(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】ICカード及び携帯可能電子装置
(51)【国際特許分類】
G06K 19/07 20060101AFI20220816BHJP
G06K 19/073 20060101ALI20220816BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20220816BHJP
B42D 25/305 20140101ALI20220816BHJP
【FI】
G06K19/07 090
G06K19/07 210
G06K19/07 180
G06K19/073 054
G06K19/07 050
G06K19/077 244
B42D25/305 100
(21)【出願番号】P 2018174203
(22)【出願日】2018-09-18
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】志賀 昭紀
【審査官】松平 英
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-78181(JP,A)
【文献】特開2012-238126(JP,A)
【文献】特表2005-503605(JP,A)
【文献】特開2009-48642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D15/02
25/00-25/485
G06F15/16-15/177
G06K 7/00-7/14
17/00-19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナと、
第1の周波数の第1のクロック信号を出力し、要求に応じて前記第1の周波数より高い第2の周波数の第2のクロック信号を出力する第1の発振器と、
前記アンテナの電磁誘導により発生する電流で動作し、前記アンテナで受信される受信コマンドに対応する第1の処理の実行期間外には前記第1のクロック信号に基づき動作し、前記第1の処理を実行するために前記第2のクロック信号を要求し、要求を受けた前記第1の発振器の前記第2のクロック信号に基づき前記第1の処理を実行し、前記アンテナで受信される受信コマンドに対応する第2の処理の実行を指示する第1のプロセッサと、
第3の周波数の第3のクロック信号を出力し、要求に応じて前記第3の周波数より高い第4の周波数の第4のクロック信号を出力する第2の発振器と、
前記アンテナの電磁誘導により発生する電流で動作し、前記第2の処理の実行期間外には前記第3のクロック信号に基づき動作し、前記第1のプロセッサからの前記第2の処理の実行指示に基づき前記第2の処理を実行するために前記第4のクロック信号を要求し、要求を受けた前記第2の発振器の前記第4のクロック信号に基づき前記第2の処理を実行する第2のプロセッサと、
を備えるICカード。
【請求項2】
前記第1のプロセッサは、前記第2の処理を実行するための前記第4のクロック信号を要求する指示を前記第2のプロセッサへ出力する請求項1のICカード。
【請求項3】
前記第1のプロセッサは、前記第1の処理の後に前記第2のクロック信号を前記第1のクロック信号へ切り替えることを要求する請求項1のICカード。
【請求項4】
前記第1のプロセッサは、前記第2の処理の後に前記第4のクロック信号を前記第3のクロック信号へ切り替えることを要求する指示を前記第2のプロセッサへ出力する請求項1のICカード。
【請求項5】
前記アンテナの電磁誘導により発生する電流で充電される充電部を備え、
前記第1及び第2のプロセッサは、前記充電部からの電流で動作し、
前記第1のプロセッサは、前記前記充電部の残容量が容量閾値より高い場合に、前記第1の処理を実行するために前記第2のクロック信号を要求する請求項1のICカード。
【請求項6】
前記第1のプロセッサは、前記前記充電部の残容量が容量閾値より高い場合に、前記第2の処理を実行するために前記第4のクロック信号を要求する指示を前記第2のプロセッサへ出力する請求項5のICカード。
【請求項7】
前記第2のプロセッサは、前記第4のクロック信号に基づき、画像処理に対応する前記第2の処理を実行する請求項1のICカード。
【請求項8】
指紋センサを備え、
前記第2のプロセッサは、前記第4のクロック信号に基づき、前記指紋センサからの画像を処理する前記第2の処理を実行する請求項1のICカード。
【請求項9】
アンテナと、
第1の周波数の第1のクロック信号を出力し、要求に応じて前記第1の周波数より高い第2の周波数の第2のクロック信号を出力する第1の発振器と、
前記アンテナの電磁誘導により発生する電流で動作し、前記アンテナで受信される受信コマンドに対応する第1の処理の実行期間外には前記第1のクロック信号に基づき動作し、前記第1の処理を実行するために前記第2のクロック信号を要求し、要求を受けた前記第1の発振器の前記第2のクロック信号に基づき前記第1の処理を実行し、前記アンテナで受信される受信コマンドに対応する第2の処理の実行を指示する第1のプロセッサと、
第3の周波数の第3のクロック信号を出力し、要求に応じて前記第3の周波数より高い第4の周波数の第4のクロック信号を出力する第2の発振器と、
前記アンテナの電磁誘導により発生する電流で動作し、前記第2の処理の実行期間外には前記第3のクロック信号に基づき動作し、前記第1のプロセッサからの前記第2の処理の実行指示に基づき前記第2の処理を実行するために前記第4のクロック信号を要求し、要求を受けた前記第2の発振器の前記第4のクロック信号に基づき前記第2の処理を実行する第2のプロセッサと、
