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特許7123679フォトマスクの修正方法、フォトマスクの製造方法、フォトマスク及び表示装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】フォトマスクの修正方法、フォトマスクの製造方法、フォトマスク及び表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/72 20120101AFI20220816BHJP
   G03F 1/32 20120101ALI20220816BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
G03F1/72
G03F1/32
G03F7/20 501
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2018137968
(22)【出願日】2018-07-23
(65)【公開番号】P2019032520
(43)【公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2017152315
(32)【優先日】2017-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】三好 将之
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 敬
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0157134(US,A1)
【文献】特開2007-171651(JP,A)
【文献】特開2016-071059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 1/00~1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に、遮光膜及び半透光膜がそれぞれパターニングされて形成された、透光部、遮光部、及び幅d1(μm)の半透光部を有する転写用パターンを備えたフォトマスクの修正方法であって、
前記半透光部は、前記透光部の近傍に、前記遮光部を介して配置され、
前記半透光部に生じた欠陥を特定する工程と、
特定された前記欠陥の位置に修正膜を形成して、幅d2(μm)をもつ修正半透光部を形成する、修正膜形成工程と、を有する修正方法において、
d1<3.0であり、
d1およびd2は、前記フォトマスクを露光する露光装置が解像しない寸法であり、
前記半透光膜は、露光光に含まれる代表波長に対して透過率T1(%)を有するとともに、前記代表波長の光の位相を、略180度シフトする位相シフト特性をもち、
前記修正膜は、前記代表波長に対して、透過率T2(%)を有するとともに、前記代表波長の光の位相を略180度シフトする位相シフト特性をもち、
T2>T1かつd2<d1であるか、又は、
T2<T1かつd2>d1であることを特徴とする、フォトマスクの修正方法。
【請求項2】
T2>T1であり、T1とT2の差は、2~45の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のフォトマスクの修正方法。
【請求項3】
d2<d1であり、d1とd2の差は、0.05~2.0であることを特徴とする、請求項1または2に記載のフォトマスクの修正方法。
【請求項4】
前記修正膜形成工程の前または後に、前記修正半透光部に隣接する位置に、遮光性の補充膜を形成することを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のフォトマスクの修正方法。
【請求項5】
前記半透光部は、前記透光部の近傍に前記遮光部を介して配置され、前記透光部を透過する前記露光光が被転写体上に形成する光強度分布を変化させることにより、焦点深度を増加させるための補助パターンを構成することを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のフォトマスクの修正方法。
【請求項6】
前記修正方法を適用する前記転写用パターンは、被転写体上にホールパターンを形成するためのものであり、
前記透光部からなる、径W1(μm)の主パターンと、
前記主パターンの近傍に、前記遮光部を介して配置された、前記半透光部からなる、幅d1(μm)の補助パターンと、
前記主パターン及び前記補助パターンを除いた領域にあって、前記主パターン及び前記補助パターンを囲む遮光部を含むことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のフォトマスクの修正方法。
【請求項7】
前記補助パターンは、前記遮光部を介して主パターンの周囲を囲む、多角形帯又は円形帯の領域であることを特徴とする、請求項に記載のフォトマスクの修正方法。
【請求項8】
前記主パターンの幅中心と前記補助パターンの幅中心との距離を距離P1とし、前記主パターンの幅中心と、前記修正半透光部からなる修正補助パターンの幅中心との距離をP2とするとき、P1=P2であることを特徴とする、請求項又はに記載のフォトマスクの修正方法。
【請求項9】
前記転写用パターンは、表示装置製造用のパターンである、請求項1~のいずれか1項に記載のフォトマスクの修正方法。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載のフォトマスクの修正方法を含む、フォトマスクの製造方法。
【請求項11】
透明基板上に透光部、遮光部、及び半透光部を含む転写用パターンを有するフォトマスクにおいて、
前記転写用パターンは、
前記透明基板が露出する前記透光部と、
前記透明基板上に半透光膜が形成されてなり、前記透光部の近傍に、前記遮光部を介して配置された、幅d1(μm)をもつ前記半透光部と、
前記透光部と前記半透光部を除いた領域にある前記遮光部を含むとともに、
前記透明基板上に、前記半透光膜と異なる材料を含む修正膜が形成されてなり、前記透光部の近傍に、前記遮光部を介して配置された、幅d2(μm)をもつ修正半透光部を含み、
d1<3.0であり、
d1およびd2は、前記フォトマスクを露光する露光装置が解像しない寸法であり、
前記半透光膜は、露光光に含まれる代表波長に対して透過率T1(%)を有するとともに、前記代表波長の光の位相を、略180度シフトする位相シフト特性をもち、
前記修正膜は、前記代表波長に対して、透過率T2(%)を有するとともに、前記代表波長の光の位相を略180度シフトする位相シフト特性をもち、
T2>T1かつd2<d1であるか、又は、
T2<T1かつd2>d1であることを特徴とする、フォトマスク。
【請求項12】
透明基板上に透光部、遮光部、及び半透光部を含む転写用パターンを有するフォトマスクであって、
前記転写用パターンは、正常な転写用パターンと、修正された転写用パターンとを有し、
前記正常な転写用パターンは、
前記透明基板が露出する前記透光部と、
前記透明基板上に半透光膜が形成されてなり、前記透光部の近傍に、前記遮光部を介して配置された、幅d1(μm)をもつ前記半透光部と、
前記透光部と前記半透光部を除いた領域にある前記遮光部を含み、
前記修正された転写用パターンは、
前記透明基板が露出する前記透光部と、
前記透明基板上に、前記半透光膜と異なる材料を含む修正膜が形成されてなり、前記透光部の近傍に、前記遮光部又は補充遮光部を介して配置された、幅d2(μm)をもつ修正半透光部と、
前記透光部と前記修正半透光部を除いた領域にある前記遮光部を含み、
d1<3.0であり、
前記半透光膜は、露光光に含まれる代表波長に対して透過率T1(%)を有するとともに、前記代表波長の光の位相を、略180度シフトする位相シフト特性をもち、
前記修正膜は、前記代表波長に対して、透過率T2(%)を有するとともに、前記代表波長の光の位相を、略180度シフトする位相シフト特性をもち、
T2>T1かつd2<d1であるか、又は、
T2<T1かつd2>d1であることを特徴とする、フォトマスク。
【請求項13】
透明基板上に透光部、遮光部、及び半透光部を含む転写用パターンを有するフォトマスクであって、
前記転写用パターンは、
前記透光部からなる、径W1(μm)の主パターンと、
前記透明基板上に半透光膜が形成されてなり、前記主パターンの近傍に、前記遮光部を介して配置された、前記半透光部からなる、幅d1(μm)の補助パターンと、
前記主パターンと補助パターンを除いた領域にある、前記遮光部を含むとともに、
前記透明基板上に、前記半透光膜と異なる材料を含む修正膜が形成されてなり、前記主パターンの近傍に、前記遮光部を介して配置された、修正半透光部からなる幅d2(μm)の修正補助パターンを含み、
d1<3.0であり、
前記半透光膜は、露光光に含まれる代表波長に対して透過率T1(%)を有するとともに、前記代表波長の光の位相を、略180度シフトする位相シフト特性をもち、
前記修正膜は、前記代表波長に対して、透過率T2(%)を有するとともに、前記代表波長の光の位相を、略180度シフトする位相シフト特性をもち、
T2>T1かつd2<d1であるか、又は、
T2<T1かつd2>d1であることを特徴とする、フォトマスク。
【請求項14】
透明基板上に透光部、遮光部、及び半透光部を含む転写用パターンを有するフォトマスクであって、
前記転写用パターンは、正常な転写用パターンと、修正された転写用パターンとを有し、
前記正常な転写用パターンは、
前記透光部からなる、径W1(μm)の主パターンと、
前記透明基板上に半透光膜が形成されてなり、前記主パターンの近傍に、前記遮光部を介して配置された、前記半透光部からなる、幅d1(μm)の補助パターンと、
前記主パターンと補助パターンを除いた領域にある、前記遮光部を含み、
前記修正された転写用パターンは、
前記透光部からなる、径W1(μm)の主パターンと、
前記透明基板上に、前記半透光膜と異なる材料を含む修正膜が形成されてなり、前記主パターンの近傍に、前記遮光部又は補充遮光部を介して配置された、修正半透光部からなる、幅d2(μm)の修正補助パターンと、
