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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】荷受台昇降装置
(51)【国際特許分類】
   B60P 1/44 20060101AFI20220816BHJP
   B60R 19/24 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
B60P1/44 E
B60P1/44 Z
B60R19/24 R
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018114860
(22)【出願日】2018-06-15
(65)【公開番号】P2019217823
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】辻濱 康雄
(72)【発明者】
【氏名】豊留 拓磨
【審査官】姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0217670(US,A1)
【文献】特開2015-085789(JP,A)
【文献】実開平07-037791(JP,U)
【文献】特開昭63-184533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 1/44
B60R 19/24
B60P 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に対して上下に回動するリフトアームと、
前記リフトアームの先端に連結され、荷受面に対して突出した複数の突部を並べて形成した滑り止めを有する荷受台とを備え、
前記荷受面と直交する方向が高さ方向であるとして、前記滑り止めを構成する各突部よりも前記荷受面からの高さが高いか等しい少なくとも1つのガードが前記荷受台に設けられており、
前記荷受台の上昇時に前記荷受台との間に跨って前記荷受面に重なる道前記車両の荷台に設けられている場合に前記荷受台の上昇時に前記突部に前記道が干渉して拘束されないように、前記突部に先行して前記ガードが前記道に当たるように構成されている荷受台昇降装置。
【請求項2】
前記荷受台が下降時に前記リフトアームに干渉しないように前記荷受台の基端側の縁部に形成された切り欠きと、
前記切り欠きをカバーするように前記荷受台に回動可能に設けられ、前記荷受台の下降時に前記リフトアームに干渉して開閉するフラップとを備え、
前記フラップが前記切り欠きを閉じた状態で前記フラップの上面の高さが前記突部の上面の高さ以上になるように前記荷受面と前記フラップの上面との間に段差を設けることで、前記フラップで前記ガードを構成してある請求項1の荷受台昇降装置。
【請求項3】
前記突部の高さ寸法の半分以下の深さ寸法の複数の凹部を並べて形成した滑り止めが前記フラップの上面に設けられており、前記突部の上面よりも前記凹部の最下部が高いか等しくなるように構成してある請求項2の荷受台昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷受台を昇降させて車両の荷台に対する荷役作業を支援する荷受台昇降装置に関し、特にアームの回動動作により荷受台を昇降させる荷受台昇降装置に係る。
【背景技術】
【0002】
荷受台昇降装置の荷受台に、荷受面から突出した多数の突部で形成した滑り止めを設ける場合がある(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-096673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の荷台に対する荷役作業の際、荷受台は荷台の高さと例えば地面の高さとの間を昇降するが、荷台や荷受台昇降装置の製作精度等によって上昇時の荷受台と荷台との間に若干の隙間が生じ得る。また車両の荷台には水切りと呼ばれる窪みが設けられ、この水切りに台車のキャスタが足を取られないように道板と呼ばれる例えば回動反転式の部材が荷台に設置されている場合がある。この道は荷受台昇降装置を用いた荷役作業時に使用されることがあり、反転させて荷台の縁部から突き出た状態としておくことで、荷受台が上昇した際に荷受台と荷台との間に架かった状態となる。必要に応じてこの道を渡すことにより、荷台と荷受台との間で台車をスムーズに往復させることができる。
