特許 7123708 光コネクタ

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2022-08-15

(45)【発行日】2022-08-23

(54)【発明の名称】光コネクタ

(51)【国際特許分類】

   G02B 6/36 20060101AFI20220816BHJP

   G02B 6/40 20060101ALI20220816BHJP

【ＦＩ】

G02B6/36

G02B6/40

【請求項の数】 2

(21)【出願番号】P 2018167850

(22)【出願日】2018-09-07

(65)【公開番号】P2020042091

(43)【公開日】2020-03-19

【審査請求日】2021-08-18

(73)【特許権者】

【識別番号】391005581

【氏名又は名称】三和電気工業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100069213

【弁理士】

【氏名又は名称】平田 功

(72)【発明者】

【氏名】金野 貴教

【審査官】山本 元彦

(56)【参考文献】

【文献】特開２０１３－２４２４７６（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００９－２５８５６８（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００２－１５６５５８（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００５－０６２３９３（ＪＰ，Ａ）

【文献】米国特許出願公開第２０１８／０１７２９２２（ＵＳ，Ａ１）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｇ０２Ｂ ６／３６－６／４０

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

フェルールが各保持された左右一対の角筒状のフェルールハウジングと、該フェルールハウジングに装着された横長矩形状のスライドカバーと、前記左右一対のフェルールハウジング間に挟まれるようにスライドカバーの中央に形成されたタブスライドガイド孔とを備え、
前記タブスライドガイド孔の下部内壁面には、タブ挿入方向に沿って下側凹条部が形成され、
一方前記下部内壁面に対向する前記タブスライドガイド孔の上方には、コネクタ挿抜方向に平行にして前方へ突出し、前記スライドカバーの中央部後方において片持支持された上下方向へ弾性変形可能なロックレバーが設けられ、前記ロックレバーの下面には前記タブの挿入方向に沿って前記下側凹条部に対向する上側凹条部が形成され、
前記スライドカバーの後方側から前記タブスライドガイド孔に挿入された回転操作可能なタブと、によって形成された光コネクタであって、
前記タブの先端側にネック部を介して、正面視で矩形、長円形、楕円形、小判型のいずれかの形状を呈している係止作動部が形成され、該係止作動部の長手方向両側辺の中央には、前記タブスライドガイド孔の下部内壁面に形成された下側凹条部と、前記タブスライドガイド孔上方のロックレバー下面に形成された上側凹条部に係合される凸部が各々形成され、且つ前記タブの略中間には、前記タブスライドガイド孔の内壁面に摺接支持されるよう支持突起が形成され、
前記ロックレバーの幅方向の左右両側下方には、前記タブをタブスライドガイド孔内の後方より挿入したとき、前記タブ先端の係止作動部が摺接可能な前傾テーパ面を後端側に有し、前記タブをタブスライドガイド孔の先端まで挿入したとき、前記係止作動部後方に備えたネック部を挟持した状態で当該ネック部の左右両側に一対となって配置され、前記タブを後方へ引き抜くことで当該タブ先端の係止作動部が引っ掛かる係止突部を対向形成してなり、
以って、前記タブがタブスライドガイド孔の先端まで挿入された際、タブ先端の係止作動部の長さ方向が左右水平位置に向けられている場合には、前記タブの係止作動部と前記ロックレバーとの間に隙間が生じ、前記タブ全体はタブスライドガイド孔に支持される支持突起と、係止突部の間に挟持されつつ摺接するネック部との２点のみで支持されることによって、当該ロックレバーは下方へ撓曲自在のロック解除状態となり、
一方、前記タブを角度９０°回して係止作動部の長さ方向が上下垂直位置に向けられている場合には、タブ全体はタブスライドガイド孔に支持される支持突起と、ロックレバー内面に形成された上側凹条部及びタブスライドガイド孔の下部内壁面に形成された下側凹条部に長さ方向両側辺に形成された凸部が各係合された係止作動部と、左右両側に配置された係止突部の間に挟持されつつ摺接するネック部との３点で支持されることによって、当該ロックレバーは下方へ撓曲不可のロック状態となるようにしたことを特徴とする光コネクタ。

