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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   A47L 15/42 20060101AFI20220816BHJP
   A47L 15/24 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
A47L15/42 Z
A47L15/24
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018100292
(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公開番号】P2019202032
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000116699
【氏名又は名称】株式会社アイホー
(72)【発明者】
【氏名】佐原 義章
(72)【発明者】
【氏名】花田 和也
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-334360(JP,A)
【文献】実開昭63-199756(JP,U)
【文献】実開昭55-068959(JP,U)
【文献】実開昭58-188762(JP,U)
【文献】実開昭58-086060(JP,U)
【文献】実開昭62-030766(JP,U)
【文献】特開昭61-181434(JP,A)
【文献】実開昭62-007971(JP,U)
【文献】特開2002-360494(JP,A)
【文献】特開2018-191794(JP,A)
【文献】特開昭59-103641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 15/42
A47L 15/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食器を収納して洗浄する空間である洗浄室を覆う上カバーと、
前記洗浄室の下方に位置し、洗浄水を貯水するタンクを備えた洗浄装置であって、
前記上カバーの底部は水平面状を形成し、
前記タンクの上端には、前記上カバーの底部と重なり合い、前記上カバーの下部付近を覆う鍔部を前記洗浄装置の周囲を連続して囲うように形成し、
前記鍔部は、前記タンクの内壁を外側へ折り曲げて上カバーを載せる水平面状の載置部と、
前記載置部の先端から上方に折り曲げられた立ち上げ部とからなり、
前記鍔部の前記立ち上げ部を上から覆い、先端は前記載置部まで延びる防漏板が配置されている
ことを特徴とする、洗浄装置。
【請求項2】
請求項1記載の発明であって、
前記洗浄装置は、複数の前記タンクを備えていることを特徴とする、洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器類の洗浄を行う洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、大量の食器を洗浄する業務用の洗浄装置が知られている。下記文献1に示される食器洗浄機は、フレーム8が洗浄室を形成しており、そのフレーム8の一部である左右両側板8´の下部には、本体2の開口部周囲の洗浄タンク2Aの内壁2aの外側へ折曲して形成された上部フランジ2a´の上部に載置される載置部8aと、載置部8aの内側先端から直角に下方へ折曲して延び上部フランジ2a´の内側へ嵌合する下部フランジ8bとが折曲して形成されている。
【0003】
この食器洗浄機によれば、洗浄時、フレーム8の内面を伝わる洗浄水は載置部8aの上面及び下部フランジ8bの内面を伝わり、洗浄タンク内へ滴下するため、洗浄水が本体の外面へ漏れることを防止することができるようになっている(図6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭59-103641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、洗浄水はフレーム8の内面を伝わるだけでなく、食器への噴射により洗浄水があらゆる方向から飛散しているため、上部フランジ2a´上も洗浄水で濡れる事があるが、上部フランジ2a´上部が載置部8aを載置するだけの水平面を形成しているため、左右両側板8´の載置部8aと上部フランジ2a´上部との隙間に入り込んだ洗浄水は、食器洗浄機の内外どちらへも滴下する可能性があることから、洗浄タンク内へ流れるだけでなく、食器洗浄機外へもしたたり落ちる恐れがある。
