(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】走行支援方法及び走行支援装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/12 20200101AFI20220816BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20220816BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220816BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20220816BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20220816BHJP
【FI】
B60W30/12
G01C21/34
G08G1/16 E
B60W40/04
B60W40/06
(21)【出願番号】P 2018112380
(22)【出願日】2018-06-13
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高松 吉郎
(72)【発明者】
【氏名】三品 陽平
(72)【発明者】
【氏名】黒川 貴都
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-016829(JP,A)
【文献】特開2011-248427(JP,A)
【文献】特開2005-149402(JP,A)
【文献】特開2016-088504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
B60R 21/00-21/13
B60R 21/34-21/38
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサに実行させる、車両の走行支援方法であって、
自車両に搭載されたセンサの検出情報に基づいて、前記自車両が走行する走行レーンを設定し、
前記センサの検出情報に基づいて、前記走行レーン上で前記自車両の前方を走行する先行車を特定し、
前記先行車より前方における他車両の混雑状態を検出し、
前記自車両が、前記先行車を追い越した後に、前記走行レーンに隣接する隣接レーンから前記走行レーンに戻ることができる可能性を示す第1評価値を、前記検出情報に基づき算出し、
前記混雑状態及び前記第1評価値に基づき、前記先行車を追い越すか否かを判定する走行支援方法。
【請求項2】
プロセッサに実行させる、車両の走行支援方法であって、
自車両に搭載されたセンサの検出情報に基づいて、前記自車両が走行する走行レーンを設定し、
前記センサの検出情報に基づいて、前記走行レーン上で前記自車両の前方を走行する先行車を特定し、
前記先行車より前方における他車両の混雑状態を検出し、
前記自車両の車速及び前記先行車の車速に基づき、前記先行車を追い越すことで得られる、走行時間の短縮幅を算出し、
前記混雑状態及び前記短縮幅に基づき、前記先行車を追い越すか否かを判定する走行支援方法。
【請求項3】
プロセッサに実行させる、車両の走行支援方法であって、
自車両に搭載されたセンサの検出情報に基づいて、前記自車両が走行する走行レーンを設定し、
前記センサの検出情報に基づいて、前記走行レーン上で前記自車両の前方を走行する先行車を特定し、
前記先行車より前方における他車両の混雑状態を検出し、
前記自車両が前記先行車を追い越した後、所定の目標地点に到着するまでに、前記走行レーンに隣接する隣接レーンから前記走行レーンに戻れる場合の第1走行ルートを算出し、
前記自車両が前記先行車を追い越した後、前記所定の目標地点に到着するまでに、前記隣接レーンから前記走行レーンに戻れない場合の第2走行ルートを算出し、
前記自車両が前記第1走行ルートを走行した場合の第1走行時間と、前記自車両が前記第2走行ルートを走行した場合の第2走行時間とを算出し、
前記第1走行ルートから前記第2走行ルートに変更した場合の走行時間の時間差に基づいて、前記先行車を追い越すか否か判定する走行支援方法。
【請求項4】
前記混雑状態を示す評価値を含む算出式により、追い越しを実行すべきか否かを表す第2評価値を算出し、
前記第2評価値が所定の評価閾値以上である場合には、前記先行車の追い越しを実行する請求項1~3のいずれか一項に記載の走行支援方法。
【請求項5】
プロセッサに実行させる、車両の走行支援方法であって、
自車両に搭載されたセンサの検出情報に基づいて、前記自車両が走行する走行レーンを設定し、
前記センサの検出情報に基づいて、前記走行レーン上で前記自車両の前方を走行する先行車を特定し、
前記先行車より前方における他車両の混雑状態を検出し、
前記混雑状態を示す評価値を含む算出式により、追い越しを実行すべきか否かを表す第2評価値を算出し、
前記走行レーン上に通過必須点を設定し、
前記通過必須点の近傍における渋滞情報を取得し、
前記渋滞情報に基づき、前記通過必須点の近傍で渋滞が発生していることを検出した場合には、前記混雑状態を示す評価値をより大きし、
前記第2評価値が所定の評価閾値以上である場合には、前記先行車の追い越しを実行する走行支援方法。
【請求項6】
プロセッサに実行させる、車両の走行支援方法であって、
自車両に搭載されたセンサの検出情報に基づいて、前記自車両が走行する走行レーンを設定し、
前記センサの検出情報に基づいて、前記走行レーン上で前記自車両の前方を走行する先行車を特定し、
前記先行車より前方における他車両の混雑状態を検出し、
前記混雑状態を示す評価値を含む算出式により、追い越しを実行すべきか否かを表す第2評価値を算出し、
車両が走行する走行レーン上で、前記先行車より前方の領域における渋滞情報を取得し、
前記渋滞情報に基づき、前記領域で渋滞が発生していることを検出した場合には、前記混雑状態を示す評価値をより大きし、
前記第2評価値が所定の評価閾値以上である場合には、前記先行車の追い越しを実行する走行支援方法。
【請求項7】
プロセッサに実行させる、車両の走行支援方法であって、
自車両に搭載されたセンサの検出情報に基づいて、前記自車両が走行する走行レーンを設定し、
前記センサの検出情報に基づいて、前記走行レーン上で前記自車両の前方を走行する先行車を特定し、
前記先行車より前方における他車両の混雑状態を検出し、
前記混雑状態を示す評価値を含む算出式により、追い越しを実行すべきか否かを表す第2評価値を算出し、
前記走行レーン上に通過必須点を設定し、
地図情報に基づき、前記通過必須点から所定距離先までの範囲内に、サグがあるか否か検出し、
前記サグがある場合には、前記混雑状態を示す評価値をより大きくし、
前記第2評価値が所定の評価閾値以上である場合には、前記先行車の追い越しを実行する走行支援方法。
【請求項8】
前記走行レーン上に通過必須点を設定し、
地図情報に基づき、前記自車両の現在位置から前記通過必須点までの範囲内に、サグがあるか否か検出し、
前記サグがある場合には、前記混雑状態を示す評価値をより大きくする請求項4記載の走行支援方法。
【請求項9】
プロセッサに実行させる、車両の走行支援方法であって、
自車両に搭載されたセンサの検出情報に基づいて、前記自車両が走行する走行レーンを設定し、
前記センサの検出情報に基づいて、前記走行レーン上で前記自車両の前方を走行する先行車を特定し、
前記先行車より前方における他車両の混雑状態を検出し、
前記混雑状態を示す評価値を含む算出式により、追い越しを実行すべきか否かを表す第2評価値を算出し、
前記走行レーン上に通過必須点を設定し、
地図情報に基づき、前記自車両の現在位置から前記通過必須点までに存在する、前記走行レーンに接続される流入車線の数を特定し、
前記流入車線の数が多いほど、前記混雑状態を示す評価値をより大きくし、
前記第2評価値が所定の評価閾値以上である場合には、前記先行車の追い越しを実行する走行支援方法。
【請求項10】
プロセッサに実行させる、車両の走行支援方法であって、
