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特許7123716固定子、電動機およびバスリングの取付方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】固定子、電動機およびバスリングの取付方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/52 20060101AFI20220816BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
H02K3/52 E
H02K15/04 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018178337
(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2020054028
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 達也
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-046960(JP,A)
【文献】特開2017-042004(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0030333(KR,A)
【文献】特開2005-065374(JP,A)
【文献】特開2016-101002(JP,A)
【文献】特開2016-181944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/52
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアと、
前記ステータコアに巻回される複数の相のコイルと、
矩形状の断面を有し、前記断面の短辺側を厚さ方向とし前記断面の長辺側を幅方向として環状に形成されるバスリングと、
前記ステータコアにおける軸方向の一端側に配置され、前記バスリングが取り付けられる取付部材と、
を備え、
前記バスリングは、前記相ごとに設けられ、前記幅方向に沿って湾曲して突出する複数の突出部を有し、
各々の前記相の前記バスリングにおける前記突出部が互いに前記バスリングの周方向へずれ、かつ、各々の前記相の前記バスリングの前記厚さ方向が前記軸方向に沿った状態で、各々の前記相の前記バスリングが前記取付部材に取り付けられ、
各前記突出部は、前記バスリングの外側に湾曲して、前記ステータコアを固定するためのハウジングの内周面と接触し、
前記コイルは、前記突出部の間の前記バスリングに巻かれる、固定子。
【請求項2】
請求項1に記載の固定子であって、
各々の前記相の前記バスリングは、互いに同一の形状である、固定子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の固定子であって、
前記バスリングは、前記幅方向に弾性を有し、前記弾性により前記取付部材に取り付けられる、固定子。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の固定子であって、
前記バスリングは、前記バスリングの周方向の一部が切り欠かれた切欠き部を有する、固定子。
【請求項5】
請求項4に記載の固定子であって、
前記バスリングの軸を基準とする前記切欠き部の角度が180度未満である、固定子。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の固定子であって、
前記取付部材は、前記ステータコアが固定される円筒状のハウジングであり、前記バスリングは、前記ハウジングの内周面に取り付けられる、固定子。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の固定子と、
回転子と、
を備える電動機。
【請求項8】
ステータコアに巻回される複数の相のコイルに電流を供給するためのバスリングを取り付けるバスリングの取付方法であって、
矩形状の断面の短辺側を厚さ方向とし前記断面の長辺側を幅方向とし、前記幅方向に沿って湾曲して突出する複数の突出部を有する環状の前記バスリングを形成する形成工程と、
前記ステータコアにおける軸方向の一端側に、複数の前記バスリングにおける前記突出部が互いに前記バスリングの周方向へずれ、かつ、複数の前記バスリングの前記厚さ方向が前記軸方向に沿った状態で、前記相ごとに前記バスリングを配置する配置工程と、
を含み
各前記突出部は、前記バスリングの外側に湾曲して、前記ステータコアを固定するためのハウジングの内周面と接触し、
