(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】配管部材の遮断開放システム及び、配管部材の遮断開放方法
(51)【国際特許分類】
F17D 5/02 20060101AFI20220816BHJP
G08B 25/10 20060101ALN20220816BHJP
【FI】
F17D5/02
G08B25/10 A
(21)【出願番号】P 2017240178
(22)【出願日】2017-12-15
【審査請求日】2020-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】風間 譲治
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-127247(JP,A)
【文献】特開2016-084580(JP,A)
【文献】特開2007-024101(JP,A)
【文献】実公昭62-011814(JP,Y2)
【文献】特開2010-084843(JP,A)
【文献】特開2006-184190(JP,A)
【文献】特開平08-061600(JP,A)
【文献】特開2009-041333(JP,A)
【文献】特開2015-121017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17D 5/02
F16L
E03B 7/00
E03B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
公衆送信される災害事前情報を受信する受信手段と、
前記災害事前情報を受信した際に、所定の配管部材の緊急遮断弁の遮断を行う緊急遮断弁制御手段、前記災害事前情報を受信した際に、所定の配管部材の緊急開放弁の開放を行う緊急開放弁制御手段の少なくとも一つと、
地震を検知し、当該検知に応じて、所定の緊急遮断弁が遮断済みかどうか、あるいは所定の緊急開放弁が開放済みかどうかを確認する地震検知手段と、を備え
、
前記地震検知手段は、前記所定の緊急遮断弁または前記所定の緊急開放弁の近傍に設置され、前記地震のP波を検知することを特徴とする配管部材の遮断開放システム。
【請求項2】
前記災害事前情報とは、Jアラート、緊急警報放送、緊急地震速報の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載の配管部材の遮断開放システム。
【請求項3】
前記緊急遮断弁制御手段は、所定の緊急遮断弁が遮断されていない場合に、遮断することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の配管部材の遮断開放システム。
【請求項4】
前記緊急開放弁制御手段は、所定の緊急開放弁が開放されていない場合に、開放することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の配管部材の遮断開放システム。
【請求項5】
前記地震検知手段は、感震センサ又は地震感知器であることを特徴とする請求項1に記載の配管部材の遮断開放システム。
【請求項6】
配管部材の遮断開放方法であって、
公衆送信される災害事前情報を受信するステップと、
前記災害事前情報を受信した際に、前記配管部材の所定の弁を遮断又は開放の少なくとも一方を行うステップと、
地震を検知し、当該検知に応じて、所定の緊急遮断弁が遮断済みかどうか、あるいは所定の緊急開放弁が開放済みかどうかを確認する地震検知ステップと、を備え
、
前記地震検知ステップは、前記所定の緊急遮断弁または前記所定の緊急開放弁の近傍で、前記地震のP波を検知することを特徴とする配管部材の遮断開放方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Jアラート、緊急警報放送、緊急地震速報等の事前情報を使用して、配管部材の遮断又は開放をするシステム及び、遮断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震が発生して揺れ等の異常を検知してから緊急遮断弁を閉じるといったシステムが知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-213700号公報