【請求項2】

前記タブの後端側に大径の取っ手を備え、該取っ手には窪み部または凸条部が形成され、該窪み部または凸条部は、前記タブの回転による前記係止作動部の姿勢がどのような位置であるかを示す指示部として機能するよう形成したことを特徴とする請求項１記載の光コネクタ。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、タブの操作により光アダプタに対する光コネクタプラグの係脱を可能にした光コネクタに関する。

【背景技術】

【0002】

従来、光コネクタの例えば上部壁面には、弾性変形（復帰）可能なフックアーム状の後述するロックレバー、係止アーム等がコネクタ挿抜方向に平行にして配されており、この係止部が光アダプタの係止孔に係合することで、光アダプタに対する光コネクタの不用意な抜脱が防止されている。この係止部は、光コネクタに装着される後述するスライドシャフト、ロック解除部材、係止解除操作アーム等の引き出し操作を介して下方に移動し、光アダプタに対するロックが解除され、光アダプタから光コネクタが抜去される構成となっている。

【0003】

具体的には特許文献１に示すように、コネクタ本体内に移動可能に挿入されて、コネクタ本体内に挿入された部分に係合溝を有し、指掛け部が光コネクタの外側に突出したスライドシャフトと、前記コネクタ本体内に回転可能に支持されて、ロック爪と、前記スライドシャフトの係合溝に挿入される操作用突出部を設けたロックレバーと、前記コネクタ本体、スライドシャフトならびにロックレバーを覆うように前記コネクタ本体に装着されるカバーを備え、前記ロックレバーがスライドシャフトとカバーの間に介在され、光コネクタを相手側のソケットに装着した状態で、前記ロック爪が前記光コネクタから突出して、前記ソケットに設けられているロック部と係合し、前記指掛け部を引くと、スライドシャフトの移動に伴って前記係合溝の側面が前記操作用突出部に当接し、さらに前記スライドシャフトを引っ張ると前記ロックレバーが回転軸を中心にして回転して、前記ロック爪が前記ロック部から外れる構成による光コネクタが公知である。

【0004】

また、特許文献２に示すように、ロックレバーに設けられるロック用の爪部とロック解除用操作部と、上下方向において前記爪部が突設された外側上方向と逆にして内側下方向に突出され垂設された係止部が設けられ、ロック解除部材が、光コネクタの本体部の上下左右方向のうち少なくとも一方向における幅寸法内に位置して設けられ、該ロック解除部材の先端部が、抜去方向に引かれた時に前記ロックレバーの係止部に係合して当該ロックレバーをロック解除方向に弾性変形させるように形成されているコネクタのロック解除構造が公知である。

【0005】

さらに、特許文献３に示すように、相手部品に挿入される本体の、相手部品に挿入される部分よりも嵌合方向後方に後端が固定されて、該嵌合方向前方に、前記相手部品に挿入される位置まで片持ち梁状に延び、先端部に、外向きに立ち上がって該相手部品に係止する係止突起を有する係止アームと、前記係止アームの先端から、前記外向きとは逆向きに延び、さらに該係止アームとは離間したまま該係止アームに沿って、前記嵌合方向後方に、前記本体から後方に突出する位置まで延び、該後方に引く操作を受けて前記係止アームを前記逆向きに撓ませることにより前記係止突起による前記相手部品への係止を解除させる係止解除操作アームとを備えたコネクタが公知である。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0006】

