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特許7123595磁気共鳴イメージング装置および医用処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置および医用処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20220816BHJP
【FI】
A61B5/055 376
A61B5/055 311
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018057742
(22)【出願日】2018-03-26
(65)【公開番号】P2018167025
(43)【公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2017065511
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】玉田 大輝
(72)【発明者】
【氏名】田村 昂広
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/063654(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/124375(WO,A1)
【文献】特開2013-017811(JP,A)
【文献】特開2015-000161(JP,A)
【文献】特開2006-025845(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0111203(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00 -24/14
G01R 33/20 -33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
k空間における一つのラジアル方向に沿って前記k空間における原点を跨いで第1収集方向で第1スキャンを実行し、前記ラジアル方向に沿って前記原点を跨いで前記第1収集方向に対向する第2収集方向で第2スキャンを実行し、前記k空間への磁気共鳴信号の充填に関する第3スキャンを実行するシーケンス制御部と、
前記第1スキャンにより収集された第1磁気共鳴信号に対して前記ラジアル方向についての1次元フーリエ変換を適用することにより第1投影画像を生成し、前記第2スキャンにより収集された第2磁気共鳴信号に対して前記1次元フーリエ変換を適用することにより第2投影画像を生成する生成部と、
前記第1投影画像と前記第2投影画像との差分を小さくする計算処理によりリードアウト傾斜磁場の過渡応答特性に関する補正係数を決定する決定部と、
前記第3スキャンにより収集された前記磁気共鳴信号と前記補正係数とを用いて前記過渡応答特性を補正した補正画像を生成する補正部と、
を具備する磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記シーケンス制御部は、
前記ラジアル方向を含む複数のラジアル方向各々に沿って前記第1スキャンを実行し、前記複数のラジアル方向各々に沿って前記第2スキャンを実行し、
前記生成部は、
前記複数のラジアル方向にそれぞれ対応し、前記第1投影画像を含む複数の第1投影画像を生成し、
前記複数のラジアル方向にそれぞれ対応し、前記第2投影画像を含む複数の第2投影画像を生成し、
前記決定部は、
前記複数のラジアル方向各々について前記差分を計算することにより生成された複数の差分を小さくする計算処理により前記補正係数を決定する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記シーケンス制御部は、
前記k空間において、前記第1スキャンの開始地点と前記第2スキャンの開始地点とが前記原点に対して対称となるように、前記第1スキャンと前記第2スキャンとを実行する、
請求項1または2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記シーケンス制御部は、
前記k空間において、前記第1スキャンの終了地点と前記第2スキャンの終了地点とが前記原点に対して対称となるように、前記第1スキャンと前記第2スキャンとを実行する、
請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
k空間における第1のサンプリング点に配置された磁気共鳴信号を用いて第1画像を生成し、前記第1のサンプリング点と比較して異なるまたは同数であって、前記k空間における前記第1のサンプリング点とは異なる位置の第2のサンプリング点に配置された磁気共鳴信号を用いて第2画像を生成する生成部と、
前記第1画像と前記第2画像との差分を小さくする計算処理により、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性に関する補正係数を決定する決定部と、
前記第1画像における前記過渡応答特性の影響を補正した補正画像を、前記補正係数を用いて生成する補正部と、を具備し、
前記リードアウト傾斜磁場は、前記k空間においてラジアル方向に沿って前記磁気共鳴信号を収集するラジアル収集に用いられる傾斜磁場であって、
前記磁気共鳴信号は、前記k空間において、前記ラジアル方向に沿って配置され、
前記第2のサンプリング点は、前記ラジアル方向に沿って配置される前記磁気共鳴信号に関する前記第1のサンプリング点のうち、前記リードアウト傾斜磁場の印加期間における前記リードアウト傾斜磁場の強度の立ち上がり期間を除く期間に含まれるサンプリング点である、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
k空間における第1のサンプリング点に配置された磁気共鳴信号を用いて第1画像を生成し、前記第1のサンプリング点と比較して異なるまたは同数であって、前記k空間における前記第1のサンプリング点とは異なる位置の第2のサンプリング点に配置された磁気共鳴信号を用いて第2画像を生成する生成部と、
前記第1画像と前記第2画像との差分を小さくする計算処理により、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性に関する補正係数を決定する決定部と、
前記第1画像における前記過渡応答特性の影響を補正した補正画像を、前記補正係数を用いて生成する補正部と、を具備し、
前記第2のサンプリング点は、前記第1のサンプリング点のうち、前記リードアウト傾斜磁場の印加期間における前記リードアウト傾斜磁場の強度の立ち上がり期間と前記強度の立ち下がり期間とのうち少なくとも一方の期間を除く期間に含まれるサンプリング点である、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
k空間における第1のサンプリング点に配置された磁気共鳴信号を用いて第1画像を生成し、前記第1のサンプリング点と比較して異なるまたは同数であって、前記k空間における前記第1のサンプリング点とは異なる位置の第2のサンプリング点に配置された磁気共鳴信号を用いて第2画像を生成する生成部と、
前記第1画像と前記第2画像との差分を小さくする計算処理により、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性に関する補正係数を決定する決定部と、
前記第1画像における前記過渡応答特性の影響を補正した補正画像を、前記補正係数を用いて生成する補正部と、を具備し、
前記第1のサンプリング点に配置された磁気共鳴信号と前記第2のサンプリング点に配置された磁気共鳴信号とは、ラジアル収集により収集される、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記第2のサンプリング点は、前記過渡応答特性による影響が少ないサンプリング点である、
請求項5乃至7のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記リードアウト傾斜磁場は、前記k空間においてラジアル方向に沿って前記磁気共鳴信号を収集するラジアル収集に用いられる傾斜磁場であって、
前記磁気共鳴信号は、前記k空間において、前記ラジアル方向に沿って配置され、
前記第2のサンプリング点は、前記ラジアル方向に沿って配置される前記磁気共鳴信号に関する前記第1のサンプリング点のうち、前記リードアウト傾斜磁場の印加期間における前記リードアウト傾斜磁場の強度の立ち上がり期間を除く期間に含まれるサンプリング点である、
請求項6乃至8のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記第2のサンプリング点は、前記第1のサンプリング点のうち、前記リードアウト傾斜磁場の印加期間における前記リードアウト傾斜磁場の強度の立ち上がり期間と前記強度の立ち下がり期間とのうち少なくとも一方の期間を除く期間に含まれるサンプリング点である、
請求項5、7及び8のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記生成部は、
パルスシーケンスに応じた前記リードアウト傾斜磁場の波形と前記リードアウト傾斜磁場の発生に関する少なくとも一つの傾斜磁場コイルの過渡応答とに基づく前記過渡応答特性の初期条件と、前記第1のサンプリング点に配置された磁気共鳴信号とを用いて、前記第1画像を生成し、
前記決定部は、
前記差分に基づいて計算された二乗平均平方根が小さくなるように前記過渡応答特性を更新することにより、前記補正係数を決定する、
請求項5乃至10のうちいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記補正部は、前記第1のサンプリング点により規定される第1範囲と前記第2のサンプリング点により規定される第2範囲との重複範囲に含まれるサンプリング点を第1のサンプリング点から除いた他のサンプリング点の位置を前記補正係数に従って前記k空間において補正することにより、前記補正画像を生成する、
請求項5乃至11のうちいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
k空間における一つのラジアル方向に沿って前記k空間における原点を跨いで第1収集方向で収集された第1磁気共鳴信号に対して、前記ラジアル方向についての1次元フーリエ変換を適用することにより第1投影画像を生成し、前記ラジアル方向に沿って前記原点を跨いで前記第1収集方向に対向する第2収集方向で収集された第2磁気共鳴信号に対して前記1次元フーリエ変換を適用することにより第2投影画像を生成する生成部と、
