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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】拡張可能なアンカーの打ち込み過ぎの防止
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/56 20060101AFI20220816BHJP
【FI】
A61B17/56
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017102392
(22)【出願日】2017-05-24
(65)【公開番号】P2017209497
(43)【公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-03-09
(31)【優先権主張番号】15/164,307
(32)【優先日】2016-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514046806
【氏名又は名称】メドス・インターナショナル・エスエイアールエル
【氏名又は名称原語表記】Medos International SARL
【住所又は居所原語表記】Chemin-Blanc 38, CH-2400 Le Locle, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】メフメット・ゼット・センガン
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・アール・ホイッタカー
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0038221(US,A1)
【文献】米国特許第07787934(US,B2)
【文献】特表2013-510659(JP,A)
【文献】特表2011-528270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0239095(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/56-17/92
A61B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腱固定システムであって、
アンカーアセンブリであって、
ねじ切りされた内腔部が内部に形成されたシースと、
ねじ切りされた拡張器ねじであって、前記シース内の前記ねじ切りされた内腔部に、ねじ込み可能に係合するように構成され、前記拡張器ねじが、前記シースを外方向に拡張させて骨穴に係合させるようになっている、拡張器ねじと、を有する、アンカーアセンブリ、及び
挿入器ツールであって、
近位端及び遠位端を有し、内腔部が内部を通って延びている細長い外側シャフトであって、前記遠位端が前記シースの近位端に結合するよう構成されている、外側シャフトと、
内側シャフトであって、前記内側シャフトは、前記内側シャフトの近位部に少なくとも1つの係合機能部を有し、前記拡張器ねじの近位端に形成された対応する駆動凹部に係合するよう構成されている遠位駆動先端を有する細長い内側シャフトと、を有する、挿入器ツールを備え、
前記係合機能部が、前記外側シャフト上に形成された、対応する係合機能部と係合するまでにおいて、前記内側シャフトが前記外側シャフトに対して回転可能であり前記内側シャフトの回転により前記拡張器ねじを前記シースの中にねじ込ように、前記システムは構成されており、
記係合機能部前記対応する係合機能部と係合すると、前記内側シャフトが前記外側シャフトに対しさらに回転してさらに遠位に動くのを妨げ、前記シースの中に前記拡張器ねじが挿入され過ぎるのを防ぐように、前記システムはさらに構成されている、システム。
【請求項2】
前記係合機能部と、前記対応する係合機能部とが係合することと、前記外側シャフトの前記遠位端が、前記シースの前記近位端と当接することとにより、前記シースの中に前記拡張器ねじが挿入され過ぎるのを防ぐように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記内側シャフトは、その遠位端上に形成された垂直方向停止面を含み、前記垂直方向停止面は、前記拡張器ねじの前記近位端上に形成された、対応する垂直方向停止面に係合して、これらの前記垂直方向停止面は、前記駆動凹部の中に前記遠位駆動先端が挿入され過ぎるのを制限するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記垂直方向停止面のそれぞれは、前記内側シャフトと係合するための前記拡張器ねじのねじ山のピッチよりも低い高さを有する、請求項に記載のシステム。
【請求項5】
前記遠位駆動先端はねじ切りされておらず、前記拡張器ねじ内の前記駆動凹部の形状に対応する形状を有し、前記遠位駆動先端の回転が前記拡張器ねじの対応する回転を引き起こすようになっている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記内側シャフト上及び前記外側シャフト上のそれぞれの前記係合機能部は、少なくとも1つの歯を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの歯は、角度をつけられ、前記歯どうしが噛み合わされると、機械的な連結部を形成し、前記内側シャフトの前記外側シャフトに対する回転を防止するようになっている、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
腱固定システムであって、
ねじ切りされた内腔部が内部に形成されたシースと、前記シース内の前記ねじ切りされた内腔部にねじ込み可能に係合するように構成された、ねじ切りされた拡張器ねじとを有し、前記拡張器ねじが前記シースを外方向に拡張し、骨穴に係合させるようになっており、前記拡張器ねじは、前記拡張器ねじの近位端に形成された駆動凹部を含む、アンカーアセンブリ、及び
挿入器ツールであって、
近位端及び遠位端と、内部を通って延びている内腔部とを有する細長い外側シャフトであって、前記遠位端が前記シースの近位端に結合するよう構成されている、外側シャフトと、
動部位を備えた遠位駆動先端を有する細長い内側シャフトと、を備える、挿入器ツールを有し、
前記シース中に前記拡張器ねじを挿入する際において、前記駆動部位は、前記駆動凹部と係合しており、前記拡張器ねじを前記内側シャフトの遠位端から遠位側に遠ざかるように動かして、前記拡張器ねじが前記シースの中に挿入するのを可能とし、