自車両に搭載されたセンサの検出情報に基づいて、前記自車両が走行する走行レーンを設定し、
前記センサの検出情報に基づいて、前記走行レーン上で前記自車両の前方を走行する先行車を特定し、
前記先行車より前方における他車両の混雑状態を検出し、
前記混雑状態を示す評価値を含む算出式により、追い越しを実行すべきか否かを表す第2評価値を算出し、
前記走行レーン上に通過必須点を設定し、
地図情報に基づき、前記自車両の現在位置から前記通過必須点までに存在する交差点の数を特定し、
交差点の数が多いほど、前記混雑状態を示す評価値をより小さくし、
前記第2評価値が所定の評価閾値以上である場合には、前記先行車の追い越しを実行する走行支援方法。
【請求項11】
前記走行レーン上で交差点の近傍に通過必須点を設定し、
地図情報に基づき、前記交差点においてレーンの通行方向が前記自車両の進行方向と同一とするレーンの数を特定し、
前記レーンの数が多いほど、前記混雑状態を示す評価値をより小さくする請求項4記載の走行支援方法。
【請求項12】
プロセッサに実行させる、車両の走行支援方法であって、
自車両に搭載されたセンサの検出情報に基づいて、前記自車両が走行する走行レーンを設定し、
前記センサの検出情報に基づいて、前記走行レーン上で前記自車両の前方を走行する先行車を特定し、
前記先行車より前方における他車両の混雑状態を検出し、
前記混雑状態に基づき、前記先行車を追い越すか否かを判定し、
前記先行車と前記自車両との速度差が所定の速度差閾値以下である場合には、前記混雑状態に基づいた、前記先行車を追い越すか否かの判定結果にかかわらず、前記先行車の追い越しを実行する走行支援方法。
【請求項13】
プロセッサに実行させる、車両の走行支援方法であって、
自車両に搭載されたセンサの検出情報に基づいて、前記自車両が走行する走行レーンを設定し、
前記センサの検出情報に基づいて、前記走行レーン上で前記自車両の前方を走行する先行車を特定し、
前記先行車より前方における他車両の混雑状態を検出し、
前記走行レーンに隣接する隣接レーン上で前記先行車より前方における、前記他車両の混雑状態を検出し、
前記走行レーン上の前記混雑状態及び前記隣接レーン上の前記混雑状態に基づき、前記先行車を追い越すか否かを判定する走行支援方法。
【請求項14】
自車両に搭載されたセンサと、
前記自車両の走行を支援するための制御処理を実行するプロセッサとを備え、
前記プロセッサは、
自車両に搭載されたセンサの検出情報に基づいて、前記自車両が走行する走行レーンを設定し、
前記センサの検出情報に基づいて、前記走行レーン上で前記自車両の前方を走行する先行車を特定し、
前記先行車より前方における他車両の混雑状態を検出し、
前記自車両が、前記先行車を追い越した後に、前記走行レーンに隣接する隣接レーンから前記走行レーンに戻ることができる可能性を示す第1評価値を、前記検出情報に基づき算出し、
前記混雑状態及び前記第1評価値に基づき、前記先行車を追い越すか否かを判定する走行支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行を支援する走行支援方法及び走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、追い越し制御に関する運転支援装置として以下のような運転支援装置が知られている(例えば特許文献1)。自車両Aが先行車Bを追い越すべく車線変更した際に、運転支援制御ユニット11は、先行車Bの前方に渋滞車両が検出されたか否かを調べ、検出された場合、自車両A及び先行車Bと渋滞車両との関係から渋滞評価値を設定し、この渋滞評価値と評価しきい値とを比較して、渋滞評価値が評価しきい値を越えているときは渋滞と判定する。渋滞と判定した場合、先行車Bの前方に自車両Aを入り込ませる必要距離が確保されているか否かを調べ、確保されていない場合は、追越制御を中断させた後、先行車Bの後方に復帰させる車線復帰減速制御を実行させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、自車両が先行車を追い越すために車線変更を行った後に、先行車Bの前方に自車両Aを入り込ませる必要距離が確保されていたとしても、その後の道路状況の変化により、先行車の前方で渋滞が発生している場合には、先行車の前方の位置で元の車線に戻れず、さらに先に進んだとしても渋滞により、自車両が元の車線に戻れない可能性高い。すなわち、従来の技術では、自車両が先行車を追い越す前に、自車両が先行車を追い越すか否かを適切に判断していないという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、先行車を追い越すか否かを適切に判断できる、走行支援方法及び走行支援装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自車両に搭載されたセンサの検出情報に基づいて、自車両が走行する走行レーンを設定し、センサの前記検出情報に基づいて、走行レーン上で前記自車両の前方を走行する先行車を特定し、先行車より前方における他車両の混雑状態を検出し、混雑状態に基づき先行車を追い越すか否かを判定することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、先行車を追い越すか否かを適切に判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る走行支装置を含む運転制御システムのブロック構成図である。
【
図2】本実施形態の運転制御システムの制御手順を示すフローチャート図である。
【
図3】車両が先行車を追い越すシーンを説明するための図である。
【
図4】車両が先行車を追い越すシーンを説明するための図である。
【
図5】車両が先行車を追い越すシーンを説明するための図である。
【
図6】車両が先行車を追い越すシーンを説明するための図である。
【
図7】車両が先行車を追い越すシーンを説明するための図である。
【
図8】本実施形態の運転制御システムの制御手順を示すフローチャート図である。
【
図9】目的地に到着するために設定される走行ルートを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《第1実施形態》
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、本発明に係る車両の走行を支援する走行支援装置を備える運転制御システムに適用した場合を例にして説明する。
【0010】
図1は、運転制御システム1のブロック構成を示す図である。本実施形態の運転制御システム1は、走行支援装置100と、車載装置200とを備える。
走行支援装置100は、車載装置200と一体のハードウェアとして構成してもよいし、別の装置として分散させた構成としてもよい。
本例では、走行支援装置100が、車両に搭載された車載装置200と、通信装置130を介して情報を授受し、協動するように構成した運転制御システムを例にして説明する。なお、運転制御システムは、ドライバの一切の介入を必要としない自動運転、又は、ドライバの介入を一部必要とする自動運転を行う。また、運転制御システムによる制御は、各国の交通法規を遵守した上で実行される。
【0011】
走行支援装置100について説明する。走行支援装置100は、制御装置110と、記録装置120と、通信装置130とを備える。制御装置110は、先行車の追い越しなど、自車両の走行を支援するための制御処理を実行するプロセッサ111を備える。プロセッサ111は、自車両の走行の支援に必要な制御処理を行う情報処理機能を備えた情報処理装置である。プロセッサ111は、先行車を追い越すか否かを判定して、判定結果に基づき走行支援を制御する処理を実行させるプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行することで、制御装置110として機能する動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記録装置として機能するRAM(Random Access Memory)と、を備えるコンピュータである。本実施形態の制御装置110は、上記機能を実現するためのソフトウェアと、上述したハードウェアの協働により各機能を実行する。制御装置110と、記録装置120とは、有線又は無線の通信回線を介して互いに情報の授受が可能である。通信装置130は、車載装置200との情報授受が可能である。
