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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】三相交流ケーブルの異常電流検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/165 20060101AFI20220816BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20220816BHJP
   G01R 15/20 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
G01R19/165 P
G01M99/00 A
G01R15/20 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018047184
(22)【出願日】2018-03-14
(65)【公開番号】P2019158672
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】華表 宏隆
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-148597(JP,A)
【文献】特開2005-283489(JP,A)
【文献】特開2015-148631(JP,A)
【文献】特表2011-528795(JP,A)
【文献】国際公開第2017/195698(WO,A1)
【文献】特開2001-320828(JP,A)
【文献】特開2017-181437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00
G01R 31/00
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器に接続された三相交流ケーブルの異常電流を検知する三相交流ケーブルの異常電流検知装置であって、
前記三相交流ケーブルの電線管の外周面に接触させて磁場を検出する磁気検出部と、
該磁気検出部で検出した磁場検出信号を周波数解析する周波数解析部と、
該周波数解析部の周波数解析結果の周波数成分のうち、基本周波数成分の振幅と当該基本周波数成分以外の周波数成分の振幅に基づいて異常電流を検知する異常電流検知部と
を備えている三相交流ケーブルの異常電流検知装置。
【請求項2】
前記異常電流検知部は、前記周波数解析部で周波数解析した周波数成分のうち最も振幅が大きい基本周波数成分の振幅で当該基本周波数成分以外の周波数成分の振幅を除した歪み率が閾値以上となる周波数成分が存在する場合に異常電流の発生を検知する請求項1に記載の三相交流ケーブルの異常電流検知装置。
【請求項3】
前記基本周波数成分と比較する周波数成分は、当該基本周波数成分の整数倍の周波数成分である請求項2に記載の三相交流ケーブルの異常電流検知装置。
【請求項4】
前記基本周波数成分と比較する周波数成分は、当該基本周波数成分の両側に形成される側帯波成分である請求項2に記載の三相交流ケーブルの異常電流検知装置。
【請求項5】
前記三相交流ケーブルの相電流実効値を検出する測定器を備え、
前記異常電流検知部は、該測定器で検出した相電流実効値を前記基本周波数成分の振幅で除した値を換算係数とし、該換算係数を前記基本周波数成分以外の各周波数成分の振幅に乗じて算出した電流実効値で異常電流の有無を判定する請求項2から4の何れか一項に記載の三相交流ケーブルの異常電流検知装置。
【請求項6】
前記磁気検出部は、前記電線管の同一円周上の磁場検出レベルが他部に比べて大きくなる3点で第1磁場検出信号、第2磁場検出信号及び第3磁場検出信号をそれぞれ検出し、前記周波数解析部は、前記第1磁場検出信号、前記第2磁場検出信号及び前記第3磁場検出信号をそれぞれ第1周波数成分、第2周波数成分及び第3周波数成分に周波数変換し、前記異常電流検知部は、第1周波数成分、第2周波数成分及び第3周波数成分に基づいて電流異常を検知する請求項2から5の何れか一項に記載の三相交流ケーブルの異常電流検知装置。
【請求項7】
前記磁気検出部は、前記第1周波数成分、前記第2周波数成分及び前記第3周波数成分のうち全てに共通するピーク検出信号の周波数成分をコモンモード信号とし、何れか1つの周波数成分のみで発生するピーク検出信号の周波数成分をノーマルモード信号として異常電流の有無を判定する請求項6に記載の三相交流ケーブルの異常電流検知装置。