前記シース中に前記拡張器ねじが完全に挿入された後に、前記拡張器ねじを前記内側シャフトの前記遠位端から遠位側に遠ざかるように動かすと、前記駆動部位が前記駆動凹部との係合を解消して、前記シースの中に前記拡張器ねじが挿入され過ぎるのを防ぐように構成されている、システム。
【請求項9】
前記駆動部位が、対向する平坦面を有する平頭を備え、前記駆動凹部が、前記拡張器ねじの近位端に形成された細長いスロットを備える、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
前記遠位駆動先端が、前記駆動部位から遠位方向に延びるピンを含み、前記ピンは、前記拡張器ねじ内に形成された内腔の中に延びるように構成され、かつ前記ピンは、前記拡張器ねじに対して自由に回転可能である、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
前記内側シャフト及び前記外側シャフトは相補的な当接面を含み、前記シース中に前記拡張器ねじが完全に挿入された際に前記当接面が互いに接触して前記内側シャフトが前記外側シャフトに対して遠位側に動くのを妨げて、前記拡張器ねじが前記シースの中にねじ込まれ過ぎないように構成されている、請求項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
提供されるのは、組織を骨に固定するための外科的方法及び装置であり、より具体的には、2ピース式アンカーのシース内に拡張器を深く挿入し過ぎるのを防ぐための方法及び装置である。
【背景技術】
【0002】
二頭筋腱長頭の疾患は、肩の痛みの一般的な原因であり、回旋腱板裂傷、上方肩関節唇損傷、インピンジメント症候群、及び関節包損傷などの、他の診断と関連して生じる場合があるか、又は肩の痛みの単独の原因として存在する場合もある。上腕二頭筋長頭(LHB)障害を治療する選択肢は進歩し続け、LHB腱固定術が含まれ得る。腱固定手術では、LHBを肩峰下の空間に配置し、切開中に近位方向の制御が可能となるよう、LHBの基部に縫合糸が通される。縫合糸が配置されたら、LHBは関節窩連結部付近で切断される。腱の大きさを測定して、適切な大きさの骨ねじを決定するためにサイザーを使用できる。一度ねじが選択されると、ドリルで骨穴を開け、その後、腱フォークを使用して、腱を骨穴の内部に押し込む。骨ねじはその後、腱を骨穴内部に固定するため、骨穴内に送り込まれる。
【0003】
腱を固定するための骨ねじの中には、2つのピース、すなわちシースとねじとを含むものがあるが、ねじはシース内に挿入され、シースを径方向に拡張させてシースを骨穴の内部に固定させ、それにより、腱を骨穴の内部に固定させるものである。現行の2ピース式アンカーは非常に効果的なものであるが、ねじがシースに挿入されるのが深過ぎる場合があるという問題点を抱えている。このような事態が起こると、シースが不要な回転をする、シースが不要な動きをする、かつ/又は、シースが拡張され過ぎて破壊また損傷するといった、さまざまな望ましくない影響が出ることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、組織を骨に固定するための方法及び装置には改善が必要とされており、特に、2ピース式アンカー装置のシースの中にねじを挿入する深さを制限するための方法及び装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
腱を骨に付着するための様々なインプラント、器具、及び方法が提供される。
【0006】
1つの態様においては、アンカーアセンブリ及び挿入器ツールを含む腱固定システムが提供される。アンカーアセンブリは、ねじ切りされた内腔部がその内側に形成されたシースと、シース内のねじ切りされた内腔部に係合するよう構成され、シースを外方向に拡張させて骨穴に係合させるねじ切りされた拡張器ねじと、を有する。挿入器ツールは、細長い外側シャフトと、細長い内側シャフトとを有する。細長い外側シャフトは、シースの近位端に結合するよう構成されている遠位端を有する。細長い内側シャフトは、拡張器ねじの近位端に形成された、対応する駆動凹部に係合するよう構成されている遠位駆動先端を有する。1つの例示的な実施形態では、内側シャフトは、拡張器ねじをシースの中にねじ込むために外側シャフトに対して回転することが可能で、かつ、内側シャフトは、拡張器ねじがシースの中に完全にねじ込まれた場合には、拡張器ねじをシースの中に挿入し過ぎるのを防ぐために、外側シャフトに対して回転するのを防止されることが可能である。
【0007】
腱固定システムは、さまざまな方法で変形させることが可能である。例えば、内側シャフト及び外側シャフトは、互いに接触するように構成されている、相補的当接面を含み得る。1つの実施形態では、拡張器ねじがシースの中に挿入され過ぎるのを防ぐために、細長い外側シャフトの遠位端がシースの近位端に当接するよう構成され得る。別の1つの例では、内側シャフトは、その遠位端に形成され、拡張器ねじの近位端に形成された対応する垂直方向停止面と係合するように構成されている垂直方向停止面を含み得るが、その垂直方向停止面が、遠位駆動先端の駆動凹部内への挿入を制限するようになっている。また、垂直方向停止面はそれぞれ、拡張器ねじのねじ山ピッチよりも低い高さを有し得る。更に別の1つの例では、内側シャフトは、その上に形成された少なくとも1つの係合機能部を有し得るが、拡張器がシースの中に完全にねじ込まれた場合には、この係合機能部が、外側シャフト上に形成された対応する係合機能部と係合し、両係合機能部により、内側シャフトが外側シャフトに対して、それ以上回転するのを防ぐようになっている。1つの実施形態では、駆動先端は、ねじ切りがされていないが、拡張器ねじ内の駆動凹部の形状に対応する形状で、駆動先端の回転が拡張器ねじの対応する回転を引きおこすような形状を有している。別の1つの実施形態では、内側シャフト及び外側シャフトのそれぞれの係合機能部は、少なくとも1つの歯を備える。少なくとも1つの歯は、角度をつけられ得るが、それにより、歯どうしがかみ合わされた場合に、機械的な連結部を形成し、内側シャフトが外側シャフトに対して回転するのを防ぐようになっている。
【0008】
別の1つの態様では、アンカーアセンブリを含む腱固定システムが提供されるが、そのアンカーアセンブリは、ねじ切りされた内腔部がその内側に形成されたシースと、シース内のねじ切りされた内腔部とねじ込み可能に係合するように構成され、シースを外方向に拡張させて骨穴に係合させるねじ切りされた拡張器ねじとを有する。腱固定システムはまた、細長い外側シャフトと細長い内側シャフトとを有する挿入器ツールをも含む。細長い外側シャフトは、近位端及び遠位端、並びにそれらの間に延びる内腔部を有する。遠位端は、シースの近位端に結合するよう構成されている。挿入器ツールの細長い内側シャフトは、駆動部位を備える遠位駆動先端を有するが、その駆動部位は、拡張器ねじがシースの中に完全にねじ込まれた場合、駆動凹部との係合を解消するように構成されている。
