(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】導電構造体
(51)【国際特許分類】
H01R 35/02 20060101AFI20220816BHJP
H01B 5/02 20060101ALI20220816BHJP
H01R 4/58 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
H01R35/02 B
H01B5/02 Z
H01R4/58 C
H01R35/02 A
H01R35/02 M
(21)【出願番号】P 2020104361
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】小泉 航路
(72)【発明者】
【氏名】市川 喜章
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0101154(KR,A)
【文献】特開昭63-250082(JP,A)
【文献】中国実用新案第208385025(CN,U)
【文献】実公昭51-025744(JP,Y1)
【文献】特開2012-182047(JP,A)
【文献】特開2010-167427(JP,A)
【文献】実開昭63-128625(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 35/02
H01B 5/02
H01R 4/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状に形成され、車両の導電路を構成する単層バスバーと、
前記単層バスバーより薄板状に形成された複数のバスバーが積層されて構成され、前記単層バスバーの端部と接合され前記導電路を構成する多層バスバーとを備え、
前記多層バスバーは、積層された前記複数のバスバーの少なくとも一部が隣接する前記バスバーと相互に相対変位可能とされた本体部、及び、前記本体部の前記単層バスバー側の端部に位置し、積層された前記複数のバスバーが相互に相対変位不能とされ前記単層バスバーの端部と接合される接合端部を含
み、
前記単層バスバーは、前記多層バスバーの前記本体部より高い剛性を有し、設置経路を規制する経路規制部を構成し、
前記多層バスバーは、前記単層バスバーより高い可撓性を有し、変形を許容する変形許容部を構成し、
前記経路規制部を構成する前記単層バスバーは、延在方向に沿った長さが前記変形許容部を構成する前記多層バスバーの延在方向に沿った長さより長いことを特徴とする、
導電構造体。
【請求項2】
前記多層バスバーは、前記本体部の前記接合端部側とは反対側の端部に位置し、積層された前記複数のバスバーが相互に相対変位不能とされた取付端部を含む、
請求項
1に記載の導電構造体。
【請求項3】
前記単層バスバー、及び、前記多層バスバーの外面を覆い絶縁する絶縁被覆を備える、
請求項1
又は請求項
2に記載の導電構造体。
【請求項4】
前記多層バスバーは、積層された前記複数のバスバーが相互に接触して導通されている、
請求項1乃至請求項
3のいずれか1項に記載の導電構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両において導電路を構成する導電構造体に関する技術として、例えば、特許文献1には、積層体と、端子部と、保護板と、を備えた可撓導体が開示されている。積層体は、複数枚の薄板を積層して形成され導電性と可撓性を有する。端子部は、積層体の両端部に設けられる。保護板は、端子部と積層体の接合部分に配置されて薄板がめくれ上がるのを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に記載の可撓導体は、例えば、車両において、電力や電気信号を導電するための導電路をより適正に敷設可能な構成の点で更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、適正に導電路を設けることができる導電構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る導電構造体は、板状に形成され、車両の導電路を構成する単層バスバーと、前記単層バスバーより薄板状に形成された複数のバスバーが積層されて構成され、前記単層バスバーの端部と接合され前記導電路を構成する多層バスバーとを備え、前記多層バスバーは、積層された前記複数のバスバーの少なくとも一部が隣接する前記バスバーと相互に相対変位可能とされた本体部、及び、前記本体部の前記単層バスバー側の端部に位置し、積層された前記複数のバスバーが相互に相対変位不能とされ前記単層バスバーの端部と接合される接合端部を含むことを特徴とする。