【0012】
記録装置120は、自車の走行ルートの算出処理及び/又は自車両の運転制御処理を行うために必要な地図データを記憶している。通信装置130は、車載装置200に含まれる通信装置210と信号の送受信を行う。走行支援装置100は、通信装置130を用いて、車載装置200で処理された情報及び車載装置200に記憶された情報を取得する。
【0013】
車載装置200について説明する。
車載装置200は、自車両及び自車両周囲の状況に関する検出情報を取得し、走行支援装置100の指令に基づいて、自車両を運転させる。
本実施形態の車載装置200は、通信装置210、検出装置220、ナビゲーション装置230、記録装置240、出力装置250、車両センサ260と、レーンキープ装置270、車両コントローラ280、駆動装置290及び操舵装置295とを備える。
【0014】
本実施形態の通信装置210は、車載装置200の各装置の通信と、外部のサーバ300との通信とを実行する。車載装置200を構成する各装置は、相互に情報の授受を行うためにCAN(Controller Area Network)その他の車載LAN(通信装置210)によって接続されている。車載装置200は、車載LAN(通信装置210)を介して走行支援装置100と情報の授受を行うことができる。車載装置200は、無線通信を行う通信装置210を介して外部のサーバと情報の授受を行ってもよい。
【0015】
検出装置220は、経路を走行する自車両の周囲の検出情報を取得する。車両の検出装置220は、車両が移動する走行レーンの存在及び位置を認識し、その周囲に存在する障害物を含む対象物の存在及びその存在位置を検出する。検出装置220は、自車両が走行している走行レーンの道路状態、及び、走行レーンに隣接する隣接レーンの道路状態を検出する。道路状態は、道路構造、走行車両の位置、走行車両の車速などである。なお、以下の説明で、特に限定されないが、検出装置220はカメラ221を含む。カメラ221は、例えばCCD等の撮像素子を備える撮像装置である。カメラ221は、赤外線カメラ、ステレオカメラでもよい。カメラ221は車両の所定の位置に設置され、車両の走行レーンのレーンマーク、車両の周囲の対象物を撮像する。車両の周囲は、車両の前方、後方、前方側方、後方側方を含む。対象物は、路面に表記されたレーンマーク、停止線などの二次元の標識を含む。対象物は三次元の物体を含む。対象物は、標識などの静止物を含む。対象物は、歩行者、二輪車、四輪車(他車両)などの移動体を含む。対象物は、ガードレール、縁石などの分離帯、信号、標識、表示装置を含む道路構造物を含む。
【0016】
本実施形態の検出装置220は、画像データを解析し、その解析結果に基づいて自車両が走行する走行レーン、及びその近傍のレーンの存在、位置を認識する。また検出装置220は、走行レーン上を走行する車両、及び、走行レーンの近傍の隣接レーン上を走行する車両の存在、位置を認識する。検出装置220は、走行レーン及び/又は隣接レーンのレーンマークの有無、位置、種別を認識する。検出装置220は、対象物の存在、位置、種別を認識する。なお、以下の説明において、走行レーンは自車両が走行しているレーンを示し、隣接レーンは走行レーンに隣接するレーンである。
【0017】
検出装置220はレーダー装置222を備える。レーダー装置222としては、ミリ波レーダー、レーザーレーダー、超音波レーダー、レーザーレンジファインダーなどの出願時に知られた方式のものを用いることができる。検出装置220は、レーダー装置222の受信信号に基づいて対象物の存否、対象物の位置、対象物までの距離を検出する。検出装置220は、レーザーレーダーで取得した点群情報のクラスタリング結果に基づいて、対象物の存否、対象物の位置、対象物までの距離を検出する。
【0018】
また、通信装置210が他車両と自車両とが車車間通信をすることが可能であれば、検出装置220は、他車両の検出情報を取得してもよい。もちろん、検出装置220は、いわゆる路車間通信により情報を取得してもよく、例えば、高度道路交通システム(Intelligent Transport Systems:ITS)の外部装置から通信装置210を介して、走行レーン、走行レーンを含む道路の情報を検出情報として取得することもできる。検出装置220は、車両近傍の情報は車載の検出装置220により取得し、車両から所定距離以上の遠い領域の情報は路側に設けられた外部装置から通信装置210を介して取得してもよい。
【0019】
検出装置220は、位置検出装置223を備えてもよい。本例では、ナビゲーション装置230が備える位置検出装置231の検出結果を取得する。
検出装置220は、検出結果をプロセッサ11へ逐次出力する。
【0020】
ナビゲーション装置230は、車両の現在位置から目的地までの経路を出願時に知られた手法を用いて算出する。算出した経路は、車両の運転制御に用いるために、走行支援装置100及び/又は車両コントローラ280へ送出される。算出した経路は、経路案内情報として後述する出力装置250を介して出力される。ナビゲーション装置230は、位置検出装置231を備える。位置検出装置231は、グローバル・ポジショニング・システム(Global Positioning System, GPS)の受信機を備え、走行中の車両の走行位置(緯度・経度/地図座標値)を検出する。現在位置情報は、検出情報としてプロセッサ11へ送出される。
【0021】
ナビゲーション装置230は、記録装置240にアクセスし、地図情報241、レーン情報242と、交通規則情報243を参照する。ナビゲーション装置230は、位置検出装置231により検出された車両の現在位置に基づいて、車両が走行する走行レーンを特定する。走行レーンはユーザが指定した目的地に至る経路の一部であってもよいし、車両/ユーザの走行履歴に基づいて推測された目的地に至る経路の一部であってもよい。ナビゲーション装置230は、後述する地図情報241等を参照して、車両が走行する走行レーンを特定する。
【0022】
出力装置250は、ディスプレイ251、スピーカ252を備える。出力装置250は、運転制御に関する各種の情報をユーザ又は周囲の車両の乗員に向けて出力する。出力装置250は、走行レーンと地図情報241のレーンとのずれ量、地図情報の改変内容、立案された運転行動計画、その運転行動計画に基づく運転制御に関する情報を出力する。出力装置250は、通信装置を介して、高度道路交通システムなどの外部装置に運転制御に関する各種の情報を出力してもよい。
【0023】
車両センサ260は、舵角センサ261、車速センサ262、姿勢センサ263を有する。舵角センサ261は、操舵量、操舵速度、操舵加速度などの情報を検出し、車両コントローラ280へ出力する。車速センサ262は、車両の速度及び/又は加速度を検出し、車両コントローラ280へ出力する。姿勢センサ263は、車両の位置、車両のピッチ角、車両のヨー角車両のロール角を検出し、車両コントローラ280へ出力する。姿勢センサ263は、ジャイロセンサを含む。
【0024】
レーンキープ装置270は、カメラ221の撮像画像から走行レーンを検出する。レーンキープ装置270は、レーンのレーンマークの位置と車両の位置とが所定の関係を維持するように車両の動きを制御する車線逸脱防止機能(レーンキープサポート機能)を備える。走行支援装置100はレーンの中央を車両が走行するように、車両の動きを制御する。なお、レーンマークは、レーンを規定する機能を有するものであれば限定されず、路面に描かれた線図であってもよいし、レーンの間に存在する植栽であってもよいし、レーンの路肩側に存在するガードレール、縁石、分離帯、歩道、二輪車専用道路などの道路構造物であってもよい。また、レーンマークは、レーンの路肩側に存在する看板、標識、店舗、街路樹などの静止物であってもよい。なお、後述するように、走行支援装置100が、先行車を追い越すと判定した場合には、レーンキープ装置はレーンキープを解除する。
