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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】ベルト用肩パッド
(51)【国際特許分類】
   A62B 35/00 20060101AFI20220816BHJP
   A41D 13/015 20060101ALN20220816BHJP
【FI】
A62B35/00 A
A41D13/015
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018079931
(22)【出願日】2018-04-18
(65)【公開番号】P2019187502
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000114606
【氏名又は名称】モリト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】三輪 誠司
(72)【発明者】
【氏名】田畑 政亮
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】実開昭47-031433(JP,U)
【文献】特開2005-058582(JP,A)
【文献】登録実用新案第3129286(JP,U)
【文献】特開2000-014815(JP,A)
【文献】実開昭62-166728(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0128734(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 27/00
A62B 1/00 - 5/00
A62B 35/00 - 99/00
A45C 13/30
B60R 22/12
A45F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性素材よりなり肩に掛けるベルトに沿って長い矩形状の基板部とこの基板部の長手方向に沿う両側の側板部とにより長手方向に直交方向の断面が略コ字形状に形成される本体部と、
前記基板部に縦横に配列され膨出先端が前記肩に当接する当接面となり、且つこの当接面の裏側が凹部となる複数の凸部と、
前記本体部の少なくとも長手方向の両側に離間して設けられ、前記両側の側板部のそれぞれから前記基板部と平行に延出して延出先端同士が対向し前記基板部との間に前記ベルトを挿通する空間を形成する舌片形状のベルト押さえ片と、
を具備することを特徴とするベルト用肩パッド。
【請求項2】
請求項1記載のベルト用肩パッドであって、
前記ベルト押さえ片が、それぞれの前記両側の側板部から同じ長さで延出して間隙を有して対向することを特徴とするベルト用肩パッド。
【請求項3】
請求項1または2記載のベルト用肩パッドであって、
前記ベルト押さえ片には、前記基板部と反対側の面に膨出するリブが前記ベルト押さえ片の長手方向に沿って形成されていることを特徴とするベルト用肩パッド。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載のベルト用肩パッドであって、
前記凸部の前記当接面には、前記凹部へ通じる貫通孔が形成されていることを特徴とするベルト用肩パッド。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のベルト用肩パッドであって、
前記基板部の前記ベルト押さえ片に対向する部分には、前記凸部の形成されていない開口部が設けられていることを特徴とするベルト用肩パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルハーネス型安全等に用いられるベルト用肩パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
