(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】スイッチギヤ
(51)【国際特許分類】
H02B 1/28 20060101AFI20220816BHJP
H02B 1/38 20060101ALI20220816BHJP
H05K 5/06 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
H02B1/28 B
H02B1/38 D
H05K5/06 D
(21)【出願番号】P 2018143549
(22)【出願日】2018-07-31
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岩楯 智哉
(72)【発明者】
【氏名】本間 正宏
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 直也
(72)【発明者】
【氏名】澤田 雅詞
(72)【発明者】
【氏名】木山 和治
(72)【発明者】
【氏名】パン ジュン ホウ
(72)【発明者】
【氏名】加藤 昂
(72)【発明者】
【氏名】牧山 文夫
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-152250(JP,A)
【文献】特許第6269880(JP,B1)
【文献】特開昭61-116914(JP,A)
【文献】実公昭35-003839(JP,Y1)
【文献】特開平10-046896(JP,A)
【文献】特開昭57-095106(JP,A)
【文献】実開平05-057881(JP,U)
【文献】実開昭54-122843(JP,U)
【文献】特開昭52-146840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/00 - 1/38
H02B 1/46 - 7/08
H05K 5/00 - 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチギヤであって、
内部に機器を収納する筐体と、
ヒンジにより前記筐体に開閉可能に設けられた外開きの扉と、を備え、
前記筐体または前記扉に、
難燃性の弾性体からなるシール材と当該シール材を支持固定する支持部材を有し、
前記筐体および前記扉の他方に、前記シール材を押圧する楔型の断面を有する押圧部材を有し、
前記支持部材は、前記筐体または前記扉の一辺において前記筐体または前記扉に対し垂直に固定された2枚の板状部材で構成され、
前記2枚の板状部材で形成される溝の深さは、前記溝の幅よりも長く、
前記扉を閉じた際、前記押圧部材が前記シール材に食い込んで前記スイッチギヤが密閉され
、
前記シール材への前記押圧部材の食い込み量は、前記スイッチギヤ内部に高温高圧ガスが発生した際の前記スイッチギヤの内圧の上昇による前記扉のズレ量よりも大きいことを特徴とするスイッチギヤ。
【請求項2】
請求項
1に記載のスイッチギヤであって、
前記2枚の板状部材の内、前記ヒンジ側の板状部材の長さが他方の板状部材の長さよりも短いことを特徴とするスイッチギヤ。
【請求項3】
請求項1に記載のスイッチギヤであって、
前記筐体および前記扉の両方に、それぞれ前記シール材、前記支持部材、前記押圧部材を有し、
前記扉を閉じた際、前記筐体および前記扉のそれぞれの前記押圧部材が、前記筐体および前記扉のそれぞれの前記シール材に食い込んで前記スイッチギヤが密閉されることを特徴とするスイッチギヤ。
【請求項4】
請求項1に記載のスイッチギヤであって、
前記扉の内側で、かつ、前記シール材よりも前記扉の中心側に設けられたかんぬきと、
前記扉の外側に設けられ、前記かんぬきと連結されたハンドルと、を備え、
前記ハンドルの操作により、前記かんぬきを動作させて前記扉を前記筐体に固定することを特徴とするスイッチギヤ。
【請求項5】
請求項
4に記載のスイッチギヤであって、
