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特許7123635ピロロベンゾジアゼピンおよび標的コンジュゲート
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  • 特許-ピロロベンゾジアゼピンおよび標的コンジュゲート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】ピロロベンゾジアゼピンおよび標的コンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20220816BHJP
   A61K 31/5517 20060101ALI20220816BHJP
   A61K 31/7052 20060101ALI20220816BHJP
   A61K 38/05 20060101ALI20220816BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220816BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20220816BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20220816BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220816BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220816BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220816BHJP
   C07D 519/00 20060101ALI20220816BHJP
   C07H 15/26 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
C07K16/18
A61K31/5517
A61K31/7052
A61K38/05
A61K39/395 L
A61K39/395 N
A61K47/60
A61K47/64
A61K47/68
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/06
C07D519/00 311
C07H15/26 CSP
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018107170
(22)【出願日】2018-06-04
(62)【分割の表示】P 2014535897の分割
【原出願日】2012-10-12
(65)【公開番号】P2018150371
(43)【公開日】2018-09-27
【審査請求日】2018-06-29
【審判番号】
【審判請求日】2020-06-12
(31)【優先権主張番号】61/547,192
(32)【優先日】2011-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503188759
【氏名又は名称】シージェン インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】508098350
【氏名又は名称】メドイミューン・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MedImmune Limited
【住所又は居所原語表記】Milstein Building,Granta Park,Cambridge CB21 6GH,England
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】スコット・ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・バーク
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ウィルソン・ハワード
【合議体】
【審判長】大熊 幸治
【審判官】冨永 保
【審判官】関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/043880(WO,A1)
【文献】特表2008-536905(JP,A)
【文献】特表2007-525535(JP,A)
【文献】国際公開第2011/038159(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
REGISTRY(STN)、CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IV:
L-(LU-D)p (IV)
を有するコンジュゲートであって、
式(IV)中、
Lが、抗体および抗体の抗原結合フラグメントからなる群から選択されるリガンドユニットであり、前記抗原結合フラグメントが、Fab、Fab’、F(ab’)2、またはFvフラグメントであり、
LUが、下記構造式(IVa’)または構造式(IVb’)の構造を有するリンカーユニットであり、
-A1 a-L1 s-L2 y- (IVa’)
-A 1 -L 1 -L 2 (IVb’)
ここで-A1-は、下記の
【化1】
の構造を有し、式中のアスタリスクはL1への付着点を示し、波線は前記リガンドユニットへの付着点を示し、下付きのnが0から6であるか、
【化2】
の構造を有し、式中のアスタリスクはL1への付着点を示し、波線は前記リガンドユニットへの付着点を示し、下付きのnが0から6であるか、
【化3】
の構造を有し、式中のアスタリスクはL1への付着点を示し、波線は前記リガンドユニットへの付着点を示し、下付きのnが0もしくは1であり、下付きのmが0から30であるか、もしくは、
【化4】
の構造を有し、式中のアスタリスクはL1への付着点を示し、波線は前記リガンドユニットへの付着点を示し、下付きのnが0もしくは1であり、下付きのmが0から30であり、
また構造式(IVa’)のL1が、-Phe-Lys-、-Val-Ala-、-Val-Lys-、-Ala-Lys-、-Val-Cit-、-Phe-Cit-、-Leu-Cit-、-Ile-Cit-、-Phe-Arg-、および-Trp-Cit-からなる群から選択されるジペプチドであり、
構造式(IVa’)のL2 は、下記構造
【化5】
もしくは
【化6】
を有し、式中のアスタリスクは前記Dへの付着点を示し、波線は前記L1への付着点を示し、Yは、-NH-であり、下付きのnは0または1であり、Eは、OまたはSであり、D’は、NまたはCHであり、Fは、NまたはCHであるか、あるいは、
構造式(IVb’)のL1およびL2、下記の
【化7】
の構造を有し、式中のアスタリスクは前記Dへの付着点を示し、波線は前記A1への付着点を示し、Yは、-NH-であり、Eは、グルクロン酸であり、および、
下付きのaは、1または2であり、
構造式(IVa’)において下付きのsが0、1、または2であってかつ下付きのyが0、1、または2であり
下付きのpが、1から20であり;
前記Dが、
【化8】
からなる群から選択され、
D1、D4、およびD6において、
(a)R10が、Hであり、R11が、OH、ORAであり、RAが、飽和C1-4アルキルであるか;
(b)R10およびR11が、それらが結合されている窒素原子と炭素原子との間に、窒素-炭素二重結合を形成するか;または、
(c)R10が、Hであり、R11が、SOzMであり、下付きのzが、2もしくは3であり、Mが、一価の薬学的に許容され得るカチオンであるか、もしくは、両方のMが共に、二価の薬学的に許容され得るカチオンであり、および、
前記アスタリスクは、前記リンカーユニットへの付着点を示す、
コンジュゲートまたはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物。
【請求項2】
10およびR11が、窒素-炭素二重結合を形成する、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
1が、
【化9】
であり、前記アスタリスクが、前記L1への付着点を示し、前記波線が、前記リガンドユニットへの付着点を示し、nが、0から6である、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
nが、5である、請求項3に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
1が、-Phe-Lys-、-Val-Ala-、-Val-Lys-、-Ala-Lys-、および-Val-Cit-からなる群から選択される、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
1が、バリン-アラニン、バリン-シトルリンおよびフェニルアラニン-リジンからなる群から選択される、請求項5に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
増殖性疾患または自己免疫疾患を処置するために使用される請求項1から6のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
前記増殖性疾患が、血液学的な悪性腫瘍である、請求項7に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
前記血液学的な悪性腫瘍が、白血病およびリンパ腫のうちから選択される、請求項8に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
前記増殖性疾患が、肺ガン、肺小細胞ガン、胃腸ガン、腸ガン、結腸ガン、乳ガン腫、卵巣ガン腫、前立腺ガン、精巣ガン、肝臓ガン、腎臓ガン、膀胱ガン、膵臓ガン、脳ガン、肉腫、骨肉腫、カポジ肉腫またはメラノーマである、請求項7に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
式V:
LU-D (V)
の化合物であって、
式(V)中、LUが、リンカーユニットであり、
前記リンカーユニットが、下記構造式
1-L1-L2
を有し、
1が、
【化10】
の構造を有し、式中のアスタリスクは、前記L1への付着点を示し、下付きのnは0から6であるか、
【化11】
の構造を有し、式中のアスタリスクは、前記L1への付着点を示し、下付きのnは0から6であるか、
【化12】
の構造を有し、式中のアスタリスクは、前記L1への付着点を示し、下付きのnは、0または1であり、下付きのmは、0から30であるか、もしくは、
【化13】
の構造を有し、式中のアスタリスクは、前記L1への付着点を示し、下付きのnは、0または1であり、
1は、-Phe-Lys-、-Val-Ala-、-Val-Lys-、-Ala-Lys-、-Val-Cit-、-Phe-Cit-、-Leu-Cit-、-Ile-Cit-、-Phe-Arg-、および-Trp-Cit-からなる群から選択されるジペプチドであり、
2は結合であるか、または下記構造
【化14】
または
【化15】
を有し、式中のアスタリスクは前記Dへの付着点を示し、波線は前記L1への付着点を示し、Yは、-NH-であり、下付きのnは0または1であり、Eは、OまたはSであり、D’は、NまたはCHであり、Fは、NまたはCHであり、
Dが、
【化16】
からなる群から選択され、
D1、D4、およびD6において、
(a)R10が、Hであり、R11が、OH、ORAであり、RAが、飽和C1-4アルキルであるか;
(b)R10およびR11が、それらが結合されている窒素原子と炭素原子との間に、窒素-炭素二重結合を形成するか;または、
(c)R10が、Hであり、R11が、SOzMであり、下付きのzが、2もしくは3であり、Mが、一価の薬学的に許容され得るカチオンであるか、もしくは、両方のMが共に、二価の薬学的に許容され得るカチオンであり、および、
前記アスタリスクは、前記リンカーユニットへの付着点を示す、
化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物。
【請求項12】
1が、下記の
【化17】
または
【化18】
からなる群から選択される、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
前記L1が、-Phe-Lys-、-Val-Ala-、-Val-Lys-、-Ala-Lys-、および-Val-Cit-からなる群から選択される、請求項11に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)、具体的には、各モノマーユニットにおいて、C2-C3二重結合および前記C2位にアリール基を有するピロロベンゾジアゼピン二量体、ならびに標的コンジュゲートへのその包含に関する。
【背景技術】
【0002】
一部のピロロベンゾジアゼピン(PBD)は、特定のDNA配列を認識し、同DNAに結合する能力を有する。好ましい配列は、PuGPuである。最初のPBD抗腫瘍抗生物質であるアントラマイシンは、1965年に発見された(Leimgruber,et al.,J.Am.Chem.Soc.,87,5793-5795(1965);Leimgruber,et al.,J.Am.Chem.Soc.,87,5791-5793(1965))(非特許文献1および2)。ついで、多くの天然由来のPBDが報告され、10より多くの合成経路が、各種の類似体に対して開発された(Thurston,et al.,Chem.Rev.1994,433-465(1994);Antonow,D.and Thurston,D.E.,Chem.Rev.2011 111(4),2815-2864))(非特許文献3および4)。ファミリーメンバーとしては、アベイマイシン(Hochlowski,et al.,J.Antibiotics,40,145-148(1987))(非特許文献5)、チカマイシン(Konishi,et al.,J.Antibiotics,37,200-206(1984))(非特許文献6)、DC-81(特開昭58-180487号公報(特許文献1)、Thurston,et al.,Chem.Brit.,26,767-772(1990);Bose,et al.,Tetrahedron,48,751-758(1992)(非特許文献7および8)、マゼトラマイシン(Kuminoto,et al.,J.Antibiotics,33,665-667(1980))(非特許文献9)、ネオトラマイシンAおよびB(Takeuchi,et al.,J.Antibiotics,29,93-96(1976))(非特許文献10)、ポロトラマイシン(Tsunakawa,et al.,J.Antibiotics,41,1366-1373(1988))(非特許文献11)、プロトラカルシン(Shimizu,et al,J.Antibiotics,29,2492-2503(1982);Langley and Thurston,J.Org.Chem.,52,91-97(1987))(非特許文献12および13)、シバノマイシン(DC-102)(Hara,et al.,J.Antibiotics,41,702-704(1988);Itoh,et al.,J.Antibiotics,41,1281-1284(1988))(非特許文献14および15)、シビロマイシン(Leber,et al.,J.Am.Chem.Soc.,110,2992-2993(1988))(非特許文献16)および、トママイシン(Arima,et al.,J.Antibiotics,25,437-444(1972))(非特許文献17)があげられる。PBDは、一般構造:
【化1】
である。
【0003】
前記PBDは、その芳香環Aおよびピロロ環Cの両方における置換基の数、種類および位置、ならびに、前記C環の飽和度合いにおいて異なる。B環には、DNAのアルキル化を担う求電子中心である、N10-C11位に、イミン(N=C)、カルビノールアミン(NH-CH(OH))またはカルビノールアミンメチルエーテル(NH-CH(OMe))のいずれかが存在する。公知の天然物は全て、キラルC11a位において、(S)-型(コンフィグレーション)を有する。キラルC11a位は、前記C環からA環に向かって見た場合、右回りの捻じれを与える。これは、B-型DNAの小溝に対して、イソらせん性(isohelicity)に適した三次元形状を与え、結合部位におけるぴったり合うフィットをもたらす(Kohn,In Antibiotics III.Springer-Verlag,New York,pp.3-11(1975);Hurley and Needham-VanDevanter,Acc.Chem.Res.,19,230-237(1986))(非特許文献18および19)。前記小溝に付加体を形成するその能力は、それらが、DNAプロセシングを妨げることを可能にするため、抗腫瘍剤としてのその使用を可能にする。
【0004】
これらの分子における生物学的活性が、2つのPBDユニットを、そのC8/C’-ヒドロキシル官能基により、フレキシブルなアルキレンリンカーを介して、互いに結合させることにより、増強し得ることが以前に開示された(Bose,D.S.,et al.,J.Am.Chem.Soc.,114,4939-4941(1992);Thurston,D.E.,et al.,J.Org.Chem.,61,8141-8147(1996))(非特許文献20および21)。前記PBD二量体は、配列選択的なDNA損傷、例えば、回帰性の5’-Pu-GATC-Py-3’ストランド間架橋を形成すると考えらえる(Smellie,M.,et al.,Biochemistry,42,8232-8239(2003);Martin,C.,et al.,Biochemistry,44,4135-4147)(非特許文献22および23)。前記ストランド間架橋が、その生物学的活性を主に担うと考えられる。PBD二量体の一例である、SG2000(SJG-136):
【化2】
は、最近、腫瘍学の分野において、第II相臨床試験に入っている(Gregson,S.,et al.,J.Med.Chem.,44,737-748(2001);Alley,M.C.,et al.,Cancer Research,64,6700-6706(2004);Hartley,J.A.,et al.,Cancer Research,64,6693-6699(2004))(非特許文献24から26)。
【0005】
もっと最近、本発明者らは、以前に国際公開第2005/085251号パンフレット(特許文献2)において、C2アリール置換基を有する二量体PBD化合物、例えば、SG2202(ZC-207):
【化3】
、および国際公開第2006/111759号パンフレット(特許文献3)において、このようなPBD化合物の重亜硫酸塩、例えば、SG2285(ZC-423):
【化4】
を開示した。
【0006】
これらの化合物は、非常に有用な細胞傷害性薬物であることが示された(Howard,P.W.,et al.,Bioorg.Med.Chem.(2009),19(22),6463-6466,doi:10.1016/j.bmcl.2009.09.012)(非特許文献27)。
【0007】
これらの非常に強力な化合物が、DNAを架橋する方法で作用するために、これらの分子が、対称的に製造されている。これは、予め形成された二量体リンケージを有するPBD部分を同時に構築することによるか、または、予め構築されているPBD部分を、前記二量体結合基と反応させるかのいずれかによる、容易な合成を提供する。
【0008】
国際公開第2010/043880号パンフレット(特許文献4)には、各モノマーのC2位にアリール基を有する、非対称の二量体PBD化合物が開示されている。これらのアリール基の1つは、別の部分に化合物を結合させるためのアンカーを提供するように設計された置換基を有する。2011年4月15日に出願された、同時係属の国際出願PCT/US2011/032664号には、標的コンジュゲートにおけるこれらのPBD二量体化合物の包含が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開昭58-180487号公報
【文献】国際公開第2005/085251号パンフレット
【文献】国際公開第2006/111759号パンフレット
【文献】国際公開第2010/043880号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【文献】Leimgruber,et al.,J.Am.Chem.Soc.,87,5793-5795(1965)
【文献】Leimgruber,et al.,J.Am.Chem.Soc.,87,5791-5793(1965)
【文献】Thurston,et al.,Chem.Rev.1994,433-465(1994)
【文献】Antonow,D.and Thurston,D.E.,Chem.Rev.2011 111(4),2815-2864)
【文献】Hochlowski,et al.,J.Antibiotics,40,145-148(1987)
【文献】Konishi,et al.,J.Antibiotics,37,200-206(1984)
【文献】Thurston,et al.,Chem.Brit.,26,767-772(1990)
【文献】Bose,et al.,Tetrahedron,48,751-758(1992)
【文献】Kuminoto,et al.,J.Antibiotics,33,665-667(1980)
【文献】Takeuchi,et al.,J.Antibiotics,29,93-96(1976)
【文献】Tsunakawa,et al.,J.Antibiotics,41,1366-1373(1988)
【文献】Shimizu,et al,J.Antibiotics,29,2492-2503(1982)
【文献】Langley and Thurston,J.Org.Chem.,52,91-97(1987)
【文献】Hara,et al.,J.Antibiotics,41,702-704(1988)
【文献】Itoh,et al.,J.Antibiotics,41,1281-1284(1988)
【文献】Leber,et al.,J.Am.Chem.Soc.,110,2992-2993(1988)
【文献】Arima,et al.,J.Antibiotics,25,437-444(1972)
【文献】Kohn,In Antibiotics III.Springer-Verlag,New York,pp.3-11(1975)
【文献】Hurley and Needham-VanDevanter,Acc.Chem.Res.,19,230-237(1986)
【文献】Bose,D.S.,et al.,J.Am.Chem.Soc.,114,4939-4941(1992)
【文献】Thurston,D.E.,et al.,J.Org.Chem.,61,8141-8147(1996)
【文献】Smellie,M.,et al.,Biochemistry,42,8232-8239(2003)
【文献】Martin,C.,et al.,Biochemistry,44,4135-4147)
【文献】Gregson,S.,et al.,J.Med.Chem.,44,737-748(2001)
【文献】Alley,M.C.,et al.,Cancer Research,64,6700-6706(2004)
【文献】Hartley,J.A.,et al.,Cancer Research,64,6693-6699(2004)
【文献】Howard,P.W.,et al.,Bioorg.Med.Chem.(2009),19(22),6463-6466,doi:10.1016/j.bmcl.2009.09.012
【発明の概要】
【0011】
本発明者らは、標的コンジュゲートに包含するための、更なる特異的な非対称の二量体PBD化合物を開発した。これらの化合物は、その調製および使用に利点を有し、特にその生物学的特性およびコンジュゲートの合成ならびにこれらのコンジュゲートの生物学的特性に利点を有し得る。
【0012】
本発明は、
【化5】
からなる群から選択される、化合物または、その薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物を含む。
【0013】
C1からC6中、
(a)R10が、Hであり、R11が、OHまたはORAであり、RAが、飽和C1-4アルキルであるか;または、
(b)R10およびR11が、それらが結合されている窒素原子と炭素原子との間に、窒素-炭素二重結合を形成するか;または、
(c)R10が、Hであり、R11が、SOzMであり、zが、2もしくは3であり、Mが、一価の薬学的に許容され得るカチオンであるか、もしくは、両方のMが共に、二価の薬学的に許容され得るカチオンであるかのいずれかである。
【0014】
本発明の第2の態様は、増殖性疾患を処置するための医薬の製造における、本発明の第1の態様の化合物の使用を提供する。前記第2の態様は、増殖性疾患の処置に使用するための、本発明の第1の態様の化合物も提供する。
【0015】
当業者であれば、候補コンジュゲートが、具体的な細胞種のいずれかに関する増殖性症状を処置するかどうかを、直ちに決定することができる。例えば、具体的な化合物により提供された活性を評価するのに都合よく使用され得るアッセイは、以下の実施例に記載されている。
【0016】
本発明の第3の態様は、
(a)R10が、カルバメート窒素保護基であり、R11が、O-ProtOであり、ProtOが、酸素保護基であるか;または、
(b)R10が、ヘミアミナール窒素保護基であり、R11が、オキソ基であるか;
のいずれかであることを除いて、本発明の第1の態様に基づく化合物を含む。
【0017】
本発明の第4の態様は、第3の態様の化合物または、その薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物から、前記イミン結合を脱保護することにより、第1の態様の化合物または、その薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物を製造する方法を含む。