高所で作業を行う場合、作業者には転落防止のための安全帯の着用が義務づけられている。この種の安全帯としては、例えば衝撃荷重を緩衝して身体の損傷を防止するフルハーネス型安全帯が知られている(特許文献1等参照)。フルハーネス型安全帯は、作業者の背中に配置されるベルト分岐部材から上方に二股に分かれて延びて使用者の両肩を通り、使用者の前面側を両肩から下方に延びる一対の肩ベルトと、一対の肩ベルトの下端に取り付けられる一対の腿ベルトとを備える。肩ベルトは、直に肩に当てるのは痛い。そこで、一対の肩ベルトには、使用者の肩に当接する部分に緩衝材としての肩パッドが取り付けられる場合がある。
【0003】
従来品の肩パッドとしては、特許文献2の肩掛けベルト用パッドのように、筒状に形成され、ベルトを貫通させるもの、特許文献3のシートベルトカバーや特許文献4のシートベルト用クッションのように、ベルトをくるむように覆い、面ファスナーやフックボタンで取り付けるもの、特許文献5のショルダーベルトのように、係止舌片である係止部を、T字状に穿設した通孔である被係止部に嵌入係止することで、ベルトの通口を形成するものなどがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3201486号
【文献】特開2001-112534号公報
【文献】実開昭62-62564号公報
【文献】実開昭62-171356号公報
【文献】実開昭62-166728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の肩掛けベルト用パッドは、ベルトの端部から通す構造であるため、バックル等の金具や他の部材がベルトに固定されていては、後から取り付けることが難しく、着脱自在にはなりにくい。特許文献3のシートベルトカバー、特許文献4のシートベルト用クッション、及び特許文献5のショルダーベルトは、着脱が可能である構造ではあるもののその構造として部品の取り付けや縫製などが煩雑で製作に手間がかかる。また、従来品の共通した課題として、肩との接触面積が大きく蒸れやすく、特に雨などで濡れた場合には排出されにくい課題があった。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、ベルトに対して簡単に着脱が行え、通気性が確保されて蒸れにくく、水も排出しやすくできるベルト用肩パッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のベルト用肩パッド11は、可撓性素材よりなり肩35に掛けるベルト15に沿って長い矩形状の基板部31とこの基板部31の長手方向に沿う両側の側板部33とにより長手方向に直交方向の断面が略コ字形状に形成される本体部25と、
前記基板部31に縦横に配列され膨出先端が前記肩35に当接する当接面41となり、且つこの当接面41の裏側が凹部43となる複数の凸部27と、
前記本体部25の少なくとも長手方向の両側に離間して設けられ、前記両側の側板部33のそれぞれから前記基板部31と平行に延出して延出先端同士が対向し前記基板部31との間に前記ベルト15を挿通する空間45を形成する舌片形状のベルト押さえ片29と、
を具備することを特徴とする。
【0008】
このベルト用肩パッド11では、装着の際、可撓性素材からなるベルト押さえ片29を開くように変形させ、基板部31にベルト(肩ベルト)15を配置するのみで、ベルト押さえ片29が弾性復元力により元の形状に戻る。そのため、ベルト15の取り付けたい個所にベルト15の面から容易に取り付けることができる。従って、筒状のものに挿通したり、面ファスナーやフックボタンで取り付けたりする煩雑さが解消される。
ベルト用肩パッド11は、基板部31が面で密着せず、角錐台形状に形成した多数の凸部27によって肩35に接触するので、膨出先端同士が離間し、良好な通気性を確保できる。つまり、縦横に並んだ各突起部分が肩35に当たることになる。これにより、良好な排水性も確保される。また、多数の凸部27で構成され裏側が凹部43となる膨出形状とされることで、クッション性も備えている。
【0009】
本発明の請求項2記載のベルト用肩パッド11は、請求項1記載のベルト用肩パッド11であって、
前記ベルト押さえ片29が、それぞれの前記両側の側板部33から同じ長さで延出して間隙47を有して対向することを特徴とする。
【0010】
このベルト用肩パッド11では、ベルト押さえ片29が、両側の側板部33から同じ長さで延出し、間隙47を有して分断される。従って、ベルト押さえ片29は、基端が側板部33に固定され、延出先端が自由端となった片持ち梁状となる。これにより、ベルト押さえ片29は、延出先端が本体部25から離反方向へ容易に変形可能となり、且つ弾性復元力によるベルト15の押下が可能となり、片寄らずにベルト15に取り付けられる。
