(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】電力増幅装置及び音響装置
(51)【国際特許分類】
H03F 3/217 20060101AFI20220816BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
H03F3/217
H04R3/00 310
(21)【出願番号】P 2018114375
(22)【出願日】2018-06-15
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 豊
【審査官】小林 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-116262(JP,A)
【文献】国際公開第2007/108115(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/119040(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/164787(WO,A1)
【文献】特表2009-507461(JP,A)
【文献】特開2005-176540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00-3/72
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に接続された第1のキャパシタに並列に接続された第1の半導体スイッチ及び第2の半導体スイッチの直列と、
第2のキャパシタに並列に接続された第3の半導体スイッチ及び第4の半導体スイッチの直列と、
前記第2のキャパシタと負荷とに直列接続された第3のキャパシタと、
前記第1の半導体スイッチと前記第2の半導体スイッチとの接続点である第1の接続点と、前記第3の半導体スイッチと前記第4の半導体スイッチとの接続点である第2の接続点との間に接続された第1のインダクタと、
前記第1の接続点と前記第2の接続点との間において、前記第1のインダクタと直列接続された電流検出器と、
入力音声信号
の微分値及び音量信号に基づいて、正の値である第1の閾値以上の正側電流目標値と、負の値である第2の閾値以下の負側電流目標値との中心である中心電流目標値を決定し、前記中心電流目標値に基づいて、前記正側電流目標値及び負側電流目標値を設定し、前記電流検出器により検出された電流値が前記正側電流目標値を超えた場合、前記第1の半導体スイッチ及び前記第4の半導体スイッチをオフし、前記第2の半導体スイッチ及び前記第3の半導体スイッチをオンし、前記電流検出器により検出された電流値が前記
負側電流目標値を下回った場合、前記第1の半導体スイッチ及び前記第4の半導体スイッチをオンし、前記第2の半導体スイッチ及び前記第3の半導体スイッチをオフする制御回路と、
を具備する電力増幅装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記中心電流目標値が正の値である間、前記中心電流目標値の倍の値を前記第1の閾値に加算した値を前記正側電流目標値として設定し、前記中心電流目標値が負の値である間、前記中心電流目標値の倍の値を前記第2の閾値に加算した値を前記負側電流目標値として設定する請求項1に記載の電力増幅装置。
【請求項3】
前記第2のキャパシタの両端に接続され、且つ低周波数で電流を通しやすく高周波数で電流を通しにくい第2のインダクタと第4のキャパシタとが直列に接続された直列回路をさらに具備する請求項1または2に記載の電力増幅装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記第1の半導体スイッチ、前記第2の半導体スイッチ、前記第3の半導体スイッチ、及び前記第4の半導体スイッチをオフからオンにする場合、所定時間遅延させてオンにする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電力増幅装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記入力音声信号が無い状態が一定時間続いた場合、前記第1の半導体スイッチ、前記第2の半導体スイッチ、前記第3の半導体スイッチ、及び前記第4の半導体スイッチを全て停止させる状態と、前記第1の半導体スイッチ、前記第2の半導体スイッチ、前記第3の半導体スイッチ、及び前記第4の半導体スイッチをオンオフ制御する状態とを定期的に繰り返すバーストモード動作を行う請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電力増幅装置。
【請求項6】
音声を出力するスピーカと、
電源に接続された第1のキャパシタに並列に接続された第1の半導体スイッチ及び第2の半導体スイッチと、
第2のキャパシタに並列に接続された第3の半導体スイッチ及び第4の半導体スイッチと、
前記第2のキャパシタと負荷とに直列接続された第3のキャパシタと、
前記第1の半導体スイッチと前記第2の半導体スイッチとの接続点である第1の接続点と、前記第3の半導体スイッチと前記第4の半導体スイッチとの接続点である第2の接続点との間に接続されたインダクタと、
前記第1の接続点と前記第2の接続点との間において、前記インダクタと直列接続された電流検出器と、
入力音声信号
の微分値及び音量信号に基づいて、正の値である第1の閾値以上の正側電流目標値と、負の値である第2の閾値以下の負側電流目標値との中心である中心電流目標値を決定し、前記中心電流目標値に基づいて、前記正側電流目標値及び負側電流目標値を設定し、前記電流検出器により検出された電流値が前記正側電流目標値を超えた場合、前記第1の半導体スイッチ及び前記第4の半導体スイッチをオフし、前記第2の半導体スイッチ及び前記第3の半導体スイッチをオンし、前記電流検出器により検出された電流値が前記
負側電流目標値を下回った場合、前記第1の半導体スイッチ及び前記第4の半導体スイッチをオンし、前記第2の半導体スイッチ及び前記第3の半導体スイッチをオフする制御回路と、
を具備する音響装置。
【請求項7】
電源に接続された第1のキャパシタに並列に接続された第1の半導体スイッチ及び第2の半導体スイッチと、
第2のキャパシタに並列に接続された第3の半導体スイッチ及び第4の半導体スイッチと、
前記第2のキャパシタと負荷とに直列接続された第3のキャパシタと、
前記第1の半導体スイッチと前記第2の半導体スイッチとの接続点である第1の接続点と、前記第3の半導体スイッチと前記第4の半導体スイッチとの接続点である第2の接続点との間に接続された第1のインダクタと、
前記第1の接続点と前記第2の接続点との間において、前記第1のインダクタと直列接続された電流検出器と、
前記第2のキャパシタの両端に接続され、且つ低周波数で電流を通しやすく高周波数で電流を通しにくい第2のインダクタと第4のキャパシタとが直列に接続された直列回路と、
入力音声信号
の微分値及び音量信号に基づいて、正の値である第1の閾値以上の正側電流目標値と、負の値である第2の閾値以下の負側電流目標値との中心である中心電流目標値を決定し、前記中心電流目標値に基づいて、前記正側電流目標値及び負側電流目標値を設定し、前記電流検出器により検出された電流値が前記正側電流目標値を超えた場合、前記第1の半導体スイッチ及び前記第4の半導体スイッチをオフし、前記第2の半導体スイッチ及び前記第3の半導体スイッチをオンし、前記電流検出器により検出された電流値が前記
負側電流目標値を下回った場合、前記第1の半導体スイッチ及び前記第4の半導体スイッチをオンし、前記第2の半導体スイッチ及び前記第3の半導体スイッチをオフする制御回路と、
を具備する電力増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力増幅装置及び音響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力された音声信号(入力音声信号)に基づき、スピーカで出力する為の音声信号(出力音声信号)を生成する電力増幅装置(所謂アンプ)が実用化されている。電力増幅装置は、交流電源を直流電圧に変換する電源と、直流電圧を用いて、入力音声信号である小信号(small signal)を出力音声信号である大信号(large signal)に増幅する増幅器(amplifier)とを有する。
【0003】
一般的なアンプでは、小信号を大信号に増幅する方法として、A級増幅(class A amplification)、及びB級増幅(class B amplification)などが用いられている。
【0004】
A級増幅により信号を増幅するA級増幅器(class A amplifier)は、トランジスタの直流電流増幅率hfeを利用する。即ち、A級増幅器は、小信号をhfe倍することにより、大信号に増幅する。A級増幅器は、ベース電流を調整する回路によって、hfe倍されたコレクタ電流を調整する。増幅率は、コレクタ電流をベース電流により除算した値である。
【0005】
B級増幅により信号を増幅するB級増幅器(class B amplifier)は、正極側の波形を増幅する第1の増幅器と、負極側の波形を増幅する第2の増幅器とを有する。B級増幅器は、入力音声信号が正極であるか負極であるかを判断し、判断結果に基づき第1の増幅器と第2の増幅器とのいずれかを選択し、動作させる。また、B級増幅器と同等の内容をディジタル回路により実現するD級増幅器が用いられている。
【0006】