【0018】
本発明の非対称の二量体PBD化合物は、対称的な二量体PBD化合物を製造するのに、以前から使用されたものとは、異なる戦略により製造される。具体的には、本発明者らは、別々の方法工程において、各C2置換基を、対称的なPBD二量体コアに付加することを含む方法を開発した。したがって、本発明の第5の態様は、少なくとも1つの以下に記載される方法工程を含む、本発明の第1または第3の態様の化合物を製造する方法を提供する。
【0019】
第6の態様では、本発明は、標的化剤に結合されているPBDの二量体を含むコンジュゲートに関する。前記コンジュゲートにおいて、前記PBD二量体は、本願明細書に記載の化合物または、その薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物である(上記)。
一部の実施形態では、前記コンジュゲートは、下記式IV:
L-(LU-D)p (IV)
または、その薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物を有する。式(IV)中、Lは、リガンドユニット(すなわち、標的化剤)であり、LUは、リンカーユニットであり、および、Dは、PBD二量体であるドラッグユニットである(以下を参照のこと。)。下付きのpは、1から20である。したがって、前記コンジュゲートは、少なくとも1つのドラッグユニットに、リンカーユニットにより共有結合されているリガンドユニットを含む。以下により完全に記載されている前記リガンドユニットは、標的部分に結合する標的化剤である。前記リガンドユニットは、例えば、細胞成分に特異的に結合することができるか(細胞結合剤)、または、対象となる他の標的分子に特異的に結合することができる。したがって、本発明は、例えば、種々のガンおよび自己免疫疾患の処置のための方法も提供する。これらの方法は、前記リガンドユニットが、標的分子に特異的に結合する標的化剤である、コンジュゲートの使用を包含する。前記リガンドユニットは、例えば、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチド、例えば、抗体、抗体の抗原結合フラグメント、または他の結合剤、例えば、Fc融合タンパク質であり得る。
【0020】
本発明のコンジュゲートでは、前記PBD二量体Dは、
【化6】
または、その薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物からなる群から選択される。D1からD6中、R10およびR11は、前記第1の態様に規定の通りであり、および、前記アスタリスクは、前記リンカーユニットへの付着点を示す。
【0021】
前記ドラッグの充填は、リガンドユニット(例えば、抗体)あたりのドラッグ分子の数であるpで表される。ドラッグの充填は、リガンドユニット(例えば、AbまたはmAb)あたりに、1から20個のドラッグユニット(D)の範囲であり得る。組成物に関して、pは、前記組成物におけるコンジュゲートの平均ドラッグ充填を表し、pは、1から20の範囲である。
【0022】
一部の実施形態では、pは、リガンドユニットあたりに約1から約8個のドラッグユニットである。一部の実施形態では、pは、1である。一部の実施形態では、pは、2である。一部の実施形態では、pは、リガンドユニットあたりに約2から約8個のドラッグユニットである。一部の実施形態では、pは、リガンドユニットあたりに、約2から約6、2から約5または2から約4のドラッグユニットである。一部の実施形態では、pは、リガンドユニットあたりに、約2、約4、約6または約8個のドラッグユニットである。
【0023】
コンジュゲート反応からの調製におけるリガンドユニットあたりのドラッグユニットの平均数は、従来の手段、例えば、質量分析法、ELISAアッセイおよびHPLCにより特徴付けられ得る。pに関して、コンジュゲートの定量分布が決定されてもよい。一部の例では、pが特定の値である場合、他のドラッグ充填によるコンジュゲートからの、均質なコンジュゲートの分離、精製および特徴決定は、逆相HPLCまたは電気泳動等の手段により達成され得る。
【0024】
第7の態様では、本発明は、結合ユニットに結合されているPBD二量体(上記を参照のこと。)を含む、リンカー-ドラッグ化合物(すなわち、ドラッグ-リンカー)に関する。これらのドラッグ-リンカーは、標的化剤に結合されるPBD二量体を含むコンジュゲートを合成するための中間体として使用され得る。
【0025】
これらのドラッグ-リンカーは、式V:
LU-D (V)
または、その薬学的に許容され得る本発明の第6の態様に規定の塩もしくは溶媒和物を有する。式(V)中、LUは、リンカーユニットであり、Dは、PBD二量体であるドラッグユニットである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の2つのコンジュゲートによる処理後の平均腫瘍体積における効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
定義
薬学的に許容され得るカチオン
薬学的に許容され得る一価および二価のカチオンは、例えば、その全体が、全ての目的に関して、参照により本願明細書に取り込まれる、Berge,et al.,J.Pharm.Sci.,66,1-19(1977)に記載されている。
前記薬学的に許容され得るカチオンは、無機でもよいし、または、有機でもよい。
【0028】
薬学的に許容され得る一価の無機カチオンとしては、例えば、制限されず、アルカリ金属イオン、例えば、Na+およびK+があげられる。薬学的に許容され得る二価の無機カチオンとしては、例えば、制限されず、アルカリ土類カチオン、例えば、Ca2+およびMg2+があげられる。薬学的に許容され得る有機カチオンとしては、例えば、制限されず、アンモニウムイオン(すなわち、NH4 +)および置換されているアンモニウムイオン(例えば、NH3+、NH22 +、NHR3 +、NR4 +)があげられる。一部の適切な置換されているアンモニウムイオンは、例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミンおよびトロメタミン、ならびにアミノ酸、例えば、リジンおよびアルギニンに由来するものである。一般的な四級アンモニウムイオンは、例えば、N(CH34 +である。
【0029】

本願明細書で使用する時、「飽和C1-4アルキル」の用語は、1から4個の炭素原子を有する炭化水素化合物の炭素原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分に関する。前記炭化水素化合物は、脂肪族でもよいし、または、脂環式でもよい。同様に、本願明細書で使用する時、「飽和C1-2アルキル」の用語は、1から2個の炭素原子を有する炭化水素化合物、すなわち、メチルまたはエチルの炭素原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分に関する。
【0030】
飽和のアルキル基としては、例えば、制限されず、メチル(C1)、エチル(C2)、プロピル(C3)およびブチル(C4)があげられる。
【0031】
飽和の直鎖状アルキル基としては、例えば、制限されず、メチル(C1)、エチル(C2)、n-プロピル(C3)およびn-ブチル(C4)があげられる。
【0032】
飽和の分岐鎖状アルキル基としては、例えば、iso-プロピル(C3)、iso-ブチル(C4)、sec-ブチル(C4)およびtert-ブチル(C4)があげられる。
【0033】
オキソ(ケト、-オン):=O。
酸素保護基:「酸素保護基」の用語は、ヒドロキシ基をマスクする部分を意味し、これらは、当該分野において周知である。数多くの適切な基が、その全体が、全ての目的に関して、参照により本願明細書に取り込まれる、Greene,T.W.and Wuts,G.M.,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Edition,John Wiley&Sons,Inc.,1999の23から200頁に記載されている。具体的な対象の分類としては、シリルエーテル(例えば、TMS、TBDMS)、置換されているメチルエーテル(例えば、THP)およびエステル(例えば、アセテート)があげられる。
【0034】
カルバメート窒素保護基:「カルバメート窒素保護基」の用語は、イミン結合における窒素をマスクする部分に関し、これらは、当該分野において周知である。これらの基は、下記化学構造:
【化7】
【0035】
前記化学構造中、R’10は、以下に規定のRである。数多くの適切な基が、その全体が、全ての目的に関して、参照により本願明細書に取り込まれる、Greene,T.W.and Wuts,G.M.,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Edition,John Wiley&Sons,Inc., 1999の503から549頁に記載されている。
【0036】
ヘミアミナール窒素保護基:「ヘミアミナール窒素保護基」の用語は、下記化学構造:
【化8】
を有する基に関する。前記化合構造中、R’10は、上記規定のRである。数多くの適切な基が、その全体が、全ての目的に関して、参照により本願明細書に取り込まれる、Greene,T.W.and Wuts,G.M.,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Edition,John Wiley&Sons,Inc.,1999にアミド保護基として633から647頁に記載されている。
【0037】

Rは、場合により置換されているC1-12アルキル、C3-20ヘテロシクリルおよびC5-20アリールの基から選択される。
【0038】
本願明細書で使用する時、「場合により置換されている」の用語は、置換されていなくてもよいし、または、置換されていてもよい元の基に関する。
【0039】
特に断らない限り、本願明細書で使用する時、「置換されている」の用語は、1つ以上の置換基を有する元の基に関する。「置換基」の用語は、本願明細書において、従来の意味で使用され、元の基に共有的に付着される化学部分、または必要に応じて、元の基に縮合される化学部分を意味する。幅広い各種の置換基が周知であり、それを形成および各種の元の基内に導入するための方法も周知である。
【0040】
置換基は、例えば、以下に、より詳細に記載される。
1-12アルキル:本願明細書で使用する時、「C1-12アルキル」の用語は、1から12個の炭素原子を有する炭化水素化合物の炭素原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分に関する。前記炭化水素化合物は、脂肪族でもよいし、または、脂環式でもよく、飽和でもよいし、または不飽和(例えば、部分的に不飽和、完全に不飽和)でもよい。本願明細書で使用する時、「C1-4アルキル」の用語は、1から4個の炭素原子を有する炭化水素化合物の炭素原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分に関する。前記炭化水素化合物は、脂肪族でもよいし、または、脂環式でもよく、飽和でもよいし、または不飽和(例えば、部分的に不飽和、完全に不飽和)でもよい。同様に、本願明細書で使用する時、「C1-2アルキル」の用語は、1から2個の炭素原子を有する炭化水素化合物、すなわち、メチルまたはエチルの炭素原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分に関する。
【0041】
このため、「アルキル」の用語は、以下に記載される、部分集合であるアルケニル、アルキニル、シクロアルキル等を含む。
【0042】
飽和のアルキル基としては、例えば、制限されず、メチル(C1)、エチル(C2)、プロピル(C3)、ブチル(C4)、ペンチル(C5)、ヘキシル(C6)およびヘプチル(C7)があげられる。
【0043】
飽和の直鎖状アルキル基としては、例えば、制限されず、メチル(C1)、エチル(C2)、n-プロピル(C3)、n-ブチル(C4)、n-ペンチル(アミル)(C5)、n-ヘキシル(C6)およびn-ヘプチル(C7)があげられる。
【0044】
飽和の分岐鎖状アルキル基としては、例えば、iso-プロピル(C3)、iso-ブチル(C4)、sec-ブチル(C4)、tert-ブチル(C4)、iso-ペンチル(C5)およびneo-ペンチル(C5)があげられる。
【0045】
2-12アルケニル:本願明細書で使用する時、「C2-12アルケニル」の用語は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有するアルキル基に関する。
【0046】
不飽和のアルケニル基としては、例えば、制限されず、エテニル(ビニル、-CH=CH2)、1-プロペニル(-CH=CH-CH3)、2-プロペニル(アリル、-CH-CH=CH2)、イソプロペニル(1-メチルビニル、-C(CH3)=CH2)、ブテニル(C4)、ペンテニル(C5)およびヘキセニル(C6)があげられる。
【0047】
2-12アルキニル:本願明細書で使用する時、「C2-12アルキニル」の用語は、1つ以上の炭素-炭素三重結合を有するアルキル基に関する。
【0048】
不飽和のアルキニル基としては、例えば、制限されず、エチニル(-C≡CH)および2-プロピニル(プロパルギル、-CH2-C≡CH)があげられる。
【0049】
3-12シクロアルキル:本願明細書で使用する時、「C3-12シクロアルキル」の用語は、シクリル基でもあるアルキル基;すなわち、環状炭化水素(炭素環式)化合物の脂環式環原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分に関する。前記部分は、3から7個の炭素原子、例えば、3から7個の環原子を有する。
【0050】
シクロアルキル基としては、例えば、制限されず、
飽和の単環式炭化水素化合物:シクロプロパン(C3)、シクロブタン(C4)、シクロペンタン(C5)、シクロヘキサン(C6)、シクロヘプタン(C7)、メチルシクロプロパン(C4)、ジメチルシクロプロパン(C5)、メチルシクロブタン(C5)、ジメチルシクロブタン(C6)、メチルシクロペンタン(C6)、ジメチルシクロペンタン(C7)およびメチルシクロヘキサン(C7);
不飽和の単環式炭化水素化合物:シクロプロペン(C3)、シクロブテン(C4)、シクロペンテン(C5)、シクロヘキセン(C6)、メチルシクロプロペン(C4)、ジメチルシクロプロペン(C5)、メチルシクロブテン(C5)、ジメチルシクロブテン(C6)、メチルシクロペンテン(C6)、ジメチルシクロペンテン(C7)およびメチルシクロヘキセン(C7);ならびに、
飽和の多環式炭化水素化合物:ノルカラン(C7)、ノルピナン(C7)、ノルボルナン(C7)に由来するものがあげられる。
【0051】
3-20ヘテロシクリル:本願明細書で使用する時、「C3-20ヘテロシクリル」の用語は、複素環化合物の環原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分に関する。前記部分は、3から20個の環原子を有し、その内の1から10個が、環のヘテロ原子である。好ましくは、各環は、3から7個の環原子を有し、その内の1から4個が、環のヘテロ原子である。
【0052】
この文脈において、接頭辞(例えば、C3-20、C3-7、C5-6等)は、炭素原子またはヘテロ原子であるかに関わらず、環原子の数、または、環原子の数の範囲を意味する。例えば、本願明細書で使用する時、「C5-6ヘテロシクリル」の用語は、5または6個の環原子を有するヘテロシクリル基に関する。
【0053】
単環式のヘテロシクリル基としては、例えば、制限されず、
1:アジリジン(C3)、アゼチジン(C4)、ピロリジン(テトラヒドロピロール)(C5)、ピロリン(例えば、3-ピロリン、2,5-ジヒドロピロール)(C5)、2H-ピロールもしくは3H-ピロール(イソピロール、イソアゾール)(C5)、ピペリジン(C6)、ジヒドロピリジン(C6)、テトラヒドロピリジン(C6)、アゼピン(C7);
1:オキシラン(C3)、オキセタン(C4)、オキソラン(テトラヒドロフラン)(C5)、オキソール(ジヒドロフラン)(C5)、オキサン(テトラヒドロピラン)(C6)、ジヒドロピラン(C6)、ピラン(C6)、オキセピン(C7);
1:チイラン(C3)、チエタン(C4)、チオラン(テトラヒドロチオフェン)(C5)、チアン(テトラヒドロチオピラン)(C6)、チエパン(C7);
2:ジオキソラン(C5)、ジオキサン(C6)およびジオキセパン(C7);
3:トリオキサン(C6);
2:イミダゾリジン(C5)、ピラゾリジン(ジアゾリジン)(C5)、イミダゾリン(C5)、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)(C5)、ピペラジン(C6);
11:テトラヒドロオキサゾール(C5)、ジヒドロオキサゾール(C5)、テトラヒドロイソキサゾール(C5)、ジヒドロイソキサゾール(C5)、モルホリン(C6)、テトラヒドロオキサジン(C6)、ジヒドロオキサジン(C6)、オキサジン(C6);
11:チアゾリン(C5)、チアゾリジン(C5)、チオモルホリン(C6);
21:オキサジアジン(C6);
11:オキサチオール(C5)およびオキサチアン(チオキサン)(C6);ならびに、
111:オキサチアジン(C6)に由来するものがあげられる。
【0054】
置換されている単環式ヘテロシクリル基としては、例えば、環型の単糖類、例えば、フラノース(C5)、例えば、アラビノフラノース、リキソフラノース、リボフラノースおよびキシロフラノース、ならびに、ピラノース(C6)、例えば、アロピラノース、アルトロピラノース、グルコピラノース、マンノピラノース、グロピラノース、イドピラノース、ガラクトピラノースおよびタロピラノースに由来するものがあげられる。
【0055】
5-20アリール:本願明細書で使用する時、「C5-20アリール」の用語は、芳香族化合物の芳香族環原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分に関し、前記部分は、3から20個の環原子を有する。本願明細書で使用する時、「C5-7アリール」の用語は、芳香族化合物の芳香族環原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分に関し、前記部分は、5から7個の環原子を有する。本願明細書で使用する時、「C5-10アリール」の用語は、芳香族化合物の芳香族環原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分に関し、前記部分は、5から10個の環原子を有する。好ましくは、各環は、5から7個の環原子を有する。
【0056】
この文脈において、接頭辞(例えば、C3-20、C5-7、C5-6、C5-10等)は、炭素原子またはヘテロ原子であるかに関わらず、環原子の数、または、環原子の数の範囲を意味する。例えば、本願明細書で使用する時、「C5-6アリール」の用語は、5または6個の環原子を有するアリール基に関する。
【0057】
「カルボアリール基」のように、前記環原子が、全て炭素原子でもよい。
カルボアリール基としては、例えば、制限されず、ベンゼン、(すなわち、フェニル)(C6)、ナフタレン(C10)、アズレン(C10)、アントラセン(C14)、フェナントレン(C14)、ナフタセン(C18)およびピレン(C16)に由来のものがあげられる。
【0058】
縮合環を含み、その内の少なくとも1つが芳香族環であるアリール基としては、例えば、制限されず、インダン(例えば、2,3-ジヒドロ-1H-インデン)(C9)、インデン(C9)、イソインデン(C9)、テトラリン(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン(C10)、アセナフテン(C12)、フルオレン(C13)、フェナレン(C13)、アセフェナントレン(C15)およびアセアントレン(C16)に由来する基があげられる。
【0059】
または、前記環原子は、「ヘテロアリール基」のように、1つ以上のヘテロ原子を含んでもよい。単環式のヘテロアリール基としては、例えば、制限されず、
1:ピロール(アゾール)(C5)、ピリジン(アジン)(C6);
1:フラン(オキソール)(C5);
1:チオフェン(チオール)(C5);
11:オキサゾール(C5)、イソキサゾール(C5)、イソキサジン(C6);
21:オキサジアゾール(フラザン)(C5);
31:オキサトリアゾール(C5);
11:チアゾール(C5)、イソチアゾール(C5);
2:イミダゾール(1,3-ジアゾール)(C5)、ピラゾール(1,2-ジアゾール)(C5)、ピリダジン(1,2-ジアジン)(C6)、ピリミジン(1,3-ジアジン)(C6)(例えば、シトシン、チミン、ウラシル)、ピラジン(1,4-ジアジン)(C6);
3:トリアゾール(C5)、トリアジン(C6);ならびに、
4:テトラゾール(C5)に由来するものがあげられる。
【0060】
縮合環を含むヘテロアリールとしては、例えば、制限されず:
ベンゾフラン(O1)、イソベンゾフラン(O1)、インドール(N1)、イソインドール(N1)、インドリジン(N1)、インドリン(N1)、イソインドリン(N1)、プリン(N4)(例えば、アデニン、グアニン)、ベンズイミダゾール(N2)、インダゾール(N2)、ベンズオキサゾール(N11)、ベンズイソキサゾール(N11)、ベンゾジオキソール(O2)、ベンゾフラザン(N21)、ベンゾトリアゾール(N3)、ベンゾチオフラン(S1)、ベンゾチアゾール(N11)、ベンゾチアジアゾール(N2S)に由来するC9(2縮合環を含む);
クロメン(O1)、イソクロメン(O1)、クロマン(O1)、イソクロマン(O1)、ベンゾジオキサン(O2)、キノリン(N1)、イソキノリン(N1)、キノリジン(N1)、ベンゾキサジン(N11)、ベンゾジアジン(N2)、ピリドピリジン(N2)、キノキサリン(N2)、キナゾリン(N2)、シンノリン(N2)、フタラジン(N2)、ナフチリジン(N2)、プテリジン(N4)に由来するC10(2縮合環を含む);
ベンゾジアゼピン(N2)に由来するC11(2縮合環を含む);
カルバゾール(N1)、ジベンゾフラン(O1)、ジベンゾチオフェン(S1)、カルボリン(N2)、ペリミジン(N2)、ピリドインドール(N2)に由来するC13(3縮合環を含む);ならびに、
アクリジン(N1)、キサンテン(O1)、チオキサンテン(S1)、オキサントレン(O2)、フェノキサチイン(O11)、フェナジン(N2)、フェノキサジン(N11)、フェノチアジン(N11)、チアントレン(S2)、フェナントリジン(N1)、フェナントロリン(N2)、フェナジン(N2)に由来するC14(3縮合環を含む)があげられる。
【0061】
単独であるか、または、別の置換基の一部であるかに関わらず、上記基は、それ自体が場合により、それらおよび、以下に列記される更なる置換基から選択される1つ以上の基で置換されていてもよい。
【0062】
ハロ:-F、-Cl、-Brおよび-I。
ヒドロキシ:-OH。
【0063】
エーテル:-OR、前記OR中、Rは、エーテル置換基、例えば、C1-7アルキル基(以下に記載される、C1-7アルコキシ基とも言う)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルオキシ基とも言う)または、C5-20アリール基(C5-20アリールオキシ基とも言う)、好ましくは、C1-7アルキル基である。
【0064】
アルコキシ:-OR、前記OR中、Rは、アルキル基、例えば、C1-7アルキル基である。C1-7アルコキシ基としては、例えば、制限されず、-OMe(メトキシ)、-OEt(エトキシ)、-O(nPr)(n-プロポキシ)、-O(iPr)(イソプロポキシ)、-O(nBu)(n-ブトキシ)、-O(sBu)(sec-ブトキシ)、-O(iBu)(イソブトキシ)および-O(tBu)(tert-ブトキシ)があげられる。
【0065】
アセタール:-CH(OR1)(OR2)、前記-CH(OR1)(OR2)中、R1およびR2は、独立して、アセタール置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基であるか、または、「環状」アセタール基の場合、R1およびR2は、それらが付着されている前記2つの酸素原子と、それらが付着されている炭素原子と互いにまとまって、4から8個の環原子を有する複素環を形成している。アセタール基としては、例えば、制限されず、-CH(OMe)2、-CH(OEt)2および-CH(OMe)(OEt)があげられる。
【0066】
ヘミアセタール:-CH(OH)(OR1)、前記-CH(OH)(OR1)中、R1は、ヘミアセタール置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基である。ヘミアセタール基としては、例えば、制限されず、-CH(OH)(OMe)および-CH(OH)(OEt)があげられる。
【0067】
ケタール:-CR(OR1)(OR2)、前記-CR(OR1)(OR2)中、R1およびR2は、アセタールについて規定の通りである。Rは、水素以外のケタール置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基である。ケタール基としては、例えば、制限されず、-C(Me)(OMe)2、-C(Me)(OEt)2、-C(Me)(OMe)(OEt)、-C(Et)(OMe)2、-C(Et)(OEt)2および-C(Et)(OMe)(OEt)があげられる。
【0068】
ヘミケタール:-CR(OH)(OR1)、前記-CR(OH)(OR1)中、R1は、ヘミアセタールについて規定の通りである。Rは、水素以外のヘミケタール置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基である。ヘミケタール基としては、例えば、制限されず、-C(Me)(OH)(OMe)、-C(Et)(OH)(OMe)、-C(Me)(OH)(OEt)および-C(Et)(OH)(OEt)があげられる。