【0007】
また、上記導電構造体では、前記単層バスバーは、前記多層バスバーの前記本体部より高い剛性を有し、設置経路を規制する経路規制部を構成し、前記多層バスバーは、前記単層バスバーより高い可撓性を有し、変形を許容する変形許容部を構成するものとすることができる。
【0008】
また、上記導電構造体では、前記多層バスバーは、前記本体部の前記接合端部側とは反対側の端部に位置し、積層された前記複数のバスバーが相互に相対変位不能とされた取付端部を含むものとすることができる。
【0009】
また、上記導電構造体では、前記単層バスバー、及び、前記多層バスバーの外面を覆い絶縁する絶縁被覆を備えるものとすることができる。
【0010】
また、上記導電構造体では、前記多層バスバーは、積層された前記複数のバスバーが相互に接触して導通されているものとすることができる。
【0011】
また、上記導電構造体では、前記単層バスバーは、延在方向に沿った長さが前記多層バスバーの延在方向に沿った長さより長いものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る導電構造体は、単層バスバーと、多層バスバーとによって車両の導電路を構成する。多層バスバーは、単層バスバーより薄板状に形成された複数のバスバーが積層されて構成される。そして、多層バスバーは、本体部において、積層された複数のバスバーが相互に相対変位可能とされる一方、単層バスバーとの接合端部において、積層された複数のバスバーが相互に相対変位不能とされる。この構成により、導電構造体は、単層バスバーが剛体部として機能する一方、多層バスバーの本体部が柔軟部として機能し、その上で、接合端部を介して両者を確実に接合することができる。この結果、導電構造体は、適正に導電路を設けることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態に係る導電構造体の概略構成を表す模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る導電構造体の単層バスバー概略構成を表す模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る導電構造体の多層バスバー概略構成を表す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0015】
[実施形態]
図1に示す本実施形態の導電構造体1は、車両Vに適用され、当該車両Vに搭載される各装置間を接続し電源供給や信号通信に用いられる構造的な電装モジュールを構成するものである。導電構造体1は、車両Vに搭載された種々の機器に電力や電気信号を伝送する。本実施形態の導電構造体1は、単層バスバー10と、多層バスバー20とを備え、これらを組み合わせて一連なりの導電路100を構成することにより、車両Vにおいて適正に導電路100を設けることができるようにしたものである。
【0016】
導電構造体1は、典型的には、種々の機器の間に帯状に延在する長尺物として形成される。導電構造体1よって構成される導電路100は、車両Vにおいて、種々の機器に接続され、電気を伝導する伝送路を構成する。導電路100は、典型的には、機器を駆動させる電力を伝送する電源系伝送路や機器において入出力される電気信号を伝送する通信系伝送路を構成する。以下、各図を参照して導電構造体1の各構成について詳細に説明する。
【0017】
単層バスバー10は、
図2に示すように、導電性を有して板状に形成され、車両Vの導電路100の一部を構成する。単層バスバー10は、1枚の厚板状のバスバー11によって構成される。言い換えれば、単層バスバー10は、単層構造のバスバー11によって構成される。
【0018】
一方、多層バスバー20は、
図3に示すように、複数のバスバー21が積層されて構成される積層体であり、単層バスバー10の端部と接合され導電路100の一部を構成する。多層バスバー20を構成する複数のバスバー21は、それぞれ導電性を有して単層バスバー10より薄板状に形成される。つまり、多層バスバー20は、複数の薄板状のバスバー21によって構成される。言い換えれば、多層バスバー20は、多層構造の複数のバスバー21によって構成される。
【0019】
バスバー11、21は、導電性を有する金属材料、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等によって形成される。バスバー11、21は、略矩形板状に形成された平板状導体である。バスバー11、21は、帯状に延在する長尺物として形成される。バスバー11、21は、導電路100に沿って延在し、当該延在方向と直交する断面形状が略矩形状に形成される(