【0006】
本発明はこのような問題点を考慮してなされたもので、左右両側板8´の載置部と上部フランジ2a´上部との間の水漏れを防ぐために、上部フランジ2a´の外側を折り曲げ処理した洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は次のような構成および手段を有する。
【0008】
請求項1記載の発明においては、食器を収納して洗浄する空間である洗浄室を覆う上カバーと、 前記洗浄室の下方に位置し、洗浄水を貯水するタンクを備えた洗浄装置であって、前記上カバーの底部は水平面状を形成し、前記タンクの上端には、前記上カバーの底部と重なり合い、前記上カバーの下部付近を覆う鍔部を前記洗浄装置の周囲を連続して囲うように形成し、前記鍔部は、前記タンクの内壁を外側へ折り曲げて上カバーを載せる水平面状の載置部と、前記載置部の先端から上方に折り曲げられた立ち上げ部とからなり、前記鍔部の前記立ち上げ部を上から覆い、先端は前記載置部まで延びる防漏板が配置されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項記載の発明においては、前記洗浄装置は、複数の前記タンクを備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、タンクの鍔部に立ち上げ部を有することで、洗浄室内の洗浄水がタンクの上端に設けた鍔部と上カバーの下部との間から洗浄装置外へ漏れ出ようとするのを防止することができる。また、洗浄装置内に複数のタンクを備えた場合であっても、防漏板を設けることにより、隣り合う鍔部の継ぎ目から洗浄水が洗浄装置外へ漏れ出ようとするのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る洗浄装置の斜視図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3】(a)は図1のB-B断面図であり、(b)は(a)の円で囲んだ部分拡大図である。
図4】(a)は本発明の実施形態に係る洗浄装置のタンクと溢水受部と防漏板との関係を示した斜視図であり、(b)は(a)の円で囲んだ部分拡大図であり、破線は防漏板を装着した状態を示している。
図5】タンクの鍔部付近の部分拡大図であり、(a)は扉の内側の洗浄水の流れを示し、(b)は扉の側部から染み出た洗浄水の流れを示している。
図6】従来の食器洗浄機を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る洗浄装置1について、図面に基づいて説明する。なお、説明の便宜のために図1において前後、左右、上下の各方向を矢印で示している。
【0015】
図1~3に示すように、洗浄装置1は、前面に設けた搬入口25から食器Dを投入し、洗浄室2内を搬送コンベア27で搬送しながら洗浄水Wによって食器Dを洗浄して後面に設けた搬出口26から搬出する連続式の食器洗浄装置である。洗浄装置1は、上カバー4で覆われ、食器Dを搬送しながら洗浄する空間である洗浄室2と、洗浄室2の下方に位置し、洗浄室2で使用した洗浄水Wを受け入れるためのタンク7などが設けられ、化粧板65で覆われた貯水室6とに区画されている。
【0016】
洗浄室2内には、被洗浄物である食器Dを載置して搬送する搬送コンベア27と、搬送コンベア27上に載置された食器Dを上方から押さえる押さえコンベア28が配置されている。搬送コンベア27上に載置された食器Dは、搬送コンベア27と連結したモータ(図示せず)の駆動により搬入口25から搬出口26へ搬送される。
【0017】