【0025】
本実施形態の車両コントローラ280は、プロセッサ111が立案する運転計画に従って車両の運転制御を実行する。車両コントローラ280は、車両センサ260、駆動装置290、及び操舵装置295を動作させる。車両コントローラ280は、車両センサ260から車両情報を取得する。本実施形態の車両コントローラ280は、Electric Control Unit, ECUなどの車載コンピュータであり、車両の運転/動作を電子的に制御する。車両としては、電動モータを走行駆動源として備える電気自動車、内燃機関を走行駆動源として備えるエンジン自動車、電動モータ及び内燃機関の両方を走行駆動源として備えるハイブリッド自動車を例示できる。なお、電動モータを走行駆動源とする電気自動車やハイブリッド自動車には、二次電池を電動モータの電源とするタイプや燃料電池を電動モータの電源とするタイプのものも含まれる。
【0026】
本実施形態の駆動装置290は、車両の駆動機構を備える。駆動機構には、上述した走行駆動源である電動モータ及び/又は内燃機関、これら走行駆動源からの出力を駆動輪に伝達するドライブシャフトや自動変速機を含む動力伝達装置、及び車輪を制動する制動装置271などが含まれる。駆動装置290は、アクセル操作及びブレーキ操作による入力信号、車両コントローラ280から取得した制御信号に基づいてこれら駆動機構の各制御信号を生成し、車両の加減速を含む運転制御を実行する。駆動装置290に制御情報を送出することにより、車両の加減速を含む運転制御を自動的に行うことができる。なお、ハイブリッド自動車の場合には、車両の走行状態に応じた電動モータと内燃機関とのそれぞれに出力するトルク配分も駆動装置290に送出される。
【0027】
本実施形態の操舵装置295は、ステアリングアクチュエータを備える。ステアリングアクチュエータは、ステアリングのコラムシャフトに取り付けられるモータ等を含む。操舵装置295は、車両コントローラ280から取得した制御信号、又はステアリング操作により入力信号に基づいて車両の進行方向の変更制御を実行する。車両コントローラ280は、操舵量を含む制御情報を操舵装置295に送出することにより、進行方向の変更制御を実行する。駆動装置290の制御、操舵装置295の制御は、完全に自動で行われてもよいし、ドライバの駆動操作(進行操作)を支援する態様で行われてもよい。駆動装置290の制御及び操舵装置295の制御は、ドライバの介入操作により中断/中止させることができる。
【0028】
次に、
図2~
図4を参照しつつ、走行支援装置100の制御フローを説明する。
図2は、走行支援装置100の制御フローを示すフローチャートである。
図3、4は、自車両が先行車を追い越すシーンを説明するための図である。
【0029】
走行支援装置100は、先行車が自車両の前方を走行しているシーンにおいて、先行車を追い越すか否かを判定し、その判定結果に基づいて追い越し制御を実行するために、以下に説明する制御処理を実行する。走行支援装置100は、例えば先行車の車速が所定の車速以下の状態で、この状態が一定時間以上継続したタイミングで以下の制御フローを実行する。あるいは、走行支援装置100は、例えば、自車両が先行車に近づき、自車両と先行車との間の車間距離が所定距離以下となったタイミングで以下の制御フローを実行する。制御装置100は、制御フローを実行するにあたって、ナビゲーション装置230から、自車両の現在位置から目的地までの走行ルート(以下、第1走行ルートと称す)を取得し、自車両が、算出された走行ルートを走行するように、自動運転制御を実行している。なお、制御装置110は、自動運転制御を実行していない時に、以下の制御フローを実行してもよい。
【0030】
ステップS1にて、走行支援装置100の制御装置110は、車載装置200の検出装置220により検出された検出情報を取得する。検出情報は、少なくとも自車両の前方の情報を含んでいる。例えば、検出情報は、自車両の走行レーン上で、自車両の前方、数100m先までの情報を含んでいる。また、走行レーンの隣に隣接レーンがある場合には、検出情報は、隣接レーン上の情報も含まれる。
【0031】
ステップS2にて、制御装置110は、車載装置200の検出情報から、現在走行している道路形状(道路構造)を特定し、特定された道路形状に対して、自車両が現在走行している位置を検出する。制御装置110は、位置検出装置223又は位置検出装置231で検出される検出情報を用いて、自車両の走行位置を検出してもよい。
【0032】
ステップS3にて、制御装置110は、自車両が現在走行している走行レーンを特定する。制御装置110は、車載装置200の検出情報から、自車両が現在走行しているレーン数及びレーンの形状を特定する。そして、制御装置110は、自車両の走行位置を用いて、特定された1つ又は複数のレーンのうち、どのレーンを走行しているか特定する。
図3の例では、制御装置110は、自車両は片側2車線の道路のうち一番左側のレーンを走行していると特定する。なお、制御装置110は、記録装置240に記録されているレーン情報と、自車両の走行位置から、走行レーンを特定してもよい。
【0033】
ステップS4にて、制御装置110は、記録装置240から地図情報241を取得する。
【0034】
ステップS5にて、制御装置110は、自車両の前方の道路状態を検出する。制御装置110は、ステップS2の制御処理で特定された道路形状に対する、他車両の相対的な位置関係を、道路状態として検出する。他車両は、走行レーン及び/又は隣接レーンを走行あるいは停車している車両である。
【0035】
例えば、
図3に示すように、直線形状の片側2車線の道路が交差点につながっており、自車両が交差点まで残り約100mと走行していたとする。このとき、制御装置100は、自車両の前方で、自車両から交差点までのエリアを含む道路状態を検出する。
図3の例で、交差点の信号が赤の状態で、自車両の目的地までの走行ルートが交差点で左折するルートである場合に、複数の他車両が左折をするために走行レーンで並んで停車していたと仮定する。このような状態では、制御装置110は、走行レーンで並んでいる複数の他車両の位置を道路状態として検出することで、走行レーンで並んでいる複数の他車両のそれぞれの位置、最後尾で待っている他車両から自車両まで空いている距離を特定できる。そして、制御装置110は、走行レーンで並んでいる複数の他車両の位置及び/又は車速から、先行車両から交差点までの他車両の混雑状態を検出できる。
また
図3の他の例で、交差点の信号が青の状態で、他車両が右折をするために交差点内に停止し、右折待ちの他車両の後ろに複数の車両が並んでいたと仮定する。このような状態では、制御装置110は、隣接レーンで並んでいる複数の他車両の位置を道路状態として検出することで、隣接レーンで並んでいる複数の他車両のそれぞれの位置、最後尾で待っている他車両から自車両まで空いている距離を特定できる。そして、制御装置110は、隣接レーンで並んでいる複数の他車両の位置及び/又は車速から、先行車両から交差点までの他車両の混雑状態を検出できる。
【0036】
ステップS6にて、制御装置110は、道路状態に基づき、先行車を特定する。先行車は、走行レーン上で、自車両の前方を走行している車両である。
【0037】
