(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】生体工学的なステアリングナックル
(51)【国際特許分類】
B62D 7/18 20060101AFI20220816BHJP
【FI】
B62D7/18 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018104823
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-02-10
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518101439
【氏名又は名称】ジー・エフ キャスティング ソリューションズ クンシャン カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GF Casting Solutions Kunshan Co. Ltd.
【住所又は居所原語表記】300 Tian E Road, KETD Zone, Kunshan, Jiangsu 215300, China
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン グラーフ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヘス
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク マーニヒ
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】米国意匠特許発明第00612304(US,S)
【文献】特開2013-144542(JP,A)
【文献】特開2016-052810(JP,A)
【文献】国際公開第2013/153308(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/073592(WO,A1)
【文献】特開2014-091469(JP,A)
【文献】特開2014-091468(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016103091(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014212514(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014205384(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011084475(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011016628(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102010023232(DE,A1)
【文献】HESS,Stefan,”Lightweight by bionic design approach”,Georg Fischer Automotive,2014年10月09日,第22頁,http://docplayer.net/33113048-Lightweight-by-bionic-design-approach-georg-fischer-automotive-stefan-hess.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 7/18
B60G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフロントアクスルに用いられるホイールサスペンション用のステアリングナックル(1)であって、
ホイールベアリング収容部(2)と、少なくとも1つの上側のブレーキキャリア結合部(3)
と、少なくとも1つの下側のブレーキキャリア結合部(4)と、トランスバースリンク結合部(5)と、ステアリングアーム(6)と、ダンパ収容部(7)と、支持リブ(9)と、支持ウェブ(11)と、
少なくとも1つの開口(10)とを備え、前記支持リブ(9)は、前記ダンパ収容部(7)の一方の側から延在しており、前記上側のブレーキキャリア結合部(3)は、前記支持リブ(9)に配置されており、前記支持ウェブ(11)は、前記ダンパ収容部(7)の別の側から延在して
おり、
前記開口(10)は、前記ホイールベアリング収容部(2)と前記ダンパ収容部(7)との間の領域に配置されており、前記開口(10)は、前記ダンパ収容部(7)または前記支持ウェブ(11)から前記ホイールベアリング収容部(2)にまで延在しているステー(13)により分割されており、前記ホイールベアリング収容部(2)の周りに複数の隆起部(14)が配置されており、該隆起部(14)は、端面側で加工されていて、ホイールベアリングの取付けに用いられることを特徴とする、ステアリングナックル(1)。
【請求項2】
環状に連続して存在するウェブ(15)が、複数の前記隆起部(14)を相互に結合しており、前記ウェブ(15)の高さは、前記隆起部(14)の高さよりも小さいことを特徴とする、請求項1記載のステアリングナックル(1)。
【請求項3】
前記ホイールベアリング収容部(2)と前記トランスバースリンク結合部(5)との間に開口(17)が配置されていることを特徴とする、請求項1または2記載のステアリングナックル(1)。
