(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】バッテリーケース
(51)【国際特許分類】
H01M 50/242 20210101AFI20220816BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20220816BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20220816BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20220816BHJP
H01M 10/6561 20140101ALI20220816BHJP
【FI】
H01M50/242
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/6556
H01M10/6561
(21)【出願番号】P 2017178799
(22)【出願日】2017-09-19
【審査請求日】2020-09-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 吉則
(72)【発明者】
【氏名】岩本 宏明
(72)【発明者】
【氏名】梶川 勝弘
【審査官】加藤 幹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/061109(WO,A1)
【文献】特開2017-27938(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0167544(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/242
H01M 10/613
H01M 10/647
H01M 10/6556
H01M 10/6561
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロアケースの上面をカバーで覆った形態であり、内部にバッテリーモジュールが収容されるバッテリーケースであって、
前記ロアケースのうち前記バッテリーモジュールを支える底壁部が、下板部と、前記下板部の上面に対し緩衝空間を空けて対向する上板部と、前記下板部と前記上板部とを繋ぐ変形可能な連結部とを備えて構成されており、
前記連結部は、平面視形状が六角形をなす複数の角筒部を並べたハニカム構造をなしていることを特徴とするバッテリーケース。
【請求項2】
ロアケースの上面をカバーで覆った形態であり、内部にバッテリーモジュールが収容されるバッテリーケースであって、
前記ロアケースのうち前記バッテリーモジュールを支える底壁部が、下板部と、前記下板部の上面に対し緩衝空間を空けて対向する上板部と、前記下板部と前記上板部とを繋ぐ変形可能な連結部とを備えて構成されており、
前記上板部の上面と前記バッテリーモジュールの下面との間に、変形許容空間が設けられており、
前記変形許容空間が、前記バッテリーモジュールの熱を奪う空気流が流動可能な空間となっていることを特徴とするバッテリーケース。
【請求項3】
前記連結部は、平面視形状が六角形をなす複数の角筒部を並べたハニカム構造をなしていることを特徴とする請求項2記載のバッテリーケース。
【請求項4】
前記連結部は、側面視形状が波状に湾曲した形状の波形板状部材からなっていることを特徴とする請求項2記載のバッテリーケース。
【請求項5】
前記下板部と前記上板部のうち少なくとも一方が金属製であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のバッテリーケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッテリーモジュールを収容するためのバッテリーケースが開示されている。このバッテリーケースは、バッテリーモジュールを支持するロアケースと、ロアケースに載置したバッテリーモジュールを覆うカバーとからなる。ロアケースは、合成樹脂製の底板と、底板の外周に固定された金属製のフレームとを備え、フレームにはカバーの外周縁が固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のバッテリーケースは車両の床下に取り付けられ、ロアケースの底板が、剥き出しの状態で路面と直接、対向している。そのため、走行中に飛び石や縁石等が底板に当たると、その衝撃が底板を介してバッテリーモジュールに加わり、バッテリーモジュールがロアケースから浮き上がるように位置ずれすることになる。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、バッテリーモジュールに加わる衝撃を緩和することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
