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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】センサを含む外科用器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/072 20060101AFI20220816BHJP
   A61B 17/295 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
A61B17/072
A61B17/295
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018040897
(22)【出願日】2018-03-07
(65)【公開番号】P2018143773
(43)【公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】15/453,241
(32)【優先日】2017-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512269650
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ケー. エバンス
(72)【発明者】
【氏名】マシュー エシュバッハ
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特許第6214831(JP,B1)
【文献】特表2016-523576(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0288386(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0282170(US,A1)
【文献】国際公開第2008/085025(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0030262(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/068
17/072
17/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル部分と、
前記ハンドル部分に連結されたシャフトと、
前記シャフトに動作可能に連結され、前記ハンドル部分の作動に応じて離間位置と接近位置との間で互いに対して可動である、一対のジョー部材と、
前記一対のジョー部材のうちの少なくとも一方と関連付けられ、前記一対のジョー部材の間に配置された組織に圧力をかけるように構成された、膨張可能な部材と、
前記一対のジョー部材のうちの少なくとも一方と関連付けられ、前記一対のジョー部材の間に配置された前記組織における灌流を測定するように構成された、第1のセンサと、
前記膨張可能な部材と連通し、前記膨張可能な部材内の圧力を測定するように構成された第2のセンサと
備える外科用器具であって、前記外科用器具は、血流が戻ったことを前記第1のセンサの灌流示度が示す瞬間の前記第2のセンサの圧力示度に対応する前記組織の表面灌流圧を決定するように構成されている、外科用器具。
【請求項2】
前記ジョー部材のうちの少なくとも一方は、組織接触面を含み、前記一対のジョー部材が前記接近位置にあるとき、前記膨張可能な部材が前記一対のジョー部材の間に挟持されるように、前記膨張可能な部材が前記組織接触面上に少なくとも部分的に配置されている、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項3】
前記膨張可能な部材は、前記少なくとも一方のジョー部材内に画定される空洞内に配置されている、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項4】
前記一対のジョー部材は、それらの間に配置された組織をステープル留めするように構成されている、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項5】
前記一対のジョー部材の第1のジョー部材が、ステープル形成ポケットを画定する組織接触面を含み、前記一対のジョー部材の第2のジョー部材が、ステープル受容チャネルを画定する組織接触面を含む、請求項に記載の外科用器具。
【請求項6】
前記膨張可能な部材は、エラストマーから製作されたバルーンである、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項7】
前記膨張可能な部材は、前記膨張可能な部材を膨張させるためのポンプと流体連通するように構成された管を有する、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項8】
前記膨張可能な部材は、前記膨張可能な部材が実質的に平坦である折り畳まれた状態と、前記膨張可能な部材が球状である拡張状態との間を移行するように構成されている、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項9】
前記膨張可能な部材は、その中に中空内部チャンバを画定する、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項10】
前記ハンドル部分は、前記一対のジョー部材の閉鎖をもたらすための手動トリガを含む、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項11】
前記ハンドル部分は、内部電源を介して前記一対のジョー部材の閉鎖をもたらすように構成されている、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項12】
前記ハンドル部分と前記シャフトとの間に介在するアダプタアセンブリを更に備える、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項13】
近位部分及び遠位部分を有する、細長い本体と、
前記細長い本体の前記遠位部分に連結されたエンドエフェクタであって、
離間位置と接近位置との間で互いに対して可動である、一対のジョー部材と、
前記一対のジョー部材のうちの少なくとも一方と関連付けられ、前記一対のジョー部材の間に配置された組織に圧力をかけるように構成された、膨張可能な部材と、