【0011】
本発明の請求項3記載のベルト用肩パッド11は、請求項1または2記載のベルト用肩パッド11であって、
前記ベルト押さえ片29には、前記基板部31と反対側の面に膨出するリブ49が前記ベルト押さえ片29の長手方向に沿って形成されていることを特徴とする。
【0012】
このベルト用肩パッド11では、ベルト押さえ片29に、長手方向でリブ49が形成されることにより、ベルト押さえ片29の断面形状が増える。これにより、ベルト押さえ片29は、延出先端を自由端とした場合の撓み荷重を大きくできる。また、形状復元性も良好にできる。
【0013】
本発明の請求項4記載のベルト用肩パッド11は、請求項1~3のいずれか1つに記載のベルト用肩パッド11であって、
前記凸部27の前記当接面41には、前記凹部43へ通じる貫通孔51が形成されていることを特徴とする。
【0014】
このベルト用肩パッド11では、凸部27の当接面41に貫通孔51があることで、さらに通気性が高まり、蒸れなどを防ぐことができる。そして、凹部43の底に穿設された貫通孔51により、凹部43に進入した水の良好な通水性が確保される。
【0015】
本発明の請求項5記載のベルト用肩パッド11は、請求項1~4のいずれか1つに記載のベルト用肩パッド11であって、
前記基板部31の前記ベルト押さえ片29に対向する部分には、前記凸部27の形成されていない開口部55が設けられていることを特徴とする。
【0016】
このベルト用肩パッド11では、基板部31上に、側板部33から延出したベルト押さえ片29が、片持ち梁状となって配置される。ベルト押さえ片29は、基板部31と反対側の面が、上面となって外側に表出する。一方、ベルト押さえ片29の基板部側の下面は、本来、基板部31により隠れる。ベルト用肩パッド11では、このベルト押さえ片29に対向する基板部31の部分に、ベルト押さえ片29を表出させる開口部55が形成される。これにより、本来隠れるベルト押さえ片29の下面が、開口部55を介して本体部25の下面側に表出した状態となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る請求項1記載のベルト用肩パッドによれば、簡単に着脱が行え、通気性が確保されて蒸れにくく、水も排出しやすくできる。
また、ベルト押さえ片を、長手方向に離間して配置するので、肩ベルトに設けられたバックル等の金具や他の部材に干渉せずに取り付けることができる。
【0018】
本発明に係る請求項2記載のベルト用肩パッドによれば、ベルト押さえ片を開きやすくでき、ベルトの着脱がさらに容易となる。
【0019】
本発明に係る請求項3記載のベルト用肩パッドによれば、リブによりベルト押さえ片の剛性を高め、ベルトの保持性を高めることができる。
【0020】
本発明に係る請求項4記載のベルト用肩パッドによれば、凹部に入った水を抜くことができ、排水性をさらに高めることができる。
【0021】
本発明に係る請求項5記載のベルト用肩パッドによれば、開口部への成形型の進入が可能となり、ベルト押さえ片の成形性を良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係るベルト用肩パッドの取り付けられたフルハーネス型安全帯が身体に装着された状態を表す正面図である。
図2図1に示したベルト用肩パッドを斜め上方より見た斜視図である。
図3図2に示したベルト用肩パッドの上面図である。
図4図2に示したベルト用肩パッドの下面図である。
図5図2に示したベルト用肩パッドのベルト取付時における要部拡大図である。
図6】ベルトに取り付けられたベルト用肩パッドの長手方向に直交する方向の断面図である。
図7】ベルトに取り付けられたベルト用肩パッドの長手方向に沿い基板部に垂直な方向の縦断面図である。
図8図2に示したベルト用肩パッドの使用状態を表す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係るベルト用肩パッド11の取り付けられたフルハーネス型安全帯13が身体に装着された状態を表す正面図である。
