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特許7123431A-ノル-5αアンドロスタン化合物を含む白血球増多製剤およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】A-ノル-5αアンドロスタン化合物を含む白血球増多製剤およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/569 20060101AFI20220816BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
A61K31/569
A61K45/00
A61P7/00
A61P35/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020541841
(86)(22)【出願日】2018-08-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 CN2018100430
(87)【国際公開番号】W WO2019072014
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】201710953300.5
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520130133
【氏名又は名称】シャンハイ アオ チ メディカル テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チェン ヤジュン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ジファ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ウェンヤ
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-514853(JP,A)
【文献】特表2017-530162(JP,A)
【文献】米国特許第05001120(US,A)
【文献】PNAS,2003年,vol.100, no.11,p.6694-p.6699
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 45/00-45/08
A61P 7/00- 7/12
A61P 35/00-35/04
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A-ノル-5αアンドロスタン化合物を含む、(a)白血球数の向上、あるいは(b)白血球減少症の予防または治療のための製剤または組成物であって、前記A-ノル-5αアンドロスタン化合物は、下記の群から選ばれることを特徴とする製剤または組成物
2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシ、
2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシジ酢酸エステル、
2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシジプロピオン酸エステル、
2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシ-2β-モノコハク酸エステル、
2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジコハク酸エステル、
2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジ酪酸エステル、
2α,17α-ジヒドロキシプロパギル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシ、
2α,17α-ジシアノ-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシ、
2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシビス(トリクロロ酢酸エステル)、
2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシ-2β-プロピオン酸エステル-17βコハク酸エステル、
2α,17α-ジプロパギル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシ、および
2α,17α-ジプロパギル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシジプロピオン酸エステル。
【請求項2】
前記白血球数の向上とは、対象の血液中における白血球数を上昇させることである請求項1に記載の製剤または組成物
【請求項3】
前記対象は、白血球数が低下したヒトである請求項2に記載の製剤または組成物
【請求項4】
前記製剤または組成物に、前記製剤または組成物の全重量に対し、0.001~99wt%のA-ノル-5αアンドロスタン化合物が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の製剤または組成物
【請求項5】
白血球数の向上または白血球減少症の予防・治療のための製剤製品で、
(a)請求項1に記載のA-ノル-5αアンドロスタン化合物である第一の活性成分と、(b)薬学的に許容される担体とを含有する、第一の薬物組成物、および
白血球増多薬である第二の薬物組成物
を含むことを特徴とする製剤製品。