前記一対のジョー部材のうちの少なくとも一方と関連付けられ、前記一対のジョー部材の間に配置された前記組織における灌流を測定するように構成された、第1のセンサと、
前記膨張可能な部材と連通し、前記膨張可能な部材内の圧力を測定するように構成された第2のセンサと
を含む、エンドエフェクタと、を備える外科用装填ユニットであって、前記外科用装填ユニットは、血流が戻ったことを前記第1のセンサの灌流示度が示す瞬間の前記第2のセンサの圧力示度に対応する前記組織の表面灌流圧を決定するように構成されている、外科用装填ユニット。
【請求項14】
前記ジョー部材のうちの少なくとも一方は、組織接触面を含み、前記一対のジョー部材が前記接近状態にあるとき、前記膨張可能な部材が前記一対のジョー部材の間に挟持されるように、前記膨張可能な部材が前記組織接触面上に少なくとも部分的に配置されている、請求項13に記載の外科用装填ユニット。
【請求項15】
前記一対のジョー部材は、それらの間に配置された組織をステープル留めするように構成されている、請求項13に記載の外科用装填ユニット。
【請求項16】
前記膨張可能な部材は、前記膨張可能な部材を膨張させるためのポンプと流体連通するように構成された管を有する、請求項13に記載の外科用装填ユニット。
【請求項17】
前記膨張可能な部材は、前記膨張可能な部材が実質的に平坦である折り畳まれた状態と、前記膨張可能な部材が球状である拡張状態との間を移行するように構成されている、請求項13に記載の外科用装填ユニット。
【請求項18】
外科手術を行うための外科用器具であって、前記外科用器具は、一対のジョー部材と、膨張可能な部材と、灌流センサと、前記膨張可能な部材内の圧力を測定するように構成された圧力センサとを備え、
前記一対のジョー部材は、それらの間に組織を位置付けるように構成され、
前記膨張可能な部材は、前記一対のジョー部材のうちの少なくとも一方と関連付けられ、前記組織に圧力をかけるように構成され、
前記灌流センサは、前記一対のジョー部材のうちの少なくとも一方と関連付けられ、前記組織の灌流を測定するように構成され、
前記外科用器具は、前記組織の表面灌流圧を決定するように構成され、前記組織の前記表面灌流圧は、表面血流が戻ったことを前記灌流センサの灌流示度が示す瞬間の前記圧力センサの圧力示度に対応し、
前記組織の前記測定された表面灌流圧は、前記組織がステープル留めする状態にあるかどうかを決定するために使用されることが可能である、外科用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本開示は、外科用器具に関し、より具体的には、組織を把持し、様々な外科手術の実施に備えて把持された組織の特徴を決定するための外科用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
外科手術は、時々、組織の切断及び閉鎖を伴う。例えば、結腸直腸手術は、時々、吻合を必要とし、それは、罹患腸組織の一部を切除すること、及び推定上健康な2つの腸セグメント間に新しい接続部を作製することを伴う。典型的には、吻合を行う前に、切除される組織の量が、腸の視覚兆候を使用して推定される。吻合を行う目的は、罹患組織の全てを取り除くと同時に、できる限り健康な組織を温存することである。
【0003】
吻合手術の実施に伴うリスクは、吻合部漏出である。吻合部漏出は、典型的には、罹患組織の全てを切除できなかったことによって引き起こされる。吻合手術中に切除される組織の量を推定する際に使用される現在の方法は、時々、全ての吻合部漏出を防止するには不十分である。
【0004】
したがって、臨床医がより成功率の高い吻合外科手術を行うように補助するために、腸組織の1つ以上のパラメータを連続的または同時に感知することができる外科用器具の必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様では、外科用器具が提供され、ハンドル部分、ハンドル部分に連結されたシャフト、シャフトに動作可能に連結された一対のジョー部材、膨張可能な部材、及び第1のセンサを含む。ジョー部材は、ハンドル部分の作動に応じて、離間位置と接近位置との間で互いに対して可動である。膨張可能な部材は、ジョー部材のうちの一方と関連付けられ、一対のジョー部材の間に配置された組織に圧力をかけるように構成されている。第1のセンサは、ジョー部材のうちの一方と関連付けられ、ジョー部材の間に配置された組織における局所灌流圧を測定するように構成されている。
【0006】
いくつかの実施形態では、外科用器具は、膨張可能な部材と通信する第2のセンサを更に含み得る。第2のセンサは、膨張可能な部材内の圧力を測定するように構成されている。
【0007】
いくつかの実施形態では、ジョー部材のうちの一方は、膨張可能な部材が配置されている組織接触面を含み得る。膨張可能な部材は、ジョー部材が接近位置にあるとき、ジョー部材の間に挟持される。
【0008】
いくつかの実施形態では、膨張可能な部材は、ジョー部材のうちの一方内に画定された空洞内に配置され得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、ジョー部材は、それらの間に配置された組織をステープル留めするように構成され得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1のジョー部材は、ステープル形成ポケットを画定する組織接触面を含み得、第2のジョー部材は、ステープル受容チャネルを画定する組織接触面を含み得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、膨張可能な部材は、エラストマーから製作されたバルーンであり得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、膨張可能な部材は、膨張可能な部材を膨張させるためのポンプと流体通信するように構成された管を有し得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、膨張可能な部材は、膨張可能な部材が実質的に平坦である折り畳まれた状態と、膨張可能な部材が球状である拡張状態との間で移行するように構成され得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、膨張可能な部材は、中空内部チャンバをその中に画定し得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、ハンドル部分は、一対のジョー部材の閉鎖をもたらすための手動トリガを含み得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、ハンドル部分は、内部電源を介して一対のジョー部材の閉鎖をもたらすように構成され得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、外科用器具は、ハンドル部分とシャフトとの間に介在するアダプタアセンブリを更に含み得る。
