FTY-720、TSK-204、L
F-080299、A-86281、A-802715、GVH-313、HMR-12
79、ZD-7349、IPL-423323、CBP-1011、MT-1345、C
NI-1493、CBP-2011、J-695、LJP-920、L-732531、
ABX-RB2、AP-1903、IDPS、BMS-205820、BMS-2248
18、CTLA4-1g、ER-49890、ER-38925、ISAtx-247、
RDP-58、PNU-156804、LJP-1082、TMC-95A、TV-47
10、PTR-262-MG、およびAGI-1096(米国特許第7,563,822
号参照)が含まれる。当業者なら、他の適切な免疫抑制剤を解るであろう。
【0154】
この発明の処置方法は、単離腎臓細胞集団、またはその混合物を個体に送達することを
含む。一実施形態では、恩恵を意図する部位への細胞の直接投与が好ましい。一実施形態
では、本発明の細胞調製物、またはその混合物は、送達媒体を用いて個体に送達される。
【0155】
治療を必要としている対象は、また、ネイティブ腎臓を、1つまたは複数の富化腎臓細
胞集団および/または前記を含む混合物または構築物から分泌された産物とインビボで接
触させることにより、処置可能である。ネイティブ腎臓を、インビボで分泌産物と接触さ
せるステップは、細胞培地、例えば、馴化培地由来の分泌産物の集団の使用/投与、また
は富化細胞集団、および混合物、または産物をインビボで分泌できる構築物の移植により
実現可能である。インビボ接触ステップは、ネイティブ腎臓に対し再生効果を与える。
【0156】
本明細書を考慮すると、細胞および/または分泌産物を対象に投与する種々の手段は、
当業者には明らかであろう。このような方法には、対象標的部位への細胞の注射が含まれ
る。細胞および/または分泌産物は、送達装置または媒体中に装填でき、対象への注射ま
たは移植による導入が促進される。特定の実施形態では、送達媒体には、天然の物質を含
んでもよい。他の特定の実施形態では、送達媒体には、合成物質を含んでもよい。一実施
形態では、送達媒体は、器官の構造を模倣する、またはそれにうまく適合する構造を与え
る。他の実施形態では、送達媒体は、体液様の性質である。このような送達装置には、細
胞と液体をレシピエント対象の身体の中に注入するためのチューブ、例えば、カテーテル
、を含んでもよい。好ましい実施形態では、チューブは、針、例えば、シリンジをさらに
有し、本発明の細胞がそれを通って対象の目的部位に導入されうる。一部の実施形態では
、哺乳類腎臓由来細胞集団は、カテーテル経由で血管に投与されるように処方される(用
語の「カテーテル」は、物質を血管に送達するための様々なチューブ様系のいずれかを含
むことを意味する)。あるいは、細胞を、生体材料または足場中または上に挿入でき、生
体材料または足場には、限定されないが、織物、例えば、敷布、ニット、ブレード、メッ
シュ、および不織布、有孔フィルム、スポンジおよび発泡体、ならびにビーズ、例えば、
中実または多孔性ビーズ、微粒子、ナノ粒子、等(例えば、Cultispher-Sゼ
ラチンビーズ-Sigma)が含まれる。細胞は、種々の異なる形で送達用に調製できる
。例えば、細胞は、溶液またはゲル中に懸濁できる。細胞は、本発明の細胞が生存可能な
、薬学的に許容可能なキャリアーまたは希釈剤と混合できる。薬学的に許容可能なキャリ
アーおよび希釈剤には、食塩水、水性緩衝液、溶剤および/または分散媒が含まれる。こ
のようなキャリアーおよび希釈剤の使用は、当技術分野でよく知られている。溶液は、無
菌の液体が好ましく、また、等張性であることが多い。溶液は、製造と貯蔵条件下で安定
であり、また、微生物、例えば、細菌や真菌の汚染作用に対し、例えば、パラベン、クロ
ロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール、等の使用により、保護され
ていることが好ましい。当業者なら、本発明の細胞集団およびその混合物の送達に使われ
る送達媒体は、上述の特性の組み合わせを含んでもよいことを解るであろう。
【0157】
単離された腎臓細胞集団、例えば、単独またはB4’および/またはB3と混合したB
2細胞集団の投与方式には、限定されないが、全身性、腎臓内(例えば、実質)、静脈内
または動脈内注射および目的作用部位の組織への直接注射、が含まれる。さらなる投与方
式には、直接開腹手術経由の、直接腹腔鏡検査経由の、経腹腔的、または経皮的単回また
は複数回の注射が含まれる。また本発明で使われるさらなる投与方式には、例えば、逆行
注入および腎盂尿管注入が含まれる。外科的投与手段には、一段手術、例えば、限定され
ないが、腎部分摘出術および構築物移植、腎部分摘出術、腎盂部分切除術、網±腹膜によ
る血管新生、注射筒に取り付ける円錐形状または角錐形状の多源性生検注射痕、および、
腎臓柱状置換、ならびに、例えば、再移植のためのオルガノイド内部バイオリアクター等
の2段手術、が含まれる。一実施形態では、細胞の混合物は、同じ経路で、同じ時間に送
達される。別の実施形態では、制御された混合物を含むそれぞれの細胞組成物は、別々に
特異的部位に送達されるか、または特異的方法を経由して、同時にまたは時間経過制御方
式で、1つまたは複数の本明細書記載の方法により、送達される。
【0158】
ヒトの適切な細胞移植投与量は、細胞の活性、例えば、EPO産生、に関連する既存情
報、または前臨床の試験で行った投薬試験から推定した情報から決定できる。インビトロ
培養およびインビボ動物実験から、細胞の量が定量化でき、適切な移植材料投与量の計算
に使用できる。従って、患者をモニターし、追加の移植ができるか、または移植材料をそ
れに応じて減らすことができるかどうかを決定できる。
【0159】
1つまたは複数の選択細胞外のマトリックス成分、例えば、1つまたは複数の当技術分
野で既知の型のコラーゲンまたはヒアルロン酸、および/または増殖因子、多血小板血漿
および薬剤等の他の成分を本発明の細胞集団およびその混合物に添加できる。
【0160】
当業者なら、本明細書記載の分泌産物に適した種々の処方および投与方法が解るであろ
う。
【0161】
キット
本発明は、本発明のポリマーマトリックスおよび足場および関連材料、および/または細
胞培地および使用説明書を含むキットをさらに含む。使用説明書は、例えば、細胞の培養
または細胞および/または細胞産物の投与に関するインストラクションを含んでもよい。
一実施形態では、本発明は、本明細書記載の足場およびインストラクションを含むキット
を提供する。さらに別の実施形態では、キットは、マーカー発現検出用試薬、薬剤を使用
するための試薬、および使用説明書を含む。このキットは、本明細書記載の細胞集団、混
合物、または構築物の移植または投与後の対象のネイティブ腎臓の再生予後の測定のため
に使うことができる。キットは、また、本明細書記載の細胞集団、混合物、または構築物
のバイオセラピューティック効力の測定に使用可能である。
【0162】
報告書
本発明の方法では、商業目的で実施する場合、一般的に、再生予後の報告書または要約を
作成する。本発明の方法は、本明細書記載の細胞集団、混合物、または構築物のいずれか
の投与または移植の前と後の可能なコースまたは再生結果の予測を含む報告を作成するこ
とになる。この報告は、予後に関連するいずれかの指標の情報を含んでもよい。本発明の
方法および報告は、データベースに報告を保存することもさらに含んでもよい。あるいは
、方法は、対象に対するデータベースに記録をさらに作成することができ、記録にデータ
を呼び込むことができる。一実施形態では、報告は、文書による報告書であり、別の実施
形態では、報告は、聴覚による報告であり、別の実施形態では、報告は電子記録である。
報告は、医師および/または患者に提供されることが意図されている。報告の受領は、デ
ータおよび報告を含むサーバーコンピュータにネットワーク連結を確立すること、および
サーバーコンピュータからデータおよび報告を要求することをさらに含む。本発明により
提供される方法は、また、全体または一部が自動化されてもよい。
【0163】
本明細書で引用されている全ての特許、特許出願、および文献の参照は、参照によって
その全体が組み込まれる。
【0164】
以下の実施例は、説明の目的のみのために提供されており、本発明の範囲を限定する意
図は全くない。
【実施例
【0165】
実施例1-生物学的応答性腎臓細胞の単離およびキャラクタリゼーション
成体雄ブタ(イノシシ)の貧血を伴う特発性進行性慢性腎疾患(CKD)の症例から、同
年齢の正常なブタ腎臓組織と直接比較して細胞組成物の評価とキャラクタリゼーションを
行うための、新鮮な腎臓患部組織が提供された。採取時間での腎臓組織の組織学的検査に
より、重篤なびまん性慢性間質性線維症および多巣性線維形成を伴う半月体形成性糸球体
腎炎を特徴とする腎疾患であると確認された。臨床化学により、高窒素血症(血中尿素窒
素および血清クレアチニンの上昇)、および軽度の貧血(ヘマトクリットの軽度の減少お
よび低下したヘモグロビンレベル)である事が確認された。病気および正常の両方の腎臓
組織由来の細胞が単離され、増殖されて、特性が明らかにされた。Presnell e
t al.国際公開第2010/056328号(参照によりその全体が本明細書に組み
込まれる)の図1に示されるように、ゴモリのトリクローム染色により正常な腎臓組織に
比較して腎臓患部組織中の線維形成が強調される(矢印で示す青色染色)。キュビリン:
メガリンを発現し、受容体媒介アルブミン輸送ができる機能性尿細管細胞が、正常および
病気両方の腎臓組織から増殖する。エリスロポエチン(EPO)発現細胞は、また、培養
物中に存在し、複数の継代中保持され、冷凍/解凍サイクルを受ける。さらに、分子分析
により、正常および患部組織の両方由来のEPO発現細胞は、インビトロの低酸素性の条
件に応答し、EPOおよびvEGF等の他の低酸素調節遺伝子標的のHIF1α駆動型誘
導が起こる。細胞は、コラゲナーゼ+ディスパーゼの酵素消化によりブタ腎臓組織から単
離され、また、単純な機械的消化および外植片培養を行うことにより、別の実験でも単離
された。継代2で、EPO発現細胞含有外植片由来細胞培養を大気(21%)および可変
の低酸素性(<5%)培養の両方の条件に供し、低酸素への暴露が、EPO遺伝子発現の
上昇発現の結果をもたらすのかどうかを判定する。げっ歯類培養で述べるように(実施例
3を参照)、正常なブタは、酸素依存性発現およびEPO遺伝子調節を示した。驚くべき
ことに、CKDブタの尿毒性/貧血状態(ヘマトクリット<34、クレアチニン>9.0
)にもかかわらず、EPO発現細胞は、容易に単離され、組織から増殖し、EPO遺伝子
の発現は、低酸素に調節されたままであった(Presnell et al.国際公開
第2010/056328号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の図2
示すように)。Presnell et al.国際公開第2010/056328号(
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の図3に示すように、増殖培養物中の細
胞は、尿細管様構造へと自己組織化する能力を示した。Presnell et al.
国際公開第2010/056328号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)
図4に示すように、培養細胞によるFITC複合化アルブミンの受容体媒介取込を観察
することにより、培養物(継代3の)中の機能的尿細管細胞の存在が確認された。緑色ド
ット(細い白色の矢で示す)は、取り込まれたフルオレセイン複合化アルブミンを表し、
これは、尿細管細胞特異的受容体、メガリンとキュビリンにより媒介され、機能的尿細管
細胞によるタンパク質の再吸収を示す。青色染色(細い白色の矢で示す)は、Hoesc
ht染色した核である。まとめると、これらのデータは、機能的尿細管および内分泌細胞
は、CKDに激しく侵されている腎臓組織であっても、ブタ腎臓組織から単離、増殖でき
ることを示唆している。さらに、これらの知見は、CKDの処置に対する自己細胞ベース
の治療薬の進展を支援する。
【0166】
さらに、EPO産生細胞は、正常なヒト成人腎臓から酵素を使って単離された(上述の
実施例1のように)。単離手続きにより、初期組織の場合よりも、単離後、比較的多くの
EPO発現がもたらされた。Presnell et al.国際公開第2010/05
6328号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の図6に示すように、培養
中にヒトEPO産生細胞を維持し、EPO遺伝子発現を保持することが可能である。ヒト
細胞を組織培養物処置プレーンプラスチックまたは一部の細胞外のマトリックス、例えば
、フィブロネクチンまたはコラーゲンコートプラスチック上で培養/増殖し、全てのもの
が経時EPO発現を裏付けることが明らかになった。
【0167】
実施例2-特定生理活性腎臓細胞の単離および富化
腎臓細胞単離:簡単に述べると、10、2週齢雄Lewisラット腎臓のバッチを市販品
納入業者(Hilltop Lab Animals Inc.)から入手し、約4℃の
Viaspan保存培地中に入れ一晩輸送した。本明細書記載の全ステップは、生物学的
安全キャビネット(BSC)中で行い、無菌を保った。腎臓を、ハンクス平衡塩類溶液(
HBSS)で3回洗浄してViaspan保存培地を洗い流した。3回目の洗浄後、残っ
ている腎臓カプセル剤、ならびに残っている全ての間質組織が除去された。また、主要腎
杯を顕微解剖技術を使って取り出した。次に、腎臓を無菌のメスを使って細かく分割して
スラリーにした。その後、スラリーを50mlの遠心分離機のコニカルチューブに移し、
秤量した。小検体をRNA分析用に集め、無菌の無RNアーゼ1.5ml微量遠心分離機
チューブ中に入れ、液体窒素中で急速凍結した。凍結するとすぐに、-80℃フリーザー
に移し、分析まで保存した。10個の若齢腎臓の組織重量は、約1グラムに相当する。バ
ッチの重量に基づいて、消化培地を、1グラムの組織当たり20mlの消化培地になるよ
うに調節した。この手続き用消化緩衝液には、4ユニットのHBSS中ディスパーゼ1(
Stem Cell Tech)、5mM CaCl(シグマ)含有300Units
/mlのコラゲナーゼタイプIV(Worthington)を含めた。
【0168】
適切な容量の予熱した消化緩衝液をチューブに添加し、シールして、37℃のインキュ
ベーター中のロッカーに20分間入れた。この第1消化ステップは、多くの赤血球を除き
、残っている組織の消化を高める。20分後、チューブを取り出し、BSC中に入れた。
組織をチューブの底に静置し、次に、上清を取り出した。残っている組織に、出発容量と
等量の新しい消化緩衝液を補充した。追加の30分間、37℃インキュベーター中のロッ
カーにチューブを再度入れた。
【0169】
30分後、消化混合物を70μmセルストレーナー(BD Falcon)を使って等
容量の中和緩衝液中に分注し(DMEMw/10%FBS)、消化反応を停止させた。そ
の後、細胞懸濁液を300xgの遠心分離により5分間洗浄した。遠心分離後、ペレット
をKSFM培地に再懸濁し、トリパンブルー色素排除を使った細胞計数および生存率評価
用に検体を採取した。細胞数を計算するとすぐに、百万個の細胞をRNA分析用に集め、
PBSで洗浄し、急速液体窒素中で凍結した。残った細胞懸濁液をKSFM培地で50m
lにして、再度300xgの遠心分離により5分間洗浄した。洗浄後、KSFM 1ml
当たり1千5百万細胞の濃度で細胞ペレットを再懸濁した。
【0170】
次に、5mlの腎臓細胞懸濁液を15ml遠心分離機コニカルチューブ(BDFalc
on)中の5mlの30%(w/v)Optiprep(登録商標)に添加し、6回反転
により混合した。これにより、15%(w/v)のOptiprep(登録商標)の最終
混合物が形成された。反転後、チューブを1mL PBSで注意深く層状化した。チュー
ブをブレーキなしで、800xgで15分間遠心分離した。遠心分離後、チューブを取り
出し、混合勾配の先端に細胞バンドを形成した。また、赤血球、死細胞、および少しの小
さな顆粒状の少ない細胞、少しのEPO産生細胞、少しの尿細管細胞、および少しの内皮
細胞、等の小集団の生細胞を含むペレットも存在した。バンドを、ピペットで注意深く取
り出し、別の15mlコニカルチューブに移した。吸引により勾配培地を取り出し、ペレ
ットを1mlのKSFM中へ再懸濁した。次に、バンド細胞およびペレット細胞を再度組
み合わせて、KSFMを使って少なくともの集めたバンド容量の3倍の希釈度にして再懸
濁し、300xgの遠心分離で5分間洗浄した。洗浄後、細胞を20mlのKSFMに再
懸濁し、細胞計数用検体を集めた。トリパンブルー色素排除を使った細胞数の計数が終わ
るとすぐ、RNA検体として百万個の細胞を集め、PBSで洗浄し、液体窒素中で急速凍
結した。
【0171】
密度勾配分離を使って特定の生理活性腎臓細胞の生存率と培養能力を高めるための前培
養「精製(Clean-up)」:不純物のない、生存可能な培養用細胞集団を得るため
に、「腎臓細胞単離」で上述のように、最初に細胞懸濁液を生成した。随意選択ステップ
として、および初期調製物を精製する手段として、無菌の等張性緩衝液中に懸濁させた1
億個もの全体細胞を、ストックの60%(w/v)イオジキサノール(従って、最終的に
15%w/v Optiprep溶液が得られる)から室温で調製した等容量の30%O
ptiprep(登録商標)で完全に1:1とし、6回の反転により完全に混ぜ合わせる
。混合後、1mlのPBS緩衝液を混合細胞懸濁液の上端に注意深く層状に加えた。その
後、勾配チューブを注意深く遠心分離機に装填し、適性バランスを確保した。勾配チュー
ブを800xg、25℃で15分間、ブレーキなしで遠心分離した。精製細胞集団(生存
可能で、かつ機能的集合管、尿細管、内分泌、糸球体、および血管細胞を含む)は、1.