【請求項6】
前記白血球増多薬は、(a)A-ノル-5αアンドロスタン化合物と異なる白血球増多活性成分である第二の活性成分と、(b)薬学的に許容される担体とを含有することを特徴とする請求項5に記載の製剤製品。
【請求項7】
前記白血球増多薬は、生薬、生薬複合製剤、化学薬物、生物製剤、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする請求項5に記載の製剤製品。
【請求項8】
前記対象は、腫瘍患者である請求項2に記載の製剤または組成物
【請求項9】
前記白血球数が低下とは、健常者の白血球数の下限A0と比べ、前記対象の白血球数A1がA0未満である、請求項3に記載の製剤または組成物
【請求項10】
前記白血球数の向上とは、対照の白血球数C0と比べ、対象の血液中における白血球数C1を増加させることであって、前記対照の白血球数C0は、薬物で治療または処理する前の前記対象の白血球数Czsである請求項1に記載の製剤または組成物
【請求項11】
前記白血球数の向上とは、C1/Czs≧1.2である請求項10に記載の製剤または組成物
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、医薬の分野に属し、具体的に、A-ノル-5αアンドロスタン化合物を含む白血球増多製剤およびその使用に関する。
【0002】
[背景技術]
白血球減少症とは、ヒトの末梢血における白血球の計数が持続的に4.0×10/L未満になっていることである。一般的に、白血球減少症になる原因は、薬物、放射線またはほかの化学的毒物である。白血球減少は、免疫力低下、食欲衰退、四肢倦怠などの症状につながる。
【0003】
現在、化学治療および放射線治療は通常の腫瘍治療の手段である。しかし、化学治療および放射線治療はよく白血球を減少させ、癌細胞を死滅させると同時に、正常組織も損傷し、特に骨髄の造血機能に対する抑制が最も顕著で、末梢白血球が持続的に低下するようになる。このような状況は、化学治療および放射線治療の続行を妨害するのみならず、深刻な結果にもなりうる。
【0004】
現在、臨床において、患者の放射線・化学治療が計画通りに順調に行われ、放射線・化学治療の周期的治療ができるように、血液における白血球数を向上させるために、白血球増多薬がよく使用されている。このような白血球増多薬は、主に、1、生薬、たとえば、ニンジン、オウギ、トウジン、ジョテイシ、ケイケットウ、クコシ、ジオウなど、2、生薬複合製剤、たとえば愚魯湯、保元湯、六味地黄経口投与液、昇白丸、烏鶏白鳳丸、健脾益腎沖剤、長安昇白沖剤、昇白片、サンギ片、養血昇白カプセルなど、3、化学薬物、たとえばロイコゲン、バチロール、ビタミンB、ベルバミン、イノシン、デオキシリボ核酸など、4、生物製剤、たとえばコロニー刺激因子(CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)などを含む。中では、前者の3種類の漢方・西洋薬物の治療効果はいずれも限られ、造血刺激因子は効果が顕著であるが、作用時間が短く、再発しやすく、副作用が顕著で、かつ高価で、患者にかかる経済的負担が大きい。
【0005】
そのため、本分野では、臨床において、治療効果が顕著で、副作用が小さく、使用が便利な白血球を増多させる薬物の開発が切望されている。
【0006】
[発明の概要]
本発明の目的は、治療効果が顕著で、副作用が小さく、使用が便利な白血球を増多させる薬物を提供することである。
【0007】
本発明の第一の側面では、A-ノル-5αアンドロスタン化合物の使用であって、(a)白血球数の向上、あるいは(b)白血球減少症の予防または治療に使用される製剤または組成物を製造するための使用を提供する。
【0008】
もう一つの好適な例において、前記A-ノル-5αアンドロスタン化合物の構造は、式Iで表される。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中において、
およびRはそれぞれ独立にH、置換または無置換のC1-10アルキル基、置換または無置換のC3-8シクロアルキル基、置換または無置換のベンゼン環、置換または無置換のベンゾイル基、置換または無置換のCOC2n+1、置換または無置換のCOC2rCOOC2m+1、または-COC2pCOO-Wから選ばれる。ここで、n、p、r、mはそれぞれ独立に0~18の整数で、WはH、Na、K、NH 、1/2Ca2+、1/2Mg2+、1/2(AlOH)2+、または1/2Zn2+である。
【0011】
前記置換とは、ヒドロキシ基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、アミン基、カルボキシ基からなる群から選ばれる一つまたは複数(たとえば1~3個)を有することである。)
もう一つの好適な例において、前記A-ノル-5αアンドロスタン化合物は以下の群から選ばれる:
2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシ化合物、
2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシジ酢酸エステル化合物、
2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシジプロピオン酸エステル化合物、
2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシ-2β-モノコハク酸エステル化合物、
2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジコハク酸エステル化合物、
