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特許7123691底型及び底型を使用したガラス容器の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】底型及び底型を使用したガラス容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 9/335 20060101AFI20220816BHJP
【FI】
C03B9/335
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018151197
(22)【出願日】2018-08-10
(65)【公開番号】P2018168067
(43)【公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000222222
【氏名又は名称】東洋ガラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹尾 仙次
(72)【発明者】
【氏名】山本 勲
(72)【発明者】
【氏名】三輪 祐実
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-352611(JP,A)
【文献】特開2011-246313(JP,A)
【文献】特開平07-017724(JP,A)
【文献】特開昭63-107822(JP,A)
【文献】特開平06-321560(JP,A)
【文献】特開平04-240121(JP,A)
【文献】特開2003-335530(JP,A)
【文献】国際公開第2009/133761(WO,A1)
【文献】特開平06-016430(JP,A)
【文献】特許第3936744(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 9/00 - 11/16
B65D 1/00 - 1/48
B29C 49/00 - 49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パリソンからガラス容器を成形するブロー成形に使用され、前記ガラス容器の底部を成形する底型であって、
前記底型の中央部に上方に向けて突設され、前記ガラス容器の前記底部の中央部に対応した凸部を有し、
前記凸部の基部は、第1材料によって形成され、
前記凸部の先端部は、前記第1材料よりも熱伝導率が高い第2材料によって形成されていることを特徴とする底型。
【請求項2】
前記凸部の前記基部は中央に受容孔を有し、
前記凸部の前記先端部は、前記受容孔に挿入された軸部と、前記軸部の一端に設けられ、前記ガラス容器の前記底部の中央部を形成する頭部とを有することを特徴とする請求項1に記載の底型。
【請求項3】
前記頭部は、前記凸部の前記基部に対して前記ガラス容器側に突出していることを特徴とする請求項2に記載の底型。
【請求項4】
前記底型の内部において前記凸部の下方には冷却媒体が流れる冷却通路が形成され、
前記受容孔は前記冷却通路と接続し、
前記軸部の他端は前記冷却通路内に突入していることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の底型。
【請求項5】
前記軸部の他端は複数の冷却フィンを有することを特徴とする請求項4に記載の底型。
【請求項6】
前記受容孔の前記冷却通路側の端部は、反対側の端部に対して幅が広く、前記軸部との間に隙間を形成することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の底型。
【請求項7】
前記軸部は、前記受容孔に圧入されていることを特徴とする請求項6に記載の底型。
【請求項8】
前記軸部の径方向に延び、前記凸部の前記基部を貫通すると共に前記軸部に係合した抜け止めピンを有することを特徴とする請求項7に記載の底型。
【請求項9】
前記凸部の前記先端部は、前記凸部の前記基部に溶射された溶射部であることを特徴とする請求項1に記載の底型。
【請求項10】
前記第1材料は鉄系材料であり、前記第2材料は銅系材料であることを特徴とする請求項1~請求項9のいずれか1つの項に記載の底型。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか1つの項に記載の底型を使用したガラス容器の製造方法であって、