025~1.045g/mLの間の密度に対応する6%と8%(w/v)Optipre
p(登録商標)の間に分配された。他の細胞および壊死組織片は、チューブの底部にペレ
ット化された。
【0172】
腎臓細胞培養:1つにまとめた細胞バンドとペレットを、次に、DMEM(高ブドウ糖
)/{5%(v/v)FBS、2.5μgEGF、25mgBPE、抗生物質/抗真菌剤
を含む1XITS(インスリン/トランスフェリン/亜セレン酸ナトリウム培地補助剤)
を含むKSFM}の50:50混合物150ml中に30、000細胞/cmの細胞濃
度で、組織培養物処理トリプルフラスコ(Nunc T500)または等価物中に播種し
た。細胞を、加湿5%CO2インキュベーター中で2~3日培養し、21%大気酸素レベ
ルを細胞に与えた。2日後、培地を交換し、培養物をCO2/窒素ガスマルチガス加湿イ
ンキュベーター(Sanyo)から提供された2%酸素レベル環境中に24時間置いた。
24時間のインキュベーション後、細胞を60mlの1X PBSで洗浄し、40mlの
0.25%(w/v)トリプシン/EDTA(Gibco)で取り出した。取り出しに際
し、細胞懸濁液を等容量の10%FBS含有KSFMで中和した。その後、細胞を300
xgの遠心分離で10分間洗浄した。洗浄後、細胞を20mlのKSFM中に再懸濁し、
50mlコニカルチューブに移して、細胞計数用検体を集めた。生存可能な細胞数がトリ
パンブルー色素排除を使って決定されるとすぐに、RNA検体として百万個の細胞を集め
、PBSで洗浄後、液体窒素中で急速凍結した。細胞をPBSで再度洗浄し、300xg
の遠心分離で5分間、集めた。洗浄した細胞ペレットをKSFM中に3千7百50万細胞
/mlの濃度で再懸濁した。
【0173】
密度ステップ勾配分離を使った特定の生理活性腎臓細胞の富化:、主に腎臓尿細管細胞
からなるが、他の細胞型(集合管、糸球体、血管、および内分泌細胞)小亜集団を含む培
養腎臓細胞を、複数の濃度w/vのイオジキサノール(Optiprep)から作られた
密度ステップ勾配を使って、それらの成分亜集団に分離した。採取前に、培養物を低酸素
性環境中に24時間まで置き、勾配にかけた。無菌の15mLコニカルチューブ中で4つ
の異なる密度の培地を相互の上端の上に層状に導入することによりステップ勾配を形成し
、最高密度の溶液を底部に配置し、最低密度溶液を上端に層状に導入した。細胞をステッ
プ勾配の上端に加え、遠心分離し、これにより、集団をサイズと粒状性に基づき複数のバ
ンドに分離させる結果を得た。
【0174】
簡単に述べると、KFSM培地を希釈剤として使用して、7、11、13、および16
%Optiprep(登録商標)(60%w/vイオジキサノール)の密度を作った。例
えば、50mlの7%(w/v)Optiprep(登録商標)に対し、5.83mlの
ストック60%(w/v)イオジキサノールを44.17mlのKSFM培地に添加し、
反転により良く混合した。無菌の毛細血管に連結した無菌のL/S 16タイゴンチュー
ブを備えたぜん動ポンプ(Master Flex L/S)を、2ml/分の流量に設
定し、2mLの各4つの溶液を、最初に16%溶液、続いて13%溶液、11%溶液、そ
して7%溶液の順に、無菌のコニカル15mLチューブに加えた。最後に、7千5百万個
の培養げっ歯類腎臓細胞含有2mL細胞懸濁液をステップ勾配の頂上に加えた(上述の「
腎臓細胞培養」にあるようにして懸濁液が生成された)。重要なのは、ポンプが勾配溶液
をチューブに送り始めると、液体が45°の角度でチューブの側面をゆっくり流れ落ちる
ようにして、適正な界面が各勾配の層の間に確実に形成されるように注意することである
。細胞を負荷されたステップ勾配は、次に、800xgで20分間、ブレーキなしで遠心
分離にかけられる。遠心分離後、チューブを各界面を乱さないように注意深く取り出した
。5つの異なる細胞画分が得られた(4バンドおよびペレット)(B1~B4、+ペレッ
ト)(図1A、左コニカルチューブ参照)。各画分を無菌のディスポーザブルバルブピペ
ットまたは5mlピペットを使って集め、表現型および機能性の観点から特徴付けした(
Presnell et al.国際公開第2010/056328号の実施例10を参
照)。げっ歯類腎臓細胞懸濁液をステップ勾配分画にかけると、尿細管細胞富化画分(お
よび集合管由来の細胞を少し含む)は、1.062~1.088g/mLの密度区分に分
配された。対照的に、エクスビボ培養後に密度勾配分離を行った場合、尿細管細胞富化画
分(および集合管由来の細胞を少し含む)は、1.051~1.062g/mLの密度区
分に分配された。同様に、単離直後に、げっ歯類腎臓細胞懸濁液がステップ勾配分画にか
けられた場合、EPO産生細胞、糸球体有足細胞、および血管細胞(「B4」)富化画分
は、1.025~1.035g/mLの密度区分に分配された。対照的に、エクスビボ培
養後に、密度勾配分離を行った場合は、EPO産生細胞、糸球体有足細胞、および血管細
胞(「B4」)富化画分は、1.073~1.091g/mLの密度の区分に分配された
。重要なのは、培養物の低酸素性培養環境への暴露(約1時間~約24時間の間)により
、培養後に細胞の「B2」および「B4」画分への分配が高められたことである(低酸素
は、採取およびステップ勾配手続きの前で、21%(大気)未満の酸素レベルとして定義
される(バンド分布に対する低酸素効果についてのさらなる詳細は、実施例3で提供され
る))。
【0175】
各バンドを3x容量のKSFMで希釈し、よく混合し、300xgで5分間遠心分離す
ることにより洗浄した。ペレットを2mlのKSFM中に再懸濁し、生存可能な細胞をト
リパンブルー色素排除および血球計を使って計測した。百万個の細胞をRNA検体として
集め、PBSで洗浄し、液体窒素中で急速凍結した。尿毒性および貧血雌ラットに対する
移植調査のために、B2およびB4由来の細胞を使用した。これらのラットは、Char
les River Laboratoriesで2段ステップ5/6腎摘出術法により
生成された。エリスロポエチンとvEGFの酸素調節発現、糸球体マーカーの発現(ネフ
リン、ポドシン)、および血管マーカーの発現(PECAM)を含むB4の特性は、定量
リアルタイムPCRにより確認された。「B2」画分の表現型は、E-カドヘリン、N-
カドヘリン、およびアクアポリン-2.の発現により確認された。Presnell e
t al.国際公開第2010/056328号の図49aと49bを参照。
【0176】
従って、ステップ勾配戦略の使用は、EPO産生細胞(B4)の希少な集団の富化のみ
でなく、機能的尿細管細胞(B2)が相対的に富化された画分を生成する手段も可能とす
る(Presnell et al.国際公開第2010/056328号の図50と5
1を参照)。ステップ勾配戦略は、また、EPO産生および尿細管細胞の、赤血球、細胞
壊死組織片、および他の潜在的に望ましくない細胞型、例えば、大きな細胞凝集物および
特定の型の免疫細胞からの分離を可能とする。
【0177】
ステップ勾配手続きは、採用された特定の密度については、細胞成分の良好な分離を得
るためにチューニングが必要な場合がある。好ましい勾配チューニング手法には、1)勾
配の底の高密度(例えば、16~21%Optiprep)から、勾配の上端の相対的に
低密度(例えば、5~10%)までの連続的密度勾配を機能させることが含まれる。連続
的勾配は、任意の標準的密度勾配溶液(フィコール、パーコール、ショ糖、イオジキサノ
ール)を使って、標準的な方法(Axis Shield)に従って調製できる。対象の
細胞を連続勾配に加え、800xGで20分、ブレーキなしで遠心分離する。類似のサイ
ズと粒度の細胞は、一緒に勾配中に分離する傾向があり、その結果、勾配の相対的位置が
測定でき、さらに、その位置の溶液の比重も、測定できる。従って、その後で、特定条件
下で密度勾配を全体にわたるその能力に基づいて、特定の細胞集団の単離に焦点を合わせ
た確定したステップ勾配を得ることができる。不健康-対-健康組織由来細胞を単離する
場合、または、異なる種由来の特定細胞を単離する場合に、このような最適化が、採用さ
れる必要がありうる。例えば、最適化がイヌのおよびヒト両方の腎臓細胞培養物に対して
行われ、ラットで同定された特異的B2およびB4亜集団を他の種から単離可能であるこ
とを確実にした。げっ歯類B2およびB4亜集団の単離用最適勾配は、7%、11%、1
3%、および16%(w/v)Optiprepから構成される。イヌのB2およびB4
亜集団の単離用最適勾配は、7%、10%、11%、および16%(w/v)から構成さ
れる。ヒトB2およびB4亜集団単離用最適勾配は、7%、9%、11%、16%(w/
v)から構成される。この結果、培養げっ歯類、イヌ、およびヒト腎臓細胞のB2および
B4に対する局在化密度範囲は、表2.1に示される。
【0178】
実施例3-勾配前の低酸素培養が、バンド分布、組成、および遺伝子発現に影響する
プロトタイプB2およびB4の分布および組成に与える酸素条件の効果を測定するために
、勾配ステップの前に、異なる種由来の新規腎臓(neokidney)細胞調製物を種
々の酸素条件に暴露した。ラット細胞単離および培養開始のための標準的手順を使って、
上述のように、げっ歯類新規腎臓増強(NKA)細胞調製物(RK069)を形成した。
21%(大気)酸素条件下で2~3日間、全てのフラスコを培養した。培地を交換し、半
分のフラスコを2%酸素に設定された酸素制御インキュベーターに再配置し、一方、残り
のフラスコを追加の24時間の間、21%酸素条件に保持した。次に、上述の標準的な酵
素による採取法を使って、各セットの条件から細胞を採取した。標準的手続きに従ってス
テップ勾配を調製し、「正常酸素圧」(21%酸素)および「低酸素性の」(2%酸素)
培養物を別々に採取し、並行してステップ勾配に適用した(図2)。両条件で4バンドお
よびペレットが生成されたが、勾配全体の細胞の分布は、21%と2%酸素培養バッチで
異なっていた(表1)。特に、B2の収率は、低酸素で増加し、同時にB3が減少した。
さらに、低酸素性培養細胞から生成された勾配中でB4特異的遺伝子(例えば、エリスロ
ポエチン)の発現が増加した(Presnell et al.国際公開第2010/0
56328号の図73を参照)。
【0179】
上述のように、イヌ細胞単離および培養に関する標準的手順(げっ歯類単離および培養
手順に類似の)を使って、イヌのNKA細胞調製物(DK008)を形成した。全てのフ
ラスコを21%(大気)酸素条件下で4日間培養した後、フラスコのサブセットを低酸素
(2%)環境に24時間移したが、一方、サブセットのフラスコを、21%で維持した。
続けて、各セットのフラスコから回収し、同じステップ勾配供した(図3)。ラットの結
果(実施例1)と同様に、低酸素性培養イヌ細胞は、大気圧酸素培養イヌ細胞とは異なり
、勾配全体に分配された(表3.1)。再度、B2の収率は、勾配の前の低酸素性暴露に
より増加し、同時にB3への分配は減少した。
【0180】
上のデータは、勾配前の低酸素への暴露が、B2の成分ならびに特定の分化細胞(エリ
スロポエチン産生細胞、血管細胞、および糸球体細胞)のB4への分配を高めることを示
す。従って、上述の低酸素性培養、それに続く密度勾配分離は、種全体にわたる「B2」
と「B4」細胞集団の生成の有効な方法である。
【0181】
実施例4-ヒト腎臓からの尿細管/糸球体細胞の単離
全体にわたり記載されている酵素を使った単離方法により、正常なヒト腎臓組織から尿細
管および糸球体細胞を単離し、増殖した。上述の勾配方法により、尿細管細胞画分を培養
後、エクスビボで富化した。Presnell et al.国際公開第2010/05
6328号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の図68に示すように、表
現型特性は単離および増殖中、維持された。標識アルブミンの取込により評価された尿細
管細胞機能は、また、繰り返された継代後も維持され、冷凍保存された。Presnel
l et al.国際公開第2010/056328号(参照によりその全体が本明細書
に組み込まれる)の図69は、尿細管富化および尿細管枯渇集団が3Dダイナミック培養
により培養される場合、尿細管マーカー、カドヘリン発現の有意な増加が尿細管富化集団
で認められた。このことにより、細胞が3Dダイナミック環境で培養される場合、尿細管
細胞の富化が、初期の富化を越えて維持できることが確認される。
【0182】
実施例5-フローサイトメトリーによるEPO産生細胞のさらなる分離
上述の実施例2で記載の腎臓細胞の同じ培養集団をフローサイトメトリー分析に供し、前
方散乱および側方散乱を調査した。小さくて、顆粒がより少ないEPO産生細胞集団は識
別可能であり(8.15%)、また、フローサイトメーターの選別能力を使って、小さく
て、顆粒がより少ない集団のポジティブセレクションにより分離される(Presnel
l et al.国際公開第2010/056328号(参照によりその全体が本明細書
に組み込まれる)の図70を参照))。
【0183】
実施例6-自己免疫糸球体腎炎患者検体から単離された腎臓細胞の未分画混合物のキャ
ラクタリゼーション
腎臓細胞の未分画混合物を上述のように自己免疫性糸球体腎炎患者検体から単離した。腎
臓組織から単離、増殖された腎臓細胞の特定亜集団の不偏の遺伝子型組成を決定するため
に、定量リアルタイムPCR(qrtpcr)分析(Brunskill et al.