ロアケースの上面をカバーで覆った形態であり、内部にバッテリーモジュールが収容されるバッテリーケースであって、
前記ロアケースのうち前記バッテリーモジュールを支える底壁部が、下板部と、前記下板部の上面に対し緩衝空間を空けて対向する上板部と、前記下板部と前記上板部とを繋ぐ変形可能な連結部とを備えて構成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
ロアケースの底壁部は、緩衝空間を介して対向する下板部と上板部との二枚板構造となっているので、下板部に加わった衝撃は、下板部と連結部が変形することによって吸収される。これにより、上板部への衝撃が緩和されるので、バッテリーモジュールが受ける衝撃を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、前記連結部は、平面視形状が六角形をなす複数の角筒部を並べたハニカム構造をなしていてもよい。この構成によれば、底壁部の面剛性を高めることができる。
【0010】
本発明は、前記連結部は、側面視形状が波状に湾曲した形状の波形板状部材からなっていてもよい。この構成によれば、底壁部の面剛性を高めることができる。
【0011】
本発明は、前記上板部の上面と前記バッテリーモジュールの下面との間に、変形許容空間が設けられていてもよい。この構成によれば、下板部に加わった衝撃等によって上板部が上方へ変形したとしても、上板部の変形部がバッテリーモジュールの下面と緩衝する虞がない。
【0012】
本発明は、前記変形許容空間が、前記バッテリーモジュールの熱を奪う空気流が流動可能な空間となっていてもよい。この構成によれば、変形許容空間とは別に空冷専用の空間を設けずに済むので、バッテリーケースが大型化することを回避できる。
【0013】
本発明は、前記下板部と前記上板部のうち少なくとも一方が金属製であってもよい。この構成によれば、底壁部に電磁波シールド機能を具備させることができる。
【0014】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を
図1~
図7を参照して説明する。尚、以下の説明において、上下の方向については、
図1~6にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。本実施例1のバッテリーケース10は、その内部にバッテリーモジュール37を収容することによりバッテリーパックAを構成するものである。
【0015】
<バッテリーケース10>
バッテリーケース10は、
図5に示すように、略水平な板状をなすロアケース11(
図2を参照)と、ロアケース11に対し上から覆うように組み付けられた合成樹脂製のカバー29(
図1を参照)とを備えている。ロアケース11は、形状に関しては、平面視形状が略方形をなす水平な底壁部12と、底壁部12の周縁部から立ち上がる略方形の周壁部13とから構成されている。ロアケース11は、部品構成としては、トレイ14と、合成樹脂製の保護層25と、合成樹脂製の絶縁層26とを備えて構成されている。
【0016】
トレイ14は、平面形状が略方形をなすフレーム15と、フレーム15とは別体部品である水平な平板状をなす底壁緩衝部材19とから構成されている。フレーム15は、内部が中空の4本の角筒材を溶接等により平面視形状が略方形となるように固着したものであり、周壁部13を構成する。フレーム15には、その外側面部から下方へ略L字形に延出した板状の導通部16が形成されている。フレーム15の下面と、導通部16の水平内向きに突出した下端部との間には、水平な溝部17が形成されている。同じくフレーム15には、その外側面部の上端から水平外向きに板状に延出したフランジ状のロア側接触部18が形成されている。
【0017】
<底壁緩衝部材19>
底壁緩衝部材19は、底壁部12を構成するものであり、
図5,6に示すように、水平な平板状をなす金属製の下板部20と、下板部20の上方に配された水平な平板状をなす合成樹脂製の上板部21と、下板部20と上板部21とを繋ぐ変形可能な合成樹脂製の連結部22とを組み付けて構成されている。底壁緩衝部材19の内部空間は、下板部20と上板部21とで区画された緩衝空間23となっている。下板部20と上板部21は緩衝空間23を介して上下方向に対向しており、緩衝空間23内に連結部22が収容されている。
【0018】
下板部20の板厚は上板部21の板厚よりも薄く設定されているのであるが、下板部20は、その材料である金属が有する形状保持性により、常には平板形状を保つ。この下板部20の有する形状保持性により、底壁緩衝部材19の面剛性が高められている。但し、下板部20は、下方からの押圧力や衝撃を受けると、側面視において上方へ膨らむように湾曲又は屈曲するような形態で変形し得るようになっている。下板部20の変形部分は緩衝空間23内に進出する。