本実施形態に係るベルト用肩パッド11は、例えばフルハーネス型安全帯13に用いることができる。フルハーネス型安全帯13は、肩ベルト15と、腿ベルト17とを備える。肩ベルト15は、使用者の背中に配置されるベルト分岐部材から上方に二股に分かれて延びて使用者の両肩を通り、使用者の前面側を両肩から下方に延びる。腿ベルト17は、一対の肩ベルト15の下端に取り付けられる。使用者の前面側を両肩から下方に延びる一対の肩ベルト15には、使用者の胸部分で連結される胸ベルト19を設けることができる。また、肩ベルト15には、胴ベルトホルダ21を介して胴ベルト23を連結することができる。
【0024】
本実施形態に係るベルト用肩パッド11は、フルハーネス型安全帯13における一対の肩ベルト15のそれぞれに取り付けることができる。
【0025】
図2図1に示したベルト用肩パッド11を斜め上方より見た斜視図である。
本実施形態に係るベルト用肩パッド11は、本体部25と、凸部27と、ベルト押さえ片29とを有する。
【0026】
本体部25は、可撓性素材よりなる。可撓性素材は、成形性が良好で、滑りにくく、クッション性を有する素材であることが好ましい。可撓性素材としては、例えばシリコンゴム、樹脂、ゴムなどを挙げることができる。
【0027】
本体部25は、基板部31と、側板部33とからなる。基板部31は、肩35に掛けるベルトである肩ベルト15に沿って長い矩形状で形成される。側板部33は、基板部31の長手方向に沿う両側の側縁から肩35と反対側に起立して基板部31と一体に成形される。本体部25は、これら基板部31と側板部33とにより長手方向に直交方向の断面が略コ字形状となる。
【0028】
図3図2に示したベルト用肩パッド11の上面図である。
基板部31には、縦横に配列される複数の凸部27が形成される。本実施形態において、凸部27は、基板部31の長手方向中央の中央領域37と、中央領域37を挟む長手方向両側の一対の端部領域39に設けられる。凸部27は、肩ベルト15の長手方向を縦、肩ベルト15の幅方向を横とした場合、中央領域37においては縦横5×4の20個、それぞれの端部領域39においては2×4の8個ずつの合計36個が形成されている。なお、凸部27の数はこれに限定されない。
【0029】
図4図2に示したベルト用肩パッド11の下面図である。
凸部27は、膨出先端が肩35に当接する当接面41となる。また、凸部27は、当接面41の裏側が図2図3に示した凹部43となる。
【0030】
凸部27は、角錐の頂角部を平坦面で切除して膨出先端とした形状(以下、「角錐台形状」と言う。)で形成できる。そして、この角錐台形状となった凸部27の底面側は、凸部27の外表面に沿って凹んだ凹部43となる。つまり、凸部27は、外表面と凹部43の内表面との間の肉厚がほぼ均一に形成される。
【0031】
凸部27は、角錐台形状に形成されることにより、潰れる方向に変形した場合、隣接する凸部27との干渉を低減できる。これにより、凸部27は、それぞれが自由に変形でき、クッション性を良好にすることができる。また、後述するが、凸部27は角錐台形状とされることで、凸部27の先端に向けて互いが干渉しあうことなく凸部27同士互いに接近できることになり、これにより本体部25を湾曲変形させやすくする。なお、凸部27は、角錐台形状に限定されず、例えば円錐台形状などであってもよい。
【0032】
図5図2に示したベルト用肩パッド11のベルト取付時における要部拡大図である。
ベルト押さえ片29は、本体部25の少なくとも延在方向の両側に設けられる。本実施形態では、図2に示したように、本体部25の延在方向の両側に2箇所、この2箇所の間に、さらに2箇所の合計4箇所に設けられている。ベルト押さえ片29は、両側の側板部33のそれぞれから基板部31と平行に延出して延出先端同士が対向する。つまり、ベルト押さえ片29は、1箇所に一対設けられる。図5に示すように、一対のベルト押さえ片29は、基板部31との間に肩ベルト15を挿通する空間45を形成する。なお、この空間45は、後述の開口部により開放される。ベルト押さえ片29は、延出先端を基板部31から離間する方向に変形させることにより、延出先端同士の間隙47を拡開して、この空間45に肩ベルト15を挿通可能にできる。
【0033】