【0009】
1つの実施形態では、駆動部位が、対向する平坦面を有する平頭を有し、かつ、駆動凹部が、拡張器ねじの近位端に形成された細長いスロットを備えている。別の1つの実施形態では、遠位駆動先端は、駆動部位から遠位側に延びるピンを含み得る。そのピンは、拡張器ねじ内に形成された内腔の中に延びるように構成され得るが、拡張器ねじに対して自由に回転することが可能になっている。また別の1つの実施形態では、内側シャフトは、その近位端と連結され、かつ、拡張器ねじがシース内に完全にねじ込まれた場合に、外側シャフトの近位端に当接するように構成されているハンドルを含む。また、近位側駆動部位は、内側シャフトのハンドルが、外側シャフトの近位端に当接した場合に、駆動凹部との係合を解消するように構成され得る。
【0010】
骨の中にアンカーを埋め込むための方法もまた提供される。1つの実施形態では、その方法は、挿入器ツールの内側シャフトを、挿入器ツールの外側シャフトに対して回転させて、ねじ切りされた拡張器ねじを、外側シャフトに連結されかつ骨穴内部に配設されたシースの、ねじ切りされた内腔部の中に、回転可能に遠位方向にねじ込むことを含む。拡張器ねじはシースを、径方向外側に拡張し、骨に係合させる。拡張器ねじがシースの中に、遠位方向に前進することは、所定の挿入深さに限定されており、拡張器ねじがシースの中に挿入され過ぎるのを防いでいる。
【0011】
この方法は、様々な方法で変えることができる。例えば、内側シャフト上のねじ切りされた遠位駆動先端が、拡張器ねじ内のねじ切りされた穴部に完全にねじ込まれた場合に、内側シャフトは、外側シャフトに対して回転するのを防止され得る。別の1つの例としては、拡張器ねじが所定の挿入深さに到達した場合に、内側シャフトの遠位端がシースの近位端に当接可能になっているものがある。別の1つの例では、内側シャフトは、その遠位端上に形成された垂直方向停止面であって、拡張器ねじが所定の挿入深さに到達した場合に、拡張器ねじの近位端上に形成された対応する垂直方向停止面に係合する垂直方向停止面を含み得る。1つの実施形態では、拡張器ねじが所定の挿入深さに到達した場合に、内側シャフト上に形成された少なくとも1つの係合機能部が、外側シャフト上に形成された対応する係合機能部に係合可能になっている。更に別の1つの例では、拡張器ねじが所定の挿入深さに到達した場合に、内側シャフトの遠位駆動先端は、拡張器ねじ内の駆動凹部との係合を解消するようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
上述した実施例は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明により、更に十分に理解されよう。図面は、縮尺とおりに描写することを意図していない。説明を明瞭にするために、全ての図では、構成要素全てが、必ずしも符号付けされていない場合がある。以下の図面において、
図1A】本発明の1つの実施形態による腱固定アセンブリの内側シャフト及び拡張器ねじの横断面図である。
図1B図1Aの内側シャフト及び拡張器ねじが、外側シャフトを通って、外側シャフトに連結されたシースの中に前進している状態の横断面図である。
図1C図1Bの腱固定アセンブリの横断面図で、ねじがシースの中に完全に挿入された状態を示す横断面図である。
図1D図1Cの腱固定アセンブリの横断面図で、内側シャフトがねじから取り外された状態を示す横断面図である。
図2A】別の1つの実施形態による腱固定アセンブリの内側シャフト及び拡張器ねじの横断面図である。
図2B図2Aの内側シャフト及び拡張器ねじが、外側シャフトを通って、外側シャフトに連結されたシースの中に前進している状態の断面図である。
図2C図2Bの腱固定アセンブリの断面図で、ねじがシースの中に完全に挿入された状態を示す断面図である。
図2D図2Cの腱固定アセンブリの横断面図で、内側シャフトがねじから取り外された状態を示す断面図である。
図3】内側シャフトの遠位端と腱固定アセンブリの拡張器ねじとの間に形成された停止機能部の1つの実施形態の横断面図である。
図4A】腱固定アセンブリの内側シャフト及び拡張器ねじの、別の1つの実施形態の横断面図である。
図4B図4Aの内側シャフト及び拡張器ねじが、外側シャフトを通って、外側シャフトに連結されたシースの中に前進している状態の横断面図である。
図4C図4Bの腱固定アセンブリの横断面図で、ねじがシースの中に完全に挿入された状態を示す横断面図である。
図4D図4A~4Cの、内側シャフトの遠位端と拡張器ねじの近位端との間に形成された連結クラッチ機能部を示す、横断面図である。
図4E図4Dの連結クラッチ機能部の代替的構成を示す横断面図である。
図5A】挿入器ツールの内側シャフトの別の1つの実施形態の横断面図である。
図5B図5Aの挿入器ツールの、D-D’線に沿った下部断面図である。
図5C】拡張器ねじの1つの実施形態の横断面図である。
図5D図5Cの拡張器ねじの、E-E’線に沿った上部断面図である。
図5E図5Cの拡張器ねじに連結された図5Aの内側シャフトの横断面図で、両部品が、外側シャフトを通って、シースの中に前進している状態を示す横断面図である。
図5F図5Eの腱固定アセンブリの横断面図で、拡張器ねじがシースの中に前進している状態を示す横断面図である。
図5G図5Fの腱固定システムの横断面図であり、内側シャフトの遠位端上の駆動機能部が、拡張器ねじとの係合を解消した状態を示す横断面図である。
図5H図5Gの内側シャフトが、拡張器ねじから取り外された状態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本明細書で開示する装置並びに方法の構造、機能、製造及び使用の原理の全体的な理解が得られるように特定の例示的な実施形態を説明する。これらの実施形態の1つ又は2つ以上の実施例が、添付の図面に例示されている。当業者であれば、本明細書で具体的に説明され、かつ添付の図面に例示される装置及び方法が、非限定的な例示的実施形態であること、並びに本発明の範囲が、特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解するであろう。1つの例示的な実施形態に関連して例示又は説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。このような修正及び変形は、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0014】
