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特許7123706巨大胚芽米玄米の発酵液とトラネキサム酸類を含有する皮膚外用剤
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  • 特許-巨大胚芽米玄米の発酵液とトラネキサム酸類を含有する皮膚外用剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】巨大胚芽米玄米の発酵液とトラネキサム酸類を含有する皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9794 20170101AFI20220816BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20220816BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220816BHJP
   A61K 8/9728 20170101ALI20220816BHJP
【FI】
A61K8/9794
A61K8/44
A61Q19/00
A61K8/9728
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018167325
(22)【出願日】2018-09-06
(65)【公開番号】P2020040890
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】山城 晶
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-002607(JP,A)
【文献】特開2000-354463(JP,A)
【文献】特開2016-056172(JP,A)
【文献】展望台,食品と科学 57巻1号 ,岸 直邦 株式会社食品と科学社,p.9
【文献】Brightening Facial Lotion,ID 4873695,Mintel GNPD[online],2017年6月,[検索日2022.02.10],URL,https://www.portal.mintel.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C12P
A23L5/00,7/00,33/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/KOSMET(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巨大胚芽米玄米をサッカロミセス・ベローナで発酵させた発酵液と、トラネキサム酸類を含有する皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巨大胚芽米の玄米の発酵液及びトラネキサム酸類を含有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
トラネキサム酸類は、抗プラスミン作用を有し、肌荒れ改善、美白等のための有効成分として様々な化粧品や皮膚外用剤に配合されている(特許文献1:特開平9-20611号公報)。また、γ-アミノ酪酸を富化させた米の発酵液を化粧料に配合する技術が提案されている(特許文献2:特開2018-002607号公報)。
【0003】
皮膚外用剤が有するしわ、たるみ、美白、老化防止といった機能を向上するために、グリチルリチン酸2K、トラネキサム酸等から選択される抗炎症剤と、コメ発酵液、オウゴン等から選択される美白植物抽出物を含有する皮膚外用剤が検討されている(特許文献3:特開2002-212052号公報)。
特許文献3において、トラネキサム酸、コメ発酵液は、それぞれ抗炎症剤、美白植物抽出物の選択肢の一つとして挙げられているが、実際に組合せた例は記載されていない。
本発明者が、トラネキサム酸類と玄米発酵液を含有する化粧料を検討したところ、長期保存すると経時的に外観の色が変化してしまうという問題を発見した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-20611号公報
【文献】特開2018-002607号公報
【文献】特開2002-212052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