図2、
図3参照)。バスバー11、21は、延在方向に対してほぼ同じ断面形状で延びるように形成される。
【0020】
そして、バスバー11は、上述したように、板厚方向(上記断面形状における短辺方向)に沿った厚さT1がバスバー21の板厚方向に沿った厚さT2より厚い厚板状に形成される。言い換えれば、バスバー21は、上述したように、板厚方向に沿った厚さT2がバスバー11の板厚方向に沿った厚さT1より薄い薄板状に形成される。これにより、バスバー11は、バスバー21と比較して、単体で十分な剛性を有する厚板状に構成される。このバスバー11は、単体で単層バスバー10を構成する。一方、バスバー21は、バスバー11と比較して、単体で十分な可撓性を有する薄板状に構成される。より詳細には、バスバー21は、板厚方向に対して良好な可撓性を有する。バスバー21は、板厚方向に沿って複数が重ねられ積層されることで、多層バスバー20を構成する。多層バスバー20を構成する複数のバスバー21は、典型的には、相互に同一材料で、かつ、延在方向と直交する断面形状が相互に同一形状で形成され、延在方向、板厚方向、及び、幅方向が相互に一致している。
【0021】
単層バスバー10は、上記のように単層構造の厚板状のバスバー11によって構成されることで、導電構造体1において、経路規制部1Aを構成する。一方、多層バスバー20は、上記のように多層構造の複数の薄板状のバスバー21によって構成されることで、導電構造体1において、変形許容部1Bを構成する。
【0022】
単層バスバー10によって構成される経路規制部1Aは、導電構造体1において、多層バスバー20の後述の本体部20Aより高い剛性を有し、当該導電構造体1の設置経路を規制する部位を構成する。経路規制部1Aは、車両Vにおける設置経路に応じた形状に形成されることで、導電構造体1の当該設置経路を規制することが可能となり、言い換えれば、高い形状保持機能を有することとなる。
【0023】
一方、多層バスバー20によって構成される変形許容部1Bは、導電構造体1において、単層バスバー10より高い可撓性を有し、当該導電構造体1の変形を許容する部位を構成する。変形許容部1Bは、典型的には、バスバー21の板厚方向に対する変形を好適に許容する。変形許容部1Bは、車両Vに導電構造体1を設置する際に変形が許容されることで、設置作業性を向上することが可能となり、言い換えれば、相対的に高い形状可変機能を有することとなる。
【0024】
本実施形態の導電構造体1は、車両Vにおける設置位置等に応じて単層バスバー10による経路規制部1Aと多層バスバー20による変形許容部1Bとが使い分けられる。この構成により、導電構造体1は、各部位に応じて要求される適正な可撓性と剛性とのバランスを実現し、良好な作業性や取扱い性等の確保を図ることができる。
【0025】
本実施形態の導電構造体1は、経路規制部1Aを構成する単層バスバー10の一方の端部に変形許容部1Bを構成する多層バスバー20が接合される。そして、本実施形態の導電構造体1では、経路規制部1Aを構成する単層バスバー10の延在方向に沿った長さL1が変形許容部1Bを構成する多層バスバー20の延在方向に沿った長さL2より相対的に長い(
図1参照)。言い換えれば、本実施形態の導電構造体1では、変形許容部1Bを構成する多層バスバー20の延在方向に沿った長さL2が経路規制部1Aを構成する単層バスバー10の延在方向に沿った長さL1より相対的に短い。
【0026】
より具体的には、単層バスバー10は、本体部10A、及び、取付端部10Bを含んで構成される。単層バスバー10は、本体部10A、及び、取付端部10Bの全体が単層構造のバスバー11によって構成される。
【0027】
本体部10Aは、単層バスバー10において経路規制部1Aを構成する主たる部分である。本体部10Aは、車両Vにおける設置経路に応じた形状に折り曲げられて形成される。ここでは、本体部10Aは、取付端部10B側の端部において、設置経路に応じて複数箇所に屈曲部を有して形成される。本体部10Aは、上述したように高い剛性を有する厚板状のバスバー11を、例えば、曲げ加工用の各種機器等によって設置経路に応じた形状に折り曲げ、塑性変形させることで、その形状が保持される。この構成により、本体部10Aは、多層バスバー20の後述の本体部20Aより高い剛性を有し、導電構造体1の設置経路を規制する経路規制部1Aを構成することができる。
【0028】