2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジ酪酸エステル化合物、
2α,17α-ジヒドロキシプロパギル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシ化合物、
2α,17α-ジシアノ-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシ化合物、
2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシビス(トリクロロ酢酸エステル)化合物、
2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシ-2β-プロピオン酸エステル-17βコハク酸エステル化合物、
2α,17α-ジプロパギル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシ化合物、および/または
2α,17α-ジプロパギル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシジプロピオン酸エステル化合物。
【0012】
もう一つの好適な例において、前記組成物は、薬物組成物、食事サプリメント組成物、または健康食品組成物を含む。
【0013】
もう一つの好適な例において、前記組成物は、(a)A-ノル-5αアンドロスタン化合物と、(b)薬学的に許容される担体とを含む。
【0014】
もう一つの好適な例において、前記の薬物組成物の剤形は、固体製剤または液体製剤である。
【0015】
もう一つの好適な例において、前記の薬物組成物の剤形は、経口投与剤形、注射剤形、または外用薬物剤形である。
【0016】
もう一つの好適な例において、前記の薬物組成物は、錠剤、顆粒剤、またはカプセルである。
【0017】
もう一つの好適な例において、前記製剤または組成物に、前記製剤または組成物の全重量に対し、0.001~99 wt%、好ましくは0.1~90 wt%、より好ましくは1~50 wt%のA-ノル-5αアンドロスタン化合物が含まれている。
【0018】
もう一つの好適な例において、前記「白血球数の向上」とは対象の血液中における白血球数を上昇させることである。
【0019】
もう一つの好適な例において、前記の対象は、ヒト、またはヒト以外の哺乳動物(たとえば齧歯動物)である。
【0020】
もう一つの好適な例において、前記の対象は、白血球数が低下したヒトである。
【0021】
もう一つの好適な例において、前記の「白血球数が低下した」とは、健常者の白血球数の下限A0と比べ、前記対象の白血球数A1はA0未満で、好ましくはA1/A0が0.1-0.9、好ましくは0.2-0.8、より好ましくは0.3-0.7である。
【0022】
もう一つの好適な例において、前記のA0は4×10個/L血液である。
【0023】
もう一つの好適な例において、前記の対象は腫瘍患者である。
【0024】
もう一つの好適な例において、前記の対象は腫瘍治療を受けた対象、受けている対象、または受けようとする対象である。
【0025】
もう一つの好適な例において、前記の腫瘍治療は、化学治療、放射線治療、またはこれらの組み合わせを含む。
【0026】
もう一つの好適な例において、前記「白血球数の向上」とは対照の白血球数C0と比べ、対照の血液中における白血球数C1を増加させることである。
【0027】
もう一つの好適な例において、前記の対照の白血球数C0は前記対象の本発明の薬物で治療または処理する前の白血球数Czs、あるいは対象群の白血球数Cdzである。
【0028】
もう一つの好適な例において、前記「白血球数の向上」とはC1/Czs≧1.2、好ましくは≧1.4、より好ましくは≧1.5または≧2.0である。
【0029】
もう一つの好適な例において、前記「白血球数の向上」とはC1/Cdz≧1.2、好ましくは≧1.4、より好ましくは≧1.5または≧2.0である。
【0030】
本発明の第二の側面では、白血球数の向上または白血球減少症の予防・治療に使用される製剤製品で、
(a)A-ノル-5αアンドロスタン化合物である第一の活性成分と、(b)薬学的に許容される担体とを含有する、第一の薬物組成物、および
白血球増多薬である第二の薬物組成物
を含む製剤製品を提供する。
【0031】
もう一つの好適な例において、前記の白血球増多薬は、(a)A-ノル-5αアンドロスタン化合物と異なる白血球増多活性成分である第二の活性成分と、(b)薬学的に許容される担体とを含有する。
【0032】
もう一つの好適な例において、前記白血球数の向上は哺乳動物の白血球数の向上である。
【0033】
もう一つの好適な例において、前記白血球増多薬は、生薬、生薬複合製剤、化学薬物、生物製剤、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0034】
もう一つの好適な例において、前記生薬は、ニンジン、オウギ、トウジン、ジョテイシ、ケイケットウ、クコシ、ジオウ、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0035】
もう一つの好適な例において、前記生薬複合製剤は、愚魯湯、保元湯、六味地黄経口投与液、昇白丸、烏鶏白鳳丸、健脾益腎沖剤、長安昇白沖剤、昇白片、サンギ片、養血昇白カプセル、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0036】
もう一つの好適な例において、前記化学薬物は、ロイコゲン、バチロール、ビタミンB、ベルバミン、イノシン、デオキシリボ核酸、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0037】
