(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】配線基板設計支援装置、配線基板ビア配置方法及び配線基板ビア配置プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/394 20200101AFI20220816BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20220816BHJP
G06F 115/12 20200101ALN20220816BHJP
【FI】
G06F30/394
H05K3/00 D
G06F115:12
(21)【出願番号】P 2018152509
(22)【出願日】2018-08-13
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】三國 勝志
(72)【発明者】
【氏名】八木澤 隆一
(72)【発明者】
【氏名】山口 昭嗣
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第7269813(US,B2)
【文献】特開2002-334124(JP,A)
【文献】国際公開第2009/122494(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/30 -30/398
H05K 3/00
H01L 23/52 -23/538
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板に複数のビアを配置する配線基板設計支援装置において、
上記配線基板に配置させるビア及び配線に関する設計情報を記憶する設計情報記憶手段と、
上記設計情報に基づいて、縦横の間隔を等間隔とした格子点の位置を、縦方向及び横方向に所定の移動量だけ移動させるものであって、当該格子の行毎に上記格子点の横の移動方向を交互に変え、かつ、当該格子の列毎に上記格子点の縦の移動方向を交互に変えて、移動後の上記格子点の位置にビアを配置する配線基板ビア配置手段と
を備えることを特徴とする配線基板設計支援装置。
【請求項2】
上記配線基板ビア配置手段が、
上記設計情報に基づいて、上記縦横の間隔が等間隔とした格子点の位置にビアを配置して、ビア間に配線を配置したときの余剰クリアランスの値を求める余剰クリアランス算出部と、
上記ビア間に、上記配線の数を増やして上記配線を配置したとき不足クリアランスの値を求める不足クリアランス算出部と、
上記余剰クリアランスの値と上記不足クリアランスの値との比較結果に応じて、上記格子点の位置を縦方向及び横方向に移動させる移動量を算出する移動量算出部と
を有することを特徴とする請求項1に記載の配線基板設計支援装置。
【請求項3】
上記配線基板ビア配置手段により配置されたビア配列においてビア間に配線を設定する配線設定手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線基板設計支援装置。
【請求項4】
配線基板に複数のビアを配置する配線基板ビア配置方法において、
設計情報記憶手段が、上記配線基板に配置させるビア及び配線に関する設計情報を記憶し、
配線基板ビア配置手段が、上記設計情報に基づいて、縦横の間隔を等間隔とした格子点の位置を、縦方向及び横方向に所定の移動量だけ移動させるものであって、当該格子の行毎に上記格子点の横の移動方向を交互に変え、かつ、当該格子の列毎に上記格子点の縦の移動方向を交互に変えて、移動後の上記格子点の位置にビアを配置する
ことを特徴とする配線基板ビア配置方法。
【請求項5】
配線基板に複数のビアを配置する配線基板ビア配置プログラムにおいて、
上記配線基板に配置させるビア及び配線に関する設計情報を記憶する設計情報記憶手段を有するコンピュータを、
上記設計情報に基づいて、縦横の間隔を等間隔とした格子点の位置を、縦方向及び横方向に所定の移動量だけ移動させるものであって、当該格子の行毎に上記格子点の横の移動方向を交互に変え、かつ、当該格子の列毎に上記格子点の縦の移動方向を交互に変えて、移動後の上記格子点の位置にビアを配置する配線基板ビア配置手段
