(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】氷菓用製剤、氷菓、および氷菓の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 9/00 20060101AFI20220816BHJP
A23G 9/04 20060101ALI20220816BHJP
A23G 9/34 20060101ALI20220816BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20220816BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20220816BHJP
【FI】
A23G9/00 101
A23G9/04
A23G9/34
A23L29/256
A23L29/269
(21)【出願番号】P 2018064706
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】506009453
【氏名又は名称】オルガノフードテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】広住 亜季
(72)【発明者】
【氏名】小林 萌々
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0071229(US,A1)
【文献】特表2001-520868(JP,A)
【文献】特開2016-131509(JP,A)
【文献】特開昭53-038668(JP,A)
【文献】特表2016-525362(JP,A)
【文献】特開昭53-121971(JP,A)
【文献】特開2004-357654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクシノグリカンと
ラムダカラギナンと
イオタカラギナンとを含むことを特徴とする氷菓用製剤。
【請求項2】
スクシノグリカンと
ラムダカラギナンと
イオタカラギナンとを含
むことを特徴とする氷菓。
【請求項3】
請求項
2に記載の氷菓であって、
前記スクシノグリカンの含有量は、0.02~0.15重量%であり、前記ラムダカラギナンの含有量は、0.02~0.15重量%であり、前記イオタカラギナンの含有量は、0.02~0.15重量%であることを特徴とする氷菓。
【請求項4】
請求項
1に記載の氷菓用製剤を用いて氷菓を製造することを特徴とする氷菓の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷菓用製剤、氷菓、および氷菓の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アイスクリーム類や氷菓は、通常、冷凍の状態で食されるが、室温で放置すると短時間で溶け出してしまう。そこで、解凍状態でも形状が保たれるアイスクリーム類が提案されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、ゼラチンと微結晶セルロースとを含有する、解凍状態ではムース様となるアイスクリーム類が記載されている。
【0004】
特許文献2には、糖分と、乳成分と、ゼラチン0.1質量%~1.3質量%と、エリスリトールおよび/またはキシリトールと、水とを含んでなり、一定の形状を有し、かつ-18℃の食品を24℃の温度下に2時間放置後もその形状を保持し、ただし、ゼラチンが0.4質量%以下である場合、増粘多糖類をさらに少なくとも0.04質量%含んでなる、アイスクリーム風食品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-223090号公報
【文献】特開2014-236669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらのアイスクリーム類は、解凍後にムース状やゲル状となり、食感がアイスクリーム類や氷菓とは大きく異なるものであった。
【0007】
本発明の目的は、長時間室温で放置しても溶け出しにくく、食感が維持される氷菓を得ることができる氷菓用製剤、その氷菓用製剤を含む氷菓、およびその氷菓の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、スクシノグリカンとラムダカラギナンとイオタカラギナンとを含む氷菓用製剤である。
