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特許7123694量子通信システム、送信装置、及び受信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】量子通信システム、送信装置、及び受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 9/12 20060101AFI20220816BHJP
【FI】
H04L9/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018155481
(22)【出願日】2018-08-22
(65)【公開番号】P2020031319
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】黄川田 昌和
(72)【発明者】
【氏名】廣野 方敏
【審査官】金沢 史明
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-513622(JP,A)
【文献】特開平07-154371(JP,A)
【文献】国際公開第2010/092776(WO,A1)
【文献】特開2016-010161(JP,A)
【文献】特開2013-013073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 9/00- 9/38
G09C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置と受信装置とを具備する量子通信システムであって、
前記送信装置は、
互いに異なる波長を有する複数の光パルスを生成する複数の光源と、
情報を符号化するために前記複数の光パルスを変調する第1の変調器を備えるエンコーダと、
前記変調された複数の光パルスを含む光パルス列を前記受信装置に送信する送信部と、
を具備し、
前記受信装置は、
前記送信装置からの前記光パルス列を受信する受信部と、
前記受信された光パルス列に基づいて情報を取得するデコーダと、
を具備し、
前記量子通信システムは、
前記波長のそれぞれに対応して設けられ、前記光パルス列のうちの対応する波長の光パルスの偏光を制御する複数の偏光制御器と、
前記受信された光パルス列に基づいて前記複数の偏光制御器を制御する光パルス制御部と、
をさらに具備する、量子通信システム。
【請求項2】
前記送信装置は、前記複数の光パルスが互いに異なるタイミングで前記第1の変調器に入射するように、前記複数の光源を制御する光源制御部をさらに具備する、請求項1に記載の量子通信システム。
【請求項3】
前記光源制御部は、前記複数の光源に互いに異なるタイミングで前記複数の光パルスを放出させる、請求項2に記載の量子通信システム。
【請求項4】
前記送信装置は、
前記波長のそれぞれに対応して設けられ、前記複数の光パルスの強度を調整する複数の強度調整器と、
前記複数の強度調整器によって調整された前記複数の光パルスの強度が互いに同じになるように、前記複数の強度調整器を制御する強度制御部と、
をさらに具備する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の量子通信システム。
【請求項5】
前記エンコーダは、
前記複数の光パルスを、前記第1の変調器が設けられた第1の経路と、前記第1の経路とは異なる光路長を有する第2の経路と、に分岐する第1の分波器と、
前記変調された複数の光パルスからなる第1の光パルス列と、前記第2の経路を移動する複数の光パルスからなる第2の光パルス列と、を合波する第1の合波器と、
をさらに備え、
前記デコーダは、
前記第1の光パルス列と前記第2の光パルス列を分離し、前記第2の光パルス列を第3の経路に導き、前記第1の光パルス列を、前記第3の経路とは異なる光路長を有する第4の経路に導く第2の分波器と、前記第3の経路に設けられ、前記第3の経路を移動する第2の光パルス列を変調する第2の変調器と、前記第2の変調器によって変調された第2の光パルス列と、前記第4の経路を移動する第1の光パルス列と、を合波する第2の合波器と、を含む干渉計と、
前記波長のそれぞれに対応して設けられ、前記干渉計から出力される光子を検出する複数の検出器と、
を備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の量子通信システム。
【請求項6】
前記光パルス列の偏光を波長ごとに制御する偏光制御器と、
前記複数の検出器による検出結果に基づいて前記偏光制御器を制御する光パルス制御部と、
をさらに具備する請求項5に記載の量子通信システム。
【請求項7】
前記光パルス制御部は、前記複数の検出器による検出結果に基づいて前記複数の偏光制御器を制御する、請求項に記載の量子通信システム。
【請求項8】
前記波長のそれぞれに対応して設けられ、前記光パルス列のうちの対応する波長の光パルスの遅延量を制御する複数の遅延器をさらに具備し、
前記光パルス制御部は、前記複数の検出器による検出結果に基づいて前記複数の遅延器を制御する、請求項7に記載の量子通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、量子通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
量子鍵配送システムは、送信器、受信器、及びこれらを接続する量子伝送路を含んで構成される。送信器は、量子伝送路を介して光子を受信器に送信する。その後、送信器と受信器とが相互に信号情報を確認することによって、送信器と受信器との間で暗号鍵を共有する。この技術は、一般に量子鍵配送(Quantum Key Distribution:QKD)と呼ばれる。量子力学の基本原理により、盗聴者が量子伝送路の途中で光子を盗聴した場合、光子の物理的な状態が変化する。その結果、送信器と受信器との間で信号に誤差が生じる。QKDでは、信号の共通部分を比較することによって量子伝送路の途中に盗聴者がいたことを検出することが可能である。
【0003】