もう一つの好適な例において、前記生物製剤は、コロニー刺激因子(CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0038】
もう一つの好適な例において、前記の第一の薬物組成物および第二の薬物組成物はそれぞれ独立のもの、あるいは一つにまとまったものである。
【0039】
本発明の第三の側面では、腫瘍治療に使用される製剤製品で、
(I)(a)A-ノル-5αアンドロスタン化合物である第Iの活性成分と、(b)薬学的に許容される担体とを含有する、第Iの薬物組成物、および
(II)(a)A-ノル-5αアンドロスタン化合物と異なる、腫瘍治療に使用される活性成分である第IIの活性成分と、(b)薬学的に許容される担体とを含有する、第IIの薬物組成物
を含む製剤製品を提供する。
【0040】
もう一つの好適な例において、前記の第IIの活性成分は、シクロホスファミド、イホスファミド、ドキシフルリジン、5-フルオロウラシル、アラビノシド、フルオログアノシン、テガフール、ゲムシタビン、カルモフール、ヒドロキシウレア、メトトレキセート、アクチノマイシンD、アドリアマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、ペプロマイシン、イリノテカン、ハリングトニン、ヒドロキシカンプトセシン、ビノレルビン、タキソール、タキソテール、トポテカン、ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、テニポシド、エトポシド、アタメスタン、アナストロゾール、アミノグルテチミド、レトロゾール、フォルメスタン、メゲストロール、タモキシフェン、アスパラギナーゼ、カルボプラチン、シスプラチン、ダカルバジン、オキサリプラチン、ミトキサントロン、プロカルバジン、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0041】
もう一つの好適な例において、前記の第一の薬物組成物および第二の薬物組成物はそれぞれ独立のもの、あるいは一つにまとまったものである。
【0042】
本発明の第四の側面では、白血球数を向上させる方法であって、(a)必要な対象にA-ノル-5αアンドロスタン化合物を施用する工程を含む方法を提供する。
【0043】
もう一つの好適な例において、前記の対象はヒトまたはヒト以外の哺乳動物、好ましくは齧歯動物(たとえばマウス、ラット)、霊長動物(たとえばヒト)を含む。
【0044】
もう一つの好適な例において、前記の対象は腫瘍患者である。
【0045】
もう一つの好適な例において、前記腫瘍は、胃癌、肝臓癌、白血病、腎臓腫瘍、肺癌、小腸癌、骨癌、前立腺癌、結直腸癌、乳癌、大腸癌、前立腺癌、子宮頸癌、リンパ癌、副腎腫瘍、または膀胱腫瘍からなる群から選ばれる。
【0046】
もう一つの好適な例において、前記の対象は化学治療および/または放射線治療を受けた対象、受けている対象、または受けようとする対象である。
【0047】
もう一つの好適な例において、前記の対象は化学治療および/または放射線治療を受けた対象である。
【0048】
もう一つの好適な例において、前記の対象は、白血球数が正常値の下限よりも低い。
【0049】
もう一つの好適な例において、前記の対象は、化学治療または放射線治療を受けたもので、かつ白血球数が正常値の下限に近いか、それよりも低い。
【0050】
もう一つの好適な例において、前記の対象がヒトである場合、前記正常値の範囲は4×10-10×10/Lである。
【0051】
もう一つの好適な例において、前記の対象がヒトである場合、本発明の方法によって白血球増多治療を行う前に、その白血球数は1×10-3.8×10/Lである。
【0052】
もう一つの好適な例において、前記の対象がマウスである場合、前記正常値は1.8×10-10.7×10/μLである。
【0053】
もう一つの好適な例において、前記方法は非治療的なものである。
【0054】
もちろん、本発明の範囲内において、本発明の上記の各技術特徴および下記(たとえば実施例)の具体的に記述された各技術特徴は互いに組み合わせ、新しい、または好適な技術方案を構成できることが理解される。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明者は幅広く深く研究したところ、初めて意外に、1種の特殊な構造の化合物、すなわち、A-ノル-5αアンドロスタン化合物は非常に有効に哺乳動物の白血球数を向上させることができ、かつその副作用が非常に低い。実験では、抗腫瘍薬(たとえばシクロホスファミドなどの化学治療薬)または放射線治療による白血球数の低下を緩和および改善することが示された。また、化学治療または放射線治療を行う前にA-ノル-5αアンドロスタン化合物を投与すると、白血球数の低下を予防することができ、長期間で顕著に低下することがない。これに基づき、本発明を完成させた。
【0056】
[活性成分]
本発明において、白血球を増加させるための活性成分は、A-ノル-5αアンドロスタン化合物またはその薬学的に許容される塩、またはプロドラッグである。
【0057】
A-ノル-5αアンドロスタン化合物は李瑞麟らによって自主的に研究・開発して合成された特殊な構造を有する化合物である。すでに行われた動物薬物効果試験では、A-ノル-5αアンドロスタン化合物は優れた前立腺肥大を治療する作用を有することが示された。さらなる研究では、A-ノル-5αアンドロスタン化合物は顕著な体内および体外の抗悪性腫瘍活性を有し、腫瘍増殖を抑制すると同時に、動物の体重減少を改善する利点を有することが見出された。正常細胞を影響しないまま選択的に腫瘍細胞の分裂を阻害することによって、腫瘍細胞の拡散を抑制する。