取付端部10Bは、本体部10Aにおいて多層バスバー20と接合される側の端部とは反対側の端部に位置し、種々の機器に取り付けられる部分である。取付端部10Bは、例えば、ボルト締結、各種溶着等によって種々の機器と電気的に接続され、導通される。
図1では一例として、取付端部10Bは、ボルト締結孔10Baが形成されており、当該ボルト締結孔10Baを介してボルトによって種々の機器にボルト締結されるものとして図示している。
【0029】
多層バスバー20は、本体部20A、接合端部20B、及び、取付端部20Cを含んで構成される。多層バスバー20は、本体部20A、接合端部20B、及び、取付端部20Cの全体が多層構造の複数のバスバー21によって構成される。
【0030】
本体部20Aは、多層バスバー20において変形許容部1Bを構成する主たる部分である。本体部20Aは、積層された複数のバスバー21の少なくとも一部が隣接するバスバー21と相互に相対変位可能とされた部分である。ここでは、本体部20Aは、積層された複数のバスバー21のすべてが隣接するバスバー21と相互に相対変位可能とされる。本体部20Aは、例えば、接合端部20B、取付端部20Cにおいて後述するような溶着、超音波接合、導電性を有する接着剤による接着、熱圧着等が施されず、隣接するバスバー21同士がフレキシブル化され、層間変位許容部を構成する。この構成により、本体部20Aは、単層バスバー10より高い可撓性を有し、導電構造体1の変形を許容する変形許容部1Bを構成することができる。変形許容部1Bを構成する本体部20Aは、上述したように、典型的には、バスバー21の板厚方向に対する変形を好適に許容する。
【0031】
接合端部20Bは、本体部20Aの単層バスバー10側の端部に位置し、単層バスバー10の端部と接合される部分である。一方、取付端部20Cは、本体部20Aの接合端部20B側とは反対側の端部、すなわち、本体部20Aにおいて単層バスバー10と接合される側の端部とは反対側の端部に位置し、種々の機器に取り付けられる部分である。
【0032】
接合端部20B、及び、取付端部20Cは、共に積層された複数のバスバー21が相互に相対変位不能とされた部分である。ここでは、接合端部20B、及び、取付端部20Cは、積層された複数のバスバー21のすべてが隣接するバスバー21と相互に相対変位不能とされる。接合端部20B、及び、取付端部20Cは、例えば、溶着、超音波接合、導電性を有する接着剤による接着、熱圧着等の種々の手法によって、隣接するバスバー21同士が相対変位不能に固定され一体化され、層間変位拘束部を構成する。この構成により、接合端部20B、及び、取付端部20Cは、本体部20Aより高い剛性を有すると共に、多層バスバー20を複数のバスバー21の積層体として束ねられた状態として維持することができる。
【0033】
そして、接合端部20Bは、単層バスバー10の本体部10Aの取付端部10B側とは反対側の端部と接合され、単層バスバー10と多層バスバー20との繋ぎ部30を構成する。接合端部20Bは、例えば、レーザ接合、超音波接合、摩擦撹拌接合等の種々の手法によって、単層バスバー10の本体部10Aと接合される。また、接合端部20Bは、例えば、ボルト締結等によって単層バスバー10の本体部10Aと接合されてもよい。この構成により、多層バスバー20は、当該接合端部20Bを介して単層バスバー10の本体部10Aと電気的に接続され、導通される。
【0034】
一方、取付端部20Cは、上述した取付端部10Bと同様に、例えば、ボルト締結、各種溶着等によって種々の機器と電気的に接続され、導通される。
図1では一例として、取付端部20Cは、取付端部10Bと同様に、ボルト締結孔20Caが形成されており、当該ボルト締結孔20Caを介してボルトによって種々の機器にボルト締結されるものとして図示している。ここでは、ボルト締結孔20Caは、取付端部20Cを構成する複数のバスバー21に渡って当該複数のバスバー21を貫通して形成される。
【0035】
また、本実施形態の導電構造体1は、単層バスバー10、及び、多層バスバー20の外面を覆い絶縁する絶縁被覆40を備える。
【0036】
絶縁被覆40は、絶縁性を有する樹脂材料により形成され、単層バスバー10、及び、多層バスバー20の外面に接して設けられ、これらの外面を覆い絶縁するバスバー被覆である。本実施形態の絶縁被覆40は、単層バスバー10、多層バスバー20において、本体部10A、本体部20A、及び、接合端部20Bの全体を一括で覆い絶縁する一方、取付端部10B、 取付端部20Cは、この絶縁被覆40から露出している。
【0037】