前記主パターンと前記修正補助パターンを除いた領域にある、前記遮光部を含み、
d1<3.0であり、
前記半透光膜は、露光光に含まれる代表波長に対して透過率T1(%)を有するとともに、前記代表波長の光の位相を、略180度シフトする位相シフト特性をもち、
前記修正膜は、前記代表波長に対して、透過率T2(%)を有するとともに、前記代表波長の光の位相を、略180度シフトする位相シフト特性をもち、
T2>T1かつd2<d1であるか、又は、
T2<T1かつd2>d1であることを特徴とする、フォトマスク。
【請求項15】
前記主パターンの幅中心と前記補助パターンの幅中心との距離を距離P1とし、前記主パターンの幅中心と、前記修正補助パターンの幅中心との距離をP2とするとき、P1=P2であることを特徴とする、請求項13又は14に記載のフォトマスク。
【請求項16】
前記補助パターンは、前記遮光部を介して主パターンの周囲を囲む、多角形帯又は円形帯の領域に含まれる形状をもつことを特徴とする、請求項1315のいずれか1項に記載のフォトマスク。
【請求項17】
前記幅d1(μm)の補助パターンは、前記遮光部を介して主パターンの周囲を囲む、八角形帯の領域の一部を構成し、前記修正補助パターンは、前記八角形帯の領域に含まれる形状をもつ、請求項13に記載のフォトマスク。
【請求項18】
前記半透光部は、前記透光部の近傍に、前記遮光部を介して配置され、前記透光部を透過する前記露光光が被転写体上に形成する転写像に対して、焦点深度を増加させるための補助パターンであることを特徴とする、請求項1117のいずれか1項に記載のフォトマスク。
【請求項19】
d1およびd2は、前記フォトマスクを露光する露光装置が解像しない寸法であることを特徴とする、請求項1218のいずれか1項に記載のフォトマスク。
【請求項20】
前記転写用パターンは、前記修正半透光部に隣接する位置に、遮光性の補充膜からなる補充遮光部を有することを特徴とする、請求項1119のいずれか1項に記載のフォトマスク。
【請求項21】
T2>T1であり、T1とT2の差は、2~45の範囲であることを特徴とする、請求項1120のいずれか1項に記載のフォトマスク。
【請求項22】
d2<d1であり、d1とd2の差は、0.05~2.0であることを特徴とする、請求項1121のいずれか1項に記載のフォトマスク。
【請求項23】
前記転写用パターンは、被転写体上にホールパターンを形成するためのものである、請求項1122のいずれか1項に記載のフォトマスク。
【請求項24】
請求項1123のいずれか1項に記載のフォトマスクを用い、i線、h線、g線のいずれかを含む露光光を前記転写用パターンに照射して、被転写体上にパターン転写を行なうことを含む、表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイに代表される、表示装置の製造に有利に用いられるフォトマスクの修正(リペア)方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多階調フォトマスクの半透光部に欠落欠陥(白欠陥)や、余剰欠陥(黒欠陥)欠陥が生じたとき、これを修正する方法が記載されている。ここでは、透明基板が露出した透光部と、修正膜が形成された修正部とのi線~g線の波長光に対する位相差が80度以下となるように、修正膜を形成している。
【0003】
また、特許文献2には、透明基板上に成膜された、半透光膜及び遮光膜をそれぞれパターニングすることによって形成された転写用パターンを備えるフォトマスクであって、前記半透光膜は、i線~g線の波長範囲にある代表波長の光の位相を略180度シフトするとともに、前記代表波長に対する透過率T1(%)をもち、前記遮光膜は、前記代表波長の光に対して、前記半透光膜の透過率T1(%)より低い透過率T2(%)をもち、前記転写用パターンは、前記透明基板が露出する透光部からなる径W1(μm)の主パターンと、前記主パターンの近傍に配置され、前記透明基板上に前記半透光膜が形成された半透光部からなる幅d(μm)の補助パターンと、前記転写用パターンのうち前記主パターン及び前記補助パターンが形成される以外の領域に配置され、前記透明基板上に少なくとも前記遮光膜が形成された遮光部とを有し、W1、T1及びdが所定の関係を有する、フォトマスクが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-198006号公報
【文献】特開2016-024264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、液晶表示装置やEL表示装置などを含む表示装置においては、より明るく、かつ省電力であるとともに、高精細、高速表示、広視野角といった表示性能の向上が望まれている。
【0006】
例えば、上記表示装置に用いられる薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、「TFT」)で言えば、TFTを構成する複数のパターンのうち、層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールが、確実に上層及び下層のパターンを接続させる作用をもたなければ正しい動作が保証されない。その一方、例えば液晶表示装置の開口率を極力大きくして、明るく、省電力の表示装置とするためには、コンタクトホールの径が十分に小さいことが求められるなど、表示装置の高密度化の要求に伴い、ホールパターンの径も微細化(例えば3μm未満)が望まれている。例えば、径が0.8μm以上2.5μm以下、更には、径が2.0μm以下のホールパターンが必要となり、具体的には0.8~1.8μmの径をもつパターンの形成も課題となる。
【0007】
ところで、表示装置に比べて、集積度が高く、パターンの微細化が顕著に進んだ半導体装置(LSI)製造用フォトマスクの分野では、高い解像性を得るために、露光装置には高い開口数NA(例えば0.2以上)の光学系を適用し、露光光の短波長化がすすめられた経緯がある。その結果、この分野では、KrFやArFのエキシマレーザー(それぞれ、248nm、193nmの単一波長)が多用されるようになった。
【0008】
その一方、表示装置製造用のリソグラフィ分野では、解像性向上のために、上記のような手法が適用されることは、一般的ではなかった。例えばこの分野で用いられる露光装置がもつ光学系のNA(開口数)は、0.08~0.15程度である。また、露光光源もi線、h線、又はg線が多用され、主にこれらを含んだブロード波長光源を使用することで、大面積(例えば、一辺が300~2000mmの四角形)を照射するための光量を得て、生産効率やコストを重視する傾向が強い。
【0009】
ところが、表示装置の製造においても、上記のようにパターンの微細化要請が高くなっている。ここで、半導体装置製造用の技術を、表示装置の製造にそのまま適用することには、いくつかの問題がある。例えば、高NA(開口数)をもつ高解像度の露光装置への転換には、大きな投資が必要になり、表示装置の価格との整合性が得られない。また、露光波長の変更(ArFエキシマレーザーのような短波長を、単一波長で用いる)については、大面積をもつ表示装置に適用すれば、生産効率が低下するほか、やはり相当の投資を必要とする点で不都合である。つまり、従来にないパターンの微細化を追求する一方、既存のメリットであるコストや効率を失うことはできないという点が、表示装置製造用フォトマスクの問題点となっている。
【0010】
ところで、特許文献1に記載された多階調フォトマスクは、主として表示装置製造の分野で、生産効率を向上させるフォトマスクとして、知られている。例えば、転写用パターンとして、遮光部と透光部を有する既存のバイナリマスクに対して、ハーフトーン部(半透光部)を加えた、多階調(例えば3階調)のパターンを用いることにより、表示装置の製造工程において、フォトリソグラフィ工程の繰返し回数を減らすことができる。このマスクを使用すると、1回の露光により、被転写体上に、レジスト残膜厚が領域によって異なる、立体構造をもつレジストパターンを形成することができる。このレジストパターンは、下層膜のエッチングに際して、エッチングマスクとして用いられたあと、アッシング等により減膜され、新たな形状のエッチングマスクとして機能することから、1回の露光工程により、2層分のパターニングが行なえる。
【0011】
特許文献1に記載された、フォトマスクの欠陥修正方法は、多階調フォトマスクの半透光部に生じた欠陥に適用するものである。この文献で、透明基板上に修正膜が形成された修正部は、透光部に対して、位相差が80度以下である。更に、この修正部の、正常な半透光部に対する位相差も80度以下とすることが記載されている。
【0012】
一方、特許文献2には、透光部からなる主パターンと、その近傍に配置された、半透光部からなる補助パターンと、それら以外の領域に形成された遮光部をもつフォトマスクが記載されている。このフォトマスクは、主パターンと補助パターンの双方を透過する露光光の相互干渉を制御し、透過光の空間像を大幅に改善することができると記載されている。このフォトマスクの補助パターンには、上記特許文献1と異なり、露光光の位相を略180度シフトする半透光膜が用いられている。そして、このフォトマスクは、表示パネル基板などの被転写体上に、安定して微細な孤立ホールを形成する際に有利に用いることができる。
【0013】
このように、主パターンに対して、被転写体上に直接解像しない、適切な設計の補助パターンを配置することは、主パターンの転写性を向上させる際に有効である。但し、このような補助パターンは、精緻に設計された微細パターンであり、その位置に欠陥が生じた場合の手当てが課題になる。
【0014】
一般に、フォトマスクの製造過程において、パターン欠陥の発生をゼロとすることは極めて困難である。例えば、膜に生じるピンホールや異物(パーティクル)の混入などの理由により、膜の欠落欠陥(以下、白欠陥ともいう)、又は余剰欠陥(以下黒欠陥)の発生が生じることがある。こうした場合を想定し、これを検査にて検出し、修正装置によって、修正(リペア)する工程が設けられる。修正の手法は、白欠陥に対しては、修正膜を堆積させ、黒欠陥に対しては、余剰部分をエネルギー線の照射によって除去し、必要に応じて修正膜を堆積させることが一般的である。主に、FIB(focused Ion Beam)装置、又は、レーザーCVD(Chemical Vapor Deposition)装置によって、白欠陥、及び、黒欠陥を修正することが可能である。