として機能させることを特徴とする配線基板ビア配置プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板設計支援装置、配線基板ビア配置方法及び配線基板ビア配置プログラムに関し、例えば、半導体ウェハに形成された複数の電子回路を試験するプローブカードの配線基板(多層配線基板)におけるビアの配置を決定する装置に適用し得る。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ上に形成された各半導体集積回路(電子回路)は、各チップに分離される前に、テスター装置を用いた電気的な検査を受ける。この電気的検査では、一般的に、テスター装置と被試験体である各半導体集積回路との間にプローブカードを介在させて、プローブカードがテスター装置と各半導体集積回路との間で検査信号や応答出力等を伝達する。
【0003】
より具体的には、プローブカードは円板状であり、当該プローブカードの上面周縁部には、テスター装置と接続するテスターインタフェース部が設けられている。
【0004】
プローブカードには、テスターインタフェース部と電気的に接続している複数のプローブが設けられており、各プローブが各半導体集積回路の電極パッドと接触することにより、各半導体集積回路は各プローブを介してテスターと電気的に接続される。
【0005】
また、プローブカードは配線基板を有しており、配線基板の一方の面に複数のプローブが配置されている。各プローブは、直接的な配線経路を経由して上記テスターインタフェース部と接続したり、又は、上記配線基板の上面に設けられた電子部品(例えば、リレー、コンデンサ、抵抗器、コイル等)を経由して上記テスターインタフェース部と接続したりする。従って、このようなプローブカードの配線基板として、多層配線基板が形成されている。
【0006】
多数の配線経路を実現するため、多層配線基板を構成する各層の配線基板上には多数のビアを配置するが、各ビアは、実装部品等に合わせて、等ピッチの格子状に配置するのが一般的であり、等ピッチ間隔のビアの間に配線を収容させている(
図12参照)。
【0007】
例えば、
図13に示すように、ビアパッドの径(ここでは直径2r)が0.5mmであり、配線幅wが0.1mmであり、ビアパッドのピッチ間隔pが0.8mmで、ビアパッド2を配置する場合を考える。この場合、ビアパッドと配線パターンの間に0.05mm以上のクリアランスを確保することが必要であるとすると、ビアパッド2-1及び2-2の間に1本の配線3を設けることになる。
【0008】
近年、実装部品の狭ピッチ化に伴い、各配線基板上に配置する各ビアパッドのピッチ間隔も狭ピッチとなっており、ビアパッド間に収容する配線数を増やすことが難しくなっている。
【0009】
等ピッチで格子状に配列されたビアパッドの間に配線を収容する際に、配線基板の設計条件によっては、ビアパッドのピッチ間隔にクリアランスがわずかに残っていることがある。そのような場合に、配線収容性を向上させるために、設計者はビアパッドの配置を調整して、配線数を増やすようにしている。
【0010】
従来、ビアパッドの配置を調整する方法として、例えば、特許文献1に記載される技術がある。特許文献1の記載技術は、あるブロック領域にあるビアパッド間の縦方向若しくは横方向のピッチ間隔を長くしたり、短くしたりするものである。
【0011】
また、設計者は、配線収容性を向上させるために、ビアパッドの位置を任意の位置に調整するということも行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述したように、設計者がビアパッドの位置を任意の位置に調整する方法は、作業効率が悪い。また、ビアパッドの位置を変えることによりビア配置領域が拡大するため、ビア配置領域同士の干渉により実装部品を高密度に配置することが難しくなってしまう。
【0014】
また、特許文献1の記載技術のように、ビアパッド間の縦方向若しくは横方向のピッチ間隔を調整する方法は、縦方向若しくは横方向のいずれかにおいて広い領域と狭い領域とが混在してしまうので、収容する配線数に偏りが生じてしまい、他の配線層への影響が生じ得る。
【0015】
