(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】電力監視システム
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20220816BHJP
H02J 3/14 20060101ALI20220816BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20220816BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
H02J13/00 311T
H02J13/00 301J
H02J3/14
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2018049946
(22)【出願日】2018-03-16
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】林 慧
(72)【発明者】
【氏名】吉川 聡
(72)【発明者】
【氏名】奈良 佳行
(72)【発明者】
【氏名】橋本 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光宏
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-111379(JP,A)
【文献】特開2015-095925(JP,A)
【文献】特開2017-011804(JP,A)
【文献】特開2015-130768(JP,A)
【文献】特開2005-143156(JP,A)
【文献】特開2007-318907(JP,A)
【文献】特開2005-312112(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0283606(US,A1)
【文献】特開2017-108560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H02J 3/14
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の需要家が属する特定エリア内の電力需要を監視する電力監視システムであって、
前記需要家に電力供給を行う発電機と、
前記発電機の運転状態が予め設定された電力逼迫状態となった場合に電力逼迫の警報信号を出力する電力逼迫警報出力部と、
前記需要家の使用電力量が予め設定された上限値を超過した場合に使用電力超過の警報信号を出力する使用電力超過警報出力部と、
前記電力逼迫の警報信号及び前記使用電力超過の警報信号に基づいて警報を表示する表示装置と、を備え
、
前記使用電力超過警報出力部は、所定の時間経過後も前記使用電力の超過状態が解消されない場合に、前記使用電力超過の警報信号として使用電力量の抑制を促す注意喚起警報信号を、特定エリアに属する全ての需要家に出力する電力監視システム。
【請求項2】
前記使用電力超過警報出力部は、前記需要家のBCP時での使用電力量が予め設定された上限値を超過した場合にBCP電力超過の警報信号を出力する請求項1に記載の電力監視システム。
【請求項3】
前記使用電力超過警報出力部は、前記使用電力超過の警報信号を、前記上限値を超過した需要家に対して出力する請求項1又は2に記載の電力監視システム。
【請求項4】
前記需要家の受電PLC盤から各需要家の使用電力量を収集して単位時間当たりのカウント値で前記各需要家が使用した電力値を演算する電力値演算部を備え、
前記表示装置は、前記電力値を表示する請求項1~
3のいずれかに記載の電力監視システム。
【請求項5】
予め設定された設定遮断容量に対する前記需要家の使用電力値の比率を超過比率として算出する超過比率算出部を備え、
前記表示装置は、前記超過比率を表示する請求項1~
4のいずれかに記載の電力監視システム。
【請求項6】
前記電力逼迫警報出力部は、前記電力逼迫状態の度合に応じて前記電力逼迫の警報信号を多段階に出力し、
前記表示装置は、前記警報信号の段階に応じて異なる態様の警報を表示する請求項1~
5のいずれかに記載の電力監視システム。
【請求項7】
前記使用電力超過警報出力部は、前記使用電力超過の度合に応じて前記使用電力超過の警報信号を多段階に出力し、
前記表示装置は、前記警報信号の段階に応じて異なる態様の警報を表示する請求項1~
6のいずれかに記載の電力監視システム。
【請求項8】