を備える携帯可能電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ICカード及び携帯可能電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、IC(integrated circuit)チップを備えるICカードが広く普及している。ICカードは、携帯可能なサイズであることから携帯可能電子装置と呼ばれることもある。ICカードは、クレジットカード、定期券、その他の商取引の決済に使われるだけでなく、社員証、会員証、保険証などのID(identification card)カードとしても様々な分野で使われるようになってきている。
【0003】
ICカードは、接触型と非接触型に大別される。接触型のICカードは、接触端子による給電で動作するため、ICカードリーダ/ライタ等の端末から十分な供給電流を得ることができる。一方で、非接触型のICカードは、アンテナを介した非接触給電で動作するため、端末から得られる電流が少ない、又は端末とカード間の距離が離れることにより、動作するための十分な電力を得られない可能性がある。
【0004】
例えば、指紋認証機能付きの高機能なICカードが知られているが、このような高機能なICカードは、画像処理等の負荷の重い処理を実行するため、十分な電力が得られる接触型のICカードで実現される。非接触型のICカードでは、十分な電力を得られない可能性があり、実現が難しい。
【0005】
また、ICカードのICチップ内部の発振器の周波数(内部発振周波数)を電力供給量によって自動的に低下させ、動作に必要な電力量を低減する仕組みが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したような高機能なICカードは、例えば二つのICチップを備え、それぞれのICチップが機能を分担する。このような高機能なICカードで、単純に各ICチップ内部の発振器の周波数を低下させてしまうと、処理性能が基準を満たさなくなるおそれがある。今後、ICカードの高機能化を進める上でも、一定の処理性能を維持しつつ電力消費量を抑制する技術が望まれている。
【0008】
本発明の目的は、一定の処理性能を維持しつつ電力消費量を抑制できるICカード及び携帯可能電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係るICカードは、アンテナと、第1及び第2の発振器と、第1及び第2のプロセッサとを備える。第1の発振器は、第1の周波数の第1のクロック信号を出力し、要求に応じて第2の周波数の第2のクロック信号を出力する。第1のプロセッサは、受信コマンドに対応する第1の処理の実行期間外には前記第1のクロック信号に基づき動作し、要求により得られる前記第1の発振器の前記第2のクロック信号に基づき前記第1の処理を実行し、受信コマンドに対応する第2の処理の実行を指示する。第2の発振器は、第3の周波数の第3のクロック信号を出力し、要求に応じて第4の周波数の第4のクロック信号を出力する。第2のプロセッサは、前記第2の処理の実行期間外には前記第3のクロック信号に基づき動作し、要求により得られる前記第2の発振器の前記第4のクロック信号に基づき前記第2の処理を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係るICカードシステムの一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るICカードの一例を示す上面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るICカードの一例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るICカードのセキュアICチップの概略構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るICカードの画像処理用ICチップの概略構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、ICカード処理装置とICカードの動作シーケンス、及びICカード内部の動作シーケンスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係るICカードシステムについて図面を用いて説明する。
図1は、実施形態に係るICカードシステムの一例を示すブロック図である。
図1に示すように、ICカードシステムは、ICカード1、及びICカードを処理するICカード処理装置2を備える。
【0012】
ICカード1は、例えば85.6mm×54mm×0.76mmのサイズのカードであり、ユーザに携帯されることを想定した携帯可能電子装置である。また、ICカードは、スマートカード等と呼ばれることもある。ICカード1は、非接触型のICカードであり、非接触給電により動作電力を得る。つまり、ICカード1が、ICカード処理装置2のカードリーダライタの通信エリア(磁界エリア)に入ると、ICカード1のアンテナ(コイル)が電磁誘導により起電し、発生した電流を得て動作する。本実施形態では、非接触でICカード処理装置2と通信する非接触型、及び接触してICカード処理装置2と通信する接触型の両機能をサポートするコンビ型と呼ばれるICカードについて説明する。なお、本実施形態で説明する動作及び処理は、非接触型のICカードにも適用可能である。