前記第1投影画像と前記第2投影画像との差分を小さくする計算処理によりリードアウト傾斜磁場の過渡応答特性に関する補正係数を決定する決定部と、
前記k空間への磁気共鳴信号の充填に関するスキャンにより収集された磁気共鳴信号と前記補正係数とを用いて前記過渡応答特性を補正した補正画像を生成する補正部と、
を具備する医用処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置および医用処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング装置は、磁気共鳴信号の収集の際に、リードアウト傾斜磁場を傾斜磁場コイルに印加する。リードアウト傾斜磁場は、一定の強度で傾斜磁場コイルに印加される必要がある。しかしながら、傾斜磁場コイルの過渡応答によって、その波形が歪むことがある。このとき、収集された磁気共鳴信号の位相(スピンの核磁化の位相)が歪む、すなわちk空間に配置される磁気共鳴信号の座標点がずれることがある。
【0003】
例えば、被検体の動きに対して頑強性を有するスキャンとして、ラジアルスキャンがある。しかしながら、ラジアルスキャンにおける磁気共鳴信号では、k空間の低周波領域から磁気共鳴信号の収集を行うため、位相歪みによる影響を受けやすい問題がある。
【0004】
この位相歪みを解決する方法として、プリスキャンを用いて位相歪みを補正する方法、および磁気共鳴イメージング装置の据え付け時において位相歪みに関するキャリブレーションを行う方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第7098662号明細書
【文献】特開2013-46837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明が解決しようとする課題は、アーチファクトを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、シーケンス制御部と、生成部と、決定部と、補正部とを有する。前記シーケンス制御部は、k空間における一つのラジアル方向に沿って前記k空間における原点を跨いで第1収集方向で第1スキャンを実行し、前記ラジアル方向に沿って前記原点を跨いで前記第1収集方向に対向する第2収集方向で第2スキャンを実行し、前記k空間への磁気共鳴信号の充填に関する第3スキャンを実行する。前記生成部は、前記第1スキャンにより収集された第1磁気共鳴信号に対して前記ラジアル方向についての1次元フーリエ変換を適用することにより第1投影画像を生成し、前記第2スキャンにより収集された第2磁気共鳴信号に対して前記1次元フーリエ変換を適用することにより第2投影画像を生成する。前記決定部は、前記第1投影画像と前記第2投影画像との差分を小さくする計算処理によりリードアウト傾斜磁場の過渡応答特性に関する補正係数を決定する。前記補正部は、前記第3スキャンにより収集された前記磁気共鳴信号と前記補正係数とを用いて前記過渡応答特性を補正した補正画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成の一例を示す図である。
図2図2は、本実施形態において、k空間に配置されたMR信号の一例を示す図である。
図3図3は、本実施形態において、k空間の低周波領域から非対称な角度で実行されたラジアル収集の一例を示す図である。
図4図4は、本実施形態において、リードアウト傾斜磁場の理想的な強度の波形と、実際に発生されるリードアウト傾斜磁場の強度の波形との一例を示す図である。
図5図5は、本実施形態において、リードアウト傾斜磁場の強度の波形の歪みがk空間でのリードアウト方向に沿ったサンプリング点に影響を及ぼす一例を示す図である。
図6図6は、本実施形態において、リードアウト傾斜磁場の波形と、リードアウト傾斜磁場の波形の変化を示す立ち上がり条件との一例を示す図である。
図7図7は、本実施形態のk空間において、一部のサンプリング点に対応する一部のMR信号の配置の一例を示す図である。
図8図8は、本実施形態における動作の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、本実施形態の第1応用例において、k空間における第1スキャンと第2スキャンとの一例を示す図である。
図10図10は、本実施形態の第1応用例における動作の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、本実施形態の第2応用例において、k空間での一つのラジアル方向に沿った第1スキャンと第2スキャンとの一例を示す図である。
図12図12は、本実施形態の第2応用例において、2つのラジアル方向としてky=0の軸およびkx=0の軸各々において、第1スキャンおよび第2スキャンの収集軌跡の一例を示す図である。
図13図13は、本実施形態の第2応用例における動作の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図14図14は、本実施形態の第2応用例におけるサンプリング区間において、第1スキャンに関する第1MR信号の波形と、理想的なMR信号の波形との一例を示す図である。
図15図15は、本実施形態の第2応用例におけるサンプリング区間において、第2スキャンに関する第2MR信号の波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を用いて、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置を詳細に説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0010】
図1を用いて、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング(Magnetic resonance imaging:以下、MRIと呼ぶ)装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るMRI装置100の構成を示す図である。同図に示すように、本実施形態に係るMRI装置100は、静磁場磁石101と、傾斜磁場コイル103と、傾斜磁場電源105と、寝台107と、寝台制御回路109と、送信コイル113と、送信回路(送信部)115と、受信コイル117と、受信回路(受信部)119と、シーケンス制御回路(シーケンス制御部)121と、バス123と、インタフェース回路(入力部)125と、ディスプレイ(表示部)127と、記憶装置(記憶部)129と、処理回路(処理部)131とを備える。なお、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場磁石101と傾斜磁場コイル103との間において中空の円筒形状のシムコイルを有していてもよい。
【0011】
静磁場磁石101は、中空の円筒、形状に形成された磁石であり、内部の空間に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石101としては、例えば、超伝導磁石等が使用される。
【0012】
傾斜磁場コイル103は、中空の円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石101の内側に配置される。傾斜磁場コイル103は、互いに直交するX、Y、Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成される。Z軸方向は、静磁場と同じ方向であるとする。また、Y軸方向は、鉛直方向とし、X軸方向は、Z軸及びY軸に垂直な方向とする。傾斜磁場コイル103における3つのコイルは、傾斜磁場電源105から個別に電流供給を受けて、X、Y、Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。
【0013】
ここで、傾斜磁場コイル103によって発生するX、Y、Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場、位相エンコード用傾斜磁場および周波数エンコード用傾斜磁場(リードアウト傾斜磁場ともいう)にそれぞれ対応している。スライス選択用傾斜磁場は、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場は、空間的位置に応じて磁気共鳴(Magnetic resonance:以下、MRと呼ぶ)信号の位相を変化させるために利用される。周波数エンコード用傾斜磁場は、空間的位置に応じてMR信号の周波数を変化させるために利用される。
【0014】
傾斜磁場電源105は、シーケンス制御回路121の制御により、傾斜磁場コイル103に電流を供給する電源装置である。
【0015】
寝台107は、被検体Pが載置される天板1071を備えた装置である。寝台107は、寝台制御回路109による制御のもと、被検体Pが載置された天板1071を、ボア111内へ挿入する。通常、寝台107は、長手方向が静磁場磁石101の中心軸と平行になるように、本磁気共鳴イメージング装置100が設置された検査室内に設置される。
【0016】
寝台制御回路109は、寝台107を制御する回路であり、例えばプロセッサにより実現される。寝台制御回路109は、インタフェース回路125を介した操作者の指示により寝台107を駆動し、天板1071を長手方向および上下方向へ移動する。
【0017】
送信コイル113は、傾斜磁場コイル103の内側に配置されたRF(Radio Frequency)コイルである。送信コイル113は、送信回路115から高周波パルス(RFパルス)の供給を受けて、高周波磁場に相当する送信RF波を発生する。送信コイルは、例えば、全身用コイル(whole body coil:WBコイル)である。WBコイルは、送受信コイルとして使用されてもよい。WBコイルと傾斜磁場コイル103との間には、これらのコイルを磁気的に分離するための円筒状のRFシールドが設置される。
【0018】
送信回路115は、シーケンス制御回路121の制御により、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信コイル113に供給する。具体的には、送信回路115は、発振部、位相選択部、周波数変換部、振幅変調部、高周波電力増幅部などを有する。発振部は、静磁場中における対象原子核に固有の共鳴周波数の高周波信号を発生する。位相選択部は、上記高周波信号の位相を選択する。周波数変換部は、位相選択部から出力された高周波信号の周波数を変換する。振幅変調部は、周波数変換部から出力された高周波信号の振幅を例えばsinc関数に従って変調する。高周波電力増幅部は、振幅変調部から出力された高周波信号を増幅する。これらの各部の動作の結果として、送信回路115は、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信コイル113に出力する。