絶縁被覆40は、例えば、本体部10A、本体部20A、及び、接合端部20Bの外面側に、樹脂材料(PP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)、架橋PE(ポリエチレン)等。耐摩耗性や耐薬品性、耐熱性等に配慮して適宜選定される。)を押出成形することによって形成される。また、絶縁被覆40は、例えば、本体部10A、本体部20A、及び、接合端部20Bを樹脂材料の中に沈めて被覆するディッピング処理によって形成されてもよい。また、絶縁被覆40は、例えば、本体部10A、本体部20A、及び、接合端部20Bに樹脂材料を吹き付けて被覆するスプレー処理によって形成されてもよい。また、絶縁被覆40は、例えば、樹脂材料によって管状に形成された熱収縮チューブを本体部10A、本体部20A、及び、接合端部20Bの外面に装着し当該熱収縮チューブを加熱し熱を与え収縮させることで形成されてもよい。
【0038】
本実施形態の多層バスバー20は、上記の絶縁被覆40に被覆された状態で、積層された複数のバスバー21が相互に接触して導通されている(
図3参照)。ここでは、多層バスバー20は、積層された複数のバスバー21のすべてが隣接するバスバー21と相互に接触して導通されている。言い換えれば、多層バスバー20は、積層された複数のバスバー
21において、隣接するバスバー
21同士の間に絶縁被覆40が介在しないように、当該複数のバスバー21が相互に接触して積層されている。この構成により、本実施形態の多層バスバー20は、当該多層バスバー20を構成するすべてのバスバー21が略同電位となる。
【0039】
以上で説明した導電構造体1は、単層バスバー10と、多層バスバー20とによって車両Vの導電路100を構成する。多層バスバー20は、単層バスバー10より薄板状に形成された複数のバスバー21が積層されて構成される。そして、多層バスバー20は、本体部20Aにおいて、積層された複数のバスバー21が相互に相対変位可能とされる一方、単層バスバー10との接合端部20Bにおいて、積層された複数のバスバー21が相互に相対変位不能とされる。この構成により、導電構造体1は、単層バスバー10が剛体部として機能する一方、多層バスバー20の本体部20Aが柔軟部として機能し、その上で、接合端部20Bを介して複数のバスバー21を積層体として一括で束ねた状態で両者を確実に接合することができる。この結果、導電構造体1は、適正に導電路100を設けることができる。
【0040】
より具体的には、以上で説明した導電構造体1は、単層バスバー10が経路規制部1Aを構成し、多層バスバー20が変形許容部1Bを構成する。この構成により、導電構造体1は、車両Vにおける設置位置等に応じて経路規制部1Aと変形許容部1Bとが使い分けられることで、各部位に応じて要求される適正な可撓性と剛性とのバランスを実現することができる。これにより、導電構造体1は、当該導電構造体1が大電流化、大断面化した場合であっても、良好な設置作業性や良好な取扱い性等を確保することができる。
【0041】
例えば、導電構造体1は、当該導電構造体1において、単層バスバー10によって構成される経路規制部1Aが相対的に高い剛性を有することで、当該経路規制部1Aの部分が相対的に高い形状保持機能を有する。この構成により、導電構造体1は、この経路規制部1Aの部分によって車両Vにおける導電路100の設置経路に応じた形状を維持し易い構造とすることができる。この結果、導電構造体1は、例えば、コルゲートチューブ等の外装材を用いなくても、当該経路規制部1Aによって導電路100の設置経路を規制することができ、また、クランプ等の固定具の使用数も抑制することができる。
【0042】
一方、導電構造体1は、当該導電構造体1において、多層バスバー20によって構成される変形許容部1Bが相対的に高い可撓性を有することで、当該変形許容部1Bの部分が相対的に高い形状可変機能を有する。この構成により、導電構造体1は、この変形許容部1Bの部分によって導電路100の設置経路の変更や微調整に柔軟に対応することができる。例えば、導電構造体1は、車両Vへの組み付けや各部との接続の際に、当該変形許容部1Bがバスバー21の板厚方向に対する変形することによって各種の公差やバラツキを吸収することができ、車両Vへの搭載性を向上することができる。
【0043】
この結果、導電構造体1は、経路規制部1Aによって導電路100の設置経路に応じた形状を維持した上で変形許容部1Bによって可動性も確保することができる。そして、本実施形態の導電構造体1は、このような前提のもと、車両Vにおいてより適正に導電路100を設けることができる。
【0044】