【0018】
本開示の別の態様では、外科用装填ユニットが提供され、細長い本体、及び細長い本体の遠位部分に連結されたエンドエフェクタを含む。エンドエフェクタは、一対のジョー部材、膨張可能な部材、及び第1のセンサを含む。ジョー部材は、離間位置と接近位置との間で互いに対して可動である。膨張可能な部材は、ジョー部材のうちの一方と関連付けられ、ジョー部材の間に配置された組織に圧力をかけるように構成されている。第1のセンサは、ジョー部材のうちの一方と関連付けられ、ジョー部材の間に配置された組織における局所灌流圧を測定するように構成されている。
【0019】
本開示の別の態様では、外科手術を行う方法が提供され、組織を外科用器具の一対のジョー部材の間に位置付けることを含む。ジョー部材のうちの一方と関連付けられた膨張可能な部材が膨張し、それによって、膨張可能な部材で圧力を組織にかける。組織の局所灌流圧は、ジョー部材のうちの一方と関連付けられた灌流センサを使用して測定される。組織の測定された局所灌流圧を使用して、組織がステープル留めする状態にあるかどうかを決定する。
【0020】
これら及び他の物体が、図面の説明及び好ましい実施形態の詳細な説明によって以下により明瞭に説明される。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
ハンドル部分と、
前記ハンドル部分に連結されたシャフトと、
前記シャフトに動作可能に連結され、前記ハンドル部分の作動に応じて離間位置と接近位置との間で互いに対して可動である、一対のジョー部材と、
前記一対のジョー部材のうちの少なくとも一方と関連付けられ、前記一対のジョー部材の間に配置された組織に圧力をかけるように構成された、膨張可能な部材と、
前記一対のジョー部材のうちの少なくとも一方と関連付けられ、前記一対のジョー部材の間に配置された前記組織における局所灌流圧を測定するように構成された、第1のセンサ
と、を備える、外科用器具。
(項目2)
前記膨張可能な部材と通信し、前記膨張可能な部材内の圧力を測定するように構成された第2のセンサを更に備える、上記項目に記載の外科用器具。
(項目3)
前記ジョー部材のうちの少なくとも一方は、組織接触面を含み、前記一対のジョー部材が前記接近位置にあるとき、前記膨張可能な部材が前記一対のジョー部材の間に挟持されるように、前記膨張可能な部材が前記組織接触面上に少なくとも部分的に配置されている、上記項目のいずれかに記載の外科用器具。
(項目4)
前記膨張可能な部材は、前記少なくとも一方のジョー部材内に画定される空洞内に配置されている、上記項目のいずれかに記載の外科用器具。
(項目5)
前記一対のジョー部材は、それらの間に配置された組織をステープル留めするように構成されている、上記項目のいずれかに記載の外科用器具。
(項目6)
前記一対のジョー部材の第1のジョー部材が、ステープル形成ポケットを画定する組織接触面を含み、前記一対のジョー部材の第2のジョー部材が、ステープル受容チャネルを画定する組織接触面を含む、上記項目のいずれかに記載の外科用器具。
(項目7)
前記膨張可能な部材は、エラストマーから製作されたバルーンである、上記項目のいずれかに記載の外科用器具。
(項目8)
前記膨張可能な部材は、前記膨張可能な部材を膨張させるためのポンプと流体通信するように構成された管を有する、上記項目のいずれかに記載の外科用器具。
(項目9)
前記膨張可能な部材は、前記膨張可能な部材が実質的に平坦である折り畳まれた状態と、前記膨張可能な部材が球状である拡張状態との間を移行するように構成されている、上記項目のいずれかに記載の外科用器具。
(項目10)
前記膨張可能な部材は、その中に中空内部チャンバを画定する、上記項目のいずれかに記載の外科用器具。
(項目11)
前記ハンドル部分は、前記一対のジョー部材の閉鎖をもたらすための手動トリガを含む、上記項目のいずれかに記載の外科用器具。
(項目12)
前記ハンドル部分は、内部電源を介して前記一対のジョー部材の閉鎖をもたらすように構成されている、上記項目のいずれかに記載の外科用器具。
(項目13)
前記ハンドル部分と前記シャフトとの間に介在するアダプタアセンブリを更に備える、上記項目のいずれかに記載の外科用器具。
(項目14)
近位部分及び遠位部分を有する、細長い本体と、
前記細長い本体の前記遠位部分に連結されたエンドエフェクタであって、
離間位置と接近位置との間で互いに対して可動である、一対のジョー部材と、
前記一対のジョー部材のうちの少なくとも一方と関連付けられ、前記一対のジョー部材の間に配置された組織に圧力をかけるように構成された、膨張可能な部材と、
前記一対のジョー部材のうちの少なくとも一方と関連付けられ、前記一対のジョー部材の間に配置された前記組織における局所灌流圧を測定するように構成された、第1のセンサと、を含む、エンドエフェクタと、を備える、外科用装填ユニット。
(項目15)
前記膨張可能な部材と通信し、前記膨張可能な部材内の圧力を測定するように構成された第2のセンサを更に備える、上記項目のいずれかに記載の外科用装填ユニット。
(項目16)
前記ジョー部材のうちの少なくとも一方は、組織接触面を含み、前記一対のジョー部材が前記接近状態にあるとき、前記膨張可能な部材が前記一対のジョー部材の間に挟持されるように、前記膨張可能な部材が前記組織接触面上に少なくとも部分的に配置されている、上記項目のいずれかに記載の外科用装填ユニット。
(項目17)
前記一対のジョー部材は、それらの間に配置された組織をステープル留めするように構成されている、上記項目のいずれかに記載の外科用装填ユニット。
(項目18)
前記膨張可能な部材は、前記膨張可能な部材を膨張させるためのポンプと流体通信するように構成された管を有する、上記項目のいずれかに記載の外科用装填ユニット。
(項目19)
前記膨張可能な部材は、前記膨張可能な部材が実質的に平坦である折り畳まれた状態と、前記膨張可能な部材が球状である拡張状態との間を移行するように構成されている、上記項目のいずれかに記載の外科用装填ユニット。