【0019】
受信コイル117は、傾斜磁場コイル103の内側に配置されたRFコイルであり、高周波磁場によって被検体Pから放射されるMR信号を受信する。受信コイル117は、受信したMR信号を受信回路119へ出力する。受信コイル117は、例えば、1以上、典型的には複数のコイルエレメントを有するコイルアレイである。なお、図1において送信コイル113と受信コイル117とは別個のRFコイルとして記載されているが、送信コイル113と受信コイル117とは、一体化された送受信コイルとして実施されてもよい。送受信コイルは、例えば、被検体Pの撮像対象に対応し、頭部コイルのような局所的な送受信RFコイルである。
【0020】
受信回路119は、シーケンス制御回路121の制御により、受信コイル117から出力されたMR信号に基づいて、デジタル化された複素数データであるデジタルのMR信号(MRデータ)を生成する。具体的には、受信回路119は、受信コイル117から出力されたMR信号に対して、前置増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅、フィルタリング等の各種信号処理を施した後、各種信号処理が施されたデータに対してアナログ/デジタル(A/D(Analog to Digital))変換を実行する。受信回路は119は、A/D変換されたデータに対して標本化(サンプリング)を実行する。これにより、受信回路119は、デジタルのMR信号を生成する。デジタルのMR信号は、受信コイル117から出力されたMR信号に対するサンプリングに関する複数のサンプリング点各々に対応する。受信回路119は、生成したMR信号を、シーケンス制御回路121に出力する。受信回路119により生成されたMR信号は、生データとも呼ばれる。
【0021】
シーケンス制御回路121は、処理回路131から出力された撮像プロトコルに従って、傾斜磁場電源105、送信回路115及び受信回路119を制御し、被検体Pに対する撮像を行う。撮像プロトコルは、検査に応じた各種パルスシーケンスを有する。撮像プロトコルには、傾斜磁場電源105により傾斜磁場コイル103に供給される電流の大きさ、傾斜磁場電源105により電流が傾斜磁場コイル103に供給されるタイミング、送信回路115により送信コイル113に供給されるRFパルスの大きさ、送信回路115により送信コイル113にRFパルスが供給されるタイミング、受信コイル117によりMR信号が受信されるタイミング等が定義されている。傾斜磁場電源105により傾斜磁場コイル103に供給される電流の大きさは、パルスシーケンスに応じたリードアウト傾斜磁場の波形に対応する。
【0022】
例えば、パルスシーケンスが、k空間においてラジアル方向(スポーク)に沿ってMR信号が収集されるラジアル収集(ラジアルスキャン)である場合、シーケンス制御回路121は、リードアウト傾斜磁場として位相エンコード用傾斜磁場と周波数エンコード用傾斜磁場とを同時に発生させるように傾斜磁場電源105を制御する。加えて、シーケンス制御回路121は、送信コイル113への高周波パルスの印加毎に、位相エンコード用傾斜磁場の強度と周波数エンコード用傾斜磁場の強度とを変化させるように、傾斜磁場電源105を制御する。シーケンス制御回路121は、リードアウト傾斜磁場の発生とともに、MR信号を受信するために受信回路119を制御する。シーケンス制御回路121は、受信回路119から出力されたMR信号を、リードアウト傾斜磁場の強度およびラジアル方向とともに、処理回路131および記憶装置129に出力する。
【0023】
バス123は、インタフェース回路125と、ディスプレイ127と、記憶装置129と、処理回路131との間でデータが伝送する伝送路である。バス123には、ネットワーク等を介して、各種生体信号計測器、外部記憶装置などが適宜接続されてもよい。
【0024】
インタフェース回路125は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける回路である。インタフェース回路125は、例えば、マウス等のポインティングデバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスに関する回路である。なお、インタフェース回路125は、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品に関する回路に限定されない。例えば、本MRI装置100とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、受け取った電気信号を種々の回路へ出力するような電気信号の処理回路もインタフェース回路125の例に含まれる。
【0025】
ディスプレイ127は、処理回路131におけるシステム制御機能1311による制御のもとで、生成機能1315により再構成されたMR画像等の各種の情報を表示する。ディスプレイ127は、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイ、モニタ等の表示デバイスである。
【0026】
記憶装置129は、配置機能1313を介してk空間に配置(充填)されたMR信号、生成機能1315により生成された画像データ等を記憶する。記憶装置129は、各種撮像プロトコル、撮像プロトコルを規定する複数の撮像パラメータを含む撮像条件等を記憶する。記憶装置129は、処理回路131で実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。記憶装置129は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスクドライブ(hard disk drive)、ソリッドステートドライブ(solid state drive)、光ディスク等である。また、記憶装置129は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。
【0027】
処理回路131は、ハードウェア資源として図示していないプロセッサ、ROMやRAM等のメモリ等を有し、本MRI装置100を総括的に制御する。処理回路131は、システム制御機能1311、配置機能1313、生成機能1315、決定機能1317、補正機能1319を有する。システム制御機能1311、配置機能1313、生成機能1315、決定機能1317、補正機能1319は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶装置129へ記憶されている。処理回路131は、これら各種機能に対応するプログラムを記憶装置129から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読みだした状態の処理回路131は、図1の処理回路131内に示された各機能を有することになる。
【0028】
なお、図1においては単一の処理回路131にてこれら各種機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路131を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。換言すると、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つの処理回路が各プログラムを実行する場合であってもよいし、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。なお、処理回路131が有するシステム制御機能1311、配置機能1313、生成機能1315、決定機能1317、補正機能1319は、それぞれシステム制御部、配置部、生成部、決定部、補正部の一例である。
【0029】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0030】
プロセッサは記憶装置129に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶装置129にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、寝台制御回路109、送信回路115、受信回路119、シーケンス制御回路121等も同様に、上記プロセッサなどの電子回路により構成される。
【0031】
処理回路131は、システム制御機能1311により、MRI装置100を統括的に制御する。具体的には、処理回路131は、記憶装置129に記憶されているシステム制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開されたシステム制御プログラムに従って本MRI装置100の各回路を制御する。例えば、処理回路131は、システム制御機能1311により、インタフェース回路125を介して操作者から入力される撮像条件に基づいて、撮像プロトコルを記憶装置129から読み出す。なお、処理回路131は、撮像条件に基づいて、撮像プロトコルを生成してもよい。処理回路131は、撮像プロトコルをシーケンス制御回路121に送信し、被検体Pに対する撮像を制御する。
【0032】
処理回路131は、配置機能1313により、リードアウト傾斜磁場の強度に従ってk空間にMR信号を配置する。すなわち、処理回路131は、複数のサンプリング点各々に対応するMR信号を、リードアウト傾斜磁場の強度に従ってk空間に配置(充填)する。例えば、MR信号がラジアル収集により収集された場合、処理回路131は、自身のメモリまたは記憶装置129におけるk空間に対応する領域に、リードアウト傾斜磁場の強度に対応する間隔でラジアル方向に沿って、MR信号を配置する。
【0033】
図2は、k空間Kspに配置されたMR信号の一例を示す図である。図2に示すように、MR信号は、例えば、Ro1からRo2、Ro3、Ro4の順に、k空間Kspにおけるラジアル方向の角度θを変化させながら収集され、k空間Kspに配置される。なお、ラジアル収集は、図2に示すようにk空間Kspの端部から同一の角度θで収集されることに限定されず、撮像時間を短縮するために、k空間Kspの低周波領域から実行されてもよい。また、ラジアル収集における角度θは同一な角度に限定されず、非同一な角度でもよい。
【0034】