【文献】特許第４６３０９２４号公報

【文献】特許第４８４３００６号公報

【文献】特許第６００６５７５号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0007】

しかしながら、前記した特許文献１によれば、スライドシャフトを引っ張るとロックレバーが回転軸を中心にして回転しロック爪がロック部から外れる構成となっていることから、ロック爪の下部側には隙間が常に存在する。このため光コネクタに意図しない強制的引き抜き作用が働いたり、光コネクタの周囲から障害物が不用意にロック爪に圧接したりした際には、ロックレバーが回転軸を中心にして回転しロック爪がロック部から容易に外れてしまう虞がある。

【0008】

また、前記した特許文献２によれば、ロック解除部材の先端部が、抜去方向に引かれた時にロックレバーの係止部に係合して当該ロックレバーをロック解除方向に弾性変形させるため、前記ロックレバーの係止部はロック解除部材の係止孔において下方へ移動可能な隙間が常に存在する。このため光コネクタに意図しない強制的引き抜き作用が働いたり、光コネクタの周囲から障害物が不用意にロックレバーのロック解除用操作部に圧接したりした際には、ロックレバーが下方に撓んでロック解除用操作部がアダプタの係止孔から容易に外れてしまう虞がある。

【0009】

さらに、前記した特許文献３によれば、係止アームから係止解除操作アームが折り返し状に一体形成され、当該係止解除操作アームにより後方に引く操作を受けて係止アームを逆向きに撓ませることから、係止解除操作アーム（係止アーム）の下部側には撓み動作を許容するための隙間が常に存在する。このため光コネクタに意図しない強制的引き抜き作用が働いたり、光コネクタの周囲から障害物が不用意に係止アームに圧接したりした際には当該係止アームが下方に撓んでアダプタの係止孔から容易に外れてしまう虞がある。

【0010】

そこで、本発明は、叙上のような従来存した諸事情に鑑み案出されたもので、光コネクタが光アダプタに挿入され、光コネクタのロックレバーの係止部が光アダプタの係止孔に係合しロックされた状態において、光コネクタに意図しない強制的引き抜き作用が働いたり、光コネクタの周囲から障害物がロックレバーに不用意に圧接したりした場合でも前記係止部が下方に撓んでしまうのを防止でき、光アダプタからの光コネクタの不用意な抜去を未然に防止できるものとした光コネクタを提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0011】

上述した課題を解決するために、本発明にあっては、フェルールが各保持された左右一対の角筒状のフェルールハウジングと、該フェルールハウジングに装着された横長矩形状のスライドカバーと、前記左右一対のフェルールハウジング間に挟まれるようにスライドカバーの中央に形成されたタブスライドガイド孔とを備え、
前記タブスライドガイド孔の下部内壁面には、タブ挿入方向に沿って下側凹条部が形成され、
一方前記下部内壁面に対向する前記タブスライドガイド孔の上方には、コネクタ挿抜方向に平行にして前方へ突出し、前記スライドカバーの中央部後方において片持支持された上下方向へ弾性変形可能なロックレバーが設けられ、前記ロックレバーの下面には前記タブの挿入方向に沿って前記下側凹条部に対向する上側凹条部が形成され、
前記スライドカバーの後方側から前記タブスライドガイド孔に挿入された回転操作可能なタブと、によって形成された光コネクタであって、
前記タブの先端側にネック部を介して、正面視で矩形、長円形、楕円形、小判型のいずれかの形状を呈している係止作動部が形成され、該係止作動部の長手方向両側辺の中央には、前記タブスライドガイド孔の下部内壁面に形成された下側凹条部と、前記タブスライドガイド孔上方のロックレバー下面に形成された上側凹条部に係合される凸部が各々形成され、且つ前記タブの略中間には、前記タブスライドガイド孔の内壁面に摺接支持されるよう支持突起が形成され、
前記ロックレバーの幅方向の左右両側下方には、前記タブをタブスライドガイド孔内の後方より挿入したとき、前記タブ先端の係止作動部が摺接可能な前傾テーパ面を後端側に有し、前記タブをタブスライドガイド孔の先端まで挿入したとき、前記係止作動部後方に備えたネック部を挟持した状態で当該ネック部の左右両側に一対となって配置され、前記タブを後方へ引き抜くことで当該タブ先端の係止作動部が引っ掛かる係止突部を対向形成してなり、
以って、前記タブがタブスライドガイド孔の先端まで挿入された際、タブ先端の係止作動部の長さ方向が左右水平位置に向けられている場合には、前記タブの係止作動部と前記ロックレバーとの間に隙間が生じ、前記タブ全体はタブスライドガイド孔に支持される支持突起と、係止突部の間に挟持されつつ摺接するネック部との２点のみで支持されることによって、当該ロックレバーは下方へ撓曲自在のロック解除状態となり、
一方、前記タブを角度９０°回して係止作動部の長さ方向が上下垂直位置に向けられている場合には、タブ全体はタブスライドガイド孔に支持される支持突起と、ロックレバー内面に形成された上側凹条部及びタブスライドガイド孔の下部内壁面に形成された下側凹条部に長さ方向両側辺に形成された凸部が各係合された係止作動部と、左右両側に配置された係止突部の間に挟持されつつ摺接するネック部との３点で支持されることによって、当該ロックレバーは下方へ撓曲不可のロック状態となるようにしたことを特徴とする。