【0069】
オキソ(ケト、-オン):=O。
チオン(チオケトン):=S。
【0070】
イミノ(イミン):=NR、前記=NR中、Rは、イミノ置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、水素またはC1-7アルキル基である。エステル基としては、例えば、制限されず、=NH、=NMe、=NEtおよび=NPhがあげられる。
【0071】
ホルミル(カルバルデヒド、カルボキシアルデヒド):-C(=O)H。
アシル(ケト):-C(=O)R、前記-C(=O)R中、Rは、アシル置換基、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアシルまたはC1-7アルカノイルとも言う)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルアシルとも言う)またはC5-20アリール基(C5-20アリールアシルとも言う)、好ましくは、C1-7アルキル基である。アシル基としては、例えば、制限されず、-C(=O)CH3(アセチル)、-C(=O)CH2CH3(プロピオニル)、-C(=O)C(CH33(t-ブチリル)および-C(=O)Ph(ベンゾイル、フェノン)があげられる。
【0072】
カルボキシ(カルボン酸):-C(=O)OH。
チオカルボキシ(チオカルボン酸):-C(=S)SH。
チオロカルボキシ(チオロカルボン酸):-C(=O)SH。
チオノカルボキシ(チオノカルボン酸):-C(=S)OH。
【0073】
イミド酸:-C(=NH)OH。
ヒドロキサム酸:-C(=NOH)OH。
【0074】
エステル(カルボキシレート、カルボン酸エステル、オキシカルボニル):-C(=O)OR、前記-C(=O)OR中、Rは、エステル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基である。エステル基としては、例えば、制限されず、-C(=O)OCH3、-C(=O)OCH2CH3、-C(=O)OC(CH33および-C(=O)OPhがあげられる。
【0075】
アシルオキシ(逆エステル):-OC(=O)R、前記-OC(=O)R中、Rは、アシルオキシ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基である。アシルオキシ基としては、例えば、制限されず、-OC(=O)CH3(アセトキシ)、-OC(=O)CH2CH3、-OC(=O)C(CH33、-OC(=O)Phおよび-OC(=O)CH2Phがあげられる。
【0076】
オキシカルボイルオキシ:-OC(=O)OR、前記-OC(=O)OR中、Rは、エステル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基である。エステル基としては、例えば、制限されず、-OC(=O)OCH3、-OC(=O)OCH2CH3、-OC(=O)OC(CH33および-OC(=O)OPhがあげられる。
【0077】
アミノ:-NR12、前記-NR12中、R1およびR2は、独立して、アミノ置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアミノまたはジ-C1-7アルキルアミノとも言う)、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、HまたはC1-7アルキル基であるか、または、「環状」アミノ基の場合、R1およびR2は、それらが付着されている前記窒素原子と互いにまとまって、4から8個の環原子を有する複素環を形成している。アミノ基は、一級(-NH2)、二級(-NHR1)または三級(-NHR12)でもよいし、カチオンの状態において、四級(-+NR123)でもよい。アミノ基としては、例えば、制限されず、-NH2、-NHCH3、-NHC(CH32、-N(CH32、-N(CH2CH32および-NHPhがあげられる。環状アミノ基としては、例えば、制限されず、アジリジノ、アゼチジノ、ピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジノ、モルホリノおよびチオモルホリノがあげられる。
【0078】
アミド(カルバモイル、カルバミル、アミノカルボニル、カルボキシアミド):-C(=O)NR12、前記-C(=O)NR12中、R1およびR2は、独立して、アミノ基について規定のアミノ置換基である。アミド基としては、例えば、制限されず、-C(=O)NH2、-C(=O)NHCH3、-C(=O)N(CH32、-C(=O)NHCH2CH3および-C(=O)N(CH2CH32、ならびに、R1およびR2が、それらが付着されている前記窒素原子と互いにまとまって、複素環構造、例えば、ピペリジノカルボニル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニルおよびピペラジノカルボニルを形成しているアミド基があげられる。
【0079】
チオアミド(チオカルバミル):-C(=S)NR12、前記-C(=S)NR12中、R1およびR2は、独立して、アミノ基について規定のアミノ置換基である。アミド基としては、例えば、制限されず、-C(=S)NH2、-C(=S)NHCH3、-C(=S)N(CH32および-C(=S)NHCH2CH3があげられる。
【0080】
アシルアミド(アシルアミノ):-NR1C(=O)R2、前記-NR1C(=O)R2中、R1は、アミド置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、水素またはC1-7アルキル基である。R2は、アシル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、水素またはC1-7アルキル基である。アシルアミド基としては、例えば、制限されず、-NHC(=O)CH3、-NHC(=O)CH2CH3および-NHC(=O)Phがあげられる。R1およびR2は共に、例えば、スクシンイミジル、マレイミジルおよびフタルイミジルのような、環状構造を形成し得る。
【0081】
【化9】
【0082】
アミノカルボニルオキシ:-OC(=O)NR12、前記-OC(=O)NR12中、R1およびR2は、独立して、アミノ基について規定のアミノ置換基である。アミノカルボニルオキシ基としては、例えば、制限されず、-OC(=O)NH2、-OC(=O)NHMe、-OC(=O)NMe2および-OC(=O)NEt2があげられる。
【0083】
ウレイド:-N(R1)CONR23、前記-N(R1)CONR23中、R2およびR3は、独立して、アミノ基について規定のアミノ置換基である。R1は、ウレイド置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、水素またはC1-7アルキル基である。ウレイド基としては、例えば、制限されず、-NHCONH2、-NHCONHMe、-NHCONHEt、-NHCONMe2、-NHCONEt2、-NMeCONH2、-NMeCONHMe、-NMeCONHEt、-NMeCONMe2および-NMeCONEt2があげられる。
【0084】
グアノジノ:-NH-C(=NH)NH2
テトラゾリル:4つの窒素原子と1つの炭素原子とを有する5員の芳香環。
【0085】
【化10】
【0086】
イミノ:=NR、前記=NR中、Rは、イミノ置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、HまたはC1-7アルキル基である。イミノ基としては、例えば、制限されず、=NH、=NMeおよび=NEtがあげられる。
【0087】
アミジン(アミジノ):-C(=NR)NR2、前記-C(=NR)NR2中、各Rは、アミジン置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、HまたはC1-7アルキル基である。アミジン基としては、例えば、制限されず、-C(=NH)NH2、-C(=NH)NMe2および-C(=NMe)NMe2があげられる。
【0088】
ニトロ:-NO2
ニトロソ:-NO。
アジド:-N3
【0089】
シアノ(ニトリル、カーボニトリル):-CN。
イソシアノ:-NC。
シアナト:-OCN。
イソシアナト:-NCO。
【0090】
チオシアノ(チオシアナト):-SCN。
イソチオシアノ(イソチオシアナト):-NCS。
スルフヒドリル(チオール、メルカプト):-SH。
【0091】
チオエーテル(スルフィド):-SR、前記-SR中、Rは、チオエーテル置換基、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルキルチオ基とも言う)、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基である。C1-7アルキルチオ基としては、例えば、制限されず、-SCH3および-SCH2CH3があげられる。
【0092】
ジスルフィド:-SS-R、前記-SS-R中、Rは、ジスルフィド置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基(本願明細書では、C1-7アルキルジスルフィドとも言う)である。C1-7アルキルジスルフィド基としては、例えば、制限されず、-SSCH3および-SSCH2CH3があげられる。
【0093】
スルフィン(スルフィニル、スルホキシド):-S(=O)R、前記-S(=O)R中、Rは、スルフィン置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基である。スルフィン基としては、例えば、制限されず、-S(=O)CH3および-S(=O)CH2CH3があげられる。
【0094】
スルホン(スルホニル):-S(=O)2R、前記-S(=O)2R中、Rは、スルホン置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基、例えば、フッ素化もしくは全フッ素置換されたC1-7アルキル基である。スルホン基としては、例えば、制限されず、-S(=O)2CH3(メタンスルホニル、メシル)、-S(=O)2CF3(トリフリル)、-S(=O)2CH2CH3(エシル)、-S(=O)249(ノナフリル)、-S(=O)2CH2CF3(トレシル)、-S(=O)2CH2CH2NH2(タウリル)、-S(=O)2Ph(フェニルスルホニル、ベシル)、4-メチルフェニルスルホニル(トシル)、4-クロロフェニルスルホニル(クロシル)、4-ブロモフェニルスルホニル(ブロシル)、4-ニトロフェニル(ノシル)、2-ナフタレンスルホナート(ナプシル)および5-ジメチルアミノ-ナフタレン-1-イルスルホナート(ダンシル)があげられる。
【0095】
スルフィン酸(スルフィノ):-S(=O)OH、-SO2H。
スルホン酸(スルホ):-S(=O)2OH、-SO3H。
【0096】
スルフィナート(スルフィン酸エステル):-S(=O)OR;前記-S(=O)OR中、Rは、スルフィナート置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基である。スルフィナート基としては、例えば、制限されず、-S(=O)OCH3(メトキシスルフィニル;メチルスルフィナート)および-S(=O)OCH2CH3(エトキシスルフィニル;エチルスルフィナート)があげられる。
【0097】
スルホナート(スルホン酸エステル):-S(=O)2OR、前記-S(=O)2OR中、Rは、スルホナート置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基である。スルホナート基としては、例えば、制限されず、-S(=O)2OCH3(メトキシスルホニル;メチルスルホナート)および-S(=O)2OCH2CH3(エトキシスルホニル;エチルスルホナート)があげられる。
【0098】
スルフィニルオキシ:-OS(=O)R、前記-OS(=O)R中、Rは、スルフィニルオキシ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基である。スルフィニルオキシ基としては、例えば、制限されず、-OS(=O)CH3および-OS(=O)CH2CH3があげられる。
【0099】
スルホニルオキシ:-OS(=O)2R、前記-OS(=O)2R中、Rは、スルホニルオキシ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基である。スルホニルオキシ基としては、例えば、制限されず、-OS(=O)2CH3(メシレート)および-OS(=O)2CH2CH3(エシレート)があげられる。
【0100】
サルフェート:-OS(=O)2OR:前記-OS(=O)2OR中、Rは、サルフェート置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基である。サルフェート基としては、例えば、制限されず、-OS(=O)2OCH3および-SO(=O)2OCH2CH3があげられる。
【0101】
スルファミル(スルファモイル;スルフィン酸アミド;スルフィナミド):-S(=O)NR12、前記-S(=O)NR12中、R1およびR2は、独立して、アミノ基について規定のアミノ置換基である。スルファミル基としては、例えば、制限されず、-S(=O)NH2、-S(=O)NH(CH3)、-S(=O)N(CH32、-S(=O)NH(CH2CH3)、-S(=O)N(CH2CH32および-S(=O)NHPhがあげられる。
【0102】
スルホンアミド(スルフィンアモイル;スルホン酸アミド;スルホンアミド):-S(=O)2NR12、前記-S(=O)2NR12中、R1およびR2は、独立して、アミノ基について規定のアミノ置換基である。スルホンアミド基としては、例えば、制限されず、-S(=O)2NH2、-S(=O)2NH(CH3)、-S(=O)2N(CH32、-S(=O)2NH(CH2CH3)、-S(=O)2N(CH2CH32および-S(=O)2NHPhがあげられる。
【0103】
スルファミノ:-NR1S(=O)2OH、前記-NR1S(=O)2OH中、R1は、アミノ基について規定のアミノ置換基である。スルファミノ基としては、例えば、制限されず、-NHS(=O)2OHおよび-N(CH3)S(=O)2OHがあげられる。
【0104】
スルホンアミノ:-NR1S(=O)2R、前記-NR1S(=O)2R中、R1は、アミノ基について規定のアミノ置換基である。Rは、スルホンアミノ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基である。スルホンアミノ基としては、例えば、制限されず、-NHS(=O)2CH3および-N(CH3)S(=O)265があげられる。
【0105】
スルフィンアミノ:-NR1S(=O)R、前記-NR1S(=O)R中、R1は、アミノ基について規定のアミノ置換基である。Rは、スルフィンアミノ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基である。スルフィンアミノ基としては、例えば、制限されず、-NHS(=O)CH3および-N(CH3)S(=O)C65があげられる。
【0106】
ホスフィノ(ホスフィン):-PR2、前記-PR2中、Rは、ホスフィノ置換基、例えば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、-H、C1-7アルキル基またはC5-20アリール基である。ホスフィノ基としては、例えば、制限されず、-PH2、-P(CH32、-P(CH2CH32、-P(t-Bu)2および-P(Ph)2があげられる。
【0107】
ホスホ:-P(=O)2
ホスフィニル(ホスフィンオキシド):-P(=O)R2、前記-P(=O)R2中、Rは、ホスフィニル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、C1-7アルキル基またはC5-20アリール基である。ホスフィニル基としては、例えば、制限されず、-P(=O)(CH32、-P(=O)(CH2CH32、-P(=O)(t-Bu)2および-P(=O)(Ph)2があげられる。
【0108】
ホスホン酸(ホスホノ):-P(=O)(OH)2
ホスホナート(ホスホノエステル):-P(=O)(OR)2、前記-P(=O)(OR)2中、Rは、ホスホナート置換基、例えば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、-H、C1-7アルキル基またはC5-20アリール基である。ホスホナート基としては、例えば、制限されず、-P(=O)(OCH32、-P(=O)(OCH2CH32、-P(=O)(O-t-Bu)2および-P(=O)(OPh)2があげられる。
【0109】
リン酸(ホスホノオキシ):-OP(=O)(OH)2
ホスフェート(ホスホノオキシエステル):-OP(=O)(OR)2、前記-OP(=O)(OR)2中、Rは、ホスフェート置換基、例えば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、-H、C1-7アルキル基またはC5-20アリール基である。ホスフェート基としては、例えば、制限されず、-OP(=O)(OCH32、-OP(=O)(OCH2CH32、-OP(=O)(O-t-Bu)2および-OP(=O)(OPh)2があげられる。
【0110】
亜リン酸:-OP(OH)2
ホスファイト:-OP(OR)2、前記-OP(OR)2中、Rは、ホスファイト置換基、例えば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、-H、C1-7アルキル基またはC5-20アリール基である。ホスファイト基としては、例えば、制限されず、-OP(OCH32、-OP(OCH2CH32、-OP(O-t-Bu)2および-OP(OPh)2があげられる。
【0111】
ホスホラミダイト:-OP(OR1)-NR2 2、前記-OP(OR1)-NR2 2中、R1およびR2は、ホスホラミダイト置換基、例えば、-H、(場合により置換されている)C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、-H、C1-7アルキル基またはC5-20アリール基である。ホスホラミダイト基としては、例えば、制限されず、-OP(OCH2CH3)-N(CH32、-OP(OCH2CH3)-N(i-Pr)2および-OP(OCH2CH2CN)-N(i-Pr)2があげられる。
【0112】
ホスホラミデート:-OP(=O)(OR1)-NR2 2、前記-OP(=O)(OR1)-NR2 2中、R1およびR2は、ホスホラミデート置換基、例えば、-H、(場合により置換されている)C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基、好ましくは、-H、C1-7アルキル基またはC5-20アリール基である。ホスホラミデート基としては、例えば、制限されず、-OP(=O)(OCH2CH3)-N(CH32、-OP(=O)(OCH2CH3)-N(i-Pr)2および-OP(=O)(OCH2CH2CN)-N(i-Pr)2があげられる。
【0113】
コンジュゲート
本発明は、リンカーユニットを介して、リガンドユニットに結合されるPBD二量体を含むコンジュゲートを提供する。一実施形態では、前記リンカーユニットは、ストレッチャユニット(A)、特異性ユニット(L1)およびスペーサユニット(L2)を含む。前記リンカーユニットは、前記リガンドユニット(L)に、一方端で結合されており、前記PBD二量体化合物(D)に、他方端で結合されている。
【0114】
一態様では、このようなコンジュゲートは、以下に、式IVa:
L-(A1 a-L1 s-L2 y-D)p (IVa)
または、その薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物で示される。式IVa中:Lは、前記リガンドユニットであり;および、-A1 a-L1 s-L2 y-は、リンカーユニット(LU)であり、前記リンカーユニット中、-A1-は、ストレッチャユニットであり、aは、1または2であり、-L1-は、特異性ユニットであり、sは、0から12の範囲の整数であり、-L2-は、スペーサユニットであり、yは、0、1または2であり;-Dは、PBD二量体であり;および、pは、1から20である。
【0115】
別の態様では、このようなコンジュゲートは、以下に、式IVb:
【化11】
として示される。および
L-(A1 a-L2 y(-L1 s)-D)p (IVb)
としても示され、または、その薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物で示される。式IVb中:Lは、前記リガンドユニットであり;および、-A1 a-L1 s(L2 y)-は、リンカーユニット(LU)であり、前記リンカーユニット中、-A1-は、ストレッチャユニット(L2)に結合されているストレッチャユニットであり、aは、1または2であり、-L1-は、ストレッチャユニット(L2)に結合されている特異性ユニットであり、sは、0から12の範囲の整数であり、-L2-は、スペーサユニットであり、yは、0、1または2であり;-Dは、PBD二量体であり;および、pは、1から20である。
【0116】
選択
下記選択が、上記本発明の全ての態様に適用されてもよいし、または、単独の態様に関連し得る。前記選択は、任意の組み合わせで互いに組み合わせられてもよい。
【0117】
一実施形態では、前記コンジュゲートは、式:
L-(A1 a-L1 s-L2 y-D)p
L-(A1 a-Ls 1-D)p
L-(A1-L1-D)pもしくは
L-(A1-D)p
または、その薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物を有する。前記式中、L、A1、a、L1、s、L2、D、yおよびpは、上記の通りである。
【0118】
一実施形態では、前記リガンドユニット(L)は、標的細胞の表面上の標的分子に特異的に結合する、細胞結合剤(CBA)である。典型的な式は、以下に示される。
【0119】
【化12】
【0120】
前記式中、前記アスタリスクは、前記ドラッグユニット(D)への付着点を示し、CBAは、前記細胞結合剤であり、L1は、特異性ユニットであり、A1は、前記細胞結合剤に、L1を結合させるストレッチャユニットであり、L2は、スペーサユニットであり、前記スペーサユニットは、共有結合、自壊性基であるか、-OC(=O)-と共に自壊性基を形成し、L2は、任意選択である。-OC(=O)-は、必要に応じて、L1またはL2の一部であると見なしてもよい。
【0121】
別の実施形態では、前記リガンドユニット(L)は、標的細胞の表面上の標的分子に特異的に結合する、細胞結合剤(CBA)である。典型的な式は、以下に示される。
【0122】
CBA-A1 a-L1 s-L2 y*
【0123】
前記式中、前記アスタリスクは、前記ドラッグユニット(D)への付着点を示し、CBAは、前記細胞結合剤であり、L1は、特異性ユニットであり、A1は、前記細胞結合剤に、L1を結合させるストレッチャユニットであり、L2は、共有結合または自壊性基であるスペーサユニットであり、および、aは、1または2であり、sは、0、1または2であり、yは、0または1または2である。
【0124】
上記で説明した実施形態では、L1は、開裂性の特異性ユニットであることができ、自壊性基が存在する場合、開裂された時点で、自壊性基(または、複数の自壊性基)であるL2を活性化する、「トリガー」と呼ばれ得る。前記特異性ユニットL1が開裂された場合、または、L1とL2との間の結合(すなわち、前記共有結合)が開裂された場合、前記自壊基は、前記ドラッグユニット(D)を遊離する。
【0125】
別の実施形態では、前記リガンドユニット(L)は、標的細胞の表面上の標的分子に特異的に結合する、細胞結合剤(CBA)である。典型的な式は、以下に示される。
【0126】
【化13】
【0127】
前記式中、前記アスタリスクは、前記ドラッグ(D)への付着点を示し、CBAは、前記細胞結合剤であり、L1は、L2に結合されている特異性ユニットであり、A1は、前記細胞結合剤に、L2を結合させるストレッチャユニットであり、L2は、自壊性基であり、aは、1または2であり、sは、1または2であり、yは、1または2である。
【0128】
本願明細書に記載の種々の実施形態では、L1およびL2の性質は、広く変化させ得る。これらの基は、その特徴に基づき選択される。前記特徴は、前記コンジュゲートが生じる部位における条件により、部分的に決定され得る。特異性ユニットL1が開裂性である場合、L1の構造および/または配列は、それが、前記標的部位(例えば、前記標的細胞)に存在する酵素の作用により開裂されるように、選択される。pH(例えば、酸または塩基に不安定)、温度、または放射線(光に不安定)の変化による開裂性のL1ユニットが、使用されてもよい。還元または酸化の条件下において開裂性のL1ユニットも、前記コンジュゲートへの使用が見出され得る。
【0129】
一部の実施形態では、L1は、1つのアミノ酸またはアミノ酸の連続配列を含んでもよい。前記アミノ酸配列は、酵素のための標的基質でもよい。
【0130】
一実施形態では、L1は、前記酵素の作用による開裂性である。一実施形態では、前記酵素は、エステラーゼまたはペプチダーゼである。例えば、L1は、リソソームのプロテアーゼ、例えば、カテプシンにより開裂され得る。
【0131】
一実施形態では、L2が存在し、-C(=O)O-と共に、単数または複数の自壊性基を形成する。一部の実施形態では、-C(=O)O-も、自壊性基である。
【0132】
一実施形態では、L1が前記酵素の作用により開裂性(自壊性)である場合、L2が存在し、前記酵素が、L1とL2との間の結合を開裂させる。これにより、前記自壊性基(または、複数の自壊性基)が、前記ドラッグユニットを遊離する。
【0133】
存在する場合、L1およびL2は、
-C(=O)NH-、-C(=O)O-、-NHC(=O)-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-NHC(=O)O-、-OC(=O)NH-、-NHC(=O)NHおよび-O-(グリコシド結合)から選択される結合により結合され得る。
