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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】点滴監視センサ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20220816BHJP
   A61M 5/14 20060101ALI20220816BHJP
   A61M 5/172 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
A61M5/168 532
A61M5/168 510
A61M5/14 520
A61M5/172
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018157132
(22)【出願日】2018-08-24
(65)【公開番号】P2020028590
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】小野田 政弘
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-176600(JP,A)
【文献】特開2014-204897(JP,A)
【文献】特開2002-191692(JP,A)
【文献】国際公開第2014/118944(WO,A1)
【文献】米国特許第4432761(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61M 5/14
A61M 5/172
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点滴筒の内部を落下する液体を監視する点滴監視センサであって、
前記液体に向けて入射光を照射可能な発光部と、
前記入射光が前記液体により反射されて生じる反射光を受光可能であり、前記発光部の発光光線と同一平面内で120°以上170°以下の鈍角を形成する受光光線を受光可能な受光部と、
前記受光部からの受光信号に基づいて、前記液体の液柱状態を検出する液柱検出部と、を備える点滴監視センサ。
【請求項2】
前記発光光線と前記受光光線との角度は、140°以上160°以下である、請求項1に記載の点滴監視センサ。
【請求項3】
前記液柱検出部は、前記受光信号の積分演算を含む処理を実行可能である、請求項1又は2に記載の点滴監視センサ。
【請求項4】
前記液柱検出部は、前記受光信号の移動積分演算を含む処理を実行可能である、請求項1から3のいずれか一項に記載の点滴監視センサ。
【請求項5】
前記受光部は、前記入射光が前記液体により屈折されて生じる屈折光をさらに受光可能である、請求項1から4のいずれか一項に記載の点滴監視センサ。
【請求項6】
前記液柱検出部は、前記受光信号に所定の交流波形が含まれるとき、前記液体の液柱状態を検出する、請求項1から5のいずれか一項に記載の点滴監視センサ。
【請求項7】
前記受光信号に、振幅絶対値が所定範囲内であり、かつ、時間幅が所定範囲内であるピーク波形が含まれるとき、前記液体の液滴状態を検出する液滴検出部をさらに備える、請求項に記載の点滴監視センサ。
【請求項8】
前記発光部は、前記同一平面内に広がりを持った平行光を前記入射光として照射可能である、請求項1からのいずれか一項に記載の点滴監視センサ。
【請求項9】
前記発光部は、発光光線の方向が同一となるように前記同一平面内に配置された複数の発光素子を備える、請求項に記載の点滴監視センサ。
【請求項10】
前記発光部は、
発光素子と、
前記発光素子からの光を前記平行光に変換可能な光学素子と、
を備える請求項に記載の点滴監視センサ。
【請求項11】
前記受光部は、前記同一平面内に広がりを持った平行光を前記反射光として受光可能である、請求項1から10のいずれか一項に記載の点滴監視センサ。
【請求項12】
前記受光部は、受光光線の方向が同一となるように前記同一平面内に配置された複数の受光素子を備える、請求項11に記載の点滴監視センサ。
【請求項13】
前記受光部は、
受光素子と、
前記反射光を前記受光素子に集光可能な光学素子と、
を備える請求項11に記載の点滴監視センサ。
【請求項14】
前記受光部は、鉛直方向に互いに異なる位置に設置された2つの受光素子を備え、
前記2つの受光素子のうちの上方の受光素子により液体が検出された後、所定時間以内に下方の受光素子により前記液体が検出された場合に、液体が落下していると判定する落下判定部をさらに備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の点滴監視センサ。
【請求項15】
前記同一平面は水平面である、請求項1から14のいずれか一項に記載の点滴監視センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、点滴監視センサに関する。
【背景技術】
【0002】
栄養剤や薬液などの液体を、患者などの生体に投与するために、点滴筒を備えた輸液装置が用いられる。輸液装置は、点滴筒、輸液チューブ、及び各種医療機器等を備え、これらにより、液体を輸送するための経路(輸液ライン)が形成されている。輸液チューブには、輸液ラインを流れる液体の流量を調整するための、クランプや輸液ポンプが装着されている。
【0003】