本明細書を通じて、「様々な実施例(various embodiments)」、「いくつかの実施例(some embodiments)」、「一実施例(one embodiment)」、又は「ある実施例(an embodiment)」等は、その実施例と関連して述べられる特定の特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの実施例に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体を通して各所で、「様々な実施例において(in various embodiments)」、「いくつかの実施例において(in some embodiments)」、「一実施例において(in one embodiment)」、又は「ある実施例において(in an embodiment)」などの語句が出現するが、これらは必ずしもすべてが同じ実施例を指すわけではない。更に、特定の特徴、構造、又は特性を、1つ以上の実施例において任意の好適な方法で組み合わせることもできる。かくして、一実施例に関して図示、又は、説明される特定の特徴、構造、又は特性は、無制限に1つ以上の他の実施例の特徴、構造、又は特性と全て、あるいは、部分的に組み合わせてもよい。
【0015】
明細書全体において、用語「近位」及び「遠位」は、臨床医が患者の処置で使用される器具の一端を操作することに関連して使用可能であることが理解されよう。用語「近位」は、臨床医に最も近い器具の一部を指し、用語「遠位」は、臨床医から最も離れて配置された一部を指す。説明を簡潔、かつ、明瞭とするため、本明細書において、「垂直(vertical)」、「水平(horizontal)」、「上(up)」、及び「下(down)」等の空間に関する用語は、図示の実施例に関して使用され得ることも更に理解されよう。しかしながら、外科用器具は、多くの方向及び位置で使用できるので、これらの用語は、限定的や絶対的なものであることを意図するものではない。
【0016】
概して、靭帯又は腱を骨に固定するための方法及び装置が提供される。例示的な実施例では、上腕二頭筋腱固定手術を実施するために、本方法と本装置が使用されるが、当業者であれば、本装置と本方法を様々な施術において使用することができ、任意の組織を骨に固定するために使用できることも理解していることであろう。複数の例示的実施形態では、腱又はその他の組織を骨穴の内部に固定するために、拡張可能なシースと拡張器とを含むさまざまな骨アンカーを、骨穴の中に送り込むためのさまざまな挿入器ツールが提供される。挿入器ツールは、拡張器をシースの中に所望の深さに駆動しつつも、拡張器がシースの中に挿入されすぎないように構成されている。拡張器をシースの中に駆動し過ぎると、シース、拡張器、靭帯若しくは腱、及び/又は骨に損傷や破壊をもたらすことがあり得る。拡張器をシースの中に駆動する深さが足りないと、靭帯又は腱を骨にしっかりと固定することができず、後で損傷や破壊をもたらすことがあり得る。まだ現行の挿入器ツールドライバーは、回転して拡張器を回転させ続けて、シースを近位側に引き寄せたり、シースを損傷したりする可能性がある。
【0017】
したがって、靭帯又は腱を骨に固定するための方法及び装置であって、拡張器をシースの中に挿入し過ぎるのを防止する、方法及び装置が提供される。その方法及び装置は、アンカーアセンブリと挿入器ツールのうちの任意の1つ以上のものからなるシステムを含むが、アンカーアセンブリは拡張器と及びシースを有し、挿入器ツールは、外側シャフトと、遠位駆動先端を有する内側シャフトとを有する。
【0018】
図1A~1Dは、アンカーアセンブリと挿入器ツールとを含む、腱固定システム100の1つの実施形態を図示している。アンカーアセンブリは、拡張器ねじ107とシース111とを有している。挿入器ツール100は、拡張器ねじ107に結合するように構成されている内側シャフト103と、内側シャフト103の周りに配設され、シース111に結合するように構成されている、外側シャフト109とを有する。シース挿入器ツール100の内側シャフト103は、遠位先端105を有する遠位端を有し、遠位先端105は、ねじ切りされた拡張器ねじ107にかみ合うように構成されている。この実施形態では、外側シャフト109は、内側シャフト103が遠位方向に前進するのを制限するように構成されており、それにより、シース111の中に拡張器ねじ107が前進するのを制限して、拡張器ねじ107がシース111の中に駆動され過ぎるのを防ぐように構成されている。
【0019】
アンカーアセンブリは、さまざまな構成を有し得るが、一般的には、シース111は、拡張器ねじ107をその中に受容し、拡張器ねじ107が、シース111を径方向外側に骨の中に拡張させ、シースの周りに配設された腱を骨穴の内部に固定する効果があるように構成されている。シース111は、任意の生態適合性又は生態吸収性材料から形成されることが可能であり、かつさまざまな構成を有することが可能である。図示されている実施形態では、シース111は、概ね円形又は楕円形の断面幾何形状を有する、概ね細長い円筒形状を有する。シース111は、腱を据え付けるのを助けるための凹形状部(不図示)を有する、最遠位端を有し得る。シース111はまた、その外面上に設けた骨係合面機能部をも含み得るが、それは例えば外面上に形成され、外面の周囲に径方向に延びる、ねじ山又はリブのようなものである。1つの例示的な実施形態では、好ましくは、シース111は骨穴に挿入される間に回転しないので、リブは単一の平面上のものであり、ねじ山を形成するものではない。
【0020】
上述のように、シース111はその中に、シース111を拡張し、シース及びシースの周りに配設された靭帯を骨穴の内部に固定する効果を持つねじを受容するように構成されている。拡張器ねじ107もまた、さまざまな構成を有し得るが、少なくともその複数の部位に沿って、シース111の内径Sよりも大きい直径を有する、概ね円筒形状を、一般的に有している。1つの例示的な実施形態では、拡張器ねじ107は、少なくとも近位側の一部位に沿って、好ましくは、その全長の大半の部位に沿って、一定の小径Eを有する。ねじ107の遠位側の一部位は、遠位方向に行くにつれて内側にテーパー状になり得るが、その最遠位端で、縮小径Eを有し得る。ねじ107は、シース111との係合を容易にするために、その外面の全体又は一部に形成されるねじ山を有し得る。一部の実施形態では、拡張器ねじ107は、シース111に送達されるのを可能にするために完全に挿管され得るが、ねじ107は、平坦な近位側向き表面と、平坦な遠位側向き表面とを有し得る。ねじ107の近位側向き面と遠位側向き面とは、シース及び/又は骨の表面に沿うように構成されているさまざまな形状を有し得る。