(項目20)
外科用器具の一対のジョー部材の間に組織を位置付けることと、
前記一対のジョー部材のうちの少なくとも一方と関連付けられた膨張可能な部材を膨張させ、それによって、前記膨張可能な部材で前記組織に圧力をかけることと、
前記一対のジョー部材のうちの少なくとも一方と関連付けられた灌流センサを使用して前記組織の局所灌流圧を測定することと、
前記組織の前記測定された局所灌流圧を使用して、前記組織がステープル留めする状態にあるかどうかを決定することと、を含む、外科手術を行う方法。
(項目20A)
外科手術を行うための外科用器具であって、前記外科用器具は、一対のジョー部材と、膨張可能な部材と、灌流センサとを備え、
前記一対のジョー部材は、それらの間に組織を位置付けるように構成され、
前記膨張可能な部材は、前記一対のジョー部材のうちの少なくとも一方と関連付けられ、前記組織に圧力をかけるように構成され、
前記灌流センサは、前記一対のジョー部材のうちの少なくとも一方と関連付けられ、前記組織の局所灌流圧を測定するように構成され、
前記組織の前記測定された局所灌流圧は、前記組織がステープル留めする状態にあるかどうかを決定するために使用されることが可能である、外科用器具。
(摘要)
外科用器具は、ハンドル部分、ハンドル部分に連結されたシャフト、シャフトに動作可能に連結された一対のジョー部材、膨張可能な部材、及びセンサを含む。膨張可能な部材は、ジョー部材のうちの一方と関連付けられ、一対のジョー部材の間に配置された組織に圧力をかけるように構成されている。センサは、ジョー部材のうちの一方と関連付けられ、一対のジョー部材の間に配置された組織における局所灌流圧を測定するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する付随の図面は、本開示の実施形態を説明し、下記の実施形態の詳細な説明と共に、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0022】
図1】表示部及び外科用器具を含む手術システムの一実施形態の斜視図である。
図2図1の外科用器具の外科用装填ユニットの正面斜視図である。
図3】膨張した状態にある外科用装填ユニットの膨張可能な部材を説明する、図2の外科用装填ユニットの拡大斜視図である。
図4】アクセスポートを介して手術部位に位置付けられた、図3の外科用装填ユニットの側面図である。
図5】膨張可能な部材が折り畳まれた状態にある外科用装填ユニットのジョー部材と、部分的に開放位置にあるジョー部材との間に配置された組織を説明する、図3の外科用装填ユニットの部分的側面図である。
図6】膨張可能な部材が拡張状態にあるジョー部材と、部分的に開放位置にあるジョー部材との間に配置された組織を説明する、図3の外科用装填ユニットの部分的側面図である。
図7】膨張可能な部材が拡張状態で、組織の周囲に挟持されたジョー部材を説明する、図3の外科用装填ユニットの部分的側面図である。
図8】表示部及び図3の外科用装填ユニットを備える外科用器具を含む、手術システムの別の実施形態の斜視図である。
図9】表示部及び外科用器具を含む手術システムの更に別の実施形態である。
図10図9の外科用器具の外科用装填ユニット及びアダプタアセンブリの部品が分かれた状態の斜視図である。
図11図10の外科用装填ユニットの拡大斜視図である。
図12】表示部及び外科用器具を含む手術システムの更に別の実施形態である。
図13図12の外科用器具のハンドル部分及びアダプタアセンブリ/ジョーアセンブリの部品が分かれた状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここで、現在開示されている外科用器具及びシステムの実施形態が作図を参照して詳述され、同様の参照番号は、同様または同一の要素を特定する。本明細書で使用される場合、従来の通り、用語「遠位」は、使用者からより遠いその部分を指す一方、用語「近位」は、使用者により近いその部分を指す。
【0024】
図1は、手術システム1を説明し、それは、概して、外科用ステープラ10によって取られる測定値を表示するための表示部20と通信する外科用ステープラ10等の外科用器具を含む。外科用ステープラ10は、本明細書で詳述される通り、把持された組織をステープル留めし、臨床医が外科用ステープラ10のステープル機能を発効するかどうかを決定する補助をするために組織の生物学的パラメータを感知するように構成されている。例えば、外科用ステープラ10は、対象組織の表面灌流圧を決定するように構成されている。実施形態では、外科用ステープラ10は、腹腔鏡下外科手術での使用のために構成されている。外科用ステープラは、ロボットによる手術システムでの使用のために配置され得る。
【0025】
組織の表面灌流圧は、組織を通る灌流がなくなる(すなわち、血流がなくなる)まで挟持圧を組織にかけ、その後、把持された組織を通る灌流が再開するまで、徐々に挟持圧を低下させることによって測定される。灌流が再開する圧力は、「表面灌流圧」として知られている。
【0026】
表面灌流圧を測定する方法の詳細な説明に関して、米国特許第7,618,376号を参照することができ、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
外科用ステープラ10は、概して、ハンドル部分12、アダプタアセンブリ14、細長いシャフト30、及び外科用装填ユニット40を含む。外科用ステープラ10のハンドル部分12は、静止ハンドル16、及び静止ハンドル16に旋回可能に連結された旋回または可動ハンドル18を含む。旋回ハンドル18の静止ハンドル16に対する操作は、ジョー部材42a、42bの間に配置された組織を把持するように、外科用装填ユニット40のジョー部材42a、42bの閉鎖をもたらす。外科用ステープラ10の様々な機能の詳細な説明に関して、例えば、米国特許第7,172,104号を参照することができ、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
外科用装填ユニット40は、細長い本体部分44、及び細長い本体部分44に連結されたエンドエフェクタ46を有する。本体部分44は、細長いシャフト30の遠位部分に取り外し可能に連結されるか、またはいくつかの実施形態では、細長いシャフト30の遠位部分に固定して連結され得る。外科用装填ユニット40のエンドエフェクタ46は、エンドエフェクタ46が、長手方向軸に対して直線配向と角度のある配向との間で本体部分44の長手方向軸に横方向の軸を中心に連接され得るように、本体部分44の遠位部分に旋回可能に連結される。いくつかの実施形態では、エンドエフェクタ46は、細長いシャフト30の遠位部分に固定して取り付けられ得る。