【請求項4】
前記支持ウェブ(11)は、前記ホイールベアリング収容部(2)を介して前記ステアリングアーム(6)
と接続していることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のステアリングナックル(1)。
【請求項5】
前記ステアリングアーム(6)に、少なくとも1つの開口(16)が配置されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のステアリングナックル(1)。
【請求項6】
当該ステアリングナックル(1)は、好ましくは球状黒鉛鋳造または軽金属鋳造による鋳造部品であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のステアリングナックル(1)。
【請求項7】
前記ダンパ収容部(7)は、貫通部(8)を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のステアリングナックル(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車のフロントアクスルに用いられるホイールサスペンション用のステアリングナックルであって、ホイールベアリング収容部と、少なくとも1つの上側のブレーキキャリア結合部および少なくとも1つの下側のブレーキキャリア結合部と、トランスバースリンク結合部と、ステアリングアームと、ダンパ収容部と、支持リブと、支持ウェブと、を備え、支持リブは、ダンパ収容部の一方の側から延在しており、上側のブレーキキャリア結合部は、支持リブに配置されており、支持ウェブは、ダンパ収容部の別の側から延在している、ステアリングナックルに関する。
【0002】
欧州特許出願公開第2614969号明細書(EP 2 614 969 A1)は、ステアリングナックルを開示しており、このステアリングナックルは、ホイールベアリング収容部と、上側のブレーキキャリア結合部および下側のブレーキキャリア結合部と、トランスバースリンク結合部と、ステアリングアームと、ダンパクランプと、支持リブとを有する。ステアリングナックルは、中実な構造形態を有し、ダンパクランプとホイールベアリング収容部との間の開口は極端に大きくはならないので、結合ウェブ、およびホイールベアリング収容部とダンパクランプとの間の支持リブは、中実に構成されている。この場合の欠点は、ステアリングナックルの高い重量にある。
【0003】
本発明の課題は、重量を低減するためにできるだけ精巧でひいては軽量の構造を有し、しかも強度の要求に適合する、ステアリングナックルを提供することである。
【0004】
この課題は、本発明によれば、ステアリングナックルが、開口を有し、開口は、ホイールベアリング収容部とダンパ収容部との間の領域に配置されており、開口は、ダンパ収容部または支持ウェブからホイールベアリング収容部にまで延在しているステーにより分割されていることにより解決される。
【0005】
本発明に係る、特に自動車のフロントアクスルに用いられるホイールサスペンション用のステアリングナックルは、ホイールベアリング収容部と、少なくとも1つの上側のブレーキキャリア結合部および少なくとも1つの下側のブレーキキャリア結合部と、トランスバースリンク結合部と、ステアリングアームと、ダンパ収容部と、支持リブと、を備え、支持リブは、ダンパ収容部の一方の側から延在しており、上側のブレーキキャリア結合部は、支持リブに配置されている。支持リブは、ダンパ収容部の外径部に接続していて、ホイールベアリング収容部にまで延在している。支持ウェブが、ダンパ収容部の別の側から延在している。好ましくは、支持ウェブは、次いでステアリングアームへと移行しており、その間でホイールハブ収容部と結合されている。ダンパ収容部は、スプリングストラットの所望の種類の結合に応じて様々に構成されてよく、たとえば従来慣用のクランプ条片がステアリングナックルに設けられてよく、またスプリングストラットを収容するためのハーフシェルのみならず別の種類の結合も考えられる。本発明に係るステアリングナックルは、少なくとも1つの開口を有し、開口は、ホイールベアリング収容部とダンパ収容部との間の領域に配置されており、開口は、ダンパ収容部または支持ウェブからホイールベアリング収容部にまで延在しているステーにより分割されている。開口は、好ましくは貫通して形成されている。
【0006】
収容部は、好ましくは複数の隆起部を有し、これらの隆起部は、ホイールベアリング収容部の周に沿って配置されている。3個~5個の隆起部が周に沿って均一に配置されていると有利である。隆起部は、ホイールベアリングの取付けに用いられる、端面側で加工された面や面の内側に設けられたねじ山を有する。このことは、ホイールベアリングがもはや完全な円上に載置せずに、隆起部の所定数の予め設定された点または端面上にだけ載置するという利点を有する。
【0007】
したがって、複数の隆起部を相互に結合する、環状に延在するウェブが、隆起部よりも小さな高さを有し、これにより、ウェブ上ではなく専ら隆起部上でのホイールベアリングの載設が可能になると、有利である。
【0008】
好ましくは、ステアリングナックルの下側の領域に、またはホイールベアリング収容部とトランスバースリンク結合部との間に開口が位置する。この開口は、好ましくは貫通して形成されていて、同様に軽量化に役立つ。
【0009】
