(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】多層皮膜形成化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/891 20060101AFI20220816BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220816BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20220816BHJP
A61Q 3/00 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
A61K8/891
A61K8/73
A61Q1/00
A61Q3/00
(21)【出願番号】P 2018033075
(22)【出願日】2018-02-27
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】クワック アンジェラ
(72)【発明者】
【氏名】大橋 しほ花
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-115485(JP,A)
【文献】特開2007-261950(JP,A)
【文献】特開2005-320268(JP,A)
【文献】特開2012-180317(JP,A)
【文献】特開2004-002356(JP,A)
【文献】特開2012-046449(JP,A)
【文献】特開2001-081014(JP,A)
【文献】特開2011-006374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00- 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、油性または油中水型の組成物よりなる下層と、油性または油中水型の組成物よりなる上層とを含む多層皮膜形成化粧料であって、
前記下層と前記上層とで形成される界面を有し、視認可能な特質が前記下層と前記上層とで異な
り、
前記下層を構成する組成物の粘度が35~45℃において10000Pa・s以上であって、
前記界面において前記下層の組成物が前記上層に向かって略円錐状に突き出ている吐出部を有し、該吐出部に容器側面に接した半円錐状の吐出部を含む、透明容器に充填されてなる多層皮膜形成化粧料。
【請求項2】
前記視認可能な特質が、色相、明度、彩度、輝度または透明度である請求項1記載の多層皮膜形成化粧料。
【請求項3】
前記下層および前記上層の組成物は混合することで、前記下層および前記上層の視認可能な特質を変化させることが可能なものである請求項1
または2記載の多層皮膜形成化粧料。
【請求項4】
前記多層皮膜形成化粧料が睫毛用である請求項1~
3いずれか1項記載の多層皮膜形成化粧料。
【請求項5】
前記多層皮膜形成化粧料が皮膜剤を含む請求項1~
4いずれか1項記載の多層皮膜形成化粧料。
【請求項6】
前記皮膜剤がトリメチルシロキケイ酸またはトリ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルカルバミト酸プルランである請求項
5記載の多層皮膜形成化粧料。
【請求項7】
前記トリメチルシロキケイ酸またはトリ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルカルバミト酸プルランが下層組成物全量に対して0.05~60質量%である請求項
6記載の多層皮膜形成化粧料。
【請求項8】
前記組成物が増粘剤を含む請求項1~
7いずれか1項記載の多層皮膜形成化粧料。
【請求項9】
前記増粘剤がパルミチン酸またはジメチルシリル化シリカを含む請求項
8記載の多層皮膜形成化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睫毛、眉毛、毛髪、爪のようなケラチン質のコート用途に適用可能な多層の皮膜形成化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
睫毛、眉毛、毛髪、爪のようなケラチン質のコート用途に適用可能な皮膜形成化粧料は、それぞれ機能面から様々な効果が求められている。例えば、マスカラ等に代表される睫毛用化粧料には、まつ毛を濃く長くみせる、まつ毛にボリューム感を与える等の効果のほか、カール効果(まつ毛をカールさせて上向きにする効果)、カール保持効果(経時でカールを持続させる効果)、経時での化粧持ち効果(耐水性、耐皮脂性)等の機能面からの効果が求められている。
【0003】
一方、最近では上記の機能面からの効果以外に、見た目の可愛さ、美しさ、インパクト等、例えば写真をアップロードして公開した際にひときわ映える、見栄えが良い、という、見た目からの効果(以下、この効果を美観効果ともいう)が求められるようになってきている。
【0004】