上述の輸液装置等が備える点滴筒の内部を落下する液体を監視するための点滴監視センサが知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的に、特許文献1に記載の点滴監視センサは、点滴筒の同一側面に配置された発光素子及び受光素子を備え、発光素子から発光した光が、点滴筒内の液体により反射した後、受光素子で受光されるように構成されている。そして、受光素子からの受光信号に基づいて、液体が断続的に滴下する液滴状態である場合の滴下数、滴下間隔等を監視することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-125450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
輸液装置では、例えば、クランプの閉め忘れや、輸液ポンプの誤動作等により、輸液ラインを流れる液体の流量が過剰になる場合がある。液体は、流量が過剰になると、断続的に滴下する状態(以下、「滴下状態」とも記載する。)ではなく、連続的に柱状に落下する状態(以下、「液柱状態」とも記載する。)となる場合がある。しかし、特許文献1には、点滴筒の内部を落下する液体の液柱状態を検出することについては記載されていない。
【0006】
本開示の目的は、点滴筒の内部を落下する液体の液柱状態を検出可能な点滴監視センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様としての点滴監視センサは、点滴筒の内部を落下する液体を監視する点滴監視センサであって、前記液体に向けて入射光を照射可能な発光部と、前記入射光が前記液体により反射されて生じる反射光を受光可能であり、前記発光部の発光光線と同一平面内で鈍角を形成する受光光線を受光可能な受光部と、前記受光部からの受光信号に基づいて、前記液体の液柱状態を検出する液柱検出部と、を備える。
【0008】
本発明の一実施形態としての点滴監視センサにおいて、前記受光部は、前記入射光が前記液体により屈折されて生じる屈折光をさらに受光可能である。
【0009】
本発明の一実施形態としての点滴監視センサにおいて、前記液柱検出部は、前記受光信号に所定の交流波形が含まれるとき、前記液体の液柱状態を検出する。
【0010】
本発明の一実施形態としての点滴監視センサにおいて、前記受光信号に、振幅絶対値が所定範囲内であり、かつ、時間幅が所定範囲内であるピーク波形が含まれるとき、前記液体の液滴状態を検出する液滴検出部をさらに備える。
【0011】
本発明の一実施形態としての点滴監視センサにおいて、前記発光部は、前記同一平面内に広がりを持った平行光を前記入射光として照射可能である。
【0012】
本発明の一実施形態としての点滴監視センサにおいて、前記発光部は、発光光線の方向が同一となるように前記同一平面内に配置された複数の発光素子を備える。
【0013】
本発明の一実施形態としての点滴監視センサにおいて、前記発光部は、発光素子と、前記発光素子からの光を前記平行光に変換可能な光学素子と、を備える。
【0014】
本発明の一実施形態としての点滴監視センサにおいて、前記受光部は、前記同一平面内に広がりを持った平行光を前記反射光として受光可能である。
【0015】
本発明の一実施形態としての点滴監視センサにおいて、前記受光部は、受光光線の方向が同一となるように前記同一平面内に配置された複数の受光素子を備える。
【0016】
本発明の一実施形態としての点滴監視センサにおいて、前記受光部は、受光素子と、前記反射光を前記受光素子に集光可能な光学素子と、を備える。
【0017】
本発明の一実施形態としての点滴監視センサにおいて、前記受光部は、鉛直方向に互いに異なる位置に設置された2つの受光素子を備え、前記2つの受光素子のうちの上方の受光素子により液体が検出された後、所定時間以内に下方の受光素子により前記液体が検出された場合に、液体が落下していると判定する落下判定部をさらに備える。
【0018】
本発明の一実施形態としての点滴監視センサにおいて、前記同一平面は水平面である。
【発明の効果】
【0019】
本開示の点滴監視センサによれば、点滴筒の内部を落下する液体の液柱状態を検出可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態の点滴監視センサが点滴筒に装着された状態の輸液装置の正面図である。
図2図1の輸液装置の一部を拡大して示す図であり、図1に示す点滴監視センサと点滴筒とを示す正面図である。
図3図1に示す点滴監視センサの構成を示すブロック図である。
図4図1に示す点滴監視センサの発光部及び受光部の上面視での位置関係を示す概略図である。
図5】入射光の入射角に対する反射光の反射率を示す図である。
図6図4に示す発光部を構成する発光素子から出射される光の指向特性の一例を示す図である。
図7図4に示す受光部を構成する受光素子に入射する光の指向特性の一例を示す図である。
図8図1に示す点滴監視センサにおける、第1の変形例に係る発光部及び第1の変形例に係る受光部の上面視での位置関係を示す概略図である。
図9図1に示す点滴監視センサにおける、第2の変形例に係る発光部及び第2の変形例に係る受光部の上面視での位置関係を示す概略図である。
図10図1に示す点滴監視センサによる入射光と屈折光とを示す概略図である。
図11】落下液体が液滴状態であるときの受光信号の一例と振幅絶対値の移動区間積分の期間を示す図である。
図12】液滴状態の落下液体により受光信号に生じるピーク波形の一例を示す図である。
図13図12に示すピーク波形を振幅絶対値の移動区間積分波形に変換した波形を示す図である。
図14】液柱検出部による液柱状態検出処理を説明する図である。