しかしながら、A級増幅器は、トランジスタのA級動作を用いる為、電力効率が悪いという課題がある。また、B級増幅器及びD級増幅器は、入力音声信号が0V付近(ゼロクロス付近)である場合に、入力音声信号の極性を厳密に判断することができない可能性がある。この為、B級増幅器及びD級増幅器は、第1の増幅器及び第2の増幅器の接続の遅延や偏りが生じ、出力音声信号に歪みが生じる可能性がある。このように、B級増幅器及びD級増幅器は、音質が低下する可能性があるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、高音質であり且つ電力効率の良い電力増幅装置及び音響装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係る電力増幅装置は、電源に接続された第1のキャパシタに並列に接続された第1の半導体スイッチ及び第2の半導体スイッチの直列と、第2のキャパシタに並列に接続された第3の半導体スイッチ及び第4の半導体スイッチの直列と、第2のキャパシタと負荷とに直列接続された第3のキャパシタと、前記第1の半導体スイッチと前記第2の半導体スイッチとの接続点である第1の接続点と、前記第3の半導体スイッチと前記第4の半導体スイッチとの接続点である第2の接続点との間に接続された第1のインダクタと、前記第1の接続点と前記第2の接続点との間において、第1のインダクタと直列接続された電流検出器と、制御回路とを具備する。制御回路は、入力音声信号の微分値及び音量信号に基づいて、正の値である第1の閾値以上の正側電流目標値と、負の値である第2の閾値以下の負側電流目標値との中心である中心電流目標値を決定し、前記中心電流目標値に基づいて、前記正側電流目標値及び負側電流目標値を設定し、前記電流検出器により検出された電流値が前記正側電流目標値を超えた場合、前記第1の半導体スイッチ及び前記第4の半導体スイッチをオフし、前記第2の半導体スイッチ及び前記第3の半導体スイッチをオンし、前記電流検出器により検出された電流値が前記負側電流目標値を下回った場合、前記第1の半導体スイッチ及び前記第4の半導体スイッチをオンし、前記第2の半導体スイッチ及び前記第3の半導体スイッチをオフする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電力増幅装置の構成の例について説明する為の図である。
【
図2】
図2は、制御信号、インダクタを流れる電流、キャパシタの電圧、及び出力音声信号との関係について説明する為の説明図である。
【
図3】
図3は、制御信号、インダクタを流れる電流、キャパシタの電圧、及び出力音声信号との関係について説明する為の説明図である。
【
図4】
図4は、入力音声信号と、インダクタを流れる電流の平均値と、出力音声信号との関係について説明する為の説明図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る電力増幅装置の制御回路の構成例について説明する為の説明図である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る電力増幅装置の制御回路内の信号処理の例について説明する為の説明図である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係る電力増幅装置の制御回路内の信号処理の例について説明する為の説明図である。
【
図8】
図8は、一実施形態に係る電力増幅装置の制御回路内の信号処理の例について説明する為の説明図である。
【
図9】
図9は、一実施形態に係る電力増幅装置の制御回路の各部における信号について説明する為のタイミングチャートである。
【
図10】
図10は、一実施形態に係る電力増幅装置の制御回路の各部における信号について説明する為のタイミングチャートである。
【
図11】
図11は、無音状態においてインダクタを流れる電流について説明する為の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る電力増幅装置1の構成例を示す説明図である。
電力増幅装置1は、入力された音声信号(入力音声信号)に基づき、スピーカ2で出力する為の音声信号(出力音声信号)を生成する装置である。電力増幅装置1は、音声を出力するスピーカ2が接続されることにより、音響装置3が構成される。
【0012】
電力増幅装置1は、電源入力端子11、音声信号入力端子12、音声信号出力端子14、音量信号入力端子13、双方向電力変換回路15、電流検出器16、電圧検出器17、及び制御回路18を備える。
【0013】
電源入力端子11は、直流電圧源DCに接続される。電源入力端子11には、直流電圧源DCから直流電圧が入力される。
【0014】
音声信号入力端子12は、アナログの音声信号(入力音声信号)を出力する機器に接続されるAUX端子である。音声信号入力端子12には、入力音声信号が入力される。例えば、音声信号入力端子12には、マイク、プリアンプなど、小信号の音声信号を出力する機器が接続される。
【0015】
音量信号入力端子13は、音量信号が入力されるVolume端子である。音量信号は、音声信号入力端子12に入力された入力音声信号を増幅させる為の信号である。
【0016】
音声信号出力端子14は、スピーカ2に接続されるVout端子である。音声信号出力端子14は、入力音声信号に応じて電力増幅装置1により生成されたアナログの音声信号(出力音声信号)を出力し、スピーカ2に供給する。
【0017】
双方向電力変換回路15は、制御回路18の制御に基づいてスイッチングを行うことにより、入力された直流電圧を、任意の電圧の直流に変換する回路である。これに直流カットキャパシタC3を設けることにより、直流成分が排除された交流の音声信号が負荷に出力される。
【0018】
双方向電力変換回路15は、第1の平滑キャパシタC1、第1の半導体スイッチS1、第2の半導体スイッチS2、第3の半導体スイッチS3、第4の半導体スイッチS4、第1のインダクタL1、第2の平滑キャパシタC2、直流カットキャパシタC3、第4の平滑キャパシタC4、及び第2のインダクタL2を備える。
【0019】
第1の平滑キャパシタC1の一対の端子は、それぞれ電源入力端子11の一対の端子に接続される。第1の平滑キャパシタC1は、電源入力端子11から供給された直流電圧を平滑し、後段の回路に供給する。
【0020】
第1の半導体スイッチS1、第2の半導体スイッチS2、第3の半導体スイッチS3、及び第4の半導体スイッチS4は、半波導通スイッチである。第1の半導体スイッチS1、第2の半導体スイッチS2、第3の半導体スイッチS3、及び第4の半導体スイッチS4は、例えばNチャネルMOSFETである。第1の半導体スイッチS1、第2の半導体スイッチS2、第3の半導体スイッチS3、及び第4の半導体スイッチS4は、ドレインからソースへの導通状態を、ゲートの電位によって導通(オン)と遮断(オフ)に切り替える。
【0021】
また、第1の半導体スイッチS1、第2の半導体スイッチS2、第3の半導体スイッチS3、及び第4の半導体スイッチS4は、いずれもソース側からドレイン側の向きのボディダイオードとしても機能する。即ち、第1の半導体スイッチS1、第2の半導体スイッチS2、第3の半導体スイッチS3、及び第4の半導体スイッチS4は、ゲートの電位に関わらずソースからドレインに電流が流れるダイオードとして機能する。
【0022】
なお、第1の半導体スイッチS1、第2の半導体スイッチS2、第3の半導体スイッチS3、及び第4の半導体スイッチS4は、それぞれPチャネルMOSFETであってもよい。また、第1の半導体スイッチS1、第2の半導体スイッチS2、第3の半導体スイッチS3、及び第4の半導体スイッチS4は、それぞれIGBT、SiC、GaN-HEMTなどの半導体スイッチであってもよい。また、第1の半導体スイッチS1、第2の半導体スイッチS2、第3の半導体スイッチS3、及び第4の半導体スイッチS4は、複数の半導体スイッチが1つのパッケージに納められたインテリジェントパワーモジュールであってもよい。
【0023】
第1の半導体スイッチS1のドレイン端子は、第1の平滑キャパシタC1の正極側の端子に接続されている。第1の半導体スイッチS1のソース端子は、第2の半導体スイッチS2のドレイン端子に接続されている。第2の半導体スイッチS2のソース端子は、第1の平滑キャパシタC1の負極側の端子に接続されている。即ち、第1の半導体スイッチS1と第2の半導体スイッチS2との直列(直列接続)は、第1の平滑キャパシタC1に並列接続されている。
【0024】
第3の半導体スイッチS3のドレイン端子は、第2の平滑キャパシタC2の正極側の端子に接続されている。第3の半導体スイッチS3のソース端子は、第4の半導体スイッチS4のドレイン端子に接続されている。第4の半導体スイッチS4のソース端子は、第2の平滑キャパシタC2の負極側の端子に接続されている。即ち、第3の半導体スイッチS3と第4の半導体スイッチS4との直列(直列接続)は、第2の平滑キャパシタC2に並列接続されている。
【0025】
第1の半導体スイッチS1と第2の半導体スイッチS2との接続点を第1の接続点M1と称し、第3の半導体スイッチS3と第4の半導体スイッチS4との接続点を第2の接続点M2と称する。第1のインダクタL1及び電流検出器16は、第1の接続点M1と第2の接続点M2との間に直列接続されている。
【0026】
第4の平滑キャパシタC4は、第2のインダクタL2と直列に接続され、直列回路SC1を構成している。第4の平滑キャパシタC4の負極側の端子は、第2の平滑キャパシタC2の負極側の端子に接続されている。第4の平滑キャパシタC4の正極側の端子は、第2のインダクタL2の一方の端子に接続されている。第2のインダクタL2の他方の端子は、第2の平滑キャパシタC2の正極側の端子に接続されている。即ち、直列回路SC1は、第2の平滑キャパシタC2と並列に接続されている。
【0027】
第2のインダクタL2は、低周波では電流を通しやすく高周波では電流を通しにくい特性を有する。第2のインダクタL2のインダクタンスをL、第2のインダクタL2に流れる電流IL2の周波数をfとした場合、第2のインダクタL2に流れる電流IL2は、IL2=V/(2πfL)となる。例えば、第2のインダクタL2に流れる電流IL2の周波数が100Hzである時の電流IL2を1とすると、1kHzの時は0.1、10kHzの時は0.01となる。
【0028】