前記かんぬきは、前記扉の左右にそれぞれ3個ずつ設けられることを特徴とするスイッチギヤ。
【請求項6】
請求項1に記載のスイッチギヤであって、
前記扉の内側で、かつ、前記シール材よりも前記扉の外周側に設けられたかんぬきと、
前記扉の外側に設けられ、前記かんぬきと連結されたハンドルと、を備え、
前記ハンドルの操作により、前記かんぬきを動作させて前記扉を前記筐体に固定することを特徴とするスイッチギヤ。
【請求項7】
請求項
6に記載のスイッチギヤであって、
前記かんぬきは、前記扉の左右にそれぞれ2個ずつ設けられることを特徴とするスイッチギヤ。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか1項に記載のスイッチギヤであって、
前記扉は、つまみネジとナットにより前記筐体に固定されることを特徴とするスイッチギヤ。
【請求項9】
請求項1から
7のいずれか1項に記載のスイッチギヤであって、
前記扉は、ボルトとナットにより前記筐体に固定されることを特徴とするスイッチギヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチギヤに係り、特に、耐圧性能が要求される金属閉鎖形スイッチギヤに関する。
【背景技術】
【0002】
金属製の閉鎖箱に開閉器等の高電圧機器を収納する金属閉鎖形スイッチギヤは、発電所や変電所、製鉄所や石油化学プラントなどの電気設備容量の大きな施設に広く普及している。
【0003】
金属閉鎖形スイッチギヤは、内部空間を金属製仕切板で複数のコンパートメント(収納スペース)に区分するメタルクラッド形、内部空間を非金属製(絶縁製)仕切板で複数のコンパートメントに区分するコンパートメント形、それらの以外のキュービクル形の3つのタイプに大別される。
【0004】
これらの金属閉鎖形スイッチギヤでは、内部の高電圧機器に短絡事故(アーク事故)等が発生した場合、高温高圧ガス(ホットガス)が爆発的に発生し、スイッチギヤの筐体と扉の隙間から外部に放出されて、周辺に設置されている他の機器や作業者に影響を及ぼす可能性がある。そのため、高温高圧ガス(ホットガス)の外部への影響を確実に防止するための安全対策が求められている。
【0005】
例えば、筐体の密閉性を高めるという課題に対しては特許文献1のような技術がある。特許文献1には「コネクタの実装された回路基板が筐体の内部空間に格納され、内部空間がシール材によって防水空間とされた電子制御装置」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、金属閉鎖形スイッチギヤでは、短絡事故(アーク事故)発生時の高温高圧ガス(ホットガス)による外部への影響を防止するための装置構造が検討されており、特に、スイッチギヤの筐体と扉の隙間からの高温高圧ガス(ホットガス)の放出を防止することは、周辺機器の保護や作業者の安全を確保するうえで重要な課題である。
【0008】
上記特許文献1は比較的小型の電子制御装置を対象としており、特許文献1に記載されたシール材と溝の構造をスイッチギヤの扉に適用しようとした場合、筐体や扉等の部材とシール材の接触面積が大きくなるため、扉を閉じる際に大きな力が必要となる。
【0009】
一方、スイッチギヤは内部に開閉器等の高電圧機器が収納されており、定期的なメンテナンスや点検を必要とするため、容易に開閉できる扉構造が望まれる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、金属閉鎖形スイッチギヤにおいて、高い密封性能を有しつつ、容易に扉を開閉することが可能な扉のシール構造(パッキン構造)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、スイッチギヤであって、内部に機器を収納する筐体と、ヒンジにより前記筐体に開閉可能に設けられた外開きの扉と、を備え、前記筐体または前記扉に、難燃性の弾