図15】実施例の点滴監視センサを用いた、受光部からの受光信号の時間変化を示す。
図16】比較例の点滴監視センサを用いた、受光部からの受光信号の時間変化を示す。
図17】本発明の第2実施形態の点滴監視センサと、点滴筒とを示す正面図である。
図18図17に示す点滴監視センサの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。各図において共通の構成部には、同一の符号を付している。本明細書において、上下方向とは、後述する点滴筒110の生体への使用時における鉛直の方向を意味し、上方は排出部112から見て滴下部111が位置する方向(すなわち、図2における上方)、下方はその反対方向を意味するものとする。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の点滴監視センサ1が点滴筒110に装着された状態の輸液装置100を示す図である。図2は、図1の一部を拡大して示す図であり、点滴監視センサ1と点滴筒110とを示す正面図である。図3は、点滴監視センサ1の構成を示すブロック図である。図3に示す矢印は、電気信号が流れる方向を示す。
【0023】
点滴監視センサ1は、点滴筒110の内部を落下する液体を監視するセンサである。図2に示すように、点滴監視センサ1は、点滴筒110の内部を落下する薬液等の液体に向けて入射光L1を照射可能な発光部10と、入射光L1が当該液体により反射されて生じる反射光L2を受光可能な受光部30と、受光部30からの受光信号に基づいて当該液体の液柱状態を検出する液柱検出部50と、を備える。図1に示すように、本実施形態の点滴監視センサ1は、点滴筒110の周囲に装着した状態で使用される。点滴筒110は、図1に示すように、例えば輸液装置100の一部を構成する。
【0024】
図1に示す輸液装置100は、栄養剤や薬液などの液体を、患者などの生体に投与するために用いられる。輸液装置100は、液体を生体まで輸送するための輸液ラインを形成している。具体的に、輸液装置100は、液体が収容された輸液バッグなどの輸液容器101と、輸液容器101から供給される液体の流量を視認可能な点滴筒110と、生体に留置された留置針等に接続可能なコネクタ102と、これら各部材を接続する複数の輸液チューブ103と、を備えている。輸液ラインは、輸液容器101と、点滴筒110と、コネクタ102と、輸液チューブ103と、により形成されている。図1に示す例では、輸液装置100は、輸液ラインを流れる液体の流量を調整するための、輸液チューブ103に装着されたクランプ104及び輸液ポンプ105を更に備えている。
【0025】
図2に示すように、点滴筒110は、輸液ラインの上流から輸送される液体を内部の滴下室113内に導入する滴下部111と、滴下室113内の液体を輸液ラインの下流に排出する排出部112と、滴下室113の周面を区画する周壁部114と、を備えている。周壁部114は、光透過性の素材で形成された光透過部を少なくとも一部に備えている。具体的に、周壁部114の光透過部は、少なくとも、後述する貯留液体117の液面よりも上方の位置に備えられている。
【0026】
点滴筒110に輸送された液体は、滴下部111から落下液体116として落下し、滴下室113内に貯留液体117として貯留される。排出部112は貯留液体117の一部を排出する。そのため、貯留液体117は適量に保たれる。
【0027】
点滴監視センサ1は、点滴筒110の内部の滴下室113内を落下する落下液体116を監視するために用いられる。図2に示すように、本実施形態の点滴監視センサ1は、点滴筒110の周壁部114の、貯留液体117の液面よりも上方に位置する光透過部の位置で、周壁部114を挟み込むようにして装着されている。図2及び図3に示すように、本実施形態の点滴監視センサ1は、発光部10と、受光部30と、液柱検出部50と、液滴検出部60と、増幅部70と、報知部80と、を備える。
【0028】
発光部10は、周壁部114の光透過部を通じて、点滴筒110の滴下室113内を落下する落下液体116に向けて入射光L1を照射可能である。発光部10は、例えば、1つ又は複数のLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)又はレーザダイオード等の光を出射する発光素子で構成される。
【0029】
受光部30は、発光部10からの入射光L1が落下液体116により反射されて生じる反射光L2を受光可能である。本実施形態の受光部30は、発光部10からの入射光L1が落下液体116により屈折されて生じる屈折光L3(後述する図10参照)を受光可能であってもよい。受光部30は、例えば、1つ又は複数のフォトトランジスタ又はフォトダイオード等の受光素子で構成される。受光部30は、反射光L2を含む受光した光に基づく受光信号を、増幅部70を介して、液柱検出部50及び液滴検出部60に出力する。図2に示すように、本実施形態の点滴監視センサ1では、発光部10と受光部30とが同一平面である水平面H内に位置している。
【0030】
液柱検出部50は、受光部30からの受光信号に基づいて、落下液体116の液柱状態を検出可能である。液柱検出部50は、例えば、種々の情報及びプログラムを記憶する記憶装置、及び、当該記憶装置に記憶された種々の情報及びプログラムのうち、所定の情報及びプログラムを読み込むことにより所定の機能を実現するプロセッサ等により構成される。液柱検出部50が落下液体116の液柱状態を検出する方法の詳細については、後述する。液柱検出部50は、液柱状態を検出すると、検出結果を報知部80に出力する。