前記使用電力超過の警報信号に基づいて前記需要家の系統を強制遮断する遮断部を備えた請求項1~
7のいずれかに記載の電力監視システム。
【請求項9】
前記遮断部は、予め設定された設定遮断容量に対して前記需要家の使用電力値の比率が最も大きい需要家の系統から順に強制遮断する請求項
8に記載の電力監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数の需要家が属する特定エリア内での電力逼迫状態を監視する電力監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特定電力事業者(以下、特電事業者)による特電事業が注目を集めている。特電事業者は、発電機設備などのエネルギープラントや電力監視設備を有しており、特定エリア内の需要家に対して自家発電した電力を供給する。特定エリアは、都市開発区域や区域外の既存オフィスビル、商業施設等の複数の需要家を含んでおり、高圧系統や特高系統など電圧系統の異なる需要家が混在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特電事業者は、災害などにより特定エリア内の電力が逼迫した場合に、特定エリアでの全域停電を回避することが重要な責務である。そのため、特定エリアの電力逼迫時に全域停電とならないための運用努力が必要であり、電力逼迫状態を避けるための運用技術を予め確立しておくことが急務となっている。
【0005】
本発明の実施形態は、上記問題を解決するためになされたものであり、特定エリアの電力逼迫状態及び需要家の使用電力量に基づいて警報信号を出力することにより、需要家の自主的な電力抑制を促して特定エリアでの電力逼迫状態を回避することが可能な電力監視システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するために、本発明の実施形態は、複数の需要家が属する特定エリア内の電力需要を監視する電力監視システムであって、次の構成要素(a)~(e)を有している。
(a)前記需要家に電力供給を行う発電機。
(b)前記発電機の運転状態が予め設定された電力逼迫状態となった場合に電力逼迫の警報信号を出力する電力逼迫警報出力部。
(c)前記需要家の使用電力量が予め設定された上限値を超過した場合に使用電力超過の警報信号を出力する使用電力超過警報出力部。
(d) 前記電力逼迫の警報信号及び前記使用電力超過の警報信号に基づいて警報を表示する表示装置。
(e)前記使用電力超過警報出力部は、所定の時間経過後も前記使用電力の超過状態が解消されない場合に、前記使用電力超過の警報信号として使用電力量の抑制を促す注意喚起警報信号を、特定エリアに属する全ての需要家に出力する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】第1の実施形態を適用した特定エリアの単線結線図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
以下、
図1~
図4を参照して第1の実施形態に係る電力監視システムについて具体的に説明する。
[構成]
図1に示す電力監視システム1は、特電事業を実施する特定エリア内の電力需要を監視するシステムである。特定エリアには電圧系統が異なる複数の需要家が存在する。例えば、
図2では、電力系統に連系する66kV系が設けられ、ここに6.6kV系が2系統、22kV系が1系統、接続されている。
【0009】
特定エリアには各需要家に対して電力供給を行う発電機2が複数配置されており、各発電機2には各発電機制御盤3が接続されている。ただし、
図1には便宜的に発電機2及び各発電機制御盤3を1つだけ示している。各発電機制御盤3には発電機共通制御盤4が接続されている。
【0010】
発電機共通制御盤4は、各発電機2の運転状態を監視して発電機2の運転状態が予め設定された電力逼迫状態となった場合に、電力逼迫の警報信号を出力する電力逼迫警報出力部である。発電機共通制御盤4は、電力逼迫状態の度合に応じて電力逼迫の警報信号を多段階に出力するようになっている。具体的には、発電機共通制御盤4は、発電機2が定格容量の90%であれば電力逼迫の警報信号として軽故障信号を出力し、発電機2が定格容量の95%であれば電力逼迫の警報信号として重故障信号を出力するようになっている。
【0011】