【0013】
ICカード処理装置2は、店舗又は駅などの施設の入出場口に設置され、ユーザによって翳されるICカード1と通信し、ICカード1へ情報を送信し、またICカード1からの情報を受信する。多くのICカード1が市場で流通し、各所に設置されたICカード処理装置2が、ユーザにより翳されるICカード1と通信する。
【0014】
ここで、ICカード処理装置2の概略構成を説明する。ICカード処理装置2は、プロセッサ21、ROM(read-only memory)22、RAM(random-access memory)23、補助記憶デバイス24、カードリーダライタ25、操作部26、及びディスプレイ27等を備える。
【0015】
プロセッサ21は、ROM22及び補助記憶デバイス24の少なくとも一方に記憶されたプログラムに基づいて、ICカード処理装置2の動作に必要な演算及び制御などの各種処理を実行するコンピューターの中枢部分に相当する。プロセッサ21は、例えば、CPU(central processing unit)、又はMPU(micro processing unit)等である。なお、ICカード処理装置2は、2以上のプロセッサ21を組み合わせてこれら2以上のプロセッサの協働により各種処理を実行するようにしてもよい。
【0016】
例えば、プロセッサ21は、プログラムを実行することにより、カードリーダライタ25によりICカード1へコマンドを送信する機能、及びICカード1から受信するレスポンスなどのデータに基づく処理を実行する機能等を有する。これらの機能により、プロセッサ21は、カードリーダライタ25を介して、操作部26等に入力されたデータ又は書き込みデータを含む書き込みコマンドをICカード1に送信する。
【0017】
ROM22は、コンピューターに相当するプロセッサ21の主記憶部分に相当する読み出し専用の不揮発性メモリである。ROM22は、オペレーティングシステム又はアプリケーションソフトウェアなどのプログラムを記憶する。また、ROM22は、プロセッサ21が各種処理を行う上で使用するデータなどを記憶する。
【0018】
RAM23は、コンピューターに相当するプロセッサ21の主記憶部分に相当する揮発性のメモリである。RAM23は、プロセッサ21が各種処理を行う上で一時的に使用するデータを記憶しておく、いわゆるワークエリアとして利用される。
【0019】
補助記憶デバイス24は、コンピューターに相当するプロセッサ21の補助記憶部分に相当する。補助記憶デバイス24は、例えばEEPROM(electric erasable programmable read-only memory)(登録商標)、HDD(hard disk drive)又はSSD(solid state drive)などである。補助記憶デバイス24が、上記プログラムの一部又は全部を記憶する場合もある。また、補助記憶デバイス24は、プロセッサ21が各種処理を行う上で使用するデータ、プロセッサ21による各種処理で生成されたデータ又は各種の設定値などを保存する。
【0020】
カードリーダライタ25は、ICカード1との間でデータを送受信するためのインタフェース装置である。カードリーダライタ25は、アンテナ、接触端子、及び通信制御部等を備え、アンテナを介してコンビ型又は非接触型のICカード1(ICカード1のアンテナ)と非接触で通信し、接触端子を介してコンビ型のICカード1(ICカードの接触端子)と物理的且つ電気的に接続して通信する。
【0021】
操作部26は、ICカード処理装置2の操作者からの入力指示を受付ける。操作部26は、受付けた入力指示に対応する入力データをプロセッサ21へ送信する。操作部26は、例えば、キーボード、テンキー、及び、タッチパネルなどである。
【0022】
ディスプレイ27は、プロセッサ21の制御により種々の情報を表示する表示デバイスである。ディスプレイ27は、例えば、液晶モニタである。ディスプレイ27は、例えば、操作部26と一体的に形成されてもよい。
【0023】
図2は、実施形態に係るICカードの一例を示す上面図である。また、
図3は、実施形態に係るICカードの一例を示す断面図である。
図2及び
図3に示すように、ICカード1は、プラスティック等のカード基材11により構成される。カード基材11には、電子基板12が設けられる。電子基板12には、アンテナ(コイル)13、接触端子14、セキュアICチップ15、画像処理用ICチップ16、指紋センサ17、及び充電部18が設けられる。なお、本実施形態では、二つのICチップを備えたICカード1について説明するが、三つ以上のICチップを備えたICカードであってもよいし、一つのICチップを備えたICカードであってもよい。また、本実施形態では、充電部18を備えるICカードについて説明するが、充電部18を備えないICカードであってもよい。
【0024】
ICカード1のアンテナ13は、カードリーダライタ25のアンテナの通信エリア(磁界エリア)に入ると、アンテナ13が電磁誘導により起電し、電流を発生する。アンテナ13は、接触端子14に接続され、接触端子14は、セキュアICチップ15に接続され、セキュアICチップ15は、画像処理用ICチップ16に接続され、画像処理用ICチップ16は、指紋センサ17に接続される。
【0025】