【0031】
液滴検出部60は、受光部30からの受光信号に基づいて、落下液体116の液滴状態を検出可能である。液滴検出部60は、例えば、種々の情報及びプログラムを記憶する記憶装置、及び、当該記憶装置に記憶された種々の情報及びプログラムのうち、所定の情報及びプログラムを読み込むことにより所定の機能を実現するプロセッサ等により構成される。液滴検出部60を構成する記憶装置及びプロセッサ等は、液柱検出部50を構成する記憶装置及びプロセッサ等と共通の部材でもよいし、別部材でもよい。液滴検出部60が落下液体116の液滴状態を検出する方法の詳細については、後述する。液滴検出部60は、液滴状態を検出すると、検出結果を報知部80に出力する。
【0032】
増幅部70は、例えば増幅回路等で構成され、受光部30からの受光信号を増幅して、液柱検出部50及び液滴検出部60に出力する。
【0033】
報知部80は、液柱検出部50からの検出結果及び液滴検出部60からの検出結果を外部に報知する。具体的に、報知部80は、例えばスピーカで構成され、検出結果を音で報知してもよい。報知部80は、例えば発光素子又は表示デバイスで構成され、検出結果を光で報知してもよい。報知部80は、例えば有線又は無線による通信装置で構成され、検出結果を外部の装置に送信することで報知してもよい。当該外部の装置は、例えば輸液ポンプ105(図1参照)であってもよく、その場合、輸液ポンプ105は、検出結果に基づいて、輸液ラインを流れる液体の流量を調整してもよい。
【0034】
点滴筒110を含む輸液装置100は、通常、蛍光灯や白熱灯などの周囲環境による環境光が存在する病室などで使用されるため、点滴監視センサ1の受光部30には、環境光が入射する場合がある。また、発光部10からの入射光L1が落下液体116により反射されて生じる反射光L2は、落下液体116が液柱状態である場合の方が、落下液体116が液滴状態である場合よりも、強度が小さくなり易い。従って、液柱検出部50が落下液体116の液柱状態を検出するのに用いる受光部30からの受光信号は、落下液体116が液柱状態である場合、環境光によるノイズの影響を受け易い。そこで、本実施形態の点滴監視センサ1は、受光部30が受光する反射光L2の強度を向上させて、受光部30からの受光信号に基づく液柱検出部50による液柱状態の検出を可能としている。この詳細は後述する。
【0035】
図4は、点滴監視センサ1の発光部10及び受光部30の上面視での位置関係を示す概略図である。図4に示す例では、発光部10は、1つの発光素子11のみで構成されている。また、図4に示す例では、受光部30は、1つの受光素子31のみで構成されている。図4に示すように、発光部10から照射される入射光L1の代表光線OX1(以下、「発光光線OX1」とも記載する。)と、受光部30が受光する反射光L2の代表光線OX2(以下、「受光光線OX2」とも記載する。)とが水平面H内でなす角α(以下、「光軸交差角α」とも記載する。)は、鈍角、すなわち90°超かつ180°未満である。入射光L1の入射角α1及び反射光L2の反射角α2は、互いに同一の角度であり、かつ、合計の角度が光軸交差角αの角度と等しいため、共に45°超かつ90°未満である。ここで、発光光線OX1は、落下液体116に入射する場合、入射光L1のうち落下液体116に入射する直前の光線である。また、受光光線OX2は、落下液体116から反射する場合、反射光L2のうち落下液体116により反射した直後の光線である。本実施形態の発光光線OX1は、発光素子11から出射される出射光の中心軸である。また、本実施形態の受光光線OX2は、受光素子31が受光可能な光の中心軸である。
【0036】
図5は、入射光L1の入射角α1に対する反射光L2の反射率を示す図である。具体的に、横軸は入射光L1の入射角α1を示し、縦軸は反射光L2の反射率を示す。水平偏光(P偏光)の反射率をRp、垂直偏光(S偏光)の反射率をRs、無偏光の反射率をRaとする。
【0037】
本実施形態の点滴監視センサ1は、光軸交差角αが鈍角、すなわち入射角α1が45°超であるので、発光部10を例えばLED等の無偏光の光を出射する発光素子で構成する場合、図5に示すように、反射率Raを高めることができる。これにより、受光部30が受光する反射光L2の強度が向上するので、受光部30からの受光信号に基づく液柱検出部50による液柱状態の検出が可能となる。
【0038】
光軸交差角αは、120°以上であることが好ましく、140°以上であることがより好ましい。換言すれば、入射角α1は、60°以上であることが好ましく、70°以上であることがより好ましい。光軸交差角α及び入射角α1を上記下限値以上とすることで、反射率をより高めることができるので、受光部30が受光する反射光L2の強度をより向上させることができる。
【0039】
図4に示すように、本実施形態の点滴監視センサ1では光軸交差角αが鈍角であるので、発光部10からの出射光の一部が受光部30に直接入射し易い。以下、発光部10から受光部30へ直接入射する光を「直接入射光」と記載する。このような直接入射光も、液柱検出部50が落下液体116の液柱状態を検出するのに用いる受光部30からの受光信号のノイズとなる場合がある。直接入射光を低減させるために、発光部10を構成する発光素子11からの出射光は、高い指向性を有することが好ましい。同様に、受光部30に入射する光は、高い指向性を有することが好ましい。また、直接入射光を低減させるために、光軸交差角αは、170°以下であることが好ましく、160°以下であることがより好ましい。
【0040】