【0134】
2に結合するL1のアミノ基は、アミノ酸のN-末端であるか、または、アミノ酸側鎖、例えば、リジンのアミノ酸側鎖のアミノ基に由来し得る。
【0135】
2に結合するL1のカルボキシル基は、アミノ酸のC-末端であるか、または、アミノ酸側鎖、例えば、グルタミン酸のアミノ酸側鎖のカルボキシル基に由来し得る。
【0136】
2に結合するL1のヒドロキシ基は、アミノ酸側鎖、例えば、セリンのアミノ酸側鎖のヒドロキシ基に由来し得る。
【0137】
一実施形態では、-C(=O)O-およびL2は共に、基:
【化14】
を形成する。前記基中、前記アスタリスクは、前記ドラッグユニットへの付着点を示し、前記波線は、前記L1への付着点を示し、Yは、-N(H)-、-O-、-C(=O)N(H)-または-C(=O)O-であり、nは、0から3である。前記フェニレン環は、場合により、本願明細書に記載の、1、2または3つの置換基で置換されている。
【0138】
一実施形態では、Yは、NHである。
一実施形態では、nは、0または1である。好ましくは、nは、0である。
【0139】
YがNHである場合、nは、0であり、前記自壊性基は、p-アミノベンジルカルボニルリンカー(PABC)と呼ばれ得る。
【0140】
前記自壊性基は、前記リンカーにおける遠隔部が活性化された際、(n=0に関して、)以下に示される方向に沿って進行して、前記ドラッグユニット(すなわち、前記非対称PBD)の遊離を可能にするであろう。
【0141】
【化15】
【0142】
前記アスタリスクは、前記ドラッグへの付着を示し、L*は、前記リンカー残部の活性型であり、前記遊離されたドラッグユニットは示されていない。これらの基は、前記ドラッグから活性化部位を分離する利点を有する。
【0143】
別の実施形態では、-C(=O)O-およびL2は互いに、
【化16】
から選択される基を形成する。前記基中、前記アスタリスク、前記波線、Yおよびnは、上記の通りである。各フェニレン環は、場合により、本願明細書に記載の、1、2または3つの置換基で置換されている。一実施形態では、前記Y置換基を有する前記フェニレン環は、場合により、置換されており、前記Y置換基を有さない前記フェニレン環は、置換されていない。
【0144】
別の実施形態では、-C(=O)O-およびL2は共に、
【化17】
から選択される基を形成する。前記基中、前記アスタリスク、前記波線、Yおよびnは、上記の通りである。Eは、O、SまたはNRであり、Dは、N、CH、またはCRであり、Fは、N、CHまたはCRである。
【0145】
一実施形態では、Dは、Nである。
一実施形態では、Dは、CHである。
一実施形態では、Eは、OまたはSである。
一実施形態では、Fは、CHである。
【0146】
好ましい実施形態では、L1とL2との間の共有結合は、カテプシンに不安定な(例えば、開裂性の)結合である。
【0147】
一実施形態では、L1は、ジペプチドを含む。前記ジペプチドにおけるアミノ酸は、天然のアミノ酸および非天然のアミノ酸の任意の組み合わせであり得る。一部の実施形態では、前記ジペプチドは、天然のアミノ酸を含む。前記リンカーが、カテプシンに不安定なリンカーである場合、前記ジペプチドは、カテプシン媒介性開裂に対する作用部位である。その結果、前記ジペプチドは、カテプシンに対する認識部位である。
【0148】
一実施形態では、ジペプチドにおける基-X1-X2-、-NH-X1-X2-CO-は、-Phe-Lys-、-Val-Ala-、-Val-Lys-、-Ala-Lys-、-Val-Cit-、-Phe-Cit-、-Leu-Cit-、-Ile-Cit-、-Phe-Arg-および-Trp-Cit-から選択される。Citは、シトルリンである。このようなジペプチドでは、-NH-は、X1のアミノ基であり、COは、X2のカルボニル基である。
【0149】
好ましくは、前記ジペプチドにおける基-X1-X2-、-NH-X1-X2-CO-は、-Phe-Lys-、-Val-Ala-、-Val-Lys-、-Ala-Lys-および-Val-Cit-から選択される。
【0150】
最も好ましくは、前記ジペプチドにおける基-X1-X2-、-NH-X1-X2-CO-は、-Phe-Lys-、-Val-Citまたは-Val-Ala-である。
【0151】
対象となる他のジペプチドの組み合わせとしては、-Gly-Gly-、-Pro-Pro-および-Val-Glu-があげられる。
【0152】
他のジペプチドの組み合わせ、例えば、その全体が、全ての目的に関して、参照により本願明細書に取り込まれる、Dubowchik et alにより記載されたものが使用されてもよい。
【0153】
一実施形態では、前記アミノ酸側鎖は、必要に応じて、化学的に保護される。前記側鎖の保護基は、以下に記載の基であり得る。保護されたアミノ酸配列は、酵素により開裂可能である。例えば、Boc側鎖保護されたLys残基を含むジペプチド配列は、カテプシンにより開裂可能である。
【0154】
前記アミノ酸の側鎖に関する保護基は、当該分野において周知であり、Novabiochemのカタログに記載されている。更なる保護基の戦略は、Organic Synthesis, Greene and Wutsにおける、保護基から始められる。
有用な側鎖保護基は、反応性の側鎖官能基を有するアミノ酸について、以下に示される。
【0155】
Arg:Z、Mtr、Tos;
Asn:Trt、Xan;
Asp:Bzl、t-Bu;
Cys:Acm、Bzl、Bzl-OMe、Bzl-Me、Trt;
Glu:Bzl、t-Bu;
Gln:Trt、Xan;
His:Boc、Dnp、Tos、Trt;
Lys:Boc、Z-Cl、Fmoc、Z;
Ser:Bzl、TBDMS、TBDPS;
Thr:Bz;
Trp:Boc;
Tyr:Bzl、Z、Z-Br。
【0156】
一実施形態では、-X2-は、前記ドラッグユニットに、間接的に結合される。このような実施形態では、前記スペーサユニットL2が存在する。
【0157】
一実施形態では、-X2-は、前記ドラッグユニットに、直接結合される。このような実施形態では、前記スペーサユニットL2は存在しない。
【0158】
一実施形態では、前記ジペプチドは、自壊性基(または、複数の自壊性基)(前記スペーサユニット)との組み合わせで使用される。前記自壊性基(または、複数の自壊性基)は、-X2-に結合されてもよい。
【0159】
自壊性基が存在する場合、-X2-は、前記自壊性基に直接結合される。一実施形態では、-X2-は、前記自壊性基の基Yに結合される。好ましくは、前記基-X2-CO-は、Yに結合され、Yは、NHである。
【0160】
一実施形態では、-X1-は、A1に直接結合される。好ましくは、前記基NH-X1-(前記X1のアミノ末端)は、A1に結合される。A1は、官能基-CO-を含み得るため、-X1-とアミド結合を形成する。
【0161】
一実施形態では、L1およびL2は-OC(=O)-と共に、基-X1-X2-PABC-を含む。前記PABC基は、前記ドラッグユニットに直接結合される。一実施形態では、前記自壊性基および前記ジペプチドは共に、基Phe-Lys-PABC-を形成する。前記基は、以下に説明される。
【0162】
【化18】
【0163】
前記アスタリスクは、前記ドラッグユニットへの付着点を示し、前記波線は、前記L1の残部への付着点または前記A1への付着点を示す。好ましくは、前記波線は、前記A1への付着点を示す。
【0164】
または、前記自壊性基および前記ジペプチドは共に、基Val-Ala-PABC-を形成する。前記基は、以下に説明される。
【0165】
【化19】
【0166】
前記アスタリスクおよび前記波線は、上記規定の通りである。
【0167】
別の実施形態では、L1およびL2は、-OC(=O)-と共に、
【化20】
を表し、前記アスタリスクは、前記ドラッグユニットへの付着点を示し、前記波線は、前記A1への付着点を示す。Yは、共有結合または官能基であり、Eは、開裂に感受性であることで、自壊性基を活性化する基である。
【0168】
Eは、前記基が、例えば、光または酵素作用による開裂に感受性であるように選択される。Eは、-NO2またはグルクロン酸(例えば、β-グルクロン酸)でもよい。前者は、ニトロレダクターゼの作用に、後者は、β-グルクロニダーゼの作用に、感受性であり得る。
【0169】
前記基Yは、共有結合でもよい。
前記基Yは、-C(=O)-、-NH-、-O-、-C(=O)NH-、-C(=O)O-、-NHC(=O)-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-NHC(=O)O-、-OC(=O)NH-、-NHC(=O)NH-、-NHC(=O)NH、-C(=O)NHC(=O)-、SO2および-S-から選択される官能基でもよい。
【0170】
前記基Yは、好ましくは、-NH-、-CH2-、-O-および-S-である。
【0171】
一部の実施形態では、L1およびL2は、-OC(=O)-と共に、
【化21】
を表し、前記アスタリスクは、前記ドラッグユニットへの付着点を示し、前記波線は、前記Aへの付着点を示す。Yは、共有結合または官能基であり、Eは、グルクロン酸(例えば、β-グルクロン酸)である。Yは、好ましくは、-NH-から選択される官能基である。
【0172】
一部の実施形態では、L1およびL2は共に、
【化22】
を表し、前記アスタリスクは、前記L2の残部または前記ドラッグユニットへの付着点を示し、前記波線は、前記A1への付着点を示し、Yは、共有結合または官能基であり、Eは、グルクロン酸(例えば、β-グルクロン酸)である。Yは、好ましくは、-NH-、-CH2-、-O-および-S-から選択される官能基である。
【0173】
一部の更なる実施形態では、Yは、上記説明の官能基である。前記官能基は、アミノ酸に結合され、前記アミノ酸は、前記ストレッチャユニットA1に結合される。一部の実施形態では、アミノ酸は、β-アラニンである。このような実施形態では、前記アミノ酸は、前記ストレッチャユニットの一部と同等と見なされる。
【0174】
前記特異性ユニットL1および前記リガンドユニットは、前記ストレッチャユニットを介して、間接的に結合される。
【0175】
1およびA1は、-C(=O)NH-、-C(=O)O-、-NHC(=O)-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-NHC(=O)O-、-OC(=O)NH-および-NHC(=O)NH-から選択される結合により結合されてもよい。
【0176】
一実施形態では、前記基A1は、
【化23】
であり、前記アスタリスクは、前記L1、L2またはDへの付着点を示し、前記波線は、前記リガンドユニットへの付着点を示し、nは、0から6である。一実施形態では、nは、5である。
【0177】
一実施形態では、前記基A1は、
【化24】
であり、前記アスタリスクは、前記L1、L2またはDへの付着点を示し、前記波線は、前記リガンドユニットへの付着点を示し、nは、0から6である。一実施形態では、nは、5である。
【0178】
一実施形態では、前記基A1は、
【化25】
であり、前記アスタリスクは、前記L1、L2またはDへの付着点を示し、前記波線は、前記リガンドユニットへの付着点を示し、nは、0または1であり、mは、0から30である。好ましい実施形態では、nは、1であり、mは、0から10、1から8、好ましくは4から8、最も好ましくは4または8である。
【0179】
一実施形態では、前記基A1は、
【化26】
であり、前記アスタリスクは、前記L1、L2またはDへの付着点を示し、前記波線は、前記リガンドユニットへの付着点を示し、nは、0または1であり、mは、0から30である。好ましい実施形態では、nは、1であり、mは、0から10、1から8、好ましくは4から8、最も好ましくは4または8である。
【0180】
一実施形態では、前記基A1は、
【化27】
であり、前記アスタリスクは、前記L1、L2またはDへの付着点を示し、前記波線は、前記リガンドユニットへの付着点を示し、nは、0から6である。一実施形態では、nは、5である。
【0181】
一実施形態では、前記基A1は、
【化28】
であり、前記アスタリスクは、前記L1、L2またはDへの付着点を示し、前記波線は、前記リガンドユニットへの付着点を示し、nは、0から6である。一実施形態では、nは、5である。
【0182】
一実施形態では、前記基A1は、
【化29】
であり、前記アスタリスクは、前記L1、L2またはDへの付着点を示し、前記波線は、前記リガンドユニットへの付着点を示し、nは、0または1であり、mは、0から30である。好ましい実施形態では、nは、1であり、mは、0から10、1から8、好ましくは4から8、最も好ましくは4または8である。
【0183】
一実施形態では、前記基A1は、
【化30】
であり、前記アスタリスクは、前記L1、L2またはDへの付着点を示し、前記波線は、前記リガンドユニットへの付着点を示し、nは、0または1であり、mは、0から30である。好ましい実施形態では、nは、1であり、mは、0から10、1から8、好ましくは4から8、最も好ましくは4または8である。
【0184】
一実施形態では、前記リガンドユニットとA1との間の結合は、前記リガンドユニットのチオール残基と、A1のマレイミド基とによる。
【0185】
一実施形態では、前記リガンドユニットとA1との間の結合は、
【化31】
であり、前記アスタリスクは、前記A1、L1、L2またはDの残部への付着点を示し、前記波線は、前記リガンドユニットの残部への付着点を示す。この実施形態では、前記S原子は、典型的には、前記リガンドユニットに由来する。
【0186】
上記各実施形態では、以下に示される代替となる官能基が、前記マレイミドに由来する基に代えて使用されてもよい。
【0187】
【化32】
【0188】
前記波線は、前述のように、前記リガンドユニットへの付着点を示し、前記アスタリスクは、前記A1基の残部、またはL1、L2もしくはDへの結合を示す。
【0189】
一実施形態では、前記マレイミドに由来する基は、基:
【化33】
により置き替えられる。前記波線は、前記リガンドユニットへの付着点を示し、前記アスタリスクは、前記A1基の残部、またはL1、L2もしくはDへの結合を示す。
【0190】
一実施形態では、前記マレイミドに由来する基は、場合により、リガンドユニット(例えば、細胞結合剤)と共に、C(=O)NH-、-C(=O)O-、-NHC(=O)-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-NHC(=O)O-、-OC(=O)NH-、-NHC(=O)NH-、-NHC(=O)NH、-C(=O)NHC(=O)-、-S-、-S-S-、-CH2C(=O)-、-C(=O)CH2-、=N-NH-および-NH-N=から選択される基で置き替えられる。
【0191】
前記カルボニル基が、-NH-に結合される場合、これらの中でも、-C(=O)CH2-が、特に好ましくあり得る。
【0192】
一実施形態では、前記マレイミドに由来する基は、場合により、前記リガンドユニットと共に、
【化34】
から選択される基で置き替えられる。前記波線は、前記リガンドユニットへの付着点、または、前記A1基の残部への結合のいずれかを示し、前記アスタリスクは、前記リガンドユニットへの他の付着点、または、前記A1基の残部への他の結合を示す。
【0193】
前記細胞結合剤にL1を結合させるのに適切な他の基は、国際公開第2005/082023号パンフレットに記載されている。
【0194】
一実施形態では、前記ストレッチャユニットA1が存在し、前記特異性ユニットL1が存在し、スペーサユニットL2が存在しない。このため、L1および前記ドラッグユニットが、結合を介して直接結合される。同等にこの実施形態では、L2は、結合である。
【0195】
1およびDは、-C(=O)N<、-OC(=O)N<および-NHC(=O)N<から選択される結合により結合されてもよい。N<は、Dの一部である。
【0196】
一実施形態では、L1およびDは、好ましくは、結合:-C(=O)N<により結合される。
【0197】
一実施形態では、L1は、ジペプチドを含み、前記ジペプチドの一方端は、Dに結合される。前述のように、前記ジペプチドのアミノ酸は、天然のアミノ酸および非天然のアミノ酸の任意の組み合わせであり得る。一部の実施形態では、前記ジペプチドは、天然のアミノ酸を含む。前記リンカーが、カテプシンに不安定なリンカーである場合、前記ジペプチドは、カテプシン媒介性開裂に対する作用部位である。ついで、前記ジペプチドは、カテプシンに対する認識部位である。
【0198】
一実施形態では、前記ジペプチドにおける基-X1-X2-、-NH-X1-X2-CO-は、-Phe-Lys-、-Val-Ala-、-Val-Lys-、-Ala-Lys-、-Val-Cit-、-Phe-Cit-、-Leu-Cit-、-Ile-Cit-、-Phe-Arg-および-Trp-Cit-から選択される。Citは、シトルリンである。このようなジペプチドでは、-NH-は、X1のアミノ基であり、COは、X2のカルボニル基である。
【0199】
好ましくは、前記ジペプチドにおける基-X1-X2-、-NH-X1-X2-CO-は、-Phe-Lys-、-Val-Ala-、-Val-Lys-、-Ala-Lys-および-Val-Cit-から選択される。
【0200】
最も好ましくは、前記ジペプチドにおける基-X1-X2-、-NH-X1-X2-CO-は、-Phe-Lys-または-Val-Ala-である。
【0201】
対象となる他のジペプチドの組み合わせとしては、-Gly-Gly-、-Pro-Pro-および-Val-Glu-があげられる。
【0202】
他のジペプチドの組み合わせは、例えば、上記のものが使用されてもよい。
【0203】
一実施形態では、L1-Dは、
【化35】
であり、-NH-X1-X2-COは、前記ジペプチドであり、-N<は、前記ドラッグユニットの一部であり、前記アスタリスクは、前記ドラッグユニットの残部への付着点を示し、前記波線は、前記L1の残部への付着点または前記A1への付着点を示す。好ましくは、前記波線は、前記A1への付着点を示す。
【0204】
一実施形態では、前記ジペプチドは、バリン-アラニンであり、L1-Dは、
【化36】
であり、前記アスタリスク、-N<および前記波線は、上記の通りである。
一実施形態では、前記ジペプチドは、フェニルアラニン-リジンであり、L1-Dは、
【化37】
であり、前記アスタリスク、-N<および前記波線は、上記の通りである。
【0205】
一実施形態では、前記ジペプチドは、バリン-シトルリンである。
【0206】
一実施形態では、前記基A1-L1は、
【化38】
であり、前記アスタリスクは、前記L2またはDへの付着点を示し、前記波線は、前記リガンドユニットへの付着点を示し、nは、0から6である。一実施形態では、nは、5である。
【0207】
一実施形態では、前記基A1-L1は、
【化39】
であり、前記アスタリスクは、前記L2またはDへの付着点を示し、前記波線は、前記リガンドユニットへの付着点を示し、nは、0から6である。一実施形態では、nは、5である。
【0208】
一実施形態では、前記基A1-L1は、
【化40】
であり、前記アスタリスクは、前記L2またはDへの付着点を示し、前記波線は、前記リガンドユニットへの付着点を示し、nは、0または1であり、mは、0から30である。好ましい実施形態では、nは、1であり、mは、0から10、1から8、好ましくは4から8、最も好ましくは4または8である。
【0209】
一実施形態では、前記基A1-L1は、
【化41】
であり、前記アスタリスクは、前記L2またはDへの付着点を示し、前記波線は、前記リガンドユニットへの付着点を示し、nは、0または1であり、mは、0から30である。好ましい実施形態では、nは、1であり、mは、0から10、1から7、好ましくは3から7、最も好ましくは3または7である。
【0210】
一実施形態では、前記基A1-L1は、
【化42】
であり、前記アスタリスクは、前記L2またはDへの付着点を示し、前記波線は、前記リガンドユニットへの付着点を示し、nは、0から6である。一実施形態では、nは、5である。
【0211】
一実施形態では、前記基A1-L1は、
【化43】
であり、前記アスタリスクは、前記L2またはDへの付着点を示し、前記波線は、前記リガンドユニットへの付着点を示し、nは、0から6である。一実施形態では、nは、5である。
【0212】
一実施形態では、前記基A1-L1は、
【化44】
であり、前記アスタリスクは、前記L2またはDへの付着点を示し、前記波線は、前記リガンドユニットへの付着点を示し、nは、0または1であり、mは、0から30である。好ましい実施形態では、nは、1であり、mは、0から10、1から8、好ましくは4から8、最も好ましくは4または8である。
【0213】
一実施形態では、前記基A1-L1は、
【化45】
であり、前記アスタリスクは、前記L2またはDへの付着点を示し、前記波線は、前記リガンドユニットへの付着点を示し、nは、0または1であり、mは、0から30である。好ましい実施形態では、nは、1であり、mは、0から10、1から8、好ましくは4から8、最も好ましくは4または8である。
【0214】
一実施形態では、前記基L-A1-L1は、
【化46】
であり、前記アスタリスクは、前記L2またはDへの付着点を示し、Sは、前記リガンドユニットの硫黄基であり、前記波線は、前記リガンドユニットの残部への付着点を示し、nは、0から6である。一実施形態では、nは、5である。
【0215】
一実施形態では、前記基L-A1-L1は、
【化47】
であり、前記アスタリスクは、前記L2またはDへの付着点を示し、Sは、前記リガンドユニットの硫黄基であり、前記波線は、前記リガンドユニットの残部への付着点を示し、nは、0から6である。一実施形態では、nは、5である。
【0216】
一実施形態では、前記基L-A1-L1は、
【化48】
であり、前記アスタリスクは、前記L2またはDへの付着点を示し、Sは、前記リガンドユニットの硫黄基であり、前記波線は、前記リガンドユニットの残部への付着点を示し、nは、0または1であり、mは、0から30である。好ましい実施形態では、nは、1であり、mは、0から10、1から8、好ましくは4から8、最も好ましくは4または8である。
【0217】
一実施形態では、前記基L-A1-L1は、
【化49】
であり、前記アスタリスクは、前記L2またはDへの付着点を示し、前記波線は、前記リガンドユニットへの付着点を示し、nは、0または1であり、mは、0から30である。好ましい実施形態では、nは、1であり、mは、0から10、1から7、好ましくは4から8、最も好ましくは4または8である。
【0218】
一実施形態では、前記基L-A1-L1は、
【化50】
であり、前記アスタリスクは、前記L2またはDへの付着点を示し、前記波線は、前記リガンドユニットの残部への付着点を示し、nは、0から6である。一実施形態では、nは、5である。
【0219】
一実施形態では、前記基L-A1-L1は、
【化51】
であり、前記アスタリスクは、前記L2またはDへの付着点を示し、前記波線は、前記リガンドユニットの残部への付着点を示し、nは、0から6である。一実施形態では、nは、5である。
【0220】
一実施形態では、前記基L-A1-L1は、
【化52】
であり、前記アスタリスクは、前記L2またはDへの付着点を示し、前記波線は、前記リガンドユニットの残部への付着点を示し、nは、0または1であり、mは、0から30である。好ましい実施形態では、nは、1であり、mは、0から10、1から8、好ましくは4から8、最も好ましくは4または8である。
【0221】
一実施形態では、前記基L-A1-L1は、
【化53】
であり、前記アスタリスクは、前記L2またはDへの付着点を示し、前記波線は、前記リガンドユニットの残部への付着点を示し、nは、0または1であり、mは、0から30である。好ましい実施形態では、nは、1であり、mは、0から10、1から8、好ましくは4から8、最も好ましくは4または8である。
【0222】
一実施形態では、前記ストレッチャユニットは、アセトアミドユニットであり、式:
【化54】
を有し、前記アスタリスクは、前記ストレッチャユニット、L1またはDの残部への付着点を示し、前記波線は、前記リガンドユニットへの付着点を示す。
【0223】
リンカー-ドラッグ
他の実施形態では、リンカー-ドラッグ化合物が、リガンドユニットへの結合のために提供される。一実施形態では、前記リンカー-ドラッグ化合物は、細胞結合剤への結合のために設計される。
【0224】
一実施形態では、前記ドラッグリンカー化合物は、式:
【化55】
を有し、前記アスタリスクは、前記ドラッグユニット(D、上記規定)への付着点を示し、G1は、リガンドユニットへの結合を形成するためのストレッチャ基(A1)であり、L1は、特異性ユニットであり、L2(スペーサユニット)は、共有結合であるか、または、-OC(=O)-と共に、自壊性基(または、複数の自壊性基)を形成する。
【0225】
別の実施形態では、前記ドラッグリンカー化合物は、式:
1-L1-L2*
を有し、前記アスタリスクは、前記ドラッグユニット(D)への付着点を示し、G1は、リガンドユニットへの結合を形成するためのストレッチャ基(A1)であり、L1は、特異性ユニットであり、L2(スペーサユニット)は、共有結合または自壊性基(または、複数の自壊性基)である。
【0226】
1およびL2は、上記の通りである。A1への結合への言及は、ここでは、G1への結合への言及と理解され得る。
【0227】
一実施形態では、L1は、アミノ酸を含む場合、そのアミノ酸の側鎖は、保護されてもよい。任意の適切な保護基が使用され得る。一実施形態では、前記側鎖の保護基は、存在する場合、前記化合物における他の保護基により除去可能である。他の実施形態では、前記保護基は、存在する場合、前記分子における他の保護基に対して直交でもよい。
【0228】
アミノ酸側鎖に適した保護基としては、Novabiochemのカタログ2006/2007に記載の基があげられる。カテプシンに不安定なリンカーに使用するための保護基は、Dubowchik et alにも記載されている。