【0058】
本発明者は、意外に、A-ノル-5αアンドロスタン化合物が顕著な白血球を増多させる薬物効果を有することを発見した。
【0059】
本発明において、用語「活性成分」、「本発明の活性成分」、「本発明の白血球増多活性成分」とは、A-ノル-5αアンドロスタン化合物で、特に以下のような構造を有する化合物であるが、入れ替えて使用することができる。
【0060】
【化2】

【0061】
式中において、RおよびRは上記で定義された通りである。
【0062】
好ましくは、A-ノル-5αアンドロスタン化合物は、以下の群から選ばれる1種または複数種の化合物でもよい:
2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシ化合物(Ia)、
2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシジ酢酸エステル化合物(Ib)、
2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシジプロピオン酸エステル化合物(Ic)、
2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシ-2β-モノコハク酸エステル化合物(Id)、
2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジコハク酸エステル化合物(Ie)、
2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジ酪酸エステル化合物(If)、
2α,17α-ジヒドロキシプロパギル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシ化合物(Ig)、
2α,17α-ジシアノ-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシ化合物(Ih)、
2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシビス(トリクロロ酢酸エステル)化合物(Ii)、
2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシ-2β-プロピオン酸エステル-17βコハク酸エステル化合物(Ij)、
2α,17α-ジプロパギル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシ化合物(Ik)、または
2α,17α-ジプロパギル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシジプロピオン酸エステル化合物(Il)。
【0063】
[薬物組成物]
本発明は、白血球数の向上に使用される薬物組成物であって、(a)A-ノル-5αアンドロスタン化合物である第一の活性成分と、(b)薬学的に許容される担体、または食品学的に許容される担体とを含む組成物を提供する。
【0064】
本発明に係る薬物組成物における「活性成分」とは、本発明に係る式(I)化合物をいう。
【0065】
本発明に係る「活性成分」および薬物組成物は白血球数の向上に使用することができる。
【0066】
もう一つの好適な例において、白血球増多薬の製造に使用される。
【0067】
「安全有効量」とは、活性成分の量が病状の顕著な改善に充分で、重度な副作用が生じないことをいう。
【0068】
通常、薬物組成物は、1単位製剤あたりに、1~2000mg、好ましくは10~200mgの活性成分を含む。好ましくは、前記の「1単位製剤」は、一つの錠または一つの注射剤である。
【0069】
「薬学的に許容される担体」とは、ヒトに適用でき、かつ十分な純度および充分に低い毒性を持たなければならない、1つまたは複数の相溶性固体または液体フィラーまたはゲル物質をいう。
【0070】
「相溶性」とは、組成物における各成分が本発明の活性成分と、またその同士の間で配合することができ、活性成分の効果を顕著に低下させないことをいう。
【0071】
薬学的に許容される担体の例の一部として、セルロースおよびその誘導体(たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースナトリウム、セルロースアセテートなど)、ゼラチン、タルク、固体潤滑剤(たとえばステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム)、硫酸カルシウム、植物油(たとえば大豆油、ゴマ油、落花生油、オリーブオイルなど)、多価アルコール(たとえばプロピレングリコール、グリセリン、マンニトール、ソルビトールなど)、乳化剤(たとえばツイン(登録商標))、湿潤剤(たとえばドデシル硫酸ナトリウム)、着色剤、調味剤、安定剤、酸化防止剤、防腐剤、発熱性物質除去蒸留水などがある。
【0072】
もう一つの好適な例において、本発明の式(I)化合物は大分子化合物または高分子と非結合性相互作用によって複合体を形成してもよい。
【0073】
もう一つの好適な例において、本発明の式(I)化合物は小分子として化学結合によって大分子化合物または高分子と連結してもよい。前記大分子化合物は、生物大分子、たとえば多糖、タンパク質、核酸、ポリペプチドなどでもよい。
【0074】
本発明の活性成分または薬物組成物の施用様態は、特に限定されないが、代表的な施用様態は、経口投与、腫瘍内、直腸、胃腸外(静脈内、筋肉内、または皮下)などを含むが、これらに限定されない。
【0075】
経口投与に用いられる固体剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤を含む。