、前出、2008)を採用し、細胞亜画分中の細胞型特異的および経路特異的遺伝子発現
パターンの差異を特定した。表6.1に示すように、HK20は、自己免疫性糸球体腎炎
患者検体である。表6.2は、qRTPCR測定の結果の基づき、HK20から生成され
た細胞は、糸球体細胞が欠乏していることを示す。
【0184】
実施例7-巣状分節性糸球体硬化症の症例から単離された治療に適する腎臓生理活性細
胞集団の遺伝的プロファイリング
腎臓組織から単離、増殖された腎臓細胞の特定亜集団の不偏の遺伝子型組成を決定するた
めに、定量リアルタイムPCR(qrtpcr)分析(Brunskill et al
.、前出、2008)を採用し、細胞亜画分中の細胞型特異的および経路特異的遺伝子発
現パターンの差異を特定した。糸球体の大部分が破壊されている巣状分節性糸球体硬化症
(FSGS)の症例由来の、ヒト調製物HK023をB4画分の糸球体細胞の存在に関し
、採取時に評価した。簡単に述べると、未分画(UNFX)培養物を生成し(Abous
hwareb et al.、前出、2008)、標準的生検方法を使って腎臓から採取
した(4)コア生検をそれぞれ相互に独立に維持した。UNFXエクスビボでの(2)継
代後、細胞を採取し、密度勾配法(実施例8のように)に供し、げっ歯類、イヌ、および
他のヒト検体で行った研究に基づいて、内分泌、血管、および糸球体細胞が富化されてい
ると解っている亜画分B4を含む亜画分を生成した。
【0185】
1.063~1.091g/mLの浮遊密度を有する細胞の異なるバンドと思われるH
K023の各独立UNFX検体からB4画分を別々に集めた。RNAを各検体から単離し
、ポドシン(糸球体細胞マーカー)およびPECAM(内皮細胞マーカー)の発現を定量
リアルタイムPCRにより調べた。重篤FSGSの生検由来検体から予期されるように、
画分中のポドシン(+)糸球体細胞の存在に関し一貫性がなく、検体の2/4でポドシン
検出不可であった。対照的に、PECAM+血管細胞は、生検で惹起された培養物の4/
4のB4画分で一貫して存在した。従って、B4画分は、重篤な疾患状態のヒト腎臓から
の場合であっても、1.063~1.091g/mL密度範囲で単離できる。
【0186】
さらに、表7.2に示すように、ヒト検体(HK018)は、密度勾配遠心分離後のq
RTPCRでは、ポドシン(糸球体のマーカー)が検出されなかった。
【0187】
実施例8-蛍光活性化セルソーター(FACS)を使った生存可能な腎臓細胞型の富化
/枯渇
蛍光活性化セルソーター(FACS)を使って、1つまたは複数の単離腎臓細胞を富化で
き、および/または単離した1次腎臓組織から1つまたは複数の特定の腎臓細胞型を枯渇
できる。
【0188】
試薬:70%エタノール;洗浄緩衝液(PBS);50:50腎臓細胞培地(50%D
MEM(高グルコース)):50%ケラチノサイト-SFM;トリパンブルー0.4%;
標的腎臓細胞集団、例えば、腎臓内皮細胞のためのCD31および腎臓糸球体細胞のため
のネフリン、に対する一次抗体。対応するアイソタイプ特異的蛍光二次抗体;染色緩衝液
(PBS中0.05%BSA)。
【0189】
方法:生物学的安全キャビネット(BSC)を標準的手順で洗浄後、1次単離または培
養細胞由来の腎臓細胞の単一細胞懸濁液をT500T/C処理フラスコに取り出し、腎臓
細胞培地に再懸濁させて、氷上に置く。次に、トリパンブルー色素排除法を使って細胞数
と生存率を測定する。例えば、異種起源の集団からの糸球体細胞または内皮細胞の腎臓細
胞富化/枯渇に対しては、10~50e6個の少なくとも70%の生存率の生細胞を得る
。腎臓細胞の異種起源の集団を、次に、出発濃度1μg/0.1mlの染色緩衝液/1x
10細胞(必要に応じ力価)の、標的細胞型特異的一次抗体で染色した。標的抗体は、
例えば、CD31PE(腎臓内皮細胞特異的)と複合化できるが、例えば、ネフリン(腎
臓糸球体細胞特異的)と複合化できない。
【0190】
その後、30分間、光から保護された4℃の氷上で細胞を染色した。30分のインキュ
ベーション後、細胞を300xgで5分間遠心分離して、洗浄した。次に、複合化アイソ
タイプ特異的二次抗体の必要性に応じ、PBSまたは染色緩衝液中にペレットを再懸濁し
た。細胞を蛍光色素複合化一次抗体で標識する場合は、10e7細胞当たり2mlのPB
S中に細胞を再懸濁し、FACS ariaまたは等価な細胞選別機で処理する。細胞を
蛍光色素複合化抗体で標識しない場合は、1μg/0.1ml/1e6細胞の出発濃度の
アイソタイプ特異的蛍光色素複合化二次抗体で細胞を標識する。
【0191】
次に、30分間、光から保護された4℃の氷上で細胞を染色する。30分のインキュベ
ーション後、細胞を300xgで5分間遠心分離して、洗浄した。遠心分離後、ペレット
を5e6/ml(PBS)の濃度でPBSに再懸濁し、12x75mm当たり4mlを無
菌のチューブに移す。
【0192】
FACs Ariaをメーカーのインストラクション(BDFACs Ariaユーザ
ーマニュアル)に従って、生細胞無菌選別用に準備する。検体チューブをFACs Ar
iaに装填し、データ取込開始後、PMT電圧を調整する。ゲートを特定の波長を使った
蛍光の強度により腎臓の特異的細胞型を選択するように設定する。別のゲートを、陰性集
団を選択するように設定する。所望のゲートを陽性標的集団および陰性集団を包含するよ
うに設定するとすぐに、メーカーのインストラクションに従って、細胞が選別される。
【0193】
陽性の標的集団を、1つの15mlコニカルチューブの集め、陰性集団を1mlの腎臓
細胞培地を入れた別の15mlコニカルチューブに集める。収集後、各チューブからの検
体を、フローサイトメトリーにより分析し、純度を測定する。集めた細胞を300xgで
5分間の遠心分離により洗浄し、ペレットを腎臓細胞培地に再懸濁し、さらなる分析と実
験に備える。
【0194】
実施例9-磁気細胞選別を使った腎臓細胞型の富化/枯渇
1つまたは複数の単離された腎臓細胞を富化でき、および/または1つまたは複数の特定
の腎臓細胞型を単離1次腎臓組織から枯渇できる。
【0195】
試薬:70%エタノール、洗浄緩衝液(PBS)、50:50腎臓細胞培地(50%D
MEM(高グルコース)):50%ケラチノサイト-SFM、トリパンブルー0.4%、
操作緩衝液(PBS、2mM EDTA、0.5%BSA)、リンス緩衝液(PBS、2
mM EDTA)、洗浄溶液(70%v/vエタノール)、Miltenyi FCRブ
ロッキング試薬、いずれかのIgGアイソタイプに特異的なMiltenyiマイクロビ
ーズ、標的抗体、例えば、CD31(PECAM)もしくはネフリン、または二次抗体。
【0196】
方法:生物学的安全キャビネット(BSC)を標準的手順で洗浄後、1次単離または培
養由来の腎臓細胞の単一細胞懸濁液を得て、腎臓細胞培地に再懸濁する。細胞数および生
存率をトリパンブルー色素排除法により測定する。
【0197】
異種起源の集団から、例えば、糸球体細胞または内皮細胞腎臓細胞の富化/枯渇のため
には、少なくとも70%の生存率の少なくとも10e6~4e9個の生細胞が得られる。
【0198】
最良の分離を行える富化/枯渇手法は、対象標的細胞に基づいて決定される。10%未
満の標的出現頻度の細胞の富化、例えば、ネフリン抗体を使った糸球体細胞、に対しては
、Miltenyi autoMACSのPOSSELDS(高感度モードのダブルポジ
ティブ選択(double positive selection))、または同等の
計器プログラムが使われる。10%超の標的出現頻度の細胞の枯渇に対しては、Milt
enyi autoMACSのDEPLETES(高感度モードの枯渇(depleti
on))、または同等の計器プログラムが使われる。
【0199】
15mlのコニカル遠心分離チューブに0.05%BSAを含む1μg/10e6細胞
/0.1ml PBSを加えることにより、生細胞を標的特異的一次抗体、例えば、糸球
体細胞のためのネフリン腎生検ポリクローナル抗体、で標識し、続けて、4℃で15分の
インキュベーションを行う。
【0200】
標識後、細胞を洗浄して、10e7細胞当たり1~2mlの緩衝液を加え、続けて、3
00xgで5分間遠心分離することにより非結合一次抗体を除去する。洗浄後、アイソタ
イプ特異的二次抗体、例えば、0.05%BSA含有1μg/10e6/0.1ml P
BSのニワトリ抗ウサギPEを添加し、続いて、4℃で15分のインキュベーションを行
う。
【0201】
インキュベーション後、細胞を洗浄し、10e7細胞当たり1~2mlの緩衝液を加え
、続けて、300xgで5分間遠心分離することにより非結合一次抗体を除去する。上清
を取り出し、細胞ペレットを再懸濁した10e7全体細胞当たり60μlの緩衝液中に再
検索後、10e7全体細胞当たり20μlのFCRブロッキング試薬を添加し、これをよ
く混合する。
【0202】
20μlのダイレクトMACSマイクロビーズ(例えば、抗PEマイクロビーズ)を添
加、混合し、4℃で15分のインキュベーションを行う。
【0203】
インキュベーション後、標識容量の10~20xの緩衝液を添加し、300xgで5分
間、懸濁液を遠心分離することにより細胞を洗浄し、細胞ペレットを10e8細胞当たり
500μl~2mlの緩衝液に添加して再懸濁する。
【0204】
メーカーのインストラクションに従い、autoMACSシステムを洗浄し、auto
MACSを使った磁気細胞分離のための準備をする。新規無菌収集チューブを出口の下に
置く。autoMACS細胞分離プログラムを選択する。選別では、POSSELDSプ
ログラムを選ぶ。枯渇に対しては、DEPLETESプログラムを選ぶ。
【0205】
標識細胞を取込ポートに挿入後、プログラムを開始する。
細胞選別または枯渇の後に、検体を集め、使用まで氷上に置く。
枯渇または選別された検体の純度をフローサイトメトリーで検証する。
【0206】
実施例10-正常および慢性疾患腎臓組織から治療可能性のある細胞を単離、増殖でき

本調査の目的は、ハイコンテントアナリシス(HCA)によりヒトNKA細胞の機能的特
性解析を行うことにあった。ハイコンテントイメージング(HCI)は、多くの検体全体
に対し、2つ以上の蛍光プローブ(多重処理)を使って、複数の細胞下イベントの同時画
像処理を提供する。ハイコンテントアナリシス(HCA)は、ハイコンテントイメージン
グで捕捉された複数の細胞パラメーターの同時定量測定を提供する。簡単に述べると、未
分画(UNFX)培養物を生成し(Aboushwareb et al.、前出、20
08)、標準的生検手順を使って、進行性慢性腎疾患(CKD)および3つの非CKDヒ
ト腎臓を含む5つのヒト腎臓から採取したコア生検とは独立に維持する。UNFXのエク
スビボによる(2)継代後、細胞を採取し、密度勾配法(実施例2のように)に供し、亜
画分B2、B3、および/またはB4を含む亜画分を生成する。
【0207】
表10.1にまとめたように、ヒト腎臓組織を非CKDおよびCKDヒトドナーから入
手した。図4は、HK17とHK19検体の病理組織学的特徴を示す。エクスビボ培養物
を全ての非CKD(3/3)およびCKD(5/5)腎臓から生成した。対象領域(RO
I)を規定するヒトNKA細胞のアルブミン輸送のハイコンテントアナリシス(HCA)
図5(ヒトNKA細胞中のアルブミン輸送のHCA)に示す。非CKDおよびCKD腎
臓由来NKA細胞のアルブミン輸送の定量比較を図6に示す。図6で認められるように、
アルブミン輸送は、CKD由来NKA培養物に易感染性ではない。尿細管富化B2および
尿細管細胞枯渇B4亜画分の間のマーカー発現の比較分析を図7(CK8/18/19)
に示す。
【0208】
尿細管富化B2および尿細管細胞枯渇B4亜画分の間の比較に基づくアルブミン輸送の
機能分析を図8に示す。亜画分B2が近位の尿細管細胞中で富化され、その結果、アルブ
ミン輸送機能の増加を示す。
【0209】
アルブミン取込:24ウエル、コラーゲンIVプレート(BD Biocoat(登録
商標))中で培養密度に成長させた細胞の培地を18~24時間の間、フェノールレッド
不含で、無血清の1X抗真菌性/抗生物質および2mMグルタミン含有低グルコースDM
EM(pr-/s-/lgDMEM)で置換した。アッセイ直前に、細胞を洗浄し、pr
-/s-/lgDMEM+10mM HEPES、2mMグルタミン、1.8mM Ca
Cl2、および1mM MgCl2を使って30分間インキュベートした。細胞を25μ
g/mLローダミンコンジュゲート化ウシアルブミン(Invitrogen)に30分
間暴露し、 氷冷PBSで洗浄してエンドサイトーシスを停止させ、25μg/mL H
oechst核染料含有2%パラホルムアルデヒドで直ちに固定した。阻害実験に対して
は、1μM受容体関連タンパク質(RAP)(Ray Biotech、Inc.、No
rcross GA)をアルブミン添加の10分前に添加した。BD Pathway(
登録商標)855ハイコンテントバイオイメージャー(Becton Dickinso
n)を用いて顕微鏡画像処理および分析を行った(Kelley et al.Am J
Physiol Renal Physiol.2010 Nov;299(5):F
1026-39.Epub Sep 8、2010、を参照)。
【0210】
結論として、HCAは、細胞レベルデータを与え、他のアッセイでは検出できない集団
動力学、すなわち遺伝子またはタンパク質発現を示すことができる。アルブミン輸送(H
CA-AT)機能の測定のための定量化可能なエクスビボHCAアッセイを利用して、ヒ
ト腎臓尿細管細胞をヒトNKAプロトタイプの成分として特徴付けることができる。HC
A-ATは、比較に基づく細胞機能の評価を可能とし、アルブミン輸送コンピテント細胞
がヒトCKD腎臓由来NKA培養物中に保持されることを示した。また、NKA培養物、
B2およびB4の特定の亜画分は、高められたアルブミン輸送活性を有する尿細管細胞富
化画分であるB2とは、表現型と機能が異なることも示された。ヒトCKD由来B2細胞
亜集団は、インビボでの効力を立証した(上述)げっ歯類B2細胞と表現型的に、また機
能的に類似である。
【0211】
実施例11-腎臓再生の予測因子としてのマーカー発現
この調査は、治療的生理活性1次腎臓細胞亜集団で処理した5/6腎摘出ラットにおける
腎臓再生の予測因子としての幹細胞および前駆細胞マーカー発現に関する。根底にあるN
KA処置が腎機能を改善するメカニズムは、特徴付けられつつある。NKA処置の作用機
序に関する我々の調査は、細胞-細胞シグナル伝達、生着、および線維化経路に関する。
本調査は、NKA処置が、-おそらく、動員腎臓幹細胞の動員による-器官固有の再生能
力をどのようしてに高めることができるかについてに焦点を絞った。我々は、NKA処置
5/6NXラットで観察された生存の延長および腎機能の改善は、特定の幹細胞マーカー
分子の発現に関連していると仮定する。
【0212】
この調査では、CKDラット5/6腎摘出術モデルを使い、分子アッセイを採用して特
定された、治療的生理活性1次腎臓細胞集団での直接注射に対し応答した、ラット5/6
腎摘出腎臓内の常在性幹細胞および前駆細胞の動員を評価する。この細胞ベース治療は、
主要幹細胞マーカーCD24、CD133、UTF1、SOX2、LEFTY1、および
NODALの転写物およびタンパク質の両方のレベルの上方制御に特異的に関連している
ことが観察された。上方制御は、注射の1週間後までに検出され、注射後12週までにピ
ークに達した。幹細胞および前駆細胞マーカーの活性化は、未処理腎摘出対照に比べて、
生存の増加と血清バイオマーカーの有意な改善に関連していた。
【0213】
材料および方法
ラット由来1次腎臓細胞集団の単離:前述のように、ラットから1次腎臓細胞集団の単離
を行った(Aboushwareb et al.、前出、2008;Presnell
et al.、2009 FASEB J 23:LB143)。
【0214】
インビボ調査の設計と分析:1次腎臓細胞集団の単離(Presnell et al
.Tissue Eng Part C Methods.2010 Oct 27.[
印刷板に先行のEpub版])および5/6腎摘出CKDげっ歯類モデルの1次腎臓細胞
亜集団の生理活性を評価したインビボ調査(Kelley et al.前出、2010
)の詳細記載。慢性腎疾患げっ歯類モデルにおいて、1次腎臓細胞の尿細管細胞富化亜集
団が、生存を改善し、腎臓機能を強化することは、別のところで報告した。この調査では
、ラット由来死体解剖時の組織を単離し、B2(NKA#1)またはB2+B4混合物(
NKA#2)で処置し、腎摘出(Nx)および疑似手術された非腎摘出ラット(対照)と
比較した。図9および11ならびに表11.1では、NKA#1とNKA#2処置ラット
由来のデータをプールした。毎週および死体解剖前に調査ラットから採取した血液検体の
分析により全身性データを得た。
【0215】
表11.1は、疑似手術処置動物(対照)、n=3を示す;nx対照(Nx)、n+3
;B2細胞(NKA#1)で処置した動物、n=7;B2+B4細胞(NKA#2);n
=7、に対する生存データを示す。調査の終了時点(23~24週)で、Nx動物のどれ
も残っていなかった。NKA処置動物は、未処置Nx対照に比較して、優れた生存割合で
あった。
【0216】
RNA単離、cDNA合成およびqRT-PCR:RNAを、最適切削温度(OCT)
凍結培地中に埋め込んだ組織から以下のようにして単離した:組織ブロックを室温下に置
き、OCT超過分を除き、次に、組織をPBS中に入れ、解凍させて、残されているOC
Tを取り除き、組織をPBSで3回洗浄した後、大まかに切断して、微量遠心チューブに