【0021】
シース挿入器ツール100は、さまざまな構成をも有し得るが、既に指摘したように、内側シャフト103と外側シャフト109とを含む。内側シャフト103は、ねじ107とかみ合うように構成されている遠位端を備えた、概ね細長い構成を有し得る。例えば、遠位端は、その上に形成され、ねじと係合するための駆動先端105を含み得る。1つの実施形態では、駆動先端105は、ねじ107の近位端内に形成された六角形の駆動ソケットの中に延び、それにより、内側シャフト103がねじ107を回転させることが可能になるようにする、六角形の構成を有する。内側シャフト103の近位端は、その上に形成され、それに連結されたドライバーハンドル101を含み得るが、ドライバーハンドル101は、内側シャフトを回転させるのを容易にするようになっている。ドライバーハンドルアセンブリ101は、さまざまな構成を有し得るが、図示されるように、ハンドル101は把持するのを容易にするような、概ね細長い構成を有する。ハンドル101はまた、外側シャフト109の内側直径Oよりも大きい直径(又は長さ)Hを有し得るが、そのため、ハンドル101は、挿入器ツール100の外側シャフト109の近位端115に当接するようになっている。
【0022】
挿入器ツール100の外側シャフト109はまた、さまざまな構成を有し得る。1つの例示的な実施形態では、外側シャフト109は、外側直径Oを有する、概ね細長い中空の円筒状構成を有しており、外側シャフト109の遠位端は、シース111の近位端113とかみ合うか、少なくとも当接するようになってる。
【0023】
図1B~1Dは、腱固定システムの使用における、さまざまな異なる段階を図示している。図1Bは、ねじ107が内側シャフト103に連結され、外側シャフト109を通って、シース111に向かって前進している状態を図示している。ねじ107がシース111の中を前進するにつれて、内側シャフト103が、矢印Aで示すように回転して、ねじ107上のねじ山を、シースの内部に形成された雌ねじ(不図示)とねじ込み可能に係合させるようになっている。内側シャフト103の時計回りの回転は、図1Cに示すように、ハンドル101の遠位側向きの面が、外側シャフト109の近位端115に当接するまで続く。この時点に至ると、ねじ山を切られた拡張器ねじ107は、シース111の中に完全にねじ込まれている状態である。ハンドル101が近位端115に当接することで、ねじ山を切られた拡張器ねじ107がシース111内に、挿入され過ぎるのを防止するようになっている。したがって、近位端115は、ねじ107がシース111の中に完全に前進したことを示すハードストップとして機能し得る。ねじ山を切られた拡張器ねじ107が、シース111の中に完全にねじ込まれた後で、内側シャフト103は、図1Dに示すようにねじ107との係合を解消され、外側シャフト109から後退することが可能である。
【0024】
ハンドル101と外側シャフト109の近位端とが、シースの中へのねじの挿入を制限するためのストップ部として機能し得るが、1つの例示的な実施形態では、内側シャフト103上の駆動先端105は、その上に形成されたねじ山を含み、そのねじ山は、参照符号tで示すように、ねじ107内の駆動凹部内に形成された対応するねじ山とかみ合うようになっている。駆動先端105が拡張器ねじ107の中に完全にねじ込まれると、内側シャフト103が拡張器ねじ107に対してそれ以上回転することは、防止されることになっている。したがって、内側シャフト103上のハンドル101が、外側シャフト109の近位端に当接すると、ねじ山tが、内側シャフト103の外側シャフト109に対するそれ以上の回転を防止するように機能することになっている。駆動先端105と拡張器ねじ内の駆動凹部との間のねじ式接続がなければ、内側シャフト103は、それ以上遠位方向に動くことはないものの、外側シャフト109に対して自由に回転することになる。そのような回転は、望ましくないことに、拡張器ねじ107が回転させ、シース111の中で更に遠位側に前進させ得るものである。
【0025】
別の1つの実施形態では、図1Cのハードストップ115は、代替的な配置をされ得る。具体的に、図2A~2Dは、外側シャフト209と、その内部に配設される内側シャフト203とを備えるシース挿入ツールを有する腱固定アセンブリ200の別の実施形態を図示しており、内側シャフトは、駆動先端205を有し、かつ、ねじを切られたねじ207内の駆動凹部と係合するように構成されている。既に述べたように、駆動先端が凹部内に完全にねじ込まれた場合には、内側シャフト203が拡張器ねじ207に対してそれ以上回転するのを防ぐために、先端と駆動凹部とは、ねじ切りがされ得る。この実施形態では、外側シャフトの近位端に当接する内側シャフト203上のハンドルを有するのではなく、むしろ、内側シャフトの遠位端が、シースの近位端に当接して、それにより挿入深さを制限するように構成されている。
【0026】
図2Aに示すように、外側シャフト209は、直径Oを有する内腔部を有し、直径Oは、シース211の内腔部の直径Sよりも大きく、シース211の外側直径Sよりも小さくなっている。これにより、外側シャフト209の遠位端が、シース211の近位端213にかみ合うか、少なくともそれに当接するのが可能になる。内側シャフト203の遠位端がシース211の近位端215に当接して、ハードストップを形成するように、内側シャフト203はシース211の内腔部の直径Sよりも大きい外側直径Iを有し得る。図2Bが示すように、使用時に、内側シャフト203が外側シャフト209を通って遠位側に動くことにより、拡張器ねじ207をシース211の中に前進させることになる。図2Cに示すように、拡張器ねじ207が、シース211の中に完全にねじ込まれた場合には、内側シャフト203の遠位端は、シース211の近位端に当接し、内側シャフト203がそれ以上前進するのを防ぐようになっている。内側シャフト203の駆動先端205が拡張器ねじ207の凹部の中にねじ込まれるので、内側シャフト203が更に回転するのが防止される。必要であれば、拡張器ねじ207内の駆動凹部にねじ込まれた駆動先端を緩めるために、内側シャフト203を反時計回りに回転することが可能であり、それにより、図2Dに示すように内側シャフト203を外側シャフト209から取り外すことが可能になる。
【0027】