図3は、k空間Kspの低周波領域から非同一な角度θで実行されたラジアル収集の一例を示す図である。図3に示すように、MR信号は、k空間Kspの低周波領域から非同一な角度θにおけるラジアル方向に沿って配置される。
【0035】
処理回路131は、生成機能1315により、k空間に配置されたMR信号に対してフーリエ変換を行うことにより、MR画像を生成する。処理回路131は、MR画像を、ディスプレイ127や記憶装置129に出力する。処理回路131により実現される決定機能1317および補正機能1319については、後程詳述する。
【0036】
以上が、本実施形態に係るMRI装置100の全体構成についての説明である。まず、リードアウト傾斜磁場の強度を示す波形の歪みが、MR画像に及ぼす影響について説明する。続いて、本実施形態の詳細について説明する。以下、説明を具体的にするために、磁気共鳴信号の収集はラジアル収集で行われるものとする。なお、本実施形態におけるMR信号の収集はラジアル収集に限定されず、例えば、Cartesian収集、スパイラルのような非Cartesian収集などの任意の収集方法であってもよい。
【0037】
リードアウト傾斜磁場の強度の波形は、リードアウト傾斜磁場の発生に関する傾斜磁場コイル103の過渡応答により歪む。図4は、リードアウト傾斜磁場の理想的な強度Gro_idealの波形と、実際に発生されるリードアウト傾斜磁場の強度Groの波形とを示す図である。図4において、強度Groの立ち上がり期間TRRTと強度Groの立ち下がり期間TRDTとにおける強度Groの変化は、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性を示している。図4に示すように、強度Groの立ち上がり期間TRRTおよび強度Groの立ち下がり期間TRDTにおいて、強度Groの波形は、理想的な強度Gro_idealの波形に比べて歪んでいる。強度Groの波形の歪みは、k空間でのリードアウト方向に沿って配置されるMR信号の位置、すなわちサンプリング点に対応するk空間での座標に影響を及ぼす。
【0038】
図5は、リードアウト傾斜磁場の強度Groの波形の歪みがk空間でのリードアウト方向に沿ったサンプリング点に影響を及ぼす一例を示す図である。図5に示すように、理想的な強度Gro_idealの波形に基づくMR信号の位置Pidealは、リードアウト方向に沿って等間隔となる。一方、図5に示すように、実際に発生されるリードアウト傾斜磁場の強度Groの波形に基づくMR信号の位置Prealは、強度Groの立ち上がり期間TRRTおよび強度Groの立ち下がり期間TRDTにおいて、非等間隔となる。k空間におけるMR信号の位置(座標)のズレは、偽像(アーチファクト)を発生させる原因となる。以下、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性の決定、決定された過渡応答特性を用いてアーチファクトが低減されたMR画像の生成に関する構成要素および動作について説明する。
【0039】
記憶装置129は、パルスシーケンスに応じたリードアウト傾斜磁場の波形を記憶する。記憶装置129は、リードアウト傾斜磁場の発生に関する少なくとも一つの傾斜磁場コイル103の過渡応答とリードアウト傾斜磁場の波形とに基づく過渡応答特性の初期条件を記憶する。強度Groの立ち上がり期間TRRTにおけるリードアウト傾斜磁場の過渡応答特性は、立ち上がり期間TRRTにおける時間をt(0≦t<立ち上がり終了時刻)、補正係数をa、Tとして以下の式(1)で与えられる。補正係数aと補正係数Tとは、決定機能1317により決定される補正係数に相当する。
【0040】
【数1】
また、強度Groの立ち下がり期間TRDTにおけるリードアウト傾斜磁場の過渡応答特性は、立ち下がり期間TRDTにおける時間をt(リードアウト傾斜磁場の印加終了時刻<t≦リードアウト傾斜磁場がゼロになる時刻)として、以下の式(2)で与えられる。
【0041】
【数2】
立ち上がり期間TRRTにおける初期条件(以下、立ち上がり条件と呼ぶ)および立ち下がり期間TRDTにおける初期条件(以下、立ち下がり条件と呼ぶ)は、パルスシーケンスに応じたリードアウト傾斜磁場の波形における強度Gro_iniを補正係数aとして用いることに対応し、リードアウト傾斜磁場の発生に関する少なくとも一つの傾斜磁場コイル103の過渡応答に関する時定数Tを補正係数Tとして用いることに対応する。なお、初期条件として用いられる補正係数aと補正係数Tとは、上記強度Gro_iniおよび時定数Tに限定されず、任意の数値であってもよい。
【0042】
なお、記憶装置129は、決定機能1317で用いられる閾値を記憶してもよい。操作者の指示に応じてパルスシーケンスが設定されると、設定されたパルスシーケンスに応じた強度を用いた上記初期条件と、閾値とが、処理回路131により記憶装置129から読み出される。なお、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性の初期条件は、立ち上がり条件と立ち下がり条件とのうち少なくとも一方であってもよい。例えば、パルスシーケンスが図3に示すようなラジアルスキャンに関するパルスシーケンスである場合、k空間の低周波領域に関する位相歪みが主として偽像を発生させる原因となるため、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性の初期条件として、立ち上がり条件が用いられる。以下、本実施形態における効果がより顕著となる図3に示すようなラジアルスキャンが実施される場合について説明する。このとき、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性の初期条件として、立ち上がり条件と閾値とが、処理回路131に出力される。
【0043】
生成機能1315を実現する処理回路131は、被検体Pに対する撮像により収集され、k空間に配置された全てのMR信号を用いて、第1画像を生成する。具体的には、処理回路131は、立ち上がり条件と上記全てのMR信号を用いて、第1画像を生成する。なお、第1画像の生成に用いられるMR信号は、k空間に配置された全てのMR信号に限定されない。例えば、処理回路131は、k空間における第1のサンプリング点に配置されたMR信号を用いて第1画像を生成してもよい。すなわち、処理回路131は、パルスシーケンスに応じたリードアウト傾斜磁場の波形とリードアウト傾斜磁場の発生に関する少なくとも一つの傾斜磁場コイルの過渡応答とに基づく過渡応答特性の初期条件と、第1のサンプリング点に配置された磁気共鳴信号とを用いて、前記第1画像を生成してもよい。
【0044】
図6は、リードアウト傾斜磁場の波形と、リードアウト傾斜磁場の波形の変化を示す立ち上がり条件とを示す図である。立ち上がり条件において、リードアウト傾斜磁場の立ち上がり期間における強度Groの波形は、図6に示すような式で表される。図6における式は、式(1)において、補正係数aに強度Gro_iniを代入し、補正係数Tに時定数Tを代入した式である。
【0045】
生成機能1315を実現する処理回路131は、上記全てのMR信号のうち、複数のサンプリング点における一部のサンプリング点に対応する一部のMR信号を用いて第2画像を生成する。すなわち、処理回路131は、第1画像の生成において用いられたサンプリング点よりも少ないサンプリング点のMR信号を用いて第2画像を生成する。具体的には、生成機能1315を実現する処理回路131は、k空間における複数のサンプリング点のうち、過渡応答特性による画像への影響が少ないサンプリング点を、一部のサンプリング点として特定する。一部のサンプリング点は、例えば、立ち上がり開始時間から時定数Tの2倍、3倍等の定数倍の時間が経過した後のサンプリングである。なお、第2画像の生成に用いられるMR信号は、第1画像の生成において用いられたサンプリング点よりも少ないサンプリング点のMR信号に限定されない。例えば、処理回路131は、第1のサンプリング点と比較して異なるまたは同数であって、k空間における第1のサンプリング点とは異なる位置の第2のサンプリング点に配置されたMR信号を用いて第2画像を生成してもよい。このとき、第2のサンプリング点は、過渡応答特性による影響が少ないサンプリング点に相当する。
【0046】
図7は、k空間Kspにおいて、一部のサンプリング点に対応する一部のMR信号の配置の一例を示す図である。図7に示すように、k空間Kspにおいてラジアル方向に沿って配置されたMR信号は、図3におけるk空間においてラジアル方向に沿って配置されたMR信号に比べて、リードアウト傾斜磁場の立ち上がり期間におけるMR信号が取り除かれている。なお、一部のサンプリング点(第2のサンプリング点)は、リードアウト方向に沿って配置されたMR信号に関する複数のサンプリング点のうち、リードアウト傾斜磁場の印加期間における強度Groの立ち上がり期間と強度Groの立ち下がり期間とのうち少なくとも一方の期間を除く期間に含まれるサンプリング点であってもよい。処理回路131は、特定された一部のサンプリング点に対応する一部のMR信号を用いて、第2画像を生成する。第2画像は、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性の影響が少ない画像に相当する。
【0047】
決定機能1317を実現する処理回路131は、第1画像と前記第2画像との差分を小さくする計算処理により、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性に関する補正係数を決定する。例えば、処理回路131は、第1画像と第2画像との差分を最小化する計算処理により、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性に関する補正係数aと補正係数Tとを決定する。具体的には、処理回路131は、第1画像と第2画像との差分を計算することにより、差分画像を生成する。次いで、処理回路131は、差分画像における複数の画素値各々の二乗の和の平方根を計算する。すなわち、処理回路131は、第1画像における複数の画素値と第2画像における複数の画素値とに基づいて、コスト関数としての二乗平均平方根を計算する。処理回路131は、二乗平均平方根が最小となるように、すなわちコスト関数における値を最小化する計算処理により、補正係数aと補正係数Tとを決定する。上記計算処理は、例えば、非線形最適化に関する準ニュートン法などである。なお、上記計算処理は、準ニュートン法に限定されず、非線形最適化に関する任意の計算処理が用いられてもよい。処理回路131は、決定された補正係数aと補正係数Tとをパルスシーケンスおよびリードアウト傾斜磁場の波形と関連付けて、記憶装置129に記憶させる。