【0019】
連結部22は、下板部20の上面と上板部21の下面とを平行な位置関係となるように繋ぐ部材であり、緩衝機能を備えている。連結部22は、
図7に示すように、平面視形状が正六角形をなす複数の角筒部24を互いに隙間なく且つ並べたハニカム構造の部材である。連結部22の下端は、溶着や接着等の接合手段により下板部20の上面に固着されている。連結部22の上端は、溶着や接着等の接合手段により上板部21の下面に固着されている。
【0020】
連結部22は、正六角形の角筒部24からなるハニカム構造によって形状保持性を有している。したがって、この連結部22の有する形状保持性により、底壁緩衝部材19の面剛性が高められている。但し、連結部22の下端は下板部20に固着されているので、下板部20が上方へ膨らむように変形すると、角筒部24は、緩衝空間23内において座屈するような形態(つまり、側面視において水平方向へ湾曲又は屈曲するような形態)で変形し得るようになっている。角筒部24(連結部22)に変形を生じさせる押圧力や衝撃は、下板部20に作用する押圧力や衝撃よりも小さいので、角筒部24の変形量は下板部20の変形量よりも小さく抑えられる。
【0021】
また、連結部22の上端部は上板部21に固着されているので、連結部22の角筒部24が座屈するように変形した場合、上板部21も上方へ膨らむように湾曲又は屈曲するような形態で変形することもある。但し、上板部21に変形を生じさせる押圧力や衝撃は、下板部20及び連結部22に作用する押圧力や衝撃よりも小さいので、上板部21の変形量は、下板部20や連結部22の変形量よりも小さく抑えられる。
【0022】
底壁緩衝部材19は、フレーム15に対しその下面の開口を閉塞するように組み付けられている。底壁緩衝部材19をフレーム15に組み付けた状態では、底壁緩衝部材19の外周縁部が、フレーム15の下端部の溝部17に嵌合した状態で溶接等により固着されている。底壁緩衝部材19とフレーム15を組み付けた状態では、導通部16の下端部と金属製の下板部20の下面とが導通可能に接触している。尚、電食防止のため、導通部16(フレーム15)と下板部20の材料は、同一種類となっている。
【0023】
<保護層25及び絶縁層26>
保護層25は、トレイ14の外面(下面)と外周面を、その全領域に亘り且つ隙間なく覆うように密着している。換言すると、保護層25は、底壁緩衝部材19の下面の全領域と、フレーム15の外周面の全領域と、導通部16の外面の全領域と、ロア側接触部18の下面の全領域とを覆っている。保護層25は底壁部12と周壁部13を構成する。絶縁層26は、トレイ14のうち底壁緩衝部材19(上板部21)の上面の全領域と、フレーム15の内側面の全領域とを隙間なく覆った状態で、トレイ14に密着している。絶縁層26は底壁部12と周壁部13を構成する。
【0024】
絶縁層26のうち底壁緩衝部材19の上面を覆う水平領域には、
図2に示すように、前後方向に長い複数本の支持部27が突出形成されている。複数本の支持部27のうち左右両端に位置する一対の支持部27は、絶縁層26のうちフレーム15の内側面を覆う内側面領域の下端部に連なっている。複数の支持部27のうち左右両端以外に配されている複数の支持部27は、上方へリブ状に突出している。これら複数の支持部27により、底壁部12(底壁緩衝部材19)の上面には、前後方向に細長く延び且つ左右方向に並列した複数の変形許容空間28が形成されている。
【0025】
<ロアケース11の製造>
ロアケース11を製造する際には、保護層25と絶縁層26をトレイ14と密着させて一体化する。保護層25をトレイ14の下板部20と一体化させる手段としては、表層ポーラスアンカー接合、化学接合、貫通アンカー接合等が用いられる。表層ポーラスアンカー接合は、金属製の下板部20にアンカー溝(図示省略)を形成し、保護層25の材料である溶融樹脂をアンカー溝に加圧状態で充填して固化させる接合形態である。表層ポーラスアンカー接合の工程では、保護層25の成形が同時に行われる。
【0026】
化学接合は、下板部20と成形済みの保護層25との境界面に反応基(例えば、保護層25側は変形PE、金属製である下板部20側はシランカップリング材)を形成して接合する形態である。貫通アンカー接合は、下板部20に貫通孔(図示省略)を形成しておき、保護層25の材料である溶融樹脂を、貫通孔に流入して固化させる接合形態である。貫通アンカー接合の工程では、保護層25の成形が同時に行われる。
【0027】
