(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 1/12 20060101AFI20220816BHJP
B43K 1/00 20060101ALI20220816BHJP
B43K 8/02 20060101ALI20220816BHJP
B43K 5/02 20060101ALN20220816BHJP
B43K 5/18 20060101ALN20220816BHJP
【FI】
B43K1/12 Z
B43K1/00 110
B43K8/02 100
B43K5/02
B43K5/18 100
(21)【出願番号】P 2018027189
(22)【出願日】2018-02-19
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】神谷 俊史
(72)【発明者】
【氏名】宗像 祐子
【審査官】富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-052682(JP,A)
【文献】特開2012-097153(JP,A)
【文献】特開2016-069564(JP,A)
【文献】特公昭57-041497(JP,B2)
【文献】特開2014-083699(JP,A)
【文献】特開2013-111952(JP,A)
【文献】特開2006-159629(JP,A)
【文献】特開平11-129668(JP,A)
【文献】特開2007-69427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00-1/12
5/00-8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも平均粒子径1μm以上の粒子を含有するインク組成物に用いるペン芯を有する筆記具であって、該筆記具は、少なくとも平均粒子径100μm以上、1,000μm未満の熱可塑性樹脂粒子と、10~30質量%の繊維状の熱可塑性樹脂とを焼結した焼結芯からなるペン芯と、該ペン芯を装着する筆記方向を視認することができる可視部を有する保持体を少なくとも有するペン先を備え、前記インク組成物は、筆記面とインクとの接触角が45°以下となる組成のインク組成物である
と共に、ペン芯の筆記部と接触する保持体の接触面部に非平滑面部を形成したことを特徴とする筆記具。
【請求項2】
少なくとも平均粒子径1μm以上の粒子を含有するインク組成物に用いるペン芯を有する筆記具であって、該筆記具は、少なくとも平均粒子径100μm以上、1,000μm未満の熱可塑性樹脂粒子と、10~30質量%の繊維状の熱可塑性樹脂とを焼結した焼結芯からなるペン芯と、該ペン芯を装着する筆記方向を視認することができる可視部を有する保持体を少なくとも有するペン先を備え、前記インク組成物は、筆記面とインクとの接触角が45°以下となる組成のインク組成物であると共に、前記インク組成物をインク吸蔵体に吸蔵させたノック式であることを特徴とする筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光輝性顔料(ラメ)などの平均粒子径が大きい粗大粒子を含有するインク組成物に好適なペン芯を有する筆記具に関して、更に詳しくは、光輝性顔料(ラメ)などの平均粒子径が大きい粗大粒子の流出性に優れると共に、ペン芯の強度及び筆記感も高度に両立した筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光輝性顔料(ラメ)などの平均粒子径が大きい粗大粒子を含有する水性インク組成物としては、例えば、パール顔料を含む光輝性顔料、水性樹脂エマルション及びセルロース誘導体を含む水性光輝性インク組成物(例えば、特許文献1参照)や、金属被覆フレーク状ガラス顔料、金属酸化物被覆フレーク状ガラス顔料、金属粉顔料、パール顔料などから選ばれる無機顔料(光輝性顔料)と、水と、発酵セルロースを除く高分子物質とを含み、E型粘度計を用いた粘度を特定の範囲としたマーキングペン用水性インク組成物(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
これらの光輝性顔料(ラメ)などの平均粒子径が大きい粗大粒子を含有するマーキングペン用などの水性インク組成物は、筆記描線がキラキラ輝くものであり、リッチな気分で使用されるものである。
【0003】
しかしながら、この光輝性顔料(ラメ)などの平均粒子径が大きい粗大粒子を含有する水性インク組成物を蛍光ペンのように使用すると、文字の上ではインクがハジいてしまい光輝性顔料(ラメ)が乗らないため、文字自体はキラキラさせることができないという課題がある。
そもそも、光輝性顔料(ラメ)は、下地が濃色のほうが、より光輝感が強いため、文字自体をキラキラ輝かさせるほうが良いものである。
【0004】
一方、本出願人による、着色剤と、トリメチルグリシンと、ペンタエリスリトールと、10質量%以下の水溶性有機溶剤と、水とを少なくとも含有する筆記具用水性インク組成物は、筆記描線の乾燥性(速乾性)に優れたものであり、印刷文字の上でインクがハジくことによる、乾燥ムラを防止するために、更に、フッ素系界面活性剤などを配合している(例えば、特許文献3参照)。これは、印刷文字の上にインクを濡れ広げさせることによって、乾燥を促進させている。通常の蛍光ペン等では、印刷文字の上でインクがハジいていても、見た目には影響が無いため問題はなかった。
【0005】
他方、光輝性顔料(ラメ)などの平均粒子径が大きい粗大粒子を吐出するためのペン芯等としては、例えば、繊維を収束して、バインダー樹脂で接着硬化させて得られる繊維束からなる筆記具用ペン先において、上記繊維束の少なくとも筆記面となる表面に熱可塑性粉体からなる焼結体を被覆してなることを特徴とする筆記具用ペン先(例えば、特許文献4参照)や、塗布に適した先端形状を有する筒状体に形成し、空隙率約75~85%、特に80%前後とした、超高分子量ポリエチレン粉体を焼結してなる、後方に開放された穴部を有する穂先本体と、該穂先本体の穴部に内蔵した中綿とからなることを特徴とする穂先体(例えば、特許文献5参照)が知られている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献4及び5のペン芯等は、光輝性顔料(ラメ)などの平均粒子径が大きい粗大粒子を吐出することが可能であるが、その空隙率などから、ペン芯強度が劣ることとなり、また、筆記感も低下するなどの課題を有している。
【0007】
更にまた、本出願人は、例えば、特許文献6に、筆記方向を視認することができる可視部を有するペン先を備えた筆記具を開示しているが、この筆記具は筆記感を高めるために、紙面との接触部は、平均粒子径の小さい熱可塑性粒子材料などを使用しているため、光輝性顔料(ラメ)などの平均粒子径が大きい粗大粒子を含むインク組成物を流出させることができないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-46660号公報(特許請求の範囲等)
【文献】特開2016-69564号公報(特許請求の範囲等)
【文献】特開2016-151003号公報(特許請求の範囲等)
【文献】特開2004-98518号公報(特許請求の範囲、