【請求項8】
前記異常電流検知部は、前記第1周波数成分、前記第2周波数成分及び前記第3周波数成分の歪み率を比較することにより、異常モードを判定する請求項6に記載の三相交流ケーブルの異常電流検知装置。
【請求項9】
異常モードは単相不良、相間不良及び全相不良の何れかである請求項8に記載の三相交流ケーブルの異常電流検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器に接続されて通電中の三相交流ケーブルに流れる異常電流を検知する三相交流ケーブルの異常電流検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
変電所や工場等では、各構成機器の損失低減や異常検知を目的として電源ケーブルに流れる電流の周波数成分を測定する取り組みが行われている。損失低減の例として高圧インバータでは、電力品質確保のために出力電流波形の高調波成分を管理している。インバータのスイッチング素子及びスイッチング頻度により高調波成分のレベルが異なり、高調波成分が大きいほど損失が大きく、各機器への電圧負荷(跳ね上がり電圧)も大きくなる。また近年は、系統電力品質を確保するためのガイドライン(高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン)としても、高調波成分レベルが規制されている。
【0003】
電流測定対象である変電設備や工場等の三相交流ケーブルは、ケーブル保護や誤配線防止のために3つのケーブルを一括りに纏めて結線されている。これらの三相交流ケーブルには、3本の導体を互いに絶縁して1つのケーブルとした3芯ケーブルや単芯ケーブルを3つ格納した配線管が用いられる。
そのため、各ケーブルに流れる電流を測定するためには、停電状態でケーブルと分電盤や電気機器との接続部で各相に電流センサを取り付けておく必要がある。活線状態で、各相電流を測定するためには、ケーブルが分離された部位で単一相にクランプ型電流センサを直接取り付ける必要があり、高電圧設備では安全面から実施が困難である。
三相交流ケーブルに一括してクランプ型電流センサを取り付けた場合には、三相平衡電流では各相電流が発生する磁界を互いに打ち消し合い、外部磁界からでは電流を検出することはできない。この場合に検出されるのは、三相不平衡となる零相電流成分だけとなる。
【0004】
このような多芯ケーブルの所望の芯線に流れる電流の電流値を非接触で測定できる電流センサとして特許文献1に記載された電流センサが提案されている。
この特許文献1に記載された電流センサは、被測定電線の周囲における部分的な磁界を磁気センサ素子が内蔵された磁気センサモジュールで検知し、アナログ信号処理部で全波整流処理、平均電流を得るための積分処理及び低域通過フィルタ処理などを施してデジタル信号処理部でデジタル信号に変換した後、電流演算部でデジタル信号に変換された電圧信号値から被測定電流の電流値を算出するようにしている。ここで、電流演算部での被測定電流の電流値の算出は、電圧信号の積分値Vに補正係数Kを乗算するようにしている。この補正係数Kは、磁気センサ素子の感度と各芯線と磁気センサモジュールとの位置関係により決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-148597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された従来技術では、磁気センサモジュールで検出した検出電圧を積分処理してから磁気センサ素子の感度と各芯線と磁気センサモジュールとの位置関係により決定される補正係数を乗算して被測定芯線に流れる電流を算出するようにしている。
このため、被測定対象となる多芯ケーブル毎に補正係数を予め求めておく必要がある。すなわち、3芯ケーブルや電線管の種類が同じでも芯線と磁気センサモジュールとの距離や介在する材料の物性値が異なる場合には都度補正係数Kを求める必要があるという課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来技術の課題に着目してなされたものであり、予め補正係数を求めことなく、三相交流ケーブルの異常電流を検出することができる三相交流ケーブルの異常電流検知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る三相交流ケーブルの異常電流検知装置は、電気機器に接続された三相交流ケーブルの異常電流を検知する三相交流ケーブルの異常電流検知装置である。