【0005】
ここで、荷受台昇降装置にも幾つかのタイプがあり、垂直なポストに沿って荷受台が昇降するものの他、アーム(平行リンク)の回動動作により荷受台が昇降するものがある。
前者の場合は荷受台が垂直に直線往復運動するだけであるが、後者の場合はアームの回動動作により荷受台が円弧軌道で昇降し、荷受台は上昇時に水平方向の速度成分を伴って荷台に接近する。この場合、道を展開した状態では荷受台の上昇時に荷受面上で滑り止めを構成する突部が道の端部に引っ掛かり、突部で拘束された状態の道に対して荷受台と荷台の水平距離が縮まることで圧縮力が加わり得る。通常、道は軽く扱い易いように薄い金属板で構成されているため、不測に力が加わると変形し荷受面に接触できず荷受面から浮いた状態になってしまう可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、荷受面に設けた滑り止めで車両の荷台に設けた道を拘束することによる荷受台上昇時の道の変形を抑制できる荷受台昇降装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る荷受台昇降装置は、車両に対して上下に回動するリフトアームと、前記リフトアームの先端に連結され、荷受面に対して突出した複数の突部を並べて形成した滑り止めを有する荷受台とを備え、前記荷受面と直交する方向が高さ方向であるとして、前記滑り止めを構成する各突部よりも前記荷受面からの高さが高いか等しい少なくとも1つのガードが前記荷受台の荷受面に設けられており、前記荷受台の上昇時に前記荷受台との間に跨って前記荷受面に重なる道前記車両の荷台に設けられている場合に前記荷受台の上昇時に前記突部に前記道が干渉して拘束されないように、前記突部に先行して前記ガードが前記道に当たるように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、荷受面に設けた滑り止めを構成する突部に先行してガードが道に当たることで、突部で道を拘束し荷受台上昇時の道の変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る荷受台昇降装置を車両の後部に取り付けた様子(荷受台展開状態)を表す斜視図
図2】本発明の第1実施形態に係る荷受台昇降装置を車両の後部に取り付けた様子(荷受台格納状態)を表す斜視図
図3図1に示した荷受台昇降装置の側面図
図4図1中の矢印IV方向に見た荷受台の基端側の部分の矢視側面図
図5図4からフラップを抜き出して示した側面図
図6】本発明の第2実施形態に係る荷受台昇降装置の荷受台の基端側の部分の側面図
図7】本発明の第2実施形態に係る荷受台昇降装置の荷受台の基端側の部分の平面図
図8図6の荷受台昇降装置の第1変形例の荷受台の基端側の部分の側面図
図9図6の荷受台昇降装置の第2変形例の荷受台の基端側の部分の側面図
図10】比較例を表す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0011】
<第1実施形態>
-荷受台昇降装置-
図1及び図2は本発明の第1実施形態に係る荷受台昇降装置を車両に取り付けた様子(図1は荷受台展開状態、図2は荷受台格納状態)を表す斜視図、図3は荷受台昇降装置の側面図である。本願明細書では図1に矢印で示した方向を荷受台昇降装置の前後とする。図1図3に示した荷受台昇降装置は平行リンクにより荷受台を昇降させて荷役作業を支援する装置であり、図2のように荷受台を起立させて格納する種のものである。この荷受台昇降装置は、支持フレーム1、左右のリフトアーム2、荷受台3、左右のリフトシリンダ4、左右のチルトシリンダ5(図3)等を備えている。
【0012】
本実施形態では、荷受台3を駆動する駆動装置には2つの油圧シリンダが含まれる。荷受台3を昇降させるリフトシリンダ4、及び荷受台3を傾斜させるチルトシリンダ5である。荷役作業時には主にリフトシリンダ4が用いられ、荷受台3を格納する(格納姿勢に移行させる)際にはチルトシリンダ5が用いられる。リフトシリンダ4及びチルトシリンダ5は複動式でも良いが、本実施形態では単動式の油圧シリンダが用いてある。続いて、荷受台昇降装置の構成要素、具体的には、支持フレーム1、リフトアーム2、荷受台3、リフトシリンダ4、チルトシリンダ5の連結関係について説明する。
【0013】