前記凸部の前記先端部及び前記基部の温度を500℃以上600℃以下に調節し、700℃以上1000℃以下の可撓性を有するガラスを前記底型に押し当てる工程を有することを特徴とするガラス容器の製造方法。
【請求項12】
請求項1~請求項10のいずれか1つの項に記載の底型を使用したガラス容器の製造方法であって、
前記凸部の前記先端部の温度を550℃以上600℃以下に調節し、かつ前記凸部の前記基部の温度を500℃以上550℃以下に調節し、700℃以上1000℃以下の可撓性を有するガラスを前記底型に押し当てる工程を有することを特徴とするガラス容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス容器を成形するための底型に関する。本発明に係る底型は、パリソンからガラス容器を成形するブロー成形に使用される金型の一部をなす。
【背景技術】
【0002】
パリソンからガラス容器を成形するための金型として、ガラス容器の底部を形成する底型と、底型の上部に配置され、ガラス容器の側部を形成する一対の仕上型とを有するものが公知である。ガラス容器の底部に上方に膨出したプッシュアップ(いわゆるびん底の凹み)を形成するために、底型の中央部に上方に向けて突出した凸部が形成されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4170970号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プッシュアップを高くするために底型の中央に設けられた凸部を高くすると、凸部とガラスとの接触面積が増加する。そのため、ガラスから凸部に伝達される熱量が増加し、凸部の先端の温度が上昇する。凸部の先端部の温度が高くなると、成形したガラス容器が凸部から離れ難くなるという問題や微小クラックを生じるという問題が生じる。この問題に対して、凸部の先端部の温度を下げるために、熱伝導率の高い材質で底型全体を形成したり、底型に供給する冷却風を増加させたりして底型の冷却を強化すると、底型の凸部の基部(根元部)の温度が低下してガラス表面の温度が低くなりすぎるため、成形後のガラス容器の底部に微小クラック等の欠点が発生し易くなる。また、凸部の基部(根元部)の温度が低下することによって、ガラスの延伸が阻害され、成形不良が生じる。一般的なガラス容器の成形では、凸部の先端部の温度は離型性を考慮して600℃以下であることが好ましく、凸部の基部の温度は、プッシュアップの成形性を考慮して500℃以上600℃以下、更には530℃以上550℃以下であることが望ましいとさせている。そのため、凸部の基部の温度を500℃以上600℃以下に維持しつつ、凸部の先端部の温度を500℃以上600℃以下に低下させる技術が必要になる。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、ガラス容器を成形するための底型において、中央に設けられた凸部の基部の温度低下を抑制しつつ、凸部の先端部の温度上昇を抑制することを課題とする。また、ガラス容器において、微小クラック及び成形不良を抑制しつつ、底部にプッシュアップを形成することを課題とする。また、微小クラック及び成形不良を抑制しつつ、底部にプッシュアップを形成することができるガラス容器の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、パリソンからガラス容器(C)を成形するブロー成形に使用され、前記ガラス容器の底部を成形する底型(15)であって、前記底型の中央部に上方に向けて突設され、前記ガラス容器の前記底部の中央部に対応した凸部(36)を有し、前記凸部の基部(38)は、第1材料によって形成され、前記凸部の先端部(37)は、前記第1材料よりも熱伝導率が高い第2材料によって形成されていることを特徴とする。
【0007】
この態様によれば、凸部の先端部の熱伝導率が基部の熱伝導率よりも高いため、ガラス(パリソン)との接触時間が長く、高温になる凸部の先端部の熱を、冷却風によって効率良く下げることができる。そのため、ガラス容器の成形後、次のガラスが配置されるまでの間に凸部の先端部の温度を最適な温度に下げることができる。これにより、冷却風の強化を図ることなく凸部の先端部の温度上昇を抑制することができ、凸部の基部の温度低下を抑制することができる。その結果、ガラス容器を適切に成形しつつ、成形したガラス容器に対する底型の離型性を向上させることができる。
【0008】