そのため、良好な作業効率性で、ビア配置領域を拡大せずに、縦方向及び横方向共に偏りなく配線収容性を向上させることができる配線基板設計支援装置、配線基板ビア配置方法及び配線基板ビア配置プログラムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
かかる課題を解決するために、第1の本発明に係る配線基板設計支援装置は、配線基板に複数のビアを配置する配線基板設計支援装置において、(1)配線基板に配置させるビア及び配線に関する設計情報を記憶する設計情報記憶手段と、(2)設計情報に基づいて、縦横の間隔を等間隔とした格子点の位置を、縦方向及び横方向に所定の移動量だけ移動させるものであって、当該格子の行毎に格子点の横の移動方向を交互に変え、かつ、当該格子の列毎に格子点の縦の移動方向を交互に変えて、移動後の格子点の位置にビアを配置する配線基板ビア配置手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
第2の本発明に係る配線基板ビア配置方法は、配線基板に複数のビアを配置する配線基板設計支援方法において、(1)設計情報記憶手段が、配線基板に配置させるビア及び配線に関する設計情報を記憶し、(2)配線基板ビア配置手段が、設計情報に基づいて、縦横の間隔を等間隔とした格子点の位置を、縦方向及び横方向に所定の移動量だけ移動させるものであって、当該格子の行毎に格子点の横の移動方向を交互に変え、かつ、当該格子の列毎に格子点の縦の移動方向を交互に変えて、移動後の格子点の位置にビアを配置することを特徴とする。
【0018】
第3の本発明に係る配線基板ビア配置プログラムは、配線基板に複数のビアを配置する配線基板設計支援プログラムにおいて、配線基板に配置させるビア及び配線に関する設計情報を記憶する設計情報記憶手段を有するコンピュータを、設計情報に基づいて、縦横の間隔を等間隔とした格子点の位置を、縦方向及び横方向に所定の移動量だけ移動させるものであって、当該格子の行毎に格子点の横の移動方向を交互に変え、かつ、当該格子の列毎に格子点の縦の移動方向を交互に変えて、移動後の格子点の位置にビアを配置する配線基板ビア配置手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、良好な作業効率性で、ビア配置領域を拡大せずに、縦方向及び横方向共に偏りなく配線収容性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態に係る不等ピッチで配置したビアパッドの配置例を説明する説明図である。
【
図2】実施形態に係る配線基板設計支援装置のハードウェア構成を示す構成図である。
【
図3】実施形態の配線基板ビア配置プログラム11Pの機能部(ルーチン)構成を示す説明図である。
【
図4】実施形態に係る配線基板ビア配置処理を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態に係る配線収容に必要な最小ビアパッドピッチ間隔を説明する説明図である。
【
図6】実施形態に係る余剰クリアランスの算出を説明する説明図である。
【
図7】実施形態に係る不足クリアランスの算出を説明する説明図である。
【
図8】実施形態に係る等ピッチで格子状に配置されたビアパッドの移動方向を説明する説明図である。
【
図9】実施形態に係るビアパッド及びクリアランスを説明する説明図である。
【
図10】実施形態において不等ピッチでビアパッドを配置した後の配線設定を説明する説明図である。
【
図11】実施形態において不等ピッチのビアパッド間に配置する配線の配置を説明する説明図である。
【
図12】従来の等ピッチで格子状に配置したビアパッドの配置例を説明する説明図である。
【
図13】従来のビアパッド間に配置する配線の配置例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(A)主たる実施形態
以下では、本発明に係る配線基板設計支援装置、配線基板ビア配置方法及び配線基板ビア配置プログラムの実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
(A-1)実施形態の構成
図2は、この実施形態に係る配線基板設計支援装置のハードウェア構成を示す構成図である。
【0023】
図2において、この実施形態に係る配線基板設計支援装置10は、主制御部11、外部記憶部12、表示部13、入力部14を有する。
【0024】
この実施形態に係る配線基板設計支援装置10のハードウェア構成は、例えば、パーソナルコンピュータなどの汎用コンピュータや、配線基板を設計する専用のCAD(Computer-Aided Design)装置等を適用することができる。また、そのようなコンピュータに、実施形態に係る配線基板ビア配置プログラム11Pをインストールすることにより、配線基板設計支援装置10としての機能を実現するようにしてもよい。いずれの構築方法を採用した場合であっても、例えば、
図2に示すようなハードウェア構成を有する。なお、配線基板設計支援装置10は、
図2に例示する構成要素に加えて、プリンタ、通信部等が、主制御部11に接続されていてもよい。
【0025】
主制御部11は、CPUや主メモリやワーキングメモリ等を有し、搭載されている実施形態の配線基板ビア配置プログラム11Pを実行するものである。
【0026】
外部記憶部12は、ハードディスク装置、USBメモリなどの主制御部11外部のメモリが該当し、各種データを格納するものである。外部記憶部12は、例えば、後述する基板設計CADデータ12Aや基板設計CAD用ビア追加配置ファイル22Bを格納する。
【0027】
表示部13は、設計者に対して、ガイダンス情報や設計イメージ情報などを表示出力するためのものである。入力部14は、キーボードやマウス等が該当し、設計者からの入力情報を取込むものである。すなわち、表示部13及び入力部14は、設計者とのマンマシンインタフェースを構成している。
【0028】
図3は、この実施形態の配線基板ビア配置プログラム11Pの機能部(ルーチン)構成を示す説明図である。なお、
図3に示す全て又は一部の機能部は、ソフトウェアによる実現方法に限定されず、専用チップなどのハードウェアで実現しても良いものである。
【0029】
図3において、配線基板ビア配置プログラム11Pは、設計データ読込部111、ビア配置部112、配線設定部113を有する。また、ビア配置部112は、余剰クリアランス算出部41、不足クリアランス算出部42、ビア移動量算出部43、ビア座標算出部44、ビア配置情報出力部45を有する。
【0030】
なお、主制御部11が実行する配線基板ビア配置プログラム11Pの各構成要素の処理は、動作の項で詳細に説明する。
【0031】
(A-2)実施形態の動作
次に、この実施形態に係る配線基板設計支援装置10における配線基板ビア配置処理の動作を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
図4は、この実施形態に係る配線基板ビア配置処理を示すフローチャートである。
【0033】
配線基板設計支援装置10において、配線基板ビアの配置方法が開始すると、主制御部11は、外部記憶部12から、基板設計CADデータを読み取る(S10)。
【0034】
ここで、主制御部11が外部記憶部12から読み取る基板設計CADデータは、配線基板上に配置するビアと配線の設計に必要な情報とすることができる。例えば、基板設計CADデータは、ビアパッド径情報(この実施形態ではビアパッドの半径;r)、ビアパッドピッチ情報(p)、配線パターン幅情報(w)、クリアランス情報(c)、各ビアの座標情報(x,y)を含むものとする。なお、基板設計CADデータは、上記各種情報に限定されるものではなく、それ以外に、配線基板上面に設ける電子部品配置情報、配線基板下面のパッド情報等を含むようにしてもよい。
【0035】
ビアパッド径情報は、配置するビアが接続するパッド(ビアパッド)の径を示す情報である。例えば、
図9は、ビアと当該ビアが接続するパッドとの関係を例示する図である。
図9では、ビアVが貫通ビアであり、ビアVが半円球状のパッド21と接続している場合を例示している。この例の場合、ビアパッド径情報は、ビアVが接続しているパッド21の径情報を意味する。なお、この実施形態では、ビアパッド径情報がパッド21の半径rである場合を例示するが、ビアパッドの径情報はパッド21の直径であってもよい。また、ビアパッド径情報は、ビアVが接続しているパッド21の形状等に応じた情報とすることができる。
【0036】