この異常電流検知装置は、三相交流ケーブルの電線管の外周面に接触させて磁場を検出する磁気検出部と、この磁気検出部で検出した磁場検出信号を周波数解析する周波数解析部と、この周波数解析部の周波数解析結果の周波数成分のうち、基本周波数成分の振幅と当該基本周波数成分以外の周波数成分の振幅に基づいて異常電流を検知する異常電流検知部とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、磁気検出部で検出した磁場検出信号を周波数解析して、基本波周波数成分とそれ以外の周波数成分の振幅から三相交流ケーブルの異常電流の発生の有無を検出することができ、異常電流の有無を予め補正係数を求めることなく検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る三相交流ケーブルの異常電流検知装置の第1実施形態を示す概略構成図である。
図2】三相芯線が均等に配置されている三相交流ケーブルと磁気検出部とを示す断面図である。
図3】三相電流波形と、三相交流ケーブルに三相芯線が均等に配置されている場合の磁気検出部の検出信号波形を示す波形図である。
図4】三相芯線が不均等に配置されている三相交流ケーブルと磁気検出部とを示す断面図である。
図5】三相電流波形と、三相交流ケーブルに三相芯線が不均等に配置されている場合の磁気検出部の検出信号の波形を示す波形図である。
図6】磁気検出部の検出信号の周波数分析結果を示す周波数と振幅との関係を示す波形図である。
図7】本発明に係る三相交流ケーブルの異常電流検知装置の第2実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
また、以下に示す実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
まず、本発明の一の態様を表す三相交流ケーブルの異常電流検出装置の第1実施形態について図面を伴って説明する。
まず、本発明を適用し得る電気機器としての回転電機について説明する。回転電機10は、図示しないがロータ及びステータを内蔵する回転電機本体11と、この回転電機本体11の外周面に形成されたステータコイルに三相交流電流を供給する端子ボックス12とで構成されている。
端子ボックス12には内部で三相交流ケーブル13の一端が結線され、この三相交流ケーブル13の他端は図示しないが回転電機を駆動するインバータに接続されている。特に、高電圧の場合には、三相交流ケーブル13は保護用の電線管14内に格納された状態で配線される。
【0013】
三相交流ケーブル13は、図に示すように、それぞれ絶縁被覆されたU相電線Wu、V相電線Wv及びW相電線Wwの3本の電線が保護用の電線管14内に収納された状態で配線されている。電線管14は、使用環境により使い分けられ、金属製や合成樹脂製のパイプが用いられる。電機機器との接続部では可撓性が必要となるため、主に合成樹脂製のコネクタが使用される。図2では、合成樹脂製の電線管14の内部に三相交流ケーブルが格納された状態を示している。電線管14内部の三相交流ケーブル13は、3芯ケーブルもしくは単芯ケーブルの三本セットが適用される。
【0014】
この電線管14の任意の外周面に磁気検出部15が取り付けられる。磁気検出部15は、図2に示すように、内面及び外面が平行なV字状に形成されたVブロック15aを有する。このVブロック15aには、内面の谷部から外面の山部に貫通する貫通孔15bが形成されている。この貫通孔15bは、内面側の内径が大きい大径孔部15cと、外面側の内径が大径孔部15cに比較して小さい小径孔部15dとで構成されている。
大径孔部15cには、磁気センサ15eが配置され、この磁気センサ15eの信号線15fが小径孔部15dを通じてVブロック15aの外周面から突出されている。磁気センサ15eは、磁気検出面がVブロック15aの谷部より突出しており、Vブロック15aの内面を電線管14の外周面に接触させたときに、磁気検出面が電線管14の外周面に接触される。
【0015】
磁気センサ15eとしては、磁界の印加に対して電気抵抗が変化する磁気抵抗素子、磁界の印加に対して電気的インピーダンスが変化する磁気インピーダンス素子、ホール効果を利用して磁界を検出するホール素子、またはフラックスゲート素子等を適用することができる。要は電線管14の外周面の磁界に応じた磁場検出信号が出力できれば、任意の磁気検出素子を適用できる。