QKDが成り立つためには、量子伝送路において光子の状態が変化しないことが望ましい。しかしながら、量子伝送路の温度変化や振動などにより、光子の偏光及び位相に変化が生じる。量子鍵配送システムは、このような偏光及び位相の乱れを補正するフィードバック機構を備える。
【0004】
また、QKDシステムでは、鍵生成レートを向上するために、波長多重化が利用されることがある(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5413687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
QKDシステムのような位相変調を利用した量子通信システムでは、変調器が重要となっており、この変調器のコストが高い。特許文献1に示される光通信システムでは、波長ごとに変調器が設けられる。このため、波長の数が増加するほど変調器の数が増加する。その結果、装置(送信器及び/又は受信器)が複雑化し、コストが増大する。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、低コスト化を図った量子通信システム、送信装置、及び受信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る量子通信システムは、送信装置と受信装置とを具備し、前記送信装置は、互いに異なる波長を有する複数の光パルスを生成する複数の光源と、情報を符号化するために前記複数の光パルスを変調する第1の変調器を備えるエンコーダと、前記変調された複数の光パルスを含む光パルス列を前記受信装置に送信する送信部と、を具備し、前記受信装置は、前記送信装置からの前記光パルス列を受信する受信部と、前記受信された光パルス列に基づいて情報を取得するデコーダと、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る量子鍵配送システムのための送信器を示す図。
図2】第1の実施形態に係る量子鍵配送システムのための受信器を示す図。
図3】第2の実施形態に係る量子鍵配送システムのための送信器を示す図。
図4】第2の実施形態に係る量子鍵配送システムのための受信器を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら実施形態を説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1及び図2は、第1の実施形態に係る送信器(送信装置)100及び受信器(受信装置)200を備える量子鍵配送システムを示している。具体的には、図1は、送信器100の構造を概略的に示し、図2は、受信器200の構造を概略的に示している。
【0012】
図1に示されるように、送信器100は、伝送路190によって受信器200に接続される。伝送路190は、シングルモードファイバなどの光ファイバである。送信器100と受信器200は同期される。例えば、量子鍵配送システムは、送信器100及び受信器200を同期するための同期信号を生成するタイミング制御器(図示せず)を備える。一例として、タイミング制御器は受信器200内に設けられ、同期信号は古典チャネルで送信器100に送信される。
【0013】
送信器100は、光源102、104、106、制御器108、減衰器110、112、114、合波器116、分波器118、分波器120、検出器122、124、126、制御器128、130、132、干渉計134、及び減衰器142を備える。
【0014】
光源102は、減衰器110を経由して合波器116の第1の入力ポートに接続される。光源104は、減衰器112を経由して合波器116の第2の入力ポートに接続される。光源106は、減衰器114を経由して合波器116の第3の入力ポートに接続される。合波器116の出力ポートは、分波器118の入力ポートに接続される。分波器118の第1の出力ポートは、干渉計134及び減衰器142を経由して伝送路190に接続され、分波器118の第2の出力ポートは、分波器120の入力ポートに接続される。
【0015】
干渉計134は、分波器136、変調器138、及び合波器140を備える。干渉計134において、分波器136の入力ポートは、分波器118の第1の出力ポートに接続される。分波器136の第1の出力ポートは、変調器138を経由して合波器140の第1の入力ポートに接続され、分波器136の第2の出力ポートは、合波器140の第2の入力ポートに接続される。光源102、104、106から合波器140までにおいて、コンポーネント同士(例えば光源102及び減衰器110)を接続する光ファイバは全て偏光保持ファイバであり得る。合波器140の出力ポートは、減衰器142を経由して伝送路190に接続される。
【0016】
分波器120の第1の出力ポートは、検出器122に接続され、分波器120の第2の出力ポートは、検出器124に接続され、分波器120の第3の出力ポートは、検出器126に接続される。分波器118と分波器120を接続する光ファイバ、及び分波器120と検出器122、124、126を接続する光ファイバは、例えばシングルモードファイバである。
【0017】
光源102、104、106は、光パルス151、152、153を生成する。本実施形態では、光源102、104、106は、直線偏光した光パルス151、152、153を生成する。光源102、104、106は、互いに異なる出力波長を有する。言い換えると、光源102、104、106は、互いに異なる波長を有する光パルス151、152、153を生成する。例えば、光パルス152の波長は、光パルス151の波長よりも1nm長く、光パルス153の波長は、光パルス151の波長よりも1nm短い。光源102、104、106は、レーザーダイオードであり得るが、これに限定されない。
【0018】
光源102、104、106は、制御器108により適用される制御信号によって駆動される。制御信号は、例えば、所定の周波数(例えば1GHz)を有する電圧信号であり、それにより、光源102、104、106の各々は、一定間隔で(例えば1ナノ秒間隔で)光パルスを生成する。
【0019】