図1等)
【文献】特開2014-83699号公報(特許請求の範囲、
図1、
図2等)
【文献】特開2000-52682号公報(特許請求の範囲、
図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、これを解消しようとするものであり、光輝性顔料(ラメ)などの平均粒子径が1μm以上の大きい粗大粒子の流出性に優れると共に、ペン芯の強度及び筆記感も高度に両立した筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記従来の課題等を解決するために鋭意検討した結果、少なくとも平均粒子径が1μm以上の粒子を含有するインク組成物に用いるペン芯であって、該ペン芯を、少なくとも平均粒子径が特定範囲の熱可塑性樹脂粒子を焼結した焼結芯とすることなどにより、上記目的の筆記具が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0011】
すなわち、本発明の筆記具は、少なくとも平均粒子径1μm以上の粒子を含有するインク組成物に用いるペン芯を有する筆記具であって、該筆記具は、少なくとも平均粒子径100μm以上、1,000μm未満の熱可塑性樹脂粒子と、10~30質量%の繊維状の熱可塑性樹脂とを焼結した焼結芯からなるペン芯と、該ペン芯を装着する筆記方向を視認することができる可視部を有する保持体を少なくとも有するペン先を備え、前記インク組成物は、筆記面とインクとの接触角が45°以下となる組成のインク組成物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光輝性顔料(ラメ)などの平均粒子径が大きい粗大粒子の流出性に優れると共に、ペン芯の強度及び筆記感も高度に両立した筆記具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のペン芯の実施形態の一例を示す正面図である。
【
図2】本発明の実施形態となるペン芯を用いた筆記具におけるペン先の一例を示すものであり、このペン先は
図1のペン芯を保持体に装着したものであって、(a)は背面図、(b)は平面図、(c)正面図、(d)は縦断面図、(e)は左側方向から見た斜視図、(f)は(e)の右側方向から見た斜視図、(g)は右側面図、(h)は左側面図、(i)は(e)の逆となる左側方向から見た斜視図、(j)は(i)の右側方向から見た斜視図である。
【
図3】
図2のペン芯を装着する保持体の一例を示す図面であり、(a)は背面図、(b)は平面図、(c)正面図、(d)は縦断面図、(e)は左側方向から見た斜視図、(f)は(e)の右側方向から見た斜視図、(g)は右側面図、(h)は左側面図、(i)は(e)の逆となる左側方向から見た斜視図、(j)は(i)の右側方向から見た斜視図である。
【
図4】本発明のペン芯(
図2のペン先)を用いたキャップを取り付けた筆記具の一例を示すものであり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は縦断面図である。
【
図5】
図4の筆記具からキャップを取り外したものであり、(a)は平面図、(b)平面図、(c)は正面図、(d)は縦断面図、(e)は左側面図である。
【
図6】
図5の筆記具のペン芯と保持体から構成されるペン先を先軸に取り付けた要部を示す図面であり、(a)は左側方向から見た斜視図、(b)は(a)の逆となる右側方向から見た斜視図である。
【
図7】本発明の他の実施形態となるペン芯を用いた筆記具の他例を示す縦断面図である。
【
図8】本発明の他の実施形態となるペン芯を用いた筆記具の他例を示す縦断面図である。
【
図9】本発明の他の実施形態となるペン芯を用いた筆記具の他例を示す縦断面図である。
【
図10】本発明の他の実施形態となるペン芯を用いた筆記具の他例を示す縦断面図である。
【
図11】本発明の他の実施形態となるペン芯を用いた筆記具の他例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳しく説明する。
図1は、本発明のペン芯の実施形態の一例を示す正面図である。
本発明のペン芯は、少なくとも平均粒子径1μm以上の粒子を含有するインク組成物に用いるペン芯であって、該ペン芯は、少なくとも平均粒子径100μm以上、1,000μm未満の熱可塑性樹脂粒子を焼結した焼結芯からなることを特徴とするものである。
【0015】
本発明に用いる熱可塑性樹脂粒子としては、平均粒子径100μm以上であることが必要であり、例えば、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、エチレンー酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリスチレン(PS),スチレン-アクリロニトリル共重合体(AS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物、以下同様)の熱可塑性樹脂粒子が挙げられる。
本発明では、ペン芯に平均粒子径100μm以上の熱可塑性樹脂粒子を用いることにより、焼結体とした際にインク組成物が平均粒子径1μm以上の粒子、例えば、金属被覆フレーク状ガラス顔料、金属酸化物被覆フレーク状ガラス顔料、金属粉顔料、パール顔料などの粗大粒子のインク流出性が高まりものである。一方、ペン芯に平均粒子径1000μm未満の熱可塑性樹脂粒子を用いることにより、ペン先が筆記面に接触した際の筆記感触、並びに、ペン芯強度を高度に両立することができることとなる。
更に好ましくは、ペン芯に平均粒子径が200μm以上500μm以下の熱可塑性樹脂粒子を用いることが望ましい。
なお、ペン芯に用いる熱可塑性樹脂粒子の平均粒子径が、100μm未満であると、形成されるインク流路の幅が狭まり、ラメ粒子のような大きな粒子径のインクを排出させることができない。
【0016】
本発明において、ペン芯に用いる熱可塑性樹脂粒子の平均粒子径が100μm未満のものでは、インク組成物に含まれる光輝性顔料(ラメ)などの平均粒子径が1μm以上と大きい粗大粒子におけるペン芯からのインク流出性、ペン芯の強度及び筆記感を高度に両立することができないものとなる。
なお、本発明において、「平均粒子径」とは、電子顕微鏡にて、測定した粒子の直径の平均値を意味し、電子顕微鏡に投影された画像内の20個の粒子について測定した粒子径の平均値である。粒子が円形でない場合は、気孔を形成する輪郭の任意の2点を結ぶ線分のうち、最も長い線分の長さと最も短い線分の長さを足して2で割った値を、その粒子の粒子径とする。
【0017】
本発明の効果を更に向上させる点から、本発明のペン芯は、上記特性の熱可塑性樹脂粒子と共に、繊維状の熱可塑性樹脂を併用して焼結した焼結体から構成されるものが好ましい。
用いる繊維状の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、エチレンー酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリスチレン(PS),スチレン-アクリロニトリル共重合体(AS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)共重合体、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも1種を繊維化したものが挙げられ、繊度1~30デシテックス(以下、dtexと称す)のものが好ましく、2~10dtexものがより好ましく、平均繊維長が0.1~2.0mmであるものが好ましく、平均繊維長0.3~1.0mmであるものがより好ましい。
