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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】同期信号変換装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/00 20060101AFI20220816BHJP
   G04R 20/20 20130101ALI20220816BHJP
   G04G 5/00 20130101ALI20220816BHJP
【FI】
H04L7/00 990
G04R20/20
G04G5/00 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018097083
(22)【出願日】2018-05-21
(65)【公開番号】P2019204999
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】四本 宏二
(72)【発明者】
【氏名】串岡 洋一
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 弘一
(72)【発明者】
【氏名】末岡 崇明
【審査官】谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/194518(WO,A1)
【文献】特開2017-079445(JP,A)
【文献】特開2013-195159(JP,A)
【文献】国際公開第2012/132089(WO,A1)
【文献】特開2010-283770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7/00
G04R 20/20
G04G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムの基地局の受信機に接続される同期信号変換装置であって、
前記無線通信システムの報知情報を受信して、前記報知情報からGPS基準時刻に同期したシステム同期信号を取得する同期信号取得部と、
放送波を受信して、前記放送波から時刻情報を取得する時刻情報取得部と、
前記システム同期信号のタイミングに前記時刻情報を出力することにより、GPS基準時刻に同期した同期時刻情報を生成する時刻情報同期部と、
前記同期時刻情報に基づいて、前記同期時刻情報に一致した時刻を前記基地局で算出可能とするため、複数の衛星の軌道情報及び前記各衛星からの送信時刻に相当する時刻情報を含む疑似GPS受信信号を生成するGPS時刻情報変換部と、
前記疑似GPS受信信号を前記基地局に出力する疑似GPS信号送出部とを備え
前記時刻情報同期部が、自走用のクロックを生成してタイミング信号を出力する同期カウンタと、
前記同期信号取得部で前記システム同期信号を取得できたかどうかを判断し、取得できた場合に、前記同期カウンタのタイミングを、前記システム同期信号のタイミングに補正する同期補正部と、
自走用の時刻情報を内部時刻情報として生成し、前記内部時刻情報に特定時間を加算して補正時刻情報として出力する時刻カウンタと、
前記時刻情報取得部で前記放送波からの時刻情報を取得できたかどうかを判断し、取得できた場合に前記時刻カウンタの内部時刻情報を前記放送波からの時刻情報に更新する時刻情報補正部と、
前記時刻カウンタからの前記補正時刻情報を入力して保持しておき、前記同期カウンタからのタイミング信号が入力されると、それに基づいて前記保持している補正時刻情報を前記同期時刻情報として出力する同期時刻生成部とを備えたことを特徴とする同期信号変換装置。
【請求項2】
無線通信システムの基地局の受信機に接続される同期信号変換装置であって、
前記無線通信システムの報知情報を受信して、前記報知情報からGPS基準時刻に同期したシステム同期信号を取得する同期信号取得部と、
放送波を受信して、前記放送波から時刻情報を取得する時刻情報取得部と、
前記システム同期信号のタイミングに前記時刻情報を出力することにより、GPS基準時刻に同期した同期時刻情報を生成する時刻情報同期部と、
ネットワーク規格に準拠したフォーマットに従って、前記同期時刻情報を含むネットワーク信号を生成するネットワーク信号変換部と、
前記ネットワーク信号を前記基地局に送出するネットワーク信号送出部とを備え
前記時刻情報同期部が、自走用のクロックを生成してタイミング信号を出力する同期カウンタと、
前記同期信号取得部で前記システム同期信号を取得できたかどうかを判断し、取得できた場合に、前記同期カウンタのタイミングを、前記システム同期信号のタイミングに補正する同期補正部と、
自走用の時刻情報を内部時刻情報として生成し、前記内部時刻情報に特定時間を加算して補正時刻情報として出力する時刻カウンタと、
前記時刻情報取得部で前記放送波からの時刻情報を取得できたかどうかを判断し、取得できた場合に前記時刻カウンタの内部時刻情報を前記放送波からの時刻情報に更新する時刻情報補正部と、
前記時刻カウンタからの前記補正時刻情報を入力して保持しておき、前記同期カウンタからのタイミング信号が入力されると、それに基づいて前記保持している補正時刻情報を前記同期時刻情報として出力する同期時刻生成部とを備えたことを特徴とする同期信号変換装置。
【請求項3】
システム同期信号が、GPS基準時刻から一定のオフセットを備えたパルス信号であることを特徴とする請求項1又は2記載の同期信号変換装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の同期信号変換装置を内部に備えたことを特徴とする基地局装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信システムの基地局に取り付けられる同期信号変換装置に係り、特にGPS信号やネットワーク信号を受信できない環境であってもGPSに同期した時刻情報を利用したシステムを構築でき、システム構築の自由度を増大させることができる同期信号変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
CDMA(Code Division Multiple Access)やWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)などのTDD(Time Division Duplex)方式の無線システム(既存の無線通信システム)では、端末と基地局の通信のタイミングをシステム全体で一致させる必要がある。そのため、基地局がGPS(Global Positioning System)の基準時刻に同期した同期信号を生成して、上り/下りの通信のタイミングを制御し、GPSの基準時刻に同期したシステムを実現している。
