(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20220816BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20220816BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20220816BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20220816BHJP
F24H 1/18 20220101ALI20220816BHJP
【FI】
H02J3/00 130
H02J3/38 130
H02J3/32
H02J7/35 K
F24H1/18 Z
H02J3/00 170
(21)【出願番号】P 2018174841
(22)【出願日】2018-09-19
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】藤本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】原田 真宏
(72)【発明者】
【氏名】西田 竜太
(72)【発明者】
【氏名】門脇 昌作
(72)【発明者】
【氏名】村上 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 晋太朗
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2011/121815(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0238232(US,A1)
【文献】特開2012-172915(JP,A)
【文献】国際公開第2018/042542(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/042521(WO,A1)
【文献】特開2013-24487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
F24H 15/00
F24H 1/18
H02J 3/38
H02J 3/32
H02J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を発電可能であり、かつ電力負荷へと供給可能な発電部と、
前記電力負荷とは異なり、電力を用いて湯を製造可能であり、当該湯を蓄えると共に、給湯負荷へと供給可能な複数の給湯器と、
前記電力負荷の電力需要、及び前記発電部で発電される発電量を、所定の時間帯ごとに予測し、
予測した前記電力需要及び前記発電量に基づいて、各時間帯における余剰電力を算出し、
予測した前記余剰電力により稼働可能な前記給湯器の台数を各時間帯ごとに算出し、
算出した前記台数に基づいて、前記給湯器の稼働スケジュールを決定する制御部と、
を具備するシステム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記給湯器の稼働の優先順位を決定し、当該優先順位が高い前記給湯器ほど早い時間帯に稼働を開始するように、前記稼働スケジュールを決定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記給湯負荷の給湯需要を前記所定の時間帯ごとに予測し、
前記複数の給湯器のうち、湯を供給する前記給湯負荷の給湯需要の積算量が所定の値に達する時間帯が早い前記給湯器ほど、前記優先順位が高くなるように当該優先順位を決定する、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記給湯負荷の給湯需要を前記所定の時間帯ごとに予測し、
所定の期間における前記給湯需要を満たす湯を製造するために必要な前記給湯器の必要稼働時間を算出し、
前記必要稼働時間が長い前記給湯器ほど、前記優先順位が高くなるように当該優先順位を決定する、
請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御部は、
決定された前記稼働スケジュールに基づいて、前記給湯器に蓄えられた湯の残量を前記所定の時間帯ごとに予測し、
前記所定の時間帯のいずれかにおいて前記残量が所定の値を下回る場合、当該給湯器がより早い時間帯に稼働を開始するように、前記稼働スケジュールを修正する、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を用いて湯を製造可能な給湯器を有するシステムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電電力の買取価格低下に伴って、自宅で太陽光発電された電力(特に、余剰電力)を売却することなく自宅で消費(自家消費)することが望まれる場合がある。また、自家消費するための手段として、一般的に夜間の安価な電力を用いて運転される給湯器を、昼夜問わずに余剰電力を用いて運転させることが考えられる。
【0003】