【0076】
これらの固体剤形において、活性成分は少なくとも1つの通常の不活性賦形剤または担体、たとえばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムと混合されるか、あるいは下記成分の1つまたは複数と混合される:
(a)フィラーまたは充填剤、たとえば、でん粉、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトールやケイ酸、
(b)バインダー、たとえば、ヒドロメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖やアラビアゴム、
(c)保湿剤、たとえば、グリセリン、
(d)崩壊剤、たとえば、寒天、炭酸カルシウム、馬鈴薯澱粉やタピオカ澱粉、アルギン酸、一部の複合ケイ酸塩や炭酸ナトリウム、
(e)溶解遅延剤、たとえばパラフィン、
(f)吸収促進剤、たとえば、アンモニウム化合物、
(g)湿潤剤、たとえばセタノールやグリセリンモノステアレート、
(h)吸着剤、たとえば、カオリン、および
(i)潤滑剤、たとえば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ドデシル硫酸ナトリウム、またはこれらの混合物。
【0077】
カプセル剤、錠剤および丸剤において、剤形に緩衝剤を含んでもよい。
【0078】
前記の固体剤形は、コーディングやシェル剤、例えば、腸衣および他の本分野で公知の材料で製造することもできる。不透明剤を含んでもよく、且つこのような組成物において、活性成分の放出は遅延の様態で消化管のある部分で放出してもよい。使用できる包埋成分の実例として、重合物質やワックス系物質が挙げられる。
【0079】
経口投与に用いられる液体剤形は、薬学的に許容される乳液、溶液、懸濁液、シロップまたはチンキ剤を含む。活性成分の他、液体剤型は、本分野で通常使用される不活性希釈剤、たとえば、水または他の溶媒、相溶剤および乳化剤、たとえば、エタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジメチルホルムアミドおよび油、特に、綿実油、落花生油、コーン油、オリーブ油、ヒマシ油やゴマ油またはこれらの物質の混合物などを含んでもよい。これらの不活性希釈剤の他、組成物は助剤、たとえば、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味料、矯味剤や香料を含んでもよい。
【0080】
活性成分の他、懸濁液は、懸濁剤、例えば、エトキシ化イソオクタデカノール、ポリオキシエチレンソルビトールやソルビタンエステル、微晶質セルロース、メトキシアルミニウムや寒天またはこれらの物質の混合物などを含んでもよい。
【0081】
胃腸外注射用組成物は、生理的に許容される無菌の水含有または無水溶液、分散液、懸濁液や乳液、および再溶解して無菌の注射可能な溶液または分散液にするための無菌粉末を含む。適切な水含有または非水性担体、希釈剤、溶媒または賦形剤は、水、エタノール、多価アルコールおよびその適切な混合物を含む。
【0082】
薬物組成物を使用する場合、安全な有効量の本発明の化合物を治療の必要のある哺乳動物(たとえばヒト)に使用し、使用の際の用量は薬学上で効果があるとされる投与量で、体重60 kgのヒトの場合、毎日の投与量は、通常1~1000 mg、好ましくは10~200 mg、より好ましくは20~100 mgである。勿論、具体的な投与量は、さらに投与の様態、患者の健康状況などの要素を考えるべきで、すべて熟練の医者の技能範囲以内である。
【0083】
本発明化合物は、単独で投与してもよいし、あるいはほかの治療薬(特に抗癌薬、たとえば白血球増多薬)と併用して投与してもよい。
【0084】
式(I)化合物は既知の類似の病状を治療または改善するほかの薬物と併用することもできる。併用の場合、元の薬物の投与形態および投与量はそのままで、同時にまたはその後に式(I)化合物を投与する。式(I)化合物をほかの1種または複数種の薬物と同時に投与する場合、1種または複数種の既知の薬物と式(I)化合物を含む薬用組成物を使用することが好ましい。薬物の併用は、重なった時間帯で式(I)化合物とほかの1種または複数種の既知の薬物を投与することも含む。式(I)化合物をほかの1種または複数種の薬物と併用する場合、式(I)化合物または既知の薬物の投与量はこれらの単独投与の場合の投与量よりも低いかもしれない。
【0085】
[経口投与製剤]
本発明は、活性成分がA-ノル-5αアンドロスタン化合物である経口投与製剤を提供し、処方前研究によって薬物製剤の研究に根拠を提供する。
【0086】
処方前研究の結果から、水不溶性薬物であるA-ノル-5αアンドロスタン化合物(水中溶解度は6.5μg/mLで、局方によって不溶と定義される)は、腸液で良い溶出および吸収があり、体内における輸送、摂取および吸収の機序はいずれも受動拡散で、かつ摂取量は時間と投与量に依存することがわかった。A-ノル-5αアンドロスタン化合物は経口投与様態によって投与することができる。そして、癌の治療に長期間の薬物の服用が必要であるから、経口投与は便利で、患者の適応性を向上させるため、本発明は経口投与、たとえば普通の経口投与錠剤、経口投与カプセルおよびほかの徐放性製剤に設計した。
【0087】
本発明の経口投与製剤は、成分および各成分の重量部は以下の通りである。
【0088】

【0089】
前記の活性成分は、A-ノル-5αアンドロスタン化合物である。
【0090】