特電事業では、特定エリアに属する需要家と発電機2とを結ぶ電力ネットワークが構築されており、電力ネットワークを介して特定エリア内の需要家に対し発電機2から電力が供給される。電力ネットワークは既存の電力会社による電力系統と切り離されて独立運転を実施可能である。
【0012】
そのため、特定エリアでは、災害などにより既存の電力系統が停電したとしても、事業継続計画すなわちBCPを実現することが可能であり、特定エリアに属する各需要家は通常、特電事業者とBCP契約を結んでいる。BCP契約とは、例えば、予め定められたBCP時には、電力使用量を契約電力の50%以内に抑えるといった内容などを含む契約である。このような契約内容の中で、BCP時での予め上限値が設定された電力をBCP電力(BCP契約電力とも言う)と呼び、BCP時に使用される電力量をBCP電力量と呼ぶこととする。例えば、BCP契約が電力使用量を契約電力の50%以内に抑えるといった内容であれば、BCP電力は契約電力の50%となる。
【0013】
電力監視システム1には上述したBCPを実現すべく、BCP用PLC盤5が設けられている。BCP用PLC盤5は、発電機共通制御盤4に接続されている。BCP用PLC盤5は、発電機共通制御盤4から電力逼迫の警報信号を取得するようになっている。BCP用PLC盤5には信号処理装置9が接続されており、BCP用PLC盤5は、発電機共通制御盤4から受け取った電力逼迫の警報信号を、信号処理装置9に送るように構成されている。
【0014】
BCP用PLC盤5は、統合ネットワーク7を介して複数の需要家の受電PLC盤6と接続されている。BCP用PLC盤5は、統合ネットワーク7を介して複数の需要家の受電PLC盤6から、需要家がBCP時に使用したBCP電力量を収集するようになっている。
【0015】
BCP用PLC盤5には信号処理装置9が接続されている。信号処理装置9は統合ネットワーク7に接続されている。すなわち、統合ネットワーク7には、BCP用PLC盤5と、受電PLC盤6と、信号処理装置9とが接続されていることになる。受電PLC盤6は、各需要家が有するものであり、統合ネットワーク7を介して各需要家のBCP電力量をBCP用PLC盤5及び信号処理装置9に送る。
【0016】
信号処理装置9は、統合ネットワーク7を介して受電PLC盤6から各需要家が使用したBCP電力量を収集すると共に、BCP用PLC盤5から電力逼迫の警報信号を取得するようになっている。信号処理装置9には、スイッチハブ12を介して、電力監視サーバ盤13及び表示装置14が接続されている。信号処理装置9は、BCP用PLC盤5から取得した電力逼迫の警報信号をスイッチハブ12を介して表示装置14に出力するようになっている。
【0017】
また、信号処理装置9は、各需要家のBCP電力量が予め設定された上限値を超過した場合に、BCP電力超過の警報信号を出力するようになっている。すなわち、本実施形態では、信号処理装置9をBCP電力超過警報出力部とする。信号処理装置9は、BCP電力超過の警報信号を、表示装置14に出力すると共に、電力監視サーバ盤13や所定の通信手段を介して各需要家側に出力する。各需要家側に出力されたBCP電力超過の警報信号は、各需要家側に設けられた所定の表示部の表示画面上に表示される。
【0018】
信号処理装置9は、BCP電力超過の度合に応じてBCP電力超過の警報信号を多段階に出力するようになっている。具体的には、信号処理装置9は、各需要家のBCP電力量が予め設定された上限値として、各需要家の使用電力量の契約電力45%を設定する。BCP電力の上限値を契約電力の45%としたということは、各需要家がBCP電力を契約電力の50%と規定していることを前提として、BCP電力超過の警報信号の出力タイミングがBCP電力の90%到達時点であることを意味している。
【0019】
信号処理装置9は、BCP電力の上限値を超過した場合に、BCP電力超過の警報信号を、表示装置14に出力すると共に、BCP電力の上限値を超過した需要家に対して出力する。ここでのBCP電力超過の警報信号は、信号が出力されている需要家においてBCP電力超過が起きているといった事実を示す信号である。
【0020】
また、信号処理装置9は、BCP電力量がBCP電力(契約電力の50%)を超過した需要家が、所定の時間を経過してもBCP電力の超過状態を解消していない場合には、当該需要家による使用電力の自主抑制がなされなかったと判断する。このとき、信号処理装置9は、BCP電力超過の警報信号として、注意喚起警報信号を、表示装置14及び特定エリアに属する全ての需要家に対して出力する。
【0021】