【0229】
本発明の特定の実施形態では、前記基L1としては、Lysアミノ酸残基があげられる。このアミノ酸の側鎖は、BocまたはAlloc保護基により保護されてもよい。Boc保護基が、最も好ましい。
【0230】
前記官能基G1は、リガンドユニット(例えば、細胞結合剤)との反応において、結合基を形成する。
【0231】
一実施形態では、前記官能基G1は、前記リガンドユニット上の適切な基との反応のための、アミノ、カルボン酸、ヒドロキシ、チオールまたはマレイミドの基であるか、または、同基を含む。好ましい実施形態では、G1は、マレイミド基を含む。
【0232】
一実施形態では、前記基G1は、アルキルマレイミド基である。この基は、前記細胞結合剤に存在する、例えば、抗体に存在する、チオール基、特に、システインのチオール基との反応に適している。
【0233】
一実施形態では、前記基G1は、
【化56】
であり、前記アスタリスクは、前記L1、L2またはDへの付着点を示し、nは、0から6である。一実施形態では、nは、5である。
【0234】
一実施形態では、前記基G1は、
【化57】
であり、前記アスタリスクは、前記L1、L2またはDへの付着点を示し、nは、0から6である。一実施形態では、nは、5である。
【0235】
一実施形態では、前記基G1は、
【化58】
であり、前記アスタリスクは、前記L1、L2またはDへの付着点を示し、nは、0または1であり、mは、0から30である。好ましい実施形態では、nは、1であり、mは、0から10、1から2、好ましくは4から8、最も好ましくは4または8である。
【0236】
一実施形態では、前記基G1は、
【化59】
であり、前記アスタリスクは、前記L1、L1、L2またはDへの付着点を示し、nは、0または1であり、mは、0から30である。好ましい実施形態では、nは、1であり、mは、0から10、1から8、好ましくは4から8、最も好ましくは4または8である。
【0237】
一実施形態では、前記基G1は、
【化60】
であり、前記アスタリスクは、前記L1、L2またはDへの付着点を示し、nは、0から6である。一実施形態では、nは、5である。
【0238】
一実施形態では、前記基G1は、
【化61】
であり、前記アスタリスクは、前記L1、L2またはDへの付着点を示し、nは、0から6である。一実施形態では、nは、5である。
【0239】
一実施形態では、前記基G1は、
【化62】
であり、前記アスタリスクは、前記L1、L2またはDへの付着点を示し、nは、0または1であり、mは、0から30である。好ましい実施形態では、nは、1であり、mは、0から10、1から2、好ましくは4から8、最も好ましくは4または8である。
【0240】
一実施形態では、前記基G1は、
【化63】
であり、前記アスタリスクは、前記L1、L2またはDへの付着点を示し、nは、0または1であり、mは、0から30である。好ましい実施形態では、nは、1であり、mは、0から10、1から8、好ましくは4から8、最も好ましくは4または8である。
【0241】
上記各実施形態では、以下に示される代替となる官能基が、前記マレイミド基に代えて使用されてもよい。
【0242】
【化64】
【0243】
前記アスタリスクは、前記G基の残部への結合を示す。
【0244】
一実施形態では、前記マレイミドに由来する基は、基:
【化65】
により置き替えられる。前記アスタリスクは、前記G基の残部への結合を示す。
【0245】
一実施形態では、前記マレイミド基は、-C(=O)OH、-OH、-NH2、-SH、-C(=O)CH2X(Xは、Cl、BrまたはIである。)、-CHO、-NHNH2、-C≡CHおよび-N3(アジド)から選択される基で置き替えられる。
【0246】
特に、前記カルボニル基が、-NH-に結合される場合、これらの中でも、-C(=O)CH2Xが、好ましい。
【0247】
一実施形態では、L1が存在し、G1は、-NH2、-NHMe、-COOH、-OHまたは-SHである。
【0248】
一実施形態では、L1が存在し、G1は、-NH2または-NHMeである。各基は、L1のアミノ酸配列におけるN-末端であり得る。
【0249】
一実施形態では、L1が存在し、G1は、-NH2であり、L1は、上記アミノ酸配列-X1-X2-である。
【0250】
一実施形態では、L1が存在し、G1は、COOHである。この基は、L1のアミノ酸配列におけるC-末端であり得る。
一実施形態では、L1が存在し、G1は、OHである。
一実施形態では、L1が存在し、G1は、SHである。
【0251】
前記基G1は、1つの官能基から別のものに変換可能である。一実施形態では、L1が存在し、G1は、-NH2である。この基は、マレイミド基を含む別の基G1に変換可能である。例えば、前記基-NH2は、上記で示したマレイミドを含む、G1基における酸または活性化酸(例えば、N-スクシンイミド型)と反応し得る。
したがって、前記基G1は、リガンドユニットとの反応に、より適切な官能基に変換され得る。
【0252】
上記のように、一実施形態では、L1が存在し、G1は、-NH2、-NHMe、-COOH、-OHまたは-SHである。更なる実施形態では、これらの基は、化学的に保護された形態で提供される。このため、前記化学的に保護された形態は、官能基により提供される前記リンカーに対する前駆体である。
【0253】
一実施形態では、G1は、化学的に保護された形態における-NH2である。前記基は、カルバメート保護基で保護され得る。前記カルバメート保護基は、Alloc、Fmoc、Boc、Troc、Teoc、CbzおよびPNZからなる群から選択され得る。
【0254】
好ましくは、G1は、-NH2である場合、前記-NH2は、AllocまたはFmocの基で保護される。
【0255】
一実施形態では、G1は、-NH2である場合、前記-NH2は、Fmoc基で保護される。
【0256】
一実施形態では、前記保護基は、キャッピング基における前記カルバメート保護基と同様である。
【0257】
一実施形態では、前記保護基は、前記キャッピング基における前記カルバメート保護基と同様でない。この実施形態では、前記保護基は、前記キャッピング基における前記カルバメート保護基を除去しない条件下において除去可能であることが好ましい。
【0258】
前記化学的な保護基は、リガンドユニットに対する結合を形成する官能基を提供するために除去され得る。その結果、場合により、この官能基は、上記別の官能基に変換され得る。
【0259】
一実施形態では、前記活性基は、アミンである。このアミンは、好ましくは、ペプチドのN末端アミンであり、本発明の好ましいジペプチドにおけるN末端アミンであり得る。
【0260】
前記活性基は、リガンドユニットへの結合を形成することを目的とする官能基を産生するために反応し得る。
【0261】
他の実施形態では、前記リンカーユニットは、前記活性基を有するリンカーユニットに対する前駆体である。この実施形態では、前記リンカーユニットは、前記活性基を含み、前記活性基は、保護基経由で保護される。前記保護基は、前記活性基を有するリンカーユニットを提供するために、除去されてもよい。
【0262】
前記活性基がアミンである場合、前記保護基は、アミン保護基、例えば、Green and Wutsに記載のものであり得る。
【0263】
前記保護基は、存在する場合、好ましくは、前記リンカーユニットにおける他の保護基に対して直交している。
【0264】
一実施形態では、前記保護基は、前記キャッピング基に対して直交している。このため、前記キャッピング基を残しながら、前記活性基の保護基は、除去可能である。他の実施形態では、前記保護基および前記キャッピング基は、前記キャッピング基を除去するのに使用されるものと同じ条件下で除去可能である。
【0265】
一実施形態では、前記リンカーユニットは、
【化66】
であり、前記アスタリスクは、前記ドラッグユニットへの付着点を示し、前記波線は、前記リンカーユニットの残部への付着点、場合により、または、前記G1への付着点を示す。好ましくは、前記波線は、前記G1への付着点を示す。
【0266】
一実施形態では、前記リンカーユニットは、
【化67】
であり、前記アスタリスクおよび前記波線は、上記規定の通りである。
【0267】
1と前記細胞結合剤との間の結合の形成に使用するのに適切な他の官能基は、国際公開第2005/082023号パンフレットに記載されている。
【0268】
リガンドユニット
前記リガンドユニットは、任意の種類でもよく、標的分子に特異的に結合するタンパク質、ポリペプチド、ペプチドおよび非ペプチド剤を含む。一部の実施形態では、前記リガンドユニットは、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドでもよい。一部の実施形態では、前記リガンドユニットは、環状ポリペプチドでもよい。これらのリガンドユニットは、少なくとも1つの標的分子結合部位を含む、抗体もしくは抗体のフラグメント、リンホカイン、ホルモン、成長因子または、標的に特異的に結合し得る、任意の他の細胞結合分子もしくは物質を含み得る。本願明細書では、前記リガンドユニットは、「結合剤」または「標的剤」とも呼ばれる。
【0269】
「特異的に結合する」および「特異的に結合すること」の用語は、所定の分子(例えば、抗原)に対する、抗体または他のタンパク質、ポリペプチドもしくはペプチドの結合を意味する。典型的には、前記抗体または他の分子は、少なくとも約1×107-1の親和性で結合し、前記所定の分子に対して、前記所定の分子または密接に関連する分子以外の非特異的な分子(例えば、BSA、カゼイン)に対するその結合親和性より、少なくとも2倍大きい親和性で結合する。
【0270】
リガンドユニットとしては、例えば、その全体が、全ての目的に関して、本願明細書に取り込まれる、国際公開第2007/085930号パンフレットにおいて、使用するために記載されている剤があげられる。
【0271】
一部の実施形態では、前記リガンドユニットは、細胞上の細胞外標的に結合する、細胞結合剤である。このような細胞結合剤は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチドまたは非ペプチド剤であり得る。一部の実施形態では、前記細胞結合剤は、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドでもよい。一部の実施形態では、前記細胞結合剤は、環状ポリペプチドでもよい。前記細胞結合剤は、抗体または抗体の抗原結合フラグメントでもよい。このため、一実施形態では、本発明は、抗体-ドラッグ-コンジュゲート(ADC)を提供する。
【0272】
一実施形態では、前記抗体は、モノクローナル抗体;キメラ抗体;ヒト化抗体;完全にヒトの抗体;または一本鎖抗体である。前記抗体の一実施形態は、生物学的活性を有するこれらの抗体の1つのフラグメントである。このようなフラグメントとしては、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFvフラグメントがあげられる。
【0273】
前記抗体は、二重特異性抗体、ドメイン抗体(DAB)または一本鎖抗体でもよい。
【0274】
一実施形態では、前記抗体は、モノクローナル抗体である。
【0275】
本発明に使用する抗体としては、その全体が、全ての目的に関して、参照により本願明細書に取り込まれる、国際公開第2005/082023号パンフレットに記載の抗体があげられる。腫瘍関連抗原用の抗体が、特に好ましい。当該分野において公知のそれらの抗原としては、例えば、制限されず、国際公開第2005/082023号パンフレットに提示される、腫瘍関連抗原があげられる。例えば、41-55頁を参照のこと。
【0276】
一部の実施形態では、前記コンジュゲートは、その細胞表面抗原を介して腫瘍細胞を標的とするように設計される。前記抗原は、異常なタイミングもしくは細胞種で、過剰発現または発現のいずれかがされている、細胞表面抗原でもよい。好ましくは、前記標的抗原は、増殖性細胞(好ましくは、腫瘍細胞)のみで発現される。ただし、これは、実際には稀にしか見られない。結果として、標的抗原は、通常、増殖性組織と健康な組織との間の異なる発現に基づいて選択される。
【0277】
抗体は、標的特異的な腫瘍関連抗原、例えば、Cripto、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、糖タンパク質NMB、CanAg、Her2(ErbB2/Neu)、CD56(NCAM)、CD70、CD79、CD138、PSCA、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、BCMA、E-selectin、EphB2、メラノトランスフェリン、Muc16およびTMEFF2に対して生じている。本願明細書において提供されるいずれかの実施形態において、前記リガンドユニットは、前記Cripto抗原、CD19抗原、CD20抗原、CD22抗原、CD30抗原、CD33抗原、糖タンパク質NMB、CanAg抗原、Her2(ErbB2/Neu)抗原、CD56(NCAM)抗原、CD70抗原、CD79抗原、CD138抗原、PSCA、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、BCMA、E-selectin、EphB2、メラノトランスフェリン、Muc16抗原またはTMEFF2抗原に対して特異的に結合するモノクローナル抗体であり得る。
【0278】
前記リガンドユニットは、前記リンカーユニットに結合される。一実施形態では、前記リガンドユニットは、存在する場合、前記リンカーユニットのAに結合される。
【0279】
一実施形態では、前記リガンドユニットと前記リンカーユニットとの間の結合は、チオエーテル結合による。
【0280】
一実施形態では、前記リガンドユニットと前記リンカーユニットとの間の結合は、ジスルフィド結合による。
【0281】
一実施形態では、前記リガンドユニットと前記リンカーユニットとの間の結合は、アミド結合による。
【0282】
一実施形態では、前記リガンドユニットと前記リンカーユニットとの間の結合は、エステル結合による。
【0283】
一実施形態では、前記リガンドユニットと前記リンカーとの間の結合は、前記リガンドユニットのシステイン残基におけるチオール基と、前記リンカーユニットのマレイミド基との間で形成される。
【0284】
前記リガンドユニットのシステイン残基は、結合を形成するために、前記リンカーユニットの官能基との反応に利用可能でもよい。他の実施形態では、例えば、前記リガンドユニットが抗体である場合、前記抗体のチオール基は、鎖内ジスルフィド結合に関与してもよい。これらの鎖内結合は、前記リンカーユニットの官能基との反応の前に、例えば、前記抗体をDTTで処理することにより、遊離のチオール基に変換されてもよい。
【0285】
一部の実施形態では、前記システイン残基は、前記抗体の重鎖または軽鎖に導入される。抗体の重鎖または軽鎖に、置換により挿入されるシステインの位置としては、その全体が、全ての目的に関して、参照により本願明細書に取り込まれる、公開された米国出願番号2007-0092940号および国際公開第2008/070593号パンフレットに記載のものがあげられる。
【0286】
処置方法
本発明の化合物およびコンジュゲートは、治療方法に使用され得る。処置を必要とする対象に、治療的に有効量の、本願明細書に開示される化合物またはそのコンジュゲートを投与することを含む、処置方法も提供される。「治療的に有効量」の用語は、患者に対して、利点を示すのに十分な量である。このような利点は、少なくとも1つの兆候の少なくとも改善であり得る。投与される実際の量ならびに投与の速度およびタイムコースは、処置される性質および重症度により決まるであろう。処置の処方、例えば、用量の決定は、一般医および他の医師の責任内である。
【0287】
化合物またはコンジュゲートは、単独または、処置される症状に応じて、同時または連続のいずれかで、他の処置との組み合わせで投与され得る。処置および治療としては、例えば、制限されず、化学療法(活性剤、例えば、薬剤の投与);手術;および放射線療法があげられる。
【0288】
本発明に基づく、および本発明に基づいて使用するための、薬学的組成物は、前記活性成分、すなわち、本願明細書に開示される化合物またはそのコンジュゲートに加えて、薬学的に許容され得る賦形剤、キャリア、バッファー、安定剤または、当業者に周知の他の材料を含んでもよい。このような材料は、非毒性であるべきであり、前記活性成分の効能を妨げないべきである。前記キャリアまたは他の材料の正確な性質は、投与経路により決まるであろう。前記投与経路は、経口または注射、例えば、皮膚、皮下または静脈内でもよい。
【0289】
経口投与用の薬学的組成物は、錠剤、カプセル剤、粉末または液体の形態であり得る。錠剤は、固体状のキャリアまたは補助剤を含んでもよい。液体状の薬学的組成物は、一般的には、液体状のキャリア、例えば、水、石油、動物もしくは植物のオイル、鉱油または合成油を含む。生理食塩水、デキストロースまたは他の糖類の溶液またはグリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールが含まれてもよい。カプセル剤は、固体状のキャリア、例えば、ゼラチンを含んでもよい。
【0290】
静脈内、皮膚もしくは皮下の注射または苦痛の部位での注射に関して、前記活性成分は、発熱物質を含まず、適切なpH、等張性および安定性を有する、非経口的に許容され得る水溶液の形態であろう。当業者は、等張性の媒体、例えば、塩化ナトリウム注射剤、リンゲル液、乳酸リンゲル液を使用して、適切な溶液を調製することが十分に可能である。保存剤、安定剤、バッファー、抗酸化剤および/または他の添加剤が、必要に応じて含まれてもよい。
【0291】
前記化合物およびコンジュゲートは、増殖性疾患および自己免疫疾患を処置するのに使用され得る。「増殖性疾患」の用語は、望ましくない過剰もしくは異常な細胞の、望ましくなく、または、制御できない細胞増殖、例えば、in vitroまたはin vivoに関わらず、腫瘍性増殖または過形成増殖に関する。
【0292】
増殖性の症状としては、例えば、制限されず、良性、前悪性および悪性の細胞増殖、例えば、制限されず、新生物および腫瘍(例えば、組織細胞種、グリオーマ、星状細胞種、骨腫)、ガン(例えば、肺ガン、肺小細胞ガン、胃腸ガン、腸ガン、結腸ガン、乳ガン腫、卵巣ガン腫、前立腺ガン、精巣ガン、肝臓ガン、腎臓ガン、膀胱ガン、膵臓ガン、脳ガン、肉腫、骨肉腫、カポジ肉腫またはメラノーマ)、白血病、乾癬、骨疾患、(例えば、結合組織の)線維増殖性障害ならびにアテローム硬化症があげられる。他の対象となるガンとしては、制限されず、血液学的;悪性腫瘍、例えば、白血病およびリンパ腫、例えば、非ホジキンリンパ腫ならびに、亜型、例えば、DLBCL、辺縁体、マントル層および小胞、ホジキンリンパ腫、AMLならびにB細胞またはT細胞由来の他のガンがあげられる。
【0293】
自己免疫疾患としては、例えば、下記:関節リウマチ、自己免疫脱髄性疾患(例えば、多発性硬化症、アレルギー性脳脊髄炎)、乾癬性関節炎、内分泌性眼障害、脳膜ブドウ膜炎、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、グレーブス病、糸球体腎炎、自己免疫肝臓障害、炎症性腸疾患(例えば、クローン病)、アナフィラキシー、アレルギー性反応、シェーグレン症候群、I型糖尿病、原発性胆汁性肝硬変、ウェゲナー肉芽腫症、線維筋痛症、多発筋炎、皮膚真菌症、多発性内分泌障害、シュミット症候群、自己免疫ブドウ膜炎、アジソン病、副腎炎、甲状腺炎、橋本病、自己免疫甲状腺疾患、悪性貧血、胃萎縮、慢性肝炎、ルポイド肝炎、アテローム硬化症、亜急性皮膚エリテマトーデス、上皮小体機能低下症、ドレスラー症候群、自己免疫血小板減少症、特発性血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、尋常性天疱瘡、天疱瘡、ヘルペス性皮膚炎、円形脱毛症、類天疱瘡、強皮症、全身性進行性硬化症、CREST症候群(石灰沈着症、レイノー現象、食道運動障害、手指硬化症および毛細血管拡張症)、男性および女性の自己免疫性不妊、硬直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎、混合性結合組織疾患、結節性多発動脈炎、全身性壊死性血管炎、アトピー性皮膚炎、アトピー性鼻炎、グッドパスチャ症候群、シャーガス病、サルコイドーシス、リウマチ熱、喘息、反復流産、抗リン脂質症候群、農夫肺、多発性紅斑、心切開術後症候群、クッシング症候群、自己免疫性慢性活動性肝炎、愛鳥家肺、中毒性表皮剥離症、アルポート症候群、肺胞炎、アレルギー性肺胞炎、線維化肺胞症、間質性肺炎、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、輸血反応、高安動脈炎、多発筋痛、側頭動脈炎、住血吸虫症、巨細胞性動脈炎、回虫症、アスペルギルス症、サムター症候群、皮膚炎、リンパ腫様肉芽腫症、ベーチェット病、カプラン症候群、川崎病、デング熱、脳脊髄炎、心内膜炎、心内膜心筋線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、乾癬、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎、シャルマン症候群、フェルティ症候群、フィラリア症、毛様体炎、慢性毛様体炎、異時性毛様体炎、フックス毛様体炎、IgA腎症、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、移植片対宿主病、移植拒絶、心筋症、イートン-ランバート症候群、再発性多発性軟骨炎、クリオグロブリン血症、ヴァルデンストローム・マクログロブリン血症、エバンス症候群および自己免疫性腺機能不全があげられる。
【0294】
一部の実施形態では、前記自己免疫疾患は、Bリンパ球の障害(例えば、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャ症候群、関節リウマチおよびI型糖尿病)、Th1-リンパ球の障害(例えば、関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬、シェーグレン症候群、橋本病、グレーブス病、原発性胆汁性肝硬変、ウェゲナー肉芽腫症、結核症もしくは移植片対宿主病)または、Th2-リンパ球の障害(例えば、アトピー性皮膚炎、全身性エリテマトーデス、アトピー性喘息、鼻炎結膜炎、アレルギー性鼻炎、オーメン症候群、全身性硬化症もしくは慢性移植片対宿主病)である。一般的に、樹状性細胞による障害は、Th-1リンパ球またはTh-2リンパ球の障害による。一部の実施形態では、前記自己免疫障害は、T細胞媒介性免疫不全である。
【0295】
一部の実施形態では、投与される前記コンジュゲートの量は、投与あたりに約0.01から約10mg/kgの範囲である。一部の実施形態では、投与される前記コンジュゲートの量は、投与あたりに約0.01から約5mg/kgの範囲である。一部の実施形態では、投与される前記コンジュゲートの量は、投与あたりに約0.05から約5mg/kgの範囲である。一部の実施形態では、投与される前記コンジュゲートの量は、投与あたりに約0.1から約5mg/kgの範囲である。一部の実施形態では、投与される前記コンジュゲートの量は、投与あたりに約0.1から約4mg/kgの範囲である。一部の実施形態では、投与される前記コンジュゲートの量は、投与あたりに約0.05から約3mg/kgの範囲である。一部の実施形態では、投与される前記コンジュゲートの量は、投与あたりに約0.1から約3mg/kgの範囲である。一部の実施形態では、投与される前記コンジュゲートの量は、投与あたりに約0.1から約2mg/kgの範囲である。
【0296】
他の形態を含む
特に断らない限り、周知のイオン、塩、溶媒和物およびこれらの置換基の保護型は、上記に含まれる。例えば、カルボン酸(-COOH)への言及は、アニオン(カルボキシレート)型(-COO-)、その塩または溶媒和物および従来の保護型も含む。同様に、アミノ基への言及は、プロトン化された形態(-N+HR12)、前記アミノ基の塩または溶媒和物、例えば、塩化水素塩、ならびにアミノ基の従来の保護型も含む。同様に、ヒドロキシル基への言及は、アニオン型(-O-)、その塩または溶媒和物および従来の保護型も含む。
【0297】

前記活性化合物の対応する塩、例えば、薬学的に許容され得る塩を調製、精製および/または取り扱うのが、都合がよく、または、望ましい場合がある。薬学的に許容され得る塩は、例えば、Berge,et al.,J.Pharm.Sci.,66,1-19(1977)に記載されている。
【0298】
例えば、前記化合物がアニオン性であるか、または、アニオン性であり得る官能基(例えば、-COOHが、-COO-であり得る。)を有する場合には、塩は、適切なカチオンとで形成されてもよい。適切な無機カチオンとしては、例えば、制限されず、アルカリ金属イオン、例えば、Na+およびK+、アルカリ土類カチオン、例えば、Ca2+およびMg2+、ならびに、他のカチオン、例えば、Al+3があげられる。適切な有機カチオンとしては、例えば、制限されず、アンモニウムイオン(すなわち、NH4 +)および置換されているアンモニウムイオン(例えば、NH3+、NH22 +、NHR3 +、NR4 +)があげられる。一部の適切な置換されているアンモニウムイオンは、例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミンおよびトロメタミンならびに、アミノ酸、例えば、リジンおよびアルギニン由来のものである。一般的な四級アンモニウムイオンは、例えば、N(CH34 +である。
【0299】
前記化合物がカチオン性であるか、または、カチオン性であり得る官能基(例えば、-NH2が、-NH3 +であり得る。)を有する場合には、塩は、適切なアニオンとで形成されてもよい。適切な無機アニオンとしては、例えば、制限されず、下記の無機酸:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸および亜リン酸に由来するものがあげられる。
【0300】