光源102、104、106は、光パルス151、152、153の偏光方向が偏光保持ファイバの特定の軸(典型的には遅軸)に平行になるように光パルス151、152、153を出力する。光源102、104、106から放出された光パルス151、152、153は、強度調整器としての減衰器110、112、114によって減衰されて、合波器116に入射する。合波器116は、光パルス151、152、153を合波する。光パルス151、152、153は、異なるタイミングで合波器116に入射する。それにより、合波器116は、時間的に離れた光パルス151、152、153からなる光パルス列154を出力する。合波器116は、例えば、波長分割多重化器(WDM;Wavelength Division Multiplexer)のような波長合波器であるが、これに限定されない。
【0020】
制御器108は、光パルス151、152、153が互いに異なるタイミングで合波器116に入射するように、光源102、104、106を制御する。本実施形態では、光源102、104、106のそれぞれから合波器116までの光路長が互いに同じであり、光源102、104、106の出力タイミングが異なる。制御器108は、光源102、104、106に、互いに異なるタイミングで光パルス151、152、153を放出させる。例えば、光パルス152は、光パルス151よりtlaserぶん遅れて出力され、光パルス153は、光パルス152よりtlaserぶん遅れて出力される。tlaserは、各光源の光パルス出力間隔(例えば1ナノ秒)未満である。制御器108は光源制御部とも称される。
【0021】
なお、光源104から合波器116までの光路長が光源102から合波器116までの光路長よりもtlaserに対応する光路長ぶん長く、光源106から合波器116までの光路長が光源104から合波器116までの光路長よりもtlaserに対応する光路長ぶん長くなるようにし、制御器108は、光源102、104、106に同じタイミングで光パルスを放出させてもよい。
【0022】
分波器118は、合波器116から出力された光パルス151、152、153を2つの経路に分岐する。分波器118の第1の出力ポートから出力される光パルスは、暗号鍵の生成に利用されるものであり、信号パルスと呼ぶこととする。分波器118の第2の出力ポートから出力される光パルスは、光源102、光源104、光源106から出力された光パルスの強度を補正するために使用されるものであり、強度補正用パルスと呼ぶこととする。光パルス151は、分波器118により強度補正用パルス155及び信号パルス158に分割される。光パルス152は、分波器118により強度補正用パルス156及び信号パルス159に分割される。光パルス153は、分波器118により強度補正用パルス157及び信号パルス160に分割される。
【0023】
分波器118は、ファイバカプラであり得るが、これに限定されない。例えば、分波器118として、ビームスプリッタなどの他の光学素子が使用されてもよい。分波器118の分岐比は、強度補正用パルスの強度が信号パルスの強度よりも強くなるように、設定されてよい。分岐比は、1:1であってもよく(すなわち、強度補正用パルスの強度が信号パルスの強度と等しくなるように設定されてもよく)、強度補正用パルスの強度が信号パルスの強度よりも弱くなるように設定されてもよい。
【0024】
分波器120は、強度補正用パルス155、156、157を波長ごとに分波する。強度補正用パルス155、156、157は、光源102、104、106にそれぞれ由来するものであるので、波長が互いに異なる。強度補正用パルス155は検出器122に導かれ、強度補正用パルス156は検出器124に導かれ、強度補正用パルス157は検出器126に導かれる。分波器120は、例えばWDMのような波長分波器であるが、これに限定されない。
【0025】
検出器122は、強度補正用パルス155を検出し、検出結果を制御器128に出力する。制御器128は、検出器122から受け取った検出結果に基づいて減衰器110を制御する。検出器124は、強度補正用パルス156を検出し、検出結果を制御器130に出力する。制御器130は、検出器124から受け取った検出結果に基づいて減衰器112を制御する。検出器126は、強度補正用パルス157を検出し、検出結果を制御器132に出力する。制御器132は、検出器126から受け取った検出結果に基づいて減衰器114を制御する。
【0026】
本実施形態では、検出器122、124、126は、入射光の強度を測定し、測定した強度を表す検出信号を制御器128、130、132に出力する。例えば、強度補正用パルス155に乱れが生じた場合、検出器122で測定される強度補正用パルス155の強度が低下する。制御器128、130、132は、検出器122、124、126への入射光の強度が目標値になるように、検出信号に基づいて減衰器110、112、114を調整する。これにより、光源102、104、106から以降に出力される光パルス151、152、153は、分波器118に入射するときに互いに同じ強度を有するようになる。その結果、分波器118から出力された信号パルス158、159、160は、互いに同じ強度を有する。制御器128、130、132を総称して強度制御部と称する。また、減衰器110、112、114、分波器118、120、検出器122、124、126、及び制御器128、130、132を総称して強度調整部と称する。
【0027】
制御器108、128、130、132は、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの専用のハードウェアプロセッサにより実現される。なお、制御器108、128、130、132は、CPU(Central Processing Unit)などの汎用のハードウェアプロセッサにより実現されてもよい。具体的には、制御器108、128、130、132の機能は、汎用ハードウェアプロセッサがコンピュータプログラムを実行することにより実現されてもよい。
【0028】
干渉計134は、分波器118から信号パルス158、159、160を受け取る。干渉計134は、信号パルス158、159、160を使用して情報を符号化するエンコーダに相当する。情報は、送信器100と受信器200とが共有することになる暗号鍵を生成するために、受信器200へ送信される情報である。本実施形態では、干渉計134は、非対称マッハツェンダー干渉計である。