ここでいう注意喚起警報信号とは、BCP電力超過が起きているといった事実を単に示すような信号ではなく、警戒度を高めて、BCP電力量の抑制を促すようにした信号である。なお、信号処理装置9から出力される注意喚起警報信号も、上記BCP電力超過の警報信号と同じく、電力監視サーバ盤13や所定の通信手段を介して需要家側に出力され、各需要家側に設けられた所定の表示部の表示画面上に表示される。
【0022】
また、信号処理装置9の内部には、電力値演算部10と、超過比率算出部11とが設けられている。電力値演算部10は、需要家の受電PLC盤6から各需要家が使用した電力量を収集して単位時間当たりのカウント値で各需要家の電力値を演算する部分である。電力値演算部10における演算周期は任意であって、例えば1~99分の中で自由に設定可能である。超過比率算出部11は、予め設定された設定遮断容量に対する需要家の電力値の比率を超過比率として算出する部分である。
【0023】
信号処理装置9に接続された表示装置14は、信号処理装置9から電力逼迫の警報信号及びBCP電力超過の警報信号を受け取り、これらの警報信号に基づいて、警報を表示する装置である。表示装置14は、信号処理装置9から電力逼迫の警報信号を受け取ると、この警報信号に基づいて電力逼迫警報を表示する。
【0024】
例えば、表示装置14は、発電機2が定格容量の90%以上であり、電力逼迫の警報信号として軽故障信号を受け取った場合に、電力逼迫の警報として「需給逼迫注意警報(軽故障)」という表示を表示画面上に発報する。また、表示装置14は、発電機2が定格容量の95%以上であり、電力逼迫の警報信号として重故障信号を受け取った場合に、電力逼迫の警報として「需給逼迫注意警報(重故障)」という表示を表示画面上に発報する。電力監視システム1の管理者はこのような表示装置14の表示を見て特定エリア内の電力需要を監視するようになっている。
【0025】
図3は、表示装置14におけるBCP電力需要逼迫監視画面の一例である。この画面では、画面の左側に、第1の実施形態におけるBCP電力需要逼迫監視動作のフローが図示されている。
図3の画面では、フローの左側の処理で需要家側の電力状況を把握できるように、フローの左側の下側に「需要家側の電力状況把握」という表示がなされており、フローの右側の処理で配電側の電力状況を把握できるように、フローの右側の下側に「配電側の電力状況把握」という表示がなされている。また、画面の右上側には、需要家リスト、各需要家のBCP契約電力、使用電力演算結果及び超過比率の一覧表示が表示される。
【0026】
また、信号処理装置9には、遮断部15が接続されている。遮断部15は、発電機2が定格容量の95%以上である場合に、需要家の系統を強制遮断する。このとき、遮断部15は、設定遮断容量、例えば契約電力の50%の容量に対して、各需要家が使用する電力値の比率である超過比率が、最も大きい需要家の系統から順に、需要家の系統を強制遮断するようになっている。
【0027】
[作用]
図4のフロー図を用いて、第1の実施形態におけるBCP電力需要逼迫監視動作について説明する。ステップ01で系統側電力が停電すると、特定エリアの電力ネットワークは、既存の電力会社による電力系統と切り離されて独立運転へ移行し(ステップ02)、独立運転を開始して(ステップ03)、ステップ04及びステップ08に移行する。フローの左側であるステップ04~07の処理の流れは、需要家側の電力状況を示すものであり、フローの右側のステップ08~11の処理の流れは、配電側の電力状況を示すものである。
【0028】
ステップ04では、信号処理装置9は各需要家のBCP電力量が契約電力の45%を超過したか否かを判断する。契約電力の45%を超過した場合には(ステップ04のYes)、信号処理装置9は契約電力の45%を超過した需要家に対してBCP電力超過の警報信号を出力する(ステップ05)。前述したように、契約電力の45%という数値は、各需要家がBCP時に電力使用量を契約電力の50%以内に抑える契約を結んでおり、BCP電力超過の警報信号の出力タイミングは、その90%到達時点であることから導かれている。
【0029】
ステップ06では、信号処理装置9は、所定時間経過後に、BCP電力量が契約電力の45%を超過した需要家が、使用電力量を自主的に抑制したか否かを判断する。需要家のBCP電力量が契約電力の45%以下となった場合には(ステップ06のYes)、需要家によるBCP電力量の自主抑制がなされたとして、ステップ04に戻る。