前記コイルは、前記突出部の間の前記バスリングに巻かれる、バスリングの取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子、電動機およびバスリングの取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機として、三相誘導式の電動機が知られている。三相誘導式の電動機は、ステータコアに設けられたU相、V相およびW相のコイルと、当該コイルに電流を供給するためのバスリングとを有する。
【0003】
下記の特許文献1には、U相、V相およびW相のそれぞれに対応した複数のバスリングを積み重ねた集配電リングが開示されている。これらバスリングの各々の断面は円形状であり、当該バスリングは全体として環状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-181944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数のバスリングの各々に大電流を流して高出力化するためには、当該バスリングの直径を大きくする必要がある。しかし、上記特許文献1の集配電リングの場合、バスリングの断面の直径を大きくすると、当該バスリングが積み重ねられる集配電リングの厚さが大きくなる。
【0006】
そこで、本発明は、高出力化を図りながら薄型化し得る固定子、電動機およびバスリングの取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、固定子であって、ステータコアと、前記ステータコアに巻回される複数の相のコイルと、矩形状の断面を有し、前記断面の短辺側を厚さ方向とし前記断面の長辺側を幅方向として環状に形成されるバスリングと、前記ステータコアにおける軸方向の一端側に配置され、前記バスリングが取り付けられる取付部材と、を備え、前記バスリングは、前記相ごとに設けられ、前記幅方向に沿って湾曲して突出する複数の突出部を有し、各々の前記相の前記バスリングにおける前記突出部が互いに前記バスリングの周方向へずれ、かつ、各々の前記相の前記バスリングの前記厚さ方向が前記軸方向に沿った状態で、各々の前記相の前記バスリングが前記取付部材に取り付けられる。
【0008】
本発明の第2の態様は、電動機であって、上記の固定子と、回転子と、を備える。
【0009】
本発明の第3の態様は、ステータコアに巻回される複数の相のコイルに電流を供給するためのバスリングを取り付けるバスリングの取付方法であって、矩形状の断面の短辺側を厚さ方向とし前記断面の長辺側を幅方向とし、前記幅方向に沿って湾曲して突出する複数の突出部を有する環状の前記バスリングを形成する形成工程と、前記ステータコアにおける軸方向の一端側に、複数の前記バスリングにおける前記突出部が互いに前記バスリングの周方向へずれ、かつ、複数の前記バスリングの前記厚さ方向が前記軸方向に沿った状態で、前記相ごとに前記バスリングを配置する配置工程と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
これにより本発明によれば、高出力化を図りながら薄型化することができる。すなわち、本発明では、矩形状の断面を有するバスリングの短辺側がステータコアの軸方向に沿った状態で、相ごとにバスリングが配置される。このため、断面が円形状のバスリングを軸方向に沿って相ごとに配置する場合に比べると、軸方向におけるバスリングの占有スペースを抑えつつも、当該バスリングに大電流を供給することが可能となる。また、各々の相のバスリングにおける突出部は、バスリングの周方向へずれた状態で配置される。このため、各々の相のバスリングに接続されるコイルが、ステータコアの軸方向において重なることが回避される。したがって、より薄型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】電動機の断面を示す模式図である。
図2図2Aはバスリングを示す斜視図であり、図2B図2AのIIB-IIB線矢視断面図である。
図3】バスリングの取付状態を示す模式図である。
図4】バスリングの取付方法の流れを示すフローチャートである。
図5】変形例1のバスリングの取付状態を示す模式図である。
図6】変形例2のバスリングの取付状態を示す模式図である。
図7】変形例3のバスリングの取付状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0013】
〔実施の形態〕
図1は、電動機10の断面を示す模式図である。電動機10は、インナーロータ型の電動機であり、ロータコア12Aおよび磁石12Bを有する回転子12と、その回転子12の外側に設けられる固定子14とを備える。
【0014】
固定子14は、ハウジング20、ステータコア22、コイル24およびバスリング26を有する。ハウジング20は、ステータコア22、コイル24およびバスリング26などを収容するための樹脂製の部材であり、略円筒状に形成される。
【0015】