【0029】
図1~3を参照すると、エンドエフェクタ46は、一対の対向するジョー部材42a、42bを含み、ジョー部材42aは、ステープルカートリッジとして構成され、ジョー部材42bは、アンビルとして構成される。ステープルカートリッジ42a及びアンビル42bは、それぞれ、各々の組織接触面48a、48bを画定する。組織接触面48a、48bは、エンドエフェクタ46が閉じた構成にあるとき、組織が組織接触面48aと48bとの間で把持されるように、互いに対向する。ステープルカートリッジ42aの組織接触面48aは、複数のステープル受容チャネル50を画定し、アンビル42bの組織接触面48bは、複数のステープル形成ポケット52を画定する。したがって、ステープルカートリッジ42a及びアンビル42bは、ハンドル部分12の可動ハンドルの作動に応じてそれらの間に配置された組織を挟持し、その後、ステープル留めするように構成されている。
【0030】
外科用装填ユニット40のエンドエフェクタ46は、アンビル42bの組織接触面48b上に配置された膨張可能な部材56(図3)、例えば、バルーンを含む。他の実施形態では、膨張可能な部材46は、ステープルカートリッジ42aの組織接触面48a上に配置され得る。更に他の実施形態では、ステープルカートリッジ42a及びアンビル42bはそれぞれ、その各々の組織接触面48a、48b上に配置された膨張可能な部材を有し得る。膨張可能な部材56は、接着剤、面ファスナ、縫合等を介して組織接触面48bに取り付けられ得る。いくつかの実施形態では、膨張可能な部材56は、組織接触面48bに取り外し可能に接続され得る。他の実施形態では、膨張可能な部材56は、エンドエフェクタ46のステープル機能の作動時に、ステープルカートリッジ42aから押し出されたステープルが、例えば、膨張可能な部材56を組織接触面48bに取り付ける縫合を切断することによって、膨張可能な部材56を組織接触面48bから放出するように、組織接触面48bに取り外し可能に接続され得る。
【0031】
膨張可能な部材56は、組織接触面48b内に画定されたステープル形成ポケット52が膨張可能な部材56によって覆われるように、アンビル42bの組織接触面48bを覆うように寸法決めされた略長方形の形状を有する。膨張可能な部材56は、天然もしくは合成エラストマー、天然もしくは合成ゴム及びシリコーン材料、ならびに/または準拠したポリウレタン等の生体適合性材料で作製される。膨張可能な部材56は、エンドエフェクタ46のステープル機能を抑制しないように、ステープルカートリッジ42aから押し出されたステープルによって貫通可能な材料で作製され得る。
【0032】
膨張可能な部材56は、膨張可能な部材56を、膨張可能な部材56が実質的に平坦かつ長方形である折り畳まれた構成(図5)から、膨張可能な部材56が折り畳まれた構成より大きく、球状構成を取る拡張構成(図6)に変化または移動させるように流体を受容する中空内部チャンバまたは隙間60を画定する。いくつかの実施形態では、膨張可能な部材56は、拡張構成にあるとき、例えば、長方形、ドーム型、楕円形、長楕円形、管状、正方形、三角形、円錐形、棒状等の任意の適切な形状を取るように構成され得る。
【0033】
膨張可能な部材56は、そこから延び、中空内部チャンバ60(図3)と流体通信するホースまたは管58(図1)を有し得る。管58は、膨張可能な部材56から、近位に、外科用装填ユニット40の本体部分44、細長いシャフト30を通り、アダプタアセンブリ14の外に延び得る。管58は、液体等の流体及び/またはガスを膨張可能な部材56の中空内部チャンバ60(図3)に送達するための、例えば、流体源、例えば、ポンプ(明確に図示せず)に連結された端部62(図1)を有し得る。管58の端部62は、表示部20(図1)または表示部20のプロセッサと通信し得る。
【0034】
外科用装填ユニット40のエンドエフェクタ46は、第1のセンサ64(図3)及び第2のセンサ66(図3)を含み、それぞれ、アンビル42bと関連付けられている。具体的には、第1及び第2のセンサ64、66は、アンビル42bの膨張可能な部材56にそれぞれ取り付けられ、表示部20と通信する。いくつかの実施形態では、第1のセンサ64は、各々のステープルカートリッジ42a及びアンビル42bの組織接触面48a、48bの一方または両方に取り付けられ得る。第1のセンサ64は、ステープルカートリッジ42aとアンビル42bとの間に把持された組織を通る局所灌流(すなわち、血流)を測定するように構成された灌流センサ、例えば、ドップラー血流センサである。第1のセンサ64は、1つ以上のLEDまたは他の光源からの光散乱を測定し、かつ/または吸光度を測定する、レーザードップラー流量計(「LDF」)等の既知の技術に基づいて、把持された組織の灌流を測定し得る。LDF技術の詳細な説明に関して、米国特許第4,109,647号及び同第4,862,894号を参照することができ、これらのそれぞれの全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
第1のセンサ64は、第1のセンサ64が、把持された組織における灌流を測定すると、第1のセンサ64が測定データを、数、文字、または画像を使用して測定値を表示する、表示部20の第1の表示区分20aに送信するように、表示部20とリード線または無線接続を介して通信する。いくつかの実施形態では、第1のセンサ64はまた、第1のセンサ64に収集された情報を処理して、組織灌流を計算する、レーザードップラーモニタ等のコンピュータ装置またはプロセッサ(図示せず)とリード線または無線接続を介して通信し得る。コンピュータ装置(例えば、レーザードップラーモニタ)はまた、第1の表示区分20aが組織灌流を表示することができるように、組織灌流に関する処理された情報を第1の表示区分20aに送るために、第1の表示区分20aとリード線または無線接続を介して通信し得る。
【0036】