ここで、特許文献1には、昼夜問わずに適切に給湯器を稼働させるための技術が開示されている。具体的には、特許文献1に記載の技術では、現在から所定時間後までの給湯需要(部分給湯需要)を算出し、現在の貯湯槽の蓄熱量及び部分給湯需要に基づいて、給湯器(ヒートポンプユニット)を稼働させる。これによって、昼夜問わず適切な時に(給湯需要に応じたタイミングで)給湯器を稼働させることができる。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、給湯器で消費される電力が太陽光発電の余剰電力を超過してしまう場合も想定される。特に、複数の給湯器を有するシステムにおいては、当該複数の給湯器が同時に稼働する場合も想定されるため、余剰電力を大幅に超過する可能性もある。このような場合、不足分の電力を太陽光発電電力以外(例えば、蓄電池に蓄えられた電力や、系統電源から購入する電力等)で賄う必要があり、効率的にも経済的にも好ましくない。
【0005】
そこで、このように電力を用いて湯を製造可能な給湯器を有するシステムにおいては、余剰電力を考慮して給湯器の稼働スケジュールを決定することが可能なシステムが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、太陽光発電の余剰電力を考慮した給湯器の稼働スケジュールを決定することが可能なシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、電力を発電可能であり、かつ電力負荷へと供給可能な発電部と、前記電力負荷とは異なり、電力を用いて湯を製造可能であり、当該湯を蓄えると共に、給湯負荷へと供給可能な複数の給湯器と、前記電力負荷の電力需要、及び前記発電部で発電される発電量を、所定の時間帯ごとに予測し、予測した前記電力需要及び前記発電量に基づいて、各時間帯における余剰電力を算出し、予測した前記余剰電力により稼働可能な前記給湯器の台数を各時間帯ごとに算出し、算出した前記台数に基づいて、前記給湯器の稼働スケジュールを決定する制御部と、を具備するものである。
【0010】
請求項2においては、前記制御部は、前記給湯器の稼働の優先順位を決定し、当該優先順位が高い前記給湯器ほど早い時間帯に稼働を開始するように、前記稼働スケジュールを決定するものである。
【0011】
請求項3においては、前記制御部は、前記給湯負荷の給湯需要を前記所定の時間帯ごとに予測し、前記複数の給湯器のうち、湯を供給する前記給湯負荷の給湯需要の積算量が所定の値に達する時間帯が早い前記給湯器ほど、前記優先順位が高くなるように当該優先順位を決定するものである。
【0012】
請求項4においては、前記制御部は、前記給湯負荷の給湯需要を前記所定の時間帯ごとに予測し、所定の期間における前記給湯需要を満たす湯を製造するために必要な前記給湯器の必要稼働時間を算出し、前記必要稼働時間が長い前記給湯器ほど、前記優先順位が高くなるように当該優先順位を決定するものである。
【0013】
請求項5においては、前記制御部は、決定された前記稼働スケジュールに基づいて、前記給湯器に蓄えられた湯の残量を前記所定の時間帯ごとに予測し、前記所定の時間帯のいずれかにおいて前記残量が所定の値を下回る場合、当該給湯器がより早い時間帯に稼働を開始するように、前記稼働スケジュールを修正するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
請求項1においては、太陽光発電の余剰電力を考慮した給湯器の稼働スケジュールを決定することができる。
【0016】
請求項2においては、優先順位の高い給湯器ほど早く湯を製造することができる。
【0017】
請求項3においては、給湯需要に応じて給湯器を稼働させることができる。
【0018】
請求項4においては、給湯需要に応じて給湯器を稼働させることができる。
【0019】
請求項5においては、湯切れの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電力供給システムの全体的な構成を示したブロック図。
【
図2】稼働スケジュール決定制御における処理を示したフローチャート。
【
図3】予測された電力需要及び太陽光発電量の一例を示した図。
【
図4】予測された各住宅の給湯需要の一例を示した図。
【
図5】各時刻における余剰電力及び稼働可能な給湯器の台数の一例を示した図。
【
図6】各住宅の給湯需要、残湯量、各給湯器の稼働時間及び優先順位を示した図。
【
図7】各時刻において稼働可能な給湯器の台数、及び稼働が割り当てられた給湯器を示した図。
【
図8】予測された電力需要及び太陽光発電量、並びに稼働が割り当てられた給湯器の消費電力の一例を示した図。
【
図9】各住宅の給湯需要及び残湯量の一例を示した図。
【
図10】(a)第二の具体例に係る稼働可能な給湯器の台数を示した図。(b)17時までに稼働が終了するように給湯器の稼働開始時刻を決定した例を示した図。
【
図11】(a)第三の具体例に係る稼働可能な給湯器の台数を示した図。(b)余剰電力をより有効活用できる時間に給湯器を稼働するように当該給湯器の稼働開始時刻を決定した例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明の一実施形態に係る電力供給システム1について説明する。
【0022】
図1に示す電力供給システム1は、系統電源Kから一括購入した電力や、太陽光を利用して発電された電力(後述する太陽光発電部11等による発電電力)を複数の住宅へと適宜供給(融通)するものである。本実施形態に係る電力供給システム1は、例えば集合住宅に設けられ、当該集合住宅の各住宅に電力を供給する。本実施形態では、特に3つの住宅(第一の住宅A、第二の住宅B及び第三の住宅C)を例に挙げて説明する。なお、当該3つの住宅の電力負荷を、以下では電力負荷H1、電力負荷H2及び電力負荷H3と称する。また、当該3つの電力負荷をまとめて電力負荷Hとも称する。