また、上記の態様において、前記凸部の前記基部は中央に受容孔(44)を有し、前記凸部の前記先端部は、前記受容孔に挿入された軸部(51)と、前記軸部の一端に設けられ、前記ガラス容器の前記底部の中央部を形成する頭部(52)とを有するとよい。
【0009】
この態様によれば、異なる材料から形成される凸部の先端部及び凸部の基部の組立構造を簡素にすることができる。また、頭部が受けた熱を軸部によって底型の内部に伝達することができ、凸部の先端部のガラス容器と接触する表面の温度を低下させることができる。
【0010】
また、上記の態様において、前記頭部は、前記凸部の前記基部に対して前記ガラス容器側に突出しているとよい。
【0011】
この態様によれば、頭部と凸部の基部とによって、成形するガラス容器の底部を形成することができる。
【0012】
また、上記の態様において、前記底型の内部において前記凸部の下方には冷却媒体が流れる冷却通路(41)が形成され、前記受容孔は前記冷却通路と接続し、前記軸部の他端は前記冷却通路内に突入しているとよい。
【0013】
この態様によれば、軸部が冷却媒体によって冷却されるため、凸部の先端部のガラス容器と接触する表面の温度を低下させることができる。
【0014】
また、上記の態様において、前記軸部の他端は複数の冷却フィン(61)を有するとよい。
【0015】
この態様によれば、軸部の放熱性を向上させることができ、凸部の先端部のガラス容器と接触する表面の温度を一層低下させることができる。
【0016】
また、上記の態様において、前記受容孔の前記冷却通路側の端部は、反対側の端部に対して幅が広く、前記軸部との間に隙間(56)を形成するとよい。
【0017】
この態様によれば、軸部の冷却通路への露出面積を増加させることができ、軸部を一層冷却することができる。
【0018】
また、上記の態様において、前記軸部は、前記受容孔に圧入されているとよい。
【0019】
この態様によれば、異なる材料から形成される凸部の先端部及び基部の組立構造を簡素にすることができる。
【0020】
また、上記の態様において、前記軸部の径方向に延び、前記凸部の前記基部を貫通すると共に前記軸部に係合した抜け止めピン(58)を有するとよい。
【0021】
この態様によれば、凸部の先端部が基部から脱落することを防止することができる。
【0022】
また、上記の態様において、前記凸部の前記先端部は、前記凸部の前記基部に溶射された溶射部(71)であるとよい。
【0023】
この態様によれば、異なる材料から形成される凸部の先端部及び凸部の基部を一体に形成することができる。
【0024】
また、上記の態様において、前記第1材料は鉄系材料であり、前記第2材料は銅系材料であるとよい。
【0025】
この態様によれば、凸部の先端部の熱伝導率を凸部の基部より高くすることができる。
【0026】
本発明の他の態様は、上記の底型(15)を使用して製造され、底部にプッシュアップ(P)を有することを特徴とするガラス容器(C)である。
【0027】
この態様によれば、微小クラックや成形不良を抑制しつつ、ガラス容器の底部にプッシュアップを形成することができる。
【0028】
本発明の他の態様は、上記の底型(15)を使用したガラス容器(C)の製造方法であって、前記凸部の前記先端部及び前記基部の温度を500℃以上600℃以下に調節し、700℃以上1000℃以下の可撓性を有するガラスを前記底型に押し当てる工程を有することを特徴とする。また、上記の底型(15)を使用したガラス容器(C)の製造方法であって、前記凸部の前記先端部の温度を550℃以上600℃以下に調節し、かつ前記凸部の前記基部の温度を500℃以上550℃以下に調節し、700℃以上1000℃以下の可撓性を有するガラスを前記底型に押し当てる工程を有することを特徴とする。
【0029】
この態様によれば、微小クラックや厚み不良を抑制しつつ、ガラス容器の底部にプッシュアップを形成することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ガラス容器を成形するための底型において、中央に設けられた凸部の基部の温度低下を抑制しつつ、凸部の先端部の温度上昇を抑制することができる。また、ガラス容器において、微小クラック及び成形不良を抑制しつつ、底部にプッシュアップを形成することができる。また、微小クラック及び成形不良を抑制しつつ、底部にプッシュアップを形成することができるガラス容器の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施形態に係る成形装置を示す側面図