【0012】

前記タブの後端側に大径の取っ手を備え、該取っ手には窪み部または凸条部が形成され、該窪み部または凸条部は、前記タブの回転による前記係止作動部の姿勢がどのような位置であるかを示す指示部として機能するよう形成したことを特徴とする。

【発明の効果】

【0013】

本発明によれば、光コネクタが光アダプタに挿入され、光コネクタのロックレバーの係止部が光アダプタの係止孔に係合しロックされた状態において、光コネクタに意図しない強制的引き抜き作用が働いたり、光コネクタの周囲から障害物がロックレバーに不用意に圧接したりした場合でも前記係止部が下方に撓んでしまうのを防止でき、光アダプタからの光コネクタの不用意な抜去を未然に防止できるものとなり、諸々のプラグセキュリティシステムを構築可能にする。

【0014】

すなわち、本発明は、タブ先端に係止作動部が形成され、当該タブを左右何れかの方向に回転させることで、ロックレバーの動きを前記タブの係止作動部によって制限可能に形成したので、光アダプタからの光コネクタの不用意な抜去を未然に防止することができるものである。

【0015】

前記タブの係止作動部は、正面視で矩形、長円形、楕円形、小判型のいずれかの形状を呈しているので、前記係止作動部の長手方向が垂直となるようにタブを左右何れかに回転させるだけで、ロックレバーの動きを容易に制限することができる。

【0016】

前記タブの係止作動部の長手方向両側辺の中央には凸部が各形成されており、当該タブを回転させることで、前記タブスライドガイド孔の下部内壁面に形成された下側凹条部に一方辺側の凸部が係合され、前記下側凹条部に対向する前記ロックレバーの下面に形成された上側凹条部に他方辺側の凸部が係合されるので、前記ロックレバーの動きを前記タブの係止作動部によって確実に制限することができる。しかも、前記タブの係止作動部両側の凸部が例えば「カチッ」という嵌合音を発しつつ各係合するので、前記ロックレバーが下方へ撓曲不可なロック状態となったことを確実に知ることができる。

【0017】

前記タブには、前記タブスライドガイド孔の内壁面に摺接支持される支持突起を有し、前記ロックレバーの下面には、前記タブの係止作動部側先端が摺接挟持される左右一対の係止突部を備えているので、前記タブ全体は当該タブの支持突起と前記ロックレバーの係止突部とによって２点支持され、タブの回転操作が安定且つ確実に行えることとなる。また、ロック解除状態においては、取っ手を介してタブを後方へ引き抜くことで、ロックレバーの前記係止突部にタブの係止作動部が引っ掛かり、ロックレバーの前記係止部にモーメントが作用してロックレバーの係止部側は下方に撓曲する。これによって光アダプタから光コネクタを容易に外すことができる。