添加される充填剤は1種または複数種の錠剤の重量および体積を増やす成分でもよい。本発明において、前記充填剤は、乳糖、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、デンプンおよび無機塩のうちの1種または2種以上である。前記充填剤の使用量は、製剤の合計量の20~95%、好ましくは60~95%、より好ましくは70~95%、最も好ましくは80~95%を占める。乳糖を充填剤とする場合、乳糖の使用量は製剤の合計量の20~95%を、ショ糖を充填剤とする場合、ショ糖の使用量は製剤の合計量の10~30%を、ソルビトールを充填剤とする場合、ソルビトールの使用量は製剤の合計量の20~95%を、マンニトールを充填剤とする場合、マンニトールの使用量は製剤の合計量の20~95%を、無機塩を充填剤とする場合、無機塩の使用量は製剤の合計量の5~20%を占める。もう一つの好適な例において、前記充填剤は乳糖、マンニトール、ソルビトールまたはこれらの混合物、好ましくは、前記充填剤は乳糖とマンニトールの混合物である。
【0091】
前記の崩壊剤は、クロスポビドン(PVPP)、クロスカルメロースナトリウム(CC Na)、カルボキシメチルデンプン(CMS-Na)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)のうちの1種または2種以上で、中でも、PVPPおよびCC Naが好ましく、最も好ましくはCC Naである。崩壊剤の使用量の範囲(合計量に対して)は0~20%で、通常の使用量は1~10%、最も好ましくは3~5%である。
【0092】
前記の潤滑剤は、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、水添植物油のうちの1種または2種以上で、中でも、ステアリン酸マグネシウムが最も好ましい。潤滑剤の使用量の範囲(合計量に対して)は0.1~5%で、通常の使用量は0.2~4%、最も好ましくは0.3~3%である。
【0093】
使用される結合剤は1種または複数種の造粒に有利な成分である。前記の結合剤は、デンプンペースト、ヒドロキシプロピルメチルセルコース(HPMC)、ポリエチレングリコール、ポビドン(PVP)またはコポビドン(Kollidon)のうちの1種または2種以上である。PVPが好適である。デンプンペーストを結合剤とする場合、デンプンペーストの使用量は製剤の合計量の10~30%を、HPMCを結合剤とする場合、HPMCの使用量は製剤の合計量の2~5%を、PVPを結合剤とする場合、PVPの使用量は製剤の合計量の2~20%を、ポビドンを結合剤とする場合、コポビドンの使用量は製剤の合計量の0.1~10%を占める。
【0094】
前記の流動化剤は、アエロジルおよびタルク粉のうちの1種または2種以上で、より好ましくはアエロジルである。
【0095】
もう一つの好適な例において、前記無機塩は、硫酸カルシウム(2分子の結晶水を含む)、リン酸水素カルシウム、薬用炭酸カルシウムなどから選ばれる。
【0096】
通常、本発明の錠剤は、さらに当業者に熟知のほかの容易に想到できる補助剤を含んでもよく、本発明の錠剤の製造は本分野で公知の製造技術を使用することができる。錠剤の製造時、粉末直接打錠法、湿式造粒打錠法、乾式造粒打錠法を使用することができる。
【0097】
本発明は、A-ノル-5αアンドロスタン化合物の通常の錠剤を提供し、薬力学の研究によって確定されたその臨床投与量は、臨床治療の需要を満足するため、A-ノル-5αアンドロスタン化合物の錠剤の規格を1~100mg/錠、好ましくは1~50mg/錠、たとえば2.5mg/錠、5mg/錠、10mg/錠、25mg/錠などと決定した。
【0098】
本発明の主な利点は以下の通りである。
【0099】
(a)本発明の白血球増多活性成分(すなわち、A-ノル-5αアンドロスタン化合物)は非常に有効に哺乳動物の白血球数を向上させることができる。
【0100】
(b)本発明の白血球増多活性成分は副作用が非常に低い。
【0101】
(c)本発明の白血球増多効果は白血球数が過剰に向上することなく(すなわち、正常値の上限を超えることなく)、一方、長時間で維持し、比較的長時間内でこの白血球増多効果は顕著に低下することがない。
【0102】
(d)本発明の活性成分は白血球減少症の治療にも、白血球減少症の予防にも有用である。
【0103】
(e)本発明の活性成分をほかの腫瘍治療手段(たとえば化学治療)と合わせると、さらにほかの化学治療薬の副作用を軽減しながら治療効果を強化し、協同作用を有する。
【0104】

以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。以下の実施例で具体的な条件が示されていない実験方法は、通常、たとえばSambrookら、「モレキュラー・クローニング:研究室マニュアル」(ニューヨーク、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版社、1989) に記載の条件などの通常の条件に、あるいは、メーカーのお薦めの条件に従う。
【0105】
[材料]
ACP1:2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシジ酢酸エステル化合物(Ib)
ACP2:2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシ-2β-モノコハク酸エステル化合物(Id)
ACP3:2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジ酪酸エステル化合物(If)
ACP4:2α,17α-ジプロパギル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシ化合物(Ik)