図1及び図2の実施形態は、ねじ山を切られた拡張器ねじ内の駆動凹部と係合する遠位駆動先端を有する、腱固定アセンブリを一般的に説明するものである。駆動先端を、拡張器ねじ内のねじ山を切られた凹部の中に何回転させるかによって、締め付けの度合いが決定される。ある一部の例では、内側シャフトを拡張器ねじに対して回転させ過ぎた結果として、駆動先端が、拡張器ねじ内の駆動凹部の中で詰まってしまう場合がある。内側シャフトの遠位駆動先端が拡張器ねじ内の駆動凹部の中で詰まってしまうのを防ぎ、拡張器ねじの駆動凹部にねじ込まれた内側シャフトの駆動先端が繰り返し緩められるのを可能にするために、図3に遠位側駆動アセンブリの代替的な実施形態が図示されている。当業者であれば、図3に示す停止機能部は、図1及び図2の腱固定アセンブリとともに用いることが可能であるということを理解するであろう。
【0028】
図3は、内側シャフト301上の駆動先端305が、拡張器ねじ309内の駆動凹部307の中に挿入される深さを制限するための機能部を有する、内側シャフト301と拡張器ねじ309との1つの実施形態を図示している。図示されているように、拡張器ねじ309は、その近位端上に形成されたストップ面又はウェッジ311を含み、内側シャフト301は、その遠位端上に形成された、対応するストップ面又はウェッジ303を含む。ウェッジ303及び311のそれぞれは、荷重を負って、駆動先端305が拡張器ねじ309内の駆動凹部307の中に、挿入され過ぎるのを制限するように構成されている垂直方向の面を有している。ウェッジ303及び311は、反対方向に配列され得る。垂直方向の面が互いに当接し、それにより、内側シャフト301が拡張器ねじ309に対してそれ以上回転するのを防ぐように構成されている。1つの例示的な実施形態では、ウェッジ303及び311それぞれの端部の垂直方向の面は、駆動先端305上及び駆動凹部307内のねじ山のピッチpよりも小さい高さhを有する。そのような構成により、駆動先端305を駆動凹部307に対して丸1回転させた後で、内側シャフト301上のウェッジ303と、拡張器ねじ309上のウェッジ311との間に、垂直方向の面の高さhよりも大きい距離だけ間隔を空けるのが可能になる。その結果、内側シャフト301が拡張器ねじ309に対して2周目の回転をしている間は、ウェッジ303及び311が、互いに接触しないようになっている。
【0029】
使用時に、駆動先端305は、ねじ山を切られた拡張器ねじ309の中に最後までねじ込まれることになっている。拡張器ねじ309をシースの中にねじ込むために内側シャフト301が回転している間に、ウェッジ303の垂直方向の面が、ウェッジ311の垂直方向の面に突き当たることになっている。これが起こると、駆動先端305は、駆動凹部307に対して回転するのを妨げられ、そのかわりに、内側シャフト301と拡張器ねじ309とが一体で回転するようになる。ひとたび拡張器ねじ309がシースの中に完全にねじ込まれると、拡張器ねじ309がシースの中へ挿入される深さを上述のストップ面が制限しているので、内側シャフトを逆方向に回転させて、駆動凹部307にねじ込まれていた駆動先端305を、容易に緩めることが可能となる。
【0030】
別の1つの実施形態では、駆動先端は、六角形の駆動部であり得る。図4は、駆動先端が六角形の駆動部であり、駆動先端の回転が、ハンドルアセンブリの近位端又は遠位端にある機能部、内側シャフト及び外側シャフトと、並びに/又はシースとを有する挿入器ツールにより制限される、腱を固定する手順を示す。
【0031】
図4A~4Cは、腱固定システムの別の1つの実施形態を図示しており、この実施形態は、図2A~2Dのシステムに類似のものであり、内側シャフト403、外側シャフト408、拡張器ねじ407、及びシース411を一般的に含むものである。内側シャフト403は、拡張器ねじ407内の駆動凹部に係合する遠位駆動先端405と、同シャフト403の近位端に連結されたハンドル401とを含む。この実施形態では、駆動先端405はねじ切りされていないが、六角形又はその他の非円形状を有し、それにより、拡張器ねじ407内の相補的な駆動凹部と係合するようになっている。しかも、この装置は、内側シャフト403のハンドル401と、外側シャフト409との間に形成され、内側シャフト403が外側シャフト409に対して回転するのを制限するクラッチアセンブリを有する。特に、ハンドル401の遠位側向き表面と、外側シャフト409の近位側向き表面とはそれぞれ、その上に形成された表面形体又はクラッチ421及び423を含む。クラッチは、さまざまな構成を有し得るが、歯、突起等の形態であり得る。使用時に、シース411の中にねじ407をねじ込むために、内側シャフト403を前進させている間、ハンドル401上のクラッチ421は、シース挿入器ツール400の外側シャフト409の近位端上のクラッチ423と相互に連結されて、それ以上回転するのを防ぐようになっている。図4B~4Cは、拡張器ねじ407をシース411の中に前進させている内側シャフト403を図示しており、同ねじ407がシースの中に完全にねじ込まれた場合には、クラッチ421及び423が互いに当接し係合して、内側シャフト403が外側シャフト409に対してそれ以上回転するのを防止するようになっている。
【0032】
421及び423の具体的な位置は、さまざまに異なり得る。別の1つの実施形態では、1つのクラッチが、内側シャフト403の遠位端421a上に位置し得るが、対応するもう1つのクラッチは、シース411の近位端423a上に位置し得る。
【0033】
その配置に加えて、クラッチはまたさまざまな構成をも有し得る。1つの例示的な実施形態では、クラッチは歯の形態を有し得る。また代替的には、クラッチの係合機能部は、垂直方向停止面、突起物、戻り止め等であり得る。図4Dは、角度αを有するクラッチ421と角度α’を有するクラッチ423のための歯状構成を図示している。図4D中では、角度α及び角度α’は、90°に等しい。別の1つの実施形態では、クラッチは、図4Eに示すように、90°未満の角度β、β’を有するように構成されている。特に、クラッチ421aは角度βを有し、クラッチ423aは角度β’を有する。このような構成は、クラッチ間の機械的な連結をもたらし得るが、それによりひとたび拡張器ねじがシースの中に完全にねじ込まれると、内側シャフト及び拡張器ねじの、外側シャフト及びシースに対する、それ以上の回転を防止する。
【0034】