磁気センサ15eは、周波数帯域が30~3000Hzにおいてフラットなゲイン特性を有することが好ましい。また、磁気センサ15eは、大径孔部15cに突出量を調整可能に装着されることが好ましい。
【0016】
そして、磁気検出部15の磁気センサ15eから出力される磁場検出信号が高速フーリエ変換(FFT)アナライザ等の周波数解析部16に供給される。この周波数解析部16では、磁気検出部15から出力される検出信号を周波数分析し、周波数分析結果を異常電流検知部17に供給する。
この異常電流検知部17では、周波数解析部16の周波数分析結果に基づいて基本周波数成分の振幅とそれ以外の周波数成分の振幅とに基づいて異常電流の有無を判定する。
ここで、本発明による異常電流の検出原理について説明する。先ず、三相交流ケーブル13に流れる電流と、磁気検出部15から出力される検出信号との関係性を説明する。
【0017】
三相交流ケーブル13に流れる各相電流が、振幅をI、周波数をf、位相差を120度、時間をtの三相平衡電流であるとすると、U相電流Iu、V相電流Iv及びW相電流Iwは下記(1)~(3)式で表すことができる。
Iu=I×Sin(2π×f×t) ・・・(1)
Iv=I×Sin(2π×f×t-2/3×π) ・・・(2)
Iw=I×Sin(2π×f×t-4/3×π) ・・・(3)
【0018】
各相電線の中心と磁気検出部15との距離を、U相がLu、V相がLv及びW相がLwと置くと、U相が磁気検出部15に発生させる磁場Hu、V相が磁気検出部15に発生させる磁場Hv、及びW相が磁気検出部15に発生させる磁場Hwは、下記式(4)~(6)で表すことができる。
Hu=Iu/(2×π×Lu) ・・・(4)
Hv=Iv/(2×π×Lv) ・・・(5)
Hw=Iw/(2×π×Lw) ・・・(6)
磁気検出部15が検出する磁場Hは、全相の総和であることから、
H=Hu+Hv+Hw ・・・(7)
となる。
【0019】
ここで、図2に示す磁気検出部15の三相交流ケーブル13の円周方向の位置を、取り付け角度が電線管14の中心から反時計回りに変化させたときの検出信号波形を図3に示す。取り付け角度0度、120度、240度で検出信号は最も大きくなり、角度60度はV相、角度180度はU相、角度300度はW相の電流波形と同期した検出信号となる。これ以外の取り付け角度では、複数相からの磁場影響を受けるために検出信号と相電流の位相は同期せず、磁気検出部15と各相電線Wu、Wv及びWwとの距離も遠くなるために磁場検出信号は小さくなる。
【0020】
よって、磁気検出部15の磁場検出信号が最大となる磁気検出部15の取り付け部位は3点であり、この3点では磁場検出信号が近傍の相電流波形と同期した波形となる。電線管14の径が大きくなった場合には、取り付け角度と磁場検出信号波形の関係性は変わらず、電線と磁気検出部15の距離が遠くなるために磁気検出部15の検出レベルが全体的に低下する。
測定条件を変えて、図4のように電線管14内で3相ケーブルがばらけている場合の検出信号について説明する。この場合の電流波形は図5のようになり、検出信号が最大となる磁気検出部15の取り付け位置は3点になるとは限らず、検出信号が最大となる位置でも検出信号と相電流の位相は必ずしも一致しない。前述した式(1)~(7)より磁気検出部15が検出する磁場Hを求めると下記式(8)となる。
【0021】
H=Hu+Hv+Hw
=(Iu/(2×π×Lu))+(Iv/(2×π×Lv))+(Iw/((2×π×rw))
=(I/(2×π))×((sin(2π×f×t))/Lu)
+((sin(2π×f×t-2/3×π))/Lv)
+((sin(2π×f×t-4/3×π))/Lw)
=(I/(2×π))×(A2+B2)0.5×(sin(2π×f×t+α)) ・・・(8)
ここで、A=(1/Lu)-(1/(2Lv))-(1/(2Lw))
B=-(√3/2Lv)+(√3/2Lw)
Cos(α)=A/(A+B0.5
Sin(α)=B/(A+B)0.5
【0022】
式(8)に示したように、電線管14内の電線位置が不定の場合でも、三相交流ケーブル13に流れる平衡電流と同一の周波数成分が磁気検出部15の磁場検出信号として検出されることになる。すなわち、式(8)では、位相がα分ずれるが、これは時間軸上のずれであって、周波数領域ではずれを生じない。