本実施形態において、ベルト押さえ片29は、それぞれの両側の側板部33から同じ長さで延出して間隙47を有して対向する。なお、一対のベルト押さえ片29の長さは、異なる長さであってもよい。例えば、ベルト押さえ片29は、一方が側板部33に近接して短尺となり、他方の延出先端がこの短尺のベルト押さえ片29まで延びる長尺であってもよい。
【0034】
また、ベルト押さえ片29には、基板部31と反対側の面に膨出するリブ49が、ベルト押さえ片29の延在方向に沿って形成されている。リブ49は、側板部33に達して形成されることが好ましい。
【0035】
図6はベルトに取り付けられたベルト用肩パッド11の長手方向に直交する方向の断面図である。
凸部27の当接面41には、凹部43へ通じる貫通孔51が形成されている。凸部27は、当接面41が作業服表面53に当接する。従って、当接面41は、貫通孔51で作業服表面53を開放する。これにより、基板部31が平坦面である場合に比べ、蒸れを緩和することができる。また、貫通孔51は、ベルト用肩パッド11の使用時に、凹部43に進入した雨水を、作業服表面側へ排出することもできる。
【0036】
図7はベルトに取り付けられたベルト用肩パッド11の長手方向に沿い基板部31に垂直な方向の縦断面図である。
基板部31は、ベルト押さえ片29に対向する部分に、凸部27の形成されていない開口部55が設けられている。また、基板部31は、長手方向の両端が平板部57となる。この平板部57には、肩ベルト15が載置される。開口部55は、それぞれの平板部57と端部領域39との間、それぞれの端部領域39と中央領域37との間の合計4箇所に設けられる。つまり、ベルト押さえ片29の数と一致する。基板部31は、この開口部55を介してベルト押さえ片29が下面側に表出する。
【0037】
次に、上記した構成の作用を説明する。
本実施形態に係るベルト用肩パッド11では、本体部25、凸部27、及びベルト押さえ片29の全てが、可撓性素材により一体に成形できる。ベルト用肩パッド11は、従来構造で設けられていた面ファスナーやフックボタンを取り付けたり、係止舌片や通孔を縫製したりする手間、すなわち製造工程が省ける。そのため、製造が容易となり、量産が可能となる。すなわち、単一素材での一体成形品であり、安価に生産できる。
【0038】
基板部31は、平面視におる面積の殆どが凸部27の集合体となる。凸部27は、肩35と反対側の裏側が凹部43となるので、薄肉に形成できる。よって、基板部31は、凸部27が中実である場合に比べ良好なクッション性を得ながら軽量とすることができる。
【0039】
装着の際には、可撓性素材からなるベルト押さえ片29を開くように変形させ、基板部31に肩ベルト15を配置するのみで、ベルト押さえ片29が弾性復元力により元の形状に戻る。そのため、肩ベルト15の取り付けたい個所に、その面から容易に取り付けることができる。従って、筒状のものに挿通したり、面ファスナーやフックボタンで取り付けたりする煩雑さが解消される。
【0040】
ベルト用肩パッド11は、肩ベルト15と肩35との間に、基板部31が配置される。肩ベルト15に沿う基板部31は、ベルト幅の両側が、一対の側板部33の間で保持される。基板部31に載置された肩ベルト15は、一対の側板部33からそれぞれ延出して、肩ベルト15を厚み方向で挟む複数対のベルト押さえ片29により上面が押さえられて保持される。これにより、仮にベルト押さえ片29が肩35から浮上しても、ベルト用肩パッド11は、ベルト押さえ片29が肩ベルト15に引っ掛かるので、肩ベルト15と共に浮上して装着状態が維持される。
【0041】
図8図2に示したベルト用肩パッド11の使用状態を表す側面図である。
使用時、ベルト用肩パッド11は、肩ベルト15からの反力が、基板部31を介して肩35へ加わる。基板部31は、縦横に配列された複数の凸部27の当接面41で肩35に当たる。それぞれの凸部27は、上記のように、可撓性素材により薄肉で基板部31と一体成形されるので空洞部分を備えた凸構造とされクッション性を有する。このため、肩ベルト15からの反力による応力が集中する部分の凸部27は、潰れる方向に変形する。凸部27は、変形量が各所で様々に変化することにより、肩35に加わる反力の集中を緩和することができる。また、可撓性素材からなる本体部25は、全体が肩35に沿って変形しやすい。特に各凸部27が角錐台形状とされることで、隣り合う凸部27同士での干渉が凸部27先端に向けて起こらず、肩35などの曲面に沿って本体部25が変形しやすくなる。その結果、ベルト15が直に肩に当たらず痛みをやわらげ、良好な装着性が得られるようになる。さらに、基板部31は、角錐台形状に形成した複数の凸部27で肩35に当たるので、滑り止めともなる。