ステータコア22は、電動機10の回転軸AXの周りに配置される鉄系金属製の部材であり、略環状に形成される。ステータコア22は、ハウジング20に固定される。なお、ステータコア22は、複数の分割コア体を周方向に接合することで略環状に形成されてもよい。
【0016】
ステータコア22には、周方向に間隔をあけて複数のティース部22Aが設けられる。ティース部22Aは、ステータコア22の内周面からステータコア22の軸(中心軸)側に突出している。なお、ステータコア22の軸(中心軸)は、電動機10の回転軸AXと一致する。
【0017】
コイル24は、ステータコア22のティース部22Aに巻回されており、複数の相ごとに設けられる。コイル24の相数は、一般的には、U相、V相およびW相の三相であるが、当該コイル24の相数は、三相以外であってもよい。なお、本実施の形態では、コイル24として、U相のコイル24、V相のコイル24およびW相のコイル24が含まれるものとする。
【0018】
バスリング26は、コイル24に電流を供給するための給電線であり、コイル24の相ごとに設けられる。本実施の形態では、バスリング26は、U相のコイル24に電流を供給するためのU相バスリング26Uと、V相のコイル24に電流を供給するためのV相バスリング26Vと、W相のコイル24に電流を供給するためのW相バスリング26Wとを有する。
【0019】
U相バスリング26U、V相バスリング26VおよびW相バスリング26Wは、互いに同一の形状である。なお、U相バスリング26U、V相バスリング26VおよびW相バスリング26Wの相互間で公差があっても、同一の形状に含まれる。以下の説明では、バスリング26と称する場合には、U相バスリング26U、V相バスリング26VおよびW相バスリング26Wの各々を意味するものとする。
【0020】
図2Aはバスリング26を示す斜視図であり、図2B図2AのIIB-IIB線矢視断面図である。バスリング26は、導体層26Aと、その導体層26Aの外周面を被覆する絶縁層26Bとを有する構造である。このバスリング26は、矩形状の断面を有し、その断面の短辺側を厚さ方向とし長辺側を幅方向として環状に形成される。つまり、バスリング26のリング幅Wは、バスリング26のリング厚Tよりも大きく、当該リング幅Wおよびリング厚Tは、ともに、バスリング26の周方向に沿って略一定である。なお、バスリング26の厚さ方向は、ステータコア22の軸方向(回転軸AXの軸方向)と一致している。
【0021】
バスリング26は、バスリング26の幅方向に沿って湾曲して突出する複数の突出部30を有する。具体的に複数の突出部30は、環状のバスリング26の周方向へ間隔をあけて設けられ、当該突出部30の各々は環状のバスリング26の内側に向かって湾曲して突出している。複数の突出部30は、互いに同一の形状である。本実施の形態では突出部30の形状はU字状であるが、U字状以外の他の形状であってもよい。なお、複数の突出部30の相互間で公差があっても、同一の形状に含まれる。
【0022】
バスリング26は、バスリング26の周方向の一部が切り欠かれた切欠き部32を有する。この切欠き部32は、バスリング26の半周未満である。つまり、環状のバスリング26の中心軸BAXを基準とした切欠き部32の角度が180度未満である。なお、切欠き部32を挟むバスリング26の両端面は、図2Aに示す例では互いに非平行になっているが、互いに平行になっていてもよい。
【0023】
バスリング26は、バスリング26の幅方向に弾性を有する。上記のように、バスリング26は切欠き部32を有していることで、切欠き部32がない場合に比べてバスリング26における幅方向の可動域が大きくなっている。
【0024】
図3は、バスリング26の取付状態を示す模式図である。なお、図3では、バスリング26の取付状態を見易くするため、ステータコア22が省略され、コイル24の一部が省略されている。
【0025】
U相バスリング26U、V相バスリング26VおよびW相バスリング26Wは、幅方向の弾性によりハウジング20の内周面側に取り付けられる。ハウジング20に取り付けられたU相バスリング26U、V相バスリング26VおよびW相バスリング26Wにおける厚さ方向は、ステータコア22の軸方向(回転軸AXの軸方向)に沿った状態である。つまり、バスリング26の扁平な面が対向するように、各々の相のバスリング26がステータコア22の軸方向に沿って配置される。これにより、断面が円形状のバスリングをステータコア22の軸方向に沿って配置する場合に比べると、軸方向におけるバスリング26の占有スペースを抑えつつも、当該バスリング26に大電流を供給することが可能となる。したがって、高出力化を図りながら薄型化することができる。
【0026】