図2】ディストリビュータプレート、底型、及び仕上型を示す断面図
図3】底型の断面図
図4】変形実施例に係る底型の断面図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係るガラス容器の成形装置は、ガラスゴブからパリソンを成形する工程と、パリソンからガラス容器を成形する工程とを実行する。
【0033】
図1に示すように、成形装置1は、基台2に回転可能に支持された反転アーム3を有する。反転アーム3は、水平方向に延びる回転中心を有し、初期位置と、初期位置に対して180°回転した反転位置との間で回転する。反転アーム3の先端には、少なくとも1つの口型4が支持されている。口型4は、反転アーム3が初期位置にあるときに、反転アーム3の上側に配置される。各口型4は、上下に延びる合せ面を有する割型と、一対の割型の間に配置されるガイドリングとを有する。一対の割型及びガイドリングのそれぞれは、反転アーム3に支持されている。基台には、口型が初期位置にあるときに、ガイドリングを通過して、割型間に突入するプランジャが設けられている。
【0034】
各口型4の上方には、一対の粗型5がそれぞれ配置されている。一対の粗型5は、上下に延びる合せ面を有し、下端部において口型4を側方から挟み込むように配置される。一対の粗型5は、合せ面にパリソンの側部に対応した形状を形成する。粗型5の上端開口は、バッフル6によって開閉可能に閉じられる。
【0035】
ガラスゴブからパリソンを成形する工程は、例えばブローアンドブロー成形によって行う。最初に、バッフル6を退避させた状態で口型4及び粗型5内にゴブを投入する。次に、バッフル6によって粗型5の上端を閉じ、バッフル6からセッツルエアーを噴射してゴブを口型4に押し付けてパリソンの口部を形成する。次に、口型4の割型及びプランジャの間から口部の内部にエアーを噴射してゴブを膨張させ、粗型5及びバッフル6にゴブを押し付けてパリソンの側部及び底部を形成する。これにより、パリソンが形成される。次にバッフル6と口型4のプランジャを退避させると共に、一対の粗型5を開いてパリソンを露出させる。この状態で、パリソンは口部において口型4に支持される。そして、反転装置が反転位置に移動することによって、パリソンは口部が上端に位置するように反転し、口型4に吊るされた状態になる。他の実施形態では、ブローアンドブロー成形に代えて、プレスアンドブロー成形やナローネックプレスアンドブロー成形によってパリソンを成形してもよい。
【0036】
基台2において、反転位置にある口型4の下方にはディストリビュータプレート10が設けられている。図2に示すように、ディストリビュータプレート10は、鉄等の金属から形成された板状部材であり、水平な上面11を有する。ディストリビュータプレート10の上面11には、ガラス容器Cの底部を形成するための底型15が配置される。
【0037】
ディストリビュータプレート10の上面11には、有底の円孔である第1支持孔16が凹設されている。第1支持孔16には、円柱形の支持軸17が着脱可能に嵌合している。支持軸17の上端は、上面11よりも上方に突出している。支持軸17には軸線方向に貫通する排気通路18が形成されている。
【0038】
ディストリビュータプレート10の上面11には、位置決めピン20が突設されている。ディストリビュータプレート10には、厚み方向(上下方向)に貫通し、上面11に開口した複数の第1通気孔23が形成されている。また、ディストリビュータプレート10には、厚み方向(上下方向)に貫通し、第1支持孔16の底部に開口し、排気通路18に接続した第2通気孔24が形成されている。
【0039】
図2に示すように、底型15は、底板部25を有する。底板部25は略円板状に形成され、水平な上面及び下面を有する。底板部25の下面の中央には、底型15の中心軸線Aに沿って有底の円孔である第2支持孔26が凹設されている。第2支持孔26は、支持軸17が嵌合可能に形成されている。また、底板部25の下面には、位置決めピン20が嵌合する嵌合孔28が形成されている。支持軸17が第2支持孔26に嵌合し、かつ位置決めピン20が嵌合孔28に嵌合することによって、ディストリビュータプレート10に対する底型15の位置が定まる。
【0040】