睫毛用化粧料は通常は中身が見えない容器に入っており、従来は、中身そのものの美観効果を追求したものは知られておらず、マスカラの伸びの良さという機能面を追及して、睫毛用化粧料を油層と水層の2層構成とした結果として、油層と水層が相溶していない状態の睫毛用化粧料が存在しているに過ぎない(特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-180316号公報
【文献】特開2012-180317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1および2は水層が相溶していない睫毛用化粧料であるために、カール効果、カール保持効果、経時での化粧持ち効果等の機能面が充分ではないという問題がある。カール効果等の機能面の効果を充分なものとするには、例えば、睫毛用化粧料を油性組成物または油中水型組成物とする必要があるが、同じ種類の組成物の場合には特許文献1および2のように分離しないため、自然に層を構成させることはできない。すなわち、油性組成物または油中水型組成物の多層皮膜形成化粧料においては機能面の効果と、層構成による美観効果の両立は極めて難しい。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、従来なかった美観効果を備え、かつ機能面の効果も充分な多層皮膜形成化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の多層皮膜形成化粧料は、少なくとも、油性または油中水型の組成物よりなる下層と、油性または油中水型の組成物よりなる上層とを含む多層皮膜形成化粧料であって、下層と上層とで形成される界面を有し、視認可能な特質が下層と上層とで異なるものである。
【0009】
視認可能な特質は、色相、明度、彩度、輝度または透明度であることが好ましい。
【0010】
下層を構成する組成物の粘度は35~45℃において10000Pa・s以上であることが好ましい。
【0011】
本発明の多層皮膜形成化粧料は、界面において下層の組成物が上層に向かって略円錐状に突き出ている吐出部を有していてもよい。
【0012】
本発明の多層皮膜形成化粧料は、透明容器に充填されてなることが好ましい。
【0013】
下層および上層の組成物は混合することで、下層および上層の視認可能な特質を変化させることが可能なものであることが好ましい。
【0014】
本発明の多層皮膜形成化粧料は睫毛用であることが好ましい。
【0015】
本発明の多層皮膜形成化粧料は、組成物が皮膜剤を含むことが好ましい。
皮膜剤はトリメチルシロキケイ酸またはトリ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルカルバミト酸プルランであることが好ましい。
トリメチルシロキケイ酸またはトリ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルカルバミト酸プルランは下層組成物全量に対して0.05~60質量%であることが好ましい。
【0016】
本発明の多層皮膜形成化粧料は、組成物が増粘剤を含むことが好ましい。
増粘剤はパルミチン酸またはジメチルシリル化シリカを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の多層皮膜形成化粧料は、少なくとも、油性または油中水型の組成物よりなる下層と、油性または油中水型の組成物よりなる上層とを含む多層皮膜形成化粧料であって、下層と上層とで形成される界面を有し、視認可能な特質が下層と上層とで異なるものであるので、従来なかった美観効果を備え、かつ油性または油中水型の組成物よりなるので、機能面の効果も備えたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は本発明の多層皮膜形成化粧料の一態様を示す模式図である。
【
図2】
図2は本発明の多層皮膜形成化粧料の別の態様の界面部分の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の多層皮膜形成化粧料について詳細に説明する。
本発明の多層皮膜形成化粧料は、少なくとも、油性または油中水型の組成物よりなる下層と、油性または油中水型の組成物よりなる上層とを含む多層皮膜形成化粧料であって、下層と上層とで形成される界面を有し、視認可能な特質が下層と上層とで異なるものである。
ここで、多層皮膜形成化粧料は睫毛、眉毛、毛髪、爪のようなケラチン質のコート用途に使用できるものである。
【0020】
まず、本発明の多層皮膜形成化粧料の構成を図面を用いて説明する。
図1に示すように、本発明の多層皮膜形成化粧料10は、油性または油中水型の組成物よりなる下層1と、油性または油中水型の組成物よりなる上層2とを含む多層皮膜形成化粧料であって、下層1および上層2の組成物を収容する容器3と、容器3に対して着脱される塗布体4とを備えてなる。容器3は透明容器であり、下層1と上層2が容器の外側に置いて視認できるようになっている。なお、