ハウジング20に取り付けられたU相バスリング26Uの突出部30には、U相のコイル24が接続される。同様に、ハウジング20に取り付けられたV相バスリング26Vの突出部30にはV相のコイル24が接続され、当該ハウジング20に取り付けられたW相バスリング26WにはW相のコイル24が接続される。具体的には、バスリング26の突出部30の絶縁層26B(図2B参照)が剥離され、その剥離部分に露出する導体層26A(図2B参照)に対して、当該バスリング26の相に対応する相のコイル24が半田などにより接続される。
【0027】
なお、図3に示す例では、U相バスリング26Uにおける複数の突出部30のなかの1つだけにU相のコイル24が接続された状態が示されているが、そのU相バスリング26Uにおける残りの突出部30にもコイル24が接続される。ただし、U相のバスリング26における複数の突出部30のすべてにU相のコイル24が接続されていなくてもよい。V相バスリング26VおよびW相バスリング26Wについても同様である。
【0028】
ハウジング20に取り付けられたU相バスリング26U、V相バスリング26VおよびW相バスリング26Wにおける突出部30は、互いにバスリング26の周方向へずれた状態である。これにより、各々の相のバスリング26に接続されるコイル24が、ステータコア22の軸方向において重なることが回避される。したがって、薄型化することができる。
【0029】
次に、ハウジング20にバスリング26を取り付ける取付方法を説明する。ただし、ハウジング20にはステータコア22が固定され、当該ステータコア22にはU相、V相およびW相の各々のコイル24が巻回されているものとする。
【0030】
図4は、バスリング26の取付方法の流れを示すフローチャートである。バスリング26の取付方法は、形成工程P1、配置工程P2および接続工程P3を含む。
【0031】
形成工程P1は、バスリング26を形成する工程である。この形成工程P1では、矩形状の断面の短辺側を厚さ方向とし長辺側を幅方向とする環状のバスリング26が、当該幅方向に沿って湾曲して突出する複数の突出部30、および、周方向に一部が切り欠かれた切欠き部32を有する状態で形成される。
【0032】
なお、バスリング26の具体的な形成手法として、例えば、エッジワイズ手法、プレス成形手法、あるいは、打ち抜き成形手法などが挙げられる。エッジワイズ手法は、断面が矩形状の平角線をエッジワイズ方向へ曲げて成形品を成形する手法である。
【0033】
配置工程P2は、形成工程P1で形成されたバスリング26を配置する工程である。この配置工程P2では、形成工程P1で形成されたU相バスリング26U、V相バスリング26VおよびW相バスリング26Wが、ステータコア22の軸方向に沿って並べて配置される。なお、複数の相のバスリング26は、一挙に纏めて配置されてもよく、単相ごとに所定の順序で配置されてもよい。
【0034】
具体的には、まず、バスリング26の幅方向に沿って縮径するようにバスリング26が変形され、変形されたバスリング26が円筒状のハウジング20の筒内に挿入される。上記のように、バスリング26は切欠き部32を有しているため、切欠き部32がない場合に比べて、バスリング26の幅方向に沿ってバスリング26を変形し易くできる。縮径するように変形することで、バスリング26をハウジング20の筒内に挿入し易くできる。
【0035】
次に、ハウジング20の筒内に挿入されたバスリング26の変形が解かれる。ここで、変形前のバスリング26の外径D(図2A参照)が円筒状のハウジング20の内径よりも大きい場合、バスリング26の幅方向の弾性によりハウジング20の内周面を押し付ける付勢力が働く。これによりバスリング26は、ハウジング20の内周面側に取り付け易くなる効果が得られる。
【0036】
次に、各々の相のバスリング26の各々が所定の位置関係に位置決めされる。具体的には、U相バスリング26U、V相バスリング26VおよびW相バスリング26Wの位相が所定角度ずれた状態で、当該U相バスリング26U、V相バスリング26VおよびW相バスリング26Wの各々が位置決めされる。このように配置されることで、各々の相のバスリング26の突出部30は、互いにバスリング26の周方向へずれて配置される。なお、各々の相のバスリング26は、互いに所定の位置関係に位置決めされた状態でハウジング20に取り付けられてもよい。
【0037】
このように、形成工程P1および配置工程P2を経ることで、バスリング26の扁平な面が対向するように、各々の相のバスリング26がステータコア22の軸方向に沿って配置される。これにより、断面が円形状のバスリングをステータコア22の軸方向に沿って配置する場合に比べると、軸方向におけるバスリング26の占有スペースを抑えつつも、当該バスリング26に大電流を供給することが可能となる。したがって、高出力化を図りながら薄型化することができる。
【0038】