分注した。次に、分注組織を乳棒を使って微粉砕し、RNAをRNeasy Plus
Miniキット(Qiagen、Valencia CA)を使って、抽出した。RNA
の健全性を分光光度計を使って測定し、Super Script(登録商標)VILO
(登録商標)cDNA合成キット(Invitrogen、Carlsbad CA)を
使って、1.4μgに匹敵する多量のRNAからcDNAを生成した。cDNA合成後、
200μlのdiHO(脱イオン水)を添加し、最終容量を240μlにすることによ
り、各検体を1:6に希釈した。ABIのカタログにあるプライマーとプローブおよびA
BI-Prism7300リアルタイムPCRシステム(Applied Biosys
tems、Foster City CA)を使って、定量リアルタイムPCR(qRT
-PCR)により標的転写物の発現レベルを調査した。TaqMan(登録商標)Gen
e Expression Master Mix(ABI、Cat#4369016)
を使って増幅を行い、ペプチジルプロリル異性化酵素B(PPIB)を内在性対照として
利用した。qRT-PCR反応:10μl Master Mix(2X)、1μlプラ
イマーおよびプローブ(20X)、9μlcDNA、反応当たりの全容量:20μl。T
aqMan(登録商標)プライマーおよびプローブを使って、各反応を以下のように設定
した。
【0217】
ウェスタンブロット:OCT凍結培地に包埋した凍結全腎臓組織をタンパク質試料捕集
に利用した。上述のようにOCTを除き、50mMトリス(pH8.0)、120mM
NaCl、0.5%NP40、およびプロテアーゼ阻害剤混合物(Roche Appl
ied Science、Indianapolis IN)を含む緩衝液に揺動を加え
ながら室温で全組織の溶解を15分間行い、続けて、13,000RPMで10分間の遠
心分離を行った。全上清液を集め、タンパク質濃度をBradfordアッセイにより測
定した。検体当たり30μgのタンパク質を、NuPAGE(登録商標)Novex 1
0%Bis-Tris Gel(Invitrogen)の各ウエルに添加して、SDS
PAGE Gelを行った。ゲルを200Vで40分間、MES泳動バッファー(Inv
itrogen)中で電気泳動を行った。その後、タンパク質をI-Blotsyste
m(Invitrogen)を使ってニトロセルロース膜に移し、0.1%Tween-
20(TBS-T)(シグマ、St.Louis、MO)含有トリス緩衝食塩水中に溶解
した15mLの4%w/v低脂肪乳を使い、室温で2時間ブロッキングした。下記の抗体
(それぞれ、2%w/v低脂肪乳を含む5mL TBS-Tで希釈)で、膜を°室温下、
一晩検出した:(抗ヒトLefty-A LongおよびShort isoform(
R&D systems MAB7461);抗ヒト、マウスおよびラットCD133(
Abcam AB19898);抗ヒトおよびマウスUTF1(Millipore M
AB4337);抗ヒトNODAL(Abcam AB55676);抗ヒトおよびラッ
トCDH11(OBカドヘリン)(Thermo Scientific MA1-06
306);抗ラットCD24(Becton Dickinson))。膜を3回/各1
0分TBS-Tで洗浄し、次に、2%w/v低脂肪乳(1:60、000)を含むTBS
-Tで希釈した適切なHRPコンジュゲート二次抗体(Vector Labs PI-
2000;PI-1000)を使って、室温で1.5時間検出した。膜をTBS-Tで3
回/各10分洗浄し、続けて、diHOで10分の洗浄を2回行った。ブロットをEC
L Advance化学発光試薬(GE Healthcare Life Scien
ces、Piscataway NJ)を使って発色させ、ChemiDoc(登録商標
)XRS分子イメージャーおよびQuantity One(登録商標)ソフトウェア(
BioRad、Hercules CA)を使って可視化した。
【0218】
結果:5/6NXラットの常在性幹細胞および前駆細胞の動員を評価するための分子ア
ッセイを開発、使用して、NKA処置に対するこれらのマーカーの経時応答を調査した。
主要幹細胞マーカーCD24、CD133、UTF-1、SOX-2、LEFTY、およ
びNODALのmRNA転写物およびタンパク質両方のレベルの上方制御に特異的に関連
することが認められた。上方制御は、注射後1週までに検出され、注射後12週までにピ
ークに達した。幹細胞および前駆細胞マーカーの活性化は、未処置5/6NX対照動物に
比べて、生存の増加と血清バイオマーカーの有意な改善(すなわち、腎臓濾過の改善)に
関連していた。
【0219】
図9は、5/6NXラットのNKAによる処置後の宿主組織中のSOX2のmRNAの
発現を示す。SOX2mRNA発現の経時分析により、移植後12週までに、NKA処置
群でNx対照よりも1.8倍のSOX2 mRNAの増加が認められた。移植後24週ま
でに、Nx対照に比べNKA処置群でSOX2 mRNA発現の2.7倍の増加が観察さ
れた。(1週:対照(疑似)、Nx(対照)、および処置NKAに対し各n=3)(12
週:対照(疑似)およびNx(対照)に対しn=1;処置NKAに対しn=4)(24週
:対照(疑似)およびNx(対照)に対しn=1;処置NKAに対しn=4)。* は、p
値=0.023または0.05未満を示す。
【0220】
図10は、疑似対照(対照)、Nx対照(Nx)、およびラット処置NKA#1および
NKA#2の処置後1、12および24週でのCD24、CD133、UTF1、SOX
2、NODALおよびLEFTYの発現の経時変化を示すウェスタンブロットである。O
CT凍結培地に包埋した凍結全腎臓組織(各検体に対しN=1)をタンパク質試料捕集の
ために利用した。負荷された全質量のタンパク質によりレーンを正規化した。NKA処置
組織中のCD133、UTF1、NODAL、LEFTYおよびSOX2タンパク質レベ
ルを全ての時点で、対照またはNxラットに比較して、評価した。
【0221】
図11は、再生応答指数(RRI)の経時変化を示す。個別タンパク質発現の濃度測定
分析(図10)を使って、再生マーカータンパク質発現の定量的指数、または再生応答指
数(RRI)を生成した。バンド強度を各ウェスタンブロットから、ImageJv1.
4ソフトウェア(NIH)を使って計算し、値を各タンパク質の単位面積当たりに正規化
した。各時点に対するウェスタンブロット分析に使用した5つのマーカーを集計して、疑
似、Nx、およびNKA処置群に対し、平均強度を決定した。プロットは、1、12、お
よび24週の時点から生成される平滑化ラインフィットと共にXY散布図を示す。各群の
平均強度を時間に対してプロットし、幹細胞マーカータンパク質発現の宿主組織応答にお
ける傾向を強調した。各検体に対し同じ分散を仮定して、標準的な両側スチューデントt
-検定を使って統計的分析を行った。95%の信頼区間(p値<0.05)を使って、統
計的有意性を求めた(処置NKA群n=2;対照(疑似)群n=1;Nx(対照)群n=
1)。疑似対照動物では、RRIは、90.47から処理後24週の81.89まで、わ
ずかな減少のみ示す。対照的に、5/6Nx対照由来の腎臓は、基本的に逆の応答を示し
、処置後1週の82.26から動物の死亡時点である処置後18週の140.56までR
RIが増加する。NKA処置動物では、RRIは、処置後1週の62.89から処置後1
2週の135.61に急速に増加し、処置後24週までに112.61まで低下する。
【0222】
NKA処置は、幹細胞マーカーCD24、CD133、UTF-1、SOX-2および
NODALの宿主組織中の転写物およびタンパク質の両方のレベルの上方制御に関連して
いることが観察された。上方制御は、処置後1週までに検出され、処置後12週までにピ
ークに達した。宿主組織中の幹細胞および前駆細胞マーカーの全体活性化は、未処置腎摘
出対照に比べて、生存の増加(1)および臨床関連血清バイオマーカーの改善と関連して
いた。
【0223】
NKA処置に応答した常在性幹細胞および前駆細胞集団の動員は、損傷腎臓組織および
器官構造の再生による5/6NX動物の腎臓機能の回復に寄与する可能性がある。従って
、この調査で使用した分子アッセイは、CKDに対する生体組織工学および再生医学療法
を評価するための直接的で、迅速かつ予測的な再生結果アッセイを提供する可能性がある
【0224】
実施例12-マイクロRNA含有1次腎臓細胞由来エキソソーム
我々は、再生結果を得る機序を解明するためのインビボ調査の設計に繋げるために、特定
のエキソソーム由来miRNAと、標的細胞における機能的に関連した結果とをインビト
ロで関連付けるよう努めてきた。
【0225】
方法:馴化培地の再生治癒応答に関連したシグナル伝達経路に与える効果について、商
業的に利用可能は細胞:HK-2(ヒト近位尿細管細胞株)、1次ヒト腎臓糸球体間質細
胞(HRMC)、およびヒト臍帯内皮細胞(HUVEC)を使って調査を行った。ヒトお
よびラット1次腎臓細胞培養物(UNFX)由来馴化培地中のエキソソーム由来RNA含
有物を、既知miRNAを検出するように設計したPCRベースアレイにより選別した。
低酸素は、エキソソーム排出(shedding)に影響すると報告されている;そのた
め、培養群を、培地採集の前の24時間の間、低酸素(2%O)に暴露した。エキソソ
ームをFACSにより細胞性壊死組織片と分離した。
【0226】
図12は、UNFX馴化培地の調製と分析に対する模式図を示す。
【0227】
結果:UNFX馴化培地は、再生治癒応答に関連したシグナル伝達経路に影響すること
が明らかになった;これらの応答は、非馴化培地を使った対照では観察されなかった。特
に、NFκB(免疫応答)および上皮間葉転換(線維化応答)がHK-2細胞で低下し、
PAI-1(線維化応答)がHRMC細胞で低下し、さらに、血管新生がHUVECで促
進された。UNFX馴化培地由来エキソソーム含有物のPCRアレイ選別による予備的デ
ータは、UNFXがUNFX馴化培地に対する観察された応答と一致するmiRNA配列
を含むエキソソームを産生することを示している。
【0228】
図13A~Cは、UNFX培養物由来馴化培地が、再生結果に関連する可能性のある複
数の細胞プロセスにインビトロで影響することを示す。NFkBシグナル伝達は、腎疾患
のプロセスの主要炎症性メディエーターとして提案されており(Rangan et a
l.、2009.Front Biosci 12:3496-3522;Sanz e
t al.、2010.J Am Soc Nephrol 21:1254-1262
)、また、腫瘍壊死因子(TNF)により活性化されうる。HK-2細胞は、非馴化培地
(左)またはUNFX馴化培地(右)で、37℃、1時間プレインキュベートされ、その
後、10ng/mlのTNFαのある場合とない場合で活性化が行われた。
【0229】
図13Aは、UNFX馴化培地がNF-kBのTNF-α媒介活性化を弱めることを示
す。NFkB活性化は、RelA/p65免疫蛍光染色(緑)により測定した。Hoec
hst対比染色核(青)およびファロイジン染色繊維状アクチン(赤)がRelA/p6
5核局在化(白色矢印)の評価を容易にする。
【0230】
図13Bは、UNFX馴化培地が、HUVEC細胞培養物の血管新生促進作用を増やす
ことを示す。HUVEC細胞(ウエル当たり100,000個)を、0.5%BSA添加
培地200中に入れた重合マトリゲルの上に重ねて入れた。非馴化培地(左)またはUN
FX馴化培地(右)を添加し、細胞組織化応答を、画像キャプチャを使って3~6時間の
間、目視によりモニターした。細胞遊走(白色矢頭)、整列化(黒色矢頭)、尿細管形成
(赤色矢頭)、および閉じ多角形の形成(アスタリスク)の細胞組織化に対し印を付けた
。UNFX馴化培地は、非馴化培地に比べて、より多くの尿細管および閉じ多角形を誘導
し、培地中に血管新生促進因子が存在することを示唆している。
【0231】
図13Cは、UNFX馴化培地が、上皮細胞中の線維形成経路を弱めることを示す。H
K-2細胞は、インビトロで形質転換増殖因子(TGF)に暴露した場合、上皮の特性を
失い、間葉表現型を獲得し、腎臓の線維形成の進行に関連する上皮間葉転換(EMT)を
再現する(Zeisberg et al.2003Nat Med9:964-968
)。HK-2細胞を、非馴化培地(CTRL)、10ng/mlTGFβ1(TGFβ1
)含有非馴化培地、または10ng/mlTGFβ1(TGFβ1+CM)含有UNFX
馴化培地中で72時間培養した。細胞のCDH1(上皮のマーカー)、CNN1(間葉マ
ーカー)およびMYH11(間葉マーカー)を定量RT-PCRによりアッセイした。馴
化培地は、CDH1、CNN1、およびMYH11遺伝子発現により測定して、TGFβ
1誘導EMTの程度を低減させる。エラーバーは、3回の反復実験の平均標準誤差(SE
M)を表す。
【0232】
図13Dは、そのまま放置すれば、細胞外マトリックスタンパク質の進行性蓄積につな
がる可能性がある、TGFβ1およびプラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI-
1)により形成される陽性のフィードバックループを示す(Seo et al.、20
09.Am J Nephro l30:481-490)。
【0233】
図14A~Bは、糸球体間質細胞における線維形成経路の減弱を示す。対照(CTRL
)または5ng/mlTGFβ1の添加の有る場合(+)と無い場合(-)のUNFX馴
化培地(UNFX CM)中で、HRMCを24時間培養した。PAI-1のウェスタン
ブロット分析は、UNFX CMが、TGFβ1誘導PAI-1タンパク質レベルの増加
を弱めることを示す。β-アクチンは、ローディング・コントロールとして示される。ヒ
ト腎臓糸球体間質細胞(HRMC)は、5ng/ml TGFb1の存在下(+)、増加
したレベルのPAI-1を発現する。ヒト生理活性腎臓細胞由来馴化培地(CM)との共
培養は、TGFb1誘導されたPAI-1タンパク質発現を低下させる。mRNAレベル
でのPAI-1発現のCMによる変化は生じない(データは示さず)。
【0234】
図14Bは、ラット生理活性腎臓細胞由来CMには、培養HRMC誘導(+)および非
誘導(-)に与える、TGFb1と類似の効果があったことを示す。遠心分離後採集した
CM上清(枯渇ラットCM)は、PAI-1発現の低下に関し有効性が低く、PAI-1
タンパク質の観察された減弱化の原因のCM成分は、ラット生理活性腎臓細胞による小胞
分泌に関連している可能性があることを示唆している。
【0235】
図15は、UNFX由来馴化培地が、分泌小胞を含むことを示す。図15Aは、分泌小
胞(エキソソームを含む)を示し、これは、細胞質由来内部成分(緑)を包含する二相脂
質構造(赤)である。ホスファチジルセリン(青三角形)は、小胞生合成中に細胞外の空
隙中に暴露される膜の成分である(Thery et al.、2010.Nat Re
v Immunol 9:581-593)。
【0236】
PKH26およびCFSEは、それぞれ、分泌小胞の脂質膜および細胞質を標識し(A
liotta et al.、2010.Exp Hematol 38:233-24
5)、一方、アネキシンVはホスファチジルセリンに結合する。
【0237】
図15B~Cは、FACS選別を示す。UNFX馴化培地をPKH26、CFSE、お
よびAPCコンジュゲートアネキシンVで標識し、蛍光支援細胞選別(FACS)により
選別した。分泌小胞を表すトリプルポジティブ粒子を集め、トリゾール試薬を使って全体
RNAを抽出した。市販の利用可能なRT-PCRベースアレイを使って、既知の配列に
対しマイクロRNA含量物を選別した。
【0238】
表12.1は、治療結果が予想されるマイクロRNAを含む分泌小胞を示す。UNFX
細胞は、既知のmiRNA配列を含むエキソソームを放出する。UNFX馴化培地は、機
能的に関連するヒト細胞株の再生応答に影響を与える。検出miRNAと観察された再生
応答の間の原因と効果の関係は、鋭意調査中であるが、現在までに得られた結果から、U
NFX細胞が、miRNAの標的細胞と組織へのエキソソーム媒介輸送による治療に関連
するパラクリン効果をもたらす可能性があることが示唆される。
【0239】
このデータは、生理活性腎臓細胞培養由来分泌小胞が、TGFb1/PAI-1フィー
ドバックループにより誘導されるPAI-1を弱める成分を含むという結論を支持する。
【0240】
マイクロアレイおよびRT-PCR分析:Lewisラット由来未分画(UNFX)生
理活性腎臓細胞を、基本培地(DMEMおよびKSFMの50:50混合物;血清または
補充薬品なし)中で、低酸素条件(2%O2)下、24時間培養した。馴化培地を集め、
100,000xg、4℃、2時間の条件で超遠心分離を行い、分泌小胞(例えば、微小
胞、エキソソーム)をペレット化した。得られたペレットから全体RNAを抽出し、既知
マイクロRNA種に対し、リアルタイムRT-PCRによりアッセイした(ラットマイク
ロRNAゲノムV2.0PCRアレイ;Qiagen#MAR-100A)。下記のmi
RNAを検出可能である。
【0241】
実施例13-生理活性腎臓細胞由来パラクリン因子
この調査では、我々は、インビトロ細胞ベースアッセイを採用し、生理活性腎臓細胞がプ
ラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI-1)等のメディエーターにより線維形成
を調節できると思われるパラクリン機序を調査した。
【0242】
材料と方法:馴化培地を、生理活性腎臓細胞(Aboushwareb et al.