エンドエフェクタ46の第2のセンサ66は、圧力センサまたは圧力測定装置、例えば、MEMS装置である。様々なMEMS装置の詳細な説明に関して、米国特許第8,808,311号を参照することができ、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。実施形態では、第2のセンサ66は、膨張可能な部材56の中空内部チャンバ60内に配置され、膨張可能な部材56内の圧力を測定することによって、把持された組織に、エンドエフェクタ46によってかけられた圧力(すなわち、挟持圧)の量を測定するように構成されている。圧力センサを有する膨張可能な部材56に加えて、またはその代替として、ステープルカートリッジ42aの組織接触面48aはまた、把持された組織に、エンドエフェクタ46によってかけられた圧力の量を測定するための圧力センサを有し得る。
【0037】
第2のセンサ66(図3)は、表示部20の第2の表示区分20b(図1)とリード線または無線接続を介して電気的に通信する。第2のセンサ66が、把持された組織にかけられた挟持圧を測定した後、第2のセンサ66は、測定データを、測定値を表示する第2の表示区分20bに送信する。加えて、または代替として、第2のセンサ66は、処理するために、測定された挟持圧をコンピュータ装置(例えば、レーザードップラーモニタ)に送信し得、それは、その後、情報を表示部20に送信する。
【0038】
表示部20は、複数の表示面、例えば、3つの表示区分20a、20b、20cを有し得る。表示部20は、任意の適切な構成で配置された3つ以上または3つ以下の個別の表示区分を含み得ることが考えられる。実施形態では、表示部20の第1の表示区分20aは、エンドエフェクタ46によって把持された組織の測定された組織灌流の可視指示を表示するように構成されている。表示部20の第2の表示区分20bは、エンドエフェクタ46によって把持された組織にかけられている測定された圧力の量の可視指示を表示するように構成されている。表示部20の第3の表示区分20cは、以下に詳述される通り、外科用ステープラ10の第1及び第2のセンサ64、66を使用して決定された表面灌流圧の比率を表す指数、及び血圧計カフ(図示せず)によって測定された全身血圧を表示するように構成されている。
【0039】
いくつかの実施形態では、表示部20(図1)は、第1及び第2のセンサ64、66の測定値を表示するために、数値または様々な数字出力の範囲を表示し得る。特に、第1、第2、及び第3の表示区分20a、20b、20cは、エンドエフェクタ46によって把持されている組織に関する情報を説明するために、数値範囲0~3、0~5、0~10、0~100、または任意の他の適切な範囲を表示し得る。例えば、第1の表示区分20aが数値0を表示するとき、これは、把持された組織が灌流をほとんどまたは全く有しない(すなわち、血流がない)という指標であり得るが、第1の表示区分20aが数値100を表示するとき、これは、把持された組織が高い灌流(すなわち、理想的な血流)を有するという指標であり得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、表示部20は、任意の適切な印、例えば、不十分、十分、または良好等の言葉を使用して把持された組織の特徴に関する情報を伝達し得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、手術システム1は、表示部20を含まず、代わりに、外科用ステープラ10が、別の種の表示部、例えば、タブレット、携帯電話、コンピュータ用モニタ、ノート型パソコン、または任意の適切な表示装置に接続されるか、または通信するように構成され得る。外科用ステープラ10は、USBワイヤ、Wi-Fi等を介して前述の表示装置のいずれかに接続され得る。
【0042】
操作中、手術システム1は、ステープル留めする前に、対象組織に関する様々なデータを収集するために、組織がステープル留めされる外科手術、例えば、吻合外科手術において使用され得る。いくつかの吻合外科手術では、病的または罹患腸組織が切除され、残りの健康な腸セグメントの端部が、つながった腸を再現するために、一緒にステープル留めされる。別々の腸セグメントの端部を互いにステープル留めする前に、別々の腸セグメントの端部の生存率が、手術後の吻合部漏出または他の有害転帰の可能性を予測するために、評価されるべきである。この生存率評価の実行を補助するために、臨床医は、本開示の手術システム1を利用し得る。
【0043】
図4を参照すると、手術システム1の使用において、外科用装填ユニット40は、低侵襲の様式で手術部位への進入を得るために、アクセスポート70を通って位置付けられる。エンドエフェクタ46の膨張可能な部材56が折り畳まれた、または膨張していない状態で、組織「T」は、図5に示される通り、ステープルカートリッジ42a及びアンビル42bが部分的に開放位置にある状態で、ステープルカートリッジ42aの組織接触面48aと、アンビル42bの組織接触面48b上に配置された膨張可能な部材56との間に配置される。組織「T」がステープルカートリッジ42aとアンビル42bとの間に配置された状態で、手術システム1のポンプは、図6に示される通り、流体(例えば、空気)を、管58を介して膨張可能な部材56の中空内部チャンバ60に運んで、膨張可能な部材56を、その折り畳まれた状態からその拡張または膨張状態に変化させる。膨張可能な部材56が拡張状態にあるとき、図7に示される通り、ステープルカートリッジ42a及びアンビル42bは、組織「T」の周囲で挟持される。
【0044】
一実施形態では、ステープルカートリッジ42a及びアンビル42bは、膨張可能な部材56を拡張する前に、組織「T」の周囲で挟持され得る。膨張可能な部材56の内側の圧力が増加するにつれて、ステープルカートリッジ42aとアンビル42bとの間に配置された組織「T」にかけられた圧力が増加し、組織を通る血流を阻止する。
【0045】
膨張可能な部材56が膨張した状態にあり、組織「T」がエンドエフェクタ46によって把持されている状態で、エンドエフェクタ46の第1のセンサ64は、把持された組織を通る灌流に関する情報を収集する。この情報は、表示部20の第1の表示区分20aに送信され、それは、この情報を、血流の画像として、または組織「T」を通る灌流の程度を表す数値として表示する。第2のセンサ66は、膨張可能な部材56内の圧力を測定し、この情報を表示部20の第2の表示区分20bに送信し、それは、この情報を数値として表示する。臨床医が、第1の表示区分20aに表示された灌流示度(すなわち、血流)、及び第2の表示区分20bに表示された圧力示度を監視する間、膨張可能な部材56の拡張は徐々に、灌流示度が、血流が把持された組織「T」を通って動いていない、または事実上流れてないことを示すまで、ステープルカートリッジ42aとアンビル42bとの間の挟持圧を徐々に増加し続ける。
【0046】