【0015】
ところで、本発明者らの検討によると、上記手法を用いたとしても、半透光膜の種類によっては、修正が困難であるという課題が生じた。例えば、露光光の位相をシフトする機能をもつ半透光膜(すなわち位相シフト膜)に生じた欠陥を修正するためには、同様な光学特性をもつ修正膜の開発が望まれる。ここで、フォトマスクに用いられる位相シフト膜とは、露光光の代表波長の光の位相を、略180度反転させる位相シフト作用をもつものである上、該代表波長の光に対して、特定の透過率を有するものである。
【0016】
従って、修正膜においても、上記位相シフト膜の光学特性を参照し、これとほぼ同等のものとすることが望まれる。
【0017】
例えばレーザCVD装置において修正膜の形成を行なう場合を例として説明する。まず、検出した欠陥に対して、修正を行なう修正対象領域を決定する。修正対象領域は、半透光膜(以下、正常膜ともいう)に生じた白欠陥、又は、黒欠陥を除去したことで形成された白欠陥とすることができる。この修正対象領域に対して、レーザCVD法により、局所的な修正膜(CVD膜ともいわれる)を形成する。
【0018】
このとき、フォトマスク表面には、修正膜の原料となる原料ガスを供給して、原料ガス雰囲気を形成する。修正膜の原料としては、金属カルボニルが好ましく使用される。具体的には、クロムカルボニル(Cr(CO))、モリブデンカルボニル(Mo(CO))、タングステンカルボニル(W(CO))などが例示される。フォトマスクの修正膜としては、耐薬性の高いクロムカルボニルが好ましく用いられる。
【0019】
たとえば、修正膜の原料にクロムカルボニルを用いた場合は、クロムヘキサカルボニル(Cr(CO))を加熱して昇華させ、これをキャリアガス(Arガス等)とともにフォトマスクの修正対象部分に導く。この原料ガス雰囲気中にレーザ光を照射して、レーザの熱/光エネルギー反応により、原料ガスが分解し、基板上に生成物が堆積することから、クロムを主材料とする修正膜が形成される。
【0020】
但し、位相シフト膜の修正においては、修正対象領域に堆積する修正膜の透過率を所望の範囲内とするのみでなく、位相シフト特性(略180度)を、同時に充足させる必要があり、条件が狭い。
【0021】
更に、透過率が比較的高い(例えば20%以上)位相シフト膜の修正は、より困難である。透過率が高くなるとともに、修正膜の膜厚が小さくなり、わずかな膜厚変動によって、透過率の変動割合が大きく、所定の仕様を満足させることが難しくなるからである。
【0022】
以上のように、位相シフト膜の修正においては、課題が多く、安定した条件で、効率よく修正が行われる方法の提案が課題であると本発明者らは考えた。
【0023】
そこで本発明は、安定した条件で、効率よく位相シフト膜を修正する方法及びその関連技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
(第1の態様)
透明基板上に、遮光膜及び半透光膜がそれぞれパターニングされて形成された、透光部、遮光部、及び幅d1(μm)の半透光部を有する転写用パターンを備えたフォトマスクの修正方法であって、
前記半透光部に生じた欠陥を特定する工程と、
特定された前記欠陥の位置に修正膜を形成して、幅d2(μm)をもつ修正半透光部を形成する、修正膜形成工程と、を有する修正方法において、
d1<3.0であり、
前記半透光膜は、露光光に含まれる代表波長に対して透過率T1(%)を有するとともに、前記代表波長の光の位相を、略180度シフトする位相シフト特性をもち、
前記修正膜は、前記代表波長に対して、透過率T2(%)を有するとともに、前記代表波長の光の位相を略180度シフトする位相シフト特性をもち、
T2>T1かつd2<d1であるか、又は、
T2<T1かつd2>d1であることを特徴とする、フォトマスクの修正方法である。
(第2の態様)
本発明の第2の態様は、
d1およびd2は、前記フォトマスクを露光する露光装置が解像しない寸法であることを特徴とする、上記第1の態様に記載のフォトマスクの修正方法である。
(第3の態様)
本発明の第3の態様は、
前記半透光部は、前記透光部の近傍に、前記遮光部を介して配置されたものであることを特徴とする、上記第1又は第2の態様に記載のフォトマスクの修正方法である。
(第4の態様)
本発明の第4の態様は、
T2>T1であり、T1とT2の差は、2~45の範囲であることを特徴とする、上記第1~第3の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクの修正方法である。
(第5の態様)
本発明の第5の態様は、
d2<d1であり、d1とd2の差は、0.05~2.0であることを特徴とする、上記第1~第4の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクの修正方法である。
(第6の態様)
本発明の第6の態様は、
前記修正膜形成工程の前または後に、前記修正半透光部に隣接する位置に、遮光性の補充膜を形成することを特徴とする、上記第1~第5の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクの修正方法である。
(第7の態様)
本発明の第7の態様は、
前記半透光部は、前記透光部の近傍に前記遮光部を介して配置され、前記透光部を透過する前記露光光が被転写体上に形成する光強度分布を変化させることにより、焦点深度を増加させるための補助パターンを構成することを特徴とする、上記第1~第6の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクの修正方法である。
(第8の態様)
本発明の第8の態様は、
前記修正方法を適用する前記転写用パターンは、被転写体上にホールパターンを形成するためのものであり、
前記透光部からなる、径W1(μm)の主パターンと、
前記主パターンの近傍に、前記遮光部を介して配置された、前記半透光部からなる、幅d1(μm)の補助パターンと、
前記主パターン及び前記補助パターンを除いた領域にあって、前記主パターン及び前記補助パターンを囲む遮光部を含むことを特徴とする、上記第1~第7の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクの修正方法である。
(第9の態様)
本発明の第9の態様は、
前記補助パターンは、前記遮光部を介して主パターンの周囲を囲む、多角形帯又は円形帯の領域であることを特徴とする、上記第8の態様に記載のフォトマスクの修正方法である。
(第10の態様)
本発明の第10の態様は、
前記主パターンの幅中心と前記補助パターンの幅中心との距離を距離P1とし、前記主パターンの幅中心と、前記修正半透光部からなる修正補助パターンの幅中心との距離をP2とするとき、P1=P2であることを特徴とする、上記第8又は第9の態様に記載のフォトマスクの修正方法である。
(第11の態様)
本発明の第11の態様は、
前記転写用パターンは、表示装置製造用のパターンである、上記第1~第10の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクの修正方法である。
(第12の態様)
本発明の第12の態様は、
上記第1~第11の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクの修正方法を含む、フォトマスクの製造方法である。
(第13の態様)
本発明の第13の態様は、
透明基板上に透光部、遮光部、及び半透光部を含む転写用パターンを有するフォトマスクにおいて、
前記転写用パターンは、
前記透明基板が露出する前記透光部と、
前記透明基板上に、幅d1(μm)の半透光膜が形成されてなる前記半透光部と、
前記透光部と前記半透光部を除いた領域にある前記遮光部を含むとともに、
前記透明基板上に、前記半透光膜と異なる材料を含む、幅d2(μm)の修正膜が形成されてなる、修正半透光部を含み、
d1<3.0であり、
前記半透光膜は、露光光に含まれる代表波長に対して透過率T1(%)を有するとともに、前記代表波長の光の位相を、略180度シフトする位相シフト特性をもち、
前記修正膜は、前記代表波長に対して、透過率T2(%)を有するとともに、前記代表波長の光の位相を略180度シフトする位相シフト特性をもち、
T2>T1かつd2<d1であるか、又は、
T2<T1かつd2>d1であることを特徴とする、フォトマスクである。
(第14の態様)
本発明の第14の態様は、
透明基板上に透光部、遮光部、及び半透光部を含む転写用パターンを有するフォトマスクであって、
前記転写用パターンは、正常な転写用パターンと、修正された転写用パターンとを有し、
前記正常な転写用パターンは、
前記透明基板が露出する前記透光部と、
前記透明基板上に半透光膜が形成されてなり、前記透光部の近傍に、前記遮光部を介して配置された、幅d1(μm)をもつ前記半透光部と、
前記透光部と前記半透光部を除いた領域にある前記遮光部を含み、
前記修正された転写用パターンは、
前記透明基板が露出する前記透光部と、
前記透明基板上に、前記半透光膜と異なる材料を含む修正膜が形成されてなり、前記透光部の近傍に、前記遮光部又は補充遮光部を介して配置された、幅d2(μm)をもつ修正半透光部と、
前記透光部と前記修正半透光部を除いた領域にある前記遮光部を含み、
d1<3.0であり、
前記半透光膜は、露光光に含まれる代表波長に対して透過率T1(%)を有するとともに、前記代表波長の光の位相を、略180度シフトする位相シフト特性をもち、
前記修正膜は、前記代表波長に対して、透過率T2(%)を有するとともに、前記代表波長の光の位相を、略180度シフトする位相シフト特性をもち、
T2>T1かつd2<d1であるか、又は、
T2<T1かつd2>d1であることを特徴とする、フォトマスクである。