まず支持フレーム1は荷受台昇降装置を車両に取り付けるための同装置の基部構造体であり、本実施形態では車両の車枠(シャシフレーム)の後部の下側に取り付けられている。車両によって荷台の側部(例えば左側)で荷役作用を行う場合等には、荷役作業を行う位置に応じて支持フレーム1の取り付け位置も変更され得る。支持フレーム1の後端面には左右に延びるバンパB1-B3が取り付けられている。バンパB1-B3は左右に並んでおり、中央のバンパB1と左右のバンパB2,B3との間には、上下に回動する左右のリフトアーム2を通すために所定の間隔が空いている。
【0014】
リフトアーム2は、車両に対して上下に回動する部材であり、チルトアーム7を介して支持フレーム1に連結されている。チルトアーム7は左右に延びるピンP0を介して上端部が支持フレーム1に連結されており、ピンP0を中心に支持フレーム1に対して回動自在である。リフトアーム2の基端部(前端部)はピンP0よりも下側の位置で左右に延びるピンP1を介してチルトアーム7に連結されている。リフトアーム2はピンP1を中心にチルトアーム7に対して回動自在である。リフトアーム2の先端部(後端部)は左右に延びるピンP2を介して荷受台3の基端部分の上部に連結されている。つまり荷受台3はリフトアーム2の先端にピンP2を中心にして上下に回動自在に連結されている。
【0015】
チルトシリンダ5は、リフトアーム2に対して荷受台3を上下に回動(傾斜)させる油圧シリンダである。チルトシリンダ5の基端部(前端部)はピンP1よりも下側の位置で左右に延びるピンP3を介して支持フレーム1に連結されている。チルトシリンダ5はピンP3を中心に支持フレーム1に対して回動自在である。チルトシリンダ5の先端部(後端部)は左右に延びるピンP4を介して荷受台3の基端部分の下部に連結されている。チルトシリンダ5と荷受台3はピンP4を中心に相対的に回動自在である。
【0016】
リフトシリンダ4は、リフトアーム2を上下に回動させて荷受台3を昇降させる油圧シリンダである。リフトシリンダ4の基端部(前端部)はピンP3よりも下側の位置で左右に延びるピンP5を介してチルトアーム7に連結されている。リフトシリンダ4はピンP5を中心にチルトアーム7に対して回動自在である。リフトシリンダ4の先端部(後端部)は左右に延びるピンP6を介してリフトアーム2の先端付近の下部に連結されている。リフトシリンダ4とリフトアーム2はピンP6を中心にして相対的に回動自在である。
【0017】
ここで、チルトシリンダ5は、チルトアーム7及びリフトアーム2と共に平行リンクを構成するリンクアームを兼ねる。例えば図3においてチルトシリンダ5が収縮して荷受台3が水平になった場合(二点鎖線3a)ピンP4は位置Xに移動する。ピンP4が位置Xにあり荷受台3が接地していない状態では、ピンP1-P4を頂点とする四角形が平行四辺形になるように構成されている。ピンP1-P4が平行四辺形の頂点を形成する状態でリフトシリンダ4が伸縮すると、ピンP1,P3を支点としてリフトアーム2及びチルトシリンダ5が平行を保って矢印bのように回動し、荷受台3が上下に平行移動する。但し、荷受台3が接地(二点鎖線3b)してからリフトシリンダ4が更に収縮すると、チルトアーム7が矢印cのようにピンP0を支点に後方(図3では反時計回り)に回動する。これにより支持フレーム1に装着されたピンP3に相対してチルトアーム7に装着されたピンP1が後方に移動し(チルトシリンダ5に対してリフトアーム2が後方に移動し)、先端が接地する(二点鎖線3c)まで荷受台3が矢印dのように後傾する。
【0018】
チルトシリンダ5を伸縮させると、矢印aのように荷受台3はリフトアーム2に対してピンP2を支点に回動し傾斜動作する。荷受台3が車両の荷台Aの床面の高さにある場合にチルトシリンダ5を伸長させると、図3に実線で示したように(図2も参照)車両の荷台Aの後面に沿って荷受台3が起立し格納姿勢に移行する。反対にチルトシリンダ5を収縮させれば、格納姿勢の荷受台3を基準角度(例えば水平)に展開して荷役作業で使用できる状態にできる。
【0019】
-滑り止め-
荷受台3における荷物等が載置される荷受面3sには滑り止め10(図4)が設けられている。滑り止め10があることで、荷受面3s上で荷物や作業者の足元が滑り難くなっている。
【0020】