【0029】
干渉計134内の分波器136は、信号パルス158、159、160を2つの経路137、139に分岐する。分波器136は、信号パルス158を信号パルス162、166に分割し、信号パルス159を信号パルス163、167に分割し、信号パルス160を信号パルス164、168に分割する。信号パルス162、163、164は信号パルス列(光パルス列)161として経路137に導かれ、信号パルス166、167、168は信号パルス列165として経路139に導かれる。分波器136は、ファイバカプラであり得るが、これに限定されない。
【0030】
変調器138は、経路137に設けられる。経路137を移動する信号パルス列161は、変調器138に入射する。変調器138は、情報を符号化するために、信号パルス162、163、164の位相を個別に変調する。変調器138は、信号パルス162、163、164に対して個別の位相シフトを適用する。例えば、変調器138は、信号パルス162に0°の位相シフトを適用し、信号パルス163に180°の位相シフトを適用し、信号パルス164に90°の位相シフトを適用する。変調器138によって位相変調された信号パルス162、163、164は合波器140に入射する。
【0031】
上述したように、信号パルス158、159、160は時間的に離れている。したがって、信号パルス162、163、164は、時間的に離れており、すなわち、異なるタイミングで変調器138に入射する。これにより、送信器100は、信号パルス162、163、164を1つの変調器138で個別に変調することができる。
【0032】
経路139を移動する信号パルス列165は合波器140に入射する。合波器140は、変調器138によって位相変調された信号パルス列161と、信号パルス列165と、を合波する。合波器140の第2の入力ポートに接続される偏光保持ファイバの遅軸は、合波器140の第1の入力ポートに接続される偏光保持ファイバの遅軸に対して90°回転される。これにより、信号パルス162、163、164の偏光は、信号パルス166、167、168の偏光と直交する。合波器140は、偏光ビームスプリッタであり得るが、これに限定されない。
【0033】
信号パルス列165が移動する分波器136から合波器140までの経路139の光路長は、信号パルス列161が移動する分波器136から合波器140までの経路137の光路長よりも長い。経路137と経路139との間の光路長差は、tdelayの光伝搬遅延時間に対応する。すなわち、干渉計134の出口では、信号パルス列165は、信号パルス列161よりもtdelayの時間ぶん遅れる。
【0034】
干渉計134から出力された信号パルス列161、165は、減衰器142に入射する。減衰器142は、信号パルス列161、165の強度が単一光子レベルになるように、信号パルス列161、165を減衰させる。具体的には、減衰器142は、信号パルス162、163、164、166、167、168の各々の1パルス当たりの平均光子数が1未満になるように、信号パルス列161、165を減衰する。減衰後の各信号パルスの1パルス当たりの平均光子数をμとすると、μ<1である。例えばμ=0.5である。減衰器142を通過した信号パルス列161、165は、伝送路190に入射し、信号パルス列169として伝送路190を通じて受信器200へ送信される。この例では、減衰器142の出力ポートが信号パルス列169を受信器200に送信する送信部に相当する。
【0035】
なお、減衰器142は、合波器116と分波器118との間又は分波器118と干渉計134との間などの他の位置に設けられていてもよい。この場合、合波器140の出力ポートが送信部に相当する。
【0036】
図2に示されるように、受信器200は、偏光制御器202、干渉計204、分波器214、216、検出器218、220、222、224、226、228、及び制御器230、232、234を備える。
【0037】
偏光制御器202の入力ポートに伝送路190が接続される。偏光制御器202の出力ポートは、干渉計204に接続される。干渉計204は、分波器206、変調器208、合波器210、及び遅延器212を備える。干渉計204において、分波器206の入力ポートは、偏光制御器202の出力ポートに接続される。分波器206の第1の出力ポートは変調器208を経由して合波器210の第1の入力ポートに接続される。分波器206の第2の出力ポートは、遅延器212を経由して合波器210の第2の入力ポートに接続される。偏光制御器202から合波器210までにおいて、コンポーネント同士(例えば分波器206及び変調器208)を接続する光ファイバは全て偏光保持ファイバであり得る。合波器210の第1の出力ポートは分波器214を経由して検出器218、220、222に接続され、合波器210の第2の出力ポートは分波器216を経由して検出器224、226、228に接続される。合波器210と分波器214を接続する光ファイバ、分波器214と検出器218、220、222を接続する光ファイバ、合波器210と分波器216を接続する光ファイバ、及び分波器216と検出器224、226、228を接続する光ファイバは、例えばシングルモードファイバである。
【0038】
受信器200は、送信器100によって送信された信号パルス列169を受信する。受信器200において、信号パルス列169は偏光制御器202に入射する。この例では、偏光制御器202の入力ポートが送信器100からの信号パルス列169を受信する受信部に相当する。信号パルス列169は、信号パルス列161と信号パルス列165とからなり、信号パルス列161は、信号パルス162、163、164からなり、信号パルス列165は、信号パルス166、167、168からなる。
【0039】
偏光制御器202は、入射光の偏光状態を制御するものである。偏光制御器202は、例えば、光ファイバに応力を適用することで入射光の偏光状態を任意の偏光状態に変更する。偏光制御器202は、制御器230、232、234によって制御され、信号パルス列169の偏光を波長ごとに調整する。信号パルス列169の偏光を調整する方法については後述する。偏光制御器202を通過した信号パルス列169は、干渉計204に入射する。