(第15の態様)
本発明の第15の態様は、
透明基板上に透光部、遮光部、及び半透光部を含む転写用パターンを有するフォトマスクであって、
前記転写用パターンは、
前記透光部からなる、径W1(μm)の主パターンと、
前記透明基板上に半透光膜が形成されてなり、前記主パターンの近傍に、前記遮光部を介して配置された、前記半透光部からなる、幅d1(μm)の補助パターンと、
前記主パターンと補助パターンを除いた領域にある、前記遮光部を含むとともに、
前記透明基板上に、前記半透光膜と異なる材料を含む修正膜が形成されてなり、前記主パターンの近傍に、前記遮光部を介して配置された、修正半透光部からなる幅d2(μm)の修正補助パターンを含み、
d1<3.0であり、
前記半透光膜は、露光光に含まれる代表波長に対して透過率T1(%)を有するとともに、前記代表波長の光の位相を、略180度シフトする位相シフト特性をもち、
前記修正膜は、前記代表波長に対して、透過率T2(%)を有するとともに、前記代表波長の光の位相を、略180度シフトする位相シフト特性をもち、
T2>T1かつd2<d1であるか、又は、
T2<T1かつd2>d1であることを特徴とする、フォトマスクである。
(第16の態様)
本発明の第16の態様は、
透明基板上に透光部、遮光部、及び半透光部を含む転写用パターンを有するフォトマスクであって、
前記転写用パターンは、正常な転写用パターンと、修正された転写用パターンとを有し、
前記正常な転写用パターンは、
前記透光部からなる、径W1(μm)の主パターンと、
前記透明基板上に半透光膜が形成されてなり、前記主パターンの近傍に、前記遮光部を介して配置された、前記半透光部からなる、幅d1(μm)の補助パターンと、
前記主パターンと補助パターンを除いた領域にある、前記遮光部を含み、
前記修正された転写用パターンは、
前記透光部からなる、径W1(μm)の主パターンと、
前記透明基板上に、前記半透光膜と異なる材料を含む修正膜が形成されてなり、前記主パターンの近傍に、前記遮光部又は補充遮光部を介して配置された、修正半透光部からなる、幅d2(μm)の修正補助パターンと、
前記主パターンと前記修正補助パターンを除いた領域にある、前記遮光部を含み、
d1<3.0であり、
前記半透光膜は、露光光に含まれる代表波長に対して透過率T1(%)を有するとともに、前記代表波長の光の位相を、略180度シフトする位相シフト特性をもち、
前記修正膜は、前記代表波長に対して、透過率T2(%)を有するとともに、前記代表波長の光の位相を、略180度シフトする位相シフト特性をもち、
T2>T1かつd2<d1であるか、又は、
T2<T1かつd2>d1であることを特徴とする、フォトマスクである。
(第17の態様)
本発明の第17の態様は、
前記主パターンの幅中心と前記補助パターンの幅中心との距離を距離P1とし、前記主パターンの幅中心と、前記修正補助パターンの幅中心との距離をP2とするとき、P1=P2であることを特徴とする、上記第15又は第16の態様に記載のフォトマスクである。
(第18の態様)
本発明の第18の態様は、
前記補助パターンは、前記遮光部を介して主パターンの周囲を囲む、多角形帯又は円形帯の領域に含まれる形状をもつことを特徴とする、上記第15~第17の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクである。
(第19の態様)
本発明の第19の態様は、
前記幅d1(μm)の補助パターンは、前記遮光部を介して主パターンの周囲を囲む、八角形帯の領域の一部を構成し、前記修正補助パターンは、前記八角形帯の領域に含まれる形状をもつ、上記第15の態様に記載のフォトマスクである。
(第20の態様)
本発明の第20の態様は、
前記半透光部は、前記透光部の近傍に、前記遮光部を介して配置され、前記透光部を透過する前記露光光が被転写体上に形成する転写像に対して、焦点深度を増加させるための補助パターンであることを特徴とする、上記第13~第19の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクである。
(第21の態様)
本発明の第21の態様は、
d1およびd2は、前記フォトマスクを露光する露光装置が解像しない寸法であることを特徴とする、上記第13~第20の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクである。
(第22の態様)
本発明の第22の態様は、
前記転写用パターンは、前記修正半透光部に隣接する位置に、遮光性の補充膜からなる補充遮光部を有することを特徴とする、上記第13~第21の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクである。
(第23の態様)
本発明の第23の態様は、
T2>T1であり、T1とT2の差は、2~45の範囲であることを特徴とする、上記第13~第22の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクである。
(第24の態様)
本発明の第24の態様は、
d2<d1であり、d1とd2の差は、0.05~2.0であることを特徴とする、上記第13~第23の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクである。
(第25の態様)
本発明の第25の態様は、
前記転写用パターンは、被転写体上にホールパターンを形成するためのものである、上記第13~第24の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクである。
(第26の態様)
本発明の第26の態様は、
上記第13~第25の態様のいずれか1つに記載のフォトマスクを用い、i線、h線、g線のいずれかを含む露光光を前記転写用パターンに照射して、被転写体上にパターン転写を行なうことを含む、表示装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、安定した条件で、効率よく位相シフト膜を修正する方法及びその関連技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】(a)は本発明の修正方法を適用する一態様としてのフォトマスク(参考例1)であって主パターンと、主パターンの近傍に配置された補助パターンとを含むフォトマスク(フォトマスクI)の平面模式図であり、(b)は(a)のA-A位置の断面模式図である。
図2】参考例2のフォトマスクのパターンを示す平面模式図である。
図3】参考例1及び2に係る各転写用パターンの性能評価を示す図である。
図4】フォトマスクIの半透光部に使用する半透光膜の透過率と、フォトマスクIが示す転写性能(DOF、EL)との間の関係をシミュレーションした結果を示す図である。
図5A】フォトマスクIの半透光部の透過率を50%としたとき、半透光部の幅d1の変化によって、DOFやELがどのように変化するか示す図である。
図5B】フォトマスクIの半透光部の透過率を60%としたとき、半透光部の幅d1の変化によって、DOFやELがどのように変化するかを示す図である。
図5C】フォトマスクIの半透光部の透過率を70%としたとき、半透光部の幅d1の変化によって、DOFやELがどのように変化するかを示す図である。
図5D】本発明の修正方法による、半透光部の透過率T2と幅d2の組合せの例を示す表である。
図6】フォトマスクIが有する八角形帯の半透光部を区画A~Hに区分した様子を示す平面模式図である。
図7】実施例1に係る黒欠陥の修正方法の例を示す平面模式図である。
図8】実施例2に係る白欠陥の修正方法の例を示す平面模式図である。
図9】実施例3に係る1つの主パターンに対する補助パターンが完全に欠落した黒欠陥の修正方法の例を示す平面模式図である。
図10】補助パターンと主パターンとの組み合わせを例示する平面模式図である。
図11】フォトマスクIの製造方法の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[修正を施すフォトマスク]
図1(a)、(b)には、本発明の修正方法を適用する一態様としてのフォトマスク(以下、フォトマスクI)を例示する。なお、符号は初出のもののみに付し、以降は省略する。
【0028】
このフォトマスクは、透明基板10上に、遮光膜12及び半透光膜11がそれぞれパターニングされて形成された、透光部4、遮光部3、半透光部5を有する転写用パターンを備えている。
【0029】
尚、本願でいう「転写用パターン」とは、フォトマスクを用いて得ようとするデバイスに基づいて設計されたパターンであり、後述の修正を施す対象とするもの、或いは、修正を施した修正済転写用パターンを、いずれも、その文脈に応じて呼ぶものとする。
【0030】
図1(a)に示すフォトマスクIは、主パターン1と、主パターンの近傍に配置された補助パターン2とを含む。
【0031】
フォトマスクIにおいて、主パターンは、透明基板が露出した透光部からなり、補助パターンは、透明基板上に半透光膜が形成された、幅d1をもつ半透光部からなる。また、主パターン及び補助パターン以外の領域であって、主パターンおよび補助パターンを囲む領域は、透明基板上に、少なくとも遮光膜が形成された、遮光部となっている。
ここで、前記主パターン及び前記補助パターンを囲む遮光部とは、図1に示すように、前記主パターンに隣接してそれを囲む領域、及び前記補助パターンに隣接してそれを囲む領域とを含む遮光部である。すなわち、フォトマスクIでは、主パターン及び補助パターンが形成された領域以外の領域からなる遮光部が形成されている。
尚、ここでいう、転写用パターンは、設計上上記形状を有する転写用パターンを意味し、欠陥が生じることによって、上記形状が一部変化したもの(例えば、主パターンを囲む遮光部が一部途切れた場合など)を除外するものではない。
【0032】
図1(b)に示すように、フォトマスクIでは、遮光部は、半透光膜と遮光膜とが、透明基板上に積層しているが、遮光膜のみによる遮光部であってもかまわない。半透光膜は、該フォトマスクを露光する際に用いる露光光、好ましくは、i線~g線の波長範囲にある代表波長の光の位相を略180度シフトする位相シフト特性を有し、上記代表波長に対する透過率T1(%)を有する。