図4図1中の矢印IV方向に見た荷受台の基端側の部分の矢視側面図である。同図に示したように、滑り止め10は、荷受面3sに対して突出した複数の突部8を並べて形成されている。荷受面3sは水平に展開した荷受台3(滑り止め10が荷受台3の一部である場合には、滑り止め10を除く荷受台3の本体部)における上向きの面であって荷物や作業者が載る平滑な面である。滑り止め10は荷受面3sに対して全体的に設けられている。この滑り止め10を構成する個々の突部8は、本実施形態では左右に延びる直線状の突条部材である。荷受台3は例えばアルミニウム合金の押し出し成形により製作でき、この場合には押し出し成形時に各突部8も一体に形成できる。但し、突部8は荷受台3の本体とは別部材として荷受面3sに後付けしても良い。
【0021】
また、荷受面3sに直交する方向(図4のように荷受面3sが水平の状態では鉛直)に高さ方向を採ると、突部8の上面は荷受面3sよりも高さ寸法H1だけ高くなっている(荷受面3sから上方にH1だけ突出している)。突部8は前後方向に所定間隔で複数並んでいる。前後に隣接する突部8の間の距離L1は突部8の高さ寸法H1よりも大きく、荷受面3sに占める突部8の上面の総面積の割合は半分未満である。本実施形態では突部8の断面形状は前後対称な台形状であるが、荷台A側から荷受台3に荷物を引き出す場合に抵抗になり難いように最も基端側(本実施形態では前側)の突部8のみ他の突部8と断面形状が異なっている。荷受台の滑り止めの構成については例えば特許第5977925号公報に詳しく記載されている。
【0022】
-フラップ-
荷受台3が下降した際にリフトアーム2に干渉しないように、荷受台3の基端側の縁部(本例では前縁)には左右のリフトアーム2の位置に対応して左右の切り欠き3n(図1)が形成されている。これにより荷受面3sが一部切り欠かれた状態となっている。これら切り欠き3nはそれぞれフラップ9でカバーされている。左右のフラップ9は切り欠き3nの形状に応じて平面視で矩形状に形成されている(図1)。フラップ9は荷受台3に回動可能に設けられ、荷受台3の下降時にリフトアーム2に干渉し、図4に示したように上下に回動して切り欠き3nを開閉する。図示していないがリフトアーム2の先端部付近には上面に当て板が取り付けられている。この当て板がリフトアーム2の下方への回動に伴ってフラップ9の裏面に当たりフラップ9を押し上げることで、フラップ9がリフトアーム2に従動して起立する(図3)。なお、当て板をローラ部材に変更しても良いし、当て板を省略してフラップ9にリフトアーム2を直接当てる構成としても良い。図3に符号3bを付して示したように荷受台3が下降して接地しているときには、フラップ9は荷受面3sに対して所定角度で起立し、荷受台3に積載された荷物等のストッパとしても機能し得る。一方、同図に符号3aを付して示したように荷受台3が荷台Aの床面の高さにあるときには、フラップ9は荷受面3sに沿って水平に倒伏し荷受台3と荷台Aの間で荷物を運ぶ際に障害となることはない。
【0023】
図5図4からフラップ9を抜き出して示した側面図である。図5に示すようにフラップ9は、荷受台3の基端側とは反対側(本例では後側)の部分にボス部9bを備えている。フラップ9はボス部9bを除き上下両面が互いに平行な板状に形成されている。ボス部9bには左右方向に延びる軸穴9aが設けてある。軸穴9aにはフラップ9を荷受台3に回動自在に連結する軸11(図4)が挿し込まれ、フラップ9は軸11を支点にして上下に回動する。図示していないがフラップ9の回動範囲の上限及び下限はストッパにより制限されている。図4に実線で示した位置(荷受面3sに沿って水平に倒伏し切り欠き3nを閉じた位置)がフラップ9の下限位置であり、二点鎖線で示した位置(荷受面3sに対して斜めに起立し切り欠き3nを開いた位置)が上限位置である。ボス部9bは荷受台3の水平時に上を向くフラップ9の上面とは反対側(下面側)にオフセットしていて、フラップ9の上面は平滑に形成されて自身も一部の荷受面として機能する。以下、荷受面3sと区別してフラップ9の荷受面を適宜「上面9s」と記載する。
【0024】
フラップ9は荷受台3と同様にアルミの押し出し成形によって一定の断面形状に形成することができる。フラップ9を樹脂製にすることも可能である。またフラップ9はボス部9bと一体に形成されているが、ボス部9bとそれ以外(板状部分)とを別々に製作した後で溶接等の適宜の手段で一体化しても良い。またフラップ9(板状部分)に軸穴9aを設けるのに必要な厚みが確保できれば、ボス部9bを含めて全体に板状の形状に変更することもできる。また、本実施形態では左右のリフトアーム2に対応して2枚のフラップ9を設けた場合を例示しているが、左右のリフトアーム2の双方に干渉する左右に長い一枚のフラップにしても良い。この場合、切り欠き3nの形状も対応して変更することができる。その他、フラップの基本的な構成については例えば特開2012-183090号公報に詳しく記載されている。