【0040】
干渉計204、分波器214、216、及び検出器218、220、222、224、226、228は、偏光制御器202から信号パルス列169を受け取り、信号パルス列169に基づいて、送信器100により送信された情報を取得する(復号する)デコーダに相当する。本実施形態では、干渉計204は、非対称マッハツェンダー干渉計である。
【0041】
干渉計204において、信号パルス列169は分波器206に入射する。分波器206は、信号パルス列161と信号パルス列165を分離し、信号パルス列161を経路209へ導き、信号パルス列165を経路207へ導く。分波器206は、偏光ビームスプリッタであり得るが、これに限定されない。
【0042】
経路207を移動する信号パルス列165は、変調器208に入射する。変調器208は、信号パルス列165の位相を個別に変調する。変調器208は、信号パルス166、167、168に対して個別の位相シフトを適用する。例えば、変調器208は、信号パルス166に0°の位相シフトを適用し、信号パルス167に90°の位相シフトを適用し、信号パルス168に0°の位相シフトを適用する。変調器208によって位相変調された信号パルス列165は、合波器210に入射する。
【0043】
信号パルス166、167、168は、時間的に離れており、すなわち、異なるタイミングで変調器208に入射する。これにより、受信器200は、信号パルス166、167、168を1つの変調器208で個別に変調することができる。
【0044】
経路209を移動する信号パルス列161は、合波器210に入射する。合波器210は、変調器208によって位相変調された信号パルス列165と信号パルス列161とを合波する。合波器210は、ファイバカプラであり得るが、これに限定されない。
【0045】
信号パルス列161が移動する分波器206から合波器210までの経路209の光路長は、信号パルス列165が移動する分波器206から合波器210までの経路207の光路長よりも長い。経路207及び経路209は、それらの間の光路長差がtdelayの光伝搬遅延時間に対応するように設計される。すなわち、送信器100内の干渉計134の光路長差は、受信器200内の干渉計204の光路長差と等しい。このため、理想的には、信号パルス列161、165が同時に合波器210に入射し、合波器210において信号パルス列161、165が干渉する。具体的には、信号パルス162、166が同時に合波器210に入射し、合波器210において信号パルス162、166が干渉し、信号パルス163、167が同時に合波器210に入射し、合波器210において信号パルス163、167が干渉し、信号パルス164、168が同時に合波器210に入射し、合波器210において信号パルス164、168が干渉する。
【0046】
遅延器212は、経路209の光路長を調整するために使用される。遅延器212は、制御器230、232、234によって制御され、信号パルス162、163、164の遅延量を波長ごとに調整する。信号パルス162、163、164の遅延量を調整する方法については後述する。遅延器212は、ファイバストレッチャーであり得るが、これに限定されない。
【0047】
合波器210から出力される光は、分波器214又は分波器216を経由して、検出器218、220、222、224、226、又は228で検出される。分波器214は、光を波長ごとに分波する。分波器214は、光源102の出力波長を有する光を検出器218に導き、光源104の出力波長を有する光を検出器220に導き、光源106の出力波長を有する光を検出器222に導く。同様に、分波器216は、光を波長ごとに分波する。分波器216は、光源102の出力波長を有する光を検出器224に導き、光源104の出力波長を有する光を検出器226に導き、光源106の出力波長を有する光を検出器228に導く。分波器214、216は、例えばWDMのような波長分波器であるが、これに限定されない。
【0048】
光源102に由来する信号パルス162、166の干渉により生じた光子は、検出器218又は224で検出され、光源104に由来する信号パルス163、167の干渉により生じた光子は、検出器220又は226で検出され、光源106に由来する信号パルス163、167の干渉により生じた光子は、検出器222又は228で検出される。検出器218、220、222、224、226、228は、アバランシェフォトダイオードなどの単一光子検出器である。
【0049】
非理想的な偏光により、信号パルス列161、165が合波器210で干渉しないことがある。このため、検出器218、220、222、224、226、228は、干渉しなかった信号パルスを検出しないようにするために、すなわち、干渉した光パルスを選択的に検出できるようにするために、ゲート制御されることが望ましい。ゲート制御される単一光子検出器の例には、自己差分アバランシェフォトダイオードや正弦波ゲートアバランシェフォトダイオードが含まれる。
【0050】
制御器230は、検出器218に接続され、制御器232は、検出器220に接続され、制御器234は、検出器222に接続される。なお、制御器230、232、234はそれぞれ、検出器224、226、228に接続されていてもよい。また、制御器230は、検出器218、224の両方に接続され、制御器230は、検出器220、226の両方に接続され、制御器230は、検出器222、228の両方に接続されていてもよい。
【0051】
制御器230、232、234は、検出器218、220、222から出力される検出結果に基づいて偏光制御器202及び遅延器212を制御する。伝送路190において生じる偏光の乱れ及び干渉計134又は204内のファイバにおける光路長差の乱れによって生じる位相の乱れは波長によって異なる。そのため、波長ごとの制御が必要となる。
【0052】
偏光乱れ及び位相乱れは、積極的に安定させる必要がある。本実施形態では、偏光乱れは、検出器218、220、222による検出結果に基づいて偏光制御器202を積極的に制御することによって補正され、位相乱れは、検出器218、220、222による検出結果に基づいて遅延器212を積極的に制御することによって補正される。
【0053】
偏光制御器202は、信号パルス列169の偏光を波長ごとに調整する。具体的には、偏光制御器202は、制御器230により指定される回転量に従って信号パルス162、166の偏光を回転させ、制御器232により指定される回転量に従って信号パルス163、167の偏光を回転させ、制御器234により指定される回転量に従って信号パルス164、168の偏光を回転させる。それにより、信号パルス162、163、164の偏光が同じになり、信号パルス166、167、168の偏光が同じになり、信号パルス162、163、164の偏光が信号パルス166、167、168の偏光に直交するようになる。その結果、信号パルス162、163、164が経路209に導かれ、信号パルス166、167、168が経路207に導かれる。
【0054】
遅延器212は、信号パルス列161の遅延量を波長ごとに調整する。具体的には、遅延器212は、制御器230により指定される遅延時間に対応する光学遅延を信号パルス162に付与し、制御器232により指定される遅延時間に対応する光学遅延を信号パルス163に付与し、制御器234により指定される遅延時間に対応する光学遅延を信号パルス164に付与する。その結果、信号パルス162、166が合波器210において干渉し、信号パルス163、167が合波器210において干渉し、信号パルス164、168が合波器210において干渉するようになる。
【0055】
制御器230、232、234は、検出器218、220、222による検出結果に基づいて生成されるフィードバック信号に基づいて偏光制御器202及び遅延器212を制御する。フィードバック信号は、例えば量子ビット誤り率(QBER)である。量子ビット誤り率は、シフト鍵に含まれるビットの総数に対する間違ったビットの割合として定義される。量子ビット誤り率は、誤り訂正処理後に算出される。偏光乱れ及び位相乱れは、量子ビット誤り率を増大させる。制御器230、232、234は、量子ビット誤り率が最小になるように、波長ごとの回転量及び遅延時間を決定する。このようなフィードバック制御により、偏光乱れ及び位相乱れが適切に補正される。制御器230、232、234を総称して光パルス制御部と称する。
【0056】
制御器230、232、234は、FPGAなどの専用のハードウェアプロセッサにより実現される。なお、制御器230、232、234は、汎用のハードウェアプロセッサにより実現されてもよい。
【0057】
なお、遅延器212は経路207に設けられていてもよい。また、遅延器212は、送信器100内の干渉計134の経路137又は139に設けられていてもよい。遅延器212が送信器100内の干渉計134に設けられる場合、受信器200内の検出器218、220、222で得られた検出信号(又は検出信号に基づいて決定される波長ごとの遅延時間)が古典チャネルで送信器100へ送信され、送信器100内の制御回路がそれらの検出信号に基づいて遅延器212を制御する。また、位相乱れの補正は、受信器200内の変調器208又は送信器100内の変調器138を用いて経路の光路長を調整することで達成されてもよい。この場合、遅延器212は設けられなくてよい。
【0058】
偏光制御器202は、送信器100内に設けられていてもよい。例えば、偏光制御器202は、合波器140又は減衰器142の後段に設けられてよい。偏光制御器202が送信器100内に設けられる場合、受信器200内の検出器218、220、222で得られた検出信号(又は検出信号に基づいて決定される波長ごとの回転量)が古典チャネルで送信器100へ送信され、送信器100内の制御回路がそれらの検出信号に基づいて偏光制御器202を制御する。また、偏光制御器202は、伝送路190の途中に設けられていてもよい。
【0059】
次に、本実施形態に係る量子鍵配送システムにおいて暗号鍵を生成する方法例について説明する。
【0060】
送信器100内の変調器138は、信号パルス列161の各信号パルスに関して2つの符号化基底の一方をランダムに選択し、選択した符号化基底を用いて各信号パルスの位相を変調する。第1の符号化基底は、情報“0”が0°の位相シフトに対応し、情報“1”が180°の位相シフトに対応するように、規定される。第1の符号化基底が選択された場合、変調器138は、情報“0”を符号化するために、信号パルスに0°の位相シフトを適用する。変調器138は、情報“1”を符号化するために、信号パルスに180°の位相シフトを適用する。第2の符号化基底は、情報“0”は90°の位相シフトに対応し、情報“1”は270°の位相シフトに対応するように、規定される。第2の符号化基底が選択された場合、変調器138は、情報“0”を符号化するために、信号パルスに90°の位相シフトを適用する。変調器138は、情報“1”を符号化するために、信号パルスに270°の位相シフトを適用する。
【0061】
一方、受信器200内の変調器208は、信号パルス列165の各信号パルスに関して2つの復号基底の一方をランダムに選択し、選択した復号基底を用いて各信号パルスの位相を変調する。第1の復号基底は、0°の位相シフトとして規定される。第1の復号基底が選択された場合、変調器208は、信号パルスに0°の位相シフトを適用する。第2の復号基底は、90°の位相シフトとして規定される。第2の復号基底が選択された場合、変調器208は、信号パルスに90°の位相シフトを適用する。
【0062】
信号パルス列161、165の偏光が理想的な場合には、信号パルス列161は、下記(1)のルートを移動し、信号パルス列165は、下記(2)のルートを移動する。
(1)送信器100内の干渉計134の光路長の短い経路137及び受信器200内の干渉計204の光路長の長い経路209に沿ったルート。
(2)送信器100内の干渉計134の光路長の長い経路139及び受信器200内の干渉計204の光路長の短い経路207に沿ったルート。
【0063】