これらの繊度の範囲(2~10dtex)、平均繊維長(0.3~2.0mm)を有する繊維状の熱可塑性樹脂を併用することにより、更に、ペン芯強度とインク流出性を更に高度に両立することができる。
【0018】
本発明のペン芯は、少なくとも平均粒子径100μm以上、1,000μm未満の熱可塑性樹脂粒子を焼結することにより、好ましくは、平均粒子径100μm以上、1,000μm未満の熱可塑性樹脂粒子と、上記特性の繊維状の熱可塑性樹脂とを焼結することにより、ペン芯(焼結体)を得ることができる。
具体的には、上記特性の熱可塑性樹脂粒子単独を、または上記特性の熱可塑性樹脂粒子と繊維状の熱可塑性樹脂とを、混練又は界面活性剤等の添加物を加えて混練し、筆記具用ペン芯の各形状に沿う型枠内で加圧成型したものを乾燥後焼成する方法、あるいは上記特性の熱可塑性樹脂粒子単独を、または上記特性の熱可塑性樹脂粒子と繊維状の熱可塑性樹脂とを、混練又は界面活性剤等の添加物を加えて混練し、筆記用ペン芯の各形状に沿う型に流し込み、固化させた後、乾燥、焼成する等適宜の方法が可能である。
焼成温度及び焼成時間は、筆記具用(塗布具用を含む)のペン芯の各形状、大きさ、用途、熱可塑性樹脂種などにより変動するものであるが、110~180℃の範囲で、焼成時間は、10分~10時間焼成することが好ましい。
【0019】
本発明では、上記特性の熱可塑性樹脂粒子を単独で用いる場合は、インク特性(インク種、粒子)に応じて熱可塑性樹脂粒子の種類を好適に選択することにより、また、上記特性の熱可塑性樹脂粒子と繊維状の熱可塑性樹脂とを併用する場合は、用いるインク特性(インク種、粒子)、熱可塑性樹脂粒子と繊維状の熱可塑性樹脂の物性(平均粒子径、平均繊維長、繊度)及び熱可塑性樹脂粒子と繊維状の熱可塑性樹脂の含有割合及びその組み合わせ、更に、焼結温度・時間等を好適に組み合わせることにより、所定の気孔率やインク組成物の流出性とペン芯の物理的強度(せん断強度、折損強度)及び筆記感を高度に充足するペン芯を得ることができる。
上記特性の熱可塑性樹脂粒子(A)と繊維状の熱可塑性樹脂(B)とを併用する場合は、(A):(B)=70~90質量%:30~10質量%であることが好ましく、更に好ましくは、80~90質量%:20~10質量%が望ましい。
上記(A)と(B)との含有割合を70~90質量%:30~10質量%とすることにより、更に本発明の効果を発揮せしめるペン芯が得られることとなる。
上記特性の熱可塑性樹脂粒子と繊維状の熱可塑性樹脂とを併用する場合に、特に好ましくは、熱可塑性樹脂粒子(A)と繊維状の熱可塑性樹脂(B)は、焼結性の点から、共に同じ材質の熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、例えば、熱可塑性樹脂粒子(A)がポリエチレン製であれば、繊維状の熱可塑性樹脂(B)として、ポリエチレン製を用いることが望ましい。
【0020】
本発明のペン芯は、上記特性の熱可塑性樹脂粒子単独を、または上記特性の熱可塑性樹脂粒子と繊維状の熱可塑性樹脂とを焼結して焼結体とすることにより得られるものであり、焼結体の気孔率は用いる筆記具の用途(アンダーラインマーカー、サインペン、筆記板用ペン)により変動するものであり、好ましくは、気孔率30~80%とすること、特に好ましくは、40~60%とすることが望ましい。なお、本発明において、「気孔率」とは、多孔体のみかけの体積に対する空隙部分の体積比をいい、下記のようにして算出される。まず、既知の質量及び見掛け体積を有するペン芯を水中に浸し、十分に水を浸み込ませた後、水中から取り出した状態で質量を測定する。測定した質量から、ペン芯に浸み込ませた水の体積が導出される。この水の体積をペン芯の気孔体積と同一として、下記式(A)から気孔率が算出される。
気孔率(単位:%)=(水の体積)/(ペン芯の見掛け体積)×100 …(A)
【0021】
本発明において、上記特性のペン芯に用いるインク組成物は、少なくとも平均粒子径1μm以上の粒子を含有するものである。
用いることができる平均粒子径1μm以上の粒子としては、例えば、ガラスフレーク又は塊状フレークを母材とした上に、金属もしくは金属酸化物をコートした金属被覆フレーク状ガラス顔料や金属酸化物被覆フレーク状ガラス顔料、金属粉顔料、金属酸化物粉顔料、パール顔料などの光輝性顔料などの少なくとも1種が挙げられる。
これらの光輝性顔料などの粒子において、好ましくは、平均粒子径は1~500μmであるものが望ましく、更に好ましくは、20~50μmであるものが望ましい。
これらの平均粒子径サイズの光輝性顔料などの粒子をインク組成物中に含有することにより、十分な色相と上記特性のペン芯との相性等により、詰まりがなく、優れた流出性能を実現することができるものとなる。
これらの平均粒子径1μm以上の粒子の含有量は、筆記性能、使用特性、光輝性の描線を得るために、インク組成物全量に対して、2~30質量%、好ましくは、5~30質量%が望ましい。
この平均粒子径1μm以上の粒子の含有量が2質量%以上とすることにより、良好な使用性、光輝性のある筆記性の良好なものが得られ、一方、筆記性能、使用特性、光輝性の描線の点から30質量%以下とすることが望ましい。
【0022】
平均粒子径1μm以上の粒子としては、具体的には、ガラスフレークに金属等で被覆した、メタシャイン2040PS(平均粒子径40μm)、2020PS(平均粒子径25μm)、5090NS(平均粒子径90μm)、5090RC(平均粒子径90μm)(以上、日本板硝子株式会社製)等、マイカ表面に金属酸化物等の被覆を施した、イリオジン100(粒子径10~60μm、銀色)、イリオジン151(粒子径1~110μm、銀色)、イリオジン153(粒子径20~100μm、銀色)、イリオジン201(粒子径5~25μm、金色)、イリオジン217(粒子径10~60μm、赤銅色)、イリオジン289(粒子径10~125μm、青色)、イリオジン504(粒子径10~60μm、ワインレッド色)、イリオジン530(粒子径10~125μm、銅色)(以上、メルクジャパン株式会社製)等のパール顔料等が挙げられる。
【0023】
また、インク組成物は熱変色性マイクロカプセル顔料を用いることもできる。熱変色性マイクロカプセル顔料とは、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、及び前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させたものである。可逆熱変色性組成物とは、常温(例えば25℃)で所定の色彩(第1色)を維持し、高温変色温度まで昇温させると別の色彩(第2色)へと変化し、その後、低温復色温度まで冷却させると、再び元の色彩(第1色)へと復帰する性質を有する組成物をいう。一般的には第2色を無色とし、第1色(例えば赤)で筆記した描線を昇温させて無色とする構成でもよい。従って、描線が筆記された紙面等に対して摩擦体である軸筒又はキャップによって擦過して摩擦熱を生じさせ、それによって描線を無色に変化させる。なお、当然のことながら第2色は、無色以外の有色でもよい。高温変色温度を60~80℃、且つ低温復色温度を-20~0℃の範囲とし、高温変色温度と低温復色温度との差を60~100℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。また、軸筒やキャップの端部を例えば熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂との混合物で形成することで摩擦体として容易に機能させることができる。