経時安定性に優れた、玄米の発酵液及びトラネキサム酸類を含有する皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の主な構成は、次のとおりである。

1.巨大胚芽米玄米をサッカロミセス・ベローナで発酵させた発酵液と、トラネキサム酸類を含有する皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明者は、トラネキサム酸類と玄米発酵液を含む化粧料について鋭意検討を続けた結果、巨大胚芽米の玄米をサッカロミセス・ベローナで発酵させた発酵液をトラネキサム酸類と組合せることにより、しわ、たるみ、美白、老化防止といった機能を向上するはたらきを保ちつつ、経時的な外観色の変化を顕著に抑えられることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】精製水、玄米の発酵液、巨大胚芽米玄米の発酵液を、それぞれトラネキサム酸と組合せた際の外観色の経時変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
玄米とは、収穫した稲穂を脱穀して得た種子から籾殻を取り去ったものをいう。通常の玄米は、ぬか層5~6%、胚芽2~3%、胚乳92%である。巨大胚芽米は、玄米における胚芽が6~12%のコメであり、通常の玄米と比して胚芽の割合が3倍程度に増えている。巨大胚芽米としては、「金のいぶき(品種登録番号第24378号)」(玄米における胚芽が約7~9%)、「はいごころ(品種登録番号第23276号)」(玄米における胚芽が約9.2%)、「カミアカリ(品種登録番号第16284号)」、「はいみのり(品種登録番号第8008号)」(玄米における胚芽が約11.1%)等が挙げられる。
玄米を発芽させるとγ-アミノ酪酸が増加することが知られている。本発明で用いる巨大胚芽米は玄米そのままでもよく、米の生理作用によってγ-アミノ酪酸を富化させた玄米でもよい。
【0010】
巨大胚芽米のγ-アミノ酪酸を富化させる製造方法としては、例えば、巨大胚芽米を5~50℃、好ましくは20~40℃の温水に適当な時間浸漬することにより発芽させ、この発芽した巨大胚芽米を常圧下又は加圧下で蒸煮する方法が挙げられる。
また、水に浸漬する発芽方法では、栄養成分の流出や、菌の繁殖の恐れがあるため、水に浸漬せず、緩慢な加水により発芽させる方法でも良い。あらかじめ水分10~15%に調整した巨大胚芽米を、水分20~30%の範囲となるように0.5~2.0質量%/hの加水速度で緩慢な加水を行い(加水工程)、次いでこの玄米をタンクに投入して通気条件下で2~10時間の調質(テンパリング)を行い(調質工程)、巨大胚芽米を発芽させた(発芽工程)後、100℃の蒸気で5~30分間蒸煮し(蒸煮工程)、さらに送風乾燥させる(乾燥工程)方法により、γ-アミノ酪酸が富化される。
さらに、あらかじめ水分10~15%に調整した巨大胚芽米を、0.5~2.0質量%/hの加水速度で水分を16~20質量%になるまで加水し(加水工程)、さらに通気条件下で調質(テンパリング)を行い(調質・発芽工程)、巨大胚芽米を発芽させた後、巨大胚芽米の中心品温が40~60℃になるように加温設定し(加温工程)、98~100℃の蒸気で蒸煮し(蒸煮工程)、さらに乾燥させる(乾燥工程)方法により、米のγ-アミノ酪酸を富化しても良い。この方法を用いると乾燥時間の短縮が可能となる。
【0011】
これらの製造方法により、玄米に生物学的な作用が生じ、γ-アミノ酪酸が富化される。一般的な玄米100g中のγ-アミノ酪酸量は通常1~9mgであり、γ-アミノ酪酸を富化すると、10~35mgに増大する。また、巨大胚芽米の玄米中のγ-アミノ酪酸量は通常6~20mgであるが、γ-アミノ酪酸を富化すると、10~40mgに増大する。
【0012】
巨大胚芽米を粉砕し、巨大胚芽米10重量部以上100重量部以下に対して、100重量部以上10000重量部以下の水を加え、110℃5分間加熱滅菌する。その後、1.0重量部以上10重量部以下のアミラーゼを加えた後、1.0重量部以上10重量部以下のサッカロミセス・ベローナを加え、16時間以上48時間以下発酵させる。さらに、110℃5分間加熱して殺菌し、発酵を停止させ、5℃3日間オリ引きを行った後、得られた発酵物をメンブランろ過し、発酵液を得る。
【0013】