ビアパッドピッチ情報は、等ピッチで格子状に配列するビア間の距離である。より具体的には、各ビアパッドの中心位置を結ぶ直線の距離である。
【0037】
配線パターン幅情報は、配線の幅長である。
【0038】
各ビアの座標情報は、配線基板上のある領域における、X方向及びY方向に等ピッチで格子状に配置した各ビアの座標情報である。プローブカードの配線基板は円板状であり、例えば円形の中心を原点としたXY座標系で表すことができ、等ピッチで形成した格子状のX方向の線とY方向の線との交点の位置を、各ビアの座標情報とすることができる。
【0039】
クリアランス情報は、あるビアパッドと配線との間、若しくは、配線と配線との間で最低限確保しなければならない距離である。この実施形態では、ビアパッドと配線との間のクリアランスと、配線と配線との間のクリアランスとが同じである場合を例示する。しかし、ビアパッドと配線との間のクリアランスと、配線と配線との間のクリアランスが異なる場合であってよい。
【0040】
上記のように、ビア配置の決定動作を開始する前に、上記基板設計CADデータが定まっており、主制御部11は、上記基板設計CADデータを外部記憶部12から読み取ることができる。
【0041】
主制御部11が基板設計CADデータを読み取ると、主制御部11は、読み取った基板設計CADデータに基づいて、配線数nのときの余剰クリアランスmの値を算出し(S11)、さらに配線数(n+1)のときの不足クリアランスsの値を算出する(S12)。
【0042】
[余剰クリアランスmの算出方法]
ここで、配線数nとする場合の余剰クリアランスmの算出方法について、
図5及び
図6を参照しながら説明する。
【0043】
主制御部11は、基板設計CADデータとして、各ビアパッドの半径r、各配線の幅w、クリアランスc、ビアパッドピッチpを取得し、(1)式に従って、余剰クリアランスmの値を算出する。
m=p-min p
=p-2r-(n×w)-(n+1)c …(1)
【0044】
(1)式は、2個のビアパッド2-1及び2-2の間に、n本の配線3を収容したときに、基板設計CADデータにおいて予め設定されているビアパッドピッチpに対するクリアランスの余剰量mを算出する演算式である。ここでは、配線3の数が2本である場合を例示している。
【0045】
(1)式が意味するところは、ビアパッド2-1又は2-2と配線3との間や、収容する配線3同士の間には、最小限確保しなければならないクリアランスcが必要となる。そのため、ビアパッドと配線又は配線同士の間にクリアランスcを確保した状態で、ビアパッド2-1及び2-2の間にn本の配線3を収容させた場合に、どれだけクリアランスが残っているかを導出している。
【0046】
図5に示すように、「min p」は、2個のビアパッド2-1及び2-2の間に、n本の配線3を収容するときに必要な最小ビアパッドピッチの距離である。
【0047】
(1)式では、予め設定されているビアパッドピッチpから、配線数nとしたときの配線収容に必要な最小ビアパッドピッチmin Pを減算した差分値を、余剰クリアランスmの値としている(
図6参照)。
【0048】
[不足クリアランスsの算出方法]
次に、配線数(n+1)とする場合の不足クリアランスsの算出方法について、
図7を参照しながら説明する。
【0049】
主制御部11は、ビアパッド2-1及び2-2間に収容する配線3の数をインクリメントして、配線数をn+1とする。そして、主制御部11は、各ビアパッドの半径r、各配線の幅w、クリアランスc、ビアパッドピッチpを用いて、(2)式に従って、不足クリアランスsの値を算出する。
s=min p-p
=2r+(n+1)w+(n+2)-p …(2)
【0050】
(2)式は、(n+1)本の配線を収容したときに、基板設計CADデータにおいて予め設定されているビアパッドピッチpで不足しているクリアランスの不足量を算出する演算式である。つまり、(2)式は、2個のビアパッド2-1及び2-2の間に収容する配線数を増やしたときの不足するクリアランス不足量を導出している。
【0051】
図7に示すように、(2)式では、配線数(n+1)としたときの配線収容に必要な最小ビアパッドピッチmin Pから、予め設定されているビアパッドピッチpを減算した差分値を、不足クリアランスsの値としている。