【0048】
補正機能1319を実現する処理回路131は、第1画像における過渡応答特性の影響を補正した補正画像を、補正係数を用いて生成する。具体的には、処理回路131は、k空間において、複数のサンプリング点のうち一部のサンプリング点を除く他のサンプリング点の位置を、補正係数に従って補正する。例えば、処理回路131は、第1のサンプリング点により規定される第1範囲と第2のサンプリング点により規定される第2範囲との重複範囲に含まれるサンプリング点を第1のサンプリング点から除いた他のサンプリング点の位置を補正係数に従ってk空間において補正する。次いで、処理回路131は、補正された他のサンプリング点の位置に対応する他のMR信号と、一部のサンプリング点に対応する一部のMR信号とを用いて、補正画像を生成する。処理回路131は、補正画像をディスプレイ127に出力する。
【0049】
なお、補正係数の決定において、第1画像が繰り返し生成される場合、補正機能1319を実現する処理回路131は、二乗平均平方根が閾値未満となった時点または二乗平均平方根が最小となった時点において生成された第1画像を、補正画像としてディスプレイ127に出力してもよい。また、処理回路131は、パルスシーケンスとリードアウト傾斜磁場の波形とに関連付けられた補正係数が記憶装置129に記憶されている場合、全てのMR信号と記憶された補正係数とを用いて、補正画像を生成する。
【0050】
(動作)
図8は、本実施形態における動作の処理手順の一例を示すフローチャートである。
(ステップSa1)
インタフェース回路125を介した操作者の指示により、例えば、ラジアル収集に関する撮像プロトコルが決定される。ラジアル収集により、MR信号が収集される。なお、撮像プロトコルにおけるパルスシーケンスとリードアウト傾斜磁場の波形とに関連付けられた補正係数aと補正係数Tとが記憶装置129に記憶されている場合、ステップSa5の処理が実行される。
【0051】
(ステップSa2)
k空間に充填された全てのMR信号と初期条件とを用いて、第1画像が生成される。好適には、第1画像の生成に用いられる初期条件は、図6に示す式で表される立ち上がり条件である。なお、初期条件として立ち上がり条件と立ち下がり条件とを用いる場合、第1画像は、補正係数aと補正係数Tとに強度Gro_iniと時定数Tとをそれぞれ代入した式(1)および式(2)と、k空間に充填された全てのMR信号とを用いて生成される。
【0052】
(ステップSa3)
k空間における複数のサンプリング点のうち、過渡応答特性による画像への影響が少ないサンプリング点を、一部のサンプリング点として特定する。より詳細には、一部のサンプリング点は、ラジアル方向に沿って配置されたMR信号に関する複数のサンプリング点のうち、リードアウト傾斜磁場の印加期間における強度Groの立ち上がり期間TRRTを除く期間に含まれるサンプリング点である。一部のサンプリング点は、例えば、図5において、リードアウト方向に沿って非等間隔なMR信号の位置Prealのうち立ち上がり期間TRRTに含まれるサンプリング点を除くサンプリング点に相当する。一部のサンプリング点に対応する一部のMR信号を用いて、第2画像が生成される。
【0053】
なお、初期条件として、立ち上がり条件に加えて立ち下がり条件が用いられる場合、一部のサンプリング点は、リードアウト方向に沿って配置されたMR信号に関する複数のサンプリング点のうち、立ち上がり期間TRRTと立ち下がり期間TRDTとの期間を除く期間に含まれるサンプリング点となる。また、第1画像の生成と第2画の生成との生成順序は、上記に限定されず、例えば、先に第2画像が生成され、次いで第1画像が生成されてもよい。このとき、ステップSa2の処理とステップSa3の処理とは処理の順番が逆となる。
【0054】
(ステップSa4)
第1画像と第2画像との差分を最小化する計算処理により、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性に関する補正係数aと補正係数Tとが決定される。具体的には、決定機能1317を実現する処理回路131は、二乗平均平方根と閾値と比較する。処理回路131は、二乗平均平方根が閾値以上である場合、立ち上がり条件における補正係数aと補正係数Tとの値を変更して、二乗平均平方根を再計算する。処理回路131は、例えば、k空間に配置された全てのMR信号と変更された補正係数aおよび補正係数Tとを用いて、第1画像を再度生成する。処理回路131は、再度生成した第1画像と第2画像とを用いて、二乗平均平方根を再計算する。処理回路131は、再計算された二乗平均平方根が閾値未満となるまで、補正係数aと補正係数Tとの値の更新を繰り返す。処理回路131による繰り返し処理により、処理回路131は、二乗平均平方根が閾値未満となった時点における補正係数aと補正係数Tを、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性を実現する補正係数として決定する。なお、処理回路131は、補正係数aと補正係数Tとの変化において二乗平均平方根が最小の値となった時点、または補正係数aと補正係数Tとの変化に対する二乗平均平方根の変化がゼロとなった時点における補正係数aと補正係数Tとを、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性を実現する補正係数として決定してもよい。
【0055】
(ステップSa5)
k空間において、一部のサンプリング点を除く他のサンプリング点の位置が、補正係数に従って補正される。具体的には、補正機能1319を実現する処理回路131は、決定された補正係数aと補正係数Tとを用いて、リードアウト方向に沿った他のサンプリング点の位置を決定する。処理回路131は、k空間において、決定した位置にMR信号を配置する。補正係数aと補正係数Tとを用いた他のサンプリング点の位置の補正は、例えば、図5において、リードアウト方向に沿って非等間隔なMR信号の位置Prealを、等間隔なMR信号の位置Pidealに補正することに対応する。本ステップSa5の処理により、k空間におけるサンプリング点に関する位相歪みが補正される。
【0056】
(ステップSa6)
第1画像における過渡応答特性を補正した補正画像が、補正された他のサンプリング点に対応する他のMR信号と、一部のサンプリング点に対応する一部のMR信号とを用いて生成される。生成された補正画像は、ディスプレイ127に表示される。
【0057】
以上に述べた構成によれば、以下に示す効果を得ることができる。
本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100によれば、複数のサンプリング点各々に対応するMR信号を、リードアウト傾斜磁場の強度に従ってk空間のリードアウト方向に沿って配置し、k空間に配置された全てのMR信号を用いて第1画像を生成し、全てのMR信号のうち、複数のサンプリング点において過渡応答特性による影響が少ない一部のサンプリング点に対応する一部のMR信号を用いて第2画像を生成し、第1画像と第2画像との差分を最小化する計算処理により、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性に関する補正係数を決定し、第1画像における過渡応答特性の影響を補正した補正画像を、補正係数を用いて生成することができる。
【0058】
また、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100によれば、k空間における第1のサンプリング点に配置された磁気共鳴信号を用いて第1画像を生成し、第1のサンプリング点と比較して異なるまたは同数であって、k空間における第1のサンプリング点とは異なる位置の第2のサンプリング点に配置された磁気共鳴信号を用いて第2画像を生成し、第1画像と第2画像との差分を小さくする計算処理により、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性に関する補正係数を決定し、第1画像における過渡応答特性の影響を補正した補正画像を、補正係数を用いて生成することができる。
【0059】
以上のことから、本磁気共鳴イメージング装置100によれば、被検体Pに対する本スキャンにより得られたMR信号を用いて位相歪みを補正すること、すなわちk空間における位相歪みを自己校正することができる。これにより、本磁気共鳴イメージング装置100によれば、位相歪みの補正に関するプリスキャンなどの追加の撮像が不要となるため、被検体Pに対する撮像フローを効率化することができる。加えて、本磁気共鳴イメージング装置100によれば、画像の再構成ごとに位相歪みを補正できるため、据え付け時における位相歪みのキャリブレーションが不良の場合であっても、位相歪みによる偽像(アーチファクト)を低減させた画像を生成することができる。特に、本磁気共鳴イメージング装置100によれば、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性によるアーチファクトが顕著になるラジアルスキャンにおいて、位相歪みによる偽像(アーチファクト)を効果的に低減させた画像を生成することができる。
【0060】
(第1応用例)
本実施形態との相違は、一つのラジアル方向に沿った第1スキャンと第2スキャンとにより、リードアウト傾斜磁場の過渡応答期間を含まない第1投影画像と過渡応答期間を含む第2投影画像とを生成し、第1投影画像と第2投影画像との差分を最小にするように、補正係数aと補正係数Tと決定することにある。リードアウト傾斜磁場の過渡応答期間とは、リードアウト傾斜磁場の強度Groの立ち上がり期間TRRTと、リードアウト傾斜磁場の強度Groの立ち下がり期間TRDTとのうち少なくとも一方に関する期間である。以下、説明を簡単にするために、リードアウト傾斜磁場の過渡応答期間は、リードアウト傾斜磁場の強度Groの立ち上がり期間TRRTとして説明する。なお、本応用例において、リードアウト傾斜磁場の過渡応答期間は、リードアウト傾斜磁場の強度Groの立ち下がり期間TRDTであってもよいし、立ち上がり期間TRRTと立ち下がり期間TRDTとの両者であってもよい。
【0061】