マイクロカプセル顔料の平均粒子径の場合は、最大外径の平均値が、5.0μmを越える系では、毛細間隙からの流出性の低下を来し、一方、最大外径の平均値が、1.0μm未満の系では高濃度の発色性を示し難く、好ましくは、最大外径の平均値が、1~4μmの範囲、当該マイクロカプセルの平均粒子径〔(最大外径+中央部の最小外径)/2〕が1~3μmの範囲が好適である。
可逆熱変色性組成物の壁膜に対する比率が前記範囲より大になると、壁膜の厚みが肉薄となり過ぎ、圧力や熱に対する耐性の低下を起こし、逆に、壁膜の可逆熱変色性組成物6cに対する比率が前記範囲より大になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を免れず、好適には、可逆熱変色性組成物/壁膜=6/1~1/1(重量比)である。
【0024】
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、インク組成物全量に対し、2~50質量%(好ましくは5~30質量%)配合することができる。2重量%未満では発色濃度が不充分であり、50質量%を越えるとインキ流出性が低下し、筆記性が阻害される。
【0025】
前記可逆熱変色性組成物のマイクロカプセル化は、界面重合法、界面重縮合法、in Situ重合法、コアセルベート法等の公知の手段が適用できるが、本発明の前記した要件を満たす粒子径範囲の、非円形断面形状のマイクロカプセル顔料を得るためには、凝集、合一化が生じ難い界面重合法又は界面重縮合法の適用が効果的である。
【0026】
用いることができるインク組成物は、上述の如く、平均粒子径1μm以上の粒子を含有するものであるが、その他の成分はインク種、筆記具の用途により、変動するものであり、各用途のインク種の各成分、例えば、溶媒(水、有機溶剤)、界面活性剤、分散剤、固着性樹脂、粘度調整剤、防菌剤(防腐剤)、pH調整剤などを適宜選択して用いることができる。
【0027】
例えば、溶媒としては、水(精製水、水道水、イオン交換水、蒸留水、純水、超純水等)、有機溶剤の少なくとも1種が用いられる。
有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、tert-アミルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ベンジルグリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテル、グリセリン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルイソブチルケトン、メチルn-プロピルケトン、メチルn-ブチルケトン、ジ-n-プロピルケトン、ギ酸n-ブチル、ギ酸イソブチル、酢酸メチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸プロピルなどの少なくとも1種が挙げられる。
【0028】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸などの少なくとも1種が挙げられる。
【0029】
更に、印字部に筆記(マーキング等)したインクハジキを抑制する点から、濡れ剤となるフッ素系界面活性剤を含有することが好ましい。このフッ素系界面活性剤を含有することにより、印刷物に筆記した際に、文字の上でもインクをハジクことがなく、平均粒子径1μm以上の粒子(光輝性顔料等)を含有したインクでは、文字自体をキラキラさせることができるものとなる。
用いることができるフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。具体的には、市販の、パーフルオロアルキルスルホン酸〔商品名「Capston FS-10」(デュポン社製)〕、パーフルオロアルキルカルボン酸〔商品名「ユニダイン101」(ダイキン工業社製)〕、パーフルオロアルキルカルボン酸塩〔商品名「サーフロンS-111」(旭硝子株式会社製)〕、パーフルオロアルキルリン酸エステル〔商品名「メガファックRSシリーズ」(DIC株式会社製)〕、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物〔商品名「サーフロンS-145」(旭硝子株式会社製)〕等が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
これらのフッ素系界面活性剤の含有量は、インク組成物全量に対し、0.001~1.0質量%、好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0030】
また、分散剤としては、各種市販されているものを使用することができ、特に限定されないが、高分子の樹脂系分散剤が好ましく、例えば、スチレンアクリル樹脂やポリオキシエチレン系分散剤を用いることができる。特に好ましい分散剤は、高分子ポリマーであるスチレンアクリル樹脂である。
【0031】
用いる固着性樹脂は、用いる有機溶剤等に溶解できるものであれば良く、例えば、ロジン、エステルガム、マレイン酸変成ロジン、フェノール変成ロジン等のロジン系樹脂、ポリビニルブチラール、アルキル-フェノール樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂等のビニル系樹脂、石油系樹脂、ケトン系樹脂、アクリル系樹脂、アルデヒドと尿素の縮合物、マレイン酸樹脂、テルペンフェノール、アクリル酸樹脂、スチレンアクリル酸樹脂、塩酢ビ樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂等の少なくとも1種が挙げられる。好ましくは、アクリル系樹脂である。
これらの固着樹脂(固形分)の含有量は、固着力とインク流出性の点から、インク組成物全量に対して、好ましくは、5~50質量%、更に好ましくは、10~20質量%とすることが望ましい。
【0032】
粘度調整剤としては、例えば、アラビアガム、トラガカントガム、グァーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、カゼインクサンテンガム、デキストラン、ウェランガム、ラムザンガム、アルカガム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ヒドロキシプロピル化グァーガム、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンオキサイド、酢酸ビニルとポリビニルピロリドンの共重合体、アクリル樹脂塩、アクリル酸とアルキルメタクリレートの共重合体又はそれらの塩などの少なくとも1種が挙げられる。