性体からなるシール材と当該シール材を支持固定する支持部材を有し、前記筐体および前記扉の他方に、前記シール材を押圧する楔型の断面を有する押圧部材を有し、前記支持部材は、前記筐体または前記扉の一辺において前記筐体または前記扉に対し垂直に固定された2枚の板状部材で構成され、前記2枚の板状部材で形成される溝の深さは、前記溝の幅よりも長く、前記扉を閉じた際、前記押圧部材が前記シール材に食い込んで前記スイッチギヤが密閉され、前記シール材への前記押圧部材の食い込み量は、前記スイッチギヤ内部に高温高圧ガスが発生した際の前記スイッチギヤの内圧の上昇による前記扉のズレ量よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金属閉鎖形スイッチギヤにおいて、高い密封性能を有しつつ、容易に扉を閉じることが可能な扉のシール構造(パッキン構造)を実現することができる。
【0013】
これにより、金属閉鎖形スイッチギヤにおいて、アーク事故等により内部に加熱膨張した高温高圧ガス(ホットガス)が発生した場合であっても、筐体と扉の間から外部への高温高圧ガス(ホットガス)の放出を確実に防止することができ、なおかつ、容易に扉を閉じることが可能な信頼性及び作業性に優れたスイッチギヤを提供することができる。
【0014】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明を適用した実施例1に係るスイッチギヤの筐体と扉の概要を示す斜視図である。
【
図7】本発明を適用した実施例2に係るスイッチギヤのかんぬき構造(扉ロック機構)を示す図である。
【
図8】
図7のかんぬき構造(扉ロック機構)がロックされた状態を示す図である。
【
図9】
図7のB-B断面の詳細を示す拡大図である。
【
図10】
図8のB-B断面の詳細を示す拡大図である。
【
図13】本発明を適用した実施例3に係るスイッチギヤの筐体と扉の概要を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明を適用した実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例1】
【0017】
図1から
図6を参照して、実施例1のスイッチギヤについて説明する。
図1は本実施例のスイッチギヤの筐体外観を示す斜視図であり、
図2はスイッチギヤの扉1が開いた状態を示している。
図3から
図6は
図1のA部断面を示す拡大図である。
図3は扉1が開いた状態(厳密には扉1が閉じる直前の状態)を示しており、
図4は扉1が閉じた状態を示している。
図5および
図6はそれぞれ
図4の変形例である。
【0018】
なお、
図2には図示していないが、筐体4の内部空間を金属製仕切板で複数のコンパートメント(収納スペース)に区分したメタルクラッド形のスイッチギヤ、内部空間を非金属製(絶縁製)仕切板で複数のコンパートメントに区分したコンパートメント形のスイッチギヤ、或いは、それ以外のキュービクル形のスイッチギヤのいずれのタイプにも、本発明は適用可能である。
【0019】
また、各図面におけるX,Y,Z軸は、各図の構成の配置(関係)が明確になるように示すものであり、それぞれスイッチギヤの幅方向(X軸)、奥行き方向(Y軸)、高さ方向(Z軸)に対応している。
【0020】
本実施例のスイッチギヤは、
図1に示すように、ハンドル22を有する扉1が筐体4に対して開閉可能に設置されている金属製の閉鎖箱、いわゆる金属閉鎖形スイッチギヤである。扉1および筐体4には、強度を担保するために、主に鉄やステンレス鋼(SUS材)などの鋼材が使用される。なお、スイッチギヤ内に設置される各種高電圧機器には一般的に2000A程度の電流が流れるため、渦電流の影響が問題となる場所にはステンレス鋼(SUS材)を用いるのが望ましい。
【0021】