ここで各周波数成分に着目すると、対象の電気機器に流したい基本波周波数と、それ以外の周波数に分類される。それ以外の周波数は、対象電気機器の効率を低下させたり、誤作動や故障の原因となったりする。
【0023】
よって、基本波周波数成分の振幅レベルに対して、その他周波数成分の振幅レベルが無視できないほど大きくなれば、電気機器に悪影響を及ぼす異常電流が発生していると判断できる。
したがって、磁気検出部15から出力される磁場検出信号を周波数解析部16で周波数分析し、この周波数分析結果を異常電流検知部17に供給することにより、この異常電流検知部17で、基本周波数成分の振幅と基本周波数成分以外の周波数成分の振幅とに基づいて異常電流の有無を判定することができる。
【0024】
次に、異常電流の検知の具体的な手順について説明する。初めに、磁気検出部15を電線管14の外周表面に接触させて、円周上の検出レベルを測定する。同一円周上で、検出レベルが極大となる3点を求め、その位置をプロットする。
次いで、各プロット位置において、磁気検出部15の第1磁場検出信号、第2磁場検出信号及び第3磁場検出信号を取得し、その信号を個別にFFTアナライザ等の周波数解析部16で周波数分析する。この周波数分析を行うことにより、図6に示す周波数分析結果が得られる。この周波数分析結果は、横軸が周波数(Hz)を表し、縦軸が振幅(p,u)を表す。
【0025】
この周波数分析結果によると、振幅が最も大きい例えば60Hzの基本周波数成分に対して、整数倍の周波数成分120Hz(第2次高調波)、180Hz(第3次高調波)、240Hz(第4次高調波)、300Hz(第5次高調波)で振幅が大きくなる。また、基本周波数成分の両側の側帯波成分も振幅が大きくなる。なお、図6では、第5次高調波成分である300Hzまで記載してあるが、実際には、第40次高調波成分である2400Hzまで記録する。
このためには、磁気検出部15で検知する磁場検出信号の検出時間を5秒以上とし、サンプリング周波数を6.5kHz以上とすることが好ましい。この測定条件での磁場検出信号を測定することにより、周波数レンジが2400Hz、周波数分解能が0.2Hzの周波数分析を行うことができる。したがって、基本周波数が60Hzである場合に、高調波成分は40次成分、側帯波は0.2Hzの刻み幅まで算出することができる。
【0026】
この周波数分析結果を異常電流検知部17に入力することにより、この異常電流検知部17で基本周波数成分以外の各高調波成分の振幅Q(n)(n=1,2,・・・40)を基本周波数成分の振幅Pで除した歪み率Q(n)/Pの値が予め設定した例えば契約電力によって決定される閾値Thを超えた場合に、異常電流発生と判定する。この異常電流検知を上記プロット点の3点で実施し、3点での歪み率の違いから電流異常モード(単相不良、相間不良及び全相不良の何れか一つ)を推定できる。
このように、上記実施形態によると、通電状態の三相交流ケーブル13の電線管14に磁気検出部15を配置して、検出した磁場検出信号を周波数解析部16で周波数分析し、周波数分析結果である基本周波数成分の振幅Pと周波数成分以外の高調波成分の振幅Q(n)とに基づいて異常電流を判定することができる。したがって、測定対象となる三相交流ケーブル13の種類や材質等に影響されることなく、異常電流を正確に検出することができる三相交流ケーブルの異常電流検知装置を提供することができる。
【0027】
しかも、前述した式(8)に示されるように、電線管14内の相電線が不均等に配置されている場合でも、周波数分析によって第1次~第40次の高調波成分の振幅を正確に求めることができ、活線状態で電流異常の発生の有無を正確に検知することができる。
また、基準周波数成分の整数倍の周波数成分で異常電流の有無を判定することにより、電源系統からの高調波電流の発生の有無を検知することが可能となる。
さらに、磁気検出部15での磁場検出信号の検出時間を5秒以上とし、サンプリング周波数が6.6kHz以上とすることにより、基本波電流周波数が60Hzにおいて、高調波の40次成分まで評価することが可能であり、側帯波については0.2Hz刻み成分を評価することができる。
【0028】
なお、上記実施形態では、基本周波数成分の振幅Pとそれ以外の例えば高調波成分の振幅Q(n)とに基づいて異常電流の検知を行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、基本周波数成分の振幅と側帯波周波数成分の振幅とに基づいて異常電流の検知を行うこともできる。すなわち、例えばかご型誘導電動機の回転子バーが破損した場合には、電源周波数±滑り周波数×2の周波数成分すなわち側帯波周波数成分が発生することが知られており、この側帯波周波数成分の振幅が予め設定された閾値を超える場合に回転子バーの破損による電流異常を検知することができる。