【0023】
電力供給システム1は、主として第一蓄電システム10、第二蓄電システム20、第三蓄電システム30、給湯器40、検出部50及びEMS60を具備する。
【0024】
第一蓄電システム10、第二蓄電システム20及び第三蓄電システム30は、それぞれ系統電源Kと電力負荷Hとをつなぐ配電線Lに接続される。より詳細には、第一蓄電システム10、第二蓄電システム20及び第三蓄電システム30は、配電線Lにおいて、電力負荷H側から系統電源K側にかけて順に接続され、これにより系統電源Kと電力負荷Hとの間に直列に配置される。第一蓄電システム10、第二蓄電システム20及び第三蓄電システム30は、それぞれ第一の住宅A、第二の住宅B及び第三の住宅Cの居住者に所有されている。
【0025】
第一蓄電システム10は、系統電源Kから購入した電力や太陽光を利用して発電された電力を蓄電したり、各住宅の電力負荷H等へと供給するものである。第一蓄電システム10は、太陽光発電部11、蓄電池12及びハイブリッドパワコン13を具備する。
【0026】
太陽光発電部11は、太陽光を利用して発電する装置である。太陽光発電部11は、太陽電池パネル等により構成される。太陽光発電部11は、例えば、住宅の屋根の上等の日当たりの良い場所に設置される。太陽光発電部11は、後述するハイブリッドパワコン13を介して、配電線Lの中途部に設けられた第一接続点P1で当該配電線Lと接続される。
【0027】
蓄電池12は、電力を充放電可能に構成されるものである。蓄電池12は、例えば、リチウムイオン電池により構成される。蓄電池12は、後述するハイブリッドパワコン13を介して太陽光発電部11と接続される。
【0028】
ハイブリッドパワコン13は、電力を適宜変換するもの(ハイブリッドパワーコンディショナ)である。ハイブリッドパワコン13は、太陽光発電部11で発電された電力及び系統電源Kからの電力を蓄電池12に充電可能に構成される。また、ハイブリッドパワコン13は、太陽光発電部11で発電された電力及び蓄電池12に充電されている電力を電力負荷H等へと放電させる。また、ハイブリッドパワコン13は、太陽光発電部11及び蓄電池12の運転状態に関する情報を取得可能に構成される。このようなハイブリッドパワコン13は、第一接続点P1で配電線Lの中途部と接続される。
【0029】
このように構成される第一蓄電システム10のハイブリッドパワコン13は、対応するセンサ(後述する第一電力センサ51)の検出結果等に基づいて、蓄電池12の充放電を切り替えることができる。
【0030】
第二蓄電システム20は、ハイブリッドパワコン23が第一接続点P1よりも系統電源K側に設けられた第二接続点P2で配電線Lに接続される点を除いて、第一蓄電システム10と同様に構成される。具体的には、第二蓄電システム20の太陽光発電部21、蓄電池22及びハイブリッドパワコン23は、それぞれ第一蓄電システム10の太陽光発電部11、蓄電池12及びハイブリッドパワコン13に相当する。
【0031】
第三蓄電システム30は、ハイブリッドパワコン33が第二接続点P2よりも系統電源K側に設けられた第三接続点P3で配電線Lに接続される点を除いて、第一蓄電システム10と同様に構成される。具体的には、第三蓄電システム30の太陽光発電部31、蓄電池32及びハイブリッドパワコン33は、それぞれ第一蓄電システム10の太陽光発電部11、蓄電池12及びハイブリッドパワコン13に相当する。
【0032】
給湯器40は、電力を用いて湯を製造するものである。本実施形態に係る給湯器40は、第一給湯器41、第二給湯器42及び第三給湯器43を含んでいる。第一給湯器41、第二給湯器42及び第三給湯器43は、それぞれ第一の住宅A、第二の住宅B及び第三の住宅Cの居住者に所有されている。なお、給湯器40は電力を用いる(消費する)ものであるが、本実施形態においては電力負荷Hとは異なるものであり、当該電力負荷Hに給湯器40は含まれないものとする。
【0033】
第一給湯器41は、ヒートポンプを用いて発生させた熱を用いて湯を沸かすものである。第一給湯器41は、配電線Lを介して第一の住宅Aへと供給された電力を用いて、ヒートポンプを稼働させることができる。第一給湯器41は、沸かした湯を貯湯槽(不図示)に蓄えることができる。第一給湯器41は、第一の住宅Aに設置され、当該第一の住宅Aの給湯負荷(例えば、浴室等)に湯を供給することができる。
【0034】
第二給湯器42及び第三給湯器43は、それぞれ第二の住宅B及び第三の住宅Cに設置される点を除いて、第一給湯器41と同様に構成される。特に本実施形態では、第一給湯器41、第二給湯器42及び第三給湯器43の加熱能力や、稼働させる際に必要な電力(消費電力)は、略同一であるものとする。
【0035】
検出部50は、各種の情報を検出するものである。検出部50は、第一電力センサ51、第二電力センサ52、第三電力センサ53、第一残湯センサ54、第二残湯センサ55及び第三残湯センサ56を具備する。
【0036】
第一電力センサ51は、配電線Lを流通する電力を検出するものである。第一電力センサ51は、配電線Lにおいて、第一接続点P1と第二接続点P2との間に設けられる。また、第一電力センサ51は、第一接続点P1の系統電源K側に隣接するように(配電線Lと他の蓄電システムとの接続点が介在しないように)設けられる。第一電力センサ51は、設けられた箇所を流通する電力(例えば、電力負荷H側へと流れる電力や、系統電源K側へと流れる電力)の電圧(供給電圧)及び電流(供給電流)を検出する。第一電力センサ51の検出結果は、ハイブリッドパワコン13に出力される。