【0018】

前記タブの後端側に大径の取っ手を備え、該取っ手には窪み部または凸状部が形成され、該窪み部または凸状部は、前記タブの回転による前記係止作動部の姿勢がどのような位置であるかを示す指示部として機能するよう形成されているので、例えば取っ手の窪み部または凸状部が上方に向けられているかまたは側方に向けられているかした場合には、ロックレバーは下方へ撓曲自在なロック解除状態（非ロック状態）となっているか、あるいはロックレバーは下方へ撓曲不可なロック状態となっているかを容易に知ることができる。

【0019】

前記タブは、その係止作動部の長さ方向が水平位置を保持することでロックレバーに対するロック解除状態となし、前記タブを角度９０°回して前記係止作動部の長さ方向が垂直位置を保持することでロックレバーに対するロック状態となすので、タブの後端側での僅かな回転操作のみでロックレバーに対するロック解除状態とロック状態とを容易且つ瞬時に切り替えることができる。

【図面の簡単な説明】

【0020】

【図1】本発明を実施するための一形態を示す光コネクタからタブが分解されている状態の斜視図である。

【図2】光コネクタへのタブの組立後の状態を示す斜視図である。

【図3】光コネクタへのタブの組立後の状態を斜め後方から視た斜視図である。

【図4】タブが非ロック（ロック解除）方向に回転した場合の光コネクタの正面図である。

【図5】タブがロック方向に回転した場合の光コネクタの正面図である。

【図6】光コネクタからタブが外されている状態を示し、（ａ）は平面図、（ｂ）は（ａ）のＡ－Ａ断面図である。

【図7】タブが非ロック（ロック解除）方向に回転した場合の光コネクタを示し、（ａ）は平面図、（ｂ）は（ａ）のＢ－Ｂ断面図である。

【図8】タブがロック方向に回転した場合の光コネクタを示し、（ａ）は平面図、（ｂ）は（ａ）のＣ－Ｃ断面図である。

【図9】光アダプタに光コネクタを接続する前の状態を示し、（ａ）は平面図、（ｂ）は（ａ）のＤ－Ｄ断面図である。

【図10】光アダプタに光コネクタを接続した状態を示し、（ａ）は平面図、（ｂ）は（ａ）のＥ－Ｅ断面図である。

【図11】タブの構成例を示すもので、（ａ）は平面図、（ｂ）は右側面図、（ｃ）は底面図、（ｄ）は左側面図、（ｅ）は正面図、（ｆ）は背面図、（ｇ）は（ｂ）のＦ－Ｆ断面図、（ｈ）は（ｃ）のＧ－Ｇ断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0021】

以下、図面を参照して本発明に係る光コネクタの実施の一形態を詳細に説明する。本発明に係る光コネクタ１は、後述するタブ１１の操作により光アダプタＱに対するプラグの係脱を可能にした機構となっている。

【0022】

すなわち、図１乃至図１０に示すように、光コネクタ１は、フェルールＦが各保持された左右一対の角筒状のフェルールハウジングＦＨと、該フェルールハウジングＦＨ後部に装着される横長矩形状のスライドカバー２とによって形成され、該スライドカバー２の左右側壁面に湾曲凹状の摘み部２Ａを有し且つ後端にフランジ部２Ｂを備えている。

【0023】

また、前記左右一対のフェルールハウジングＦＨ間に挟まれるようにスライドカバー２の中央にはタブスライドガイド孔３が形成されており、該タブスライドガイド孔３の上部壁面には、弾性変形（復帰）可能なフックアーム状のロックレバー４がコネクタ挿抜方向に平行にして突設し片持支持された状態となって構成されている。すなわち、前記スライドカバー２の中央位置に所定の間隔（ロックレバーの横幅）を置いて前記左右一対のフェルールハウジングＦＨ間に設けられたタブスライドガイド孔３の両端側と前端が連通し、後述する押圧突起６の後方で閉鎖される２本一対のスリット４ａを設けることによって上下方向へ撓曲自在の前記ロックレバー４は形成される。