適切な有機アニオンとしては、例えば、制限されず、下記の有機酸:2-アセトキシ安息香酸、酢酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、桂皮酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフタレンカルボン酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリル酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、粘液酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモン酸、パントテン酸、フェニル酢酸、フェニルスルホン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、酒石酸、トルエンスルホン酸および吉草酸に由来するものがあげられる。適切なポリマー性有機アニオンとしては、例えば、制限されず、下記のポリマー酸:タンニン酸、カルボキシメチルセルロースに由来するものがあげられる。
【0301】
溶媒和物
前記活性化合物の対応する溶媒和物を調製、精製および/または取り扱うのが、都合がよく、または、望ましい場合がある。本願明細書において、「溶媒和物」の用語は、媒質(例えば、活性化合物、活性化合物の塩)と溶媒との錯体を意味する、従来の意味で使用される。前記溶媒が水の場合、前記溶媒和物は、便宜上、水和物、例えば、一水和物、二水和物、三水和物等を意味し得る。
【0302】
カルビノールアミン
本発明は、前記PBD部分のイミン結合に溶媒が付加する化合物を含み、これは以下に説明され、ここで、前記溶媒は水またはアルコール(RAOH、RAが、C1-4アルキルである。)である。
【0303】
【化68】
【0304】
これらの型は、前記PBDにおけるカルビノールアミンおよびカルビノールアミンエーテル型と言うことができる。これらの平衡のバランスは、化合物が見出される条件および前記部分自体の性質により決まる。
【0305】
これらの具体的な化合物は、例えば、凍結乾燥により、固体状で単離され得る。
【0306】
異性体
特定の化合物は、1つ以上の具体的な幾何学型、光学型、鏡像型、ジアステレオ異性型、エピマー型、アトロプ型、立体異性型、互変異性型、立体構造型またはアノマー型、例えば、制限されず、cis-およびtrans-型;E-およびZ-型;c-、t-およびr-型;endo-およびexo-型;R-、S-およびmeso-型;D-およびL-型;d-およびl-型;(+)および(-)型;ケト-、エノール-およびエノレート型;syn-およびanti-型;シンクリナル-およびアンチクリナル-型;α-およびβ-型;アキシャルおよびエカトリアル型;boat-、chair-、twist-、envelope-およびhalfchair-型;ならびに、それらの組み合わせの型で存在してもよい。以下、まとめて「異性体」(または「異性型」)と言う。
【0307】
互変異性型に関して以下に説明する場合以外は、本願明細書で使用する時、構造(または構造)異性体(すなわち、空間における単に原子の位置よりもむしろ、原子間の結合が異なる異性体)は、「異性体」の用語から特に除外されることに留意するべきである。例えば、メトキシ基、-OCH3への言及は、その構造異性体である、ヒドロキシメチル基、-CH2OHへの言及として理解されるべきではない。同様に、オルト-クロロフェニルへの言及は、その構造異性体である、メタ-クロロフェニルへの言及として理解されるべきではない。ただし、構造の分類への言及は、その分類内にある構造的異性型を十分に含み得る(例えば、C1-7アルキルは、n-プロピルおよびiso-プロピルを含み;ブチルは、n-、iso-、sec-およびtert-ブチルを含み;メトキシフェニルは、オルト-、メタ-およびパラ-メトキシフェニルを含む。)。
【0308】
上記除外は、互変異性型、例えば、ケト-、エノール-およびエノレート型、例えば、下記互変異対における場合、ケト/エノール(以下に説明)、イミン/エナミン、アミド/イミノアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エネチオール、N-ニトロソ/ヒドロキシアゾおよびニトロ/aci-ニトロには関連しない。
【0309】
【化69】
【0310】
1つ以上の同位体置換を有する化合物が、「異性体」の用語に特に含まれることに留意すべきである。例えば、Hは、任意の同位体型、例えば、1H、2H(D)および3H(T)でもよく;Cは、任意の同位体型、例えば、12C、13Cおよび14Cでもよく;Oは、任意の同位体型、例えば、16Oおよび18O;等でもよい。
【0311】
特に断らない限り、特定の化合物への言及は、全てのこのような異性型、例えば、(全体的にまたは部分的に)ラセミおよびそれらの他の混合物を含む。このような異性型を調製(例えば、非対称合成)および分離(例えば、分別結晶およびクロマトグラフの手段)をするための方法は、当該分野において公知であるか、または、本願明細書で教示される方法もしくは公知の手法における公知の方法を採用することにより直ちに取得されるかのいずれかである。
【0312】
一般的な合成経路
前記PBD化合物の合成は、下記参考文献において広く記載されている。その記載は、その全体が、全ての目的に関して、参照により本願明細書に取り込まれる。
a)国際公開第00/12508号パンフレット(14から30頁);
b)国際公開第2005/023814号パンフレット(3から10頁);
c)国際公開第2004/043963号パンフレット(28から29頁);および、
d)国際公開第2005/085251号パンフレット(30から39頁)。
【0313】
合成経路
10およびR11が、それらが結合されている窒素原子と炭素原子との間に、窒素-炭素二重結合を形成している場合、本発明の化合物は、式2:
【化70】
の化合物から合成され得る。
【0314】
式2中、nは、0または1であり、R2およびR12は、以下の表に示されるように、本発明の化合物におけるC2芳香族基を表す。
【0315】
【表1】
ProtNは合成のための窒素保護基であり、ProtOは合成のための酸素保護基またはオキソ基であり、標準的な方法でイミン結合を脱保護される。
【0316】
産生された前記化合物は、使用される溶媒に応じて、そのカルビノールアミン型またはカルビノールアミンエーテル型であり得る。例えば、ProtNがTrocであり、ProtOが合成用の酸素保護基である場合には、前記脱保護は、Cd/Pbカップリングを使用して行われて、本発明の化合物を産生する。ProtNがSEMまたは類似する基であり、ProtOがオキソ基である場合には、前記オキソ基は、還元により除去され得る。前記還元は、保護されたカルビノールアミン中間体をもたらし、ついで、前記中間体は、水の除去後に、前記SEM保護基を除去するのに処理され得る。式2の化合物の還元は、例えば、スーパーヒドリドまたはリチウムテトラボロヒドリドによりなされ得る。一方、前記SEM保護基を除去するのに適切な手段は、シリカゲルによる処理である。
【0317】
式2の化合物は、式3a:
【化71】
の化合物から合成され得る。
【0318】
式3a中、R2、ProtNおよびProtOは、R12を含む有機金属誘導体、例えば、有機ホウ素誘導体をカップリングすることによる、式2の化合物について規定の通りである。前記有機ホウ素誘導体は、ボロナートまたはボロン酸であり得る。
【0319】
式2の化合物は、式3b:
【化72】
の化合物から合成され得る。
【0320】
式3b中、R12、ProtNおよびProtOは、R2を含む有機金属誘導体、例えば、有機ホウ素誘導体をカップリングすることによる、式2の化合物について規定の通りである。前記有機ホウ素誘導体は、ボロナートまたはボロン酸であり得る。
【0321】
式3aおよび3bの化合物は、式4:
【化73】
の化合物から合成され得る。
【0322】
式4中、ProtNおよびProtOは、R2またはR12を含む約一価(例えば、0.9または1から1.1または1.2)の有機金属誘導体、例えば、有機ホウ素誘導体をカップリングすることによる、式2の化合物について規定の通りである。
【0323】
上記カップリングは、通常、パラジウム触媒、例えば、Pd(PPh34、Pd(OCOCH32、PdCl2、Pd2(dba)3の存在下で行われる。前記カップリングは、標準的な条件下で行われてもよいし、または、マイクロ波条件下で行われてもよい。
【0324】
前記2つのカップリング工程は、通常、連続的に行われる。前記2つの工程は、前記2つの工程間で、精製して行われてもよいし、または、精製することなく行われてもよい。精製が行われない場合には、前記2つの工程は、同じ反応容器で行われてもよい。精製は、通常、第2のカップリング工程後に必要とされる。望ましくない副産物からの前記化合物の精製は、カラムクロマトグラフィーまたはイオン交換分離により行われてもよい。
【0325】
ProtOがオキソ基であり、ProtNがSEMである前記式4の化合物の合成は、その全体が、全ての目的に関して、参照により本願明細書に取り込まれる、国際公開第00/12508号パンフレットに詳細に記載されている。具体的には、24頁のスキーム7が参照され、上記化合物は、中間体Pとして示される。この合成法は、その全体が、全ての目的に関して、国際公開第2004/043963号パンフレットにも記載されている。その全体が、全ての目的に関して、参照により本願明細書に取り込まれる、国際公開第2010/043880号パンフレット(36から45頁)における、化合物8aおよび8bの合成についても、さらに参照される。
【0326】
ProtOが合成用の保護された酸素基である前記式4の化合物の合成は、国際公開第2005/085251号パンフレットに記載されている。前記合成は、その全体が、全ての目的に関して、参照により本願明細書に取り込まれる。
【0327】
10およびR10’がHであり、R11およびR11’がSOzMである、本発明の化合物は、R10およびR11が、それらが結合されている窒素原子と炭素原子との間に、窒素-炭素二重結合を、適切な重亜硫酸塩またはスルフィン酸塩を付加し、続けて、適切な精製工程により形成する、本発明の化合物から合成され得る。更なる方法は、参照により本願明細書に取り込まれる、英国特許第2053894号明細書に記載されている。
【0328】
本発明の一部の実施形態では、前記式2の化合物が、前記ドラッグリンカー化合物の合成に使用される場合がある。これらの実施形態では、前記N10/C11の保護基の除去は、前記ドラッグリンカー化合物の合成中に生じ得る。
【0329】
合成用の窒素保護基
合成用の窒素保護基は、当該分野において周知である。本発明では、具体的な対象の保護基は、カルバメート窒素保護基およびヘミアミナール窒素保護基である。
【0330】
カルバメート窒素保護基は、下記化学構造:
【化74】
を有し、前記化学構造中、R’10は、上記規定のRである。数多くの適切な基が、その全体が、全ての目的に関して、参照により本願明細書に取り込まれる、Greene,T.W.and Wuts,G.M.,Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Edition,John Wiley&Sons,Inc.,1999の503から549頁に記載されている。
【0331】
特に好ましい保護基としては、Troc、Teoc、Fmoc、BOC、Doc、Hoc、TcBOC、1-Adocおよび2-Adocがあげられる。
【0332】
他の可能性のある基は、ニトロベンジルオキシカルボニル(例えば、4-ニトロベンジルオキシカルボニル)および2-(フェニルスルホニル)エトキシカルボニルである。
【0333】
パラジウム触媒により除去され得る保護基、例えば、Allocは、好ましくない。
【0334】
ヘミアミナール窒素保護基は、下記化学構造:
【化75】
を有し、前記化学構造中、R’10は、上記規定のRである。数多くの適切な基が、その全体が、全ての目的に関して、参照により本願明細書に取り込まれる、Greene,T.W.and Wuts,G.M.,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Edition,John Wiley&Sons,Inc.,1999にアミド保護基として633から647頁に記載されている。本願明細書に開示の基は、本発明の化合物に適用され得る。このような基としては、制限されず、SEM、MOM、MTM、MEM、BOM、ニトロまたはメトキシ置換されているBOM、Cl3CCH2OCH2-があげられる。
【0335】
合成用の保護されている酸素基
合成用の保護されている酸素基は、当該分野において周知である。数多くの適切な酸素保護基が、その全体が、全ての目的に関して、参照により本願明細書に取り込まれる、Greene,T.W.and Wuts,G.M.,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Edition,John Wiley&Sons,Inc.,1999の23から200頁に記載されている。
【0336】
具体的な対象の分類としては、シリルエーテル、メチルエーテル、アルキルエーテル、ベンジルエーテル、エステル、アセテート、ベンゾエート、カーボネートおよびスルホネートがあげられる。
【0337】
好ましい酸素保護基としては、アセテート、TBSおよびTHPがあげられる。
【0338】
ドラッグコンジュゲートの合成
本願明細書に記載のPBD二量体を含むコンジュゲートは、本願明細書において提供される教示と組み合わせて、当業者の知識を使用して調製され得る。例えば、リンカーは、米国特許第6,214,345、7,498,298号明細書および国際公開第2009/0117531号パンフレットに記載されており、それらは、その全体が、全ての目的に関して、参照により本願明細書に、それぞれ取り込まれる。他のリンカーは、本願明細書で引用される参考文献に基づくか、または、当業者に公知のものに基づいて調製され得る。
【0339】
リンカー-ドラッグ化合物は、当該分野において公知の方法に基づいて、本願明細書において提供される教示と組み合わせて、調製され得る。例えば、前記リンカーユニットの活性基への、(前記PBD二量体ドラッグユニットの)アミン系のX置換基の結合は、一般的には、米国特許第6,214,345および7,498,298号明細書;ならびに国際公開第2009-0117531号パンフレットに記載の方法に基づいて、または、当業者に公知の他のものに基づいて行われ得る。
【0340】
抗体は、Doronina et al.,Nature Biotechnology,2003,21,778-784に記載のリンカー-ドラッグ化合物にコンジュゲートされ得る。簡潔に、pH7.4での、50mM ホウ酸ナトリウムを含むPBSにおける抗体(4-5mg/mL)を、トリス(カルボキシエチル)ホスフィン・塩酸(TCEP)により、37℃で還元する。鎖間のジスルフィドを還元する前記反応の進行は、5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)との反応によりモニターされ、所望のレベルのチオール/mAbが達成されるまで続けられる。ついで、前記還元された抗体を、0℃に冷却し、抗体チオールあたりに、1.5当量のマレイミドドラッグ-リンカーによりアルキル化させる。1時間後、前記反応を、5当量のN-アセチルシステインの添加により停止させる。停止させたドラッグ-リンカーを、PD-10カラムにおいてゲルろ過により除去する。ついで、前記ADCを、0.22μmのシリンジフィルタを通して滅菌ろ過する。タンパク質濃度は、それぞれ280nmおよび329nmでのスペクトル分析により、280nmでのドラッグ吸光の寄与を補正して測定され得る。サイズ排除クロマトグラフィーを、抗体凝集の度合いを決定するのに使用し得る。RP-HPLCを、残ったNAC-停止ドラッグ-リンカーのレベルを決定するのに使用し得る。
【0341】
導入されたシステイン残基を含む抗体は、その全体が、全ての目的に関して、参照により本願明細書に取り込まれる、国際公開第2008/070593号パンフレットに記載のように、または、下記のように、リンカー-ドラッグ化合物にコンジュゲートされ得る。重鎖に導入されたシステイン残基を含む抗体を、10当量のTCEPおよび1mM EDTAを添加し、1M Trisバッファー(pH9.0)でpHを7.4に調節することにより、完全に還元させる。37℃で1時間インキュベートした後、前記反応を22℃に冷却し、30当量のデヒドロアスコルビン酸を添加して、前記還元状態において、導入されたシステインを遊離させながら、選択的に、元のジスルフィドを再度酸化させる。前記pHを、1M Trisバッファー(pH3.7)で6.5に調節し、前記反応を、22℃で1時間進行させる。ついで、前記溶液のpHを、1M Trisバッファー(pH9.0)を添加することにより、再度7.4に上昇させる。DMSOにおける3.5当量の前記PBDドラッグリンカーを、前記反応に添加する前に、プロピレングリコールで希釈するために、適切な容器に入れる。前記PBDドラッグリンカーの溶解性を維持するために、まず、前記抗体自体を、プロピレングリコールで、33%の最終濃度に希釈する(例えば、前記抗体の溶液を、60mLの反応容量とし、30mLのプロピレングリコールを添加した。)。この同じ容量のプロピレングリコール(この例では、30mL)を、希釈剤として、前記PBDドラッグリンカーに添加する。混合後、プロピレングリコールにおける前記PBDドラッグリンカーの溶液を、前記コンジュゲートを生じさせるために、前記抗体の溶液に添加する。プロピレングリコールの最終濃度は、50%である。前記反応を30分間進行させ、ついで、5当量のN-アセチルシステインの添加により停止させる。前記ADCを、30kDのメンブレンを通す限外ろ過により精製する(前記反応に使用されるプロピレングリコールの濃度は、その唯一の目的が、水性媒体における前記ドラッグリンカーの溶解性を維持することである場合、任意の具体的なPBDに対して低下させ得ることに留意すべきである。)。
【0342】
ハロ-アセタミド系リンカー-ドラッグ化合物に関して、コンジュゲートは、一般的には、下記のように行われ得る。10mM Tris(pH7.4)、50mM NaClおよび2mM DTPAにおける、(前記重鎖に導入されたシステインを有する)還元された抗体および再度酸化された抗体の溶液に、0.5容量のプロピレングリコールを添加する。ジメチルアセタミドにおけるアセタミド系リンカー-ドラッグ化合物の10mM溶液を、コンジュゲートの直前に調製する。前記抗体溶液に添加する際、当量のプロピレングリコールを、6倍のモル濃度過剰の前記リンカー-ドラッグ化合物に添加する。前記リンカー-ドラッグの希釈溶液を、前記抗体溶液に添加し、1M Tris(pH9)を使用して、pHを8-8.5に調節する。前記コンジュゲート反応を、37℃で45分間進行させる。逆相PLRP-Sクロマトグラフィーを還元および変性することにより、前記コンジュゲートを検証する。過剰のリンカー-ドラッグ化合物を、Quadrasil MP樹脂で除去し、前記バッファーを、PD-10脱塩カラムを使用して、10mM Tris(pH7.4)、50mM NaClおよび5%プロピレングリコールに交換する。
【0343】
ドラッグリンカーに関する実例となる合成スキーム
下記スキームは、ドラッグリンカーを合成するための経路の実例となる。
【0344】
スキームA
【化76】
【0345】
2’は、前記NH2基に前記PBDコアを結合させる(上記規定の)R2の一部を表す(化合物C1に関して、前記NH2基は、NHMeで置き替えられる。)。nは、上記規定の通りである。
【0346】
グルクロニドリンカー中間体S1(参考文献:Jeffrey et al.,Bioconjugate Chemistry,2006,17,831-840)を、ジクロロメタン中で、-78℃において、ジホスゲンで処理して、グルクロニドクロロホルメートを取得し得る。ついで、前記グルクロニドクロロホルメートを、滴下して添加することにより、CH2Cl2に溶解させたPBD二量体S2と反応させる。前記反応を、2時間にわたって0℃に温めた後に、抽出により、化合物S3を収集するであろう。(0℃に冷却した)MeOH、テトラヒドロフランおよび水の等量の溶媒混合物におけるS3の溶液を、水酸化リチウム・一水和物で、4時間処置した後、氷酢酸と反応させ、化合物S4を収集するであろう。マレイミドカプロイルNHSエステルを、DMFにおけるS4の溶液に添加した後、ジイソプロピルエチルアミンを添加し、室温で窒素下において、2時間攪拌することにより、所望のドラッグリンカーS5を収集するであろう。
【0347】
実施例2、3、4、6、7および8の方法は、本発明の全てのPBD化合物に採用され得る。
【0348】
更なる選択
下記の選択が、上記本発明の全ての態様に適用されてもよいし、または、単独の態様に関連してもよい。前記選択は、任意の組み合わせで互いに組み合わせられてもよい。
【0349】
10がカルバメート窒素保護基である場合、好ましくは、Teoc、FmocおよびTrocでもよく、より好ましくは、Trocでもよい。
【0350】
11がO-ProtOである場合、ProtOは、酸素保護基であり、ProtOは、好ましくは、TBSまたはTHPでもよく、より好ましくは、TBSでもよい。
【0351】
10がヘミアミナール窒素保護基である場合、好ましくは、MOM、BOMまたはSEMでもよく、より好ましくは、SEMでもよい。
【0352】
コンジュゲート
(a)本発明のコンジュゲートとしては、例えば、式:
CBA-A1-L1*
のものがあげられ、前記式中、前記アスタリスクは、前記PBD二量体(D)または前記スペーサユニットへの付着点を示し、CBAは、前記細胞結合剤であり、L1は、酵素の作用により開裂可能な特異性ユニットであり、A1は、前記細胞結合剤に、L1を結合させるストレッチャユニットである。
【0353】
(b)本発明のコンジュゲートとしては、例えば、式:
CBA-A1-L1*
のものがあげられ、前記式中、前記アスタリスクは、前記PBD二量体(D)への付着点を示し、CBAは、前記細胞結合剤であり、A1は、前記細胞結合剤に、L1を結合させるストレッチャユニットであり、L1は、カテプシンの作用により開裂可能な特異性ユニットであり、L1は、ジペプチドであり、L1は、カテプシンの作用により開裂可能なジペプチドであるか、または、L1は、-Phe-Lys-、-Val-Ala-、-Val-Lys-、-Ala-Lys-および-Val-Cit-から選択されるジペプチドである。
【0354】
本発明の好ましいコンジュゲートとしては、(a)および(b)に記載のもののいずれかがあげられ、(a)および(b)中、A1は、
【化77】
であり、前記アスタリスクは、前記L1への付着点を示し、前記波線は、前記CBAへの付着点を示し、nは、0から6である(好ましくは、nは5である。)。
【0355】
本発明の好ましいコンジュゲートとしては、前記リンカーユニットが、
【化78】
のものがあげられ、前記波線は、前記リガンドユニット(例えば、抗体)への付着点を示し、前記アスタリスクは、Dへの付着点を示す。
【0356】
特に好ましい実施形態では、前記コンジュゲート全てに関して、前記抗体と前記リンカーユニットとの間の結合は、前記抗体のシステイン残基におけるチオール基と、前記リンカーユニットのマレイミド基との間で形成される。
【0357】
特に好ましい実施形態では、前記好ましいコンジュゲート全てに関して、前記抗体は、Cripto抗原、CD19抗原、CD20抗原、CD22抗原、CD30抗原、CD33抗原、糖タンパク質NMB、CanAg抗原、Her2(ErbB2/Neu)抗原、CD56(NCAM)抗原、CD70抗原、CD79抗原、CD138抗原、PSCA、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、BCMA、E-selectin、EphB2、メラノトランスフェリン、Muc16抗原またはTMEFF2抗原に対して特異的に結合するモノクローナル抗体である。
【実施例
【0358】
実施例
実施例1に関する一般的な実験方法
旋光度を、ADP220旋光計(Bellingham Stanley Ltd.)において測定した。濃度(c)を、g/100mLとして得た。融点を、デジタル融点装置(Electrothermal)を使用して測定した。IRスペクトルを、Perkin-Elmerスペクトル1000FT IR分光計において記録した。1Hおよび13C NMRスペクトルを、Bruker Avance NMR分光計を使用して、それぞれ、400および100MHzにおいて、300Kで取得した。化学シフトを、TMS(δ=0.0ppm)と比較して報告する。シグナルを、ヘルツ(Hz)として与えられるカップリング定数により、s(シングレット)、d(ダブレット)、t(トリプレット)、dt(ダブルトリプレット)、dd(ダブルダブレット)、ddd(ダブルダブルダブレット)またはm(マルチプレット)として指定する。質量分析(MS)データを、Waters 2996 PDAを含むWaters 2695 HPLCと組み合わせられた、Waters Micromass ZQ機器を使用して収集する。使用したWaters Micromass ZQのパラメータを、キャピラリー(kV)、3.38;コーン(V)、35;抽出器(V)、3.0;ソース温度(℃)、100;脱溶媒和温度(℃)、200;コーン流速(L/時間)、50;脱溶媒和速度(L/時間)、250とした。高解像能質量分析(HRMS)データを、ポジティブW-モードにおいて、前記機器内に試料を導入するための金属コートされたホウケイ酸ガラスチップを使用して、Waters Micromass QTOFグローバルにおいて記録した。薄層クロマトグラフィー(TLC)を、シリカゲルアルミニウム板(Merck 60、F254)上で行った。フラッシュクロマトグラフィーは、シリカゲル(Merck 60、230-400メッシュASTM)を使用した。HOBt(NovaBiochem)および固体支持試薬(Argonaut)に関する以外は、全ての他の薬品および溶媒を、Sigma-Aldrichから購入し、更なる精製をすることなく提供されたまま使用した。無水溶媒を、乾燥した窒素雰囲気下で、適切な乾燥剤の存在下において、蒸留することにより調製し、4Åの分子ふるいまたはナトリウムワイヤにおいて保存した。石油エーテルは、40-60℃で沸騰する留分を意味する。