【0052】
[余剰クリアランスmと不足クリアランスsとの比較]
主制御部11は、余剰クリアランスmの値と不足クリアランスsの値とを比較する(S13)。
【0053】
そして、余剰クリアランスmの値が不足クリアランスsの値以上である場合(S13)、主制御部11は、不等ピッチで各ビアパッドを配置することができると判断して、S14の処理に移行することができる。つまり、余剰クリアランスmの値が不足クリアランスsの値以上である場合には、主制御部11は、ビアパッドの間にn本の配線3を収容することができる(すなわち、収容配線数を増やせるもの)と判断し、等ピッチの格子状に配置されている各ビアパッドの位置を移動させるようにする。
【0054】
一方、余剰クリアランスmの値が不足クリアランスsの値より小さい場合(s13)、主制御部11は、不等ピットで各ビアパッドを配置することができないと判断して、通常のビアパッドの配置処理を行なう(S16)。
【0055】
[ビア移動量(オフセット量)の算出及び配置]
S13において、余剰クリアランスmの値が不足クリアランスsの値以上である場合、主制御部11は、等ピッチの格子状に配置されている各ビアパッドの位置座標から、X方向及びY方向に移動させるための移動量deltaを算出する(S14)。
【0056】
そして、主制御部11は、等ピッチの格子状に配置されている各ビアパッドの位置座標(すなわち、x座標値、y座標値のそれぞれ)に、移動量deltaを加算又は減算して、不等ピッチの各ビアパッドの位置座標(x座標値、y座標値)を算出する(S15)。これにより、等ピッチの格子状に配置されていた各ビアパッドを、不等ピッチに配置することができる(S15)。
【0057】
ここで、
図1、
図8を参照しながら、主制御部11によるビアパッドの移動量deltaの算出方法及び各ビアパッドの配置方法を説明する。
【0058】
主制御部11は、余剰クリアランスmの値と不足クリアランスsの値とを用いて、(3)式に従い各ビアパッドの移動量deltaを算出する。
s/2≦ delta ≦m/2 …(3)
【0059】
(3)式より、各ビアパッドの移動量deltaの値を、不足クリアランスsの値の1/2以上であり、余剰クリアランスmの値の1/2以下とする。移動量deltaの値は、上記(3)式の条件を満たしていれば、任意の値とすることができる。
【0060】
移動量deltaは、上述したように、等ピッチの格子点にある各ビアパッドの位置座標から、X方向の移動量及びY方向の移動量であり、この実施形態では、X方向の移動量とY方向の移動量とが同じとする。すなわち、各ビアパッドは、X方向に移動量deltaだけ移動し、かつ、Y方向に移動量deltaだけ移動する。このように、X方向の移動量とY方向の移動量は同じ移動量としており、その移動後の位置が配置調整後のビアの位置となる。
【0061】
また、
図8に示すように、等ピッチの格子点にある各ビアパッドの位置座標からの移動方向は、X方向、Y方向共に、移動量deltaを移動させる方向を交互に変える。
【0062】
換言すると、X方向に関する移動方向は、格子状に配列しているビアパッドのうち、同一の行に属しているビアパッドについては、「-方向」に移動量deltaだけ移動させ、当該行に隣接している行に属しているビアパッドについては、「+方向」に移動量deltaだけ移動させる。このように、ビアパッドのX方向の移動については、行毎に、交互に移動させる方向を変えて、X座標値から移動量deltaだけ移動させる。
【0063】
またY方向に関する移動方向も、X方向の移動と同様とする。すなわち、格子状に配列しているビアパッドのうち、同一の列に属しているビアパッドについては、「-方向」に移動量deltaだけ移動させ、当該列に隣接している列に属しているビアパッドについては、「+方向」に移動量deltaだけ移動させる。このように、ビアパッドのY方向の移動については、列毎に、交互に移動させる方向を変えて、Y座標値から移動量deltaだけ移動させる。
【0064】
上述したように、各ビアパッドのX方向、Y方向のそれぞれについて、移動方向を交互に変えながら、移動量deltaだけ移動させることにより、