【0024】

前記ロックレバー４の先端側上面には、光アダプタＱの係止孔ＱＡ（図９、図１０参照）に係合する前方傾斜面５ａを備えたフック爪状の係止部５が上方に向けて突出形成され、当該ロックレバー４の長手方向略中間には、手押操作によって光アダプタＱの係止孔ＱＡから係止部５を離脱解除するための平面視矩形状の押圧突起６が上方に向けて形成されている。この押圧突起６と係止部５との間の凹所４ｂに、前記光アダプタＱの挿入開口部ＱＢの開口端縁と、係止孔ＱＡの挿入開口部ＱＢ側の孔縁との間の狭幅部分が嵌合する（図１０参照）。

【0025】

なお、この押圧突起６の上面には、三角波形の滑り止め溝が形成されている。また、前記ロックレバー４の幅方向両側には、後端側に前傾テーパ面７Ａを有する略直角三角形の係止突部７（図６（ｂ）参照）が下方に向けて対向形成されており、この係止突部７の間には、前記タブスライドガイド孔３に挿入される後述するタブ１１先端の係止作動部１５後方に備えた小径のネック部１４が挟持されつつ摺接するものとなっている。ちなみに、図６（ｂ）中、左右一対の係止突部７のうち片側一方のみが見えている状態となっている。

【0026】

前記タブスライドガイド孔３の下部内壁面にはタブ１１挿入方向に沿って下側凹条部８が形成され、この下側凹条部８に対向して前記ロックレバー４の下面にはタブ１１挿入方向に沿って上側凹条部９が形成されている。これら両凹条部８、９は、タブスライドガイド孔３に挿入されるタブ１１先端の係止作動部１５両側に備えた凸部１５ａ、１５ｂが各係合するものである。

【0027】

すなわち、前記タブ１１は、図１、図１１（ａ）～図１１（ｈ）に示すように、円柱ロッド状の作動棒１２の後端側に大径の取っ手１３を備え、前記作動棒１２の先端側には小径のネック部１４を介して正面視で例えば矩形、長円形、楕円形、小判型等の係止作動部１５を備え、前記作動棒１２の略中間には支持突起１６を備えている。この支持突起１６は、前記タブスライドガイド孔３の内壁面に摺接支持され、また、前記ネック部１４は前記左右一対の係止突部７に挟持されるようにして摺接支持されている。さらに、前記係止作動部１５の長手方向両側辺の中央には凸部１５ａ、１５ｂが各形成されており、後端の取っ手１３を手で摘んでタブ１１を回転させることで、前記タブスライドガイド孔３の下部内壁面の下側凹条部８に一方辺側の凸部１５ａ（または１５ｂ）が係合され、下側凹条部８に対向する前記ロックレバー４の下面の上側凹条部９に他方辺側の凸部１５ｂ（または１５ａ）が係合されるものとなっている。

【0028】

なお、前記取っ手１３の上下対称位置には矩形平面状の浅底の窪み部１７が形成されており、この窪み部１７に例えばコネクタコード情報、識別ナンバー、コードネーム等が記載されたシール（図示せず）が貼着される。この窪み部１７は、タブ１１の回転による前記係止作動部１５の姿勢が縦横どのような位置であるかを示す指示部として機能するよう形成されている。なお、前記指示部として機能する窪み部１７は凸状部（図示しない）に形成しても良い。