本発明の発酵に用いるサッカロミセス・ベローナ(Saccharomyces Veronae)は、アルコールを産生せず、乳酸を産生する酵母であり、セラミドを産生することも知られている。サッカロミセス・ベローナは樹液から分離された野性酵母であり、乳酸生産能が高いことが特長である。サッカロミセス・ベローナの増殖適温は20~35℃、好ましくは30℃前後であり、室温に近い温度で発酵が可能である。サッカロミセス・ベローナはサッカロミセス・セレビシエ等の一般的に知られる他の酵母と比較して発酵特性に優れている。さらに、ベローナで発酵させた巨大胚芽米の発酵液に含まれる蒸発残分は、セレビシエと比較して倍量程度含まれるため、保湿性や肌なじみに優れた発酵液が得られる。
【0014】
トラネキサム酸類は、医薬品、医薬部外品、化粧品で通常用いられているものであれば特に制限されず用いることができる。トラネキサム酸とは、トランス-4-アミノメチルシクロヘキサン-1-カルボン酸であり、主に美白剤や抗炎症剤として一般的に配合されている。市販品としては「日本薬局方トラネキサム酸」(丸善製薬株式会社)等が挙げられる。トラネキサム酸類とは具体的には、トラネキサム酸塩(マグネシウム,カルシウム,ナトリウム,カリウム等の金属塩類、リン酸塩、塩酸塩、臭化水素塩、硫酸塩等)、トラネキサム酸エステル(ビタミンAエステル,ビタミンEエステル,ビタミンCエステル等のビタミンエステル、アルキルエステル)、トラネキサム酸アミド、トラネキサム酸の二量体等が挙げられる。
【0015】
皮膚外用剤中へのトラネキサム酸類の配合量は特に限定されないが、皮膚外用剤全体の重量を基準として、通常は0.0001質量%以上30質量%以下、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以上3重量%以下である。
【0016】
本発明の発酵液は、そのまま皮膚外用剤として用いても良く、保湿性や抗菌性を持たせるために、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコールや、フェノキシエタノール、エチルヘキシルグリセリン等を添加して皮膚外用剤としても良い。また、化粧水、乳液、クリーム、ジェル等の保湿用皮膚外用剤に、保湿成分として配合しても良い。皮膚外用剤に配合する本発明の発酵液の配合量は、発酵液由来の蒸発残分が0.05質量%以上の配合となることが好ましく、特に好ましくは、0.05質量%以上6.0質量%以下である。
【0017】
本発明の皮膚外用剤は化粧料、医薬部外品、医薬品を含むものであって、化粧水、乳液、クリーム、ジェル等の、溶液状、乳化物状、高分子ゲル状製剤とすることができる。また、泡状製剤、多層状製剤、スプレー製剤、不織布等に含浸させたシートあるいはゲルパック製剤であってもよい。
【0018】
本発明の皮膚外用剤には、目的に応じて任意成分として保湿剤、界面活性剤、増粘剤、抗炎症剤、ビタミン類、抗酸化剤、血行促進剤、創傷治癒剤、抗菌性物質、皮膚賦活剤、常在菌コントロール剤、活性酸素消去剤、美白剤等の薬効成分を含有させることができる。
【0019】
薬効成分としては、従来、医薬品、医薬部外品、化粧品、衛生材料等で使用されていて、水中に溶解、または分散可能なものであれば特に限定されることなく使用することができる。具体的には、アシタバエキス、アボガドエキス、アマチャエキス、アルテアエキス、アルニカエキス、アンズエキス、アンズ核エキス、ウイキョウエキス、ウコンエキス、ウーロン茶エキス、エチナシ葉エキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オオムギエキス、オランダカラシエキス、オレンジエキス、海水乾燥物、加水分解エラスチン、加水分解コムギ末、加水分解シルク、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、甘草エキス、カルカデエキス、キウイエキス、キナエキス、キューカンバーエキス、グアノシン、クマザサエキス、クルミエキス、グレープフルーツエキス、クレマティスエキス、酵母エキス、ゴボウエキス、コンフリーエキス、コラーゲン、コケモモエキス、サイコエキス、サイタイ抽出液、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンザシエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、ショウブ根エキス、シラカバエキス、スギナエキス、スイカズラエキス、セイヨウキズタエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、ゼニアオイエキス、センブリエキス、タイソウエキス、タイムエキス、チョウジエキス、チガヤエキス、チンピエキス、トウヒエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ノバラエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、パセリエキス、蜂蜜、パリエタリアエキス、ヒキオコシエキス、ビサボロール、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、プロポリス、ヘチマエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、ホップエキス、マツエキス、マロニエエキス、ミズバショウエキス、ムクロジエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユズエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、リンゴエキス、レタスエキス、レモンエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス等を挙げることができる。
【0020】
また、アミノ酸、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ベタイン、ホエイ、トリメチルグリシン等の保湿剤;スフィンゴ脂質、セラミド、コレステロール、コレステロール誘導体、リン脂質等の油性成分;ε-アミノカプロン酸、グリチルリチン酸、β-グリチルレチン酸、塩化リゾチーム、グアイアズレン、ヒドロコルチゾン等の抗炎症剤;ビタミンA,B2,B6,D,E、パントテン酸カルシウム、ビオチン、ニコチン酸アミド等のビタミン類;トコフェロール、カロチノイド、フラボノイド、タンニン、リグナン、サポニン等の抗酸化剤;γ-オリザノール、ビタミンE誘導体等の血行促進剤;レチノール、レチノール誘導体等の創傷治癒剤;デオキシリボ核酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コラーゲン、エラスチン、キチン、キトサン、加水分解卵殻膜等の生体高分子;アラントイン、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸等の活性成分;セファランチン、トウガラシチンキ、ヒノキチオール、ヨウ化ニンニクエキス、塩酸ピリドキシン、dl-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール、ニコチン酸、ニコチン酸誘導体、D-パントテニルアルコール、アセチルパントテニルエチルエーテル、ビオチン、アラントイン、イソプロピルメチルフェノール、エストラジオール、エチニルエステラジオール、塩化カルプロニウム、塩化ベンザルコニウム、塩酸ジフェンヒドラミン、タカナール、カンフル、サリチル酸、ノニル酸バニリルアミド、ノナン酸バニリルアミド、ピロクトンオラミン、ペンタデカン酸グリセリル、モノニトログアヤコール、レゾルシン、γ-アミノ酪酸、塩化ベンゼトニウム、塩酸メキシレチン、オーキシン、女性ホルモン、カンタリスチンキ、シクロスポリン、ヒドロコルチゾン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等も挙げられる。
【実施例
【0021】
[巨大胚芽米玄米のγ-アミノ酪酸富化]
あらかじめ水分14%前後に調整した巨大胚芽米玄米(金のいぶき)を用い、これに水分20~30%の範囲となるように緩慢な加水を行った。この緩慢な加水処理は胴割れを生じさせないように、徐々に行った。具体的には、横形ドラム内にて巨大胚芽米玄米を撹拌しながら、ドラム内側に設置された2流体式噴霧ノズルによって、水が垂れ落ちないようにして加水した。水温は水道水の温度で、pH調整は行なわなかった。ノズルからの噴霧は、水が巨大胚芽米玄米から垂れ落ちないように霧状の水滴として巨大胚芽米玄米の表面に付着させた。巨大胚芽米玄米は撹拌されながらこの霧状の水滴に接触することによって均一に加水されるようにした。加水に使用する水としては、水道水を用いた。加水終了後はタンクに移し換えて調質(テンパリング)を行った。このテンパリング時の最適環境温度は16~24℃とし、タンク内に外気を取り入れて換気を行った。一連の工程は20℃程度の室温で行い、テンパリング終了後は、巨大胚芽米玄米を、蒸気処理した。蒸気処理は、連続蒸米機を用いて2kg/h、100℃の蒸気中にて所定時間蒸煮することにより行った。さらに、この蒸煮終了後の巨大胚芽米玄米を常温の送風温度で乾燥し、水分約15%のγ-アミノ酪酸が富化された巨大胚芽米玄米を得た。γ-アミノ酪酸が富化された巨大胚芽米玄米に含まれるγ-アミノ酪酸の濃度は21mg/100gであった。