図6は、図4に示す発光部10を構成する発光素子11から出射する光の指向特性の一例を示す図である。具体的に、図6は、発光素子11の中心軸となす角度と、当該中心軸に沿う出射光の強度に対する出射光の強度の割合(以下、「出射率」とも記載する。)との関係を示す図である。図7は、図4に示す受光部30を構成する受光素子31に入射する光の指向特性の一例を示す図である。具体的に、図7は、受光素子31の中心軸となす角度と、当該中心軸に沿う入射光の強度に対する入射光の強度の割合(以下、「入射率」とも記載する。)との関係を示す図である。
【0041】
図6に示す例では、発光素子11からの出射光の強度が中心軸に沿う出射光の強度の半分となる角度である半値角は、±9°である。図7に示す例では、受光素子31への入射光の強度が中心軸に沿う入射光の強度の半分となる角度である半値角は、±13°である。以下、図4に示す発光素子11として図6に示す指向特性を有する発光素子を用い、かつ、図4に示す受光素子31として図7に示す指向特性を有する受光素子を用いた場合について説明する。このとき、図4に示す入射角α1を70°とし、発光素子11から落下液体116までの距離と、受光素子31から落下液体116までの距離とが等しいと仮定すると、発光素子11から見た受光素子31の位置は、発光素子11の中心軸としての発光光線OX1となす角度が20°の位置となる。ここで、発光素子11の中心軸となす角度が20°のときの出射率は約5%であり(図6参照)、受光素子31の中心軸となす角度が20°のときの入射率は約20%であるので(図7参照)、直接入射光の強度は、発光素子11の中心軸としての発光光線OX1に沿う入射光L1の強度に対して、約5%×約20%=約1%となる。一方、発光素子11から中心軸としての発光光線OX1に沿って出射され、落下液体116により反射されて受光光線OX2に沿って受光部30により受光される反射光L2の強度は、入射角α1が70°であるので、発光素子11の中心軸としての発光光線OX1に沿う入射光L1の強度に対して、約13%となる(図5参照)。このように、反射光L2の強度は、直接入射光の強度に対して十分に大きいため、直接入射光によるノイズを相対的に低減することができる。なお、詳細は省略するが、発光素子11として、例えばレーザー等の、より指向性の高い発光素子を用いることで、入射角α1を80°~85°としても、直接入射光によるノイズを低減することができる。
【0042】
発光部10は、後述する第1の変形例及び第2の変形例として示すように、水平面H内に広がりを持った平行光を入射光L1として照射可能であることが好ましい。同様に、受光部30は、後述する第1の変形例及び第2の変形例として示すように、水平面H内に広がりを持った平行光を反射光L2として受光可能であることが好ましい。このような構成によれば、点滴筒110の滴下室113の水平面H内の広範囲に亘って、落下液体116を検出することができる。
【0043】
図8は、点滴監視センサ1の第1の変形例に係る発光部10a及び第1の変形例に係る受光部30aの上面視での位置関係を示す概略図である。図8に示す例では、発光部10aは、発光光線OX1の方向が同一となるように、水平面H内に配置された複数の発光素子11を備えている。また、図8に示す例では、受光部30aは、受光光線OX2の方向が同一となるように水平面H内に配置された複数の受光素子31を備えている。図8に示す例の発光光線OX1は、各発光素子11から出射される出射光の中心軸である。また、図8に示す例の受光光線OX2は、各受光素子31が受光可能な光の中心軸である。「発光光線OX1の方向が同一」とは、発光光線OX1の方向が完全に同一、すなわち完全に平行であることが好ましいが、複数の発光素子11の取り付け精度を考慮して、誤差が±1°であればよい。同様に、「受光光線OX2の方向が同一」とは、受光光線OX2の方向が完全に同一、すなわち完全に平行であることが好ましいが、複数の受光素子31の取り付け精度を考慮して、誤差が±1°であればよい。
【0044】
図9は、点滴監視センサ1の第2の変形例に係る発光部10b及び第2の変形例に係る受光部30bの上面視での位置関係を示す概略図である。図9に示す例では、発光部10bは、1つの発光素子11と、1つの発光素子11からの光を平行光としての入射光L1に変換可能な光学素子12と、を備えている。光学素子12は、図9に示すように、1つの発光素子11から入射する光を透過させて平行光としての入射光L1に変換することが可能な、例えば、シリンドリカルレンズ、球面レンズ、フレネルレンズ等で構成することができる。或いは、光学素子12は、1つの発光素子11から入射する光を反射させて平行光としての入射光L1に変換することが可能な、例えば、フレネルミラー、放物面ミラー等で構成することができる。図9には、発光素子11が1つの場合を示すが、発光素子11は複数であってもよい。図9に示す例の発光光線OX1は、光学素子12により変換された平行光の光線である。
【0045】
図9に示す例では、受光部30bは、1つの受光素子31と、平行光としての反射光L2を受光素子31に集光可能な光学素子32と、を備えている。光学素子32は、図9に示すように、入射する平行光としての反射光L2を透過させて受光素子31に集光させることが可能な、例えば、シリンドリカルレンズ、球面レンズ、フレネルレンズ等で構成することができる。或いは、光学素子32は、入射する平行光としての反射光L2を反射させて受光素子31に集光させることが可能な、例えば、フレネルミラー、放物面ミラー等で構成することができる。図9には、受光素子31が1つの場合を示すが、受光素子31は複数であってもよい。図9に示す例の受光光線OX2は、光学素子32により変換される前の平行光の光線であり、光学素子32により、受光素子31に集光可能な光線である。