図1では下層1は黒色組成物を上層2は透明組成物を模式的に示している。
【0021】
下層1と上層2の組成物の組み合わせは、油性組成物よりなる下層1と油性組成物よりなる上層2、油中水型組成物よりなる下層1と油中水型組成物よりなる上層2の他、油性組成物よりなる下層1と油中水型組成物よりなる上層2、油中水型組成物よりなる下層1と油性組成物よりなる上層2としてもよい。
【0022】
本発明の多層皮膜形成化粧料10は、下層1と上層2とで形成される界面5を有し、視認可能な特質が下層1と上層2とで異なるものである。ここで、界面は下層1と上層2とが混ざり合うことなく明確な面を介している場合の他、下層1と上層2とが視認可能に区別できれば、界面において下層1と上層2とが混ざり合っていてもよい。なお、
図1では説明を簡単にするため、下層1と上層2の2層構造のものを示しているが、2層構造に限定されるものではなく、3層以上の多層構造であってもよい。3層以上の場合には、隣り合う層の上が上層、下が下層となる。
【0023】
視認可能な特質は、色相、明度、彩度、輝度または透明度であることが好ましい。ここで、色相とは赤、青、緑、黄などの色味の違い、明度とは色の明るさ、彩度とは色の鮮やかさ、輝度とは明るさの度合いであって色の明るさだけでは表現しきれないもの、例えばラメ入りとラメなし、ファイバー入りとファイバーなし等を意味する。また、透明度とは透明容器に充填した場合に背景が見えることを意味する。
【0024】
視認可能な特質は、下層と上層で1つの特質が異なっていても良いし、複数の特質が組み合わせで違っていてもよいし。例えば、下層が黒で上層が青(色相のみの違い)、下層が黒で上層が鮮やかな青(色相と彩度の違い)、下層がラメ入りの青で上層がラメなしの黒(色相と輝度の違い)、下層が明度の高い青で上層がラメ入りの透明(色相、明度、輝度および透明度の違い)等が挙げられる。
【0025】
なお、
図1では容器3は全体が透明容器としているが、例えば、下層が色つきの透明で、上層がラメ入りの透明のような場合には、容器の縦半面を透明とし、逆の半面は色つき容器として、色つきの半面に絵や文字等を配した容器とすれば、容器の外側から絵や文字を視認でき、各段に美観効果を向上させることができる。また、通常の容器(透明ではない容器)に界面5近傍部分を視認できるように透明の窓を配置するような構成としてもよい。この場合、窓部分の形を適宜変更することによっても美観効果を向上させることができる。
【0026】
図2は本発明の多層皮膜形成化粧料の別の態様の界面部分の模式図である。
図2に示すように、界面5において下層1の組成物が上層2に向かって略円錐状に突き出ている吐出部6を有していてもよい。略円錐状とは円錐の頂点が円錐底面の中心にある場合の他、中心にない場合も含む意味である。また、円錐の頂点から、円錐底面の円の円周上の全ての点を結ぶ線は直線の他、曲線であっても、逆つらら様になっていてもよいことを意味する。さらに、略円錐状に突き出ている吐出部は容器側面に接して半円錐状の吐出部(6a)となっていてもよい。
【0027】
上記のような吐出部は、多層皮膜形成化粧料の製造の際に下層を構成する組成物が空気を含んでいる場合に生じる。すなわち、後述するように多層皮膜形成化粧料は、下層を構成する組成物を容器に充填し、その後、上層を構成する組成物を容器に充填して室温まで冷却して製造されるが、下層を構成する組成物に空気が含まれていると、時間の経過とともに含まれている空気が下層を構成する組成物を上層に引き上げて上昇する結果、下層と上層とで形成される界面に吐出部が形成される。このような吐出部はその形成過程からランダムとなり、それがより美観効果を高めるものとなる。
【0028】
さらに、本発明の多層皮膜形成化粧料は、下層が油性または油中水型の組成物、上層が油性または油中水型の組成物よりなるので、下層と上層は使用過程において次第に混ざりあうことになるが、その混ざり合う過程(使用過程)において、下層および上層の視認可能な特質は混ざり合って変化し、そこでさまざまな形態が生じ、それによっても美観効果が高まり、また、使用者においてもその形態の変化を楽しむことができる。
【0029】
下層を構成する組成物の粘度は35~45℃において10000Pa・s以上であることが好ましい。この範囲の粘度であることにより、製造工程において下層の上に上層を充填しても下層と上層が混ざることなく、多層皮膜形成化粧料を製造することができる。ここで粘度はAntonPaar社のレオメーターPhysician MCR301型で測定される値である。詳細には、測定冶具としてパラレル・プレート型、直径25mm、ひずみ振り角gamma=5%、周波数f=1Hzにおいて、せん断速度が0.3s-1 のときのせん断応力として測定される値である。
層が3層以上の場合には、最下層を構成する組成物、その上層を構成する組成物の粘度が35~45℃において10000Pa・s以上であることが好ましい。
【0030】