第4の平滑キャパシタC4と第2のインダクタL2とからなる直列回路SC1は、第2の平滑キャパシタC2と並列に接続されることにより、電荷を蓄えるタンク回路TC1を構成する。タンク回路TC1の容量は、第2の平滑キャパシタC2と第4の平滑キャパシタC4との和の容量である。第1の平滑キャパシタC1の容量を双方向電力変換回路15の入力側容量とすると、双方向電力変換回路15の出力側容量は、第2の平滑キャパシタC2と直列回路SC1とからなるタンク回路TC1の合成容量となる。すなわち、第2の平滑キャパシタC2及び直列回路SC1は、出力電圧を保持する電圧源として機能する。
【0029】
第4の平滑キャパシタC4に第2のインダクタL2が直列接続されている。この為、直列回路SC1は、周波数依存性がある。すなわち、タンク回路TC1の容量は、電流の周波数によって変動する。タンク回路TC1の容量は、電流の周波数が高くなる程、第2の平滑キャパシタC2の容量に近づく。また、タンク回路TC1の容量は、電流の周波数が低くなる程、第2の平滑キャパシタC2の容量と第4の平滑キャパシタC4との和に近づく。例えば、周波数が十分に低い場合、タンク回路TC1の容量は、第2の平滑キャパシタC2の容量と第4の平滑キャパシタC4との合成容量になる。また、周波数が十分に高い場合、タンク回路TC1の容量は、第2の平滑キャパシタC2の容量になる。また、周波数が十分に低い場合と十分に高い場合との間では、タンク回路TC1の容量は、第2の平滑キャパシタC2の容量に、直列回路SC1の周波数に応じた容量が加算される。なお、周波数が十分に高い状態とは、第2のインダクタL2にほとんど電流が流れない状態を示す。また、周波数が十分に低い状態とは、第2のインダクタL2により電流が減少しない状態を示す。
【0030】
タンク回路TC1の第2の平滑キャパシタC2及び直列回路SC1の正極側の端子は、直流カットキャパシタC3の一方の端子に接続されている。直流カットキャパシタC3の他方の端子は、音声信号出力端子14の一方に接続されている。また、第2の平滑キャパシタC2及び直列回路SC1の負極側の端子は、音声信号出力端子14の他方に接続されている。音声信号出力端子14に負荷としてのスピーカ2が接続された場合、直流カットキャパシタC3は、タンク回路TC1と、負荷とに直列接続される。直流カットキャパシタC3は、タンク回路TC1の電位が、ゼロを中心とした交流となるように電圧を変換し、負荷に出力する。すなわち、直流カットキャパシタC3は、タンク回路TC1の直流成分のみをカットし、ゼロを中心とした交流電圧に変換し、負荷に供給する。
【0031】
電流検出器16は、第1の接続点M1と第2の接続点M2との間を流れる電流を検出する。電流検出器16は、例えば第1の接続点M1と第2の接続点M2との間に、第1のインダクタL1と直列接続される。電流検出器16は、検出結果である電流信号IS1を制御回路18に供給する。
【0032】
電圧検出器17は、第2の平滑キャパシタC2の両端士間の電圧を検出する。電圧検出器17は、第2の平滑キャパシタC2の両端士の間に接続される。電圧検出器17は、検出結果である電圧信号VS1を制御回路18に供給する。
【0033】
制御回路18は、双方向電力変換回路15の第1の半導体スイッチS1、第2の半導体スイッチS2、第3の半導体スイッチS3、及び第4の半導体スイッチS4のオンオフを制御する。制御回路18は、音声信号入力端子12に入力される入力音声信号AUX、音量信号入力端子13に入力される音量信号Volume、電流検出器16から供給される電流信号IS1、及び電圧検出器17から供給される電圧信号VS1に基づいて、第1の半導体スイッチS1を制御する制御信号P1、第2の半導体スイッチS2を制御する制御信号P2、第3の半導体スイッチS3を制御する制御信号P3、及び第4の半導体スイッチS4を制御する制御信号P4をそれぞれ生成する。制御回路18は、制御信号P1を第1の半導体スイッチS1に入力し、制御信号P2を第2の半導体スイッチS2に入力し、制御信号P3を第3の半導体スイッチS3に入力し、制御信号P4を第4の半導体スイッチS4に入力する。これにより、制御回路18は、入力音声信号AUXを音量信号Volumeに応じた強度の出力音声信号Voutに変換するように、双方向電力変換回路15を制御する。
【0034】
次に、制御回路18の動作について説明する。
まず、タンク回路TC1の電位を増減させる場合の制御回路18の動作について説明する。なお、本例では、第1のインダクタL1を流れる電流を電流IL1とし、第2の平滑キャパシタC2の両端子間の電圧を電圧VC2として説明する。また、電流IL1の値は、電流検出器16から供給される電流信号IS1により示され、電圧VC2の値は、電圧検出器17から供給される電圧信号VS1により示されるものとして説明する。
【0035】
図2及び
図3は、電圧VC2を増加させる場合の制御信号P1乃至P4と、第1のインダクタL1を流れる電流IL1の値と、電圧VC2の値と、出力音声信号Voutとの関係について説明する為の説明図である。
図2及び
図3の横軸は、時間を示す。縦軸は、上から順に制御信号P1及びP4、制御信号P2及びP3、第1のインダクタL1を流れる電流IL1の値、電圧VC2の値、出力音声信号Voutの値をそれぞれ示す。
【0036】
図2は、電圧VC2を増加させる場合の制御信号P1及びP4、制御信号P2及びP3、電流IL1、電圧VC2、及び出力音声信号Voutについて説明する為の説明図である。また、
図3は、電圧VC2を減少させる場合の制御信号P1及びP4、制御信号P2及びP3、電流IL1、電圧VC2、及び出力音声信号Voutについて説明する為の説明図である。
【0037】
図2では、制御回路18は、タイミングt1からタイミングt2までの間、制御信号P1及びP4をオン状態(即ち第1の半導体スイッチS1及び第4の半導体スイッチS4をオン)にし、制御信号P2及びP3をオフ状態(即ち第2の半導体スイッチS2及び第3の半導体スイッチS3をオフ)にする。
【0038】
この場合、第1の平滑キャパシタC1の電位によって、第1の平滑キャパシタC1の高圧側の端子、第1の半導体スイッチS1、第1のインダクタL1、電流検出器16、第4の半導体スイッチS4、第1の平滑キャパシタC1の低圧側の端子の順の経路で形成された閉ループに電流IL1が流れる。この閉ループを流れる電流IL1は、第1のインダクタL1の電磁気的作用の為、タイミングt1からタイミングt2までの間に徐々に増加する。即ち、この閉ループに電流IL1が流れることによって、電気的エネルギーが第1のインダクタL1の磁気エネルギーに変換される。
【0039】
次に、制御回路18は、タイミングt2において、制御信号P1及びP4をオフ状態にする。これにより、タイミングt2からタイミングt3までの間、第1の半導体スイッチS1、第2の半導体スイッチS2、第3の半導体スイッチS3、及び第4の半導体スイッチS4がオフになる。
【0040】
第1の半導体スイッチS1がオフされると、第1の接続点M1の電位が0以下になる。この為、第2の半導体スイッチS2のドレイン端子は、第2の半導体スイッチS2のソース端子より電位が低い状態になる。この為、第2の半導体スイッチS2は、ソース側からドレイン側の向きのボディダイオードとして機能する。
【0041】
また、第4の半導体スイッチS4がオフされると、第2の接続点M2の電位が電圧VC2よりも高くなる。この為、第3の半導体スイッチS3のドレイン端子は、第3の半導体スイッチS3のソース端子より電位が低い状態になる。この為、第3の半導体スイッチS3は、ソース側からドレイン側の向きのボディダイオードとして機能する。
【0042】
第1のインダクタL1には、電気エネルギーから変換された磁気エネルギーが蓄積されている。第1のインダクタL1に蓄積された磁気エネルギーによって、第1のインダクタL1、第3の半導体スイッチS3、タンク回路TC1、第2の半導体スイッチS2、第1のインダクタL1の順の経路で形成された閉ループに電流IL1が流れる。この閉ループに電流IL1が流れることによって、磁気エネルギーが電気的エネルギーに変換される。この向きの電流IL1は、タンク回路TC1のキャパシタ(第2の平滑キャパシタC2及び第4の平滑キャパシタC4)の電荷を増やし、タンク回路TC1の電圧を上昇させる。即ち、第1のインダクタL1に蓄積された磁気エネルギーが、電気エネルギーに再変換され、タンク回路TC1に蓄積される。
【0043】
なお、電気エネルギーがタンク回路TC1に蓄積されるにつれて、第1のインダクタL1に蓄積された磁気エネルギーが減少する。この結果、タイミングt1からタイミングt2の間で右上がりだった電流IL1は、タイミングt2から右下がりに変化する。
【0044】
次に、制御回路18は、タイミングt3において、制御信号P2及びP3をオン状態にする。これにより、タイミングt3からタイミングt4までの間、第2の半導体スイッチS2及び第3の半導体スイッチS3がオンになる。この場合、動作は変わらない。この場合も、第1のインダクタL1に蓄積された磁気エネルギーによって、第1のインダクタL1、第3の半導体スイッチS3、タンク回路TC1、第2の半導体スイッチS2、第1のインダクタL1の順に電流IL1が流れる。これにより、タンク回路TC1の電圧が増加する。
【0045】
また、第1のインダクタL1に蓄積された磁気エネルギーが減少し、磁気エネルギーが全てタンク回路TC1の電荷エネルギーに変換されると、電流IL1がゼロになる。さらに、タンク回路TC1の電圧が第1のインダクタL1と逆向きに印加されている為、逆向きの電流が流れ始める。すなわち、タンク回路TC1の電荷エネルギーが、再び第1のインダクタL1の磁気エネルギーに変換され始める。即ち、電流IL1がマイナスになり、第1のインダクタL1、第2の半導体スイッチS2、タンク回路TC1、第3の半導体スイッチS3、第1のインダクタL1の順に電流IL1が流れる。
【0046】
次に、制御回路18は、タイミングt4において、制御信号P2及びP3をオフ状態にする。これにより、タイミングt4からタイミングt5までの間、第1の半導体スイッチS1、第2の半導体スイッチS2、第3の半導体スイッチS3、及び第4の半導体スイッチS4がオフになる。
【0047】