接続工程P3は、各々の相のバスリング26の突出部30に、対応する相のコイル24を接続する工程である。この接続工程P3では、各々の相のバスリング26の突出部30の絶縁層26B(図2B参照)が剥離され、その剥離部分に露出する導体層26A(図2B参照)に対して、当該バスリング26の相に対応する相のコイル24が半田などにより接続される。上記のように、配置工程P2では、各々の相のバスリング26における突出部30が互いにバスリング26の周方向へずれている。これにより、各々の相のバスリング26の突出部30に接続されるコイル24が、ステータコア22の軸方向において重なることが回避される。したがって、薄型化することができる。
【0039】
〔変形例〕
以上、本発明の一例として上記実施の形態が説明されたが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることはもちろんである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0040】
(変形例1)
図5は、変形例1のバスリング26の取付状態を示す模式図である。変形例1では、バスリング26の幅方向に沿って湾曲して突出する複数の突出部30が、当該バスリング26の外側に向かって突出している。
【0041】
変形例1では、バスリング26の幅方向の弾性によりハウジング20の内周面に複数の突出部30が押し付けられることで、当該ハウジング20にバスリング26が取り付けられる。このように取り付けられても上記実施の形態と同様に、断面が円形状のバスリングをステータコア22の軸方向に沿って配置する場合に比べると、軸方向におけるバスリング26の占有スペースを抑えつつも、当該バスリング26に大電流を供給することが可能となる。したがって、高出力化を図りながら薄型化することができる。
【0042】
また、変形例1では、各々の相のバスリング26における突出部30は、上記実施の形態と同様に、バスリング26の周方向へずれて配置される。ただし、変形例1では、突出部30にコイル24が接続されるのではなく、各々の相のバスリング26において互いに隣接する突出部30の間に、対応する相のコイル24が接続される。このようにコイル24が接続されても、上記実施の形態と同様に、各々の相のバスリング26に接続されるコイル24が、ステータコア22の軸方向において重なることが回避される。したがって、薄型化することができる。
【0043】
(変形例2)
図6は、変形例2のバスリング26の取付状態を示す模式図である。変形例2におけるハウジング20の内周面には複数の相ごとに環状の溝20Gが設けられ、各々の相のバスリング26は、対応する相の溝20Gに対して幅方向の側面側の一部が挿入された状態で、当該幅方向の弾性によりハウジング20の内周面側に取り付けられる。なお、環状の溝20Gは、図6に示す例では、単相のバスリング26を挿入可能なものであったが、複数の相のバスリング26を纏めて挿入可能なものであってもよい。また、溝20Gは、環状でなくてもよい。
【0044】
このように、ハウジング20の内周面に、単相または複数の相のバスリング26における幅方向の側面側の一部を挿入可能な溝20Gが設けられることで、ハウジング20の内周面側に各々の相のバスリング26が取り付け易くなる。また、ステータコア22の軸方向におけるバスリング26のずれが抑制し易くなる。
【0045】
(変形例3)
図7は、変形例3のバスリング26の取付状態を示す模式図である。変形例3のバスリング26は、複数の保持具40に取り付けられる。複数の保持具40は、ステータコア22の周方向に沿って間隔をあけて、当該ステータコア22における軸方向の一端側の面上に固定される。複数の保持具40の各々は、ステータコア22の軸方向に沿って並べて配置された複数の相のバスリング26を一纏めに束ねるようにして保持する。
【0046】
このように、バスリング26が取り付けられる取付部材は、ステータコア22における軸方向の一端側に配置されていれば、上記実施の形態のハウジング20であっても、変形例3の保持具40であっても、当該ハウジング20および保持具40以外のものであってもよい。
【0047】
なお、ステータコア22の軸方向に沿って配置される複数の相のバスリング26は、互いに接触した状態であってもよく、互いに非接触の状態であってもよい。上記実施の形態についても同様である。
【0048】
(変形例4)
バスリング26は、上記実施の形態では、インナーロータ型の電動機10に適用されたが、アウターロータ型の電動機に適用されてもよい。
【0049】
(変形例5)
上記実施の形態および上記変形例は、矛盾の生じない範囲で任意に組み合わされてもよい。
【0050】
〔実施の形態から得られる技術的思想〕
以上の実施の形態から把握しうる技術的思想について、以下に記載する。
【0051】
(第1の技術的思想)