【0003】
[GPS受信機を備えた基地局装置:図10
ここで、GPS受信機を備えた基地局装置について図10を用いて説明する。図10は、GPS受信機を備えた基地局装置の概略構成を示す説明図である。
図10に示すように、基地局装置10は、GPSアンテナ101と、GPS受信機102とを備えている。
GPSアンテナ101は、GPS衛星からのGPS信号を受信して、GPS受信信号を出力する。
GPS受信機102は、GPSアンテナ101からのGPS受信信号から、UTC(Coordinated Universal Time;協定世界時)で表された基準時刻を抽出し、当該基準時刻に同期(時刻同期)する同期信号を生成する。
そして、従来の基地局装置102は、当該同期信号に従って動作を行うことにより、GPSの基準時刻に同期した通信を行う。
【0004】
ここで、本明細書においては、各GPS衛星(衛星)から送信される信号を「GPS信号」と称し、GPSアンテナ101で受信した複数の衛星からのGPS信号が重畳された状態の信号を「GPS受信信号」と称するものとする。
つまり、GPS受信信号は、GPS受信機102に入力される信号であり、GPS受信機102では、入力されたGPS受信信号に基づいて、UTCに同期した時刻情報と現在の位置情報とを取得(算出)するようになっている。
【0005】
GPS信号の受信が困難な環境では、IEEE1588で規定される有線ネットワークを介して時刻同期の情報を配信する仕組みを利用する場合がある。
また、TDD方式を用いる既存の無線通信システムにおいて、基地局から端末に送信されている報知情報には、時刻同期の情報が含まれており、基地局装置では、GPS信号の代替として他の基地局からの報知情報を用いて同期信号を生成する場合がある。
【0006】
[通信システムの報知情報]
しかしながら、現在の移動通信の主要システムであるLTE/LTE-Advanced、及び現在検討が進められている次世代システムである5G(第5世代通信)においては、基地局からの標準の報知情報には時刻情報が含まれていない。
そのため、GPS信号の代替としての活用が困難となっている。
【0007】
また、LTE-Advancedでは、周波数を束ねて高速化を図るCA(Carrier Aggregation)技術に基地局間の同期が必要であり、また、LTE-Advanced及び5Gの新たな周波数割り当てにおいては、TDD方式が前提となっている。
TDD方式では、正確なタイミングで送受信を行わないと干渉を起こしてしまう。そのため、これらの通信システムにおいては、基地局からの報知情報に時刻情報は含まないものの、システムの同期信号であるフレーム番号等の周期信号が報知されており、この周期信号はGPSの基準時刻と同期していることが多い。
システムによっては、周期信号がGPSの基準時刻に対して一定のずれ(オフセット)を持つ場合もある。
【0008】
[放送信号の時刻情報]
また、放送局から送信されている地上デジタル放送や衛星放送の放送波には、時刻情報が含まれている。
放送波の時刻情報には、放送局毎のクロック精度の違いや、伝搬による受信タイミングのゆらぎが発生する。
【0009】
[関連技術]
尚、同期信号変換装置の従来技術としては、特開2016-39514号公報「同期信号変換装置」(特許文献1)がある。
特許文献1には、受信した放送波から放送波同期信号を取得して、疑似的なGPS信号の同期信号に変換し、当該変換された同期信号を含む疑似的なGPS受信信号を生成してGPS受信部を備えた基地局装置に出力し、基地局装置に基準クロックを生成させる同期信号変換装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2016-39514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、LTE/LTE Advanced、及び5Gの通信システムにおいては、報知情報に時刻情報が含まれていないため、基地局装置が、GPS信号の代わりに報知情報を用いて同期信号を生成することができず、GPS信号やネットワーク信号の受信が困難な環境における通信システムの同期確立が困難であるという問題点があった。
【0012】
尚、特許文献1には、時刻情報を含まない報知情報から、GPS基準時刻に同期した通信システムの同期情報を抽出し、放送波に含まれる時刻情報を当該通信システムの同期情報で補正して、GPS基準時刻に同期した時刻情報を得ることは記載されていない。
【0013】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、報知情報に時刻情報が含まれず、GPS信号やネットワーク信号の受信が困難な環境であっても、GPSの基準時刻に同期したシステムを実現し、システム構築の自由度を増大させることができる同期信号変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、無線通信システムの基地局の受信機に接続される同期信号変換装置であって、無線通信システムの報知情報を受信して、報知情報からGPS基準時刻に同期したシステム同期信号を取得する同期信号取得部と、放送波を受信して、放送波から時刻情報を取得する時刻情報取得部と、システム同期信号のタイミングに時刻情報を出力することにより、GPS基準時刻に同期した同期時刻情報を生成する時刻情報同期部と、同期時刻情報に基づいて、同期時刻情報に一致した時刻を基地局で算出可能とするため、複数の衛星の軌道情報及び前記各衛星からの送信時刻に相当する時刻情報を含む疑似GPS受信信号を生成するGPS時刻情報変換部と、疑似GPS受信信号を基地局に出力する疑似GPS信号送出部とを備え、時刻情報同期部が、自走用のクロックを生成してタイミング信号を出力する同期カウンタと、同期信号取得部でシステム同期信号を取得できたかどうかを判断し、取得できた場合に、同期カウンタのタイミングを、システム同期信号のタイミングに補正する同期補正部と、自走用の時刻情報を内部時刻情報として生成し、内部時刻情報に特定時間を加算して補正時刻情報として出力する時刻カウンタと、時刻情報取得部で放送波からの時刻情報を取得できたかどうかを判断し、取得できた場合に前記時刻カウンタの内部時刻情報を放送波からの時刻情報に更新する時刻情報補正部と、時刻カウンタからの補正時刻情報を入力して保持しておき、同期カウンタからのタイミング信号が入力されると、それに基づいて保持している補正時刻情報を同期時刻情報として出力する同期時刻生成部とを備えたことを特徴としている。