【0025】
本実施形態の大きな特徴は、一般にフラップは荷受面と面一に設けられるところ、フラップ9が荷受面3sに沿って倒伏し切り欠き3nを閉じた状態で荷受面3sとフラップ9の上面9sとの間にあえて段差を設けた点である。荷受面3sに直交する方向を高さ方向として、フラップ9の上面9sの高さが突部8の上面の高さよりも高くしてある。つまり荷受面3sからのフラップ9の上面9sまでの高さ寸法H2が荷受面3sから突部8の上面までの高さ寸法H1よりも高くなるように、突部8の高さ寸法H1、荷受台3に対するフラップ9の組み付け位置等が設定されている。H1,H2の関係はH1≦H2であることが必須条件であるが、フラップ9の上面9sと荷受面3sとの段差は必要以上に大きくはせず、例えばH2/2≦H1≦H2であることが好ましい。極端にH2が大きいと荷物の積みおろし(移動)に影響が出るため、こうした影響が出ない所望の大きさ、例えばH1を1.3mm、H2を2.0mmに設定することができる。この例の場合、滑り止め10の突部8の上面よりもフラップ9の上面9sが0.7mm高くなる。
【0026】
本実施形態では、これらフラップ9で道S(図4)と滑り止め10の突部8との干渉を抑制するガードを構成している。道Sは荷台Aの出入口部分の床面に設置された例えば回動反転式の板状の部材であり、反転回動させて荷台Aの後方に突出させると、上昇時の荷受台3と荷台Aの床面との間に図4のように架け渡される。道Sは左右方向には荷台Aの出入口の幅の一般に少なくとも過半部分を占める長さがあるが、上昇時の荷受台3と荷台Aの床面との間の隙間に跨れば良いため前後方向には短尺である。展開して荷台Aから後方に突出した状態でも道Sの先端がフラップ9を超えることはない(言い換えれば道Sの先端に接触するようにフラップ9の寸法が設定されている)。このような構成により、車両の荷台Aに道Sが設けられている場合、車両の荷台Aから突出した道
に対し、荷受台3の上昇時に倒伏姿勢のフラップ9が突部8に先行して当たるようになっている。荷受台3の上昇時に突部8に先行してフラップ9が道Sを押し上げ、道Sは突部8には接触しない。道Sが突部8に拘束されない構成である。
【0027】
なお、フラップ9の上面9sは凹凸のないフラットな面であって良いが、道Sが引っ掛からない程度であれば凹凸により上面9sに滑り止めを形成することもできる。本実施形態ではフラップ9の上面9sに突部8の高さ寸法H1の半分以下の深さ寸法の複数の凹部9dを並べて滑り止めが形成してある。本実施形態ではフラップ9を押し出し成形することを想定して、左右に延びる直線状の溝を凹部9dとして例示している。左右に延びる直線状の複数の凹部9dが前後に所定間隔で並んだ構成である。凹部9dの深さはフラップ9が切り欠き3nを閉じた姿勢(倒伏姿勢)で突部8の上面よりも凹部9dの最下部が高いか等しくなるように設定してある(本例では突部8の上面よりも凹部9dの最下部が高い)。平面視で凹部9dの総面積はフラップ9の上面9sの面積の半分未満で凹部9dも浅いため、凹部9dには道Sが引っ掛かり難くなっている。このような滑り止めは荷受面3sの滑り止め10にグリップ力は及ばないが、荷受面3sに占めるフラップ9の面積は小さく実用上の影響はない。
【0028】
-効果-
(1)図10は比較例を表す図である。同図の比較例ではフラップFの上面Fsが荷受台Pの荷受面Psと面一になっており、滑り止めを構成する突部PpはフラップFの上面Fsよりも上方に突出している。このような構成では荷受台Pをリフトアーム(不図示)の回動動作により上昇させる際、道Sが存在するとフラップFを超えて突出した突部Ppが同図のように道Sの先端部に干渉し得る。この状態で更に荷受台Pが上昇すると、荷受台Pが荷台に接近することで突部Ppに拘束された道Sに圧縮力が加わり得る。
【0029】