上カバー4の内部には、洗剤を混ぜた洗浄水を循環使用する洗剤洗浄部21と、上水を用いてすすぎを行うすすぎ洗浄部24を有する洗浄室2が設けられている。この洗浄室2の洗剤洗浄部21内には、後述するタンク7と洗浄水配管31を介して接続され、搬送コンベア27上の食器Dに向けて上下方向から噴射して洗浄を行うための上ノズル33および下ノズル34が搬送方向に複数配置されている。また、洗浄室2のすすぎ洗浄部24には、上水を噴射してすすぎ洗浄を行うための上ノズル35および下ノズル36が配置されている。上ノズル35および下ノズル36は、上水バルブ(図示せず)を介して上水が供給され、食器Dに向け上水を噴射するようになっている。
【0018】
洗浄室2を覆う上カバー4は、ステンレス製の板を折り曲げ加工して組み合わせた全体視無底箱形に形成したものである。上カバー4の前方には、食器Dを搬入する搬入口25や洗浄水Wを受け入れるタンク7から発生する湯気を排出する排気ダクト44を備え、後方には食器Dを搬出する搬出口26を設けている。上カバー4は洗浄室2内をトンネル状に覆い、左右側面には洗浄室2内を開放するための扉開口部41が設けられている。扉開口部41の上端には、扉開口部41を開閉自在にする扉5を装着するときに係合させるフック42が設けられている。
【0019】
そして図2の丸で囲んだ部分拡大図で示すように、上カバー4の下端部では板を洗浄室2内側に断面視L字状に略直角に折り曲げた底部43を形成している。この底部43の水平面が後述するタンク7の鍔部8の載置部81と上下方向で重なるとともに一部が固着されて、上カバー4とタンク7とが一体になっている。また、上カバー4の天井部分には、洗浄装置1の動作全般を制御する制御装置45を備えている。
【0020】
上カバー4の左右側面に設けられた扉開口部41には、洗浄室2を開閉する扉5を備える。扉5は、洗浄室2内の清掃時やメンテナンス時に扉開口部41を開口するためのもので、ステンレス製の板で矩形状に形成されている。
【0021】
この扉5は、矩形状に形成されている下端部を洗浄室2内側にL字状に略直角に折り曲げた底部51を形成し、この底部51の水平面が後述するタンク7の鍔部8の載置部81と上下方向で重なるようになっている。また、扉5の側部52および上部53は、洗浄室2内側にコの字に折り曲げられ、上部53のコの字に折り曲げられた先端部分には扉開口部41の上端に設けたフック42と係合するための切り欠き54が設けられている。
【0022】
扉5装着の際は、扉5の底部51を鍔部8の載置部81の水平面から上方に離した状態で扉開口部41の上端に設けたフック42に切り欠き54を挿入係合し、下方にスライドさせて扉5の底部51が鍔部8の載置部81の水平面と重なるように載せて固定する。
【0023】
なお、上カバー4の底部43および扉5の底部51の形状は断面視L字状を形成しているが、水平面状の底部を形成していれば良く、底部43、51の先端部分が上方に向くコの字状でも、また底部43、51の先端部分が下方を向くZ字状に折り曲げるようにしても良い。
【0024】
貯水室6は、図2、3に示す通り、洗浄室2で使用した洗浄水Wを受け入れるタンク7が設けられている。タンク7は、洗浄水Wを貯留して洗浄室2へ循環使用するための槽であり、吸込口71からポンプ61へと接続し、ポンプ61の吐出口62から洗浄水配管31を介して洗浄室2内に設けられた複数のノズル33、34へそれぞれ接続されている。また、タンク7には上水バルブ(図示なし)を介して上水に接続された上水配管32が備えられている。この上水バルブを開放すると、上水配管32からタンク7へ上水が給水されるようになっている。
【0025】
更に、タンク7内には洗浄水Wを加熱するヒータ63を備え、搬送コンベア27とタンク7との間に食器Dから流れ落ちた残滓を取り除くストレーナ64を備えている。タンク7の内壁には、ヒータ63から吹き出された蒸気によりタンク7内の洗浄水Wの水面が波打ってタンク7を乗り越えようとするのを防ぐ水返し72が設けられている。
【0026】
また、タンク7の一構成としての溢水受部73が、タンク7の前後方向の一方端または両端に設けられている。この溢水受部73は、タンク7内に貯留する洗浄水Wが所定量を超えた場合、溢水受部73との間に設けた仕切板74を乗り越えて溢水受部73内に流れ込んで排水管75へ排出される。これにより、タンク7内に貯留する洗浄水Wを所定量に維持できるようになっている。
【0027】