また、本発明に係るステアリングナックルの好適な態様によれば、支持ウェブが、ダンパ収容部に配置されており、この場合、支持ウェブは、支持リブとは反対の、ダンパ収容部の別の側に配置されている。支持ウェブは、ホイールベアリング収容部またはホイールベアリング収容部の周面にまで延在しているとともにこれと結合されていて、次いでステアリングアームへと移行している。
【0010】
好ましくは、ステアリングアームは、少なくとも1つの開口を有し、これにより、ステアリングアームは、精巧に構成されていて、ここでも同様に重量が低減される。
【0011】
ステアリングナックルは、ワンピース部品として、好適には鋳造部品として構成されている。ステアリングナックルの製造に好ましい鋳造の種類は、球状黒鉛鋳造や軽金属鋳造またはアルミニウム鋳造である。
【0012】
ダンパ収容部に貫通部が配置されており、貫通部も同様に軽量化に貢献していると有利であることが分かっている。
【0013】
本発明の実施の形態を図面につき説明する。本発明は、この実施の形態だけに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】車両内側から見た、本発明に係る、ハーフシェルダンパ収容部を有するステアリングナックルの立体図である。
【
図2】車両外側から見た、本発明に係る、ハーフシェルダンパ収容部を有するステアリングナックルの立体図である。
【
図3】車両内側から見た、本発明に係る、ダンパ収容部として包囲しているクランプを有するステアリングナックルの立体図である。
【
図4】車両外側から見た、本発明に係る、ダンパ収容部として包囲しているクランプを有するステアリングナックルの立体図である。
【0015】
図1に示された図面は、本発明に係る、特に自動車のフロントアクスルに用いられるホイールサスペンション用のステアリングナックル1を示している。ステアリングナックル1は、ホイールベアリング収容部2を有する。ホイールベアリング収容部2には、ホイールベアリングが配置されかつ取り付けられる。ステアリングナックル1は、上側のブレーキキャリア結合部3と下側のブレーキキャリア結合部4とを有するが、もちろん別のブレーキキャリア結合部を組み込むことも可能である。トランスバースリンク結合部5が、ステアリングナックル1の下側の領域に配置されている。さらに、ステアリングナックル1は、同様にステアリングナックル1に組み込まれて配置されたステアリングアーム6を有するか、またはステアリングナックル1は、好ましくは鋳造により一体の部品として形成されている。ステアリングナックル1にスプリングストラットを結合するために、ステアリングナックル1は、上側の部分にダンパ収容部7を有し、その際、
図1および
図2では、ハーフシェルとして構成されたダンパ収容部7がステアリングナックル1に配置されており、
図3および
図4では、ダンパ収容部7は、スプリングストラットを完全に包囲してクランプする。もちろん、要求に応じて選択される別の態様のダンパ収容部も考えられる。図示の態様は、ここでも重量を低減するために、ダンパ収容部7に貫通部8を有するが、もちろん閉じたダンパ収容部も提供可能である。
【0016】
ブレーキキャリア結合部3,4の側で、ダンパ収容部7の外周から支持リブ9が延在しており、支持リブ9は、次いでホイールベアリング収容部2へ向けて延在している。支持リブ9に、上側のブレーキキャリア結合部3が配置されている。さらに、ステアリングナックル1は、ダンパ収容部7の別の側に支持ウェブ11を有し、支持ウェブ11は、ステアリングアーム6へと移行しており、その際、支持ウェブ11は、その間でホイールベアリング収容部2と結合されている。ステアリングナックル1は、少なくとも1つの開口10を有し、開口10は、ダンパ収容部7とホイールベアリング収容部2との間に配置されている。開口10は、一方の側で、ダンパ収容部7からステアリングアーム6にまで延在している支持ウェブ11により画定され、他方の側で、開口10は、支持リブ9により画定されるか、またはホイールハブ収容部の上面12が、支持リブ9へと移行している。開口10は、ステー13により分割され、この場合、ステー13は、ダンパ収容部7または支持ウェブ11を起点としてホイールベアリング収容部2にまで延在している。
【0017】
ホイールハブ収容部2の周囲に好ましくは3個~5個の隆起部14が配置されており、これらの隆起部14は、ホイールベアリング収容部2の周に沿って均一に分配されている。隆起部14は、ホイールベアリングの載置および取付けに用いられる。これらの隆起部14の間にウェブ15が延在しており、ウェブ15は、加工された隆起部14よりも小さな高さを有し、これによりホイールベアリングは、ウェブ15ではなく隆起部14に載置される。さらなる軽量化のために、ステアリングアーム6に開口16が配置されており、この開口16も同様に貫通して形成されている。ステアリングナックル1の下側の領域において、好ましくは同様に、ホイールベアリング収容部2とトランスバースリンク結合部5との間に配置されている開口17が位置する。
【符号の説明】
【0018】
1 ステアリングナックル
2 ホイールベアリング収容部
3 上側のブレーキキャリア結合部
4 下側のブレーキキャリア結合部
5 トランスバースリンク結合部
6 ステアリングアーム
7 ダンパ収容部
8 貫通部
9 支持リブ
10 開口
11 支持ウェブ
12 ホイールベアリング収容部の上面
13 ステー
14 隆起部
15 ウェブ
16 ステアリングアームの開口
17 開口