【0037】
第二電力センサ52は、配電線Lを流通する電力を検出するものである。第二電力センサ52は、配電線Lにおいて、第二接続点P2と第三接続点P3との間に設けられる。また、第二電力センサ52は、第二接続点P2の系統電源K側に隣接するように設けられる。第二電力センサ52は、設けられた箇所を流通する電力の電圧(供給電圧)及び電流(供給電流)を検出する。第二電力センサ52の検出結果は、ハイブリッドパワコン23に出力される。
【0038】
第三電力センサ53は、配電線Lを流通する電力を検出するものである。第三電力センサ53は、配電線Lにおいて、第三接続点P3の系統電源K側に隣接するように設けられる。第三電力センサ53は、設けられた箇所を流通する電力の電圧(供給電圧)及び電流(供給電流)を検出する。第三電力センサ53の検出結果は、ハイブリッドパワコン33に出力される。
【0039】
第一残湯センサ54は、第一給湯器41の貯湯槽に蓄えられた湯の残量(残湯量)を検出するものである。第一残湯センサ54は、第一給湯器41に設けられる。
【0040】
第二残湯センサ55は、第二給湯器42の貯湯槽に蓄えられた湯の残量(残湯量)を検出するものである。第二残湯センサ55は、第二給湯器42に設けられる。
【0041】
第三残湯センサ56は、第三給湯器43の貯湯槽に蓄えられた湯の残量(残湯量)を検出するものである。第三残湯センサ56は、第三給湯器43に設けられる。
【0042】
EMS60は、電力供給システム1の動作を管理するエネルギーマネジメントシステム(Energy Management System)である。EMS60は、CPU等の演算処理部、RAMやROM等の記憶部や、タッチパネル等の入出力部等を具備する。EMS60の記憶部には、電力供給システム1の動作を制御する際に用いられる種々の情報やプログラム等が予め記憶される。EMS60の演算処理部は、前記プログラムを実行して前記種々の情報を用いた所定の演算処理等を行うことで、電力供給システム1を動作させることができる。
【0043】
EMS60は、ハイブリッドパワコン13・23・33と電気的に接続される。EMS60は、所定の信号をハイブリッドパワコン13・23・33に送信し、蓄電池12・22・32の運転(例えば、蓄電池12・22・32の充放電等)を制御することができる。また、EMS60は、ハイブリッドパワコン13・23・33から所定の信号が入力可能に構成され、各種の情報(蓄電池12・22・32の蓄電残量等)を取得することができる。
【0044】
また、EMS60は、各給湯器40に電気的に接続され、当該各給湯器40の稼働を制御することができる。またEMS60は、第一残湯センサ54、第二残湯センサ55及び第三残湯センサ56と電気的に接続され、当該第一残湯センサ54等の検出値を取得することができる。
【0045】
上述の如く構成された電力供給システム1において、系統電源Kから購入された電力や、太陽光発電部11等で発電された電力を、蓄電池12等に充電することができる。また、当該電力供給システム1において、系統電源Kから購入された電力、太陽光発電部11等で発電された電力、及び蓄電池12等に充電された電力を、各住宅の電力負荷Hや給湯器40等へと供給することができる。また、当該電力供給システム1において、太陽光発電部11等で発電された電力の余剰分(余剰電力)は、系統電源Kへと逆潮流させて売却することもできる。
【0046】
例えば、太陽光発電部11等で発電された電力を配電線Lに出力することで、各住宅の電力負荷Hへと電力を供給することができる。また、蓄電池12等には、第一電力センサ51等の検出結果に基づく負荷追従運転を行わせることができる。これによって、太陽光発電部11からの電力が電力負荷Hに対して不足する場合、蓄電池12等を放電させて当該電力負荷Hへと電力を供給することができる。また、太陽光発電部11からの電力が電力負荷Hに対して余剰する場合、当該電力を蓄電池12に充電させることができる。
【0047】
ここで、上述の如く、電力供給システム1では、余剰電力を系統電源Kへと逆潮流させる(売却する)ことが可能である。しかしながら、近年の太陽光発電電力の買取価格の低下に伴って、余剰電力を売却するのではなく、自宅で消費(自家消費)することが望まれる場合がある。
【0048】
そこで、本実施形態に係る電力供給システム1においては、適切な時間(タイミング)で給湯器40を稼働させることで、当該給湯器40による余剰電力の消費を促すことを可能としている。以下では、当該給湯器40を稼働させる時間(稼働スケジュール)を決定するための制御(以下、「稼働スケジュール決定制御」と称する)について具体的に説明する。
【0049】
なお、当該稼働スケジュール決定制御は、定期的に行われる。本実施形態においては、当該稼働スケジュール決定制御は毎日午前0時に行われ、午前0時から24時間の稼働スケジュールが決定されるものとする。
【0050】
図2のステップS101において、EMS60は、所定の時間帯ごとの電力需要、給湯需要及び太陽光発電量を予測する。本実施形態においては、各時刻(1時間ごと)の電力需要等を予測するものとする。
【0051】
ここで、電力需要とは、各住宅の電力負荷Hで消費される電力の合計値(W)である。
また、給湯需要とは、各住宅の給湯負荷で消費されるエネルギー(Wh)である。
また、太陽光発電量とは、各住宅の太陽光発電部(太陽光発電部11等)で発電される電力の合計値(W)である。