、World J Urol 26、295、2008;Presnell et al
.2010、前出)のラットおよびヒトの血清と補充物質不含条件の培養物から集め、イ
ンビトロアッセイに利用した。インビトロアッセイでは、市販品として利用可能なラット
およびヒト由来糸球体間質細胞を宿主応答組織の代用試薬として使った。理由は、糸球体
間質細胞は、傷害または病気の腎臓中のPAI-1産生のソースであるためである(Re
rolle et al.、Kidney Int 58、1841、2000.)。P
AI-1遺伝子およびタンパク質発現を、それぞれ、定量RT-PCRおよびウェスタン
ブロットでアッセイした。細胞により培地中に排出された小胞粒子(例えば、エキソソー
ム)を高速遠心分離により集め(Wang et al.、Nuc Acids Res
2010、1-12doi:10.1093/nar/gkq601、July 7、
2010)、トリゾール試薬(Invitrogen)を使って全RNAをペレットから
抽出した。小胞のRNA含有物を、既知のマイクロRNA配列のPCRベースアレイ(Q
iagen)を使って選別した。
【0243】
結果:生理活性腎臓細胞培養由来の馴化培地は、TGFβ1誘導による糸球体間質細胞
中のPAI-1定常状態タンパク質レベルの増加を弱めたが、定常状態mRNAレベルに
影響を与えなかった。これは、マイクロRNAが標的遺伝子を調節するという機序と一致
する観察であった。マイクロRNAが細胞外の小胞輸送により細胞間を移動できるという
仮説(Wang et al.、前出、2010)に基づき、我々は、馴化培地のマイク
ロRNA含有物を分析し、PAI-1阻害剤と推定されるマイクロRNA30b-5p(
miR-30b-5p)の存在を確認した。
【0244】
ここに提示のデータは、生理活性腎臓細胞が、エキソソーム経由miR-30b-5p
の標的糸球体間質細胞への細胞間移動により線維形成を直接調整できることを示唆してい
る。糸球体間質細胞によるmiR-30b-5p取込の結果として、定常状態PAI-1
タンパク質レベルでのTGFβ1誘導増加を弱め、腎臓組織において、最終的に糸球体の
空隙内の細胞外マトリックスの析出を減らす応答を弱める。現在、PAI-1が実際にm
iR-30b-5pを直接に標的にすることを確認するための調査が進行中である。
【0245】
図14A~Bは、対照(CTRL)またはTGFβ1の培地への添加のある場合(+)
と無い場合(-)の生理活性腎臓細胞馴化培地(CM)で24時間培養したヒト糸球体間
質細胞中のPAI-1とα-アクチン(対照)タンパク質発現のウェスタンブロットを示
す。CTRL培養では、TGFβ1がPAI-1タンパク質発現を増加させた。CM培養
では、TGFβ1-誘導応答が減弱した。
【0246】
分泌小胞について、PAI-1の推定抑制因子であるマイクロRNAを分析した。ヒト
およびラット生理活性腎臓細胞CM由来分泌小胞を高速遠心分離により集め、既知の配列
のPCRベースアレイを使って、マイクロRNA含有物をアッセイした。miR-449
a、PAI-1(6)の推定制御因子、を特定した。HRMCは、一時的にmiR-44
9aを形質移入したか、または形質移入しなかった(CTRL)。形質移入24時間後に
、細胞を、さらに24時間、5ng/ml TGFb1(+)に暴露するか、または暴露
しなかった(-)。
【0247】
図16Aは、総タンパク質を調製し、PAI-1とβ-アクチンをアッセイしたウェス
タンブロットを示す。miR-449aは、定常状態PAI-1タンパク質レベルを減ら
し(レーン1~レーン3を比較)、PAI-1タンパク質の誘導レベルもまた、miR-
449a形質移入培養物で低下した(レーン2~レーン4を比較)。このデータは、分泌
小胞がmiR-449aを含み、miR-449aの糸球体間質細胞中への取込は、PA
I-1発現を低下させるという結論を支持する。
【0248】
図16Bは、マイクロRNAであるmiR-30b-5pを示し、これも、PCRベー
スアレイで特定され、予測アルゴリズム(http://mirbase.org-mi
RBaseは、英国マンチェスター大学・生命工学部(Faculty of Life
Sciences)で運営、維持されている)に基づいたPAI-1の推定制御因子で
ある。
【0249】
糸球体中のPAI-1タンパク質レベルを、5/6腎摘出術により生理活性腎臓細胞で
誘導されたCKDの処置後、インビボで調査した。
【0250】
図17A~Cは、片側腎摘出術(A)、5/6腎摘出術(B)、または5/6腎摘出術
と生理活性腎臓細胞の腎臓内送達(C)を受けたLewisラット腎臓のPAI-1の代
表的免疫組織化学像(A~C)を示す。処置(C)の結果、5/6腎摘出術式(B)の結
果としての糸球体(矢頭)中のPAI-1の蓄積が減少した。
【0251】
別の調査では、死体解剖時に採取した腎臓組織に対しqRT-PCRを行い、相対的遺
伝子発現値を調査日数に対しプロットした。
【0252】
図17Dは、5/6腎摘出ラット(赤正方形)が、生理活性腎臓細胞(青菱形)および
偽手術された対照(緑三角形)で処置されたものに比べ、より強力なPAI-1の発現を
立証したことを示す。
【0253】
図17Eは、処置後3ヶ月および6ヶ月で採取された腎臓検体の代表的ウェスタンブロ
ット分析を示す。5/6腎摘出ラット(Nx)の処置組織(Nx+Tx)は、PAI-1
とフィブロネクチン(FN)タンパク質の蓄積が減少した(Kelley et al.
2010、前出)。
【0254】
このデータは、5/6腎摘出術により誘導されたCKDの生理活性腎臓細胞による処置
後、インビボで糸球体中のPAI-1タンパク質レベルが減少するという結論を支持する
【0255】
まとめると、実施例12~13は、生理活性腎臓細胞の腎臓内送達が腎機能を改善する
1つの機序は、常在性腎臓細胞の線維化経路を調節する成分の細胞間移動を経由する可能
性があるという仮説を支持する。
【0256】
実施例14-生理活性腎臓細胞由来分泌因子がNFκBシグナル伝達経路を弱める
この調査では、我々は、5/6腎摘出術モデルの疾患進行のNKA媒介減弱化におけるN
FκB経路の役割を調査し、また、NFκB活性化の直接調節による再生結果に対し寄与
できる生理活性腎臓細胞の特性を特定することを検討した。図17Gは、TNFαによる
NFkB経路の標準的活性化を示す。
【0257】
材料と方法:残遺物腎臓を、PBS中のB2+B4(NKAプロトタイプ)での処置の
6週前に2段5/6腎摘出術式を行ったLewisラットから採取した。NKA処置(T
X)または未処置(UNTX)組織に対し、免疫組織化学、RT-PCR、ウェスタンブ
ロット分析、および電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)によりNFκB活性化を
アッセイした。血清および補助剤不含培地中で成長させたエクスビボNKA細胞培養物か
ら集めた馴化培地(CM)をインビトロ機能性アッセイ用に使った。ヒトの近位尿細管細
胞株(HK-2)を、分子および免疫蛍光法ベースアッセイ読み取りのための標的細胞型
として使用した。細胞により培地中に排出された小胞粒子(エキソソーム)を高速遠心分
離により集めた。エキソソームから単離された全RNAを既知マイクロRNA配列のPC
Rベースアレイ(Qiagen)を使って選別した。
【0258】
結果:5/6腎摘出ラット由来残遺物腎臓中にNFκBサブユニット、RelA/p6
5の核局在化が観察され、UNTX組織中の炎症経路の活性化を示唆する。RT-PCR
によるTX組織との予備的比較により、RelA遺伝子発現の現象が示され、NKA処置
がRelA/p65発現の抑制を介してNFκB経路活性化に影響する可能性があること
が示唆された。この仮説は、CM腫瘍壊死因子α(TNFα)に対する応答に比べ、暴露
HK-2細胞中のRelA/p65の核局在化の低減(図17F)からも明らかなように
、CMがTNFα誘導NFκB活性化をインビトロで弱める観察により支持される。進行
中のNKAエキソソームマイクロRNAのRT-PCR分析では、NFκB経路に影響す
ることが既知の配列が存在するか否かを調査している。
【0259】
図17Fは、免疫蛍光アッセイで、NKACMに対する2時間暴露が、TNFαで前処
置された対照培養物中に比べ、HK-2中のNFκBp65(緑)の核局在化を減らすこ
とを示す。InHK-2では、NFkBp65(緑)は、TNFα(対照培地)への暴露
30分後、核に局在化する。しかし、HK-2細胞のNKA馴化培地によるTNFα添加
の前の2時間の前処置が、NFkBp65核局在化応答を弱めた。核をDAPI(青)で
染色し、繊維状アクチンをAlexa594-ファロイジン(赤)で染色して、NFκB
核局在化の強さの定性的評価を支援する(組み合わせパネル中最下段のTNFα処置対照
細胞の少し薄くなったファロイジン境界に注意されたい)。対比染色は、組み合わせ画像
中のNFkB局在化に対する基準を与える。
【0260】
Lewisラットの腎臓組織中のNFkBp65サブユニットの免疫組織化学は、5/
6腎摘出術(パネルB)により惹起された進行性CKDの動物では、対照動物(パネルA
)の片側腎摘出術により惹起された非進行性腎不全に比べて、より強力なNFkBp65
サブユニットの核局在化が、特に尿細管上皮細胞(黒の矢頭)中で起こることを示す。腎
摘出術後6週で採取した組織。倍率200X。
【0261】
パネルC:5/6腎摘出術を受けたLewisラット腎臓組織の細胞質(「C」)およ
び核(「N」)タンパク質抽出物中のNFkBp65のウェスタンブロット分析。チュー
ブリンレベル(ローディング・コントロール)が相対的に一定である1週と13週の比較
では、核のNFkBp65は、時間経過と共に増加し、免疫組織化学結果と一致する。
【0262】
パネルD:核抽出物の電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)により、5/6腎摘
出術後に核に局在化するNFkBは、DNA結合のために活性化されることが確認される
。レーンは、各時点で2つの動物から調製された核抽出物を表す。
【0263】
NFkB経路は、慢性腎疾患の5/6腎摘出術モデルにおいて徐々に活性化される。L
ewisラットの腎臓組織中のNFkBp65サブユニットの免疫組織化学分析を行った
【0264】
図18A~Dは、5/6腎摘出術(パネルB)により惹起された進行性CKDの動物で
は、対照動物(パネルA)の片側腎摘出術により惹起された非進行性腎不全に比べ、NF
kBp65サブユニットのより強い核局在化が、特に尿細管上皮細胞(黒色矢頭)中で、
発生することを示す。腎摘出術後6週に採取した組織。倍率200X。
【0265】
図18Cは、5/6腎摘出術を受けたLewisラット腎臓組織の細胞質(「C」)お
よび核(「N」)タンパク質抽出物中のNFkBp65のウェスタンブロット分析を示す
。チューブリンレベル(ローディング・コントロール)が相対的に一定である1週と13
週を比較すると、核のNFkBp65は、時間経過につれ増加し、免疫組織化学結果と一
致する。
【0266】
図18Dは、核抽出物の電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)を示し、5/6腎
摘出術後に核に局在化するNFkBは、DNA結合のために活性化されることが確認され
る。レーンは、各時点で2つの動物から調製された核抽出物を表す。1mgの核タンパク
質を5ngのNFkBDNA結合部位と共にインキュベートし、6%DNA遅延ゲルで電
気泳動を行い、続けて臭化エチジウムで染色した。
【0267】
NKA細胞の腎臓内送達がNFkB核局在化を減らす:複数の確定腎臓細胞亜集団を単
離し、CKDの5/6腎摘出術モデルの腎機能の改善におけるインビボで生理活性をアッ
セイした(Presnell et al.2010、前出)。NKA細胞は、生理活性
を示したが、一方、他の亜集団は生理活性を示さなかった(Kelley et al.