実施形態では、膨張可能な部材56を膨張させることによって組織「T」に対する挟持圧を徐々に増加させる代わりに、旋回ハンドル16が、組織「T」の周囲でステープルカートリッジ42a及びアンビル42bを徐々に閉じるように作動される。臨床医は、表示区分20aが、血流が組織「T」を通って流れていない、または事実上流れてないことを示すと、ステープルカートリッジ42a及びアンビル42bの接近を停止する。
【0047】
第1の表示区分20aが、把持された組織を通る灌流が停止したことを示すと、臨床医は、ポンプが流体を膨張可能な部材56から徐々に抜くように作動され、把持された組織「T」にかかった圧力を低下させる間、第1及び第2の表示区分20a、20bの両方を継続的に監視する。実施形態では、組織「T」にかかった圧力は、膨張可能な部材56を折り畳むことによってではなく、ステープルカートリッジ42aとアンビル42bを離すことによって低下させ得る。挟持圧は、第1の表示区分20aが、血流が把持された組織に戻ったことを示す灌流示度を示すまで、低下される。灌流示度が、血流が戻ったことを示す瞬間に、第2の表示区分20bによって表示された圧力示度(例えば、膨張可能な部材56内の圧力)が記録され、それは、把持された組織の局所灌流圧を示す。
【0048】
上述の技術を使用して決定された局所灌流圧は、例えば、測定された局所灌流圧と、健康な、または生存能力のある組織と関連付けられた、既知の局所灌流圧とを比較することによって、把持された組織の生存率を評価するために使用され得る。加えて、または代替として、測定された局所灌流圧は、組織の生存率の決定を行う際に補助するために、他の測定値、例えば、全身血圧示度と組み合わせて使用され得る。全身血圧は、患者の任意の適切な体の部分、例えば、患者の腕に着けられた任意の適切な装置、例えば、血圧計カフを使用して計り得る。指数は、外科用ステープラ10によって測定された局所灌流圧と、血圧計カフを使用して計られた全身血圧との比率を取ることによって計算され得る。指数は、表示部20におけるコンピュータ装置によって計算され、表示部20の第3の表示区分20c上の数値として表示され得る。
【0049】
計算された指数は、吻合部漏出が生じるかどうか、及び/または吻合部漏出の度合の予測である。したがって、臨床医は、指数を使用して、健康であると推定された腸セグメントの2つの端部が、ステープル留めするのに十分健康であるかどうか、またはより多くの組織が切除される必要があるかどうかを決定することができる。例えば、計算された指数は、健康な組織と関連付けられた、既知の指数と比較され得る。灌流指数を計算し、組織生存率を評価するために計算された指数を使用する方法の詳細に関して、米国特許第7,618,376号を参照することができ、その全内容は、参照により上記に組み込まれた。
【0050】
把持された組織「T」に生存能力があると決定した後、外科用ステープラ10の可動ハンドル18は、ステープルを、ステープルカートリッジ42aのステープル受容チャネル50から組織「T」に押し出すように作動され得る。ステープルは、アンビル42bのステープル形成ポケット52と接触し、組織「T」の周囲にステープルを閉じる。ステープルが押し出されるにつれて、切断刃(図示せず)がエンドエフェクタ46を通って移動して、ステープラで留められた組織「T」を切断し、それによって、組織「T」を2つの組織セグメントに分割する。
【0051】
このようにして、臨床医は、組織生存率を決定し、組織に生存能力があると決定されたとき、ステープル処置をもたらすことの両方を行うために、1つの器具、すなわち、外科用ステープラ10を使用するだけでよい。これらの作業のそれぞれを遂行するために1つの器具のみを有することの利益は、外科用器具が、特定の組織セグメントに生存能力があると決定すると、臨床医は、別の外科用ステープラを使用することなく組織を直ちにステープル留めすることができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、外科用ステープラ10は、把持された組織を通る灌流の停止を引き起こすと分かっている既定の挟持圧を与えるために膨張可能な部材56を膨張させるように予めプログラムされ得る。外科用ステープラ10はまた、把持された組織の灌流が再開した瞬間に、膨張可能な部材56の収縮を介して既定の速度で挟持圧を低下させ、圧力測定値をコンピュータ装置に自動的に送信するように予めプログラムされ得る。灌流圧示度はまた、表示部20上に表示され得る。この自動プロセスは、臨床医の代わりに、いつでも組織にかかっている挟持圧の量を制御することによって、外科用ステープラ10の操作時の人的ミスを排除する。
【0053】
手術システム1を使用して、組織がステープル留めする状態にあるか、またはステープル留めを受け入れることが可能であるかを確実にすることに加えて、手術システム1はまた、組織が健康である(例えば、良好な血流を有する、適切に治癒する等)ことを確実にするために、ステープルが射出された後の基準として使用され得る。
【0054】
手術システム1またはその構成要素は、ロボットによる手術システム(図示せず)に組み込まれるように構成され得る。ロボットによる手術システムは、局所的または遠隔的に電力が供給され、コンソールにおいて局所化された、またはロボットによる手術システム内もしくはその全体に分配された電子制御系を有する。ロボットによる手術システムにより、臨床医は、外科用ステープラ10の動きをより正確に制御するために、外科用ステープラ10を遠隔で操作することができる。外科用ステープラ10は、エンドエフェクタ46のセンサ64、66によって収集された測定値を、測定値が、臨床医が読むために表示され得る、ロボットによる手術システムのインターフェースに送信されるように構成され得る。本明細書に開示された実施形態のいずれにおいても、外科用器具は、線形内視鏡的外科用ステープラ以外の外科用ステープラであり得る。例えば、円形ステープラが、本明細書に開示された灌流系を組み込むことができる。
【0055】
図8に説明される通り、表示部20と共に使用するための外科用器具100の別の実施形態が提供される。外科用器具100は、図1~7を参照して説明された外科用ステープラ10と同様であり、したがって、違いを明瞭にするために必要な詳細により説明されるのみである。
【0056】