底板部25の上面の中央には、底型15の中心軸線Aに沿って上方に向けて突出した円柱状の底型下部31が設けられている。底型下部31の上端には、同軸に底型上部32が設けられている。底型上部32は、中心軸線Aを中心とした円板状に形成され、その外周部は底型下部31よりも径方向外方に張り出している。底型上部32の上面は、成形するガラス容器Cの底部に対応した底部型面33を構成する。
【0041】
底部型面33の外周部には、下方に向けて凹んだ凹部35が形成されている。凹部35は、中心軸線Aを中心として環状に延びている。底部型面33の中央部には、中心軸線Aに沿って上方に突出した凸部36が形成されている。凸部36は、中心軸線Aを中心とした略円錐形に形成されている。凸部36は、鈍らされて半球状(凸面)に形成された先端部37と、先端部の下方に位置する基部38(根元部)とを有する。基部38の外周縁は、凹部35の内周縁と滑らかに接続している。凸部36は、ガラス容器Cの底部の中央部に対応し、ガラス容器Cの底部の中央部にプッシュアップP(凹み)を形成する。
【0042】
底型下部31及び底型上部32の内部には、冷却媒体としての空気が流れる冷却用空洞41(冷却通路)が形成されている。冷却用空洞41は、凸部36の下方に配置されている。冷却用空洞41は、第2支持孔26と接続している。底型下部31及び底板部25には、底板部25の下面から冷却用空洞41に延びた複数の第3通気孔42が形成されている。底型15がディストリビュータプレート10にセットされた状態において、各第3通気孔42の底板部25側の開口端は、対応する第1通気孔23の上面側の開口端と接続する。ディストリビュータプレート10の下方には第1通気孔23の下端に冷却風(圧縮空気)を供給する通風口が設けられている。冷却風は、第1通気孔23及び第3通気孔42を通過して冷却用空洞41に流入し、底型15を冷却する。その後、冷却風は、冷却用空洞41から排気通路18及び第2通気孔24を通過して外部に排出される。また、複数の第1通気孔23のいくつかは底板部25の下面に向けて開口し、底板部25の下面を冷却する。
【0043】
凸部36の基部38は第1材料によって形成され、凸部36の先端部37は第1材料よりも熱伝導率が高い第2材料によって形成されている。第1材料は、ねずみ鋳鉄、ダクタイル鋳鉄、炭素鋼、合金鋼、炭素工具鋼、及び合金工具鋼等の鉄系材料であるとよい。第2材料は、銅及び銅合金等の銅系材料であるとよい。銅合金は、例えば白銅、洋白、アルミニウム青銅等の公知の銅合金であってよい。また、第2材料は、アルミニウム合金であってもよい。本実施形態では、底型15の底型下部31及び底板部25が、凸部36の基部38と同じ第1材料によって一体に形成されている。
【0044】
図3に示すように、凸部36の基部38は中央に受容孔44を有する。受容孔44は、中心軸線Aに沿って上下に延び、冷却用空洞41に接続した下端と、凸部36の基部38の上面に開口した上端とを有する。受容孔44は、冷却用空洞41側の端部(下端)に段違いに拡幅された拡幅部45を有する。拡幅部45によって、受容孔44の冷却用空洞41側の端部(下端)は、反対側の端部(上端)に対して幅が広くなっている。凸部36の基部38の上面における受容孔44の周囲には、座面46が形成されている。座面46は、環状をなし、中心軸線Aと垂直な平面に形成されている。
【0045】
凸部36の先端部37は、受容孔44に挿入された軸部51と、軸部51の上端に設けられた頭部52とを有する挿入体50によって形成されている。頭部52は、半球状に形成され、凸面に形成された上面53と、平面に形成された下面54とを有する。頭部52は軸部51より大きい直径を有し、軸部51に同軸に設けられている。軸部51が受容孔44に圧入されることによって、凸部36の先端部37は凸部36の基部38に組み付けられている。凸部36の先端部37が凸部36の基部38に組み付けられた状態において、頭部52は凸部36の基部38に対してガラス容器C側に突出している。また、頭部52の下面54は座面46に当接し、頭部52の上面53は凸部36の基部38の外面と滑らかに連続する曲面を形成する。受容孔44の拡幅部45の内周面と軸部51の外周面との間に隙間56が形成される。
【0046】
また、抜け止めピン58によって、挿入体50(凸部36の先端部37)は凸部36の基部38に固定されている。抜け止めピン58は、軸部51の径方向に延び、凸部36の基部38を貫通すると共に、一端において軸部51に係合している。抜け止めピン58は、凸部36の基部38に形成された挿入孔59に挿入され、圧入や溶接によって挿入孔59に固定されるとよい。挿入孔59の開口端は、抜け止めピン58が装着された後に、溶接等によって埋められる。