ハンドル22は、後述するようなかんぬき構造(扉ロック機構)に連結されており、扉1を開閉する際の取っ手であると共に、扉1を閉じた際に扉1を筐体4に固定する扉ロック機構の一部となる。扉1は図示しない複数の蝶番(ヒンジ)で筐体4に対して開閉可能(回動可能)に設置されている。なお、スイッチギヤ内部の機器設置スペースを確保するため、扉1は
図2のように外開きの扉とするのが望ましい。
【0022】
図2に示すように、扉1の内側にはシール材のズレを制限する板2が設けられており、筐体4の扉側(扉を閉じた際の扉1との結合部分)には断面形状が楔型の板5が設けられている。また、筐体4の開口部(楔型の板5の内側)には後述するかんぬき(扉ロック部材)が挿入される筐体側の穴あき板16が複数設けられている。
【0023】
なお、楔型の板5は、
図2において筐体4の開口部(扉を閉じた際の扉1との結合部分)の周辺に当該開口部を囲むように筐体4から突出して設けられた枠状部材として示しているが、例えば、筐体4の開口部の一辺において筐体4の設置面(床面)と水平な方向(x方向)あるいは垂直な方向(z方向)にそれぞれ延伸し、かつ、筐体4から突出して設けられた4枚の板状の部材で構成してもよい。
【0024】
また、楔型の板5は、後述するように、扉1を閉じる際に比較的小さな力でシール材を押圧することができ、なおかつ、スイッチギヤの密封性を確保できるように、断面形状を楔型とするのが好適であるが、シールの押圧力と密封性を両立することができれば、必ずしも楔型に限定されるものではない。つまり、楔型の板5は、シール材押圧部材、あるいは、シール材を押圧する枠状部材、シール材を押圧する板状部材等と言い換えることもできる。
【0025】
次に、
図3および
図4を用いて、本実施例の扉のシール構造(パッキン構造)について詳しく説明する。
図3は扉1が開いた状態(厳密には扉1が閉じる直前の状態)のシール構造(パッキン構造)の拡大図であり、
図4は扉1が閉じた状態のシール構造(パッキン構造)の拡大図である。
【0026】
図3に示すように、スイッチギヤの扉1の内側にはシール材3のズレを制限する2枚の板2a,2bが設けられており、2枚の板2a,2bによりそれらの間に溝が形成されている。2枚の板2a,2bは扉1の一辺において扉1に対し垂直に固定された2枚の板状部材である。この2枚の板2a,2b間の溝内には、シール材3が嵌め込まれて固定されている。つまり、2枚の板2a,2bは扉1上においてシール材3を支持固定する支持部材である。一方、スイッチギヤの筐体4の扉側(扉を閉じた際の扉1との結合部分)には先端の断面形状が楔形となっている板5が設けられている。
【0027】
図4に示すように、扉1を閉じることで、楔型の板5をシール材3に圧着させて、食い込ませる。つまり、楔型の板5はシール材3を押圧する押圧部材である。シール材3は2枚の板2a,2bによって移動が制限されており、例えば、スイッチギヤの内部に加熱膨張した高温高圧ガス(ホットガス)が発生するような高い圧力が作用した場合でもシール材3がズレることなく、密封を維持することができる。
【0028】
筐体4側に設ける板5を楔型にすることで、シール材3と接触する面積が小さくなり、シール材3に高い面圧が作用するため、小さい力でもスイッチギヤの内部に発生した高い圧力(高圧ガス)の外部への漏れを効果的に防止することができる。
【0029】
なお、扉1を閉じた際のシール材3への楔型の板5の食い込み量は、スイッチギヤの内圧の上昇による扉1のズレ量よりも大きくするのが望ましい。スイッチギヤの内圧の上昇により扉1が開く方向へ多少ズレた場合でも、高温高圧ガス(ホットガス)の外部への漏れを確実に防止するためである。
【0030】
また、2枚の板2a,2bにより形成される溝の深さ(
図4における2a,2b間のy方向の深さ)を2枚の板2a,2bにより形成される溝の幅(
図4における2a,2b間のx方向の幅)よりも長く設けることで、スイッチギヤ内に発生する高温高圧ガス(ホットガス)が溝内に入り込み難くなり、高温高圧ガス(ホットガス)がシール材3に接触する可能性を低減することができる。