【0029】

本実施形態では、例えば取っ手１３の窪み部１７（または凸状部）が上方（下方）に向けられている場合には、タブ１１先端の前記係止作動部１５の長さ方向が水平位置に向けられた状態となるように設定され、且つ前記作動棒１２の支持突起１６の位置は下方（上方）に向けられた状態となるように設定されている。また、取っ手１３の窪み部１７（または凸状部）が左右側方に向けられている場合には、タブ１１先端の前記係止作動部１５の長さ方向が垂直に向けられた状態となるように設定され、且つ前記作動棒１２の支持突起１６の位置は左右側方に向けられた状態となるように設定されている。

【0030】

前記取っ手１３の一方の窪み部１７（または凸状部）が上方に向けられている状態から、当該取っ手１３を角度９０°だけ左右何れかの方向に回転させることで、前記タブ１１先端の前記係止作動部１５の長さ方向が水平位置から垂直位置に向けられるものとなっている。例えば、タブ１１の係止作動部１５の長さ方向が水平位置に向けられている場合には、当該タブ１１の係止作動部１５と前記ロックレバー４の係止部５との間に隙間が生じ、当該ロックレバー４は下方へ撓曲自在となる。このため押圧突起６の手押操作によって光アダプタＱの係止孔ＱＡからロックレバー４の係止部が解除されるロック解除状態となり、光アダプタＱからの光コネクタ１の抜去が可能となる。

【0031】

一方、前記タブ１１の係止作動部１５の長さ方向が垂直位置に向けられている場合には、前記ロックレバー４の係止部５下面にタブ１１の係止作動部１５が当接し、前記タブスライドガイド孔３の下側凹条部８と、前記ロックレバー４の上側凹条部９に、前記タブ１１の係止作動部１５両側の凸部１５ａ、１５ｂが「カチッ」という音を発しつつ各係合することでロックレバー４は下方へ撓曲不可となる。このためロックレバー４の係止部５の動きがタブ１１の係止作動部１５によって阻止され、押圧突起６を手押操作しても光アダプタＱの係止孔ＱＡからロックレバー４の係止部５が解除できないロック状態となり、光アダプタＱからの光コネクタ１の抜去が不可能となる。

【0032】

また、前記タブ１１の係止作動部１５とロックレバー４の係止部５との間に隙間が生じたロック解除状態において、取っ手１３を介してタブ１１を後方へ引き抜くと、前記ロックレバー４の幅方向左右両側にある係止突部７にタブ１１の係止作動部１５が引っ掛かり（図９（ｂ）参照）、ロックレバー４の係止部５にモーメントが作用して当該係止部５は下方に撓曲移動する。これによって光アダプタＱから光コネクタ１が容易に外せられる。

【0033】

次に、以上のように構成された形態についての使用・動作の一例について説明する。

【0034】

先ず、前記光コネクタ１にタブ１１を取付ける場合には、当該タブ１１の取っ手１３を手に持って、光コネクタ１の後方からタブスライドガイド孔３にタブ１１の係止作動部１５側先端を挿入する。

【0035】

前記タブ１１の挿入後には、前記作動棒１２の支持突起１６が前記タブスライドガイド孔３の内壁面に摺接支持され、また前記ネック部１４は前記左右一対の係止突部７に挟持されるようにして摺接支持され、前記タブ１１全体は支持突起１６とネック部１４とによって２点支持される。

【0036】

前記光アダプタＱに光コネクタ１を装着する場合には、前記タブ１１の係止作動部１５の長さ方向が水平位置に向けられるよう取っ手１３を左右どちらかに９０°回転させる。このとき、前記取っ手１３の窪み部１７（または凸状部）は上方に向けられている。するとタブ１１の係止作動部１５とロックレバー４の係止部５との間に隙間が生じ、当該ロックレバー４は下方へ撓曲自在なロック解除状態（非ロック状態）となる。