なお、洗剤洗浄部21を更に荒洗浄部22、主洗浄部23に分割する場合は、荒洗浄部22および主洗浄部23のそれぞれに対応したタンク7a、7bが設けられており、そのときの荒洗浄部22のタンク7aには、吸込口71aからポンプ61aへと接続し、ポンプ61aの吐出口62aから洗浄水配管31aを介して洗浄室2内に設けられた複数の上側ノズル33aおよび下側ノズル34aへ接続されている。また、主洗浄部23のタンク7bにも、荒洗浄部22と同様に複数の上ノズル33bおよび下ノズル34bへ接続されている。
【0028】
この場合、下流側のタンク7bは洗浄室2の主洗浄部23とすすぎ洗浄部24との間を跨いで設けられ、下流側に配置した主洗浄部23の上側ノズル33bおよび下側ノズル34bから噴射された洗浄水Wや、上水配管32cと接続した上側ノズル35および下側ノズル36から噴射された上水を受け入れることができるようになっている。
【0029】
また、荒洗浄部22のタンク7aと主洗浄部23のタンク7bとの間に溢水受部73b´が設けられる場合には、例えば主洗浄部23で使用した比較的汚れの少ない洗浄水Wとすすぎ洗浄部24で使用した上水の混水を再利用するために、溢水受部73b´に有する排水管75b´をバルブで閉じて下流側に設けた主洗浄用のタンク7bから上流側に設けた荒洗浄用のタンク7aへ流入させたり、再利用が不要な場合はバルブを開きそのまま排水管75b´へ排出するようにしても良い。
【0030】
これらタンク7a、7bの上端には、折り曲げ加工により形成された鍔部8が形成されている。鍔部8は、図2、3に示すように、上カバー4および扉5を載せるためのタンク7a、7bの上方開口部の縁部分に設けられており、タンク7a、7bの底部から上方に伸びた内壁を外側へ折り曲げた水平面状の載置部81と、載置部81の先端から上方に折り曲げられ、上カバー4および扉5の下部付近を覆う立ち上げ部82から構成される。
【0031】
タンク7に設けられた鍔部8は、洗浄装置1の周囲を囲うように上面視長方形を形成している。図4(a)に示すようにタンク7を複数とした場合、複数のタンク7a、7bを繋げて洗浄装置1を形成する場合も同様に、洗浄装置1の周囲を連続して囲う鍔部8からなる全ての載置部81は全体で段差のない水平面を形成し、全ての立ち上げ部82は洗浄装置1の上面視長方形の外輪上を同じ高さで上方に伸びている。なお、複数のタンク7a、7bを繋げたとき、各タンク7a、7bにおいて洗浄装置1の周囲に位置しない縁部分、つまりタンク7aとタンク7bの接合面は仕切板74が設けられることとなる。
【0032】
また、鍔部8には、立ち上げ部82を上から覆うように配置し、細長平板を断面視J字状に折り曲げ加工した防漏板9を備えている。防漏板9の短側片91は、立ち上げ部82の内側と当接し、その先端は載置部81まで位置している。また、防漏板9の長側片92は、立ち上げ部82の外側と当接し、その先端は載置部81より下方に位置し、防漏板9の長側片92は、貯水室6に取り付けられている化粧板65の上部を支えるように覆っている。
【0033】
図4(b)に示すように、複数のタンク7a、7bを繋げたとき、隣り合う双方のタンク7a、7bの立ち上げ部82との間に僅かな隙間が生じるが、防漏板9がその隙間を覆い、洗浄装置1の周囲を途切れることなく囲った上面視長方形を形成している。つまり防漏板9は複数の立ち上げ部82全てを覆っていることとなる。
【0034】
次に、本発明に係る洗浄装置1の作用および効果について説明する。
【0035】
上水バルブを開いて上水配管32a、32bを介してタンク7a、7bへ上水を供給してタンク内を満水にした後、上水バルブを閉め、ヒータ63a、63bを作動させてタンク7a、7bの水を所定温度まで加熱する。食器Dの種類や汚れの程度に応じてタンク7aに洗剤を投入し、扉5を上カバー4の左右側面の扉開口部41に装着する。
【0036】
搬送コンベア27およびポンプ61a、61bを駆動させ、すすぎ洗浄部24の上水バルブも開放し、洗浄装置1の運転を開始する。タンク7aに接続されたポンプ61aにより吸い込んだ洗浄水Wは、洗浄水配管31aを通って荒洗浄部22の上側ノズル33aおよび下側ノズル34aへ、また、タンク7bに接続されたポンプ61bにより吸い込んだ洗浄水Wは、洗浄水配管31bを通って主洗浄部23の上側ノズル33bおよび下側ノズル34bへそれぞれ圧送され、搬送コンベア27上を押さえコンベア28で押さえながら搬入口25から搬出口26へ流れる食器Dに向けて上下方向から噴射する。なお、洗浄中、タンク7a、7b内の洗浄水Wが所定の水位より少なくなった場合は、上水バルブを開いて上水配管32a、32bを介して適宜上水を供給する。また洗浄水Wの温度管理や搬送コンベア27の搬送速度については、制御装置45にて制御されている。