【0031】
シール材3には、楔型の板5のシール材3への一定の食い込み量を確保するため、弾性材料を用いるのが望ましい。弾性材料としては、例えば、天然ゴムやニトリルゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴムなどの合成ゴム、四フッ化エチレンゴム樹脂などの有機材料を挙げることができるが、スイッチギヤ内に発生する高温高圧ガス(ホットガス)に接触する可能性を考慮すると、難燃性の材料を選択して用いるのがより好適である。
【0032】
また、高温高圧ガス(ホットガス)の外部への漏れを防ぐことができれば、楔型の板5のシール材3への一定の食い込み量を確保できるような弾性を有する無機材料を用いてもよい。
【0033】
なお、
図2において、楔型の板5は扉開口部を一周すべて覆う(囲む)形で図示しているが、例えば楔状の部材とし、扉開口部を点線で囲うように複数本を点在させても構わない。スイッチギヤ正面から見た形状が線状あるいは点線状であったとしても、各断面において
図3から
図5のようにシール材3へ食い込む形状であればよい。
【0034】
以上説明したように、本実施例によれば、扉1の外周部にパッキン(シール材3)を挿入し、このパッキン(シール材3)に筐体4の縁(楔型の板5)を食込ませることで、筐体4の内部に発生したガス等の漏れを防止する。筐体4の内圧が上昇した際に扉1が多少ズレるが、このズレよりも筐体4の縁(楔型の板5)のパッキン(シール材3)への食込み量の方が大きいため扉1と筐体4の間に隙間は生じず、ガス等の漏れは生じない。また、パッキン(シール材3)を2枚の板2a,2b間に保持することで圧力によるパッキン(シール材3)のずれを防止する。
【0035】
また、筐体4の縁を楔状(鋭利)にし、パッキン(シール材3)との接触面積を小さくすることで面圧を上げ、小さい力でも十分に食込む構造とする。これにより、扉1を閉じる際に大きな力を必要とせず、容易で確実に筐体4の内部に発生したガス等の漏れを防止することができる。
【0036】
図5および
図6は、
図4のシール構造(パッキン構造)の変形例である。
【0037】
扉1に設ける2枚の板2a,2bの内、蝶番(ヒンジ)側の板2aを、
図5の板2cのように、もう一方の板2bよりも短くすることで、扉1を開閉する際に板2a(2c)が楔型の板5と接触(干渉)する可能性を回避することができる。
【0038】
また、
図6に示すように、シール材のズレを制限する板とシール材と楔型の板を、扉1側と筐体4側の両方に設けて、二重のシール構造(パッキン構造)としてもよい。
【0039】
図6の例では、扉1に1枚の板2aと先端が楔型となっている板5aを設け、それらの間に形成される溝内にシール材3aを嵌め込み固定する。一方、筐体4にもこれと同様の構造(1枚の板2b,先端が楔型となっている板5b,シール材3b)を対向して設け、それぞれの楔型の板5a,5bをシール材3a,3bに圧着させて密封する。この場合、シール材(3a,3b)の個数が多いため、耐圧性能をさらに向上することができる。
【0040】
なお、上記では、扉1側にシール材のズレを制限する板2a,2b(或いは2c)およびシール材3を設け、筐体4側にシール材3に食い込ませる(シール材3を押圧する)楔型の板5を設ける構造を説明したが、これとは逆に、筐体4側にシール材のズレを制限する板2a,2b(或いは2c)およびシール材3を設け、扉1側にシール材3に食い込ませる楔型の板5を設ける構造であってもよい。
【実施例2】
【0041】
図7から
図12を参照して、実施例2のスイッチギヤについて説明する。
図7は本実施例のスイッチギヤのかんぬき構造(扉ロック機構)を扉1の内側から示す図であり、
図8はかんぬき構造(扉ロック機構)により扉1が筐体にロック(固定)された状態を示している。
図9および
図10はそれぞれ
図7および