それに対し、本実施形態においては、フラップ9の上面9sと荷受面3sとの間に段差があり、滑り止め10を構成する突部8よりもフラップ9の上面9sが高くしてある。これにより荷受台3の上昇時に突部8に先行して道Sにフラップ9が当たり、突部8との干渉による圧縮力の付加から道Sをガードすることができる。よって、荷受面3sに設けた滑り止め10で車両の荷台Aに設けた道Sを拘束することによる荷受台上昇時の道Sの変形を抑制できる。
【0030】
(2)フラップ自体は例えば特開2012-183090号公報にも記載されているように従来から必要に応じて荷受台昇降装置に採用されてきた構成要素である。先に比較例に示した通りフラップは上面が荷受面と面一になるように設けられるのが通常であるが、本実施形態ではこのフラップを利用してガードを構成している。フラップ9の設置位置を通常よりも僅かに高くするのみで足り、上記効果(1)を得るのに部品点数の増加を伴わない点もメリットである。
【0031】
<第2実施形態>
図6は本発明の第2実施形態に係る荷受台昇降装置の荷受台の基端側の部分の側面図で図4に対応する図、図7はその平面図である。本実施形態はフラップ9を突部8よりも高く配置する代わりに新たにガード91を設けた例である。ガード91は複数の突部8に跨って前後に延びる棒状部材(この形状は例示である)であり、荷受台3の基端側の部分であって道Sの先端が接触する領域において左右方向の少なくとも一箇所に設けられている。ガード91は例えば荷受台3とは別に製作し、溶接やボルト等で荷受面3sに後付けすることができる。荷受面3sと直交する方向が高さ方向であるとして、ガード91は滑り止め10を構成する各突部8と荷受面3sからの高さが等しい(H1=H2)。このようなガード91であっても、またガード91が突部8と同じ高さでも、荷受台3の上昇時に突部8に先行してガード91が道Sに当たり、突部8に道Sが干渉して拘束されないようにすることができる。また、単純形状のガード91を後付けするだけであるため、荷受台3の設計変更が不要であり、既存の荷受台昇降装置にも容易に適用できる。
【0032】
<変形例>
第1実施形態ではフラップ9の上面9sが突部8の上面よりも高い構成を例示したが、第2実施形態でガード91の上面91sの高さを突部8の上面の高さに揃えたようにフラップ9の上面9sと突部8の上面を同じ高さにしても良い。反対に第2実施形態ではガード91の上面91sの高さを突部8の上面の高さに揃えた構成を例示したが、図8に例示したようにガード91の上面91sが突部8の上面よりも高い構成としても良い。また、荷受台3の昇降軌道は決まっているので荷受台3に道Sが接触する部位も概ね一定である。従ってガード91の前後の長さは図9に例示したように最小限で足りる。同図の例は突部8の前後の間隔寸法にガード91の前後寸法を設定し、前後に隣接する2つの突部8にのみ跨るようにガード91を設置している。これらの例でも同様の効果を得ることができる。
【0033】
また、以上の例では荷受台3を押し出し成形により製作することを想定しているため、左右方向に延びる複数の突部8で構成された滑り止め10を例示したが、滑り止めのパターンはこれに限定されない。例えばドット状の突部を規則的に配列した滑り止めや例えば特許第5977925号公報の図3に開示されているような滑り止めを含め、道Sが引っ掛かり得る滑り止めを荷受面に備えた荷受台昇降装置であれば本発明を適用して同様の効果を得ることができる。
【0034】
また、アームの回動運動により荷受台を昇降させるタイプの荷受台昇降装置であれば本発明を適用することができ、本発明の適用対象は図1図3に示したような荷受台を荷台の後面に沿って起立させて格納する荷受台昇降装置に限定されない。例えば車両の車枠の下側に荷受台を格納する床下格納式の荷受台昇降装置(特開2018-030564号公報等)にも本発明は適用可能である。また上記実施形態のように荷台の後面に沿って荷受台を起立させて格納するタイプの荷受台昇降装置には、床下格納式の機構を併せ持つものもある(特開2008-189189号公報等)。このようなタイプの荷受台昇降装置にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
2…リフトアーム、3…荷受台、3n…切り欠き、3s…荷受面、8…突部、9…フラップ(ガード)、9d…凹部、9s…フラップの上面、10…滑り止め、91…ガード、A…車両の荷台、H1…突部の上面の高さ、H2…フラップの上面の高さ、S…道
図1
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図10