【0015】
また、本発明は、無線通信システムの基地局の受信機に接続される同期信号変換装置であって、無線通信システムの報知情報を受信して、報知情報からGPS基準時刻に同期したシステム同期信号を取得する同期信号取得部と、放送波を受信して、放送波から時刻情報を取得する時刻情報取得部と、システム同期信号のタイミングに前記時刻情報を出力することにより、GPS基準時刻に同期した同期時刻情報を生成する時刻情報同期部と、ネットワーク規格に準拠したフォーマットに従って、同期時刻情報を含むネットワーク信号を生成するネットワーク信号変換部と、ネットワーク信号を基地局に送出するネットワーク信号送出部とを備え、時刻情報同期部が、自走用のクロックを生成してタイミング信号を出力する同期カウンタと、同期信号取得部でシステム同期信号を取得できたかどうかを判断し、取得できた場合に、同期カウンタのタイミングを、システム同期信号のタイミングに補正する同期補正部と、自走用の時刻情報を内部時刻情報として生成し、内部時刻情報に特定時間を加算して補正時刻情報として出力する時刻カウンタと、時刻情報取得部で放送波からの時刻情報を取得できたかどうかを判断し、取得できた場合に時刻カウンタの内部時刻情報を放送波からの時刻情報に更新する時刻情報補正部と、時刻カウンタからの補正時刻情報を入力して保持しておき、同期カウンタからのタイミング信号が入力されると、それに基づいて保持している補正時刻情報を同期時刻情報として出力する同期時刻生成部とを備えたことを特徴としている。
【0016】
また、本発明は、上記同期信号変換装置において、システム同期信号が、GPS基準時刻から一定のオフセットを備えたパルス信号であることを特徴としている。
【0022】
また、本発明は、上記いずれかに記載の同期信号変換装置を内部に備えた基地局装置としている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、無線通信システムの基地局の受信機に接続される同期信号変換装置であって、無線通信システムの報知情報を受信して、報知情報からGPS基準時刻に同期したシステム同期信号を取得する同期信号取得部と、放送波を受信して、放送波から時刻情報を取得する時刻情報取得部と、システム同期信号のタイミングに時刻情報を出力することにより、GPS基準時刻に同期した同期時刻情報を生成する時刻情報同期部と、同期時刻情報に基づいて、同期時刻情報に一致した時刻を基地局で算出可能とするため、複数の衛星の軌道情報及び前記各衛星からの送信時刻に相当する時刻情報を含む疑似GPS受信信号を生成するGPS時刻情報変換部と、疑似GPS受信信号を基地局に出力する疑似GPS信号送出部とを備え、時刻情報同期部が、自走用のクロックを生成してタイミング信号を出力する同期カウンタと、同期信号取得部でシステム同期信号を取得できたかどうかを判断し、取得できた場合に、同期カウンタのタイミングを、システム同期信号のタイミングに補正する同期補正部と、自走用の時刻情報を内部時刻情報として生成し、内部時刻情報に特定時間を加算して補正時刻情報として出力する時刻カウンタと、時刻情報取得部で放送波からの時刻情報を取得できたかどうかを判断し、取得できた場合に前記時刻カウンタの内部時刻情報を放送波からの時刻情報に更新する時刻情報補正部と、時刻カウンタからの補正時刻情報を入力して保持しておき、同期カウンタからのタイミング信号が入力されると、それに基づいて保持している補正時刻情報を同期時刻情報として出力する同期時刻生成部とを備えた同期信号変換装置としているので、基地局が、GPS信号を受信できない環境に設置されている場合でも、疑似GPS受信信号に基づいてGPS基準時刻に同期した同期信号を生成して通信システムを実現でき、システム構築の自由度を増大させることができる効果がある。
【0024】
また、本発明によれば、無線通信システムの基地局の受信機に接続される同期信号変換装置であって、無線通信システムの報知情報を受信して、報知情報からGPS基準時刻に同期したシステム同期信号を取得する同期信号取得部と、放送波を受信して、放送波から時刻情報を取得する時刻情報取得部と、システム同期信号のタイミングに前記時刻情報を出力することにより、GPS基準時刻に同期した同期時刻情報を生成する時刻情報同期部と、ネットワーク規格に準拠したフォーマットに従って、同期時刻情報を含むネットワーク信号を生成するネットワーク信号変換部と、ネットワーク信号を基地局に送出するネットワーク信号送出部とを備え、時刻情報同期部が、自走用のクロックを生成してタイミング信号を出力する同期カウンタと、同期信号取得部でシステム同期信号を取得できたかどうかを判断し、取得できた場合に、同期カウンタのタイミングを、システム同期信号のタイミングに補正する同期補正部と、自走用の時刻情報を内部時刻情報として生成し、内部時刻情報に特定時間を加算して補正時刻情報として出力する時刻カウンタと、時刻情報取得部で放送波からの時刻情報を取得できたかどうかを判断し、取得できた場合に時刻カウンタの内部時刻情報を放送波からの時刻情報に更新する時刻情報補正部と、時刻カウンタからの補正時刻情報を入力して保持しておき、同期カウンタからのタイミング信号が入力されると、それに基づいて保持している補正時刻情報を同期時刻情報として出力する同期時刻生成部とを備えた同期信号変換装置としているので、基地局が、ネットワーク信号を受信できない環境に設置されている場合でも、同期信号変換装置からのネットワーク信号に基づいてGPS基準時刻に同期した同期信号を生成して通信システムを実現でき、システム構築の自由度を増大させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る同期信号変換装置(第1の同期信号変換装置)の概略を示す説明図である。
図2】第1の同期信号変換装置の構成ブロック図である。
図3】時刻情報同期部13の構成を示す構成ブロック図である。
図4】時刻情報同期部13における同期時刻情報生成の動作を示すタイミング説明図である。
図5】第2の同期信号変換装置の概略を示す説明図である。
図6】第2の同期信号変換装置2の構成ブロック図である。
図7】第3の同期信号変換装置の構成ブロック図である。
図8】第4の同期信号変換装置の概略を示す説明図である。
図9】第4の同期信号変換装置4の構成ブロック図である。