【0052】
なお、本実施形態に係る電力供給システム1は、複数の住宅間で電力を融通可能としているため、上記ステップS101における電力需要及び太陽光発電量の予測値は、各住宅における予測値を合算して算出される。これに対して、各住宅の給湯負荷への給湯は、各住宅の給湯器40によってそれぞれ行われるため、上記ステップS101における給湯需要は、住宅ごとに算出(予測)される。
【0053】
なお、電力需要等の予測は、種々の手法により行うことが可能である。例えば、EMS60により各住宅の過去の電力需要等を学習(機械学習)し、当該学習結果から予測する方法や、一般的な住宅の電力需要等に関する統計情報に基づいて予測する方法が考えられる。
【0054】
図3には、ステップS101において予測された電力需要及び太陽光発電量の一例を示している。また
図4には、ステップS101において予測された各住宅の給湯需要の一例を示している。
【0055】
EMS60は、ステップS101の処理を行った後、ステップS102に移行する。
【0056】
図2のステップS102において、EMS60は、各時刻の余剰電力を算出する。余剰電力は、ステップS101において予測された各時刻の太陽光発電量から電力需要を減算することで算出することができる。
【0057】
図5には、ステップS102において算出された、各時刻(特に、6時~17時)における余剰電力の一例を示している。
【0058】
EMS60は、ステップS102の処理を行った後、ステップS103に移行する。
【0059】
ステップS103において、EMS60は、各時刻において、余剰電力を用いて稼働させることが可能な給湯器40の台数を算出する。具体的には、EMS60は、ステップS102において算出した各時刻の余剰電力を、給湯器40の消費電力(本実施形態では1kWとする)で除することで、稼働可能な給湯器40の台数を算出する。なお、当該台数を算出する際、端数は切り捨てて算出する。
【0060】
図5には、ステップS103において算出された、各時刻(特に、6時~17時)における稼働可能な給湯器40の台数の一例を示している。
【0061】
EMS60は、ステップS103の処理を行った後、ステップS104に移行する。
【0062】
図2のステップS104において、EMS60は、各住宅の給湯需要を満たす熱量を生成するために必要な各給湯器40の稼働時間を算出する。具体的には、EMS60は、稼働スケジュール決定制御の実行時(本実施形態では、午前0時)から24時間の各住宅の給湯需要から、当該稼働スケジュール決定制御の実行時における各住宅の給湯器40の残湯量を減算する。さらにEMS60は、当該減算結果を給湯器40の加熱能力(本実施形態では4.5kWとする)で除することで、各給湯器40の稼働時間を算出する。
【0063】
図6には、各住宅の給湯需要及び残湯量と、ステップS104において算出された、各給湯器40の稼働時間の一例を示している。
【0064】
なお、本実施形態においては、稼働効率向上の観点から、給湯器40を必要な時間だけ連続で稼働させる(複数回に分けて稼働させない)ことを想定している。例えば、
図6に示すように、第一の住宅Aの給湯器40(第一給湯器41)の稼働時間は4時間であるため、本実施形態では当該第一給湯器41を4時間連続で稼働させる。
【0065】
EMS60は、ステップS104の処理を行った後、ステップS105に移行する。
【0066】
図2のステップS105において、EMS60は、給湯器40の稼働の優先順位を決定する。ここで、当該優先順位とは、優先的に稼働を開始すべき給湯器40を示す順位である。優先順位の決定は、種々の基準に基づいて行うことが可能である。例えば、給湯需要が発生するタイミングが早い住宅の給湯器40を優先して稼働するように優先順位を決定したり、ステップS104において算出された稼働時間が長い給湯器40を優先して稼働するように優先順位を決定する方法が考えられる。
【0067】
本実施形態では、給湯需要が発生するタイミングが早い住宅の給湯器40を優先して稼働するように優先順位を決定するものとする。なお、
図4に示した例では、第二の住宅Bの給湯需要が最も早い時刻(6時)に発生している。したがって、
図4の例では、第二の住宅Bの給湯器40の優先順位を最も高く設定することも可能である。
【0068】
しかし、当該給湯需要は比較的微量であり、給湯器40の残湯量で賄うことが可能であると考えられる。このため、比較的微量な給湯需要に基づいて給湯器40の稼働の優先順位を決定するのは、稼働効率向上の観点から好ましくない。そこで本実施形態では、各住宅の給湯需要の積算量が所定の値に達する時間に基づいて、優先順位を決定するものとする。具体的には、各住宅において、給湯需要の積算量が、その日(午前0時から24時間)の給湯需要の所定の割合(例えば、50%)に達する時刻を基準として、給湯需要が発生するタイミングが早い住宅を判断する。
【0069】
例えば、
図6に示した例では、第一の住宅Aの給湯需要は17.2(kWh)であるため、当該給湯需要の50%(すなわち、8.6(kWh))に達する時刻を基準として、優先順位を決定する。このような判断によって、本実施形態では、第一の住宅A(第一給湯器41)が優先順位1位、第二の住宅B(第二給湯器42)が優先順位2位、第三の住宅C(第三給湯器43)が優先順位3位と決定されたものとする(
図6参照)。
【0070】
EMS60は、ステップS105の処理を行った後、ステップS106に移行する。
【0071】