ここでは、以上で説明した導電構造体1は、多層バスバー20において、本体部20Aの接合端部20B側とは反対側の取付端部20Cも、積層された複数のバスバー21が相互に相対変位不能とされる。この構成により、導電構造体1は、多層バスバー20の両端で複数のバスバー21を積層体として一括で束ねた状態で、取付端部10Bを種々の機器と電気的に接続することができる。この結果、導電構造体1は、例えば、取付端部20Cを構成する複数のバスバー21に渡って形成された各ボルト締結孔20Caを適正に位置合わせした状態で取付端部10Bを機器に組み付け易くすることができるので、組み付け作業性を向上することができる。この点でも、導電構造体1は、適正に導電路100を設けることができる。
【0045】
また、以上で説明した導電構造体1は、絶縁被覆40によって単層バスバー10、及び、多層バスバー20を一括で適正に被覆することができる。
【0046】
この場合に、以上で説明した導電構造体1は、多層バスバー20において、積層された複数のバスバー21が絶縁被覆40を介在させずに相互に接触して導通されている。この構成により、導電構造体1は、車両Vにおける大電流化、導電路100の大断面化等の要請に対して対応しやすい構成とすることができる。その上で、導電構造体1は、多層バスバー20を構成する複数のバスバー21が略同電位となるようにすることができ、複数のバスバー21において電流に偏りが生じることを抑制することができるので、導通性能を安定化させることができる。
【0047】
また、以上で説明した導電構造体1は、単層バスバー10が相対的に長く形成され、多層バスバー20が相対的に短く形成される。この構成により、導電構造体1は、例えば、相対的に高コストになり易い傾向にある多層バスバー20の領域を抑制した上で、必要に応じて当該多層バスバー20が設けられるので、製造コストを抑制した上で、適正に導電路100を設けることができる。
【0048】
なお、上述した本発明の実施形態に係る導電構造体は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【0049】
以上で説明した導電構造体1は、好適には電源系伝送路(いわゆる高圧系)に用いられるが、これに限らず通信系伝送路(いわゆる低圧系)に用いられてもよい。
【0050】
以上の説明では、多層バスバー20を構成する複数のバスバー21は、典型的には、相互に同一材料で、かつ、延在方向と直交する断面形状が相互に同一形状で形成されるものとして説明したがこれに限らない。多層バスバー20を構成する複数のバスバー21は、異なる材料のものが混在していてもよいし、厚さT2等が異なるものが混在していてもよい。
【0051】
以上の説明では、多層バスバー20は、積層された複数のバスバー21のすべてが隣接するバスバー21と相互に接触して導通され、すべてのバスバー21が略同電位となるように形成されるものとして説明したがこれに限らない。多層バスバー20は、複数のバスバー21の一部が隣接するバスバー21と相互に接触して導通され、残りが絶縁されていてもよいし、複数のバスバー21のすべてが隣接するバスバー21と相互に絶縁されていてもよい。例えば、絶縁被覆40は、積層された複数のバスバー21において、隣接するバスバー21同士の間に介在し、これらを絶縁するように設けられてもよい。また、絶縁被覆40は、そもそも設けられていなくてもよい。
【0052】
以上の説明では、多層バスバー20は、単層バスバー10の一方の端部に接合されるものとして説明したが、単層バスバー10の両方の端部にそれぞれ1つずつ接合されてもよい。
【0053】
以上の説明では、取付端部20Cは、積層された複数のバスバー21が相互に相対変位不能とされるものとして説明したがこれに限らない。
【0054】
以上の説明では、単層バスバー10が相対的に長く形成され、多層バスバー20が相対的に短く形成されるものとして説明したがこれに限らず、例えば、単層バスバー10が相対的に短く形成され、多層バスバー20が相対的に長く形成されてもよい。
【0055】
本実施形態に係る導電構造体は、以上で説明した実施形態、変形例の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 導電構造体
1A 経路規制部
1B 変形許容部
10 単層バスバー
10A 本体部
10B 取付端部
10Ba、20Ca ボルト締結孔
11、21 バスバー
20 多層バスバー
20A 本体部
20B 接合端部
20C 取付端部
30 繋ぎ部
40 絶縁被覆
100 導電路
L1、L2 長さ
T1、T2 厚さ
V 車両