図10】GPS受信機を備えた基地局装置の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る同期信号変換装置は、移動体通信システムの基地局から送信された報知情報から、GPSの基準時刻に同期したシステム同期信号(例えばフレーム番号)を抽出すると共に、放送波から取得した時刻情報を、当該システム同期信号のタイミングで補正することにより基準時刻に同期した時刻情報を生成し、当該時刻情報に対応して、複数の衛星の軌道情報及び各衛星からの送信時刻に相当する時刻情報を含む疑似GPS受信信号を生成して、GPS受信機を備えた受信側装置(例えば基地局装置)に出力するものであり、GPS信号が受信できない環境にある受信側装置でも、疑似GPS受信信号に基づいてGPS基準時刻に同期した同期信号を生成して通信システムを実現でき、システム構築の自由度を増大させることができるものである。
【0032】
また、本発明の実施の形態に係る同期信号変換装置は、移動体通信システムの基地局から送信された報知情報から、GPS信号に基づく基準時刻に同期したシステム同期信号(フレーム番号)を抽出すると共に、放送波から取得した時刻情報を、当該システム同期信号のタイミングで補正することにより基準時刻に同期した時刻情報を生成し、有線ネットワークのフォーマットに基づいて、当該時刻情報を含むネットワーク信号を生成して、有線ネットワークのインターフェースを備えた受信側装置(例えば基地局装置)に出力するものであり、ネットワーク信号が受信できない環境にある受信側装置でも、有線ネットワークを介して受信した時刻情報に基づいてGPSの基準時刻に同期した同期信号を生成して通信システムを実現でき、システム構築の自由度を増大させることができるものである。
【0033】
尚、以下の実施の形態では、無線システムとして、LTE/LTE-Advanced又は5Gのシステムに適用した例を説明するが、本発明の実施の形態に係る同期信号変換装置は、LTE/LTE-Advanced又は5Gに特化したものではなく、報知情報に時刻情報を含まず、GPSの基準時刻に同期したシステム同期信号を含むシステム全般における時刻同期に適用可能なものである。
【0034】
[第1の実施の形態に係る同期信号変換装置の概略:図1
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る同期信号変換装置(第1の同期信号変換装置)の概略を示す説明図である。
第1の同期信号変換装置1は、図1に示すように、図10と同様のGPS受信機102を備えた基地局装置10に接続されて用いられ、基地局装置10に疑似GPS信号を供給するものである。
【0035】
具体的には、第1の同期信号変換装置1は、LTE/LTE-Advanced又は5Gの無線信号と、放送局からの放送波とを受信する受信アンテナ16を備え、LTE/LTE-Advanced又は5Gの無線信号と、放送波とを用いて、GPSの基準時刻に同期した時刻情報を生成し、更に受信側の装置に当該GPSの基準時刻に同期した時刻情報を取得させるための情報を含む疑似GPS受信信号を生成して、基地局装置10に出力するものである。
【0036】
基地局装置10は、GPS受信機102を備えているが、GPSアンテナは設けられていない。そして、GPS受信機102が、GPS受信信号の代わりに第1の同期信号変換装置1からの疑似GPS受信信号を入力して、GPSの基準時刻に同期した時刻情報を取得し、それに基づいて同期信号を生成する。
【0037】
ここで、本発明の同期信号変換装置で生成される疑似GPS受信信号は、接続された基地局装置10のGPS受信機102が、UTCに同期した正確な時刻情報と正しい位置情報とを取得できるように生成された信号であり、複数の衛星からのGPS信号を受信した場合と同様に、複数の衛星に対応する軌道情報や各衛星の送信時刻に相当する時刻情報を含む信号である。
つまり、基地局10のGPS受信機102は、疑似GPS受信信号が入力されると、複数の衛星からのGPS信号が重畳されて入力されたものとして認識し、本来のGPS受信信号を入力した場合と同じ動作を行うものである。
尚、ここでは「GPSの基準時刻に同期した時刻情報」は「UTCに同期した時刻情報」と同義として用いる。
【0038】
[第1の同期信号変換装置の構成:図2
第1の同期信号変換装置の構成について図2を用いて説明する。図2は、第1の同期信号変換装置の構成ブロック図である。
図2に示すように、第1の同期信号変換装置は、受信アンテナ16と、同期信号取得部11と、時刻情報取得部12と、時刻情報同期部13と、GPS時刻情報変換部14と、疑似GPS信号送出部15とを備えている。
【0039】
第1の同期信号変換装置1の各部について説明する。
受信アンテナ16は、LTE,LTE-Advanced又は5Gの基地局からの電波を受信すると共に、放送局からの放送波を受信するアンテナである。
ここでは、受信アンテナ16でLTE等の無線通信システム(移動体通信システム)の信号と放送波の両方を受信するようにしているが、無線通信システム用のアンテナと放送波用のアンテナとを独立して設け、それぞれ、同期信号取得部11、時刻情報取得部12に接続するよう構成してもよい。
【0040】
同期信号取得部11は、受信した無線通信システムの信号に含まれる報知情報から、システム同期信号を抽出する。システム同期信号としては、例えば特定のフレーム番号を示す信号等がある。システム同期信号は、GPSの基準時刻のタイミングと同期している。
尚、無線通信システムの種類によっては、システム同期信号がGPSの基準時刻から一定のオフセットを持つ場合もある。
【0041】
時刻情報取得部12は、受信した放送波に含まれる時刻情報を抽出する。放送波に含まれる時刻情報は、クロック精度の違いや電波伝搬による受信タイミングのゆらぎによる誤差を含んでおり、GPSの基準時刻とは同期していない。
【0042】
ここで、第1の同期信号変換装置1が利用する放送波としては、地上波デジタル放送の放送波と、衛星放送の放送波とがあり、時刻情報取得部12は、地上波デジタル放送の受信手段と、衛星放送の受信手段のいずれか一方、又は両方を備えている。
両方を備えている場合には、時刻情報取得部12は、第1の同期信号変換装置1が設置されている環境に応じて、地上波デジタル放送又は衛星放送のいずれかを選択して受信するよう設定される。
【0043】
時刻情報同期部13は、第1の同期信号変換装置の特徴部分であり、同期信号取得部11からのシステム同期情報と、時刻情報取得部12からの時刻情報とを入力し、これらに基づいて時刻情報を補正して、GPSの基準時刻に同期した時刻情報(同期時刻情報)を生成する。
時刻情報同期部13の構成及び動作については後述する。
【0044】
GPS時刻情報変換部14は、時刻情報同期部13から入力された同期時刻情報に基づいて、疑似GPS受信信号を生成する。