2010前出)。
【0268】
図18Eは、NKA(A)または非生理活性腎臓細胞(B)の腎臓内注射を受けた確定
CKDのLewisラットを示す。確定CKDのLewisラットは、NKA(A)また
は非生理活性腎臓細胞(B)の腎臓内注射を受けた。処置後6ヶ月で、組織を採取し、免
疫組織化学によりNFkBp65サブユニットをアッセイした。NKA処置動物由来組織
は、非生理活性腎臓細胞で処理した動物由来組織に比べ、より少ないNFkBp65の核
局在化を、特に近位尿細管中で示し、NKA処置がインビボでNFkB経路活性の低減に
寄与したことを示唆する。
【0269】
ヒトおよびラットNKA馴化培地から高速遠心分離で単離された分泌小胞の既知配列の
PCRベースアレイを使ったマイクロRNA含有物の分析により、NFkBを介して免疫
応答に影響を与えることができるいくつかのマイクロRNA種を、文献の報告(Marq
uez RT et al.(2010)Am J Physiol Gastroin
test Liver Physiol 298:G535;Taganov KD e
t al.(2006)Proc Natl Acad Sci USA 103:12
481)、または予測アルゴリズム(http://mirbase.org-miRB
aseは、英国マンチェスター大学・生命工学部(Faculty of Life S
ciences)で運営、維持されている)に基づいて特定した。
【0270】
インビボおよびインビトロ知見は、どのようにして、生理活性腎臓細胞(NKA)が、
免疫応答経路、例えば、NFkB活性化により影響を受けた経路を調節することにより慢
性疾患腎臓の腎機能を改善できるかに関する洞察を与える。活性化NFkB(p65核局
在化、特に近位尿細管細胞中で)は、5/6腎摘出術げっ歯類モデルの慢性腎疾患の形成
に関連し、NKA処置により弱められる。近位尿細管細胞(HK-2)のNKA馴化培地
に対するインビトロ応答は、NKA処置に応答したNFkB核局在化のインビボ減弱化を
模倣する。NFkB活性化に対する細胞間抑制の推定メディエーター(マイクロRNA)
がNKA馴化培地中で特定された。まとめると、これらのデータは、生理活性腎臓細胞の
腎臓内送達が腎機能を改善する1つの機序は、常在性腎臓細胞の免疫応答を調節する成分
、例えば、RNAの細胞間移動を経由している可能性があるという仮説を支持する。
【0271】
実施例15-NKA構築物の機能評価
ゼラチンまたはHAベースヒドロゲル上に播種した腎臓細胞集団は生存可能であり、トラ
ンスクリプトーム、プロテオミクス、セクレトームおよび共焦点免疫蛍光法アッセイによ
り測定して、3日間のインビトロ成熟の間、尿細管上皮機能性表現型を維持した。NKA
構築物が疾患状態に影響する可能性のある機序を調べるため、CKD進行に付随する尿細
管間質性線維形成に関係するTGF-βシグナル伝達経路に対する馴化培地の効果を評価
した。馴化培地は、ヒト近位尿細管細胞株(HK2)中でのインビトロTGF-β-誘導
上皮間葉転換(EMT)を弱めることが観察された。
【0272】
材料と方法
生体材料:生体材料を、ビーズ(同種構成の球形状)として、または粒子(ギザギザの縁
のある異種起源集団)として、調製した。Percell Biolytica(Åst
orp、スエーデン)により製造されたゼラチンビーズ(Cultispher Sおよ
びCultispher GL)をそれぞれ、Sigma-Aldrich(St.Lo
uis、MO)およびFisher Scientific(Pittsburgh、P
A)から購入した。架橋HAおよびHA/ゼラチン(Glycosan BioSyst
ems、Salt Lake City、UTからのHyStem(登録商標)およびE
xtracel(登録商標))粒子を、メーカーのインストラクションに従って作成した
凍結乾燥スポンジから形成した。ゼラチン(Sigma)粒子を架橋、凍結乾燥スポンジ
から形成した。
【0273】
PCLをSigma-Aldrich(St.Louis、MO)から購入した。PL
GA50:50をDurect Corp.(Pelham、AL)から購入した。PC
LおよびPLGAビーズを修飾二重エマルジョン(W/O/W)溶媒抽出法を使って調製
した。PLGA粒子を、溶媒キャスト・孔物質溶出(solvent casting
porogen leaching)技術を使って調製した。全ビーズおよび粒子は、ド
ライ状態で測定した場合、65~355μmの間であった。
【0274】
細胞の単離、調製および培養:研究目的のためのヒト組織の使用を管理する全てのNI
Hガイドラインを順守して、死体ヒト腎臓をNational Disease Res
earch Institute(NDRI)から入手した。イヌの腎臓を契約研究機関
(Integra)から入手した。ラット腎臓(21日齢Lewis)をCharles
River Labs(MI)から入手した。 1次腎臓細胞集団(UNFX)および
全ラット、イヌおよびヒト腎臓由来の確定亜集団(B2)の調製については、以前記載し
た(Aboushwareb et al.World J Urol 26(4):2
95-300;2008;Kelley et al.前出、2010;Presnel
l et al.WO/2010/056328)。簡単に述べると、腎臓組織を 4.
0ユニット/mLディスパーゼ(Stem Cell Technologies、In
c.、Vancouver BC、Canada)および300ユニット/mlコラゲナ
ーゼIV(Worthington Biochemical、Lakewood NJ
)を含む緩衝液中で酵素により解離させ、次に、赤血球および壊死組織片を15%イオジ
キサノール(Optiprep(登録商標)、Axis Shield、Norton、
MA)を使って遠心分離により取り除き、UNFXを得た。UNFX細胞を組織培養物処
理ポリスチレンプレート(NUNC、Rochester NY)上に播種し、50:5
0培地、高グルコースDMEM:5%FBS、2.5μgEGF、25mgBPE、1X
ITS(インスリン/トランスフェリン/亜セレン酸ナトリウム培地補充剤)、および
抗生物質/抗真菌剤(全てInvitrogen、Carlsbad CAから入手)含
有ケラチノサイト無血清培地(KSFM)の1:1混合物中で培養した。B2細胞を、U
NFX培養物から遠心分離により、げっ歯類(16%、13%、11%、および7%)、
イヌ(16%、11%、10%、および7%)、またはヒト(16%、11%、9%、お
よび7%)用に特別に層別化した4段イオジキサノール(OptiPrep;非補充KS
FM中60%w/v)密度勾配を使って単離した(Presnell et al.国際
公開第2010/056328号;Kelley et al.、前出、2010)。勾
配を800xgで20分間、室温で遠心分離した(ブレーキ無し)。対象のバンドをピペ
ットで取り出し、無菌の燐酸塩緩衝食塩水(PBS)で2回洗浄した。
【0275】
細胞/生体材料複合体(NKA構築物):生体材料上での細胞機能のインビトロ分析の
ために、均一層の生体材料(上述のように調製された)を、6ウエル低接着性プレートの
1つのウエル上に重ねた(Costar #3471、Corning)。ヒトUNFX
またはB2細胞(ウエル当たり2.5x10)を生体材料上に直接播種した。イヌの細
胞の生体材料への付着性を調べるために、2.5x10のUNFX細胞を、非接着性2
4ウエルプレート(Costar #3473、Corning)中の50μlの圧縮容
積(packed volume)の生体材料に播種した。ロッキングプラットフォーム
上で4時間経過後、イヌのNKA構築物を37℃の5%COインキュベーター中で一晩
成熟させた。翌日、生死染色アッセイキット(Invitrogen)を使い、メーカー
のインストラクションに従って生死染色を行った。ラットNKA構築物を60ccシリン
ジ中で、ローラーボトル回転装置を使って1RPMの回転速度で調製した。
【0276】
下記のトランスクリプトーム、セクレトーム、およびプロテオミクス分析のために、N
KA構築物を3日間成熟させた。その後、細胞をトランスクリプトームまたはプロテオミ
クス分析用に採取し、馴化培地をセクレトームプロファイリング用に集めた。
【0277】
尿細管細胞関連酵素活性の機能分析:24ウエルプレートに入れたイヌのNKA構築物
(10μlの緩い圧縮容積)を前に報告の方法(Tate et al.Methods
Enzymo l113:400-419;1985)から改良したロイシンアミノペ
プチダーゼ(LAP)活性用のアッセイを使って評価した。簡単に述べると、0.5ml
のPBS中の0.3mML-ロイシンp-ニトロアニリド(Sigma)を室温で1時間
かけてNKA構築物に添加する。ウエルを二通りに検体採取し、405nmの吸光度をL
AP活性の測定値として記録した。LLC-PK1細胞ライセート(アメリカ合衆国培養
細胞系統保存機関(ATCC))を陽性対照とした。
【0278】
トランスクリプトームプロファイリング:RNeasy Plus Miniキット(
Qiagen、CA)を使ってポリアデニル化RNAを抽出した。濃度と健全性をUV分
光光度法により測定した。SuperScript VILO cDNA合成キット(I
nvitrogen)を使って、1.4μgの単離RNAからcDNAを生成した。市販
品で利用可能なプライマーおよびプローブ(表15.1)、ならびに、ABI-Pris
m7300 Real Time PCR System(Applied Biosy
stems、CA)を使って、標的転写物の発現レベルを定量リアルタイムポリメラーゼ
連鎖反応(qRT-PCR)により調査した。TaqMan Gene Express
ion Master Mix(ABI、Cat #4369016)および内在性対照
としての役目をするTATA ボックス結合タンパク質遺伝子(TBP)を使って、増幅
を行った。各反応は、10μl Master Mix(2X)、1μl プライマーお
よびプローブ(20X)ならびに、9μl cDNAから構成される。試料を3回反応さ
せた。
【0279】
セクレトームプロファイリング:ヒトNKA構築物由来馴化培地を集め、-80℃で凍
結した。検体のバイオマーカー濃度定量化による評価を行った。馴化培地中の所与のバイ
オマーカー濃度の結果を対照培養物(生体材料の無い場合の2D培養物)由来の馴化培地
中の同じバイオマーカーの濃度に対して正規化し、単位のない比率として表した。
【0280】
プロテオミクスプロファイリング:3つの独立した複写物を細胞/生体材料複合体から
タンパク質を抽出し、2Dゲル電気泳動法による分析用としてプールした。全試薬は、I
nvitrogenから入手した。200μlのZOOM 2Dタンパク質溶解剤#1(
Cat# ZS10001)に再懸濁した30μgのタンパク質、ZOOM両性電解質担
体pH4~7(Cat# ZM0022)、および2M DTT(Cat# 15508
-013)をpH4~7 ZOOM IEFストリップ(Cat# ZM0012)に加
えて等電点電気泳動(IEF)を行った。500Vで18時間の電気泳動後、SDS-P
AGE分離のために、IEFストリップをNuPAGE Novex 4~12% Bi
s-Tris ZOOM IPGウエルゲル(Cat# NP0330BOX)にロード
し、200Vで45分間、MES緩衝液(Cat#NP0002)中で電気泳動を行った
。タンパク質を、SYPRO Rubyタンパク質ゲル染色(Cat# S-12000
)を使い、メーカーのインストラクションに従って可視化した。
【0281】
共焦点顕微鏡観察:ヒトもしくはラットUNFXまたはB2細胞から調製したNKA構
築物を3日間成熟させ、その後、2%パラホルムアルデヒドで30分間固定した。固定さ
れたNKA構築物をブロッキングし、D-PBS(Invitrogen)+0.2%ト
リトンX-100(Sigma)中の10%ヤギ血清(Invitrogen)を用いて
室温(RT)で1時間のインキュベーションにより透過処理した。免疫蛍光法に対しては
、NKA構築物を、室温下、5μg/mlの最終濃度で一晩、一次抗体(表15.2)で
標識した。標識NKA構築物を2%ヤギ血清/D-PBS+0/2%トリトンX-100
で2回洗浄し、5μg/mlの濃度のヤギまたはウサギTRITCコンジュゲート抗マウ
スIgG2A(Invitrogen)二次抗体と共にインキュベートした。DBA(ド
リコス豆凝集素)によるに二重標識に対しては、NKA構築物候補を、2%ヤギ血清/D
-PBS+0.2%トリトンX-100中で2mg/mlの濃度に室温で2時間希釈した
FITCコンジュゲートDBA(Vector Labs)と共にさらにインキュベート
した。
【0282】
検体をD-PBSで2回洗浄し、LSM Imageソフトウェア(Zeiss)また
はPathway 855共焦点顕微鏡(BD Biosciences)を利用したZ
eiss LSM510レーザー走査共焦点システム(Cellular Imagin
g Core、Wake Forest Baptist Medical Cente
r)、を使って、光学的に薄片を作った。
【0283】
HK2細胞中のTGF-β媒介EMTの分析:フィブロネクチンまたはコラーゲン(I
V)コート培養皿(BD Biosciences)に入れた50:50培地中でHK2
細胞(ATCC)を培養した。EMTアッセイに対しては、50:50培地または2次元
(2D)ヒトUNFX培養物から、もしくは培地採取の前2日間熟成したヒトUNFXで
作ったNKA構築物から集めた馴化培地と共に、HK2細胞を24ウエルコラーゲン(I
V)コートプレートに70~80%の培養密度で播種した。EMTアッセイ用細胞からの
RNAの単離の前に、10ng/mlを3日間培地に加えることによりTGF-β誘導を
惹起した。3日間のインキュベーション期間の終わりに、E-カドヘリンの相対的発現(
上皮マーカー)およびカルポニン(間葉マーカー)をqRT-PCRで分析することによ
り、EMTをモニターした。採取したHK2細胞から、TaqMan qRT-PCR分
析用RNAを上述のように調製した。各検体の等分散を仮定して、標準的両側スチューデ
ントt検定を使って、統計的分析を行った。95%(p値<0.05)および99%(p
値<0.01)の信頼区間を使用して統計的有意性を求めた。
【0284】
無細胞生体材料およびNKA構築物のインビボ移植:Lewisラット(6~8週齢)
をCharles River(Kalamazoo、MI)から購入した。全実験工程
をCarolinas Medical CenterのPHSとIACUCガイドライ
ンに従って、実施した。イソフルラン麻酔下で、雌Lewisラット(約2~3月齢)に
正中切開を行い、左腎臓を露出させた。35μlの圧縮生体材料(無細胞の生体材料また
はNKA構築物)を微量注入により腎実質中に導入した。2つの注射経路を使用した:(
i)各極から皮質の方向へ(皮質注射と呼ぶ)、または(ii)腎臓正中から骨盤の方向
へ(髄質注射と呼ぶ)。注射後1、4、または8週でラットを屠殺した。早期死は発生し
なかった。無細胞移植調査の調査計画を表15.3に示す(ND=実施せず(not d
one))。
【0285】
腎臓組織:代表的腎臓検体を集め、10%緩衝液ホルマリン中に24時間置いた。徐増
濃度のエタノール中で切片を脱水し、パラフィン中に包埋した。切片(5μm)を切りだ
し、帯電スライド上に置き、標準的染色プロトコル(Prophet et al.、A
rmed Forces Institute of Pathology:組織工学に
おける実験室的手法(Laboratory methods in histotec
hnology).Washington、DC:American Registry
of Pathology;1992)に従って、ヘマトキシリンとエオシン(H&E
)染色、Massonのトリクローム染色および過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色処理を
行った。Digital Sight(DS-U1)カメラを備えたNikon Ecl
ipse 50i顕微鏡を使ってx40、x100およびx400の全倍率のディジタル
マイクロ写真をキャプチャした。腎臓形態学変化を通常使われる(Shackelfor
d et al.Toxicol Pathol 30(1):93-96;2002)
重症度グレード体系(グレード1、2、3、4)により評価し、これに対し、記述用の用
語(最小、軽度、中等度、重度/重篤)を適用して、観察された糸球体硬化症、尿細管萎
縮症および拡張症、尿細管円柱、および間質性線維症、ならびに炎症の程度を記載した。
【0286】
結果
生体材料の腎実質中への注射に対する哺乳類腎臓組織の応答:健康なラット腎臓への直接
注射により、生体材料の腎臓細胞/生体材料複合体としての使用の可能性を分析した(表
15.3)。組織応答を、注射後1および4週目の病理組織学パラメーター(炎症、線維
形成、壊死、石灰化/鉱質化)および生体適合性パラメーター(生体材料分解、新血管新
生、および新組織形成)の程度を測定することにより評価した。
【0287】
図19A~Bは、移植後1週目の生体材料のインビボ評価を示す。トリクロームX10
:生体材料凝集体を示す腎臓断面の低倍率像。トリクロームX40:生体材料凝集体の拡