【0010】
本発明は、スクシノグリカンとラムダカラギナンとイオタカラギナンとを含む氷菓である。
【0012】
前記氷菓において、前記スクシノグリカンの含有量は、0.02~0.15重量%であり、前記ラムダカラギナンの含有量は、0.02~0.15重量%であり、前記イオタカラギナンの含有量は、0.02~0.15重量%であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、前記氷菓用製剤を用いて氷菓を製造する、氷菓の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、長時間室温で放置しても溶け出しにくく、食感が維持される氷菓を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本実施形態に係る氷菓用製剤は、スクシノグリカンとカラギナンとを含む。本発明者らは、氷菓で使用される増粘多糖類として、スクシノグリカンとカラギナンとの混合系を用いることにより、通常の氷菓よりも溶け出しにくい氷菓が得られることを見出した。スクシノグリカン単独またはカラギナン単独では、溶け出しにくくなる効果はほとんど認められないか、食感で劣ってしまうが、スクシノグリカンとカラギナンとを組み合わせることで、長時間室温(例えば、26±1℃で2時間)で放置しても通常の氷菓よりも溶け出しにくい氷菓が得られる。また、スクシノグリカンとカラギナンとを組み合わせることで、長時間室温で放置しても食感が維持される氷菓が得られる。長時間室温で放置していてもムース状やゲル状となりにくく、氷菓の形状を維持することができ、スプーン通りが良好で、冷食時の氷菓と同等の食感を感じることができ、また、通常の氷菓よりも溶け出しにくいため、長く氷菓としての食感を楽しむことができる。これにより、提供に時間がかかる高齢者施設等でも気軽に氷菓を提供できるようになったり、溶け出しやすい屋外での喫食も気軽にできるようになる。さらに、低ブリックスの氷菓を得ることができる。
【0017】
スクシノグリカンは、微生物であるアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)が生産する分子量100万程度の多糖類である。以下に示すように、主鎖に4糖、側鎖に4糖の繰り返しユニットから構成され、側鎖にコハク酸とピルビン酸を含む。その構成成分の比率は、グルコース:ガラクトース:コハク酸:ピルビン酸が約7:1:1:1である。
【化1】
【0018】
カラギナンは、紅藻類から抽出される多糖類であり、D-ガラクトース(または3,6-アンヒドロ-D-ガラクトース)と硫酸から構成され、以下に示すように、その硫酸基の結合状態により、ラムダカラギナン、イオタカラギナン、カッパカラギナンの3種に分類される。
【化2】
【0019】
本実施形態に係る氷菓用製剤において、カラギナンとして、ラムダカラギナンおよびイオタカラギナンのうち少なくとも1つを含むことが好ましく、ラムダカラギナンおよびイオタカラギナンの両者を含むことがより好ましい。スクシノグリカンと、ラムダカラギナンおよびイオタカラギナンのうち少なくとも1つとを含むことにより、長時間室温で放置しても溶け出しにくく、食感が維持される氷菓が得られる。スクシノグリカンとラムダカラギナンとイオタカラギナンとを含むことにより、長時間室温で放置してもより溶け出しにくく、食感がより維持される氷菓が得られる。
【0020】
本実施形態に係る氷菓用製剤は、スクシノグリカン、カラギナン以外に、他の増粘多糖類または食品、食物繊維等を含んでもよい。
【0021】
他の増粘多糖類または食品としては、例えば、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、タラガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、ペクチン、グルコマンナン、寒天等が挙げられる。
【0022】
食物繊維としては、例えば、水溶性繊維、不溶性繊維、難消化デキストリン、ポリデキストロース等が挙げられる。
【0023】
本実施形態に係る氷菓用製剤は、例えば、粉末、顆粒等の形態である。
【0024】