【文献】特開2014-74307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1には、地震センサで検知した地震の強度を設定強度と比較し、該設定強度以上であれば緊急遮断弁を遮断する技術が記載されている。また、特許文献2には、地震検知計測部によって地震が検知されると、地震強度と水位とを基に、貯水部に設置されている遮断弁における閉弁の要否を判定する技術が記載されている。しかし、地震による被害を出さないためには、実際に災害が起こる前、すなわち、異常をセンサ等で検知する前に、緊急遮断弁を閉じることが望ましいという課題がある。
【0005】
一般に、Jアラート、緊急警報放送、緊急地震速報等の事前情報は、災害の前に放送される。そこで、本発明の発明者らは、これらの放送を利用して、緊急遮断弁を制御することに着目した。さらに、このような事前情報を受信していても、何らかのトラブルで、実際に緊急遮断弁が閉じられていない場合がある。このような場合にも対応できるよう、2重で緊急遮断弁の開閉を制御する機構があることが望ましい。
【0006】
本発明は、これらの課題に鑑み、さらに、利便性の高い、配管部材の遮断開放システム及び、配管部材の遮断開放方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の遮断開放システムは、公衆送信される災害事前情報を受信する受信手段と、前記災害事前情報を受信した際に、所定の配管部材の緊急遮断弁の遮断を行う緊急遮断弁制御手段、所定の配管部材の緊急開放弁の開放を行う緊急開放弁制御手段の少なくとも一つと、地震を検知し、当該検知に応じて、所定の緊急遮断弁が遮断済みかどうか、あるいは所定の緊急開放弁が開放済みかどうかを確認する地震検知手段と、を備え、前記地震検知手段は、前記所定の緊急遮断弁または前記所定の緊急開放弁の近傍に設置され、前記地震のP波を検知することを第1の特徴とする。
【0008】
また、本発明の遮断開放システムは、第1の特徴において、前記災害事前情報がJアラート、緊急警報放送、緊急地震速報の少なくとも一つであることを第2の特徴とする。
【0009】
また、本発明の遮断開放システムは、第1の特徴または第2の特徴において、前記緊急遮断弁制御手段は、所定の緊急遮断弁が遮断されていない場合に、遮断することを第3の特徴とする。
【0010】
また、本発明の遮断開放システムは、第1の特徴または第2の特徴において、前記緊急開放弁制御手段は、所定の緊急開放弁が開放されていない場合に、開放することを第4の特徴とする。
【0011】
また、本発明の遮断開放システムは、第1の特徴において、前記地震検知手段は、感震センサ又は地震感知器であることを第5の特徴とする。
【0012】
また、本発明の配管部材の遮断開放方法は、公衆送信される災害事前情報を受信し、前記災害事前情報を受信した際に、前記配管部材の所定の弁を遮断又は開放の少なくとも一方を行い、地震を検知し、当該検知に応じて、所定の緊急遮断弁が遮断済みかどうか、あるいは所定の緊急開放弁が開放済みかどうかを確認し、前記所定の緊急遮断弁または前記所定の緊急開放弁の近傍で、前記地震のP波を検知することを第6の特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、Jアラート、緊急警報放送、緊急地震速報等の事前情報を使用して配管部材の遮断又は開放を行い、さらに何らかのトラブルで、実際に緊急遮断弁が閉じられていない場合又は緊急開放弁が開けられていない場合にも対応できるよう、2重で緊急遮断弁の開閉を制御することで、利便性の高い、配管部材の遮断開放システム及び、配管部材の遮断開放方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態における遮断開放システム1及び遮断開放システム2のシステム構成図である。
【
図2】本発明の実施の形態における遮断開放装置60の構成ブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態における遮断開放システム1のフローチャート図である。