固定子(14)は、ステータコア(22)と、ステータコア(22)に巻回される複数の相のコイル(24)と、矩形状の断面を有し、断面の短辺側を厚さ方向とし断面の長辺側を幅方向として環状に形成されるバスリング(26)と、ステータコア(22)における軸方向の一端側に配置され、バスリング(26)が取り付けられる取付部材(20、40)と、を備える。バスリング(26)は、相ごとに設けられ、幅方向に沿って湾曲して突出する複数の突出部(30)を有し、各々の相のバスリング(26)における突出部(30)が互いにバスリング(26)の周方向へずれ、かつ、各々の相のバスリング(26)の厚さ方向が軸方向に沿った状態で、各々の相のバスリング(26)が取付部材(20、40)に取り付けられる。
【0052】
これにより、高出力化を図りながら薄型化することができる。すなわち、固定子(14)では、矩形状の断面を有するバスリング(26)の短辺側がステータコア(22)の軸方向に沿った状態で、相ごとにバスリング(26)が配置される。このため、断面が円形状のバスリングを軸方向に沿って相ごとに配置する場合に比べると、軸方向におけるバスリング(26)の占有スペースを抑えつつも、当該バスリング(26)に大電流を供給することが可能となる。また、各々の相のバスリング(26)における突出部(30)は、バスリング(26)の周方向へずれた状態で配置される。このため、各々の相のバスリング(26)に接続されるコイル(24)が、ステータコア(22)の軸方向において重なることが回避される。したがって、より薄型化することができる。
【0053】
各々の相のバスリング(26)は、同一の形状であってもよい。これにより、相ごとに別々の形状のバスリングを用いる場合に比べて、部品点数を抑えることができる。
【0054】
バスリング(26)は、幅方向に弾性を有し、弾性により取付部材(20、40)に取り付けられてもよい。これにより、バスリング(26)を取付部材(20、40)に取り付けるための器具が不要となるため、部品点数を抑えることができる。
【0055】
バスリング(26)は、バスリング(26)の周方向の一部が切り欠かれた切欠き部(32)を有してもよい。これにより、バスリング(26)における幅方向の弾性力を簡易に大きくすることができる。
【0056】
切欠き部(32)は、180度未満であってもよい。これにより、バスリング(26)の弾性により取付部材(20、40)に取り付け易くできる。
【0057】
突出部(30)は、バスリング(26)の内側に湾曲し、コイル(24)は、突出部(30)に巻かれてもよい。あるいは、突出部(30)は、バスリング(26)の外側に湾曲し、コイル(24)は、バスリング(26)に巻かれてもよい。
【0058】
取付部材(20)は、ステータコア(22)が固定される円筒状のハウジングであり、バスリング(26)は、ハウジングの内周面または外周面に取り付けられてもよい。これにより、ステータコア(22)を固定するための部材と、バスリング(26)を取り付けるための部材とを別々に設ける必要がなくなり、部品点数を抑えることができる。
【0059】
(第2の技術的思想)
電動機(10)は、上記の固定子(14)と、回転子(12)と、を備える。上記の固定子(14)が備えられることにより、高出力化を図りながら薄型化することができる。
【0060】
(第3の技術的思想)
バスリング(26)の取付方法は、ステータコア(22)に巻回される複数の相のコイル(24)に電流を供給するためのバスリング(26)を取り付ける方法である。この取付方法は、矩形状の断面の短辺側を厚さ方向とし断面の長辺側を幅方向とし、幅方向に沿って湾曲して突出する複数の突出部(30)を有する環状のバスリング(26)を形成する形成工程(P1)と、ステータコア(22)における軸方向の一端側に、複数のバスリング(26)における突出部(30)が互いにバスリング(26)の周方向へずれ、かつ、複数のバスリング(26)の厚さ方向が軸方向に沿った状態で、相ごとにバスリング(26)を配置する配置工程(P2)と、を含む。
【0061】
この取付方法では、矩形状の断面を有するバスリング(26)の短辺側がステータコア(22)の軸方向に沿った状態で、相ごとにバスリング(26)が配置される。このため、断面が円形状のバスリングを軸方向に沿って相ごとに配置する場合に比べると、軸方向におけるバスリング(26)の占有スペースを抑えつつも、当該バスリング(26)に大電流を供給することが可能となる。また、各々の相のバスリング(26)における突出部(30)は、バスリング(26)の周方向へずれた状態で配置される。このため、各々の相のバスリング(26)に接続されるコイル(24)が、ステータコア(22)の軸方向において重なることが回避される。したがって、薄型化することができる。したがって、高出力化を図りながら薄型化することができる。
【符号の説明】
【0062】
10…電動機 12…回転子
14…固定子 20…ハウジング(取付部材)
22…ステータコア 24…コイル
26…バスリング 30…突出部
32…切欠き部 40…保持具(取付部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7