絶縁層26をトレイ14の上板部21と一体化させる手段としては、化学接合や貫通アンカー接合等が用いられる。化学接合は、上板部21と成形済みの絶縁層26との境界面に反応基(例えば、変形PE)を形成して接合する形態である。貫通アンカー接合は、上板部21に貫通孔(図示省略)を形成しておき、絶縁層26の材料である溶融樹脂を、貫通孔に流入して固化させる接合形態である。貫通アンカー接合の工程では、絶縁層26の成形と支持部27の形成が同時に行われる。
【0028】
<カバー29>
図1,5に示すように、カバー29は、水平な上壁部30と、上壁部30の外周縁から全周に亘って下方へ延出したスカート部31と、スカート部31の下端縁から全周に亘って外方へ水平に張り出したフランジ部32とを備えた単一部品である。カバー29は、金属製のアッパシェル33の内面を合成樹脂製の内層34で覆うとともに、アッパシェル33の外面を合成樹脂製の外層35で覆った形態である。アッパシェル33の内面のうちフランジ部32を構成するアッパ側接触部36は、内層34で覆われずに露出している。
【0029】
<バッテリーモジュール37>
バッテリーモジュール37は、
図4に示すように、前後方向に積層した複数のバッテリーセル38と、複数のバッテリーセル38を収容するモジュールケース42とを備えている。バッテリーセル38は、前後方向の寸法が、高さ寸法(上下寸法)及び幅寸法(左右寸法)に比べて小さい厚板状をなす。各バッテリーセル38の上端面には(+)電極39と(-)電極40が設けられており、複数のバッテリーセル38は、(+)電極39と(-)電極40を繋ぐバスバー41によって直列接続されている。
【0030】
モジュールケース42は、平面視形状が略方形をなしており、上下両面が開放された角筒状のケース本体43と、ケース本体43の下面の開口を閉塞する皿状の底板部材47とを組み付けて構成されている。ケース本体43の上端部には、ケース本体43の上面の開口縁のうち左右両側縁から水平内側へ突出した左右一対の押え部44が形成されている。
【0031】
ケース本体43の前端部下端縁と後端部下端縁には、夫々、側面視形状が略L字形をなす脚部45が左右一対ずつ形成されている。前側の脚部45の下端部には前方へ板状に突出する固定片46が形成され、後側の脚部45の下端部には後方へ板状に突出する固定片46が形成されている。底板部材47の上面には、左右方向に細長く延びた複数の位置決め溝48が形成されている。
【0032】
各バッテリーセル38は、位置決め溝48に嵌合することで前後左右に位置決めされた状態で底板部材47に載置されている。底板部材47にケース本体43を組み付けると、モジュールケース42が構成されると同時に、全てのバッテリーセル38がモジュールケース42内に収容される。また、各バッテリーセル38の上面の左右両端部に押え部44が当接することで、バッテリーセル38は、モジュールケース42に対して上方へ浮き上がるように変位することを規制される。以上により、複数のバッテリーセル38が、モジュールケース42内で相対移動を規制された状態に収容され、バッテリーモジュール37が構成される。
【0033】
<バッテリーパックAの組み立て>
バッテリーモジュール37をバッテリーケース10に取り付ける際には、ロアケース11の上面に複数(本実施例1では4つ)のバッテリーモジュール37を前後方向に間隔を空けて並ぶように配置する。このとき、各バッテリーモジュール37の左右両端部を支持部27の上面に載置する。各バッテリーモジュール37の前方近傍と後方近傍には、固定片46が配置される。
【0034】
次に、左右方向に細長い固定バー49(
図3を参照)を固定片46の上面に載置し、固定バー49に貫通したボルト(図示省略)を支持部27に埋設したナット(図示省略)にねじ込む。ボルトをナットに締め込むと、固定片46が下方へ押されるので、バッテリーモジュール37が、支持部27の上面に押し付けられた状態でロアケース11に固定される。
【0035】
バッテリーモジュール37をロアケース11に取り付けると、バッテリーモジュール37の下面と底壁部12の上面との間には、支持部27で区画されることで前後方向に細長く延びた形態の複数の変形許容空間28が構成される。変形許容空間28の前後両端部のうち一方の端部には、冷却用の空気を変形許容空間28内に供給するための給気ポート(図示省略)が設けられ、他方の端部には、変形許容空間28内の空気を外部へ排出するための排気ポート(図示省略)が設けられている。これにより、変形許容空間28は、空冷用の空気を流動させるための流路として機能する。
【0036】
全てのバッテリーモジュール37をロアケース11に固定した後、バッテリーモジュール37を上から覆い隠すようにカバー29を被せ、被せたカバー29を溶着等によってロアケース11に固定する。これにより、バッテリーケース10が構成されるとともに、バッテリーケース10内に複数のバッテリーモジュール37が固定された状態で収容される。以上により、バッテリーパックAの組付けが完了する。