ステップS7において、制御装置110は、車載装置200の検出情報に基づき、追い越しを行うべきか否かを判定するための指標として、第1評価値を算出する。第1評価値は、自車両が隣接レーンから走行レーンに戻れないリスクを示している。言い換えると、第1評価値は、先行車を追い越した後に、隣接レーンから走行レーンに戻ることができない可能性を示す。第1評価値が大きいほど、自車両が先行車を追い越した後、隣接レーンから走行レーンに戻ることができないリスクは大きくなり、隣接レーンから走行レーンに戻ることができる可能性は低くなる。そして、第1評価値が小さいほど、自車両が先行車を追い越した後、隣接レーンから走行レーンに戻ることができないリスクは低くなるため、隣接レーンから走行レーンに戻ることができる可能性は高くなる。第1評価値は、自車両の現在位置から目標地点までの到達時間に基づき算出される。目標地点は、走行ルート上の通過必須点に設定される。通過必須点は、自車両の目的地までの走行ルートを追従して走行するために、通過が必須となる点である。通過必須点は、目的地までの走行ルート上で、例えば交差点の付近に設定される。
【0038】
制御装置110は、自車両の現在位置から通過必須点までの距離を算出し、算出された距離から自車両の現在の車速を除算して、通過必須点までの到着時間を算出する。通過必須点までの到着時間が長いほど、自車両は走行レーンから隣接レーンに戻るための余裕時間を長く確保できる。そのため、制御装置110は、通過必須点までの到着時間が長いほど第1評価値が小さくなるように、第1評価値を算出する。なお、第1評価値は、通過必須点までの到着時間が長くなるほど第1評価値が連続して小さくなるような関係となる必要はなく、例えば、通過必須点までの到着時間が長くなるほど第1評価値が段階的に小さくなってもよい。通過必須点までの到着時間と第1評価値との関係は予め設定されており、その関係性は、制御装置110のROM等に記憶されている。
【0039】
なお、制御装置110は、通過必須点に到着するまでの到達時間に加えて、先行車の車速に応じて、第1評価値を算出してもよい。通過必須点までの到着時間を同じ時間とした場合に、先行車の車速が高いほど、先行車を追い越すための時間又は距離が長くなるため、自車両が先行車を追い越した後、自車両が隣接レーンから走行レーンに戻るための余裕時間が短くなる。そのため、制御装置110は、先行車の車速が大きいほど第1評価値が大きくなるように、第1評価値を算出すればよい。制御装置100によって、第1通過必須点までの到着時間に基づき算出された第1評価値をRとする。例えば、第1評価値は、3段階評価を行い、到着時間が長の場合、0点、中の場合、1点、短の場合(第1所定値以上の場合)、2点というように設定できる。
【0040】
ステップS8にて、制御装置110は、先行車両を追い越すことで得られる、走行時間の短縮幅(W)を算出する。制御装置110は、自車両の現在の位置から通過必須点までの走行距離と、先行車を追い越す場合の予想平均車速に基づいて、先行車を追い越す場合の、通過必須点までの走行時間を算出する。予想平均車速は、先行車を追い越す時の車速、及び、先行車より先の道路状態によって変わる。道路状態は、ステップS5の制御フローで検出したものを使えばよい。例えば、通過必須点までの到着時間が長い場合に、先行車より先の道路状態から、交差点の付近に他車両が並んでいることを検出した場合には、先行車を追い越したとしても、走行時間の短縮幅(W)は小さい。そのため、制御装置110は、自車両の前方の道路状態から、自車両の先の道路状態を特定し、特定された道路状態に応じて、先行車を追い越してから通過必須点までの平均車速を算出する。
【0041】
制御装置110は、自車両の現在の位置から通過必須点までの走行距離と、先行車を追い越さない場合の車速に基づいて、先行車を追い超さない場合の、通過必須点までの走行時間を算出する。追い越さない場合の車速は、先行車の車速に相当する。制御装置110は、先行車を追い越さない場合の走行時間から先行車を追い越す場合の走行時間を差し引くことで、追い越すことで得られる短縮幅を算出する。短縮幅が正の値の場合には、通過必須点までの走行時間は、先行車を追い越すことで短くなる。一方、短縮幅が負の値の場合には、通過必須点までの走行時間は、先行車を追い越すことで長くなる。
【0042】
ステップS9にて、制御装置110は、ステップS5で検出された道路状態から、先行車の前方における他車両の混雑状態をレーンごとに検出し、混雑評価値を算出する。混雑評価値は、レーン上の所定のエリア内において、他車両の混み具合を値で表したものである。例えば、混雑評価値は、所定距離のレーンあたりの他車両の数で表される。また、他車両が止まっている場合、又は、他車両が低速で走行している場合には、混雑評価値は、渋滞している状態であり、混雑度合いが高い状態を示すことになる。制御装置110は、先行車の前方で、先行車から通過必須点までの範囲で混雑状態を推定し、混雑状態に基づいて混雑評価値(M)を算出する。例えば、混雑評価値は、3段階評価を行い、混雑度合いが高の場合、2点、中の場合、1点、低の場合、0点というように設定できる。
【0043】
自車両の先方に複数のレーンがある場合には、制御装置110は、レーンごとに混雑評価値を算出する。
図3に示すように、制御装置110は、先行車両の前方で走行レーン上に、領域Aを設定する。領域Aは、先行車の位置から通過必須点までで、走行レーン上に設定される。制御装置110は、道路状態から、領域A内の他車両の位置及び他車両の車速を特定する。そして、制御装置110は、他車両の数に基づき、混雑評価値(M
1)を算出する。他車両の数が多いほど、混雑評価値(M
1)は大きくなる。なお、制御装置110は、他車両の数に加えて他車両の車速を用いて、混雑評価値(M
1)を算出してもよい。他車両の車速が低いほど、混雑評価値(M
1)は大きくなる。
【0044】
また、走行レーンに隣接する隣接レーンがある場合には、制御装置110は、隣接レーン上の混雑評価値を算出する。
図4に示すように、制御装置110は、先行車両の前方で隣接レーン上に、領域Bを設定する。領域Bは、先行車の位置から通過必須点までで、隣接レーン上に設定される。制御装置110は、道路状態から、領域B内の他車両を特定する。そして、制御装置110は、他車両の数に基づき、混雑評価値(M
2)を算出する。制御装置110は、複数の混雑評価値(M
1、M
2)を算出する場合には、例えば複数の混雑評価値(M
1、M
2)のうち最も大きい混雑評価値、又は、複数の混雑評価値(M
1、M
2)の平均値を、全体の混雑評価値(M)とする。
【0045】
ここで、混雑評価値(M)について説明する。混雑評価値(M)は、他車両の混雑状態をパラメータとした上で、自車両が先行車を追い越した後、隣接レーンから走行レーンに戻ることができる可能性を表している。例えば、混雑評価値(M1)が大きい場合には、他車両が走行レーン上で渋滞しているため、自車両が先行車を追い越した後、隣接レーンから走行レーンに移動することが難しい。また、混雑評価値(M2)が大きい場合には、自車両が走行レーンから隣接レーンに移動し先行車を追い越したとしても、その先の隣接レーンでは他車両が渋滞しているため、自車両は減速をする可能性がある。そして、自車両が減速した場合には、追い越した先行車との間で相対速度が小さくなるため、自車両は先行車の前に移動することが難しくなる。そして、先行車を追い越すために、自車両が走行レーンから隣接レーンに移動した後、自車両が隣接レーンに戻れないような事態が発生した場合には、走行ルートが変更される可能性がある。そして、走行ルートが変更された場合には、走行時間が長くなる、又は、エネルギ消費量が多くなる可能性もある。本実施形態では、このような事態を防ぐために、先行車より前方における他車両の混雑状態を検出し、混雑状態に基づき先行車両を追い越すか否か判定している。
【0046】
なお、本実施形態では、検出装置220で検出された検出情報に基づき、混雑評価値(M)を算出したが、例えば外部から取得可能な道路交通情報に基づき、混雑評価値(M)を算出してもよい。道路交通情報は、車両を管理するサーバとの通信、又は、路車間通信により取得すればよい。
【0047】
ステップS10にて、制御装置110は、下記式(1)を用いて、追い越しを行うべきか否かを判定するための指標として第2評価値(J)を算出する。
【数1】
【0048】