【
図4】本発明の実施の形態における遮断開放システム2のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、好適な実施の形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施の形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態における配管部材の遮断開放システム1及び遮断開放システム2のシステム構成図である。配管部材の遮断開放システム1及び遮断開放システム2は、工場、施設等で設置された配管部材に対して取り付けられるシステムであって、少なくとも遮断開放装置60と配管部材とから構成される。なお、通信端末10は、遮断開放装置60からの通知を出力するためや、緊急地震速報等の事前情報を受信するため等に使用され、本システムに備えられることが望ましい。
【0017】
配管部材は、内部を液体又は気体を流すための部材であって、例えば、パイプ5、バルブ50、継手(図示せず)、フランジ(図示せず)であってよい。本発明が適用可能な配管部材には、液体又は気体を貯蔵するタンク1000を含めてもよい。
【0018】
バルブ50は、内部に流れる液体又は気体の流量を、手動又は自動で調整する装置、器具であって、例えば、ボールバルブ、ダイヤフラムバルブ、ゲートバルブ、バタフライバルブ、調整弁、自動流量制御弁、自動圧力制御弁、逆止弁、ストップ弁、定流量弁、電磁弁及びピンチ弁などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。バルブ50は、所定の信号を受信することで弁の開閉を自動で行ったり、弁の開き具合である開度を自動で調整したりする自動バルブである。自動バルブは、流量を調整する弁を空気で駆動させるエア式と、電気で駆動させる電動式のいずれかであってもよく、また、電磁石で駆動させる電磁式でもよい。
【0019】
バルブ50の材質は、特に限定はされないが、好ましくは樹脂であって、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル(PVC-C)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポニフェニレンオキサイド(PPO)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等を用いることができる。さらに、ポリ塩化ビニル(PVC)には、硬質ポリ塩化ビニル、硬質耐衝撃性ポリ塩化ビニルも含まれる。また、部分的にゴム材質、例えば、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、ポリテトラフルオロエチレンをシール部に使用されていてよい。
【0020】
遮断開放装置60は、配管部材(
図1の例では、バルブ50とタンク1000)に固定して設置され、各種センサ及び、開スイッチ40、閉スイッチ41が通信可能に接続されている。遮断開放装置60は、外部入出力部64を介して、開スイッチ40、閉スイッチ41に所定の信号を送信することで、バルブ50の弁の開閉を行うことができバルブ50の内部に流れる液体又は気体の流量を調整することができるものとする。例えば、バルブ50がボールバルブの場合には、バルブ50の開閉は、弁が回転することで行われるため、回転速度と回転時間で、弁の開き具合である開度が決定する。自動バルブの制御部は、この回転速度と回転時間とで、実際の開度を決定できる。また、完全に遮断することも可能である。また、遮断開放装置60とバルブ50の弁の開閉にかかわる機構は、停電時等でも動作が可能となるように、バッテリー等の自己電源を搭載することが望ましい。
【0021】
図2は、遮断開放装置60の電気的な構成ブロック図である。遮断開放システム1では、遮断開放装置60に、各種データの制御を行う制御部61と、各種データを記憶する記憶部62と、各種センサ等と接続される外部入出力部64と、通信端末10と無線通信を行う無線通信部65と、公衆放送される災害事前情報を受信する受信部66と、受信部66が災害事前情報を受信した際に、所定の配管部材の緊急遮断弁の遮断を行う緊急遮断弁制御部67と、所定の配管部材の緊急開放弁の開放を行う緊急開放弁制御部69と、を備える。遮断開放システム2では、更に遮断開放装置60に、感震センサ34の信号に基づき地震を検知する地震検知部68を備える。