【0359】
一般的なLC/MSの条件:前記HPLC(Waters Alliance 2695)を、水(A)(ギ酸0.1%)およびアセトニトリル(B)(ギ酸0.1%)の移動相を使用して行った。勾配:1.0分の間、開始組成 5% B、ついで、3分以内に、5% Bから95% B。前記組成を、95% Bで0.5分間保持し、ついで、0.3分で5% Bに戻した。総勾配実行時間を、5分とした。流速3.0mL/分、前記質量分析計内を通過する0デッドボリュームのT継手により、400μLを分割した。波長検出は、220から400nmの範囲とする。機能種:ダイオードアレイ(535スキャン)。カラム:Phenomenex(登録商標)Onyx Monolithic C18 50×4.60mm。
【0360】
実施例1
【化79】
【0361】
(a)(S)-2-(4-メトキシフェニル)-7-メトキシ-8-(3-((S)-7-メトキシ-2-(トリフルオロメチルスルホニル)-5,11-ジオキソ-10-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-5,10,11,11a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イルオキシ)ペントキシオキシ)-10-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5,11(10H,11aH)-ジオン(2)
トルエン/エタノール/水(10mL/5mL/5mL)における、1,1’-[[(ペンタン-1,5-ジイル)ジオキシ]ビス(11aS)-7-メトキシ-2-[[(トリフルオロメチル)スルホニル]オキシ]-10-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1,10,11,11a-テトラヒドロ-5H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5,11-ジオン](1)(国際公開第2010/043880号パンフレットにおける化合物8b)(185mg、1.62mmol、1.0当量)、4-メトキシフェニルボロン酸(234mg、1.54mmol、0.95当量)およびNa2CO3(274mg、2.59mmol、1.6当量)の攪拌・脱気した混合物に、テトラキス-tris-フェニルホスフィン・パラジウム錯体(38mg、3.23×10-5mol、0.02当量)を添加した。前記反応混合物を、アルゴン雰囲気下において、室温で3時間攪拌した。前記反応混合物を、酢酸エチルで希釈し、水性部分を分離した。有機部分を、水、飽和塩水で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で蒸発させた。フラッシュカラムクロマトグラフィー[勾配溶出、酢酸エチル30%/n-ヘキサン70%から、酢酸エチル80%/n-ヘキサン20%]による精製により、黄色の泡状物質として、生成物を取得した(0.7g、39%)。分析データ:RT 3.97分;MS(ES+) m/z(相対強度)1103([M+H]+、100)。
【0362】
(b)(S)-2-(4-(アミノメチル)フェニル)-7-メトキシ-8-(5-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5,11-ジオキソ-10-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-5,10,11,11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-8-イル)オキシ)ペンチル)オキシ)-10-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-5,11(10H,11aH)-ジオン(3)
トルエン/エタノール/水(20mL/10mL/10mL)における、前記メトキシトリフラート(2)(700mg、0.63mmol、1.0当量)、4-アミノメチルフェニルボロン酸(190mg、1.015mmol、1.6当量)およびNa2CO3(303mg、2.85mmol、4.5当量)の攪拌・脱気した混合物に、テトラキス-tris-フェニルホスフィン・パラジウム錯体(30mg、2.5×10-5mol、0.04当量)を添加した。前記反応混合物を、アルゴン雰囲気下において、75℃で3時間加熱した。前記反応混合物を、酢酸エチルで希釈し、水性部分を分離した。有機部分を、水、飽和塩水で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で蒸発させて、褐色の泡状物質として、粗製生物を取得した。フラッシュカラムクロマトグラフィー[勾配溶出、酢酸エチル50%/n-ヘキサン50%から、酢酸エチル100%]による精製により、生成物を取得した(0.55g、82%)。分析データ:RT 3.48分;MS(ES+)m/z(相対強度)1060([M+H]+、100)。
【0363】
実施例2に関する一般的な実験方法
全ての商業的に利用可能な無水溶媒を、更なる精製をすることなく使用した。分析用薄層クロマトグラフィーを、シリカゲル 60 F254アルミニウムシート(EMD Chemicals、Gibbstown、NJ)上で行った。ラジアルクロマトグラフィーを、Chromatotron装置(Harris Research、Palo Alto、CA)において行った。分析用HPLCを、Varian ProStar 330 PDA検出器で構成されたVarian ProStar 210溶媒輸送システムにおいて行った。試料を、C12 Phenomenex Synergi 2.0×150mm、4μm、80Åの逆相カラムで溶出した。前記酸性の移動相は、両方とも0.05%のトリフルオロ酢酸または0.1%のギ酸のいずれか(各化合物について示される)を含むアセトニトリルおよび水からなった。注入後1分での5% 酸性アセトニトリルから、11分で95%までの直線勾配、続けて、15分まで均一濃度の95% アセトニトリル(流速=1.0mL/分)で、化合物を溶出した。LC-MSを、C12 Phenomenex Synergi 2.0×150mm、4μm、80Åの逆相カラムを備える、HP Agilent 1100 HPLC機器に、インターフェースで接続されたZMD Micromass質量分析計において行った。前記酸性の溶出は、10分にわたる、0.1% 水性ギ酸における5%から95%へのアセトニトリルの直線勾配、続けて、5分間の均一濃度の95% アセトニトリルからなった(流速=0.4mL/分)。調製用HPLCを、Varian ProStar 330 PDA検出器で構成されたVarian ProStar 210溶媒輸送システムにおいて行った。生成物を、C12 Phenomenex Synergi 10.0×250mm、4μm、80Åの逆相カラムで、水における0.1% ギ酸(溶媒A)およびアセトニトリルにおける0.1% ギ酸(溶媒B)で溶出して精製した。前記精製法は、下記溶媒Bに対する溶媒Aの勾配:0から5分まで、90:10;5分から80分まで、90:10から10:90;続けて、5分間、均一濃度の10:90からなった。流速は、254nmでのモニタリングにより、4.6mL/分とした。NMRスペクトルデータを、Varian Mercury 400MHz分光計において収集した。カップリング定数(J)を、ヘルツにおいて報告する。
【0364】
実施例2
【化80】
【0365】
(a)アリル((S)-1-(((S)-1-((4-((S)-7-メトキシ-8-(5-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5,11-ジオキソ-10-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-5,10,11,11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-8-イル)オキシ)ペンチル)オキシ)-5,11-ジオキソ-10-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-5,10,11,11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-2-イル)ベンジル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)カルバメート(4)
10mLのフラスコに、alloc-Val-Ala(15mg、57μmol)、EEDQ(17mg、69μmol)および0.72mLの無水CH2Cl2を充填した。メタノール(40μL)を、溶解を促進するために添加した。前記混合物を、窒素下において、15分間攪拌した。ついで、SEM-ジラクタムベンジルアミン3(40mg、38μmol)を添加し、前記反応を、室温で4時間攪拌した。その時点で、LC-MSにより生成物への変換が証明された。前記反応を濃縮し、最少量のCH2Cl2に溶解し、1mmのChromatotronプレート上で、ラジアルクロマトグラフィーにより精製し、CH2Cl2/MeOHの混合物(100:0から90:10 CH2Cl2/MeOH)により溶出して、4(42mg、85%)を提供した。LC-MS:tR 15.50分、m/z(ES+)実測値1315.1(M+H)+
【0366】
(b) アリル ((S)-1-(((S)-1-((4-((S)-7-メトキシ-8-(5-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-8-イル)オキシ)ペンチル)オキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-2-イル)ベンジル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)カルバメート(5)
4(40mg、30μmol)および無水THF(0.6mL)を、10mLの火炎乾燥させたフラスコに充填し、-78℃に冷却した。リチウムトリエチルボロヒドリド(60μLの1M THF溶液)を、滴下して添加した。前記反応を、窒素下において、-78℃で2時間攪拌した。その時点で、おおよそ50%の変換が、LC-MSにより証明された。ついで、更なる30μlの還元剤を添加し、さらに2時間攪拌を継続した。その時点で、前記反応が完了した。ついで、前記反応を、1mLの水を添加することにより停止させ、室温に温め、ついで、25mLの塩水で希釈し、25mLのジクロロメタンで3回抽出した。前記組み合わせた有機物を、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固させた。クロロホルム(0.75mL)、エタノール(2mL)および水(0.3mL)に、得られた残渣を溶解し、800mgのシリカゲルを添加して、粘性のスラリーを取得した。前記スラリーを密封し、室温で4日間攪拌した。その時点で、TLC分析により、イミン5への変換が証明された。ついで、前記シリカゲルをろ過し、前記ろ液に更なるPBDの吸光が観察されなくなるまで、クロロホルムにおける10% メタノールで、複数回洗浄した。ついで、前記組み合わせた有機物を、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固させた。ついで、残渣を、最少量のCH2Cl2に溶解し、1mmのchromatotronプレート上で、ラジアルクロマトグラフィーにより精製し、CH2Cl2/MeOHの混合物(100:0から90:10 CH2Cl2/MeOH)により溶出して、3(19mg、61%)を提供した。分析用HPLC:tR 11.99分。LC-MS:tR 12.76分、m/z(ES+) 実測値1022.4(M+H)+
【0367】
(c) 6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロロ-1-イル)-N-((S)-1-(((S)-1-((4-((S)-7-メトキシ-8-(5-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-8-イル)オキシ)ペンチル)オキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-2-イル)ベンジル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)ヘキサンアミド(6)
Alloc-保護されたジイミンPBD5(19mg、19μmol)を、火炎乾燥させたフラスコに添加し、無水ジクロロメタン(1.9mL)に溶解させた。トリフェニルホスフィン(0.25mg、1μmol)、ピロリジン(3.1μL、38μL)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.5mg、0.5μmol)を添加した。ついで、前記反応を、窒素下において、室温で30分間攪拌した。その時点で、LC-MSにより完全なalloc脱保護が証明された。前記反応を、1mmのchromatotronプレート上に直接充填し、CH2Cl2/MeOHの混合物(100:0から80:20 CH2Cl2/MeOH)により溶出して、遊離アミンを提供した(14mg、79%)。分析用HPLC:tR 9.32分。LC-MS:tR 11.61分、m/z(ES+) 実測値938.5(M+H)+。ついで、前記遊離アミンを、無水DMF(0.37mL)に溶解し、マレイミドカプロイルNHSエステルを添加し(6.9mg、22μmol)、続けて、ジイソプロピルエチルアミン(13μL、75μL)を添加した。前記反応を、室温で3時間攪拌した。その時点で、LC-MSにより開始材料の完全な消費が証明された。前記反応混合物を、ジクロロメタンで希釈し、1mmのchromatotronプレート上で、ラジアルクロマトグラフィーにより精製し、CH2Cl2/MeOHの混合物(100:0から90:10 CH2Cl2/MeOH)により溶出して、4(15mg、89%)を提供した。分析用HPLC:tR 11.63分。LC-MS:tR 12.73分、m/z(ES+)実測値1132.1(M+H)+
【0368】
実施例3-7に関する一般的な実験方法
全ての商業的に利用可能な無水溶媒を、更なる精製をすることなく使用した。分析用薄層クロマトグラフィーを、シリカゲル 60 F254アルミニウムシート(EMD Chemicals、Gibbstown、NJ)上で行った。ラジアルクロマトグラフィーを、Chromatotron装置(Harris Research、Palo Alto、CA)において行った。分析用HPLCを、Varian ProStar 330 PDA検出器で構成されたVarian ProStar 210溶媒輸送システムにおいて行った。試料を、C12 Phenomenex Synergi 2.0×150mm、4μm、80Åの逆相カラムで溶出した。前記酸性の移動相は、両方とも0.05%のトリフルオロ酢酸または0.1%のギ酸のいずれか(各化合物に関して示される)を含むアセトニトリルおよび水からなった。注入後1分での5% 酸性アセトニトリルから、11分で95%までの直線勾配、続けて、15分まで均一濃度の95% アセトニトリル(流速=1.0mL/分)で、化合物を溶出した。LC-MSを、C12 Phenomenex Synergi 2.0×150mm、4μm、80Åの逆相カラムを備える、HP Agilent 1100 HPLC機器に、インターフェースで接続されたZMD Micromass質量分析計において行った。前記酸性の溶出は、10分にわたる、0.1% ギ酸水溶液における5%から95%へのアセトニトリルの直線勾配、続けて、5分間の均一濃度の95% アセトニトリルからなった(流速=0.4mL/分)。調製用HPLCを、Varian ProStar 330 PDA検出器で構成されたVarian ProStar 210溶媒輸送システムにおいて行った。生成物を、C12 Phenomenex Synergi 10.0×250mm、4μm、80Åの逆相カラムで、水における0.1% ギ酸(溶媒A)およびアセトニトリルにおける0.1% ギ酸(溶媒B)で溶出して精製した。前記精製法は、溶媒Bに対する溶媒Aの下記勾配:0から5分まで、90:10;5分から80分まで、90:10から10:90;続けて、5分間、均一濃度の10:90からなった。流速は、254nmでのモニタリングにより、4.6mL/分とした。NMRスペクトルデータを、Varian Mercury 400MHz分光計において収集した。カップリング定数(J)を、ヘルツにおいて報告する。
【0369】
実施例3
【化81】
【0370】
(a)(S)-2-(4-(アミノメチル)フェニル)-7-メトキシ-8-((5-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-8-イル)オキシ)ペンチル)オキシ)-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-5(11aH)-オン(7)
無水テトラヒドロフラン(THF、1.9mL)に溶解したSEMジラクタム3(100mg、94μmol、1当量)を、火炎乾燥させたフラスコに充填し、-78℃に冷却した。リチウムトリエチルボロヒドリド(0.19mLの、THFにおける1M溶液、188μmol、2当量)を、滴下して添加した。前記反応を、窒素下において、1時間攪拌した。その時点で、生成物への不完全な変換が、LCにより証明された。さらに0.1mLの還元剤を添加し、前記反応を、さらに1時間攪拌した。前記反応を、水(3mL)を添加することにより停止させ、室温に温め、ついで、塩水(25mL)で希釈し、ジクロロメタン(25mL)で3回抽出した。前記組み合わせた有機物を、塩水(25mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固させた。ジクロロメタン(2.4mL)、エタノール(6.2mL)および水(0.9mL)の混合物に、残渣を溶解し、シリカゲル(2.4g)を添加した。得られたスラリーを、室温で3日間攪拌した。その時点で、TLC分析により、イミン7への変換が証明された。前記スラリーを焼成ガラスロートによりろ過し、前記ろ液に更なるPBDの吸光が観察されなくなるまで、前記シリカゲルケーキを、クロロホルムにおける10% メタノールで洗浄した。前記ろ液の濃縮により、70mgの粗製のイミン二量体7が提供された。それを分割し、40mgを、精製に進めた。前記材料を、最少量のジクロロメタンに溶解し、1mmのchromatotronプレート上でのラジアルクロマトグラフィーにより精製し、CH2Cl2/MeOH混合物(100:0から80:20)で溶出して、7(11mg、分割した材料からの27%)を提供した。TLC:Rf=0.21、CH2Cl2における20% MeOH、LC-MS:tR 11.30分、m/z(ES+) 実測値768.3(M+H)+
【0371】
(b)4-((S)-2((S)-2-(6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロロ-1-イル)ヘキサンアミド)-3-メチルブタンアミド)-5-ウレイドペンタンアミド)ベンジル 4-((S)-7-メトキシ-8-(5-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-8-イル)オキシ)ペンチル)オキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-2-イル)ベンジルカルバメート(9)
無水ジメチルホルムアミド(0.2mL)に溶解したベンジルアミン7(7.3mg、9.5μmol、1当量)を、火炎乾燥させたフラスコに充填した。マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-PAB-OCO-pNP(Dubowchik et al.,Bioconjugate Chemistry,2002,13,855-869)(7mg、9.5μmol、1当量)を添加し、続けて、ジイソプロピルエチルアミン(16.5μL、95μmol、10当量)を添加した。ついで、前記反応を、窒素雰囲気下において、室温で攪拌した。1.5時間後に、LCにより生成物への変換が証明された。前記反応を、ジクロロメタンで希釈し、1mmのchromatotronプレート上に直接充填し、CH2Cl2/MeOHの混合物(100:0から80:20)により溶出して、精製されたドラッグリンカー9(9.3mg、72%)を提供した。TLC:Rf=0.24、CH2Cl2における10% MeOH、LC-MS:tR 12.61分、m/z(ES+) 実測値1366.8(M+H)+
【0372】
実施例4
【化82】
【0373】
(a)(2S,3R,4S,5R,6R)-2-(2-(3-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)プロパンアミド)-4-((((4-((S)-7-メトキシ-8-((5-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-8-イル)オキシ)ペンチル)オキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-2-イル)ベンジル)カルバモイル)オキシ)メチル)フェノキシ)-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイル トリアセテート(12)
無水テトラヒドロフラン(0.8mL)に溶解したSEMジラクタム3(40mg、38μmol、1当量)を、火炎乾燥させたフラスコに充填し、-78℃に冷却した。リチウムトリエチルボロヒドリド(80μLの、THFにおける1M溶液、76μmol、2当量)を、滴下して添加した。前記反応を、窒素下において、1.5時間攪拌した。その時点で、生成物への不完全な変換が、LCにより証明された。さらに40μLの還元剤を添加し、前記反応を、さらに1時間攪拌した。前記反応を、水(1mL)を添加することにより停止させ、室温に温め、ついで、塩水(25mL)で希釈し、ジクロロメタン(25mL)で3回抽出した。前記組み合わせた有機物を、塩水(25mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固させた。SEMカルビノールアミン10(39mg)を、更なる精製をすることなく進めた。活性化したグルクロニドリンカー11(Jeffrey et al., Bioconjugate Chemistry, 2006, 17, 831-840)(38mg、42μmol、1.1当量)を、無水ジメチルホルムアミド(0.6mL)に溶解し、10(39mg、37μmol、1当量)を含むフラスコに添加した。ジイソプロピルエチルアミン(13μL、74μmol、2当量)を添加した。前記反応を、窒素下において、室温で攪拌した。1.5時間後に、LC-MSによりカップリング生成物への変換が証明された。前記反応を、塩水(25mL)で希釈し、ジクロロメタン(25mL)で3回抽出した。前記組み合わせた有機物を、塩水(25mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固させた。クロロホルム(0.7mL)、エタノール(1.25mL)および水(0.17mL)の混合物に、得られた残渣を溶解し、シリカゲル(1g)を添加した。得られたスラリーを、室温で3日間攪拌した。TLC分析により、ドラッグ-リンカー12への変換が証明された。その時点で、前記スラリーを焼成ガラスロートによりろ過し、前記ろ液に更なるPBDの吸光が観察されなくなるまで、前記シリカゲルケーキを、クロロホルムにおける10% メタノールで洗浄した。前記ろ液の濃縮により、粗製生物12が提供された。前記材料を、最少量のジクロロメタンに溶解し、1mmのchromatotronプレート上でのラジアルクロマトグラフィーにより精製し、CH2Cl2/MeOH混合物(100:0から80:20)で溶出して、12(25mg、36%)を提供した。LC-MS:m/z(ES+) 実測値1542.9(M+H)+
【0374】
(b) (2S,3S,4S,5R,6R)-6-(2-(3-アミノプロパンアミド)-4-((((4-((S)-7-メトキシ-8-((5-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-8-イル)オキシ)ペンチル)オキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-2-イル)ベンジル)カルバモイル)オキシ)メチル)フェノキシ)-3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸(13)
保護されているグルクロニドリンカー12(25mg、16μmol、1当量)を、メタノール(0.5mL)およびテトラヒドロフラン(0.5mL)に溶解し、0℃に冷却した。水酸化リチウム・一水和物(4mg、96μmol、6当量)を、水(0.5mL)に溶解し、前記反応に滴下して添加した。ついで、前記反応を室温に温め、LC-MSでモニターした。2時間後に、0.4mLの水における更なるLiOH(3.2mg、76μmol、4.8当量)を反応に添加し、生成物への変換をさらに行った。氷酢酸(11μL、195μmol、12当量)を添加し、続けて、1mLのジメチルスルホキシドを添加した。ついで、揮発性の溶媒を、ロータリーエバポレーションにより除去した。粗製生物を、調製用HPLCで精製して、脱保護されたグルクロニドリンカー13を提供した(2mg、11%)。LC-MS:tR 11.54分、m/z(ES+) 実測値1180.0(M+H)+
【0375】