本実施形態に係る氷菓は、上記氷菓用製剤を含んで構成される。ここで、「氷菓」とは、糖液もしくはこれに他の食品を混和した液体を凍結したもの、または食用氷を粉砕し、これに糖液もしくは他食品を混和し再凍結したもので、凍結状のまま食用に供するものをいう。ただし、「アイスクリーム類」に該当するものを除き、乳固形分が3.0重量%未満のものである。具体的には、シャーベット、アイスキャンディ、かき氷等が挙げられる。
【0025】
本実施形態に係る氷菓は、例えば、水、上記氷菓用製剤、糖類、色素、香料、果汁等を含んで構成され、好ましくは、上記氷菓用製剤、水、糖類を含んで構成される。本実施形態に係る氷菓は、例えば、上記氷菓用製剤を含む各成分を混合し、例えば-6℃~-60℃で凍結することにより得られる。
【0026】
糖類としては、例えば、ショ糖、異性化糖、乳糖、麦芽糖、ブドウ糖、砂糖、グラニュー糖、オリゴ糖、果糖、転化糖、水飴、粉末水飴、還元麦芽水飴、蜂蜜、トレハロース、パラチノース、D-キシロース等や、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール等の糖アルコール類等が挙げられる。糖類としては、これらの一種または二種以上を用いることができる。
【0027】
本実施形態に係る氷菓における水の含有量は、例えば、80~98重量%であり、85~95重量%であることが好ましい。
【0028】
本実施形態に係る氷菓における糖類の含有量は、例えば、0.1~30重量%であり、0.1~15重量%であることが好ましい。これにより、氷菓のブリックス値を0.1~30、好ましくは0.1~15とすることができる。
【0029】
本実施形態に係る氷菓におけるスクシノグリカンの含有量は、0.02~0.15重量%であることが好ましく、0.05~0.1重量%であることがより好ましい。スクシノグリカンの含有量が0.02重量%未満であると、スプーン通りが悪く、溶け出しやすい場合があり、0.15重量%を超えると、溶け出しやすい場合がある。
【0030】
本実施形態に係る氷菓におけるカラギナンの含有量は、例えば、0.02~0.3重量%であり、0.15~0.2重量%であることが好ましい。カラギナンとしてラムダカラギナンおよびイオタカラギナンのうち少なくとも1つを含む場合は、氷菓におけるラムダカラギナンの含有量は、0.02~0.15重量%であることが好ましく、0.05~0.1重量%であることがより好ましい。ラムダカラギナンの含有量が0.02重量%未満であると、スプーン通りが悪い場合があり、0.15重量%を超えると、スプーン通りが悪い場合がある。氷菓におけるイオタカラギナンの含有量は、0.02~0.15重量%であることが好ましく、0.05~0.1重量%であることがより好ましい。イオタカラギナンの含有量が0.02重量%未満であると、溶け出しやすい場合があり、0.15重量%を超えると、ぬめりが出る場合がある。
【実施例】
【0031】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0032】
<実施例1、参考例15,16および比較例1~5>
表1に示す配合処方(重量%)で、下記の方法により、氷菓を作製した。各配合処方は以下の通りである。スクシノグリカン、ラムダカラギナンとしては、市販品を、イオタカラギナンとしては、商品名「オルピンJ」(オルガノフードテック株式会社製)を用いた。
比較例1(ブランク):増粘多糖類無添加
比較例2:スクシノグリカン単品
比較例3:ラムダカラギナン単品
比較例4:イオタカラギナン単品
比較例5:ラムダカラギナン+イオタカラギナン
参考例15:スクシノグリカン+ラムダカラギナン
参考例16:スクシノグリカン+イオタカラギナン
実施例1:スクシノグリカン+ラムダカラギナン+イオタカラギナン
【0033】
[氷菓の作製方法]
水飴と水とを1Lのビーカーに量りとり、粉体(緑茶粉末、増粘多糖類、デキストリン、砂糖)を加え、10分間撹拌した。湯煎で85℃達温まで加熱後、流水で30℃になるまで冷却し、その後、氷水で10℃以下になるまで冷却し、ミックスを得た。得られたミックスをホモジナイザー(TK ROBOMICS)により、8000rpmで1分間ホモジネート処理後、アイスクリーマーに入れて15分間撹拌した。さらに冷やしたステファンカッター(中村産業社製)で30秒撹拌し、均質化した。ゼリーカップ(内径6.4cm、高さ4cm)に70~80gずつ充填し、フタをして-60℃の冷凍庫で30分間急速冷凍した。その後、-20℃の冷凍庫で一晩以上冷凍した。
【0034】
[溶け出しやすさの評価]