【0022】
制御部61は、各種データの演算制御を行うマイクロコンピュータやCPU(Central Processing Unit)、プログラマブルコントローラ(PLC)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等であってもよく、また、インターネット等の通信回線網を通して、データの送受信を行い、演算そのものはホストコンピュータやサーバが行ってもよい。
【0023】
記憶部62は、各種データを書き込み可能なメモリー、ハードディスク等であってもよく、インターネット等の通信回線網を通して、ネットワーク・サーバに記憶してもよい。
【0024】
外部入出力部64には、感震センサ34等の各種センサと開スイッチ40、閉スイッチ41が通信可能に接続される。外部入出力部64は、例えば、アナログ・デジタル変換(ADC)、デジタル・アナログ変換(DAC)、絶縁変換するための比較器、アナログ入出力回路(AIO)、増幅回路(AMP)、パルス変調回路(PWM)、シリアル通信ポート(SIO)、USB回路等であってよい。また、更に音や光や文字等による出力を行うための機能を備えてもよい。
【0025】
無線通信部65は、通信端末10と無線通信を行うため、WiFi(Wireless Fidelity)、Bluetooth(登録商標)、Hart、ISA100、Zigbee等の通信を実現するための装置、例えば、BLE(Bluetooth Low Energy)モジュール通信キットであってよい。
【0026】
受信部66は、公衆放送される災害事前情報を受信するための装置である。ここでの、災害事前情報とは、Jアラート、緊急警報放送、緊急地震速報の少なくとも一つであることとする。
図2では、受信部66が直接公衆放送を受信する構成としたが、通信端末10が災害事前情報を受信し、その情報を無線通信部65を介して受信部66に通知する構成としてもよい。
【0027】
緊急遮断弁制御部67は、受信部66が災害事前情報を受信した際に、所定の配管部材の緊急遮断弁の遮断を行う。
緊急遮断弁は、主に通常使用時に開放している弁を、緊急時に遮断する弁である。緊急遮断弁は、予め緊急時に遮断するように設定されている弁であるが、流体の種類や使用状況によっては、完全に遮断するわけではなく、微開状態でもよい。緊急遮断弁は、例えば、ビル屋上にある貯水タンク(飲料用)に用いられる弁であって、緊急時、飲み水確保の為、この弁が遮断される。
【0028】
緊急開放弁制御部69は、受信部66が災害事前情報を受信した際に、所定の配管部材の緊急開放弁の開放を行う。
緊急開放弁は、主に常時遮断している弁を、緊急時に強制開放する所に使用される弁である。緊急開放弁は、予め緊急時に開放するように設定されている弁である。例えば、薬液処理槽や反応槽等の危険な液体を別配管から強制排出する為に使用されたり、ゲリラ豪雨などで通常の下水排水処理が間に合わない場合、ビル地下の雨水タンクに誘導する弁で使用される。
【0029】
例えば、バルブ50が緊急遮断弁である場合は、受信部66で災害事前情報を受信した場合、外部入出力部64を介してバルブ50の緊急遮断弁を制御し、バルブ50の遮断処理を行う。一方、バルブ50が緊急開放弁である場合は、受信部66で災害事前情報を受信した場合、外部入出力部64を介してバルブ50の緊急開放弁を制御し、バルブ50の開放処理を行う。また、受信した災害事前情報に対して、どのレベルで緊急遮断弁制御、緊急開放弁制御を行うかどうかを、事前に登録しておいたり、地震の震度や発生地域を判断して、必要な場合のみ緊急遮断又は開放処理を行うように設定しておいてもよい。すなわち、災害事前情報から災害のレベル、震度、地域等の情報を受信し、この内容に応じて、遮断処理又は開放処理を行うか判断してもよい。
【0030】