【0047】
軸部51の先端(下端)は、冷却用空洞41内に突入している。軸部51の先端は、複数の冷却フィン61を有する。各冷却フィン61は、軸部51の外周面に沿って周方向に延びている。冷却フィン61は、公知の様々な形状を適用することができ、軸部51の外周面に沿って軸方向に延びていてもよく、軸部51の外周に螺旋状に設けられてもよい。
【0048】
成形時において、凸部36の先端部37の温度は、ガラスの離型性を考慮して、600℃以下であることが好ましい。また、凸部36の基部38の温度は、ガラスの成形性を考慮して、500℃以上であることが好ましい。先端部37は、ガラスに対する相対位置から基部38よりも高温になるが、基部38との温度差は小さいことが好ましい。以上の観点から、成形時において凸部36の先端部37の温度は、550℃以上600℃以下であり、基部38の温度は500℃以上550℃以下に設定されることが好ましい。底型15に押し当てられるガラス(パリソン)の温度は、700℃以上1000℃以下であり、可撓性を有する。
【0049】
底板部25の上面には、上方に向けて突出した位置決めピン62が設けられている。各底型15の上方には、一対の仕上型64がそれぞれ配置されている。仕上型64は、例えばねずみ鋳鉄等の金属によって形成されている。一対の仕上型64は、上下に延びる合せ面を有し、合せ面に成形するガラス容器Cの側部の形状に対応した側部型面65を有する。各側部型面65によって仕上型空洞部66が形成される。一対の仕上型64の下端面は、底板部25の上面と摺接可能な平面に形成されている。各仕上型64の側部型面65の下端縁には、底型15の底型下部31及び底型上部32を挟持する第1挟持部68が形成されている。また、一対の仕上型64の合せ面の下端部には、位置決めピン62を挟持する第2挟持部69が形成されている。
【0050】
一対の仕上型64は、図示しない支持装置に支持され、それぞれの合せ面が互いに当接した成形位置と、それぞれの合せ面が互いに分離し、底型15から離れた退避位置との間で移動可能になっている。例えば、一対の仕上型64は、上下に延びる所定の軸線を中心とした回動動作によって成形位置と退避位置との間を移動するとよい。
【0051】
一対の仕上型64が成形位置にあるときに、第1挟持部68に底型15の底型下部31及び底型上部32が挟持され、第2挟持部69に位置決めピン62が挟持される。これにより、一対の仕上型64と底型15の相対位置が定まる。各仕上型64が成形位置にあるときに、底部型面33と側部型面65のそれぞれとは滑らかに接続し、成形するガラス容器Cの外形に対応した形状を形成する。
【0052】
ガラス容器Cの製造方法において、パリソンからガラス容器Cを成形する工程では、最初に、口型4に支持されたパリソンは、反転アーム3が反転位置に移動することによって、底型15の上方に口型4によって吊るされた状態となる。次に、仕上型64が成形位置に移動し、底型15の上方に配置される。このとき、第1挟持部68によって底型15の底型下部31及び底型上部32が挟持され、かつ第2挟持部69によって位置決めピン62が挟持されることによって、底型15の位置が固定される。
【0053】
各仕上型64が成形位置に配置されることによって、パリソンは各仕上型64の間の仕上型空洞部66に配置され、口型4は仕上型空洞部66の上端開口に配置される。次に、口型4が成形されたガラス容器Cの口部を離し、反転アーム3が初期位置に移動する。続いて、圧縮空気の供給ノズルがパリソンの口部に接続される。このときのパリソンの温度は、700℃以上1000℃以下である。この状態で、パリソンの口部を介してパリソンの内側に圧縮空気が吹き込まれ、パリソンが下方かつ側方に膨張する。パリソンは、底型15の底部型面33及び仕上型64の側部型面65に押し付けられて成形され、底部にプッシュアップPを有するガラス容器Cが成形される。ガラス容器Cの成形時において、凸部36の先端部37及び基部38の温度は、500℃以上600℃以下に設定される。より好ましくは、凸部36の先端部37の温度が550℃以上600℃以下であり、基部38の温度が500℃以上550℃以下に設定される。
【0054】