【0033】
フォトマスクIの遮光膜は、上記代表波長に対して、その光学濃度はOD≧2である。好ましくはOD≧3である。
【0034】
フォトマスクIの主パターンは、被転写体(表示装置のパネルなど)にホールパターンを形成するものであることができ、その径(W1)は、4μm以下であることが好ましい。高画質の表示装置を実現するために必要な、このようなサイズの微細なホールパターンの転写が、既存のバイナリマスクでは困難であったが、フォトマスクIは、光の干渉作用を制御し、利用する設計によって、優れた転写性能を実現するものである。
【0035】
ここで半透光部からなる補助パターンは、透光部の近傍であって、透光部との間に遮光部を介した位置に配置されることにより、前記透光部を透過する前記露光光が被転写体上に形成する光強度分布を、転写に有利な方向に変化させるものである。この光強度分布の変化は、例えば、透光部を透過する光によって形成される光強度のピークをより高くしたり、転写像の焦点深度(Depth of Focus,DOF)を増加させる効用がある。更に、露光余裕度(Exposure Latitude,EL)においても有利であり、また、MEEF(マスク誤差増大係数)を増加させるといった効果をもたらすことができる。
多くの位相シフトマスクにおいては、半透光部と透光部とが隣接する境界において、逆位相の透過光を干渉させてコントラストの向上等の効果を得るのに対し、フォトマスクIは、半透光部と透光部の間に遮光部を介在させて離間させ、双方の透過光の光強度分布における外縁側(振幅の正負が反転する)の干渉を用い、上記のメリットを得るものである。
【0036】
フォトマスクIを露光することにより、上記主パターンに対応して、被転写体上に、径W2(μm)(但しW1≧W2)をもつ微細な主パターン(ホールパターン)が形成できる。
【0037】
具体的には、W1(μm)を、下記式(1)
0.8≦W1≦4.0 ・・・(1)
の関係となるようにすると本発明の効果がより有利に得られる。これは、径が0.8μm未満になると、被転写体上での解像が困難になること、及び、径が4.0μmを超えると、既存のフォトマスクによって比較的解像性が得やすいことに関係する。
【0038】
このとき被転写体上に形成される主パターン(ホールパターン)の径W2(μm)は、好ましくは、
0.6≦W2≦3.0
とすることができる。
【0039】
また、主パターンの径W1が、3.0(μm)以下であるとき、本発明の効果がより顕著に得られる。好ましくは、主パターンの径W1(μm)を、
1.0≦W1≦3.0
とすることができ、更には、
1.0≦W1<2.5
とすることができる。
そして、より微細な表示装置用転写用パターンを得る為に、
0.6≦W2<2.5
更には、
0.6≦W2<2.0
とすることも、可能である。
尚、径W1と径W2との関係を、W1=W2とすることもできるが、好ましくは、W1>W2とする。すなわち、β(μm)をバイアス値とするとき、
β=W1-W2>0(μm)
であるとき、
0.2≦β≦1.0、
より好ましくは、
0.2≦β≦0.8
とすることができる。フォトマスクIをこのように設計するとき、被転写体上における、レジストパターン残膜厚の損失を低減するなどの、有利な効果が得られる。
【0040】
上記において、主パターンの径W1は、円の直径、又はそれに近似される数値を意味する。例えば、主パターンの形状が正多角形であるときは、主パターンの径W1は、内接円の直径とする。主パターンの形状が、図1(a)に示すように正方形であれば、主パターンの径W1は一辺の長さである。転写された主パターンの径W2においても、円の直径又はそれに近似される数値とする点で同様である。
【0041】
もちろん、より微細化したパターンを形成しようとするとき、W1が2.5(μm)以下、又は2.0(μm)以下とすることも可能であり、更には、W1を1.5(μm)以下として本発明を適用することもできる。
【0042】
このような転写用パターンをもつフォトマスクの露光に用いる露光光の代表波長に対して、主パターンと補助パターンとの位相差φ1が、略180度である。このため、補助パターンに用いる半透光膜は、上記光の位相をφ1度シフトする位相シフト特性をもち、φ1は略180度とする。
【0043】
尚、ここで略180度とは、180度±15度の範囲内を意味する。半透光膜の位相シフト特性としては、好ましくは180±10度の範囲内であり、より好ましくは180±5度の範囲内である。
【0044】
尚、フォトマスクIの露光には、i線、h線、又はg線を含む露光光を用いるときに効果が顕著であり、特にi線、h線、及びg線を含むブロード波長光を露光光として適用することが好ましい。この場合、代表波長としては、i線、h線、g線のいずれかとすることができる。例えばg線を代表波長として、本態様のフォトマスクを構成することができる。
【0045】
半透光部のもつ光透過率T1は、以下のようにすることができる。すなわち、半透光部に形成された半透光膜の、上記代表波長に対する透過率が、T1(%)であるとき、
2≦T1≦95
このような半透光部透過率は、後述の、転写用パターンの光学像の制御を可能とする。
好ましくは、
20≦T1≦80
とする。
より好ましくは、
30≦T1≦70
更に好ましくは、
35≦T1≦65
である。尚、透過率T1(%)は、透明基板の透過率を基準としたときの、半透光膜における上記代表波長の透過率とする。この透過率は、後述のd1(補助パターンの幅)の設定と協調して、補助パターンを透過した、主パターンの透過光とは反転位相の光の光量を制御し、主パターンの透過光との干渉により、転写性を向上させる(例えばDOFを高める)作用に寄与するために、良好な範囲である。
【0046】
本態様のフォトマスクにおいて、主パターン及び補助パターンが形成された以外の領域に配置され、主パターン及び補助パターンを囲むように形成された遮光部は、以下のような構成とすることができる。
【0047】
遮光部は、露光光(i線~g線の波長範囲にある代表波長の光)を実質的に透過しないものであり、光学濃度OD≧2(好ましくはOD≧3)の遮光膜を、透明基板上に形成してなるものとすることができる。
【0048】
上記転写用パターンにおいて、補助パターンの幅をd1(μm)とするとき、
0.5≦√(T1/100)×d1≦1.5 ・・・(2)
が成り立つときに、フォトマスクIの転写性に優れた効果が得られる。このとき、主パターンの幅の中心と、補助パターンの幅方向の中心の距離を距離P1(μm)とし、距離P1は、
1.0<P1≦5.0
の関係が成り立つことが好ましい。
より好ましくは、距離P1は、
1.5<P1≦4.5
更に好ましくは、
2.5<P1≦4.5
とすることができる。このような距離P1を選択することにより、補助パターンの透過光と、主パターンの透過光との干渉が良好に相互作用を及ぼし、これによってDOFなどの優れた作用か得られる。
【0049】
補助パターンの幅d1(μm)は、フォトマスクに適用する露光条件(使用する露光装置)において、解像限界以下の寸法である。一般的に、表示装置製造用の露光装置における解像限界は、3.0μm~2.5μm程度(i線~g線)であることを考慮し、d1は、フォトマスクを露光する露光装置が解像しない寸法とする。具体的には、
d1<3.0
であり、好ましくは、
d1<2.5、
より好ましくは、
d1<2.0
更に好ましくは
d1<1.5
である。
【0050】
また、補助パターンの透過光を良好に主パターンの透過光と干渉させるため、
d1≧0.7
より好ましくは、
d1≧0.8
とすることが好ましい。
また、d1<W1であることが好ましく、d1<W2であることがより好ましい。
そして、このような場合に、フォトマスクIの転写性が良好であるとともに、後述の修正工程が好適に用いられる。
【0051】
また、より好ましくは、上記(2)の関係式は、下記の式(2)-1であり、更に好ましくは、下記の式(2)-2である。
0.7≦√(T1/100)×d1≦1.2 ・・・(2)-1
0.75≦√(T1/100)×d1≦1.0 ・・・(2)-2
すなわち、補助パターンを透過する反転位相の光量は、T1とd1のバランスが上記を充足するときに、優れた効果を奏する。
【0052】
上述のとおり、図1(a)に示すフォトマスクIの主パターンは正方形であるが、本発明を適用するフォトマスクはこれに限定されない。例えば、図10に例示されるように、フォトマスクの主パターンは、八角形や円を含む、回転対称な形状であることができる。そして回転対称の中心を、上記P1の基準となる中心とすることができる。
【0053】
また、図1に示すフォトマスクの補助パターンの形状は、八角形帯であり、この形状は、ホールパターンを形成するための補助パターンとして、安定して製造可能である上に光学的効果も高い。但し、本発明を適用するフォトマスクはこれに限定されない。例えば補助パターンの形状は、主パターンの中心に対して、3回対称以上の回転対称の形状に一定の幅を与えたものであることが好ましく、図10(a)~(f)に例示する。主パターンのデザインと補助パターンのデザインとしては、互いに図10(a)~(f)の異なるものを組み合わせても良い。
【0054】
例えば、補助パターンの外周が、正方形、正六角形、正八角形、正十角形、正十二角形、正十六角形等の正多角形(好ましくは正2n角形、ここでnは2以上の整数)又は円形である場合が例示される。そして、補助パターンの形状としては、補助パターンの外周と内周とがほぼ平行である形状、すなわち、ほぼ一定幅をもつ正多角形又は円形の帯のような形状であることが好ましい。この帯状の形状を、多角形帯又は円形帯ともよぶ。補助パターンの形状としては、このような正多角形帯又は円形帯が、主パターンの周囲を囲む形状であることが好ましい。このとき、主パターンの透過光と、補助パターンの透過光との光量のバランスを良好にすることができる。
【0055】
あるいは、補助パターンの形状は、遮光部を介して主パターンの周囲を完全に囲むことが好ましいが、上記多角形帯又は円形帯の一部が欠落した形状であっても良い。補助パターンの形状は、例えば、図10(f)のように、四角形帯の角部が欠落した形状であっても良い。