【0037】
荒洗浄部22および主洗浄部23で洗浄された食器Dは、すすぎ洗浄部24へ搬送され、上側ノズル35および下側ノズル36から噴射される上水によって洗剤が洗い落とされ、搬出口26より洗浄装置1外へ搬出される。
【0038】
このような一連の流れの中で、洗浄室2内の荒洗浄部22に配置されている上側ノズル33aおよび下側ノズル34aから噴射された洗浄水W、および主洗浄部23に配置されている上側ノズル33bおよび下側ノズル34bから噴射された洗浄水Wは、食器Dに当たって食器Dに付着している汚れを洗い落とす。そして、そのままそれぞれのタンク7a、7b内に戻り回収して再利用させるか、溢水受部73a、73b、73b´に流れて排出されていく。
【0039】
なお、噴射された洗浄水Wの一部には、食器Dや搬送コンベア26に当たって周辺に飛散した際に上カバー4や扉5の内壁に付着し、そのまま下方に向かって流れ落ちていく。また、タンク7内で温められた洗浄水Wを上側ノズルノズル33および下側ノズル34から噴射することによって洗浄室2内に湯気が充満し、その湯気が上カバー4や扉5の内壁に触れて水滴となって上カバー4や扉5の下方に向かって流れ落ちていく。
【0040】
このようにして、上カバー4の底部43や扉5の底部51まで伝ってきた洗浄水Wのほとんどは、タンク7内へと流れ落ちていくことになるが、上カバー4の底部43や扉5の底部51と鍔部8の載置部81との隙間に入り込んで表面張力の作用によってタンク7内へ落ちることなく留まってしまう洗浄水Wもある。
【0041】
この場合、上カバー4の底部43や扉5の底部51と鍔部8の載置部81との間に留まった洗浄水Wについて、図5(a)を例に説明する。但し、一部の上カバー4の底部43とタンク7の鍔部8の載置部81とが固着されている部分では、上カバー4の底部43と鍔部8の載置部81との間には隙間はほとんど無く、その隙間に入り込む洗浄水Wは少ないことから、固着されていない扉5の底部51とタンク7の鍔部8の載置部81との間に留まった洗浄水Wに関して説明を行うこととする。
【0042】
なお、図5(b)で示すように、扉開口部41と扉5との間に入り込んだ洗浄水Wが扉5の側部52を伝って洗浄室2の外面側へ染み出て流れ落ち、一旦扉5の底部51とタンク7の鍔部8の載置部81との間へ入り込んだ後、再び洗浄装置1外へ流れ出ようとする場合も考えられる。
【0043】
まず、洗浄室2内では食器Dの洗浄を行うため各ノズル33、34、35、36から噴射されていることから、この洗浄水Wの勢いによって洗浄室2内に乱気流のようなものが発生し、それによって洗浄室2内の空気に対し洗浄装置1外へ押し出そうとする圧力が生じる。このとき、扉5の底部51とタンク7の鍔部8の載置部81との間に有した隙間にも、洗浄室2内の空気を押し出そうとする圧力が生じることとなる。
【0044】
そのため、タンク7内の方へ流れずに重なり合った扉5の底部51とタンク7の鍔部8の載置部81の間に入り込み留まった洗浄水Wは、洗浄室内からの圧力によって洗浄装置1外へ向けて押し出されていく。
【0045】
しかし、載置部81の先端から上方に折り曲げた立ち上げ部82を設けることによって、洗浄室2内の空気を洗浄装置1外に押し出そうとする圧力が生じたとしても、載置部81と扉5の底部51との間に留まった洗浄水Wは、立ち上げ部82を乗り越えるまでに至らず、扉5と立ち上げ部82との間に留められる。
【0046】
また、扉5の側部52を伝って洗浄室2の外面側を流れ落ちた洗浄水Wについても、洗浄室2の外面側より立ち上げ部82の方が外方へ位置していることから、立ち上げ部82を乗り越えることはなく、立ち上げ部82より内方に流れ込み、やがて扉5の底部51と鍔部8の載置部81との隙間で留められることとなる。
【0047】