【0022】
[発酵液の製造]
得られたγ-アミノ酪酸が富化された巨大胚芽米玄米を粉砕し、γ-アミノ酪酸が富化された巨大胚芽米玄米10重量部に対して、1000重量部の水を加え、110℃5分間加熱滅菌した。その後、1.0重量部のアミラーゼと1.0重量部のサッカロミセス・ベローナを加え、30℃に加温して、20時間発酵させた。その後、110℃で加熱して殺菌し、発酵を停止した。得られた発酵物をろ過し、発酵液(以下、巨大胚芽米玄米発酵液という。)を得た。巨大胚芽米玄米発酵液の蒸発残分は0.46w/v%だった。
γ-アミノ酪酸が富化された巨大胚芽米玄米のかわりに一般的なγ-アミノ酪酸を富化した玄米(ななつぼし)を用いて同様に発酵液(以下、玄米発酵液という。)を得た。
【0023】
[保存安定性試験]
下記表1に示す処方で実施例1、比較例1~2の試料を調製した。調製した試料は、胴径40.5mm、高さ74.0mm、口内径24.7mmの透明なガラス軽量規格6K瓶に入れ、50℃恒温槽で90日間保存した。
【0024】
[測色試験]
測色試験は、日本電色工業株式会社の分光変角色差計(GC5000)を用いた。実施例及び比較例の試料を直径3.1cmの石英製シャーレに5g加えて光路長約6mmにて透過測定を行い、b*を求めた。
試料を調製した直後に分光変角色差計でb*を求め、初期値とした。試料作成後、50℃恒温槽で10,14,28,56,90日経過後の試料について分光変角色差計にて透過測定するとともに、試料の入った規格6K瓶の外観を目視確認した。
測色試験の結果を表1、図1に示す。
【表1】
【0025】
[結果]
実施例1、比較例1~2のいずれも、調製直後のb*は約ゼロであり、目視確認では無色透明だった。
精製水とトラネキサム酸を添加した比較例1では、保存期間中においてb*は変化せず、目視確認においても変化しなかった。
玄米発酵液とトラネキサム酸を添加した比較例2では、保存28日目において、b*は約4で変化が小さく、目視確認では変化は確認できなかった。しかし、保存56日目において、b*は約25に増大し、目視確認では、茶褐色に変色した。保存90日目において、b*は約50に増大し、目視確認では、保存56日目に比べてその着色の度合いがさらに増大した。
一方、巨大胚芽米玄米発酵液とトラネキサム酸を添加した実施例1では、保存56日目においても、b*は約5で変化が小さく、目視確認では、着色の度合いは、かすかに黄色味をおびる程度で極めて軽微だった。保存90日目においても、b*は約7で変化が小さく、目視確認でも、着色の度合いは、かすかに黄色味をおびる程度で極めて軽微であり、経時安定性に優れていた。
【0026】
処方例
(化粧水)
1.巨大胚芽米玄米発酵液(蒸発残分0.2%) 92.5%
2.トラネキサム酸 2.0%
3.グリセリン 5.0%
4.フェノキシエタノール 0.5%
1~4を撹拌混合し、化粧水を得た。
【0027】
(とろみ化粧水)
1.巨大胚芽米玄米発酵液(蒸発残分0.5%) 40.0%
2.トラネキサム酸 1.0%
3.ジグリセリン 8.0%
4.1,3-ブチレングリコール 10.0%
5.キサンタンガム 0.2%
6.ヒアルロン酸Na 0.001%
7.精製水 残余
4に5を添加し分散させる。2と6をそれぞれ7の一部で溶解させ、残りを添加し混合する。
【0028】
(美容ジェル)
1.巨大胚芽米玄米発酵液(蒸発残分5.58%) 2.0%
2.トラネキサム酸 2.0%
3.ジプロピレングリコール 6.0%
4.ペンチレングリコール 1.0%
5.PEG-75 0.5%
6.トリメチルグリシン 2.0%
7.スクワラン 3.0%
8.キサンタンガム 0.1%
9.SIMULGEL NS 2.5%
10.精製水 残余
3に8を分散させる(分散物)。7と9を混合する(混合物)。2を10の一部で溶解させる(溶解物)。溶解物以外の残りを溶解させたものに、徐々に分散物を添加し溶解させ、その後徐々に混合物を加え、ホモミクサーで撹拌する。最後に溶解物を加えた後、再度ホモミクサーで撹拌させる。
※SIMULGEL NS(SEPPIC社製;(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、スクワラン、ポリソルベート60、水、イソステアリン酸ソルビタンの混合物)
図1