図2のステップS106において、EMS60は、優先順位の高い給湯器40から優先的に稼働時間を割り当てる。この際、EMS60は、ステップS103で算出された各時刻の稼働可能な給湯器40の台数に基づいて、給湯器40の稼働時間を割り当てる。
【0072】
具体的には、EMS60は、優先順位の高い給湯器40ほど、早い時刻に稼働を開始させるように、当該給湯器40の稼働時間を割り当てる。本実施形態では、8時に1台の給湯器40が稼働可能となるため(
図5参照)、優先順位の最も高い給湯器40(本実施形態では、第一の住宅Aの第一給湯器41)の稼働を8時に開始する。上述の如く、給湯器40は連続稼働させるため、第一給湯器41は、8時から11時までの4時間稼働するように割り当てられる(
図7参照)。なお、
図7においては、給湯器40を稼働させるように割り当てられた時刻を、黒く塗り潰して示している。
【0073】
また本実施形態では、
図7に示すように、9時に2台の給湯器40が稼働可能となるため、当該時刻においては、上記第一給湯器41に加えて、もう1台の給湯器40を稼働させることが可能である。そこでEMS60は、優先順位2位の給湯器40(第二の住宅Bの第二給湯器42)の稼働を9時に開始する。当該第二給湯器42は、9時から11時までの3時間稼働するように割り当てられる。
【0074】
ここで、第一給湯器41及び第二給湯器42の稼働を上述のように割り当てた場合、11時には稼働可能な給湯器40が1台であるのに対して、実際に稼働させる給湯器40は2台(第一給湯器41及び第二給湯器42)となる。この場合、当該時刻(11時)においては、第一給湯器41及び第二給湯器42の消費電力を余剰電力で賄うことができないため(
図8の11時参照)、不足する電力は、蓄電池12等に蓄えられた電力や、系統電源Kから購入される電力によって補われる。
【0075】
このように、本実施形態では、給湯器40の稼働後に余剰電力が不足する(給湯器40の消費電力を賄うことができない)場合であっても、当該給湯器40の稼働効率向上の観点から、当該給湯器40を停止させることはない。
【0076】
また本実施形態では、
図7に示すように、11時に第一給湯器41及び第二給湯器42の稼働が終了した後、13時に再び1台の給湯器40が稼働可能となる。そこで、EMS60は、優先順位3位の給湯器40(第三の住宅Cの第三給湯器43)の稼働を13時に開始する。当該第三給湯器43は、13時から15時までの3時間稼働するように割り当てられる。
【0077】
ここで、第三給湯器43の稼働を上述のように割り当てた場合、15時には稼働可能な給湯器40が0台であるのに対して、実際には1台の給湯器40(第三給湯器43)を稼働させることになる(
図8の15時参照)。この場合も、不足する電力は蓄電池12等により補われる。
【0078】
このようにして、EMS60は、優先順位の高い給湯器40から優先的に(早い時刻に)稼働を開始するように、稼働時間を割り当てる。EMS60は、電力供給システム1が有する複数の給湯器40の全てについて、稼働時間を割り当てることで、稼働スケジュールを作成することができる。
【0079】
EMS60は、ステップS106の処理を行った後、ステップS107に移行する。
【0080】
図2のステップS107において、EMS60は、各時刻における各給湯器40の残湯量を算出する。具体的には、EMS60は、ステップS106で作成された稼働スケジュールに基づいて、所定の時刻における給湯器40の加熱量から給湯需要を減じた値を、直前の時刻の残湯量に加算することで、当該所定の時刻の残湯量を算出する。例えば、8時における第一給湯器41の残湯量を算出する場合、EMS60は、8時における第一給湯器41の加熱量から当該8時における給湯需要を減じた値を、7時における第一給湯器41の残湯量に加算する。
【0081】
EMS60は、このような計算を各時刻について順に行うことで、各時刻における各給湯器40の残湯量を算出する。算出された残湯量がマイナスの値となった場合、当該時刻において湯が不足することを意味する。
【0082】
図9には、各住宅の給湯需要と、ステップS107において算出された各時刻における各住宅の給湯器40の残湯量の一例を示している。
【0083】
EMS60は、ステップS107の処理を行った後、ステップS108に移行する。
【0084】
ステップS108において、EMS60は、各住宅の給湯器40について、残油量が0未満(マイナスの値)となる時刻が存在するか否かを判定する。すなわち、EMS60は、各住宅において湯が不足するか否かを判定する。
【0085】
EMS60は、残湯量が0未満となる時刻が存在する(ステップS108でYes)と判定した場合、ステップS109に移行する。
一方、EMS60は、残湯量が0未満となる時刻が存在しない(ステップS108でNo)と判定した場合、本制御(稼働スケジュール決定制御)を終了する。
【0086】
なお、
図9に示した例では、残湯量が0未満となる時刻は存在していない。
【0087】
ステップS109において、EMS60は、残湯量が0未満となる(湯が不足する)住宅の給湯器40の稼働開始時間を1時間だけ前倒しする。このようにEMS60は、ステップS106において作成された稼働スケジュールを修正し、1時間早めに湯を沸かすことで、残湯量の不足の解消を図ることができる。
【0088】
EMS60は、ステップS109の処理を行った後、再度ステップS107に移行する。
【0089】