例えば、セキュアICチップ15は、マスターICチップとして動作し、画像処理用ICチップ16は、スレーブICチップとして動作する。セキュアICチップ15は、カードリーダライタ25との通信を制御する。また、セキュアICチップ15は、指紋認証処理等を実行する。画像処理用ICチップ16は、指紋センサ17から出力される読取指紋画像を取得する画像取得処理、及び読取指紋画像から複数の特徴点を抽出し、複数の特徴点に基づき読取指紋画像テンプレートを生成する画像処理を実行する。
【0026】
指紋センサ17は、静電容量方式、光学式、又は超音波式等のセンサであり、指紋センサ17に置かれた指から指紋を読み取り、読取り結果である指紋画像を画像処理用ICチップ16へ出力する。なお、指紋センサ17のセンシング方式は上記に限定されるものではなく、その他のセンシング方式であってもよい。
【0027】
充電部18は、電気二重層キャパシタ(EDLC:electrical double capacitor)又は二次電池等の充放電可能なデバイスを含み、アンテナ13で発生した電流により充電される。また、充電部18から放電される電流は、セキュアICチップ15及び画像処理用ICチップ16に供給され、セキュアICチップ15及び画像処理用ICチップ16は充電部18から放電される電流により動作する。なお、ICカード1の厚さは0.76mm程度であり、このようなICカード1に搭載される充電部18の容量は数mF~数十mF程度である。また、充電部18は、リアルタイムに残容量を検出し、残容量をセキュアICチップ15及び画像処理用ICチップ16へ通知する。また、ICカード1が、充電部18を備えない場合、アンテナ13で発生した電流がセキュアICチップ15及び画像処理用ICチップ16に供給される。
【0028】
ICカード1を使用する際、ユーザは、指紋センサ17上に指を接触させた上で、ICカード1をカードリーダライタ25へ翳す又は挿入する。ICカード1のアンテナ(コイル)は電磁誘導により起電し、指紋センサ17は発生した電流を得て指先の指紋を読み取り、指紋画像を出力する。ICカード1のセキュアICチップ15及び画像処理用ICチップ16が協働して、指紋画像に基づき指紋認証処理を実行する。
【0029】
図4は、実施形態に係るICカードのセキュアICチップの概略構成を示すブロック図である。
図4に示すように、セキュアICチップ15は、コントローラ150及び発振器156等を備え、コントローラ150は、プロセッサ151、ROM152、RAM153、不揮発性メモリ154、及びインタフェース155等を備える。
【0030】
プロセッサ151は、ROM152及び不揮発性メモリ154の少なくとも一方に記憶されたプログラムに基づいて、セキュアICチップ15の動作に必要な演算及び制御などの各種処理を実行するコンピューターの中枢部分に相当する。プロセッサ151は、例えば、CPU(central processing unit)、又はMPU(micro processing unit)等である。なお、セキュアICチップ15は、2以上のプロセッサ151を組み合わせてこれら2以上のプロセッサの協働により各種処理を実行するようにしてもよい。
【0031】
例えば、プロセッサ151は、プログラムを実行することにより、カードリーダライタ25から送信されアンテナ13を介して受信されたコマンドを解釈しコマンドに基づく処理を実行する機能、及びアンテナ13によりカードリーダライタ25へレスポンスを送信する機能等を有する。また、プロセッサ151は、カード認証コマンドに基づきカード認証処理を実行する。
【0032】
プロセッサ151は、充電部18から通知される残容量を検知し、また、非接触給電により得られる電流値を検知する。また、プロセッサ151は、コマンドに対応する処理の実行期間と実行期間外とで動作周波数を変更する。例えば、プロセッサ151は、不揮発性メモリ154に記憶される動作周波数変更情報に基づき、動作周波数を変更する。プロセッサ151は、コマンドに対応する処理の実行期間外において第1の周波数の第1のクロック信号に基づき動作し、コマンドに対応する処理の実行期間において第1の周波数より高い第2の周波数の第2のクロック信号に基づき動作する。後に詳細を詳しく説明する。
【0033】
さらに、プロセッサ151は、画像処理用ICチップ16に対してコマンドに対応する処理を命じるとともに、画像処理用ICチップ16の動作周波数を制御する。例えば、プロセッサ151は、不揮発性メモリ154に記憶される動作周波数変更情報に基づき、画像処理用ICチップ16においてコマンドに対応する処理の実行期間と実行期間外とで動作周波数を変更するように命じる。
【0034】
ROM152は、プロセッサ151の主記憶部分に相当する読み出し専用の不揮発性メモリである。ROM152は、オペレーティングシステム又はアプリケーションソフトウェアなどのプログラムを記憶する。また、ROM152は、プロセッサ151が各種処理を行う上で使用するデータなどを記憶する。
【0035】
RAM153は、プロセッサ151の主記憶部分に相当する揮発性のメモリである。RAM153は、プロセッサ151が各種処理を行う上で一時的に使用するデータを記憶しておく、いわゆるワークエリアとして利用される。
【0036】
不揮発性メモリ154は、プロセッサ151の補助記憶部分に相当する。不揮発性メモリ154は、例えばEEPROMなどである。不揮発性メモリ154が、上記プログラムの一部又は全部を記憶する場合もある。また、不揮発性メモリ154は、プロセッサ151が各種処理を行う上で使用するデータ、プロセッサ151による各種処理で生成されたデータ又は各種の設定値などを保存する。
【0037】