次に、各仕上型64が退避位置に移動し、ガラス容器Cは底部において底型15に支持された状態になる。この状態から図示しないクランプ装置が成形されたガラス容器Cの口部を挟持してガラス容器Cを上方に持ち上げ、底型15からガラス容器Cの底部を引き離す。クランプ装置によって底型15から取り外されたガラス容器Cは、続く徐冷工程に送られる。
【0055】
以上のように構成した底型15の効果について説明する。凸部36の先端部37(挿入体50)が基部38に対して熱伝導率が高い材料が形成されているため、先端部37の熱が基部38に伝達され易くなる。これにより、基部38の温度低下を抑制しつつ、先端部37の温度上昇を抑制することができる。先端部37の温度上昇が抑制されることによって、成形したガラス容器Cに対する底型15の離型性を向上させることができる。
【0056】
凸部36の先端部37の軸部51の下端が冷却用空洞41内に配置されているため、軸部51が冷却風によって冷却される。これにより、ガラス容器Cから頭部52に伝達された熱は、軸部51によって冷却用空洞41内に輸送され、冷却用空洞41内を流れる冷却風に伝達される。これにより、先端部37の頭部52のガラス容器Cと接する表面の温度を低下させることができる。頭部52と冷却用空洞41とを接続する軸部51によって、先端部37の冷却効果が向上するため、底型全体の冷却能力を増加させなくても先端部37を十分に冷却することができる。これにより、凸部36の基部38の高温に維持することが可能になる。その結果、先端部37と基部38との温度差が小さくなる。
【0057】
軸部51が冷却フィン61を有するため、軸部51の放熱能力が増加し、頭部52のガラス容器Cと接する表面の温度を一層低下させることができる。受容孔44の冷却用空洞41側の端部に拡幅部45を設け、受容孔44の内周面と軸部51の外周面との間に隙間56を形成したため、軸部51の冷却用空洞41への露出面積を増加させることがでる。これにより、軸部51の冷却を強化することができる。
【0058】
凸部36の基部38に受容孔44を形成し、凸部36の先端部37に軸部51を設け、軸部51を受容孔44に挿入する構成としたため、異なる材料から形成される凸部36の先端部37及び基部38の組立構造を簡素にすることができる。
【実施例
【0059】
以下に、上記実施形態の実施例について説明する。実施例は、上記実施形態と同様の構成を有する。第1材料はねずみ鋳鉄、第2材料は銅-ニッケル合金とした。実施例と対比する目的で、凸部36の先端部37の材料(第2材料)をねずみ鋳鉄とし、凸部36の先端部37と基部38とを一体に形成した底型(比較例)を用意した。比較例に係る底型の他の構成は、実施例に係る底型と同様の構成とした。
【0060】
実施例及び比較例に係る底型を使用してガラス容器Cの成形を連続して50回実施し、その直後の第1測定点(凸部36の先端部37)及び第2測定点(凸部36の基部38)の表面温度を測定した。冷却用空洞41に供給する冷却風(圧縮空気)の流量は、第1測定点の表面温度が約600℃になるように調節した。
【0061】
結果を次の表1に示す。実施例に係る底型では、第1測定点の表面温度が580℃、第2測定点の表面温度が540℃、第1測定点及び第2測定点の温度差が40℃となった。一方、比較例に係る底型では、第1測定点の表面温度が610℃、第2測定点の表面温度が480℃、第1測定点及び第2測定点の温度差が130℃となった。また、実施例に係る底型を使用した場合、比較例に係る底型を使用した場合に比べて供給した冷却風の流量が減少した。
【表1】
【0062】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、図4に示すように、凸部36の先端部37は、基部38の中央に溶射された溶射部71であってもよい。この場合、上記実施形態と同様に基部38に受容孔44を形成し、受容孔44を第2材料からなる溶射部71で閉塞するとよい。溶射部は冷却用空洞41に露出していることが好ましい。
【符号の説明】
【0063】
1 :成形装置
10 :ディストリビュータプレート
15 :底型
18 :排気通路
23 :第1通気孔
24 :第2通気孔
25 :底板部
26 :第2支持孔
31 :底型下部
32 :底型上部
33 :底部型面
35 :凹部
36 :凸部
37 :先端部
38 :基部
41 :チャンバ
42 :第3通気孔
44 :受容孔
45 :拡幅部
51 :軸部
52 :頭部
56 :隙間
58 :抜け止めピン
59 :挿入孔
61 :冷却フィン
64 :仕上型
71 :溶射部
A :中心軸線
C :ガラス容器
図1
図2
図3
図4