【0056】
尚、本発明の効果を妨げない限り、主パターン、補助パターンに加えて、付加的に他のパターンを用いてもかまわない。
【0057】
次にフォトマスクIの製造方法の一例について、図11を参照して以下に説明する。図1と同様、符号は初出のもののみに付し、以降は省略する。
【0058】
図11(a)に示すように、フォトマスクブランクを用意する。
【0059】
このフォトマスクブランクは、ガラス等からなる透明基板上に、半透光膜と遮光膜とがこの順に形成されており、更に第1フォトレジスト膜13が塗布されている。
【0060】
半透光膜は、上記の透過率T1と位相差φ1を充足し、かつ、ウェットエッチング可能な材料からなることが望ましい。但し、ウェットエッチングに際して生じる、サイドエッチングの量が大きくなりすぎると、CD精度の劣化や、アンダーカットによる上層膜の破壊など不都合が生じるため、膜厚の範囲は、2000Å以下であることが好ましい。例えば、300~2000Åの範囲、より好ましくは、300~1800Åである。ここでCDとは、Critical Dimensionであり、本明細書ではパターン幅の意味で用いる。
【0061】
また、これらの条件を充足するためには、半透光膜材料は、露光光に含まれる代表波長(例えばh線)の屈折率が1.5~2.9であることが好ましい。より好ましくは、1.8~2.4である。
【0062】
更に、半透光膜は、ウェットエッチングによって形成されるパターン断面(被エッチング面)が、透明基板主表面に対して垂直に近いことが好ましい。
【0063】
上記性質を考慮するとき、半透光膜の膜材料としては、金属とSiを含む材料、より具体的には、Zr、Nb、Hf、Ta、Mo、TiのいずれかとSiを含む材料、又は、これらの材料の酸化物、窒化物、酸化窒化物、炭化物、又は酸化窒化炭化物を含む材料からなるとすることができる。半透光膜の成膜方法としては、スパッタ法等公知の方法を適用することができる。
【0064】
フォトマスクブランクの半透光膜上には、遮光膜が形成される。成膜方法としては、半透光膜の場合と同様に、スパッタ法等公知の手段が適用できる。
【0065】
遮光膜の材料は、Cr又はその化合物(酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、又は酸化窒化炭化物)であっても良く、又は、Mo、W、Ta、Tiを含む金属のシリサイド、又は、該シリサイドの上記化合物であっても良い。但し、フォトマスクブランクの遮光膜の材料は、半透光膜と同様にウェットエッチングが可能であり、かつ、半透光膜の材料に対してエッチング選択性をもつ材料が好ましい。すなわち、半透光膜のエッチング剤に対して遮光膜は耐性をもち、また、遮光膜のエッチング剤に対して、半透光膜は耐性をもつことが望ましい。
【0066】
フォトマスクブランクの遮光膜上には、更に第1フォトレジスト膜が塗布される。本態様のフォトマスクは、好ましくはレーザ描画装置によって描画されるので、それに適したフォトレジストとする。第1フォトレジスト膜はポジ型でもネガ型でも良いが、以下ではポジ型として説明する。
【0067】
次に、図11(b)に示すように、第1フォトレジスト膜に対して、描画装置を用い、転写用パターンに基づいた描画データによる描画を行う(第1描画)。そして、現像によって得られた第1レジストパターン13pをマスクとして、遮光膜をウェットエッチングする。これによって、遮光部となる領域が画定し、また遮光部(遮光膜パターン12p)によって囲まれた補助パターンの領域が画定する。
【0068】
次に、図11(c)に示すように、第1レジストパターンを剥離する。
【0069】
次に、図11(d)に示すように、形成された遮光膜パターンを含む全面に、第2フォトレジスト膜14を塗布する。
【0070】
次に、図11(e)に示すように、第2フォトレジスト膜に対し、第2描画を行い、現像によって形成された第2レジストパターンを形成する。この第2レジストパターン14pと、上記遮光膜パターンとをマスクとして、半透光膜のウェットエッチングを行う。このエッチング(現像)によって、透明基板が露出する透光部からなる、主パターンの領域が形成される。尚、第2レジストパターンは、補助パターンとなる領域を覆い、透光部からなる主パターンとなる領域に開口をもつものであるともに、該開口から、遮光膜のエッジが露出するよう、第2描画の描画データに対してサイジングを行っておくことが好ましい。このようにすることで、第1描画と第2描画との間に相互に生じるアライメントずれを吸収し、転写用パターンのCD精度の劣化を防止できるため、主パターン及び補助パターンの重心を精緻に一致させることができる。
【0071】
次に、図11(f)に示すように、第2レジストパターンを剥離して、図1に示す本態様のフォトマスクIが完成する。
【0072】
但し、このようなフォトマスクの製造の際にウェットエッチングを適用することができる。ウェットエッチングは等方エッチングの性質をもつため、半透光膜の膜厚を考慮すると、加工の容易性の観点からは、補助パターンの幅d1は1μm以上、好ましくは1.2μm以上とすることが有用である。
【0073】
図1に示す、本態様のフォトマスクIについて、光学シミュレーションにより、その転写性能を比較し、評価した。
【0074】
ここでは、被転写体上に、ホールパターンを形成するための転写用パターンとして、参考例1及び参考例2を用意し、露光条件を共通に設定したときに、どのような転写性能を示すかについて、光学シミュレーションを行った。
【0075】
(参考例1)
参考例1のフォトマスクは、上記フォトマスクIと同様の構成をもつフォトマスクである。ここで透光部からなる主パターンは、一辺(径)(すなわちW1)が2.0(μm)の正方形とし、半透光部からなる補助パターンの幅d1が1.3(μm)の八角形帯とし、主パターン中心と、補助パターンの幅中心との距離である距離P1は、3.25(μm)とした。
【0076】
補助パターンは、透明基板上に半透光膜が形成されてなる。この半透光膜の対g線透過率T1は、45(%)、位相シフト量は180度である。また、主パターン及び補助パターンを囲む遮光部は、実質的に露光光を透過しない遮光膜(OD>2)よりなる。
【0077】
(参考例2)
図2に示すように、参考例2のフォトマスクは、透明基板上に形成した遮光膜パターンからなる、いわゆるバイナリマスクのパターンを有する。このフォトマスクは、透明基板が露出する透光部からなる正方形の主パターンが、遮光部に囲まれている。主パターンの径W1(正方形の一辺)は2.0(μm)である。
【0078】
参考例1及び2のフォトマスクのいずれについても、被転写体上に、径W2が1.5μmのホールパターンを形成するものとし、シミュレーションで適用した露光条件は、以下のとおりである。すなわち、露光光はi線、h線、g線を含むブロード波長とし、強度比は、g:h:i=1:1:1とした。
【0079】
露光装置の光学系は、NAが0.1であり、コヒレンスファクタσが0.5である。被転写体上に形成される、レジストパターンの断面形状を把握するための、ポジ型フォトレジストの膜厚は、1.5μmとした。
【0080】
上記条件下、各転写用パターンの性能評価を図3に示す。
【0081】
[転写性の光学的評価]
例えば、径の小さい微細な透光パターンを転写するには、フォトマスク透過後の露光光が、被転写体上に形成する空間像による、透過光強度曲線のプロファイルが良くなければならない。具体的には、透過光強度のピークを形成する傾斜が鋭く、垂直に近い立ち上がり方をしていること、及び、ピークの光強度の絶対値が高いこと(周囲にサブピークが形成される場合には、その強度に対し相対的に、十分に高いこと)などが肝要である。
【0082】
より定量的に、フォトマスクを、光学的な性能から評価するとき、以下のような指標を用いることができる。
(1)焦点深度(Depths of Focus:DOF)
目標CDに対し、変動幅が所定範囲内(ここでは±15%の範囲内)となるための焦点深度の大きさ。DOFの数値が高ければ、被転写体(例えば表示装置用のパネル基板)の平坦度の影響を受けにくく、確実に微細なパターンが形成でき、そのCDばらつきが抑えられる。
(2)露光余裕度(EL:Exposure Latitude)
目標CDに対し、変動幅が所定範囲内(ここでは±15%の範囲内)となるための、露光光強度の余裕度。
以上をふまえ、シミュレーション対象の各サンプルの性能を評価すると、図3に示すとおり、参考例1のフォトマスクは、焦点深度(DOF)が、参考例2に比べて非常に優れている点で、パターンの安定した転写性を示す。
【0083】
また、参考例1のフォトマスクは、ELにおいても10.0(%)以上の優れた数値を示し、即ち、露光光量の変動に対して、安定した転写条件を可能とする。
更に、参考例1のフォトマスクの露光に必要なDose値が参考例2に対して相当に小さい。このことは、実施例1のフォトマスクの場合には、大面積の表示装置製造にあっても、露光時間が増大しない、又は短縮できるメリットを示している。
【0084】
[欠陥修正方法]
以下、本発明の修正方法につき、上記フォトマスクIの補助パターン(半透光部)に生じた欠陥が検出された場合に、これを修正(リペア)する工程を例として説明する。
【0085】
尚、半透光部の修正に際しては、正常膜と等しい光学特性をもった修正膜を用いれば良い。但し、正常膜がスパッタ法などを適用して成膜されるのに対し、局所的な膜材の堆積を必要とする修正膜の成膜は、異なる方法を用いることにより、正常膜と異なる材料を含む膜である。局所的な膜材の堆積は、安定した成膜条件範囲が狭いため、透過率、位相特性を同時に満足させる成膜を行なうことは現実的には相当に困難である。そこで、正常膜による半透光部と、その形状や物性が同一でなくても、フォトマスクIのもつ上記の光学的な作用を、ほぼ同様に発揮しえる修正を検討した。
【0086】
図4には、フォトマスクIの八角形帯の半透光部に使用する半透光膜の透過率が変動した場合に、このフォトマスクが示す挙動の変化をシミュレーションした結果を示す。図1にて示したフォトマスクI(参考例1)の基本設計では、半透光部の透過率T1は上記のとおり45%であり、このときのDOFは、33.5(μm)、ELは、10.4(%)を示す(図3図4)。