【0030】
一方、需要家のBCP電力量が契約電力の45%を超過する状態が継続している場合には(ステップ06のNo)、需要家によるBCP電力量の自主抑制が実施されていないとして、ステップ07に移行する。ステップ07では、信号処理装置9は、BCP電力超過の警報信号として、使用電力量の抑制を促す注意喚起警報信号を、表示装置14及び特定エリアに属する全ての需要家へ出力する。
【0031】
独立運転開始後、ステップ08では、発電機共通制御盤4は、発電機2が定格容量の90%以上であるか否かを判断する。発電機2が定格容量の90%以上であれば(ステップ08のYes)、発電機共通制御盤4は、電力逼迫の警報信号として軽故障信号を出力して、継続監視を行う(ステップ09)。このとき、表示装置14は、電力逼迫の警報として「需給逼迫注意警報(軽故障)」という表示を表示画面上に発報する。
【0032】
続いて、ステップ10では、発電機共通制御盤4は、発電機2が定格容量の95%以上であるか否かを判断する。発電機2が定格容量の95%未満であれば(ステップ10のNo)、ステップ08に戻る。また、発電機2が定格容量の95%以上であれば(ステップ10のYes)、発電機共通制御盤4は、電力逼迫の警報信号として重故障信号を出力して、表示装置14は、電力逼迫の警報として「需給逼迫注意警報(重故障)」という表示を表示画面上に発報する。さらに、契約電力の50%に対して各需要家のBCP電力の比率が最も大きい需要家の系統から順に、遮断部15が強制遮断を行う。
【0033】
[効果]
以上のような第1の実施形態に係る電力監視システム1の効果は、次の通りである。
(1)電力監視システム1では、需要家に電力供給を行う発電機2と、電力逼迫の警報信号を出力する発電機共通制御盤4と、BCP電力超過の警報信号を出力する信号処理装置9と、電力逼迫の警報信号及びBCP電力超過の警報信号に基づいて警報を表示する表示装置14と、を備えている。
【0034】
このような電力監視システム1では、特定エリアの電力逼迫状態及び需要家のBCP電力量に基づいて警報信号を出力し、警報信号に応じた警報を表示装置14に表示することができる。そのため、災害などにより特定エリア内の電力が逼迫した場合に、電力監視システム1の管理者は表示装置14の表示に基づいて需要家の自主的な電力抑制を促すことができ、電力逼迫状態を確実に回避することができる。これにより、BCP時の特定エリアにあって全域停電を防ぐことが可能となり、信頼性が向上する。
【0035】
(2)第1の実施形態に係る電力監視システム1では、信号処理装置9がBCP電力超過の警報信号を、BCP電力の上限値を超過した需要家に出力するので、需要家の自主的な電力抑制を効率良く促すことができる。
【0036】
(3)信号処理装置9は、所定の時間を経過してもBCP電力の超過状態が解消されない場合には、BCP電力の抑制を促す注意喚起警報信号を表示装置14に出力する。そのため、電力監視システム1は、表示装置14に表示される警報により電力監視システム1の管理者に対しBCP電力超過状態にある需要家が特定エリア内に存在することを知らせることができる。
【0037】
注意喚起警報信号を受け取った電力監視システム1の管理者は、注意喚起警報信号に基づいて、BCP電力を抑制するように、BCP電力の超過状態にある需要家に対して直接、連絡を取ることができる。さらに、電力監視システム1では、信号処理装置9が注意喚起警報信号を、特定エリアに属する全ての需要家に対して出力するので、他の需要家からの圧力などによっても、BCP電力の超過状態にある需要家は使用電力量の抑制を促されることが期待される。
【0038】
(4)信号処理装置9は、電力値演算部10を備えたので、単位時間当たりのカウント値で各需要家が使用したBCP電力値を演算することができ、特定エリアの中に、電圧系統の異なる需要家が混在していたとしても、各需要家が使用するBCP電力量を正確に把握することができる。従って、電力監視システム1の管理者が需要家に対してBCP電力量の抑制を求める際に、公平性を維持することができる。これにより、電力抑制を効率良く進めることができ、特定エリアでの電力逼迫状態の回避を容易に実現することが可能となる。
【0039】
(5)信号処理装置9は、超過比率算出部11を備えているので、予め設定された設定遮断容量に対する需要家の超過比率を迅速に把握することができ、電力監視システム1の管理者は、各需要家でのBCP電力の超過状態に応じて、BCP電力量の抑制量の最適化を図りつつ、BCP電力量の抑制を求めることができる。従って、BCP電力量の抑制による影響を最小限に抑えることができ、特定エリアでの電力逼迫状態を安定して回避することが可能である。