具体的には、GPS時刻情報変換部14では、同期時刻情報に対応するよう、複数の衛星からのGPS信号を疑似的に算出し、あたかも複数のGPS信号が重なったようなGPS受信信号(疑似GPS受信信号)を生成する。
【0045】
上述したように、疑似GPS受信信号には、受信側装置で当該同期時刻情報が算出されるように生成された、複数の衛星の軌道情報及び各衛星からの送信時刻に相当する時刻情報が含まれており、基地局装置10のGPS受信機102は、受信した疑似GPS受信信号に基づいて同期時刻情報と同一の時刻情報を算出して同期信号を生成すると共に、位置を算出することが可能となる。
【0046】
尚、疑似GPS信号は、GPS受信機のテストに用いられるGPSシミュレータにおいて生成される信号と同様であり、例えば、キーサイトテクノロジー合同会社,2015年1月6日発行,「Keysight Technologies GPSレシーバ・テスト」に記載されている。
【0047】
疑似GPS信号送出部15は、GPS時刻情報変換部14から出力された疑似GPS受信信号を、接続する基地局装置10に出力する。
【0048】
[第1の同期信号変換装置の動作:図1,2]
第1の同期信号変換装置の動作について図1,2を用いて簡単に説明する。
第1の同期信号変換装置では、受信アンテナ16で、LTE,LTE-Advanced又は5Gの無線通信システムの基地局からの電波が受信されると共に、放送波が受信される。
そして、同期信号取得部11で無線通信システムの信号からシステム同期信号が取得され、時刻情報取得部12で放送波から時刻情報が取得される。システム同期信号はGPSの基準時刻に同期しているが、放送波の時刻情報はずれを含んでいる。
【0049】
そして、時刻情報同期部13で、放送波からの時刻情報がシステム同期信号に基づいてGPSの基準時刻に同期するよう補正され、同期時刻情報として出力される。そして、GPS時刻情報変換部14で、受信側の基地局装置10において当該同期時刻情報と同一の時刻が算出されるよう、疑似GPS受信信号が生成されて、疑似GPS信号送出部15から当該疑似GPS受信信号が出力される。
このようにして第1の同期信号変換装置における動作が行われる。
【0050】
[時刻情報同期部13の構成:図3
次に、時刻情報同期部13の構成について図3を用いて説明する。図3は、時刻情報同期部13の構成を示す構成ブロック図である。
図3に示すように、時刻情報同期部13は、同期補正部31と、時刻情報補正部32と、同期時刻生成部33とを備えている。
時刻情報同期部13は、基本的には内部クロックに基づいて自走動作を行うものであり、同期時刻生成部33が、時刻情報補正部32からの時刻情報を、同期補正部31からのタイミングに従って出力することで、GPS基準時刻に同期した時刻情報(同期時刻情報)を生成するようになっている。
【0051】
そして、時刻情報同期部13では、受信アンテナ16からシステム同期信号が入力された場合に、同期タイミング補正部311でタイミングの補正を行い、また、放送波の時刻情報が入力された場合には時刻補正部321で内部の時刻情報を補正する。
【0052】
時刻情報同期部13が自走動作を行うことにより、無線通信システムの基地局からの電波や、放送中継局からの放送波が十分届かない場合や、メンテナンス等で電波の送出を休止する場合でも、時刻情報同期部13からは途切れることなく同期時刻情報を出力できるようにしている。
【0053】
時刻情報同期部13の各部について具体的に説明する。
同期補正部31は、同期タイミング補正部311と、同期カウンタ312とを備えている。
同期タイミング補正部311は、同期信号取得部11から入力される1PPS(Pulse Per Second)のシステム同期信号に基づいて、同期カウンタ312に対してタイミング補正を行うものであり、システム同期信号が入力された場合に同期カウンタ312にタイミングを指示する。
【0054】
具体的には、同期タイミング補正部311は、システム同期信号が正常に受信できているかどうかを判断し、正常に受信できている場合に同期カウンタ312のタイミングをシステム同期信号に合わせて更新する。
その際、システム同期信号がGPS基準時刻に対して既知のオフセットがある場合には、同期タイミング補正部311は、オフセット分を補正したタイミング指示を行う。
【0055】
同期カウンタ312は、VCXO(Voltage Controlled Crystal Oscillator;電圧制御水晶発振器)やTCXO(Temperature Compensated Crystal Oscillator;温度補償水晶発振器)等を備えた周波数生成回路であり、タイミングをカウントする自走信号(自走クロック)を生成する。
ここでは、同期カウンタ312は、自走クロックに基づいて、1秒毎に同期タイミング(タイミング信号)を出力する。また、同期カウンタ312は、タイミング補正部311からのタイミング指示が入力されると、当該タイミングを起点として1秒毎の同期タイミングを生成する。
【0056】
これにより、システム同期信号がGPSの基準時刻に対してオフセットを持つ場合や、自走状態が長引いて同期カウンタ312で生成する同期タイミングがずれた場合に、その補正を行うことができるものである。
つまり、システム同期信号が正常に入力されている場合には、同期カウンタ312からはGPSの基準時刻に同期した1PPSのタイミング信号が出力される。
【0057】
時刻情報補正部32は、時刻補正部321と、時刻カウンタ322とを備えている。
時刻補正部321は、時刻情報取得部12より、放送波から抽出した事項情報が正常に受信できているかどうかを判断し、正常に受信できている場合には、時刻カウンタ322のカウンタ値(内部時刻情報)を取得した時刻情報に更新する。
【0058】
時刻カウンタ322は、VCXOやTCXOを備えた周波数生成回路であり、自走クロックを生成して、自立した時刻情報(内部時刻情報)を生成し、内部時刻情報に特定時間を加算した補正時刻情報を出力する。特定時間については後述する。
【0059】
また、時刻カウンタ322は、時刻補正部321から時刻情報更新の指示が入力されると、内部時刻情報を入力された時刻情報(放送波から取得した時刻情報)で更新する。
これにより、放送波から取得した時刻情報が正常に入力されている場合には、時刻カウンタ322からは、放送波の時刻情報に特定時間が加算された補正時刻情報が出力される。
【0060】
ここで、時刻カウンタ322で加算する特定時間について説明する。
特定時間は、内部時刻情報からGPS基準時刻に同期した同期時刻情報を生成する処理を行うために加算する時間である。