この場合、第1の接続点M1の電位は、第1の平滑キャパシタC1の電位以上に上昇する。この為、第1の半導体スイッチS1は、ソース側からドレイン側の向きのボディダイオードとして機能する。また、第2の接続点M2の電位は、GND電圧以下に下がる。この為、第4の半導体スイッチS4は、ソース側からドレイン側の向きのボディダイオードとして機能する。
【0048】
さらに、第1のインダクタL1は、第2の接続点M2から第1の接続点M1の向きに電流IL1を流し続けようとする。この為、第1のインダクタL1、第1の半導体スイッチS1、第1の平滑キャパシタC1、第4の半導体スイッチS4、第1のインダクタL1の順に電流IL1が流れる。
【0049】
次に、制御回路18は、タイミングt5において、再び制御信号P1及びP4をオン状態にする。これにより、タイミングt5からタイミングt6までの間、第1の半導体スイッチS1及び第4の半導体スイッチS4をオンにし、第2の半導体スイッチS2及び第3の半導体スイッチS3をオフにする。
【0050】
この場合、第1のインダクタL1は、第2の接続点M2から第1の接続点M1の向きに電流IL1を流し続けようとする。この為、第1のインダクタL1、第1の半導体スイッチS1、第1の平滑キャパシタC1、第4の半導体スイッチS4、第1のインダクタL1の順に電流IL1が流れる閉ループが維持される。
【0051】
また、第1のインダクタL1に蓄積された磁気エネルギーが減少し、磁気エネルギーが全て第1の平滑キャパシタC1の電荷エネルギーに変換されると、電流IL1がゼロになる。さらに、第1の平滑キャパシタC1の電圧により第1のインダクタL1に第1の接続点M1から第2の接続点M2の向きで電流が流れ始める。すなわち、第1の平滑キャパシタC1の電荷エネルギーが、再び第1のインダクタL1の磁気エネルギーに変換され始める。
【0052】
即ち、電流IL1がプラスになり、第1の平滑キャパシタC1、第1の半導体スイッチS1、第1のインダクタL1、第4の半導体スイッチS4、第1の平滑キャパシタC1の順に電流IL1が流れる。これは、上記のタイミングt1からタイミングt2までの間と同様である。また、これ以降の処理も、上記のタイミングt2からタイミングt4までの間と同様である。
【0053】
制御回路18は、上記のタイミングt1乃至タイミングt4に亘るフェーズを周期的に繰り返すことにより、第1のインダクタL1に流れる高周波三角波電流である電流IL1を生成する。
【0054】
なお、電流IL1の傾きは、第1の平滑キャパシタC1の電圧と、タンク回路TC1の電圧との両方によって決まる。具体的には、第1の半導体スイッチS1及び第4の半導体スイッチS4がオンである場合、電流IL1は増加する。さらに、第1の半導体スイッチS1及び第4の半導体スイッチS4がオンである場合の電流IL1の傾きは、第1の平滑キャパシタC1の電圧に依存する。より具体的には、電流IL1の正の勾配(右上がり)は、第1の平滑キャパシタC1の電圧に依存し、電流IL1の負の勾配(右下がり)は、タンク回路TC1の電圧に依存する。即ち、第1の平滑キャパシタC1の電圧が高ければ、右上がりの勾配が急になり、第1の平滑キャパシタC1の電圧が低ければ、右上がりの勾配が緩くなる。また、タンク回路TC1の電圧が高ければ、右下がりの勾配が急になり、第1の平滑キャパシタC1の電圧が低ければ、右下がりの勾配が緩くなる。
【0055】
制御回路18は、まず第1の半導体スイッチS1及び第4の半導体スイッチS4をオンし、第1のインダクタL1に流れる高周波三角波電流である電流IL1が、
図2に示される正側電流目標値に達した場合、第1の半導体スイッチS1及び第4の半導体スイッチS4をオフする。また、制御回路18は、第2の半導体スイッチS2及び第3の半導体スイッチS3をオンし、第1のインダクタL1に流れる高周波三角波電流である電流IL1が、
図2に示される負側電流目標値に達した場合、第2の半導体スイッチS2及び第3の半導体スイッチS3をオフする。これにより、制御回路18は、正側電流目標値と負側電流目標値とを往復する高周波三角波電流である電流IL1を双方向電力変換回路15に生成させる。
【0056】
制御回路18は、電流IL1が
図2における範囲RIを最低限往復するように正側電流目標値及び負側電流目標値を設定する。範囲RIは、双方向電力変換回路15の仕様によって決まる。例えば、範囲RIは、第1の平滑キャパシタC1、タンク回路TC1、及び第1のインダクタL1のインダクタンスなどによって決まる。範囲RIは、0[A]を中心とした、正の値である第1の閾値から、負の値である第2の閾値までの範囲である。即ち、第1の閾値と第2の閾値との絶対値は同じ値である。第1の閾値は、例えば+m[A]であり、第2の閾値は、-m[A]である。即ち、範囲RIは、-m[A]から+m[A]の範囲である。電流IL1が範囲RIを往復する高周波三角波電流である場合、電流の平均値はゼロとなる。
【0057】
なお、すなわち、電流IL1が往復する振幅が、正側と負側とで同じであれば、電流IL1の平均値は0になる。例えば、電流IL1を+m[A]と-m[A]との間で往復させる、すなわち、最低限往復させる必要がある範囲で、正側と負側とで同じ振幅で電流IL1を往復させることにより、回路に余計な電流を流す必要がなくなる。また、電流IL1を+m[A]と-m[A]との間で往復させるようにすることにより、第1の半導体スイッチS1、第2の半導体スイッチS2、第3の半導体スイッチS3、及び第4の半導体スイッチS4のオンオフによる一連の動作を担保することができる。すなわち電流ピーク値が変化するだけで、回路動作自体は同じ動作の繰り返しを維持できる。
【0058】
例えば、電流IL1の正側のピークが+m[A]を超え、電流IL1の負側のピークが-m[A]程度である場合、電流の平均値が正側になる。この場合、第1の平滑キャパシタC1の電荷は、より多く電流として引き抜かれ、電流IL1がゼロに達するまでの間に、タンク回路TC1にチャージされる。即ち、第1の平滑キャパシタC1の電荷がタンク回路TC1に移動し、第1の平滑キャパシタC1の電圧が減少し、タンク回路TC1の電圧が増加する。なお、第1の平滑キャパシタC1は、電源入力端子11から供給された直流電力により蓄電される。即ち、第1の平滑キャパシタC1は、直流電圧源DCから供給された電力により復活し、直流電圧源DCから供給される一定の電圧に維持される。
【0059】
制御回路18は、正側電流目標値を第1の閾値より大きく設定し、負側電流目標値を第2の閾値程度に設定することにより、電流IL1の平均を正側に振ることができる。この結果、制御回路18は、電圧VC2を増加させることができる。
【0060】
図2の例では、正側電流目標値が第1の閾値より大きく設定されている。この為、電圧VC2が徐々に増加している。電圧VC2は、直流カットキャパシタC3によって直流成分がカットされ、出力音声信号Voutとして音声信号出力端子14から出力される。出力音声信号Voutは、電圧VC2の変化に伴って徐々に増加する。
【0061】
また、
図3でも、制御回路18の動作は、
図2の例と同様である。即ち、
図3のタイミングt11乃至タイミングt16において、制御回路18は、
図2のタイミングt1乃至タイミングt6と同様の処理を行う。
図3の例は、正側電流目標値が電流IL1の第1の閾値程度に設定され、負側電流目標値が電流IL1の第2の閾値よりも低く設定されている点が
図2の例と異なる。
【0062】
図3の例では、電流IL1の平均値が負側になる。この場合、タンク回路TC1の電荷は、充電される量に比べて第1のインダクタL1に引き抜かれる量の方が多くなる。即ち、双方向電力変換の動作(逆動作)により、タンク回路TC1の電荷が第1の平滑キャパシタC1に移動し、第1の平滑キャパシタC1の電圧が増加し、タンク回路TC1の電圧が減少する。
【0063】
上記の様に、制御回路18は、正側電流目標値を第1の閾値程度に設定し、負側電流目標値を第2の閾値よりも低く設定することにより、電流IL1の平均を負側に振ることができる。この結果、制御回路18は、電圧VC2を減少させることができる。
【0064】
図3の例では、負側電流目標値が第2の閾値よりも小さく設定されている。この為、電圧VC2が徐々に減少している。電圧VC2は、直流カットキャパシタC3によって直流成分がカットされ、出力音声信号Voutとして音声信号出力端子14から出力される。出力音声信号Voutは、電圧VC2の変化に伴って徐々に減少する。
【0065】
次に、タンク回路TC1の電位を増減させることにより、出力音声信号Voutを生成する場合の、制御回路18の動作について説明する。
【0066】
制御回路18は、入力音声信号AUXに基づいて、上記のスイッチング動作、及び電流目標値の設定を繰り返し実行することにより、入力音声信号AUXに応じた出力音声信号Voutを双方向電力変換回路15に生成させる。制御回路18は、例えば、100kHz乃至1MHz程度の周波数で、上記のスイッチング動作を行うことにより、入力音声信号AUXに応じた出力音声信号Voutを、双方向電力変換回路15に生成させる。
【0067】
制御回路18は、上記のスイッチング動作によって、電流IL1の平均値を正側に偏極させることにより、電圧VC2を増加させる。また、制御回路18は、上記のスイッチング動作によって、電流IL1の平均値を負側に偏極させることにより、電圧VC2を減少させる。この変動は、直流カットキャパシタC3を介することによって、ゼロ電圧を基準とした電圧変動として現れる。例えば、制御回路18は、電圧VC2を増加させる動作と減少させる動作とを、500Hz周期で切り替えて行うことにより、500Hz周期の電圧変動を発生させる。
【0068】
また、電圧変動の振幅は、出力音声信号Voutにおける音量に相当する。出力音声信号Voutにおける変動は、電流IL1の平均値の絶対値に応じて大きくなる。電流IL1の平均値の絶対値は、範囲RIの上限と正側電流目標値との差、または範囲RIの下限と負側電流目標値との差に応じて決まる。
【0069】