目開き(1.25mm×4mm)のネットをロート(φ80mm)の上に載せてビニールタイで結んだ後、室温(26±1℃)環境下で、上記の通り作製した氷菓を冷凍庫(-20℃)から取り出してネットの上に載せた。氷菓は、ゼリーカップから形状を維持したまま取り出した。ロートを比色管(100mL)にセットし、2時間解凍後に溶け落ちた氷菓の量を測定し、下の式により、溶け落ちた氷菓の割合を計算した。3回試験を行った平均値を結果として表1に示す。
{[(比色管の重量+溶け落ちた氷菓の重量)-比色管の重量]/ロートに載せた氷菓の重量}×100
【0035】
[官能試験]
官能試験では、上記の通り作製した、ゼリーカップに充填した氷菓を使用し、26±1℃で10分間解凍した状態のものと26±1℃で2時間解凍した状態のものとで5段階評価で比較した。6人の健康な成人により、スプーンを用いて得られた氷菓をすくい取り、物性の評価を行った。氷菓として楽しむために必要な指標として、10分間解凍後の評価項目は、(A)ゲル状・ぬめり、(B)氷状・粗さ、(C)スプーン通りの3点について行い、2時間解凍後の評価項目は、(A)ゲル状・ぬめり、(B)氷状・粗さの2点について行った。5段階の評価基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
【0036】
(A)ゲル状・ぬめり
1:ゲル状
2:ややゲル状
3:ぬめる
4:ややぬめる
5:ぬめらない
(B)氷状・粗さ
1:氷結晶が大きく、その大きさが不均一
2:氷結晶がやや大きく、その大きさが不均一
3:氷結晶がやや大きいが、その大きさが均一
4:氷の結晶がやや小さくて組織がなめらか
5:氷結晶が小さくて組織が非常になめらか
(C)スプーン通り
1:スプーン通りが非常に悪く、スプーンが通らない
2:スプーン通りが悪く、なんとか通るが硬い
3:スプーン通りがやや悪く、力が必要
4:スプーン通りが良く、少し力を入れると通る
5:スプーン通りが非常に良く、軽い力で通る
【0037】
【0038】
[結果]
比較例2のスクシノグリカン単品では、(C)スプーン通りが1.3と悪い結果となった。比較例3のラムダカラギナン単品では(B)氷状・粗さの項目において、冷凍庫から取り出して10分後が2.7と2時間解凍後が2.5と、どちらもざらつきが感じられ、また(C)スプーン通りにおいても1.3となり、悪い結果となった。比較例4のイオタカラギナン単品では、溶け落ちた割合が32.4%と溶け出しにくい氷菓を作製することができた。しかし、(A)ゲル状・ぬめりの項目の、解凍後10分後から2時間後の変化をみてみると、その差は1.8と大きく、食感が変わり、ぬめりを感じる食感となってしまったことがわかる。
【0039】
比較例5のラムダカラギナンとイオタカラギナンの混合系では、(A)ゲル状・ぬめりの変化は、(ラムダカラギナン:イオタカラギナン=0.05:0.10)で0.5、(ラムダカラギナン:イオタカラギナン=0.10:0.05)で1.0と、イオタカラギナン単品で見られたような時間経過による食感の変化は改善された。一方で(C)スプーン通りにおいては、(ラムダカラギナン:イオタカラギナン=0.05:0.10)で1.8、(ラムダカラギナン:イオタカラギナン=0.10:0.05)で1.3と改善は見られなかった。また、解凍後2時間後に溶け落ちた割合が(ラムダカラギナン:イオタカラギナン=0.05:0.10)で58.0%、(ラムダカラギナン:イオタカラギナン=0.10:0.05)で56.8%と高くなり、溶け出しにくい氷菓を作製することはできなかった。
【0040】
参考例15のスクシノグリカンとラムダカラギナンとの混合系では、比較例3の同じ量のラムダカラギナン単品と比較して、溶け出しにくくなり、(B)氷状・粗さ、(C)スプーン通りにおいて、良い結果となった。
【0041】
参考例16のスクシノグリカンとイオタカラギナンとの混合系では、配合比率によっては溶け出しにくい氷菓となった。比較的溶け出しにくかった氷菓の配合割合は、(スクシノグリカン:イオタカラギナン=0.05:0.15)で42.9%と(スクシノグリカン:イオタカラギナン=0.05:0.20)で47.5%であった。(スクシノグリカン:イオタカラギナン=0.05:0.15)の氷菓では、(C)スプーン通りが1.7であった。(スクシノグリカン:イオタカラギナン=0.05:0.20)の氷菓は、(A)ゲル状・ぬめりの変化が2.0と大きく、比較例4のイオタカラギナン単品と同様に、ぬめりを感じる食感となってしまった。また、この2つの氷菓を比較すると、イオタカラギナンの割合が多いほどスプーン通りは良くなるが、ぬめりを感じることが確認できる。