続いて本発明の多層皮膜形成化粧料の下層および上層を構成する油性組成物または油中水型組成物について、睫毛用化粧料を例にとって説明する。睫毛用化粧料の下層および上層を構成する油性組成物または油中水型組成物は、従来より広く睫毛用化粧料に用いられる、皮膜剤、増粘剤、揮発性油分等の油分、ワックス、デキストリン脂肪酸エステル、有機変性粘土鉱物、色材等を用いて調製することができる。なお、その他の多層皮膜形成化粧料(眉毛用、毛髪用、爪用等)についても従来より広く多層皮膜形成化粧料に用いられる材料を用いて調製することができる。
【0031】
皮膜剤としては、例えば、シリコーン化プルラン、トリメチルシロキシケイ酸、ジメチルアミノメタクリレート4級化塩、ビニルピロリドン・メタクリル酸-N,N-ジメチル-エチルアンチニオエチル塩共重合体、シリコーン/ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリルアルキル)コポリマー、デキストリン、(ビニルピロリドン/VA)コポリマー、アクリル酸アルキルコポリマーアンモニウム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エチル、(アクリル酸アルキル/オクチルアクリルアミド)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸プロピルトリメチコン)コポリマー、ポリ酢酸ビニル、(アクリル酸アルキル/ジメチコン)コポリマー、ポリエーテルグラフトアクリルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸、フロロ変成シリコーンレジン等が挙げられる。シリコーン化プルランとして、好ましいものはトリ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルカルバミド酸プルランである。
【0032】
皮膜剤の配合量は、純分として、下層組成物全量に対して0.05~60質量%であることが好ましく、0.1~30質量%であることが好ましい。上層組成物全量に対して0.05~60質量%であることが好ましく、0.1~45質量%であることが好ましい。皮膜剤の配合量が0.05質量%未満では、化粧もち効果、カール効果に劣る。また、60質量%を超えると、お湯落ち効果に劣る。
【0033】
増粘剤としては、アラアビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、デンプン、グリチルリチン酸等の植物系高分子、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、ブルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子を含む天然の水溶性高分子;デンプン系高分子、セルロース系高分子、アルギン酸系高分子等の半合成水溶性高分子;ビニル系高分子、ポリオキシエチレン系高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体共重合系高分子、アクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー等の合成水溶性高分子が挙げられる。
増粘剤の配合量は、0.05~35質量%が好ましく、0.2~30質量%がより好ましい。増粘剤の配合量が0.05質量%未満では、粘度が保てなくなる場合がある。また、35質量%を超えると、塗布しづらくなる場合がある。
【0034】
揮発性油分としては、例えば、軽質流動イソパラフィン、イソドデカン等の炭化水素油、低分子量揮発性ジメチルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン油、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン油等が挙げられる。
揮発性油分の配合量は、10~80質量%が好ましく、30~60質量%がより好ましい。揮発性油分の配合量が10質量%未満では、塗布しづらくなる場合がある。また、80質量%を超えると、粘度が保てなくなる場合がある。
【0035】
油分としては、例えば、重質イソパラフィン、スクワラン、流動パラフィン等の炭化水素油;セチル-2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、2-オクチルドデシルミリステート、ネオペンチルグリコールー2-エチルヘキサノエート、イソプロピルミリステート、ミリスチルミリステート等のエステル類;オリーブ油、アボカド油、ホホバ油、ヒマワリ油、サフラワー油、椿油、マカデミアナッツ油、ミンク油、液状ラノリン、酢酸ラノリン、ヒマシ油等の油脂;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、高重合度のガム状ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等のシリコーン系油分;フッ素変性ジメチルポリシロキサン、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、パーフロロポリエーテル、パーフロロカーボン等のフッ素系油分等が挙げられる。