例えば、制御回路18は、大きい入力音声信号AUXが入力された場合、正極側に多くの電流を流すように正側電流目標値及び負側電流目標値を設定する。これにより、第1の平滑キャパシタC1からタンク回路TC1に移動する電荷量が増加する。これにより、電圧VC2が比較的早く増加する。これに伴い、出力音声信号Voutの電圧の増加も早くなる。この結果、同一時間内で比較して、出力音声信号Voutが著しく高くなる。
【0070】
次に、制御回路18は、負極側に多くの電流を流すように、正側電流目標値及び負側電流目標値を設定する。これにより、タンク回路TC1から第1の平滑キャパシタC1に移動する電荷量が増加する。これにより、電圧VC2が比較的早く減少する。これに伴い、出力音声信号Voutの電圧の減少も早くなる。この結果、同一時間内で比較して、出力音声信号Voutが著しく低くなる。制御回路18は、このような処理によって、変動が大きい出力音声信号Voutを生成させる。
【0071】
また、例えば、制御回路18は、入力音声信号AUXが小さくなった場合、電流IL1の平均値の絶対値が減少するように、正側電流目標値及び負側電流目標値を設定する。これにより、第1の平滑キャパシタC1とタンク回路TC1との間で移動する電荷量が減少する。これにより、電圧VC2の変動が減少する。この結果、同一時間内で比較して、出力音声信号Voutの変動が小さくなる。
【0072】
このように、制御回路18は、範囲RIの外側で電流IL1が往復しつつ、且つ電流IL1の平均値が、電流目標値となるように正側電流目標値及び負側電流目標値を設定する。これにより、出力音声信号Voutの変動の振幅を制御することができる。即ち、制御回路18は、正側電流目標値及び負側電流目標値の設定によってを音量を制御することができる。
【0073】
図4は、入力音声信号AUXと、電流IL1の平均値と、出力音声信号Voutとの関係について説明する為の説明図である。ここでは、入力音声信号AUXは、例えば100Hzの音声信号と、800Hzの音声信号が重畳された信号であるとする。
【0074】
例えば、タイミングt21のように、入力音声信号AUXの傾きがゼロである場合、出力音声信号Voutも変化させる必要がない。この為、第1の平滑キャパシタC1とタンク回路TC1との間で電荷を移動させる必要が無い。即ち、電流IL1の平均値はゼロでよい。この場合、制御回路18は、例えば、正側電流目標値を範囲RIの上限に設定し、負側電流目標値を範囲RIの下限に設定する。
【0075】
また、例えば、タイミングt22のように、入力音声信号AUXの傾きが右上がりである場合、出力音声信号Voutの傾きも右上がりにする必要がある。この場合、第1の平滑キャパシタC1からタンク回路TC1に電荷を移動させる必要がある。また、第1の平滑キャパシタC1からタンク回路TC1への電荷の移動量は、入力音声信号AUXの傾きによって決まる。即ち、電流IL1の平均値は、入力音声信号AUXの微分値として表される。微分値の算出方法としては、微小時間前の入力音声信号AUXと、現時刻における入力音声信号AUXとの電圧値を比較する方法がある。具体的には、微分値=(現時刻の入力音声信号AUXの電圧値-微小時間前の入力音声信号AUXの電圧値)/(現時刻-微小時間前の時刻)により算出される。制御回路18は、この微分値に相当する電流が流れるように、正側電流目標値及び負側電流目標値を適宜設定する。
【0076】
また、例えば、タイミングt23のように、入力音声信号AUXの傾きが右下がりである場合、出力音声信号Voutの傾きも右下がりにする。この場合、タンク回路TC1から第1の平滑キャパシタC1に電荷を移動させる必要がある。この場合も、制御回路18は、入力音声信号AUXの傾きの微分値に相当する電流が流れるように、正側電流目標値及び負側電流目標値を適宜設定する。微分値の算出方法としては、上記の方法と同様である。
【0077】
なお、入力音声信号AUXの傾きがゼロである場合も、上記の微分値の算出方法により微分値を算出した結果、微分値がゼロになる。これは、現時刻の入力音声信号AUXの電圧値と微小時間前の入力音声信号AUXの電圧値とが等しい為である。この結果、電流IL1の平均値がゼロになるように制御が働く。
【0078】
以上のように、入力音声信号AUXに複数の周波数の信号が重畳されており、且つ入力音声信号AUXの強弱がある場合であっても、制御回路18は、入力音声信号AUXの微分値に応じた電流IL1が流れるように、正側電流目標値及び負側電流目標値を設定することにより、入力音声信号AUXに応じた出力音声信号Voutを、生成させることができる。
【0079】
次に、上記のような動作を行う制御回路18の構成例について詳細に説明する。
図5は、制御回路18の構成例について説明する為の説明図である。制御回路18は、入力音声信号AUXが入力される端子、音量信号Volumeが入力される端子、電流信号IS1が入力される端子、及び電圧信号VS1が入力される端子を備える。また、制御回路18は、制御信号P1乃至制御信号P4を出力する端子を備える。
【0080】
また、制御回路18は、フィードバック制御器PID、乗算器MUL、積分器INT、差分器SUB、第1の加算器ADD1、第2の加算器ADD2、第3の加算器ADD3、第4の加算器ADD4、第5の加算器ADD5、絶対値変換器ABS、反転変換器INV、第1のコンパレータCP1、第2のコンパレータCP2、第1の遅延器DELAY1、第2の遅延器DELAY2、ラッチ回路LATCH、判定回路21、及び強制停止回路22を備える。
【0081】
フィードバック制御器PIDは、入力信号の積分、微分、定数項などのパラメータ調整をする制御器である。即ち、フィードバック制御器PIDは、Proportional Integral Differential(PID)制御を行う。
【0082】
乗算器MULは、入力される2つの信号を乗算した値を出力する。
【0083】
積分器INTは、入力信号の積分値を出力する。
【0084】
差分器SUBは、入力される2つの信号の差分値を出力する。
【0085】
第1の加算器ADD1乃至第5の加算器ADD5は、入力信号の加算値を出力する。
【0086】
絶対値変換器ABSは、入力信号の絶対値(正の値)を出力する。
【0087】
反転変換器INVは、入力信号の極性を反転させて出力する。
【0088】
第1のコンパレータCP1及び第2のコンパレータCP2は、入力される2つの信号の正負の判定結果に基づいて、トリガー信号を出力する。
【0089】
第1の遅延器DELAY1及び第2の遅延器DELAY2は、条件分岐付き制御器である。第1の遅延器DELAY1及び第2の遅延器DELAY2は、入力信号がLレベル(Lowレベル)からHレベル(Highレベル)に代わる場合に、予め設定された時間だけ入力信号を遅延させて出力する。なお、第1の遅延器DELAY1及び第2の遅延器DELAY2は、入力信号がHレベルからLレベルに代わる場合、入力信号を遅延させずに出力する。
【0090】
ラッチ回路LATCHは、1ビットの情報を保持する回路である。ラッチ回路LATCHは、S端子に第2のコンパレータCP2からトリガー信号が入力された場合、それ以降Q端子から出力する信号をHレベルで維持する状態になる。また、ラッチ回路LATCHは、R端子に第1のコンパレータCP1からトリガー信号が入力された場合、それ以降Q端子から出力する信号をLレベルで維持する状態になる。
【0091】
判定回路21は、入力音声信号AUXの有無を判定する回路である。判定回路21は、判定結果を示す信号を強制停止回路22に供給する。
【0092】
強制停止回路22は、判定回路21からの信号に応じて、第1の遅延器DELAY1と制御信号P2及び制御信号P3の出力端子との接続、第2の遅延器DELAY2と制御信号P1及び制御信号P4の出力端子との接続をそれぞれ遮断する。
【0093】
次に、制御回路18における信号の流れについて説明する。
フィードバック制御器PIDには入力音声信号AUXが入力される。フィードバック制御器PIDは、入力音声信号AUXにPID制御を行い、結果を乗算器MULに出力する。フィードバック制御器PIDの主な演算効果は、微分である。即ち、フィードバック制御器PIDは、入力音声信号AUXの電圧の変化(微分値)を出力する。また、フィードバック制御器PIDは、積分項及び定数項も適宜調整する。
【0094】
乗算器MULには、フィードバック制御器PIDの出力と、音量信号Volumeとが入力される。乗算器MULは、フィードバック制御器PIDの出力と、音量信号Volumeとを乗算した値を、第1の加算器ADD1に出力する。即ち、乗算器MULは、入力音声信号AUXの微分値を「音量信号Volume倍」した値を出力する。
【0095】
積分器INTには、電圧VC2を示す電圧信号VS1が入力される。積分器INTは、電圧信号VS1を所定の時間範囲で積分する。例えば、積分器INTは、電圧信号VS1を比較的大きな時間範囲で積分する。これにより、音声信号の周波数及び振幅がキャンセルされ、電圧VC2の平均値が積分値(信号中心電圧)として算出される。積分器INTは、電圧信号VS1の積分値を差分器SUBに出力する。
【0096】
差分器SUBは、予め設定された定数NEUと、積分器INTからの積分値との差分を第1の加算器ADD1に出力する。定数NEUは、電圧VC2の振幅の最大値の半分の値として設定される。例えば、電圧VC2の振幅の最大値を200Vに設定する場合、定数NEUは、100Vとして設定される。差分器SUBは、定数NEUから積分器INTの積分値を減算した値を出力する。即ち、定数NEUより積分器INTの積分値が大きい場合、差分器SUBは、マイナスの値を出力する。また、定数NEUより積分器INTの積分値が小さい場合、差分器SUBは、プラスの値を出力する。すなわち差分器SUBは、電圧VC2の平均値が定数NEUと等しい値になるように補正をかけている。
【0097】