また、不揮発性メモリ154は、プロセッサ151及びプロセッサ161により実行される動作周波数変更処理のための動作周波数変更情報を記憶する。動作周波数変更情報は、プロセッサ151及びプロセッサ161のそれぞれにおいて動作周波数変更処理の対象となるコマンド識別情報を登録したコマンドリストを含む。また、動作周波数変更情報は、プロセッサ151及びプロセッサ161のそれぞれにおいて変更対象となる動作周波数を含む。例えば、プロセッサ151における変更対象となる動作周波数は第1及び第2の動作周波数、プロセッサ161における変更対象となる動作周波数は第3及び第4の動作周波数である。また、動作周波数変更情報は、プロセッサ151及びプロセッサ161のそれぞれにおいて動作周波数の変更タイミングに関する情報を含む。例えば、プロセッサ151でコマンド処理の実行期間外には第1の動作周波数を適用し、コマンド処理の実行期間には第2の動作周波数を適用するためのタイミングである。また、プロセッサ161でコマンド処理の実行期間外には第3の動作周波数を適用し、コマンド処理の実行期間には第4の動作周波数を適用するためのタイミングである。また、動作周波数変更情報は、充電部18の残容量を判定するための容量閾値を含む。また、動作周波数変更情報は、非接触給電で得られる電流値を判定するための電流閾値を含む。なお、プロセッサ151及びプロセッサ161が、独立して動作周波数変更処理を担う場合、不揮発性メモリ154は、プロセッサ151により実行される動作周波数変更処理のための動作周波数変更情報を記憶し、不揮発性メモリ164は、プロセッサ161により実行される動作周波数変更処理のための動作周波数変更情報を記憶する。
【0038】
不揮発性メモリ154に記憶される動作周波数変更情報は、例えば、ICカード処理装置2により書き換えることができる。これにより、ICカード1の使用環境又はICカード1で実行されるコマンドの処理負荷等に応じた動作周波数変更情報を設定することができ、ICカード1の使用環境又はICカード1で実行されるコマンドの処理負荷等に応じた動作周波数変更処理を実現することができる。また、各ICカード1の個体による特性の違いがあるが、この特性の違いを考慮した動作周波数変更情報を設定することもできる。
【0039】
さらに、不揮発性メモリ154は、指紋認証のための登録指紋画像テンプレートを登録する。不揮発性メモリ154は、一本の指先に対する複数回の読み取りにより得られた複数の登録指紋画像テンプレートを登録してもよいし、複数の指先のそれぞれに対する1又は複数回の読み取りにより得られた複数の登録指紋画像テンプレートを登録してもよい。登録指紋画像テンプレートは、指紋画像から抽出される複数の特徴点に基づき生成されたものである。
【0040】
インタフェース155は、画像処理用ICチップ16と通信し、画像処理用ICチップ16で生成された読取指紋画像テンプレートを受信する。また、インタフェース155は、接触端子14から送信されるコマンド等を受信する。
【0041】
発振器156は、複数の周波数に対応する複数のクロック信号のうちの一つを出力する。例えば、発振器156は、第1の周波数に対応する第1のクロック信号、及び第1の周波数より高い第2の周波数に対応する第2のクロック信号のうちの一つを出力する。発振器156は、電力の供給を受けて第1のクロック信号の出力を開始する。或いは、発振器156は、プロセッサ151からのクロック要求を受けて第1のクロック信号の出力を開始する。また、発振器156は、プロセッサ151からの動作周波数変更(第1のクロック信号から第2のクロック信号への変更(高速化))の要求を受けて第1のクロック信号を第2のクロック信号へ切り替えて出力する。また、発振器156は、プロセッサ151からの動作周波数変更(第2のクロック信号から第1のクロック信号への変更(低速化))の要求を受けて第2のクロック信号を第1のクロック信号へ切り替えて出力する。
【0042】
図5は、実施形態に係るICカードの画像処理用ICチップの概略構成を示すブロック図である。
図5に示すように、画像処理用ICチップ16は、コントローラ160及び発振器166等を備え、コントローラ160は、プロセッサ161、ROM162、RAM163、不揮発性メモリ164、及びインタフェース165等を備える。画像処理用ICチップ16の各部とセキュアICチップ15の各部の基本構成は、実質的に同様であり、相違点を中心に説明し、共通する部分の説明は省略する。
【0043】
例えば、プロセッサ161は、指紋センサ17から出力される読取指紋画像を取得する画像取得処理、及び読取指紋画像から複数の特徴点を抽出し、複数の特徴点に基づき読取指紋画像テンプレートを生成する画像処理を実行する。インタフェース165は、指紋センサ17と通信し、また、セキュアICチップ15と通信する。
【0044】
プロセッサ161は、充電部18から通知される残容量を検知し、また、非接触給電により得られる電流値を検知する。また、プロセッサ161は、コマンドに対応する処理の実行期間と実行期間外とで動作周波数を変更する。例えば、プロセッサ151がマスターとして動作し、プロセッサ161がスレーブとして動作する場合、プロセッサ161はプロセッサ151からの指示に基づき動作周波数を変更し、コマンドに対応する処理を実行する。或いは、プロセッサ151とプロセッサ161とが独立して動作する場合、プロセッサ161は不揮発性メモリ164に記憶される動作周波数変更情報に基づき、動作周波数を変更する。プロセッサ161は、コマンドに対応する処理の実行期間外において第3の周波数の第3のクロック信号に基づき動作し、コマンドに対応する処理の実行期間において第3の周波数より高い第4の周波数の第4のクロック信号に基づき動作する。