【0036】
ワックスとしては、例えば、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、カルナバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ホホバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル、セレシン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、シュガーワックス、パラフィン等が挙げられる。
ワックスの配合量は、1~20質量%が好ましく、3~15質量%がより好ましい。ワックスの配合量が1質量%未満では、カール効果に劣る場合がある。また、20質量%を超えると、ダマになってツキが悪くなる場合がある。
【0037】
デキストリン脂肪酸エステルは、炭素数8~24の脂肪酸と、平均重合度10~50のデキストリンとのエステル化合物が好ましい。例えば、パルミチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、パルミチン酸ステアリン酸デキストリン、イソステアリン酸デキストリン、(パルミチン酸/2-エチルヘキサン酸)デキストリン等が挙げられる。
デキストリン脂肪酸エステルの配合量は、1~40質量%が好ましく、3~30質量%がより好ましい。デキストリン脂肪酸エステルの配合量が1質量%未満では、安定性に劣る場合がある。また、40質量%を超えると、均一に塗布できなくなる場合がある。
【0038】
有機変性粘土鉱物は、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト等の天然または合成のモンモリロナイト群(市販品ではビーガム、クニピア、ラポナイト等)およびナトリウムシリシックマイカやナトリウムまたはリチウムテニオライトの名で知られる合成雲母等の粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で処理して得られる。例えば、ジステアルジモニウムヘクトライト、ジメチルアルキルアンモニウムヘクトライト、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理ケイ酸アルミニウムマグネシウム等が挙げられる。
有機変性粘土鉱物の配合量は、1~10質量%が好ましく、2~8質量%がより好ましい。粘土鉱物の配合量が1質量%未満では、チキソトロピー性が得られない場合がある。また、10質量%を超えると、均一に塗布できなくなる場合がある。
【0039】
色材としては、一般にメーキャップ化粧料に用いられるものであれば特に制限されるものではないが、疎水性のものが好適に用いられる。例えば、赤酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、無機白色顔料(例えば、酸化亜鉛等);無機赤色系顔料(例えば、チタン酸鉄等);無機紫色系顔料(例えば、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等);無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等);無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等);パール顔料(例えば、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等);金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等);ジルコニウム、バリウムまたはアルミニウムレーキ等の有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、青色404号などの有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号、青色1号等);天然色素(例えば、クロロフィル、β-カロチン等)等が挙げられる。
色材の配合量は、0.001~30質量%が好ましく、2~20質量%がより好ましい。
【0040】
また、睫毛用化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲内で、繊維、保湿剤、薬剤、防腐剤、香料、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を配合することもできる。
【0041】