【0029】
次に、本発明の第2実施形態について図7を伴って説明する。
この第2実施形態では、周波数分析結果の振幅を電流実効値に換算して異常電流の発生を検知するようにしたものである。
すなわち、第2実施形態では、図7に示すように、三相交流ケーブル13に流れる相電流の実効値Sを電流測定器21で検出し、この電流測定器21で検出した相電流実効値Sを異常電流検知部17に供給する。
【0030】
この異常電流検知部17では、周波数解析部16から入力される周波数分析結果の基準周波数成分f0の振幅P、第1次高調波周波数成分f1の振幅Q(1)、第2次高調波周波数成分f2の振幅Q(2)、・・・、第40次高調波周波数成分f40の振幅Q(40)を求める。また、異常電流検知部17では、相電流の実効値Sを基準周波数成分f0の振幅Pで除して換算比率kを算出する(k=S/P)。そして、算出した換算比率kを各高調波周波数成分f(n)の振幅Q(n)に乗算することにより、高調波周波数成分f(n)毎の電流実効値I(n)を算出する。算出した各高調波周波数成分f(n)の電流実効値I(n)に基づいて異常電流の有無を判定する。
【0031】
例えば、「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」においては、受電電圧6・6kVにおける契約電力1kW当たりの高調波流出電流上限値[mA/kW]が規制されている。この規制値[mA/kW]は、5次成分は3.5、7次成分は2.5、11次成分は1.0、13次成分は1.3、17次成分は1.0、19次成分は0.90、23次成分は0.76、25次成分は0.7に設定されている。
したがって、各高調波周波数成分f(n)の電流実効値I(n)を把握することで、個別機器に発生する高調波電流レベルを把握することができ、高調波流出電流上限値と比較することにより、各高調波周波数成分f(n)での異常電流を検知することができる。
【0032】
なお、上記第1及び第2実施形態では、各高調波周波数成分f(n)の歪み率や電流実効値に基づいて異常電流の発生を検知する場合について説明したが、これに限定されるものではない。
すなわち、3点で検出した磁場検出信号を周波数解析部16で周波数分析した分析結果を比較し、3点の周波数分析結果で共通の周波数領域でピークを生じている高調波周波数成分をコモンモード信号とし、特定点のみでピークとなる周波数成分をノーマルモード信号として分類する。
【0033】
コモンモード信号は全ての相で安定して繰り返し発生する信号であり、電源設備の変更や対象機器の経年変化を反映している可能性が高い。しかしながらノーマルモード信号は特定の相で間欠的に発生する信号であり、電源設備や対象機器の突発的な不具合や不良の発生を反映している可能性が高い。
したがって、ノーマルモード信号が検出されたときに、電源設備や対象機器の突発的な不具合や不良による異常電流であると判定することができる。このため、ノーマルモード信号の周波数成分と異常原因との関係を蓄積することにより、電源設備や対象機器の突発的な不具合や不良を検知することが可能となる。
【0034】
また、上記第1及び第2実施形態では、電線管14の円周上の磁場が大きくなる3点で磁場検出信号を測定する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、磁場が大きくなる1点又は2点で磁場検出信号を測定するようにしてもよい。
また、上記第1及び第2実施形態では、電気機器として回転電機を使用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、三相交流ケーブルを使用して三相電力を供給する電気機器であれば、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
10…回転電機、11…回転電機本体、12…端子ボックス、13…三相交流ケーブル、14…電線管、15…磁気検出部、15a…Vブロック、15b…貫通孔、15e…磁気センサ、15f…信号線、16…周波数解析部、17…異常電流検知部、21…電流測定器
図1
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図7