【0087】
ここで、半透光部の幅を上記の値に固定し、位相シフト量を180度としたまま、半透光部の透過率が増加すると、DOFの数値は増加する一方、ELは増加から減少に転じ、透過率60%に達したところで、ほぼゼロとなる。
【0088】
次に、図5A~5Cには、半透光部からなる補助パターンの透過率を50~70%の範囲内の値にそれぞれ設定したとき、半透光部の幅(CD)の変化によって、DOFやELがどのように変化するかをシミュレーションにより調査した結果を示す。この検討によると、いずれの透過率の場合においても、ELは、そのピーク付近で10%を越える部分が存在し、その領域でDOFを許容範囲(例えば、25μm以上、好ましくは30μm以上)とすることが可能であることが分かった。なお、DOF、EL共に好適な条件は、図5A~5Cにおける点線で囲んだ領域で得られる。これらの結果から、好ましい半透光部の透過率と幅の組合せの例を図5Dに示す。
【0089】
すなわち、図4には、半透光部からなる補助パターンの透過率の変動がELを劣化させることが示されたが、このELの劣化傾向は、補助パターンの幅の変化によって、ほぼ回復させられることが、図5A図5Cにより明らかになった。尚、上記の例では、半透光部の透過率より高い透過率をもつ修正膜によって修正した場合について説明したが、半透光部の透過率より低い透過率をもつ修正膜によって修正する場合には、補助パターンの幅d1を、より広くする修正を適用すればよい。従って、半透光部(透過率T1)からなる補助パターン(幅d1)に欠陥が生じ、これを修正膜によって修正しようとするとき、正常膜と異なる透過率(T2)をもつ修正膜を用いても、正常膜と異なる補助パターンの幅(d2)を適切に用いることによって、正常な補助パターンを代替することができる。そして、この修正膜により形成される修正半透光部からなる修正補助パターンは、正常な補助パターンとほぼ同様に、透光部とは反転位相の透過光を、適切な光量に調整し、主パターンによる透過光と干渉させることができることが理解できる。
【0090】
言い換えれば、位相シフト特性をもつ所定幅の半透光部においては、T1の値とd1の値の組合せによって、反転位相の透過光による光学像を形成するところ、一方の過不足を他方によって補うことが可能である。半透光膜の透過率がT1、修正膜の透過率がT2であり、半透光部の幅(すなわち補助パターンの幅、以降、「正常な補助パターンの幅」とも称する。)がd1、修正半透光部の幅(すなわち修正補助パターンの幅)がd2であれば、
T2>T1かつd2<d1
又は、
T2<T1かつd2>d1
とすることができる。
但し、d2>d1の場合においても、幅d2は幅d1と同様に、フォトマスクを露光する露光装置の解像限界より小さい寸法であることが望ましい。具体的な寸法は、上記d1について述べたものと同様である。
【0091】
上記のとおり、フォトマスクの欠陥修正にあたっては、修正膜の安定した堆積条件が得られる条件範囲が狭く、正常膜と同じ光学特性(透過率、位相シフト量)を得ることが困難な場合においても、正常な補助パターンと同様な機能を奏する、修正補助パターンを得られることは、極めて有意義である。
【0092】
[欠陥修正例]
以上の検証結果を元に、フォトマスクの修正方法を行なう工程の具体例を説明する。
【0093】
<実施例1(黒欠陥の場合その1)>
上記参考例Iのフォトマスクの半透光部からなる補助パターンに黒欠陥が生じた場合について説明する。例えば、フォトマスクIが有する八角形帯の半透光部を、図6に示すように区画A~Hに区分したとき、区画Aに黒欠陥が生じたことを検出した場合を想定する。すなわち、欠陥の種類と位置をここで特定する。
【0094】
この場合、必要に応じて、修正装置を用い、遮光膜と同等の光学濃度(OD≧2)をもつ遮光性の修正膜(以下、補充膜という)を、欠陥位置を含む所望の領域に形成し、黒欠陥の形状を整える前処理を行なってもよい(図7(a))。黒欠陥の形状を補充膜で整えた部分、すなわち補充膜の領域の符号は17とする。補充膜の領域17は、四角形(正方形又は長方形)とすることが好ましい。図17(a)に示す補充膜の領域17は、正常な補助パターンと同一の幅を有しているが、正常な補助パターンより大きな幅としても、小さな幅としても構わない。生じた黒欠陥の形状が、上記四角形に整えられれば良い。
【0095】
ついで、上記検証結果に基づき、正常な補助パターンとほぼ同等の光学作用を、修正膜によって得ることができるよう、修正半透光部幅(CD)と透過率を選択する。例えば、修正膜のT2がT1(ここでは45%)より大きい場合に、修正補助パターン幅d2を正常な補助パターン幅d1より小さくすることとし、適切なT2及びd2の組合せを選択する。予め図5Dに例示された相関を参照して、両者の適切な組合せを把握しておくことが好ましい。例えば、T2を50%とし、d2を1.20μmとすることができる。尚、修正膜の位相シフト量は、正常膜と同様に、略180度とする。
【0096】
こうして決定した幅の補充膜部分を除去し、透明基板を露出させて、修正膜の形成領域を画定する(図7(b))。膜の除去手段として、レーザ・ザッピングまたはFIB(集束イオンビーム)法等が適用できる。補充膜除去を行った部分、すなわち修正膜の形成領域の符号は18とする。そして、この修正膜15の形成領域すなわち修正対象領域に、修正膜を形成する修正膜形成工程を行う(図7(c))。修正膜の形成領域18もまた、四角形(長方形又は正方形)であると、修正膜の均一な堆積が行いやすく、好適である。
【0097】
なお、補充膜及び修正膜の形成には、例えばレーザCVD装置を好適に利用することができる。また、膜素材についても、修正膜と同様のものが使用できる。補充膜の形成に際しては、修正膜と異なる成膜条件(レーザーパワー、ガス流量、または成膜時間)を適用し、膜物性(膜密度等)の異なる、高い遮光性をもつ膜とすることができる。
【0098】
結果として、欠陥を含む半透光部が修正され、より幅が狭い、修正膜からなる修正半透光部が形成され、この修正半透光部が、遮光膜からなる遮光部又は遮光性の補充膜によって形成された遮光部(補充遮光部ともいう)に囲まれた形状となる。
【0099】
尚、黒欠陥の形状の調整や、膜除去、修正膜の形成にあたっては、必ずしも上記順序で行なう必要はなく、最終的に、選択した透過率及び位相特性をもつ修正膜が、決定したとおりの幅で形成され、その周囲を、遮光性の膜によって囲まれている状態(本態様では図7(c))の状態とすればよい。例えば、生じた黒欠陥を含む所定の領域から、半透光膜(正常膜)をまず除去して膜除去を行なった部分18とし(図7(d))、修正膜15を所定の幅で形成した後に(図7(e))、その両外側に補充膜16を形成してもよい(図7(f))。
【0100】
この結果、修正を施された転写用パターンは、透明基板が露出する透光部(主パターン)と、半透光膜と異なる材料を含む修正膜による修正半透光部を有するものとなり、この修正半透光部は、透光部の近傍に、遮光部又は補充遮光部を介して配置された、幅d2(μm)をもつものである。そして、透光部と修正半透光部を除いた領域が、遮光部によって、或いは遮光部と補充遮光部によって構成される。
【0101】
残存する正常な半透光部があれば、これが八角形帯の一部を構成している。また、ここではd2<d1であるので、修正半透光部は、上記八角形帯の領域内に含まれて配置される。例えば、図7(c)に示されるように、修正半透光部のエッジをなす2辺が、正常な半透光部のエッジをなしていた2辺と平行に配置されることが好ましい。
【0102】
但し、修正膜の形成位置については、上記八角形帯(すなわち、正常な半透光部の領域)の幅方向の中央にあることがより好ましい。換言すれば、修正後に主パターンの中心と修正補助パターンの幅中心の距離(距離P2)の値が修正前の数値(距離P1)と比べて変化しないように(すなわちP1=P2となるように)、修正膜の形成位置を設定することが好ましい(図7(c)参照)。すなわち、ここでは、修正膜の幅d2は、修正前の正常膜の幅d1に対して、d2<d1であるが、修正膜の幅中心位置は、欠陥が生じない場合の(すなわち、設計値どおりの)補助パターンの幅中心位置と変わらないものとする。これは、修正補助パターンが形成する、透過光の光強度分布のピーク位置が、正常膜によるそれと変化しないようにするためである。
【0103】
これによって、修正後のフォトマスクを転写する際、欠陥修正部分を含む補助パターンを透過する露光光が形成する光学像は、欠陥の無い場合のそれとほぼ同等になり、この光学像が、主パターンを透過する光の光学像と干渉し、優れた転写特性(例えばDOF、EL)を示す。
【0104】
<実施例2(白欠陥の場合)>
フォトマスクIの補助パターンに、白欠陥が生じた場合を、図8(a)に例示する。例えば、フォトマスクIが有する八角形帯の半透光部を、図6に示すように区画A~Hに区分したとき、区画Aに白欠陥が生じたことを検出した場合を想定する。すなわち、欠陥の位置と種類がここで特定される。
初めに、図8(a)に示すように、必要に応じて、白欠陥の近傍の膜を除去することにより白欠陥の形状を調整してもよい。白欠陥の近傍の膜除去を行った部分の符号は19とする。また、生じた黒欠陥の余剰物を除去して形成された白欠陥を、本態様の修正対象とすることもできる。
そして、欠陥を含む領域に、補充膜16を形成し、人工的に黒欠陥を形成する(図8(b))。この後は、上記黒欠陥の修正方法(図7(a)(b)、(c))と同様に修正を行なう。
【0105】
<実施例3(黒欠陥の場合その2)>
図9(a)には、図1(a)のパターンが同一面状に複数配置された転写用パターンにおいて、1つの主パターンに対する補助パターンが完全に欠落した黒欠陥を示す。また、この黒欠陥は、生じた黒欠陥の形状を整えて補充膜によって形成した黒欠陥であってもよく、また、生じた白欠陥を含む領域に補充膜を形成して得た黒欠陥であってもよい。
【0106】