【0046】
図8には、点滴監視センサ1が第1の変形例に係る発光部10a及び第1の変形例に係る受光部30aを備える例を示し、図9には、点滴監視センサ1が第2の変形例に係る発光部10b及び第2の変形例に係る受光部30bを備える例を示したが、点滴監視センサ1は、第1の変形例に係る発光部10a及び第2の変形例に係る受光部30bを備えてもよいし、第2の変形例に係る発光部10b及び第1の変形例に係る受光部30aを備えてもよい。さらに、点滴監視センサ1が備える発光部及び受光部のいずれか一方が図4に示した発光部10又は受光部30であり、かつ、他方が変形例に係る発光部10a、発光部10b、受光部30a、又は受光部30bであってもよい。ただし、発光部及び受光部のいずれもが、変形例に係る発光部10a、発光部10b、受光部30a、及び受光部30bのいずれかである方が、点滴筒110の滴下室113の水平面H内の広範囲に亘って、落下液体116を検出することができる点で好ましい。
【0047】
受光部30は、特に落下液体116の透明度が高い場合、入射光L1が落下液体116により屈折されて生じる屈折光L3を更に受光可能であってもよい。図10は、点滴監視センサ1による入射光L1と屈折光L3とを示す概略図である。図10に示すように、落下液体116に入射する入射光L1のうち、水平面H内で落下液体116の中心付近に入射する入射光L1aは、落下液体116により屈折され、略直進する屈折光L3aに変換される。落下液体116に入射する入射光L1のうち、水平面H内で落下液体116の右側に入射する入射光L1bは、落下液体116により屈折され、左側に向かう屈折光L3bに変換される。落下液体116に入射する入射光L1のうち、水平面H内で落下液体116の左側に入射する入射光L1cは、落下液体116により屈折され、右側に向かう屈折光L3cに変換される。図10に示す例では、太線で示した屈折光L3cは、受光部30(図4参照)が位置する方向に向かい、受光部30で受光され得る。受光部30は、光軸交差角αが鈍角であるとき、屈折光L3をより受光し易い。本実施形態の点滴監視センサ1は、光軸交差角αが鈍角であるので、受光部30に屈折光L3をより受光させることができる。
【0048】
以下、液柱検出部50及び液滴検出部60による検出処理の一例について、図11図14を参照して説明する。受光部30から液柱検出部50及び液滴検出部60に出力される受光信号は、受光部30が落下液体116からの反射光L2(図4等参照)を受光したとき、落下液体116が液柱状態であるか、液滴状態であるかによって、異なる信号として検出される。しかし、落下液体116が液柱状態であっても、液滴状態であっても、それぞれの場合の受光信号は、微小時間ごとに複雑に変化するため、受光信号のままでは液柱状態の検出及び液滴状態の検出が容易ではない。そこで、液柱検出部50及び液滴検出部60は、後述するように、まず、受光信号に振幅絶対値の移動区間積分を演算して、液柱状態の検出及び液滴状態の検出をし易い形に変換することができる。
【0049】
図11図13は、液滴検出部60による液滴状態検出処理、具体的には受光信号のピーク波形を振幅絶対値の移動区間積分する過程を説明する図である。図11は、落下液体116が液滴状態であるときの受光信号の一例と振幅絶対値の移動区間積分の期間を示す図である。受光信号に時刻tにおける振幅絶対値の移動区間積分を演算して得られる積分値Z(t)は、下記の数式(1)で表される。
Z(t) = |Y(t)|+|Y(t-1)|+|Y(t-2)|+|Y(t-3)|+ … +|Y(t-N-1)| ・・・(1)
ここで、|Y(t)|は時刻tにおける振幅の絶対値を示し、T1は移動区間積分の積分区間としての第1期間を示す。移動区間積分の積分値Z(t)は、時刻tにおける直近の第1期間T1での落下液体116の流量の合計に相関する。第1期間T1は、液滴状態の落下液体116による受光信号において生じる振幅のピークのみを含む波形(以下、「ピーク波形」とも記載する。)の時間幅と同程度であることが好ましい。
【0050】
図12(a)~図12(c)は、液滴状態の落下液体116により受光信号に生じるピーク波形の一例を示す図である。図13(a)~図13(c)は、図12(a)~図12(c)に示すピーク波形を振幅絶対値の移動区間積分波形に変換した波形を示す図である。図12(a)は、振幅のピークを正方向のみに有するピーク波形であり、図12(b)及び図12(c)は、振幅のピークを正負両方向に有するピーク波形である。図13(a)~図13(c)に示すように、受光信号のピーク波形を振幅絶対値の移動区間積分波形に変換すると、ピークの振幅が正方向に大きいピーク波形となる。液滴検出部60は、移動区間積分波形に、振幅が所定範囲内であり、かつ、時間幅が所定範囲内であるピーク波形が含まれるとき、液滴状態を検出する。換言すれば、液滴検出部60は、受光信号に、振幅絶対値が所定範囲内であり、かつ、時間幅が所定範囲内であるピーク波形が含まれるとき、液滴状態を検出する。
【0051】
図14は、液柱検出部50による液柱状態検出処理を説明する図である。具体的に、図14は、入力波形IN、入力波形INを振幅絶対値の移動区間積分した移動区間積分波形OUT1、入力波形INを振幅絶対値の定区間積分した定区間積分波形OUT2、第1フラグOUT3、第2フラグOUT4をそれぞれ示す。図14に示す入力波形IN、移動区間積分波形OUT1、定区間積分波形OUT2、第1フラグOUT3、及び第2フラグOUT4は、いずれも横軸が時間を示し、縦軸が値を示す。