図1に例示するように、等ピッチで格子状に配置していた各ビアパッド2は、不等ピッチで配置されることになる。
【0065】
[配線の設定]
主制御部11は、不等ピッチで各ビアパッド2が配置されると、ビアパッド2の間に配線3を設定する。
【0066】
ここで、
図1、
図10及び
図11と
図13とを用いて、等ピッチのビアパッド2(2-1及び2-2)間に配線3を設定する場合と、不等ピッチのビアパッド2(2-1及び2-2)間に配線3を設定する場合とを比較しながら説明する。
【0067】
なお、ビアパッド2(2-1及び2-2)の半径rが0.5mmであり、配線幅wが0.1mmであり、ビアパッド2と配線3との間若しくは配線間に0.05mm以上のクリアランスcを確保することが必要であるものとする。
【0068】
図13に示すように、等ピッチであるビアパッドピッチ間隔pが0.8mmの場合、ビアパッド2-1及び2-2の間には1本の配線3のみを収容可能である。
【0069】
これに対して、
図1に示すように、例えば移動量deltaを0.05mmとして、各ビアパッド2の位置座標を移動させて、不等ピッチにビアパッド2を配置したとする。
【0070】
この場合、
図11に示すように、ビアパッド2-1とビアパッド2-2との間のビアパッドピッチ間隔p1は0.9mmとなるので、ビアパッド2-1及び2-2の間には2本の配線3を収容することができる。一方、ビアパッド2-2とビアパッド2-3との間のビアパッドピッチ間隔p2は0.7mmとなるので、ビアパッド2-2及び2-3の間には1本の配線3を収容することができる(
図10参照)。
【0071】
このように、各ビアパッド2が不等ピッチで配置されることにより、隣接するビアパッド2との間のピッチ間隔が拡がる領域と、逆に隣接するビアパッド2のピッチ間隔が狭くなる領域とが生じる。従って、主制御部11は、
図10、
図11に示すように、ピッチ間隔が拡がった領域では、収容配線数を増やして、配線3を収容することができる。
【0072】
また、ビアの位置を移動させる移動量deltaの値は、上記(3)式のように、不足クリアランスsの値の1/2以上であり、余剰クリアランスmの値の1/2以下とするため、ピッチ間隔が狭くなった領域においても、等ピッチでビアパッド2を配置したときと同数の配線3を収容することができる。
【0073】
(A-3)実施形態の効果
以上のように、この実施形態によれば、等ピッチで格子状に配置されたビアパッドの位置座標にオフセット量としての移動量を加算又は減算して、不等ピッチのビアパッドを配置しているので、ビア配置領域を拡大させずに、縦方向、横方向共に、偏りなく配線収容性を向上させることができる。
【0074】
また、実施形態によれば、予め規則性のある不等ピッチでビアパッドを配置しているので、作業効率性も良い。
【0075】
さらに、実施形態によれば、配線収容性が向上するため、多層配線基板は、層数削減が期待でき、配線基板の製造コストの削減も可能となる。
【0076】
(B)他の実施形態
上述した実施形態においても種々の変形実施形態を言及したが、本発明は、以下の変形実施形態にも適用することができる。
【0077】
(B-1)上述した実施形態では、ビアの配置方法を例示して説明した。しかし、例えばBGA(Ball Grid Array)等のように、ピッチで複数の電子部品を搭載する配線基板において、等ピッチで、一列以上、配列している上記各電子部品の端子の位置を配置する場合にも適用できる。つまり、ビアの配置に限定されるものではなく、電子部品の端子の配置としてもよいし、又等ピッチに配列されていれば、格子状に配置されていることに限定されるものではない。
【0078】
(B-2)上述した実施形態において、余剰クリアランスの算出方法、不足クリアランスの算出方法は、上記の限定されるものではない。
【符号の説明】
【0079】
2(2-1~2-3)、21,22…ビアパッド、3…配線パターン、
10…配線基板設計支援装置、11…主制御部、12…外部記憶部、13…表示部、14…入力部、11P…配線基板ビア配置プログラム、111…設計データ読込部、112…ビア配置部、113…配線設定部、41…余剰クリアランス算出部、42…不足クリアランス算出部、43…ビア移動量算出部、44…ビア座標算出部、45…ビア配置情報出力部。