この場合、区画A~H(図6)のすべてに対応する補助パターンを形成することが有効である。但し、修正工程については、実施例1と同様である。すなわち、修正膜の形成に先立ち、ここでも、実施例1で行なったと同様、形成する修正膜の透過率T2と幅d2の組合せを選択する。すなわち、修正膜の透過率T2を半透光膜(正常膜)の透過率T1(例えば45%)より大きくし、修正補助パターン幅d2を正常な補助パターン幅d1より小さくすることとする。例えば、T2を50%、d2を1.20μmとすることができる。尚、修正膜の位相シフト量は、ここでも略180度とする。
【0107】
次に、図7(b)と同様に、決定した幅に基いて膜除去を行ない、修正膜を形成する領域の透明基板を露出させる。そして、この領域に、決定した透過率をもつ修正膜を形成する(図9(b))。もちろん、図7(d)(e)(f)の順に従っても良い。
【0108】
尚、本実施形態においてはd2<d1の場合について述べた。その一方、d2>d1の場合は、欠陥修正の際に、正常膜である半透光膜、及びそれに隣接する遮光膜を必要な幅で除去して透明基板を露出し、この領域に修正膜を形成する。この場合、修正膜の透過率T2は、正常膜の透過率T1よりも小さい。なお、d2は、フォトマスクを露光する露光装置が解像しない寸法(例えばd2<3.0)とする。
【0109】
尚、本発明の修正方法は、フォトマスクIのデザインのフォトマスクに限定されない。本発明の修正方法により、所定幅の位相シフト特性をもつ半透光部に生じた欠陥が修正を施され、その透過光が形成する光学像が、正常な半透光部とほぼ同様の機能を生じさせるという作用効果が生じることにおいて、他のデザインのフォトマスクにおいても同様に適用可能であることは言うまでもない。転写用パターンのデザインに応じて、最適な透過率やCDの数値は、光学シミュレーションによって得ることができる。
【0110】
[本発明のフォトマスク]
本発明は、上記の修正を施したフォトマスク(フォトマスクIIとする)を含む。
【0111】
本発明のフォトマスクは、図7(c)、図9(b)に例示するように、透明基板上に転写用パターンが形成されている。
この転写用パターンは、
透明基板が露出した透光部と、
透明基板上に半透光膜が形成されてなり、幅d1(μm)をもつ半透光部と、
透光部と半透光部を除いた領域にある遮光部を含む。
半透光部は、透光部の近傍に、遮光部を介して配置されている。すなわち、半透光部と透光部の間には、遮光部が挟まれている。ここで、近傍とは、両者の透過光が互いに相互作用を生じて、光学像のプロファイルを変化させることができる距離にあることをいう。
図7(c)、図9(b)に示す転写用パターンでは、透光部が主パターン、半透光部が補助パターンを構成している。
【0112】
また、本発明のフォトマスク(フォトマスクII)は、上記フォトマスクIの半透光部に生じた欠陥を修正したものである。具体的には、フォトマスクIIは、透明基板上に修正膜が形成されてなる、幅d2(μm)の修正半透光部を含み、これは、正常な半透光部の領域(ここでは、正八角形帯の領域)に配置されている。すなわち、修正半透光部は、正常な半透光部の領域に含まれる形状をもつ。
【0113】
また、フォトマスクIIに含まれる正常な半透光部は、上記正八角形帯の領域の一部を形成している(図7(c)参照)。
【0114】
正常な半透光部の形状は、同一の転写用パターンに含まれた、他のパターンを参照して把握することができる(図9(b)参照)。
【0115】
主パターンの径W1、半透光部の透過率T1、及び補助パターンの幅d1の範囲は、上記で述べたとおりである。
【0116】
また、半透光膜は、露光光に含まれる代表波長に対して透過率T1(%)を有するとともに、前記代表波長の光の位相を、φ1(度)シフトする位相シフト特性をもち、修正膜は、前記代表波長に対して、透過率T2(%)を有するとともに、前記代表波長の光の位相をφ2(度)シフトする位相シフト特性をもつ。
【0117】
φ1及びφ2は、略180度である。上記のとおり、ほぼ180度とは、180±15度の範囲である。
好ましくは、φ2は、φ1±10、より好ましくはφ1±5の範囲内とすることができる。
【0118】
また、
T2>T1かつd2<d1であるか、又は、
T2<T1かつd2>d1
であるが、T2>T1かつd2<d1が好ましい。この場合に、膜厚の安定したCVD膜が得られやすい。
【0119】
T2の範囲は、40≦T2≦80であることが好ましく、より好ましくは40~75である。
【0120】
また、T1とT2の差は、2~45であることが好ましく、より好ましくは、2~35である。この場合に、修正半透光部の幅の調整によって、正常な半透光部とほぼ同様の光学作用を生じさせることができる。
【0121】
更に、d2<d1が好ましく、d1とd2の差は、0.05~2.0である。
【0122】
また、d1が2μm以下の場合は、d1とd2の差は、0.05~1.5の範囲とすることが好ましく、より好ましくは、0.05~1.0、更に好ましくは0.05~0.5である。
【0123】
このような範囲のときに、修正補助パターンの透過率T2は、その幅d2との協働によって、正常パターンの機能とほぼ同等な光学像の形成に寄与でき、更にCVDレーザ膜として、安定した成膜条件が選択できる。そして、フォトマスクIIの転写性(DOF,EL)が良好な範囲を採択できる。
【0124】
なお、先に述べた実施例3(黒欠陥の場合その2)にて、図1(a)のパターンが同一面状に複数配置された転写用パターンにおいて、1つの主パターンに対する補助パターンが完全に欠落した黒欠陥を修正する例を示した。このように修正された後のフォトマスクIIの転写用パターンは、正常な転写用パターンと、修正された転写用パターンとを有するようにしてもよい。
ここで言う「正常な転写用パターン」とは、1つのフォトマスク内において複数存在する図1(a)のパターンのうち黒欠陥や白欠陥が存在せず修正が行われなかったもの(例えば図9(b)下図)を指す。そして「修正された転写用パターン」とは、例えば図9(b)上図のように1つの主パターンに対する補助パターンが完全に欠落した状態のものに対する修正が行われたパターンを指す。
つまり、フォトマスクIIには、正常な転写用パターンと、上記のように補助パターンが完全に欠落した状態のものが修正された転写用パターンとが共に存在するようにしてもよい。
【0125】
また、本発明は、上述の修正方法を含む、フォトマスクの製造方法を含む。
例えば、フォトマスクIIの製造方法とすることができる。
【0126】
上述のフォトマスクIの製造方法において、形成された半透光部に欠陥が生じたときに、本発明の修正方法を適用することができる。その場合、例えば、図11(f)に示す、第2レジスト剥離工程のあと、欠陥検査工程、及び修正工程を設け、該修正工程において、本発明の修正方法を適用すれば良い。
【0127】
本発明は、上記した本発明のフォトマスクに、露光装置により露光して、被転写体上に、上記転写用パターンを転写する工程を含む、表示装置の製造方法を含む。ここで表示装置とは、表示装置を構成するためのデバイスを含む。
【0128】
本発明の表示装置の製造方法は、まず、上述の本態様のフォトマスクを用意する。次に、前記転写用パターンを露光し、被転写体上に、径W2が0.6~3.0μmのホールパターンを形成する。
【0129】
用いる露光機としては、等倍のプロジェクション露光を行う方式であって、以下のものが好ましい。すなわち、FPD用として使用される露光機であり、その構成は、光学系の開口数(NA)が0.08~0.15(コヒレンスファクタ(σ)が0.4~0.9)であり、i線、h線及びg線の少なくとも一つを露光光に含む光源をもつものである。但し、開口数NAが0.10~0.20となるような露光装置においても、本発明を適用して発明の効果を得ることがもちろん可能である。
【0130】
また、使用する露光装置の光源は、変形照明(輪帯照明などの斜光照明)を使用しても良いが、非変形照明でも、発明の優れた効果が得られる。
【0131】
本発明を適用するフォトマスクの用途に特に制限は無い。本発明のフォトマスクは、液晶表示装置やEL表示装置などを含む表示装置の製造の際に、好ましく用いることができる、透過型のフォトマスクとすることができる。
【0132】
透過光の位相が反転する半透光部を用いた本発明のフォトマスクによれば、主パターンと補助パターンの双方を透過する露光光の相互干渉を制御し、露光時にゼロ次光を低減させ、±1次光の割合を相対的に増大させることができる。このため、透過光の空間像を大幅に改善することができる。
【0133】
このような作用効果を有利に得られる用途として、液晶やEL装置に多用されるコンタクトホールなど、孤立したホールパターンの形成のために本発明のフォトマスクを用いることが有利である。パターンの種類としては、一定の規則性をもって多数のパターンが配列することにより、これらが相互に光学的な影響を及ぼしあう密集(Dense)パターンと、こうした規則的配列のパターンが周囲に存在しない孤立パターンとを区別して呼称することが多い。本発明のフォトマスクは、被転写体上に孤立パターンを形成しようとするとき特に好適に適用される。
【0134】
本発明の効果を損ねない範囲で、本発明を適用するフォトマスクには付加的な光学膜や機能膜を使用しても良い。例えば、遮光膜のもつ光透過率が、検査やフォトマスクの位置検知に支障を与える不都合を防ぐために、転写用パターン以外の領域に遮光膜が形成される構成としても良い。また、半透光膜や、遮光膜の表面に描画光や露光光の反射を低減させるための反射防止層を設けても良い。半透光膜の裏面に反射防止層を設けてもよい。
【符号の説明】
【0135】
1…主パターン
2…補助パターン
3…遮光部
4…透光部
5…半透光部
10…透明基板
11…半透光膜
12…遮光膜
12p…遮光膜パターン
13…第1フォトレジスト膜
13p…第1レジストパターン
14…第2フォトレジスト膜
14p…第2レジストパターン
15…修正膜
16…補充膜
17…黒欠陥の形状を補充膜で整えた部分
18…膜除去を行った部分
19…白欠陥の近傍の膜除去を行った部分
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9
図10
図11