地震検知部68は、感震センサ34の信号に基づき地震を検知する。または、感震センサ34の代わりに、地震感知器(図示せず)を備えてもよい。地震検知部68により、実際に地震が発生したかどうかを検知し、検知した場合には、外部入出力部64を介してバルブ50の弁が遮断済みかどうか(バルブ50が緊急遮断弁の場合)を確認し、遮断されていない場合には、緊急遮断弁制御部67により、バルブ50の遮断処理を行う。
一方、緊急開放弁については、地震検知部68により、実際に地震が発生したかどうかを検知し、検知した場合には、外部入出力部64を介してバルブ50の弁が開放済みかどうか(バルブ50が緊急開放弁の場合)を確認し、開放されていない場合には、緊急開放弁制御部69により、バルブ50の開放処理を行う。
【0031】
センサは、配管部材に関する情報を検知するための装置であって、例えば、バルブ50内、周辺環境、流れる気体や液体、地中などの温度を測る温度センサ33、環境や土壌の湿度を測る湿度センサ(図示せず)、バルブ内外の液漏れを検知する漏液センサ31、74,流れる気体や液体の圧力や衝撃圧を測る圧力センサ(図示せず)、大気圧センサ(図示せず)、配管部材の歪みを検知する歪センサ30(荷重センサ、多軸センサ、角度センサ、加速度センサ等により実現)、配管部材の振動を検知する振動センサ(図示せず)、流量や流速を測る流量センサ(図示せず)、回転角度、流れ速度、PWM変調を計測するパルスセンサ(図示せず)、開閉位置を検出するリミットスイッチ(図示せず)、開閉角度を検出する位置検出センサ(図示せず)、液体濃度を計測する濃度計(図示せず)、流れる液体又は周辺環境のPHを計測するPH計センサ71、流れる気体や周辺環境を測るガス検知センサ(図示せず)、紫外線強度を計測するUV照度センサ70、明るさを検知する照度センサ(図示せず)、磁気センサ(図示せず)、人体や障害物を検知する赤外線センサ(図示せず)、夜間を検知する光センサ(図示せず)、火災を検知する炎センサ(図示せず)、接触を検知するタッチセンサ(図示せず)、液が流れる音や騒音を検知するマイクサウンドセンサ(図示せず)、非破壊測定を行う超音波センサ(図示せず)、光を検知するための光センサ73、液量を検知するための液面センサ75、土壌の水質を分析する土壌分析センサ32等であってよい。
【0032】
センサの設置場所は、目的とするデータを収集できる箇所であれば特に限定はされないが、バルブ本体の内部または外周部でもよく、また、バルブ近傍の周辺に設置されてもよい。また、バルブ以外の配管部材に設置されていてもよい。
図1に示すように、歪センサ30、漏液センサ31、温度センサ33、圧力センサ35は、配管部材、例えば、バルブ50に設置され、温度センサ33、感震センサ34は、パイプ5に設置される。UV照度センサ70は、タンク1000や配管部材の上部(日が照る場所)に設置され、PH計センサ71、温度センサ33は、タンク1000の内部に設置され、液面センサ75は、タンク1000の内部でかつ液面に設置され、光センサ73は、タンク1000の内部でかつタンク1000の底に設置される。土壌分析センサ32は、バルブ50の近傍で配管部材が配置される下部の土壌内部に設置される。
【0033】
通信端末10は、少なくとも遮断開放装置60と無線通信可能な端末であって、操作者からタッチ等の操作入力を受付ける入力部と、緊急遮断弁の遮断処理又は緊急開放弁の開放処理を行った結果等を出力する表示部又は音声出力を行う出力部を備える。通信端末10は、コンピュータ端末、スマートフォン、タブレット型端末であってよい。また、図示していないが、通信端末10は、他の通信端末または制御システムに接続され、通信端末10からのデータを互いに送受信してよい。
【0034】
図3は、本発明の実施の形態における遮断開放システム1のフローチャート図である。遮断開放装置60の受信部66は、定期的に災害事前情報を受信したかどうかの確認を行う(ステップS301)。定期的な確認の間隔は、0.5秒から60秒程度であって良いが、短い間隔であればあるほど、災害発生時にリアルタイムに遮断、開放の対応をすることが可能となる。なお、ここでの、災害事前情報とは、Jアラート、緊急警報放送、緊急地震速報の少なくとも一つであることとする。
【0035】
災害事前情報を受信していない場合には、ステップS301の処理を続ける。
【0036】