上記の処理により、第1の加算器ADD1には、乗算器MULの出力及び差分器SUBの出力が入力される。第1の加算器ADD1は、乗算器MULの出力と、差分器SUBの出力とを加算し、加算値を第2の加算器ADD2、第3の加算器ADD3、及び絶対値変換器ABSに出力する。変位信号の周波数は、積分器INTの積分時間(積分器INTが信号を出力するタイミング)、または電圧検出器17がVS1を出力するタイミングに依存する。変位信号の周波数は、例えば人間の耳に聞こえない10Hz以下の周波数に設定される。である。これにより、電圧VC2の振幅中心は、常に定数NEUに保たれる。このように生成された第1の加算器ADD1の出力を、中心電流目標値ENV-Cと称する。中心電流目標値ENV-Cは、後述する正側電流目標値ENV-Pと負側電流目標値ENV-Mとの中心(平均)の値である。
【0098】
絶対値変換器ABSは、中心電流目標値ENV-Cの絶対値を第4の加算器ADD4及び反転変換器INVに出力する。
【0099】
反転変換器INVは、絶対値変換器ABSから出力された正の値である中心電流目標値ENV-Cの極性を負に反転させ、絶対値の極性を反転させ、第5の加算器ADD5に出力する。即ち、反転変換器INVは、中心電流目標値ENV-Cの絶対値に「-1」を乗算したものを出力する。
【0100】
第4の加算器ADD4には、絶対値変換器ABSから出力された中心電流目標値ENV-Cの絶対値と、定数BASEPとが入力される。第4の加算器ADD4は、絶対値変換器ABSから出力された中心電流目標値ENV-Cの絶対値と、定数BASEPとの和を第2の加算器ADD2に出力する。定数BASEPは、上記の
図2及び
図3における範囲RIの第1の閾値に相当する値である。即ち、定数BASEPは、「+m[A]」である。定数BASEPは、双方向電力変換回路15の仕様によって定まる。
【0101】
第2の加算器ADD2には、第1の加算器ADD1の出力である中心電流目標値ENV-Cと、第4の加算器ADD4の出力とが入力される。第2の加算器ADD2は、第1の加算器ADD1の出力である中心電流目標値ENV-Cと、第4の加算器ADD4の出力との和を、正側電流目標値ENV-Pとして第1のコンパレータCP1に出力する。即ち、第2の加算器ADD2は、第1の加算器ADD1の出力である中心電流目標値ENV-Cと、中心電流目標値ENV-Cの絶対値と、定数BASEPとの和を、正側電流目標値ENV-Pとして第1のコンパレータP1に出力する。
【0102】
第5の加算器ADD5には、反転変換器INVの出力と定数BASEMとが入力される。即ち、第5の加算器ADD5には、中心電流目標値ENV-Cの絶対値の極性が反転された値と、定数BASEMとが入力される。第5の加算器ADD5は、中心電流目標値ENV-Cの絶対値の極性が反転された値と、定数BASEMとの和を第3の加算器ADD3に出力する。定数BASEMは、上記の
図2及び
図3における範囲RIの第2の閾値に相当する値である。即ち、定数BASEMは、「-m[A]」である。定数BASEMは、双方向電力変換回路15の仕様によって定まる。
【0103】
第3の加算器ADD3には、第1の加算器ADD1の出力である中心電流目標値ENV-Cと、第5の加算器ADD5の出力とが入力される。第3の加算器ADD3は、第1の加算器ADD1の出力である中心電流目標値ENV-Cと、第5の加算器ADD5の出力との和を、負側電流目標値ENV-Mとして第2のコンパレータCP2に出力する。即ち、第3の加算器ADD3は、第1の加算器ADD1の出力である中心電流目標値ENV-Cと、中心電流目標値ENV-Cの絶対値の極性が反転された値と、定数BASEPとの和を、負側電流目標値ENV-Mとして第2のコンパレータCP2に出力する。
【0104】
また、上記の構成によると、第2の加算器ADD2及び第3の加算器ADD3は、電圧VC2の平均値(信号中心電圧)の変位が、リアルタイムで正側電流目標値及び負側電流目標値に反映される。
【0105】
上記の構成により、第1のコンパレータCP1には、正側電流目標値ENV-Pと電流信号IS1とが入力される。第1のコンパレータCP1は、正側電流目標値ENV-Pと電流信号IS1とを比較し、比較結果をラッチ回路LATCHのR端子に出力する。第1のコンパレータCP1は、電流信号IS1が正側電流目標値ENV-Pより大きい場合、トリガー信号を出力する。
【0106】
第2のコンパレータCP2には、負側電流目標値ENV-Mと電流信号IS1とが入力される。第2のコンパレータCP2は、負側電流目標値ENV-Mと電流信号IS1とを比較し、比較結果をラッチ回路LATCHのS端子に出力する。第2のコンパレータCP2は、電流信号IS1が負側電流目標値ENV-Mより小さい場合、トリガー信号を出力する。
【0107】
ラッチ回路LATCHのR端子には、第1のコンパレータCP1の出力が入力され、ラッチ回路LATCHのS端子には、第2のコンパレータCP2の出力が入力される。また、ラッチ回路LATCHのQ端子は、第1の遅延器DELAY1に接続され、ラッチ回路LATCHのQBER端子は、第2の遅延器DELAY1に接続されている。
【0108】
ラッチ回路LATCHは、S端子にHレベルの信号(Hトリガー)が入力された場合、Q端子から第1の遅延器DELAY1にHレベルの信号を出力し、QBER端子から第2の遅延器DELAY2に、Lレベルの信号を出力する状態を保持する。
【0109】
また、ラッチ回路LATCHは、R端子にHレベルの信号(Hトリガー)が入力された場合、Q端子から第1の遅延器DELAY1にLレベルの信号を出力し、QBER端子から第2の遅延器DELAY2に、Hレベルの信号を出力する状態を保持する。
【0110】
第1の遅延器DELAY1は、ラッチ回路LATCHのQ端子からの出力を、制御信号P2及び制御信号P3として出力する。なお、第1の遅延器DELAY1は、ラッチ回路LATCHのQ端子からの出力が、LレベルからHレベルに変化する場合、所定時間遅延させてHレベルの信号を出力する。
【0111】
第2の遅延器DELAY2は、ラッチ回路LATCHのQBER端子からの出力を、制御信号P1及び制御信号P4として出力する。なお、第2の遅延器DELAY2は、ラッチ回路LATCHのQBER端子からの出力が、LレベルからHレベルに変化する場合、所定時間遅延させてHレベルの信号を出力する。
【0112】
判定回路21は、例えば、第1の加算器ADD1から出力された中心電流目標値ENV-Cに基づいて、入力音声信号AUXの有無を判定する。判定回路21は、例えば、入力音声信号AUXが0である状態が一定時間継続したか否かを判定する。判定回路21は、通常時に強制停止回路22にイネーブル信号を供給し続け、入力音声信号AUXが0である状態が一定時間継続したと判定した場合、イネーブル信号の出力を停止する。
【0113】
強制停止回路22は、第1の遅延器DELAY1と制御信号P2及び制御信号P3の出力端子との間、並びに第2の遅延器DELAY2と制御信号P1及び制御信号P4の出力端子との間に設けられる。強制停止回路22は、判定回路21からイネーブル信号を受信している間、第1の遅延器DELAY1からの入力を制御信号P2及び制御信号P3の出力端子に出力し、第2の遅延器DELAY2からの入力を制御信号P1及び制御信号P4の出力端子に出力する。強制停止回路22は、判定回路21からイネーブル信号が供給されない場合、制御信号P1乃至制御信号P4の出力端子に対して、強制的にLレベルを出力する。
【0114】
この構成によると、次に音声信号が入力された場合に、判定回路21からイネーブル信号が強制停止回路22に入力される。強制停止回路22は、判定回路21からイネーブル信号が入力されると、第1の遅延器DELAY1からの入力を制御信号P2及び制御信号P3の出力端子に出力し、第2の遅延器DELAY2からの入力を制御信号P1及び制御信号P4の出力端子に出力する。また、VS1が定数NEUに対して変位した場合にも、判定回路21からイネーブル信号が強制停止回路22に入力される。これは、VS1が定数NEUに対して変位した場合に、変位信号が発生する為である。これにより、電圧VC2の平均値が定数NEUと等しい値になるように補正される。
【0115】
次に、上記の構成において、中心電流目標値ENV-Cに基づいて、正側電流目標値ENV-P及び負側電流目標値ENV-Mを決定する例について説明する。
【0116】
図6及び
図7は、中心電流目標値ENV-Cに基づいて、正側電流目標値ENV-P及び負側電流目標値ENV-Mを決定する処理について説明する為の説明図である。
図6及び
図7の横軸は、時間を示し、縦軸は、電流値を示す。
【0117】
図6の例では、タイミングt31からタイミングt32に亘って、中心電流目標値ENV-Cが正側の値となっており、タイミングt32からタイミングt33に亘って、中心電流目標値ENV-Cが負側の値となっている。
【0118】
中心電流目標値ENV-Cは、絶対値変換器ABSによって絶対値に変換され、第4の加算器ADD4に入力される。絶対値に変換された中心電流目標値ENV-Cには、第4の加算器ADD4によって定数BASEP(=+m[A])が加算される。これにより、第4の加算器ADD4は、
図6に示す信号31を第2の加算器ADD2に出力する。
【0119】
第2の加算器ADD2は、信号31と中心電流目標値ENV-Cとを加算する。この結果、
図7に示されるように、正側電流目標値ENV-Pが決定される。中心電流目標値ENV-Cが正の値「+d」である場合、負側電流目標値ENV-Mが「-m」となるため、正側電流目標値ENV-Pの値が、「2d+m」となる。
【0120】
また、中心電流目標値ENV-Cは、絶対値変換器ABSによって絶対値に変換され、反転変換器INVにより極性が反転され、第5の加算器ADD5によって定数BASEM(=-m[A])が加算される。これにより、第5の加算器ADD5は、
図6に示す信号32を第3の加算器ADD3に出力する。
【0121】
第3の加算器ADD3は、信号32と中心電流目標値ENV-Cとを加算する。この結果、
図7に示されるように、負側電流目標値ENV-Mが決定される。中心電流目標値ENV-Cが負の値「-d」である場合、正側電流目標値ENV-Pの値が「+m」となるため、負側電流目標値ENV-Mの値が、「-2d-m」となる。
【0122】