図8のB-B断面の詳細を示す拡大図である。
図11および
図12はそれぞれ
図7および
図8の変形例である。
【0042】
本実施例では、実施例1のシール構造(パッキン構造)に加え、スイッチギヤの扉1の内側に、
図7に示すようなかんぬき構造(扉ロック機構)が設けられている。かんぬき構造(扉ロック機構)は、扉1の内側(筐体4側)で、なおかつ、実施例1で説明したシール構造(板2a,2bおよびシール材3)よりも内側(扉1の中央側)に設けられている。
【0043】
かんぬき構造(扉ロック機構)は、
図7に示すように、扉1の両側に設けられた2つのかんぬき6a,6bと、ピン8a,8bによりかんぬき6a,6bとそれぞれ連結されたL型の金具9,14と、ピン11a,11bによりL型の金具9,14と連結されたロッド12と、扉1側に設けられてかんぬきが挿入される穴あき板7a~7dと、で構成されている。
【0044】
L型の金具9は、ハンドルの軸10を介して、扉1の反対側に設けられたハンドル22に連結されており、ハンドル22を操作することでかんぬき6a,6bを図面の上下方向へ移動させて、かんぬき構造(扉ロック機構)を作動させることができる。L型の金具14は軸13により扉1に回動可能に取り付けられており、ハンドル22によるL型の金具9およびロッド12の移動に合わせて、軸13を回転中心として回動する。扉1は蝶番(ヒンジ)15により図示しない筐体4に連結される
図9に示すように、扉1が開いた状態であり、なおかつ、かんぬき構造(扉ロック機構)を作動させていない状態(扉1を筐体4に固定(ロック)していない状態)では、筐体4側の楔型の板5は扉1側のシール材3から離れており、密封されていない。また、かんぬき6aは筐体4側の穴あき板16の穴および扉1側の穴あき板7a,7bの穴のいずれにも挿入されておらず、扉1は筐体4に固定(ロック)されていない。
【0045】
一方、
図8および
図10に示すように、扉1を閉じ、なおかつ、かんぬき構造(扉ロック機構)を作動させた状態(扉1を筐体4に固定(ロック)した状態)では、筐体4側の楔型の板5が扉1側のシール材3に食い込んでおり、スイッチギヤが密封された状態となる。また、かんぬき6aは筐体4側の穴あき板16の穴および扉1側の穴あき板7a,7bの穴に挿入され、扉1は左右それぞれ3個ずつ、合計6個のかんぬきで筐体4に固定(ロック)される。
【0046】
本実施例のように、実施例1のシール構造(パッキン構造)に加えて、かんぬき構造(扉ロック機構)を設けることで、扉1を外開き構造とした場合でも、6個のかんぬきで扉1が筐体4に固定(ロック)されるため、スイッチギヤ内に発生した高温高圧ガス(ホットガス)の圧力を分散して支持することができ、十分な耐圧性能を得ることができる。
【0047】
また、かんぬき構造(扉ロック機構)をハンドル22と連結させることで、簡易な操作で(小さな力で)確実に扉1を筐体4に固定(ロック)することができる。
【0048】
なお、
図7および
図8の例では、扉1を6個のかんぬきで筐体4に固定しているが、かんぬきの個数は必ずしもこれに限定されるものではなく、スイッチギヤの内圧に耐えることができれば、扉1の左右にそれぞれ1個ずつ、或いは、2個ずつ設けてもよい。また、扉1は蝶番(ヒンジ)15により筐体4に連結(固定)されているため、かんぬきの強度が担保できれば、ハンドル22側(
図7および
図8の左側)のみにかんぬきを設けてもよい。
【0049】
【0050】
図7および
図8では、かんぬき構造(扉ロック機構)をシール構造(板2a,2bおよびシール材3)よりも内側(扉1の中央側)に設けている。一方、
図11および
図12では、シール構造(板2a,2bおよびシール材3)をかんぬき構造(扉ロック機構)よりも内側(扉1の中央側)に設けている。言い換えると、かんぬき構造(扉ロック機構)は、シール構造(板2a,2bおよびシール材3)よりも扉1の外周側に設けられている。
【0051】
図11および