災害事前情報を受信した場合には、緊急遮断弁制御部67により、外部入出力部64を介して所定の配管部材の緊急遮断弁を遮断する処理を行う(ステップS302)。
図1の例では、バルブ50の弁が緊急遮断弁とすると、この弁を制御し、バルブ50の遮断処理を行う。また、受信した災害事前情報に対して、どのレベルで緊急遮断弁制御を行うかどうかを、事前に登録しておき、例えば地震の震度や発生地域に応じて、必要な場合のみ、ステップS302で緊急遮断処理を行うようにしてもよい。
【0037】
加えて、災害事前情報を受信した場合には、緊急開放弁制御部69により、外部入出力部64を介して所定の配管部材の緊急開放弁を開放する処理を行う(ステップS303)。
図1の例では、バルブ50の弁が緊急開放弁とすると、この弁を制御し、バルブ50の開放処理を行う。また、受信した災害事前情報に対して、どのレベルで緊急開放弁制御を行うかどうかを、事前に登録しておき、例えば地震の震度や発生地域に応じて、必要な場合のみ、ステップS303で緊急開放処理を行うようにしてもよい。
【0038】
上述の遮断開放システム1では、災害事前情報を受信して、それに応じて配管部材の遮断、開放を行う方法について記載した。この遮断開放システム1により、実際に災害が起こる前、すなわち、異常をセンサ等で検知する前に、緊急遮断弁を閉じ、緊急開放弁を開放することが可能となり、配管部材を備える工場や施設に対する被害を最小限に食い止めることが可能となる。
【0039】
しかしながら、何らかのトラブルで、災害事前情報により緊急遮断弁が閉じられなかったり、緊急開放弁が開放されなかった場合にも対応できるよう、2重で緊急遮断弁、緊急開放弁の開閉を制御する機構があることが望ましい。以下では、遮断開放システム1の構成に加えて、更に遮断開放装置60に地震検知部68を備える遮断開放システム2について説明する。
【0040】
図4は、本発明の実施の形態における遮断開放システム2のフローチャート図である。遮断開放装置60の受信部66は、定期的に災害事前情報を受信したかどうかの確認を行う(ステップS401)。定期的な確認の間隔は、0.5秒から60秒程度であって良いが、短い間隔であればあるほど、災害発生時にリアルタイムに遮断、開放の対応をすることが可能となる。なお、ここでの、災害事前情報とは、Jアラート、緊急警報放送、緊急地震速報の少なくとも一つであることとする。
【0041】
災害事前情報を受信していない場合には、ステップS401の処理を続ける。
【0042】
災害事前情報を受信した場合には、緊急遮断弁制御部67により、外部入出力部64を介して所定の配管部材の緊急遮断弁を遮断する処理を行い、かつ、緊急開放弁制御部69により、外部入出力部64を介して所定の配管部材の緊急開放弁を開放する処理を行う(ステップS402)。
【0043】
遮断開放装置60の地震検知部68は、定期的に地震を検知したかどうかの確認を行う(ステップS403)。地震検知部68は、感震センサ34または地震感知器(図示せず)の信号に基づき地震を検知する。ここで、地震は、P波、S波を問わないが、P波を検知することが望ましい。
【0044】
図4のフローチャートでは、説明の便宜上、ステップS401の後にステップS403の処理を行う様な記載となっているが、ステップS401の災害事前情報受信の確認処理と、ステップS403の地震検知の確認処理は、並行して行ってよいものとする。
【0045】
地震を検知していない場合には、ステップS403の処理を続ける。
【0046】
地震を検知した場合には、外部入出力部64を介して所定の配管部材の緊急遮断弁が遮断済みかどうかの確認を行う(ステップS404)。
図1の例では、バルブ50が緊急遮断弁とすれば、バルブ50が遮断済みかどうかの確認を行う。
【0047】
ステップS404で、所定の配管部材の緊急遮断弁が遮断済ではない場合には、緊急遮断弁制御部67により、外部入出力部64を介して所定の配管部材の緊急遮断弁を遮断する処理を行う(ステップS405)。
【0048】
ステップS405による遮断処理が成功した場合、地震検知部68による地震検知後に緊急遮断弁の遮断を行ったことを、通信端末10に通知する(ステップS406)。あわせて、地震検知後に緊急遮断弁の遮断を行ったことが周囲の人に分かるように、遮断開放装置60の外部入出力部64へ、音や光や文字等での出力を行ってもよい。