第1評価値(R)と異なる点は、第2評価値(J)では、先行車を追い越すことで得られる走行時間の短縮幅と、先行車を追い越した後、隣接レーンから走行レーンに戻ることができる可能性と、混雑評価値(M)を、追い越しを行うべきか否かの判定要素に加えている。式(1)で表されるように、制御装置110は、走行時間の短縮幅(W)から第1評価値(R)及び混雑評価値(M)を差し引くことで第2評価値(J)を算出する。制御装置110は、通過必須点毎に第2評価値(J)を算出する。なお、制御装置110は、第2評価値(J)を算出する際には走行時間の短縮幅(W)を無次元化して短縮幅(W)を第1評価値(R)及び混雑評価値(M)に合わせる。例えば、短縮幅は、3段階評価を行い、短縮幅が小の場合、0点、中の場合、1点、大の場合、2点というように設定できる。
【0049】
ステップS11において、制御装置110は、式(1)を用いて算出された第2評価値(J)が正の値であるか否かを判定する。第2評価値(J)が正の値である場合には、ステップS12にて、制御装置110は先行車を追い越すと判定し、追い越し制御を実行する。一方、第2評価値(J)がゼロ以下の場合には、ステップS13にて、制御装置110は、先行車を追い越さないと判定し、追い越し制御を実行しない。すなわち、本実施形態の走行支援方法では、実際の追い越し制御を実行する前に、言い換えると、追い越しのために走行レーンから隣接レーンに移動する前に、先行車を追い越すか否か判定している。
【0050】
例えば、自車両が先行車を追い越す際に、先行車の前方に十分なスペースがある場合には、第1評価値(R)は小さくなる。このような場合に、通過必須点付近の走行レーンで渋滞が発生しているときには、混雑評価値(M)が大きくなる。そして、式(1)の判定式がゼロ以下になる場合には、制御装置110は、先行車を追い越さないと判定する。すなわち、走行時間の短縮幅(W)から第1評価値(R)を差し引いた値は正の値になる場合でも、大きな値の混雑評価値(M)をさらに差し引くことで、最終的な第2評価値(J)はゼロ以下になる。例えば、上記のように、3段階評価を行ったとすると、第1評価値(R)として、到着時間が短の場合、0点を与えられ、混雑評価値(M)は、渋滞が発生しているため、混雑度が項で、2点が与えられる。このとき、短縮幅が大の場合、短縮幅(W)が2点与えられても、式(1)の判定式は、ゼロ以下となる。これにより、先行車を追い越すために、自車両が走行レーンから隣接レーンに移動した後、隣接レーンに戻れなくなるような事態を回避できる。
【0051】
また、例えば、自車両が先行車を追い越す際に、自車両から通過必須点までの走行距離が長い場合には、走行時間の短縮幅(W)は大きくなる。このような場合に、通過必須点付近の走行レーンで渋滞が発生しているときには、混雑評価値(M)が大きくなる。そして、式(1)の判定式がゼロ以下になる場合には、制御装置110は、先行車を追い越さないと判定する。すなわち、走行時間の短縮幅(W)が長くても、渋滞により隣接レーンから走行レーンに戻れない可能性が高い場合には、先行車を追い越さないと判定する。これにより、先行車を追い越すために、自車両が走行レーンから隣接レーンに移動した後、隣接レーンに戻れなくなるような事態を回避できる。
【0052】
また例えば、自車両が先行車を追い越す際に、自車両から通過必須点までの走行距離が短い場合には、走行時間の短縮幅(W)は小さくなる。このような場合に、先行車の先の走行レーン上で渋滞が発生していないときには、混雑評価値(M)が小さくなる。そして、第1評価値(R)が十分に小さく、走行時間の短縮幅(W)に対して、混雑評価値(M)がより小さい値であれば、式(1)の判定式の値が正の値となり、制御装置110は先行車を追い越すと判定する。すなわち、走行レーンが渋滞しておらず、自車両が隣接レーンから走行レーンに戻ることができる可能性が高い場合には、走行時間の短縮幅(W)が短いときでも、制御装置110は先行車を追い越すと判定する。これにより、1回の追い越しあたりでみると、走行時間の短縮幅は短いが、目的地までの走行ルート全体で見た時には、このような追い越しを複数回行うことで、走行時間を短くすることができる。
【0053】
制御装置110は、以下の手順により追い越し制御を実行する、制御装置110は、自車両の進行方向に対して右側に位置する隣接レーン上の道路状態に基づき、隣接レーン上で自車両の前後の領域において、他車両の有無を判定する。制御装置110は、隣接レーン上で自車両の前後の領域において、他車両がいない場合には、車線変更可と判定する。制御装置110は、車両コントローラ280に対して、車線変更を行うための制御指令を出力する。自車両は、走行レーンから隣接レーンに移動する。制御装置100は、先行車を追い越した後、又は、先行車の追い越し中に、自車両の進行方向に対して左側に位置する走行レーン(追い越しを行う前の元の走行レーンに相当)上の道路状態に基づき、走行レーン上で先行車より前の領域において、他車両の有無を判定する。そして、制御装置110は、走行レーン上で先行車より前の領域において、他車両がいない場合には車線変更可と判定する。制御装置110は、車両コントローラ280に対して、車線変更を行うための制御指令を出力する。自車両は、隣接レーンから走行レーンに移動する。
【0054】
ステップS14にて、制御装置110は、車両の現在位置に基づき、自車両が目的地に到着したか否か判定する。自車両が目的地に到着した場合には、
図2に示す制御フローは終了する。自車両が目的地に到着していない場合には、制御装置110は、ステップS1に戻り、
図2に示す制御フローを実行する。
【0055】
本発明の実施形態の走行支援装置100は以上のように構成され動作し、走行支援装置100及び車載装置200において実行される走行支援方法は、以上のように実行されるので、以下の効果を奏する。
【0056】
上記のように本実施形態の走行支援方法は、自車両に搭載されたセンサの検出情報に基づいて、自車両が走行する走行レーンを設定し、センサの検出情報に基づいて、走行レーン上で自車両の前方を走行する先行車を特定し、先行車より前方における、他車両の混雑状態を検出し、混雑状態に基づき先行車を追い越すか否かを判定する。これにより、追い越しを実行した後に、自車両が隣接レーンから走行レーンに戻れなくなるような事態を回避できる。その結果として、先行車を追い越すか否かを適切に判断できる。
【0057】
また本実施形態の走行支援方法は、自車両に搭載されたセンサの検出情報に基づいて第1評価値(R)を算出し、レーン上の混雑状態及び第1評価値(R)に基づき、先行車を追い越すか否かを判定する。これにより、渋滞により隣接レーンから走行レーンに戻れない可能性が高いときには、先行車を追い越さないと判定できる。その結果として、追い越しを実行した後に、自車両が隣接レーンから走行レーンに戻れなくなるような事態を回避できる。
【0058】
また本実施形態の走行支援方法は、自車両の車速及び走行車の車速に基づき走行時間の短縮幅(W0)を算出し、走行レーン上の混雑状態及び短縮幅(W0)に基づき、前記先行車を追い越すか否かを判定する。これにより、走行時間の短縮幅(W)が長くても、渋滞により隣接レーンから走行レーンに戻れない可能性が高い場合には、先行車を追い越さないと判定する。その結果として、追い越しを実行した後に、自車両が隣接レーンから走行レーンに戻れなくなるような事態を回避できる。
【0059】
また本実施形態の走行支援方法は、混雑状態を示す評価値(「混雑評価値」に相当する)を含む算出式により追い越しを実行すべきか否かを表す第2評価値(J)を算出し、第2評価値(J)が所定の評価閾値以上である場合には、先行車の追い越しを実行する。これにより、あらかじめ定めた関数により追い越しを行うか否かの判定値を算出し、その評価値に基づき追い越しを実行するか否か判定するようになるため、一貫した判断基準により、追い越しの要否を判定できる。その結果として、安定した判断基準に基づいた走行を乗員に提供することができるようになり、乗員に与える違和感を抑制できる。なお、式(1)に示す第2評価値(J)の演算式は、少なくとも混雑評価値を含んでいればよい。