【0045】
発振器166は、複数の周波数に対応する複数のクロック信号のうちの一つを出力する。例えば、発振器166は、第3の周波数に対応する第3のクロック信号、及び第3の周波数より高い第4の周波数に対応する第4のクロック信号のうちの一つを出力する。発振器166は、電力の供給を受けて第3のクロック信号の出力を開始する。或いは、発振器166は、プロセッサ161からのクロック要求を受けて第3のクロック信号の出力を開始する。また、発振器166は、プロセッサ161からの動作周波数変更(第3の動作クロックから第4の動作クロックへの変更(高速化))の要求を受けて第3のクロック信号を第4のクロック信号へ切り替えて出力する。また、発振器166は、プロセッサ161からの動作周波数変更(第4の動作クロックから第3の動作クロックへの変更(低速化))の要求を受けて第4のクロック信号を第3のクロック信号へ切り替えて出力する。
【0046】
なお、第1の周波数と第3の周波数は実質的に同一周波数でもよいし、異なる周波数でもよい。つまり、第1のクロック信号と第3のクロック信号は実質的に同一周波数でもよいし、異なる周波数でもよい。同様に、第2の周波数と第4の周波数は実質的に同一周波数でもよいし、異なる周波数でもよい。つまり、第2のクロック信号と第4のクロック信号は実質的に同一周波数でもよいし、異なる周波数でもよい。発振器156及び発振器166には個体差があるため、同じ周波数を出力するように設計されたとしても完全に同一周波数の信号を出力できるとは限らない。
【0047】
次に、一定の処理性能を維持しつつ電力消費量を抑制するための対策について説明する。電力消費量を抑制するために、ICカード内の各ICチップ内部の発振器の周波数を低下させることが考えられるが、この場合、処理性能が低下するおそれがある。そこで、本実施形態のICカード1では、セキュアICチップ15及び画像処理用ICチップ16の一方のICチップの処理負荷が他方のICチップの処理負荷より重い場合、一方のICチップを高い周波数のクロック信号で動作させ、他方のICチップを低い周波数のクロック信号で動作させる。また、他方のICチップの処理負荷が一方のICチップの処理負荷より重い場合、他方のICチップを高い周波数のクロック信号で動作させ、一方のICチップを低い周波数のクロック信号で動作させる。例えば、マスターとして機能するICチップ(セキュアICチップ15)が、各ICチップのクロック信号の切り替えを制御する。或いは、各ICチップが、自身のクロック信号の切り替えを制御するようにしてもよい。
【0048】
図6は、ICカード処理装置とICカードの動作シーケンス、及びICカード内部の動作シーケンスの一例を示す図である。本実施形態では、ICカード1の二つのICチップ(セキュアICチップ15及び画像処理用ICチップ16)が協働して認証処理(カード認証処理及び指紋認証処理)を実行し、この認証処理に周波数変更処理を適用するケースについて説明する。
【0049】
ICカード処理装置2のカードリーダライタ25は、ポーリング信号を出力し、ICカード1からの応答を待つ。ユーザによりICカード1がカードリーダライタ25に翳され、ICカード1のアンテナ13がカードリーダライタ25の通信エリアに入ると、ICカード1のアンテナ13が電磁誘導により起電し、ICカード1は動作電流を得て動作する。セキュアICチップ15のプロセッサ151は、アンテナ13を介して受信したポーリング信号を検知し、アンテナ13を介して応答信号を返信する。
【0050】
ICカード1が、アンテナ13の電磁誘導により動作電流を得ると、発振器156は、アンテナ13を介して受信した信号の入力に応じて第1の動作周波数の第1のクロック信号を出力し、また、発振器166は、アンテナ13を介して受信した信号の入力に応じて第3の動作周波数の第3の動作クロックを出力する。つまり、ICカード1がカードリーダライタ25に翳され動作電流を得ると、セキュアICチップ15は、第1のクロック信号で動作を開始し、画像処理用ICチップ16も、第3の動作クロックで動作を開始する。また、セキュアICチップ15は、動作周波数変更を要求するまで、第1のクロック信号での動作を継続し、画像処理用ICチップ16も、動作周波数変更を要求するまで、第3の動作クロックで動作を継続する。
【0051】
カードリーダライタ25は、ICカード1からの応答信号を受信し、カード認証コマンドを送信する(ステップST1)。第1のクロック信号で動作中のプロセッサ151は、アンテナ13を介して受信したカード認証コマンドを検知し、発振器156に動作周波数変更(高速化)を要求する。なお、不揮発性メモリ154の制御情報がコマンドリストを含む場合、カード認証コマンドがコマンドリストに含まれていることを条件として、第1のクロック信号で動作中のプロセッサ151は、カード認証コマンドの検知に基づき、動作周波数変更を要求するようにしてもよい。動作周波数変更情報(コマンドリスト)を適用することにより、特定のコマンド、例えば負荷の重いコマンドの処理に対して動作周波数変更処理を実行することができる。発振器156は、動作周波数変更の要求を受けて、出力中の第1のクロック信号を第2のクロック信号へ切り替えて、第2のクロック信号を出力する(ステップST2)。
【0052】