このように、EMS60は、各時刻における給湯器40の残湯量が0以上となるまで(すなわち、各時刻において湯が不足しなくなるまで)、ステップS107からステップS109までの処理を繰り返す。
【0090】
EMS60は、各時刻における給湯器40の残湯量が0以上となった場合(ステップS108でNo)に本制御(稼働スケジュール決定制御)を終了し、その時点で割り当てられた給湯器40の稼働時間(稼働スケジュール)を確定させる。
【0091】
EMS60は、このようにして決定された稼働スケジュールに従って給湯器40を稼働させることで、余剰電力の自家消費を促すことができる。またこの際、余剰電力に応じた給湯器40の稼働が可能となる。また本実施形態では、給湯器40の消費電力が余剰電力を超える場合があったとしても、当該給湯器40の連続稼働を優先する(給湯器40を停止させない)ことで、当該給湯器40を効率的に稼働させ、電力供給システム1全体としての効率化を図ることができる。
【0092】
以上の如く、本実施形態に係る電力供給システム1(システム)は、
電力を発電可能であり、かつ電力負荷Hへと供給可能な太陽光発電部11等(発電部)と、
前記電力負荷とは異なり、電力を用いて湯を製造可能であり、当該湯を蓄えると共に、給湯負荷へと供給可能な複数の給湯器40と、
前記電力負荷Hの電力需要、及び前記太陽光発電部11等で発電される発電量を、所定の時間帯(1時間)ごとに予測し(ステップS101)、
予測した前記電力需要及び前記発電量に基づいて、各時間帯における余剰電力を算出し(ステップS102)、
予測した前記余剰電力により稼働可能な前記給湯器40の台数を各時間帯ごとに算出し(ステップS103)、
算出した前記台数に基づいて、前記給湯器40の稼働スケジュールを決定する(ステップS106)EMS60(制御部)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、太陽光発電の余剰電力を考慮した給湯器40の稼働スケジュールを決定することができる。すなわち、余剰電力に基づいて算出された稼働可能な給湯器40の台数に基づいて稼働スケジュールを決定することができるため、余剰電力に対して過剰な台数の給湯器40が稼働されるのを抑制することができる。
【0093】
また、前記EMS60は、
前記給湯器40の稼働の優先順位を決定し(ステップS105)、当該優先順位が高い前記給湯器40ほど早い時間帯に稼働を開始するように、前記稼働スケジュールを決定する(ステップS106)ものである。
このように構成することにより、優先順位に基づいた給湯器40の稼働が可能となる。すなわち、優先順位の高い給湯器40ほど早く湯を製造することができる。
【0094】
また、前記EMS60は、
前記給湯負荷の給湯需要を前記所定の時間帯ごとに予測し(ステップS101)、
前記複数の給湯器40のうち、湯を供給する前記給湯負荷の給湯需要の積算量が所定の値に達する時間帯が早い前記給湯器40ほど、前記優先順位が高くなるように当該優先順位を決定する(ステップS105)ものである。
このように構成することにより、給湯需要に応じて給湯器40を稼働させることができる。すなわち、給湯需要が発生する(積算量が所定の値に達する)時間が早い給湯器40を優先して稼働させることができる。これによって、湯切れの発生を抑制することができる。
【0095】
また、前記EMS60は、
前記給湯負荷の給湯需要を前記所定の時間帯ごとに予測し(ステップS101)、
所定の期間における前記給湯需要を満たす湯を製造するために必要な前記給湯器40の必要稼働時間を算出し(ステップS104)、
前記必要稼働時間が長い前記給湯器40ほど、前記優先順位が高くなるように当該優先順位を決定する(ステップS105)ものでもよい。
このように構成することにより、給湯需要に応じて給湯器40を稼働させることができる。すなわち、給湯需要を満たすための稼働時間が長い給湯器40を優先して稼働させることができる。これによって、湯切れの発生を抑制することができる。
【0096】
また、前記EMS60は、
決定された前記稼働スケジュールに基づいて、前記給湯器40に蓄えられた湯の残量を前記所定の時間帯ごとに予測し(ステップS107)、
前記所定の時間帯のいずれかにおいて前記残量が所定の値を下回る場合、当該給湯器40がより早い時間帯に稼働を開始するように、前記稼働スケジュールを修正する(ステップS108、ステップS109)ものである。
このように構成することにより、湯切れの発生を抑制することができる。すなわち、給湯器40の稼働開始を早めることで早期に湯を製造することができる。
【0097】
なお、本実施形態に係る電力供給システム1は、本発明に係るシステムの実施の一形態である。
また、本実施形態に係る太陽光発電部11等は、本発明に係る発電部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るEMS60等は、本発明に係る制御部の実施の一形態である。
【0098】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0099】
例えば、電力供給システム1は、集合住宅に設けられるものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、オフィスや戸建住宅等に設けられるものであってもよい。
【0100】
また、本実施形態においては発電部として太陽光発電部11を例示したが、本発明はこれに限らず、発電可能な種々の機器(例えば、風力発電装置等)を用いることが可能である。
【0101】