【0042】
実施例1のスクシノグリカンとラムダカラギナンとイオタカラギナンとの混合系では、その配合割合によって様々な効果が見られた。(スクシノグリカン:ラムダカラギナン:イオタカラギナン=0.05:0.05:0.10)の製剤では、溶け落ちた割合が45.9%と、溶け出しにくい氷菓を作製することができた。また(A)ゲル状・ぬめりの変化も、1.0とその差は小さく、比較例4のイオタカラギナン単品と比べてぬめりが改善された。さらにスプーン通りにおいても2.3と、比較的良い氷菓となった。この製剤では長時間室温で放置しても溶け出しにくく、また放置後の食感が先行技術とは異なり、ゲル状やムース状になることもないので、長く氷菓としての食感を楽しめる氷菓を作製することができた。一方で(スクシノグリカン:ラムダカラギナン:イオタカラギナン=0.02:0.05:0.15)の製剤では、前述の製剤と比べ、溶け落ちた割合が50.3%と少し溶け出しやすくはなる。しかし他の項目では、(C)スプーン通りが4.5と非常によく、また(B)氷状・粗さの項目では冷凍庫から取り出して10分後で3.7、2時間解凍後では4.3と、滑らかな食感の氷菓を作製することができた。比較例の氷菓と比べても、比較的溶け出しにくい傾向があることから室温での放置時間がそこまで長くなく、より氷菓の質が求められる場合においてはこちらの製剤を選択してもよい。
【0043】
<参考例1~14>
また、カラギナンにスクシノグリカンを加えると溶け出しにくい氷菓が得られることから、カラギナン以外の増粘多糖類についてもスクシノグリカンとの組み合わせにより、氷菓がどのような傾向になるのか検討した。検討した増粘多糖類は、タマリンドシードガム(参考例1,8)、ペクチン(参考例2,9)、脱アシルジェランガム+乳酸カルシウム5水和物(参考例3,10)、グアーガム(参考例4,11)、グルコマンナン(参考例5,12)、サイリウムシードガム(参考例6,13)、ローカストビーンガム(参考例7,14)である。表2,3に示す処方で、実施例1と同様にして氷菓を作製し、評価を行った。結果を表2,3に示す。
【0044】
【0045】
【0046】
[結果]
その結果、ペクチン、脱アシルジェランガム+乳酸カルシウム5水和物、グアーガム、グルコマンナン、サイリウムシードガムでは、スクシノグリカンとの併用により、溶け出しやすい氷菓となった。スクシノグリカンとの併用により溶け出しにくくなった増粘多糖類は、タマリンドシードガムとローカストビーンガムの2つであった。しかし、タマリンドシードガムを使用した氷菓では、2時間解凍後に(A)ゲル状・ぬめりの項目が低い結果となった。タマリンドシードガムにスクシノグリカンを併用した氷菓で1.7、スクシノグリカン併用なしで1.5と、どちらもゲル状食感を感じることがわかる。また、ローカストビーンガムではスクシノグリカンとの併用により、冷凍庫から出して10分後でも(A)ゲル状・ぬめりの項目で3.7とぬめりを感じ、2時間解凍後には2.3となり、ゲル状食感となってしまった。
【0047】
[まとめ]
スクシノグリカン単品、ラムダカラギナン単品では氷菓の溶け出しを抑制することはできなかった。イオタカラギナン単品では氷菓の溶け出しを抑制することができたが、食感に変化が生じてしまった。ラムダカラギナンとイオタカラギナンとの組み合わせでは、氷菓の溶け出しを抑制することはできず、スプーン通りも悪かった。スクシノグリカンと、イオタカラギナンおよびラムダカラギナンのうち少なくとも1つとの組み合わせで、溶け出しにくく、比較的食感の良い氷菓が得られた。スクシノグリカンとラムダカラギナンとイオタカラギナンとの組み合わせで、溶け出しにくく、スプーン通りが良い、また2時間放置しても食感が変わらないバランスの良いものが得られた。カラギナン以外にスクシノグリカンと組み合わせる増粘多糖類を検討したが、スクシノグリカンを併用すると、溶け出しやすくなったり、溶け出しにくいがゲル状になったり、ぬめりを感じたりと、氷菓として好ましいものではなかった。
【0048】
このように、スクシノグリカンとカラギナンとを含む氷菓用製剤により、長時間室温で放置しても溶け出しにくく、食感が維持される氷菓を得ることができた。特に、スクシノグリカンとラムダカラギナンとイオタカラギナンとを含む氷菓用製剤により、長時間室温で放置してもより溶け出しにくく、食感がより維持される氷菓を得ることができた。