シーケンス制御回路121は、本スキャンにおける撮像プロトコルでのリードアウト傾斜磁場の波形およびバンド幅を用いて、本スキャン前に第1スキャンと第2スキャンとを実行する。具体的には、シーケンス制御回路121は、被検体Pに対して、k空間における一つのラジアル方向に沿った第1スキャンと第2スキャンとを実行する。より詳細には、シーケンス制御回路121は、第1スキャンにおけるリードアウト傾斜磁場が一定となる期間が第2スキャンにおけるリードアウト傾斜磁場の過渡応答期間TRRTを包含するように、第1スキャンと第2スキャンとを実行する。k空間において、第1スキャンのスキャン方向と第2スキャンのスキャン方向とは、好適には、互いに異なる。シーケンス制御回路121は、第1スキャン及び第2スキャンの実行後に、被検体Pに対して本スキャン(第3スキャン)を実行する。第1スキャンと第2スキャンとは、プリスキャンに対応する。
【0062】
図9は、k空間Kspにおける第1スキャンSca1と第2スキャンSca2との一例を示す図である。図9におけるラジアル方向RDは、第1スキャンSca1と第2スキャンSca2とにおけるスキャン方向を明示するために、幅を持たせて記載している。図9に示すように、第1スキャンSca1と第2スキャンSca2とは、一つのラジアル方向RDに沿って、互いに異なる方向に沿って実行される。図9に示すように、第2スキャンSca2におけるリードアウト傾斜磁場の過渡応答期間TRRTは、第1スキャンSca1においてリードアウト傾斜磁場が一定となる期間FIPEに包含される。
【0063】
受信コイル117は、第1スキャンSca1により被検体Pから放射される第1MR信号を受信する。受信コイル117は、第2スキャンSca1により被検体Pから放射される第2MR信号を受信する。受信コイル117は、第3スキャンにより被検体Pから放射される第3MR信号を受信する。
【0064】
受信回路119は、第1スキャンSca1の実行後において、第1スキャンSca1に対応するデジタル化された第1MR信号を生成する。受信回路119は、第2スキャンSca2の実行後において、第2スキャンSca2に対応するデジタル化された第2MR信号を生成する。受信回路119は、第3スキャンの実行後において、第3スキャンに対応するデジタル化された第3MR信号を生成する。
【0065】
生成機能1315を実現する処理回路131は、第2スキャンSca2の過渡応答期間TRRTにおける第1MR信号に対してラジアル方向RDについての1次元フーリエ変換を適用することにより、第1投影画像を生成する。処理回路131は、第2スキャンSca2の過渡応答期間TRRTにおける第2MR信号に対してラジアル方向RDについての1次元フーリエ変換を適用することにより、第2投影画像を生成する。第1投影画像および第2投影画像は、例えば、ラジアル方向RDに垂直な方向に沿ったレイ上のスピンの分布を、ラジアル方向RD平行な軸に投影した1次元の投影画像に相当する。
【0066】
決定機能1317を実現する処理回路131は、第1投影画像と第2投影画像との差分を最小化する計算処理により、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性に関する補正係数aと補正係数Tとを決定する。具体的には、処理回路131は、第1投影画像と第2投影画像との差分を計算することにより、差分画像を生成する。処理回路131は、第1投影画像における複数の画素値と第2投影画像における複数の画素値とに基づいて、コスト関数としての二乗平均平方根を計算する。処理回路131は、コスト関数の値が最小となるように、計算処理として準ニュートン法等を用いて、補正係数aと補正係数Tとを決定する。
【0067】
補正機能1319を実現する処理回路131は、第3MR信号と決定された補正係数とを用いて過渡応答特性を補正した補正画像を生成する。具体的には、処理回路131は、k空間において、第3MR信号に関する複数のサンプリング点のうち過渡応答期間TRRTに含まれるサンプリング点の位置を、補正係数に従って補正する。次いで、処理回路131は、補正されたサンプリング点の位置に対応する第3MR信号と、過渡応答期間TRRTに含まれないサンプリング点の位置に対応する第3MR信号とを用いて、第3スキャンに対応する補正画像を生成する。処理回路131は、補正画像をディスプレイ127に出力する。
【0068】
(動作)
図10は、本応用例における動作の処理手順の一例を示すフローチャートである。インタフェース回路125を介した操作者の指示により、第3スキャンに関する撮像プロトコルが決定される。
(ステップSb1)
決定された撮像プロトコルにおけるリードアウト傾斜磁場の波形およびバンド幅を用いて、図9に示すように第1スキャンSca1におけるリードアウト傾斜磁場が一定となる期間FIPEが低周波領域を含むように、第1スキャンSca1が実行される。第1スキャンSca1の実行により、第1MR信号が生成される。
【0069】
(ステップSb2)
決定された撮像プロトコルにおけるリードアウト傾斜磁場の波形およびバンド幅を用いて、図9に示すように第2スキャンSca2におけるリードアウト傾斜磁場の過渡応答期間TRRTが期間FIPEに含まれるように、第2スキャンSca2が実行される。第2スキャンSca2の実行により、第2MR信号が生成される。
【0070】
(ステップSb3)
ラジアル方向RDについての1次元フーリエ変換を第1MR信号に対して実行することにより、第1投影画像が生成される。第1投影画像は、過渡応答特性を含まない第1MR信号に関連する1次元の投影画像である。ラジアル方向RDについての1次元フーリエ変換を第2MR信号に対して実行することにより、第2投影画像が生成される。第2投影画像は、過渡応答特性を含む第2MR信号に関連する1次元の投影画像である。
【0071】
(ステップSb4)
第1投影画像と第2投影画像との差分を最小化する計算処理により、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性に関する補正係数aと補正係数Tとが決定される。過渡応答特性の決定手法は、ステップSa4と同様な処理なため、説明は省略する。
【0072】
(ステップSb5)
決定された撮像プロトコルを用いて、第3スキャンが実行され、第3MR信号が生成される。なお、第3スキャンにおけるスキャン方向は、ラジアルに限定されない。なお、ステップSb5の処理は、ステップSb1乃至Sb4のうちいずれの処理の前に実行されてもよい。
【0073】
(ステップSb6)
k空間において、第3MR信号に関する複数のサンプリング点のうち過渡応答期間TRRTに含まれるサンプリング点の位置が、補正係数に従って補正される。過渡応答期間TRRTに含まれるサンプリング点の位置の補正は、ステップSa5と同様な処理なため、説明は省略する。
【0074】
(ステップSb7)
補正されたサンプリング点の位置に対応する第3MR信号と、過渡応答期間TRRTに含まれないサンプリング点の位置に対応する第3MR信号とを用いて、第3スキャンに対応する補正画像が生成される。
【0075】
以上に述べた構成によれば、以下に示す効果を得ることができる。
本応用例に係る磁気共鳴イメージング装置100によれば、ラジアル方向RDに沿った第1スキャンSca1におけるリードアウト傾斜磁場が一定となる期間FIPEがラジアル方向RDに沿った第2スキャンSca2における過渡応答期間TRRTを包含するように、第1スキャンSca1及び第2スキャンSca2を実行し、これらのスキャンの実行後に第3スキャンを実行し、第1スキャンSca1に対応する第1MR信号に基づいて第1投影画像を生成し、第2スキャンSca2に対応する第2MR信号に基づいて第2投影画像を生成し、第1投影画像と第2投影画像との差分を最小化する計算処理により、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性に関する補正係数を決定し、第3スキャンに対応する第3MR信号と決定された補正係数とを用いて過渡応答特性を補正した補正画像を生成することができる。
【0076】
以上のことから、本磁気共鳴イメージング装置100によれば、被検体Pに対する一つのラジアル方向に沿ったプリスキャンにより得られた第1、第2投影画像を用いて位相歪みを補正することができる。これにより、本磁気共鳴イメージング装置100によれば、一つのラジアル方向RDにおけるMR信号を得ることができれば位相歪みを補正することができるため、被検体Pに対する撮像フローを効率化することができる。加えて、本磁気共鳴イメージング装置100によれば、本スキャンごとに過渡応答特性を決定することができるため、据え付け時における位相歪みのキャリブレーションが不良の場合であっても、位相歪みによる偽像(アーチファクト)を低減させた画像を生成することができる。特に、本磁気共鳴イメージング装置100によれば、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性によるアーチファクトが顕著になるラジアルスキャンにおいて、位相歪みによる偽像(アーチファクト)を効果的に低減させた画像を生成することができる。
【0077】
(第2応用例)
第1応用例との相違は、予め設定された一つのラジアル方向に沿ってk空間における原点を跨いで第1収集方向で第1スキャンを実行し、ラジアル方向に沿って前記原点を跨いで第1収集方向に対向する第2収集方向で第2スキャンを実行することにある。本応用例における第1スキャンは、第1応用例の第1スキャンと異なり、リードアウト傾斜磁場の過渡応答期間を有する。すなわち、本応用例における第1スキャンと第2スキャンとは、ともに、立ち上がり期間と立ち下がり期間とのうち少なくとも一方の過渡応答期間を有する。また、k空間において、第1スキャンによる収集軌跡と第2スキャンによる収集軌跡とは、k空間の原点に対して概ね対称的な位置関係となる。
【0078】
シーケンス制御回路121は、k空間において、第1スキャンの開始地点(以下、第1開始地点と呼ぶ)と第2スキャンの開始地点(以下、第2開始地点と呼ぶ)とがk空間の原点に対して対称となるように、第1スキャンと第2スキャンとを実行する。また、シーケンス制御回路121は、k空間において、第1スキャンの終了地点(以下、第1終了地点と呼ぶ)と第2スキャンの終了地点(以下、第2終了地点と呼ぶ)とがk空間の原点に対して対称となるように、第1スキャンと第2スキャンとを実行する。シーケンス制御回路121は、k空間への磁気共鳴信号の充填に関する第3スキャンを実行する。本応用例における第3スキャンは、第1応用例における第3スキャンと同様なスキャンである。
【0079】
図11は、k空間Kspにおける第1スキャンFScaと第2スキャンSScaとの一例を示す図である。図11におけるラジアル方向RDは、k空間におけるky=0の軸上に位置し、第1スキャンFScaと第2スキャンSScaとにおけるスキャン方向を明示するために、幅を持たせて記載している。図11に示すように、第1スキャンFScaと第2スキャンSScaとは、ラジアル方向の角度θが0°である場合の一つのラジアル方向RDに沿って、互いに対向する収集方向に沿って実行される。すなわち、図11に示すように、第1スキャンFScaに関する第1収集方向と、第2スキャンSScaに関する第2収集方向とは、互いに反対の収集方向となる。