具体的には、特定時間は、放送波から抽出した時刻情報とGPSの基準時刻とのずれとして想定される最大の時間より大きい時間としており、ここでは、0.5秒としている。
尚、自走時には内部時刻情報が放送波の時刻情報より若干遅れたり早まったりすることはあるものの、放送波の時刻情報を正常に受信すれば、放送波の時刻情報に合わせて内部時刻情報が更新されるため、自走によるずれを考慮する必要はない。
【0061】
同期時刻生成部33は、時刻情報補正部32から入力される補正時刻情報を保持すると共に、同期補正部31からGPS基準時刻に同期した1PPSのタイミング信号が入力されると、保持している補正時刻情報を当該タイミングに従って出力する。
これにより、同期時刻生成部33からはGPS基準時刻に同期した時刻情報(同期時刻情報)が1秒毎に出力されるものである。この動作については、後述する。
【0062】
[同期時刻情報生成の動作:図4
次に、時刻情報同期部13の動作について図4を用いて説明する。図4は、時刻情報同期部13における同期時刻情報生成の動作を示すタイミング説明図である。
ここでは、第1の同期信号変換装置として説明するが、後述する第2の同期信号変換装置も同様の処理で同期時刻情報を生成するものである。
【0063】
図4(a)は、GPS基準時刻を示しており、ここでは1秒に1回のパルス信号として示している。尚、本発明の実施の形態で説明する同期信号変換装置は、いずれもGPS基準時刻は受信できない環境に設置されている。
図4(b)は、LTE等の無線通信システムの基地局から送信されている報知情報から取得したシステム同期信号である。システム同期信号としては、実際には多数のパルスが含まれているが、ここでは、1秒間に1回の特定のパルス信号のみをシステム同期信号として用いる。
また、図4(b)の例では、システム同期信号はGPS基準時刻に対して既知のオフセットを持っている。
【0064】
図4(c)は、同期補正部31の出力信号を示しており、システム同期信号に基づくタイミング補正が行われる前の1番目のパルスはGPS基準時刻に同期していないが、システム同期信号を受信すると、同期タイミング補正部311でタイミング補正が行われて、同期カウンタ312の自走によるタイミングのずれ及びオフセットが補正される。
そして、図4(c)に示すように、同期補正部31からは、2番目のパルス以降、(a)のGPS基準時刻に同期した1PPSのタイミング信号が出力される。
【0065】
図4(d)は、放送波から取得した時刻情報を示している。図4(d)に示すように、放送波の時刻情報は、(a)のGPS基準時刻に同期しておらず、遅れによるタイミング誤差を生じている。
【0066】
図4(e)は、(d)の放送波時刻情報を正常に受信している場合の、時刻情報補正部32の出力を示している。時刻情報補正部32の出力は、(d)に示した放送波の時刻情報より0.5秒進んでおり、時刻情報補正部32は、内部時刻情報に0.5秒加算した補正時刻情報を出力していることを示している。
また、時刻カウンタ322のタイミングは、(a)のGPS基準時刻に同期していない。
【0067】
そして、図4(f)に示すように、同期時刻生成部33では、時刻情報補正部32からの補正時刻情報を保持しておき、同期補正部31からのタイミング信号に基づいて、同期時刻情報として出力する。
図4(f)では、同期時刻情報のイメージを示しており、同期時刻生成部33は、(c)の同期補正部31からのタイミング信号に従って、その時に保持している(e)の補正時刻情報を出力する。図4の例では、「14:48:01.000.000」の同期時刻情報が、(a)のGPS基準時刻と同期して出力されることになる。
また、説明のために同期時刻情報を時間的に幅のある信号として示しているが、実際には(c)のタイミング信号に同期して時刻を報知するパルス信号である。
【0068】
尚、図4(f)では「14:48:01.500.000」の時刻情報も記載されているが、同期時刻情報は(c)の同期補正部出力のタイミングに従って1秒毎に出力される信号であるため、「14:48:01.000.000」の次は、「14:48:02.000.000」となる。
このようにして、時刻情報同期部13の動作が行われるものである。
【0069】
そして、時刻情報同期部13で生成されたGPS基準時刻に同期した同期時刻情報は、GPS時刻情報変換部14で適切な疑似GPS受信信号に変換されて、疑似GPS信号送出部から基地局装置10に出力される。
【0070】
これにより、基地局装置10では、GPS受信機102が、受信した疑似GPS受信信号に基づいて、同期時刻情報と一致する時刻を算出して同期信号を生成すると共に、位置情報を算出する。
このようにして、GPS信号を受信できない環境であっても、基地局装置10がGPS基準時刻に同期した同期信号を生成して、GPSと時刻同期した無線通信システムを実現することができるものである。
【0071】
[第1の同期信号変換装置の効果]
第1の同期信号変換装置によれば、同期信号取得部11が、無線通信システムの報知情報から、GPSの基準時刻に同期したシステム同期信号を抽出し、時刻情報取得部12が、放送波から時刻情報を取得し、時刻情報同期部13が、放送波の時刻情報を特定時間だけ進めるよう補正して補正時刻情報として保持しておき、システム同期信号に同期したタイミングで当該補正時刻情報を出力することでGPSの基準時刻に同期した同期時刻情報を生成し、GPS時刻情報変換部14が、受信側において当該同期時刻情報と同じ時刻が算出されるよう、複数の衛星の軌道情報や時刻情報を含む疑似GPS受信信号を生成して、疑似GPS信号送出部15が、GPS受信機102を備えた基地局装置10に出力するようにしているので、GPS信号を受信できない環境下であっても、基地局装置10は、疑似GPS受信信号からGPS基準時刻に同期した時刻情報を算出して同期信号を生成でき、GPSに同期した無線通信システムを実現することができる効果がある。
【0072】
また、第1の同期信号変換装置によれば、時刻情報同期部13が、通常は、自走する同期クロックや時刻カウンタを用いて動作し、基地局からシステム同期信号を正常に受信した場合に同期タイミングを補正し、放送波から時刻情報を正常に受信した場合に内部時刻情報を更新するようにしているので、無線通信システムの電波が良好に受信できない弱電界の環境や、テレビの視聴が困難な弱電界の環境においても、第1の同期信号変換装置を利用することが可能となる効果がある。
【0073】
[第2の同期信号変換装置:図5
次に、本発明の第2の実施の形態に係る同期信号変換装置(第2の同期信号変換装置)について図5を用いて説明する。図5は、第2の同期信号変換装置の概略を示す説明図である。