【0060】
また本実施形態の走行支援方法は、走行レーンに隣接する隣接レーン上で先行車より前方における、他車両の混雑状態を検出し、混雑状態に基づき先行車を追い越すか否かを判定する。これにより、追い越しを実行した後に、自車両が隣接レーンから走行レーンに戻れなくなるような事態を回避できる。その結果として、先行車を追い越すか否かを適切に判断できる。
【0061】
また本実施形態の変形例に係る走行支援方法は、混雑評価値(M)を算出する際に、以下の要素により、混雑評価値(M)を補正してもよい。
【0062】
一例として、制御装置110は、通過必須点の近傍における渋滞情報を取得し、渋滞情報に基づき、通過必須点の近傍で渋滞が発生していることを検出した場合には、通過必須点の近傍で渋滞が発生していない時の混雑評価値(M)よりも混雑評価値(M)が大きくなるように、補正してもよい。
図5は、自車両が先行車を追い越すシーンを説明するための図である。
図5に示すように、制御装置110は、通過点付近の近傍に領域Cを設定する。制御装置110は、道路状態及び/又は道路交通情報を渋滞情報として取得し、渋滞情報から領域C内の混雑状態を検出する。そして、制御装置110は、領域C内で渋滞が発生していることを検出した場合には混雑評価値(M)をより大きくする。これにより、自車両が隣接レーンから走行レーンに戻れなくなるような事態を回避できる。
【0063】
また他の例として、制御装置110は、車両が走行するレーン上で、先行車よりの前方の領域における渋滞情報を取得し、渋滞情報に基づき、当該領域内で渋滞が発生していることを検出した場合には、当該領域内で渋滞が発生していない場合の混雑評価値(M)よりも、混雑評価値(M)が大きくなるように、補正してもよい。
図5に示すように、制御装置110は、走行レーン上に領域Dを設定する。制御装置110は、道路状態及び/又は道路交通情報を渋滞情報として取得し、渋滞情報から領域D内の混雑状態を検出する。そして、制御装置110は、領域D内で渋滞が発生していることを検出した場合には、混雑評価値(M)をより大きくする。これにより、自車両が隣接レーンから走行レーンに戻れなくなるような事態を回避できる。なお、領域Dは必ずしも自車両が走行する走行レーン上に限らず、隣接レーン、又は、走行レーン及び隣接レーンとは異なる他のレーン上に設定されてもよい。例えば、走行レーン及び隣接レーンとは異なる他のレーンが混雑している場合には、走行レーン又は隣接レーンも混雑している可能性が高い。すなわち、車線レベルで渋滞状態を検出することで、混雑評価値(M)の算出精度を高めることができる。
【0064】
また他の例として、制御装置110は、通過必須点から所定距離先までの範囲内に、サグがあるか否か検出し、サグがある場合には、サグがない場合の混雑評価値(M)よりも、混雑評価値(M)が大きくなるように、混雑評価値(M)を補正してもよい。
図6は、自車両が先行車を追い越すシーンを説明するための図である。
図6に示すように、目的地までの走行ルートは、交差点に向かって、西から東の方向に走行し、通過必須点を含む交差点で東から北方向に左折するルートである。制御装置110は、走行ルート上で、通過必須点から所定距離離れた位置に、領域Eを設定する。制御装置110は、道路状態及び/又は地図情報を取得し、取得された情報から領域E内にサグがあるか否か判定する。そして、制御装置110は、領域E内でサグがある場合には、混雑評価値(M)をより大きくする。これにより、サグの手前では渋滞が予想されるので、混雑評価値(M)の算出精度を高めることができる。
【0065】
また他の例として、制御装置110は、自車両の現在位置から通過必須点までの範囲内に、サグがあるか否か検出し、サグがある場合には、サグがない場合の混雑評価値(M)よりも、混雑評価値(M)が大きくなるように、混雑評価値(M)を補正してもよい。
図6に示すように、制御装置110は、自車両の現在位置から通過必須点までの間で領域Fを設定する。制御装置110は、道路状態及び/又は地図情報を取得し、取得された情報から領域F内にサグがあるか否か判定する。そして、制御装置110は、領域F内でサグがある場合には、混雑評価値(M)をより大きくする。これにより、サグの手前では渋滞が予想されるので、混雑評価値(M)の算出精度を高めることができる。
【0066】
また他の例として、制御装置110は、地図情報に基づき、自車両の現在位置から通過必須点までに存在する、走行レーンに接続される流入車線の数を特定し、流入車線の数が多いほど、混雑評価値(M)が大きくなるように、混雑評価値(M)を補正してもよい。
図7は、自車両が先行車を追い越すシーンを説明するための図である。
図7の例では、2本の流入車線が走行レーンに接続されている。流入車線が多い場合には、流入車線から走行レーンに流れ込む車両数が多くなり、走行レーンでは、渋滞の発生が高くなる。そのため、流入車線の数に応じて、混雑評価値(M)を補正することで、混雑評価値(M)の算出精度を高めることができる。
【0067】
また他の例として、制御装置110は、地図情報に基づき、自車両の現在位置から通過必須点までに存在する交差点の数を特定し、交差点の数が多いほど、混雑評価値(M)が小さくなるように、混雑評価値(M)を補正してもよい。交差点の数が多い場合には、走行レーンから流出する車両数が多くなり、走行レーンでは、渋滞の発生確率が低くなる。そのため、交差点の数に応じて、混雑評価値(M)を補正することで、混雑評価値(M)の算出精度を高めることができる。
【0068】
また他の例として、制御装置110は、地図情報に基づき、交差点においてレーンの通行方向が自車両の進行方向と同一とするレーンの数を特定し、レーンの数が多いほど、前記混雑状態を示す評価値が小さくなるように、混雑評価値(M)を補正してもよい。例えば、交差点の付近で、右折専用車線及び/又は左折専用車線が設けられている場合には、自車両の進行方向と通行方向を同一とする車線数が増加する。このような場合には、走行レーンから流出する車両数が多くなり、走行レーンでは、渋滞の発生確率が低くなる。そのため、レーン数に応じて、混雑評価値(M)を補正することで、混雑評価値(M)の算出精度を高めることができる。
【0069】
また本実施形態の他の変形例に係る走行支援方法は、先行車と自車両との速度差が所定の速度閾値以下である場合には、混雑状態に基づいた、先行車を追い越すか否かの判定結果にかかわらず、先行車の追い越し制御を実行してもよい。すなわち、先行車の車速が極端に小さい場合には、当該先行車に追従すると、走行時間が極端に長くなる。変形例に係る走行支援方法は、先行車の車速が自車両の車速に対して極端に低い場合には追い越し制御を実行するため、乗員に与える違和感を抑制できる。
【0070】
本実施形態の走行支援装置100は、上述した走行支援方法と同様の作用及び効果を奏する。
【0071】
《第2実施形態》
本発明の他の実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置を説明する。本例では上述した第1実施形態に対して、走行支援装置の制御フローの一部が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、その記載を援用する。本実施形態では、本発明に係る車両の走行を支援する走行支援装置を備える運転制御システムに適用した場合を例にして説明する。
【0072】
図8及び
図9を参照しつつ、走行支援装置100の制御フローを説明する。
図2は、走行支援装置100の制御フローを示すフローチャートである。
図8は、自車両が先行車を追い越すシーンを説明するための図である。
図9は、目的地に到着するために設定される走行ルートを説明するための図ある。なお
図9の紙面上で、上向きを北とする。
【0073】
ステップS21からステップS26までの制御フローは、第1実施形態におけるステップS1からステップS6までの制御フローと同様である。