【0080】
また、図11に示すように、第1開始地点FScasと第2開始地点SScasとは、k空間の原点K0に対して互いに対称的な位置関係となっている。また、図11に示すように、第1終了地点FScaeと第2終了地点SScaeとは、k空間の原点K0に対して対称的な位置関係となっている。すなわち、図11に示すように、k空間の原点K0と第1開始地点FScasとの間の距離と、k空間の原点K0と第2開始地点SScasとの間の距離とは、ともに同じ距離L1となる。また、図11に示すように、k空間の原点K0と第1終了地点FScaeとの間の距離と、k空間の原点K0と第2終了地点SScaeとの間の距離とは、ともに同じ距離L2となる。
【0081】
第1スキャンおよび第2スキャンに関して予め設定されたラジアル方向が複数である場合、シーケンス制御回路121は、上記ラジアル方向RDを含む複数のラジアル方向各々に沿って第1スキャンを実行し、上記ラジアル方向RDを含む複数のラジアル方向各々に沿って第2スキャンを実行する。例えば、ラジアル方向の角度θが0°である場合のky=0の軸RD1およびラジアル方向の角度θ°が90である場合のkx=0の軸RD2各々において、第1スキャン及び第2スキャンが実行されてもよい。
【0082】
なお、第1スキャンおよび第2スキャンがともにリードアウト傾斜磁場の過渡応答期間を有していれば、k空間の原点K0と第1開始地点(または第2開始地点)との間の距離は、複数のラジアル方向において異なっていてもよい。また、第1スキャンおよび第2スキャンがともにリードアウト傾斜磁場の過渡応答期間を有していれば、k空間の原点K0と第1終了地点(または第2終了地点)との間の距離は異なっていてもよい。
【0083】
図12は、2つのラジアル方向としてky=0の軸およびkx=0の軸各々において、第1スキャンFScaおよび第2スキャンSScaの収集軌跡の一例を示す図である。図12では、第1スキャンFScaおよび第2スキャンSScaは、第1ラジアル方向RD1と第2ラジアル方向RD2とにおいて実行される。図12に示すように、ラジアル方向RD1における原点K0と第1開始時点FScas1との間の距離L1と、ラジアル方向RD2における原点K0と第1開始時点FScas2との間の距離L3とは、同じ距離として示されている。
【0084】
生成機能1315を実現する処理回路131は、第1スキャンFScaにより収集された第1MR信号に対してラジアル方向についての1次元フーリエ変換を適用することにより第1投影画像を生成する。処理回路131は、第2スキャンSScaにより収集された第2MR信号に対してラジアル方向についての1次元フーリエ変換を適用することにより第2投影画像を生成する。
【0085】
第1スキャンFSca及び第2スキャンSScaが複数のラジアル方向に沿って実行された場合、生成機能1315を実現する処理回路131は、複数のラジアル方向毎に、第1投影画像および第2投影画像を生成する。すなわち、処理回路131は、複数のラジアル方向にそれぞれ対応し、本応用例において上述した第1投影画像を含む複数の第1投影画像を生成する。また、処理回路131は、複数のラジアル方向にそれぞれ対応し、本応用例において上述した第2投影画像を含む複数の第2投影画像を生成する。
【0086】
決定機能1317を実現する処理回路131は、第1投影画像と第2投影画像との差分を小さくする計算処理により、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性に関する補正係数(aおよびT)を決定する。具体的には、処理回路131は、第1投影画像と第2投影画像との差分を計算することにより、差分画像を生成する。処理回路131は、差分画像における複数の画素値を用いて、例えば二乗平均平方根を、コスト関数として計算する。処理回路131は、コスト関数の値が小さくなるように、計算処理として準ニュートン法等を用いて、補正係数aと補正係数Tとを決定する。
【0087】
なお、第1スキャンFSca及び第2スキャンSScaが複数のラジアル方向に沿って実行された場合、決定機能1317を実現する処理回路131は、複数のラジアル方向各々について上記差分を計算することにより生成された複数の差分を小さくする計算処理により補正係数を決定する。このとき、複数の差分は、複数のラジアル方向にそれぞれ対応する。具体的には、処理回路131は、第1投影画像と第2投影画像との差分を、ラジアル方向毎に計算することにより、複数の差分画像を生成する。処理回路131は、複数の差分画像における複数の画素値を用いて、例えば二乗平均平方根を、コスト関数として計算する。処理回路131は、コスト関数の値が小さくなるように、計算処理として準ニュートン法等を用いて、補正係数aと補正係数Tとを決定する。
【0088】
補正機能1319を実現する処理回路131は、第3MR信号と決定された補正係数とを用いて過渡応答特性を補正した補正画像を生成する。
【0089】
(動作)
図13は、本応用例における動作の処理手順の一例を示すフローチャートである。以下、説明を具体的にするために、第1スキャンFScaおよび第2スキャンSScaは、図12に示すように、ラジアル方向の角度θが0°と90°である場合の2つのラジアル方向RDに沿って、互いに対向する収集方向に沿って実行されるものとする。なお、第1スキャンFScaおよび第2スキャンSScaは、図11に示すように一つのラジアル方向(0°)で実行されてもよいし、ラジアル方向の角度θが0°、45°、90、135°のように4方向について実行されてもよいし、複数の他のラジアル方向について実行されてもよい。
【0090】
(ステップSc1)
第1スキャンFScaおよび第2スキャンSScaの実行に先立って、第1スキャンFScaおよび第2スキャンSScaに関するラジアル方向が記憶装置129から読み出される。k空間における0°のラジアル方向に沿って第1スキャンFScaが実行される。第1スキャンFScaの実行により、第1MR信号が生成される。第1MR信号は、ラジアル方向と関連付けて、記憶装置129に記憶される。
【0091】
図14は、サンプリング区間において、第1スキャンFScaに関する第1MR信号の波形と、理想的なMR信号の波形との一例を示す図である。図14に示すように、第1MR信号は、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性、特にリードアウト傾斜磁場の強度Groの立ち上がり期間TRRTにより、理想的なMR信号波形における想定される信号中心より信号遅延量dsだけ遅延している。
【0092】
(ステップSc2)
第1スキャンが実行されたラジアル方向に沿って、第1スキャンFScaのスキャン方向(第1収集方向)とは反対方向(第2収集方向)に第2スキャンSScaが実行される。第2スキャンSScaの実行により、第2MR信号が生成される。第2MR信号は、ラジアル方向と関連付けて、記憶装置129に記憶される。
【0093】
図15は、サンプリング区間において、第2スキャンSScaに関する第2MR信号の一例を示す図である。図15に示すように、第2MR信号は、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性、特にリードアウト傾斜磁場の強度Groの立ち上がり期間TRRTにより、理想的なMR信号波形における想定される信号中心より信号遅延量dsだけ遅延している。
【0094】
(ステップSc3)
全てのラジアル方向に対して第1スキャンFScaおよび第2スキャンSScaとが完了していない場合、ステップSc1の処理とステップSc2の処理とが繰り返される。全てのラジアル方向に対して第1スキャンFScaおよび第2スキャンSScaとが完了している場合、ステップSc4の処理が実行される。
【0095】
(ステップSc4)
第1MR信号および第2MR信号各々に対して、関連付けられたラジアル方向についての1次元フーリエ変換を実行することにより、複数のラジアル方向各々に対応する第1投影画像と第2投影画像とが生成される。第1投影画像と第2投影画像とは、1次元フーリエ変換の実行時に用いられたラジアル方向と関連付けられて、記憶装置129に記憶される。なお、本ステップにおける処理は、ステップSc2の後に実行されてもよい。
【0096】
(ステップSc5)
複数のラジアル方向各々において第1投影画像と第2投影画像との差分画像を生成される。すなわち、本ステップの処理により、複数のラジアル方向にそれぞれ対応する複数の差分画像が生成される。複数の差分画像各々は、図14に示す第1MR信号における信号遅延量dsと図15に示す第2MR信号における信号遅延量dsとを、位相差として反映した画像となる。
【0097】
(ステップSc6)
差分画像における画素値を小さくする計算処理により、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性に関する補正係数aと補正係数Tとが決定される。過渡応答特性の決定手法は、ステップSa4と同様な処理なため、説明は省略する。本ステップにおける処理は、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性に起因する位相差を小さくするように、換言すれば、第1MR信号における信号遅延量dsと第2MR信号における信号遅延量dsとを解消するように、補正係数を決定する。
【0098】
ステップSc6の処理の後、第3スキャンが実行され、第3MR信号が生成される。なお、第3スキャンは、ステップSc1の前に実行されてもよい。k空間において、第3MR信号に関する複数のサンプリング点のうち過渡応答期間TRRTに含まれるサンプリング点の位置が、補正係数に従って補正される。過渡応答期間TRRTに含まれるサンプリング点の位置の補正は、ステップSa5と同様な処理なため、説明は省略する。補正されたサンプリング点の位置に対応する第3MR信号と、過渡応答期間TRRTに含まれないサンプリング点の位置に対応する第3MR信号とを用いて、第3スキャンに対応する補正画像が生成される。
【0099】
なお、ステップSc1およびステップSc2の処理は、本スキャンである第3スキャンとともに実行されてもよい。また、ステップSc1およびステップSc2の処理の前に第3スキャンが実行されてもよい。ステップSc4の処理は、第3スキャンにより得られた第3MR信号において、互いに対向しかつk空間の原点k0に対して対称な2つの収集軌跡におけるMR信号を用いて実行されてもよい。この時、ステップSc1及びステップSc2の処理は不要となる。