本発明の多層皮膜形成化粧料は、油性組成物または油中水型組成物の皮膜形成化粧料に通常用いられる方法に従って製造することができる。油性組成物の場合には、油相成分を約90℃に加熱して均一に混合して下層用の油性組成物とし、これを容器に充填し、同様に調製した上層用の油性組成物を充填後、室温まで冷却することにより調製できる。また、油中水型組成物の場合には、まず、油相成分を約90℃に加熱して均一に混合して油相とし、水相成分を室温で均一に混合して水相とし、油相を攪拌しながら水相を添加して乳化させ、これを下層用の油中水型組成物として容器に充填し、その後同様に調製した下層用の油中水型組成物を上層として充填後、室温まで冷却することにより調製できる。下層が油性組成物で上層が油中水型組成物の皮膜形成化粧料、下層が油中水型組成物で上層が油性組成物の皮膜形成化粧料の場合も、上記と同様にして調製することができる。
【実施例】
【0042】
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。本発明は以下の実施例によってなんら限定されるものでない。配合量は特に断りがない限り質量%である。
【0043】
(下層を構成する油性組成物の調製)
表1の組成物2、5および7に示す処方で、各成分を約90℃に加熱して均一に混合し油性組成物を調製した。上記した測定条件によるこれらの油性組成物の粘度は40℃において、10000Pa・s以上であった。
また、表1の組成物9および10に示す処方で、同様にして油性組成物を調整した。これらの油性組成物の粘度は40℃において10000Pa・s未満であった。
【0044】
(下層を構成する油中水型組成物の調製)
表1の組成物1、3、4および6に示す処方において、水以外の油相成分を約90℃に加熱して均一に混合して油相とし、油相を攪拌しながら水を添加して乳化させ、油中水型組成物を調製した。上記した測定条件によるこれらの油中水型組成物の粘度は40℃においていずれも10000Pa・s以上であった。
また、表1の組成物8に示す処方で、同様にして油中水型組成物を調整した。上記した測定条件によるこの油中水型組成物の粘度は40℃において10000Pa・s未満であった。
【0045】
(上層を構成する油性組成物の調製)
表2の組成物4および5に示す処方で、各成分を約90℃に加熱して均一に混合し油性組成物を調製した。
【0046】
(上層を構成する油中水型組成物の調製)
表2の組成物1、2および3に示す処方において、水以外の油相成分を約90℃に加熱して均一に混合して油相とし、油相を攪拌しながら水を添加して乳化させ、油中水型組成物を調製した。
【0047】
【0048】
【0049】
(実施例1-6)
表3に示す組み合わせで、40℃の下層組成物を容器に充填し、冷却することなく直ちに40℃の上層組成物を充填した後、室温まで冷却して、2層睫毛用化粧料を製造した。実施例1-6は下層および上層がともに油性組成物の組み合わせであるが、下層と上層とで形成された界面を有し、表3に示すように下層と上層で視認可能な特質が異なっていた。なお、一部の実施例では下層の組成物が上層に向かって略円錐状に突き出ている吐出部が認められた。
【0050】
【0051】
(実施例7-15)
表4に示す組み合わせで、40℃の下層組成物を容器に充填し、冷却することなく直ちに40℃の上層組成物を充填した後、室温まで冷却して、2層睫毛用化粧料を製造した。実施例7-15は下層が油性組成物、上層が油中水型組成物の組み合わせであるが、下層と上層とで形成された界面を有し、表4に示すように上層と下層で視認可能な特質が異なっていた。なお、一部の実施例では下層の組成物が上層に向かって略円錐状に突き出ている吐出部が認められた。
【0052】
【0053】
(実施例16-23)
表5に示す組み合わせで、40℃の下層組成物を容器に充填し、冷却することなく直ちに40℃の上層組成物を充填した後、室温まで冷却して、2層睫毛用化粧料を製造した。実施例16-23は下層が油中水型組成物、上層が油性組成物の組み合わせであるが、下層と上層とで形成された界面を有し、表5に示すように上層と下層で視認可能な特質が異なっていた。なお、一部の実施例では下層の組成物が上層に向かって略円錐状に突き出ている吐出部が認められた。
【0054】
【0055】
(実施例24-35)
表6に示す組み合わせで、40℃の下層組成物を容器に充填し、冷却することなく直ちに40℃の上層組成物を充填した後、室温まで冷却して、2層睫毛用化粧料を製造した。実施例24-35は下層および上層がともに油中水型組成物の組み合わせであるが、下層と上層とで形成された界面を有し、表6に示すように上層と下層で視認可能な特質が異なっていた。なお、一部の実施例では下層の組成物が上層に向かって略円錐状に突き出ている吐出部が認められた。
【0056】
【0057】
なお、下層組成物8~10と上層組成物1~5との組み合わせで、同様に2層睫毛用化粧料を製造しようと試みたが、この場合には、下層組成物と上層組成物が混合してしまい、下層と上層の間に界面が形成されなかった。
【符号の説明】
【0058】
1 下層
2 上層
3 容器
4 塗布体
5 界面
6、6a 吐出部
10 多層皮膜形成化粧料