ACP5:2α,17α-ジプロパギル-A-ノル-5αアンドロスタン-2β,17β-ジヒドロキシジプロピオン酸エステル化合物(Il)
実施例1 ACPのシクロホスファミド(CTX)によるルイスマウスの白血球数低下に対する白血球増多作用
1.1 ACP1の白血球増多作用
増殖が盛んな腫瘍を取り、無菌の条件において均質化法によって腫瘍細胞濃度が約5~10×10/mLになるように細胞懸濁液を調製した。各マウスの右脇に0.2 mL皮下接種した。
【0106】
マウスにルイス肺癌を接種することによって移植性腫瘍モデルを構築し、そしてランダムに10匹ずつ分け、腫瘍接種の当日から白血球増多化合物の投与を開始した。高投与量ACP1単独投与群以外、ほかの各群では、接種から3日目(150 mg/kg)および5日目(100 mg/kg)にCTXを施用し、化学治療による腫瘍担持マウスの白血球減少抑制モデルを構築した。
【0107】
実験開始時にランダムにマウスを10匹取って眼窩後静脈叢の穿刺採血を行い、血球自動分析装置(HEMAVET-950)によって血液ルーチン検査を行った。その後、シクロホスファミドの最後の投与後、8日目および12日目に同様の方法によって採血して血液ルーチン検査を行った。
【0108】
ACP1の結果は表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
結果:
化学治療対照群では、シクロホスファミドCTXによってマウスの末梢血における白血球が減少し、白血球減少症のモデル動物の構築に成功したことが示された。
【0111】
ACP投与群では、8日目も12日目も統計学的に顕著な白血球増多効果が示され、化学治療対照群と比べ、白血球増多の幅は、8日目に約200%~約500%で、12日目に60%~約100%であった。これは、ACP1が顕著なシクロホスファミドによるマウス白血球数低下に拮抗する作用を有することを示す。
【0112】

1.2 ACP2-5の白血球増多作用
方法は1.1と同様で、異なる点は、各群のマウスの数は5匹であったことにある。実験群では、ACP1の代わりにそれぞれACP2、ACP3、ACP4、およびACP5を使用し、そしてACP中投与量+CTX 2.5mg/kgのプランを使用した。化学治療対照群は、1.1における化学治療対照群と同様である。10日目に同様の方法によって採血して血液ルーチン検査を行った。
【0113】
実験結果から、化学治療対照群では、シクロホスファミドCTXによってマウスの末梢血における白血球が減少し、白血球減少症のモデル動物の構築に成功したことが示された。
【0114】
各ACP投与群では、10日目にいずれも統計学的に顕著な白血球増多効果が示され、化学治療対照群と比べ、ACP2、ACP3、ACP4およびACP5の白血球増多の幅は相当し、10日目の白血球増多の幅((C1/Cdz-100%))は70%~240%の範囲内にあった。これは、A-ノル-5αアンドロスタン化合物はいずれも顕著なシクロホスファミドによるマウス白血球数低下に拮抗する作用を有することを示す。
【0115】
上記実験結果から、本発明の白血球増多活性成分は抗腫瘍薬(たとえばシクロホスファミド)による白血球数の低下を緩和および改善するため、白血球減少症の予防および/または治療に有用であることが示された。
【0116】
実施例2 ACP1の腫瘍患者に対する白血球増多試験
10名の化学治療(使用された化学治療薬はアドリアマイシン、シクロホスファミド、イリノテカン、タキソール、シスプラチン、オキサリプラチン、ビンクリスチン、フルオロウラシルなどである)を受け、かつ末梢血における白血球数が減少した腫瘍患者を被験者とした。投与の1日前(0日目)に採血し、血液ルーチン検査を行い、本発明の薬物による治療前の白血球数(Czs)とした。
【0117】
10名の被験者に毎日異なる投与回数および投与量でACPを投与し(表2に示す)、それぞれ8日、15日、22日および28日で10名の被験者から採血し、血液ルーチン検査を行った。
【0118】
結果は表2に示す。
【0119】
【表2】
【0120】
結果から、ACP1が顕著な白血球数を向上させる作用を有することが示された。
【0121】
(i)投与から8日目に、大半の被験者の白血球数(C1/Czs)は顕著に増多した(白血球増多処理前と比べ、白血球増多の幅(C1/Czs-100%)=約50%であった)。
【0122】
(ii)投与から15日目に、被験者の白血球(C1/Czs)がさらに増多し、増多の幅は平均で約80%で、最高で約178%に達した。
【0123】
(iii)投与から22日目に、被験者の白血球増多の幅は平均で約63%であった。
【0124】
(iv)投与から28日目に、被験者の白血球増多の幅は平均で約50%であった。全部28日の試験期間内で、被験者の白血球数はいずれも顕著に低下することなく、正常の白血球レベルに維持した。
【0125】
そのため、本発明の化合物は顕著に腫瘍患者の白血球数を向上させることができ、顕著な白血球増多作用を有する。
【0126】
これは、すでに抗腫瘍薬で化学治療を行うことによって、白血球数が低下した(白血球の正常値の下限に近いか、それよりも低い)対象に対し、本発明の白血球増多活性成分は顕著な改善作用を有するため、化学治療(または放射線治療)による白血球減少に有用である。
【0127】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、当業者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の形態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。