プロセッサ151は、第2のクロック信号に基づき、カード認証コマンドに基づくカード認証処理を実行し(ステップST3)、アンテナ13を介してカード認証成功(OK)又はカード認証失敗(NG)を示すカード認証結果を返信し(ステップST4)、発振器156に動作周波数変更(第2のクロック信号から第1のクロック信号への変更(低速化))を要求する。発振器156は、動作周波数変更の要求を受けて、出力中の第2のクロック信号を第1のクロック信号へ切り替えて、第1のクロック信号を出力する(ステップST5)。
【0053】
なお、不揮発性メモリ154の動作周波数変更情報に含まれる容量閾値を基準とする、充電部18の残容量の判定結果を動作周波数変更処理の適用条件に加えるようにしてもよい。例えば、第1のクロック信号で動作中のプロセッサ151は、カード認証コマンドを検知し、充電部18の残容量が容量閾値より高い場合には動作周波数変更(高速化)を要求し、充電部18の残容量が容量閾値以下の場合には動作周波数変更を要求しない。なお、残容量が容量閾値より高い状態が充電部18の性能上の満充電になるように、容量閾値を定めてもよい。これにより、電流不足によりカード認証処理の未遂発生リスクを低減することができる。
【0054】
また、不揮発性メモリ154の動作周波数変更情報に含まれる電流閾値を基準とする、非接触給電で得られる電流値の判定結果を動作周波数変更処理の適用条件に加えるようにしてもよい。例えば、第1のクロック信号で動作中のプロセッサ151は、カード認証コマンドを検知し、非接触給電で得られる電流値が容量閾値より高い場合には動作周波数変更(高速化)を要求し、非接触給電で得られる電流値が容量閾値以下の場合には動作周波数変更を要求しない。これにより、電流不足によりカード認証処理の未遂発生リスクを低減することができる。
【0055】
カードリーダライタ25は、ICカード1からのカード認証成功(OK)を示すカード認証結果を受信すると、指紋認証コマンドを送信する(ステップST6)。なお、ICカード1からのカード認証失敗(NG)を示すカード認証結果を受信すると、ここで処理は終了となる。
【0056】
第1のクロック信号で動作中のプロセッサ151は、アンテナ13を介して受信した指紋認証コマンドを検知し、発振器156に動作周波数変更(高速化)を要求する。なお、不揮発性メモリ154の動作周波数変更情報がコマンドリストを含む場合、指紋認証コマンドがコマンドリストに含まれていることを条件として、第1のクロック信号で動作中のプロセッサ151は、カード認証コマンドの検知に基づき、動作周波数変更を要求するようにしてもよい。発振器156は、動作周波数変更の要求を受けて、出力中の第1のクロック信号を第2のクロック信号へ切り替えて、第2のクロック信号を出力する(ステップST7)。なお、ステップST7において、充電部18の残容量の判定結果、又は非接触給電で得られる電流値の判定結果を動作周波数変更処理の適用条件に加えるようにしてもよい。
【0057】
プロセッサ151は、第2のクロック信号に基づき、指紋認証コマンドに基づく指紋認証処理を実行し(ステップST8)、発振器156に動作周波数変更(第2のクロック信号から第1のクロック信号への変更(低速化))を要求する。発振器156は、動作周波数変更の要求を受けて、出力中の第2のクロック信号を第1のクロック信号へ切り替えて、第1のクロック信号を出力する(ステップST9)。例えば、指紋認証処理では、不揮発性メモリ154に登録指紋画像テンプレートが登録されていることを確認し、画像処理用ICチップ16へ出力する制御情報を生成する。例えば、制御情報は、指紋画像処理コマンド及び動作クロック制御情報を含む。指紋画像処理コマンドは、画像取得処理及び特徴点抽出処理の実行を要求し、動作クロック制御情報は、指紋画像処理コマンドに対応する処理の実行期間外には第3のクロック信号に基づき動作すること、指紋画像処理コマンドに対応する処理の実行期間中に第4のクロック信号に基づき動作すること、指紋画像処理コマンドに対応する処理の実行に対応させて第3のクロック信号を第4のクロック信号へ切り替えること、指紋画像処理コマンドに対応する処理の終了に対応させて第4のクロック信号を第3のクロック信号へ切り替えることなどを要求する。なお、画像取得処理及び特徴点抽出処理は、間接的には、指紋認証コマンドに対応する処理である。
【0058】
第1のクロック信号で動作中のプロセッサ151は、指紋認証コマンドに基づき、画像処理用ICチップ16に対して指紋画像処理コマンド及び動作クロック制御情報等を含む制御情報を送信し(ステップST10)、画像処理用ICチップ16のプロセッサ161は、制御情報に含まれる動作クロック制御情報に基づき、発振器166に動作周波数変更(高速化)を要求する。発振器166は、動作周波数変更の要求を受けて、出力中の第3の動作クロックを第4の動作クロックへ切り替えて、第4の動作クロックを出力する(ステップST11)。なお、ステップST11において、充電部18の残容量の判定結果、又は非接触給電で得られる電流値の判定結果を動作周波数変更処理の適用条件に加えるようにしてもよい。
【0059】
プロセッサ161は、第4の動作クロックに基づき、指紋センサ17から出力される読取指紋画像を取得する画像取得処理を実行する(ステップST12)。さらに、プロセッサ161は、第4の動作クロックに基づき、指紋センサ17から出力される読取指紋画像から複数の特徴点を抽出し、複数の特徴点に基づき読取指紋画像テンプレートを生成する特徴点抽出処理を実行する(ステップST13)。さらに、プロセッサ161は、第4の動作クロックに基づき、読取指紋画像テンプレートをセキュアICチップ15へ送信する(ステップST14)。さらに、プロセッサ161は、制御情報に含まれる動作クロック制御情報に基づき、発振器166に動作周波数変更(第4の動作クロックから第3の動作クロックへの変更(低速化))を要求する。発振器166は、動作周波数変更の要求を受けて、出力中の第4の動作クロックを第3の動作クロックへ切り替えて、第3の動作クロックを出力する(ステップST15)。