大像。H&EX400:細胞/組織浸潤の程度を評価するための生体材料凝集体高倍率像
。材料と方法のところで記載するように、各腎臓の2つの部位で注射した。移植後1週目
では、各試験生体材料により誘導された宿主組織応答は、通常、類似であったが、ゼラチ
ンヒドロゲルは、より少ない程度の病理組織学的応答、およびより多い生体適合性応答を
誘発するように思われた。
【0288】
図19Cは、移植後4週目の生体材料のインビボ評価を示す。移植後4週目で、HAま
たはゼラチン粒子を注射した組織の病理組織学パラメーターの重症度は、移植後1週目に
比べて、定性的に減少した。ゼラチン粒子は、ほぼ完全に再吸収され、HA粒子を受けた
組織の場合より少ない巨細胞反応が観察された。大抵のケースで、生体材料が髄質注射経
路で注射された場合(例えば、髄質/骨盤中へより深く)、水腎症の原因となる閉塞、よ
り高い重症度の炎症反応、および梗塞の原因となる腎臓細動脈と毛細管微小塞栓、等の望
ましくない結果が観察された(データは示さず)。
【0289】
治療に関連のある生体材料を含む腎臓細胞集団の機能表現型の評価:腎実質への直接注
射後の慢性腎疾患のげっ歯類モデルで、生存を延長し、腎機能を高める治療に関連のある
腎臓細胞集団(UNFX)を特徴づけ(Presnell et al.国際公開第20
10/056328号;Kelley et al.前出、2010)、それらの単離、
キャラクタリゼーション、および増殖の方法を開発し、複数の種間へ適用した(Pres
nell et al.2010、前出)。NKA構築物に組み込まれた場合、優先的に
尿細管、上皮表現型に付着するのか、生存可能なそれらのまま残るのか、およびそれらを
保持するのかどうかを判断するために、UNFX細胞および種々の生体材料から産生した
NKA構築物に対し、トランスクリプトーム、セクレトーム、プロテオミクス、および共
焦点免疫蛍光法顕微鏡分析を行った。
【0290】
付着性および生存率:イヌの由来UNFX細胞をゼラチンビーズ、PCLビーズ、PL
GAビーズ、HA粒子、およびHA/ゼラチン粒子と共に記載したように(生体材料当た
り3NKA構築物)播種した。播種の1日後、細胞分布および生存率を生死染色により評
価した。
【0291】
図20A~Dは、イヌのUNFX細胞を播種したNKA構築物の生死染色を示す(A=
ゼラチンビーズ;B=PCLビーズ;C=HA/ゼラチン粒子;D=HA粒子)。緑は生
細胞を示す;赤は死細胞を示す。(A)ゼラチンビーズ;(B)PCLビーズ;(C)H
A/ゼラチン粒子;および(D)HA粒子。生存可能な細胞は、全ヒドロゲルベースNK
A構築物で観察されうる。
【0292】
UNFX細胞は、天然由来ヒドロゲルベース生体材料、例えば、ゼラチンビーズおよび
HA/ゼラチン粒子(A、Dの黒色矢印)に強く付着したが、合成PCL(B)またはP
LGAビーズには最小の付着性を示した(データは示さず)。細胞は、HA粒子(C)に
付着しなかったが、生物学的応答の証拠(すなわち、スフェロイド形成)が認められた。
ヒドロゲルベースNKA構築物上での播種UNFX細胞の機能生存率をロイシンアミノペ
プチダーゼ、近位尿細管関連加水分解酵素をアッセイすることにより確認した(データは
示さず)。
【0293】
トランスクリプトームプロファイリング:ヒドロゲルベースNKA構築物(生体材料当
たり3NKA構築物)およびUNFX細胞のパラレル2D培養物中でのヒトUNFX細胞
の遺伝子発現プロファイルを定量トランスクリプトーム分析により比較した。
【0294】
図20E~Gは、NKA構築物のトランスクリプトームプロファイリングを示す。TC
:2D培養した1次ヒトUNFX細胞。ゼラチン:ヒトUNFX細胞とゼラチンヒドロゲ
ルから構成されるNKA構築物。HAゲル:ヒトUNFX細胞とHA/ゼラチン粒子から
構成されるNKA構築物。qRT-PCRデータをグラフと表フォーマットで示した。調
査した転写物は、4つの主要カテゴリーに分けられる:(i)尿細管:アクアポリン2(
AQ2)、E-カドヘリン(ECAD)、エリスロポエチン(EPO)、N-カドヘリン
(NCAD)、チトクロムP450、ファミリー24、サブファミリーA、ポリペプチド
1-別名;ビタミンD24-ヒドロキシラーゼ(CYP)、キュビリン、ネフリン;(i
i)間葉:カルポニン(CNN1)、平滑筋ミオシン重鎖(SMMHC);(iii)
:血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、血小板内皮細胞付着分子(PECAM);およ
び(iv)糸球体:ポドシン。全体として、尿細管マーカー発現は、ヒドロゲルベースN
KA構築物と2D UNFX培養物の間で同程度であった。同様に、内皮マーカー(VE
GFとPECAM)波動程度であった。対照的に、糸球体マーカーポドシンは、NKA構
築物の間で有意な差異を示した。HA/ゼラチンベースNKA構築物中のポドシンレベル
は、2D UNFX培養物で観察されたレベルに極めて類似していた。興味深いことには
、間葉マーカー(CNN1とSMMHC)発現は、2D UNFX培養物に比べて、ヒド
ロゲルベースNKA構築物中で、有意に下方制御され(p<0.05)、腎臓培地配合物
中のヒドロゲルベースNKA構築物の場合と同様に、UNFXの線維芽細胞亜集団は増殖
できないことが示唆される。
【0295】
セクレトームプロファイリング:ヒトUNFXおよびB2細胞ならびにゼラチンまたは
HA/ゼラチンヒドロゲルを使ってNKA構築物を産生した(細胞型当たり、生体材料当
たり、1NKA構築物=全体で4NKA構築物)。
【0296】
図21A~Bは、NKA構築物のセクレトームプロファイリングを示す。データは、3
D:2D比率として提示している。材料と方法に記載のように、ヒトUNFXまたはB2
細胞およびゼラチン(ヒドロゲル1)またはHA/ゼラチン(ヒドロゲル2)ヒドロゲル
からNKA構築物を産生した。セクレトームプロファイリングを、3日間熟成したNKA
構築物由来馴化培地に対し行い、NKA構築物(3次元、すなわち3D、培養)の分析物
発現の2D培養物に対する比率(3D:2D比率)を計算することにより、ヒトUNFX
またはB2細胞のパラレル2D培養物と比較した。UNFX細胞で播種した3つのNKA
構築物のそれぞれで、3D:2D比率は、1であるか、または1に近く、これらの生体材
料上の播種工程および3日間の成熟は、UNFX細胞のセクレトームプロファイルに、ほ
とんど影響しなかったことを示唆している。B2細胞を播種したNKA構築物に対しては
、3D:2D比率が1または1に近いという類似の結果が観察され、これらの生体材料上
の播種工程および3日間の成熟は、治療に関連する腎臓細胞のセクレトームプロファイル
には、ほとんど影響を与えなかったという追加の証明を提供する。
【0297】
プロテオミクスプロファイリング:所与の細胞または組織のプロテオミクスプロファイ
ルが2Dゲル電気泳動法を使って全体細胞タンパク質を分離することにより作成され、腎
疾患に関連する特異的バイオマーカーを特定するために使用されてきた(Vidal e
t al.Clin Sci(Lond)109(5):421-430;2005)。
【0298】
図22A~Bは、NKA構築物のプロテオミクスプロファイリングを示す。NKA構築
物を、示したように、ヒトUNFX細胞および生体材料を使って産生した。総タンパク質
量抽出物中のタンパク質を、材料と方法に記載されるように、2Dゲル電気泳動法により
分離した。この実験では、プロテオミクスプロファイリングを使って、NKA構築物(ゼ
ラチンまたはHA/ゼラチンヒドロゲルベース、生体材料当たり3NKA構築物)および
2D組織培養物中のヒトUNFX細胞におけるタンパク質発現を比較した。NKA構築物
またはUNFX細胞の2D培養物から単離された総タンパク質量のプロテオームプロファ
イルは、基本的に、同じであり、これらの生体材料上の播種工程および3日間の成熟は、
UNFX細胞により発現されたプロテオームには、ほとんど影響を与えなかったという追
加の証明を提供する。
【0299】
共焦点顕微鏡観察:NKA構築物中のラットおよびヒトB2細胞(Presnell
et al.2010、前出)の尿細管上皮表現型の保持を、確立したバイオマーカーの
共焦点画像処理により評価した:図23A~Cは、NKA構築物共焦点顕微鏡像を示す。
ヒト(A)またはラット(B、C)B2細胞およびゼラチンヒドロゲルを使って産生され
たNKA構築物の共焦点顕微鏡像。(A)E-カドヘリン(赤-中実白色矢印)、DBA
(緑-点線緑矢印)およびゼラチンヒドロゲルビーズは、DIC光学を使って可視化され
る。(B)DAPI染色により可視化されたDNA(青-中実白色矢印)および次のそれ
ぞれ緑色のマーカー(点線白色矢印):IgG対照、N-カドヘリン、E-カドヘリン、
サイトケラチン8/18/18、DBA。(C)マーカーの二重標識像および色表示。ヒ
トNKA構築物中のE-カドヘリンおよびDBA、ならびに、ラットNKA構築物中のE
-カドヘリン、DBA、N-カドヘリン、サイトケラチン8/18/19、ガンマグルタ
ミルトランスペプチダーゼ(GGT-1)、およびメガリン。共焦点像の光学的切片作成
により、また、播種および3日間の成熟後の生体材料中への細胞浸潤の程度の評価が可能
となる。ヒトおよびラットNKA構築物中のB2細胞は、複数の尿細管上皮マーカーの発
現を示した。光学的切片は、ヒドロゲル構築物の最小の細胞浸潤を示し、細胞は、通常生
体材料の表面に限定されていた。
【0300】
NKA構築物プロトタイプの移植に対するインビボ応答:腎実質への生体材料の注射に
対するインビボ応答、ならびに、上述のNKA構築物中のUNFXおよびB2細胞のイン
ビトロ表現型および機能キャラクタリゼーションに基づいて、ゼラチンヒドロゲルを選択
して、健康なLewisラットにおける腎実質へのNKA構築物の注射に対するインビボ
応答を評価した。NKA構築物を同系B2細胞から産生し、2匹の動物へ移植した。これ
らの動物は、移植後1、4、および8週で屠殺した。全動物が腎臓組織切片の採取予定の
死体解剖時まで生存し、切片作成を行って、トリクローム、ヘマトキシリンおよびエオシ
ン(H&E)、ならびに過ヨウ素酸シッフ(PAS)で染色した。
【0301】
図24A~Bは、移植後1および4週目のNKA構築物のインビボ評価を示す。トリク
ロームX10:生体材料凝集体を示す腎臓断面の低倍率像。トリクロームX40:生体材
料凝集体の拡大像。H&E/PAS X400:細胞/組織浸潤の程度を評価するための
生体材料凝集体の高倍率像。各腎臓は、材料と方法で記載のように、2つの部位に注射さ
れた。
【0302】
図24Aは、移植後1週目のNKA構築物のインビボ評価を示す。注射後1週目で、ゼ
ラチンビーズは、好塩基性染色した球状で多孔性の材料の局所的凝集体として存在し(左
パネル、丸で囲んだ領域)、多くの血管結合組織および食細胞の多核マクロファージや巨
細胞に取り囲まれていた。血管結合組織を、ビーズ内に組み込み、新腎臓組織形成を示す
尿細管上皮成分を提示した。さらに、尿細管および血管糸球体(vasculoglom
erular)構造を形態学により特定した(PASパネル)。
【0303】
図24Bは、移植後4週目のNKA構築物のインビボ評価を示す。注射後4週までに、
ヒドロゲルは完全に再吸収され、空隙は進行性腎臓再生および最小の線維形成を伴う修復
により置換された(4週トリクロームパネル中の円で囲んだ領域内の多数の機能性尿細管
に注意されたい)。
【0304】
図25A~Dは、移植後8週目のNKA構築物のインビボ評価を示す。トリクロームX
10:生体材料凝集体を示す腎臓断面の低倍率像。トリクロームX40:生体材料凝集体
の拡大像。H&E/PASX400:細胞/組織浸潤の程度の評価のための生体材料凝集
体高倍率像。(A)中等度の慢性炎症(マクロファージ、血漿細胞およびリンパ球)、顕
著な血管結合組織応答(Massonのトリクロームによる青色染色-黒色矢印)を伴う
中程度の数のヘモジデリン沈着マクロファージ(注射による慢性出血);(B)新腎臓組
織形成と一致する再生応答誘導を示す(A)のボックスで囲んだ領域のさらに高い倍率(
トリクローム染色、x400)(C)近接(正常な)腎実質の代表例で、典型的皮質糸球
体形態HEを示す、x400);(D)HE染色切片、x400 処置領域で観察された
新糸球体形態vs.図154Cの比較。
【0305】
図25A~Dは、移植後8週目のNKA構築物のインビボ評価を示す。移植後8週目で
、腎形成における初期のイベントの誘導と同じ新腎臓様組織形成の証拠が観察された。再
生誘導(B、D)の領域と近接皮質実質(C)の比較により、複数のS-形状体および新
規形成糸球体の存在が示された。
【0306】
NKA構築物由来馴化培地のHK2細胞中のTGF-β誘導EMTに与える効果:CK
Dの進行の間の尿細管間質性線維形成の発生は、尿細管上皮細胞のTGF-β媒介EMT
と関連がある(Zeisberg et al.Am J Pathol 160(6)
:2001-2008;2002)。また、進行性CKDのげっ歯類モデルにおいて、T
GF-β経路の減弱化がインビボで観察され、UNFXおよびB2細胞を使った処置によ
り生存が延長され、腎機能が改善された(Presnell et al.国際公開第2
010/056328号)。ヒト近位尿細管細胞株HK2は、TGF-β誘導EMTに対
する小分子またはタンパク質の刺激または阻害効果を試験するためのインビトロモデルシ
ステムとして充分確立されている(Dudas et al.Nephrol Dial
Transplant 24(5):1406-1416;2009;Hills e
t al.Am J Physiol Renal Physiol 296(3):F
614-621;2009)。移植後腎臓組織応答に対するNKA構築物の影響に関する
可能な機序を検討するために、UNFX細胞とヒドロゲルから産生したNKA構築物から
集めた馴化培地をHK2EMTアッセイシステムで評価した。
【0307】
図26は、NKA構築物由来の馴化培地がHK2細胞中のTGF-β誘導EMTをイン
ビトロで弱めることを示す。ECAD(上皮)およびCNN1(間葉)マーカーの相対発
現を定量化することによりEMTをモニターした。表示のように、50:50培地(対照
およびTGFB対照検体)またはヒトUNFX細胞(TC)もしくはヒトUNFX細胞の
2D培養物およびゼラチンもしくはHA/ゼラチンから産生されたNKA構築物由来の馴
化培地(CM)中でHK2細胞を培養した。EMTを誘導するために、10ng/mlT
GF-βをアッセイ前の3日間、各検体(対照を除く)に添加した。HK2細胞を50:
50培地(対照)中で培養した場合、CNN1(間葉マーカー)より高レベルでECAD
(上皮マーカー)が発現した。TGF-βを3日間、培地に添加する場合(TGFB対照
)、ECAD発現は、CNN1の上方制御と同時に、有意に下方制御され、EMTイベン
トの誘導と一致する。2D UNFX細胞培養由来馴化培地は、HK2細胞のTGF-β
(TC CM)に対するEMT応答を有意に弱めた(ECADおよびCNN1の両方に対
しp<0.05)。NKA構築物(ゼラチンCMおよびHA/ゼラチンCM)由来の馴化
培地も、また、TGF-βに対するEMTの応答を弱めた;しかし、全体的効果は、2D
UNFX細胞培養由来馴化培地で観察された効果より小さかった(両方のNKA構築物
でのECADに対しては有意(p<0.05)で、対照の方に近づく傾向があるが、CN
N1に対しては統計的に有意でない)。追加の間葉マーカーを選別し、類似の結果を得た
(データは示さず)。これらのデータは、NKA構築物が、細胞ベース処置(Presn
ell et al.国際公開第2010/056328号)で観察されたものと類似の
形式で、尿細管間質性線維形成に関連するTGF-β経路にインビボで影響を与える可能
性があることを示唆している。これらのデータは、また、インビボ応答がインビトロEM
T応答と統計的に有意な関連性があり、それにより、時間のかかる、高価なインビボアッ
セイの必要性を低減可能性があることを立証できるなら、インビトロEMTアッセイは、
NKA構築物のバイオセラピューティック効力の選別/最適化/モニタリング対する適用
の可能性があることを示唆している。
【0308】
この調査は、合成および天然生体材料、無細胞および生理活性腎臓細胞/生体材料複合
体(すなわち、NKA構築物)の両方の移植に対する哺乳類腎実質の応答を検討した。イ
ンビトロ機能アッセイおよびインビボ再生結果の組み合わせを解析し、NKA構築物プロ
トタイプ中への組み込みを可能にするために、候補生体材料を機能的に選別した。無細胞
のヒドロゲルベース生体材料の腎実質への移植(図19)は、通常、最少の線維形成また
は慢性炎症、および移植後4週まで壊死の形跡のないことに繋がっている。最少の残遺物
生体材料と共に中等度の細胞/組織の内成長および新血管新生が観察された。これらのイ
ンビボデータに基づいて、ヒドロゲルベース生体材料を選択し、NKA構築物を産生して
、これを使ってインビトロ生体機能性およびインビボ再生可能性を評価した。材料生体適
合性のインビトロでの確認をNKA構築物の生死分析により行った(図20)。ゼラチン
含有ヒドロゲルは、1次腎臓細胞集団の強い付着性に関連していた。生理活性1次腎臓細
胞集団(UNFXまたはB2)およびヒドロゲル生体材料から産生したNKA構築物の表