【0052】
図14に示すように、入力波形INは、落下液体116が液滴状態から液柱状態に遷移する際の入力波形である。入力波形INは、落下液体116が液柱状態のとき、不規則な高周波の振幅を有する波形(以下、「交流波形」とも記載する。)となる。また、入力波形INは、落下液体116が液滴状態のとき、ピーク波形が所定時間間隔を空けながら観測される波形となる。
【0053】
図14に示すように、移動区間積分波形OUT1は、入力波形INを、第1期間T1について振幅絶対値の移動区間積分した波形である。移動区間積分波形OUT1の値は、上述の通り、対応する時刻における直近の第1期間T1での落下液体116の流量の合計に相関する。そのため、移動区間積分波形OUT1の値が第1閾値Z1未満であるとき、直近の第1期間T1で落下液体116の流量が所定値未満となっていることを示す。落下液体116が液滴状態のとき、液滴状態としての落下液体116が落下してから次の液滴状態としての落下液体116が落下するまでの間、移動区間積分波形OUT1は、ピーク波形とピーク波形との間の微弱な振幅の波形となり、第1閾値Z1未満となる。一方、落下液体116が液柱状態のとき、液柱状態としての落下液体116は常に一定以上の流量を維持するため、移動区間積分波形OUT1は常に第1閾値Z1以上となる。
【0054】
液柱検出部50は、移動区間積分波形OUT1が第1閾値Z1未満となる部分が存在する第2期間T2においては、第1フラグOUT3をセットし、移動区間積分波形OUT1が常に第1閾値Z1以上となる第2期間T2においては、第1フラグOUT3をリセットする。ここで、第2期間T2は、第1期間T1より大きく、液柱状態における液滴の発生周期以上であることが好ましく、数秒未満であることが好ましい。
【0055】
図14に示すように、定区間積分波形OUT2は、入力波形INを、第2期間T2毎に振幅絶対値の定区間積分した波形である。定区間積分波形OUT2の値は、対応する第2期間T2内での落下液体116の流量の合計に相関する。そのため、所定の第2期間T2内で定区間積分波形OUT2の値が第2閾値Z2以上となる場合、その第2期間T2での落下液体116の流量の合計が所定値以上であることを示す。落下液体116が液滴状態のとき、定区間積分波形OUT2は、第2期間T2の終了時点で、第2閾値Z2未満となる。一方、落下液体116が液柱状態のとき、移動区間積分波形OUT1は、第2期間T2の終了時点において、第2閾値Z2以上となる。液柱検出部50は、定区間積分波形OUT2が第2期間T2の終了時点において第2閾値Z2以上であり、かつ、第1フラグOUT3がリセットされている場合に、第2フラグOUT4をセットし、それ以外の場合には第2フラグOUT4をリセットする。第2フラグOUT4は、液柱状態を検出したことを示すフラグである。第2フラグOUT4は、直前の第2期間T2における第2閾値Z2及び第1フラグOUT3に基づいてセット又はリセットされる。図14に示すように、液柱検出部50は、入力波形INにおける落下液体116が液柱状態となる期間から第2期間T2だけ遅れた期間で、液柱状態を検出している。このように、本実施形態の液柱検出部50は、受光信号に所定の交流波形が含まれるとき、落下液体116の液柱状態を検出することができる。
【0056】
図15は、光軸交差角α=140°とした本実施形態の実施例の点滴監視センサ1を用いた、受光部30からの受光信号の時間変化を示す。具体的に、図15(a)は、落下液体116が観測されないときの受光信号であり、図15(b)は、落下液体116が液滴状態であるときの受光信号であり、図15(c)は、落下液体116が液柱状態であるときの受光信号である。図15(a)~図15(c)では、一目盛りが500mVである。図16は、光軸交差角α=90°とした比較例の点滴監視センサによる、受光部からの受光信号の時間変化を示す。具体的に、図16(a)は、落下液体が観測されないときの受光信号であり、図16(b)は、落下液体が液滴状態であるときの受光信号であり、図16(c)は、落下液体が液柱状態であるときの受光信号である。図16(a)~図16(c)では、一目盛りが200mVである。
【0057】
図15及び図16に示すように、光軸交差角α=140°とした本実施形態の実施例の点滴監視センサ1によれば、光軸交差角α=90°とした比較例としての点滴監視センサよりも、落下液体116による受光信号の変化が、落下液体116が液滴状態であるか液柱状態であるかには依らずに増大する。従って、環境光等によるノイズの影響を低減できることが分かった。特に図15(c)及び図16(c)に示すように、落下液体116が液柱状態であるとき、比較例ではノイズの影響が大きく、検出が困難であったが、実施例ではノイズの影響が低減されて検出可能となることが分かった。
【0058】
(第2実施形態)
図17は、本発明の第2実施形態の点滴監視センサ2と、点滴筒110とを示す正面図である。図18は、点滴監視センサ2の構成を示すブロック図である。本実施形態の点滴監視センサ2は、第1実施形態の点滴監視センサ1と多くの点で共通するため、以下、主に点滴監視センサ1との相違点について説明し、共通点については説明を省略する。
【0059】