この場合には、信号パルス列161、165は合波器210において干渉し、検出器218、220、222、224、226、228のいずれか1つで光子が検出される。検出器218、220、又は222で光子が検出された場合には、受信器200は情報“0”を取得し、検出器224、226、又は228で光子が検出された場合には、受信器200は情報“1”を取得する。どちらの検出器で光子が検出されるかは、変調器138により適用された位相シフトと変調器208により適用された位相シフトとに依存する。変調器138が0°の位相シフトを適用し、変調器208が0°の位相シフトを適用する場合、検出器218、220、又は222で光子が検出される。変調器138が180°の位相シフトを適用し、変調器208が0°の位相シフトを適用する場合、検出器224、226、又は228で光子が検出される。変調器138が90°の位相シフトを適用し、変調器208が90°の位相シフトを適用する場合、検出器218、220、又は222で光子が検出される。変調器138が270°の位相シフトを適用し、変調器208が90°の位相シフトを適用する場合、検出器224、226、又は228で光子が検出される。これらの組み合わせは、送信器100と受信器200とで同じ変調基底が使用された場合に対応する。
【0064】
上記の組み合わせ以外の組み合わせで変調が行われた場合には、検出器218、220、又は222で光子が検出される確率及び検出器224、226、228で光子が検出される確率がそれぞれ50%になる。例えば、変調器138が0°の位相シフトを適用し、変調器208が90°の位相シフトを適用する場合、50%の確率で検出器218、220、又は222で光子が検出され、50%の確率で検出器224、226、228で光子が検出される。このような場合には、情報を正しく復号できないので、このような光子は暗号鍵の生成に寄与しない。
【0065】
非理想的な偏光により、短い経路137を移動した信号パルス列161が短い経路207を移動することがあり、また、長い経路139を移動した信号パルス列165が長い経路209を移動することがある。このような場合には、信号パルス列161、165は干渉せずに検出器218、220、222又は検出器224、226、228に到達する。これらの干渉しない光子は、暗号鍵の生成に寄与しないため、それらの検出結果は破棄される。検出器218、220、222、224、226、228がゲート制御される場合には、検出器218、220、222、224、226、228は、これらの干渉しない光子を自動的に排除することができる。干渉しない光子を効率的に排除するためには、遅延時間tdelayは、ゲート動作周期の半分に設定される。1GHzのゲート動作にとって遅延時間tdelayは500ピコ秒である。
【0066】
送信器100は、信号パルス列169を周期的に送信し、それにより、受信器200は、多数の干渉検出結果を取得する。その後に、送信器100とともに使用される第1の古典通信装置から、受信器200とともに使用される第2の古典通信装置は、それぞれの光パルスに対して選択した符号化基底を表す基底情報を受信する。基底情報は古典チャネルで送受信される。受信器200の制御器230、232、234は、送信器100が選択した符号化基底に適合する復号基底を選択したときに得られた情報を結合し、それによりビット列(シフト鍵)を生成する。同様にして、基底情報が第1の古典通信装置から第2の古典通信装置に送信され、送信器100においてシフト鍵が生成される。その後に、誤り訂正処理及び秘匿性増幅処理が行なわれ、送信器100と受信器200とに共有される暗号鍵が生成される。
【0067】
以上のように、送信器100は異なる波長の信号パルスを1つの変調器138で変調し、受信器200は異なる波長の信号パルスを1つの変調器208で変調する。これにより、送信器及び受信器の各々において波長の数と同数の変調器を設ける場合と比べて、装置の複雑化を回避し、装置コストを低減することができる。
【0068】
さらに、受信器200は、異なる波長の信号パルスの偏光を1つの偏光制御器202で調整し、異なる波長の信号パルスの遅延量を1つの偏光制御器202で調整する。これにより、装置の複雑化を回避することができる。
【0069】
(第2の実施形態)
図3及び図4は、第2の実施形態に係る送信器(送信装置)300及び受信器(受信装置)400を備える量子鍵配送システムを示している。具体的には、図3は、送信器300の構造を概略的に示し、図4は、受信器400の構造を概略的に示している。図3及び図4において、図1及び図4に示した構成要素と同じ構成要素に同じ符号を付して、それらの構成要素についての説明を省略する。
【0070】
図3に示されるように、送信器300は、光源102、104、106、制御器108、減衰器110、112、114、合波器116、分波器118、分波器120、検出器122、124、126、制御器128、130、132、干渉計134、減衰器142、分波器302、遅延器304、306、308、偏光制御器310、312、314、及び合波器316を備える。送信器300は、干渉計134内の合波器140と減衰器142との間に、分波器302、遅延器304、306、308、偏光制御器310、312、314、及び合波器316が設けられる点で送信器100(図1)と異なる。
【0071】
図4に示されるように、受信器400は、干渉計204、分波器214、216、検出器218、220、222、224、226、228、及び制御器230、232、234を備える。干渉計204は、分波器206、変調器208、及び合波器210を備える。受信器400は、偏光制御器202及び遅延器212が削除されている点で受信器200(図2)と異なる。
【0072】
分波器302の入力ポートは合波器140の出力ポートに接続される。分波器302の第1の出力ポートは、遅延器304及び偏光制御器310を経由して合波器316の第1の入力ポートに接続され、分波器302の第2の出力ポートは、遅延器306及び偏光制御器312を経由して合波器316の第2の入力ポートに接続され、分波器302の第3の出力ポートは、遅延器308及び偏光制御器314を経由して合波器316の第3の入力ポートに接続される。合波器316の出力ポートは減衰器142を経由して伝送路190に接続される。
【0073】