図5に示すように、第2の同期信号変換装置2は、第1の同期信号変換装置と同様に、LTE/LTE-Advanced、又は5Gの無線システムの信号を受信すると共に、放送波を受信する受信アンテナ16を備え、特定の有線ネットワーク(例えばIEEE1588)を介して、GPS信号を受信できない環境に設置された基地局装置20にGPS基準時刻に同期した時刻情報を提供するものである。
【0074】
ここで、基地局装置20は、特定の有線ネットワーク(例えばIEEE1588)のインターフェース(ネットワークインターフェース)202を備えている。
そして、第2の同期信号変換装置2は、GPS基準時刻に同期した時刻情報(同期時刻情報)をネットワークの同期信号に変換して、基地局装置20に送出する。
【0075】
[第2の同期信号変換装置の構成:図6
次に、第2の同期信号変換装置2の構成について図6を用いて説明する。図6は、第2の同期信号変換装置2の構成ブロック図である。
図6に示すように、第2の同期信号変換装置2は、受信アンテナ16と、同期信号取得部11と、時刻情報取得部12と、時刻情報同期部13と、ネットワーク信号変換部24と、ネットワーク信号送出部25とを備えている。
ここで、受信アンテナ16と、同期信号取得部11と、時刻情報取得部12と、時刻情報同期部13は第1の同期信号変換装置と同様の構成及び動作であり、説明は省略する。
【0076】
第2の同期信号変換装置2の特徴部分について説明する。
ネットワーク信号変換部24は、時刻情報同期部13から出力されるGPS基準時刻に同期した同期時刻情報を入力して、例えばIEEE1588等のネットワーク規格に準拠した所定のフォーマットに変換して、当該同期時刻情報を含むネットワーク信号を生成する。
【0077】
ネットワーク信号送出部25は、ネットワーク信号変換部24からのネットワーク信号を基地局装置20に送出する。
基地局装置20は、ネットワークインターフェース202を介して受信したネットワーク信号から同期時刻情報を抽出し、当該同期時刻情報から同期信号(基準クロック)を生成して、通信を実現する。
【0078】
これにより、GPS受信機を備えておらず、IEEE1588等に準拠したネットワーク信号を受信できない環境に設置されている基地局装置20であっても、ネットワーク信号からGPS基準時刻に同期した同期時刻情報を抽出して基準クロックを生成することができるものである。
【0079】
[第2の同期信号変換装置の効果]
第2の同期信号変換装置によれば、時刻情報同期部13が、GPS基準時刻に同期したシステム同期信号と、放送波の時刻情報とを用いて、放送波の時刻情報をシステム同期信号に合わせて補正することにより、GPS基準時刻に同期した同期時刻情報を生成し、ネットワーク信号変換部24が、IEEE1588等のネットワークのフォーマットに従って、当該同期時刻情報を含むネットワーク信号を生成し、ネットワーク信号送出部25が、当該ネットワーク信号を、ネットワークインターフェース202を備えた基地局装置20に出力するようにしているので、IEEE1588等に準拠したネットワーク信号を受信できない環境に設置されている基地局装置20であっても、第2の同期信号変換装置からのネットワーク信号を受信してGPS基準時刻に同期した同期時刻情報を抽出し、基準クロックとして利用することができ、システム構築の自由度を増大させることができる効果がある。
【0080】
[第3の同期信号変換装置:図7
次に、本発明の第3の実施の形態に係る同期信号変換装置(第3の同期信号変換装置)について図7を用いて説明する。図7は、第3の同期信号変換装置の構成ブロック図である。
第3の同期信号変換装置は、第1の同期信号変換装置と同様に、GPS受信機を備えた受信側装置(通信装置)に接続されて用いられるものであり、疑似GPS受信信号を受信側装置に提供するものである。
【0081】
尚、上述した第1、第2の同期信号変換装置は、GPS基準時刻に正確に同期した時刻情報が必要なLTE/LTE-Advanced又は5Gの無線通信システムの基地局装置10に接続されるものであるが、第3の同期信号変換装置は、公衆網のような正確な時刻情報を必要としない自営網の受信側装置を想定している。
例えば、工場内や建築現場等のローカルに閉じた環境にネットワークを構築する場合、当該ネットワークに含まれる機器同士は同期している必要があるものの、時刻が外部のネットワークと一致する必要はない。
【0082】
図7に示すように、第3の同期信号変換装置3は、特徴部分として、第1の同期信号変換装置1の時刻情報取得部12の代わりに、時刻初期設定部34を備えた構成である。他の構成部分は第1の同期信号変換装置と同様である。
【0083】
時刻初期設定部34は、時刻情報同期部13に対して任意の時刻情報を初期値として設定するものである。
これにより、第3の同期信号変換装置3の時刻情報同期部13では、時刻初期設定部34からの設定値を初期値として、内部クロックに基づいて自走して内部時刻情報を生成する。そして、同期時刻生成部33では、内部時刻情報(又は内部時刻情報に特定時間を加算した補正時刻情報)を、GPS基準時刻のタイミングで出力して同期時刻情報を生成することになる。
【0084】
そして、GPS時刻情報変換部14で、同期時刻情報に対応する適切な疑似GPS受信信号を生成して、疑似GPS信号送出部15から受信側装置に出力する。
第3の同期信号変換装置3では、放送波から時刻情報を取得して内部時刻を補正する処理を行わないため、同期信号変換装置の構成及び処理を簡易にすることができ、低コストで実現可能としている。
【0085】
尚、第3の同期信号変換装置3の同期時刻生成部33における動作は、図4とほぼ同様であるが、(d)に示した放送波時刻情報が入力されず、(e)の時刻情報補正部出力は、時刻初期設定部33から設定された初期値に基づいて自走した時刻情報又はそれに特定時間を加算した補正時刻情報となる。
【0086】
また、第3の同期信号変換装置3では、GPS基準時刻に高精度で同期した正確な時刻情報は得られないものの、同期時刻情報によって、GPS基準時刻に同期したタイミングの情報は得ることができる。
【0087】
そして、第3の同期信号変換装置3からの疑似GPS受信信号を受信した受信側装置では、疑似GPS受信信号から取得した同期時刻情報に基づくタイミングに従って同期信号を生成して、通信に利用することができるものである。
更に、第3の同期信号変換装置3は、低コストで実現できるため、正確な時刻情報を必要としない様々な用途への利用を図ることが可能である。
【0088】
[第3の同期信号変換装置の効果]