図12に示すかんぬき構造(扉ロック機構)は、扉1の両側に設けられた2つのかんぬき6a,6bと、ピン8a,8bによりかんぬき6a,6bとそれぞれ連結されたL型の金具14a,14bと、ピン11a,11bによりL型の金具14a,14bと連結されたロッド12と、扉1側に設けられてかんぬきが挿入される穴あき板7a~7dと、で構成されている。
【0052】
かんぬき6aは、ハンドルの軸に取付けられた金具17および金具17とかんぬき6aを連結するピン18、ハンドルの軸10を介して、扉1の反対側に設けられたハンドル22に連結されており、ハンドル22を操作することでかんぬき6a,6bを
図11および
図12の上下方向へ移動させて、かんぬき構造(扉ロック機構)を作動させることができる。
図11および
図12の例では、扉1上のかんぬきの設置スペースを考慮して、扉1の左右両側にそれぞれ2個ずつ、合計4個のかんぬきを設けている。
【0053】
なお、
図11および
図12において、かんぬき構造(扉ロック機構)は扉1上で点対称となるように構成されており、対称となる構成部品の重複する説明は省略する。
【0054】
図11および
図12に示すように、シール構造(板2a,2bおよびシール材3)をかんぬき構造(扉ロック機構)よりも内側(扉1の中央側)に設けることで、スイッチギヤの内部に高温高圧ガス(ホットガス)が発生した場合でも、スイッチギヤの内圧上昇の衝撃によるかんぬき構造(扉ロック機構)の損傷を防ぐことができる。
【実施例3】
【0055】
図13から
図16を参照して、実施例3のスイッチギヤについて説明する。
図13は本実施例のスイッチギヤの筐体外観を示す斜視図であり、
図14はスイッチギヤの扉1が閉じた状態を示している。
図15および
図16は
図14のC部断面を示す拡大図である。
図15は扉1が開いた状態(厳密には扉1が閉じる直前の状態)を示しており、
図16は扉1が閉じた状態を示している。
【0056】
本実施例では、実施例1のシール構造(パッキン構造)に加え、スイッチギヤの扉1を筐体4に固定するつまみネジが設けられている。つまみネジは、実施例1で説明したシール構造(板2a,2bおよびシール材3)よりも内側(扉1の中央側)に設けられている。
【0057】
本実施例のスイッチギヤは、
図13に示すように、
図2の構成に加えて、筐体4の扉側(扉を閉じた際の扉1との結合部分)に複数の金具21が設けられている。この金具21は、
図14に示すように、扉1を閉じた際につまみネジ19により扉1を筐体4に固定するための溶接ナットの支持部材となる。
【0058】
図15および
図16を用いて、本実施例の扉のシール構造(パッキン構造)および扉固定構造について詳しく説明する。
図15は扉1が開いた状態(厳密には扉1が閉じる直前の状態)のシール構造(パッキン構造)および扉固定構造の拡大図であり、
図16は扉1が閉じた状態のシール構造(パッキン構造)および固定構造の拡大図である。
【0059】
図15に示すように、扉1が開いた状態であり、なおかつ、扉固定構造(つまみネジ19,溶接ナット20,金具21)により扉1を筐体4に固定していない状態では、筐体4側の楔型の板5は扉1側のシール材3から離れており、密封されていない。
【0060】
一方、
図16に示すように、扉1を閉じ、なおかつ、扉固定構造(つまみネジ19,溶接ナット20,金具21)により扉1を筐体4に固定した状態では、筐体4側の楔型の板5が扉1側のシール材3に食い込んでおり、スイッチギヤが密封された状態となる。また、扉1は扉固定構造(つまみネジ19,溶接ナット20,金具21)により筐体4に固定される。
【0061】
本実施例のように、実施例1のシール構造(パッキン構造)に加えて、つまみネジによる扉固定構造を設けることで、扉1を外開き構造とした場合でも、扉1が筐体4に確実に固定されるため、スイッチギヤ内に発生する高温高圧ガス(ホットガス)に対して、十分な耐圧性能を得ることができる。