【0040】
(6)本実施形態では、電力逼迫警報出力部である発電機共通制御盤4は、電力逼迫状態の度合に応じて電力逼迫の警報信号を二段階で出力している。すなわち、発電機2が定格容量の90%であれば電力逼迫の警報信号として「軽故障信号」を出力し、発電機2が定格容量の95%であれば電力逼迫の警報信号として「重故障信号」を出力している。そして表示装置14は、これら注意喚起度の異なる警報を表示する。そのため、電力監視システム1の管理者は特定エリア内の需要者に対し、段階を踏んでBCP電力量の抑制を呼びかけることができ、特定エリアでの電力逼迫状態をスムーズに回避することが可能である。
【0041】
(7)BCP電力超過警報出力部である信号処理装置9もまた、BCP電力超過の度合に応じてBCP電力超過の警報信号を二段階で出力している。すなわち、各需要家のBCP電力量が契約電力の45%を超過すると、まず、BCP電力超過を超過しているという事実を伝える旨の信号を出力する。
【0042】
そして、BCP電力を超過した需要家が所定の時間を経過してもBCP電力の超過状態を解消していない場合に限り、信号処理装置9は注意喚起警報信号を表示装置14に出力し、表示装置14が注意喚起警報を表示する。そのため、電力監視システム1の管理者は、特定エリア内の需要者に対し使用電力量の抑制をきめ細かく呼びかけることができ、この点からも特定エリアでの電力逼迫状態をスムーズに回避することが可能である。
【0043】
(8)さらに、本実施形態では、遮断部15を備えたことで、BCP電力超過の警報信号に基づいて需要家の系統を強制遮断することも可能であり、特定エリアでの電力逼迫状態を回避して、全域停電を確実に防ぐことができる。しかも、遮断部15は、予め設定された設定遮断容量に対する超過比率が大きい順に、需要者の系統を強制遮断するため、特定エリアでの電力逼迫状態を効率良く回避することが可能である。
【0044】
(他の実施形態)
上記の実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。すなわち、本発明の実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0045】
例えば、遮断部15は、特定エリア内での電圧系統の小さい方から順次遮断するようにしてもよい。このような実施形態によれば、特定エリア内の系統安定度を保つことができ、優れた信頼性を発揮することができる。また、電力逼迫の警報信号を出力する際の発電機2の運転状態としては、発電機2が定格容量の90%あるいは95%であることに限定されない。さらに、電力超過の警報信号を出力する際のBCP電力の上限値も契約電力の45%に限らず、適宜変更可能である。
【0046】
表示装置14において、電力逼迫の警報信号及びBCP電力超過の警報信号に基づいて発報される警報の表示形態も適宜選択可能であり、例えば、
図3に示した表示画面例において、超過比率の最も大きな需要家が赤くフリッカ表示されても良い。また、
図3の表示画面の中に、「需給逼迫注意警報(軽故障)」や「需給逼迫注意警報(重故障)」という表示を発報するようにしても良い。遮断部15にて需要家の系統を強制遮断する場合には、当該需要家に対して直接、使用電力量の抑制を呼びかけた後、立ち入りによって強制遮断を行うようにしてもよい。
【0047】
信号処理装置9や、そこに含まれる電力値演算部10や超過比率算出部11などの構成要素は、各処理を実現する回路としても構成可能である。また、上記の各部は、ハードウェアでの処理範囲やプログラムを含むソフトウェアでの処理範囲に関しても適宜設定可能であり、特定の態様に限定されない。また、上記の実施形態では、BCP用PLC盤5を組み込み、BCP時での電力需要を監視するようにしているが、特定エリアにおいて通常時の電力需要を監視する電力監視システムに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…電力監視システム
2…発電機
3…各発電機制御盤
4…発電機共通制御盤
5…BCP用PLC盤
6…受電PLC盤
7…統合ネットワーク
9…信号処理装置
10…電力値演算部
11…超過比率算出部
12…スイッチハブ
13…電力監視サーバ盤
14…表示装置
15…遮断部