【0042】
ベルト用肩パッド11は、基板部31が面で密着せず、角錐台形状に形成した多数の凸部27によって肩35に接触するので、膨出先端同士が離間し、良好な通気性を確保できる。つまり、縦横に溝を介して並んだ複数の突起が肩35に当たることになる。これにより、良好な排水性、通気性も確保される。
【0043】
そして、ベルト用肩パッド11は、複数対のベルト押さえ片29を、肩ベルト15の延在方向に離間して配置するので、肩ベルト15に設けられたバックル等の金具や他の部材に干渉せずに取り付けることができる。
【0044】
また、ベルト用肩パッド11では、ベルト押さえ片29が、両側の側板部33から同じ長さで延出し、間隙47を有して分断される。従って、ベルト押さえ片29は、基端が側板部33に固定され、延出先端が自由端となった片持ち梁状となる。これにより、ベルト押さえ片29は、延出先端が本体部25から離反方向へ容易に変形可能となり、且つ弾性復元力による肩ベルト15の押下が可能となる。その結果、ベルト押さえ片29を開きやすくでき、肩ベルト15の着脱がさらに容易となる。
【0045】
また、ベルト用肩パッド11では、ベルト押さえ片29に、延在方向でリブ49が形成されることにより、ベルト押さえ片29の断面形状が増える。これにより、ベルト押さえ片29は、延出先端を自由端とした場合の撓み荷重を大きくできる。また、形状復元性も良好にできる。その結果、リブ49によりベルト押さえ片29の剛性を高め、肩ベルト15の保持性を高めることができる。
【0046】
そして、ベルト用肩パッド11では、凸部27の当接面41に貫通孔51があることで、さらに通気性が高まり、蒸れなどを防ぐことができる。基板部31は、凹部43の底に穿設された貫通孔51により、凹部43に進入した水の良好な通水性が確保される。その結果、排水性をさらに高めることができる。
【0047】
また、基板部31は、凸部27に貫通孔51が形成されることで、剛性を弱めることができる。これにより、本体部25は、より良好なクッション性が得られる。
【0048】
さらに、ベルト用肩パッド11では、基板部上に、側板部33から延出したベルト押さえ片29が、片持ち梁状となって配置される。ベルト押さえ片29は、基板部31と反対側の面が、上面となって外側に表出する。一方、ベルト押さえ片29の基板部側の下面は、本来、基板部31により隠れる。ベルト用肩パッド11では、このベルト押さえ片29に対向する基板部31の部分に、ベルト押さえ片29を表出させる開口部55が形成される。これにより、本来隠れるベルト押さえ片29の下面が、開口部55を介して本体部25の下面側に表出した状態となる。その結果、開口部55への成形型の進入が可能となり、ベルト押さえ片29の型成形による成形性を良好にできる。また、この開口部55は、通気性や排水性の向上にも寄与する。
【0049】
従って、本実施形態に係るベルト用肩パッド11によれば、ベルト15に対して簡単に着脱が行え、通気性が確保されて蒸れにくく、水も排出しやすくできる。
【0050】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0051】
例えば上記の実施形態では、ベルト用肩パッドがフルハーネス型安全帯に用いられる場合を例に説明したが、ベルト用肩パッドは、鞄のショルダーベルトに用いられてもよい。また、ベルト用肩パッドは、車用シートベルトに用いることもできる。これらの適用例の場合においても、ベルト用肩パッドは、上記同様の作用効果を奏す。
【符号の説明】
【0052】
11…ベルト用肩パッド
15…ベルト(肩ベルト)
25…本体部
27…凸部
29…ベルト押さえ片
31…基板部
33…側板部
35…肩
41…当接面
43…凹部
45…空間
47…間隙
49…リブ
51…貫通孔
55…開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8