外科用器具100は、組織にステープル留めし、かつ膨張可能な部材(明確に図示せず)、灌流センサ(明確に図示せず)、及び圧力センサ(明確に図示せず)を使用して組織生存率を決定するように構成された外科用ステープラである。外科用ステープラ10に関して上述される通り、外科用器具100は、ハンドル部分112、アダプタアセンブリ114、細長いシャフト130、及び外科用装填ユニット140を備える。しかしながら、図1~7の外科用ステープラ10のように手動電源方式ではなく、本実施形態の外科用器具100は、ハンドル部分112内に配置された内部電源を介して外科用装填ユニット140の機能を作動する。外科用ステープラの例示的な内部電源方式ハンドル部分の詳述に関して、2015年7月24日出願の米国特許出願公開第2016/0118201号を参照することができ、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
図9~11に説明される通り、表示部20と共に使用するための外科用器具200の別の実施形態が提供される。外科用器具200は、図1~7を参照して説明された外科用ステープラ10と同様であり、したがって、違いを明瞭にするために必要な詳細により説明されるのみである。
【0058】
外科用器具200は、把持された組織の組織生存率を決定するように構成されたステープル留をしない組織把持器具である。組織把持器具200は、ハンドル部分212、アダプタアセンブリ214、及び外科用装填ユニット240を含む。アダプタアセンブリ214は、ハウジングまたはノブ214a、及びそこから遠位に延びる細長いシャフト214bを含む。アダプタアセンブリ214のノブ214aは、ハンドル部分212に取り外し可能に連結するように構成されている。
【0059】
外科用装填ユニット240は、細長い本体部分244、及び本体部分244に連結されたジョーアセンブリ246を有する。本体部分244は、アダプタアセンブリ214の細長いシャフト214bの遠位部分に取り外し可能に連結されている。ジョーアセンブリ246は、それぞれ、本体部分244の遠位部分に連結された第1のジョー242a及び第2のジョー242bを含む。第1のジョー242aは、第1のジョー部材242aが離間条件と接近条件との間で第2のジョー部材242bに対して可動であるように、本体部分244に旋回可能に連結されている。いくつかの実施形態では、ジョー部材242a、242bの1つまたは両方とも、外科用装填ユニット240の本体部分244に旋回可能に連結され得る。
【0060】
第1のジョー部材242aは、組織接触面248aを有し、第2のジョー部材242bは、その中の細長い空洞250(図11)を画定する内面248bを有する。ジョーアセンブリ246は、第2のジョー部材242bの空洞250内で受容される、上述の膨張可能な部材56と同様の膨張可能な部材256を含む。膨張可能な部材256は、第2のジョー部材242bの内面248bとスナップ嵌合係合するように寸法決めされ得る。膨張可能な部材256は、ジョーアセンブリ244が接近状態にあるとき、第1のジョー部材242aの組織接触面248aと接触するように寸法決めされた略長方形を有する。
【0061】
膨張可能な部材256は、膨張可能な部材256が実質的に平坦かつ長方形である折り畳まれた構成から、膨張可能な部材256が折り畳まれた構成より大きく、球状構成を取る拡張構成に変化または移動されるように構成されている。膨張可能な部材256は、そこから延び、膨張可能な部材256内に画定された中空内部チャンバ260と流体通信するホースまたは管258(図9)を有し得る。管258は、液体等の流体及び/またはガスを膨張可能な部材256の中空内部チャンバ260に送達するための流体源、例えば、ポンプ(明確に図示せず)に連結された端部262を有し得る。
【0062】
ジョーアセンブリ140は、上述の第1のセンサ64と同様の灌流センサ264(図11)、及び上述の第2のセンサ66と同様の圧力センサ266を備える。灌流センサ264は、第2のジョー部材242bの膨張可能な部材256(例えば、その内面または外面)に取り付けられ、表示部20と通信する。いくつかの実施形態では、灌流センサ264は、膨張可能な部材256ではなく、第1のジョー部材242aの組織接触面248a、または第2のジョー部材242bの内面248bに取り付けられ得る。
【0063】
実施形態では、ジョーアセンブリ246の圧力センサ266(図11)は、膨張可能な部材256の中空内部チャンバ260内に配置され、膨張可能な部材256内の圧力を測定することによって、把持された組織にジョーアセンブリ246よってかけられた圧力の量(すなわち、挟持圧)を測定するように構成されている。圧力センサを有する膨張可能な部材256に加えて、または代替として、第1のジョー部材242aの組織接触面248aもまた、把持された組織にジョーアセンブリ246よってかけられた圧力の量を測定するための圧力センサを有し得る。
【0064】
組織把持器具200は、組織把持器具200が、把持された組織の生存率が評価された後に把持された組織にステープル留めしないことを除いて、外科用ステープラ10に関して上述される同様の様式で使用される。
【0065】
図12及び13に説明される通り、表示部20とともに使用するための外科用器具300の別の実施形態が提供される。外科用器具300は、図9~11を参照して上述された外科用器具200と同様であり、したがって、違いを明瞭にするために必要な詳細により説明されるのみである。
【0066】
外科用器具300は、組織を把持し、膨張可能な部材256、灌流センサ(明確に図示せず)、及び圧力センサ(明確に図示せず)を使用して把持された組織の生存率を決定するように構成された組織把持器具である。組織把持器具300は、ハンドル部分312、アダプタアセンブリ314、及びジョーアセンブリ340を含む。取り外し可能な装填ユニットを有する組織把持器具300ではなく、ジョーアセンブリ340は、アダプタアセンブリ314の細長いシャフト314bに固定され、アダプタアセンブリ314のハウジングまたはノブ314aは、ハンドル部分312に取り外し可能に連結されている。
【0067】
本開示の実例となる実施形態が本明細書において説明されてきたが、本開示は、それらの詳細な実施形態に限定されるものではなく、様々な他の変更及び修正が、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者によってそこで影響され得ることが理解される。全てのそのような変更及び修正は、本開示の範囲内に含まれることを目的とする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13