【0049】
ステップS404で、所定の配管部材の緊急遮断弁が遮断済である場合には、地震検知部68による地震検知前に緊急遮断弁の遮断を行ったことを、通信端末10に通知する(ステップS407)。あわせて、地震検知前に緊急遮断弁の遮断を行ったことが周囲の人に分かるように、遮断開放装置60の外部入出力部64へ音や光や文字等での出力を行ってもよい。
【0050】
次に、同様に、緊急開放弁の処理が続く。地震を検知した場合には、外部入出力部64を介して所定の配管部材の緊急開放弁が開放済みかどうかの確認を行う(ステップS408)。
図1の例では、バルブ50が緊急開放弁とすれば、バルブ50が開放済みかどうかの確認を行う。
【0051】
ステップS408で、所定の配管部材の緊急開放弁が開放済ではない場合には、緊急開放弁制御部69により、外部入出力部64を介して所定の配管部材の緊急開放弁を開放する処理を行う(ステップS409)。
【0052】
ステップS409による開放処理が成功した場合、地震検知部68による地震検知後に緊急開放弁の開放を行ったことを、通信端末10に通知する(ステップS410)。あわせて、地震検知後に緊急開放弁の開放を行ったことが周囲の人に分かるように、遮断開放装置60の外部入出力部64へ、音や光や文字等での出力を行ってもよい。
【0053】
ステップS408で、所定の配管部材の緊急開放弁が開放済である場合には、地震検知部68による地震検知前に緊急開放弁の開放を行ったことを、通信端末10に通知する(ステップS411)。あわせて、地震検知前に緊急開放弁の開放を行ったことが周囲の人に分かるように、遮断開放装置60の外部入出力部64へ音や光や文字等での出力を行ってもよい。
【0054】
図4のフローチャートでは、ステップS403での実際の地震の検知後に、通信端末10への通知を行う例を記載したが、ステップ402で災害事前情報に基づき緊急遮断弁の遮断又は緊急開放弁の開放を行った場合にも、同じように通信端末10への通知及び外部入出力部64への出力を行ってもよい。また、ステップS405による遮断処理、ステップS409による開放処理の少なくとも何れかが失敗した場合にも、失敗した旨を、通信端末10への通知及び外部入出力部64へ音や光や文字等での出力を行ってもよい。
【0055】
また、ここでは、地震検知部68により実際に地震を異常として検知する例を示したが、地震以外の異常を検知してもよい。地震以外の、火災、浸水、劣化による破損や漏液などの異常を検知するために、上述のセンサ類によるデータを使用して、ステップS403相当としてもよい。
【0056】
加えて、
図1の各種センサが、災害発生後に使用されてよい。すなわち、湿度センサ、漏液センサ31、74、圧力センサ、大気圧センサ、歪センサ30、振動センサ等が、災害発生後の配管部材の状態を監視する目的で利用されてよい。
【0057】
上述の遮断開放システム2では、災害事前情報を受信して、それに応じて配管部材の遮断及び開放を行うことで、実際に災害が起こる前に緊急遮断弁を閉じたり、緊急開放弁を開放したりすることが可能であり、更に何らかのトラブルで、災害事前情報により緊急遮断弁が閉じられなかった場合や緊急開放弁が開放されなかった場合にも対応できるよう、2重で緊急遮断弁、緊急開放弁の開閉を制御する。これにより、より利便性の高い、配管部材の遮断開放システム及び、配管部材の遮断開放方法を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1 遮断開放システム、 5 パイプ、 10 通信端末
30 歪センサ、 31 漏液センサ、 32 土壌分析センサ
33 温度センサ、 34 感震センサ、 35 圧力センサ
40 開スイッチ、 41 閉スイッチ
50 バルブ、 60 遮断開放装置
61 制御部、 62 記憶部、 64 外部入出力部
65 無線通信部、 66 受信部、 67 緊急遮断弁制御部
69 緊急開放弁制御部
70 UV照度センサ、71 PH計センサ、 73 光センサ
74 漏液センサ、 75 液面センサ、
1000 タンク