また、本実施形態においては1時間ごとに電力需要等を予測したり、給湯器40の稼働スケジュールを決定するものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、任意の時間帯ごと(例えば、30分ごとや、2時間ごと等)に当該予測等を行うものであってもよい。
【0102】
また、本実施形態においては、給湯需要の積算量が所定の値(50%)に達する時間帯に基づいて給湯器40の優先順位を決定するものとしたが(ステップS105参照)、本発明はこれに限るものではない。例えば、単に給湯需要が発生するタイミングが早い住宅の給湯器40を優先して稼働するように優先順位を決定することも可能である。
【0103】
また、本実施形態においては、給湯器40の優先順位も考慮して、稼働スケジュールを決定するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、当該優先順位にかかわらず、各時間帯において余剰電力により稼働可能な給湯器40の台数に基づいて稼働スケジュールを決定することも可能である。
【0104】
なお、本実施形態の稼働スケジュール決定制御では、ステップS103で算出される稼働可能な給湯器40の台数によっては、稼働時間を割り当てることができない給湯器40が発生する可能性もある。
【0105】
例えば、ステップS103において、各時刻において余剰電力を用いて稼働させることが可能な給湯器40の台数が、
図10(a)に示した例(第二の具体例)のように算出された場合を想定する。この場合、余剰電力で稼働可能な給湯器40の台数は、8時から11時までの時間帯で1台のみであるため、優先順位2位以下の給湯器40(
図10(a)の例では、第二給湯器42及び第三給湯器43)の稼働時間を割り当てることができない。
【0106】
しかしながら、給湯器40の稼働時間を割り当てないと、給湯需要に対して当該給湯器40の残湯量がいずれ不足することになり、好ましくない。そこで、もしステップS106において稼働時間を割り当てることができない給湯器40がある場合には、各時刻の稼働可能台数にかかわらず、当該給湯器40を稼働させることが好ましい。
【0107】
この場合、当該給湯器40の稼働開始時刻は、例えば給湯需要に基づいて決定することができる。例えば、給湯需要が発生するまで、又は給湯需要が所定の割合(例えば、50%)に達するまでに、当該給湯器40の稼働が終了するように、当該給湯器40の稼働開始時刻を決定することができる。
【0108】
また、所定の時刻(例えば、大きな給湯需要が発生すると考えられる時刻(17時など))までに給湯器40の稼働が終了するように、当該給湯器40の稼働開始時刻を決定することもできる。
図10(b)には、17時までに第二給湯器42及び第三給湯器43の稼働が終了するように当該第二給湯器42等の稼働開始時刻を決定した例を示している。
【0109】
このように、余剰電力が不足する場合であっても、給湯器40の稼働を優先することで、湯の不足(湯切れ)を防止することができる。
【0110】
また、本実施形態の稼働スケジュール決定制御では、優先順位の高い給湯器40ほど早い時刻に稼働を開始させるように、当該給湯器40の稼働時間を割り当てている(ステップS106)。このため、場合によっては、余剰電力を一部有効活用できていない場合も想定される。
【0111】
例えば、ステップS103において、各時刻において余剰電力を用いて稼働させることが可能な給湯器40の台数が、
図11(a)に示した例(第三の具体例)のように算出された場合を想定する。この場合、本実施形態のステップS106の処理によって、第一給湯器41を8時から、第二給湯器42を9時から、第三給湯器43を13時から、それぞれ稼働させることになる。
【0112】
11時においては、余剰電力を用いて稼働可能な給湯器40が1台であるのに対して2台の給湯器40(第一給湯器41及び第二給湯器42)を稼働させるため、当該時刻においては余剰電力が不足する。このため、当該時刻では蓄電池12等に蓄えられた電力や、系統電源Kからの電力によって、不足分の電力が補われることになる。
【0113】
ここで、
図11(a)の例では、13時から15時においては、余剰電力を用いて2台の給湯器40を稼働させることができるのに対して、1台の給湯器40(第三給湯器43)だけが稼働されることになっている。したがって、第二給湯器42の稼働を、9時ではなく13時に開始させれば、当該第二給湯器42を余剰電力のみで稼働させることができることがわかる。
【0114】
そこで、
図11(b)に示すように、第二給湯器42の稼働を、9時ではなく13時に開始するように、当該第二給湯器42の稼働時間を割り当ててもよい。このように、湯銭順位の高い給湯器40を、必ずしも早い時刻に稼働開始させる必要はなく、余剰電力をより有効活用できる時間に稼働させることも可能である。但しこの場合も、各給湯器40の湯切れが生じないように留意することが望ましい。
【0115】
なお、このような処理(余剰電力を有効活用する処理)は、例えば上述のステップS106の処理と併せて行うことが可能である。また、優先順位の高い給湯器40を早い時刻に稼働開始させる観点から決定された稼働スケジュールと、余剰電力を有効活用する観点から決定された稼働スケジュールを両方作成し、いずれかを任意に選択する(例えば、各住宅の居住者等が選択する)ことも可能である。
【符号の説明】
【0116】
1 電力供給システム
11・21・31 太陽光発電部
40 給湯器
60 EMS