現型および機能分析は、尿細管上皮細胞表現型の維持の継続と一致する。NKA構築物の
トランスクリプトーム、セクレトーム、プロテオミクス、および共焦点顕微鏡分析により
、2D培養で播種した1次腎臓細胞に対する有意差が無いことが確認された。最終的に、
ヒドロゲルベースNKA構築物の健康な生体げっ歯類の腎実質への移植は、最少の炎症性
および線維化応答、ならびに移植後8週までの新腎臓様組織の再生に結びついていた。
【0309】
まとめると、これらのデータは、再生応答がNKA構築物によりインビボで誘導された
ことを示唆する証拠を与える。これらの調査は、治療的に効果のある1次腎臓細胞/生体
材料複合体の移植に対する哺乳類腎臓の生物学的応答の最初のインビボ腎臓内調査を意味
する。観察結果は、NKA構築物が、新腎臓組織の再生の促進、および非再生(例えば、
修復治癒)応答の減弱化の両方に対する潜在能力を有することを示唆している。
【0310】
ポリマー材料の移植に対する哺乳類腎臓の生物学的応答:別の調査では、げっ歯類腎臓
に関し、天然および合成生体材料の腎臓内注射に対する宿主組織応答を調査し、生理活性
腎臓細胞集団との細胞/生体材料複合体の形成のための候補生体材料を評価した(Pre
snell et al.前出、2010)。方法:天然生体材料には、ゼラチンおよび
ヒアルロン酸(HA)を含めた。合成生体材料には、ポリカプロラクトン(PCL)およ
び乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)を含めた。候補生体材料を2種の別々の物理
形態:同種の球状ビーズまたは異種起源で非均一粒子、で評価した。PCLおよびPLG
Aビーズを修飾二重エマルジョン乳剤(水/オイル/水)溶媒抽出法を使って調製した。
ゼラチンビーズは、購入した(Cultispher-S(登録商標)、Sigma-A
ldrich、St.Louis、MO)。PLGA粒子を溶媒キャスト・孔物質溶出技
術を使って調製した;ゼラチンおよびHA粒子を架橋および凍結乾燥した発泡体から調製
した。35μlの緩く圧縮充填した生体材料を2回の注射で3月齢Lewisラットの左
腎実質に送達した。炎症、組織/細胞内成長、新血管新生、材料分解、および繊維と細胞
の応答に関する0(無し)から4(重度)までの重症度の半定量分類スコアを使って、注
射後1週および4週の腎臓組織のホルマリン固定切片の病理組織学的評価を行った。総合
スコアは、%陰性応答に対する%陽性応答の比率として計算した(総合スコアが高いほど
、優れた結果となる)。
【0311】
結果:生体材料候補に対する病理組織学的評価-移植1週後採取し、切片をMasso
nのトリクロームで染色した代表的な腎臓の40X像(データは示さず)。天然起原、例
えば、ゼラチンおよびHAのポリマーから構成される材料は、合成生体材料、例えば、P
LGAおよびPCL(器質性線維状被包形成)に比べて、より穏やかな繊維と細胞の応答
および慢性炎症、ならびにより大きい細胞内成長、新血管新生、生体材料分解、ならびに
組織治癒および組織集積に要求される必然的な炎症と関連していた。病理組織学的評価ス
コアリングの要約:スコアは、材料組成で平均化した(平均±SD)。合成材料(PLG
AおよびPCL)は最低スコアになり、ゼラチン材料は、通常、HA材料より高いスコア
になった。この傾向は、4週の時点で最も際立っている。材料の注射に関係の無い要因の
ために、必ずしも全ての1週目の試験検体が4週目の分析に利用可能ではなかった。ゼラ
チン、HA、および合成群に含まれる標本数は、それぞれ、1週目で、3、4、3であり
、4週目で2、3、1である。
【0312】
注射により組織応答を誘発した健康な腎実質に送達された天然起原の生体材料(例えば
、ゼラチンまたはHA)は、半定量病理組織学的評価により測定して、注射後4週目で、
合成起原に比べ、病的な状態はより少なかった。
【0313】
実施例16-培養ヒト腎臓細胞の低酸素暴露が細胞遊走および付着のメディエータを誘
導し、尿細管細胞単層の修復をインビトロで促進する
慢性腎疾患(CKD)モデルの立証された治療機能を有する腎臓上皮細胞選択集団(B2
)の単離および機能における酸素圧力の役割を調査した。この調査では、処理中の低酸素
暴露が選択されたヒトの選択腎臓細胞(SRC)または生理活性腎臓細胞(BRC)の組
成および機能を変えるのか否かを調べた。2%酸素への暴露に際し、以下が観察された:
密度勾配全体にわたる細胞の分布の変化(Presnell et al.国際公開第1
0/056328号を参照;この特許は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)
、全体の勾配後収率の改善、酸素により調節される遺伝子発現(Kelley et a
l.前出、(2010)、で以前に報告)の調節、エリスロポエチン、VEGF、HIF
1アルファ、およびKDR(VEGFR2)の発現増加。処理中の低酸素への暴露は、選
択生理活性腎臓細胞の傷害性尿細管を修復/再生する能力を高める。
【0314】
図27は、細胞を処理中に低酸素へ暴露する手順を示す。図28は、2%酸素に暴露に
際し、下記が観察されたことを示す:密度勾配全体にわたる細胞の分布の変化、全体の勾
配後収率の改善。低酸素暴露(<3%)は、大気酸素圧力(21%)に比べて、培養ヒト
CKD由来腎臓細胞のイオジキサノールベース密度勾配からの回収率を増加させ(96%
vs.74%)、また、選択細胞(B2)の高密度(>9%イオジキサノール)画分への
相対的配分を増加させた(21.6%vs.11.2%)。
【0315】
競合的インビトロアッセイは、B2細胞の低酸素性条件への24時間の事前暴露は、2
1%酸素圧力で培養したB2細胞よりも、傷害性腎臓の近位尿細管単層培養物の修復に対
しより高い能力を有し、傷害の2時間以内に修復の発生が58.6%±3%であったこと
を示した。
【0316】
図29Aは、尿細管単層の修復をインビトロで観察するために開発されたアッセイを示
す。1.細胞を蛍光染料で標識する(2%酸素、21%酸素、およびHK2尿細管細胞)
。2.尿細管細胞単層を作成し、創傷を与えた。3.酸素暴露標識細胞を添加(2%およ
び21%暴露細胞)。それらを、20,000/cm2で均等に播種する。培養は、無血
清培地中、5%O2で24時間行う。4.創傷を修復する細胞を定量する。図29B-定
量画像解析(BD Pathway 855 BioImager)-赤色円=2%O2
で培養細胞、青色円=21%O2培養。図29C-2%酸素誘導細胞がより急速に付着し
(2時間)、24時間わずかな優位性を持続することが観察された。2%酸素で誘導され
た細胞は、尿細管上皮単層の修復に対し、より大きな能力を有する。
【0317】
図30Aは、尿細管単層の修復をインビトロで観察するために開発されたアッセイを示
す。1.細胞を蛍光染料で標識する。2.8μm孔径のトランスウエルインサートの底部
に尿細管細胞単層を形成し、創傷を与えた。3.インサートを反転し、酸素暴露標識細胞
を添加する(2%および21%酸素暴露細胞)。それらに、50,000/cm2で均等
に播種する。培養は、無血清培地中、5%O2で24時間行う。4.創傷を修復する細胞
を定量する。
【0318】
図30Bは、2%酸素暴露細胞による誘導により、非誘導(21%酸素)に比べ、遊走
および創傷修復が強化されたことを示す。図30Cは、遊走時間に対し遊走細胞の%をプ
ロットしたものである。細胞の平均数および細胞の平均パーセンテージは、表16.1に
示されている。
【0319】
低酸素は、また、CXCR4、MMP9、ICAM1、およびジストログリカンのmR
NA発現も誘導した;これらは、細胞遊走および付着を媒介する遺伝子である。MMP9
の局所的蓄積および細胞の細胞膜へのコネキシン43凝集体の増加が免疫細胞化学手法に
より確認された。
【0320】
図31Aは、オステオポンチンが尿細管細胞により分泌され、傷害に対する応答で発現
上昇することを示す(オステオポンチン免疫細胞化学:Hoechst核染色(青)、オ
ステオポンチン(赤)、10x)。オステオポンチンは、分泌リン酸化糖タンパク質であ
る(Kelly et al.J Am Soc Nephrol、1999)。オステ
オポンチンは、免疫蛍光(図31A)およびELISA(図31B)により示されるよう
に、尿細管中で発現し、付着および遊走に関与する。オステオポンチンは、尿細管細胞単
層中に形成された傷害により発現上昇する。
【0321】
図32Aは、細胞の遊走応答が、一部は、オステオポンチンにより媒介されることを示
す(緑=遊走細胞(5x))。図32Bは、オステオポンチンに対する中和抗体(NAb
)が腎臓細胞遊走応答を50%減らすことを示す。
【0322】
図33は、細胞低酸素誘導が組織リモデリング遺伝子の発現を調節することを示す。カ
ベオリン1は、インテグリンシグナル伝達の調節に関与する足場タンパク質である。MM
P9は、細胞外のマトリックス分解を介して遊走を促進するメタロプロテアーゼである。
ICAM1は、上皮細胞運動性に関連する細胞間接着分子である。CXCR4は、細胞遊
走を媒介するケモカイン表面受容体である。
【0323】
図34は、腎臓再生に繋がる低酸素による細胞の生理活性増強に対する推定機序を示す
【0324】
まとめると、これらの結果は、低酸素下暴露が尿細管傷害のインビトロ修復に対する立
証された生理活性を有する特異的腎臓細胞亜集団の単離を促進し、その結果、これらの細
胞のインビボ送達の後に患部組織へ遊走し生着する能力を潜在的に高めることができるこ
とを示唆する。SRCは、進行性CKDのげっ歯類モデルの腎機能を安定化させ、生存を
延長する能力を立証した。低酸素レベル(2%O2)は、下記を提供した:選択再生細胞
の培養後回収率の増加;尿細管傷害に応答した細胞付着および単層修復の強化;ならびに
尿細管傷害に応答した細胞遊走の刺激。さらに、細胞遊走および付着は、一部は、オステ
オポンチンによりインビトロで媒介された。低酸素は、組織リモデリング、遊走、および
細胞間情報伝達を媒介するインテグリン、分泌タンパク質、および細胞接着分子を発現上
昇させた。
【0325】
実施例17-尿由来微小胞
尿中に排出された腎臓由来微小胞の内腔含有物内に含まれるmiRNAおよびタンパク質
の分析を行い、再生結果を評価するためのバイオマーカーとして使用可能かどうかを判定
した。過剰微小胞が細胞外の空隙に排出されるに従い、一部は隣接細胞と融合し、他のも
のは、尿中に分泌される(Zhou et al.2008.Kidney Int.7
4(5):613-621)。これらの尿中の微小胞は、今度は、処置結果のより良い理
解に向けたアッセイ開発のための優れたバイオマーカーになる。
【0326】
ZSF1慢性進行性腎不全の代謝疾患のげっ歯類モデルを使用した。B2+B4細胞を
ZSF1動物の腎実質に注射した。健康な動物およびPBS溶媒を対照として使用した。
尿由来小胞を、以下にまとめたように、種々の時点で分析した。
1:ZSF1動物-PBS溶媒注射;注射後197日に尿採取
2:ZSF1動物-PBS溶媒注射;注射後253日に尿採取
3:ZSF1動物-B2+B4画分注射;注射後197日に尿採取
4:ZSF1動物-B2+B4画分注射;注射後253日に尿採取
5.ZSF1動物-注射なし;調査の197日目に尿採取
6.ZSF1動物-注射なし;調査の253日目に尿採取
7.健康動物-注射なし;調査の197日目に尿採取
8.健康動物-注射なし;調査の253日目に尿採取
処置後197日目および約253日目に試験動物から尿を採取した。当技術分野で既知の
標準的な方法により尿から微小胞を回収した(例えば、Zhou et al.Kidn
ey Int.2008 September;74(5):613-621、を参照)
図35の標準的ウェスタンブロッティングで示されるように、処置動物の尿から回収さ
れた微小胞(レーン3~4)は、溶媒処置(レーン1~2)または未処置対照(レーン5
~8)に比較して、前駆細胞関連タンパク質(CD133およびWNT7A)の増加を示
した。実際、微小胞は、微小胞特異的タンパク質CD63の発現(図35)により示され
るように、病気の動物の尿(レーン1~6)のみから回収され、健康な対照(レーン7~
8)からは回収されなかった。CD133含有微小胞は、腎臓細胞から排出されたプロミ
ノソーム(prominosome)であるように見える。CD133およびWNT7A
の両方は、再生および幹細胞分裂に関連するとされてきた(Romagnani P a
nd Kalluri R.2009.Fibrogenesis Tissue Re
pair.2(1):3;Lie et al.2005.Nature.437(70
63):1370-5;Willert et al.2003.Nature.423
(6938):448-52;Li et al.2009.Am J Physiol
Renal Physiol.297(6):F1526-33)。まとめると、この
ことは、再生をモニターするように設計されたアッセイ開発のために、微小胞中でバイオ
マーカーとして発現したタンパク質を標的とすることを支持する。
【0327】
miRNAマイクロアレイおよびRT-PCR:尿由来の小胞由来miRNAのマイク
ロアレイおよびRT-PCR分析を当技術分野で既知の標準的な方法により行った(例え
ば、Wang et al.前出、2010、参照)。タンパク質に加えて、miRNA
は、単離された微小胞の含有物中にも見つかった。表17.1は、処置により増加するこ
とが解ったmiRNAの例を示す。
【0328】
B2+B4で処置したZSF1動物のmiRNAの変化を経時的に分析した(197日
目および253日目)。何倍というレベルの変化が以下のmiRNAで観察された:
【0329】
B2+B4で処置したZSF1動物(253日目)のmiRNAレベルを分析し、PB
S溶媒で処置したZSF1動物(253日目)のmiRNAレベルと比較した。何倍とい
うレベルの変化が以下のmiRNAで観察された:
【0330】
B2+B4で処置したZSF1動物(197日目)のmiRNAレベルを分析し、PB
S溶媒で処置したZSF1動物(197日目)のmiRNAレベルと比較した。何倍とい
うレベルの変化が以下のmiRNAで観察された:
【0331】
表17.1に挙げたmiRNAは、組織再生に関連するプロセスに結びつけられている
miRNAの例を提供する。miR-15bは、BCL-2およびカスパーゼ調節を介し
てアポトーシスの調節(Guo et al.2009.J Hepatol.50(4
):766-78)、ならびにサイクリンの調節を介して細胞周期進行(Xia et
al.2009.Biochem Biophys Res Commun.380(2
):205-10)に結びつけられている。miR-21は、生存経路MAPK/ERK
を調節することによりアポトーシスを阻害することが示された。miRNAのmiR-3
0ファミリーは、有足細胞構造および機能にとって重要で、増加が糸球体形成に必要であ
る可能性があることを示唆している。miR-141、200a、200cおよび429
は、全て、線維形成を減らす可能性のあるTGF-βシグナル伝達に対し応答した上皮か
ら間葉への転換(EMT)の調節に関与する(Saal et al.2009.Cur
r.Opin.Nephrol.Hypertens.18:317-323)。miR
-146aおよび151は、NFκB調節に関係づけられ、従って、インビボで炎症反応
を減らす可能性がある(Taganov et al.2006.Proc Natl
Acad Sci USA.103(33):12481-6;Griffiths-J
ones et al.2006.NAR.34 Database Issue:D1
40-D144)。まとめると、これらのmiRNAは、成功している再生結果に関連す
るプロセスを調節する;従って、それらをアッセイ開発のための候補バイオマーカーとす
る。全体的に見て、このデータは、尿中の微小胞および/またはそれらの内腔含有物が再
生アッセイ用の実行可能な標的であるという構想を支持する。理由は、それらが、処置の
モニタリングの非侵襲的手段を開業医に提供することに加えて、TGFβ-1、NFκB
、アポトーシス、細胞分裂、および多分化能、等の複数の経路を調節することができるタ
ンパク質およびmiRNAを含むからである。
図1
図2
図3
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図5
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図8
図9
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図13A
図13B
図13C
図13D
図14
図15A
図15B
図15C
図16A-B】
図17A-E】
図17F
図17G
図18A-D】
図18E
図19A
図19B
図19C
図20A-D】
図20E
図20F
図20G
図21A
図21B
図22A
図22B
図23A
図23B
図23C
図24A
図24B
図25
図26
図27
図28
図29A
図29B
図29C
図30A
図30B
図30C
図31A
図31B
図32A
図32B
図33
図34
図35
【配列表】
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