【0033】
防菌剤としては、フェノキシエタノール、ペンタクロロフェノールナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2,4-チアゾリルベズイミダゾール、パラオキシ安息香酸エステルなどの少なくとも1種が挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、アンモニア、水酸化カリウム、リン酸カリウム、トリエタノールアミンなどの少なくとも1種が挙げられる。
【0034】
用いるインク組成物は、インク種、筆記具の用途により、上記各成分を好適に組み合わせ、攪拌機、ビーズミルなどで分散処理などして常法により、水性マーカー用などのインク組成物を調製することができる。
インク組成物が水性マーカー用インク組成物では、好ましくは、平均粒子径1μm以上の粒子を5~30質量%、有機溶剤を3~20質量%、固着性樹脂を10~20質量%、フッ素系界面活性剤を0.01~0.5質量%、水を少なくとも含有することが好ましい。
用いるインク組成物は、インク配合成分種、各配合量を調整することなどにより、インク粘度(25℃:コンプレート型粘度計)1~5mPa・s、表面張力30~60mN/m、ペン芯10からのインク流出量を30~60mg/mに設定することが好ましい。
本発明(後述する実施例等を含む)において、表面張力の測定方法は、協和界面科学社製の表面張力計測器を用い、25℃の環境下、ガラスプレートを用いて、垂直平板法によって測定によって求めることができる。
【0035】
また、本発明では、前記インク組成物は、筆記面とインクとの接触角が45°以下であることが好ましい。筆記面とインクとの接触角が45°以下とするためには、含有せしめる平均粒子径1μm以上の粒子、フッ素系界面活性剤などの界面活性剤種、固着性樹脂種、並びに、これらの含有量を好適に組み合わせることなどにより、調製することができる。本発明(後述する実施例を含む)において、接触角の測定には、自動接触角測定機(協和界面科学社製DM500)を用いた。
【0036】
本発明のペン芯の形状は、特に限定するものでなく、種々の筆記具の用途、すなわち、アンダーラインマーカー、サインペン、筆記板用ペンなどのマーキングペンに用いる好適な形状からなるペン芯を用いることができる。更に、塗布具用であれば、化粧液塗布具、修正液塗布具、薬液塗布具、塗料液塗布具等に用いる好適な形状からなる塗布具用のペン芯を用いることができる。
以下に、図面を参照しながら、本発明のペン芯の各形状等、これらのペン芯を用いた各筆記具を詳述する。
【0037】
本発明のペン芯の形状等としては、例えば、
図1に示す形状のペン芯が挙げられる。
このペン芯10の形状は、
図1に示すように、全体が略コ字型形状となるものであり、インク誘導部11、11と、該インク誘導部11、11からのインクを導出する傾斜状の筆記部12とを備えたものである。
このペン芯10は、上記特性の熱可塑性樹脂粒子単独、または、上記特性の熱可塑性樹脂粒子と繊維状の熱可塑性樹脂とを上記焼結法により焼結し焼結体とすることにより得られるものである。
本実施形態のペン芯10は、例えば、熱可塑性樹脂粒子80質量%と繊維状の熱可塑性樹脂20質量%とを焼結することにより得られたものであり、熱可塑性樹脂粒子と繊維状の熱可塑性樹脂からなる焼結体が混練された構造となる。これにより、少なくとも平均粒子径1μm以上の粒子を含有するインク組成物に用いるペン芯において、インク流出性と物理的強度(せん断強度、折損強度)及び筆記感が高度に両立できるものとなる(この点については更に実施例等で詳述する)。
【0038】
次に、本発明の筆記具について、
図2~
図6、並びに、
図7~
図11に示す各構造となる筆記具に基づいて、それぞれ説明する。
本発明の筆記具は、上記構成のペン芯を用いたことを特徴とするものであり、ペン芯以外の構成は、特に限定されるものではない。
図2~
図6は、本発明の実施形態となる筆記具の一例を示すものであり、
図1のペン芯10を用いた筆記具の部品図を含む各図面である。
図2は、
図1のペン芯を保持体に装着したペン先の一例を示す各図面であり、
図3は
図2のペン芯を装着する保持体の一例を示す各図面であり、
図4は、
図1のペン芯(
図2のペン先)を用いたキャップを取り付けた筆記具の一例を示す各図面であり、
図5は、
図4の筆記具からキャップを取り外した各図面であり、
図6は、
図5の筆記具のペン芯と保持体から構成されるペン先を先軸に取り付けた要部を示す各図面である。
本実施形態の筆記具Aは、
図4に示すように、上記構成のペン芯10と、該ペン芯10を装着する筆記方向を視認することができる可視部23を有する保持体20とを少なくとも有するペン先aを備えたことを特徴とするものである。
【0039】
ペン先aは、
図2に示すように、上記構成のペン芯10を筆記方向を視認することができる可視部を有する保持体20に装着したものである。
保持体20は、
図2(a)~(j)及び
図3(a)~(j)に示すように、筆記芯となるペン芯10を固定して、後述する軸体の先軸先端開口部に固着されるものであり、膨出状の本体部21と、該本体部21の前方側に、フランジ部22と、筆記方向を視認することができる可視部23とを有すると共に、可視部23の先端側にペン芯10の先端側(端面)を保持する前方保持部24a,24bとを有するものである。本実施形態では、前方保持部24a,24bの長手方向長さを異ならしめているもの、すなわち、ペン芯10の先端側(端面)を保持する長さが長い前方保持部24aと短い前方保持部24bとし、前方保持部24aの先端側の端部はペン芯10の先端側の端部と同じ位置(端部)にあり、前方保持部24bは後述するように突出量(突出長さ分)だけ短い寸法となっている。なお、上記保持体20において、ペン芯10の先端側(端面)を保持する長い前方保持部24aと短い前方保持部24bとしたが、前方保持部24aと前方保持部24bとの保持長さを同じくしてもよいものである。
【0040】
また、上記本体部21の後方側に、上記本体部21に連設される保持片25を有する後方保持部26とを備えたものである。これらの部材から構成される保持体20の長手方向外周面全体には、後述するコ字型状のぺン芯10を嵌入保持する保持溝27が形成されている。更に、本体部21の幅方向外周面には、凹状の嵌合部21aが形成され、長手方向外周面となる両面空気流通溝には、それぞれ直線状の空気流通溝21bと屈曲状の空気流通溝21cが形成されている。
【0041】
このように構成される保持体20全体は、硬質材料で構成されており、例えば、視認性を有する硬質材料、例えば、金属、ガラス、ゴム弾性を有しない樹脂などから構成されるものである。視認可能となるゴム弾性を有しない樹脂としては、例えば、PP、PE、PET、PEN、ナイロン(6ナイロン、12ナイロン等の一般的なナイロン以外に非晶質ナイロン等を含む)、アクリル、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ABS等の可視光線透過率が50%以上の材料から成形により構成することにより、可視部23で筆記方向に書いてある文字を有効に視認できることとなる。なお、可視部23だけを視認性を有する材料で構成してもよい。なお、可視光線透過率は多光源分光測色計〔スガ試験機社製、(MSC-5N)〕にて反射率を測定することで求めることができる。