図5A~5Hは、腱固定アセンブリの別の1つの実施形態を図示している。図5Aに示すように、内側シャフト503は、遠位端505が、拡張器ねじ507にかみ合うように構成されている、概ね細長い構成を有する。遠位端505は、さまざまな構成を有し得るが、一般に、近位側駆動部位531及び遠位部位533を有する。近位側駆動部位531は、拡張器ねじ507に駆動力をかけて、拡張器ねじをシースの中に駆動するように構成されており、遠位部位533は、内側シャフトと拡張器ねじとの間の位置合わせを維持するように構成されている一方で、ねじがシースの中に完全にねじ込まれると、拡張器ねじ507に係合していた近位側駆動部位531の、係合を解消させるようにも機能している。遠位部位533はまた、拡張器ねじと圧入係合を形成し、拡張器ねじ507を内側シャフト503の遠位端上に保持することも可能になっている。
【0035】
図5A及び5Bに示すように、図示されている実施形態では、近位側駆動部位531は、マイナスドライバーの形状である。当業者ならば、近位側駆動部位は、駆動凹部に係合し回転させるよう構成されている、任意の形状を有し得るということを理解するであろう。例えば、近位側駆動部位は、正方形、六角形等々の形状であり得る。平頭の近位側駆動部位531は、図5C及び5Dに示すように、拡張器ねじ507の近位端を横切るように延びる対応する細長いスロット541と係合するように構成されている。遠位部位533は、拡張器ねじ507内に形成されている細長い穴部543の中に延びるように構成されている、中央ピンの形態を有している。中央ピンは好ましくは細長い穴部543の中で自由に回転可能になっているが、ピンの回転が、拡張器ねじ507の対応する回転をもたらさないようになっている。1つの例示的な実施形態では、平頭531は、それから遠位方向に延びる中央ピン533の高さ未満の高さを有している。
【0036】
図5E~5Hは、図5A~5Dに図示されているような実施形態を含む、腱固定アセンブリ500の使用における異なる段階を図示している。既に述べたように、当初は、平頭531と、その平頭部位531から遠位方向に突出する中央ピン533を有する遠位端505は、ねじ507と係合し得る。特に、遠位端505の中央ピン533は、ねじ507の中央の駆動ソケット543と摩擦によりかみ合うことが可能であり、遠位端505の平頭531は、スロット541の中に延びることができる。加えて、外側シャフト509の遠位端は、シース511の近位端513とかみ合う。図5Eに示すように、ねじ507が腱固定アセンブリ500の内側シャフト503に連結された状態で、腱を固定する手順の第1段階は、ねじ切りされた拡張器ねじ507をシース511の中に前進させることである。具体的には、内側シャフト503は、遠位方向Fに、外側シャフト509の近位端の中に、最遠位端に向かって突き出される。図5Fに示すように、拡張器ねじ507がシース511の中に完全にねじ込まれると、ハンドル501は外側シャフト509の近位端に当接する。内側シャフト503を更に回転させることにより、拡張器ねじ507はシース511の中に、回転しながら押し込まれ続けることになる。ハンドル501が、内側シャフト503の遠位方向への前進を防止するので、拡張器ねじ507は、内側シャフト503の遠位端から遠位側に遠ざかるように動く。その結果、図5Gに示すように、平頭531は、係合していたスロット541との係合を解消するが、それにより、内側シャフト503が拡張器ねじ507をシース511の中に、それ以上駆動するのが防止される。したがって、内側シャフト503を時計回りに遠位方向に更に追加的に回転させても、シース511の中にねじ507が挿入され過ぎないようになっている。この時点で、図5Hに示すように、内側シャフト503を取り外すことが可能である。ねじ507がシース511の近位端からわずかに突き出した際に、平頭531は、係合していたスロット541との係合を解消して、平頭部位531が完全に係合を解消すると、ねじがシースと完全に同一平面をなすように装置を構成することも可能である。
【0037】
当業者であれば、本明細書で開示した上腕二頭筋腱固定方法と装置が、骨穴を介して骨に取り付けられた腱への外傷や損傷を防止するための様々な外科手術で使用可能であることは、理解しているであろう。また、本発明は、従来の関節修復手術にも適用される。
【0038】
本明細書で開示される装置は、1度使用したら廃棄されるように設計されるか、又は、複数回使用されるよう設計可能である。だが、いずれの場合も、本装置は、少なくとも1回使用してから再度使用するために再調整することができる。再調整には、装置の分解工程、それに続く特定部品の洗浄や交換工程、及び、その後の再組み立て工程の任意の組み合わせを含むことができる。特に、装置は分解可能であり、装置の任意の数の特定部品、又は、部分を、任意の組み合わせで選択的に交換、あるいは、取り除くことができる。特定の部分を洗浄、及び/又は、交換したら、装置は、後で使用するために、再調整施設において、又は、外科手術の直前に外科チームによるいずれかによって再組み立てすることができる。当業者であれば、装置の再調整が、分解、洗浄/交換、及び再組立のための様々な技術を利用できることは、理解しているであろう。かかる技術の使用、及び結果として得られる再調整された装置は、全て本発明の範囲内にある。
【0039】
好ましくは、本明細書に記載する発明は、手術前に処理されるであろう。最初に、新規又は使用済みの器具を入手し、必要であれば洗浄する。次いで器具を滅菌することができる。ある滅菌技術では、器具は、プラスチックバッグ又はTYVEKバッグなど、閉じられて封止された容器に入れられる。次に、容器及び器具は、γ線、X線、及び高エネルギー電子など、容器を透過できる放射線照射野に入れられる。放射線は、器具上又は容器内の細菌を死滅させる。次に、滅菌された器具を滅菌容器に格納することができる。封止された容器は、医療設備において開封されるまで器具を滅菌状態に保つ。
【0040】
装置は滅菌されることが好ましい。これは、β線又はγ線、酸化エチレン、蒸気を含む、当業者に既知の任意の数の方法によって行うことができる。
【0041】
当業者には、上述の実施形態に基づいた本発明の更なる特徴及び利点が理解されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によって示される場合を除き、具体的に示され説明された内容により限定されるものではない。本明細書に引用される全ての刊行物及び文献は、それらの全容を本明細書に明示的に援用する。
【0042】
〔実施の態様〕
(1) 腱固定システムであって、
アンカーアセンブリであって、
ねじ切りされた内腔部が内部に形成されたシースと、
ねじ切りされた拡張器ねじであって、前記シース内の前記ねじ切りされた内腔部に、ねじ込み可能に係合するように構成され、前記拡張器ねじが、前記シースを外方向に拡張させて骨穴に係合させるようになっている、拡張器ねじと、を有する、アンカーアセンブリ、及び