【0062】
また、実施例2のように、シール構造(パッキン構造)とかんぬき構造(扉ロック機構)の両方を設けた場合、扉1を閉じる際に、シール材3の反発力(弾性力)により扉側のかんぬき挿入穴(例えば
図9の穴あき板7a,7bの穴)と筐体側のかんぬき挿入穴(例えば
図9の穴あき板16の穴)の位置にズレが生じてしまい、かんぬきが上手く挿入できなかったり、穴の縁とかんぬきがこすれて摩擦が発生する場合があるが、本実施例のように、さらにつまみネジを設けることで、扉1を閉じる際につまみネジでシール材3を押しつぶすことができ、扉側のかんぬき挿入穴と筐体側のかんぬき挿入穴の位置を揃えることができ、かんぬきをスムーズに挿入することができる。
【0063】
なお、扉固定構造につまみネジ19を用いることで、工具を用いずに素手で扉1を筐体4に固定することができるが、つまみネジ19に代えてボルトを用いてもよい。また、
図13および
図14の例では、扉1を2個のつまみネジ19で筐体4に固定しているが、つまみネジ19の個数は必ずしもこれに限定されるものではなく、スイッチギヤの内圧に耐えることができれば、少なくとも扉1のハンドル22側(ヒンジ15側とは反対側)に1個、或いは、3個以上設けてもよい。
【0064】
また、
図13から
図16の例では、つまみネジ19による扉固定構造をシール構造(板2a,2bおよびシール材3)よりも内側(扉1の中央側)に設けているが、設置スペースが確保できれば、つまみネジ19による扉固定構造をシール構造(板2a,2bおよびシール材3)よりも外側(扉1の外周側)に設けてもよい。
【0065】
さらに、上述したように、実施例1のシール構造(パッキン構造)に加え、実施例2のかんぬき構造(扉ロック機構)と組み合わせることも可能である。本実施例のように、パッキン(シール材3)に筐体4の縁(楔型の板5)を十分に食込ませるためのつまみネジ19を取り付け、扉1を閉じる際はこのつまみネジ19で筐体4の縁(楔型の板5)をパッキン(シール材3)に食込ませてからかんぬきを挿入する構造としてもよい。
【0066】
つまみネジで扉1をシール材3に強く押し付け、かんぬき穴部(7a,7b,16)とかんぬき6aの摩擦を減らし、ハンドル操作を容易にすることができる。
【0067】
また、かんぬき構造(扉ロック機構)およびつまみネジによる扉固定構造により、スイッチギヤ内に発生した高温高圧ガス(ホットガス)に対してより高い耐圧性能を得ることができる。
【0068】
以上説明した各実施例によれば、金属閉鎖形スイッチギヤにおいて、高い密封性能を有しつつ、容易に扉を閉じることが可能な扉のシール構造(パッキン構造)を実現することができる。
【0069】
これにより、金属閉鎖形スイッチギヤにおいて、アーク事故等により内部に加熱膨張した高温高圧ガス(ホットガス)が発生した場合であっても、筐体と扉の間から外部への高温高圧ガス(ホットガス)の放出を確実に防止することができ、なおかつ、容易に扉を閉じることが可能な信頼性及び作業性に優れたスイッチギヤを提供することができる。
【0070】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…扉
2,2a,2b,2c…シール材のズレを制限する板
3,3a,3b…シール材
4…筐体
5,5a,5b…楔型の板
6,6a,6b…かんぬき
7,7a,7b,7c,7d…かんぬきが挿入される扉側の穴あき板
8a,8b…かんぬきとL型の金具を連結するピン
9…(ハンドルの軸に取付けられた)L型の金具
10…ハンドルの軸
11a,11b…L型の金具とロッドを連結するピン
12…ロッド
13…L型の金具の回転中心となる軸
14,14a,14b…L型の金具
15…蝶番(ヒンジ)
16…かんぬきが挿入される筐体側の穴あき板
17…ハンドルの軸に取付けられた金具
18…金具17とかんぬきを連結するピン
19…つまみネジ
20…溶接ナット
21…筐体に取付けられた金具
22…ハンドル