図17及び図18に示すように、点滴監視センサ2は、発光部10と、受光部30と、液柱検出部50と、上液滴検出部160aと、下液滴検出部160bと、落下判定部165と、上増幅部170aと、下増幅部170bと、報知部80と、を備える。受光部30は、上受光部130aと、下受光部130bと、を備える。点滴監視センサ2が備える発光部10、液柱検出部50、報知部80は、それぞれ、点滴監視センサ1が備える発光部10、液柱検出部50、報知部80と同様であるので説明を省略する。
【0060】
上受光部130a及び下受光部130bは、それぞれ少なくとも1つの受光素子を備える。図17に示すように、上受光部130aは、下受光部130bよりも、延長方向の上方に設置されている。すなわち、受光部30は、鉛直方向に互いに異なる位置に設置された2つの受光素子を備える。
【0061】
上増幅部170aは、例えば増幅回路等で構成され、上受光部130aからの受光信号を増幅して、液柱検出部50及び上液滴検出部160aに出力する。下増幅部170bは、例えば増幅回路等で構成され、下受光部130bからの受光信号を増幅して、下液滴検出部160bに出力する。
【0062】
上液滴検出部160aは、上受光部130aからの受光信号に基づいて、液体の液滴状態を検出可能である。上液滴検出部160aは、液滴状態を検出すると、検出結果を落下判定部165に出力する。下液滴検出部160bは、下受光部130bからの受光信号に基づいて、液体の液滴状態を検出可能である。下液滴検出部160bは、液滴状態を検出すると、検出結果を落下判定部165に出力する。上液滴検出部160a及び下液滴検出部160bの詳細は、第1実施形態の液滴検出部60と同様であるので説明を省略する。
【0063】
落下判定部165は、上液滴検出部160aからの液滴状態の検出結果と、下液滴検出部160bからの液滴状態の検出結果とに基づいて、検出された液滴状態の液体が落下液体116であるか否か、すなわち、液体が落下しているか否かを判定する。具体的に、上液滴検出部160aにより液滴状態の液体が検出された後、所定時間以内に、下液滴検出部160bにより上液滴検出部160aが検出した液滴状態の液体と同一の液体が検出された場合に、液体が落下していると判定する。ここで、上液滴検出部160aと下液滴検出部160bとにより検出される液体が同一であるか否かは、受光信号の波形をパターン認識等することにより、所定以上の類似度と判断することに基づいて判定することができる。
【0064】
落下判定部165は、例えば、種々の情報及びプログラムを記憶する記憶装置、及び、当該記憶装置に記憶された種々の情報及びプログラムのうち、所定の情報及びプログラムを読み込むことにより所定の機能を実現するプロセッサ等により構成される。落下判定部165を構成する記憶装置及びプロセッサ等は、液柱検出部50、上液滴検出部160a、又は、下液滴検出部160bを構成する記憶装置及びプロセッサ等と共通の部材でもよいし、別部材でもよい。
【0065】
このように、本実施形態の点滴監視センサ2によれば、上下2つの受光素子のうちの上方の受光素子により液体が検出された後、所定時間以内に下方の受光素子により当該液体が検出された場合に、液体が落下していると判定することができる。よって、例えば落下液体116が貯留液体117に落下した後の跳ね返りによる水滴等を誤検出することを抑制可能である。
【0066】
本実施形態において、発光部10は、受光部30が備える鉛直方向に互いに異なる位置に設置された2つの受光素子に対応して、鉛直方向に互いに異なる位置に設置された2つの発光素子を備えてもよい。これにより、上受光部130a及び下受光部130bそれぞれが受光する光の光量を増加させることができる。
【0067】
本発明は、上述した各実施形態で特定された構成に限定されず、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、各構成部、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0068】
各実施形態において、光軸交差角αが鈍角を形成する平面は、水平面Hには限定されず、同一平面であればよい。ただし、水平面Hであれば、落下液体116を検出し易い点で好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本開示は、点滴監視センサに関する。
【符号の説明】
【0070】
1、2:点滴監視センサ
10、10a、10b:発光部
11:発光素子
12:光学素子
30、30a、30b:受光部
31:受光素子
32:光学素子
130a:上受光部
130b:下受光部
50:液柱検出部
60:液滴検出部
160a:上液滴検出部
160b:下液滴検出部
165:落下判定部
70:増幅部
170a:上増幅部
170b:下増幅部
80:報知部
90:落下判定部
100:輸液装置
101:輸液容器
102:コネクタ
103:輸液チューブ
104:クランプ
105:輸液ポンプ
110:点滴筒
111:滴下部
112:排出部
113:滴下室
114:周壁部
116:落下液体
117:貯留液体
H:水平面
L1:入射光
L2:反射光
L3:屈折光
OX1:発光光線
OX2:受光光線
Ra:無偏光の反射率
Rp:水平偏光(P偏光)の反射率
Rs:垂直偏光(S偏光)の反射率
T1:第1期間
T2:第2期間
Z1:第1閾値
Z2:第2閾値
IN:入力波形
OUT1:移動区間積分波形
OUT2:定区間積分波形
OUT3:第1フラグ
OUT4:第2フラグ
α:光軸交差角
α1:入射光の入射角
α2:反射光の反射角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18