このようなことから、洗浄室2内で食器Dの洗浄を行っている洗浄水Wが扉5の底部51とタンク7の鍔部8の載置部81との間に入り込んで留まっていったとしても、表面張力の作用によって留まり切れなくなった洗浄水Wは必ずタンク7内の方へと流れるようになり、洗浄水Wが洗浄装置1外へ漏れ出るのを防ぐことができる。
【0048】
さらに、タンク7の水返し72により、タンク7内の水が乗り越えて外部へ漏れ出ようとするのを抑えるため、鍔部8に加え、水返し72も有することで洗浄水Wが漏れ出るのをより効果的に防止することができる。
【0049】
また、洗浄装置1内に複数のタンク7a、7bを設けた場合、隣り合う立ち上げ部82との間に生じる隙間から洗浄水Wが漏れ出て化粧板65に筋が付く等して洗浄装置1の外観を汚してしまう恐れがある。しかし、防漏板9が全ての立ち上げ部82を覆って隙間を塞ぐことから、立ち上げ部82のどの部分からも水漏れは防止される。このようなことから、タンク7を複数備えた洗浄装置1であっても、確実に洗浄装置1外への漏水を防ぎ、洗浄装置1の外観を汚すことなく綺麗な状態を維持することができる。
【0050】
また、立ち上げ部82を防漏板9で上から覆っていることから、作業者が洗浄装置1の外部から1枚の板を折り曲げて形成させた鍔部8の先端部分となる立ち上げ部82に直接触れることが無く、指を引掛ける等による怪我を防ぐことができる。
【0051】
また、扉5を扉開口部41から取り外すとき、扉開口部41から扉5を一旦持ち上げることによって扉5の底部51と鍔部8の載置部81との隙間が大きくなり、その間に留まっていた洗浄水Wは、立ち上げ部82を乗り越えることなく鍔部8の載置部81側へ、更にはタンク側へ流れ落ちることから、洗浄装置1外へと漏水して外観が汚れてしまうのを防ぐことができる。
【0052】
なお、鍔部8の立ち上げ部82は、上カバー4および扉5の下部付近を覆うように形成されている。これにより、鍔部8の立ち上げ部82は、上カバー4の扉開口部41に扉5を装着したとき、鍔部8の載置部81へ載っている扉5の底部51が、洗浄装置1の外方へ移動して、扉開口部41から扉5が外れないようにすることができる。
【0053】
また、防漏板9の短側片91は、鍔部8の立ち上げ部82の内側と当接し、その先端は載置部81まで位置している。これにより、扉5の底部51と鍔部8の載置部81との隙間を少なくし、その間に留まろうとする洗浄水Wの量を少なくすることができる。
【0054】
一方、防漏板9の長側片92は、立ち上げ部82の外側と当接し、その先端は載置部81より下方に位置し、貯水室6に取り付けられている化粧板65の上部を支えるように覆っている。これによって、防漏板9の長側片92が化粧板65の上部を支えるだけで、貯水室6を覆っている全ての化粧板65が倒れることなく設置でき、また取り付けや取り外しも簡単に行うことができる。
【0055】
なお、洗浄室2を覆っている上カバー4には、該洗浄室2を開放するための扉5を設けているが、それ以外の部分を開放するために扉5と同様な底部を有したものを装着可能としてもよい。
【0056】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【0057】
本実施形態の洗浄装置では連続式を用いているが、これに限定されず、バッチ式の洗浄装置でも同様の作用効果を奏することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 洗浄装置
2 洗浄室
21 洗剤洗浄部
22 荒洗浄部
23 主洗浄部
24 すすぎ洗浄部
25 搬入口
26 搬出口
27 搬送コンベア
28 押さえコンベア
31 洗浄水配管
32 上水配管
33 上ノズル(洗剤洗浄室側)
34 下ノズル(洗剤洗浄室側)
35 上ノズル(すすぎ洗浄室側)
36 下ノズル(すすぎ洗浄室側)
4 上カバー
41 扉開口部
42 フック
43 底部
44 排気ダクト
45 制御装置
5 扉
51 底部
52 側部
53 上部
54 切り欠き
6 貯水室
61 ポンプ
62 吐出口
63 ヒータ
64 ストレーナ
65 化粧板
7 タンク
71 吸込口
72 水返し
73 溢水受部
74 仕切板
75 排水管
8 鍔部
81 載置部
82 立ち上げ部
9 防漏板
91 短側片
92 長側片
W 洗浄水
D 食器
図1
図2
図3
図4
図5
図6