また、保持体20は、上記各材料の一種類、または、耐久性、視認性の更なる向上の点などから、2種類以上の材料を用いて構成してもよく、射出成形、ブロー成形などの各種成形法により成形することができる。
【0042】
また、上記ペン芯10の幅方向の長さtは、本実施形態では、十分な筆記流量の確保を確保する点から、好ましくは、0.50mm以上、特に、1.00~3.00mmであることが望ましい。
筆記部12は、筆記しやすい傾きとなるように、傾斜状(ナイフカット状)となっており、この傾き等は、筆記等の使い勝手に合わせて適宜設定される。また、この筆記部22は、描線幅Wが太いものであり、好ましくは、描線幅Wは1mm以上、更に好ましくは、描線幅Wは2mm以上の描線幅となる筆記部が望ましい。
【0043】
このペン先aにおいて、上記ペン芯10の保持体への固着(装着)は、保持溝27に上記ペン芯10を嵌入し、前方保持部24a,24bと保持片25を有する後方保持部26との保持により固着されることとなる。更に、ペン芯10の固着(抜け止め)を確実にするために、接着剤による接着、溶着などを更に用いても良いものである。また、ペン芯10の筆記部12と接触する保持体20の保持溝27の接触面部に楔形状の非平滑面部を形成して更に上記ペン芯10の保持体20への固着を確実にしてもよいものである。本実施形態では、
図2(d)に示すように、上記楔形状の非平滑面部28を形成している。
【0044】
本実施形態では、
図2(b)に示すように、保持体20からのペン芯10の先端側の突出量Yが0.65mm以上、1.05mm以下となっており、これにより強い筆記荷重で筆記してもペン芯10の先端側の突出量Yを極力保持体内面で筆記芯を押さえる構造となるため、筆記性能を損なうことなく、ペン芯の破損を防ぎ耐久性に優れるものとしている。突出量Yが、0.65mmよりも短いと、ペン体を寝かせて筆記する際に、保持体が接触し、筆記できなくおそれがあり、一方、突出量Yが、1.05mmよりも長いと、強い筆記荷重により、筆記性能を損なう可能性がある。なお、
図2(d)に示すXは筆記芯幅であり、上記突出量Yは、上記0.65mm以上、1.05mm以下であると共に、筆記芯幅Xの50%未満であることが好ましい。
【0045】
また、上記実施形態の他、保持体10からのペン芯10の先端側の突出量Yをペン芯の厚さtの40~65%とすることによっても、筆記性能を損なうことなく、ペン芯の破損を防ぎ耐久性に優れるものとなる。筆記芯の先端側の突出量Yをペン芯10の厚さtの40~65%(Y/tが40~65%)とすることにより、強い筆記荷重で筆記してもペン芯10の先端側の突出量Yが筆記芯の厚さとの関係から、ペン芯の強度を更に保持できると共に、突出量Yを極力保持体内面でペン芯を押さえる構造となるため、更に筆記性能を損なうことなく、ペン芯の破損を防ぎ耐久性に優れるものとしている。より好ましくは、ペン芯10の先端側の突出量Yはペン芯厚さtの48~58%とすることが望ましい。この突出量Yがペン芯の厚さtの40%未満であると、強い筆記荷重により、筆記性能を損なう可能性があり、一方、65%超過であると、保持体が厚くなり、筆記の際に紙面が見にくくなる。なお、Xはペン芯幅Xであり、上記突出量Yは、上記ペン芯の厚さtの40~65%と共に、ペン芯幅Xの50%未満(Y/Xが50%未満)であることが好ましい。
特に好ましい形態としては、保持体からの筆記芯の先端側の突出量Yを0.65mm以上、1.05mm以下及び筆記芯厚さtの40~65%とすることが望ましい。
【0046】
本実施形態の筆記具Aは、上記構成のペン先a、筆記具本体となる軸体30、インク吸蔵体40、キャップ50を備えたものである。
この筆記具Aは、
図4(d)及び
図5(c)に示すように、筆記具本体となる軸体30内のインク吸蔵体40に上記組成のインク組成物を吸蔵させ、インク吸蔵体40の前端側に上記構成のペン先aを、先軸35を介して取り付け、インク吸蔵体40のインクを毛管作用により、ペン先aのペン芯10に供給する構成となっている。
【0047】
軸体30は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等で形成されるものであり、上記組成のインク組成物を含浸したインク吸蔵体40を収容する有底筒状の後軸31と、上記構成のペン芯10を取り付けた保持体20(ペン先a)を固着する先軸35とを有している。
後軸31は、例えば、ポリプロピレン(PP)等からなる樹脂を使用して有底筒状に成形され、筆記具の本体(軸体)として機能する。この後軸31は、
図4(d)及び
図5(c)に示すように、後端側内部にインク吸蔵体40の後端部を保持する保持片32、32…からなる保持部材33が設けられており、後軸21全体及び先軸35は不透明又は透明(及び半透明)に成形されるが、外観上や実用上の観点からいずれを採用しても良い。また、後軸31の前方側に先軸35が嵌合等により固着される構造となっている。なお、上記組成のインク組成物を熱変色性インクとした場合は、熱可塑性エラストマーをキャップ頂部又は後軸31の後端部に形成し、擦過動作により摩擦熱を発生容易な軸体とすることが好適である。
先軸35は、ペン芯10を固定する保持体20の本体部21を固着する凸状の嵌合部36が設けられている。この構造の先軸35は、例えば、ポリプロピレン(PP)等からなる樹脂などで成形されるものである。
【0048】
インク吸蔵体40は、上記組成のインク組成物を含浸したものであり、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる繊維束、フェルト等の繊維束を加工したもの、また、スポンジ、樹脂粒子、焼結体等の多孔体を含むものである。このインク吸蔵体40は、軸体30内に収容保持されている。
【0049】
用いる筆記具用インクの組成は、上述の如く、少なくとも平均粒子径1μm以上の粒子を含有するものであり、筆記具の用途等に応じて、水性インク、熱変色性インクなどの好適な配合処方とすることができる。
なお、筆記具用インクを熱変色性インクとした場合は、熱可塑性エラストマーをキャップ50の頂部に形成し、擦過動作により摩擦熱を発生容易な摩擦体とすることができる。
【0050】
上記構成のペン芯10を固着した保持体20から少なくともなるペン先aを、先軸35内に挿入すると、ペン芯10は保持体20を介して筆記具本体となる軸体30に装着(固着)されると共に、ペン芯10のインク誘導部11、11の後方側端部11a、11aはインク吸蔵体40の先端側内部に入り込む構成となっている。また、ペン芯10を保持した後軸32を軸体30の後軸保持部33内に挿入すると、ペン芯10は嵌合等により筆記具本体となる軸体30に装着(固着)されるものとなる。
なお、インク吸蔵体40の先端側内部にインク誘導部11、11の後方側端部11a、11aを挿入する凹部を形成してもよい。また、軸体30内の圧力等が増大にした際に、インク垂れ等がペン先から生じることがあるが、本実施形態の筆記具Aでは、