【0060】
第1のクロック信号で動作中のプロセッサ151は、画像処理用ICチップ16からの読取指紋画像テンプレートを受け取り、発振器156に動作周波数変更(高速化)を要求する。発振器156は、動作周波数変更の要求を受けて、出力中の第1のクロック信号を第2のクロック信号へ切り替えて、第2のクロック信号を出力する(ステップST16)。
【0061】
プロセッサ151は、第2のクロック信号に基づき、照合処理を実行する(ステップST17)。プロセッサ151は、照合処理により、不揮発性メモリ154に登録された登録指紋画像テンプレートと、受け取った読取指紋画像テンプレートとを照合し、類似度を算出し、類似度算出結果に基づき指紋認証成功又は指紋認証失敗を判定する。プロセッサ151は、カードリーダライタ25からの指紋認証コマンド(ステップST6)に対して、指紋認証成功又は指紋認証失敗を示す指紋照合結果を返信し(ステップST18)、発振器156に動作周波数変更(第2のクロック信号から第1のクロック信号への変更(低速化))を要求する。発振器156は、動作周波数変更の要求を受けて、出力中の第2のクロック信号を第1のクロック信号へ切り替えて、第1のクロック信号を出力する(ステップST19)。
【0062】
上記説明した動作周波数変更の概要は以下の通り。
(1)ICカード1の各ICチップ(例えばセキュアICチップ15及び画像処理用ICチップ16)は、コマンドに対応する処理の実行期間外には周波数の低い第1のクロック信号(基準となるクロック信号)で動作し、コマンドに対応する処理の実行期間に周波数の高い第2のクロック信号(基準より高い周波数のクロック信号)で動作する。コマンドに対応する処理の実行期間であるか否かにかかわらず、同じ周波数のクロック信号で各ICチップを動作させる場合に比べて、低電力で効率良く動作することができる。各ICチップにおいてコマンドに対応する処理の期間が重複しない場合に動作周波数変更処理を適用すれば、より効果的に低電力で効率良く動作することができる。
【0063】
(2)各ICチップのうちのマスターとして機能するICチップ(例えばセキュアICチップ15)が、各ICチップにおける動作周波数変更処理を統括的に制御する。例えば、マスターとして機能するICチップが、各ICチップにおける各コマンド処理の開始タイミングと終了タイミングで周波数の切り替え制御することができる。各ICチップにおいて異なるタイミングで実行される各コマンド処理を周波数の高いクロック信号で処理し、各ICチップにおいてコマンド処理待ちの期間は周波数の低いクロック信号で動作することができる。マスターとして機能するICチップによる統括的な動作周波数変更の制御により、ICカード1の全体のパフォーマンスを落とすこと無く消費電力の低減を図ることができる。
【0064】
(3)ICカード1の各ICチップは、受信したコマンドに応じて動作周波数変更処理を適用することができる。例えば、負荷の重い画像処理等を命じるコマンドを動作周波数変更処理の対象としてコマンドリストに登録することにより、処理を遅延させることなく、電力消費量を抑制することができる。また、各ICチップにおいて処理の期間が重複しないコマンドをコマンドリストに登録することにより、より効果的に処理を遅延させることなく、電力消費量を抑制することができる。
【0065】
(4)ICカード1の各ICチップは、充電部18の残容量に応じて動作周波数変更処理を適用することができる。例えば、充電部18の残容量が容量閾値より高い場合に動作周波数変更処理を適用し(高速化)、充電部18の残容量が容量閾値以下の場合には動作周波数変更処理を適用しないようにすることができる。
【0066】
(5)ICカード1の各ICチップは、非接触給電の電流値に応じて動作周波数変更処理を適用することができる。例えば、非接触給電の電流値が電流閾値より高い場合に動作周波数変更処理を適用し(高速化)、非接触給電の電流値が電流閾値以下の場合には動作周波数変更処理を適用しないようにすることができる。
【0067】
本実施形態では、指紋センサ17で読み取られる読取指紋画像の画像処理等に動作周波数変更処理を適用するケースについて説明したが、指紋センサ17に限らず、他のカメラ素子の様なセンサ、ディスプレイ、ボタン等を備えた高機能なICカードによる負荷の重い処理に対して動作周波数変更処理を適用するようにしてもよい。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。したがって、本発明は、対象としてICカードに限らず、携帯できる電子装置を対象とするものである。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1…ICカード
2…ICカード処理装置
11…カード基材
12…電子基板
13…アンテナ
14…接触端子
15…セキュアICチップ
16…画像処理用ICチップ
17…指紋センサ
18…充電部
21…プロセッサ
24…補助記憶デバイス
25…カードリーダライタ
26…操作部
27…ディスプレイ
151…プロセッサ
154…不揮発性メモリ
155…インタフェース
156…発振器
161…プロセッサ
164…不揮発性メモリ
165…インタフェース
166…発振器