【0037】

このロック解除状態で光アダプタＱの挿入開口部ＱＢ（図９、図１０参照）に光コネクタ１のフェルールＦ先端側を装着すると、光アダプタＱの挿入開口部ＱＢの縁部によりロックレバー４の係止部５の前方傾斜面５ａが押されていったん下方へ撓曲し、ロックレバー４の係止部５は自体の弾性復帰力によって光アダプタＱの係止孔ＱＡに係合する。ついで、タブ１１の係止作動部１５の長さ方向が垂直位置に向けられるよう取っ手１３を介してタブ１１を左右どちらかに９０°回転させる。

【0038】

これにより、前記ロックレバー４の係止部５下面にタブ１１の係止作動部１５が当接し、前記タブスライドガイド孔３の下側凹条部８と、前記ロックレバー４の上側凹条部９に前記タブ１１の係止作動部１５両側の凸部１５ａ、１５ｂが「カチッ」という嵌合音を発しつつ各係合することでロックレバー４は下方へ撓曲不可なロック状態となる。

【0039】

このとき、取っ手１３の窪み部１７（または凸状部）は側方に向けられ、且つタブ１１全体は支持突起１６と係止作動部１５とネック部１４とによって３点支持される。このためロックレバー４の係止部５の下方への動きがタブ１１の係止作動部１５によって阻止され、ロックレバー４の押圧突起６を手押操作しても光アダプタＱの係止孔ＱＡからロックレバー４の係止部５が解除できないロック状態となり、光アダプタＱからの光コネクタ１の抜去が不可能となる。

【0040】

前記光アダプタＱから光コネクタ１を抜去する場合には、タブ１１の係止作動部１５の長さ方向が水平位置に向けられるよう取っ手１３を左右いずれかに９０°回転させる。するとタブ１１の係止作動部１５とロックレバー４の係止部５との間に隙間が生じ、当該ロックレバー４は下方へ撓曲自在となる。

【0041】

このとき、取っ手１３の窪み部１７（または凸状部）は上方（または下方）に向けられ、且つタブ１１全体は支持突起１６とネック部１４とによって２点支持された状態となる。このためロックレバー４の押圧突起６の手押操作によって光アダプタＱの係止孔ＱＡからロックレバー４の係止部５が離脱可能なロック解除状態となり、光アダプタＱからの光コネクタ１の抜去が可能となる。

【0042】

このロック解除状態において、取っ手１３を介してタブ１１を後方へ引き抜くと、前記ロックレバー４の幅方向左右両側にある、係止突部７にタブ１１の係止作動部１５が引っ掛かり、ロックレバー４の係止部５にモーメントが作用して当該係止部５は下方に撓曲移動する。これによって光アダプタＱから光コネクタ１が容易に外すことができる。

【0043】

以上説明したように、本実施形態においては、前記タブ１１の係止作動部１５の長さ方向が水平位置を保持することでロックレバー４に対するロック解除状態となし、前記タブ１１を角度９０°回して前記係止作動部１５の長さ方向が垂直位置を保持することでロックレバー４に対するロック状態となすので、タブ１１の後端側に設けられた取っ手１３を僅かに回転操作させるだけのみでロックレバー４に対するロック解除状態とロック状態とを容易且つ瞬時に切り替えることができる。

【符号の説明】

【0044】

Ｑ 光アダプタ
ＱＡ 係止孔
ＱＢ 挿入開口部
Ｆ フェルール
ＦＨ フェルールハウジング
１ 光コネクタ
２ スライドカバー
２Ａ 摘み部
２Ｂ フランジ部
３ タブスライドガイド孔
４ ロックレバー
４ａ スリット
４ｂ 凹所
５ 係止部
５ａ 前方傾斜面
６ 押圧突起
７ 係止突部
７Ａ 前傾テーパ面
８ 下側凹条部
９ 上側凹条部
１１ タブ
１２ 作動棒
１３ 取っ手
１４ ネック部
１５ 係止作動部
１５ａ、１５ｂ 凸部
１６ 支持突起
１７ 窪み部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】