図2に示すように、空気流通溝41b,41cを介して軸体10内と外気とを調整している。
キャップ50は、先軸35の先端側外周面に嵌合等により着脱自在に取り付けられるものである。
【0051】
本発明となる筆記具Aでは、筆記具の軸体30内に上記組成のインク組成物を吸蔵したインク吸蔵体40を挿入して保持せしめ、先端側には先軸35を介して上記構成のペン先aを順次嵌合等により固着せしめることにより、簡単に筆記具Aを作製することができ、インク吸蔵体40に吸蔵された上記組成のインク組成物は毛管力によりペン先aのペン芯10の筆記部12に効率的に供給され、筆記等に供されるものとなる。
【0052】
このように構成される筆記具Aでは、ペン芯10は、少なくとも平均粒子径1μm以上の粒子を含有するインク組成物に用いるものであり、少なくとも平均粒子径100μm以上、1,000μm未満の熱可塑性樹脂粒子を焼結した焼結芯から構成されたものであるため、光輝性顔料(ラメ)などの平均粒子径が大きい粗大粒子の流出性に優れると共に、ペン芯の強度及び筆記感も高度に両立したペン芯を用いた筆記具が得られることとなる。
また、この筆記具Aは、上述の如く、ペン芯10を保持する保持体20が、視認性を有する材料で構成されているので、当該保持体20の可視部23が、筆記方向を視認できる視認部となるものであり、その方向に書いてある文字等を確実に視認することができる十分な視認性が付与することができると共に、筆記終わりまで使用可能な筆記具が提供されるものとなる。
【0053】
本発明のペン芯を用いた筆記具としては、上記
図1に示したペン芯10、
図2~
図6に示したペン芯10を用いた筆記具Aの他、他の形状となるペン芯、各機構の筆記具、例えば、直液式筆記具、中綿式筆記具、バルブ機構を備えた筆記具、ノック式筆記具などに用いることができ、用途では、筆記具用ではマーキングペン、サインペン、筆ペン、筆記板用ペン、熱変色性ペンなど、塗布具用では、化粧液塗布具、修正液塗布具、薬液塗布具、塗料液塗布具などが挙げられる。
【0054】
図7及び
図8は、共に上記で詳述した特性のインク組成物を中綿等のインク吸蔵体に吸蔵させたタイプの筆記具である。該各々の筆記具B、Cは、軸体となる軸本体60a,60b内に上記特性のインク組成物を中綿等の繊維体に吸蔵したインク吸蔵体61a,61bを有し、インク吸蔵体61a,61bの前部には繊維芯からなるペン芯62a,62bの後端部63a,63bが当接されることにより、インク吸蔵体61a,61bのインクがペン芯62a,62bへそれぞれ供給される構成となっている。また、図示符号64a、64bは尾栓であり、65a、65bはキャップである。
筆記具Bのペン芯62aは、筆記部側がナイフカット状となっており、マーキングタイプのペン芯であり、筆記具Cのペン芯62bは、筆記部側等が砲弾型の形状となっている点で相違するものであり、これらのペン芯62a,62bは、上述の如く、少なくとも平均粒子径1μm以上の粒子を含有するインク組成物に用いるものであり、少なくとも平均粒子径100μm以上、1,000μm未満の熱可塑性樹脂粒子を焼結した焼結芯、例えば、上述した特性の熱可塑性樹脂粒子単独、または、上述した特性の熱可塑性樹脂粒子と繊維状の熱可塑性樹脂とを上述の焼結法により焼結し焼結体とすることにより得られるものである。以下の実施形態のペン芯も上記構成と同様であるので、その説明を省略する。
これらのペン芯62a,62bを用いた筆記具B、Cにおいても、上述の筆記具Aと同様に、光輝性顔料(ラメ)などの平均粒子径が大きい粗大粒子の流出性に優れると共に、ペン芯の強度及び筆記感も高度に両立したペン芯62a,62bを用いた各筆記具が得られることとなる。
【0055】
図9は、上記で詳述した特性のインク組成物を中綿等のインク吸蔵体に吸蔵させたペンタイプのキャップ不要となるノック式の筆記具である。該筆記具Dは、軸体70内に上記特性のインク組成物を中綿等の繊維体に吸蔵したインク吸蔵体71を備え、インク吸蔵体71の前部には上述の本発明のペン芯72の後端部72aが当接されることにより、インク吸蔵体71のインクがペン芯72へ供給される構成となっている。このペン芯72は、筆記部側が砲弾型の形状となっている。73は、軸体70の後端部に取り付けられたノック部であり、該ノック部73を前方へ押し出すことによりペン芯72が軸体70外に出て筆記状態となり、解除釦74を操作することによりペン芯72が軸体70内に収容される構造となっている。
このペン芯72を用いた筆記具Dにおいても、上述の筆記具Aと同様に、光輝性顔料(ラメ)などの平均粒子径が大きい粗大粒子の流出性に優れると共に、ペン芯の強度及び筆記感も高度に両立したペン芯72を用いた筆記具が得られることとなる。
【0056】
図10は、直液式塗布具の一例であり、該直液式筆記具Eは、上記で詳述した特性のインク組成物を中綿等に吸蔵させないで直接貯溜する軸体となるインクタンク部80を有し、また、インクタンク部80の前部には、インクタンク部80内の空気が温度上昇等によって膨張した場合にインクタンクから押し出されるインクをペン先や空気孔からボタ落ちさせないために一時的に保溜するインク保溜体(コレクター部材)81が内蔵され、コレクター部材81の先端部には上述の本発明のペン芯82が設けられた構成となっている。インクタンク部80からペン芯82へのインクの導出は、コレクター部材81の中心孔81aに付設されたインク流路を設けた中継芯83を介してインクタンク部80からインクをペン芯82に導出することにより行われる。このペン芯82は、筆記部側がナイフカット状となっている。なお、
図10中の84はホルダー部材であり、85はインクタンク部80の後部に固着される後部軸体であり、86はキャップである。また、中継芯83を介在させることなく、ペン芯82の後部をインクタンク部80内に直接配置してインク液の導出を行ってもよい。
このペン芯82を用いた筆記具Eにおいても、上述の筆記具Aと同様に、光輝性顔料(ラメ)などの平均粒子径が大きい粗大粒子の流出性に優れると共に、ペン芯の強度及び筆記感も高度に両立したペン芯82を用いた筆記具が得られることとなる。
【0057】
図11の筆記具Fは、撹拌ボールとなる硬球90を内蔵したバルブ弁式筆記具であり、上記で詳述した特性のインク組成物を中綿等に吸蔵させないで直接貯溜する軸体となるインクタンク部91を有し、バルブ弁機構92を介在して上述の本発明のペン芯93へインクが供給される構成となっている。このペン芯93は、筆記部側が砲弾型形状となっている。なお、
図11中の94はホルダー部材であり、95はバルブ弁機構92とホルダー部材94間に介在し、ペン芯93の後部を保持する保持部材であり、96はキャップである。
このペン芯93を用いた筆記Fにおいても、上述の筆記具Aと同様に、光輝性顔料(ラメ)などの平均粒子径が大きい粗大粒子の流出性に優れると共に、ペン芯の強度及び筆記感も高度に両立したペン芯93を用いた筆記具が得られることとなる。
【0058】
本発明のペン芯、及びこのペン芯を用いた筆記具は、上記実施形態などに限定されることなく、本発明の技術思想を変更しない範囲内で種々変更することができる。
本発明の技術思想のペン芯は、少なくとも平均粒子径1μm以上の粒子を含有するインク組成物に用いるものであり、少なくとも平均粒子径100μm以上、1,000μm未満の熱可塑性樹脂粒子を焼結した焼結芯から構成されることを特徴とするものであるため、ペン芯の形状は上記実施形態の、