(c) (2S,3S,4S,5R,6S)-6-(2-(3-(6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロロ-1-イル)ヘキサンアミド)プロパンアミド)-4-((((4-((S)-7-メトキシ-8-((5-(((S)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-8-イル)オキシ)ペンチル)オキシ)-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-2-イル)ベンジル)カルバモイル)オキシ)メチル)フェノキシ)-3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸(14)
グルクロニドリンカー13(2mg、1.7μmol、1当量)、マレイミドカプロン酸 N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(0.8mg、2.6μmol、1.5当量)および無水ジメチルホルムアミド(85μL)を、火炎乾燥させたフラスコに充填した。ジイソプロピルエチルアミン(1.5μL、8.5μmol、5当量)を添加した。ついで、前記反応を、窒素下において室温で攪拌した。2時間後、HPLCにより、生成物への変換が証明された。前記反応を、ジメチルスルホキシドに希釈し、調製用HPLCにより精製して、PBDグルクロニドリンカー14を提供した(1.4mg、61%)。LC-MS:tR 12.30分、m/z(ES+) 実測値1373.7(M+H)+
【0376】
実施例5
【化83】
【0377】
(a)(S)-8-((5-(((S)-2-(4-アミノフェニル)-7-メトキシ-5,11-ジオキソ-10-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-5,10,11,11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-8-イル)オキシ)ペンチル)オキシ)-7-メトキシ-5,11-ジオキソ-10-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-5,10,11,11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-2-イル トリフルオロメタンスルホナート(15)
トルエン(6.5mL)、エタノール(3.2mL)および水(3.2mL)に溶解させたビストリフラート1(500mg、437μmol、1当量)を、フラスコに充填した。前記攪拌溶液に、4-アミノフェニルボロン酸ピナコールエステル(87mg、398μmol、0.91当量)、炭酸ナトリウム(213mg、2.0mmol、4.6当量)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(20mg、17.5μmol、0.04当量)を添加した。前記反応を、LC-MSでモニターしながら、窒素下において、室温で激しく攪拌した。3時間後、前記反応は、所望の生成物へのおおよそ50%の変換に進行していた。前記反応を濃縮し、ついで、酢酸エチル(100mL)と水(100mL)との間で分離した。ついで、有機層を、水(100mL)、塩水(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固させて、粗製のアニリントリフラート15を提供した。フラッシュクロマトグラフィーにより、ヘキサン:酢酸エチルの混合物(60:40から30:70)で溶出して、前記粗製生物を精製して、純粋なアニリントリフラート15を提供した(118mg、25%)。TLC:Rf=0.43、酢酸エチルにおける25% ヘキサン。LC-MS:tR 8.30分、m/z(ES+) 実測値1088.2(M+H)+
【0378】
(b)(S)-2-(4-アミノフェニル)-8-((5-(((S)-2-(4-(3-(ジメチルアミノ)プロポキシ)フェニル)-7-メトキシ-5,11-ジオキソ-10-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-5,10,11,11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-8-イル)オキシ)ペンチル)オキシ)-7-メトキシ-10-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-5,11(10H,11aH)-ジオン(16)
トルエン(0.7mL)、エタノール(2.3mL)および水(0.3mL)に溶解させたアニリントリフラート15(118mg、109μmol、1当量)を、フラスコに充填した。前記攪拌溶液に、4-[3-(ジメチルアミノ)プロピルオキシ]フェニルボロン酸ピナコールエステル(43mg、142μmol、1.3当量)、炭酸ナトリウム(53mg、0.5mmol、4.6当量)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(5mg、4.4μmol、0.04当量)を添加した。前記反応を、LC-MSでモニターしながら、窒素下において、室温で激しく攪拌した。4時間後、前記反応は、完了に達した。前記反応を濃縮し、ついで、酢酸エチル(25mL)と水(25mL)との間で分離した。水層を、酢酸エチル(25mL)で2回抽出した。ついで、有機層を、水(50mL)、塩水(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固させて、粗製のSEMジラクタム16を提供した。フラッシュクロマトグラフィーにより、ヘキサン:酢酸エチルの混合物(50:50から0:100)で溶出して、前記粗製生物を精製して、純粋な生成物16を提供した(78mg、64%)。TLC:Rf=0.38、CH2Cl2における20% メタノール。LC-MS:m/z(ES+) 実測値1117.8(M+H)+
1H NMR(d7-DMF)δ(ppm) 0.00(s,18H),0.90(m,4H),1.74(m,3H),1.96(m,6H),2.21(s,6H),2.44(t,J=7.2Hz,2H),3.25(m,2H),3.62(m,4H),3.80(m,2H),3.96(s,6H),4.11(t,J=6.4Hz,2H),4.20(m,3H),4.92(m,2H),5.31(dd,J=6,10Hz,2H),5.48(m,4H),6.73(t,J=8.4Hz,2H),7.01(t,J=8.8Hz,2H),7.29(m,3H),7.40(m,4H),7.47(m,1H),7.56(t,J=8.4Hz,2H)。
【0379】
(c)(S)-2-(4-アミノフェニル)-8-((5-(((S)-2-(4-(3-(ジメチルアミノ)プロポキシ)フェニル)-7-メトキシ-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-8-イル)オキシ)ペンチル)オキシ)-7-メトキシ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-5(11aH)-オン(17)
無水テトラヒドロフラン(1.3mL)に溶解させたSEMジラクタム16(70mg、63μmol、1当量)を、火炎乾燥させたフラスコに充填し、-78℃に冷却した。リチウムトリエチルボロヒドリド(0.13mLの、THFにおける1M溶液、126μmol、2当量)を、滴下して添加した。前記反応を、窒素下において、1.5時間攪拌した。その時点で、生成物への不完全な変換が、LCにより証明された。さらに、65μLの還元剤を添加し、前記反応を、さらに1時間攪拌した。前記反応を、水(1mL)を添加することにより停止させ、室温に温め、ついで、塩水(25mL)で希釈し、ジクロロメタン(25mL)で3回抽出した。前記組み合わせた有機物を、塩水(25mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固させた。ジクロロメタン(1.2mL)、エタノール(3.2mL)および水(0.5mL)の混合物に、残渣を溶解し、シリカゲル(1.6g)を添加した。得られたスラリーを、室温で4日間攪拌した。TLC分析により、イミン二量体17への変換が証明された時点で、前記スラリーを焼成ガラスロートによりろ過し、前記ろ液に更なるPBDの吸光が観察されなくなるまで、前記シリカゲルケーキを、クロロホルムにおける10% メタノールで洗浄した。前記ろ液の濃縮により、粗製のイミン二量体17が提供された。前記材料を、最少量のジクロロメタンに溶解し、1mmのchromatotronプレート上でのラジアルクロマトグラフィーにより精製し、CH2Cl2/MeOH混合物(100:0から60:40)で溶出して、17(31mg、60%)を提供した。LC-MS:tR 11.14分、m/z(ES+)実測値825.4(M+H)+
【0380】
実施例6
【化84】
N-(4-((S)-8-((5-(((S)-2-(4-(3-(ジメチルアミノ)プロポキシ)フェニル)-7-メトキシ-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-8-イル)オキシ)ペンチル)オキシ)-7-メトキシ-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-2-イル)フェニル)-6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロロ-1-イル)-ヘキサンアミド(18)
0.33mLの、無水ジクロロメタンにおける5% メタノールに溶解させたマレイミドカプロン酸(5.2mg、25μmol、1.5当量)を、火炎乾燥させたフラスコに充填した。前記酸を、N-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン(7.3mg、30μmol、1.8当量)の添加により予め活性化させ、続けて、窒素下において、室温で15分間攪拌した。ついで、前記活性化された酸を、PBD二量体17(13.5mg、16μmol、1当量)を含む火炎乾燥させたフラスコに添加した。前記反応を、窒素下において、室温で4時間攪拌した。その時点で、LC-MSにより生成物への変換が証明された。前記材料を、ジクロロメタンに希釈し、1mmのchromatotronプレート上でのラジアルクロマトグラフィーにより精製し、CH2Cl2/MeOH混合物(100:0から80:20)で溶出して、18(7.3mg、44%)を提供した。LC-MS:tR 9.09分、m/z(ES+) 実測値1018.3(M+H)+
【0381】
実施例7
【化85】
N-((S)-1-(((S)-1((4-((S)-8-(5-(((S)-2-(4-(3-(ジメチルアミノ)プロポキシ)フェニル)-7-メトキシ-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-8-イル)オキシ)ペンチル)オキシ)-7-メトキシ-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-2-イル)フェニル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)-6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロロ-1-イル)ヘキサンアミド(19)
0.33mLの、無水ジクロロメタンにおける5% メタノールに溶解させた、マレイミドカプロイル-バリン-アラニンリンカー(国際公開第2011/130613号パンフレットの実施例13における化合物36)(9mg、24μmol、1.5当量)を、火炎乾燥させたフラスコに充填した。前記酸を、N-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン(7.1mg、29μmol、1.8当量)の添加により予め活性化させ、続けて、窒素下において、室温で15分間攪拌した。ついで、前記活性化された酸を、PBD二量体17(13mg、16μmol、1当量)を含む火炎乾燥させたフラスコに添加した。前記反応を、窒素下において、室温で7時間攪拌した。その時点で、LC-MSにより生成物への変換が証明された。前記材料を、ジクロロメタンに希釈し、1mmのchromatotronプレート上でのラジアルクロマトグラフィーにより精製し、CH2Cl2/MeOH混合物(100:0から80:20)で溶出して、19(5.1mg、27%)を提供した。LC-MS:tR 9.09分、m/z(ES+) 実測値1188.4(M+H)+
【0382】
実施例8
【化86】
【0383】
(a)2-(4-(2,5,8,11-テトラオキサトリデカン-13-イルオキシ)フェニル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(21)
4-ヒドロキシフェニルボロン酸ピナコールエステル(880mg、4mmol)、ブロモメチルテトラエチレングリコール(1.6g、6mmol)およびDMF(10mL)の混合物に、Cs2CO3(1.5g;8mmol)を添加した。前記反応混合物を、約65時間攪拌し、酢酸エチル(100mL)に注いだ。前記混合物を、0.1N HCl(200mL)、水(3×100mL)および塩水(50mL)で洗浄した。有機相を、Na2SO4で乾燥させ、静かに移して濃縮することにより、褐色のオイルを取得した。前記オイルを、ヘキサンにおける50% 酢酸エチル、続けて、100% 酢酸エチルで溶出して、2mmのラジアルchromatotronプレートにおいて精製して、1.21g(74%)を取得した。
NMR(d6-DMSO,400MHz)□ 7.59(d,J=8.6Hz,2H),6.93(d,J=8.6Hz,2H),4.11(t,J=4.7Hz,2H),3.73(m,2H),3.60-3.45(m,14H),3.41(m,2H),3.23(s,3H),1.27(s,12H);
LC-MS:m/z(ES+) 実測値433.64(M+Na)+
【0384】
(b)(R)-2-(4-(2,5,8,11-テトラオキサトリデカン-13-イルオキシ)フェニル)-8-((5-(((R)-2-(4-アミノフェニル)-7-メトキシ-5,11-ジオキソ-10-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-5,10,11,11a-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-8-イル)オキシ)ペンチル)オキシ)-7-メトキシ-10-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-5,11(10H,11aH)-ジオン(22)
トルエン(2mL)およびエタノール(1mL)の混合物における、モノトリフラート15(200mg、0.18mmol)およびTEGボロン酸エステル(111mg、0.27mmol)の混合物に、2M Na2CO3(0.5mL)およびテトラキスPd(6mg、0.054mmol)を添加した。室温で3時間攪拌した後、前記反応混合物を、酢酸エチルに注ぎ、水(3×50mL)および塩水(50mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。前記溶液を静かに移し、濃縮し、ついで、ジクロロメタンにおける5% メタノールで溶出する、2mmのラジアルchromatotronプレートにおいて精製した。これにより、黄色の固形物として、207mg(94%)を取得した。
1H NMR(CDCl3,400MHz)□ 7.39-7.34(m,7H),7.26(m,2H),6.89(d,J=9.0Hz,2H),6.66(d,J=8.6Hz,2H),4.70(dd,J=10.2,2.0Hz,2H),4.18-4.03(m,8H),3.93(s,3H),3.90-3.62(m,21H),3.55(dd,J=5.1,3.2Hz,2H)3.38(s,3H),3.12(pent,J=5.0H,2H),2.05(m,6H),1.72(m,2H),1.0(m,4H),0.3(s,18H);
LC-MS:m/z(ES+)実測値1222.98(M+H)+
【0385】
(c)(R)-2-(4-(2,5,8,11-テトラオキサトリデカン-13-イルオキシ)フェニル)-8-((5-(((R)-2-(4-アミノフェニル)-7-メトキシ-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-8-イル)オキシ)ペンチル)オキシ)-7-メトキシ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-5(11aH)-オン(23)
-78℃でのTHF(10mL)における前記SEMジラクタム(207mg、0.17mmol)の混合物に、スーパーヒドリド(THFにおける1N溶液としてのLiHBEt4、0.34mL、0.34mmol)を添加した。前記反応混合物を、おおよそ2時間攪拌した。その時点で、前記反応混合物のLC-MS分析により、一還元された材料が未だに存在する状態で、完全に還元されたSEM-カルビノールアミン中間体への、おおよそ50%の変換が証明された。さらに一定量のスーパーヒドリド(0.34mL、0.34mmol)を添加し、前記反応を、-78℃で更に1時間攪拌した。LC-MS検査により、前記反応が、未だに完全に進行していなかったことが証明された。このため、3回目の一定量のスーパーヒドリド(0.34mL、0.34mmol)を添加し、前記反応混合物を、-80℃の冷凍庫に、16時間置いた。ついで、前記反応混合物を、水(5mL)で反応を停止させ、大気温度に温め、酢酸エチル(100mL)に注いだ。塩水での洗浄後、前記混合物を、Na2SO4で乾燥させた。有機相を静かに移し、減圧下で濃縮し、ついで、エタノール(14mL)、ジクロロメタン(5mL)、水(7mL)およびシリカゲル(5g)の混合物で、72時間処理した。前記混合物を、フリットガラスロートを通してろ過し、前記溶液を減圧下で濃縮する前に、ジクロロメタンにおける10% メタノールで、複数回洗浄した。前記混合物を、ジクロロメタンにおける5% メタノールで溶出する、2mmのラジアルchromatotronプレートにおいて精製して、46mg(29%)を取得した。LC-MS:m/z (ES+) 実測値930.85(M+H)+
【0386】
(d)N-((S)-1-(((S)-1-((4-((R)-8-((5-(((R)-2-(4-(2,5,8,11-テトラオキサトリデカン-13-イルオキシ)フェニル)-7-メトキシ-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-8-イル)オキシ)ペンチル)オキシ)-7-メトキシ-5-オキソ-5,11a-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアゼピン-2-イル)フェニル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)-6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサンアミド(24)
0℃でのジクロロメタンでの5% メタノール(1mL)におけるmc-val-ala-OH(50mg、0.129mmol)の混合物に、EEDQ(32mg、0.129mmol)を添加した。前記混合物を、15分間攪拌し、ついで、ジクロロメタンにおける5% メタノール(1mL)における、前記アニリン(44mg、0.044mmol)の溶液を添加した。前記反応混合物を、3時間攪拌し、ジクロロメタン(2mL)で希釈し、2mmのラジアルchromatotronプレート上に直接吸引させた。生成物を、ジクロロメタンにおける、2.5%から5% メタノールの勾配で溶出して、22.5mg(40%)を取得した:LC-MS:m/z(ES+) 実測値1294(M+H)+
【0387】
実施例9-PBD二量体コンジュゲートの調製
導入されたシステインを含む抗体:重鎖の239位にシステイン残基を含むCD70に対する抗体を、10当量のTCEPおよび1mM EDTAを添加し、1M Trisバッファー(pH9.0)でpHを7.4に調節することにより、完全に還元させた。37℃で1時間インキュベートした後、前記反応を22℃に冷却し、30当量のデヒドロアスコルビン酸を添加して、前記還元状態におけるシステイン239を遊離させながら、選択的に、元のジスルフィドを再度酸化させた。前記pHを、1M Trisバッファー(pH3.7)で6.5に調節し、前記反応を、22℃で1時間進行させた。ついで、前記溶液のpHを、1M Trisバッファー(pH9.0)を添加することにより、再度7.4に上昇させた。DMSOにおける3.5当量の前記PBDドラッグリンカーを、前記反応に添加する前に、プロピレングリコールで希釈するために、適切な容器に入れた。前記PBDドラッグリンカーの溶解性を維持するために、まず、前記抗体自体を、プロピレングリコールで、33%の最終濃度に希釈した(例えば、前記抗体の溶液を、60mLの反応容量とし、30mLのプロピレングリコールを添加した。)。ついで、この同じ容量のプロピレングリコール(この実施例では、30mL)を、希釈剤として、前記PBDドラッグリンカーに添加した。混合後、プロピレングリコールにおける前記PBDドラッグリンカーの溶液を、前記コンジュゲートを生じさせるために、前記抗体の溶液に添加した。プロピレングリコールの最終濃度は、50%である。前記反応を30分間進行させ、ついで、5当量のN-アセチルシステインの添加により停止させた。ついで、前記ADCを、30kDのメンブレンを通す限外ろ過により精製した(前記反応に使用されるプロピレングリコールの濃度は、その唯一の目的が、水性媒体における前記ドラッグリンカーの溶解性を維持することである場合、任意の具体的なPBDに対して低下させ得ることに留意すべきである。)。
【0388】
実施例10-選択されたコンジュゲートのin vitro活性の決定
選択された抗体ドラッグコンジュゲートのin vitro細胞毒活性を、レザズリン(Sigma、St. Louis、MO、USA)還元アッセイ(参考文献:Doronina et al., Nature Biotechnology, 2003, 21, 778-784)を使用して評価した。前記抗体ドラッグコンジュゲートを、上記のように調製した。
【0389】
前記96時間アッセイに関して、対数増殖期の培養細胞を、20% FBSを添加した、150μLのRPMI1640を含む、96ウェルプレートにおいて、24時間播種した。細胞培養培地における段階希釈のADCを、4×作業濃度で調製した。50μLの各希釈を、前記96ウェルプレートに添加した。ADCの添加後、前記細胞を、試験物と、37℃で4日間培養した。ついで、レザズリンを、50μMの最終濃度を達成するように、各ウェルに添加した。前記プレートを、37℃で4時間、さらにインキュベートした。ついで、前記プレートを、Fusion HTプレートリーダー(Packard Instruments、Meridien、CT、USA)において、それぞれ、530および590nmの励起および発光の波長により、染料の減少の程度に関して読み取った。ここでは、3回反復で決定されたIC50値を、未処理コントロールと比較して、細胞増殖における50%減少をもたらす濃度と規定する。
【0390】
以下の表を参照して、96時間アッセイを使用したADCのin vitro細胞毒性を示す。前記ADCを、抗原陽性および抗原陰性の細胞株に対して試験した。h1F6は、以下に記載のヒト化抗CD70抗体である。
【0391】
In Vitro活性
【0392】
【表2】
【0393】
【表3】
【0394】
【表4】
【0395】
実施例11:選択されたコンジュゲートのIn Vivo細胞毒性の決定
全ての研究を、実験動物管理公認協会により完全に認定された施設において、動物実験委員会に基づいて行った。まず、前記コンジュゲートが異種移植実験用に選択された用量で許容されることを確認するために、ADC耐容性を評価した。BALB/cマウスを、0.5M アルギニンおよび0.01% Tween20を含むPBSに配合されたADCで、濃度を向上させて処理した。処置後の体重減少および罹患の表面上のサインに関して、マウスをモニターした。20%より大きい体重減少を経験したもの、または、罹患のサインを示したものは、安楽死させた。前記使用した抗体は、239位でセリンに対する点変異置換システインを有する、CD70抗体、ヒト化h1F6 IgG1(その全体が、全ての目的に関して、参照により取り込まれる、国際公開第2006/113909号パンフレット)とした。前記ドラッグユニットへのコンジュゲートは、239位における導入されたシステインによる。平均2つのドラッグを、抗体あたりに充填した。
in vivoにおける治療実験を、CD70+腎細胞ガン腫を有するマウスにおける異種移植モデルにおいて行った。腫瘍(Caki-1)フラグメントを、ヌードマウスの右わき腹に移植した。マウスを、各群が平均100mm3付近を有する研究群(n=5(786-0))にランダム化した。前記ADCまたはコントロールを、示した投与計画に基づいて投与した。時間関数としての腫瘍体積を、式(L×W2)/2を使用して決定した。腫瘍体積が1000mm3に達した時点で、動物を安楽死させた。移植後100日付近で、持続的退行を示すマウスを終了させた。
【0396】
図1を参照して、CD70+腎細胞ガン腫モデルにおけるh1F6-化合物18およびh1F6-化合物19のコンジュゲートを使用した、処理研究の結果を示す。投与を、q7d×2で行った。前記図において、×は未処理であり、黒四角は0.1mg/kgでのh1F63c-18による処理であり、白四角は、0.3mg/kgでのh1F63c-18による処理であり、黒三角は、1mg/kgでのh1F63c-19による処理であり、白三角は、3mg/kgでのh1F63c-19による処理である。
【0397】
h1F6-化合物6コンジュゲートによるマウス耐容性実験の結果は、1mg/kgのADCの1回投与が、30日以上で体重減少または罹患を示さないことにより、十分に耐用性があることが証明された。
図1