分波器302は、光パルスを波長ごとに分波する。分波器302は、光源102の出力波長と同じ波長を有する光パルス(具体的には信号パルス162、166)と、光源104の出力波長と同じ波長を有する光パルス(具体的には信号パルス163、167)と、光源106の出力波長と同じ波長を有する光パルス(具体的には信号パルス164、168)と、を分離する。分波器302は、例えばWDMのような波長分波器であるが、これに限定されない。
【0074】
干渉計134を出た信号パルス162、166は、分波器302に入射し、分波器302の第1の出力ポートから出力される。遅延器304は、信号パルス162、166が移動する経路の光路長を調整し、偏光制御器310は、信号パルス162、166の偏光を制御する。遅延器304及び偏光制御器310は、受信器400内の制御器230によって制御される。遅延器304は、制御器230により指定される遅延時間に対応する光学遅延を信号パルス162又は166に付与し、偏光制御器310は、制御器230によって指定される回転量に従って信号パルス162、166の偏光を回転させる。
【0075】
干渉計134を出た信号パルス163、167は、分波器302に入射し、分波器302の第2の出力ポートから出力される。遅延器306は、信号パルス163、167が移動する経路の光路長を調整し、偏光制御器312は、信号パルス163、167の偏光を制御する。遅延器306及び偏光制御器312は、受信器400内の制御器232によって制御される。遅延器306は、制御器232により指定される遅延時間に対応する光学遅延を信号パルス163又は167に付与し、偏光制御器312は、制御器232によって指定される回転量に従って信号パルス163、167の偏光を回転させる。
【0076】
干渉計134を出た信号パルス164、168は、分波器302に入射し、分波器302の第3の出力ポートから出力される。遅延器308は、信号パルス164、168が移動する経路の光路長を調整し、偏光制御器314は、信号パルス164、168の偏光を制御する。遅延器308及び偏光制御器314は、受信器400内の制御器234によって制御される。遅延器308は、制御器234により指定される遅延時間に対応する光学遅延を信号パルス164又は168に付与し、偏光制御器314は、制御器234によって指定される回転量に従って信号パルス164、168の偏光を回転させる。
【0077】
第2の実施形態では、遅延器304、306、308及び偏光制御器310、312、314が波長のそれぞれに対応して設けられている。遅延器304、306、308は、信号パルス162、166が受信器400内の合波器210で干渉し、信号パルス163、167が合波器210で干渉し、信号パルス164、168が合波器210で干渉するように、それぞれに対応する波長の信号パルスの遅延量を調整する。偏光制御器310、312、314は、信号パルス162、163、164、166、167、168が受信器400内の分波器206で正しく分波されるように、それぞれに対応する波長の信号パルスの偏光を調整する。
【0078】
なお、分波器302から合波器316までのシステムは、干渉計134の前段にあってもよい。また、分波器302から合波器316までのシステムは、伝送路190中にあってもよい。
【0079】
第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、出力波長の異なる3つの光源102、104、106に対して、送信器300に1つの変調器138、受信器400に1つの変調器208が設けられる。これにより、装置コストを低減することができる。
【0080】
第2の実施形態では、偏光制御器310、312、314が波長のそれぞれに対応して設けられている。これにより、偏光制御器310、312、314として、図2に示される偏光制御器202よりも低速で動作する偏光制御器を利用することができる。
【0081】
上述した実施形態では、出力波長の異なる3つの光源が設けられている。他の実施形態では、出力波長の異なる2つ又は4つ以上の光源が設けられていてもよい。出力波長の異なる多数の光源が設けられる実施形態では、送信器及び受信器の各々において、2以上の変調器が使用されてもよい。例えば、6つの光源が設けられる場合には、送信器及び受信器の各々が、3つの光源に由来する光パルスを変調する変調器、及び残り3つの光源に由来する光パルスを変調する変調器という2つの変調器を備えてよい。この場合にも、変調器は波長の数(光源の数)よりも少ないので、量子鍵配送システムの複雑化を回避し、コストを低減することができる。
【0082】
上述した実施形態では、BB84と呼ばれる量子鍵配送方式に基づいた量子鍵配送システムについて説明した。上述した実施形態に係る光パルスを変調する方法は、他の量子鍵配送方式、例えば、差動位相シフト量子鍵配送(DPS-QKD)に適用することもできる。差動位相シフト量子鍵配送では、エンコーダは、送信する情報に基づいて信号パルスの位相を変調する位相変調器であり、デコーダは、干渉計内に位相変調器を備えない。
【0083】
また、上述した実施形態に係る光パルスを変調する方法は、量子鍵配送システムに限らず、変調及び波長多重を利用した量子通信システムに適用することが可能である。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
100…送信器、
102,104,106…光源、108…制御器、110,112,114…減衰器、
116…合波器、118,120…分波器、122,124,126…検出器、
128,130,132…制御器、134…干渉計、136…分波器、
138…変調器、140…合波器、142…減衰器、190…伝送路、
200…受信器、
202…偏光制御器、204…干渉計、206…分波器、208…変調器、
210…合波器、212…遅延器、214,216…分波器、
218,220,222,224,226,228…検出器、
230,232,234…制御器、
300…送信器、
302…分波器、304,306,308…遅延器、
310,312,314…偏光制御器、316…合波器、
400…受信器。
図1
図2
図3
図4