【0100】
以上に述べた構成によれば、以下に示す効果を得ることができる。
本応用例における磁気共鳴イメージング装置100によれば、k空間における一つのラジアル方向に沿ってk空間における原点を跨いで第1収集方向で第1スキャンを実行し、上記一つのラジアル方向に沿ってk空間の原点を跨いで第1収集方向に対向する第2収集方向で第2スキャンを実行し、k空間への磁気共鳴信号の充填に関する第3スキャンを実行し、第1スキャンにより収集された第1磁気共鳴信号に対してラジアル方向についての1次元フーリエ変換を適用することにより第1投影画像を生成し、第2スキャンにより収集された第2磁気共鳴信号に対して1次元フーリエ変換を適用することにより第2投影画像を生成し、第1投影画像と第2投影画像との差分を小さくする計算処理によりリードアウト傾斜磁場の過渡応答特性に関する補正係数を決定し、第3スキャンより収集された第3磁気共鳴信号と補正係数とを用いて過渡応答特性を補正した補正画像を生成することができる。
【0101】
また、本応用例における磁気共鳴イメージング装置100によれば、ラジアル方向を含む複数のラジアル方向各々に沿って第1スキャンを実行し、前記複数のラジアル方向各々に沿って前記第2スキャンを実行し、複数のラジアル方向にそれぞれ対応し、第1投影画像を含む複数の第1投影画像を生成し、複数のラジアル方向にそれぞれ対応し、第2投影画像を含む複数の第2投影画像を生成し、複数のラジアル方向各々について差分を計算することにより生成された複数の差分を小さくする計算処理により補正係数を決定することができる。さらに、本磁気共鳴イメージング装置100によれば、k空間において第1スキャンの開始地点と第2スキャンの開始地点とがk空間の原点に対して対称となるように、第1スキャンと第2スキャンとを実行することができ、k空間において第1スキャンの終了地点と第2スキャンの終了地点とがk空間の原点に対して対称となるように、第1スキャンと第2スキャンとを実行することができる。
【0102】
以上のことから、本磁気共鳴イメージング装置100によれば、同一のラジアル方向に沿ってk空間の原点を跨いで互いに対向する収集方向で第1スキャンと第2スキャンにより得られた第1、第2投影画像を用いて位相歪みを補正することができる。これにより、本磁気共鳴イメージング装置100によれば、少なくとも一つのラジアル方向におけるMR信号を得ることができれば位相歪みを補正することができるため、被検体Pに対する撮像フローを効率化することができる。加えて、本磁気共鳴イメージング装置100によれば、本スキャンごとに過渡応答特性を決定することができるため、据え付け時における位相歪みのキャリブレーションが不良の場合であっても、位相歪みによる偽像(アーチファクト)を低減させた画像を生成することができる。特に、本磁気共鳴イメージング装置100によれば、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性によるアーチファクトが顕著になるラジアルスキャンにおいて、位相歪みによる偽像(アーチファクト)を効果的に低減させた画像を生成することができる。
【0103】
本実施形態の変形例として、本磁気共鳴イメージング装置100の技術的思想を医用処理装置135で実現する場合には、例えば図1の構成図における破線内の構成要素を有するものとなる。医用処理装置135は、記憶装置129に記憶されたMR信号を用いて各種処理を実行する。例えば、図8に示すフローチャートにおけるステップSa1の処理は、「記憶装置129からMR信号の読み出し」となる。本医用処理装置135に関する効果は、本実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0104】
また、本実施形態の第1応用例の変形例として、本磁気共鳴イメージング装置100の技術的思想を医用処理装置135で実現する場合には、医用処理装置135は、記憶装置129に記憶された第1MR信号、第2MR信号、第3MR信号を用いて各種処理を実行する。例えば、図9に示すステップSb1の処理は、「記憶装置129から第1MR信号の読み出し」となり、ステップSb2の処理は、「記憶装置129から第2MR信号の読み出し」となり、ステップSb5の処理は、「記憶装置129から第3MR信号の読み出し」となる。本医用処理装置135に関する効果は、本応用例と同様なため、説明は省略する。
【0105】
また、本実施形態の第2応用例の変形例として、本磁気共鳴イメージング装置100の技術的思想を医用処理装置135で実現する場合には、医用処理装置135は、記憶装置129に記憶された第1MR信号、第2MR信号、第3MR信号を用いて各種処理を実行する。例えば、図13に示すステップSc1の処理は、「記憶装置129から第1MR信号の読み出し」となり、ステップSc2の処理は、「記憶装置129から第2MR信号の読み出し」となる。本医用処理装置135に関する効果は、本応用例と同様なため、説明は省略する。
【0106】
加えて、本実施形態および応用例における配置機能1313、生成機能1315、決定機能1317、補正機能1319等は、当該機能を実行するプログラム(医用処理プログラム)をワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、医用処理プログラムは、コンピュータに、複数のサンプリング点各々に対応するMR信号を、リードアウト傾斜磁場の強度に従ってk空間のリードアウト方向に沿って配置し、k空間における全てのMR信号を用いて第1画像を生成し、複数のサンプリング点のうち一部のサンプリング点に対応する一部のMR信号を用いて第2画像を生成し、第1画像と第2画像との差分を最小化する計算処理により、リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性に関する補正係数を決定し、第1画像における前記過渡応答特性の影響を補正した補正画像を、全てのMR信号と前記補正係数とを用いて生成すること、を実現させる。また、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリなどの各種可搬型記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0107】
以上に述べた実施形態、第1応用例、第2応用例、変形例等の磁気共鳴イメージング装置100および医用処理装置135によれば、アーチファクトを低減することができる。
【0108】
以下、本願の基礎出願である特願2017-065511の実施形態における磁気共鳴イメージング装置および医用処理装置について付記する。
【0109】
実施形態の磁気共鳴イメージング装置は、シーケンス制御部と、受信部と、生成部と、決定部と、補正部とを有する。前記シーケンス制御部は、k空間における一つのラジアル方向に沿った第1スキャンにおけるリードアウト傾斜磁場が一定となる期間が前記ラジアル方向に沿った第2スキャンにおける前記リードアウト傾斜磁場の過渡応答期間を包含するように、前記第1スキャン及び前記第2スキャンを実行し、前記第1スキャン及び前記第2スキャンの実行後に前記リードアウト傾斜磁場を用いて第3スキャンを実行する。前記受信部は、前記第1スキャンに対応する第1磁気共鳴信号と前記第2スキャンに対応する第2磁気共鳴信号と生成し、前記第3スキャンに対応する第3磁気共鳴信号を生成する。前記生成部は、前記第2スキャンの前記過渡応答期間における前記第1磁気共鳴信号に対して前記ラジアル方向についての1次元フーリエ変換を適用することにより第1投影画像を生成し、前記第2スキャンの前記過渡応答期間における前記第2磁気共鳴信号に対して前記1次元フーリエ変換を適用することにより第2投影画像を生成する。前記決定部は、前記第1投影画像と前記第2投影画像との差分を最小化する計算処理により、前記リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性に関する補正係数を決定する。前記補正部は、前記第3磁気共鳴信号と前記補正係数とを用いて前記過渡応答特性を補正した補正画像を生成する。
【0110】
実施形態の磁気共鳴イメージング装置は、配置部と、生成部と、決定部と、補正部とを有する。前記配置部は、複数のサンプリング点各々に対応する磁気共鳴信号を、リードアウト傾斜磁場の強度に従ってk空間に配置する。前記生成部は、前記k空間に配置された磁気共鳴信号を用いて第1画像を生成する、および、前記磁気共鳴信号のうち、前記複数のサンプリング点より少ないサンプリング点に対応する一部の磁気共鳴信号を用いて第2画像を生成する。前記決定部は、前記第1画像と前記第2画像との差分を最小化する計算処理により、前記リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性に関する補正係数を決定する。前記補正部は、前記第1画像における前記過渡応答特性の影響を補正した補正画像を、前記補正係数を用いて生成する。
【0111】
実施形態の医用処理装置は、配置部と、生成部と、決定部と、補正部とを有する。前記配置部は、複数のサンプリング点各々に対応する磁気共鳴信号を、リードアウト傾斜磁場の強度に従ってk空間に配置する。前記生成部は、前記k空間における全ての磁気共鳴信号を用いて第1画像を生成し、前記複数のサンプリング点のうち一部のサンプリング点に対応する一部の磁気共鳴信号を用いて第2画像を生成する。前記決定部は、前記第1画像と前記第2画像との差分を最小化する計算処理により、前記リードアウト傾斜磁場の過渡応答特性に関する補正係数を決定する。前記補正部は、前記第1画像における前記過渡応答特性の影響を補正した補正画像を、前記全ての磁気共鳴信号と前記補正係数とを用いて生成する。
【0112】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0113】
100…磁気共鳴イメージング装置、101…静磁場磁石、103…傾斜磁場コイル、105…傾斜磁場電源、107…寝台、109…寝台制御回路、111…ボア、113…送信コイル、115…送信回路、117…受信コイル、119…受信回路、121…シーケンス制御回路、123…バス、125…インタフェース回路、127…ディスプレイ、129…記憶装置、131…処理回路、135…医用処理装置、1071…天板、1311…システム制御機能、1313…配置機能、1315…生成機能、1317…決定機能、1319…補正機能。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15