図1に示す、インク誘導部11、11と、該インク誘導部11、11からのインクを導出する筆記部12とを備えたものに限定されず、例えば、
図7~
図11に沿う形状となるペン芯などであれば良く、その形状、大きさなどは特に限定されるものでない。
【0059】
また、
図2~
図6、
図7~
図11において、本発明のペン芯を用いた筆記具において、ペン芯が一つのシングルタイプの筆記具を挙げたが、ペン芯が筆記具本体の両側に備えたツインタイプの筆記具であってもよいものである。
【実施例】
【0060】
次に、実施例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0061】
〔実施例1〕
下記構成及び
図1~
図6に準拠するペン芯、筆記具、下記組成のインク組成物を使用した。ペン芯10、保持体20等の寸法、物性等は下記に示すものを使用した。
【0062】
(ペン芯10の構成)
〈熱可塑性樹脂粒子〉
平均粒子径300μmのポリエチレン(高密度)製粉末(融点130℃)を用いた。
〈繊維状の熱可塑性樹脂の構成〉
繊度3dtex、長さ0.5mmのポリエチレン(高密度)製繊維(融点130℃)を用いた。
〈焼結体の製造〉
上記熱可塑性樹脂粒子を用いて、
図1のペン芯10の形状に沿う型枠内で加圧成型したものを乾燥後、焼成温度130℃、焼成時間30分間焼成して、焼結体からなるペン芯10(気孔率50%)を得た。
筆記部12:W=4mm、ナイフカット状、インク誘導部:φ(t)1.6mm、突出量Y=0.85mm(tの53%)、突出量Yの反対側の突出量Y´=0.65mm(tの40%)、筆記芯幅X=1.75mm
(保持体20の構成)
アクリル樹脂製、可視光線透過率85%〔スガ試験機社製、多光源分光測色計(MSC-5N)にて反射率を測定し、可視光線透過率とした。〕
ペン芯取り付け後の可視部23(四角形)の大きさ:5mm×6mm×3mm×4mm
非平滑面部28:凹凸形状:長さ2.0mm、凹凸段差:0.1mm、
【0063】
(ペン芯10、保持体20以外の筆記具部材の構成、インク組成)
インク吸蔵体:PET繊維束、気孔率85%、φ6×77mm
筆記具本体、キャップ:ポリプロピレン(PP)製
(インク組成物の組成)
インク組成物として、下記組成の筆記具用インク(合計100質量%)を使用した。
粒子:メタシャイン1030(日本板硝子社製、平均粒子径30μm) 20質量%
防腐剤:バイオエース(ケイアイ化成社製) 0.3質量%
着色剤:NKW-4805黄(日本蛍光社製) 40質量%
フッ素系界面活性剤:CapstoneFS-10(デュポン社製) 0.3質量%
水溶性有機溶剤:グリセリン 10質量%
水(溶媒):イオン交換水 残分
インク粘度:(25℃:コンプレート型粘度計)3.0mPa・s
表面張力:30mN/m、ペン芯10からのインク流出量:15mg/m
筆記面とインクとの接触角:10°
【0064】
(比較用のペン芯の構成)
比較用のペン芯として、上記平均粒子径50μmのポリエチレン(高密度)製粉末(融点130℃)を用いた焼結体からなるペン芯(気孔率40%)を製造した。
【0065】
この実施例1のペン芯10を用いた筆記具Aを用いて、筆記したところ、インク流出性に優れることが確認された。また、本発明のペン芯と比較用のペン芯(同じ形状、大きさ、気孔率)とを物理的強度であるせん断強度、折損強度を測定するせん断力測定装置、折損強度測定装置を用いて同じ条件下で比較したところ、せん断強度で約3倍、折損強度で約3倍の強度であることが確認された。
実施例1では、上記光輝性顔料(ラメ)などの平均粒子径が大きい粗大粒子を含有する水性インク組成物を蛍光ペンのように使用しても、印刷文字の上ではインクがハジいてしまうこともなく、文字自体もキラキラさせることができることが確認された。
また、文字の上に筆記したところ、筆記時に可視部23を介して向こう側の見え方を目視にて確認したところ、視認性が十分であり、見やすく、筆記方向に書いてある文字を読みながら筆記することができた。
一方、比較例1では、ラメ粒子が流出せず、光輝性のある筆跡を得ることができなかった。
【0066】
更に、自動筆記装置にこの実施例1の塗布具をセットして、JIS S6037に従い、上質紙面上で筆記角度65°、筆記荷重1N、速度7cm/s、距離100mで直線筆記後、筆記した描線状態を目視にて確認したところ、塗布具用ペン芯10の筆記性は良好で描線かすれはなく、インク流量も良好であることがわかった。
【0067】
〔実施例2〕
上記実施例1のペン芯を下記構成の焼結体とした。
〈熱可塑性樹脂粒子〉
平均粒子径300μmのポリエチレン(高密度)製粉末(融点130℃)を用いた。
〈繊維状の熱可塑性樹脂の構成〉
繊度3dtex、平均繊維長0.5mmのポリエチレン(高密度)製繊維(融点130℃)を用いた。
〈焼結体の製造〉
上記熱可塑性樹脂粒子85質量%と繊維状の熱可塑性樹脂15質量%を混練し、
図1のペン芯10の形状に沿う型枠内で加圧成型したものを乾燥後、焼成温度130℃、焼成時間30分間焼成して、焼結体からなるペン芯10(気孔率50%)を得た。
なお、比較用のペン芯(同じ形状、大きさ、気孔率)とを物理的強度であるせん断強度、折損強度を測定するせん断力測定装置、折損強度測定装置を用いて同じ条件下で比較したところ、せん断強度で約5倍、折損強度で約6倍の強度であることが確認された。
得られたペン芯10を用いた実施例1に沿う筆記具において、ペン芯の材質を変更したものであっても、上記実施例1と同様の作用効果、すなわち、光輝性顔料(ラメ)などの平均粒子径が大きい粗大粒子の流出性に優れると共に、ペン芯の強度及び筆記感も更に高度に両立したペン芯を用いた筆記具となることを確認した。
【0068】
〔実施例3〕
上記実施例2において、熱可塑性樹脂粒子として、平均粒子径300μmのポリプロピレン製粉末(融点160℃)と、繊度4dtex、平均繊維長0.8mmのポリプロピレン製繊維(融点160℃)を用いた以外は、実施例2と同様にしたペン芯を得た。ただし、焼成温度155℃、焼成時間30分焼成して、焼結体からなるペン芯10(気孔率55%)を得た。
なお、比較用のペン芯(同じ形状、大きさ、気孔率)とを物理的強度であるせん断強度、折損強度を測定するせん断力測定装置、折損強度測定装置を用いて同じ条件下で比較したところ、せん断強度で約7倍、折損強度で約7倍の強度であることが確認された。
得られたペン芯10を用いた実施例1に沿う筆記具において、ペン芯の材質を変更したものであっても、上記実施例1と同様の作用効果、すなわち、光輝性顔料(ラメ)などの平均粒子径が大きい粗大粒子の流出性に優れると共に、ペン芯の強度及び筆記感も更に高度に両立したペン芯を用いた筆記具となることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のペン芯は、アンダーラインマーカー、サインペン、筆記板用ペンなどに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0070】
a ペン先
10 ペン芯
20 保持体
30 軸体
31 後軸
35 先軸
40 インク吸蔵体
50 キャップ