上記の様に、正側電流目標値ENV-Pは、範囲RIの上限である+m以上の値であり、負側電流目標値ENV-Mは、範囲RIの下限である-m以下の値である。正側電流目標値ENV-P及び負側電流目標値ENV-Mは、正側電流目標値ENV-Pと負側電流目標値ENV-Mとの平均値が中心電流目標値ENV-Cとなるように設定される。
【0123】
例えば、中心電流目標値ENV-Cが0である場合、正側電流目標値ENV-Pは、範囲RIの上限である「+m」に設定されるため、負側電流目標値ENV-Mが-mに設定される。
【0124】
以上の制御により入力音声信号を増幅する際の電流目標値として、正側電流目標値ENV-P、及び負側電流目標値ENV-Mが決定される。
【0125】
次に、上記の構成において、正側電流目標値ENV-P及び負側電流目標値ENV-Mと電流IL1との関係について説明する。
【0126】
図8は、
図6及び
図7の処理により決定された正側電流目標値ENV-P及び負側電流目標値ENV-Mと、電流IL1との関係について説明する為の説明図である。
図8の横軸は、時間を示し、縦軸は、電流値を示す。
【0127】
電流IL1は、正側電流目標値ENV-Pと、負側電流目標値ENV-Mとの間を往復する。例えば、中心電流目標値ENV-Cが0である場合、正側電流目標値ENV-Pが「+m」に設定され、負側電流目標値ENV-Mは「-m」に設定される。この為、電流IL1は、「+m」と「-m」との間を往復する。電流IL1が「+m」と「-m」との間を往復している場合、第1の平滑キャパシタC1とタンク回路TC1との間での電荷の行き来の釣り合いが取れている為、電圧VC2に変化が生じない。この状態が、双方向電力変換回路15の最小電流となる。即ち、中心電流目標値ENV-Cが0ではない場合、双方向電力変換回路15をより大きな電流が流れる。
【0128】
また、タイミングt31からタイミングt32に亘って、中心電流目標値ENV-Cが正側の値「+d」となっている。この為、正側電流目標値ENV-Pが「2d+m」となり、負側電流目標値ENV-Mが「-m」となる。この場合、制御回路18は、「2d+m」と「-m」との間を電流IL1が往復するように、制御信号P1乃至P4を生成する。
【0129】
また、タイミングt32からタイミングt33に亘って、中心電流目標値ENV-Cが負側の値「-d」となっている。この為、正側電流目標値ENV-Pが「+m」となり、負側電流目標値ENV-Mが「-2d-m」となる。この場合、制御回路18は、「+m」と「-2d-m」との間を電流IL1が往復するように、制御信号P1乃至P4を生成する。なお、これらの制御は、中心電流目標値ENV-Cが正か負かを意識することなく、同一の制御処理によって行われる。すなわち、従来増幅に用いられるB級増幅またはD級増幅のように、正と負とで選択する回路を分ける構成ではない。
【0130】
次に、制御回路18における各種の信号のタイミングチャートについて説明する。
図9及び
図10は、
図5に示す制御回路18の各部における信号について説明する為のタイミングチャートである。
図9及び
図10の横軸は、時間を示す。縦軸は、上から順に電流IL1の値、第1のコンパレータCP1の出力、第2のコンパレータCP2の出力、ラッチ回路LATCHのQ端子の出力、制御信号P2及び制御信号P3、ラッチ回路LATCHのQBER端子の出力、制御信号P1及び制御信号P4をそれぞれ示す。
【0131】
図9は、増幅すべき入力音声信号AUXが0である場合の各種の信号のタイミングチャートの例を示す。入力音声信号AUXが0である場合、正側電流目標値ENV-Pが「+m」となり、負側電流目標値ENV-Mが「-m」となる。このように正側電流目標値ENV-Pが定数BASEPとして設定され、負側電流目標値ENV-Mが定数BASEMとして設定されている場合、正側と負側で電流が等しくなる。この為、電流IL1の平均値は0となる。即ち、出力音声信号Voutが出力されていない状態である。このように、正側電流目標値ENV-Pとして定数BASEPが設定され、負側電流目標値ENV-Mとして定数BASEMが設定されている状態を基底状態と称する。
図9は、基底状態におけるタイミングチャートを示す。この場合、最も少ない電流量で平均値ゼロを実現している。
【0132】
図9に示されるように、タイミングt41で電流IL1が正側電流目標値ENV-Pに達した場合、第1のコンパレータCP1からHレベルの信号(Hトリガー)が出力される。これにより、ラッチ回路LATCHのQ端子からの出力がHレベルになり、ラッチ回路LATCHのQBER端子からの出力がLレベルになる。Q端子からの出力がLレベルからHレベルになる為、第1の遅延器DELAY1は、所定時間遅延させてHレベルの信号を制御信号P2及び制御信号P3として出力する。また、QBER端子からの出力がHレベルからLレベルになる為、第2の遅延器DELAY2は、遅延させずにLレベルの信号を制御信号P1及び制御信号P4として出力する。
【0133】
制御信号P2及び制御信号P3がHレベルの信号となり、制御信号P1及び制御信号P4がLレベルの信号となると、電流IL1が右下がりになる(即ち減少し始める)。この為、第1のコンパレータCP1は、すぐにLレベルの信号を出力する状態になる。この為、第1のコンパレータCP1から出力されるHレベルの信号は、細いパルス状(トリガー信号)となる。
【0134】
また、
図9に示されるように、タイミングt42で電流IL1が負側電流目標値ENV-Mに達した場合、第2のコンパレータCP2からHレベルの信号(Hトリガー)が出力される。これにより、ラッチ回路LATCHのQ端子からの出力がLレベルになり、ラッチ回路LATCHのQBER端子からの出力がHレベルになる。Q端子からの出力がHレベルからLレベルになる為、第1の遅延器DELAY1は、遅延させずにLレベルの信号を制御信号P2及び制御信号P3として出力する。また、QBER端子からの出力がLレベルからHレベルになる為、第2の遅延器DELAY2は、所定時間遅延させてHレベルの信号を制御信号P1及び制御信号P4として出力する。
【0135】
制御信号P1及び制御信号P4がHレベルの信号となり、制御信号P2及び制御信号P3がLレベルの信号となると、電流IL1が右上がりになる(即ち増加し始める)。この為、第2のコンパレータCP2は、すぐにLレベルの信号を出力する状態になる。この為、第2のコンパレータCP2から出力されるHレベルの信号も、細いパルス状と(トリガー信号)なる。
【0136】
上記のように第1の遅延器DELAY1及び第2の遅延器DELAY2が、LレベルからHレベルになる際に信号を遅延させない場合、第1の半導体スイッチS1と第2の半導体スイッチS2が同時にオンされる可能性がある。第1の半導体スイッチS1と第2の半導体スイッチS2が同時にオンされると、第1の平滑キャパシタC1、第1の半導体スイッチS1、及び第2の半導体スイッチS2が短絡し、短絡電流が流れ、スイッチが破損する可能性がある。また、第1の遅延器DELAY1及び第2の遅延器DELAY2が、LレベルからHレベルになる際に信号を遅延させない場合、第3の半導体スイッチS3と第4の半導体スイッチS4が同時にオンされる可能性がある。第3の半導体スイッチS3と第4の半導体スイッチS4が同時にオンされると、タンク回路TC1、第3の半導体スイッチS3、及び第4の半導体スイッチS4が短絡し、短絡電流が流れ、スイッチが破損する可能性がある。しかし、上記のように、第1の遅延器DELAY1及び第2の遅延器DELAY2は、信号がLレベルからHレベルに切り替えられる際に、所定時間Hレベルの立ち上がりを遅延させる。これにより、第1の半導体スイッチS1乃至第4の半導体スイッチS4が同時にオフされるデッドタイムが設けられ、短絡電流の発生が防がれる。
【0137】
制御回路18は、このような処理を、電流IL1が、正側電流目標値ENV-Pまたは負側電流目標値ENV-Mに達したタイミングで、繰り返し行うことにより、電流IL1を周期的に発振させる。
【0138】
図10は、電圧VC2を増加させる場合のタイミングチャートの例を示す。
図10の例は、
図9の例に比べて正側電流目標値ENV-Pがより大きく設定されている点が異なる。なお、各種の信号処理については、
図9の例と同様である為、説明を省略する。
【0139】
このように、電流IL1が正である期間が電流IL1が負である期間に比べて長い場合、電流IL1の平均値が正側に増加し、第1の平滑キャパシタC1の電荷がタンク回路TC1に移動する電流が優勢となり、タンク回路TC1の電圧が増加する。
【0140】
上記の実施形態によると、電力増幅装置1は、電源に接続された第1の平滑キャパシタC1に並列に接続された第1の半導体スイッチS1及び第2の半導体スイッチS2と、キャパシタを有するタンク回路TC1に並列に接続された第3の半導体スイッチS3及び第4の半導体スイッチS4と、タンク回路TC1と負荷とに直列接続された直流カットキャパシタC3と、第1の半導体スイッチS1と第2の半導体スイッチS2との接続点である第1の接続点M1と、第3の半導体スイッチS3と第4の半導体スイッチS4との接続点である第2の接続点M2との間に接続された第1のインダクタL1と、第1の接続点M1と第2の接続点M2との間において、第1のインダクタL1と直列接続された電流検出器16と、制御回路18とを備える。
【0141】