【0037】
<実施例1の作用及び効果>
本実施例1のバッテリーパックAは、車両(図示省略)の床下に取り付けられ、ロアケース11の底壁部12が路面と直接、対向するように露出している。そのため、走行中に飛び石や縁石等によって底壁部12に衝撃が加わり、その衝撃によってバッテリーモジュール37が底壁部12から浮き上がるように位置ずれすることが懸念される。
【0038】
しかし、本実施例1のバッテリーパックA(バッテリーケース10)は、底壁部12が下から衝撃を受けても、その衝撃エネルギーは、保護層25と下板部20が上方へ膨らむように塑性変形するとともに、連結部22の角筒部24が座屈するように塑性変形することによって、底壁部12が吸収する。したがって、上板部21が塑性変形することはない。これにより、底壁部12に衝撃が加わっても、バッテリーモジュール37に伝わる衝撃は大幅に緩和される。
【0039】
たとえ、底壁部12に加わった衝撃によって上板部21と絶縁層26までもが塑性変形したとしても、上板部21と絶縁層26が塑性変形することによって底壁部12が衝撃エネルギーを吸収するので、バッテリーモジュール37に伝わる衝撃は大幅に緩和される。しかも、上板部21と絶縁層26の変形部分は、絶縁層26とバッテリーモジュール37の下面との間に確保されている変形許容空間28内に進出するので、底壁部12のうちバッテリーモジュール37の下面と対向する上面部が塑性変形したとしても、底壁部12(絶縁層26)がバッテリーモジュール37の下面と接触することはない。したがって、バッテリーモジュール37がロアケース11(底壁部12)に対して相対的に上方へ浮き上がるような位置ずれを生じることはない。
【0040】
上述のように本実施例1のバッテリーケース10は、ロアケース11の上面をカバー29で覆うことで、内部にバッテリーモジュール37を収容するものであり、バッテリーモジュール37への衝撃緩和を実現している。衝撃を緩和するために、ロアケース11のうちバッテリーモジュール37を支える底壁部12は、下板部20と、下板部20の上面に対し緩衝空間23を空けて対向する上板部21と、下板部20と上板部21とを繋ぐ変形可能な連結部22とを備えて構成されている。
【0041】
ロアケース11の底壁部12は、緩衝空間23を介して対向する下板部20と上板部21との二枚板構造となっているので、下板部20に加わった衝撃のエネルギーは、下板部20と連結部22が変形することによって吸収される。これにより、上板部21への衝撃が緩和されるので、バッテリーモジュール37に加わる衝撃を緩和することができる。
【0042】
また、上板部21の上面とバッテリーモジュール37の下面との間には、変形許容空間28が設けられているので、下板部20に加わった衝撃等によって上板部21が上方へ変形したとしても、上板部21の変形部がバッテリーモジュール37の下面と緩衝する虞がない。
【0043】
また、変形許容空間28は、バッテリーモジュール37の熱を奪うための空気流が流動可能な空間となっており、変形許容空間28内に冷たい空気流を流動させることによって、バッテリーモジュール37で発生した熱を奪って排出することができる。本実施例1のバッテリーケース10は、変形許容空間28に空冷機能を具備させたので、変形許容空間28とは別に空冷専用の空間を設けずに済み、バッテリーケース10が大型化することを回避できる。
【0044】
また、底壁緩衝部材19のうちバッテリーモジュール37を下面側から覆う下板部20と、バッテリーモジュール37を上面側から覆うカバー29のアッパシェル33とを金属製としており、下板部20とフレーム15とアッパシェル33がシールドシェル50を構成している。このシールドシェル50は、バッテリーモジュール37を包囲して電磁波シールド機能を発揮する。この構成によれば、底壁部12に電磁波シールド機能を具備させることができる。
【0045】
ロアケース11のうちバッテリーモジュール37を支持する底壁部12は、底壁緩衝部材19を備えて構成されており、底壁緩衝部材19は、平面視形状が六角形をなす複数の角筒部24を隙間なく並べたハニカム構造の連結部22を有している。このように、ロアケース11の底壁部12は、ハニカム構造の底壁緩衝部材19を用いて構成したので、高い面剛性(強度)を有している。また、底壁部12(底壁緩衝部材19)の外周縁は金属製のフレーム15に固定されているので、このフレーム15の剛性によっても底壁部12の面剛性が高められている。
【0046】
また、トレイ14の上面は合成樹脂製の絶縁層26で覆われているので、ロアケース11の上面において電食が発生する虞はない。また、ロアケース11は、トレイ14の下面(外面)を覆うように形成された合成樹脂製の保護層25を備えているので、ロアケース11の下面(外面)に水分が付着しても、トレイ14の下面に錆が発生する虞はない。