第3の同期信号変換装置によれば、時刻初期設定部34備え、放送波から時刻情報を取得せずに、時刻情報同期部13に任意の時刻を初期値として設定し、時刻情報同期部13が、当該任意の時刻を初期値として自走して内部時刻情報を生成し、内部時刻情報をGPS基準時刻に同期した通信システムの同期信号のタイミングで補正して同期時刻情報を生成し、同期時刻情報を疑似GPS受信信号に変換して出力するようにしているので、放送波を用いずに同期信号変換装置を簡易な構成及び処理で実現でき、GPS信号を受信できない環境に設置された通信装置でも、疑似GPS受信信号から算出した同期時刻情報に基づいて同期信号を生成することができ、無線通信システム構築の自由度を増大させることができる効果がある。
【0089】
[第4の同期信号変換装置:図8
次に、本発明の第4の実施の形態に係る同期信号変換装置(第4の同期信号変換装置)について図8を用いて説明する。図8は、第4の同期信号変換装置の概略を示す説明図である。
図8に示すように、第4の同期信号変換装置4は、受信側の装置と距離的に離れた場所に設置されており、無線によって疑似GPS受信信号を送信する疑似GPS受信信号送信アンテナ17を備えた構成となっている。
第4の同期信号変換装置は、時刻情報あるいは位置情報を配信することを目的としたものであり、例えば、GPS受信機を備えたIoT(Internet of Things)機器等に利用される。
【0090】
[第4の同期信号変換装置4の構成:図9
次に、第4の同期信号変換装置4の構成について図9を用いて説明する。図9は、第4の同期信号変換装置4の構成ブロック図である。
図9に示すように、第4の同期信号変換装置4は、受信アンテナ16と、同期信号取得部11と、時刻初期設定部34と、時刻情報同期部13と、GPS時刻情報変換部42と、位置情報設定部41と、疑似GPS信号送出部15と、疑似GPS受信信号送信アンテナ17を備えている。
ここで、受信アンテナ16と、同期信号取得部11と、時刻情報同期部13と、疑似GPS信号送出部15は、第1の同期信号変換装置における各部と同様のものであり、時刻初期設定部34は、第3の同期信号変換装置と同様のものであるため、説明は省略する。
【0091】
位置情報設定部41は、受信側の装置に取得させたい位置情報(例えば、当該基地局の設置場所の位置情報)を記憶しておき、GPS時刻情報変換部42に設定する。
GPS時刻情報変換部42は、時刻情報同期部13からの同期時刻情報と、位置情報設定部41から設定された位置情報(設定位置情報)とを用いて、当該同期時刻情報における複数の衛星軌道情報と各衛星に対応した時刻を算出し、それらを合成した疑似GPS受信信号を生成する。疑似GPS受信信号は、受信した装置において、設定位置情報と同一の位置、及び同期時刻情報と同一の時刻が算出されるよう生成された信号である。
【0092】
これにより、第4の同期信号変換装置4からの疑似GPS受信信号を受信した装置では、疑似GPS受信信号に含まれる複数の衛星の軌道情報と、各衛星に対応する時刻とに基づいて、同期時刻情報と同一の時刻を算出し、位置情報設定部41から設定された位置情報と同一の位置を算出することができるものである。
【0093】
また、第4の同期信号変換装置4では、第3の同期信号変換装置3と同様に、放送波から時刻情報を取得せずに、時刻初期設定部33からの設定時刻を初期値として自走で内部時刻情報を生成する構成であるが、IoT用途としては、十分な精度の時刻情報を提供することができるものである。
【0094】
[第4の同期信号変換装置の効果]
第4の同期信号変換装置によれば、位置情報設定部41が、予め設定されている受信側装置の位置情報をGPS時刻情報変換部42に設定し、GPS時刻情報変換部42が、時刻情報同期部13からの同期時刻情報と、位置情報設定部41からの設定位置情報に基づいて、複数の衛星軌道情報及び各衛星に対応する時刻情報を含む疑似GPS受信信号を生成し、疑似GPS受信信号送信アンテナ17から当該疑似GPS受信信号を無線送信するようにしているので、受信側の装置では、受信した疑似GPS受信信号に基づいて、同期時刻情報と同一の時刻を算出すると共に、設定位置情報と同一の位置を算出することができ、GPS信号を受信できない環境であっても、受信側の装置に正確な位置情報及びほぼ正確な時刻情報を取得させることができ、IoT等のシステム構築の自由度を増大させることができる効果がある。
【0095】
また、第4の同期信号変換装置では、疑似GPS受信信号を受信する受信側装置を随時変更することが可能であり、変更する場合には、位置情報設定部41の設定位置情報を、新たな受信装置の設置場所で更新すればよい。
【0096】
[同期信号変換装置を備えた基地局装置]
上述した実施の形態では、無線通信システムの基地局に接続される同期信号変換装置として説明したが、上述したいずれかの同期信号変換装置を内部に備えた基地局装置を構成することも可能である。
ここで、第1、第2の同期信号変換装置は、公衆システムの基地局装置の内部に設けることが可能であるが、第3及び第4の同期信号変換装置は、自営システム等のローカルネットワークの基地局装置に適用される。
【0097】
基地局装置内部に設けられた第1,第3,第4の同期信号変換装置は、GPS受信機に疑似GPS受信信号を出力し、基地局装置内部に設けられた第2の同期信号変換装置は、ネットワークインターフェースにGPS基準時刻に同期した同期時刻情報を含むネットワーク信号を出力する。
尚、請求項に記載した「受信機」は、GPS受信機又はネットワークインターフェースに相当するものである。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、特にGPS信号を受信できない地域であってもGPSに同期した時刻情報を利用したシステムを構築でき、システム構築の自由度を増大させることができる同期信号変換装置に適している。
【符号の説明】
【0099】
1,2,3,4…同期信号変換装置、 10,20…基地局装置、 11…同期信号取得部、 12…時刻情報取得部、 13…時刻情報同期部、 14…GPS時刻情報変換部、 15…疑似GPS信号送出部、 16…受信アンテナ、 24…ネットワーク信号変換部、 25…ネットワーク信号送出部、 31…同期補正部、 32…時刻情報補正部、 33…同期時刻生成部、 34…時刻初期設定部、 41…位置情報設定部、 101…GPSアンテナ、 102…GPS受信機、 202…ネットワークインターフェース、 311…同期タイミング補正部、 312…同期カウンタ、 321…時刻補正部、 322…時刻カウンタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10