制御回路18は、入力音声信号AUXと、音量信号Volumeとに基づいて、正の値である第1の閾値以上の正側電流目標値ENV-Pと、負の値である第2の閾値以下の負側電流目標値ENV-Mと、正側電流目標値ENV-Pと負側電流目標値ENV-Mとの中心である中心電流目標値ENV-Cを決定する。制御回路18は、中心電流目標値ENV-Cに基づいて、正側電流目標値ENV-P及び負側電流目標値ENV-Mを設定する。制御回路18は、電流検出器16により検出された電流値IS1が正側電流目標値ENV-Pを超えた場合、第1の半導体スイッチS1及び第4の半導体スイッチS4をオフし、第2の半導体スイッチS2及び第3の半導体スイッチS3をオンする。また、制御回路18は、電流検出器16により検出された電流値IS1が負側電流目標値ENV-Mを下回った場合、第1の半導体スイッチS1及び第4の半導体スイッチS4をオンし、第2の半導体スイッチS2及び第3の半導体スイッチS3をオフする。これにより、第1の平滑キャパシタC1の電気エネルギーを第1のインダクタL1に磁気エネルギーとして蓄えさせる状態、第1のインダクタL1の磁気エネルギーをタンク回路TC1に電気エネルギーとして蓄えさせる状態、タンク回路TC1の電気エネルギーを第1のインダクタL1に磁気エネルギーとして蓄えさせる状態、第1のインダクタL1の磁気エネルギーを第1の平滑キャパシタC1に電気エネルギーとして蓄えさせる状態が順に切り替わる。この結果、第1のインダクタL1を介して第1の平滑キャパシタC1とタンク回路TC1との間で電荷が移動し、第2の平滑キャパシタC2の電圧が、入力音声信号AUXの音量信号Volume倍になるように制御される。
【0142】
さらに、制御回路18は、第2の加算器ADD2、第3の加算器ADD3、第4の加算器ADD4、第5の加算器ADD5、絶対値変換器ABS、及び反転変換器INVを備える。第2の加算器ADD2、第3の加算器ADD3、第4の加算器ADD4、第5の加算器ADD5、絶対値変換器ABS、及び反転変換器INVにより、中心電流目標値ENV-Cが正の値である間の負側電流目標値ENV-Mが第2の閾値である「-m」に設定され、正側電流目標値ENV-Pが「2d+m」に設定される。また、中心電流目標値ENV-Cが負の値である間の正側電流目標値ENV-Pが第1の閾値である「+m」に設定され、負側電流目標値ENV-Mが「-2d-m」に設定される。この構成によると、正側電流目標値ENV-Pと負側電流目標値ENV-Mとの間で往復する電流IL1の往復幅を狭めることができる。電流IL1が正側電流目標値ENV-Pと負側電流目標値ENV-Mとの間を往復するということは、双方向電力変換回路15の回路を実際に電流が流れ、電流が熱などに変換され、電力が消費されることと同義である。しかしながら、上記のように電流IL1が往復する幅を狭めることにより、双方向電力変換回路15で消費される電力を抑えることができる。また、双方向電力変換回路15は、発熱を抑える事ができる為、大音量の出力が可能になる。
【0143】
このような構成によると、入力音声信号AUXがゼロである場合、双方向電力変換回路15が基底状態になる為、入力音声信号AUXが入力されていない状態での電力消費を抑える事ができる。また、通常の動作時においても、双方向電力変換回路15の動作に必要な経路に抵抗成分が無い為、消費電力を抑える事ができる。また、入力音声信号AUXが0Vを跨ぐ場合であっても、双方向電力変換回路15内における信号処理に変化が無い為、遅延、偏り、歪などの発生を防ぐことができる。
【0144】
また、制御回路18は、入力音声信号AUX及び音量信号Volumeに基づいて、正側電流目標値ENV-P及び負側電流目標値ENV-Mを設定することにより、出力音声信号Voutを出力することが可能になる。このように、制御回路18の制御を簡素にすることができる。
【0145】
また、出力インピーダンスが極めて低い為、スピーカのインピーダンスマッチングを考慮する必要が無くなり、選択可能なスピーカが増える。この結果、高音質であり且つ電力効率の良い電力増幅装置及び音響装置を提供することが可能になる。
【0146】
また、上記のように構成された双方向電力変換回路15では、キャパシタの容量が大きくなるほど、信号の増幅に要する電流が大きくなる。双方向電力変換回路15で必要とされる電流は、信号電圧の微分である。この為、高周波数であるほど電圧の変動の勾配が大きくなり、双方向電力変換回路15で必要とされる電流が大きくなる。この為、同じ振幅の信号であっても、高周波数時の方が低周波数時に比べて多くの電流が必要とされる。
【0147】
上記の実施形態によると、電力増幅装置1の双方向電力変換回路15のタンク回路TC1は、第2の平滑キャパシタC2と、第4の平滑キャパシタC4と第2のインダクタL2との直列回路SC1とが並列に接続された構成を備える。第2のインダクタL2は、低周波では電流を通しやすく高周波では電流を通しにくい特性を有する。この為、タンク回路TC1は、電流IL1の周波数によって容量が変動する。具体的には、タンク回路TC1は、高周波数時に容量が小さくなり、低周波数時に容量が大きくなるように構成されている。このように、高周波数時に容量が小さくなることにより、高周波数時に双方向電力変換回路15を流れる電流を減らすことができる。
【0148】
次に、制御回路18の動作の変形例について説明する。
図11は、無音状態における電流IL1について説明する為の説明図である。
無音状態とは、出力音声信号Voutが変化しない状態を意味する。例えば、双方向電力変換回路15が基底状態で動作する場合、無音状態となる。しかし、長時間無音状態が続く場合の省電力効果をさらに高める為に、制御回路18は、双方向電力変換回路15に定期的に発振動作を行わせる構成であってもよい。即ち、制御回路18は、双方向電力変換回路15の第1の半導体スイッチS1乃至第4の半導体スイッチS4のオンオフ制御を停止させる停止状態と、基底状態とを間欠的に繰り返してもよい。
【0149】
例えば、停止状態が長時間続く場合、タンク回路TC1の電荷が空気中に放電される、または回路内の抵抗で消費される可能性がある。この状態で入力音声信号AUXが入力された場合、タンク回路TC1の信号中心電圧がずれた状態で出力音声信号Voutが生成される可能性がある。これに対し、基底状態では、第1の平滑キャパシタC1からタンク回路TC1に電荷が供給され、タンク回路TC1の信号中心電圧を一定の値に保たれる。そこで、制御回路18は、停止状態と、基底状態とを間欠的に繰り返す(以下バーストモード動作と称する)ことにより、タンク回路TC1の信号中心電圧を一定の値に保つことができる。
【0150】
上記の構成により、制御回路18は、入力音声信号AUXが0であり、乗算器MULの出力が0である状態が一定時間継続した場合、即ち、判定回路21から強制停止回路22にイネーブル信号が供給されない時間が一定時間継続した場合、停止状態と基底状態とを間欠的に実行するバーストモード動作を行う。この結果、電力増幅装置1は、省電力効果をさらに高めるとともに、音質の低下を防ぐことができる。
【0151】
なお、上記の実施形態では、双方向電力変換回路15の出力側にタンク回路TC1が設けられていると説明したが、この構成に限定されない。双方向電力変換回路15は、タンク回路TC1の代わりに1つのキャパシタを備える構成であってもよい。即ち、タンク回路TC1の第4の平滑キャパシタC4と第2のインダクタL2との直列回路SC1が省略されていても、制御回路18が上記の制御を行うことにより、省電力化を実現することができる。
【0152】
また、上記の実施形態では、双方向電力変換回路15の第1の平滑キャパシタC1への入力が、直流電圧源DCからの直流電圧であると説明したが、この構成に限定されない。交流電源が全波整流された直流電圧、または脈流電圧が第1の平滑キャパシタC1への入力として用いられる構成であってもよい。
【0153】
また、電力増幅装置1は、入力音声信号AUXに基づき、スピーカ2で出力する為の出力音声信号Voutを生成する装置であると説明したが、この構成に限定されない。電力増幅装置1の対象の信号は、如何なる信号であってもよい。例えば、電力増幅装置1は、音楽信号、あるいは産業用アンプ用の数十~数万ヘルツの信号を増幅することも可能である。
【0154】
また、電力増幅装置1に接続される負荷は、スピーカ2に限定されない。電力増幅装置1に接続される負荷は、発光負荷、発熱負荷、その他電力を消費する各種負荷であってもよい。即ち、電力増幅装置1は、発光負荷、発熱負荷、その他電力を消費する各種負荷用の信号を増幅することも可能である。
【0155】
また、上記の実施形態において、電力増幅装置1の例について説明したが、この構成に限定されない。電力増幅装置1の各構成は、同等の機能を有する他の構成により置き換えられてもよい。また、制御回路18の各ブロックは、アナログ回路、ディジタル回路、及びソフトウエアのいずれにより構成されるものであってもよい。
【0156】
具体的には、アナログ加算器、アナログ乗算器、オペアンプ(差分器)、コンパレータ(条件分岐制御器)などを組み合わせることにより、制御回路18をアナログ回路として構成することができる。
【0157】
また、音声信号入力端子12に入力されたアナログ信号をディジタル信号に変換するAD変換器、ディジタル信号をアナログ信号に変換して音声信号出力端子14から出力するDA変換器、ディジタル加算IC、ディジタル乗算IC、及びディジタル差分ICなどを組み合わせることにより、制御回路18をディジタル回路として構成することができる。また、加算、減算、乗算などを行うマイコンをディジタル加算IC、ディジタル乗算IC、及びディジタル差分ICの代わりに組み合わせることにより、制御回路18をソフトウエアとして構成することができる。
【0158】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0159】
1…電力増幅装置、2…スピーカ、3…音響装置、11…電源入力端子、12…音声信号入力端子、13…音量信号入力端子、14…音声信号出力端子、15…双方向電力変換回路、16…電流検出器、17…電圧検出器、18…制御回路、21…判定回路、22…強制停止回路、ADD1…第1の加算器、ADD2…第2の加算器、ADD3…第3の加算器、ADD4…第4の加算器、ADD5…第5の加算器、C1…第1の平滑キャパシタ、C2…第2の平滑キャパシタ、C3…直流カットキャパシタ、C4…第4の平滑キャパシタ、CP1…第1のコンパレータ、CP2…第2のコンパレータ、DELAY1…第1の遅延器、DELAY2…第2の遅延器、L1…第1のインダクタ、L2…第2のインダクタ、M1…第1の接続点、M2…第2の接続点、S1…第1の半導体スイッチ、S2…第2の半導体スイッチ、S3…第3の半導体スイッチ、S4…第4の半導体スイッチ、SC1…直列回路、TC1…タンク回路。