【0047】
<実施例2>
次に、本発明を具体化した実施例2を
図8を参照して説明する。本実施例2のバッテリーパックB及びこのバッテリーパックBを構成するバッテリーケース51は、底壁緩衝部材52を上記実施例1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0048】
本実施例2の底壁緩衝部材52は、ロアケース11の底壁部12を構成するものであり、水平な平板状をなす金属製の下板部20と、下板部20の上方に配された水平な平板状をなす合成樹脂製の上板部21と、下板部20と上板部21とを繋ぐ変形可能な合成樹脂製の連結部53とを組み付けて構成されている。下板部20と上板部21は、実施例1のものと同一部品である。底壁緩衝部材52の内部空間は、下板部20と上板部21とで区画された緩衝空間23となっている。下板部20と上板部21は緩衝空間23を介して上下方向に対向しており、緩衝空間23内に連結部53が収容されている。
【0049】
連結部53は、下板部20の上面と上板部21の下面とを平行な位置関係となるように繋ぐ部材であり、緩衝機能を備えている。連結部53は、側面視形状が波状に湾曲した形状の波形板状部材54からなる。連結部53の下端(波形の谷部)は、溶着や接着等の接合手段により下板部20の上面に固着されている。連結部53の上端(波の頂上部)は、溶着や接着等の接合手段により上板部21の下面に固着されている。
【0050】
連結部53(波形板状部材54)は、複数箇所において下板部20と上板部21を連結しているので、形状保持性を有している。この連結部53の有する形状保持性により、底壁緩衝部材52の面剛性が高められている。但し、連結部53の下端は下板部20に固着されているので、下板部20が上方へ膨らむように変形すると、連結部53は、その波の形が偏平になるような形態(波高が引くなるような形態)で変形し得るようになっている。波形板状部材54に変形を生じさせる押圧力や衝撃は、下板部20に作用する押圧力や衝撃よりも小さいので、波形板状部材54の変形量は下板部20の変形量よりも小さく抑えられる。
【0051】
また、連結部53の上端部は上板部21に固着されているので、波形板状部材54が偏平になりながら全体として上方へ押し上げられた場合は、上板部21も上方へ膨らむように湾曲又は屈曲するような形態で変形することもある。但し、上板部21に変形を生じさせる押圧力や衝撃は、下板部20及び連結部53に作用する押圧力や衝撃よりも小さいので、上板部21の変形量は、下板部20や連結部53の変形量よりも小さく抑えられる。
【0052】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1,2では、連結部が、ハニカム構造をなすもの、又は側面視形状が波形をなすものであるが、連結部は、平面視形状が波形や三角形等の屈曲形状をなす複数の板部や、側面視形状が三角形等の屈曲形状をなす板部からなるものであってもよい。
(2)上記実施例1,2では、上板部の上面とバッテリーモジュールの下面との間に変形許容空間を設けたが、このような変形許容空間を設けずに、バッテリーモジュールの下面を上板部の上面に直接載置してもよい。
(3)上記実施例1,2では、変形許容空間が、バッテリーモジュールの熱を奪うための空気流を流動させる空間となっているが、変形許容空間とは別に空冷専用の空間を設けてもよい。
(4)上記実施例1,2では、下板部のみが金属製で、上板部と連結部が合成樹脂製であるが、材料の組合せとしては、上板部のみが金属製で下板部と連結部が合成樹脂製の組合せ、連結部のみが金属製で下板部と上板部が合成樹脂製の組合せ、下板部のみが合成樹脂製で上板部と連結部が金属製の組合せ、上板部のみが合成樹脂製で下板部と連結部が金属製の組合せ、連結部のみが合成樹脂製で下板部と上板部が金属製の組合せ、下板部と上板部と連結部の全てが金属製の組合せ、下板部と上板部と連結部の全てが合成樹脂製の組合せも可能である。
(5)上記実施例1,2では、下板部の板厚を上板部の板厚よりも薄くしたが、下板部の板厚は上板部の板厚より厚くともよく、下板部の板厚と上板部の板厚が同じ寸法でもよい。
(6)上記実施例1,2では、ロアケースの外面のうちロア接触部の上面を除いた全領域を、合成樹脂製の被覆層で覆ったが、ロアケースは、被覆層で覆われない形態であってもよい。
(7)上記実施例1,2では、バッテリーモジュールを空気流によって冷却したが、バッテリーモジュールは冷却液によって冷却してもよい。
【符号の説明】
【0053】
10,51…バッテリーケース
11,52…ロアケース
12…底壁部
20…下板部
21…上板部
22,53…連結部
23…緩衝空間
24…角筒部
28…変形許容空間
29…カバー
37…バッテリーモジュール
54…波形板状部材