挿入器ツールであって、
近位端及び遠位端を有し、内腔部が内部を通って延びている細長い外側シャフトであって、前記遠位端が前記シースの近位端に結合するよう構成されている、細長い外側シャフトと、
前記拡張器ねじの近位端に形成された対応する駆動凹部に係合するよう構成されている遠位駆動先端を有する細長い内側シャフトであって、前記内側シャフトが前記外側シャフトに対して回転可能で、前記拡張器ねじを前記シースの中にねじ込み、前記拡張器ねじが前記シースの中に完全にねじ込まれると、前記外側シャフトに対して回転するのを防止され、前記シースの中に前記拡張器ねじが挿入され過ぎるのを防ぐ、細長い内側シャフトと、を有する、挿入器ツールを備える、腱固定システム。
(2) 前記遠位駆動先端が前記拡張器ねじの中に完全にねじ込まれると、前記内側シャフトが回転するのを防止されるように、前記内側シャフトの前記遠位駆動先端が前記拡張器ねじとねじ込み可能に係合する、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記シースの中に前記拡張器ねじが挿入され過ぎるのを防ぐために、前記細長い外側シャフトの遠位端が、前記シースの前記近位端と当接するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記内側シャフトは、その遠位端上に形成された垂直方向停止面を含み、前記垂直方向停止面は、前記拡張器ねじの前記近位端上に形成された、対応する垂直方向停止面に係合するように構成され、これらの前記垂直方向停止面は、前記駆動凹部の中に前記遠位駆動先端が挿入されるのを制限するようになっている、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記垂直方向停止面のそれぞれは、前記拡張器ねじのねじ山ピッチよりも低い高さを有する、実施態様4に記載のシステム。
【0043】
(6) 前記内側シャフトは、その上に形成された少なくとも1つの係合機能部を有し、前記係合機能部は、前記拡張器が前記シースの中に完全にねじ込まれると、前記外側シャフト上に形成された、対応する係合機能部と係合するように構成され、これらの前記係合機能部が、前記内側シャフトの前記外側シャフトに対する、更なる回転を防ぐようになっている、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記駆動先端はねじ切りされておらず、前記拡張器ねじ内の前記駆動凹部の形状に対応する形状を有し、前記駆動先端の回転が前記拡張器ねじの対応する回転を引き起こすようになっている、実施態様6に記載のシステム。
(8) 前記内側シャフト上及び前記外側シャフト上のそれぞれの前記係合機能部は、少なくとも1つの歯を備える、実施態様6に記載のシステム。
(9) 前記少なくとも1つの歯は、角度をつけられ、前記歯どうしが噛み合わされると、機械的な連結部を形成し、前記内側シャフトの前記外側シャフトに対する回転を防止するようになっている、実施態様8に記載のシステム。
(10) 腱固定システムであって、
ねじ切りされた内腔部が内部に形成されたシースと、前記シース内の前記ねじ切りされた内腔部にねじ込み可能に係合するように構成された、ねじ切りされた拡張器ねじとを有し、前記拡張器ねじが前記シースを外方向に拡張し、骨穴に係合させるようになっている、アンカーアセンブリ、及び
挿入器ツールであって、
近位端及び遠位端と、内部を通って延びている内腔部とを有する細長い外側シャフトであって、前記遠位端が前記シースの近位端に結合するよう構成されている、細長い外側シャフトと、
前記拡張器ねじが前記シースの中に完全にねじ込まれると、前記駆動凹部との係合を解消するように構成された駆動部位を備えた遠位駆動先端を有する細長い内側シャフトと、を備える、挿入器ツールを有する、腱固定システム。
【0044】
(11) 前記駆動部位が、対向する平坦面を有する平頭を備え、前記駆動凹部が、前記拡張器ねじの近位端に形成された細長いスロットを備える、実施態様10に記載のシステム。
(12) 前記遠位駆動先端が、前記駆動部位から遠位方向に延びるピンを含み、前記ピンは、前記拡張器ねじ内に形成された内腔の中に延びるように構成され、かつ前記ピンは、前記拡張器ねじに対して自由に回転可能である、実施態様10に記載のシステム。
(13) 前記内側シャフト及び前記外側シャフトは、前記拡張器ねじが前記シースの中に完全にねじ込まれると、互いに接触するよう構成されている相補的な当接面を含む、実施態様10に記載のシステム。
(14) 前記当接面が互いに接触すると、前記近位側駆動部位が前記駆動凹部との係合を解消するように構成されている、実施態様13に記載のシステム。
(15) 骨にアンカーを埋め込む方法であって、
挿入器ツールの内側シャフトを、前記挿入器ツールの外側シャフトに対して回転させて、ねじ切りされた拡張器ねじを、前記外側シャフトに連結され骨穴内部に配設されたシースのねじ切りされた内腔部の中に遠位方向に回転可能にねじ込むことを含み、前記拡張器ねじが、前記シースを径方向外側方向に向かって拡張させて骨と係合させ、前記拡張器ねじの前記シースの中への遠位方向の前進は、所定の挿入深さに限定され、前記シースの中に前記拡張器ねじを挿入し過ぎないようにする、方法。
【0045】
(16) 前記内側シャフト上のねじ切りされた遠位駆動先端が、前記拡張器ねじ内のねじ切りされた穴部に完全にねじ込まれると、前記内側シャフトが、前記外側シャフトに対して回転するのを防止される、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記拡張器ねじが前記所定の挿入深さに達した時に、前記内側シャフトの遠位端が、前記シースの近位端に当接する、実施態様15に記載の方法。
(18) 前記内側シャフトは、その遠位端上に形成される垂直方向停止面を含み、前記垂直方向停止面は、前記拡張器ねじの近位端上に形成された、対応する垂直方向停止面と係合する、実施態様15に記載の方法。
(19) 前記拡張器ねじが前記所定の挿入深さに達すると、前記内側シャフト上に形成された少なくとも1つの係合機能部は、前記外側シャフト上に形成された、対応する係合機能部に係合する、実施態様15に記載の方法。
(20) 前記拡張器ねじが前記所定の挿入深さに達すると、前記内側シャフトの遠位駆動先端が、前記拡張器ねじ内の駆動凹部との係合を解消する、実施態様15に記載の方法。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H