【0074】
ステップS27にて、制御装置110はナビゲーション装置230を用いて、地図情報241に基づき第2走行ルートを算出する。第1ルートは、
図8に示す制御フローを実行する前に演算された、目的地までの走行ルートである。第2走行ルートは、第1走行ルートと異なるルートであって、自車両が先行車を追い越した後、所定の目標地点までに隣接レーンから走行レーンに戻れない場合に、目的地に到着するまでの走行経路である。また制御装置110は、第2走行ルートを算出する際に第2走行ルート上に必須通過点を設定する。
【0075】
図9を参照して、第1走行ルートと第2走行ルートの関係について説明する。現在、自車両は、第1通過必須点を含む交差点に向かって、西から東の方向に走行している。第1ルートは、第1通過必須点を含む交差点で東から北方向に左折するルートである。自車両が先行車を追い越した後、第1通過必須点までに隣接レートから走行レートに戻れない場合には、自車両は第1通過必須点を含む交差点を直進に進む。そして、
図4に示すように、目的地に到着するためには、第1通過必須点を含む交差点を直進した後、次の交差点で左折する必要がある。そのため、制御装置110は、第1通過必須点を含む交差点を直進に進むルートであって、第2通過必須点を含む交差点で東から北方向に左折するルートを、第2走行ルートを算出する。また、制御装置110は、第1通過必須点を含む交差点を直進した後の交差点に、第2通過必須点を設定する。
【0076】
例えば、
図9の例で、通過必須点が交差点に設定されており、第1走行ルートは交差点で左折するルートである。通過必須点は、自車両目的地までの走行ルートを追従して走行するために、通過が必須となる点である。通過必須点が交差点に設定された場合に、第2走行ルートは、通過必須点を含む交差点において、第1走行ルートと異なる方向に進行するルートとなる。
【0077】
ステップS28からステップS30までの制御フローは、第1実施形態におけるステップS7からステップS9までの制御フローと同様である。
【0078】
ステップS31にて、制御装置110は、ルート変更による時間差(T)を算出する。時間差は、第1走行ルートから第2走行ルートに変更することで増加する時間差である。制御装置110は、第2走行ルートの走行時間から第1走行ルートの走行時間を差し引くことで時間差(T)を算出する。第1走行ルートの走行時間及び第2走行ルートの走行時間は、ナビゲーション装置230の算出結果を用いればよい。
【0079】
ステップS32にて、制御装置110は、下記式(2)を用いて、追い越しを行うべきか否かを判定するための指標として第2評価値(J
0)を算出する。
【数2】
【0080】
第1評価値(R)と異なる点は、第2評価値(J0)では、先行車を追い越すことで得られる走行時間の短縮幅と、先行車を追い越した後、隣接レーンから走行レーンに戻ることができる可能性、及び混雑評価値(M0)を、追い越しを行うべきか否かの判定要素に加えている。混雑評価値(M0)は第1通過必須点までの混雑状態を表している。式(3)で表されるように、制御装置110は、走行時間の短縮幅(W0)から第1評価値(R0)及び混雑評価値(M0)を差し引くことで第2評価値(J0)を算出する。制御装置110は、通過必須点毎に第2評価値(J0)を算出する。なお、制御装置110は、第2評価値(J0)を算出する際には走行時間の短縮幅(W0)を無次元化して短縮幅(W0)を第1評価値(R0)に合わせる。例えば、短縮幅は、3段階評価を行い、短縮幅が小の場合、0点、中の場合、1点、大の場合(第2所定値以上の場合)、2点というように設定できる。
【0081】
また、制御装置110は、1つの通過必須点に対して第2走行ルートが設定されている場合には、自車両が第2走行ルートを走行したときの第2評価値(J
1)を下記式(3)を用いて算出する。
【数3】
【0082】
第2評価値(J1)では、先行車を追い越すことで得られる走行時間の短縮幅(W1)と、先行車を追い越した後、隣接レーンから走行レーンに戻ることができる可能性(R1)と、混雑評価値(M1)と、走行ルートの変更による時間差(T)を追い越しを行うべきか否かの判定要素に加えている。混雑評価値(M1)は第2通過必須点までの混雑状態を表している。式(3)で表されるように、制御装置110は、走行時間の短縮幅(W1)から、第1評価値(R1)、混雑評価値(M1)及びルート変更による時間差(T)を差し引くことで第2評価値(J1)を算出する。なお、制御装置110は、第2評価値(J1)を算出する際には時間差(T)を無次元化して時間差(T)を第1評価値(R1)に合わせる。例えば、時間差は、3段階評価を行い、時間差が小の場合、0点、中の場合、1点、大の場合、2点というように設定できる。
【0083】
ステップS33において、制御装置110は、式(3)を用いて算出された第2評価値(J0)が正の値であるか否かを判定する。第2評価値(J0)が正の値である場合には、ステップS35にて、制御装置110は先行車を追い越すと判定し、追い越し制御を実行する。
【0084】
ステップS33の制御処理において、式(2)を用いて算出された第2評価値(J0)が0以下の場合には、ステップS34にて、制御装置110は、式(3)を用いて算出された第2評価値(J1)が正の値であるか否かを判定する。第2評価値(J1)が正の値である場合には、ステップS35にて、制御装置110は先行車を追い越すと判定し、追い越し制御を実行する。追い越し制御は、第1実施形態と同様である。第2評価値(J1)がゼロ以下の場合には、ステップS36にて、制御装置110は、先行車を追い越さないと判定し、追い越し制御を実行しない。
【0085】
ステップS37にて、制御装置110は、車両の現在位置に基づき、自車両が目的地に到着したか否か判定する。自車両が目的地に到着した場合には、
図8に示す制御フローは終了する。自車両が目的地に到着していない場合には、制御装置110は、ステップS21に戻り、
図8に示す制御フローを実行する。
【0086】
本発明の実施形態の走行支援装置100は以上のように構成され動作し、走行支援装置100及び車載装置200において実行される走行支援方法は、以上のように実行されるので、以下の効果を奏する。
【0087】
本実施形態の走行支援装置は、自車両が第1走行ルートを走行した場合の第1走行時間と、自車両が前記第2走行ルートを走行した場合の第2走行時間とを算出し、第1走行ルートから第2走行ルートに変更した場合の走行時間の時間差(T)に基づいて、先行車を追い越すか否か判定する。すなわち、自車両の走行ルートが第1走行ルートから第2走行ルートに変更する場合に走行時間の時間差が大きい時には、第2評価値(J1)は小さくなるため、追い越しが禁止される方向に、追い越しの判定処理が実行される。一方、自車両の走行ルートが第1走行ルートから第2走行ルートに変更する場合に走行時間の時間差が小さい時には、第2評価値(J1)は大きくなるため、追い越しが実行される方向に、追い越しの判定処理が実行される。これにより、走行ルートに復帰できない場合に、リルートによる時間の増加幅を鑑みて追い越し制御を実行できるため、走行ルートに復帰できない時に必要となる余計な時間を抑制することができる。
【0088】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0089】
100…走行支援装置
110…制御装置
111…プロセッサ
120…記録装置
130…通信装置
200…車載装置
210…通信装置
220…検出装置、センサ
221…カメラ
222…レーダー装置
230…ナビゲーション装置
231…位置検出装置、センサ
232…記録装置
240…記録装置
241…地図情報
242…レーン情報
243…交通規則情報
250…出力装置
251…ディスプレイ
252…スピーカ
260…車両センサ、センサ
261…舵角センサ
262…車速センサ
263…姿勢センサ
270…レーンキープ装置
280…車両コントローラ
290…駆動装置
295…操舵装置